JPH1149713A - 光学活性ビス−β−ナフトール類の製造方法 - Google Patents
光学活性ビス−β−ナフトール類の製造方法Info
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- JPH1149713A JPH1149713A JP9212108A JP21210897A JPH1149713A JP H1149713 A JPH1149713 A JP H1149713A JP 9212108 A JP9212108 A JP 9212108A JP 21210897 A JP21210897 A JP 21210897A JP H1149713 A JPH1149713 A JP H1149713A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 簡単な操作で、容易に合成できる光学分割剤
を用いて、光学純度の高い光学活性1,1'−ビス−β−ナ
フトール化合物 (1,1'−ビナフタレン−2,2'−ジオール
およびそのアルキル置換化合物) を効率よく大量に製造
する。 【解決手段】 1,1'−ビス−β−ナフトール化合物のラ
セミ体または光学純度の低い異性体混合物に、有機溶媒
中で、光学活性な3−第四級アンモニウムプロパン−1,
2 −ジオール (例、2,3 −ジヒドロキシプロピル) トリ
メチルアンモニウムブロマイド) を接触させ、析出した
結晶から光学活性な1,1'−ビス−β−ナフトール化合物
を分離する。結晶分離後の母液に3−第四級アンモニウ
ムプロパン−1,2 −ジオールのラセミ体を添加すると、
析出した結晶から1,1'−ビス−β−ナフトール化合物の
もう一方の光学活性体を分離できる。
を用いて、光学純度の高い光学活性1,1'−ビス−β−ナ
フトール化合物 (1,1'−ビナフタレン−2,2'−ジオール
およびそのアルキル置換化合物) を効率よく大量に製造
する。 【解決手段】 1,1'−ビス−β−ナフトール化合物のラ
セミ体または光学純度の低い異性体混合物に、有機溶媒
中で、光学活性な3−第四級アンモニウムプロパン−1,
2 −ジオール (例、2,3 −ジヒドロキシプロピル) トリ
メチルアンモニウムブロマイド) を接触させ、析出した
結晶から光学活性な1,1'−ビス−β−ナフトール化合物
を分離する。結晶分離後の母液に3−第四級アンモニウ
ムプロパン−1,2 −ジオールのラセミ体を添加すると、
析出した結晶から1,1'−ビス−β−ナフトール化合物の
もう一方の光学活性体を分離できる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬や農薬を中心
とするファインケミストリーの分野において有用な、光
学活性1,1'−ビス−β−ナフトール化合物 (以下、単に
ビス−β−ナフトール化合物という) の製造方法に関
し、より詳しくは、ビス−β−ナフトール化合物のまま
で、簡単に合成できる光学分離剤を用いて、高い分離効
率および回収率で高純度の光学活性ビス−β−ナフトー
ル化合物を大量に製造できる方法に関する。
とするファインケミストリーの分野において有用な、光
学活性1,1'−ビス−β−ナフトール化合物 (以下、単に
ビス−β−ナフトール化合物という) の製造方法に関
し、より詳しくは、ビス−β−ナフトール化合物のまま
で、簡単に合成できる光学分離剤を用いて、高い分離効
率および回収率で高純度の光学活性ビス−β−ナフトー
ル化合物を大量に製造できる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学活性なビス−β−ナフトール化合物
は、不斉合成において非常に重要な配位子となり、例え
ば、アルミニウム錯体によるカルボニル基の不斉還元に
利用されている。また、その光学活性なビス−β−ナフ
トール化合物を構成単位とするクラウンエーテル型化合
物は光学分割剤として有用である。このため、光学活性
なビス−β−ナフトール化合物を容易に入手する手段が
求められていた。光学活性なビス−β−ナフトールを製
造する方法としては、次の方法が知られている。
