本発明は、電磁誘導加熱方式の加熱装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置の定着装置として用いるのに適した加熱装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の加熱装置は、発熱体に磁場生成手段により生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流により前記発熱体をジュール発熱させるものである。この加熱装置は、例えば、画像形成手段によって転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する画像形成装置の定着装置として用いることができる。
この電磁誘導加熱方式の加熱装置を用いた定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式のものと比較して発熱効率が高く、その発熱体の加熱立ち上り速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができるので、所定の温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
ところで、この種の加熱装置を用いた定着装置においては、その温度制御系の故障などにより前記発熱体が熱暴走を起こして可燃部が発火したり発煙したりしないようにするために何らかの安全策を講じるようにしている。
従来、このような定着装置として、熱伝導により動作エネルギを受け取って動作する異常高温度検知手段としてのサーモスタットを、前記発熱体としての加熱ローラの局所的な発熱部分に接触するように配置し、前記加熱ローラの表面温度が予め設定された異常高温度に達したときに、この加熱ローラの温度を制御する回路に供給する電流を前記サーモスタットにより切断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示された定着装置では、磁場生成手段である励磁コイルと前記サーモスタットとが発熱体としての加熱ローラを挟んで反対側に配設されているため、サーモスタットと励磁コイルとを保持する部材、配線および端子がそれぞれに必要となり、部品点数と組立工数が増加し、装置の占める面積も大きくなるという課題を有していた。
また、特許文献1に開示された定着装置では、その加熱ローラが磁性部材である場合、加熱ローラの温度がそのキュリー温度を超えてしまうと、加熱ローラの磁性部材の透磁率が急激に低下して加熱ローラから磁束が漏洩する。この漏洩磁束は、加熱ローラの周囲の磁性部材に誘導され、この磁性部材と対向する加熱ローラの部分を局所的に高発熱させる。このため、この定着装置では、前記サーモスタットの配置部位以外で前述のような局所的な高発熱が発生すると、前記サーモスタットが動作する前に定着装置自体が破損したり発火したりするおそれがある。特に、前記加熱ローラの回転が停止している状態では、前記サーモスタットの配置部位以外で局所的な高発熱が発生していても前記サーモスタットが動作しないという問題がある。
加熱ローラの温度がそのキュリー温度を超えてしまうことによる上記の問題を解決する加熱装置としては、前記発熱体としての加熱部材を挟んで前記磁場生成手段としての励磁コイルと対向する位置に前記異常高温度検知手段としてのサーモスイッチを配設し、さらに前記サーモスイッチの配設位置もしくは近傍に、前記加熱部材の発熱層の温度が前記発熱層の磁性部材のキュリー温度を超えた時に発生する前記発熱層からの漏洩磁束を誘導する磁性部材で構成される漏洩磁束誘導部材を配設したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2の加熱装置においては、装置故障などにより、温度調整制御系が正常に動作せずに、その励磁コイルへの過剰な電力供給が続いた場合、その加熱部材の発熱の温度が上昇していく。このとき、前記加熱部材の発熱層の温度が、前記発熱層に用いられている磁性部材のキュリー温度を超えると、前記発熱層の透磁率が急激に低下して前記発熱層中に磁路を形成していた磁束が漏洩する。この漏洩磁束の多くは、前記漏洩磁束誘導部材に誘導される。これにより、前記漏洩磁束誘導部材の対向位置の加熱部材部分の発熱層における磁束が他の部分よりも相対的に多くなり、前記加熱部材の温度がこの部分で局所的に高くなって前記サーモスイッチが早く動作するようになる。
これにより、特許文献2に開示された加熱装置においては、その温度制御系の故障により熱暴走を起こして加熱部材の発熱層の温度が前記発熱層を構成する導電性磁性部材のキュリー温度を越えた異常高温度になったときに、感熱式安全装置であるサーモスイッチを早く動作させて加熱装置への電力供給を遮断することが可能になる。
特開平7−319312号公報 特開2001−267050号公報
しかしながら、前記特許文献2に開示された加熱装置は、励磁コイルとサーモスイッチとが加熱部材である定着フィルムを挟んで反対側に配設されているため、サーモスタットと励磁コイルとを保持する部材、配線および端子がそれぞれ個別に必要となり、部品点数と組立工数が増加し、装置の占める面積も大きくなるという前記特許文献1と同じ課題を有していた。
また、前記特許文献2に開示された加熱装置では、その加熱部材の発熱層に用いられている磁性部材の温度がそのキュリー温度を超えていない状態では、前記漏洩磁束誘導部材に前記漏洩磁束が誘導されないため、前記加熱部材が異常高温度になっているにもかかわらず前記サーモスイッチが動作しないおそれが高い。
さらに、特許文献2に開示された加熱装置では、その加熱部材が磁束を透過する非磁性体で構成されている場合、その励磁コイルからの磁束が前記加熱部材を透過してしまうため、この加熱部材を透過した磁束が前記漏洩磁束誘導部材に直接誘導されて前記漏洩磁束誘導部材が加熱されてしまう。このため、この加熱装置では、前記漏洩磁束誘導部材からの熱伝導により前記加熱部材が局所的に昇温されて前記加熱部材の発熱温度分布が不均一になるおそれがある。また、この加熱装置では、前記加熱部材を透過した磁束により前記漏洩磁束誘導部材が直接加熱されてしまうため、前記加熱部材が異常高温度になっていないのに前記サーモスイッチが動作してしまうおそれがある。
本発明の目的は、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、前記発熱体が異常高温度になったときに、この異常高温度を検知する異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることができる安価でコンパクトな構成の加熱装置を提供することである。
本発明の加熱装置は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記発熱体に対して前記励磁コイルと同じ側でかつ前記励磁コイルの導線の巻回束の間に配設されている構成を採る。
本発明によれば、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、前記発熱体が異常高温度になったときに異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることができるので、前記発熱体が異常高温度になっても安全性を確保することができる。また、本発明によれば、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルの設置部位と同じ側に配設されているので、前記異常高温度検知手段と前記励磁コイルとの保持部材を共通化でき、また両者の配線及び端子を一カ所に集中して配置できるので、部品点数及び組立工数を削減でき安価でコンパクトな加熱装置を提供できる。
本発明の実施の形態1に係る加熱装置を記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置として用いた画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る加熱装置を加熱手段として用いた定着装置の基本的な構成を示す断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す概略平面図
本実施の形態1に係る加熱装置の図3におけるA−A断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の発熱量を示すグラフ
本発明の実施の形態2に係る加熱装置の構成を示す概略斜視図
本実施の形態2に係る加熱装置の図6におけるB−B断面図
本発明の実施の形態3に係る加熱装置の構成を示す概略平面図
本実施の形態3に係る加熱装置の図8におけるC−C断面図
本実施の形態3に係る加熱装置の発熱量を示すグラフ
本実施の形態3に係る加熱装置の他の構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の他の構成を示す概略断面図
本実施の形態3に係る加熱装置のさらに他の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置を記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置として用いた画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図1において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、図1に示した画像形成装置100の定着装置200について説明する。図2は、この定着装置200の構成を示す断面図である。図2に示すように、この画像形成装置100の定着装置200は、発熱体としての発熱ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、発熱ベルト210を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱装置230、発熱ベルト210を懸架する定着ローラ240及びベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図2において、発熱ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、発熱ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により発熱ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、発熱ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この発熱ベルト210の挟持回転により、発熱ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
