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JP2000195413A - スペ―サ及びその製造方法、並びに当該スペ―サを用いた電子線装置 - Google Patents

スペ―サ及びその製造方法、並びに当該スペ―サを用いた電子線装置

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JP2000195413A
JP2000195413A JP10368413A JP36841398A JP2000195413A JP 2000195413 A JP2000195413 A JP 2000195413A JP 10368413 A JP10368413 A JP 10368413A JP 36841398 A JP36841398 A JP 36841398A JP 2000195413 A JP2000195413 A JP 2000195413A
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film
spacer
electron
resistance film
voltage
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JP10368413A
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Shigeki Yoshida
茂樹 吉田
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Canon Inc
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  • Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 スペーサ近傍での輝点の位置ずれなどのない
鮮明な画像表示を可能とする平面型の画像形成装置を提
供する。 【解決手段】 複数の冷陰極素子18を有する電子源基
板1と電子を照射するターゲット7とをスペーサ10を
介して対向させた画像形成装置において、スペーサ10
が、絶縁性部材11の表面に金属酸化膜を主成分とする
高抵抗膜12を有し、且つ電子源基板1及びターゲット
7との当接面に高抵抗膜12が還元された低抵抗膜15
を有していることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子を電
子源とする露光装置や表示装置等の電子線装置に関し、
特にかかる電子線装置に適用されるスペーサに関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来から、電子放出素子として熱陰極素
子と冷陰極素子の2種類が知られている。このうち冷陰
極素子では、たとえば表面伝導型放出素子や、電界放出
型素子(以下「FE型」と記す。)や、金属/絶縁層/
金属型放出素子(以下「MIM型」と記す。)などが知
られている。
【0003】表面伝導型放出素子としては、たとえば、
M.I.Elinson, Radio Eng.El
ectron Phys.,10,1290,(196
5)や、後述する他の例が知られている。
【0004】表面伝導型放出素子は、基板上に形成され
た小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより
電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面
伝導型放出素子としては、前記エリンソン等によるSn
2 薄膜を用いたものの他に、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:”Thin Solid Fi
lms”,9,317(1972)]や、In23
SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwell an
d C.G.Fonstad:”IEEE Tran
s.ED Conf.”,519(1975)]や、カ
ーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、
第1号、22(1983)]等が報告されている。
【0005】これらの表面伝導型放出素子の素子構成の
典型的な例として、図16に前述のM.Hartwel
lらによる素子の平面図を示す。同図において、100
1は基板で、1002はスパッタで形成された金属酸化
物よりなる導電性薄膜である。導電性薄膜1002は図
示のようにH字形の平面形状に形成されている。該導電
性薄膜1002に後述の通電フォーミングと呼ばれる通
電処理を施すことにより、電子放出部1003が形成さ
れる。図中の間隔Lは0.5〜1mm、Wは0.1mm
で設定されている。尚、図示の便宜から、電子放出部1
003は導電性薄膜1002の中央に矩形の形状で示し
たが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の
位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0006】M.Hartwellらによる素子をはじ
めとして上述の表面伝導型放出素子においては、電子放
出を行う前に導電性薄膜1002に通電フォーミングと
呼ばれる通電処理を施すことにより電子放出部1003
を形成するのが一般的であった。すなわち、通電フォー
ミングとは、前記導電性薄膜1002の両端に一定の直
流電圧、もしくは、例えば1V/分程度の非常にゆっく
りとしたレートで昇圧する直流電圧を印加して通電し、
導電性薄膜1002を局所的に破壊もしくは変形もしく
は変質せしめ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部10
03を形成することである。尚、局所的に破壊もしくは
変形もしくは変質した導電性薄膜1002の一部には、
亀裂が発生する。前記通電フォーミング後に導電性薄膜
1002に適宜の電圧を印加した場合には、前記亀裂付
近において電子放出が行われる。
【0007】また、FE型の例は、たとえば、W.P.
Dyke&W.W.Dolan,”Field emi
ssion”,Advance in Electro
nPhysics,8,89(1956)や、あるい
は、C.A.Spindt,”Physical pr
operties of thin−film fie
ld emission cathodes with
molybdenum cones”,J.App
l.Phys.,47,5248(1976)などが知
られている。
【0008】FE型の素子構成の典型的な例として、図
17に前述のC.A.Spindtらによる素子の断面
図を示す。同図において、1004は基板で、1005
は導電材料よりなるエミッタ配線、1006はエミッタ
コーン、1007は絶縁層、1008はゲート電極であ
る。本素子は、エミッタコーン1006とゲート電極1
008の間に適宜の電圧を印加することにより、エミッ
タコーン1006の先端部より電界放出を起こさせるも
のである。
【0009】また、FE型の他の素子構成として、図1
7のような積層構造ではなく、基板上に基板平面とほぼ
平行にエミッタとゲート電極を配置した例もある。
【0010】また、MIM型の例としては、たとえば、
C.A.Mead,”Operation of tu
nnel−emission Devices,J.A
ppl.Phys.,32,646(1961)などが
知られている。MIM型の素子構成の典型的な例を図1
8に示す。同図は断面図であり、図において、1009
は基板で、1010は金属よりなる下電極、1011は
厚さ10nm程度の薄い絶縁層、1012は厚さ8〜3
0nm程度の金属よりなる上電極である。MIM型にお
いては、上電極1012と下電極1010の間に適宜の
電圧を印加することにより、上電極1012の表面より
電子放出を起こさせるものである。
【0011】上述の冷陰極素子は、熱陰極素子と比較し
て低温で電子放出を得ることができるため、加熱用ヒー
ターを必要としない。したがって、熱陰極素子よりも構
造が単純であり、微細な素子を作成可能である。また、
基板上に多数の素子を高い密度で配置しても、基板の熱
溶融などの問題が発生しにくい。また、熱陰極素子がヒ
ーターの加熱により動作するため応答速度が遅いのとは
異なり、冷陰極素子の場合には応答速度が速いという利
点もある。
【0012】このため、冷陰極素子を応用するための研
究が盛んに行われてきている。たとえば、表面伝導型放
出素子は、冷陰極素子のなかでも特に構造が単純で、製
造も容易であることから、大面積にわたり多数の素子を
形成できる利点がある。そこで、たとえば本出願人によ
る特開昭64−31332号公報において開示されるよ
うに、多数の素子を配列して駆動するための方法が研究
されている。
【0013】また、表面伝導型放出素子の応用について
は、たとえば、画像表示装置、画像記録装置などの画像
形成装置や、荷電ビーム源等が研究されている。
【0014】特に、画像表示装置への応用としては、た
とえば本出願人によるUSP5,066,883や特開
平2−257551号公報や特開平4−28137号公
報において開示されているように、表面伝導型放出素子
と電子ビームの照射により発光する蛍光体とを組み含わ
せて用いた画像表示装置が研究されている。表面伝導型
放出素子と蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置
は、従来の他の方式の画像表示装置よりも優れた特性が
期待されている。たとえば、近年普及してきた液晶表示
装置と比較しても、自発光型であるためバックライトを
必要としない点や、視野角が広い点が優れていると言え
る。
【0015】また、FE型を多数個ならべて駆動する方
法は、たとえば本出願人によるUSP4,904,89
5に開示されている。また、FE型を画像表示装置に応
用した例として、たとえば、R.Meyerらにより報
告された平板型表示装置が知られている。[R.Mey
er:”Recent Development on
Microtips Display at LET
I”,Tech.Digest of 4th ln
t. Vacuum Microelectronic
s Conf.,Nagahama,pp.6〜9(1
991)]
【0016】また、MIM型を多数個並べて画像表示装
置に応用した例は、たとえば本出願人による特開平3−
55738号公報に開示されている。
【0017】上記のような電子放出素子を用いた画像形
成装置のうちで、奥行きの薄い平面型表示装置は省スペ
ースかつ軽量であることから、ブラウン管型の表示装置
に置き換わるものとして注目されている。
【0018】図19は平面型の画像表示装置をなす表示
パネル部の一例を示す斜視図であり、内部構造を示すた
めにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0019】図中、1115はリアプレート、1116
は側壁、1117はフェースプレートであり、リアプレ
ート1115、側壁1116およびフュースプレート1
117により、表示パネルの内部を真空に維持するため
の外囲器(気密容器)を形成している。
【0020】リアプレート1115には基板1111が
固定されているが、この基板1111上には冷陰極素子
1112が、N×M個形成されている。(N、Mは2以
上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適
宜設定される。)また、前記N×M個の冷陰極素子11
12は、M本の行方向配線1113とN本の列方向配線