は、不斉合成において非常に重要な配位子となり、例え
ば、アルミニウム錯体によるカルボニル基の不斉還元に
利用されている。また、その光学活性なビス−β−ナフ
トール化合物を構成単位とするクラウンエーテル型化合
物は光学分割剤として有用である。このため、光学活性
なビス−β−ナフトール化合物を容易に入手する手段が
求められていた。光学活性なビス−β−ナフトールを製
造する方法としては、次の方法が知られている。
【0003】(1) ビス−β−ナフトールのラセミ体に塩
化ホスホリルを作用させた後、加水分解して環状のビナ
フチルリン酸エステルとした後、シンコニジンを用いて
光学分割し、続いてメチルエステルとした後、水素化リ
チウムアルミニウムで還元してビス−β−ナフトールに
戻す方法[Tetrahedron Letters, 4617 (1971)]; (2) ラセミ体を光学活性な1−メトキシアセチルクロリ
ドを用いて光学分割する方法[J. Org. Chem., 42, 4173
(1977)]; (3) D−アンフェタミン・硫酸塩を用いて、2−ナフト
ールのカップリング反応により合成する方法[Tetrahedr
on Letters, 3261 (1983)]; (4) ラセミ体を光学活性なスルホキシドを利用して光学
分割する方法[Tetrahedron Letters, 4292 (1984)]; (5) ラセミ体を光学活性なN−アルキルシンコニジウム
塩を用いて光学分割する方法 (特開平6−271496号公
報) 。
化ホスホリルを作用させた後、加水分解して環状のビナ
フチルリン酸エステルとした後、シンコニジンを用いて
光学分割し、続いてメチルエステルとした後、水素化リ
チウムアルミニウムで還元してビス−β−ナフトールに
戻す方法[Tetrahedron Letters, 4617 (1971)]; (2) ラセミ体を光学活性な1−メトキシアセチルクロリ
ドを用いて光学分割する方法[J. Org. Chem., 42, 4173
(1977)]; (3) D−アンフェタミン・硫酸塩を用いて、2−ナフト
ールのカップリング反応により合成する方法[Tetrahedr
on Letters, 3261 (1983)]; (4) ラセミ体を光学活性なスルホキシドを利用して光学
分割する方法[Tetrahedron Letters, 4292 (1984)]; (5) ラセミ体を光学活性なN−アルキルシンコニジウム
塩を用いて光学分割する方法 (特開平6−271496号公
報) 。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、(1) の方法
は、光学分割するのがリン酸エステルであるため、リン
酸エステルへの変換と、光学分割後にリン酸エステルか
らビス−β−ナフトールへの変換に煩雑な操作が必要で
ある。(2) の方法は、光学分割後にクロマトグラフィー
で精製するため、大量合成は難しい。
は、光学分割するのがリン酸エステルであるため、リン
酸エステルへの変換と、光学分割後にリン酸エステルか
らビス−β−ナフトールへの変換に煩雑な操作が必要で
ある。(2) の方法は、光学分割後にクロマトグラフィー
で精製するため、大量合成は難しい。
【0005】(3) の不斉合成法は大量製造が可能である
が、毒性の強いアンフェタミンを用いなければならな
い。さらに不斉合成で得られたビス−β−ナフトールの
光学純度を上げるため、再結晶が必要であり、収率低下
やコスト高の原因となる。(4) および(5) の方法は、分
離操作は比較的容易であるが、光学分離剤として用いる
光学活性なスルホキシドまたはN−アルキルシンコニジ
ウム塩の合成が厄介であり、合成コストが高くなる。
が、毒性の強いアンフェタミンを用いなければならな
い。さらに不斉合成で得られたビス−β−ナフトールの
光学純度を上げるため、再結晶が必要であり、収率低下
やコスト高の原因となる。(4) および(5) の方法は、分
離操作は比較的容易であるが、光学分離剤として用いる
光学活性なスルホキシドまたはN−アルキルシンコニジ
ウム塩の合成が厄介であり、合成コストが高くなる。
