[実施形態1−1]
本実施形態にかかる表示装置は、複数の画素が横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)にマトリックス状に配列されてなる表示パネル100と、駆動部10とから構成されている。
<表示パネル>
表示パネル100のデバイス構造について説明する。
図1(a)は実施形態1−1にかかる表示パネルの構成を示す要部断面図であり、代表的に一つの画素(単位表示)について図示している。
ここでは各画素を白黒表示する表示パネルについて説明するが、各画素を、R(赤)、G(緑)、B(青)、又は、C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)の絵素(サブピクセル)で構成することによって、フルカラー表示の表示パネルとすることも可能である。
画素サイズは、例えば、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)ともピッチ300μmである。フルカラー表示の場合は、R(赤)、G(緑)、B(青)、又は、C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)の各絵素は、水平100μm×垂直300μmの矩形(くけい)である。
図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面を示す図である。
各画素は、図1(b)に示すような矩形(くけい)をしており、隔壁5によって区切られている。
図1(a)に示すように、前面基板1と背面基板2とが間隔を開けて対向配置され、その間に形成された間げきは、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に井げた状に形成された隔壁5(5a、5b)によって仕切られて複数のマトリックス状に配列されたセル空間3に分割されている。そして、各セル空間3には、黒色の着色粒子4(着色粒子4の粒子群)が所定量封入されている。
背面基板2の上に白色反射層6が形成されており、その上に第1電極7が形成され、さらにこの第1電極7を被覆するように絶縁層8が形成されている。この第1電極7は、隔壁5で区切られたセル空間3よりも一回り小さく形成された矩形(くけい)電極である。
また、上記の隔壁5はポリマー樹脂で形成され、前面基板1側に設けた上部隔壁5bと背面基板2側に設けた下部隔壁5aとから構成されている。
上部隔壁5bと下部隔壁5aとの間に第2電極9が形成されている。この第2電極9は、全画素で同電位となる共通電極であって、隔壁5と同様、各画素のセル空間を取り囲むように、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に井げた状に形成されている。
第2電極9は、セル空間3の底面から、前面基板1に向けて下部隔壁5aの高さh1相当の距離だけ離間した位置に形成されている。
この第1電極7と第2電極9との間には、着色粒子4を駆動するための電圧が駆動部10から印加されるようになっている。
駆動部10が第1電極7と第2電極9の間に電圧を印加すると、各セル空間3内で着色粒子4が流動移動することによって、前面基板1の前方(Z方向)に画像を表示するようになっている。
なお、図1,2には示していないが、表示パネル100には、駆動部10を構成するスイッチ素子も背面基板2上に形成されている。例えば、図5に示されるように画素ごとにTFT素子12が形成され、TFT素子12と上記第1電極7とが電気接続される。
前面基板1は、光を取り出す必要があるため、ホウ珪酸(けいさん)アルカリガラス、ソーダ石灰ガラスなどの透明ガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の透明樹脂フィルムも用いることができる。
背面基板2としては、例えば、ホウ珪酸(けいさん)アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の樹脂フィルム、ステンレス等の金属箔(はく)を用いることができる。
第1電極7は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料で形成されている。
絶縁層8は、電子写真感光体に用いられるポリカーボネート系の電荷輸送材で形成されており、可視光線を透過する無色透明の樹脂材料である。
このように、前面基板1、絶縁層8、第1電極7は、いずれも可視光透過性なので、絶縁層8における着色粒子4が覆っていない領域を通して、パネル前方から白色反射層6を観(み)ることができる。
第2電極9は、Cr/Al/Cr、Cr/Cu/Cr、Ti/Al/Ti等の導電性金属で形成されている。ここで、Cr、Tiと、Al、Cuとのサンドイッチ構造にしているのは、低抵抗材料であるAl、Cuを芯(しん)材に用いることによって電極の導電性を高め、Cr、Tiを用いることによって、隔壁5と芯(しん)材との密着性を高めるとともに、反射防止膜の機能を発揮することによりコントラスト低下を防止するためである。
図2は、着色粒子4が絶縁層8上に付着した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図2に示すように、着色粒子4は、母粒子4aと、その表面を被覆する子粒子4bとで形成された複合微粒子であって、正に帯電する特性を有している。
母粒子4aとして、積水化成品工業(株)製の真球状微粒子ポリマーMBX−5(平均粒径5μm)、あるいは綜研化学(株)製のケミスノーMX−5(平均粒径5μm)をベースに、黒色顔料等で着色したものを使用し、また、子粒子4bには、平均粒径16nmの帯電処理を施した単分散シリカ微粒子を使用することによって、着色粒子4全体として帯電性を有するものを形成できる。
母粒子4aはアクリル製なので、真比重が1.2g/cm3と小さく、かつ軟化点が低い。一方、子粒子は母粒子に比べれば2.1g/cm3と真比重が大きいが、配合比が小さいので粒子全体としての影響は小さく、また、母粒子に比べて軟化点が高いため、メカノケミカルなどの方法で母粒子に固着しやすい。
母粒子4aには、この他に、スチレン系、メラミン系などの樹脂材料を用いてもかまわない。子粒子4bにシリカを使用したのは、シランカップリング剤等により安定でかつ大きな帯電量が得られる帯電処理が可能だからである。
上記のように電荷輸送材で形成された絶縁層8は、第2電極9に加えられている基準電圧Vo(=Vgnd)と、第1電極7に印加される正又は負の電圧との相対関係に基づいて帯電状態が変化する。その帯電状態に応じて、正に帯電した着色粒子4は絶縁層8上で左右に移動して、着色粒子4が絶縁層8を被覆する割合(すなわち着色粒子4が白色反射層6を被覆する割合)が変化するようになっている。
この絶縁層8の表面部分には、図2に示すように、微小な凹凸が表面に形成された表面処理層8bを設けることが好ましい。
<駆動部10>
図5は、駆動部10の構成の一例を示す図である。
各画素の表示素子を駆動制御するため、駆動部10には、データ電圧設定部110、選択電圧設定部120が設けられ、さらにシステム制御部200が設けられている。
そして、システム制御部200は、データ電圧設定部110にデータ電圧を印加するタイミングを知らせるデータ制御信号と画像信号を送り、選択電圧設定部120に選択電圧を印加するタイミングを知らせる選択制御信号を送る。
上記のデータ電圧設定部110、選択電圧設定部120では、システム制御部200から送られるデータ制御信号、選択制御信号、及び電源制御信号に基づいて、表示パネル100の各表示素子に、表示動作を行うためのデータ電圧、選択電圧、電源電圧を印加する。
上述したように、表示パネル100には、マトリックス状に配列された各セル空間3ごとに、TFT素子12が設けられている。
データ電圧設定部110から、各半導体スイッチング素子12にデータ電圧を印加するために複数のデータライン111が縦方向(Y方向)に伸長して設けられ、選択電圧設定部120から、各半導体スイッチング素子12に選択電圧を印加するために、複数の選択ライン121が横方向(X方向)に伸長して設けられている。
なお、すべての画素の第1電極7にはリセット電圧V+r(+50V)を印加できるようになっている。なお、このリセット電圧V+rは、データ電圧設定部110から複数のデータライン111、TFT素子12を経由して第1電極7に印加するようにしてもよいが、別途にリセット電圧用のラインを設けてもよい。
なお、これらのライン111,121は、背面基板2の表面に沿って形成されている。
各画素におけるスイッチング素子の構成:
図5に示すように、各セル空間3に対応して設けられたTTF素子T12は、そのゲート電極が選択ライン121に、一方のS/D電極がデータライン111に、他方のS/D電極が第1電極7に接続されており、第1電極7に駆動電圧を印加できるようになっている。
なお、パネル全体に共通する第2電極9は、一定の基準電位Vo(=Vgnd)に接続されている。
上記駆動部10の動作例を説明する。
システム制御部200に送られてくる画像信号は、主として静止画像を表示するための画像信号であって、1フレーム分の画像信号は、表示パネル100に設けられた各画素に対応する輝度信号(白、中間、黒)で構成されている。
システム制御部200は、画像信号を受け取ると、まず、すべての画素に対して一括して、第1電極7に正のリセット電圧V+rを印加する。
続いて、画像信号に基づいて、データ電圧設定部110にデータ制御信号を、選択電圧設定部120に選択制御信号を送り、各設定部110、120を介して、各画素の表示素子を駆動して画像表示を行う。
すなわち、システム制御部200は、選択電圧設定部120から、複数の選択ライン121に対して選択電圧を順次印加しながら、データ電圧設定部110から、複数の各データライン111に対して、画像信号に基づく表示濃度に相当する大きさの正又は負のデータ電圧を印加する。
このデータ電圧は、各表示に適した値に決められており、1.白表示しようとする画素ではV+(+40V)、2.黒表示しようとする画素ではV-(−40V)、3.中間調表示しようとする画素では、黒表示時の負電圧V-よりも大きさの小さい負の電圧Vm-(電圧絶対値が35V以下)である。
なお、上記のリセット動作によってすべての画素は既に白表示状態となっているので、白表示しようとする画素に対するデータ電圧V+の印加を省略してもよい。
これによって、選択電圧Vsが印加されている選択ライン121上の各画素では、第1電極7に上記のデータ電圧VDが印加され、各画素に画像信号に基づく書き込みが行われるので、選択ラインを順次走査することによって、表示パネル100全体の画素に書き込みがなされる。
このようにして表示パネル100を構成する各画素は、画像信号に基づいて、白表示、中間調表示、黒表示のいずれかがなされて、1フレーム分の画像表示がなされる。
そして、書き込みした後は、各第1電極7に電圧を印加しなくても、ファンデルワールス力によって画像表示状態が維持される。
したがって、電子書籍のテキスト画面や静止画像等のコンテンツを、少ない消費電力で長時間表示することが可能である。
次に、新たなコンテンツを表示するための画像信号が送られてきた場合は、システム制御部200は、上記と同様に、リセット動作及び書き込み動作を行う。
〈表示パネルの各画素における動作〉
上記のように駆動部10が表示パネル100に駆動電圧を印加することによって、表示パネル100の各画素でなされる動作について、図1及び図3,4を参照しながら説明する。
1.白表示画素
白表示しようとする画素では、第1電極7に正の電圧V+が印加されることによって、第1電極7から第2電極9に向かう電界が形成されるので、絶縁層8上に存在する着色粒子4(正に帯電)は、図1に示すように、隔壁5の側壁側(第1電極9側)に追いやられた状態になって、絶縁層8が開口される。したがって、パネル前方から入射される光は、着色粒子4によって遮られることなく、透明材料で形成された絶縁層8、第1電極7を通過して、白色反射層6で反射され、再びパネル前方に出射されるので、白表示状態となる。
ここで、着色粒子4と隔壁5の側壁の間には主としてファンデルワールス力による付着力が生じるので、駆動部10からの正電圧印加を停止しても、この白表示状態は、次に第1電極7に対して駆動電圧が印加されるまで維持される。
2.黒表示画素
黒表示しようとする画素では、駆動部10から第1電極7に負電圧V-が印加されることによって、絶縁層8の表面近傍は負電荷が優位となり、図3に示すように、正に帯電している着色粒子4は、第1電極7側に引き寄せられて、絶縁層8を覆うような形で偏在した状態となる。したがって、この画素では、黒色の着色粒子4によって白色反射層6の全体が覆われるので、黒表示状態となる。
ここで、着色粒子4と絶縁層8の間には主としてファンデルワールス力による強固な付着力が生じるので、駆動部10からの負電圧印加を停止しても、この黒表示状態は、次に第1電極7に対して駆動電圧が印加されるまで維持される。
3.中間調表示
中間調表示しようとする画素では、駆動部10から第1電極7に、比較的小さい電圧Vm-が印加され、上記黒表示時と同様に、第2電極9から第1電極7に向かって電界がかかるが、生じる電気エネルギー密度が小さいため、絶縁層8の表面近傍に生じる負の電荷量は黒表示時よりも少なくなる。したがって、図4に示すように、正に帯電している着色粒子4の一部が隔壁5から離脱し第1電極7側に引き寄せられ、絶縁層8の一部が黒色の着色粒子4で覆われる。よって、白色反射層6と黒色の着色粒子4との組み合わせによる中間調表示となる。
ここで、白表示時及び黒表示時と同様に、着色粒子4と隔壁5の側壁、あるいは着色粒子4と絶縁層8の間には主としてファンデルワールス力による強固な付着力が生じるので、駆動部10からの負電圧印加を停止しても、この中間調表示状態は、次に第1電極7に対して駆動電圧が印加されるまで維持される。
以上のようにして、表示パネルを構成する各画素では、駆動部10によって印加される電圧値に基づいて、白表示、中間調表示、黒表示のいずれかがなされて、1フレーム分の画像表示がなされる。そして、その表示画像は、駆動電圧を停止しても維持される。
なお、上記のようにして画像表示する前に、第1電極7に通常の白表示時に印加する電圧V+よりも10%〜20%程度大きい正のリセット電圧V+rを印加することによって、表示パネル100全体の画素を白表示状態にすることが好ましい。
このリセット動作によって、セル空間3内では、上記白表示時と同様に、着色粒子4(正に帯電)は隔壁5の壁面(第2電極9側)に追いやられた状態になるが、第1電極7と第2電極9の間により強い電界が形成されるので、セル空間の中央部に残留する着色粒子4をなくして、着色粒子4を確実に隔壁5側に偏在させることができる。したがって、長期にわたって、常に高反射率、高コントラストの表示を得ることができる。また、着色粒子4が絶縁層8上に付着したまま残留する焼き付きも防止される。
〈本実施形態の表示装置による効果〉
図1(b)に示すように、X−Y面を平面視したときに、第1電極7は、隔壁5で仕切られたセル空間3のサイズより若干小さい矩形(くけい)の電極なので、第1電極7の外縁と第2電極9の内縁とは互いに接近しているが、図1(a)に示すように、第1電極7と第2電極9とはZ方向に距離h1だけ離間している。したがって、第1電極7と第2電極9との間に電圧が印加されると、第1電極7と第2電極9と間げきにおいて、下部隔壁5aの側壁面に沿ってZ方向に均一的な電界が形成される。
印加する電圧が比較的小さくても、着色粒子は、この領域において下部隔壁5aの側壁面上に万遍なく付着するので、第1電極7の外周端部と第2電極9との間げき距離h1を確保することによって、セル空間内に封入された着色粒子を、画素の中央部に残留させることなく、下部隔壁5aの側壁面上に移動させて、セル空間3の底面3aを大きく開口できる。よって、高反射率、高コントラストの表示を得ることができる。
このような効果を十分に得るために、第1電極7と第2電極9とのZ方向離間距離h1は、第2電極9を含めた、隔壁5の高さHの1/5以上(h1≧1/5×H)とすることが好ましい。
また、表示パネル100では、着色粒子4がセル空間3内で気体相中に封入されているので、着色粒子が液体中を移動する電気泳動表示装置に比べ、移動開始するのにある程度の大きさの電圧を必要とするものの、移動開始した後は迅速に移動する。
したがって、駆動電圧が印加されていないときにはセル空間3内で着色粒子4は安定に静止し、かつ駆動電圧が印加されると迅速に移動する。よって、安定でかつ迅速な表示が可能となる。
また、セル空間3内に封入されている空気等の気体は、屈折率が略1であるので、電気泳動方式で用いられる絶縁性透明液体、例えばシリコンオイル(屈折率1.4)中に粒子が封入されている場合と比べて、良好な光学特性を得ることができ、特に良好な白表示を実現できる。
また、第2電極9は、全画素で共通の電位となる共通電極なので、導電性フィルム等を使って簡便な方法で形成できる。したがって、表示パネルを比較的容易に作製することができる。
なお、本実施形態の表示装置では、セル空間3内を気体相とすることによって特に良好な光学特性と迅速な動作を実現したが、セル空間3内を液相にした場合も、反射率、コントラストを向上することはできる。
(実施例1)
表示パネル100の製造方法の一例を説明する。
背面基板2の作製:
無アルカリガラスからなる背面基板2に、酸化チタン(チタニア)皮膜からなる白色反射層6を、塗布、印刷、コールド・スプレイ等の方法によって、画像表示に必要な基板の周辺部を除くほぼ全面に形成する。
次に、透明導電材料であるITOでスパッタ、蒸着等により薄膜を形成し、フォトリソグラフィ及びエッチング等のプロセスにより所定の矩形(くけい)形状にパターニングすることによって、第1電極7を形成する
最後に、溶剤で溶かしたポリカーボネート系の電荷輸送材を塗布あるいは印刷することによって、基板の周辺部を除くほぼ全面に絶縁層8を形成する。そして絶縁層8の表面上に、下記のように表面に凹凸形成を有する表面処理層8bを形成する。
表面処理層8bを形成する工程:
媒体にTiO2微粒子を分散させてなるコーティング剤を、絶縁層8の表面上に塗布することによって表面処理層8bを形成する。
コーティング剤が、水を媒体とする場合は、TiO2微粒子としてアナタース形結晶構造のものを用いることが好ましい。一方、有機物を媒体とする場合は、TiO2微粒子はアナタース形の結晶構造である必要はなく、ルチル形やアモルファスのものでも構わない。
具体的には、環状エーテル系溶剤THFにポリカーボネート粉末を溶融させた媒体に、TiO2微粒子を分散させたコーティング剤を塗布することによって、図2に示すように、絶縁層8の表面部8a上に表面処理層8bを形成することができる。この表面処理層8bは、TiO2微粒子層と、最表面に露出するポリカーボネート層で構成される。
ここで、表面処理層8bの媒体としてポリカーボネートを選択したのは、着色粒子4の構成材料であるアクリル樹脂(PMMA)と比較的近い帯電列に位置するからである。つまり、着色粒子4と表面処理層8bとが同種の帯電特性を有することにより、両者間に働く静電気力が小さくなるので、実際に第1電極7に電圧を印加した時に、着色粒子4がセル空間3内でスムースに移動できるためである。なお、この構成によって実際にも良好な電圧特性が得られることが実験的にわかっている。
このように形成される表面処理層8bは、膜硬度が高く、かつ高透過率の層であり、TiO2微粒子の凝集が比較的少なく、粒径分布のそろった粒子が積層された均一な層であって、層の厚みは100nm程度である。
ここで、コーティング剤に使用するTiO2微粒子の種類や量によって、形成される表面処理層8bの導電性を調整することができる。
このように絶縁層8の表面に表面処理層8bを形成することによって、絶縁層8と着色粒子4との間に働くファンデルワールス力が低減されるので、低い印加電圧で絶縁層8から着色粒子4を引き離すことが可能となる。
コーティング剤に用いるTiO2微粒子は、着色粒子4の直径(5μm)より小さな直径(30nm)のものを用いる。その理由は、着色粒子4の直径よりも大きい直径を有する微粒子で表面処理層8bを形成すると、その表面処理層8bに形成される凹凸が大きくなり、着色粒子4自身がその凹凸に沿って付着してしまうので、ファンデルワールス力を低減する効果がなくなるからである。
また、着色粒子4の直径より小さな直径の微粒子を用いることにより、表面処理層8bの表面における凹凸の平均間隔が、着色粒子4群の平均粒径よりも小さくなる。それによって、着色粒子4と絶縁層8の間に作用するファンデルワールス力が確実に低減されるので、低い駆動電圧で絶縁層8から着色粒子4を引き離すことができる。同様の理由で、この表面処理層8bは凹凸形状が層表面の全体にわたって均一に形成されているのが望ましい。具体的には、着色粒子4の直径(5μm)よりも大きな抜けがないように表面処理層8bを形成するのが望ましい。
なお、本実施例における絶縁層8の厚みは、電圧印加による絶縁破壊が生じないように15μmとした。
このような表面処理層8bは、絶縁層8の上だけでなく、隔壁5、第2電極9の表面にも形成することができる。それによって、セル空間3の内面全体において電気抵抗、帯電性、及び形状等の条件が均一になり、表面処理層8bに付着した着色粒子4とはほぼ同じ電圧特性を有することになるので、駆動時に良好な表示特性を得ることができる。
次に、フォトリソ等の方法によって、画素サイズに応じた井げた状に下部隔壁5aを形成する。下部隔壁5aの寸法は、ピッチ300μm、幅10μmであり、高さh1は20μmである。
以上で、背面基板2上に白色反射層6、第1電極7、絶縁層8、及び下部隔壁5aが形成される。
前面基板1の作製:
無アルカリガラスからなる前面基板1上に上部隔壁5bを形成する。上部隔壁5bは、下部隔壁5aと同じ方法で、同じ形状、ピッチ、幅で形成するが、上部隔壁5bの高さは5μmとする。次に、上部隔壁5bを形成した井げたパターン上に、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサー等の方法によりAgを主成分とするペーストを塗布し、その後、乾燥、焼成することによって、第2電極9を高さ5μmで形成する。