1114により配線されている。これら基板1111、
冷陰極素子1112、行方向配線1113および列方向
配線1114によって構成される部分をマルチ電子ビー
ム源と呼ぶ。また、行方向配線1113と列方向配線1
114の少なくとも交差する部分には、両配線間に絶縁
層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれ
ている。
【0021】フェースプレート1117の下面には、蛍
光体からなる蛍光膜1118が形成されており、赤
(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体(不図
示)が塗り分けられている。また、蛍光膜1118をな
す上記各色蛍光体の間には黒色体(不図示)が設けてあ
り、さらに蛍光膜1118のリアプレート1115側の
面には、Al等からなるメタルバック1119が形成さ
れている。
【0022】Dox1 〜Doxm およびDoy1 〜Doyn およ
びHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路とを電気
的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子で
ある。Dox1 〜Doxm はマルチ電子ビーム源の行方向配
線1113と、Doy1 〜Doyn はマルチ電子ビーム源の
列方向配線1114と、Hvはメタルバック1119と
各々電気的に接続している。
【0023】また、上記気密容器の内部は1.3×10
-4Pa程度の真空に保持されており、画像表示装置の表
示面積が大きくなるにしたがい、気密容器内部と外部の
気圧差によるリアプレート1115およびフェースプレ
ート1117の変形あるいは破壊を防止する手段が必要
となる。かかる手段として、リアプレート1115およ
びフェースプレート1117を厚くすることによる方法
は、画像表示装置の重量を増加させるのみならず、斜め
方向から見たときに画像のゆがみや視差を生ずる。
【0024】これに対し、図19においては、比較的薄
いガラス板からなり大気圧を支えるための構造支持体
(スペーサあるいはリブと呼ばれる)1120が設けら
れている。しかしながら、電子線装置の気密容器(外囲
器)内へスペーサを配置した場合、電子線が照射される
ターゲット面上(蛍光膜1118、メタルバック111
9)での電子線の照射位置が設計値からずれてしまうと
いう問題が生じる。これは、電子線の放出によってスペ
ーサ表面が帯電し、電子線の軌道を曲げるために生じ
る。そこで、スペーサ表面に半導電性膜(あるいは高抵
抗膜)を有し、該半導電性膜が前記冷陰極素子1112
および電子線を照射するターゲットに対して電気的に接
続されている構造とし、スペーサ表面に微小電流を流す
ことによってこの帯電を防ぎ、電子線の軌道を設計値ど
おりにすることができる。さらには、スペーサと電子源
および前記ターゲットの各々との当接部に、低抵抗膜か
らなる当接部材を形成して電気的な接続をより確かなも
のにする構成とすることもできる(特開平8−1808
21号公報)。
【0025】このようにして、マルチビーム電子源が形
成された基板1111と蛍光膜1118が形成されたフ
ェースプレート1117間は通常サブミリないし数ミリ
に保たれ、前述したように気密容器内部は高真空に保持
されている。
【0026】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dox1 ないしDoxm 、Doy1 ないし
oyn を通じて各冷陰極素子1112に電圧を印加する
と、各冷陰極素子1112から電子が放出される。それ
と同時にメタルバック1119に容器外端子Hvを通じ
て数百V〜数kVの高圧を印加して、上記放出された電
子を加速し、フェースプレート1117の内面に衝突さ
せる。これにより、蛍光膜1118をなす各色の蛍光体
が励起されて発光し、画像が表示される。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スペー
サと電子源および前記ターゲットの各々との当接部に、
低抵抗膜からなる当接部材を形成する場合、高抵抗膜と
は別に該低抵抗膜を形成すると、成膜工程が2回になっ
たり、あるいは、高抵抗膜と低抵抗膜との界面が不安定
で、低抵抗膜の膜はがれが生じ、電気的接続が不安定に
なるといった問題があった。
【0028】本発明の目的は、上記従来の問題点を解消
し、電子放出素子を電子源とする露光装置や表示装置等
の電子線装置に好適なスペーサを提供することにあり、
さらにはかかるスペーサを用いた電子線装置を提供する
ことにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
成された本発明の構成は、以下の通りである。
【0030】すなわち本発明の第1は、複数の冷陰極素
子を有する電子源基板と前記冷陰極素子より放出される
電子を照射するターゲットとの間に配置されるスペーサ
であって、絶縁性部材の表面に金属酸化膜を主成分とす
る高抵抗膜を有し、且つ前記電子源基板及び前記ターゲ
ットに当接させる部分には、前記高抵抗膜が還元された
低抵抗膜を有していることを特徴とするものである。
【0031】また本発明の第2は、複数の冷陰極素子を
有する電子源基板と前記冷陰極素子より放出される電子
を照射するターゲットとの間に配置されるスペーサの製
造方法であって、絶縁性部材の表面に金属酸化膜を主成
分とする高抵抗膜を形成した後、該高抵抗膜のうち前記
電子源基板及び前記ターゲットに当接させる部分を還元
することで低抵抗化させることを特徴とするものであ
る。
【0032】また本発明の第3は、複数の冷陰極素子を
有する電子源基板と前記冷陰極素子より放出される電子
を照射するターゲットとをスペーサを介して対向させた
構造を有する電子線装置において、該スペーサが、絶縁
性部材の表面に金属酸化膜を主成分とする高抵抗膜を有
し、且つ前記電子源基板及び前記ターゲットとの当接面
に前記高抵抗膜が還元された低抵抗膜を有していること
を特徴とするものである。
【0033】本発明の電子線装置は、以下のような形態
を有するものであってもよい。 電子線装置は、入力信号に応じて前記冷陰極素子から
放出された電子を前記ターゲットに照射して画像を形成
する画像形成装置をなす。特に、前記ターゲットが蛍光
体である画像表示装置をなす。 前記冷陰極素子は、電子放出部を含む導電性膜を一対
の電極間に有する冷陰極素子であり、特に好ましくは表
面伝導型放出素子である。 前記電子源は、複数の行方向配線と複数の列方向配線
とでマトリクス配線された複数の冷陰極素子を有する単
純マトリクス状配置の電子源をなす。 前記電子源は、並列に配置した複数の冷陰極素子の個
々を両端で接続した冷陰極素子の行を複数配し(行方向
と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)に
沿って、冷陰極素子の上方に配した制御電極(グリッド
とも呼ぶ)により、冷陰極素子からの電子を制御するは
しご状配置の電子源をなす。 また、本発明の思想によれば、表示用として好適な画
像形成装置に限るものでなく、感光性ドラムと発光ダイ
オード等で構成された光プリンタの発光ダイオード等の
代替の発光源として、上述の画像形成装置を用いること
もできる。またこの際、上述の複数の行方向配線と複数
の列方向配線を、適宜選択することで、ライン状発光源
だけでなく、二次元状の発光源としても応用できる。こ
の場合、画像形成部材としては、以下の実施例で用いる
蛍光体のような直接発光する物質に限るものではなく、
電子の帯電による潜像画像が形成されるような部材を用
いることもできる。 また、本発明の思想によれば、例えば電子顕微鏡のよ
うに、電子源からの放出電子の被照射部材が、蛍光体等
の画像形成部材以外のものである場合についても、本発
明は適用できる。従って、本発明は被照射部材を特定し
ない一般的電子線装置としての形態もとりうる。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明のスペーサは、絶縁性部材
の表面に、金属酸化膜を主成分とする高抵抗膜(比抵抗
が0.1〜108 Ω・cm程度)の帯電防止膜と、その
両端に該金属酸化膜を還元することによって形成された
低抵抗膜を有している。
【0035】図1は本発明のスペーサの製造工程の一例
を示した模式図であり、11は帯電防止が施される絶縁
性部材、12は絶縁性部材11の表面に形成した金属酸
化膜からなる帯電防止膜である。13はパターニングの
ためのマスク、14は還元手段を示す。15はスペーサ
ー両端に設けられた低抵抗膜であり、金属酸化膜11を
還元することで作製されている。該低抵抗膜15につい
ての詳細は後述する。
【0036】金属酸化膜12を構成する金属酸化物は、
一般に優れた帯電防止膜特性を有し、特にクロム、ニッ
ケル、銅の酸化物が好ましい材料である。その理由はこ
れらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、後述
の電子線装置に応用した場合に、電子放出素子から放出
された電子がスペーサに当たった場合においても帯電し
にくいためである。
【0037】金属酸化膜12に好適な材料としては、前
記酸化物に加え、TiO2 、Ta25 、HfO2 、Z
rO2 なども適している。これらの酸化物はいずれも、
酸素のスパッタ率の方が金属のスパッタ率よりも大き
く、Arイオンなどの照射で還元することができるた
め、その一部をイオン照射によって還元することで低抵
抗膜15を形成し易い。さらに、これらの材料は電子線
の照射によっても還元が可能である。また、NiOやC
uOなどは還元性ガスやそれと加熱の併用でも比較的容
易に還元することができるため、この方法によっても低
抵抗膜15を形成することができる。
【0038】金属酸化膜12は、例えばスパッタ、酸素
ガス雰囲気中での反応性スパッタ、電子ビーム蒸着、イ
オンプレーティング、イオンアシスト蒸着法等の薄膜形
成手段により絶縁性部材11上に形成される。その他、
CVD法、アルコキシド塗布法でも金属酸化膜12を形
成できる。
【0039】金属酸化膜12の還元方法は大別すると、
1)イオン照射および電子線照射による方法と、2)還
元性ガスおよび還元性ガス+加熱による方法とがある。
【0040】イオン照射の場合のイオン種としては、代
表的なものとしてはAr、Xeなどの不活性ガスがあ
る。上記酸化膜を還元させるには、これらのイオンを1
〜10keV程度のエネルギーに加速して照射すること
で達成される。しかし、一般的に加速エネルギーが大き
いと、スパッタレートが大きくなり、膜のエッチングさ
れてしまう分が大きくなってしまうことと表面粗さが増
大してしまうことから、なるべく穏やかな条件で照射す
るのが好ましい。上記加速エネルギーの場合、イオン電
流でマイクロアンペアーオーダー、金属酸化膜のスパッ
タ率によって異なるが、数分〜数十分程度で金属酸化膜
を還元できる。
【0041】電子線照射の場合は、加速エネルギー数十
kV程度の電子線を照射することで上述の金属酸化膜を
還元できる。
【0042】本発明のスペーサを、複数の冷陰極素子を
有する電子源基板と、冷陰極素子より放出される電子を
照射するターゲットとを備える電子線装置に適用するに
際し、かかる電子源基板とターゲットとに当接される部
分(すなわち図1に示すスペーサの上下端部)の金属酸
化膜のみをイオン照射もしくは電子線照射によって還元
する方法としては、マスク13で挟んで端だけ露出さ
せ、イオン(あるいは電子線)14を照射する(図1
(c))、スペーサーを重ねてずらして端だけ露出さ
せ、イオン(あるいは電子線)14を照射(図2)、
イオンビーム(あるいは電子線ビーム)により所望の位
置を走査する(不図示)などの方法がある。
