WO2016079873A1 - 雌スナップボタン - Google Patents

Abstract

　スナップボタンは、雌スナップ本体（１１）と、雌スナップ本体（１１）に組み込まれるソケットリング（２０、６０）とを備える。雌スナップ本体（１１）は、底部（１２）と、前記底部（１２）の周縁から立ち上がる側壁（１８）とを含み、前記側壁（１８）に前記ソケットリング（２０、６０）を保持するための保持部（１４）を有する。前記ソケットリング（２０、６０）は、保持部（１４）に保持される半径方向外側のフランジ部（２１、６１）と、前記フランジ部（２１、６１）の半径方向内側の係合部（２２、６２）とを含む。前記係合部（２２、６２）は、前記ソケットリング（２０、６０）の軸方向において前記フランジ部（２１、６１）よりも前記雌スナップ本体（１１）の前記底部（１２）側に突出する。前記ソケットリング（２０、６０）の内径は、係合部（２２、６２）の軸方向における中間点から、係合部（２２、６２）の軸方向における一方側端及び他方側端に向けて、漸次大きくなり得る。前記ソケットリング（２０、６０）の係合部（２２、６２）には、半径方向に沿うスリット（２３、６３）が周方向に複数形成され得る。

Description

雌スナップボタン

　本発明は、雄スナップボタンと着脱される雌スナップボタンに関する。

　雌スナップボタンと雄スナップボタンを着脱するスナップボタンは衣類、鞄類等に広く使用されている。雄スナップボタンは、一般に、先端部がわずかに大径である突起部を有する。この突起部を雌スナップボタンの突起受け入れ部に対し係合及び脱係合させることにより、雌スナップボタンと雄スナップボタンが連結及び連結解除される。雌スナップボタンの一タイプとして、実公昭６３－９０号公報の第６図に示されるように、金属製の雌スナップ本体に別部材である環状のばねを組み込んだものが知られている。このようなばねは、一般に、金属製又は樹脂製の断面円形のワイヤー部材を切断、湾曲して形成される。雌スナップ本体には、上記ばねを保持するばね保持部が設けられる。雄スナップボタンを雌スナップボタンに連結する際、雄スナップボタンの突起部が雌スナップボタンのばねに通される。この時、突起部のわずかに大径の先端部（大径部）がばねと係合し、ばねを弾性的に半径方向外側に広げ、大径部がばねを越えるや否やばねが半径方向内側へと復元しつつ突起部を保持する。これにより、雌スナップボタンと雄スナップボタンは連結される。両者を連結解除する場合も、突起部の大径部がばねと係合し、ばねが一時的に半径方向外側に広がる。

　現在、衣服等において極力薄いスナップボタンのニーズがある。しかしながら、上述した雌スナップボタンの断面円形のばねは、雄スナップボタンの突起部との係合やその保持のための弾性変形性能や保持力を確保するために、寸法すなわち直径をあまり小さくできない。また、スナップ本体のばね保持部には、そのようなばねを収容するために少なくともばねの直径分の厚さ（雌スナップボタンの軸方向に沿う長さ）を必要とする。そのため、雌スナップボタン全体の厚さを薄くしようとする際、ばね自体及びばね径分の厚さを要するばね保持部がボトルネックとなっている。

実公昭６３－９０号公報

　本発明は、上記の問題点に鑑み、厚さを薄くすることができる雌スナップボタンを提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明によれば、雌スナップ本体と、雌スナップ本体に組み込まれるソケットリングとを備え、雌スナップ本体は、底部と、前記底部の周縁から立ち上がる側壁とを含み、前記側壁に前記ソケットリングを保持するための保持部を有し、前記ソケットリングは、保持部に保持される半径方向外側のフランジ部と、前記フランジ部の半径方向内側の係合部とを含み、前記係合部は、前記ソケットリングの軸方向において前記フランジ部よりも前記雌スナップ本体の前記底部側に突出することを特徴とする雌スナップボタンが提供される。