これによって、前面基板1上に上部隔壁5b及び第2電極9が形成される。
着色粒子の製造方法:
着色粒子4の作製方法について説明する。
図2に示す複合微粒子を作製するには、母粒子を作製した後に、メカノケミカルで子粒子を固着させる方法が適している。
(株)奈良機械製作所のハイブリダイゼーションシステムは、メカノケミカルの一種である高速気流中衝撃法により、子粒子を母粒子に固定化処理する装置である。この装置を用いれば、高速気流中で、子粒子4bである単分散シリカ微粒子を、母粒子4aであるポリマー微粒子に衝突させて固定することより、ポリマー微粒子の表層の全面を覆うようにほぼ均一に単分散シリカ粒子を被覆することができる。
母粒子4aの表層全面に子粒子4bを被覆する配合比は、子粒子4bを理論配合比よりもやや多めにして、母粒子4a:子粒子4bの重量比で100:3ないし100:5とする。ここで、理論配合比とは、母粒子4aの表面全面を子粒子4bの1層で被覆すると仮定したときの計算値であり、配合比を理論値よりも多めにするのは、高速気流中衝撃法では子粒子4bの層を均一にするのは限界があり、母粒子4a全面を子粒子4bの1層で覆うことは難しいためである。
複合微粒子を作製する方法としては、この他に、懸濁重合法のように一回のプロセスで作製する方法もある。ただし、懸濁重合法で作製した複合粒子は、子粒子表面に、界面活性剤等製造プロセスで使用する添加物からなる被膜が形成されるため、高速気流中衝撃法等の処理により被膜をはく離しないと複合粒子の流動性は向上しない。
以上のように作製された着色粒子4は正に帯電している。この帯電量を一定に保つために、水分含有量が一定に保たれたドライエア、ドライ窒素ガス等の雰囲気下で保管することが好ましい。
パネル組み立て工程:
上記のように製造した背面基板2において、下部隔壁5aによって画素ごとに仕切られた各空間に、着色粒子4をほぼ均等に散布して、前面基板1と重ね合わせ、前面基板1の周縁部にエポキシ系UV接着剤を塗布する。そして、前面基板1側の上部隔壁5b及び第2電極9と、背面基板2側の下部隔壁5aとが重なるように、前面基板1と背面基板2とを位置合わせして、UV光を照射すると、接着剤が硬化して表示パネルが完成する。
このパネル組み立て工程は、水分含有量が極力少なくなるように乾燥処理したドライガス(例えばドライ窒素)雰囲気下において行うことが好ましい。これによって、セル空間3内には、水分が排除されたドライガス及び着色粒子4が封入され、着色粒子4の帯電量が一定に維持される。
作製された表示パネル100は、第2電極9の高さh2(5μm)を含めた隔壁5全体の高さHは30μmであって、前面基板1と背面基板2の間にセル空間3の高さも同じである。また、第1電極7と第2電極9とのZ方向離間距離h1は20μmである。
(表示装置の駆動例)
以上のように作製した実施例1にかかる表示パネル100に駆動回路を接続して以下の駆動電圧で駆動した。
リセット電圧V+r=+50V。
黒表示画素に印加する電圧V-=−40V。
中間調表示画素に印加する電圧Vm-=−20V。
白表示画素に印加する電圧V+=+40V。
その結果、特に白色表示時おいて良好な白色が得られた。
図6は、実施例の表示パネル100を白表示した時の等電位面及び電気エネルギー密度分布をシミュレーションした結果を示す図である。なお、各領域における電気エネルギー密度は電界の大きさの2乗に比例する。
隔壁5の側壁面に対して、等電位面がほぼ垂直に等間隔で交わっており、隔壁5の側壁面に沿った広い領域に均一的な電界強度が形成されていることがわかる。また、電気エネルギー密度についても隔壁5の側壁面に沿って均一的に形成されていることがわかる。
なお、上述した粒径の着色粒子4を使用する場合、セル空間3内に封入したすべての着色粒子4を隔壁5の側壁に付着させるために、第1電極7と第2電極9とのZ方向離間距離h1として最低5〜6μm確保することが必要である。この距離は、隔壁5の高さH(30μm)を基準にすると、その1/5程度に相当する。
この点から、上記のようにh1>1/5×Hに設定することが好ましい。
第2電極9のZ方向膜厚(高さ)h2については、5μmより小さく設定すると、駆動電圧を高くしても着色粒子4を移動させるのが難しくなるので5μm以上とすることが好ましい。また、隔壁5の高さHが30μmの場合、上記のようにZ方向離間距離h1を5μm以上確保するためには、Z方向膜厚h2を25μm以下に設定する必要がある。
複合微粒子及び表面処理層による効果については、上述したとおり、着色粒子4と絶縁層8及び隔壁5との間に生じるファンデルワールス力を小さくする効果を奏するが、それだけでなく、複合微粒子によって耐湿度特性も向上する。
この点に関して、複合化粒子と、子粒子で被覆されていないアクリル製重合トナーとで、雰囲気温度45℃で湿度が50%から90%に上昇したときの帯電量変化を測定したところ、複合化粒子の場合は15%程度の低下にとどまったが、アクリル製重合トナーでは、帯電量が初期に比べて55%も低下した。
(実施例1の変形例)
上記図1に示した実施例1では、第1電極7の寸法を、隔壁5の側壁面よりも内側のセル空間3の領域内に収まるように設定したが、図21に示す実施例では、セル空間3の領域よりも外側にまで伸ばして、パネル前方から平面視したときに、第1電極7の外周部が第2電極9に重なるように形成してもよい。
この変形例では、上記図1の表示パネル100と同様に、隔壁5の側壁面に沿って電界が均一的に形成されるが、その電気エネルギー密度がより高くなるので、駆動電圧を低減することができる。この効果は、実施形態1−2で後述する第2電極9を隔壁5の側壁面から突出して形成する場合の効果と同様である。
(比較例1)
図7は、比較例1にかかる電気泳動表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時状態を示している。
この表示装置において、画素サイズなどの基本的なパネル構成は、上記実施例1の表示パネル100とほぼ同じである。しかし、上記実施例1の表示パネル100においては第2電極9が背面基板2側の絶縁層8から前方に離れて形成されていたのに対して、この比較例1では背面基板102側に設けた絶縁層108の直上に形成されている点、着色粒子を子粒子で被覆していない点、絶縁層108や隔壁105の側壁に表面処理をしていない点、セル空間103内が液相である点が異なっている。電極に印加する電圧は、実施例1と同じである。
比較例1のパネルにおいては、第1電極107と第2電極109との間に着色粒子104が凝集し、着色粒子104の一部は、セル空間103の底面103a上に付着して開口率を低下させる。それによって、白色反射層106による白色表示領域が小さくなり、黒色の着色粒子104が見え、白色表示時に灰色がかった白色となった。
また、白表示から黒表示に切り換えようとして第1電極107への印加電圧を正から負に変えた場合も、着色粒子104の一部は、第1電極107と第2電極109の間で付着したままになり、移動できる黒色の着色粒子104が減少して、充分な黒表示を得ることができなかった。
その結果、比較例1のパネル構成においては、反射率及びコントラストが低い表示となった。
これは、比較例1では、第1電極107と第2電極109の間の狭い領域で、電界集中を起こし電気エネルギー密度が密になったためと考察される。
図8は、比較例1の表示パネルを白表示した時の等電位線と電気エネルギー密度分布を示す図である。
実施例1の表示パネル100では第1電極7に+100Vを印加したときの電気エネルギー密度の最大値は58.3N/m2であったのに対して、比較例1では、第1電極107に+100Vを印加したときに生じる電気エネルギー密度の最大値は66.2N/m2であり、同一条件での電気エネルギー密度がやや大きい。
この点では、比較例1の方が、着色粒子104を駆動する閾値(しきいち)電圧を低くできると考えられる。ただし、実際には、実施例1の表示パネル100では±40Vで駆動可能であるのに対して、本比較例1のパネル構成では、駆動するのに±100V以上の大きさの電圧が必要であった。このように実施例1の表示パネル100が低電圧で駆動できたのは、着色粒子4を複合粒子とし、絶縁層8や隔壁5の側壁にも表面処理をしているためと考えられる。
(比較例2)
図9は比較例2にかかる電気泳動表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時の状態を示している。
この比較例2は、パネル構成が比較例1と同様であり、第2電極の構成だけが異なっている。すなわち、比較例2では、隔壁105を、導電体からなる芯(しん)材の周囲を絶縁層で被覆した構成とし、その芯(しん)材が第2電極109となっていて、第2電極109の高さが隔壁105の高さと同じである。
このような比較例2においても駆動時には、比較例1と同様、第1電極107と第2電極109の間に着色粒子104が凝集し、着色粒子104の一部が底面103a上に付着した。そのため、白色表示時において、開口率が低下して、白色反射層106による白色表示領域が小さくなり、黒色の着色粒子104が見えた。
これは、比較例2においても、第1電極107と第2電極109の間の狭い領域で電界集中を起こし電気エネルギー密度が密になっているためと考察される。
そして、この比較例2においてセル空間の中央部に付着する着色粒子104の量は、比較例1より若干多く、白表示時にはより灰色がかった白色となった。
ただし、白表示から黒表示に切り換えようとして第1電極7への印加電圧を正から負に変えた場合、第1電極107と第2電極109の間で付着したままの着色粒子104の量は上記比較例1より少なく、比較的安定した黒表示を得ることができた。
図10は、比較例2の表示パネルを白表示した時の等電位線と電気エネルギー密度分布を示す図である。
第1電極107に+100Vを印加したときに生じる電気エネルギー密度の最大値は74.9N/m2であり、上記比較例1における、同一条件での電気エネルギー密度の最大値よりも大きく、比較例1よりも着色粒子104を駆動するための閾値(しきいち)電圧を低くできると考えられるが、駆動するのに±100V以上の大きさの電圧が必要であった。
[実施形態1−2]
図11(a)は、実施形態1−2にかかる表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時の状態を示している。また、図11(b)は、図11(a)のA−A断面における平面図である。
本実施形態にかかる表示パネルが上記実施形態1−1と異なる点は、第2電極9が、隔壁5の側壁面からセル空間の中心部に向かって突出するように形成されている点である。
本実施形態による表示パネルの効果は、基本的に上記実施形態1−1と同様であって、第1電極7と第2電極9の間に電圧が印加されることよって、隔壁5の側壁面に沿って形成される電気エネルギー密度分布が均一的になるため、着色粒子4が隔壁5の側壁に万遍なく付着する、本実施形態では、実施形態1−1と比べて、より高い電気エネルギー密度が隔壁5の側壁面に沿って形成されるので、白色表示時おいてより良好な白色が得られる。
また、着色粒子4が気体相中に封入されているので、着色粒子が移動開始するのにある程度の大きさの電圧を必要とするものの、移動開始した後は迅速に移動する点も同様である。
(実施例2)
実施例2の表示パネルの画素サイズは上記実施例1と同じである。
第2電極9の高さh2は実施例1と同じ5μmであって、隔壁5の側壁面からの突出量Wは5μmである。
図12は、実施例2にかかる表示パネルを白表示した時の等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
上記実施例1では駆動電圧が±40V程度必要であったが、この実施例2では、駆動電圧を±30Vまで低減することができた。
また、実施例2の表示パネルにおいて、第1電極7に+100Vを印加したときに生じる電気エネルギー密度の最大値は92.0N/m2であった。これは、同一条件で実施例1の電気エネルギー密度の最大値が58.3N/m2であってのと比べて1.5倍以上である。
実施例2にかかる表示パネルの製造方法は、前面基板1上に上部隔壁5bを、背面基板2上に下部隔壁5aを形成するまでは、実施例1と同じであるが、第2電極9の製造方法が、上記実施例1と大きく異なっており、第2電極9に、セル空間の形状に対応する孔(あな)形でメッシュ状に加工した金属フィルムを使用する。
上記実施例1で説明したような方法で、隔壁5の井げたパターン上に、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサー等の方法で第2電極を形成すると、乾燥、焼成工程によってむしろ隔壁の中心方向に向かって電極が収縮してしまうので、第2電極9を隔壁5の側壁面から精度よく突出させることは難しいが、金属フィルムを用いることによって可能となる。
上記金属フィルムは、X方向、Y方向にマトリックス状に配列される各画素の位置に対応して孔(あな)を加工したものである。孔(あな)の大きさは、セル空間3のサイズよりも小さく、例えば、セル空間3の内壁面(隔壁5の側壁面)から第2電極を5μm突出させる場合、セル空間3の内寸よりも10μm小さい孔(あな)径にすればよい。
図13は、実施例2にかかる表示パネルの組み立て方法を説明する斜視図である。
当図に示すように、上部隔壁5bまでが形成された前面基板1と、下部隔壁5aまでが形成された背面基板2とで、第2電極9となるメッシュ状の金属フィルムを位置合わせしながら挟み込むことによって表示パネルを組み立てることができる。
この方法によれば、第2電極9を、隔壁5の側壁面から画素中央部に向けて5μm突出する形状に精度良く形成することができる。
[実施形態1−3]
図14は実施形態1−3にかかる表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時の状態を示している。
本実施形態にかかる表示パネルが実施形態1-1と異なる点は、前面基板1側に上部隔壁5bを設けておらず、第2電極9の高さを厚くした点である。
本実施形態においても、上記実施形態1−1と同様、第1電極7と第2電極9の間に電圧が印加されることよって形成される電気エネルギー密度分布が、隔壁5の側壁周辺でほぼ均一になるため、着色粒子4が隔壁5の側壁に万遍なく付着することができる。
(実施例3a)
実施例3aの表示パネルは、画素サイズを上記実施例1の表示パネルと同じとし、第1電極7と第2電極9とのZ方向離間距離h1は20μm、第2電極9の高さh2は10μmである。第2電極9として、実施例2と同様にメッシュ状に加工した金属フィルムを使用した。この表示パネルは、上記実施例1と同じ±40Vの駆動電圧で駆動することができた。
図15は、実施例3aの表示パネルを白表示した時の等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
実施例3aにおいて、第1電極7に+100Vを印加したときに生じる電気エネルギー密度の最大値は55.5N/m2であり、実施例1の表示パネルを同一条件で駆動したときの電気エネルギー密度の最大値58.3N/m2と比べてやや小さいものの、ほぼ同等である。
なお、他の構成は同じまま、第2電極9の厚みh2を5μmと薄くした場合、同一条件での電気エネルギー密度の最大値は40.3N/m2であり、±50Vの駆動電圧で駆動することができたが、第2電極9の厚みh2を1μmと薄くした場合、同一条件での電気エネルギー密度の最大値は13.6N/m2であり、±100Vの駆動電圧でも駆動することができなかった。
この実施例3aの表示パネルの製造法は、実施例2と同様であるが、前面基板1上に上部隔壁5bを形成する必要はなく、下部隔壁5aまでが形成された背面基板2と、前面基板1とで、第2電極9となる金属フィルムを位置合わせしながら挟み込んで表示パネルを組み立てることができる。
(実施例3b)
図16は、実施例3bにかかる表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時の状態を示している。
この実施例3bも、実施例3aと同様、第1電極7と第2電極9とのZ方向離間距離h1は20μm、第2電極9の高さh2は10μmであるが、上記実施例2と同様に第2電極9は、下部隔壁5aの側壁面から画素中央部に向かって突出し、その突出量Wは5μmである。
この実施例3bにおいても、第1電極7と第2電極の間に電圧が印加されることよって、隔壁5の側壁面に沿ってZ方向に均一的な電界が形成される。したがって、着色粒子4が隔壁5の側壁に沿って万遍なく付着することができる。
図17は、実施例3bの表示パネルを白表示した時の等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
本実施例において、第1電極7に+100Vを印加したときに生じる電気エネルギー密度の最大値は90.2N/m2であり、図14の実施例3aの同一条件での、電気エネルギー密度の最大値55.5N/m2と比べると1.6倍以上大きい。実施例3aでは±40V必要であった駆動電圧を、±30Vまで低減することができた。
また、実施例2の表示パネルと比べると、同一条件での電気エネルギー密度の最大値はやや小さいが、ほぼ同等である。
[実施形態1−4]
図18は実施形態1−4にかかる表示装置の画素部を示す要部断面図である。
本実施形態が上記実施形態1−1と異なる点は、バックライトを用いた、透過型の構成とした点、及び前面基板1の背面側表面上にカラーフィルター18を形成した点である。
すなわち本実施形態の表示パネルでは、前面基板1、背面基板2、第1電極7、第2電極9、着色粒子4等は、実施形態1−1と同じ構成であるが、背面基板2の下側にバックライトユニット30を設けている。このバックライトユニット30は、導光板31と、光源32と、導光板31の下面に設けた反射板33からなり、光源33から出た光は、導光板32の端面から入射されて反射板33と背面基板2との間で反射を繰り返しながら、一部の光は背面基板2からセル空間3、カラーフィルター18を透過してパネル前方に出射される。
また、カラーフィルター18は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類が、各セル空間に対して配置されている。各色の絵素(サブピクセル)のサイズは、例えば、水平100μm×垂直300μmの矩形(くけい)であって、R,G,B3つの絵素を合わせて縦横とも300μmの矩形(くけい)となる。
このような表示パネルにおいて、映像信号に応じた電圧が、駆動部10から第1電極7と第2電極9の間に印加され、その電圧に対応して着色粒子4は実施形態1−1で説明したのと同じ挙動を示し、光シャッターの役目を果たして、R、G、Bの光量を調整する。
したがって、各絵素では、画像信号に応じたR、G、Bの各色を階調表示することができ、フルカラー表示を実現できる。
本実施形態の透過型表示装置においても、画素開口率を高くできるので、明るい表示が可能である。また、着色粒子4は気体相の中を動くため、応答速度の速いフルカラー動画表示が可能である。
なお、本実施形態の透過型表示装置において、第2電極9を実施形態1−2又は実施形態1−3と同様の構成にしても、同様に実施することができる。
[実施形態1−5]
本実施形態は、自発光型の第1表示素子と反射型の第2表示素子とを切り替え可能な表示装置に本発明を適用する例である。
図19は、本実施形態の表示装置にかかる表示パネルのデバイス構造を示す要部断面図であって、1つの画素について示している。
この表示パネルには、各画素に発光型表示素子21と反射型表示素子22との両方が設けられており、表示切り換え手段(不図示)によって、発光型表示素子21で画像表示させるモードと、反射型表示素子22で画像表示させるモードとを切り換えることができるように構成されており、それによって、発光型表示素子の特性と、反射型表示素子の各特性をいかすことができ、低消費電力で屋外から屋内にいたるまで視認性に優れた表示を行うことができるようになっている。
この表示パネルは、前面基板1と背面基板2とが間隔を開けて対向配置され、その間に、図19に示すように、各画素ごとに発光型表示素子21が後方に、反射型表示素子22が前方に重ねて配置されて構成されている。
そして、発光型表示素子21及び反射型表示素子22のいずれかを駆動させて、表示パネルの前方(Z方向)に画像表示するようになっている。なお、図19では、発光型表示モードの状態が示されている。
図19に示すように、背面基板2の上に白色反射層6が形成されており、その上に第1絶縁層11が形成されている。
この第1絶縁層11上には、半導体スイッチング素子12a、12bと第2絶縁層13が形成されている。
半導体スイッチング素子12a、12bには、低温ポリシリコンTFTの他、マイクロクリスタル(微結晶)シリコンTFT、アモルファスシリコンTFTが用いられる。半導体スイッチング素子12aには、ZnO、In-Ga-Zn-O(IGZO)等の透明酸化物半導体TFTを使うこともできる。
発光型表示素子21を構成する要素として、第2絶縁層13上に、半導体スイッチング素子12aと電気的に接続された画素電極14、発光層15、対向電極16が形成され、これらを封止する封止層17が形成されており、第1絶縁層11から封止層17までの主たる構成要素は、可視光を透過する透明な膜である。
画素電極14は陽極に相当し、対向電極16は陰極に相当し、画素電極14、対向電極16共に、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料で形成されて、ともに画素ごとに独立した電極である。画素電極14と対向電極16に挟まれた発光層15は有機EL層であって、透明な発光材料で形成され、両電極間に電圧が印加されることにより発光材料に基づく色で発光する。この発光層15は水分に対して非常にぜい弱であるが、封止層17に覆われて保護されている。封止層17は、ち密で絶縁性に優れ、かつ、光透過率の高い窒化シリコン膜、あるいは窒化酸化シリコン膜を用いることが望ましい。
一方、反射型表示素子22を構成する要素として、上記封止層17の上に半導体スイッチング素子12bと電気的に接続された第1電極7と第3絶縁層8が形成されている。この第1電極7、第3絶縁層8も、透明材料で形成されている。