【0006】このように、簡単な操作で、比較的安価に
光学活性なビス−β−ナフトール類を大量にしかも効率
的に製造することができる方法は未だに確立していな
い。本発明は、ビス−β−ナフトール化合物のラセミ体
から、合成の容易な光学分割剤を用いて、高純度の光学
活性なビス−β−ナフトール化合物を高い分離効率およ
び回収率で大量に製造できる方法を提供しようとするも
のである。
光学活性なビス−β−ナフトール類を大量にしかも効率
的に製造することができる方法は未だに確立していな
い。本発明は、ビス−β−ナフトール化合物のラセミ体
から、合成の容易な光学分割剤を用いて、高純度の光学
活性なビス−β−ナフトール化合物を高い分離効率およ
び回収率で大量に製造できる方法を提供しようとするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく、ビス−β−ナフトール類の光学異性体の
分離方法を探索した結果、容易に入手できる光学活性な
3−クロロ−1,2 −プロパンジオールを出発原料として
簡単に合成可能な、光学活性な3−第四級アンモニウム
プロパン−1,2 −ジオールが、簡便で分離能の高いビス
−β−ナフトール類の光学分割剤となることを見出し
た。
を解決すべく、ビス−β−ナフトール類の光学異性体の
分離方法を探索した結果、容易に入手できる光学活性な
3−クロロ−1,2 −プロパンジオールを出発原料として
簡単に合成可能な、光学活性な3−第四級アンモニウム
プロパン−1,2 −ジオールが、簡便で分離能の高いビス
−β−ナフトール類の光学分割剤となることを見出し
た。
【0008】さらに、一方の光学異性体を含む結晶を分
離した後に残る濾液に、上記ジオール化合物のラセミ体
を添加することにより、濾液から他方の光学異性体を分
離することができることも見出し、本発明を完成した。
離した後に残る濾液に、上記ジオール化合物のラセミ体
を添加することにより、濾液から他方の光学異性体を分
離することができることも見出し、本発明を完成した。
【0009】ここに、本発明は、 ビス−β−ナフトール化合物の光学異性体混合物を有
機溶媒に溶液させた状態で光学活性な3−第四級アンモ
ニウムプロパン−1,2 −ジオールと接触させ、この溶液
から結晶を析出させて回収し、回収した結晶からビス−
β−ナフトール化合物を分離することを特徴とする、光
学活性ビス−β−ナフトール化合物の製造方法、および 上記の方法において結晶を回収した後に残った溶液
に、3−第四級アンモニウムプロパン−1,2 −ジオール
のラセミ体を添加して溶解させ、この溶液から結晶を析
出させて回収し、回収した結晶からビス−β−ナフトー
ル化合物を分離することを特徴とする、光学活性ビス−
β−ナフトール化合物の製造方法、である。
機溶媒に溶液させた状態で光学活性な3−第四級アンモ
ニウムプロパン−1,2 −ジオールと接触させ、この溶液
から結晶を析出させて回収し、回収した結晶からビス−
β−ナフトール化合物を分離することを特徴とする、光
学活性ビス−β−ナフトール化合物の製造方法、および 上記の方法において結晶を回収した後に残った溶液
に、3−第四級アンモニウムプロパン−1,2 −ジオール
のラセミ体を添加して溶解させ、この溶液から結晶を析
出させて回収し、回収した結晶からビス−β−ナフトー
ル化合物を分離することを特徴とする、光学活性ビス−
β−ナフトール化合物の製造方法、である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明で光学異性体を製造するビ
ス−β−ナフトール化合物は、次の(1) 式で示される化
合物である。
ス−β−ナフトール化合物は、次の(1) 式で示される化
合物である。
【0011】
【化1】
【0012】上記式中、R1およびR2は同一でも異なって
いてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜7のアルキ
ル基またはハロゲン原子である。
いてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜7のアルキ