加熱装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図2に示すように、発熱ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232と、発熱ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233と、を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された発熱ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が約25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、発熱ベルト210の導電層に渦電流が発生して発熱ベルト210が発熱する。なお、本例では、発熱ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を発熱ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の背面を覆うアーチ型に形成されたアーチコア232aと、励磁コイル231の巻回中心に配置されたセンターコア232bと、励磁コイル231の巻回束の両端に配置されたサイドコア232cとで構成されている。コア232の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
センターコア232bとサイドコア232cとは、アーチコア232aと共に磁路を構成している。このため、発熱ベルト210の外側では、励磁コイル231によって生成された磁束の大半がこの3種類のコアの内部を通過し、コアの外部に漏洩する磁束は少ない。
また、センターコア232bとサイドコア232cとは、長手方向(図の左右方向)に一様な断面を有している。このため、アーチコア232aが図3のように分散配置されていても、発熱ベルト210を貫通する磁束はセンターコア232bとサイドコア232cによって長手方向(図の左右方向)に均一化されるので、発熱ベルト210の長手方向の温度分布がほぼ均一化される。
ここで、センターコア232b及びサイドコア232cとは、アーチコア232aと一体で構成してもよいし、別々の部材を組み合わせて構成してもよい。
このように構成された定着装置200は、図2に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を発熱ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の発熱ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により発熱ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力(励磁電流)を制御し、これにより発熱ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、発熱ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、加熱装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。
なお、図2に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
発熱ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この発熱ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。発熱ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、発熱ベルト210の表面の離型層としては、PTFE(PolyTetra−Fluoro Ethylene)、PFA(Per Fluoro Alkoxy Fluoroplastics)、FEP(FluorinatedEtyienePropylenecopolymer)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、発熱ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この発熱ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のもの、あるいは厚さ30〜60μmのニッケル電鋳ベルトであってもよい。
また、発熱ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この発熱ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合にはゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、鉄、アルミ、銅及びニッケル等の金属を用いることもできるが、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束が遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは発熱が小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.1mm以下の肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、アスカーC30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度アスカーC65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
次に、本実施の形態1に係る加熱装置の構成について詳細に説明する。図3は、本実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す概略平面図である。図4は、本実施の形態1に係る加熱装置の図3におけるA−A断面図、図5は、本実施の形態1に係る加熱装置の発熱量を示すグラフである。
図3及び図4に示すように、本実施の形態1に係る加熱装置300は、前述した発熱ベルト210、励磁コイル231、アーチコア232a、センターコア232b、サイドコア232c及び対向コア233の他に、発熱ベルト210が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段としてのサーモスタット301を備えている。
図3及び図4において、本実施の形態1に係る加熱装置300のサーモスタット301は、発熱ベルト210に対して励磁コイル231と同じ側でかつ励磁コイル231の導線の巻回束の間に配設されている。ここで、導線の巻回束とは、同一方向に電流が流れる導線の束のことで、巻回束の間とは、前記巻回束を形成する導線と導線の間のことである。
このように、この加熱装置300におけるサーモスタット301は、励磁コイル231と同じ側でかつ励磁コイル231の導線の巻回束の間、つまりサーモスタット301が励磁コイル231によって生成される磁界の影響を受けて誤動作することがない部位に配設されている。
すなわち、サーモスタット301は、アーチコア232a、センターコア232b及びサイドコア232c、対向コア233によって形成された大半の磁束が通る磁路から外れた位置、つまり発熱ベルト210の材質及び温度特性などの影響を受けて誤動作することがない部位に配設されている。
従って、この加熱装置300においては、サーモスタット301と励磁コイル231とを共にコイルガイド234に保持することができ、これらの配線及び端子を一カ所に集中配置できるので、部品点数及び組立工数を低減でき、装置本体を安価でコンパクトに構成することが可能になる。
また、この加熱装置300においては、発熱ベルト210の材質が磁性部材であるか否か及び発熱ベルト210の温度がキュリー温度を超えたか否かにかかわらず、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301が確実に動作するようになる。
また、この加熱装置300においては、サーモスタット301に対する磁束の影響が少ないので、サーモスタット301が磁性体を含む構成であってもそれ自体の発熱が小さく、サーモスタット301自体の発熱による発熱ベルト210の発熱温度分布への影響も少ない。
さらに、この加熱装置300におけるサーモスタット301の配設部位は、加熱装置300の他の部位と比較して発熱ベルト210の発熱量Q(図5参照)が大きくなる部位となる。従って、この加熱装置300においては、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301が迅速かつ確実に動作するようになる。ちなみに、発熱ベルト210の発熱量Qは、図5に示すように、励磁コイル231の導線の巻回束の中央位置、つまりサーモスタット301の配設部位の両サイド部で最大となる。
また、この加熱装置300においては、サーモスタット301が配設されている部位の励磁コイル231の導線が、発熱ベルト210の長手方向(通紙幅方向)に沿って互いに平行をなしている。すなわち、この加熱装置300における励磁コイル231の導線は、図3及び図4に示すように、サーモスタット301の配設部位が抜け落ちた直線状に巻回されている。
このように構成した励磁コイル231は、その巻回束の導線の密度が長手方向のいずれの位置でも一様になるので、発熱ベルト210の長手方向に沿った磁界強度が一様になり、発熱ベルト210の長手方向の発熱温度分布がほぼ均一化されるようになる。
また、この加熱装置300においては、励磁コイル231の導線の巻回束が、前記導線の巻回中心に対して対称形状をなしている。すなわち、この加熱装置300における励磁コイル231の導線の巻回束は、図3及び図4に示すように、サーモスタット301が配設されている部位とサーモスタット301が配設されていない部位とが同一の形状をなすように構成されている。