第1電極7から上の構成は、実施形態1−1で説明した表示パネルと同じ構成であり、白色反射層6と合わせて反射型表示素子22が構成されている。
発光型表示素子21は、上記半導体スイッチング素子12aを用い、反射型表示素子22は半導体スイッチング素子12bを用いて、個別にアクティブ駆動することができるようになっている。
すなわち、本実施形態の表示装置は、実施形態1−1で説明した駆動部10と同様の駆動部を備え、反射型画像信号に基づいて反射型表示素子22を駆動することによって画像表示する。
また、本実施形態の表示装置は、発光型表示素子21を駆動する駆動部も備え、主に動画を表示するが、その駆動部の構成や動作原理は、通常のトップエミッション型有機ELディスプレイと同様である。
ただし、発光型表示モードが選択された場合、反射型表示素子22には、リセット電圧が印加されて、図19のように、着色粒子4が隔壁5の側壁に偏在させた状態となる。したがって、発光型表示素子21からの光は、反射型表示素子22を透過して、パネル前方に出射される。
図20は、反射型表示モードにおける表示パネルの画素部を示す要部断面図である。
反射型表示モードを選択した場合、反射型表示素子22が駆動されるが、その動作原理は、実施形態1−1で説明したのと同様である。ただし、このモードにおいて発光型表示素子21には駆動電圧は印加されないので、発光型表示素子21は透明になる。したがって、発光型表示素子21の後方にある白色反射層6が、反射型表示素子22の白色反射層として利用できる。
すなわち、白表示画素では、第1電極7に正電圧V+を印加し、着色粒子4を隔壁5の側壁に偏在させた状態にすることによって、前面基板1を通じて入射した光は、白色反射層6で反射され、その反射光がパネル前方に出射されて白表示がなされる。また、黒表示、中間調表示についても、実施形態1−1で説明したのと同じ原理で行うことができる。
本実施形態の表示装置による主な効果としては、画素ごとに、画素電極14、発光層15、対向電極16からなる発光型表示素子21の前方に、反射型表示素子22が重ねて設けられているので、画素内において、発光型表示素子21及び反射型表示素子22の占める面積を大きくすることができる。
反射型表示モードにおいては、実施形態1−1で説明したように白表示を良好に行って高反射率、高コントラストの表示を得ることができる。
一方、発光型表示モードにおいても、第1電極7の上に残留する着色粒子4を大幅に削減して反射型表示素子22の開口率を大きくできるので、発光型表示素子21からの光を良好にパネル前方に出射することができる。これによって、通常のトップエミッション型有機ELディスプレイと同等の動画表示性能を得ることができる。
このように、本実施形態の表示装置によれば、反射型表示及び発光型表示のいずれにおいても、画質をほとんど損なうことなく良好な画像表示を行うことができる。
[実施形態2−1]
実施形態2−1にかかる表示装置について説明する。
この表示装置は、複数の画素を、横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に格子状にマトリックス配列した表示パネル220と、駆動部とから構成されている。
各画素サイズは、例えば横方向100μm×縦方向300μmの矩形(くけい)である。
図22は、実施形態2−1にかかる表示装置の構成を示す図であって、表示パネル220における一つの画素部(単位表示)の要部断面を代表して図示し、駆動部を構成する駆動制御部230、第1電圧印加部231,第2電圧印加部232なども図示している。
図23〜図29は、表示パネル220における画素部が、白表示、黒表示、青表示、赤表示、緑表示、緑の中間調表示、青の中間調表示をなすときの各状態を示している。
<表示パネルの構成>
表示パネル220のデバイス構造について説明する。
図22に示すように、表示パネル220は、間隔を開けて対向配置された前面基板201及び背面基板202と、その間に挿入された中間基板203を備えている。そして、各画素部には、第1表示素子221及び第2表示素子222が、基板厚み方向(z方向)に積層され、前面基板201の前方(Z方向)に画像を表示するようになっている。
第1表示素子221は、前面基板201と中間基板203との間の間げきに、隣接する画素同士を仕切るように第1隔壁210Aが配設され、この第1隔壁210Aで仕切られてなる各第1空間204内に、帯電極性と色が互いに異なる2種類の着色粒子(正に帯電した赤色粒子206と負に帯電した緑色粒子207)が封入され、この着色粒子(赤色粒子206,緑色粒子207)を駆動するために、第1表示電極211及び1対の第1集束電極216,217が、各第1空間204の内壁面に沿って配設されて構成されている。
第1隔壁210Aは、中間基板203側に設けた隔壁部210aと前面基板201側に設けた隔壁部210bとから構成され、各第1空間204を囲むように、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に伸長して井げた状に形成されている。
第1表示電極211は、前面基板201の下面側に配設され、隔壁210Aで区切られた領域よりも一回り小さい面積で形成された矩形(くけい)電極である。この第1表示電極211を被覆するように絶縁層212が形成されている。
X−Y平面内における第1集束電極216,217の配置位置については、第1隔壁210Aにおいて、第1空間204を横方向に挟む対向位置に配置されている。また、第1集束電極216,217は、第1隔壁210Aを構成する隔壁部210aと隔壁部210bとの間に設けられ、隔壁部210bの高さだけ、絶縁層212から基板厚み方向(Z方向)に離間している。この離間距離(隔壁部210bの高さ)は、5μm以上とすることが好ましい。
第2表示素子222は、背面基板202と中間基板203との間の間げきに、隣接する画素同士を仕切る第2隔壁210Bが配設され、この第2隔壁210Bで仕切られてなる各第2空間205内に、帯電極性と色が互いに異なる2種類の着色粒子(正に帯電した黒色粒子208と負に帯電した青色粒子209)が封入され、この着色粒子208,209を駆動するための第2表示電極214及び1対の第2集束電極218,219が、各第2空間205の内壁面に沿って配設されて構成されている。
第2隔壁210Bも、背面基板202側に設けた隔壁部210cと中間基板203側に設けた隔壁部210dとから構成され、各第2空間205を囲むように、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に伸長して井げた状に形成されている。
また、第2集束電極218,219のX−Y平面内における配置位置についても、第2隔壁210Bにおいて、第2空間205を横方向に挟む対向位置に配置されている。また第2集束電極218,219は、第2隔壁210Bを構成する隔壁部210cと隔壁部210dとの間に設けられ、隔壁部210cの高さだけ、絶縁層215から基板厚み方向(Z方向)に離間している。この離間距離(隔壁部210cの高さ)も、5μm以上とすることが好ましい。
図23(b)は、図23(a)に示す、表示パネル220の画素部におけるA−A断面を示す図である。図23(b)に示すように、表示パネル220の各画素部(第2隔壁210Bによって区切られた領域)は矩形(くけい)をしている。
第2表示電極214は、背面基板202の上面側に配設された白色反射層213の上に形成され、第2隔壁210Bで区切られた領域よりも一回り小さい面積で形成された矩形(くけい)電極である。この第2表示電極214を被覆するように絶縁層215が形成されている。
第2集束電極218,219は、第1表示電極211を横方向に挟むように配置され、基板厚み方向(Z方向)については第1隔壁210Aを構成する隔壁部210cと隔壁部210dとの間に設けられている。
第1表示素子221には、第1表示電極211と第1集束電極216,217に、赤色粒子206及び緑色粒子207を駆動するための電圧を印加する第1電圧印加部231が接続されている。第2表示素子222には、第2表示電極214と第2集束電極218,219に、黒色粒子208及び青色粒子209を駆動するための電圧印加する第2電圧印加部232が接続されている。
第1電圧印加部231は、第1表示電極211と第1集束電極216,217との間の電圧印加パターンを変更することによって、赤色粒子206及び緑色粒子207が前面基板201を覆う状態、及び赤色粒子206及び緑色粒子207を第1隔壁210Aに密着させて前面基板201上から退避した状態を現出する。また、第2電圧印加部232は、第2表示電極214と第2集束電極218,219との間の電圧印加パターンを変更することによって、黒色粒子208及び青色粒子209が背面基板202を覆う状態、及び第2隔壁210Bに密着させて背面基板202上から退避した状態を現出する。これによって、各画素で、パネル前方から入射される光を反射して再びパネル前方に出射する光の色調を変化させ、カラーで画像表示を行う。
表示パネルを形成する材料:
前面基板201は、光を取り出す必要があるため、ホウケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラスなどの透明ガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
背面基板202には、例えば、ホウケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の樹脂フィルム、ステンレス等の金属箔を用いることができる。
第1表示電極211及び第2表示電極214は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料で形成されている。
絶縁層212、絶縁層215は、可視光線を透過する無色透明の樹脂材料を用いて形成され、電子写真感光体に用いられるポリカーボネート系の電荷輸送材を用いることが好ましい。
第1隔壁210A及び第2隔壁210Bの各隔壁部210a〜210cはポリマー樹脂で形成されている。
第1集束電極216,217及び第2集束電極218,219は、Cr/Al/Cr、Cr/Cu/Cr、Ti/Al/Ti等の導電性金属で形成されている。ここで、Cr、Tiと、Al、Cuとのサンドイッチ構造にしているのは、低抵抗材料であるAl、Cuをしん材に用いることによって電極の導電性を高め、Cr、Tiを用いることによって、隔壁部210a〜210cとAl、Cuとの密着性を高めるとともに、反射防止膜としてコントラストの低下を防止するためである。
<着色粒子及び絶縁層>
第1空間204に封入する赤色粒子206と緑色粒子207、第2空間205に封入する黒色粒子208と青色粒子209に関して、まず黒色粒子208について説明する。
黒色粒子208は、上記実施形態1−1において図2を参照しながら説明した着色粒子4と同様の構成であって、母粒子と、その表面を被覆する子粒子とで形成された複合微粒子であって、正に帯電する特性を有している。
母粒子としては、積水化成品工業(株)製の真球状微粒子ポリマーMBX−5(平均粒径5μm)、あるいは綜研化学(株)製のケミスノーMX−5(平均粒径5μm)をベースに、黒色顔料等で着色したものを使用し、また、子粒子には、平均粒径16nmの正の帯電処理を施した単分散シリカ微粒子を使用することによって、黒色粒子208全体として正の帯電性を有するものを形成できる。
この複合微粒子は、ハイブリダイゼーションシステムなどを使用して、高速気流中で、子粒子である単分散シリカ微粒子を、母粒子であるポリマー微粒子に衝突させて固定化することにより、ポリマー微粒子の表層の全面を覆うようにほぼ均一に単分散シリカ粒子を被覆して作製することができる。母粒子の表層全面に子粒子を被覆する配合比などについても実施形態1−1で着色粒子4について説明したとおりである。
作製された黒色粒子208は正に帯電しており、帯電量を一定に保つために、水分含有量が一定に保たれたドライエア、ドライ窒素ガス等の雰囲気下で保管することが好ましい。
次に、負に帯電する物性を有する青色粒子209については、青色顔料等で着色したアクリル製樹脂からなる粒子であるが、負帯電を得るためにシリカ微粒子からなる子粒子は被覆していない。
上記のように作製した正に帯電した黒色粒子208と青色粒子209とを、ほぼ同量、同一のポリ容器内に入れ、所定時間、所定の回転速度で回転して攪拌する。このいわゆる摩擦法によって、青色粒子209に負の帯電処理がなされる。
各々の粒子に必要な帯電量は、回転速度と回転時間を制御することによって得ることができる。
なお、このような摩擦法の他、コロナ放電法、電極注入法、等によっても粒子に帯電性を付与することが可能である。
正帯電性を有する赤色粒子206は、黒色粒子208と同様の方法で複合粒子化処理をすることによって作製し、負帯電性を有する緑色粒子207も青色粒子209と同様の方法で作製することができる。
絶縁層212は、第1表示電極211に印加される電圧と、集束電極216、217に印加される電圧との相対関係に基づいて帯電状態が変化し、その帯電状態に応じて、正に帯電した赤色粒子206及び負に帯電した緑色粒子207は、絶縁層212上を左右に移動する。そして、赤色粒子206及び緑色粒子207が絶縁層212を被覆する割合が変化するようになっている。
また絶縁層215も、第2表示電極214に印加される電圧と、集束電極218,219に印加される電圧との相対関係に基づいて帯電状態が変化し、その帯電状態に応じて、正に帯電した黒色粒子208及び負に帯電した青色粒子209は、絶縁層215上で左右に移動する。
そして、黒色粒子208及び青色粒子209が絶縁層215を被覆する割合(すなわち黒色粒子208及び青色粒子209が白色反射層213を被覆する割合)が、変化するようになっている。
なお、絶縁層215の表面部分に、微小な凹凸が表面に形成された表面処理層(実施形態1−1で図2に示した表面処理層8bと同様の層)を設けることによって、絶縁層215と、黒色粒子208,青色粒子209との間に働くファンデルワールス力が低減されるので、低い印加電圧で黒色粒子208,青色粒子209を移動させることが可能となる。
また、第1表示素子221においても同様に、表面処理層を、絶縁層212の上、第1隔壁210Aの表面に形成することが好ましい。
<表示パネルの製造方法>
本実施形態に係る表示パネルの製造方法について説明する。
1.背面基板202側のパネルを作製する工程:
無アルカリガラスからなる背面基板202に、酸化チタン(チタニア、TiO2)皮膜からなる白色反射層213を、塗布、印刷、コールド・スプレイ等の方法によって、画像表示に必要な基板の周辺部を除くほぼ全面に形成する。
次に、第2表示電極214を透明導電材料であるITOによりスパッタ、蒸着等により形成し、フォトリソグラフィ及びエッチング等のプロセスにより所定の矩形(くけい)形状にパターニングする。
最後に、絶縁層215を、溶剤で溶かしたポリカーボネート系の電荷輸送材を、塗布、印刷等の方法によって、画像表示に必要な基板の周辺部を除くほぼ全面に形成する。そして絶縁層215の表面上に、下記のように表面に凹凸形成を有する表面処理層を形成する。
絶縁層215の表面に表面処理層を形成する工程:
表面処理層の形成方法は、実施形態1−1で図2を参照しながら説明した表面処理層8bの形成方法と同様であって、媒体にTiO2微粒子を分散させてなるコーティング剤を、絶縁層215の表面上に塗布することによって表面処理層を形成する。
形成される表面処理層は、TiO2微粒子層と、最表面に露出するポリカーボネートからなる絶縁層とから構成される。
このように形成される表面処理層は、膜硬度が高く、かつ高透過率の層であり、TiO2微粒子の凝集が比較的少なく、粒径分布のそろった粒子が積層された均一な層であって、層の厚みは100nm程度である。
ここで、コーティング剤に使用するTiO2微粒子の種類や量によって、形成される表面処理層の導電性を調整することができる。
このように絶縁層215の表面に表面処理層を形成することによって、絶縁層215と着色粒子との間に働くファンデルワールス力が低減されるので、低い印加電圧で絶縁層215から着色粒子を引き離すことが可能となる。
コーティング剤に用いるTiO2微粒子の直径は、着色粒子の直径(5μm)より小さな直径(30nm)のものを用いる。その理由は、着色粒子の直径よりも大きい直径を有する微粒子で表面処理層を形成すると、その表面処理層に形成される凹凸が大きくなり、着色粒子自身がその凹凸に沿って付着してしまうので、ファンデルワールス力を低減する効果がなくなるからである。また、着色粒子の直径より小さな直径の微粒子を用いることにより、表面処理層の表面における凹凸の平均間隔が着色粒子群の平均粒径よりも小さくなる。それによって、着色粒子と絶縁層215との間に作用するファンデルワールス力が確実に低減されるので、低い印加電圧で絶縁層215から着色粒子を引き離すことが可能となる。同様の理由で、この表面処理層は凹凸形状が層表面の全体にわたって均一に形成されているのが望ましい。具体的には、着色粒子の直径(5μm)よりも大きな抜けがないように表面処理層を形成するのが望ましい。
なお、本実施形態における絶縁層215の厚みは、電圧印加時に絶縁破壊が生じるのを防ぐことを考慮して15μmとした。
このような表面処理層は、絶縁層215の上だけでなく、第2隔壁210Bの隔壁部210c、210dや第2集束電極218,219の表面にも形成してもよい。それによって、第2空間205の内面全体において電気抵抗、帯電性、及び形状等の条件が均一になり、表面処理層に付着した着色粒子とはほぼ同じ電圧特性を有することになるので、駆動時に良好な表示特性を得ることができる。
次に、フォトリソ等の方法により画素サイズに応じた井げた状に隔壁部210cを高さ10μmで形成する。
隔壁部210cは、水平ピッチ100μm、垂直ピッチ300μm、幅20μmの井げた状に形成し、高さは10μmとする。
次に、隔壁部210cを形成した上に、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサー等の方法によりAgを主成分とするペーストを塗布し、その後、乾燥、焼成し、第2集束電極218、219を膜厚10μmで形成する。
さらに、隔壁部210dを、隔壁部210cと同じ方法で、同じ形状、ピッチ、高さで形成する。これによって、背面基板202上に、白色反射層213、第2表示電極214、絶縁層215、及び隔壁部210c、隔壁部210d、第2集束電極218,219からなる第2隔壁210Bが高さ30μmで形成される。
この高さは、第2空間205に封入されるすべての着色粒子208,209が第2隔壁210Bの側壁に付着できるように設定されている。
2.前面基板201側のパネルを作製する工程:
前面基板201側のパネルと、背面基板202側のパネルとの差異は、白色反射層213が形成されていない点だけである。したがって、背面基板202側のパネルと同様の方法で、前面基板201上に第1表示電極211、絶縁層212、及び隔壁部210b、第1集束電極216,217、隔壁部210aを形成することによって、前面基板201側のパネルを作製する。
3.パネル組み立て工程:
上記のように製造した背面基板202側のパネルにおいて、第2隔壁210Bによって仕切られた各空間に、黒色粒子208,青色粒子209を均等に散布する。同様に、前面基板201側のパネルにおいて、第1隔壁210Aによって仕切られた各空間に、赤色粒子206,緑色粒子207をほぼ均等に散布する。着色粒子を散布した前面基板201の上に蓋(ふた)をするような形で無アルカリガラスからなる中間基板203を設置する。このとき、隔壁部210bの頂部にあらかじめ接着剤を塗布し、中間基板203と接着固定しておくのが望ましい。これによって、前面基板201と中間基板203との間に、高さ30μmの第1空間204が形成されるとともに、第1空間204内に赤色粒子206,緑色粒子207が封入される。
さらに、前面基板201及び中間基板203で蓋(ふた)をするような形で着色粒子を散布した背面基板202と重ね合わせる。背面基板202と中間基板203との間に、高さ30μmの第2空間205が形成されるとともに、第2空間205内に黒色粒子208,青色粒子209が封入される。
背面基板202の周縁部にエポキシ系UV接着剤を所定幅で塗布し、前面基板201と背面基板202の位置合わせをして、UV光を照射すると、接着剤が硬化して表示パネルが完成する。
この組み立て工程は、水分含有量が極力少なくなるように乾燥処理したドライガス(例えばドライ窒素)雰囲気下において行うことが好ましい。これによって、第1空間204及び第2空間205内に、水分が排除されたドライガスと着色粒子206,207,208,209が封入されるので、封入された着色粒子の帯電量が一定に維持される。
<表示装置の動作>
上記構成の表示装置の動作について、図23〜図28を参照しながら説明する。
この表示装置においては、表示パネル220を構成する各画素が、白色、黒色、赤色、緑色、青色のいずれかを、全階調あるいは中間調で表示することによって、1フレームの画像表示がなされる。
1フレーム分の画像信号は、1フレームを構成する各画素の色及び階調を示すデータである。この画像信号が駆動制御部230に送られると、駆動制御部230は、受信した画像信号に基づいて第1電圧印加部231及び第2電圧印加部232に制御信号を送る。第1電圧印加部231及び第2電圧印加部232は、それに基づいて各画素の第1表示素子221及び第2表示素子222の各電極に電圧を印加する電圧印加パターンを変えることによって、第1空間204内における着色粒子206,207の位置及び第2空間205内における着色粒子208,209の位置を移動させて、各画素におけるパネル前方に反射させる光の色調を変化させることによって画像表示する。
なお、第1電圧印加部231及び第2電圧印加部232は、このような書き込みを行う前に、すべての画素に対して、第1表示電極211と第1集束電極216,217との間、及び、第2表示電極214と第2集束電極218,219との間に通常の白色標示の駆動電圧より10%〜20%程度高いリセット電圧を印加することが好ましい。