　本発明に係る雌スナップボタンでは、雌スナップ本体の保持部にソケットリングのフランジ部が保持され、ソケットリングにおけるフランジ部の半径方向内側の係合部を、雄スナップボタンとの着脱時に雄スナップボタンの突起部と係合させる。このように、ソケットリングは、雌スナップ本体の保持部に保持される役割を担うフランジ部と、雄スナップボタンの突起部と係合する役割を担う係合部とに区分される。本発明では、ソケットリングのフランジ部を比較的薄くする一方、雄スナップボタンの突起部に係合させる係合部を、軸方向においてフランジ部よりも雌スナップ本体の底部側に延ばす。これにより、フランジ部を保持させる雌スナップ本体の保持部を薄く形成することが可能となり、また、突起部との係合やその保持に必要な弾性変形性能や保持力を係合部にて確保することができる。

　本発明における雌スナップ本体は、チタン、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、又はこれらの合金等の金属から形成され得るが、これらに限定されるものではない。ソケットリングは、エラストマー、合成樹脂、金属等から形成され得る。

　本発明の一実施形態において、前記ソケットリングの内径は、係合部の軸方向における中間点から、係合部の軸方向における一方側端及び他方側端に向けて、漸次大きくなることを特徴とする。すなわち、ソケットリングの係合部は、軸方向の両端が中間点よりも半径方向外側にある。これにより、ソケットリングの係合部に対する雄スナップボタンの突起部の脱着が行いやすい。ここで、「中間点」とは、係合部の軸方向における一方側端と他方側端とのちょうど中間位置にある地点又は前記中間位置付近にある地点をいう。

　本発明の一実施形態において、前記保持部は、前記ソケットリングの前記フランジ部における前記底部側を支持する保持部下部と、その保持部下部の半径方向外側から立ち上げる保持部側部と、その保持部側部における前記保持部下部から離れる側の端部から半径方向内側に延びる保持部上部とを有し、前記係合部は、前記保持部下部よりも前記底部側に突出することを特徴とする。このように、ソケットリングの係合部が、保持部下部よりも雄スナップ本体の底部側に突出することにより、係合部に必要な弾性変形性能等を与えやすくなる。

　本発明の一実施形態において、前記ソケットリングの係合部には、半径方向に沿うスリットが周方向に複数形成される。このようなスリットをソケットリングの係合部に複数設けることにより、雄スナップボタンの突起部との係合時における係合部の半径方向への弾性変形を大きくすることができる。

　本発明の一実施形態において、前記ソケットリングに、その軸方向において前記雌スナップ本体の前記底部側とは反対側に窪む溝が形成される。このような溝を設けることにより、雄スナップボタンの突起部との係合時における係合部の半径方向への弾性変形を助長することができる。

　本発明では、ソケットリングのフランジ部を比較的薄くする一方、雄スナップボタンの突起部に係合させる係合部を、軸方向においてフランジ部よりも雌スナップ本体の底部側に延ばすことにより、フランジ部を保持させる雌スナップ本体の保持部を薄く形成すると共に、雄スナップボタンの突起部との係合やその保持に必要な弾性変形性能や保持力を係合部にて確保することができる。

図１は、本発明の一実施形態に係る雌スナップボタンの平面図である。 図２は、図１のＡ－Ａ線矢視断面図である。 図３は、ソケットリングの平面図である。 図４は、図３のＢ－Ｂ線矢視断面図である。 図５は、図４の一部拡大図である。 図６は、組み合わせる前の雌スナップ本体及びソケットリングの断面説明図である。 図７は、それぞれ生地に取り付けられた雌スナップボタンと雄スナップボタンが対向している状態を示す断面説明図である。 図８は、雌スナップボタンと雄スナップボタンが連結した状態を示す断面説明図である。 図９は、ソケットリングの変形例を示す平面図である。 図１０は、図９のＣ－Ｃ線矢視断面図である。