このように構成した励磁コイル231は、図4に示すように、励磁コイル231の巻回中心Oに対して左右対称となり、図5に示すように、発熱ベルト210発熱量Qが巻回中心Oの左右で同一になるので、サーモスタット301が配設されていない部位で発熱ベルト210が異常高温度になってサーモスタット301の動作が遅れるという不具合が起こらなくなる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図6は、本実施の形態2に係る加熱装置の構成を示す概略斜視図である。図7は、本実施の形態2に係る加熱装置の図6におけるB−B断面図である。図6及び図7に示すように、本実施の形態2に係る加熱装置600は、平板状の熱伝導体601の熱伝導によりサーモスタット301を動作させるように構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る加熱装置300と同様である。
ここで、熱伝導体601は、その平面が励磁コイル231の導線の巻回方向に沿うように励磁コイル231の導線の間に配置されており、サーモスタット301は、熱伝導体601の延出部の側面に配設されている。
このような構成の加熱装置600は、図6に示すように、サーモスタット301の配設部位を迂回する際の励磁コイル231の導線の迂回幅Gを小さくすることができ、サーモスタット301を配設したことによる導線の巻回数の減少に伴う励磁コイル231の出力の低下を抑えることができる。
ここで、熱伝導体601は、非磁性の熱良導性金属で構成することが好ましい。すなわち、非磁性の熱良導性金属からなる熱伝導体601は、励磁コイル231により生成される磁界の影響を受けないので、熱伝導体601の自己発熱によって発熱ベルト210が局部的に発熱するといった不具合を起こすことがない。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図8は、本実施の形態3に係る加熱装置の構成を示す概略平面図である。図9は、本発明の実施の形態3に係る加熱装置の図8におけるC−C断面図、図10は、本発明の実施の形態3に係る加熱装置の発熱量を示すグラフである。
図8及び図9に示すように、この加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回束の側部に励磁コイル231とセンタコア232bとの間に挟み込むように配設したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る加熱装置300と同様である。
この加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回束の側部に配設するようにしたので、このサーモスタット301を配設するに当たって励磁コイル231の導線の巻き方を変更する必要がなくなる。従って、この加熱装置800においては、従来の構成の励磁コイル231をそのまま使用することができ、その製造コストを低く抑えることができる。
また、この加熱装置800は、サーモスタット301が配設される励磁コイル231の導線の巻回束の側部における発熱ベルト210の発熱量Qが、図10に示すように、発熱ベルト210の発熱量Qが励磁コイル231の導線の巻回束の間に次いで大きくなるので、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301を比較的迅速かつ確実に動作させることができる。
ここで、図8及び図9に示す加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回中心側(巻回束の内側部)に配設した例であるが、このサーモスタット301は、図11に示す加熱装置1100のように、励磁コイル231の導線の巻回束の外側部に励磁コイル231とセンタコア232cとの間に挟み込むように配設しても同様の効果が得られる。
ところで、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231の導線の巻回中心Oに強磁性体からなるセンターコア232bを配置している。このような構成の加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231から発生する磁束がセンターコア232bに集中するので、センターコア232bを配設しないセンターコアレスタイプのものに較べて励磁コイル231から漏洩する磁束が少なくなり、この漏洩磁束による励磁コイル231の出力低下等を抑制することができる。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231の導線の巻回束の外側部に強磁性体からなるサイドコア232cを配置し、サーモスタット301をセンターコア232bとサイドコア232cとの間に配設した構成を採っている。このような構成の加熱装置300,600,800,1100は、サーモスタット301が励磁コイル231から発生する磁束の磁路から外れた位置に配設された構成となるので、前記磁束の影響によるサーモスタット301の自己発熱が少なくなる。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100においては、前記異常高温度検知手段として少なくとも1個のサーモスタット301を使用しているので、安価に構成することができる。ここで、サーモスタット301を複数個設けた場合には、1個のサーモスタット301を除いて他の全てのサーモスタット301が故障しても発熱ベルト210の異常高温度を感知することができるので、装置の安全性を向上させることができる。なお、複数個のサーモスタット301を配設する場合には、各サーモスタット301を対称位置となるように配設して、各サーモスタット301を配設したことによる発熱ベルト210への影響を均等に分散させることが好ましい。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100においては、加熱可能な最小サイズの被加熱体(ここでは記録紙109)を加熱する発熱ベルト210の最小加熱領域と対向する部位(励磁コイル231の長手方向の中央部)にサーモスタット301を配設している。このような構成の加熱装置300,600,800,110は、発熱ベルト210が加熱されている際にはサーモスタット301が常に動作可能な状態になるので、サーモスタット301の感知できない加熱領域で発熱ベルト210が異常高温度になることがなく安全面での信頼性が向上される。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231及びコア232を回転体からなる発熱ベルト210の外周面に沿って対向配置した構成を採っている。また、このような構成の加熱装置300,600,800,1100においては、発熱ベルト210及び支持ローラ220を交換する際に励磁コイル231及びコア232を取り外す必要がないので、装置のメンテナンス等を容易に行うことができる。
ここで、上述のような装置のメンテナンス等を考慮せず、装置本体のコンパクト化に重点を置く必要がある場合には、図12及び図13に示すように、励磁コイル231及びコア232を前記回転体である発熱ベルト210の内部に配設した構成としてもよい。ここで、図12に示す加熱装置1200は、励磁コイル231の導線の巻回束の間にサーモスタット301を配設した一例を示すものである。また、図13に示す加熱装置1300は、励磁コイル231の導線の巻回束の側部にサーモスタット301を配設した一例を示すものである。
なお、前述の各実施の形態に係る加熱装置300,600,800、1100においては、発熱ベルト210を支持ローラ220及び定着ローラ240で支持しているが、この発熱ベルト210は、図12及び図13に示す加熱装置1200,1300のように、それ自体をローラ状に形成して定着ローラ240としての機能を持たせるようにしたものであってもよい。
また、前述の各実施の形態においては、異常高温度検知手段として、サーモスタット301を用いたが、設定温度以上になると溶断される温度ヒューズを用いてもよい。また異常高温度検知手段としてサーミスタを用いて、サーミスタが設定温度以上の高温を検知したときに励磁コイル231への電源供給を遮断する電子回路を組み合わせることによってサーモスタット301の代用とすることも可能であることは言うまでもない。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図14は、本実施の形態4に係る加熱装置を用いた定着装置1400の構成を示す断面図である。なお、図14において、実施の形態1に係る図2の定着装置200と同一の構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
図14に示すように、この加熱装置1400は、図8及び図9に示した実施の形態3に係る加熱装置800がセンターコア232bを励磁コイル231の巻回中心に配置した構成に対して、センターコア232bを励磁コイル231の巻回中心から外れた側方に配置し、そのセンターコア232bに隣接してサーモスタット301を配設したものである。
このように加熱装置1400を構成することにより、図9の加熱装置800においてセンターコア232bの左隣にあった空間にも励磁コイル231を配設してコイル断面積を大きくすることにより、発熱効率を高めることができる。
本発明の加熱装置の第1の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記発熱体に対して前記励磁コイルと同じ側でかつ前記励磁コイルの導線の巻回束の間に配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルの設置部位と同じ側に配設されているので、前記異常高温度検知手段と前記励磁コイルとの保持部材を共通化できるとともに、両者の配線及び端子等を一カ所に集中して配置することができるので、装置本体を安価かつコンパクトに構成することができる。さらに、この構成によれば、前記励磁コイルの他の部位と比較して前記発熱体の発熱量がより大きな前記励磁コイルの導線の巻回束の間に前記異常高温度検知手段が配設されているので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段をより迅速かつ確実に動作させることができるようになる。ちなみに、前記発熱体の発熱量は、前記励磁コイルの導線の巻回束の中央位置で最大となる。
