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JPWO2005009782A1 - 鞭打ち症防止用ヘッドレスト - Google Patents

鞭打ち症防止用ヘッドレスト Download PDF

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JPWO2005009782A1
JPWO2005009782A1 JP2005504565A JP2005504565A JPWO2005009782A1 JP WO2005009782 A1 JPWO2005009782 A1 JP WO2005009782A1 JP 2005504565 A JP2005504565 A JP 2005504565A JP 2005504565 A JP2005504565 A JP 2005504565A JP WO2005009782 A1 JPWO2005009782 A1 JP WO2005009782A1
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弘道 山下
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Abstract

搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触してこれらを支持できるヘッドレスト及びその使用方法を提供する。このヘッドレストは、車輛が追突された場合に、搭乗者の後頭部下面、上位頚椎部及び第5頚椎部に同時に接触することにより、追突時の衝撃により頭部に頸椎部を軸とする回転モーメントが急激に加わることによる頸椎部の毛髪様結合組織や後縦靭帯の損傷を防止でき、いわゆる鞭打ち症の発生を効果的に防止することができる。

Description

本発明は自動車用のヘッドレストに関する。より具体的には、本発明は自動車が衝突した際に搭乗者がその衝撃によりいわゆる鞭打ち症となるのを防止するための新規な形状のヘッドレストに関する。
1950年代までの自動車の座席にはヘッドレストが標準装備されていなかった。自動車の衝突事故が比較的少なかったためであろう。そして1980年代以降の乗用車にはほとんどヘッドレストが装備されている。この過渡期にわが国で話題になったのがいわゆる「鞭打ち症」である。鞭打ち症とは、自動車で追突されたときなどに、躯幹が前に圧されるとともに頸部が衝撃的に後方に振れ、筋・靱帯・関節、時に脊髄が損傷することにより起こる症状である(広辞苑第5版)とされているが、医学的には、外傷性頸部症候群といわれており、その確実な治療法はおろか、その発生理論も防御法も未だ十分に確立されていないのが現状である。しかし、自動車の衝突事故は益々増加の一途を辿っており、鞭打ち症の発生も殆ど全乗用車がヘッドレストを標準装備しているにもかかわらず一向に減少する気配を見せていない。このことは、現在多くの乗用車に採用されているヘッドレストが鞭打ち症の発生を防止するには極めて不十分なものであることを実証するものである。従って、追突事故により容易に発生する鞭打ち症を有効に防止するヘッドレストの開発が切望されている。
これまでに鞭打ち症を防止するために開発されたヘッドレストは枚挙に暇がない。例えば、衝突時の衝撃をヘッドレストの材料により吸収しようとする試みとしては、ヘッドレスト本体内に液体を封入した袋体を有し且つ座席体にその液体を受容可能な液体排出部を有するヘッドレストであって、衝突時にヘッドレスト本体内の液体を座席内に排出して衝撃を緩和するヘッドレスト(例えば、特許文献1参照)、ヘッドレストフレームにクッション部材を取付け、該クッション部材の外周を表皮部材により包囲したものにおいて前記クッション部材の一部に低速の加重に対して変形するが、高速の加重に対しては変形量が少ないウレタン部材を設けたヘッドレスト(例えば、特許文献2参照)、追突された時の衝撃により、ヘッドレストレイントの少なくとも乗員頭部当接部を乗員の頭部に近接するように所定距離だけ飛び出させる自動車用シートに装備されたヘッドレストレイントにおいて、前記ヘッドレストレイントの内部に空洞を設け、追突された時の乗員の頭部がヘッドレストレイントを押圧する動作により急激に空洞内のエアを抜くエア抜き手段を備えたヘッドレストレイント(例えば、特許文献3)、ヘッドレスト本体内に外部から支持部材が進入しているヘッドレストにおいて、ヘッドレストが鉛直方向よりも車体前方側に傾斜する角度を有するように設定されたヘッドレスト(例えば、特許文献4参照)などがある。しかし、以下に述べる鞭打ち症発症のメカニズムを考慮すると、これらの発明により鞭打ち症の発症が効果的に防止されるとは考えられない。
また、衝突時の衝撃を機械的に吸収しようとする試みとしては、例えば、追突等の車輛後方からの衝撃が発生すると、錘の慣性により固定具が解除され、ヘッドレスト上部がバネの力により乗っているヒトの後頭部を支えるように前に倒れ、鞭打ち症を防止するヘッドレスト(例えば、特許文献5参照)、シートのシートバックのポールで支持されるヘッドレストであって、上記のヘッドレストは上記ポールで前後方向に回動操作可能に支持されて、このヘッドレストを所定の回動操作位置に保持する保持部材が設けられる一方、後突を検出するセンサー部材がヘッドレストに設けられ、このセンサー部材による後突の検出時に上記のヘッドレストを強制的に前回作動させる前回作動部材が設けられているヘッドレスト(例えば、特許文献6参照)、車輛の座席に設けられ、着座した乗員の頭部を支持する枕と該枕の姿勢を制御する枕姿勢制御機構と、前記枕に設けられ、着座した乗員の頭部接触圧を検出する接触圧センサーと、前記車輛に設けられ、該車輛に対する追突時の衝撃を感知する衝撃センサーと、前記接触圧センサーの出力が予め設定された接触圧基準値に一致するよう前記枕姿勢制御機構をフィードバック制御するとともに、前記衝撃センサーの出力が予め設定された追突衝撃基準値を超えたときに前記枕姿勢制御機構が制御する枕姿勢を固定するトントローラとを具備することを特徴とする車載ヘッドレスト装置(例えば、特許文献7参照)、車輛に設けられるシートの背もたれ部に付設され該シートへの着座者の頭部を支持するヘッドレストであって、車輛の停止時及び低速走行時にのみ頭部に強制的に当接すべく前倒するように構成されたヘッドレスト(例えば、特許文献8参照)が挙げられる。これらの発明は、機械的に追突時の衝撃を緩和しようとするため、装置が複雑になり高価になるうえ、その効果も期待し難いことは以下に述べるとおりである。
さらに、追突時の衝撃による鞭打ち症の防止を意図するものではないが、首周辺の筋肉疲労が少ないいす用のヘッドレストに関する発明が開示されている(特許文献9参照)。この発明は本願発明と類似のヘッドレストを開示するのでその相違点を明確にする必要がある。この発明に係るヘッドレストは、「いすの背もたれの上部に上下の位置調節ができるように取り付けたヘッドレストにおいて、ヘッドレストの上部を形成し後頭部を支持する部分よりもヘッドレストの下部を形成し頸椎部を支持する部分を着座側に張り出させた形状にするとともに、その頸椎部を支持する部分の両側に少なくとも首がおさまる程度の間隔をあけて脹らみを設け、その脹らみをヘッドレストの上部方向にかけてお互いの間隔が広がるように延長して形成したことを特徴とするいす用ヘッドレスト」である。このヘッドレストの目的は、「首周辺の筋肉疲労が少ないいす用のヘッドレストを提供することにあり、揺れをともなう車両用のいすに適する。」と記載されていることから明らかなように、通常の使用状態を想定し、最も快適なヘッドレストを提供することを意図しているものである。
しかし、特許文献9に開示された発明は、追突のような急激な衝撃を与えられた場合に、鞭打ち症の発生を防止することは全く意図していない。従って、このヘッドレストを使用すると、追突時の鞭打ち症発症を防止することは困難である。なぜなら、この発明の請求項1に記載されたヘッドレストは、通常使用の際の快適さを求めた結果、搭乗者の首から後頭部までが両側の脹らみの間にすっぽりと納まるような形状となっている。この形状では、搭乗者の後頭部、両側の側頭骨の乳様突起、後頭部下面、頸椎部のすべてがヘッドレストの窪みにすっぽりと納まり安置されることになる。このようなヘッドレストを使用すると、追突時にはまず後頭部先端及び両側の側頭骨の乳様突起(耳の後ろの脹らみ)をヘッドレスト表面が挟み込んで前方への衝撃を加えることになり、その結果、搭乗者の頭部は前方に激しく突き出され、頸部を中心とする前方回転モーメントを生じ、頸部が損傷して鞭打ち症を発生することになる。即ち、追突時の鞭打ち症発生を防止するためには、ヘッドレストは搭乗者の後頭部後面及び両側の側頭骨の乳様突起に接触してはならないのである。
また、特許文献9に記載の発明のように搭乗者の後頭部、両側の側頭骨の乳様突起、後頭部下面、頸椎部のすべてがヘッドレストにすっぽりと納まった状態では、運転者は後頭部から頸椎部までがヘッドレストに固定され、このままの状態で運転をすると自由が利かなくなり、いきおい、頸頭部の一部をヘッドレストから離して運転することになろう。そして多くは頸椎部をヘッドレストから離して運転することになろう。これを最も顕著に示すのは特許文献9の請求項3の説明に使用されている図11である。この使用法では、ヘッドレストの上部のみが搭乗者の後頭部と接触しており、頸椎部はヘッドレストに接触していない。この状態で使用すると追突時の鞭打ち症発生を防止することは全く不可能である。
以上概述したように、追突時の衝撃による鞭打ち症の発症を防止するための効果的でかつ安価なヘッドレストは未だ開発されておらず、その開発に対する必要性はますます大きくなっているということができる。
特開2002−283902号公報 特開2001−333832号公報 特開平11−321502号公報 特開2001−190355号公報 特開平10−278648号公報 特開2001−37577号公報 特開平8−187139号公報 特開平8−182570号公報 特開平4−279109号公報