ル基またはハロゲン原子である。
【0013】(1) 式において、R1およびR2で示される炭
素数1〜7のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、
プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブ
チル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等の直鎖または分
岐鎖のアルキル基であり、ハロゲン原子はフッ素、塩
素、臭素、ヨウ素、の各原子を含む。
素数1〜7のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、
プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブ
チル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等の直鎖または分
岐鎖のアルキル基であり、ハロゲン原子はフッ素、塩
素、臭素、ヨウ素、の各原子を含む。
【0014】1,1'−ビス−β−ナフトール [式(1) でR1
=R2=Hの化合物] の正式名称は、1,1'−ビナフタレン
−2,2'−ジオールであり、また2,2'−ジヒドロキシ−1,
1'−ビナフチルと呼ばれることもあるが、本明細書にお
いては、上記(1) 式の化合物を総称してビス−β−ナフ
トール化合物ということにする。ビス−β−ナフトール
化合物は、次に示すように、鏡像異性化合物であって、
(R)-(+)-体と(S)-(-)-体の2種類の光学異性体が存在す
る。
=R2=Hの化合物] の正式名称は、1,1'−ビナフタレン
−2,2'−ジオールであり、また2,2'−ジヒドロキシ−1,
1'−ビナフチルと呼ばれることもあるが、本明細書にお
いては、上記(1) 式の化合物を総称してビス−β−ナフ
トール化合物ということにする。ビス−β−ナフトール
化合物は、次に示すように、鏡像異性化合物であって、
(R)-(+)-体と(S)-(-)-体の2種類の光学異性体が存在す
る。
【0015】
【化2】
【0016】ビス−β−ナフトール化合物は、例えば、
対応するβ−ナフトール化合物の熱水溶液に三塩化鉄を
作用させて酸化的に二量体化することにより製造されて
いるが、このような通常の化学合成手法ではラセミ体し
か得られない。このラセミ体も、例えば、感光性色素の
製造原料等として利用されている。
対応するβ−ナフトール化合物の熱水溶液に三塩化鉄を
作用させて酸化的に二量体化することにより製造されて
いるが、このような通常の化学合成手法ではラセミ体し
か得られない。このラセミ体も、例えば、感光性色素の
製造原料等として利用されている。
【0017】しかし、この化合物の重要な用途は、これ
がキレート形成能およびゲスト・ホスト型錯体 (包接化
合物) 形成能を有するキラル分子であることを利用し
た、不斉合成や光学分割剤としての用途である。従っ
て、工業的には光学活性なビス−β−ナフトール化合物
が求められている。
がキレート形成能およびゲスト・ホスト型錯体 (包接化
合物) 形成能を有するキラル分子であることを利用し
た、不斉合成や光学分割剤としての用途である。従っ
て、工業的には光学活性なビス−β−ナフトール化合物
が求められている。
【0018】本発明において、ビス−β−ナフトール化
合物の光学分割剤として使用する3−第四級アンモニウ
ムプロパン−1,2 −ジオール (以下、単に第四級アンモ
ニウムプロパンジオール、或いはさらに略して第四級ジ
オールという) は、次の(2)式で示される化合物であ
る。
合物の光学分割剤として使用する3−第四級アンモニウ
ムプロパン−1,2 −ジオール (以下、単に第四級アンモ
ニウムプロパンジオール、或いはさらに略して第四級ジ
オールという) は、次の(2)式で示される化合物であ
る。
【0019】
【化3】
【0020】上記式中、R3、R4、R5は同一でも異なって
いてもよく、それぞれ炭素数1〜15のアルキル基または
炭素数7〜20のアラルキル基であり、Xは1価アニオン