本発明の加熱装置の第2の態様は、上記第1の態様に記載の加熱装置において、前記励磁コイルの導線の巻回中央部に配置される強磁性体からなるセンターコアと、前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部に配置される強磁性体からなるサイドコアとの、少なくとも一方のコアを備えた構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体の前記センターコア及び前記サイドコアの存在により、前記発熱体を貫通しない漏洩磁束が少なくなって前記励磁コイルの出力低下を抑制することができる。また、この構成においては、前記発熱体の回転軸方向の温度分布を均一にすることができる。
本発明の加熱装置の第3の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、前記励磁コイルの導線の巻回中央部に配置される強磁性体からなるセンターコアと、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記励磁コイルと前記センターコアとの間に挟まれて配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記励磁コイルから発生する磁束の大半が前記センターコアを通るので、前記センターコアを配設しないセンターコアレスタイプのものに較べて前記異常高温度検知手段が配設される前記励磁コイルの導線の巻回束の内側部における前記発熱体の発熱量が大きくなるので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段を比較的迅速かつ確実に動作させることができるとともに、漏洩磁束の影響による前記異常高温度検知手段の自己発熱が少なくなる。また、この構成によれば、前記異常高温度検知手段を配設するに当たって前記励磁コイルの導線の巻き方を変更する必要がなく、従来の構成の励磁コイルをそのまま使用することができる。
本発明の加熱装置の第4の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部に配置される強磁性体からなるサイドコアと、を備え、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルと前記サイドコアとの間に挟まれて配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記異常高温度検知手段が配設されている部位の磁束の大半が前記サイドコアを通るので、前記サイドコアレスのものに較べて前記異常高温度検知手段が配設される前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部における前記発熱体の発熱量が大きくなるので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段を比較的迅速かつ確実に動作させることができるとともに、漏洩磁束の影響による前記異常高温度検知手段の自己発熱が少なくなる。
本発明の加熱装置の第5の態様は、上記第1の態様に記載の加熱装置において、前記発熱体に対して前記励磁コイルとは反対側に配置されて磁路を形成する対向コアを具備する構成を採る。
この構成によれば、前記励磁コイルで生成される磁束の大半が前記対向コアを通るので、前記発熱体の材質が非磁性部材であっても前記励磁コイルの出力低下を抑制することができる。また、この構成においては、前記発熱体の材質が磁性部材であって、その温度がキュリー点を超えた場合でも、上述と同様に前記磁束の大半が前記対向コアを通るので漏洩磁束が少なく、前記異常高温度検知手段を確実に動作させることができる。
本発明の加熱装置の第6の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段が配設されている部位の前記励磁コイルの導線が、前記発熱体の長手方向に沿って互いに平行をなしている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段が配設されている部位における前記励磁コイルにより生成される前記発熱体の長手方向に沿った磁界強度が一様になる。従って、この構成においては、前記発熱体の長手方向の発熱温度分布がほぼ均一化されるようになる。
本発明の加熱装置の第7の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記励磁コイルの導線の巻回束は、前記導線の巻回中心に対して対称形状をなしている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段が配設されている部位と前記異常高温度検知手段が配設されていない部位との前記発熱体の磁界強度が一様になる。従って、この構成においては、前記異常高温度検知手段が配設されていない部位で前記発熱体が異常高温度になって前記異常高温度検知手段の動作が遅れるという不具合が起こらなくなる。
本発明の加熱装置の第8の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、平板状の熱伝導体の平面が前記導線の巻回方向に沿うように前記熱伝導体を前記励磁コイルの導線の間に配置し、前記熱伝導体の熱伝導により前記異常高温度検知手段に熱を伝達する構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段の配設部位を迂回する際の前記励磁コイルの導線の迂回幅を小さくすることができ、前記異常高温度検知手段を配設したことによる前記導線の巻回数の減少に伴う前記励磁コイルの出力の低下を抑えることができる。
本発明の加熱装置の第9の態様は、上記第8の態様に記載の加熱装置において、前記熱伝導体は、非磁性の熱良導性金属である構成を採る。
この構成によれば、上記第8の態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記熱伝導体が前記励磁コイルにより生成される磁界の影響を受けないので、前記熱伝導体の自己発熱によって前記発熱体が局部的に発熱するといった不具合を起こすことがない。
本発明の加熱装置の第10の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段は、少なくとも1個のサーモスタットである構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段がサーモスタットであるので、安価に構成することができる。ここで、前記サーモスタットを複数個設けた場合には、1個のサーモスタットを除いて他の全てのサーモスタットが故障しても前記発熱体の異常高温度を感知することができるので、装置の安全性を向上させることができる。また、複数個のサーモスタットを配設する場合には、各サーモスタットを対称位置となるように配設して、各サーモスタットを配設したことによる前記発熱体への影響を均等に分散させることが好ましい。
本発明の加熱装置の第11の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段は、加熱可能な最小サイズの被加熱体を加熱する前記発熱体の最小加熱領域と対向する部位に配設されている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体が加熱されている際には前記異常高温度検知手段が常に動作可能な状態になるので、前記異常高温度検知手段の感知できない加熱領域で前記発熱体が異常高温度になることがなく安全面での信頼性が向上される。
本発明の加熱装置の第12の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記発熱体は、前記励磁コイルに対して移動する回転体からなり、前記励磁コイルは、前記回転体の外周面に沿って対向配置されている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体を交換する際に前記磁気コイルを取り外す必要がないので、装置のメンテナンス等を容易に行うことができる。
本発明の加熱装置の第13の態様は、上記第3の態様に記載の加熱装置において、前記センターコアは、前記励磁コイルの導線の巻回中心から外れた側方に配置され、前記異常高温度検知手段は、前記励磁コイルと前記センターコアとの間に前記センターコアに隣接して配設されている構成を採る。
この構成によれば、センターコアが励磁コイルの導線の巻回中心に配置された際に前記異常高温度検知手段が配設されていた空間にも励磁コイルを配設できるので、励磁コイルのコイル断面積を大きくし、発熱効率を高めることができる。
本発明の定着装置の第14の態様は、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱定着手段の加熱手段として、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、前記加熱手段としての加熱装置の発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段が迅速かつ確実に動作されるので、前記記録媒体の発火や発煙等の二次的な災害の発生を未然に防止することができる。
本発明の画像形成装置の第15の態様は、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱定着手段として、上記第14の態様に記載の定着装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、記録媒体上に形成された未定着画像を前記定着装置により安全に加熱定着することができる。
本明細書は、2003年12月3日出願の特願2003−404944に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明は、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置の定着装置として用いられる加熱装置の前記発熱体が異常高温度になったときに異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることを可能にすることである。
