研究領域

フォトトリコグラム試験を用いた育毛剤のヒトでの評価

　培養細胞での評価で育毛効果が得られた処方については、安全性を確認した後、最終段階としてヒトでの育毛効果の確認をすることが重要です。
　これまで、育毛剤の効果判定方法としては抜け毛の本数を数えたり、抜いて毛髪の太さを測定したり、写真で評価するような方法が取られてきていました。しかし、いずれも非侵襲的に行うことが困難であること、被験者を長時間拘束する必要があること、客観的な評価が難しいこと、といった諸問題を抱えていました。これに対し、フォトトリコグラム法は、被験者に対する身体的・精神的負担が他の方法に比べて少なく、頭皮の同一部位を経時的に観察することが可能であるため評価の客観性も高い非侵襲的な手法です。私たちは、育毛効果についてフォトトリコグラム法を用いた試験を行っています。

1.　はじめに

　培養細胞での評価において育毛効果が得られた処方については、安全性を確認した後、最終段階としてヒトでの育毛効果の確認をすることが重要です。
　従来、育毛剤の判定方法としては抜け毛測定、キャピラリー法、抜毛トリコグラム法等の方法が考案されてきました。しかし、いずれも非侵襲的に行うこと（生えている毛を抜きます）が困難であること、被験者を長時間拘束する必要があること、客観的な評価が難しいこと、といった諸問題を抱えていました。これに対し、フォトトリコグラム法は、被験者に対する身体的・精神的負担が他の方法に比べて少なく、頭皮の同一部位を経時的に観察することが可能であるため評価の客観性も高い非侵襲的な手法です。

2.　試験方法

　緒方の分類（図1参照）において、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型の初期または中期と医師により診断された男性型脱毛症47例（30～54歳、平均40。6歳）を対象に育毛剤の効果を判定します。使用期間は6ヶ月、1日1回、使用量は2mLとし、使用前と3ヶ月および6ヶ月使用後の頭皮と毛髪の状態を、医師の肉眼による評価、頭部全体の写真による判定、ならびに生え際、頭頂部におけるフォトトリコグラム法を用いて比較しました。

図１　緒方の分類

　フォトトリコグラム法は、被験者の髪を生え際や頭頂部の直径1cmほど剃って写真撮影を行い、3日後に同じ位置の写真をパソコン上で画像解析し、髪の伸び・太さ・密度を測定するものです。試験開始前、育毛剤を塗布して6ヶ月後に同じ位置の毛刈りと写真撮影を行い、単位面積あたりの毛髪の本数、1本1本の伸長速度、太さを測定します。それらの数値から休止期毛の割合、硬毛や軟毛の割合を算出し、育毛剤の効果を判定します。
　実際にショウキョウ、ニンジン、センブリ、ボタンピを配合した育毛剤を６ヶ月間塗布した時の毛髪の写真を図2に示します。

育毛剤使用前の毛根 毛刈り3日後		育毛剤使用6ヶ月後の毛根 毛刈り3日後

　使用前の軟毛だった毛根（青丸）や休止期毛で3日たっても毛が伸びてこなかった毛根（赤丸）に、生薬育毛剤の使用６ヶ月後には太い複数の毛髪が生えていることがわかります。
　このように同じ毛根を比較することでより正確に育毛剤の効果を確認することができます。
　上記画像は、被験者の著効例を示していますが、ショウキョウ、ニンジン、センブリ、ボタンピを配合した育毛剤を６ヶ月間使用した被験者全員の画像解析の結果、髪の伸び・太さ・密度（本数）ともに使用前と比較して有意に高まっていることが確認できました。

フォトトリコグラム試験関連のニュースリリース
モウコタンポポ（蒲公英）根エキス配合育毛剤 の有効性を実証：ニュースリリース2009年
ヒトフォトトリコグラム試験による生薬育毛剤の評価 —細根付（さいこんつき）ニンジンおよび晩生（おくて）センブリ配合生薬育毛剤の効果と継続的な使用について—：ニュースリリース2012年
ヒトフォトトリコグラム試験による生薬育毛剤の評価 － 桑根皮エキス配合育毛剤について－：ニュースリリース2014年
生薬育毛剤のマイクロエマルション化による育毛成分の浸透性向上と効果の増強：ニュースリリース2018年