発明が解決しようとする課題
従って、本発明が解決しようとする課題は、追突事故による鞭打ち症の発生を有効に且つ安価に防止しうるヘッドレストを開発し提供することである。
課題を解決するための手段
本発明者らは、上記の課題を解決するため、正常人の頸椎部(第1図)と典型的な鞭打ち症患者の頸椎部(第2図)とを比較し、追突の衝撃により頸椎部に加わる圧力の位置とその圧力を受けて頸椎部が起こす運動、並びに現在汎用されているヘッドレストがこの頸椎部の運動にどのような影響を及ぼすかを検討した。
脊椎が支えている最も大きな荷物は頭部である。正常人の場合は第3図に示すように、頭部の重みはアトラス(第1頸椎)に伝えられ、頸椎の前弯(第1頸椎から第1胸椎まで)、胸椎部の後弯(第二胸椎から第9胸椎まで)、腰椎部の前弯(第10胸椎から第5腰椎まで)、仙骨部の後弯へと順次伝わり、仙腸関節から腸骨下肢へと伝えられ地面へ逃がされる。上記の前弯、後弯の基本形を守護しているのが椎体の後側に縦行している後縦靱帯である。つまり、この前弯、後弯がバネの役目をしているわけである。また、脊椎は単なる円柱形の骨の重なりではなく、円柱形の椎体後方に椎弓に囲まれた円形又はハート型の孔があり、その中を脊髄という重要な中枢神経幹が納まっている。脊髄は脳と共に硬膜という強靱な膜に包まれており、脳脊髄液に浸されている。脊柱は、吸気では、第5図に示すような動きをし、後縦靭帯及び毛髪様結合組織(第4図参照)を介して硬膜をしごくことにより、脳脊髄液を頭側へ還流させている。反対に、呼気では、脊柱は第6図に示すような動きをし、同じく後縦靭帯及び毛髪様結合組織(第4図参照)を介して硬膜をしごくことにより、脳脊髄液を仙骨側へ還流させている。中枢神経(脳・脊髄)の細胞は糖分(グルコース)その他の栄養物を、この脳脊髄液から貰い、血管から酸素を貰って生きている。この脳脊髄液の流れがスムーズに行なわれなくなると、中枢神経系のあらゆる機能に支障をきたし、頭痛・めまい・吐き気・意欲減退・耳鳴り・視力低下・全身倦怠感などの多彩な難治性の症状を起こす。これを低髄圧症候群という。鞭打ち症患者も頸部痛のみならずこのような多彩な症状を呈する。このような中枢神経系症状を発生させる主な原因の一つは、頭部の打撲等によって生ずる脊椎の配列における歪みである。その代表例は鞭打ち症である。追突事故やその他の交通事故に起因する頭部や頸部への衝撃による脊椎の配列における歪みなどにより鞭打ち症と呼ばれる中枢神経系症状が発生する。第1図と第2図の比較から明らかなように、正常人の頸椎部の前弯部が鞭打ち症患者の頸椎部では破損されて直線状に変形していることが分かる。
鞭打ち症を発症するダメージは、後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織(第4図参照)に生ずる。この部分が損傷したとき(第7図参照)、呼吸運動を原動力とする脳脊髄液の還流に支障を来たし、中枢神経系(脳・脊髄)の糖分供給が不十分となるため、多彩な症状が出現する。この事実についてはこれまで殆ど注目されて来なかった。脊椎の配列に歪みが生じると頭部からの重力を支持する上記のメカニズムが崩れ、脊椎に側弯や捩れが発生する。これが末梢神経の圧迫や筋肉の血行不全を起こし、首や肩・背中・腰等の筋肉の緊張を起こし、痛みやコリや鈍重感等を発症する。通常、体重を支えるメカニズムは靱帯が主役となって働いているので、これが壊れると、その30分の1の支持能力しかない筋肉系が24時間靱帯に代わって体重を支持し続けなければならないことになり、健康時よりもはるかに短い時間しか立ち続けたり座り続けたりという基本姿勢がとれなくなる。直ぐに疲れてしまうからである。
上記のように、鞭打ち症は、追突事故等による頭部打撲や頸部の過伸展の過屈曲の結果、後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織の損傷により発症すると考えられる。現在使用されているヘッドレストでは、第8図にその典型例を示すが、後頭部をヘッドレストに接触させると、後頭部の突出部一点でしか接触せず、上位頸椎部や第5頸椎部には接触していない。従って、追突された場合、頭部が前方に急激に移動すると同時に、上位頸椎や第5頸椎を軸とする回転モーメントを受け、その結果後縦靱帯や毛髪様結合組織の損傷が生ずることになる。
従って、鞭打ち症を防止するには、頭部や頸部への打撲を受けても、後縦靱帯や毛髪様結合組織の損傷が生じないような形状のヘッドレストを開発する必要がある。そして、本発明者らは、衝突時の鞭打ち症を防止するためには後述するように搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部をヘッドレストに接触させておくことが不可欠であることを見出した。もちろん、搭乗者が事故寸前まで頭部及び頸部をヘッドレストに接触させていなくても、当該ヘッドレストを適正にセットしてあれば、鞭打ち症が発生する可能性は最小限に抑止できる。つまり衝撃の瞬間、本願発明のヘッドレストが後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触すれば問題はない。但し、そのスピードや衝撃の大きさによっては、頸部への打撲を受けることもありうるであろう。
搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部をヘッドレストに接触させて使用するようにするためには、ヘッドレストの使用中及び追突時に搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレストに接触しなければならないのは当然であるが、搭乗者の頭部の他の部分はむしろヘッドレストから離れた状態であることが好ましい。そうすれば、追突時の鞭打ち症を効果的に防止できることになる。こうして、本発明者は、通常使用時に搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部のみがヘッドレストの表面と接触し、搭乗者の後頭部突出部や両側の側頭骨がヘッドレストの表面と接触し得ない又は接触し難い形状のヘッドレスト(第9図にその概念図を示す)に想到した。この場合には、追突時の衝撃は搭乗者の上位頸椎部及び第5頸椎部にまず加わる。この際、搭乗者の頭部には後方への回転モーメントが生ずるが、これは後頭部下面と接しているヘッドレスト表面が支える。ついで頸部と頭部は腰から頸部までの胴体と一体になって(棒状になって)股関節を軸とした前方への回転を行なうことになる。こうして、従来のヘッドレストの場合のように、後頭部がまず衝撃を受け頸部を軸とする回転モーメントが生じて頸部に大きな衝撃が加わることが避けられ、鞭打ち症の発生が防止されるのである。そこで、本願発明では、ヘッドレストの形状は、特許文献9で開示されたヘッドレストの形状とは異なり、搭乗者の両側の側頭骨の乳様突起及び頭頂骨後面にかけての部分がヘッドレストの表面に接触しない形状としてある。これが最も大きな相違点であり、追突時全く違う結果となる。
本発明の概要は以下のとおりである。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレストに同時に接触した場合に搭乗者の後頭部突出部とヘッドレストの相対する表面の間に4cm未満、好ましくは3cm未満、より好ましくは2cm未満のギャップが存在するものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも2cmから15cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも3cmから12cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも4cmから8cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触する面が第7頸椎部に接触しないように着座側に対して後退していることを特徴とするヘッドレストに関する。
本発明はさらに本発明のヘッドレストを座席に座った搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように座席の背もたれに固定して使用することを特徴とするヘッドレストの使用方法にも関する。
本発明は、本発明のヘッドレストと背もたれとの間の距離を調節することにより、本発明のヘッドレストを個々の搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように調節した後、背もたれに固定する本発明のヘッドレストの使用方法に関する。
第1図は、正常人の頸椎部のレントゲン写真である。
第2図は、鞭打ち症患者の頸椎部のレントゲン写真である。
第3図は、正常人の頭部から腰部に至る主要骨格の形状を示すイラストである。
第4図は、脊椎の断面図の模式図である。毛髪様結合組織と後縦靱帯と椎体の関係が示してある。図中、11は毛髪様結合組織、12は後縦靱帯、13は椎体、14は椎間板、15は硬膜、16は棘突起、17は脳脊髄液、18は脊髄をそれぞれ表す。
第5図は、吸気時の脊柱の生理的な動きと、脊柱管内の脳脊髄液の還流の方向を示す。図中、白矢印(21)は、脳脊髄液の還流の方向を示す。
第6図は、呼気時の脊柱の生理的な動きと脊柱管内の脳脊髄液の還流の方向を示す。図中、白矢印(22)は、脳脊髄液の還流の方向を示す。
第7図は、同じく脊椎の断面図で、毛髪様結合組織が破損した状態を示す。図中で、19は毛髪様結合組織の損傷部を示す。
第8図は、通常のヘッドレストと搭乗者頭部との接触の状態を示す模式図である。図中、1は後頭部突出部を示す。