以下に、第1電圧印加部231及び第2電圧印加部232が各電極に印加するパターンを説明する。
第1電圧印加部231が第1表示素子221の第1表示電極211及び第1集束電極216,217に印加する電圧(極性と大きさ)、並びに、第2電圧印加部232が第2表示素子222の第2表示電極214及び第2集束電極218,219に印加する電圧(極性と大きさ)は、第1空間204内における着色粒子206,207の位置及び第2空間205内における着色粒子208,209の位置を、隔壁210A、210Bに密着したリセット状態から、各色の表示に適した位置に移動させるのに適した極性及び大きさに決められている。下記表1は、その一例である。
以下、画素部が1.白色表示、2.黒色表示、3.赤色表示、4.緑色表示、5.青色表示、6.各色中間調表示を行う各場合の電圧印加パターンと各着色粒子の動作について説明する。
1.白色表示の場合
図23(a),(b)は、白色表示状態の画素部を示している。
白色表示しようとする画素部では、電圧印加部231は、第1表示電極211の電位を0Vとし、第1集束電極216に正の電圧V+(+40V)、第1集束電極217に負の電圧V-(−40V)を印加し、電圧印加部232は、第2表示電極214の電位を0Vとし、第2集束電極218に正の電圧V+(+40V)、第2集束電極219に負の電圧V-(−40V)を印加する。
これによって、第1表示素子221では、第1表示電極211から第1集束電極216にかけて正の電界分布が形成され、負帯電の緑色粒子207は第1集束電極216側に引き寄せられる。とともに、第1表示電極211から第1集束電極217にかけて負の電界分布が形成され、正帯電の赤色粒子206は第1集束電極217側に引き寄せられる。
特に、第1表示電極211の端部と、第1集束電極216,217との間には、第1集束電極216から第1表示電極211に向かう電界E1、並びに第1表示電極211から第1集束電極217に向かう電界E2が、強く均一的に形成されて、この領域で電気エネルギー密度が高くなるので、赤色粒子206及び緑色粒子207は、画素中央部に残存することなく図23に示すように隔壁部210bの側壁面上に集束する。
第2表示素子222でも同様に、第2表示電極214から第2集束電極218にかけて正の電界分布が形成され、負帯電の青色粒子209は正電圧が印加された第2集束電極218側に引き寄せられる。とともに、第2表示電極214から第2集束電極219にかけて負の電界分布が形成され、正帯電の黒色粒子208は負電圧が印加された第2集束電極219側に引き寄せられる。そして、第2表示電極214の端部と、第2集束電極218,219との間には、第2集束電極218の端部から第2表示電極214に向かう電界E3、並びに第1表示電極214から第2集束電極219に向かう電界E4が均一的に形成されて、この領域で電気エネルギー密度が高くなるので、黒色粒子208及び青色粒子209は、画素中央部に残存することなく隔壁部210cの側壁面上に集束する。
このようにして、画素部の中央部(パネル前方から見えやすい領域)では、絶縁層212、中間基板203、絶縁層215の表面が着色粒子によって遮られることなく開口されるので、パネル前方から入射する光は、透明材料で形成された第1表示電極211、絶縁層212、中間基板203、絶縁層215、及び第2表示電極214を通過して、白色反射層213で反射され、再びパネル前方に出射される。これによって、画素は白色度の高い良好な白色表示がなされる。
2.黒色表示の場合
黒色表示しようとする画素では、図24に示すように、電圧印加部231は、白色表示と同様に、第1表示電極211の電位を0Vとし、第1集束電極216に正の電圧V+(+40V)、第1集束電極217に負の電圧V-(−40V)を印加する。一方、電圧印加部232は、第2表示電極214に負の電圧V-(−40V)を印加し、第2集束電極218,219に正の電圧V+(+40V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、白色表示の場合と同様に、負帯電の緑色粒子207は第1集束電極216側に引き寄せられ、正帯電の赤色粒子206は第1集束電極217側に引き寄せられる。そして、赤色粒子206及び緑色粒子207は、第1集束電極216の端部と第1表示電極211との間に形成される電界E1、及び第1表示電極211の端部と第1集束電極217との間に形成される電界E2によって、画素中央部に残存することなく隔壁部210bの側壁面上に集束する。
一方、第2表示素子222においては、負帯電の青色粒子209は、正電圧が印加された集束電極216、217に引き寄せられ、集束電極216,217と第2表示電極214の端部との間に形成される電界E5,E6によって、隔壁部210aの側壁面上に集束する。
また、正帯電の黒色粒子208は、負電圧が印加された第2表示電極214に引き寄せられて、第2表示電極214の表面の上に層状に拡がる。
したがって、第1表示素子221は開口状態となり、第2表示素子222は、背面基板202上を黒色粒子208が占める状態となる。
よって、パネル前方から入射する光は、着色粒子によって遮られることなく、透明材料で形成された前面基板201,第1表示電極211,絶縁層212,中間基板203,第2表示電極214を通過して、黒色粒子208の層で反射され、再びパネル前方に出射されるので、画素は良好な黒色を表示する。
3.青色表示の場合
青色表示しようとする画素では、図25に示すように、電圧印加部231は、白色・黒色表示と同様に、第1表示電極211の電位を0Vとし、第1集束電極216に正の電圧V+(+40V)、第1集束電極217に負の電圧V-(−40V)を印加する。一方、電圧印加部232は、黒色表示時と逆極性の電圧を印加する。すなわち、第2表示電極214に正の電圧V+(+40V)を印加し、集束電極216,217に負の電圧V-(−40V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、赤色粒子206,緑色粒子207が、黒色表示の時と同じ挙動をして隔壁部210bの側壁面上に集束する。
一方、第2表示素子222においては、第2表示電極214及び第2集束電極218,219に、黒色表示時と逆極性の電圧が印加されるので、黒色粒子208と青色粒子209とが入れ代わった挙動をする。
すなわち、正に帯電した黒色粒子208は、負電圧が印加された第1集束電極216,217に引き寄せられ、第2表示電極214の端部と第2集束電極218,219との間に形成される電界E7,E8によって、隔壁部210cの側壁面上に集束する。また、負に帯電した青色粒子209は、第2表示電極214に形成された正の電界分布に沿って、正電圧が印加された第2表示電極214の上に層状に拡がる。
したがって、第1表示素子221は開口し、第2表示素子222は、背面基板202上を青色粒子209が占める状態となる。
よって、パネル前方から入射する光は、着色粒子によって遮られることなく、透明材料で形成された第1表示電極211、絶縁層212、中間基板203を通過して、青色粒子209の層で反射され、再びパネル前方に出射されるので、画素は良好な青色を表示する。
4.赤色表示の場合
赤色表示しようとする画素では、図26に示すように、電圧印加部231は、第1表示電極211に負の電圧V-(−40V)を印加し、第1集束電極216,217に正の電圧V+(+40V)を印加する。一方、電圧印加部232は、第2表示電極214の電位を0Vとし、第2集束電極218に正の電圧V+(+40V)、第2集束電極219に負の電圧V-(−40V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、負帯電の赤色粒子206は、正電圧が印加された第1集束電極216,217に引き寄せられ、第1集束電極216,217から第1表示電極211の端部の間に形成される電界E9,E10によって、隔壁部210bの側壁面上に集束する。また、正帯電の緑色粒子207は、負電圧が印加された第1表示電極211に引き寄せられて、第1表示電極211の表面上に層状に拡がる。
一方、第2表示素子222においては、白色表示の時と同様、第2表示電極214から第2集束電極218にかけて正の電界分布が形成され、負帯電の青色粒子209は正電圧が印加された第2集束電極218側に引き寄せられる。とともに、第2表示電極214から第2集束電極219にかけて負の電界分布が形成され、正帯電の黒色粒子208は負電圧が印加された第2集束電極219側に引き寄せられる。
したがって、第1表示素子221においては、前面基板201上を赤色粒子206が占めた状態となり、第2表示素子222は開口された状態となる。
よって、パネル前方から入射する光は、赤色粒子206の層で反射されて、パネル前方に出射されるので、赤色表示状態となる。また、仮に赤色粒子206で覆われていない箇所から入射した光があっても、その入射した光は、透明材料で形成された第1表示電極211、絶縁層212、中間基板203を通過して、白色反射層213で反射されて、パネル前方に向けて出射される。すなわち、青色粒子209で反射されて混色することはない。
5.緑色表示の場合
緑色表示しようとする画素では、図27に示すように、電圧印加部231は、黒色表示時と逆極性の電圧を印加する。すなわち、第1表示電極211に正の電圧V+(+40V)を印加し、第1集束電極216,217に負の電圧V-(−40V)を印加する。また、電圧印加部232は、第2表示電極214の電位を0Vとし、第2集束電極218に正の電圧V+(+40V)、第2集束電極219に負の電圧V-(−40V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、第1表示電極211及び第1集束電極216,217に、赤色表示時と逆極性の電圧が印加されるので、赤色粒子206と緑色粒子207とが入れ替わった挙動をする。すなわち、正帯電の緑色粒子207は、負電圧が印加された第1集束電極216,217に引き寄せられ、第1表示電極211の端部から第1集束電極216,217の間に形成される電界E11,E12によって、隔壁部210bの側壁面上に集束する。また、負帯電の赤色粒子206は、正電圧が印加された第1表示電極211に引き寄せられて、第1表示電極211の表面上に層状に拡がる。
一方、第2表示素子222においては、赤色表示の時と同じ電圧印加状態なので、黒色粒子208,青色粒子209は、赤色表示の時と同じ挙動をする。
したがって、第1表示素子221は、前面基板201上を緑色粒子207が占めた状態となり、第2表示素子222は開口される。
よって、パネル前方から入射する光は、緑色粒子207の層で反射され、再びパネル前方に出射されるので、緑色表示状態となる。また、仮に緑色粒子207で覆われていない箇所から入射した光があっても、その入射した光は、透明材料で形成された第1表示電極211、絶縁層212、中間基板203を通過して、白色反射層213で反射されて、パネル前方に向けて出射される。すなわち、青色粒子209で反射されて混色することはない。
なお、上記のように画像表示前に、すべての画素に対して、白色表示時と比べて大きなリセット電圧を印加すれば、画素中央部に残留する着色粒子をなくして、着色粒子を隔壁210A,210Bの側壁面に寄せる効果が大きいので、長期にわたって常に高反射率、高コントラストの表示を得ることができる。また、着色粒子が絶縁層215上に付着したまま残留する焼き付きも防止される。
6.各色の中間調表示の場合
6−1 緑色の中間調表示:
各色の中間調表示に関して、まず、図28を参照しながら、緑色の中間調表示の場合を説明する。
電圧印加部231は、第1表示電極211及び第1集束電極216に正の電圧V+(+25V)、第1集束電極217に負の電圧V-(−50V)を印加する。また、電圧印加部232は、第2表示電極214及び第2集束電極219にV-(−25V)、第2集束電極218に正の電圧V+(+50V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、正帯電の赤色粒子206は、負電圧が印加された第1集束電極217側に引き寄せられ、第1表示電極211の端部と第1集束電極217との間に形成される電界E15によって、隔壁部210bの側壁面上に集束する。
また、負帯電の緑色粒子207は、正電圧が印加された第1表示電極211及び第1集束電極216に引き寄せられるが、第1表示電極211と第1集束電極216は同電位なので、両電極間には集束せず、第1表示電極211上の第1集束電極216に寄った領域(図中右半分の領域)に層状に拡がった状態となる。
一方、第2表示素子222においては、負帯電の青色粒子209は、正電圧が印加された第2集束電極218側に引き寄せられ、第2集束電極218と第2表示電極214の端部との間に形成される電界E16によって、隔壁部210cの側壁面上に集束する。また、正帯電の黒色粒子208は、負電圧が印加された第2表示電極214及び第2集束電極219に引き寄せられるが、第2表示電極214と第2集束電極219とは同電位なので、両電極間には集束せず、第2表示電極214上の第2集束電極219に寄った領域(図中左側領域)に層状に集束する。
したがって、第1表示素子221においては、前面基板201上の右側領域が緑色粒子207の層で占められ、左半分領域が開口された状態となり、第2表示素子222においては、背面基板202上の左側領域が黒色粒子208の層で占められ、右側領域が開口される。
よって、パネル前方からは、緑色粒子207の層と、黒色粒子208の層及び若干の白色反射層213が観察されることになり、緑色の中間色が表示される。
ここで、第1表示素子221における緑色粒子207の被覆率と開口率、並びに第2表示素子222における黒色粒子208の被覆率と開口率は、各電極に印加する電圧の大きさを調整することによって変化する。
例えば、上記のように第1集束電極217に印加する負の電圧V-が−50Vで、第1表示電極211及び第1集束電極216に印加する正の電圧V+が+25Vの場合、その差が75Vであるが、この差がより大きくなるよう設定すれば、緑色粒子207の被覆率は減少する。
したがって、各電極に印加する電圧の大きさを段階的に変えて設定すれば、緑色中間調の階調表示を行うこともできる。
6−2 赤色の中間調表示:
赤色の中間調を表示する場合は、第1表示素子221の各電極に印加する電圧の極性を、上記緑色の中間調表示の場合と逆極性にする。
すなわち、電圧印加部231は、第1表示電極211及び第1集束電極216に負の電圧V-(−25V)、第1集束電極217に正の電圧V+(+50V)を印加する。そして、電圧印加部232は、緑色の中間調表示の場合と同様に、第2表示電極214及び第2集束電極219にV-(−25V)、第2集束電極218に正の電圧V+(+50V)を印加する。
これによって、第1表示素子221においては、赤色粒子206と緑色粒子207の挙動が入れ替わり、負帯電の緑色粒子207は、正電圧が印加された第1集束電極217側に引き寄せられ、第1表示電極211の端部と第1集束電極217との間に形成される電界によって、隔壁部210bの側壁面上に集束する。また、正帯電の赤色粒子206は、負電圧が印加された第1表示電極211及び第1集束電極216に引き寄せられ、第1表示電極211上の第1集束電極216に寄った領域(図中右側領域)に層状に集束する。
第2表示素子222においては、緑色の中間調表示の場合と同様に、負帯電の青色粒子209は、正電圧が印加された第2集束電極218側に引き寄せられて、隔壁部210cの側壁面上に集束する。また、正帯電の黒色粒子208は、負電圧が印加された第2表示電極214及び第2集束電極219に引き寄せられ、第2表示電極214上の第2集束電極219に寄った領域(図中左側領域)に層状に集束する。
したがって、第1表示素子221においては、前面基板201上の右側領域が赤色粒子206の層で占められ、左側領域が開口された状態となり、第2表示素子222においては、背面基板202上の左側領域が黒色粒子208の層で占められ、右側領域が開口されるので、パネル前方から、赤色粒子206の層と、黒色粒子208の層及び若干の白色反射層213が観察されることになり、赤色の中間色が表示される。
ここで、第1表示素子221における赤色粒子206の被覆率と開口率、並びに第2表示素子222における黒色粒子208の被覆率と開口率は、各電極に印加する電圧の大きさを調整することによって変化するので、各電極に印加する電圧の大きさを段階的に変えることによって、赤色中間調の階調表示を行うこともできる。
6−3 青色の中間調表示:
青色の中間調を表示する場合は、図29に示すように、電圧印加部231は、白色表示の場合と同様に、第1表示電極211の電位を0Vとし、第1集束電極216に正の電圧V+(+40V)、第1集束電極217に負の電圧V-(−40V)を印加し、第1表示素子221を開口状態にする。
一方、電圧印加部232は、第2表示素子222の各電極に印加する電圧の大きさを、白色表示の場合よりも小さく設定する。例えば、第2表示電極214の電位を0Vとし、第2集束電極218に印加する正の電圧V+を+25V、第2集束電極219に印加する負の電圧V-を−25Vとする。
これによって、第2表示素子222において、正帯電の黒色粒子208は、負電圧が印加された第2集束電極219に引き寄せられ、負帯電の青色粒子209は、正電圧が印加された第2集束電極218に引き寄せられるが、白色表示の場合と比べると、第2表示電極214と、第2集束電極218,219との間にかかる電圧の大きさが小さいので、黒色粒子208と青色粒子209は、隔壁部210cの側壁面上に集束しようとする力が弱く、第2表示電極214の上にある程度拡がる。
したがって、第2表示素子222において、背面基板202上の左側領域は黒色粒子208の層で占められ、右側領域は青色粒子209の層で占められる。
パネル前方からは、青色粒子209の層と、黒色粒子208の層と、若干の白色反射層213が観察されることになり、青色の中間色が表示される。
ここで、第2表示素子222における黒色粒子208、青色粒子209の被覆率及び開口率は、各電極に印加する電圧の大きさを調整することによって変化するので、各電極に印加する電圧の大きさを段階的に変えることによって、青色中間調の階調表示を行うこともできる。
6−4 黒色の中間調表示:
黒色の中間調表示は、上記図23に示す白色表示において、第2集束電極219に印加する負の電圧V-の大きさを小さく(例えば−25V)設定して、第2表示電極214の端部と第2集束電極219との間の電界E4を弱めれば、黒色粒子208が隔壁部210cの側壁面上に集束しようとする力が弱くなり、第2表示電極214の上にある程度拡がるので、パネル前方から、黒色粒子208の層と白色反射層213とが観察されることになり、黒色の中間色が表示される。
以上のように、本実施形態にかかる表示装置では、各電圧印加部231,232から各画素部の電極に電圧印加することで、各画素の空間204,205内で着色粒子206〜209を駆動して、各画素で、赤色、青色、緑色、黒色のいずれかを表示することで1フレーム分の画像表示がなされる。
<本実施形態の表示装置による効果>
本実施形態にかかる表示装置は、各画素において、赤色、青色、緑色、黒色を表示でき、また、それら各色を階調表示することもできる。したがって、加法混色によるフルカラー表示を実現できる。
そして、書き込みした後は、電圧印加部231、232から各電極に対する電圧印加を停止しても、着色粒子206〜209と、空間204,205の内壁(隔壁210A,210Bの側壁や絶縁層212,215)との間には、主としてファンデルワールス力による付着力が生じているので、そのままの状態が維持される。したがって、次に書き込みを行うまで、画像表示状態が維持される。
よって、電子書籍のテキスト画面だけでなく、フルカラー画像等のコンテンツを、少ない消費電力で長時間表示することが可能である。
また、本実施形態にかかる表示装置は、着色粒子が気体相中に封入されているので、着色粒子が液体中を移動する電気泳動表示装置に比べ、移動開始するのにある程度の大きさの電圧を必要とするものの、移動開始した後は迅速に移動する。
したがって、駆動電圧が印加されていないときには着色粒子は安定に静止し、かつ駆動電圧が印加されると迅速に移動するので、安定でかつ迅速な表示が可能となる。
第1空間204には互いに逆の極性に帯電する赤色粒子206と緑色粒子207とが封入されているので、赤色粒子206及び緑色粒子207の帯電量を長期にわたって維持しやすい。また、第2空間205にも互いに逆の極性に帯電する黒色粒子208と青色粒子209とが封入されているので、黒色粒子208及び青色粒子209の帯電量を長期にわたって維持しやすい。
次に、着色粒子を複合微粒子とすることによる効果について、黒色粒子208を代表として説明する。
黒色粒子208を、母粒子の表層全面に子粒子を被覆した構造とすると、黒色粒子208と、絶縁層215及び隔壁210との間に発生するファンデルワールス力が小さくなるので、黒色粒子208を付着面から引きはがすのに必要な電圧が小さくできるだけでなく、耐湿度特性も向上する。すなわち、雰囲気温度45℃で湿度が50%から90%に上昇した場合、子粒子による被覆のないアクリル製重合トナーでは帯電量が初期に比べて55%も低下したが、本実施形態の複合化粒子の場合は15%程度の低下に留(とど)まった。
また、上記のように絶縁層215の表面層上、並びに隔壁210の表面上に、微小な凹凸が形成された表面処理層を設けることによって、黒色粒子208との間に働くファンデルワールス力をさらに低減する効果が得られる。
<集束電極の位置に関する考察>
隔壁210Aに第1集束電極216,217を設ける隔壁高さ方向の位置については、第1空間204の前面基板201側の面と中間基板203側の面との間に設け、前面基板201側の面から隔壁高さ方向に離間させて設けることが好ましい。隔壁210Bに第2集束電極218,219を設ける隔壁高さ方向の位置についても、第2空間205の背面基板202側の面と中間基板203側の面との間に設け、第2空間205の背面基板202側底面から隔壁高さ方向に離間させることが好ましい。