　以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び均等の範囲内で適宜変更等がなされ得る。図１は、本発明の一実施形態に係る雌スナップボタン（以下、単に「雌スナップ」という。）１０の平面図である。図２は、図１のＡ－Ａ線矢視断面図である。雌スナップ１０は、金属製の雌スナップ本体１１と、雌スナップ本体１１に収容される樹脂製の環状のソケットリング２０とからなる。雌スナップ本体１１は、金属板を絞り加工等して形成され、底部１２と、底部１２の半径方向外側端（周縁）から軸方向上方（雌スナップ１０についての上下方向は、図２、４、５、６等の紙面に基づくものとする。）へと立ち上がる側壁１８とを備える。側壁１８は、底部１２の周縁から半径方向外側に若干拡張しつつ延びる傾斜部１３と、傾斜部１３の上端から半径方向外側へ、次いで上方へ、次いで半径方向内側へとほぼＣ字状に湾曲する、ソケットリング２０を保持するための保持部１４とを含む。雌スナップ本体１１の底部１２には、雌スナップ１０を生地１（図７等参照）に取り付ける際に止具３０のポスト３２を通すための円形の開口１５が形成される。底部１２にはまた、雌スナップ本体１１の半径方向における開口１５の半径方向外側端と底部１２の半径方向外側端との間のほぼ中間に、ほぼ長円形状にて下方に突出する８つの凸部１６が周方向等間隔で設けられている。凸部１６は長手側が周方向に沿う。傾斜部１３の底部１２に対する傾斜角度は、特に限定されるものではなく、本実施形態では一例として約１２０度である。

　保持部１４は、傾斜部１３の上端から半径方向外側へ延びる保持部下部１４ａと、保持部下部１４ａの半径方向外側端から上方に延びる保持部側部１４ｂと、保持部側部１４ｂの上端から半径方向内側に延びて終端する保持部上部１４ｃとを含む。保持部上部１４ｃの半径方向内側端は、雌スナップ本体１１の上方開口１７を規定する。また、保持部上部１４ｃの半径方向内側端の、雌スナップ本体１１の半径方向における位置は、傾斜部１３と保持部下部１４ａの境界付近にある。保持部１４は、保持部上部１４ｃ及び保持部下部１４ａとの間にソケットリング２０の後述するフランジ部２１を保持する。

　図３は、ソケットリング２０の平面図である。図４は、図３のＢ－Ｂ線矢視断面図である。ソケットリング２０は、雌スナップ本体１１の保持部１４に保持される半径方向外側のフランジ部２１と、雌スナップ１０に対し雄スナップボタン（以下、単に「雄スナップ」という。）４０（図７及び８参照）を着脱する際に雄スナップ４０の突起部４２に係合させる半径方向内側の係合部２２とを備える。係合部２２は、以下に詳しく述べるようにフランジ部２１から半径方向内側に延びかつフランジ部２１よりも下方に突出する。後述するが、雌スナップ本体１１における保持部１４は、図６に示す保持部１４を形成する前の雌スナップ本体１１に対しソケットリング２０を配置した後、ソケットリング２０のフランジ部２１を覆うように保持部１４が形成される。フランジ部２１は、保持部下部１４ａに対面するフランジ下面２１ａと、保持部側部１４ｂに対面するフランジ外側面２１ｂと、保持部上部１４ｃに対面するフランジ上面２１ｃとを有する。フランジ上面２１ｃとフランジ下面２１ａとの間の上下方向長さ、すなわちフランジ部２１の厚さは、保持部上部１４ｃと保持部下部１４ａとの間の空間の上下方向長さと同じかわずかに長い。ソケットリング２０のフランジ部２１は保持部１４に保持されるのに対し、係合部２２は保持部１４から半径方向内側に外れる。