第9図は、本発明のヘッドレストを使用した場合における搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部が本発明のヘッドレストに同時に接触してこれらが効果的に支持されることを示す図である。図中、1は後頭部後面突出部、2は後頭部下面、3は上位頸椎部、4は第5頸椎部、5は第7頸椎部をそれぞれ表す。
第10図は、本発明のヘッドレストの1例の斜視図である。
第11図は、本発明のヘッドレストの1例の側面図である。点線で示したA〜H〜G〜Bの面は従来型のヘッドレストの頭部接触面の断面図を示したものである。本発明のヘッドレストの頭部接触面の断面図がA〜H〜E〜F〜Bであることと対比するために付記したものである。なお、E−Gの点線は、後頭部突出部後方のヘッドレスト表面(HAah面)からE〜F面が着座側に突き出ている長さを示すものである。図中、Hは本発明のヘッドレストの後頭部突出部と向き合っている部位であり、E〜Fは本発明のヘッドレストの上位頸椎部及び第5頸椎部と接触する面であり、H〜Eは本発明のヘッドレストの後頭部下面と接触する面である。
第12図は、本発明のヘッドレストの正面図である。
第13図は、本発明のヘッドレストの上面図である。
第14図は、車が後方から衝突された場合にヘッドレストを使用していない搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。
第15図は、車が後方から衝突された場合に通常のヘッドレストを使用している搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。
第16図は、特許文献9のような、搭乗者の後頭部、側頭骨乳様突起に接触するタイプのヘッドレストを使用した際に、搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。おおむね、第15図と同様の結果となる。図中、20は側頭骨乳様突起を示す。
第17図は、車が後方から衝突された場合に本発明のヘッドレストを使用している搭乗者の身体が受ける力を示すイラストである。
以下に添付図面に示す実施例に基づき、本発明のヘッドレストの実施の形態を詳細に説明する。
第9図は本発明のヘッドレストが搭乗者の頭部から頸部にかけてどのように接触するかを示す概念図である。即ち、本発明のヘッドレストを使用すると、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレスト表面と接触し、搭乗者の後頭部突出部及び側頭骨の乳様突起はヘッドレスト表面とは接触しないという状態になる。後頭部の突出部とヘッドレスト表面の間隔は通常約4cm未満、好ましくは約3cm未満、より好ましくは約2cm未満、さらに好ましくは約1cm未満である。
一方、従来型のヘッドレストは、第8図にその典型例を示すように、搭乗者の頭部と一箇所で、即ち、後頭部の突出部のみで接触しているものがほとんどであり、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触しているヘッドレストは見あたらず、まして後頭部の突出部および側頭骨乳様突起に接触せず後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部にのみに接触してこれを支えているヘッドレストは皆無である。従って、現在使用されているヘッドレストの場合は、追突事故が起こるとヘッドレストによる後頭部の強打により頸椎部を軸とする強力な回転モーメントが生じ、頸椎部の後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織(第4図参照)の損傷を招く結果となる(第7図及び第15図参照)。
これに反し、本発明のヘッドレストでは、追突事故などの場合は、前方への衝撃の力が上位頸椎部及び第5頸椎部のみにかかるため、頭部は一旦後方への回転モーメントを受けるが、これは後頭部下面と接触しているヘッドレスト表面により先ず支えられ、また一瞬遅れて後頭部後方のヘッドレスト表面により前方に押し出されるため、頭部から腹部にかけての脊椎全体が前方への力を受け、股関節を回転軸として脊椎全体が均等な回転モーメントを受けることになる(第17図参照)。その結果、従来型のヘッドレストの場合のように頭部が上位頸椎部や第5頸椎部を軸とする急激な回転モーメントを受け頸椎部の後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織が損傷するという事態を避けることができ、追突事故による鞭打ち症の発症を有効に防止することができる。
第10図は本発明のヘッドレストの1例の斜視図である。本発明のヘッドレストは搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部(以下頭頸部ともいう)と接触するが搭乗者の後頭部突出部及び両側の側頭骨の乳様突起とは接触しないような形状を持つことを特徴とするものである。
ここで注意すべき点は、本発明のヘッドレストを使用する場合、ヘッドレストの表面が搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触するように使用しなければならないことである。また万が一、搭乗者が頭部及び頸部をヘッドレストから離して使用していたとしても、追突された瞬間、後方からヘッドレストが頭頸部を後方から押す形となった場合、ヘッドレストが頭部及び頸部に接触した瞬間は、上記の使用状態と同じ状態になっている様に、ヘッドレストの高さをセットしておく必要がある。そうでなければ追突事故の際に搭乗者を鞭打ち症から保護することができないからである。ヘッドレストの形状が本発明の所定の条件を満足していても、個々の搭乗者が実際に使用する場合を考えると、搭乗者に座高の相違があるため、本発明のヘッドレストの頸椎接触部と搭乗者が車輛の座席に座った場合の頸椎部の位置とがぴったり一致するように本発明のヘッドレストの高さを調節することが不可欠となる。従って、本発明のヘッドレストを車輛の座席のシートに取り付ける場合、そのヘッドレストの高さを自在に調節できる機構をヘッドレストと座席シートの間に備えることが不可欠となる。このような目的に使用できる高さ調節機構を備えたヘッドレストは既に市販されており、これらのヘッドレスト高さ調節機構のいずれかを使用することにより、本発明のヘッドレストの能力を最大限に発揮させることができ、本発明の効果を発揮させることができる。このことから明らかなように、本発明のヘッドレストは搭乗者に合わせてヘッドレストの高さを調節すれば、本発明のヘッドレストの後頭部下面接触部及び頸椎部接触部と搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部との接触が満足されるのであり、本発明のヘッドレストと同じ形状のものを車輛の座席シートに固定して取り付けたり、あるいは座席シートの背もたれそのものを本発明のヘッドレスト類似の形状としても、たまたま搭乗者の座高が上記の条件を満足する稀な場合を除き、一般に本発明のヘッドレストが有する鞭打ち症防止効果は生じないことが明らかである。
なお、ヘッドレストの後頭骨後面突出部接触部の上方にあって搭乗者の頭部と接触しないヘッドレスト部分の形状や背面、側面及び底面の形状はヘッドレストの使用に支障がない限り、どのような形状をとってもよい。第10図に示した本発明のヘッドレストの上方部分の形状や背面又は側面の形状は本発明のヘッドレストの形状を制限するものではない。底面の形状も同様に制限されない。
第11図は本発明のヘッドレストの1例の側面図の概念図であり、第12図は本発明のヘッドレストの1例の正面図の概念図であり、第13図は本発明の1例のヘッドレストの上面図の概念図である。以下に第9、10、11、12図を参照して本発明をさらに具体的に説明する。
第11図のABCDで囲まれた部分は従来型のヘッドレストの側面図の概念図である。従来型のヘッドレストでは、第11図のA〜B面(第12図のAaBb面)、即ち搭乗者の後頭部突出部と接触するヘッドレストの表面は中央が凸に又は凹に弯曲している場合もあるが、概ね平面となっているものが大部分である。
本発明のヘッドレストでは、第11図のH(第12図のH−hのほぼ中央)が搭乗者後頭部突出部と向い合っている位置(追突時などに後頭部突出部と接触しうる位置)である。搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部を同時にヘッドレストに接触させた場合、Hと後頭部後方突出部とは接触せず、通常約4cm未満、好ましくは約3cm未満、より好ましくは約2cm未満のギャップがその間に存在する。第11図のH〜E面(第12図のHEeh面)は搭乗者の後頭部下面と接触する面である。第9図から明らかなように、人の後頭部の骨格は曲線を形成しているので、後頭部下面と第11図のE〜H面の接触を良好にするため、E〜H面は後方に行くにつれて上方に隆起させることが好ましい。さらに第11図のE〜H面はE−Hの方向において搭乗者の後頭部下面の曲線に合致するような曲線を描くように凹に湾曲させることが好ましい。ただし、E−e方向では、両側に大きな脹らみを持たせてはならず、特に側頭骨の乳様突起に接触する程の脹らみを持たせてはならない。曲面とする場合であっても、後頭部下面との接触を安定させるために中央に向かって凹に湾曲させる程度に止めるべきである。
第11図のE〜F面(第12図のEeFf面)は上位頸椎部及び第5頸椎部と接触する面である。本発明の特徴は、第11図のE〜F面(第12図のEeFf面)が第11図のA〜H面(第12図のHhGg面)よりも前方に突き出ていることである。従来型のヘッドレストでは、第11図のE〜F面(第12図のEeFf面)が第11図のH〜G面と同一平面上にあるか、逆に第11図のH〜G面の方が第11図のE〜F面よりも前に突き出ており、E〜Gの長さが殆ど0cmかマイナスとなる。これに反し、本発明のヘッドレストでは、第11図のE〜F面がH〜G面よりも前方に突き出ており、第11図のE−Gの長さは通常約2cmから約15cmまで、好ましくは約3cmから約12cmまで、より好ましくは約4cmから約8cmまでの範囲にある。