である。R3〜R5が全てアルキル基の場合、この化合物の
正式名称は、 2,3−ジヒドロキシプロピルトリアルキル
アンモニウム塩となるが、便宜上、(2) 式の化合物を上
記のように総称する。この化合物は中央の炭素が不斉炭
素原子であり、次に示すようにR-体とS-体の光学異性体
が存在する。
いてもよく、それぞれ炭素数1〜15のアルキル基または
炭素数7〜20のアラルキル基であり、Xは1価アニオン
である。R3〜R5が全てアルキル基の場合、この化合物の
正式名称は、 2,3−ジヒドロキシプロピルトリアルキル
アンモニウム塩となるが、便宜上、(2) 式の化合物を上
記のように総称する。この化合物は中央の炭素が不斉炭
素原子であり、次に示すようにR-体とS-体の光学異性体
が存在する。
【0021】
【化4】
【0022】(2) 式において、R3〜R5で示される炭素数
1〜15のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロ
ピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシ
ル等の好ましくは直鎖のアルキル基であり、炭素数7〜
20のアラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェネチル
基、芳香環がアルキルで置換されたベンジル基などであ
る。Xは、代表的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の
各イオンを含むハロゲンイオンであるが、モノメチル硫
酸アニオン等のスルホン酸アニオンやカルボン酸アニオ
ン等の他の1価アニオンでもよい。
1〜15のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロ
ピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシ
ル等の好ましくは直鎖のアルキル基であり、炭素数7〜
20のアラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェネチル
基、芳香環がアルキルで置換されたベンジル基などであ
る。Xは、代表的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の
各イオンを含むハロゲンイオンであるが、モノメチル硫
酸アニオン等のスルホン酸アニオンやカルボン酸アニオ
ン等の他の1価アニオンでもよい。
【0023】この第四級アンモニウムプロパンジオール
を光学分割剤として使用するには、光学活性な異性体
(R−体またはS−体) が必要である。光学活性な第四
級アンモニウムプロパンジオールは、容易に入手可能
な、光学活性な3−クロロ−1,2−プロパンジオールを
出発原料とし、これに第二級アミンを反応させて3−第
三アミノ−1,2 −プロパジオールを合成し、この第三級
アミン化合物を第四級化することにより、簡単に合成す
ることができる。第四級化は、常法に従って、第三級ア
ミン化合物を臭化アルキルと反応させて第四級アンモニ
ウム臭化物を合成し、必要であればこの臭化物を複分解
により他の塩に変換することにより実施できる。
を光学分割剤として使用するには、光学活性な異性体
(R−体またはS−体) が必要である。光学活性な第四
級アンモニウムプロパンジオールは、容易に入手可能
な、光学活性な3−クロロ−1,2−プロパンジオールを
出発原料とし、これに第二級アミンを反応させて3−第
三アミノ−1,2 −プロパジオールを合成し、この第三級
アミン化合物を第四級化することにより、簡単に合成す
ることができる。第四級化は、常法に従って、第三級ア
ミン化合物を臭化アルキルと反応させて第四級アンモニ
ウム臭化物を合成し、必要であればこの臭化物を複分解
により他の塩に変換することにより実施できる。
【0024】前述したように、本発明では第四級アンモ
ニウムプロパンジオールのラセミ体も光学活性なビス−
β−ナフトール化合物を製造するのに使用できる。この
ラセミ体は、3−クロロ−1,2 −プロパンジオールのラ