図22に示すように、第2集束電極218,219を含めた第2隔壁210B全体の高さHに対する隔壁部210cの高さh1の比率h1/Hは1/5以上とすることが好ましい。
これは、比率h1/Hが小さいと、第2集束電極218,219の隔壁210B高さ方向の位置が第2表示電極214に近接するので、第2表示電極214と第2集束電極218,219との狭い間げきに電界が集中して電気エネルギー密度が高くなり、着色粒子208,209がこの狭い領域に凝集しようとするが、すべての着色粒子が隔壁部210bの側壁面に沿って付着することができず、画素部の中央部に着色粒子が残ってしまうので、反射率及びコントラストが低くなってしまうからである。
一方、比率h1/Hが1に近づくと、第2集束電極218,219の高さを確保できなくなるので、高い駆動電圧が必要となる。
よって、比率h1/Hは1/5以上、4/5以下の範囲に設定することが好ましい。
同様に、隔壁210A全体の高さに対する、隔壁部210bの高さの比率も1/5以上、4/5以下の範囲に設定することが好ましい。
特に、各隔壁210A、210Bにおいて、第1集束電極216,217、第2集束電極218,219を、隔壁高さ方向の中央付近に位置させることが望ましい。
本実施形態の表示装置が、このような集束電極によって、優れたコントラストを得られることを、図30〜32の電気エネルギー密度分布図を参照しながら説明する。
図30は、白色表示状態(図23)における第2表示素子222の等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
第2集束電極218,219が、隔壁210Bの高さ方向の中央付近において10μmの厚みで形成されているため、白色表示状態においては、この図30に示すように、第2表示電極214と第2集束電極218,219のとの間に、隔壁部210cの側壁面に沿って大きな電気エネルギー密度分布が均一的に形成される。
したがって、着色粒子を駆動するのに必要な電圧は小さくて済み、第2集束電極219の近くに移動した黒色粒子208及び第2集束電極218の近くに移動した青色粒子209は、隔壁部210cの側壁面上に万遍なく付着することができる。
図31は、黒色表示状態(図24)における第2表示素子222の等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
第2集束電極218,219は、隔壁210Bの高さ方向に中央付近に厚く形成されているため、黒色表示状態においても、図31に示すように、隔壁部210cの側壁面に沿って均一的な電気エネルギー密度分布が形成される。そして、第2集束電極218,219の近くの、隔壁部210cの側壁面上に形成される電気エネルギー密度は120.6N/m2と大きい。
したがって、着色粒子を駆動するのに必要な電圧は小さくて済み、第2集束電極218,219の近くに移動した青色粒子209は、隔壁部210cの側壁面上に万遍なく付着することができる。
一方、正帯電の黒色粒子208は、負電圧を印加した第2表示電極214上にこれを被覆する形で万遍なく付着する。
したがって、純度の高い黒色、かつ高コントラストの表示を得ることができる。
図32は、緑色の中間調表示状態(図28)において、第2表示素子222における等電位線及び電気エネルギー密度分布を示す図である。
第2集束電極218,219は、隔壁210の高さ方向における中央付近に厚く形成されているため、緑色の中間調表示状態においても、図32に示すように第2集束電極218と第2表示電極214の間には、隔壁部210cの側壁面に沿って強く均一的な電気エネルギー密度分布が形成される。そしてこの電気エネルギー密度は87.6N/m2と大きい。したがって、青色粒子209は画素中央部に残留することなく隔壁部210cの側壁面上に集束して、万遍なく付着する。
また、第2表示電極214上の第2集束電極219側の領域には、図32に示すようになだらかな電気エネルギー密度分布が形成されるので、正帯電した黒色粒子208は、第2表示電極214の第2集束電極219側を一部被覆するような形で付着する。
第1表示素子221においても同様にして、赤色粒子206が隔壁部210bの側壁面上に万遍なく付着し、緑色粒子207が第1表示電極211の第1集束電極216側を一部被覆するような形で付着するので、純度の高い緑色の中間調表示がなされる。
[実施形態2−2]
図33は、実施形態2−2にかかる表示装置の画素部を示す要部断面図であり、白表示時の状態を示している。
本実施形態にかかる表示パネルは実施形態2−1と同様であるが、第1集束電極216,217が、第1隔壁210Aの側壁面から第1空間204の中心部に向かって突出するように形成され、第2集束電極218,219も、第2隔壁210Bの側壁面から第2空間205の中心部に向かって突出するように形成されている点が異なっている。
本実施形態による表示パネルの効果は、基本的に上記実施形態2−1と同様であって、
第1表示電極211と第1集束電極216,217との間、あるいは第2表示電極214と第2集束電極218,219との間に電圧が印加されると、隔壁部210bあるいは隔壁部210cの側壁面に沿って均一的な電気エネルギー密度分布が形成されるため、着色粒子206,207あるいは着色粒子208,209が、隔壁部210bあるいは隔壁部210cの側壁面上に万遍なく付着するが、実施形態2−1と比べて、より高い電気エネルギー密度が隔壁部210bあるいは隔壁部の側壁面に沿って形成されるので、白色表示時においてより良好な白色が得られる。
[実施形態2−3]
上記図22に示した実施形態2−1では、第1表示電極211の寸法を、第1隔壁210Aの側壁面よりも内側のセル空間204の領域内に収まるように設定した。しかし、本実施形態では、図34に示すように、第1表示電極211を第1空間204の領域よりも外側にまで伸ばして、パネル前方から平面視したときに、第1表示電極211の外周部が第1集束電極216,217に重なるように形成している。
また、第2表示電極214についても、第2空間205の領域よりも外側にまで伸ばして、パネル前方から平面視したときに、第2表示電極214の外周部が第2集束電極218,219に重なるように形成している。
本実施形態も、上記実施形態2−2と同様の効果を奏する。すなわち、第1表示電極211と第1集束電極216,217との間、あるいは第2表示電極214と第2集束電極218,219との間に電圧が印加されると、隔壁部210bあるいは隔壁部210cの側壁面に沿って均一的な電気エネルギー密度分布が形成されるため、着色粒子206,207あるいは着色粒子208,209が、隔壁部210bあるいは隔壁部210cの側壁面上に万遍なく付着し、実施形態2−1と比べて、より高い電気エネルギー密度が隔壁部210bあるいは隔壁部の側壁面に沿って形成されるので、白色表示時においてより良好な白色が得られる。
<第1空間及び第2空間に封入する、着色粒子の種類についての考察>
*上記実施形態においては、緑色粒子207と青色粒子209は負帯電性、緑色粒子207と黒色粒子208は正帯電性であったが、着色粒子が帯電する極性を入れ替えても同様に実施することができる。
また、第1空間204及び第2空間205に封入する、着色粒子の色の組み合わせついても、第1空間204に、緑色、赤色、黒色、青色から選択した、任意の2色の粒子を封入し、第2空間204に残りの2色を封入すれば、同様にして、緑色、赤色、黒色、青色の各色を階調表示できる。
*上記実施形態においては、第2表示素子222において、第2空間205に黒色粒子208と青色粒子209を封入したが、第2空間205に青色粒子209だけを封入して、黒色粒子は用いなくてもよい。この場合も、赤色、緑色、青色の3色の着色粒子で各色の階調を表示できる。
また、緑色、赤色、青色の3色の着色粒子を用いる場合、いずれかの1色の着色粒子を第2空間205に封入し、残りの2色の着色粒子を第1空間204に封入すれば、同様にして、緑色、赤色、青色の各色を階調表示できる。このように、第2表示素子222において、1種類だけの着色粒子を用いる場合、第2表示電極214を独立して駆動させれば、1対の第2集束電極218,219の各々を独立して駆動する必要はなく、第2集束電極218,219を共通電極にしてもよい。
また、緑色、赤色、青色の3色の着色粒子を用いる場合、いずれかの1色の着色粒子を第1空間204に封入し、残りの2色の着色粒子を第2空間205に封入しても、同様にして、緑色、赤色、青色の各色を階調表示できる。この場合、第1表示電極211を独立駆動させて、第1束電極216,217を共通電極にしてもよい。
*上記実施形態においては、加法混色に基づいて画像をフルカラー表示することを考慮して、各画素で緑色、赤色、青色、黒色、並びにそれらの中間色を表示するようにしたが、減法混色に基づいて画像をフルカラー表示する場合、緑色、赤色、青色、黒色の代わりに、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの着色粒子を用いて、各画素でシアン、マゼンタ、イエロ−、ブラック、並びにそれらの中間色を表示するようにすればよい。
この場合、第1表示素子221に透光性の着色粒子を用いて、第1表示電極211上を覆うように配した着色粒子と、第2表示電極214上を覆うように配した着色粒子との混色を表示することもできる。
*第1空間204及び第2空間205に、1色づつ着色粒子を封入してもよく、この場合、用いた2色の着色粒子について、それぞれ階調表示することができる。
<反射及び透過の表示方式について>
上記の実施形態では、背面基板202上に白色反射層213を設け、パネル前方から光を入射させて再びパネル前方に反射させるときのR、G、Bの光量を着色粒子で変化させる方式でカラー表示するようにしたが、背面基板202の後面側にバックライトを設け、パネル前方に透過させるR、G、Bの光量を調整する方式で表示するようにしてもよい。
[実施形態3]
(表示装置の全体構成)
まず、本実施形態に係る表示装置の全体構成について説明する。
図35は、実施形態3に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
この表示装置は、表示部500、表示切換手段600、及びシステム制御部700を備え、表示部500の表示パネル510には、複数の画素420が横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)にマトリックス状に配列されている。
各画素420には、反射型表示素子と発光型表示素子の両方が設けられており、表示切換手段600によって、反射型表示素子で画像表示させるか、発光型表示素子で画像表示させるかを切り換えることができるようになっている。
したがって、発光型表示素子の特性と、反射型表示素子の各特性を活かすことができ、低消費電力で屋外から屋内に到るまで視認性に優れた表示を行うことができる。
(表示パネル510のデバイス構成)
表示パネル510のデバイス構造について説明する。本実施形態では、各画素420内に、発光型表示素子と反射型表示素子が1個づつ重ねて設けられている。
図36は、表示パネル510のデバイス構造を示す要部断面図であって、1つの画素420について示している。
表示パネル510は、前面基板201と背面基板202とが間隔を開けて対向配置され、その間に、各画素420ごとに発光型表示素子及び反射型表示素子が重ねて形成されている。
そして、表示パネル510の前方(Z方向)に、画像を表示するようになっている。
図36に示すように、背面基板302の内面上の最下位に白色反射層309が形成されており、その上に第1絶縁層303が形成されている。
この第1絶縁層303上には、半導体スイッチング素子304a,304bと第2絶縁層314が形成され、第2絶縁層314上に、半導体スイッチング素子304aと電気的に接続された画素電極305、発光層306、対向電極307が形成され、これらを封止する封止層308が形成されている。画素電極305、対向電極307は、画素ごとに独立した電極であって、発光型表示用である。
上記封止層308の上に、半導体スイッチング素子304bと電気的に接続された画素電極316と光導電層310が形成されている。
この光導電層310の上に、画素同士を仕切る隔壁311が、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に井桁状に形成されている。また、隔壁311に沿って、隔壁電極312が、縦方向(Y方向)に形成されている。そして、隔壁311同士の間に、黒色の着色粒子313が封入された封入空間315が存在し、上記隔壁電極312は、この封入空間315を左右から挟むように対で配置されている。
隔壁311の頂部には前面基板301が接合されているので、上記封入空間315は、前面基板301と光導電層310と隔壁311とで囲まれている。
このような表示パネル510において、発光型表示素子は、画素電極305、発光層306、対向電極307などを構成要素としている。
一方、反射型表示素子は、画素電極316の他に、光導電層310、隔壁311、隔壁電極312、着色粒子313、封入空間315などを構成要素とし、発光型表示素子の前方に存在している。反射型表示素子において、封入空間315の両側の内面沿って隔壁電極312が存在し、封入空間315の底面に沿って画素電極316が存在しており、隔壁電極312の対と画素電極316とによってインプレーン電極が構成されている。
そして、上記の半導体スイッチング素子304a,304bを用いて、発光型表示素子及び反射型表示素子を個別にアクティブ駆動することができるようになっている。
背面基板302としては、例えば、ホウ珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の樹脂フィルム、ステンレス等の金属箔を用いることができる。
前面基板301は、光を取り出す必要があるため、ホウ珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラスなどの透明ガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の透明樹脂フィルムも用いることができる。
半導体スイッチング素子304a,304bには、低温ポリシリコンTFTの他、マイクロクリスタル(微結晶)シリコンTFT、アモルファスシリコンTFTが用いられる。
画素電極305、対向電極307、画素電極316は共に、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料で形成されている。
発光層306は、陽極に相当する第1電極305と陰極に相当する対向電極307に挟まれた有機EL層であって、透明な発光材料で形成され、両電極間に電圧が印加されることにより発光材料に基づく色で発光する。この発光層306は水分に対して非常に脆弱であるが、封止層308に覆われて保護されている。封止層308として、緻密で絶縁性に優れ、かつ、光透過率の高い窒化シリコン膜、あるいは窒化酸化シリコン膜を用いることが望ましい。
光導電層310はポリビニルカルバゾール(PVK)あるいはフタロシアニン等の透明材料で形成されている。
隔壁電極312は、Cr/Al/Cr、Cr/Cu/Cr、Ti/Al/Ti等の導電性金属で形成されている。ここで、Cr、Tiと、Al、Cuとのサンドイッチ構造にしているのは、低抵抗材料であるAl、Cuを芯材に用いることによって電極の導電性を高め、Cr、Tiを用いることによって、隔壁311とAl、Cuとの密着性を高めると共に、コントラストの低下を防止するためである。
着色粒子313は、上記実施形態1−1において図2を参照しながら説明した着色粒子4と同様の構成であって、母粒子と、その表面を被覆する子粒子とで形成された複合微粒子であって、正に帯電する特性を有している。なお、ここでは着色粒子313は正に帯電する特性を有する場合について説明するが、負に帯電する特性を有する場合も同様に実施できる。
母粒子としては、積水化成品工業(株)製の真球状微粒子ポリマーMBX−5(平均粒径5μm)、あるいは綜研化学(株)製のケミスノーMX−5(平均粒径5μm)をベースに、黒色顔料等で着色したものを使用する。また、子粒子には、平均粒径16nmの帯電処理を施した単分散シリカ微粒子を使用することによって、着色粒子313全体として帯電性を有するものを形成できる。
母粒子には、この他に、スチレン系、メラミン系などの樹脂材料を用いてもかまわない。子粒子にシリカを使用したのは、シランカップリング剤等により安定でかつ大きな帯電量が得られる帯電処理が可能だからである。
光導電層310は、所定の波長領域を含む光が照射されるとキャリアが発生する特性を有し、隔壁電極312に加えられている基準電圧Vo(=Vgnd)と、画素電極316に印加される正又は負の電圧との相対関係に基づいて帯電状態が変化する。その帯電状態に応じて、正に帯電した着色粒子313は光導電層310上で左右に移動して、着色粒子313が光導電層310を被覆する割合(すなわち着色粒子313が白色反射層309を被覆する割合)が変化するようになっている。
この光導電層310の表面部分には、上記実施形態1−1において図2を参照しながら説明した表面処理層8bと同様、微小な凹凸が表面に形成された表面処理層を設けることが好ましい。
なお、光導電層310の代わりに絶縁層を設けてもよいが、上記のように隔壁電極312と対向電極307との間に光導電層310を形成することによって、着色粒子313をより安定に移動させることができる。
上記のように、前面基板301、光導電層310、封止層308、画素電極316、対向電極307、発光層306、画素電極305などは、いずれも可視光透過性なので、光導電層310における着色粒子313が覆っていない領域を通して、パネル前方から白色反射層309をみることができる。
また、発光型表示素子(有機EL素子)からの発光もパネル前方からみることができるようになっている。
(表示パネル510を駆動する手段)
各画素420の表示素子を駆動制御するため、表示部500にはデータ電圧設定部520、選択電圧設定部530、電源電圧設定部540が設けられ、表示部500の外部にシステム制御部700が設けられている。
そして、システム制御部700は、データ電圧を印加するタイミング及び画像信号を知らせるデータ制御信号をデータ電圧設定部520に送り、選択電圧設定部530に選択電圧を印加するタイミングを知らせる選択制御信号を選択電圧設定部530に送り、電源電圧を印加するタイミングを知らせる電源制御信号を電源電圧設定部540に送る。
上記のデータ電圧設定部520、選択電圧設定部530、電源電圧設定部540では、システム制御部700から送られるデータ制御信号、選択制御信号、及び電源制御信号に基づいて、表示パネル510の各表示素子に、発光動作あるいは反射型表示動作を行うためのデータ電圧、選択電圧、電源電圧を印加する。
ただし本実施形態の表示装置では、発光型素子を駆動する駆動回路と、反射型素子を駆動する駆動回路とを具備し、各々にデータ電圧設定部、選択電圧設定部、電源電圧設定部を備えている。すなわち、図35に示すデータ電圧設定部520、選択電圧設定部530、電源電圧設定部540は、図37に示す第1データ電圧設定部521、第1選択電圧設定部531、第1電源電圧設定部541と、図38に示す第2データ電圧設定部525、と第2選択電圧設定部535、第2電源電圧設定部545を合わせたものに相当する。
図37は、発光型素子を駆動する駆動回路の構成を示す図である。
上記のように、表示パネル510には、マトリックス状に配列された各画素420毎に、発光型素子用の半導体スイッチング素子304aが設けられている。
第1データ電圧設定部521から、各半導体スイッチング素子304aにデータ電圧を印加するために複数のデータライン522が縦方向(Y方向)に伸長して設けられている。第1選択電圧設定部531から、各半導体スイッチング素子304aに選択電圧を印加するために、複数の選択ライン532が横方向(X方向)に伸長して設けられ、第1電源電圧設定部541から、各半導体スイッチング素子304aに電源電圧を供給するために複数の電源ライン542が横方向(X方向)に伸長して設けられている。
なお、これらのライン522,532,542は、図36には示していないが、背面基板302の表面に沿って形成されている。そして、半導体スイッチング素子304aを介して発光型素子の画素電極205に駆動電圧を印加するようになっている。
半導体スイッチング素子304aの構成:
図37に示すように、各半導体スイッチング素子304aは、第1TFT341、第2TFT342、コンデンサ343を有している。
第1TFT341のゲート電極341aが選択ライン532に、第1TFT341の電極341bはデータライン522に、電極341cは第2TFT342のゲート電極342aに接続されている。
第2TFT342の電極342cは電源ライン542に、電極342bは画素電極305に接続されている。
コンデンサ343は、第2TFT342のゲート電極342aと電源ライン542とにまたがって接続されている。
図38は、反射型素子を駆動する駆動回路の構成を示す図である。
表示パネル510には、マトリックス状に配列された各画素420ごとに、反射型素子用の半導体スイッチング素子304bが設けられている。
第2データ電圧設定部525から、各半導体スイッチング素子304bにデータ電圧を印加するために複数のデータライン526が縦方向(Y方向)に伸長して設けられ、第2電圧設定部535から、各半導体スイッチング素子304bに選択電圧を印加するために、複数の選択ライン536が横方向(X方向)に伸長して設けられている。
また、第2電源電圧設定部545から、各画素の画素電極316にリセット電圧Vrstを印加できるようになっている。このリセット電圧Vrstは、データ電圧設定部520から複数のデータライン522、第1TFT341を経由して画素電極316に印加するようにしてもよいが、本実施形態では、第2電源電圧設定部545から、図38で矢印RSTに示すところまで、複数の電源ライン546を横方向(X方向)に伸長して設けている。