【0043】一方、還元性ガスおよび還元性ガス+加熱
による還元の方法では、還元性ガスとしては、水素ガ
ス、一酸化炭素、アンモニアなどがある。加熱温度は、
スペーサの下地絶縁物(絶縁性部材11)の軟化点(例
えば青板ガラスを使う場合などでは〜500℃)以下と
する。
【0044】還元性ガスおよび還元性ガス+加熱によっ
てスペーサの端だけを還元する方法としては、上記イオ
ン照射等の場合の及びの方法を用いることができ
る。
【0045】次に、本発明のスペーサを適用した電子線
装置の一例として、平面型の画像表示装置の表示パネル
について、その構成と製造法の具体例を説明する。
【0046】図3は後述の実施例に用いた表示パネルの
断面模式図であり、スペーサ10を中心的に示してい
る。また、図4はかかる表示パネルの斜視図であり、内
部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示してい
る。
【0047】図中、2はリアプレート、3は側壁、7は
フェースプレートであり、これらにより表示パネルの内
部を真空に維持するための気密容器(外囲器)を形成し
ている。なお、フェースプレート7は、基板4の内面に
蛍光膜5及びメタルバック6が形成されて構成されてい
る。気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合
部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要
があるが、例えばフリットガラスを接合部に塗布し、非
酸素雰囲気である窒素雰囲気中やAr雰囲気中などで、
400〜500℃で10分以上焼成することにより封着
することができる。
【0048】また、上記気密容器の内部は1.3×10
-4Pa程度の真空に保持されるので、大気圧や不意の衝
撃などによる気密容器の破壊を防止する目的で、耐大気
圧構造体として、本発明のスペーサ10が設けられてい
る。気密容器内部を真空に排気する方法については後述
する。
【0049】リアプレート2には、基板1が固定されて
いるが、該基板1上には冷陰極素子18がN×M個形成
されている。(N,Mは2以上の正の整数であり、目的
とする表示画素数に応じて適宣設定される。例えば、高
品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置において
は、N=3000,M=1000以上の数を設定するこ
とが望ましい。)。尚、基板1が十分な強度を有するも
のである場合には、基板1自体をリアプレート2として
もよい。
【0050】前記N×M個の冷陰極素子は、M本の行方
向配線9とN本の列方向配線17により単純マトリクス
配線されている。前記、基板1、冷陰極素子18、行方
向配線9、列方向配線17によって構成される部分をマ
ルチ電子ビーム源と呼ぶ。
【0051】本発明の画像表示装置に用いるマルチ電子
ビーム源には、冷陰極素子18として例えば表面伝導型
放出素子やFE型、あるいはMIM型などを用いること
ができ、かかる冷陰極素子の材料や形状あるいは製法に
特に制限はない。
【0052】次に、冷陰極素子として表面伝導型放出素
子(後述)を基板上に配列して単純マトリクス配線した
マルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0053】図5に示すのは、後述の実施例の表示パネ
ルに用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。図5の
A−A’に沿った断面を、図6に示す。基板1上には、
後述の図8で示すものと同様な表面伝導型放出素子が配
列され、これらの素子は行方向配線電極9と列方向配線
電極17により単純マトリクス状に配線されている。行
方向配線電極9と列方向配線電極17の交差する部分に
は、電極間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気
的な絶縁が保たれている。
【0054】なお、このような構造のマルチ電子ビーム
源は、あらかじめ基板上に行方向配線電極9、列方向配
線電極17、電極間絶縁層(不図示)、および表面伝導
型放出素子の素子電極22,23と導電性膜24を形成
した後、行方向配線電極9および列方向配線電極17を
介して各素子に給電して通電フォーミング処理(後述)
と通電活性化処理(後述)を行うことにより製造するこ
とができる。
【0055】フェースプレート7の下面には、蛍光膜5
が形成されている(図3及び図4参照)。本例はカラー
表示装置であるため、蛍光膜5の部分にはCRTの分野
で用いられている赤、緑、青の3原色の蛍光体が塗り分
けられている。各色の蛍光体は、例えば図7の(a)に
示すようにストライプ状に塗り分けられ、蛍光体5aの
ストライプの間には黒色の導電体5bが設けてある。黒
色の導電体5bを設ける目的は、電子ビームの照射位置
に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないように
することや、外光の反射を防止して表示コントラストの
低下を防ぐこと、電子ビームによる蛍光膜のチャージア
ップを防止することなどである。黒色の導電体5bに
は、例えば黒鉛を主成分としたものを用いることができ
るが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料
を用いても良い。
【0056】また、3原色の蛍光体5aの塗り分け方は
前記図7(a)に示したストライプ状の配列に限られる
ものではなく、例えば図7(b)に示すようなデルタ状
配列や、それ以外の配列であってもよい。なお、モノク
ロームの表示パネルを作成する場合には、単色の蛍光体
材料を蛍光膜5に用いればよく、また黒色導電材料は必
すしも用いなくともよい。
【0057】また、蛍光膜5のリアプレート2側の面に
は、CRTの分野では公知のメタルバック6を設けてあ
る。メタルバック6を設けた目的は、蛍光膜5が発する
光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させることや、
負イオンの衝突から蛍光膜5を保護することや、電子ビ
ーム加速電圧を印加するための電極として作用させるこ
とや、蛍光膜5を励起した電子の導電路として作用させ
ることなどである。メタルバック6は、例えば蛍光膜5
をフェースプレート基板4上に形成した後、蛍光膜5表
面を平滑化処理し、その上にAlを真空蒸着する方法に
より形成することができる。なお、蛍光膜5に低電圧用
の蛍光体材料を用いた場合には、メタルバック6は不要
である。
【0058】また、本例では用いていないが、加速電圧
の印加用や蛍光膜5の導電性向上を目的として、フェー
スプレート基板4と蛍光膜5との間に、例えばITOを
材料とする透明電極を設けてもよい。
【0059】スペーサ10は、前述のように絶縁性部材
11の表面に帯電防止を目的とした高抵抗膜12を成膜
し、かつフェースプレート7の内側(メタルバック6
等)及び基板1の表面(行方向配線9または列方向配線
17)に面したスペーサの当接面に低抵抗膜15を成膜
してなるもので、気密容器の破損あるいは変形を防止す
るのに必要な数だけ、かつ必要な間隔をおいて配置さ
れ、フェースプレート7の内側および基板1の表面に接
合材16により固定される。
【0060】従って、スペーサ10の高抵抗膜12は、
低抵抗膜15および接合材16を介して、フェースプレ
ート7の内側(メタルバック6等)及び基板1の表面
(行方向配線9または列方向配線17)に電気的に接続
される。ここで説明される態様においては、スペーサ1
0の形状は薄板状とし、行方向配線9に平行に配置さ
れ、行方向配線9に電気的に接続されている。
【0061】このような画像表示装置に適用されるスペ
ーサ10は、基板1上の行方向配線9および列方向配線
17とフェースプレート7内面のメタルバック6との間
に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、かつ
スペーサ10の表面への帯電を防止する程度の導電性を
有する必要がある。
【0062】スペーサ10の絶縁性部材11としては、
例えば石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガ
ラス、ソーダライムガラス、アルミナ等のセラミックス
部材等が挙げられる。なお、絶縁性部材11はその熱膨
張率が気密容器および基板1を成す部材と近いものが好
ましい。
【0063】スペーサ10を構成する高抵抗膜12に
は、高電位側のフェースプレート7(メタルバック6
等)に印加される加速電圧Vaを帯電防止膜である高抵
抗膜12の抵抗値で除した電流が流される。そこで、高
抵抗膜12の抵抗値は帯電防止および消費電力からその
望ましい範囲に設定される。帯電防止の観点から高抵抗
膜12の表面抵抗(シート抵抗Rs)は1012Ω以下で
あることが好ましい。十分な帯電防止効果を得るために
は1011Ω以下がさらに好ましい。表面抵抗の下限はス
ペーサ形状とスペーサ間に印加される電圧により左右さ
れるが、105 Ω以上であることが好ましい。
【0064】絶縁性部材11上に形成される高抵抗膜1
2の厚みtは10nm〜1μmの範囲が望ましい。材料
の表面エネルギーおよび絶縁性部材11との密着性や部
材温度によっても異なるが、一般的に10nm以下の薄
膜は島状に形成され、抵抗が不安定で再現性に乏しい。
一方、膜厚tが1μm以上では膜応力が大きくなって膜
剥れの危険性が高まり、かつ成膜時間が長くなるため生
産性が悪い。従って、高抵抗膜12の厚みtは10nm
〜1μm、さらには50〜500nmであることが特に
望ましい。
【0065】比抵抗ρはシート抵抗Rsと膜厚tの積で
あり、以上に述べたRsとtの好ましい範囲から、高抵
抗膜12の比抵抗ρは0.1Ωcm〜108 Ωcmが好
ましい。さらにシート抵抗と膜厚のより好ましい範囲を
実現するためには、高抵抗膜12の比抵抗ρは102
106 Ωcmとするのが良い。
【0066】スペーサ10は上述したようにその表面に
形成した高抵抗膜12を電流が流れることにより、ある
いはディスプレイ全体が動作中に発熱することによりそ
の温度が上昇する。高抵抗膜12の抵抗温度係数が大き
な負の値であると温度が上昇した時に抵抗値が減少し、
スペーサ10に流れる電流が増加し、さらに温度上昇を
もたらす。そして電流は電源の限界を超えるまで増加し
つづける。このような電流の暴走が発生する抵抗温度係
数の値は経験的に負の値で絶対値が1%/K以上であ
る。すなわち、高抵抗膜12の抵抗温度係数は、負の場
合は絶対値が1%を超えないことが望ましい。
【0067】帯電防止特性を有する高抵抗膜12の材料
としては、先述したように金属酸化物を用いることがで
きる。
【0068】スペーサ10を構成する低抵抗膜15は、
高抵抗膜12を高電位側のフェースプレート7(メタル
バック6等)及び低電位側の基板1(行方向配線9また
は列方向配線17等)と電気的に接続するために設けら
れたものであり、以下に列挙する複数の機能を有するこ
とができる。
【0069】既に記載したように、高抵抗膜12はス
ペーサ10表面での帯電を防止する目的で設けられたも
のであるが、高抵抗膜12をフェースプレート7(メタ
ルバック6等)及び基板1(行方向配線9または列方向
配線17等)と直接或いは接合材16を介して接続した
場合、接続部界面に大きな接触抵抗が発生し、スペーサ
表面に発生した電荷を速やかに除去できなくなる可能性
がある。しかしながら、フェースプレート7、基板1及
び接合材16と接触するスペーサ10の当接面に低抵抗
膜15を設けることにより、このような問題を回避する
ことができる。
【0070】高抵抗膜12の電位分布を均一化するこ
とができる。すなわち、冷陰極素子18より放出された
電子は、フェースプレート7と基板1の間に形成された