本発明は、電磁誘導加熱方式の加熱装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置の定着装置として用いるのに適した加熱装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の加熱装置は、発熱体に磁場生成手段により生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流により前記発熱体をジュール発熱させるものである。この加熱装置は、例えば、画像形成手段によって転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する画像形成装置の定着装置として用いることができる。
この電磁誘導加熱方式の加熱装置を用いた定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式のものと比較して発熱効率が高く、その発熱体の加熱立ち上り速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができるので、所定の温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
ところで、この種の加熱装置を用いた定着装置においては、その温度制御系の故障などにより前記発熱体が熱暴走を起こして可燃部が発火したり発煙したりしないようにするために何らかの安全策を講じるようにしている。
従来、このような定着装置として、熱伝導により動作エネルギを受け取って動作する異常高温度検知手段としてのサーモスタットを、前記発熱体としての加熱ローラの局所的な発熱部分に接触するように配置し、前記加熱ローラの表面温度が予め設定された異常高温度に達したときに、この加熱ローラの温度を制御する回路に供給する電流を前記サーモスタットにより切断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示された定着装置では、磁場生成手段である励磁コイルと前記サーモスタットとが発熱体としての加熱ローラを挟んで反対側に配設されているため、サーモスタットと励磁コイルとを保持する部材、配線および端子がそれぞれに必要となり、部品点数と組立工数が増加し、装置の占める面積も大きくなるという課題を有していた。
また、特許文献1に開示された定着装置では、その加熱ローラが磁性部材である場合、加熱ローラの温度がそのキュリー温度を超えてしまうと、加熱ローラの磁性部材の透磁率が急激に低下して加熱ローラから磁束が漏洩する。この漏洩磁束は、加熱ローラの周囲の磁性部材に誘導され、この磁性部材と対向する加熱ローラの部分を局所的に高発熱させる。このため、この定着装置では、前記サーモスタットの配置部位以外で前述のような局所的な高発熱が発生すると、前記サーモスタットが動作する前に定着装置自体が破損したり発火したりするおそれがある。特に、前記加熱ローラの回転が停止している状態では、前記サーモスタットの配置部位以外で局所的な高発熱が発生していても前記サーモスタットが動作しないという問題がある。
加熱ローラの温度がそのキュリー温度を超えてしまうことによる上記の問題を解決する加熱装置としては、前記発熱体としての加熱部材を挟んで前記磁場生成手段としての励磁コイルと対向する位置に前記異常高温度検知手段としてのサーモスイッチを配設し、さらに前記サーモスイッチの配設位置もしくは近傍に、前記加熱部材の発熱層の温度が前記発熱層の磁性部材のキュリー温度を超えた時に発生する前記発熱層からの漏洩磁束を誘導する磁性部材で構成される漏洩磁束誘導部材を配設したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2の加熱装置においては、装置故障などにより、温度調整制御系が正常に動作せずに、その励磁コイルへの過剰な電力供給が続いた場合、その加熱部材の発熱の温度が上昇していく。このとき、前記加熱部材の発熱層の温度が、前記発熱層に用いられている磁性部材のキュリー温度を超えると、前記発熱層の透磁率が急激に低下して前記発熱層中に磁路を形成していた磁束が漏洩する。この漏洩磁束の多くは、前記漏洩磁束誘導部材に誘導される。これにより、前記漏洩磁束誘導部材の対向位置の加熱部材部分の発熱層における磁束が他の部分よりも相対的に多くなり、前記加熱部材の温度がこの部分で局所的に高くなって前記サーモスイッチが早く動作するようになる。
これにより、特許文献2に開示された加熱装置においては、その温度制御系の故障により熱暴走を起こして加熱部材の発熱層の温度が前記発熱層を構成する導電性磁性部材のキュリー温度を越えた異常高温度になったときに、感熱式安全装置であるサーモスイッチを早く動作させて加熱装置への電力供給を遮断することが可能になる。
特開平7−319312号公報
特開2001−267050号公報
しかしながら、前記特許文献2に開示された加熱装置は、励磁コイルとサーモスイッチとが加熱部材である定着フィルムを挟んで反対側に配設されているため、サーモスタットと励磁コイルとを保持する部材、配線および端子がそれぞれ個別に必要となり、部品点数と組立工数が増加し、装置の占める面積も大きくなるという前記特許文献1と同じ課題を有していた。
また、前記特許文献2に開示された加熱装置では、その加熱部材の発熱層に用いられている磁性部材の温度がそのキュリー温度を超えていない状態では、前記漏洩磁束誘導部材に前記漏洩磁束が誘導されないため、前記加熱部材が異常高温度になっているにもかかわらず前記サーモスイッチが動作しないおそれが高い。
さらに、特許文献2に開示された加熱装置では、その加熱部材が磁束を透過する非磁性体で構成されている場合、その励磁コイルからの磁束が前記加熱部材を透過してしまうため、この加熱部材を透過した磁束が前記漏洩磁束誘導部材に直接誘導されて前記漏洩磁束誘導部材が加熱されてしまう。このため、この加熱装置では、前記漏洩磁束誘導部材からの熱伝導により前記加熱部材が局所的に昇温されて前記加熱部材の発熱温度分布が不均一になるおそれがある。また、この加熱装置では、前記加熱部材を透過した磁束により前記漏洩磁束誘導部材が直接加熱されてしまうため、前記加熱部材が異常高温度になっていないのに前記サーモスイッチが動作してしまうおそれがある。
本発明の目的は、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、前記発熱体が異常高温度になったときに、この異常高温度を検知する異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることができる安価でコンパクトな構成の加熱装置を提供することである。
本発明の加熱装置は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記発熱体に対して前記励磁コイルと同じ側でかつ前記励磁コイルの導線の巻回束の間に配設されている構成を採る。
本発明によれば、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、前記発熱体が異常高温度になったときに異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることができるので、前記発熱体が異常高温度になっても安全性を確保することができる。また、本発明によれば、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルの設置部位と同じ側に配設されているので、前記異常高温度検知手段と前記励磁コイルとの保持部材を共通化でき、また両者の配線及び端子を一カ所に集中して配置できるので、部品点数及び組立工数を削減でき安価でコンパクトな加熱装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置を記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置として用いた画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図1において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、図1に示した画像形成装置100の定着装置200について説明する。図2は、この定着装置200の構成を示す断面図である。図2に示すように、この画像形成装置100の定着装置200は、発熱体としての発熱ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、発熱ベルト210を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱装置230、発熱ベルト210を懸架する定着ローラ240及びベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図2において、発熱ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、発熱ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により発熱ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、発熱ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この発熱ベルト210の挟持回転により、発熱ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
加熱装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図2に示すように、発熱ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232と、発熱ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233と、を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された発熱ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が約25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、発熱ベルト210の導電層に渦電流が発生して発熱ベルト210が発熱する。なお、本例では、発熱ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を発熱ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の背面を覆うアーチ型に形成されたアーチコア232aと、励磁コイル231の巻回中心に配置されたセンターコア232bと、励磁コイル231の巻回束の両端に配置されたサイドコア232cとで構成されている。コア232の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