なお、これらのライン526,536,546も、背面基板302の表面に沿って形成されている。
半導体スイッチング素子304bの構成:
図38に示すように、各半導体スイッチング素子304bは、TFT345を有し、TFT345のゲート電極345aが選択ライン536に、TFT345の電極345bはデータライン526に、電極345cは画素電極316に接続されており、画素電極316に駆動電圧を印加できるようになっている。
なお、上記のように隔壁311に沿って縦方向(Y方向)に伸長して設けられた各隔壁電極312は、その両横の画素に臨んでいる。そして、すべての隔壁電極312は、一定の基準電位Vo(=Vgnd)に接続されている。
(表示装置の動作)
上記構成の表示装置の動作について、図35〜41を参照しながら説明する。
表示切換手段600によって発光型素子の表示が選択されると、発光型素子用画像信号vlがシステム制御部700に送られ、一方、表示切換手段600によって反射型表示が選択されると、反射型素子用画像信号vrがシステム制御部700に送られる。
発光型素子用映像信号vlは、主に動画を表示するための映像信号であって、順次送られる複数フレームの画像信号によって構成されている。
反射型素子用画像信号vrは、静止画像を表示する画像信号であって、1フレーム分の画像信号は、表示パネル510を構成する各画素420の輝度信号で構成されている。
システム制御部700は、発光型素子用映像信号vlを受け取った場合、最初にリセット動作を行い、続いて、発光型素子用映像信号vlに基づいて、第1データ電圧設定部521にデータ制御信号を、第1選択電圧設定部531に選択制御信号を、第1電源電圧設定部541に電源制御信号を送り、これら各設定部521,531,541を介して、各画素420の発光型表示素子を駆動して1フレーム分の画像表示を行う。そして、動画を表示する場合は、このような1フレーム分の画像表示を繰り返して行う。この間、反射型表示素子はオフ状態となる。
一方、システム制御部700は、反射型素子用画像信号vrを受け取ったときには、リセット動作を行い、続いて、反射型素子用画像信号vrに基づいて、第2データ電圧設定部525にデータ制御信号を、第2選択電圧設定部535に選択制御信号を、第2電源電圧設定部545に電源制御信号を送り、これら各設定部525,535,545を介して、各画素420の反射型表示素子を駆動して画像表示を行う。この間、発光型表示素子はオフ状態となる。
以下に、1.リセット動作、2.発光型素子による画像表示及び3.反射型素子による画像表示について説明する。
1.リセット動作
リセット時には、システム制御部700は、すべての画素420で一括して、第2電源電圧設定部545から画素電極316(図38の矢印RSTの位置)に正のリセット電圧Vrst(+40V)を印加する。
このリセット動作によって、反射型表示素子では、画素電極316から隔壁電極312に向かう電界が形成されるので、光導電層310上に存在する着色粒子313(正に帯電)は、図39に示すように、隔壁311側(隔壁電極312側)に追いやられた状態になって、光導電層310が開口される。したがって、パネル前方から入射される光は、着色粒子313によって遮られることなく、光導電層310を通過して、白色反射層309で反射され、再びパネル前方に出射されるので、白表示状態となる。
このようなリセット動作によって、表示パネル510の全体の画素が白表示状態になるので、着色粒子313が光導電層310上に付着したまま残留する焼き付きが防止される。
ここで、封入空間315内は気体相からなり、着色粒子313を移動させるにはある程度大きさの電圧を印加する必要があるので、この白表示状態(初期状態)は、次に、画素電極316に対して、駆動電圧が印加されるまで維持される。
2.発光型素子による画像表示
発光型素子による画像表示時には、システム制御部700は、反射型素子用の駆動回路はオフ状態にして、発光型素子用の半導体スイッチング素子304aを用いて、通常のアクティブ型有機ELディスプレイと同様に、各画素420の発光型素子を駆動する。
すなわち、第1選択電圧設定部531から、複数のライン532に対して選択電圧Vsを順次印加しながら、第1データ電圧設定部521から、複数の各ライン522に対して、各画素で表示しようとする表示輝度に相当する大きさのデータパルスを印加する。これによって、各画素420では、第1TFT341を通して表示輝度に相当する電荷がコンデンサ343に保持される。
そして、第1電源電圧設定部541から各電源ライン542に一律に正の駆動電圧Vcを印加することによって、各画素420の半導体スイッチング素子304aでは、上記のコンデンサ343に保持された電荷に応じて、第2TFT342のコンダクタンスが変化するので、各画素420の有機EL素子では、第1電源電圧設定部541から供給される電力が第2TFT342で制御されて、1フレーム分の発光型素子用映像信号vlに応じた発光表示がなされる。
そして、このような1フレーム分の発光表示を繰り返すことによって、動画表示がなされる。
ここで、前面基板301,光導電層310,画素電極316,封止層308,対向電極307,画素電極305などは、いずれも可視光透過性なので、光導電層310における着色粒子313が覆っていない領域を通して、発光型素子からの光がパネル前方に出射される。また、発光型素子から後方に出射される光も白色反射層309で反射されてパネル前方に出射される。
3.反射型素子による画素表示:
反射型素子による画像表示時には、システム制御部700は、発光素子用の駆動回路はオフ状態にして、反射型素子用の半導体スイッチング素子304bを用いて、各画素420の反射型素子を駆動する。
すなわち、システム制御部700は、第2選択電圧設定部535から、複数の選択ライン536に対して選択電圧Vsを順次印加しながら、第2データ電圧設定部525から、複数の各データライン526に対して、反射型素子用画像信号vrに基づく表示輝度に相当する大きさの負のデータ電圧VDを印加する。
これによって、選択電圧Vsが印加されている選択ライン536上の各画素420では、画素電極316に上記のデータ電圧VDが印加され、各画素420に反射型素子用画像信号vrに基づく書き込みが行われる。
このデータ電圧VDは、白表示状態の画素を黒表示あるいは中間調表示に変えるのに適した大きさに決められている。
このデータ電圧VDとして適した値は、使用する着色粒子313、前面基板301の種類等の因子によっても異なるが、ここでは黒表示しようとする画素に対するデータ電圧VDは−30V、中間調表示しようとする画素に対するデータ電圧VDは−10V〜−20Vとする。一方、白表示しようとする画素に対しては、データ電圧VDは印加しない。
なお、上記の書き込み動作時には、第1電極305には電圧が印加されないので発光層306が発光することはない。
このような書き込み動作によって、白表示しようとする画素では、画素電極316に電圧が印加されないので、着色粒子313は移動しない。したがって、上記図39に示した初期状態のままであって、正に帯電した着色粒子313は隔壁311側に追いやられるような形で偏在して付着しており、パネル前方から入射される光は、着色粒子313によって遮られることなく、光導電層310を通過して、白色反射層309で反射され、再びパネル前方に出射されるので、白表示となる。
中間調表示しようとする画素では、画素電極316に−10〜−20Vの負電圧が印加されるので、隔壁電極312から画素電極316に向かって電界がかかり、光導電層310の表面近傍に負電荷が生じる。それによって、図40に示すように、正に帯電している着色粒子313の一部が、画素電極316側に引き寄せられ、光導電層310の一部が黒色の着色粒子313で覆われる。したがって、白色反射層309と黒色の着色粒子313との組み合わせによる中間調表示となる。
黒表示する画素では、画素電極316に−30Vの負電圧が印加される。これによって、光導電層310の表面近傍は負電荷がさらに優位となり、図41に示すように、正に帯電している着色粒子313は、画素電極316側に引き寄せられて、光導電層310を覆うような形で偏在した状態となる。したがって、この画素では、黒色の着色粒子313によって白色反射層309の全体が覆われるので、黒表示となる。
このようにして表示パネル510を構成する各画素の反射型素子は、反射型素子用画像信号vrに基づいて、白表示、中間調表示、黒表示のいずれかがなされて、1フレーム分の画像表示がなされる。
そして、書き込みした後は、画素電極316に電圧を印加しなくても、ファンデルワールス力によって着色粒子313は光導電層310の表面層に付着したままの状態が維持されるため、電力を消費することなく画像表示状態が維持される。
したがって、電子書籍のテキスト画面や静止画像等のコンテンツを、少ない消費電力で長時間表示することが可能である。
次に、表示切換手段600から、新たなコンテンツを表示するための反射型素子用画像信号vrが送られてきた場合は、システム制御部700は、上記と同様にして、リセット動作及び書き込み動作を行う。
(表示パネル510の製造方法)
アレイ基板322の作製:
無アルカリガラスからなる背面基板302に、酸化チタン(チタニア)皮膜からなる白色反射層309を、塗布、印刷、コールド・スプレイ等の方法によって形成する。
次に、蒸着、CVD等の方法で、SiO2からなる透明の第1絶縁層303を形成する。この第1絶縁層303の厚みは、白色反射層309の表面の凹凸がなくなり滑らかな表面になるのに十分な厚さが必要であり、本実施形態においては1〜2μmで形成する。
次に、アモルファスTFTからなる半導体スイッチング素子304a,304bを形成する。この工程は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに使われる一般的なアモルファスTFTと同じ形成方法で形成できる。
次に、第2絶縁層314を形成した後、第1電極305、発光層306、対向電極307を形成する。この工程は、有機ELディスプレイの電極及び発光層を形成する方法と同じであり、第1電極305及び対向電極307は透明導電材料であるITOにより形成する。
封止層308を、膜厚100nm〜200nmの窒化シリコン膜で、ICP−CVDにより形成する。ICPはInductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ)の略であり、他のCVDに比べ低い温度で緻密に成膜できるのが特徴である。したがって、成膜時の発熱によって有機EL材料からなる発光層306に与えるダメージが小さく、さらに可視光の透過率が95%と高く、かつ防湿性も高い緻密な窒化シリコン膜を得ることができる。
次に、ITOからなる透明な画素電極316を形成し、最後に、ポリビニルカルバゾール(PVK)あるいはフタロシアニン等からなる光導電層310を、塗布、印刷等で形成する。そして光導電層310の表面上に、下記のように表面に凹凸形成を有する表面処理層を形成する。
以上で、背面基板302上に、白色反射層309から光導電層310までの層が形成されたアレイ基板322が作製される。
なお、このアレイ基板322は、従来の有機ELディスプレイに使用されるアレイ基板と同様であるが、白色反射層309、光導電層310及び反射型表示用の画素電極316を形成する点が異なる。
光導電層310に表面処理層を形成する工程:
媒体にTiO2微粒子を分散させてなるコーティング剤を、光導電層310の表面上に塗付することによって表面処理層を形成する。
具体的には、実施形態1−1で説明した図2に示す絶縁層8上の表面処理層8bと同様に、光導電層310の表面層上に表面処理層を形成することができる。この表面処理層は、TiO2微粒子層と、最表面に露出するポリカーボネートからなる絶縁層とから構成される。
このように形成される表面処理層は、膜硬度が高く、かつ高透過率の層であり、TiO2微粒子の凝集が比較的少なく、粒径分布の揃った粒子が積層された均一な層であって、層の厚みは100nm程度である。
ここで、コーティング剤に使用するTiO2微粒子の種類や量によって、形成される表面処理層の導電性を調整することができる。
このように光導電層310の表面に表面処理層を形成することによって、光導電層310と着色粒子313との間に働くファンデルワールス力が低減されるので、駆動時において着色粒子313の移動がスムースに行われる。
コーティング剤に用いるTiO2微粒子の直径は、着色粒子313の直径(5μm)より小さな直径(30nm)のものを用いる。その理由は、着色粒子313の直径よりも大きい直径を有する微粒子で表面処理層を形成すると、その表面処理層に形成される凹凸が大きくなり、着色粒子313自身がその凹凸にそって付着してしまうので、ファンデルワールス力を低減する効果がなくなるからである。
なお、このような表面処理層は、光導電層310の上だけでなく、隔壁311、隔壁電極312の表面にも形成することができる。それによって、封入空間315の内面全体において電気抵抗、帯電性、及び形状等の条件が均一になり、表面処理層に付着した着色粒子313とはほぼ同じ電圧特性を有することになるので、駆動時に良好な表示特性を得ることができる。
対向基板321の作製:
無アルカリガラスからなる前面基板301上に、フォトリソ等の方法により隔壁311を井桁状に形成する。次に、隔壁311に沿って、スパッタ、蒸着等の方法により導電性金属を成膜した後、ドライエッチング等の方法によって隔壁電極312を形成する。
これによって、前面基板301上に、隔壁311及び隔壁電極312が形成された対向基板321が作製される。
着色粒子の製造方法:
着色粒子313の作製方法は、実施形態1−1で説明した着色粒子4と同様であって、ハイブリダイゼーションシステムを使用する。母粒子の表層全面に子粒子を被覆する配合比なども、実施形態1−1で説明した着色粒子4と同様である。
作製された着色粒子313は正に帯電しており、帯電量を一定に保つために、水分含有量が一定に保たれたドライエア、ドライ窒素ガス等の雰囲気下で保管することが好ましい。
パネル組み立て工程:
上記のように製造した対向基板321の隔壁311によって画素毎に仕切られた空間に、着色粒子313をほぼ均等に散布して、アレイ基板322と重ね合わせる。前面基板301の周縁部にエポキシ系UV接着剤を所定幅で塗布する。
その後、対向基板321とアレイ基板322に形成された素子同士を位置合わせして、UV光を照射すると、接着剤が硬化して表示パネル510が完成する。
この組み立て工程は、水分含有量が極力少なくなるように乾燥処理したドライガス(例えばドライ窒素)雰囲気下において行うことが好ましい。これによって、封入空間315内には、水分が排除されたドライガス及び着色粒子313が封入され、着色粒子313の帯電量が一定に維持される。
(本実施形態の表示装置による効果)
表示パネル510による主な効果としては、画素420毎に、第1電極305,発光層306、対向電極307からなる発光型表示素子の前方に、反射型表示素子の封入空間315が重ねて設けられているので、画素420内において、発光型表示素子及び反射型表示素子の占める面積を大きくすることができる。
また、反射型表示素子を、封入空間315内に着色粒子313を封入し、封入空間315に沿ってインプレーン型の電極312,316を配設した構造とし、各電圧設定部520〜540から電極312、316間に電圧を印加する。着色粒子313を、隔壁電極312側に偏在する状態と、画素電極316側に偏在する状態との間で移動させることによって、表示パネル510の前方から入射される光の反射量を変化させる方式で表示するようにしたので、発光型表示素子を駆動して発光表示するときに、図36に示すように着色粒子313を隔壁電極312側に偏在させて、反射型表示素子の開口率を大きくして、発光型表示素子からの光を良好にパネル前方に出射することができる。これによって、通常のトップエミッション型有機ELディスプレイと同等の動画表示性能を得ることができる。
このように、本実施形態の表示装置によれば、反射型表示及び発光型表示のいずれにおいても、画質をほとんど損なうことなく良好な画像表示を行うことができる。
発光型表示素子が可視光透過性の材料で形成され、その後方に白色反射層309が設けられているので、この白色反射層309は、反射型表示素子の表示に用いられるだけでなく、発光型表示素子からの光を前方に反射させる機能も有する。
反射型表示素子において、着色粒子313が、封入空間315内で気相中に封入されており、気相の屈折率は略1であるので、電気泳動方式で用いられる絶縁性透明液体、例えばシリコンオイル(屈折率1.4)中に粒子が封入されている場合と比べて、良好な光学特性を得ることができる。また、着色粒子313が気相中に封入されているので、移動開始するのにある程度の大きさ力を必要とし、移動開始した後は迅速に移動する。
したがって、反射型表示素子に駆動電圧が印加されていないときには封入空間315内で着色粒子は安定に静止し、かつ駆動電圧が印加されると迅速に移動するので、安定でかつ迅速な表示が可能となる。
次に、複合微粒子による効果について説明する。
上記のように、着色粒子313を、母粒子の表層全面に子粒子を被覆した構造とすることによって、着色粒子313と、光導電層310、隔壁311、隔壁電極312との間に発生するファンデルワールス力が小さくなるので、着色粒子313を付着面から引き剥がすのに必要な電圧が小さくできるだけでなく、耐湿度特性も向上する。すなわち、雰囲気温度45℃で湿度が50%から90%に上昇した場合、子粒子による被覆のないアクリル製重合トナーでは帯電量が初期に比べて55%も低下したが、本実施形態の複合化粒子の場合は15%程度の低下に留まった。
また、上記のように光導電層310の表面層上、並びに隔壁311、隔壁電極312の表面上に、微小な凹凸が形成された表面処理層を設けることによって、着色粒子313との間に働くファンデルワールス力をさらに低減する効果が得られる。
(実験)
1.着色粒子313の材質と光導電層310の表面処理層の材質に関して、その帯電列に着目して、種々の組み合わせで、電圧特性を評価する実験を行った。
その結果、着色粒子313の構成材料であるアクリル樹脂(PMMA)と比較的近い帯電列に位置するポリカーボネートを、光導電層310の表面処理層に用いることによって、画素電極316に電圧を印加した時に良好な電圧特性が得られることがわかった。これは、着色粒子313と光導電層310の表面処理層とが同種の帯電特性を有することにより、両者間に働く静電気力が小さいためと考えられる。
2.光導電層310に表面処理層を設けない場合と、光導電層310の表面上に表面処理層を設けた場合とで、黒表示状態から白表示に変化させるのに必要な電圧を測定した。
図42は、本実施形態の表示装置において、光導電層310の表面に表面処理層を設けた場合の電圧特性を測定した結果を示すグラフであって、隔壁電極312と画素電極316との間に印加する電圧と反射濃度との関係を示す。
図42に示すように、黒表示状態において着色粒子313を動かすのに必要な電圧は小さく、白表示に変化させるのに最低必要な印加電圧(飽和電圧)も30Vと低かった。
一方、この表示装置において、光導電層310の表面に表面処理層を設けない場合についても、同様に測定したところ、飽和電圧は150Vと高かった。
これは、表面処理層を設けることで着色粒子と封入空間内面との接触が極小化することにより、封入空間315の内面と着色粒子313と間に作用するファンデルワールス力が低減することに加えて、表面処理層と着色粒子313との帯電特性の関係も良好になったことによると考察される。
〈変形例など〉
本実施形態の表示装置では、1画素内に、発光型表示素子上に反射型表示素子が重ねられた組が1組づつ設けられていたが、発光型表示素子上に反射型表示素子が重ねられた組を複数組設けて、R,G,Bなどの各色を階調表示することによって、フルカラー表示が可能な表示装置を実現することができる。
[実施形態4−1]
(表示装置の全体構成)
まず、実施形態4−1に係る表示装置の全体構成について説明する。
実施形態4−1に係る表示装置の構成は、上記実施形態3で図35のブロック図に示したものと同様であって、表示部500、表示切換手段600、及びシステム制御部700を備え、表示部500の表示パネル510には、複数の画素420が横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)にマトリックス状に配列されている。
各画素420には、反射型表示素子と発光型表示素子の両方が設けられており、表示切換手段600によって、反射型表示素子で画像表示させるか、発光型表示素子で画像表示させるかを切り換えることができるようになっている。
したがって、発光型表示素子の特性と、反射型表示素子の各特性を活かすことができ、低消費電力で屋外から屋内に到るまで視認性に優れた表示を行うことができる。
(表示パネル510のデバイス構成)
表示パネル510のデバイス構造について説明する。本実施形態では、各画素420内に、発光型表示素子と反射型表示素子が1個づつ重ねて設けられている。
図43は、表示パネル510のデバイス構造を示す要部断面図であって、1つの画素420について示している。
表示パネル510は、前面基板401と背面基板402とが間隔を開けて対向配置され、その間隙に、各画素420ごとに発光型表示素子及び反射型表示素子が重ねて形成されている。そして、表示パネル510の前方(Z方向)に、画像を表示するようになっている。
図43に示すように、背面基板402の内面上の最下位に白色反射層409が形成されており、その上に第1絶縁層403が形成されている。
この第1絶縁層403の上には、半導体スイッチング素子404と第2絶縁層414が形成され、第2絶縁層414上に、半導体スイッチング素子404と電気的に接続された第1電極405、発光層406、及び対向電極407が形成され、これらを封止する封止層408が形成されている。そしてこの封止層408の上に光導電層410が形成されている。
光導電層410の上に、画素同士を仕切る隔壁411が、縦方向(Y方向)及び横方向(X方向)に井桁状に形成されている。また、この隔壁411に沿って、隔壁電極412が、縦方向(Y方向)に形成され、各画素の隔壁411間に存在する封入空間415に、黒色の着色粒子413が封入され隔壁電極412が左右に対で配置されている。