電位分布に従って電子軌道を成す。スペーサ10の近傍
で電子軌道に乱れが生じないようにするためには、高抵
抗膜12の電位分布を全域にわたって制御する必要があ
る。高抵抗膜12をフェースプレート7(メタルバック
6等)及び基板1011(行方向配線9または列方向配
線17等)と直接或いは接合材16を介して接続した場
合、接続部界面の接触抵抗のために、接続状態のむらが
発生し、高抵抗膜12の電位分布が所望の値からずれて
しまう可能性がある。これを避けるために、スペーサ1
0がフェースプレート7及び基板1と当接するスペーサ
端部(当接面及び一部側面部)の全長域に低抵抗膜15
を設け、この低抵抗膜15に所望の電位が印加されるよ
うにすることによって、高抵抗膜12全体の電位を制御
可能となる。
【0071】放出電子の軌道を制御することができ
る。すなわち、冷陰極素子18より放出された電子は、
フェースプレート7と基板1の間に形成された電位分布
に従って電子軌道を成す。スペーサ近傍の冷陰極素子か
ら放出された電子に関しては、スペーサを設置すること
に伴う制約(配線、素子位置の変更等)が生じる場合が
ある。このような場合、歪みやむらの無い画像を形成す
るためには、放出された電子の軌道を制御してフェース
プレート7上の所望の位置に電子を照射する必要があ
る。フェースプレート7及び基板1と当接するスペーサ
端部(当接面及び一部側面部)に低抵抗膜15を設ける
ことにより、スペーサ10近傍の電位分布に所望の特性
を持たせ、放出された電子の軌道を制御することができ
る。
【0072】以上のような機能を有する低抵抗膜15
は、高抵抗膜12に比べ十分に低い抵抗値を選択すれば
よく、本発明においては、金属酸化膜を主成分とする高
抵抗膜12の一部を還元することで低抵抗膜15を形成
するため、低抵抗膜15の構成元素が高抵抗膜12の構
成元素に含まれる構成となっている。低抵抗膜15は必
ずしも金属のみである必要はなく、金属と酸化物の共存
する状態、あるいは酸化物の状態であっても、高抵抗膜
12に比べ十分に低い抵抗値をもっていればよい。
【0073】接合材16は、スペーサ10が行方向配線
9およびメタルバック6と電気的に接続するように、導
電性をもたせる必要がある。すなわち、導電性接着材や
金属粒子や導電性フィラーを添加したフリットガラスが
好適である。
【0074】また、Dox1 〜Doxm およびDoy1 〜D
oyn およびHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路
とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続
用端子である。Dox1 〜Doxm はマルチ電子ビーム源の
行方向配線9と、Doy1 〜Doyn はマルチ電子ビーム源
の列方向配線17と、Hvはフェースプレートのメタル
バック6と電気的に接続している。
【0075】また、気密容器内部を真空に排気するに
は、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポ
ンプとを接続し、気密容器内を1.3×10-5Pa程度
の真空度まで排気する。その後、排気管を封止するが、
気密容器内の真空度を維持するために、封止の直前ある
いは封止後に気密容器内の所定の位置にゲッター膜(不
図示)を形成する。ゲッター膜とは、例えばBaを主成
分とするゲッター材料をヒーターもしくは高周波加熱に
より加熱し蒸着して形成した膜であり、該ゲッター膜の
吸着作用により気密容器内は1.3×10-3Paないし
は1.3×10-5Paの真空度に維持される。
【0076】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dox1 〜Doxm、Doy1 〜Doyn
通じて各冷陰極素子18に電圧を印加すると、各冷陰極
素子から電子が放出される。それと同時にメタルバック
6に容器外端子Hvを通じて数百V〜数kVの高圧を印
加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレー
ト7の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜5をなす
各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
【0077】通常、冷陰極素子18である本例の表面伝
導型放出素子への印加電圧は12〜16V程度、メタル
バック6と冷陰極素子18との距離dは0.1mm〜8
mm程度、メタルバック6と冷陰極素子18間の電圧
0.1〜10kV程度である。次に、前記表示パネルに
用いるマルチ電子ビーム源の製造方法について説明す
る。本発明の画像表示装置に用いるマルチ電子ビーム源
には、表示画面が大きくてしかも安価な表示装置が求め
られる状況のもとでは、冷陰極素子18として表面伝導
型放出素子を特に好ましく用いることができる。
【0078】すなわち、FE型ではエミッタコーンとゲ
ート電極の相対位置や形状が電子放出特性を大きく左右
するため、極めて高精度の製造技術を必要とするが、こ
れは大面積化や製造コストの低減を達成するには不利な
要因となる。また、MIM型では、絶縁層と上電極の膜
厚を薄くてしかも均一にする必要があるが、これも大面
積化や製造コストの低減を達成するには不利な要因とな
る。
【0079】その点、表面伝導型放出素子は、比較的製
造方法が単純なため、大面積化や製造コストの低減が容
易である。また、本発明者らは、表面伝導型放出素子の
中でも、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から
形成したものがとりわけ電子放出特性に優れ、しかも製
造が容易に行えることを見いだしている。したがって、
高輝度で大画面の画像表示装置のマルチ電子ビーム源に
用いるには、最も好適であると言える。
【0080】そこで、実施例の表示パネルにおいては、
電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成した
表面伝導型放出素子を用いている。
【0081】まず好適に用いられる表面伝導型放出素子
について基本的な構成と製法および特性を説明し、その
後で多数の素子を単純マトリクス配線したマルチ電子ビ
ーム源の構造について詳しく述べる。
【0082】[表面伝導型放出素子の好適な素子構成と
製法]電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面型
と垂直型の2種類が挙げられる。
【0083】[平面型の表面伝導型放出素子]まず最初
に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法につ
いて説明する。図8に示すのは、平面型の表面伝導型放
出素子の構成を説明するための平面図(a)および断面
図(b)である。図中、21は基板、22と23は素子
電極、24は導電性膜、25は通電フォーミング処理に
より形成した電子放出部、26は通電活性化処理により
形成した薄膜である。
【0084】基板21としては、たとえば、石英ガラス
や青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミ
ナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上述の
各種基板上にたとえばSiO2 を材料とする絶縁層を積
層した基板などを用いることができる。
【0085】また、基板21上に基板面と平行に対向し
て設けられた素子電極22と23は、導電性を有する材
料によって形成されている。例えば、Ni,Cr,A
u,Mo,W,Pt,Ti,Cu,Pd,Ag等をはじ
めとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいは
In23 −SnO2 をはじめとする金属酸化物、ポリ
シリコンなどの半導体などの中から適宜材料を選択して
用いればよい。素子電極を形成するには、たとえば真空
蒸着などの成膜技術とフォトリソグラフィー、エッチン
グなどのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易
に形成できるが、それ以外の方法(たとえば印刷技術)
を用いて形成しても差し支えない。
【0086】素子電極22と23の形状は、当該電子放
出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的に
は、電極間隙Lは通常は数十nm〜数百μmの範囲から
適当な数値を選んで設計されるが、なかでも表示装置に
応用するために好ましいのは数μmより数十μmの範囲
である。また、素子電極の厚さdについては、通常は数
十nm〜数μmの範囲から適当な数値が選ばれる。
【0087】また、導電性膜24の部分には、微粒子膜
を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素として
多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のこと
を指す。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、個々の
微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子が
互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに重なり
合った構造が観察される。
【0088】微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、数Å〜
数百nmの範囲に含まれるものであるが、なかでも好ま
しいのは1〜20nmの範囲のものである。また、微粒
子膜の膜厚は、以下に述べるような諸条件を考慮して適
宜設定される。すなわち、素子電極22あるいは23と
電気的に良好に接続するのに必要な条件、後述する通電
フォーミングを良好に行うのに必要な条件、微粒子膜自
身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条
件などである。具体的には、数Å〜数百nmの範囲のな
かで設定するが、なかでも好ましいのは1〜50nmの
間である。
【0089】また、微粒子膜を形成するのに用いられう
る材料としては、例えば、Pd,Pt,Ru,Ag,A
u,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,T
a,W,Pbなどをはじめとする金属や、PdO,Sn
2 ,In23 ,PbO,Sb23 などをはじめと
する酸化物や、HfB2 ,ZrB2 ,LaB6 ,CeB
6 ,YB4 ,GdB4 などをはじめとする硼化物や、T
iC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WCなどをは
じめとする炭化物や、TiN,ZrN,HfNなどをは
じめとする窒化物や、Si,Geなどをはじめとする半
導体や、カーボンなどが挙げられ、これらの中から適宣
選択される。
【0090】以上述べたように、導電性膜24を微粒子
膜で形成したが、そのシート抵抗値については、103
〜107 [オーム/sq]の範囲に含まれるよう設定し
た。
【0091】なお、導電性膜24と素子電極22および
23とは、電気的に良好に接続されるのが望ましいた
め、互いの一部が重なりあうような構造をとっている。
その重なり方は、図8の例においては、下から、基板2
1、素子電極22,23、導電性膜24の順序で積層し
たが、場合によっては下から基板1、導電性膜24、素
子電極22,23の順序で積層しても差し支えない。
【0092】また、電子放出部25は、導電性膜24の