第11図のE〜F面(第12図のEeFf面)は、平面であってもよいが、E−eの線に沿って中央に向かって凹に湾曲していることが好ましい。これは頭頸部をヘッドレストに接触させたときに頭頸部が安定し気持ち良くヘッドレストを使用できるようにするためである。さらに、第11図のE−F(e−f)の長さは、上位頸椎と第5頸椎に同時に接触できる長さであり、通常約2cmから約15cmまで、好ましくは約3cmから約10cmまでであり、より好ましくは約4cmから約8cmまでの範囲にある。
また、第11図のH−Gの長さは搭乗者の後頭部突出部の高さと上位頸椎部接触面の上端との垂直距離を示すものであり、通常3cm以上あればよい。
なお、搭乗者の後頭部突出部の後方にあるヘッドレスト表面と後頭部突出部との距離は通常4cm未満、好ましくは3cm未満、より好ましくは2cm未満である。
第11図のE〜F面が上位頸椎と第5頸椎を越え第7頸椎又はそれ以上にまで達する場合は、第6頸椎を越えた点からE−Fの線に沿って下方に行くにつれ、その面を後方に後退させ、第12図のEeFf面が第7頸椎と接触しないようにすることが好ましい。ヘッドレスト表面が第7頸椎を圧迫することによる不快感を除くためである。従って、この場合はF−B(f−b)の長さはE−G(e−g)の長さよりも短くすることが好ましい。
本発明のヘッドレストの特徴は搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するヘッドレストの表面の形状である。従って、ヘッドレストのその他の部分の形状は特に制限を受けない。例えば、ヘッドレストの幅はヘッドレストとして使用するのに支障のない範囲で自由に設計することができ、通常、約15cmから約40cmまで、好ましくは約20cmから約30cmの範囲である。また、ヘッドレストの高さは、ヘッドレストの通常の使用に際して影響がなければ、第11図のHから上方に任意の高さを設定することも可能である。ヘッドレストの背面であるCcDd面やヘッドレストの上面であるAaCc面は、ヘッドレストの通常の使用に際して影響がなければ、どのような形状であっても良い。またヘッドレストの左右の側面の形状も通常のヘッドレストとしての使用に支障がない限り自由に設計することができる。ヘッドレストの底面の形状も特に制限されない。底面にはヘッドレストを座席に固定するための支持棒が通常2本取り付けられるが、その取付け方法も従来用いられている方法を使用して取り付けることができる。
上述のように、搭乗者には様々な座高の持ち主がいるのが現実であるから、本発明のヘッドレストを使用するには、本発明のヘッドレストの表面と搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部が同時に接触できるように、座席シートの背もたれの上面とヘッドレストまでの距離を調整することが不可欠となる。これには、通常のヘッドレストにおいて用いられているヘッドレストの無段階高さ調節機構がそのまま使用できる。
なお、本発明のヘッドレストを取り付ける座席の背もたれの高さは座高の低い搭乗者の肩までとし、座高の高い搭乗者の場合はヘッドレストの高さを調節してヘッドレストの頸椎部接触部と搭乗者の頸椎部をぴったり合わせることが好ましい。
本発明のヘッドレストを製造するための材料は通常のヘッドレストの製造に用いられる材料と同様であり、例えば、心材には、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ABSフォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノール樹脂フォーム、ユリア樹脂フォームなどの硬質フォームを用いてもよく、その上をポリウレタンフォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、などの軟質フォーム又は半硬質フォームで覆ってもよい。さらに表面を、布地、天然皮革、合成皮革、人工皮革などで覆ってもよい。
発明の効果
本発明のヘッドレストを使用することにより、追突事故等により後方より頭部及び頚部への衝撃を受けた場合、上位頸椎と第5頸椎がそして少し遅れて後頭部突出部が前方への力を受けることになるため、上半身全体が一体化固定され股関節を軸とする回転モーメントを受けることになり、従来のヘッドレストの場合のように後頭部のみに前方への大きな力がかかり、上位頸椎部及び第5頸椎部を軸とする回転モーメントが生じるということがなく、従って、いわゆる鞭打ち症の発生を効果的に防止することができる。以下に本発明の効果について第14図から第17図を参照して詳細に説明する。
まず、ヘッドレストが無い場合、追突されたらどうなるかを第14図を用いて説明する。追突の瞬間に下部頸椎部及び胸椎部及び腰椎部及び仙骨上部が前方へ押し出され、頭部は全体が後方へそして頭部上部が後方へ且つ頭部下部が前上方へ押し出される。仙骨下部は上方へ押し上げられる。このとき、第5頸椎より下方は前方へ押し出され、頭部は後方への回転のモーメントを発生しつつ後方へ取り残されるため、第4頸椎より上側が後下方へ押し出される形となり、椎体の後ろ側を固定している後縦靱帯が損傷し第4頸椎が後方へ滑った形となって頸椎前弯が消失する。
こうして、後頭骨は前方へシフトするため、第1頸椎との関節は通常より前方へシフトする。第4頸椎椎体、特にその下端が後方の硬膜腔を圧迫し、脳脊髄液の循環を阻害し、頭痛、めまい、吐き気、意欲減退、耳鳴り、視力低下、全身倦怠感などの多彩な症状や痛み等を惹き起こす。
次に従来型のヘッドレストが装着されている場合に、追突されるとどうなるかを説明する。第15図に示すように、下部頸椎部と胸椎部は前方へ押し出される。しかし、頭部は全体が一旦後方へ押し出されるが、頭部上側と接触するヘッドレストがあるため、頭部の上側のみがヘッドレストにより前方へ押し出されるため、頭部下側は上側との対比で前方への回転モーメントを受ける。そのため第1〜第5頸椎は全て後方へシフトする。そして体勢復元時に第4及び第5頸椎部の弯曲部(前弯)が消失して直線状となるか又は逆の弯曲即ち頸椎部後弯が生ずる。もちろん第4頸椎部及び第5頸椎部を中心として、後縦靱帯も損傷する。この場合、後頭骨と第1頸椎との関節は、後頭骨が第1頸椎に対して前方シフト(過進展)にも後方シフト(過屈曲)にもなりうる。また、腰椎及び仙骨部は頭部と呼応して後弯が弱まり、仙骨上部は後方へシフトし、仙骨下部及び座骨は前方へシフトする。この場合も、主なダメージは後縦靱帯と硬膜との間の疎な毛髪様結合組織にあると考えられる。さらに、この脊椎のアンバランスのため腰痛の出現の可能性も高まる。
後頭骨全体と側頭骨乳様突起を包み込む様な形状の特許文献9の如きヘッドレスト使用の際は、乳様突起が一番初めに大きく前方へ押されるため、頭部には、通常のヘッドレストにもまして大きな前方回転モーメントが発生し、第16図の如く人体には大きなダメージが加わり、簡単に鞭打ち症を発生し、危険である。
さて、新しく開発した本発明のヘッドレストは上記の全ての問題を完全に解決する。本発明のヘッドレストは、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有する。従って、追突された場合、第17図に示すように、本発明のヘッドレストを装着してある自動車の搭乗者は、まず上位頸椎部及び第5頸椎部が続いて後頭部突出部が後方から急激に押し出されることになり、脊椎上部(頸椎部)の前弯はもちろんのこと、中部(胸椎部)の後弯、及び下部(腰椎部)の前弯までが一瞬にしてそれまでの生物的形状のまま固定され、上に詳述した追突時のあらゆる破壊的モーメントの発生を免れることができる。頭部から仙骨さらには尾骨に至るまでが、まるで一本の棒の様に一体となり、座席の背とヘッドレストに押し出されたまま上部全体が一体化して前方へ押されるだけである。こうして搭乗者の追突安全性は確保されることになる。
人体の脊柱の、この不思議な防衛反応は、常に容易に再現できる。イスに座っている人の後方から上位頸椎〜第5頸椎までを手で支持し、前方へ押してみれば分かる。人体は常に一体化し、股関節を軸として前方へ全体が傾くのみである(第17図を参照)。それに対し、同じくイスに座っている人の後方から後頭骨突出部を支持して前方へ押してみると、頭部は前方への回転モーメントを生じ、頸部は窮屈な屈曲を強いられる(第15図を参照)。下手をすると、この実験(後者)だけでも頸部を痛めてしまう可能性さえある。人類は今まで長い間この重要な防衛反応に気付かずに車社会を営んできた。その結果、鞭打ち症に悩む多くの被害者を生み続けてきたと言える。また、後頭部のみならず乳様突起に手掌を接触させて前方へ押すと、第15図と全く同じ前方への回転モーメントを生じる事もわかる。
本願発明は、医師である出願者が、後頭部下面、上位頸椎、第5頸椎を固定した場合に発現する脊柱一体化の全体防衛反応を臨床経験上発見したことにより、これに基づいて発案開発されたものである。
本発明のヘッドレストを車両の座席等に使用することにより、従来のヘッドレスト装着の場合に見られる自動車の追突時の頸椎部の毛髪様結合組織の損傷や後縦靱帯の損傷、即ち、自動車の追突事故等の際、頸椎部を軸とする強力な回転モーメントが頭部にかかることにより生ずるいわゆる鞭打ち症の発生を、確実にしかも安価に防止することができる。
本発明は自動車用のヘッドレストに関する。より具体的には、本発明は自動車が衝突した際に搭乗者がその衝撃によりいわゆる鞭打ち症となるのを防止するための新規な形状のヘッドレストに関する。