隔壁411の頂部には前面基板401が接合されているので、上記封入空間415は、前面基板401と光導電層410と隔壁411とで囲まれている。
このような表示パネル510において、発光型表示素子は、第1電極405、発光層406、対向電極407などを構成要素としている。
一方、反射型表示素子は、上記対向電極407をインプレーン型電極の一部として共用するとともに、白色反射層409、光導電層410、隔壁411、隔壁電極412、封入空間415内の着色粒子413などを構成要素とし、発光型表示素子の前方に存在している。
そして、この反射型表示素子において、封入空間415の両横内壁沿って隔壁電極412が存在するとともに、上記対向電極407が封入空間415の底面に沿って存在し、この隔壁電極412の対と対向電極407とによってインプレーン電極が構成されている。
本実施形態では、第1電極405及び対向電極407は画素ごとに独立した画素電極であって、半導体スイッチング素子404及び対向電極407を用いて、発光型表示素子及び反射型表示素子を個別にアクティブ駆動することができるようになっている。
背面基板402としては、例えば、ホウ珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の樹脂フィルム、ステンレス等の金属箔を用いることができる。
前面基板401は、光を取り出す必要があるため、ホウ珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラスなどの透明ガラス材料からなる基板の他、PEN、PES、PET等の透明樹脂フィルムも用いることができる。
半導体スイッチング素子404には、低温ポリシリコンTFTの他、マイクロクリスタル(微結晶)シリコンTFT、アモルファスシリコンTFTなどが用いられる。
第1電極405、対向電極407は共にITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料で形成されている。
発光層406は、陽極に相当する第1電極405と陰極に相当する対向電極407に挟まれた有機EL層であって、透明な発光材料で形成され、両電極間に電圧が印加されることにより発光材料に基づく色で発光する。発光層406は耐湿性に対して非常にぜい弱であるため、封止層408には、緻密で絶縁性に優れ、かつ光透過率の高い窒化シリコン膜、あるいは窒化酸化シリコン膜を用いることがの望ましい。
光導電層410はポリビニルカルバゾール(PVK)あるいはフタロシアニン等の透明材料で形成されている。
隔壁電極412は、Cr/Al/Cr、Cr/Cu/Cr、Ti/Al/Ti等の導電性金属で形成されている。ここで、Cr、Tiと、Al、Cuとのサンドイッチ構造にしているのは、低抵抗材料であるAl、Cuを芯材に用いることによって電極の導電性を高め、Cr、Tiを用いることによって、隔壁411とAl、Cuとの密着性を高めるとともに、コントラストの低下を防止するためである。
着色粒子413は、実施形態1−1で図2を参照して説明した着色粒子4と同様に、母粒子の表面を子粒子で被覆した複合微粒子であって、正に帯電する特性を有している。
母粒子としては、積水化成品工業(株)製の真球状微粒子ポリマーMBX−5(平均粒径5μm)、あるいは綜研化学(株)製のケミスノーMX−5(平均粒径5μm)をベースに黒色顔料等で着色したものを使用し、子粒子には、平均粒径16nmの帯電処理を施した単分散シリカ微粒子を使用することによって、着色粒子413全体として帯電性を有するものを形成できる。
光導電層410は、所定の波長領域を含む光が照射されるとキャリアが発生する特性を有し、隔壁電極412に加えられている基準電圧Vo(=Vgnd)と、第1電極405に印加される正又は負の電圧との相対関係に基づいて帯電状態が変化する。その帯電状態に応じて、正に帯電した着色粒子413は光導電層410上で左右に移動して、着色粒子413が光導電層410を被覆する割合(すなわち着色粒子413が白色反射層409を被覆する割合)が変化するようになっている。
この光導電層410の表面部分には、図2に示した絶縁層8の表面処理層8bと同様に、微小な凹凸が表面に形成された表面処理層を設けることが好ましい。なお、光導電層410の代わりに絶縁層を設けてもよいが、上記のように隔壁電極412と対向電極407との間に光導電層410を形成することによって、着色粒子413をより安定に移動させることができる。
上記のように、前面基板401、光導電層410、封止層408、対向電極407、発光層406、第1電極405などは、いずれも可視光透過性なので、光導電層410における着色粒子413が覆っていない領域を通して、パネル前方から白色反射層409をみることができる。
また、発光型表示素子(有機EL素子)からの発光もパネル前方から見ることができるようになっている。
(表示パネル510を駆動する手段)
各画素420の表示素子を駆動制御するため、表示部500にはデータ電圧設定部520、選択電圧設定部530、電源電圧設定部540が設けられ、表示部500の外部にシステム制御部700が設けられている。
そして、システム制御部700は、データ電圧を印加するタイミング及び画像信号を知らせるデータ制御信号をデータ電圧設定部520に送り、選択電圧設定部530に選択電圧を印加するタイミングを知らせる選択制御信号を選択電圧設定部530に送り、電源電圧を印加するタイミングを知らせる電源制御信号を電源電圧設定部540に送る。
上記のデータ電圧設定部520、選択電圧設定部530、電源電圧設定部540では、システム制御部700から送られるデータ制御信号、選択制御信号、及び電源制御信号に基づいて、表示パネル510の各表示素子に、発光動作あるいは反射型表示動作を行うためのデータ電圧、選択電圧、電源電圧を印加する。
本実施形態の表示装置では、各画素420における発光型素子及び反射型素子を、共通の半導体スイッチング素子404を用いて駆動するようになっている。
図44は、発光型素子及び反射型素子を駆動する駆動回路の構成を示す図である。
上記のように、表示パネル510には、マトリックス状に配列された各画素420ごとに、半導体スイッチング素子404が設けられている。
データ電圧設定部520から、各半導体スイッチング素子404にデータ電圧を印加するために複数のデータライン523が縦方向(Y方向)に伸長して設けられ、選択電圧設定部530から、各半導体スイッチング素子404に選択電圧を印加するために、複数の選択ライン533が横方向(X方向)に伸長して設けられ、電源電圧設定部540から、各半導体スイッチング素子404に電源電圧を供給するために複数の電源ライン543が横方向(X方向)に伸長して設けられている。
なお、これらのライン523,533,543は、図43には示していないが、背面基板402の表面に沿って形成されている。
そして、半導体スイッチング素子404を介して、第1電極405及び対向電極407に駆動電圧を印加して、発光型表示素子及び反射型表示素子を駆動するようになっている。
半導体スイッチング素子404の構成:
図44に示すように、各半導体スイッチング素子404は、第1TFT441、第2TFT442、コンデンサ443、及び無接点スイッチ461〜464を有している。
第1TFT441は、そのゲート電極441aが選択ライン533に接続されている。第1TFT441の電極441bはデータライン523に、電極441cは、無接点スイッチ461を介して第2TFT442のゲート電極442aに接続されている。
第2TFT442の電極442cは電源ライン543に、電極442bは第1電極405に接続されている。
コンデンサ443は、第2TFT442のゲート電極442aと電源ライン543とにまたがって接続されている。
また、上記第1TFT441の電極441cは、無接点スイッチ462を介して第1電極405と接続されている。
また、第1電極405と対向電極407との間は、無接点スイッチ463を介して接続され、対向電極407との間は、無接点スイッチ464を介して接続されている。
無接点スイッチ461〜464には、全(すべ)ての画素に共通の制御ライン(不図示)が配線され、無接点スイッチ461〜464は発光型表示時、反射型素子表示時、リセット時において、表2に示すようにON/OFFされる。
さらに、本実施形態では、電源電圧設定部540から、各画素420の図44で矢印RSTに示すところまで、リセット用の配線(不図示)が設けられ、第1電極405に一斉に正のリセット電圧Vrst(+80V)を印加できるようになっている。なお、このリセット電圧Vrstは、データ電圧設定部520から複数のデータライン523、第1TFT441を経由して第1電極405に印加するようにしてもよい。
なお、上記のように隔壁411に沿って縦方向(Y方向)に伸長して設けられた各隔壁電極412は、その両横の画素に臨んでいる。そして、すべての隔壁電極412は、一定の基準電位Vo(=Vgnd)に接続されている。
(表示装置の動作)
上記構成の表示装置の動作について、図42〜47を参照しながら説明する。
表示切換手段600によって発光型素子の表示が選択されると、発光型素子用画像信号vlがシステム制御部700に送られ、一方、表示切換手段600によって反射型表示が選択されると、反射型素子用画像信号vrがシステム制御部700に送られる。
発光型素子用映像信号vlは、主に動画を表示するための映像信号であって、順次送られる複数フレームの画像信号によって構成されている。
反射型素子用画像信号vrは、静止画像を表示する画像信号であって、1フレーム分の画像信号は、表示パネル510を構成する各画素420の輝度信号で構成されている。
システム制御部700は、発光型素子用映像信号vlを受け取った場合、最初にリセット動作を行い、続いて、発光型素子用映像信号vlに基づいて、データ電圧設定部520にデータ制御信号を、選択電圧設定部530に選択制御信号を、電源電圧設定部540に電源制御信号を送り、これら各設定部520〜540を介して、各画素420の発光型表示素子を駆動して1フレーム分の画像表示を行う。そして、動画を表示する場合は、このような1フレーム分の画像表示を繰り返して行う。この間、反射型表示素子はオフ状態となる。
一方、システム制御部700は、反射型素子用画像信号vrを受け取ったときには、リセット動作を行い、続いて、反射型素子用画像信号vrに基づいて、データ電圧設定部520にデータ制御信号を、選択電圧設定部530に選択制御信号を送り、これら各設定部520〜530を介して、各画素420の反射型表示素子を駆動して画像表示を行う。この間、発光型表示素子はオフ状態となる。
以下に、1.リセット動作、2.発光型素子による画像表示及び3.反射型素子による画像表示について説明する。
1.リセット動作
リセット時には、システム制御部700は、上記表2に示すように、全(すべ)ての画素420で一括して、スイッチ463をON、スイッチ461,462、464をOFFにして、電源電圧設定部540から図44の矢印RSTの位置にリセット電圧Vrstを印加する。
これによって、第1電極405と対向電極407とが互いに接続されるとともに、GNDから切り離され、すべての第1電極405及び対向電極407に一括して正のリセット電圧Vrst(+80V)が印加される。
このリセット動作によって、反射型表示素子では、対向電極407から隔壁電極412に向かう電界が形成されるので、光導電層410上に存在する着色粒子413(正に帯電)は、図45に示すように、隔壁411側(隔壁電極412側)に追いやられた状態になって開口される。したがって、パネル前方から入射される光は、白色反射層409で反射されてパネル前方に出射されるので、白表示状態となる。
このようなリセット動作によって、表示パネル510の全体の画素が白表示状態になるので、着色粒子413が光導電層410上に付着したまま残留する焼き付きが防止される。
そして、この白表示状態(初期状態)は、次に、対向電極407に対して、反射型表示素子を駆動する閾値電圧Vthを超える大きさの電圧が印加されるまで維持される。
この閾値電圧Vthの大きさは、使用する着色粒子413、基板の種類等の因子によって異なるが、本実施形態では、封入空間415内において着色粒子413が気相中を移動する方式をとっているので、閾値電圧Vthは数十Vから数百Vである。次に、対向電極407に対して、閾値電圧Vth以上の電圧が印加されるまでは、着色粒子413は移動せず、白表示状態(初期状態)が維持される。
2.発光型素子による画像表示
発光型素子による画像表示時には、システム制御部700は、上記表2に示すように、全(すべ)ての画素420で一括して、スイッチ461、464をON、スイッチ462、463をOFFにして、通常のアクティブ型有機ELディスプレイと同様に、各画素420のEL素子を駆動する。
すなわち、選択電圧設定部530から、複数の選択ライン533に対して選択電圧Vsを順次印加しながら、データ電圧設定部520から、複数の各データライン523に対して、各画素で表示しようとする表示輝度に相当する大きさのデータパルスを印加する。これによって、各画素420では、第1TFT441を通して表示輝度に相当する電荷がコンデンサ443に保持される。
そして、電源電圧設定部540から各電源ライン543に一律に正の駆動電圧Vcを印加することによって、各画素420の半導体スイッチング素子404では、上記のコンデンサ443に保持された電荷に応じて、第2TFT442のコンダクタンスが変化するので、各画素420の有機EL素子では、電源電圧設定部540から供給される電力が第2TFT442で制御されて、1フレーム分の発光型素子用映像信号vlに応じた発光表示がなされる。
そして、このような1フレーム分の発光表示を繰り返すことによって、動画表示がなされる。
ここで、上記の電源電圧設定部540から各電源ライン543に供給される駆動電圧Vcは2〜10V程度なので、有機EL素子の駆動時に、第1電極405と対向電極407との間にかかる電圧は最大でも10V程度であり、隔壁電極412と対向電極407との間にかかる電圧の大きさも最大でも10V程度であって、上記の閾値電圧Vth(数十Vから数百V)よりも小さい。
よって、発光型表示素子を駆動している間に着色粒子413が移動することはなく、図45に示すように着色粒子413が隔壁411に付着した、開口率の大きい初期状態が維持される。
また、上記のように、前面基板401、光導電層410、封止層408、対向電極407、第1電極405などは、いずれも可視光透過性である。
したがって、発光型素子からの光は、着色粒子413によって遮られることがなく、光導電層410を通過して、パネル前方に出射される。また、発光型素子から後方に出射される光も白色反射層409で反射されてパネル前方に出射される。
3.反射型素子による画素表示:
反射型素子による画像表示時には、システム制御部700は、上記表2に示すように、全(すべ)ての画素420で一括して、スイッチ462、463をON、スイッチ461、464をOFFにする。これによって、第1電極405と対向電極407とを同電位にしかつこれら両電極405,407に、データ電圧設定部520から負のデータ電圧VDを印加できるようにする。
そして、システム制御部700は、選択電圧設定部530から、複数の選択ライン533に対して選択電圧Vsを順次印加しながら、データ電圧設定部520から、複数の各データライン523に対して、反射型素子用画像信号vrに基づく表示輝度に相当する大きさの、負のデータ電圧VDを印加する。
これによって、選択電圧Vsが印加されている選択ライン533上の各画素420では、対向電極407に上記のデータ電圧VDが印加され、各画素420に反射型素子用画像信号vrに基づく書き込みが行われる。
このデータ電圧VDは、白表示状態の画素を黒表示あるいは中間調表示に変えるのに適した大きさに決められている。
すなわち、中間調表示をする画素に対するデータ電圧VDは、白表示状態の画素を黒表示に変えるときの閾値電圧と飽和電圧との間で設定され、黒表示をする画素に対するデータ電圧VDの大きさは、この飽和電圧程度に設定される。
このデータ電圧VDとして適した値は、使用する着色粒子413、前面基板401の種類等の因子によっても異なる。ここでは白表示状態から黒表示に変えるときの閾値電圧が−40V、飽和電圧が−60Vであるとして、黒表示しようとする画素に対するデータ電圧VDは−60V、中間調表示しようとする画素に対するデータ電圧VDは−50V程度とする。一方、白表示しようとする画素に対しては、データ電圧VDは印加しない。
なお、上記の書き込み動作時には、第1電極405と対向電極407とは同電位となっているため発光層406が発光することはない。
このような書き込み動作によって、白表示しようとする画素では、対向電極407に電圧が印加されないので、着色粒子413は移動しない。したがって、上記図45に示した初期状態のままであって、正に帯電した着色粒子413は隔壁411側に追いやられるような形で付着しており、パネル前方から入射される光は白色反射層409で反射されて再びパネル前方に出射されるので、白表示となる。
中間調表示しようとする画素では、対向電極407に−50V程度の負電圧が印加されるので、隔壁電極412から対向電極407に向って電界がかかり、光導電層410の表面近傍に負電荷が発生する。それによって、図46に示すように、正に帯電している着色粒子413の一部が、第2電極416に引き寄せられ、光導電層410の一部が黒色の着色粒子413で覆われる。したがって、白色反射層409と黒色の着色粒子413の組み合わせによる中間調表示となる。
黒表示する画素では、対向電極407に−60V程度の負の電圧が印加される。これによって、光導電層410の表面近傍は負電荷が完全に優位となり、図47に示すように、正に帯電している着色粒子413は、光導電層410に引き寄せられ、光導電層410を覆うような形で付着した状態になる。
したがって、この画素では、黒色の着色粒子413によって白色反射層409の全体が覆われるので、黒表示となる。
このようにして表示パネル510を構成する各画素の反射型素子は、反射型素子用画像信号vrに基づいて、白表示、中間調表示、黒表示のいずれかがなされて、1フレーム分の画像表示がなされる。
そして、書き込みした後は、対向電極407に電圧を印加しなくても、ファンデルワールス力によって着色粒子413は光導電層410の表層に付着したままの状態が維持されるため、電力を消費することなく画像表示状態が維持される。
したがって、電子書籍のテキスト画面や静止画像等のコンテンツを、少ない消費電力で長時間表示することが可能である。
次に、表示切換手段600から、新たなコンテンツを表示するための反射型素子用画像信号vrが送られてきた場合は、システム制御部700は、上記と同様にして、リセット動作及び書き込み動作を行う。
(表示パネル510の製造方法)
アレイ基板22の作製:
無アルカリガラスからなる背面基板402に、酸化チタン(チタニア)皮膜からなる白色反射層409を、塗布、印刷、コールド・スプレイ等の方法によって形成する。
次に、蒸着、CVD等の方法で、SiO2からなる透明の第1絶縁層403を形成する。この第1絶縁層403の厚みは、白色反射層409の表面の凹凸が無くなり滑らかな表面になるのに十分な厚さが必要であり、本実施形態においては1〜2μmで形成する。
次に、アモルファスTFTからなる半導体スイッチング素子404を形成する。この工程は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに使われる一般的なアモルファスTFTと同じ形成方法で形成できる。
次に、第2絶縁層414を形成した後、第1電極405、発光層406、対向電極407を形成する。この工程は、有機ELディスプレイの電極及び発光層を形成する方法と同じであり、第1電極405及び対向電極407は透明導電材料であるITOにより形成する。
封止層408を、膜厚100nm〜200nmの窒化シリコン膜で、ICP−CVDにより形成する。ICPはInductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ)の略であり、他のCVDに比べ低い温度でち密に成膜できるのが特徴である。したがって、成膜時の発熱によって有機EL材料からなる発光層406に与えるダメージが小さく、さらに可視光の透過率が95%と高く、かつ防湿性も高いち密な窒化シリコン膜を得ることができる。
最後に、ポリビニルカルバゾール(PVK)あるいはフタロシアニン等からなる光導電層410を、塗布、印刷等で形成する。
そして光導電層410の表面上に、表面に凹凸形成を有する表面処理層を形成する。
以上で、背面基板402上に、白色反射層409から光導電層410までの層が形成されたアレイ基板422が作製される。
なお、このアレイ基板422は、従来の有機ELディスプレイに使用されるアレイ基板と同様であるが、白色反射層409、光導電層410を形成する点が異なる。
表面処理層を形成する工程:
水を媒体としTiO2微粒子を分散させてなるコーティング剤を、光導電層410の表面上に塗付することによって、光導電層410の表面上に表面処理層を形成することができる。
このように形成される表面処理層は、膜硬度が高く、かつ高透過率の層であり、TiO2微粒子の凝集が比較的少なく、粒径分布の揃った粒子が積層された均一な層であって、層の厚みは100nm程度である。
このように光導電層410の表面に表面処理層を形成することによって、光導電層410と着色粒子413との間に働くファンデルワールス力が低減されるので、駆動時において着色粒子413の移動がスムースに行われる。
コーティング剤に用いるTiO2微粒子の直径は、着色粒子413の直径(5μm)より小さな直径(30nm)のものを用いる。その理由は、着色粒子413の直径よりも大きい直径を有する微粒子で表面処理層を形成すると、その表面処理層に形成される凹凸が大きくなり、着色粒子413自身がその凹凸にそって付着してしまうので、ファンデルワールス力を低減する効果がなくなるからである。