　図３等を参照して、ソケットリング２０の係合部２２には、周方向に一例として７２度間隔で５つのスリット２３が設けられている。各スリット２３は半径方向に沿って係合部２２に入れられるが、フランジ部２１には及ばない。また、周方向に隣り合う二つのスリット２３間において、係合部２２は周方向に沿って円弧状に延びている。これにより、係合部２２（の後述する内側端２２ｅ）が半径方向内側に規定する開口２５は円形となる。また、図４等を参照して、ソケットリング２０には、フランジ部２１のフランジ下面２１ａの半径方向内側端に隣接して上方に窪む環状の溝２４が形成される。溝２４は周方向に連続的に設けられる。図５は図４の一部拡大図である。ソケットリング２０の係合部２２は、半径方向内側に凸となる湾曲面である係合面２２ａを有する。係合面２２ａの上下方向（軸方向）における一方側端である下端２２ｃはフランジ下面２１ａよりも上下方向で下方にある。この係合面２２ａの下端２２ｃの位置は、図２から分かるように、スナップ本体１１の保持部下部１４ａよりも下方にある。係合面２２ａは、図３から分かるように、ソケットリング２０の周方向に沿って延びる。また、係合部２２は、係合面２２ａの下端２２ｃから半径方向外側かつ上方に断面直線状に傾斜して溝２４の半径方向内側の側面をなす環状の傾斜面２２ｂを備える。溝２４の半径方向外側の側面は、フランジ部２１における上下方向に沿うフランジ内側面２１ｄによって規定される。傾斜面２２ｂとフランジ内側面２１ｄとは断面で約３０度の角度をなすが、溝２４の上方端部において傾斜面２２ｂとフランジ内側面２１ｄとは湾曲状に連結される。図５を参照して、係合部２２がフランジ下面２１ａから下方に突出する上下方向長さｂは、本実施形態では、フランジ部２１の上下方向長さａよりは小さいが、フランジ部２１の上下方向長さａの半分よりは大きい。

　以下、説明の便宜のため、ソケットリング２０は、溝２４の半径方向外側の側面であるフランジ内側面２１ｄを上方に延長した面によってフランジ部２１と係合部２２とに区分されるものとし、フランジ部２１のフランジ上面２１ｃの半径方向内側端を係合部２２の上端２２ｄとする。この上端２２ｄは、上述した一方側端である下端２２ｃに対し、係合面２２ａの上下方向の他方側端である。係合部２２の係合面２２ａは、上端２２ｄから下方へと内径が次第に縮小し、内径が上下方向（軸方向）の中間点２２ｅで最小となった後、下端２２ｃへと内径が次第に拡大する。すなわち、ソケットリング２０の内径は、中間点２２ｅから上端２２ｄ及び下端２２ｃに向けて漸次大きくなる。従って、係合部２２の上端２２ｄの内径及び下端２２ｃの内径はいずれも、係合部２２の中間点２２ｅの内径よりも大きい。係合面２２ａの内径が最小となる、すなわち半径方向内側に最も突出する中間点２２ｅを、以下、係合部２２又は係合面２２ａについての「内側端２２ｅ」という。本実施形態では、内側端２２ｅすなわち中間点２２ｅは、係合部２２の上下方向長さ（厚さ）のちょうど中間位置よりもわずかに上方にある。なお、内側端（中間点）２２ｅが上下方向長さのちょうど中間位置にあってもよい。この内側端２２ｅの上下方向における位置は、本実施例では、フランジ部２１の上下方向長さの中間点ｃよりもやや下方であり、また、フランジ下面２１ａよりも上方である。更に、内側端２２ｅの上下方向位置は溝２４の範囲内にあることが分かる。また、図５の符号ｄは、ソケットリング２０における溝２４よりも上方部分の上下方向長さの中間点を示す。係合面２２ａは、断面において、上端２２ｄから内側端２２ｅまではほぼ円弧状であり、内側端２２ｅから下方へとわずかに湾曲した後、下端２２ｃへとほぼ断面直線状に延びる。係合部２２のフランジ下面２１ａよりも下方の部分は断面がほぼ２等辺三角形状である。