1950年代までの自動車の座席にはヘッドレストが標準装備されていなかった。自動車の衝突事故が比較的少なかったためであろう。そして1980年代以降の乗用車にはほとんどヘッドレストが装備されている。この過渡期にわが国で話題になったのがいわゆる「鞭打ち症」である。鞭打ち症とは、自動車で追突されたときなどに、躯幹が前に圧されるとともに頸部が衝撃的に後方に振れ、筋・靱帯・関節、時に脊髄が損傷することにより起こる症状である(広辞苑第5版)とされているが、医学的には、外傷性頸部症候群といわれており、その確実な治療法はおろか、その発生理論も防御法も未だ十分に確立されていないのが現状である。しかし、自動車の衝突事故は益々増加の一途を辿っており、鞭打ち症の発生も殆ど全乗用車がヘッドレストを標準装備しているにもかかわらず一向に減少する気配を見せていない。このことは、現在多くの乗用車に採用されているヘッドレストが鞭打ち症の発生を防止するには極めて不十分なものであることを実証するものである。従って、追突事故により容易に発生する鞭打ち症を有効に防止するヘッドレストの開発が切望されている。
これまでに鞭打ち症を防止するために開発されたヘッドレストは枚挙に暇がない。例えば、衝突時の衝撃をヘッドレストの材料により吸収しようとする試みとしては、ヘッドレスト本体内に液体を封入した袋体を有し且つ座席体にその液体を受容可能な液体排出部を有するヘッドレストであって、衝突時にヘッドレスト本体内の液体を座席内に排出して衝撃を緩和するヘッドレスト(例えば、特許文献1参照)、ヘッドレストフレームにクッション部材を取付け、該クッション部材の外周を表皮部材により包囲したものにおいて前記クッション部材の一部に低速の加重に対して変形するが、高速の加重に対しては変形量が少ないウレタン部材を設けたヘッドレスト(例えば、特許文献2参照)、追突された時の衝撃により、ヘッドレストレイントの少なくとも乗員頭部当接部を乗員の頭部に近接するように所定距離だけ飛び出させる自動車用シートに装備されたヘッドレストレイントにおいて、前記ヘッドレストレイントの内部に空洞を設け、追突された時の乗員の頭部がヘッドレストレイントを押圧する動作により急激に空洞内のエアを抜くエア抜き手段を備えたヘッドレストレイント(例えば、特許文献3)、ヘッドレスト本体内に外部から支持部材が進入しているヘッドレストにおいて、ヘッドレストが鉛直方向よりも車体前方側に傾斜する角度を有するように設定されたヘッドレスト(例えば、特許文献4参照)などがある。しかし、以下に述べる鞭打ち症発症のメカニズムを考慮すると、これらの発明により鞭打ち症の発症が効果的に防止されるとは考えられない。
また、衝突時の衝撃を機械的に吸収しようとする試みとしては、例えば、追突等の車輛後方からの衝撃が発生すると、錘の慣性により固定具が解除され、ヘッドレスト上部がバネの力により乗っているヒトの後頭部を支えるように前に倒れ、鞭打ち症を防止するヘッドレスト(例えば、特許文献5参照)、シートのシートバックのポールで支持されるヘッドレストであって、上記のヘッドレストは上記ポールで前後方向に回動操作可能に支持されて、このヘッドレストを所定の回動操作位置に保持する保持部材が設けられる一方、後突を検出するセンサー部材がヘッドレストに設けられ、このセンサー部材による後突の検出時に上記のヘッドレストを強制的に前回作動させる前回作動部材が設けられているヘッドレスト(例えば、特許文献6参照)、車輛の座席に設けられ、着座した乗員の頭部を支持する枕と該枕の姿勢を制御する枕姿勢制御機構と、前記枕に設けられ、着座した乗員の頭部接触圧を検出する接触圧センサーと、前記車輛に設けられ、該車輛に対する追突時の衝撃を感知する衝撃センサーと、前記接触圧センサーの出力が予め設定された接触圧基準値に一致するよう前記枕姿勢制御機構をフィードバック制御するとともに、前記衝撃センサーの出力が予め設定された追突衝撃基準値を超えたときに前記枕姿勢制御機構が制御する枕姿勢を固定するトントローラとを具備することを特徴とする車載ヘッドレスト装置(例えば、特許文献7参照)、車輛に設けられるシートの背もたれ部に付設され該シートへの着座者の頭部を支持するヘッドレストであって、車輛の停止時及び低速走行時にのみ頭部に強制的に当接すべく前倒するように構成されたヘッドレスト(例えば、特許文献8参照)が挙げられる。これらの発明は、機械的に追突時の衝撃を緩和しようとするため、装置が複雑になり高価になるうえ、その効果も期待し難いことは以下に述べるとおりである。
さらに、追突時の衝撃による鞭打ち症の防止を意図するものではないが、首周辺の筋肉疲労が少ないいす用のヘッドレストに関する発明が開示されている(特許文献9参照)。この発明は本願発明と類似のヘッドレストを開示するのでその相違点を明確にする必要がある。この発明に係るヘッドレストは、「いすの背もたれの上部に上下の位置調節ができるように取り付けたヘッドレストにおいて、ヘッドレストの上部を形成し後頭部を支持する部分よりもヘッドレストの下部を形成し頸椎部を支持する部分を着座側に張り出させた形状にするとともに、その頸椎部を支持する部分の両側に少なくとも首がおさまる程度の間隔をあけて脹らみを設け、その脹らみをヘッドレストの上部方向にかけてお互いの間隔が広がるように延長して形成したことを特徴とするいす用ヘッドレスト」である。このヘッドレストの目的は、「首周辺の筋肉疲労が少ないいす用のヘッドレストを提供することにあり、揺れをともなう車両用のいすに適する。」と記載されていることから明らかなように、通常の使用状態を想定し、最も快適なヘッドレストを提供することを意図しているものである。
しかし、特許文献9に開示された発明は、追突のような急激な衝撃を与えられた場合に、鞭打ち症の発生を防止することは全く意図していない。従って、このヘッドレストを使用すると、追突時の鞭打ち症発症を防止することは困難である。なぜなら、この発明の請求項1に記載されたヘッドレストは、通常使用の際の快適さを求めた結果、搭乗者の首から後頭部までが両側の脹らみの間にすっぽりと納まるような形状となっている。この形状では、搭乗者の後頭部、両側の側頭骨の乳様突起、後頭部下面、頸椎部のすべてがヘッドレストの窪みにすっぽりと納まり安置されることになる。このようなヘッドレストを使用すると、追突時にはまず後頭部先端及び両側の側頭骨の乳様突起(耳の後ろの脹らみ)をヘッドレスト表面が挟み込んで前方への衝撃を加えることになり、その結果、搭乗者の頭部は前方に激しく突き出され、頸部を中心とする前方回転モーメントを生じ、頸部が損傷して鞭打ち症を発生することになる。即ち、追突時の鞭打ち症発生を防止するためには、ヘッドレストは搭乗者の後頭部後面及び両側の側頭骨の乳様突起に接触してはならないのである。
また、特許文献9に記載の発明のように搭乗者の後頭部、両側の側頭骨の乳様突起、後頭部下面、頸椎部のすべてがヘッドレストにすっぽりと納まった状態では、運転者は後頭部から頸椎部までがヘッドレストに固定され、このままの状態で運転をすると自由が利かなくなり、いきおい、頸頭部の一部をヘッドレストから離して運転することになろう。そして多くは頸椎部をヘッドレストから離して運転することになろう。これを最も顕著に示すのは特許文献9の請求項3の説明に使用されている図11である。この使用法では、ヘッドレストの上部のみが搭乗者の後頭部と接触しており、頸椎部はヘッドレストに接触していない。この状態で使用すると追突時の鞭打ち症発生を防止することは全く不可能である。
以上概述したように、追突時の衝撃による鞭打ち症の発症を防止するための効果的でかつ安価なヘッドレストは未だ開発されておらず、その開発に対する必要性はますます大きくなっているということができる。
特開2002−283902号公報 特開2001−333832号公報 特開平11−321502号公報 特開2001−190355号公報 特開平10−278648号公報 特開2001−37577号公報 特開平8−187139号公報 特開平8−182570号公報 特開平4−279109号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、追突事故による鞭打ち症の発生を有効に且つ安価に防止しうるヘッドレストを開発し提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決するため、正常人の頸椎部(図1)と典型的な鞭打ち症患者の頸椎部(図2)とを比較し、追突の衝撃により頸椎部に加わる圧力の位置とその圧力を受けて頸椎部が起こす運動、並びに現在汎用されているヘッドレストがこの頸椎部の運動にどのような影響を及ぼすかを検討した。
脊椎が支えている最も大きな荷物は頭部である。正常人の場合は図3に示すように、頭部の重みはアトラス(第1頸椎)に伝えられ、頸椎の前弯(第1頸椎から第1胸椎まで)、胸椎部の後弯(第二胸椎から第9胸椎まで)、腰椎部の前弯(第10胸椎から第5腰椎まで)、仙骨部の後弯へと順次伝わり、仙腸関節から腸骨下肢へと伝えられ地面へ逃がされる。上記の前弯、後弯の基本形を守護しているのが椎体の後側に縦行している後縦靱帯である。つまり、この前弯、後弯がバネの役目をしているわけである。また、脊椎は単なる円柱形の骨の重なりではなく、円柱形の椎体後方に椎弓に囲まれた円形又はハート型の孔があり、その中を脊髄という重要な中枢神経幹が納まっている。脊髄は脳と共に硬膜という強靱な膜に包まれており、脳脊髄液に浸されている。脊柱は、吸気では、図6に示すような動きをし、後縦靭帯及び毛髪様結合組織(図4参照)を介して硬膜をしごくことにより、脳脊髄液を頭側へ還流させている。反対に、呼気では、脊柱は図5に示すような動きをし、同じく後縦靭帯及び毛髪様結合組織(図4参照)を介して硬膜をしごくことにより、脳脊髄液を仙骨側へ還流させている。中枢神経(脳・脊髄)の細胞は糖分(グルコース)その他の栄養物を、この脳脊髄液から貰い、血管から酸素を貰って生きている。この脳脊髄液の流れがスムーズに行なわれなくなると、中枢神経系のあらゆる機能に支障をきたし、頭痛・めまい・吐き気・意欲減退・耳鳴り・視力低下・全身倦怠感などの多彩な難治性の症状を起こす。これを低髄圧症候群という。鞭打ち症患者も頸部痛のみならずこのような多彩な症状を呈する。このような中枢神経系症状を発生させる主な原因の一つは、頭部の打撲等によって生ずる脊椎の配列における歪みである。その代表例は鞭打ち症である。追突事故やその他の交通事故に起因する頭部や頸部への衝撃による脊椎の配列における歪みなどにより鞭打ち症と呼ばれる中枢神経系症状が発生する。図1と図2の比較から明らかなように、正常人の頸椎部の前弯部が鞭打ち症患者の頸椎部では破損されて直線状に変形していることが分かる。