一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周囲
の導電性膜24よりも高抵抗な性質を有している。亀裂
は、導電性膜24に対して、後述する通電フォーミング
の処理を行うことにより形成する。亀裂内には、数Åか
ら数百Åの粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、
実際の電子放出部の位置や形状を精密かつ正確に図示す
るのは困難なため、図8においては模式的に示した。
【0093】また、薄膜26は、炭素もしくは炭素化合
物よりなる薄膜で、電子放出部25およびその近傍を被
覆している。薄膜26は、通電フォーミング処理後に、
後述する通電活性化の処理を行うことにより形成する。
【0094】薄膜26は、単結晶グラファイト、多結晶
グラファイト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくは
その混合物であり、膜厚は50nm以下とするのが好ま
しく、30nm以下とするのがさらに好ましい。
【0095】なお、実際の薄膜26の位置や形状を精密
に図示するのは困難なため、図8においては模式的に示
した。また、平面図(a)においては、薄膜26の一部
を除去した素子を図示した。
【0096】以上、好ましい素子の基本構成を述べた
が、後述の実施例においては以下のような素子を用い
た。
【0097】すなわち、基板21には青板ガラスを用
い、素子電極22と23にはNi薄膜を用いた。素子電
極の厚さdは100nm、電極間隔Lは2μmとした。
また、微粒子膜の主要材料としてPdもしくはPdOを
用い、微粒子膜の厚さは約10nm、幅Wは100μm
とした。
【0098】次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子
の製造方法について説明する。図9の(a)〜(d)
は、表面伝導型放出素子の製造工程を説明するための断
面図で、各部材の表記は前記図8と同一である。
【0099】1)まず、図9(a)に示すように、基板
21上に素子電極22および23を形成する。素子電極
の形成にあたっては、あらかじめ基板21を洗剤、純
水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、素子電極の材料を
堆積させる(堆積する方法としては、たとえば、蒸着法
やスパッタ法などの真空成膜技術を用ればよい。)。そ
の後、堆積した電極材料を、フォトリソグラフィー・エ
ッチング技術を用いてパターニングし、(a)に示した
一対の素子電極(22と23)を形成する。
【0100】2)次に、同図(b)に示すように、導電
性膜24を形成する。導電性膜の形成にあたっては、ま
ず前記(a)の基板に有機金属溶液を塗布して乾燥し、
加熱焼成処理して微粒子膜を成膜した後、フォトリソグ
ラフィー・エッチングにより所定の形状にパターニング
する。ここで、有機金属溶液とは、導電性膜24に用い
る微粒子の材料を主要元素とする有機金属化合物の溶液
である。(具体的には、実施例では主要元素としてPd
を用いた。また、実施例では塗布方法として、ディッピ
ング法を用いたが、それ以外のたとえばスピンナー法や
スプレー法を用いてもよい。)
【0101】また、微粒子膜で作られる導電性膜24の
成膜方法としては、上記有機金属溶液の塗布による方法
以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ法、あるいは化
学的気相堆積法などを用いる場合もある。
【0102】3)次に、同図(c)に示すように、フォ
ーミング用電源27から素子電極22と23の間に適宜
の電圧を印加し、通電フォーミング処理を行って、電子
放出部25を形成する。
【0103】通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作
られた導電性膜24に通電を行って、その一部を適宜に
破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うのに
好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜で
作られた導電性膜16のうち電子放出を行うのに好適な
構造に変化した部分(すなわち電子放出部25)におい
ては、導電性膜24に適当な亀裂が形成されている。な
お、電子放出部25が形成される前と比較すると、形成
された後は素子電極22と23の間で計測される電気抵
抗は大幅に増加する。
【0104】通電方法をより詳しく説明するために、図
10に、フォーミング用電源27から印加する適宜の電
圧波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電薄膜16
をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好まし
く、実施例では同図に示したようにパルス幅T1の三角
波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加した。その際
には、三角波パルスの波高値Vpfを、順次昇圧した。
また、電子放出部25の形成状況をモニターするための
モニターパルスPmを適宜の間隔で三角波パルスの間に
挿入し、その際に流れる電流を電流計28で計測した。
【0105】実施例においては、1.3×10-3Pa程
度の真空雰囲気下において、パルス幅T1をlmse
c.、パルス間隔T2を10msec.とし、波高値V
pfを1パルスごとに0.1Vずつ昇圧した。そして、
三角波を5パルス印加するたびに1回の割りで、モニタ
ーパルスPmを挿入した。フォーミング処理に悪影響を
及ぼすことがないように、モニターパルスの電圧Vpm
は0.1Vに設定した。そして、素子電極22と23の
間の電気抵抗が1×106 Ωになった段階、すなわちモ
ニターパルス印加時に電流計28で計測される電流が1
×10-7A以下になった段階で、フォーミング処理にか
かわる通電を終了した。
【0106】なお、上記の方法は、後述の実施例の表面
伝導型放出素子に関する好ましい方法であり、たとえば
微粒子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表
面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応
じて通電の条件を適宣変更するのが望ましい。
【0107】4)次に、図9の(d)に示すように、活
性化用電源29から素子電極22と23の間に適宜の電
圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性の
改善を行う。
【0108】通電活性化処理とは、前記通電フォーミン
グ処理により形成された電子放出部25に適宜の条件で
通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆
積せしめる処理のことである(図においては、炭素もし
くは炭素化合物よりなる堆積物を薄膜26として模式的
に示した。)。なお、通電活性化処理を行うことによ
り、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流
を典型的には100倍以上に増加させることができる。
【0109】具体的には、1.3×10-2〜1.3×1
-3Paの範囲内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期
的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機
化合物を起源とする炭素もしくは炭素化合物を堆積させ
る。薄膜26は、単結晶グラファイト、多結晶グラファ
イト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくはその混合
物であり、膜厚は50nm以下、より好ましくは30n
m以下である。
【0110】通電方法をより詳しく説明するために、図
11の(a)に、活性化用電源29から印加する適宜の
電圧波形の一例を示す。実施例においては、一定電圧の
矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行ったが、
具体的には、矩形波の電圧Vacは14V,パルス幅T
3は1msec.,パルス間隔T4は10msec.と
した。なお、上述の通電条件は、実施例の表面伝導型放
出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型放出素
子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜
変更するのが望ましい。
【0111】図9の(d)に示す30は該表面伝導型放
出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するためのア
ノード電極で、直流高電圧電源31および電流計32が
接続されている(なお、基板21を、表示パネルの中に
組み込んでから活性化処理を行う場合には、表示パネル
の蛍光面をアノード電極30として用いる。)。
【0112】活性化用電源29から電圧を印加する間、
電流計32で放出電流Ieを計測して通電活性化処理の
進行状況をモニターし、活性化用電源29の動作を制御
する。電流計32で計測された放出電流Ieの一例を図
11(b)に示すが、活性化電源29からパルス電圧を
印加しはじめると、時間の経過とともに放出電流Ieは
増加するが、やがて飽和してほとんど増加しなくなる。
このように、放出電流Ieがほぼ飽和した時点で活性化
用電源29からの電圧印加を停止し、通電活性化処理を
終了する。
【0113】なお、上述の通電条件は、実施例の表面伝
導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型
放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件
を適宜変更するのが望ましい。
【0114】以上のようにして、図9(e)に示す平面
型の表面伝導型放出素子が得られる。
【0115】[垂直型の表面伝導型放出素子]次に、電
子放出部もしくはその周辺を微粒子膜から形成した表面
伝導型放出素子のもうひとつの代表的な構成、すなわち
垂直型の表面伝導型放出素子の構成について説明する。
【0116】図12は、垂直型の基本構成を説明するた
めの模式的な断面図であり、図中の33は基板、34と
35は素子電極、39は段差形成部材、36は微粒子膜
を用いた導電性膜、37は通電フォーミング処理により
形成した電子放出部、38は通電活性化処理により形成
した薄膜である。
【0117】垂直型が先に説明した平面型と異なる点
は、素子電極のうちの片方(34)が段差形成部材39
上に設けられており、導電性膜36が段差形成部材39
の側面を被覆している点にある。したがって、前記図8
の平面型における素子電極間隔Lは、垂直型においては
段差形成部材39の段差高Lsとして設定される。な
お、基板33、素子電極34および35、微粒子膜を用
いた導電性膜36については、前記平面型の説明中に列
挙した材料を同様に用いることが可能である。また、段
差形成部材39には、たとえばSiO2 のような電気的
に絶縁性の材料を用いる。
【0118】次に、垂直型の表面伝導型放出素子の製法
について説明する。図13の(a)〜(f)は、製造工
程を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図1
2と同一である。
【0119】1)まず、図13(a)に示すように、基
板33上に素子電極35を形成する。
【0120】2)次に、同図(b)に示すように、段差