　図６は、組み合わせる前の雌スナップ本体１１ａ及びソケットリング２０の断面説明図である。雌スナップ本体１１ａは、スナップ本体１１の側壁１８に保持部１４が形成される前の状態であり、雌スナップ本体１１の保持部上部１４ｃとなる部分１４ｃａが保持部側部１４ｂに対して未だ曲げられておらず、保持部側部１４ｂの断面延長線上に延びている。そのため、組み合わせる前の雌スナップ本体１１ａは、保持部上部１４ｃとなる部分１４ｃａを保持部側部１４ｂに対して曲げてソケットリング２０を保持する状態の雌スナップ本体１１の上方開口１７よりも大きく上方に開放している。この開放部からソケットリング２０がスナップ本体１１ａ内の保持部下部１４ａ上に配置され、次いで、上記部分１４ｃａが保持部上部１４ｃとして半径方向内側に曲げられ、保持部１４が形成される。これにより、ソケットリング２０のフランジ部２１が保持部１４内に保持される。

　図７は、雌スナップ１０と雄スナップ４０がそれぞれボタン止具３０、５０によって生地１、２に取り付けられて対向している状態を示す断面説明図である。雄スナップ４０は、一枚の金属板を絞り加工等して形成され、雌スナップ１０のソケットリング２０の係合部２２に対して係合及び脱係合される突起部４２を備える。突起部４２は、内側壁４２ａと外側壁４２ｂとから２重管状に形成され、内外側壁４２ａ、４２ｂの突出端側が下方（雄スナップ４０について上下は図７及び８の紙面に基づく。）に凸となる湾曲状に連結されて、突起部４２の突出端部４２ｃとなる。更に、雄スナップ４０は、内側壁４２ａの基端側から半径方向内側に延びる内側底部４１ａと、外側壁４２ｂの基端側から半径方向外側に延びる外側底部４１ｂとを含む。外側底部４１ｂは内側底部４１ａよりもわずかに上方（生地２側）にある。内側底部４１ａには、ボタン止具５０のポスト５２を通すための円形の開口４３が設けられる。突起部４２において、内側壁４２ａの内径はほぼ一定であるのに対し、外側壁４２ｂは、突出端部４２ｃ側で半径方向外側に膨らんで外径が大きくなる。この半径方向外側に膨らんだ部分を、以下、「大径部４２ｄ」という。外側壁４２ｂの外径は、大径部４２ｄから上方へとわずかに縮小した後、拡大に転じて外側底部４１ｂに繋がる。そのため、突起部４２における外側壁４２ｂの外周面は、大径部４２ｄで半径方向外側に突出し、大径部４２ｄの上方で半径方向外側に湾曲状にわずかに窪む。この窪む部分を、以下、「小径部４２ｅ」という。小径部４２ｅの外径は、雌スナップ１０の初期状態のソケットリング２０における係合部２２の内側端２２ｅでの内径と同じかそれよりもわずかに大きい。従って、大径部４２ｄの外径は、初期状態のソケットリング２０における係合部２２の内側端２２ｅでの内径よりも大きい。

　ボタン止具３０、５０は、同様の構成であり、円板状のベース３１、５１と、べース３１、５１から突出する円筒形状のポスト３２、５２とを備える。ポスト３２、５２は、図７において円筒形状から加締められて変形した状態で示される。ボタン止具３０、５０は、ポスト３２、５２とポスト３２、５２から連続するベース３１の生地１、２に対面する側の部分であるベースコア３１ａ、５１ａとをなす止具本体３０ａ、５０ａと、ベースコア３１ａ、５１ａを生地１、２とは反対側から覆うようにベースコア３１ａ、５１ａに組み付けられるベースカバー３１ｂ、５１ｂとからなる。ベースカバー３１ｂ、５１ｂは、半径方向外側端部が生地１、２側に突き出るようにＣ字状に湾曲されてベースコア３１ａ、５１ａの半径方向外側端部に組み付けられる。雌スナップ１０及び雄スナップ４０を生地１、２に取り付けるに当たっては、ボタン止具３０、５０のポスト３２、５２を、生地１、２に貫通させ、次いで雌スナップ１０及び雄スナップ４０の開口１５、４３に通した後、半径方向外側に断面Ｃ字状に湾曲するように加締める。これにより、雌スナップ１０及び雄スナップ４０が生地１、２に固定される。