鞭打ち症を発症するダメージは、後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織(図4参照)に生ずる。この部分が損傷したとき(図7参照)、呼吸運動を原動力とする脳脊髄液の還流に支障を来たし、中枢神経系(脳・脊髄)の糖分供給が不十分となるため、多彩な症状が出現する。この事実についてはこれまで殆ど注目されて来なかった。脊椎の配列に歪みが生じると頭部からの重力を支持する上記のメカニズムが崩れ、脊椎に側弯や捩れが発生する。これが末梢神経の圧迫や筋肉の血行不全を起こし、首や肩・背中・腰等の筋肉の緊張を起こし、痛みやコリや鈍重感等を発症する。通常、体重を支えるメカニズムは靱帯が主役となって働いているので、これが壊れると、その30分の1の支持能力しかない筋肉系が24時間靱帯に代わって体重を支持し続けなければならないことになり、健康時よりもはるかに短い時間しか立ち続けたり座り続けたりという基本姿勢がとれなくなる。直ぐに疲れてしまうからである。
上記のように、鞭打ち症は、追突事故等による頭部打撲や頸部の過伸展の過屈曲の結果、後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織の損傷により発症すると考えられる。現在使用されているヘッドレストでは、図8にその典型例を示すが、後頭部をヘッドレストに接触させると、後頭部の突出部一点でしか接触せず、上位頸椎部や第5頸椎部には接触していない。従って、追突された場合、頭部が前方に急激に移動すると同時に、上位頸椎や第5頸椎を軸とする回転モーメントを受け、その結果後縦靱帯や毛髪様結合組織の損傷が生ずることになる。
従って、鞭打ち症を防止するには、頭部や頸部への打撲を受けても、後縦靱帯や毛髪様結合組織の損傷が生じないような形状のヘッドレストを開発する必要がある。そして、本発明者らは、衝突時の鞭打ち症を防止するためには後述するように搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部をヘッドレストに接触させておくことが不可欠であることを見出した。もちろん、搭乗者が事故寸前まで頭部及び頸部をヘッドレストに接触させていなくても、当該ヘッドレストを適正にセットしてあれば、鞭打ち症が発生する可能性は最小限に抑止できる。つまり衝撃の瞬間、本願発明のヘッドレストが後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触すれば問題はない。但し、そのスピードや衝撃の大きさによっては、頸部への打撲を受けることもありうるであろう。
搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部をヘッドレストに接触させて使用するようにするためには、ヘッドレストの使用中及び追突時に搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレストに接触しなければならないのは当然であるが、搭乗者の頭部の他の部分はむしろヘッドレストから離れた状態であることが好ましい。そうすれば、追突時の鞭打ち症を効果的に防止できることになる。こうして、本発明者は、通常使用時に搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部のみがヘッドレストの表面と接触し、搭乗者の後頭部突出部や両側の側頭骨がヘッドレストの表面と接触し得ない又は接触し難い形状のヘッドレスト(図9にその概念図を示す)に想到した。この場合には、追突時の衝撃は搭乗者の上位頸椎部及び第5頸椎部にまず加わる。この際、搭乗者の頭部には後方への回転モーメントが生ずるが、これは後頭部下面と接しているヘッドレスト表面が支える。ついで頸部と頭部は腰から頸部までの胴体と一体になって(棒状になって)股関節を軸とした前方への回転を行なうことになる。こうして、従来のヘッドレストの場合のように、後頭部がまず衝撃を受け頸部を軸とする回転モーメントが生じて頸部に大きな衝撃が加わることが避けられ、鞭打ち症の発生が防止されるのである。そこで、本願発明では、ヘッドレストの形状は、特許文献9で開示されたヘッドレストの形状とは異なり、搭乗者の両側の側頭骨の乳様突起及び頭頂骨後面にかけての部分がヘッドレストの表面に接触しない形状としてある。これが最も大きな相違点であり、追突時全く違う結果となる。
本発明の概要は以下のとおりである。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレストに同時に接触した場合に搭乗者の後頭部突出部とヘッドレストの相対する表面の間に4cm未満、好ましくは3cm未満、より好ましくは2cm未満のギャップが存在するものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも2cmから15cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも3cmから12cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも4cmから8cmまでの範囲で着座側に突き出ているものであるヘッドレストに関する。
本発明は、イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ、後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するヘッドレストにおいて、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触する面が第7頸椎部に接触しないように着座側に対して後退していることを特徴とするヘッドレストに関する。
本発明はさらに本発明のヘッドレストを座席に座った搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように座席の背もたれに固定して使用することを特徴とするヘッドレストの使用方法にも関する。
本発明は、本発明のヘッドレストと背もたれとの間の距離を調節することにより、本発明のヘッドレストを個々の搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように調節した後、背もたれに固定する本発明のヘッドレストの使用方法に関する。
本発明のヘッドレストを使用することにより、追突事故等により後方より頭部及び頚部への衝撃を受けた場合、上位頸椎と第5頸椎がそして少し遅れて後頭部突出部が前方への力を受けることになるため、上半身全体が一体化固定され股関節を軸とする回転モーメントを受けることになり、従来のヘッドレストの場合のように後頭部のみに前方への大きな力がかかり、上位頸椎部及び第5頸椎部を軸とする回転モーメントが生じるということがなく、従って、いわゆる鞭打ち症の発生を効果的に防止することができる。
以下に添付図面に示す実施例に基づき、本発明のヘッドレストの実施の形態を詳細に説明する。
図9は本発明のヘッドレストが搭乗者の頭部から頸部にかけてどのように接触するかを示す概念図である。即ち、本発明のヘッドレストを使用すると、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレスト表面と接触し、搭乗者の後頭部突出部及び側頭骨の乳様突起はヘッドレスト表面とは接触しないという状態になる。後頭部の突出部とヘッドレスト表面の間隔は通常約4cm未満、好ましくは約3cm未満、より好ましくは約2cm未満、さらに好ましくは約1cm未満である。
一方、従来型のヘッドレストは、図8にその典型例を示すように、搭乗者の頭部と一箇所で、即ち、後頭部の突出部のみで接触しているものがほとんどであり、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触しているヘッドレストは見あたらず、まして後頭部の突出部および側頭骨乳様突起に接触せず後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部にのみに接触してこれを支えているヘッドレストは皆無である。従って、現在使用されているヘッドレストの場合は、追突事故が起こるとヘッドレストによる後頭部の強打により頸椎部を軸とする強力な回転モーメントが生じ、頸椎部の後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織(図4参照)の損傷を招く結果となる(図7及び図15参照)。
これに反し、本発明のヘッドレストでは、追突事故などの場合は、前方への衝撃の力が上位頸椎部及び第5頸椎部のみにかかるため、頭部は一旦後方への回転モーメントを受けるが、これは後頭部下面と接触しているヘッドレスト表面により先ず支えられ、また一瞬遅れて後頭部後方のヘッドレスト表面により前方に押し出されるため、頭部から腹部にかけての脊椎全体が前方への力を受け、股関節を回転軸として脊椎全体が均等な回転モーメントを受けることになる(図17参照)。その結果、従来型のヘッドレストの場合のように頭部が上位頸椎部や第5頸椎部を軸とする急激な回転モーメントを受け頸椎部の後縦靱帯とその後ろの硬膜を固定している毛髪様結合組織が損傷するという事態を避けることができ、追突事故による鞭打ち症の発症を有効に防止することができる。
図10は本発明のヘッドレストの1例の斜視図である。本発明のヘッドレストは搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部(以下頭頸部ともいう)と接触するが搭乗者の後頭部突出部及び両側の側頭骨の乳様突起とは接触しないような形状を持つことを特徴とするものである。