センターコア232bとサイドコア232cとは、アーチコア232aと共に磁路を構成している。このため、発熱ベルト210の外側では、励磁コイル231によって生成された磁束の大半がこの3種類のコアの内部を通過し、コアの外部に漏洩する磁束は少ない。
また、センターコア232bとサイドコア232cとは、長手方向(図の左右方向)に一様な断面を有している。このため、アーチコア232aが図3のように分散配置されていても、発熱ベルト210を貫通する磁束はセンターコア232bとサイドコア232cによって長手方向(図の左右方向)に均一化されるので、発熱ベルト210の長手方向の温度分布がほぼ均一化される。
ここで、センターコア232b及びサイドコア232cとは、アーチコア232aと一体で構成してもよいし、別々の部材を組み合わせて構成してもよい。
このように構成された定着装置200は、図2に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を発熱ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の発熱ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により発熱ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力(励磁電流)を制御し、これにより発熱ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、発熱ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、加熱装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。
なお、図2に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
発熱ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この発熱ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。発熱ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、発熱ベルト210の表面の離型層としては、PTFE(PolyTetra-Fluoro Ethylene )、PFA(Per Fluoro Alkoxy Fluoroplastics)、FEP(FluorinatedEtyienePropylene copolymer )、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、発熱ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この発熱ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のもの、あるいは厚さ30〜60μmのニッケル電鋳ベルトであってもよい。
また、発熱ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この発熱ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合にはゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、鉄、アルミ、銅及びニッケル等の金属を用いることもできるが、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束が遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは発熱が小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.1mm以下の肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、アスカーC30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度アスカーC65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
次に、本実施の形態1に係る加熱装置の構成について詳細に説明する。図3は、本実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す概略平面図である。図4は、本実施の形態1に係る加熱装置の図3におけるA−A断面図、図5は、本実施の形態1に係る加熱装置の発熱量を示すグラフである。
図3及び図4に示すように、本実施の形態1に係る加熱装置300は、前述した発熱ベルト210、励磁コイル231、アーチコア232a、センターコア232b、サイドコア232c及び対向コア233の他に、発熱ベルト210が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段としてのサーモスタット301を備えている。
図3及び図4において、本実施の形態1に係る加熱装置300のサーモスタット301は、発熱ベルト210に対して励磁コイル231と同じ側でかつ励磁コイル231の導線の巻回束の間に配設されている。ここで、導線の巻回束とは、同一方向に電流が流れる導線の束のことで、巻回束の間とは、前記巻回束を形成する導線と導線の間のことである。
このように、この加熱装置300におけるサーモスタット301は、励磁コイル231と同じ側でかつ励磁コイル231の導線の巻回束の間、つまりサーモスタット301が励磁コイル231によって生成される磁界の影響を受けて誤動作することがない部位に配設されている。
すなわち、サーモスタット301は、アーチコア232a、センターコア232b及びサイドコア232c、対向コア233によって形成された大半の磁束が通る磁路から外れた位置、つまり発熱ベルト210の材質及び温度特性などの影響を受けて誤動作することがない部位に配設されている。
従って、この加熱装置300においては、サーモスタット301と励磁コイル231とを共にコイルガイド234に保持することができ、これらの配線及び端子を一カ所に集中配置できるので、部品点数及び組立工数を低減でき、装置本体を安価でコンパクトに構成することが可能になる。
また、この加熱装置300においては、発熱ベルト210の材質が磁性部材であるか否か及び発熱ベルト210の温度がキュリー温度を超えたか否かにかかわらず、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301が確実に動作するようになる。
また、この加熱装置300においては、サーモスタット301に対する磁束の影響が少ないので、サーモスタット301が磁性体を含む構成であってもそれ自体の発熱が小さく、サーモスタット301自体の発熱による発熱ベルト210の発熱温度分布への影響も少ない。
さらに、この加熱装置300におけるサーモスタット301の配設部位は、加熱装置300の他の部位と比較して発熱ベルト210の発熱量Q(図5参照)が大きくなる部位となる。従って、この加熱装置300においては、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301が迅速かつ確実に動作するようになる。ちなみに、発熱ベルト210の発熱量Qは、図5に示すように、励磁コイル231の導線の巻回束の中央位置、つまりサーモスタット301の配設部位の両サイド部で最大となる。
また、この加熱装置300においては、サーモスタット301が配設されている部位の励磁コイル231の導線が、発熱ベルト210の長手方向(通紙幅方向)に沿って互いに平行をなしている。すなわち、この加熱装置300における励磁コイル231の導線は、図3及び図4に示すように、サーモスタット301の配設部位が抜け落ちた直線状に巻回されている。
このように構成した励磁コイル231は、その巻回束の導線の密度が長手方向のいずれの位置でも一様になるので、発熱ベルト210の長手方向に沿った磁界強度が一様になり、発熱ベルト210の長手方向の発熱温度分布がほぼ均一化されるようになる。
また、この加熱装置300においては、励磁コイル231の導線の巻回束が、前記導線の巻回中心に対して対称形状をなしている。すなわち、この加熱装置300における励磁コイル231の導線の巻回束は、図3及び図4に示すように、サーモスタット301が配設されている部位とサーモスタット301が配設されていない部位とが同一の形状をなすように構成されている。
このように構成した励磁コイル231は、図4に示すように、励磁コイル231の巻回中心Oに対して左右対称となり、図5に示すように、発熱ベルト210発熱量Qが巻回中心Oの左右で同一になるので、サーモスタット301が配設されていない部位で発熱ベルト210が異常高温度になってサーモスタット301の動作が遅れるという不具合が起こらなくなる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図6は、本実施の形態2に係る加熱装置の構成を示す概略斜視図である。図7は、本実施の形態2に係る加熱装置の図6におけるB−B断面図である。図6及び図7に示すように、本実施の形態2に係る加熱装置600は、平板状の熱伝導体601の熱伝導によりサーモスタット301を動作させるように構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る加熱装置300と同様である。
ここで、熱伝導体601は、その平面が励磁コイル231の導線の巻回方向に沿うように励磁コイル231の導線の間に配置されており、サーモスタット301は、熱伝導体601の延出部の側面に配設されている。