形成部材39を形成するための絶縁層を積層する。絶縁
層は、たとえばSiO2 をスパッタ法で積層すればよい
が、真空蒸着法や印刷法などの他の成膜方法を用いても
よい。
【0121】3)次に、同図(c)に示すように、絶縁
層の上に素子電極34を形成する。
【0122】4)次に、同図(d)に示すように、絶縁
層の一部を、たとえばエッチング法を用いて除去し、素
子電極35を露出させる。
【0123】5)次に、同図(e)に示すように、微粒
子膜を用いた導電性膜36を形成する。形成するには、
前記平面型の場合と同じく、たとえば塗布法などの成膜
技術を用いればよい。
【0124】6)次に、前記平面型の場合と同じく、通
電フォーミング処理を行い、電子放出部37を形成する
(図9(c)を用いて説明した平面型の通電フォーミン
グ処理と同様の処理を行えばよい。)。
【0125】7)次に、前記平面型の場合と同じく、通
電活性化処理を行い、電子放出部近傍に炭素もしくは炭
素化合物を堆積させる(図9(d)を用いて説明した平
面型の通電活性化処理と同様の処理を行えばよい。)。
【0126】以上のようにして、図13(f)に示す垂
直型の表面伝導型放出素子が得られる。
【0127】[表示装置に用いた表面伝導型放出素子の
特性]以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子につ
いて素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用い
た素子の特性について述べる。
【0128】図14に、表示装置に用いた素子の、(放
出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素
子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例
を示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著
しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、
これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータ
を変更することにより変化するものであるため、2本の
グラフは各々任意単位で図示した。
【0129】表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに
関して以下に述べる3つの特性を有している。
【0130】第一に、ある電圧(これを闘値電圧Vth
と呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に
放出電流Ieが増加するが、一方、闘値電圧Vth未満
の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。すな
わち、放出電流Ieに関して、明確な闘値電圧Vthを
持った非線形素子である。
【0131】第二に、放出電流Ieは素子に印加する電
圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流I
eの大きさを制御できる。
【0132】第三に、素子に印加する電圧Vfに対して
素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電
圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出され
る電子の電荷量を制御できる。
【0133】以上のような特性を有するため、表面伝導
型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。た
とえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表
示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を
順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、
駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて闘値電圧Vt
h以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には闘値
電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次
切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表
示を行うことが可能である。
【0134】また、第二の特性かまたは第三の特性を利
用することにより、発光輝度を制御することができるた
め、階調表示を行うことが可能である。
【0135】[駆動回路構成および駆動方法]図15
は、NTSC方式のテレビ信号に基づいてテレビジョン
表示を行うための駆動回路の概略構成をプロック図で示
したものである。同図中、表示パネル101は前述した
表示パネルに相当するもので、前述した様に製造され、
動作する。また、走査回路102は表示ラインを走査
し、制御回路103は走査回路へ入力する信号等を生成
する。シフトレジスタ104は1ライン毎のデータをシ
フトし、ラインメモリ105は、シフトレジスタ104
からの1ライン分のデータを変調信号発生器107に入
力する。同期信号分離回路106はNTSC信号から同
期信号を分離する。
【0136】以下、図15の装置各部の機能を詳しく説
明する。
【0137】まず表示パネル101は、端子Dox1 ない
しDoxm および端子Doy1 ないしDoyn 、および高圧端
子Hvを介して外部の電気回路と接続されている。この
うち、端子Dox1 ないしDoxm には、表示パネル101
内に設けられているマルチ電子ビーム源、すなわちm行
n列の行列状にマトリクス配線された冷陰極素子を1行
(n素子)ずつ順次駆動していくための走査信号が印加
される。一方、端子Doy1 ないしDoyn には、前記走査
信号により選択された1行分のn個の各素子の出力電子
ビームを制御するための変調信号が印加される。また、
高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、たとえば5
[kV]の直流電圧が供給されるが、これはマルチ電子
ビーム源より出力される電子ビームに蛍光体を励起する
のに充分なエネルギーを付与するための加速電圧であ
る。
【0138】次に、走査回路102について説明する。
同回路は、内部にm個のスイッチング素子(図中、S1
ないしSm で模式的に示されている)を備えるもので、
各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もし
くは0[V](グランドレベル)のいすれか一方を選択
し、表示パネル101の端子Dox1 ないしDoxm と電気
的に接続するものである。S1 ないしSm の各スイッチ
ング素子は、制御回路103が出力する制御信号Tscan
に基づいて動作するものだが、実際にはたとえばFET
のようなスイッチング素子を組合わせることにより容易
に構成することが可能である。なお、前記直流電圧源V
xは、図14に例示した電子放出素子の特性に基づき走
査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出し
きい値電圧Vth電圧以下となるよう、一定電圧を出力
するよう設定されている。
【0139】また、制御回路103は、外部より入力す
る画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各
部の動作を整合させる働きをもつものである。次に説明
する同期信号分離回路106より送られる同期信号T
syncに基づいて、各部に対してTscanおよびTsft およ
びTmry の各制御信号を発生する。
【0140】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離するための回路で、良く知られて
いるように周波数分離(フィルタ)回路を用いれば容易
に構成できるものである。同期信号分離回路106によ
り分離された同期信号は、良く知られるように垂直同期
信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜
上、Tsync信号として図示した。一方、前記テレビ信号
から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信
号と表すが、同信号はシフトレジスタ104に入力され
る。
【0141】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsft に基づいて動
作する。すなわち、制御信号Tsft は、シフトレジスタ
104のシフトクロックであると言い換えることもでき
る。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電
子放出素子n素子分の駆動データに相当する)のデータ
は、Id1ないしIdnのn個の信号として前記シフトレジ
スタ104より出力される。
【0142】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmry にした
がって適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶され
た内容は、I’d1ないしI’dnとして出力され、変調信
号発生器107に入力される。
【0143】変調信号発生器107は、前記画像データ
I’d1ないしI’dnの各々に応じて、電子放出素子の各
々を適切に駆動変調するための信号源で、その出力信号
は、端子Doy1 ないしDoyn を通じて表示パネル101
内の電子放出素子に印加される。
【0144】図14を用いて説明したように、本発明に
適用される表面伝導型放出素子は放出電流Ieに対して
以下の基本特性を有している。すなわち、電子放出には
明確な闘値電圧Vth(後述する実施例の表面伝導型放
出素子では8[V])があり、闘値Vth以上の電圧を
印加された時のみ電子放出が生じる。また、電子放出闘
値Vth以上の電圧に対しては、図14のグラフのよう
に電圧の変化に応じて放出電流Ieも変化する。このこ
とから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、たと
えば電子放出闘値Vth以下の電圧を印加しても電子放
出は生じないが、電子放出闘値Vth以上の電圧を印加
する場合には表面伝導型放出素子から電子ビームが出力
される。その際、パルスの波高値Vmを変化させること
により出力電子ビームの強度を制御することが可能であ
る。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力
される電子ビームの電荷の総重を制御することが可能で
ある。
【0145】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波
高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いること
ができる。また、パルス幅変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧
パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パ
ルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用
いることができる。