ここで注意すべき点は、本発明のヘッドレストを使用する場合、ヘッドレストの表面が搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に接触するように使用しなければならないことである。また万が一、搭乗者が頭部及び頸部をヘッドレストから離して使用していたとしても、追突された瞬間、後方からヘッドレストが頭頸部を後方から押す形となった場合、ヘッドレストが頭部及び頸部に接触した瞬間は、上記の使用状態と同じ状態になっている様に、ヘッドレストの高さをセットしておく必要がある。そうでなければ追突事故の際に搭乗者を鞭打ち症から保護することができないからである。ヘッドレストの形状が本発明の所定の条件を満足していても、個々の搭乗者が実際に使用する場合を考えると、搭乗者に座高の相違があるため、本発明のヘッドレストの頸椎接触部と搭乗者が車輛の座席に座った場合の頸椎部の位置とがぴったり一致するように本発明のヘッドレストの高さを調節することが不可欠となる。従って、本発明のヘッドレストを車輛の座席のシートに取り付ける場合、そのヘッドレストの高さを自在に調節できる機構をヘッドレストと座席シートの間に備えることが不可欠となる。このような目的に使用できる高さ調節機構を備えたヘッドレストは既に市販されており、これらのヘッドレスト高さ調節機構のいずれかを使用することにより、本発明のヘッドレストの能力を最大限に発揮させることができ、本発明の効果を発揮させることができる。このことから明らかなように、本発明のヘッドレストは搭乗者に合わせてヘッドレストの高さを調節すれば、本発明のヘッドレストの後頭部下面接触部及び頸椎部接触部と搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部との接触が満足されるのであり、本発明のヘッドレストと同じ形状のものを車輛の座席シートに固定して取り付けたり、あるいは座席シートの背もたれそのものを本発明のヘッドレスト類似の形状としても、たまたま搭乗者の座高が上記の条件を満足する稀な場合を除き、一般に本発明のヘッドレストが有する鞭打ち症防止効果は生じないことが明らかである。
なお、ヘッドレストの後頭骨後面突出部接触部の上方にあって搭乗者の頭部と接触しないヘッドレスト部分の形状や背面、側面及び底面の形状はヘッドレストの使用に支障がない限り、どのような形状をとってもよい。図10に示した本発明のヘッドレストの上方部分の形状や背面又は側面の形状は本発明のヘッドレストの形状を制限するものではない。底面の形状も同様に制限されない。
図11は本発明のヘッドレストの1例の側面図の概念図であり、図12は本発明のヘッドレストの1例の正面図の概念図であり、図13は本発明の1例のヘッドレストの上面図の概念図である。以下に第9、10、11、12図を参照して本発明をさらに具体的に説明する。
図11のABCDで囲まれた部分は従来型のヘッドレストの側面図の概念図である。従来型のヘッドレストでは、図11のA〜B面(図12のAaBb面)、即ち搭乗者の後頭部突出部と接触するヘッドレストの表面は中央が凸に又は凹に弯曲している場合もあるが、概ね平面となっているものが大部分である。
本発明のヘッドレストでは、図11のH(図12のH−hのほぼ中央)が搭乗者後頭部突出部と向い合っている位置(追突時などに後頭部突出部と接触しうる位置)である。搭乗者が後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部を同時にヘッドレストに接触させた場合、Hと後頭部後方突出部とは接触せず、通常約4cm未満、好ましくは約3cm未満、より好ましくは約2cm未満のギャップがその間に存在する。図11のH〜E面(図12のHEeh面)は搭乗者の後頭部下面と接触する面である。
図9から明らかなように、人の後頭部の骨格は曲線を形成しているので、後頭部下面と図11のE〜H面の接触を良好にするため、E〜H面は後方に行くにつれて上方に隆起させることが好ましい。さらに図11のE〜H面はE−Hの方向において搭乗者の後頭部下面の曲線に合致するような曲線を描くように凹に湾曲させることが好ましい。ただし、E−e方向では、両側に大きな脹らみを持たせてはならず、特に側頭骨の乳様突起に接触する程の脹らみを持たせてはならない。曲面とする場合であっても、後頭部下面との接触を安定させるために中央に向かって凹に湾曲させる程度に止めるべきである。
図11のE〜F面(図12のEeFf面)は上位頸椎部及び第5頸椎部と接触する面である。本発明の特徴は、図11のE〜F面(図12のEeFf面)が図11のA〜H面(図12のHhGg面)よりも前方に突き出ていることである。従来型のヘッドレストでは、図11のE〜F面(図12のEeFf面)が図11のH〜G面と同一平面上にあるか、逆に図11のH〜G面の方が図11のE〜F面よりも前に突き出ており、E〜Gの長さが殆ど0cmかマイナスとなる。これに反し、本発明のヘッドレストでは、図11のE〜F面がH〜G面よりも前方に突き出ており、図11のE−Gの長さは通常約2cmから約15cmまで、好ましくは約3cmから約12cmまで、より好ましくは約4cmから約8cmまでの範囲にある。
図11のE〜F面(図12のEeFf面)は、平面であってもよいが、E−eの線に沿って中央に向かって凹に湾曲していることが好ましい。これは頭頸部をヘッドレストに接触させたときに頭頸部が安定し気持ち良くヘッドレストを使用できるようにするためである。さらに、図11のE−F(e−f)の長さは、上位頸椎と第5頸椎に同時に接触できる長さであり、通常約2cmから約15cmまで、好ましくは約3cmから約10cmまでであり、より好ましくは約4cmから約8cmまでの範囲にある。
また、図11のH−Gの長さは搭乗者の後頭部突出部の高さと上位頸椎部接触面の上端との垂直距離を示すものであり、通常3cm以上あればよい。
なお、搭乗者の後頭部突出部の後方にあるヘッドレスト表面と後頭部突出部との距離は通常4cm未満、好ましくは3cm未満、より好ましくは2cm未満である。
図11のE〜F面が上位頸椎と第5頸椎を越え第7頸椎又はそれ以上にまで達する場合は、第6頸椎を越えた点からE−Fの線に沿って下方に行くにつれ、その面を後方に後退させ、図12のEeFf面が第7頸椎と接触しないようにすることが好ましい。ヘッドレスト表面が第7頸椎を圧迫することによる不快感を除くためである。従って、この場合はF−B(f−b)の長さはE−G(e−g)の長さよりも短くすることが好ましい。
本発明のヘッドレストの特徴は搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するヘッドレストの表面の形状である。従って、ヘッドレストのその他の部分の形状は特に制限を受けない。例えば、ヘッドレストの幅はヘッドレストとして使用するのに支障のない範囲で自由に設計することができ、通常、約15cmから約40cmまで、好ましくは約20cmから約30cmの範囲である。また、ヘッドレストの高さは、ヘッドレストの通常の使用に際して影響がなければ、図11のHから上方に任意の高さを設定することも可能である。ヘッドレストの背面であるCcDd面やヘッドレストの上面であるAaCc面は、ヘッドレストの通常の使用に際して影響がなければ、どのような形状であっても良い。またヘッドレストの左右の側面の形状も通常のヘッドレストとしての使用に支障がない限り自由に設計することができる。ヘッドレストの底面の形状も特に制限されない。底面にはヘッドレストを座席に固定するための支持棒が通常2本取り付けられるが、その取付け方法も従来用いられている方法を使用して取り付けることができる。
上述のように、搭乗者には様々な座高の持ち主がいるのが現実であるから、本発明のヘッドレストを使用するには、本発明のヘッドレストの表面と搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部が同時に接触できるように、座席シートの背もたれの上面とヘッドレストまでの距離を調整することが不可欠となる。これには、通常のヘッドレストにおいて用いられているヘッドレストの無段階高さ調節機構がそのまま使用できる。
なお、本発明のヘッドレストを取り付ける座席の背もたれの高さは座高の低い搭乗者の肩までとし、座高の高い搭乗者の場合はヘッドレストの高さを調節してヘッドレストの頸椎部接触部と搭乗者の頸椎部をぴったり合わせることが好ましい。
本発明のヘッドレストを製造するための材料は通常のヘッドレストの製造に用いられる材料と同様であり、例えば、心材には、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ABSフォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノール樹脂フォーム、ユリア樹脂フォームなどの硬質フォームを用いてもよく、その上をポリウレタンフォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、などの軟質フォーム又は半硬質フォームで覆ってもよい。さらに表面を、布地、天然皮革、合成皮革、人工皮革などで覆ってもよい。
以下に本発明の効果について図14から図17を参照して詳細に説明する。
まず、ヘッドレストが無い場合、追突されたらどうなるかを図14を用いて説明する。追突の瞬間に下部頸椎部及び胸椎部及び腰椎部及び仙骨上部が前方へ押し出され、頭部は全体が後方へそして頭部上部が後方へ且つ頭部下部が前上方へ押し出される。仙骨下部は上方へ押し上げられる。このとき、第5頸椎より下方は前方へ押し出され、頭部は後方への回転のモーメントを発生しつつ後方へ取り残されるため、第4頸椎より上側が後下方へ押し出される形となり、椎体の後ろ側を固定している後縦靱帯が損傷し第4頸椎が後方へ滑った形となって頸椎前弯が消失する。