このような構成の加熱装置600は、図6に示すように、サーモスタット301の配設部位を迂回する際の励磁コイル231の導線の迂回幅Gを小さくすることができ、サーモスタット301を配設したことによる導線の巻回数の減少に伴う励磁コイル231の出力の低下を抑えることができる。
ここで、熱伝導体601は、非磁性の熱良導性金属で構成することが好ましい。すなわち、非磁性の熱良導性金属からなる熱伝導体601は、励磁コイル231により生成される磁界の影響を受けないので、熱伝導体601の自己発熱によって発熱ベルト210が局部的に発熱するといった不具合を起こすことがない。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図8は、本実施の形態3に係る加熱装置の構成を示す概略平面図である。図9は、本発明の実施の形態3に係る加熱装置の図8におけるC−C断面図、図10は、本発明の実施の形態3に係る加熱装置の発熱量を示すグラフである。
図8及び図9に示すように、この加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回束の側部に励磁コイル231とセンタコア232bとの間に挟み込むように配設したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る加熱装置300と同様である。
この加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回束の側部に配設するようにしたので、このサーモスタット301を配設するに当たって励磁コイル231の導線の巻き方を変更する必要がなくなる。従って、この加熱装置800においては、従来の構成の励磁コイル231をそのまま使用することができ、その製造コストを低く抑えることができる。
また、この加熱装置800は、サーモスタット301が配設される励磁コイル231の導線の巻回束の側部における発熱ベルト210の発熱量Qが、図10に示すように、発熱ベルト210の発熱量Qが励磁コイル231の導線の巻回束の間に次いで大きくなるので、発熱ベルト210が異常高温度になったときにサーモスタット301を比較的迅速かつ確実に動作させることができる。
ここで、図8及び図9に示す加熱装置800は、サーモスタット301を励磁コイル231の導線の巻回中心側(巻回束の内側部)に配設した例であるが、このサーモスタット301は、図11に示す加熱装置1100のように、励磁コイル231の導線の巻回束の外側部に励磁コイル231とセンタコア232cとの間に挟み込むように配設しても同様の効果が得られる。
ところで、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231の導線の巻回中心Oに強磁性体からなるセンターコア232bを配置している。このような構成の加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231から発生する磁束がセンターコア232bに集中するので、センターコア232bを配設しないセンターコアレスタイプのものに較べて励磁コイル231から漏洩する磁束が少なくなり、この漏洩磁束による励磁コイル231の出力低下等を抑制することができる。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231の導線の巻回束の外側部に強磁性体からなるサイドコア232cを配置し、サーモスタット301をセンターコア232bとサイドコア232cとの間に配設した構成を採っている。このような構成の加熱装置300,600,800,1100は、サーモスタット301が励磁コイル231から発生する磁束の磁路から外れた位置に配設された構成となるので、前記磁束の影響によるサーモスタット301の自己発熱が少なくなる。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100においては、前記異常高温度検知手段として少なくとも1個のサーモスタット301を使用しているので、安価に構成することができる。ここで、サーモスタット301を複数個設けた場合には、1個のサーモスタット301を除いて他の全てのサーモスタット301が故障しても発熱ベルト210の異常高温度を感知することができるので、装置の安全性を向上させることができる。なお、複数個のサーモスタット301を配設する場合には、各サーモスタット301を対称位置となるように配設して、各サーモスタット301を配設したことによる発熱ベルト210への影響を均等に分散させることが好ましい。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100においては、加熱可能な最小サイズの被加熱体(ここでは記録紙109)を加熱する発熱ベルト210の最小加熱領域と対向する部位(励磁コイル231の長手方向の中央部)にサーモスタット301を配設している。このような構成の加熱装置300,600,800,110は、発熱ベルト210が加熱されている際にはサーモスタット301が常に動作可能な状態になるので、サーモスタット301の感知できない加熱領域で発熱ベルト210が異常高温度になることがなく安全面での信頼性が向上される。
また、前述した各実施の形態に係る加熱装置300,600,800,1100は、励磁コイル231及びコア232を回転体からなる発熱ベルト210の外周面に沿って対向配置した構成を採っている。また、このような構成の加熱装置300,600,800,1100においては、発熱ベルト210及び支持ローラ220を交換する際に励磁コイル231及びコア232を取り外す必要がないので、装置のメンテナンス等を容易に行うことができる。
ここで、上述のような装置のメンテナンス等を考慮せず、装置本体のコンパクト化に重点を置く必要がある場合には、図12及び図13に示すように、励磁コイル231及びコア232を前記回転体である発熱ベルト210の内部に配設した構成としてもよい。ここで、図12に示す加熱装置1200は、励磁コイル231の導線の巻回束の間にサーモスタット301を配設した一例を示すものである。また、図13に示す加熱装置1300は、励磁コイル231の導線の巻回束の側部にサーモスタット301を配設した一例を示すものである。
なお、前述の各実施の形態に係る加熱装置300,600,800、1100においては、発熱ベルト210を支持ローラ220及び定着ローラ240で支持しているが、この発熱ベルト210は、図12及び図13に示す加熱装置1200,1300のように、それ自体をローラ状に形成して定着ローラ240としての機能を持たせるようにしたものであってもよい。
また、前述の各実施の形態においては、異常高温度検知手段として、サーモスタット301を用いたが、設定温度以上になると溶断される温度ヒューズを用いてもよい。また異常高温度検知手段としてサーミスタを用いて、サーミスタが設定温度以上の高温を検知したときに励磁コイル231への電源供給を遮断する電子回路を組み合わせることによってサーモスタット301の代用とすることも可能であることは言うまでもない。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る加熱装置の特徴部の構成について説明する。図14は、本実施の形態4に係る加熱装置を用いた定着装置1400の構成を示す断面図である。なお、図14において、実施の形態1に係る図2の定着装置200と同一の構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
図14に示すように、この加熱装置1400は、図8及び図9に示した実施の形態3に係る加熱装置800がセンターコア232bを励磁コイル231の巻回中心に配置した構成に対して、センターコア232bを励磁コイル231の巻回中心から外れた側方に配置し、そのセンターコア232bに隣接してサーモスタット301を配設したものである。
このように加熱装置1400を構成することにより、図9の加熱装置800においてセンターコア232bの左隣にあった空間にも励磁コイル231を配設してコイル断面積を大きくすることにより、発熱効率を高めることができる。
本発明の加熱装置の第1の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記発熱体に対して前記励磁コイルと同じ側でかつ前記励磁コイルの導線の巻回束の間に配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルの設置部位と同じ側に配設されているので、前記異常高温度検知手段と前記励磁コイルとの保持部材を共通化できるとともに、両者の配線及び端子等を一カ所に集中して配置することができるので、装置本体を安価かつコンパクトに構成することができる。さらに、この構成によれば、前記励磁コイルの他の部位と比較して前記発熱体の発熱量がより大きな前記励磁コイルの導線の巻回束の間に前記異常高温度検知手段が配設されているので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段をより迅速かつ確実に動作させることができるようになる。ちなみに、前記発熱体の発熱量は、前記励磁コイルの導線の巻回束の中央位置で最大となる。
本発明の加熱装置の第2の態様は、上記第1の態様に記載の加熱装置において、前記励磁コイルの導線の巻回中央部に配置される強磁性体からなるセンターコアと、前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部に配置される強磁性体からなるサイドコアとの、少なくとも一方のコアを備えた構成を採る。
この構成によれば、第1の態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体の前記センターコア及び前記サイドコアの存在により、前記発熱体を貫通しない漏洩磁束が少なくなって前記励磁コイルの出力低下を抑制することができる。また、この構成においては、前記発熱体の回転軸方向の温度分布を均一にすることができる。