　図８は、雌スナップ１０と雄スナップ４０が連結した状態を示す断面説明図である。雌スナップ１０と雄スナップ４０を連結する際、雄スナップ４０の突起部４２を雌スナップ１０のソケットリング２０の係合部２２の開口２５にはめ込む。この際、突起部４２の大径部４２ｄの外径がソケットリング２０の係合部２２の内側端２２ｅでの内径よりも大きいため、大径部４２ｄは、係合部２２を半径方向外側に弾性的に広げながら係合部２２を通過する。そして、突起部４２の大径部４２ｄが係合部２２の内側端２２ｅを下方に越えるや否や、図８に示すように、係合部２２が半径方向内側に復元して（完全に初期状態へと復元しない場合もある。）、係合部２２の内側端２２ｅを含む係合面２２ａが突起部４２の小径部４２ｅの外周面に接する。これにより、雌スナップ１０と雄スナップ４０が連結状態となる。ソケットリング２０の係合部２２の半径方向内側への弾性変形は、溝２４の半径方向の長さが縮小するように行われ、また、スリット２３が係合部２２の変形を助長する。この連結状態において、雄スナップ４０の突起部４２の突出端部４２ｃは係合部２２の下端２２ｃよりもわずかに下方に来る。また、雌スナップ１０の底部１２の凸部１６が生地１に食い込み、雌スナップ１０の回転を防ぐ役割を果たす。以上のように、本発明では、ソケットリング２０において、フランジ部２１に雌スナップ本体１１の保持部１４に保持される役割を担わせ、保持部１４から外れる係合部２２に雄スナップ４０の突起部４２と係合する役割を担わせている。これにより、ソケットリング２０のフランジ部２１を係合部２２に比較して薄くする一方、係合部２２をフランジ部２１よりも下方に突出させることにより、係合面２２ａを上下方向に大きくすることができる。これにより、雌スナップ本体１１の保持部１４を薄く形成しつつ、ソケットリング２０において必要な弾性変形性能や保持力を確保することができる。

　図５を参照して、上記実施形態では、ソケットリング２０の係合部２２の内側端２２ｅは、係合部２２の上下方向長さ（厚さ）のほぼ中間点にあるため、以下、便宜的に係合部２２の上下方向中間点を「係合部中間点２２ｅ」とする。係合部中間点２２ｅが仮にフランジ部２１の上下方向長さの中間点ｃと同じ位置にある場合、係合部２２とフランジ部２１は同じ上下方向長さを有することとなる。この場合、係合部２２の、雄スナップ４０の突起部４２に対する係合力すなわちスナップ力が強くなりすぎてしまう。そのため、上記実施形態では、係合部２２をフランジ部２１よりも下方に延ばして、係合部中間点２２ｅをフランジ部２１の中間点ｃよりも下方に設定している。また、係合部２２の弾性的な変形は、半径方向内側に最も突出しかつ半径方向外側に溝２４が存在する内側端２２ｅで最大となる。これに対し、仮に溝２４よりも上方部分の上下方向長さの中間点ｄに内側端２２ｅを設定した場合、半径方向外側に溝２４が存在する場合に比較して、係合部２２の変形は小さくなる。そのため、上記実施形態では、係合部２２の内側端２２ｅを上下方向において溝２４の範囲に入る位置に設定している。