【0146】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。すなわち、画像信号のシリアル/パラ
レル変換や記憶が所定の速度で行われればよいからであ
る。
【0147】デジタル信号式を用いる場合には、同時信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには同期信号分離回路106の
出力部にA/D変換器を設ければよい。これに関連して
ラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナロ
グ信号かにより、変調信号発生器に用いられる回路が若
干異なったものとなる。すなわち、デジタル信号を用い
た電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、例
えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路など
を付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器
107には、例えば高速の発振器および発振器の出力す
る波数を計数する計数器(カウンタ)および計数器の出
力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレ
ータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、比較
器の出力するパルス幅変調された変調信号を電子放出素
子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加す
ることもできる。
【0148】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてシフトレベ
ル回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を
採用でき、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧まで電
圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0149】このような構成をとりうる本発明を適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dox1 〜Doxm 、Doy1 〜Doyn を介して電圧を
印加することにより電子放出が生じる。高圧端子Hvを
介してメタルバック6あるいは透明電極(不図示)に高
圧を印加し、電子ビームを加速する。加速された電子
は、蛍光膜5に衝突し、発光が生じて画像が形成され
る。
【0150】ここで述べた画像表示装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の思
想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号につい
てはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限るも
のではなく、PAL、SECAM方式などの他、これら
より多数の走査線からなるTV信号(MUSE方式をは
じめとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0151】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述
する。
【0152】(実施例1)本実施例のスペーサの製造方
法を図1を参照して説明する。
【0153】絶縁性部材11として石英ガラスを用い
(図1(a))、TiのターゲットをO2 を1.3×1
-1Pa中で高周波電源でスパッタすることにより、絶
縁性部材11の表面にTi酸化膜12を形成した(図1
(b))。石英ガラスのサイズは4mm×40mm×
0.2mmで、その両面(4mm×40mmの面)およ
び端面(40mm×0.2mmの面)にTi酸化膜12
を形成した。得られた膜の比抵抗は3×107 Ωcm
で、膜厚500nmで、スペーサ抵抗Rs=6×1010
Ωであった。
【0154】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し、これを真空中に入れて、Arイオンを両端部の裏表
に照射した(図1(c))。Ar圧力5×l0-4Pa、
加速エネルギー5keVで3分間照射した。非露出部と
露出部をXPSを用い、Ti2p3/2 のスペクトルで化
学状態を調べたところ(分析領域100μmφ)、非露
出部が主にTiO2 であるのに対し、露出部は金属Ti
の他にTiO2 よりも低結合エネルギーのスペクトルが
観測され(TiO2 よりも酸化度が低いことを示す。T
iO,Ti23 、Ti2 Oなど)、Arイオン照射に
よって還元されたことが確かめられた(図1(d))。
【0155】なお、ここではマスクを用いてパターニン
グしたが、スペーサをずらして重ねて一番上のスペーサ
にのみマスク13を施し、露出部にArイオン照射して
もよい(図2)。
【0156】(実施例2)本実施例のスペーサの製造方
法を図1を参照して説明する。
【0157】絶縁性部材11として石英ガラスを用い
(図1(a))、CuのターゲットをO2 を1.3×1
-1Paで高周波電源でスパッタすることにより、絶縁
性部材11の表面にCu酸化膜12を形成した(図1
(b))。石英ガラスのサイズは4mm×40mm×
0.2mmで、その両面(4mm×40mmの面)およ
び端面(40mm×0.2mmの面)にCu酸化膜を形
成した。得られた膜の比抵抗は〜1×103 Ωcmで、
膜厚50nmで、Rs=2×107 Ωであった。
【0158】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し、これを真空中に入れて、Arイオンを両端部の裏表
に照射した(図1(c))。Ar圧力5×l0-4Pa、
加速エネルギー3keVで3分間照射した。非露出部と
露出部をXPSを用い、Cu2p3/2 のスペクトルで化
学状態を調べたところ(分析領域100μmφ)、非露
出部が主にCuOであるのに対し、露出部は金属Cuの
他にCu2 Oが認められ、Arイオン照射によって還元
されたことが確かめられた。
【0159】なお、ここではマスクを用いてパターニン
グしたが、スペーサをずらして重ねて一番上のスペーサ
にのみマスク13を施し、露出部にArイオン照射して
もよいのは実施例1と同様である。
【0160】(実施例3)本実施例のスペーサの製造方
法を図1を参照して説明する。
【0161】絶縁性部材11として石英ガラスを用い
(図1(a))、TaのターゲットをO2 を1.3×1
-1Pa中で高周波電源でスパッタすることにより、絶
縁性部材11の表面にTa酸化膜を形成した(図1
(b))。石英ガラスのサイズは4mm×40mm×
0.2mmで、その両面(4mm×40mmの面)およ
び端面(40mm×0.2mmの面)にTa酸化膜を形
成した。得られた膜の比抵抗は〜1×105 Ωcmで、
膜厚50nmで、Rs=1×109 Ωであった。
【0162】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し、これを真空中に入れて、Arイオンを両端部の裏表
に照射した(図1(c))。Ar圧力5×l0-4Pa、
加速エネルギー3keVで3分間照射した。非露出部と
露出部をXPSを用い、Ta4f7/2 のスペクトルで化
学状態を調べたところ(分析領域100μmφ)、非露
出部が主にTa25 であるのに対し、露出部は金属T
aとTa25 よりも低結合エネルギーのスペクトルが
観測され(Ta25 よりも酸化度が低いことを示
す)、Arイオン照射によって還元されたことが確かめ
られた。
【0163】なお、ここではマスクを用いてパターニン
グしたが、スペーサをずらして重ねて一番上のスペーサ
にのみマスク13を施し、露出部にArイオン照射して
もよいのは実施例1と同様である(図2)。
【0164】(実施例4)実施例3と同様に石英ガラス
11の表面にTa酸化膜12を形成した(図1
(b))。
【0165】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し(図1(c)参照)、これを真空中に入れて、電子線
を両端部の裏表に照射した。真空度l×10-5Pa、加
速エネルギー30keVで3分間照射した。非露出部と
露出部をXPSを用い、Ta4f7/2 のスペクトルで化
学状態を調べたところ(分析領域100μmφ)、非露
出部が主にTa25 であるのに対し、露出部は金属T
aとTa25 よりも低結合エネルギーのスペクトルが
観測され(Ta25 よりも酸化度が低いことを示
す)、電子線照射によって還元されたことが確かめられ
た。
【0166】なお、ここではマスクを用いてパターニン
グしたが、スペーサをずらして重ねて一番上のスペーサ
にのみマスク13を施し、露出部にArイオン照射して
もよいのは実施例1と同様である(図2)。さらに、電
子線ビームを走査することで、マスクレスでパターニン
グしてもよい。
【0167】(実施例5)実施例2と同様に石英ガラス
11の表面にCu酸化膜12を形成した(図1
(b))。
【0168】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し(図1(c)参照)、さらに側面(4mm×0.2m
mの面のうち、両端0.2mmを除く3.6mm×0.
2の面)に厚み0.2mmのマスクを接触させ、低抵抗
膜15を形成したい部分以外を露出しないようにした
(不図示)。これを加熱機構を持つ試料台が設置された
密閉容器に入れた。この容器をロータリーポンプで排気
した後、一酸化炭素ガスを大気圧まで導入し、試料台を
250℃に加熱した。約3分後にスペーサを大気中に取
り出し、非露出部と露出部をXPSで調べたところ(分
析領域100μmφ)、非露出部が主にCuOであるの
に対し、露出部は主に金属Cuであることが認められ、
該処理によってほぼ完全にCuO膜が金属Cuに還元さ
れたことが確かめられた。
【0169】(実施例6)本実施例のスペーサの製造方
法を図1を参照して説明する。
【0170】絶縁性部材11として石英ガラスを用い
(図1(a))、NiのターゲットをO2 を1.3×1
-1Pa中で高周波電源でスパッタすることにより、絶
縁性部材11の表面にNi酸化膜12を形成した(図1
(b))。石英ガラスのサイズは4mm×40mm×
0.2mmで、その両面(4mm×40mmの面)およ
び端面(40mm×0.2mmの面)にNi酸化膜を形
成した。これを酸素雰囲気中で熱処理し、Rs=〜1×
109 Ωとなるように調整した。Ni酸化膜12の膜厚
は50nmである。
【0171】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し(図1(c)参照)、さらに側面(4mm×0.2m
mの面のうち、両端0.2mmを除く3.6mm×0.
2の面)に厚み0.2mmのマスクを接触させ、低抵抗
膜15を形成したい部分以外を露出しないようにした
(不図示)。これを加熱機構を持つ試料台が設置された
密閉容器に入れた。この容器をロータリーポンプで排気
した後、N2 /H2 =98:2の混合ガスを大気圧まで
導入し、試料台を80℃に加熱した。約10分後にスペ
ーサを大気中に取り出し、非露出部と露出部をXPSで
調べたところ(分析領域100μmφ)、非露出部が主
にNiOであるのに対し、露出部は主に金属Niである
ことが認められ、該処理によってNiO膜が還元された
ことが確かめられた。
【0172】(実施例7)実施例6と同様に石英ガラス
11の表面にNi酸化膜12を形成した(図1
(b))。
【0173】次に、サイズ3.6mm×50mm×0.