本発明の加熱装置の第3の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、前記励磁コイルの導線の巻回中央部に配置される強磁性体からなるセンターコアと、を備え、前記異常高温度検知手段が、前記励磁コイルと前記センターコアとの間に挟まれて配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記励磁コイルから発生する磁束の大半が前記センターコアを通るので、前記センターコアを配設しないセンターコアレスタイプのものに較べて前記異常高温度検知手段が配設される前記励磁コイルの導線の巻回束の内側部における前記発熱体の発熱量が大きくなるので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段を比較的迅速かつ確実に動作させることができるとともに、漏洩磁束の影響による前記異常高温度検知手段の自己発熱が少なくなる。また、この構成によれば、前記異常高温度検知手段を配設するに当たって前記励磁コイルの導線の巻き方を変更する必要がなく、従来の構成の励磁コイルをそのまま使用することができる。
本発明の加熱装置の第4の態様は、導線を複数巻回されて磁界を生成する励磁コイルと、前記磁界の作用により電磁誘導加熱される発熱体と、前記発熱体が異常高温度になったことを検知する異常高温度検知手段と、前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部に配置される強磁性体からなるサイドコアと、を備え、前記異常高温度検知手段が前記励磁コイルと前記サイドコアとの間に挟まれて配設されている構成を採る。
この構成によれば、前記異常高温度検知手段が配設されている部位の磁束の大半が前記サイドコアを通るので、前記サイドコアレスのものに較べて前記異常高温度検知手段が配設される前記励磁コイルの導線の巻回束の外側部における前記発熱体の発熱量が大きくなるので、前記発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段を比較的迅速かつ確実に動作させることができるとともに、漏洩磁束の影響による前記異常高温度検知手段の自己発熱が少なくなる。
本発明の加熱装置の第5の態様は、上記第1の態様に記載の加熱装置において、前記発熱体に対して前記励磁コイルとは反対側に配置されて磁路を形成する対向コアを具備する構成を採る。
この構成によれば、前記励磁コイルで生成される磁束の大半が前記対向コアを通るので、前記発熱体の材質が非磁性部材であっても前記励磁コイルの出力低下を抑制することができる。また、この構成においては、前記発熱体の材質が磁性部材であって、その温度がキュリー点を超えた場合でも、上述と同様に前記磁束の大半が前記対向コアを通るので漏洩磁束が少なく、前記異常高温度検知手段を確実に動作させることができる。
本発明の加熱装置の第6の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段が配設されている部位の前記励磁コイルの導線が、前記発熱体の長手方向に沿って互いに平行をなしている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段が配設されている部位における前記励磁コイルにより生成される前記発熱体の長手方向に沿った磁界強度が一様になる。従って、この構成においては、前記発熱体の長手方向の発熱温度分布がほぼ均一化されるようになる。
本発明の加熱装置の第7の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記励磁コイルの導線の巻回束は、前記導線の巻回中心に対して対称形状をなしている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段が配設されている部位と前記異常高温度検知手段が配設されていない部位との前記発熱体の磁界強度が一様になる。従って、この構成においては、前記異常高温度検知手段が配設されていない部位で前記発熱体が異常高温度になって前記異常高温度検知手段の動作が遅れるという不具合が起こらなくなる。
本発明の加熱装置の第8の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、平板状の熱伝導体の平面が前記導線の巻回方向に沿うように前記熱伝導体を前記励磁コイルの導線の間に配置し、前記熱伝導体の熱伝導により前記異常高温度検知手段に熱を伝達する構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段の配設部位を迂回する際の前記励磁コイルの導線の迂回幅を小さくすることができ、前記異常高温度検知手段を配設したことによる前記導線の巻回数の減少に伴う前記励磁コイルの出力の低下を抑えることができる。
本発明の加熱装置の第9の態様は、上記第8の態様に記載の加熱装置において、前記熱伝導体は、非磁性の熱良導性金属である構成を採る。
この構成によれば、上記第8の態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記熱伝導体が前記励磁コイルにより生成される磁界の影響を受けないので、前記熱伝導体の自己発熱によって前記発熱体が局部的に発熱するといった不具合を起こすことがない。
本発明の加熱装置の第10の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段は、少なくとも1個のサーモスタットである構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記異常高温度検知手段がサーモスタットであるので、安価に構成することができる。ここで、前記サーモスタットを複数個設けた場合には、1個のサーモスタットを除いて他の全てのサーモスタットが故障しても前記発熱体の異常高温度を感知することができるので、装置の安全性を向上させることができる。また、複数個のサーモスタットを配設する場合には、各サーモスタットを対称位置となるように配設して、各サーモスタットを配設したことによる前記発熱体への影響を均等に分散させることが好ましい。
本発明の加熱装置の第11の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記異常高温度検知手段は、加熱可能な最小サイズの被加熱体を加熱する前記発熱体の最小加熱領域と対向する部位に配設されている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体が加熱されている際には前記異常高温度検知手段が常に動作可能な状態になるので、前記異常高温度検知手段の感知できない加熱領域で前記発熱体が異常高温度になることがなく安全面での信頼性が向上される。
本発明の加熱装置の第12の態様は、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置において、前記発熱体は、前記励磁コイルに対して移動する回転体からなり、前記励磁コイルは、前記回転体の外周面に沿って対向配置されている構成を採る。
この構成によれば、第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置の効果に加えて、前記発熱体を交換する際に前記磁気コイルを取り外す必要がないので、装置のメンテナンス等を容易に行うことができる。
本発明の加熱装置の第13の態様は、上記第3の態様に記載の加熱装置において、前記センターコアは、前記励磁コイルの導線の巻回中心から外れた側方に配置され、前記異常高温度検知手段は、前記励磁コイルと前記センターコアとの間に前記センターコアに隣接して配設されている構成を採る。
この構成によれば、センターコアが励磁コイルの導線の巻回中心に配置された際に前記異常高温度検知手段が配設されていた空間にも励磁コイルを配設できるので、励磁コイルのコイル断面積を大きくし、発熱効率を高めることができる。
本発明の定着装置の第14の態様は、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱定着手段の加熱手段として、上記第1,3,4のいずれかの態様に記載の加熱装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、前記加熱手段としての加熱装置の発熱体が異常高温度になったときに前記異常高温度検知手段が迅速かつ確実に動作されるので、前記記録媒体の発火や発煙等の二次的な災害の発生を未然に防止することができる。
本発明の画像形成装置の第15の態様は、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱定着手段として、上記第14の態様に記載の定着装置を用いる構成を採る。
この構成によれば、記録媒体上に形成された未定着画像を前記定着装置により安全に加熱定着することができる。
本明細書は、2003年12月3日出願の特願2003−404944に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明は、電磁誘導加熱される発熱体の材質及び温度特性等の如何にかかわらず、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置の定着装置として用いられる加熱装置の前記発熱体が異常高温度になったときに異常高温度検知手段を迅速かつ確実に動作させることを可能にすることである。
本発明の実施の形態1に係る加熱装置を記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置として用いた画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る加熱装置を加熱手段として用いた定着装置の基本的な構成を示す断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の構成を示す概略平面図
本実施の形態1に係る加熱装置の図3におけるA−A断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の発熱量を示すグラフ
本発明の実施の形態2に係る加熱装置の構成を示す概略斜視図
本実施の形態2に係る加熱装置の図6におけるB−B断面図
本発明の実施の形態3に係る加熱装置の構成を示す概略平面図
本実施の形態3に係る加熱装置の図8におけるC−C断面図
本実施の形態3に係る加熱装置の発熱量を示すグラフ
本実施の形態3に係る加熱装置の他の構成を示す概略断面図
本実施の形態1に係る加熱装置の他の構成を示す概略断面図
本実施の形態3に係る加熱装置のさらに他の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図