　図９は、ソケットリングの変形例であるソケットリング６０を示す平面図であり、図１０は図９のＣ－Ｃ線矢視断面図である。ソケットリング６０は、上述したスナップ本体１１の保持部１４に保持される半径方向外側のフランジ部６１と、雄スナップ４０の突起部４２に係合させる半径方向内側の係合部６２とを備える。係合部６２は、フランジ部６１よりも下方に突出している。係合部６２の上下方向長さは、本実施形態においてフランジ部６１の上下方向長さの約２．５倍である。ソケットリング６０において、フランジ下面６１ａと、係合部６２の半径方向内側の側面をなす傾斜面６２ｂとの間に、ソケットリング２０の溝２４に対応する溝は設けられていない。また、係合部６２の係合面６２ａにおいて半径方向内側に最も突出する内側端６２ｅは、係合部６２の上下方向長さのほぼ中間点にあり、フランジ下面６１ａよりもわずかに下方であり、従って、フランジ部６１の上下方向中間点よりも下方にある。図９を参照して、ソケットリング６０の係合部６２には、周方向に一例として７２度間隔で５つのスリット６３が設けられている。また、周方向に隣り合う二つのスリット６３間において、係合部６２は直線状に延び、係合部６２の半径方向内側に突出する長さは、スリット６３に近付くにつれて短くなり、当該二つのスリット６３間の中間点で最長となる。これにより、係合部６２が半径方向内側に規定する開口６５は五角形となる。更に、ソケットリング２０のスリット２３と比較して、スリット６３は半径方向に短い。フランジ部６１の外周は、ほぼ円形であるが、周方向に隣り合う二つのスリット６３間に対応する領域において、係合部６２の直線状の内側端６２ｅと平行となるように部分的に直線状に切り欠かれている。ソケットリング６０を既述した雌スナップ本体１１に組み込んでなる雌スナップ（図示せず）では、雄スナップ４０との着脱時にソケットリング６０が雄スナップ４０の突起部４２と係合する際、係合部６２が周方向においてほぼ一様に弾性変形するのではなく、周方向に隣り合う二つのスリット６３側では変形が小さく、当該二つのスリット６３間の中間で最も大きく変形する。そのため、弾性変形性能や保持力が周方向において変化する。

　１０　雌スナップボタン
　１１　雌スナップ本体
　１２　底部
　１４　保持部
　１８　側壁
　２０、６０　ソケットリング
　２１、６１　フランジ部
　２２、６２　係合部
　２２ａ、６２ａ　係合面
　２２ｃ、６２ｃ　係合面の下端
　２２ｅ、６２ｅ　内側端
　２３、６３　スリット
　２４　溝
　３０、５０　ボタン止具
　３２、５２　ポスト
　４０　雄スナップボタン
　４２　突起部

Claims (5)

1. 　雌スナップ本体（１１）と、雌スナップ本体（１１）に組み込まれるソケットリング（２０、６０）とを備え、
   　雌スナップ本体（１１）は、底部（１２）と、前記底部（１２）の周縁から立ち上がる側壁（１８）とを含み、前記側壁（１８）に前記ソケットリング（２０、６０）を保持するための保持部（１４）を有し、
   　前記ソケットリング（２０、６０）は、保持部（１４）に保持される半径方向外側のフランジ部（２１、６１）と、前記フランジ部（２１、６１）の半径方向内側の係合部（２２、６２）とを含み、
   　前記係合部（２２、６２）は、前記ソケットリング（２０、６０）の軸方向において前記フランジ部（２１、６１）よりも前記雌スナップ本体（１１）の前記底部（１２）側に突出することを特徴とする雌スナップボタン。
2. 　前記ソケットリング（２０、６０）の内径は、係合部（２２、６２）の軸方向における中間点から、係合部（２２、６２）の軸方向における一方側端及び他方側端に向けて、漸次大きくなることを特徴とする請求項１に記載の雌スナップボタン。
3. 　前記保持部（１４）は、前記ソケットリング（２０、６０）の前記フランジ部（２１、６１）における前記底部（１２）側を支持する保持部下部（１４ａ）と、その保持部下部（１４ａ）の半径方向外側から立ち上がる保持部側部（１４ｂ）と、その保持部側部（１４ｂ）における保持部下部（１４ａ）から離れる側の端部から半径方向内側に延びる保持部上部（１４ｃ）とを有し、前記係合部（２２、６２）は、前記保持部下部（１４ａ）よりも前記底部（１２）側に突出することを特徴とする請求項１に記載の雌スナップボタン。
4. 　前記ソケットリング（２０、６０）の前記係合部（２２、６２）には、半径方向に沿うスリット（２３、６３）が周方向に複数形成される請求項１に記載の雌スナップボタン。
5. 　前記ソケットリング（２０）に、その軸方向において前記雌スナップ本体（１１）の前記底部（１２）側とは反対側に窪む溝（２４）が形成される請求項１に記載の雌スナップボタン。

Images