品川区は1月31日、2024年度当初予算案を発表した。
会計予算の区分とその2023年度比は、一般会計(歳入)が過去最大の2,036億5,600万円で2.4%増、国民健康保険事業会計が365億9,188万6,000円で1%増、後期高齢者医療特別会計が107億9,335万9,000円で6.3%増、介護保険特別会計が282億3,867万2,000円で1.7%増。災害復旧特別会計は15億円で増減なし。
品川区は今年初めて、品川区民の幸福に財源を振り分ける「ウェルビーイング予算」を編成した。ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされている状態にあることを指す概念。ニュージーランドでは2019年、世界初の「ウェルビーイング予算」が組まれ、子どもの幸福向上、メンタルヘルス、経済の転換などを柱としている。
森澤恭子区長は「人々の抱える不安を少しでも取り除き、未来に希望が持てる政策を打ち出していくことこそが行政の責任であると考えている。誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川の実現に向けて、ウェルビーイングの観点から新時代の品川を牽引していくための予算を組んだ」と話す。
「ウェルビーイング予算」は昨年8月に実施した全区民アンケートから区民のニーズや幸福実感度を分析し、「安心・安全を守る」「社会全体で子どもと子育てを支える」「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」の4つの柱に基づいて編成する。
「安心・安全を守る」施策は、災害時の備えとして全区民への携帯トイレ無償配布、希望する共同住宅への防災チェアの無償配布などを盛り込む。防災チェアは非常用トイレや飲料水などを収納した椅子で、マンションのエレベーターに閉じ込められた際などに利用する。木造住宅等の耐震診断費用の全額助成について、森澤区長は「マンションが多い都心部ならでは、そして木造住宅が多い品川ならではの防災対策を進めていく」と説明する。女性視点での備蓄品の配備・避難所機能の見直しや、ペット同行避難用の資機材の整備も行う。
「社会全体で子どもと子育てを支える」施策は、区立小学校・中学校の授業で使う書道用具や絵の具、副読本といった補助教材にかかる費用を所得制限なしで無償化する。「これは都内初の取り組み。子育てや教育で選ばれる品川ならではの施策を充実させていく」と森澤区長。未就園児の定期預かり事業や産後ケア事業のメニュー拡充ほか、HPVワクチン予防接種の男性への助成、不妊治療への区独自の助成なども開始する。
「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」施策は、介護人材の確保・処遇改善を図る目的から、区独自の支援制度で手当を助成する。1人暮らしの高齢者や障がい者の救急安否確認サービスの提供、障がい児のいる家庭への補装具・日常生活具の購入費助成、高齢者の補聴器購入費助成は、いずれも所得制限を設けない。メタバースを活用した不登校支援や、ヤングケアラーへの支援も実施する。
「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」施策は、ウェルビーイング・SDGsに資する地域課題の解決に向けた事業へ助成する「ウェルビーイング・SDGs推進ファンド」を創設する。脱炭素化に向けた新たな地域交通サービスの実証実験なども実施する。区の魅力発信として、2025年に開催予定の区民マラソン「しながわシティラン」や、ホッケータウン品川としてのホッケーを通じたまちづくり、舟運の定期運航、地域資源を生かした体験型のふるさと納税返礼品の開発なども行う。
このほか、区の職員からのアイデアを生かす職員提案制度も創設。職員自らが区長にプレゼンテーションし、液体ミルクの自動販売機やおむつ処理機の区有施設への設置、オンライン不妊相談の開始、EV庁有車シェアリング、AIチャットポットの設置などによる区役所窓口サービスの向上など、9事業が新たに予算化された。