2mmのアルミナ製のマスク13をスペーサの両端が
0.2mmづつマスクから露出するようにその両面に配
し(図1(c))、さらに側面(4mm×0.2mmの
面のうち、両端0.2mmを除く3.6mm×0.2の
面)を厚み0.2mmのマスクを接触させ、低抵抗膜1
5を形成したい部分以外を露出しないようにした(不図
示)。これを加熱機構を持つ試料台が設置された密閉容
器に入れた。この容器をロータリーポンプで排気した
後、アンモニアガスを大気圧まで導入し、試料台を25
0℃に加熱した。約5分後にスペーサを大気中に取り出
し、非露出部と露出部をXPSで調べたところ(分析領
域100μmφ)、非露出部が主にNiOであるのに対
し、露出部は主に金属Niであることが認められ、該処
理によってNiO膜が還元されたことが確かめられた。
【0174】(実施例8)本実施例は図3及び図4に示
したような画像形成装置を作製した例であり、マルチ電
子ビーム源として、前述した電極間の導電性微粒子膜に
電子放出部を有するタイプのN×M個(N=3072、
M=1024)の表面伝導型放出素子を、M本の行方向
配線とN本の列方向配線とによりマトリクス配線(図5
及び図6参照)したマルチ電子ビーム源を用いた。
【0175】まず、スペーサの製造方法を説明する。長
さ20mm、幅5mm、厚み0.2mmのリアプレート
と同質のソーダライムガラス表面に窒化シリコン膜を
0.5μmスパッタ法により形成し、これを絶縁性部材
11とした。
【0176】この絶縁性部材11の表面に、帯電防止膜
(高抵抗膜12)として実施例3と同様にTa酸化膜を
形成した。このTa酸化膜の厚みは50nmである。
【0177】このスペーサ部材に対して、フェースプレ
ート及びリアプレー卜との接続部に接続部と平行に20
0μmの帯状にArイオンを照射し、Ta酸化膜を還元
して金属TaとTa2O5よりも酸化度の低い酸化物の
混合物からなる低抵抗膜15を形成した。
【0178】次に、画像形成装置の製造方法を説明す
る。
【0179】まず、予め行方向配線電極9、列方向配線
電極17、配線電極間絶縁層(不図示)、および表面伝
導型放出素子の素子電極と導電性膜を形成した電子源基
板1を、リアプレート2に固定した。次に、前記のよう
にして作製したスペーサ10を基板1の行方向配線電極
9上に等間隔で、行方向配線電極9と平行に固定した。
その後、基板1の5mm上方に、内面に蛍光膜5とメタ
ルバック6が付設されたフェースプレート7を側壁3を
介し配置し、リアプレート2、フェースプレート7、側
壁3およびスペーサ10の各接合部を固定した。なお、
基板1とリアプレート2の接合部、リアプレート2と側
壁3の接合部、およびフェースプレート7と側壁3の接
合部は、フリットガラス(不図示)を塗布し、窒素雰囲
気中で400℃〜500℃で10分以上焼成することで
封着した。
【0180】また、スペーサ10は、基板1側では行方
向配線電極9(線幅0.3mm)上に、フェースプレー
ト7側ではメタルバック6面上に、導電性のフィラーあ
るいは金属等の導電材を混合した導電性フリットガラス
(不図示)を介して配置し、上記気密容器の封着と同時
に、大気中で400℃〜500℃で10分以上焼成する
ことで、接着しかつ電気的な接続も行った。これによ
り、スペーサ表面の帯電防止膜(高抵抗膜12)は、低
抵抗膜15を介してX方向配線電極9あるいはフェース
プレート7のメタルバック6と電気的に接続してある。
【0181】なお、本実施例においては、蛍光膜5は、
図7に示すように、各色蛍光体5aが列方向(Y方向)
に延びるストライプ形状を採用し、黒色の導電体5bは
各色蛍光体(R、G、B)5a間だけでなく、Y方向の
各画素間をも分離するようにX方向に平行に配置された
蛍光膜が用いられ、スペーサ10は、行方向(X方向)
に平行な黒色の導電体5b領域(線幅0.3mm)内に
メタルバック6を介して配置された。なお、前述の封着
を行う際には、各色蛍光体5aと基板1上に配置された
各素子18とを対応させなくてはいけないため、リアプ
レート2、フェースプレート7およびスペーサ10は十
分な位置合わせを行った。
【0182】以上のようにして完成した気密容器内を排
気管(不図示)を通じ真空ポンプにて排気し、十分な真
空度に達した後、容器外端子Dox1 〜Doxm 、Doy1
oyn を通じ、行方向配線電極9および列方向配線電極
17を介して各素子18に給電して前述の通電フォーミ
ング処理と通電活性化処理を行うことによりマルチ電子
ビーム源を製造した。
【0183】次に、1.3×10-4Pa程度の真空度
で、不図示の排気管をガスバーナーで熱することで溶着
し外囲器(気密容器)の封止を行った。最後に、封止後
の真空度を維持するために、ゲッター処理を行った。
【0184】以上のように完成した、図3および図4に
示されるような表示パネルを用いた画像表示装置におい
て、各冷陰極素子(表面伝導型放出素子)18には、容
器外端子Dox1 〜Doxm 、Doy1 〜Doyn を通じ、走査
信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ
印加することにより電子を放出させ、メタルバック6に
は、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放
出電子ビームを加速し、蛍光膜5に電子を衝突させ、各
色蛍光体5a(図24のR、G、B)を励起・発光させ
ることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加
電圧Vaは3〜10kV、各配線9,17間への印加電
圧Vfは14Vとした。
【0185】このとき、スペーサ10に近い位置にある
冷陰極素子18からの放出電子による発光スポットも含
め、二次元状に等間隔の発光スポット列が形成され、鮮
明で色再現性のよいカラー画像表示ができた。このこと
は、スペーサ10を設置しても電子軌道に影響を及ぼす
ような電界の乱れは発生しなかったことを示している。
【0186】
【発明の効果】導電性スペーサの高抵抗膜の一部を還元
することで低抵抗膜を作製するために、成膜工程が1回
で済むなどの製造プロセスの簡略化、製造コストの削減
が図られる。また、高抵抗膜と低抵抗膜が連続膜となる
ため、従来あった低抵抗膜の膜剥れがないため電気的接
続も良好な状態が長期にわたって保たれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスペーサの製造方法の一例を説明する
ための図である。
【図2】本発明のスペーサの製造方法の別の例を説明す
るための図である。
【図3】本発明の電子線装置の一例である表示パネルの
部分断面図である。
【図4】本発明の電子線装置の一例である表示パネルの
一部を切り欠いて示した斜視図である。
【図5】実施例で用いたマルチ電子ビーム源の基板の平
面図である。
【図6】実施例で用いたマルチ電子ビーム源の基板の一
部断面図である。
【図7】表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を
例示した平面図である。
【図8】実施例で用いた平面型の表面伝導型放出素子の
平面図(a)及び断面図(b)である。
【図9】平面型の表面伝導型放出素子の製造工程を示す
断面図である。
【図10】通電フォーミング処理の際の印加電圧波形を
示す図である。
【図11】通電活性化処理の際の印加電圧波形(a)及
び放出電流Ieの変化(b)を示す図である。
【図12】垂直型の表面伝導型放出素子の断面図であ
る。
【図13】垂直型の表面伝導型放出素子の製造工程を示
す断面図である。
【図14】実施例で用いた表面伝導型放出素子の典型的
な特性を示す図である。
【図15】本発明の実施例である画像表示装置の駆動回
路の概略構成を示すブロック図である。
【図16】従来知られた表面伝導型放出素子の一例を示
す図である。
【図17】従来知られたFE型素子の一例を示す図であ
る。
【図18】従来知られたMIM型素子の一例を示す図で
ある。
【図19】冷陰極素子を用いた画像表示装置の表示パネ
ルの一部を切り欠いて示した斜視図である。
【符号の説明】
1 電子源基板 2 リアプレート 3 側壁 4 ガラス基板 5 蛍光膜 5a 蛍光体 5b 黒色導電材 6 メタルバック 7 フェースプレート 9 行方向配線電極 10 スペーサ 11 絶縁性部材 12 高抵抗膜(帯電防止膜) 13 マスク 14 イオン照射 15 低抵抗膜 16 接合部材 17 列方向配線電極 18 冷陰極素子(表面伝導型放出素子) 21 基板 22,23 素子電極 24 導電性膜 25 電子放出部 26 通電活性化処理によって堆積した薄膜 27 フォーミング用電源 28 電流計 29 活性化用電源 30 電子放出素子から放出される放出電流Ieを捕捉
するためのアノード電極 31 直流高電圧電源 32 電流計 33 基板 34,35 素子電極 36 導電性膜 37 電子放出部 38 通電活性化処理によって堆積した薄膜 39 段差形成部材 101 表示パネル 102 走査回路 103 制御回路 104 シフトレジスタ 105 ラインメモリ 106 同期信号分離回路 107 変調信号発生器 1001 基板 1002 導電性膜 1003 電子放出部 1004 基板 1005 エミッタ配線 1006 エミッタコーン 1007 絶縁層 1008 ゲート電極 1009 基板 1010 下電極 1011 絶縁層 1012 上電極

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の冷陰極素子を有する電子源基板と
    前記冷陰極素子より放出される電子を照射するターゲッ
    トとの間に配置されるスペーサであって、絶縁性部材の
    表面に金属酸化膜を主成分とする高抵抗膜を有し、且つ
    前記電子源基板及び前記ターゲットに当接させる部分に
    は、前記高抵抗膜が還元された低抵抗膜を有しているこ
    とを特徴とするスペーサ。
  2. 【請求項2】 複数の冷陰極素子を有する電子源基板と
    前記冷陰極素子より放出される電子を照射するターゲッ
    トとの間に配置されるスペーサの製造方法であって、絶
    縁性部材の表面に金属酸化膜を主成分とする高抵抗膜を
    形成した後、該高抵抗膜のうち前記電子源基板及び前記
    ターゲットに当接させる部分を還元することで低抵抗化
    させることを特徴とするスペーサの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記高抵抗膜の還元方法が、イオン照射
    によってなされることを特徴とする請求項2に記載のス
    ペーサの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記高抵抗膜の還元方法が、電子線照射
    によってなされることを特徴とする請求項2に記載のス
    ペーサの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記高抵抗膜の還元方法が、還元性ガス
    によってなされることを特徴とする請求項2に記載のス
    ペーサの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記高抵抗膜の還元方法が、還元性ガス
    と加熱とによってなされることを特徴とする請求項2に
    記載のスペーサの製造方法。
  7. 【請求項7】 複数の冷陰極素子を有する電子源基板と
    前記冷陰極素子より放出される電子を照射するターゲッ
    トとをスペーサを介して対向させた構造を有する電子線
    装置において、該スペーサが、絶縁性部材の表面に金属
    酸化膜を主成分とする高抵抗膜を有し、且つ前記電子源
    基板及び前記ターゲットとの当接面に前記高抵抗膜が還
    元された低抵抗膜を有していることを特徴とする電子線
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7537503B2 (en) * 2003-06-06 2009-05-26 Canon Kabushiki Kaisha Electron beam apparatus, and method for manufacturing a spacer used for the same
CN100565758C (zh) * 2007-03-15 2009-12-02 东元电机股份有限公司 场发射显示组件支撑结构的接合方法

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