こうして、後頭骨は前方へシフトするため、第1頸椎との関節は通常より前方へシフトする。第4頸椎椎体、特にその下端が後方の硬膜腔を圧迫し、脳脊髄液の循環を阻害し、頭痛、めまい、吐き気、意欲減退、耳鳴り、視力低下、全身倦怠感などの多彩な症状や痛み等を惹き起こす。
次に従来型のヘッドレストが装着されている場合に、追突されるとどうなるかを説明する。図15に示すように、下部頸椎部と胸椎部は前方へ押し出される。しかし、頭部は全体が一旦後方へ押し出されるが、頭部上側と接触するヘッドレストがあるため、頭部の上側のみがヘッドレストにより前方へ押し出されるため、頭部下側は上側との対比で前方への回転モーメントを受ける。そのため第1〜第5頸椎は全て後方へシフトする。そして体勢復元時に第4及び第5頸椎部の弯曲部(前弯)が消失して直線状となるか又は逆の弯曲即ち頸椎部後弯が生ずる。もちろん第4頸椎部及び第5頸椎部を中心として、後縦靱帯も損傷する。この場合、後頭骨と第1頸椎との関節は、後頭骨が第1頸椎に対して前方シフト(過進展)にも後方シフト(過屈曲)にもなりうる。また、腰椎及び仙骨部は頭部と呼応して後弯が弱まり、仙骨上部は後方へシフトし、仙骨下部及び座骨は前方へシフトする。この場合も、主なダメージは後縦靱帯と硬膜との間の疎な毛髪様結合組織にあると考えられる。さらに、この脊椎のアンバランスのため腰痛の出現の可能性も高まる。
後頭骨全体と側頭骨乳様突起を包み込む様な形状の特許文献9の如きヘッドレスト使用の際は、乳様突起が一番初めに大きく前方へ押されるため、頭部には、通常のヘッドレストにもまして大きな前方回転モーメントが発生し、図16の如く人体には大きなダメージが加わり、簡単に鞭打ち症を発生し、危険である。
さて、新しく開発した本発明のヘッドレストは上記の全ての問題を完全に解決する。本発明のヘッドレストは、搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有する。従って、追突された場合、図17に示すように、本発明のヘッドレストを装着してある自動車の搭乗者は、まず上位頸椎部及び第5頸椎部が続いて後頭部突出部が後方から急激に押し出されることになり、脊椎上部(頸椎部)の前弯はもちろんのこと、中部(胸椎部)の後弯、及び下部(腰椎部)の前弯までが一瞬にしてそれまでの生物的形状のまま固定され、上に詳述した追突時のあらゆる破壊的モーメントの発生を免れることができる。頭部から仙骨さらには尾骨に至るまでが、まるで一本の棒の様に一体となり、座席の背とヘッドレストに押し出されたまま上部全体が一体化して前方へ押されるだけである。こうして搭乗者の追突安全性は確保されることになる。
人体の脊柱の、この不思議な防衛反応は、常に容易に再現できる。イスに座っている人の後方から上位頸椎〜第5頸椎までを手で支持し、前方へ押してみれば分かる。人体は常に一体化し、股関節を軸として前方へ全体が傾くのみである(図17を参照)。それに対し、同じくイスに座っている人の後方から後頭骨突出部を支持して前方へ押してみると、頭部は前方への回転モーメントを生じ、頸部は窮屈な屈曲を強いられる(図15を参照)。下手をすると、この実験(後者)だけでも頸部を痛めてしまう可能性さえある。人類は今まで長い間この重要な防衛反応に気付かずに車社会を営んできた。その結果、鞭打ち症に悩む多くの被害者を生み続けてきたと言える。また、後頭部のみならず乳様突起に手掌を接触させて前方へ押すと、図15と全く同じ前方への回転モーメントを生じる事もわかる。
本願発明は、医師である発明者が、後頭部下面、上位頸椎、第5頸椎を固定した場合に発現する脊柱一体化の全体防衛反応を臨床経験上発見したことにより、これに基づいて発案開発されたものである。
本発明のヘッドレストを車両の座席等に使用することにより、従来のヘッドレスト装着の場合に見られる自動車の追突時の頸椎部の毛髪様結合組織の損傷や後縦靱帯の損傷、即ち、自動車の追突事故等の際、頸椎部を軸とする強力な回転モーメントが頭部にかかることにより生ずるいわゆる鞭打ち症の発生を、確実にしかも安価に防止することができる。
正常人の頸椎部のレントゲン写真である。 鞭打ち症患者の頸椎部のレントゲン写真である。 正常人の頭部から腰部に至る主要骨格の形状を示すイラストである。 脊椎の断面図の模式図である。毛髪様結合組織と後縦靱帯と椎体の関係が示してある。 呼気時の脊柱の生理的な動きと脊柱管内の脳脊髄液の還流の方向を示す。図中、白矢印(21)は、脳脊髄液の還流の方向を示す。 吸気時の脊柱の生理的な動きと脊柱管内の脳脊髄液の還流の方向を示す。図中、白矢印(22)は、脳脊髄液の還流の方向を示す。 同じく脊椎の断面図で、毛髪様結合組織が破損した状態を示す。 通常のヘッドレストと搭乗者頭部との接触の状態を示す模式図である。 本発明のヘッドレストを使用した場合における搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部が本発明のヘッドレストに同時に接触してこれらが効果的に支持されることを示す図である。 本発明のヘッドレストの1例の斜視図である。 本発明のヘッドレストの1例の側面図である。点線で示したA〜H〜G〜Bの面は従来型のヘッドレストの頭部接触面の断面図を示したものである。本発明のヘッドレストの頭部接触面の断面図がA〜H〜E〜F〜Bであることと対比するために付記したものである。なお、E−Gの点線は、後頭部突出部後方のヘッドレスト表面(HAah面)からE〜F面が着座側に突き出ている長さを示すものである。図中、Hは本発明のヘッドレストの後頭部突出部と向き合っている部位であり、E〜Fは本発明のヘッドレストの上位頸椎部及び第5頸椎部と接触する面であり、H〜Eは本発明のヘッドレストの後頭部下面と接触する面である。 本発明のヘッドレストの正面図である。 本発明のヘッドレストの上面図である。 車が後方から衝突された場合にヘッドレストを使用していない搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。 車が後方から衝突された場合に通常のヘッドレストを使用している搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。 特許文献9のような、搭乗者の後頭部、側頭骨乳様突起に接触するタイプのヘッドレストを使用した際に、搭乗者の身体が受ける衝撃を示すイラストである。おおむね、図15と同様の結果となる。 車が後方から衝突された場合に本発明のヘッドレストを使用している搭乗者の身体が受ける力を示すイラストである。
符号の説明
1 後頭部後面突出部
2 後頭部下面
3 上位頸椎部
4 第5頸椎部
5 第7頸椎部
11 毛髪様結合組織
12 後縦靱帯
13 椎体
14 椎間板
15 硬膜
16 棘突起
17 脳脊髄液
18 脊髄
19 毛髪様結合組織の損傷部
20 側頭骨乳様突起

Claims (12)

  1. イスの背もたれの上部に上下に位置を微調節できるように取り付けできるヘッドレストであって、該ヘッドレストが搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触する形状を有し、且つ後頭部下面と接触する面が脹らみを持たない形状を有するものであるヘッドレスト。
  2. 搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部がヘッドレストに同時に接触した場合に搭乗者の後頭部突出部とヘッドレストの相対する表面との間に4cm未満のギャップが存在するものである請求項1記載のヘッドレスト。
  3. 後頭部下面に接触する面が上部から下部に向かうにつれ前方に突き出ており、その最下端が頸椎部の接触する面の最上端と接しており、頸椎部上部及び第5頸椎部に接触する面が後頭部突出部に相対する面よりも前方に突き出ているものである請求項1記載のヘッドレスト。
  4. 該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも2cmから15cmまでの範囲で着座側に突き出ているものである請求項1記載のヘッドレスト。
  5. 該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも3cmから12cmまでの範囲で着座側に突き出ているものである請求項1記載のヘッドレスト。
  6. 該ヘッドレストの頸椎部接触面が後頭部突出部に相対する面よりも4cmから8cmまでの範囲で着座側に突き出ているものである請求項1記載のヘッドレスト。
  7. 該ヘッドレストの頸椎部接触面の垂直の長さが2cmから15cmまでの範囲である請求項1から請求項6いずれか1項に記載のヘッドレスト。
  8. 該ヘッドレストの頸椎部接触面の垂直の長さが3cmから10cmまでの範囲である請求項1から請求項6いずれか1項に記載のヘッドレスト。
  9. 該ヘッドレストの頸椎部接触面の垂直の長さが4cmから8cmまでの範囲である請求項1から請求項6いずれか1項に記載のヘッドレスト。
  10. 上位頸椎部及び第5頸椎部に接触する面が第7頸椎部に接触しないように着座側に対して後退しているものである、請求項1から請求項9いずれか1項に記載のヘッドレスト。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のヘッドレストを座席に座った搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように座席背もたれに固定して使用することを特徴とするヘッドレストの使用方法。
  12. 該ヘッドレストと座席背もたれとの間の距離を調節することにより、該ヘッドレストを個々の搭乗者の後頭部下面、上位頸椎部及び第5頸椎部に同時に接触するように調節した後座席背もたれに固定するものである請求項11記載の方法。
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