セミ体から上記と同様に製造してもよいが、より入手が
容易なグリシドールを出発原料とし、これを第二級アミ
ンと反応させて上記の第三級アミン化合物 (3−第三ア
ミノ−1,2 −プロパジオール) を合成し、さらに上記の
ように第四級化する方が、合成がより簡単である。
ニウムプロパンジオールのラセミ体も光学活性なビス−
β−ナフトール化合物を製造するのに使用できる。この
ラセミ体は、3−クロロ−1,2 −プロパンジオールのラ
セミ体から上記と同様に製造してもよいが、より入手が
容易なグリシドールを出発原料とし、これを第二級アミ
ンと反応させて上記の第三級アミン化合物 (3−第三ア
ミノ−1,2 −プロパジオール) を合成し、さらに上記の
ように第四級化する方が、合成がより簡単である。
【0025】本発明によると、まずビス−β−ナフトー
ル化合物の光学異性体混合物を、有機溶媒中で光学活性
な第四級アンモニウムプロパンジオールと接触させる。
この光学異性体混合物の代表例は、化学合成で得られた
ビス−β−ナフトール化合物、即ち、この化合物のラセ
ミ体である。しかし、この光学異性体混合物中の各異性
体の割合は特に制限されず、ラセミ体以外に、任意の混
合比の混合物を使用できる。
ル化合物の光学異性体混合物を、有機溶媒中で光学活性
な第四級アンモニウムプロパンジオールと接触させる。
この光学異性体混合物の代表例は、化学合成で得られた
ビス−β−ナフトール化合物、即ち、この化合物のラセ
ミ体である。しかし、この光学異性体混合物中の各異性
体の割合は特に制限されず、ラセミ体以外に、任意の混
合比の混合物を使用できる。
【0026】例えば、本発明または他の方法によりビス
−β−ナフトールの一方の光学異性体 (第1の異性体)
を分離した後には、他方の光学異性体 (第2の異性体)
と共に、分離されなかった少量の第1の異性体も含有す
る混合物が残る。これも光学異性体混合物であり、この
ような混合物に対しても本発明を適用できる。
−β−ナフトールの一方の光学異性体 (第1の異性体)
を分離した後には、他方の光学異性体 (第2の異性体)
と共に、分離されなかった少量の第1の異性体も含有す
る混合物が残る。これも光学異性体混合物であり、この
ような混合物に対しても本発明を適用できる。
【0027】第四級アンモニウムプロパンジオールの使
用量は、ビス−β−ナフトール化合物の光学異性体混合
物中に含まれる、目的とする (分離しようとする) 光学
異性体の量とほぼ等モル量とすることが好ましい。具体
的には、この光学異性体のモル量の 0.8〜1.2 倍モルの
範囲内が好ましく、より好ましくは 0.9〜1.1 倍モルで
ある。接触温度は、両成分とも溶解できる温度であれば
特に制限されない。
用量は、ビス−β−ナフトール化合物の光学異性体混合
物中に含まれる、目的とする (分離しようとする) 光学
異性体の量とほぼ等モル量とすることが好ましい。具体
的には、この光学異性体のモル量の 0.8〜1.2 倍モルの
範囲内が好ましく、より好ましくは 0.9〜1.1 倍モルで
ある。接触温度は、両成分とも溶解できる温度であれば
特に制限されない。
【0028】上記の接触に用いる有機溶媒は、ビス−β
−ナフトール化合物と第四級アンモニウムプロパンジオ
ールの両者を室温または加熱下に溶解し、かつこれらと
反応性のないものであればよい。適当な溶媒の例は、メ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノー
ル、ベンタノール等のアルコール類;アセトン、シクロ
ヘキサノン等のケトン類;メチルエチルケトン、THF
等のエーテル類;アセトニトリル等の極性溶媒である。
−ナフトール化合物と第四級アンモニウムプロパンジオ
ールの両者を室温または加熱下に溶解し、かつこれらと
反応性のないものであればよい。適当な溶媒の例は、メ
タノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノー
ル、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノー
ル、ベンタノール等のアルコール類;アセトン、シクロ