なお、このような表面処理層は、光導電層410の上だけでなく、隔壁411、隔壁電極412の表面にも形成することができる。それによって、封入空間415の内面全体において電気抵抗、帯電性、及び形状等の条件が均一になり、表面処理層に付着した着色粒子413とはほぼ同じ電圧特性を有することになるので、駆動時に良好な表示特性を得ることができる。
対向基板421の作製:
無アルカリガラスからなる前面基板401上に、フォトリソ等の方法により隔壁411を井桁状に形成する。次に、隔壁411に沿って、スパッタ、蒸着等の方法により導電性金属を成膜した後、ドライエッチング等の方法によって隔壁電極412を形成する。
これによって、前面基板401上に、隔壁411及び隔壁電極412が形成された対向基板421が作製される。
着色粒子の製造方法:
着色粒子413の作製方法については、実施形態1−1で説明した着色粒子4と同様、ハイブリダイゼーションシステムを使用する。母粒子の表層全面に子粒子を被覆する配合比なども実施形態1−1で説明した着色粒子4と同様である。
作製された着色粒子413は正に帯電しており、帯電量を一定に保つために、水分含有量が一定に保たれたドライエア、ドライ窒素ガス等の雰囲気下で保管することが望ましい。
パネル組み立て工程:
上記のように製造した対向基板421の隔壁411によって画素ごとに仕切られた空間に、着色粒子413をほぼ均等に散布して、アレイ基板422と重ね合わせる。前面基板401の周縁部にエポキシ系UV接着剤を所定幅で塗布する。
その後、対向基板421とアレイ基板422に形成された各画素が相対するように位置決めを行い、UV光を照射すると、接着剤が硬化して表示パネル510が完成する。
この組み立て工程は、水分含有量を極力少なくなるように乾燥処理したドライガス(例えばドライ窒素)雰囲気下において行うことが好ましい。これによって、封入空間415内には、水分が排除されたドライガス及び着色粒子413が封入され、着色粒子413の帯電量が一定に維持される。
(本実施形態の表示装置による効果)
本実施形態の表示装置による主な効果としては、表示パネル510が、画素420ごとに、第1電極405,発光層406、対向電極407からなる発光型表示素子の前方に、反射型表示素子の封入空間415が重ねて設けられているので、画素420内において、発光型表示素子及び反射型表示素子の占める面積を大きくすることができる。
また、反射型表示素子を、封入空間415内に着色粒子413を封入し、封入空間415に沿ってインプレーン型の電極412,407を配設した構造とし、着色粒子413を、隔壁電極412側に偏在する状態と、対向電極407側に偏在する状態との間で移動させることによって、表示パネル510の前方から入射される光の反射量を変化させる方式で表示するようにしたので、発光型表示素子を駆動して発光表示するときに、着色粒子413を隔壁電極412側に偏在させて、反射型表示素子の開口率を大きくして、発光型表示素子からの光を良好にパネル前方に出射することができる。
また上記のように、着色粒子413を動かして反射型表示素子を駆動して画像表示するために、隔壁電極412と対向電極407との間に閾値電圧Vthを超える大きさの電圧を印加することが必要であるが、画像表示した後は、反射型表示素子に対する電圧の印加を止めても、封入空間415内における着色粒子413の状態が維持されて、画像表示が維持される。したがって、反射型表示素子による画像表示を維持するために電力を必要としない。
また、発光型表示素子を駆動する駆動電圧の大きさは、この閾値電圧Vthより小さいので、発光型表示素子の駆動に伴って封入空間415内の着色粒子413が移動することがない。したがって、発光型表示素子の駆動時に、反射型表示素子に電圧を印加しなくても、反射型表示素子の開口率は大きく維持されるので、発光型素子からの光は、着色粒子413によって遮られることなくパネル前方に出射される。したがって、通常のトップエミッション型有機ELディスプレイと同等の動画表示性能を得ることができる。
このように、本実施形態の表示装置によれば、反射型表示及び発光型表示のいずれにおいても、画質をほとんど損なうことなく良好な画像表示を行うことができる。
また、反射型表示素子において、着色粒子413が、封入空間415内で気相中に封入されており、気相の屈折率は略1であるので、電気泳動方式で用いられる絶縁性透明液体、例えばシリコンオイル(屈折率1.4)中に粒子が封入されてる場合と比べて、良好な光学特性を得ることができる。また、着色粒子413が気相中に封入されているので、移動開始するのにある程度の大きさ力を必要とし、移動開始した後は迅速に移動する。
なお、上記のように反射型表示素子を駆動するときの閾値電圧の大きさが数十Vと大きくなるのは、着色粒子413が気相中に封入されていることによるところが大きい。すなわち、反射型表示素子を、着色粒子が液体中に封入された電気泳動方式にした場合は、わずかな電圧が印加されても着色粒子が動き出すので、反射型表示素子の表示状態を良好に維持しにくい。
また、本実施形態の表示装置では、対向電極407が発光型表示素子の陰極と、反射型表示素子の背面電極を兼ねているので、発光型表示素子と反射型表示素子との間の構成要素が少なくなり、その分、光透過率が向上する。
また本実施形態の表示装置では、発光型表示素子及び反射型表示素子を駆動するのに、共通の半導体スイッチング素子404を用い、ライン523,533を共用しているので、表示パネル510における配線構造が比較的簡素となる。
次に、複合微粒子による効果について説明する。
上記のように、着色粒子413を、母粒子の表層全面に子粒子を被覆した構造とすることによって、着色粒子413と、光導電層410、隔壁411、隔壁電極412との間に発生するファンデルワールス力が小さくなるので、着色粒子413を付着面から引き剥がすのに必要な電圧が小さくできるだけでなく、耐湿度特性も向上する。
また、上記のように光導電層410の表面上、並びに隔壁411、隔壁電極412の表面上に、微小な凹凸が形成された表面処理層を設けることによって、着色粒子413との間に働くファンデルワールス力をさらに低減する効果が得られる。
(実験)
1.着色粒子413の材質と、封入空間の内面を形成する光導電層410の表面処理層の材質に関して、種々の組み合わせで変えて、電圧特性を評価する実験を行った。
その結果、本実施形態のように粒子の構成材料にアクリル樹脂(PMMA)を用い、光導電層410の表面処理層にTiO2を用いることによって、着色粒子413と表面処理層との帯電特性が良好となり、良好な電圧特性が得られることがわかった。
2.表面処理層を設けない場合と、光導電層410の表面上に表面処理層を設けた場合とで、黒表示状態から白表示に変化させるのに必要な電圧を測定した。
図48は、本実施形態の表示装置において、光導電層410の表面に表面処理層を設けた場合の電圧特性を測定した結果を示すグラフであって、隔壁電極412と対向電極407との間に印加する電圧と反射濃度との関係を示す。
図48に示されるように、黒表示状態における着色粒子413を動かすのに必要な隔壁電極412と対向電極407との間の電圧(閾値電圧)は40Vであり、白表示まで変化させるのに最低必要な印加電圧(飽和電圧)は70Vであった。
一方、この表示装置において、光導電層410の表面に表面処理層を設けない場合、飽和電圧は150Vと高かった。
なお、白表示状態における着色粒子413を動かすときの閾値電圧の大きさもほぼ同じであって、白表示状態の着色粒子413を動かすには隔壁電極412に対する対向電極407の電圧を−40V以下にすることが必要であった。
[実施形態4−2]
上記実施形態4−1では、各画素に半導体スイッチング素子を設けてアクティブ駆動を行ったが、本実施形態では、各画素に半導体スイッチング素子を設けず、単純マトリックス方式で駆動を行う。
(表示パネル510のデバイス構造)
本実施形態にかかる表示装置のデバイス構造について説明する。
図49は、本実施形態に係る表示装置のデバイス構造を示す要部断面図であって、実施形態4−1と同様の構成要素は、同じ符号をつけている。
図49に示すように、この表示パネル510は、実施形態4−1と同様、アレイ基板422と対向基板421とがはり合わせられて構成され、同一画素内に発光型表示素子と反射型表示素子が重なって形成されている。
また、アレイ基板422において、背面基板402上に、最下位層として白色反射層409が形成され、その上に、第1絶縁層403、第1電極405、発光層406、対向電極407が形成され、封止層408の上に光導電層410が形成されている点は実施形態4−1と同様であるが、対向電極407の上に、第2絶縁層414と第2電極416とが積層形成され、これらも合わせて封止層408で封止されている。
そして、この第2電極416が封入空間415の底面に沿って存在し、隔壁電極412の対と第2電極416とによって反射型表示装置のインプレーン電極が構成されている。
本実施形態では、発光型表示素子を単純マトリックス方式で駆動するので、第1電極405は縦方向(Y方向)にストライプ状に伸長し、対向電極407は横方向(X方向)にストライプ状に伸長して形成され、画素ごとに矩形に形成された発光層406を挟んで互いに直交することによって、単純マトリックスの発光型表示素子が形成されている。ここで、第1電極405はカラム(列)電極、対向電極407はロー(行)電極に相当する。
また本実施形態では、反射型表示素子も単純マトリックス方式で駆動するので、対向電極407の上に、第2絶縁層414を介して第2電極416が横方向(X方向)に伸長してストライプ状に形成され、この第2電極416と、縦方向(Y方向)にストライプ状に伸長する隔壁電極412とで互いに直交するマトリックス電極が形成されている。
また、実施形態4−1では、すべての隔壁電極412が、一定の基準電位に接続されるので、横方向に隣合う画素との間で隔壁電極412を共用したが、本実施形態では、単純マトリックス駆動するために、横方向に隣り合う画素とは独立して隔壁電極412に電圧を印加するので、図49に示すように、横方向に隣合う画素同士で隔壁電極412を共用せず、それぞれ独立した隔壁電極412が設けられている。
(表示パネル510を駆動する手段)
図50は、第1電極405及び対向電極407に電圧を印加する駆動回路の構成を示す図であって、上記のように、表示パネル510には、マトリックス状に配列された各画素420を通過するように、第1電極405と対向電極407とが互いに直交して設けられ、さらに、隔壁電極対412と第2電極416も、各画素420を通過するように設けられている。
そして、発光型表示素子を駆動するために、複数の第1電極405に対して個別にデータ電圧VD1を印加する第1データ電圧設定部525、及び複数の対向電極407に対して選択電圧Vs1を順次印加する第1選択電圧設定部535が設けられている。
また、反射型表示素子を駆動するために、複数の隔壁電極対412に対して個別にデータ電圧VD2を印加する第2データ電圧設定部526、及び複数の第2電極416に対して選択電圧Vs2を順次印加する第2選択電圧設定部536が設けられている。
なお、第2選択電圧設定部536は、リセット時に、複数の第2電極416に対して一括して正のリセット電圧Vrstを印加できるようになっている。
(表示装置の動作)
上記構成の表示装置の動作について、図49〜53を参照しながら説明する。
表示切換手段600によって発光型素子の表示が選択されると、発光型素子用映像信号vlがシステム制御部700に送られ、一方、表示切換手段600によって反射型表示が選択されると、反射型素子用画像信号vrがシステム制御部700に送られる。
発光型素子用映像信号vl、反射型素子用画像信号vrは、実施形態4−1で説明したとおりである。
システム制御部700は、発光型素子用映像信号vlを受け取った場合、リセット動作を行い、続いて、発光型素子用映像信号vlに基づいて、第1データ電圧設定部525にデータ制御信号を、第1選択電圧設定部535に選択制御信号を送り、これら各設定部525,535を介して、各画素420の発光型表示素子を駆動して1フレーム分の画像表示を行う。また、動画表示は、1フレーム分の画像表示を繰り返して行う。この間、反射型表示素子はオフ状態となる。
一方、システム制御部700は、反射型素子用画像信号vrを受け取った場合、リセット動作を行い、続いて、反射型素子用画像信号vrに基づいて、第2データ電圧設定部526にデータ制御信号を、第2選択電圧設定部536に選択制御信号を送り、これら各設定部526,536を介して、各画素420の反射型表示素子を駆動して画像表示を行う。この間、発光型表示素子はオフ状態となる。
以下に、1.リセット動作、2.発光型素子による画像表示及び3.反射型素子による画像表示について説明する。
1.リセット動作
リセット時には、第1データ電圧設定部525は、全(すべ)ての隔壁電極412を接地し、第1選択電圧設定部535は、全(すべ)ての第2電極416に正のリセット電圧Vrst(+80V)を印加する。
このリセット動作によって、反射型表示素子では、第2電極416から隔壁電極412に向かって電界が形成されるので、光導電層410上に存在する着色粒子413(正に帯電)は、図49に示すように、隔壁411側(隔壁電極412側)に追いやられた状態になって開口される。したがって、パネル前方から入射される光は、白色反射層409で反射されてパネル前方に出射されるので、白表示状態となる。そして、この白表示状態(初期状態)は、次に、第2電極416に対して、反射型表示素子を駆動する閾値電圧Vth(数十Vから数百V)を超える大きさの電圧が印加されるまで維持される。
2.発光型素子による画像表示
発光型素子による画像表示時には、第1選択電圧設定部535から、複数の対向電極407に対して負の選択電圧Vs1を順次印加しながら、第1データ電圧設定部525から、複数の第1電極405に対して、各画素で表示しようとする表示輝度に相当する大きさの正のデータ電圧VD1を印加する。
これによって、各画素420の発光層406には、正のデータ電圧VD1と負の選択電圧Vs1との差に相当する電圧が印加されて、1フレーム分の発光型素子用映像信号vlに応じた発光表示がなされる。
そして、このような1フレーム分の発光表示を繰り返すことによって、動画表示がなされる。
ここで、上記の正の選択電圧Vs1と負のデータ電圧VD1との差(Vs1−VD1)は、2〜10V程度である。したがって、発光型素子の駆動に伴って、隔壁電極412と第2電極416との間にかかる電圧の大きさは最大でも10V程度であって、上記の閾値電圧Vth(数十Vから数百V)よりも小さい。
したがって、発光型素子からの光は、着色粒子413によって遮られることなく、光導電層410を通過して、パネル前方に出射される。また、発光型素子から後方に出射される光も白色反射層409で反射されてパネル前方に出射される。
3.反射型表示による画像表示
反射型素子による画像表示時には、第2選択電圧設定部536は、複数の第2電極416に対して負の選択電圧Vs2を順次印加しながら、第2データ電圧設定部526から、複数の各隔壁電極対412に対して、反射型素子用画像信号vrに基づく表示輝度に相当する大きさの正のデータ電圧VD2を印加する。
ここで、負の選択電圧Vs2の大きさ、及び正のデータ電圧VD2の大きさは、いずれも閾値電圧Vthの大きさよりも小さく、かつ、データ電圧VD2と選択電圧Vs2の差は、閾値電圧Vthの大きさよりも大きくなるように設定する。
例えば、選択電圧Vs2は−30Vに設定し、黒表示しようとする画素に対するデータ電圧VD2は30V、中間調表示しようとする画素に対するデータ電圧VD2は20Vとする。一方、白表示しようとする画素に対しては、データ電圧VD2は印加しない。
このような大きさの選択電圧及びデータ電圧を、第2電極416及び隔壁電極412に印加することによって、データ電圧VD2及び選択電圧Vs2の大きさは30V以下であって、閾値電圧Vthの大きさ(40V)よりも小さいので、データ電圧VD2あるいは選択電圧Vs2が単独で印加された画素では着色粒子413は移動しないが、黒表示しようとする画素、及び中間調表示しようとする画素には、データ電圧VD2と選択電圧Vs2とが重なって、その差に相当する電圧(Vs2−VD2)が印加され、これが閾値電圧Vthの大きさ(40V)を超えるので、着色粒子413が移動する。
すなわち、白表示しようとする画素においては、隔壁電極412にデータ電圧VD2が印加されないので、着色粒子413は移動しない。したがって、図51に示すように、初期状態のままであって、正に帯電した着色粒子413は隔壁411側に追いやられるような形で付着しており、パネル前方から白色反射層409が観られ、白表示となる。
中間調表示しようとする画素では、隔壁電極412と第2電極416との間に、第2電極416側が負の電圧(Vs2−VD2=−50V程度)が印加されるので、隔壁電極412から第2電極416に向って電界がかかり、光導電層410の表面近傍に負電荷が発生する。それによって、図52に示すように、正に帯電している着色粒子413の一部が、第2電極416に引き寄せられ、白色反射層409の一部が黒色の着色粒子413で覆われる。したがって、白色反射層409と黒色の着色粒子413の組み合わせによる中間調表示となる。
黒表示する画素では、隔壁電極412と第2電極416との間に、第2電極416側が負の電圧(Vs2−VD2=−60V)が印加されて、光導電層410の表面近傍は負電荷が完全に優位となり、図53に示すように、正に帯電している着色粒子413は光導電層410に引き寄せられ、光導電層410を覆うような形で付着した状態になる。したがって、この画素では、黒色の着色粒子413によって白色反射層409の全体が覆われるので、黒表示となる。
このようにして表示パネル510を構成する各画素の反射型素子は、反射型素子用画像信号vrに基づいて、白表示、中間調表示、黒表示のいずれかがなされて、1フレーム分の画像表示がなされる。
そして、書き込みした後は、対向電極407に電圧を印加しなくても、ファンデルワールス力によって着色粒子413は光導電層410の表層に付着したままの状態が維持されるため、電力を消費することなく画像表示状態が維持される。
したがって、電子書籍のテキスト画面や静止画像等のコンテンツを、少ない消費電力で長時間表示することが可能である。
次に、表示切換手段600から、新たなコンテンツを表示するための反射型素子用画像信号vrが送られてきた場合は、システム制御部700は、上記と同様にして、リセット動作及び書き込み動作を行う。
ここで、電子書籍のテキスト画面や静止画像等のコンテンツを一定時間表示し続ける場合、第1電極405に電圧を印加するのを止めても、ファンデルワールス力によって着色粒子413は光導電層410の表層に付着したままになる。したがって、電力を消費することなく表示状態が維持される点は、実施形態4−1と変わりない。
なお、ここでは、第2電極416に選択電圧、隔壁電極対412にデータ電圧を印加したが、選択電圧とデータ電圧を印加する電極を入れ替えて、複数の隔壁電極対412に正の選択電圧を順次印加しながら、複数の第2電極416に負のデータ電圧を印加しても、同様に反射型表示装置の画像表示をすることができる。
(表示装置の製造方法)
アレイ基板422の作製に関しては、白色反射層409、第1絶縁層403、第1電極405、発光層406、対向電極407までは、上記実施形態4−1と同様の方法で形成する。ただし、半導体スイッチング素子404を形成しない点が、実施形態4−1と大きく異なる。また、第1電極405はカラム電極に相当しY方向にストライプ状に形成し、対向電極407はロー電極に相当しX方向にストライプ状に形成した点も、実施形態4−1と異なる。
次に、第2絶縁層414を、第1絶縁層403と同様の方法で形成した後、カラム電極に相当する第2電極416をY方向にストライプ状に形成する。第2電極416も、第1電極405及び対向電極407と同様に透明導電材料であるITOにより形成する。さらに、封止層408、光導電層410を、実施形態4−1と同様の方法で形成する。
対向基板421、着色粒子413の作製に関しては、また、光導電層410の表面層410aに微小な凹凸が形成された表面処理層も、実施形態4−1と同様の方法で形成する。
対向基板421、アレイ基板422をはり合わせて表示パネル510を組み立てる組立工程も実施形態4−1と同様である。
(本実施形態の表示装置による効果)
基本的な効果は上記実施形態4−1と同様であって、反射型表示素子においては、閾値電圧Vth(数十Vから数百V)以上で駆動し、発光型表示素子の駆動電圧は、この閾値電圧Vthよりも小さいので、発光型表示素子を選択して発光表示しているときに、反射型表示素子は、初期の状態が維持される。したがって、発光表示が阻害されることがなく、通常のトップエミッション型有機ELディスプレイと同等の動画表示性能を得ることができる。
また、上記のように、反射型表示素子を単純マトリックス方式で書き込みするとき、隔壁電極412及び第2電極416の各々に印加する電圧(Vs2,VD2)の大きさを閾値電圧Vthよりも小さく設定しているので、白表示画素では着色粒子413移動することがなく、黒表示及び中間調表示しようとする画素だけで着色粒子413が移動する。したがって、単純マトリックス方式でも正確な表示ができる。
また、本実施形態4−2の表示装置は、単純マトリックス方式を採用しているので、パネル構成が簡素となり、安価に製造できる。
〈変形例など〉
上記実施形態4−1では、反射型表示素子及び発光型表示素子を駆動するのに、半導体スイッチング素子404を共用したが、反射型表示素子用の半導体スイッチング素子と発光型表示素子用の半導体スイッチング素子を別々に設けてもよく、その場合も、同様の効果を奏する。
実施形態4−2では、反射型表示素子及び発光型表示素子のいずれも単純マトリックス方式で駆動するようにしたが、いずれか一方だけ単純マトリックス方式で駆動するようにしてもよい。
実施形態4−1,4−2の表示装置では、1画素内に、発光型表示素子上に反射型表示素子が重ねられた組が1組づつ設けられていたが、発光型表示素子上に反射型表示素子が重ねられた組を複数組設けて、R,G,Bなどの各色を階調表示することによって、フルカラー表示が可能な表示装置を実現することができる。