ヘキサノン等のケトン類;メチルエチルケトン、THF
等のエーテル類;アセトニトリル等の極性溶媒である。
【0029】有機溶媒中での接触によりビス−β−ナフ
トール化合物の一方の光学異性体が優先的に光学活性な
第四級アンモニウムプロパンジオールとゲスト・ホスト
型の包接錯体を形成する。具体的には、光学活性な第四
級ジオールがR-体の場合にはビス−β−ナフトール化合
物の(S)-(-)-体がこれと優先的に包接錯体を形成し、S-
体の場合には同化合物の(R)-(+)-体がこれと優先的に包
接錯体を形成する。
トール化合物の一方の光学異性体が優先的に光学活性な
第四級アンモニウムプロパンジオールとゲスト・ホスト
型の包接錯体を形成する。具体的には、光学活性な第四
級ジオールがR-体の場合にはビス−β−ナフトール化合
物の(S)-(-)-体がこれと優先的に包接錯体を形成し、S-
体の場合には同化合物の(R)-(+)-体がこれと優先的に包
接錯体を形成する。
【0030】ビス−β−ナフトール化合物は前述したよ
うに包接錯体形成能を有している。包接錯体の形成が上
記のように光学異性体に対して選択的に起こる理由は不
明であるが、特に第四級アンモニウムプロパンジオール
の光学異性体の立体配置が、ビス−β−ナフトール化合
物の一方の光学異性体とより強く相互作用しやすい構造
を含んでいるためと考えられる。
うに包接錯体形成能を有している。包接錯体の形成が上
記のように光学異性体に対して選択的に起こる理由は不
明であるが、特に第四級アンモニウムプロパンジオール
の光学異性体の立体配置が、ビス−β−ナフトール化合
物の一方の光学異性体とより強く相互作用しやすい構造
を含んでいるためと考えられる。
【0031】包接錯体は有機溶媒に対する溶解度が一般
に低いので、周知の適当な手法により有機溶媒からその
結晶を優先的に析出させることができる。例えば、冷
却、溶媒蒸発 (濃縮) 、貧溶媒 (例、炭化水素類) の添
加などのいずれか単独または組合わせが可能である。こ
うして析出させた結晶を濾過、遠心分離等の常法により
回収すると、ビス−β−ナフトール化合物の一方の光学
異性体と光学活性な第四級ジオールとの包接錯体からな
る結晶が得られる。
に低いので、周知の適当な手法により有機溶媒からその
結晶を優先的に析出させることができる。例えば、冷
却、溶媒蒸発 (濃縮) 、貧溶媒 (例、炭化水素類) の添
加などのいずれか単独または組合わせが可能である。こ
うして析出させた結晶を濾過、遠心分離等の常法により
回収すると、ビス−β−ナフトール化合物の一方の光学
異性体と光学活性な第四級ジオールとの包接錯体からな
る結晶が得られる。
【0032】この結晶をビス−β−ナフトール化合物と
第四級ジオールとに分離すると、光学活性なビス−β−
ナフトール化合物が得られる。この分離は、結晶を構成
する包接錯体を分解して、元の成分に戻せばよく、この
錯体分解が可能であれば、どのような方法で分離を行っ
てもよい。例えば、イオン交換樹脂を用いてイオン性化
合物である第四級ジオールだけを吸着させるといった方
法も可能である。
第四級ジオールとに分離すると、光学活性なビス−β−
ナフトール化合物が得られる。この分離は、結晶を構成
する包接錯体を分解して、元の成分に戻せばよく、この
錯体分解が可能であれば、どのような方法で分離を行っ
てもよい。例えば、イオン交換樹脂を用いてイオン性化
合物である第四級ジオールだけを吸着させるといった方
法も可能である。
【0033】本発明において好ましい分離 (錯体分解)
方法は、イオン性の第四級ジオールが水溶性であり、ビ
ス−β−ナフトール化合物は水不溶性であることを利用
して、水相と油相に液−液分配させる方法である。即
ち、結晶を水と水不混和性有機溶媒の2相系に分散させ
ると、包接錯体中のビス−β−ナフトール化合物はほと
んど有機溶媒相に分配され、第四級ジオールはほとんど
水相に分配されるため、包接錯体を分解して両成分を高
い効率で分離することができる。適当な有機溶媒の例と
しては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、
メチルイソブチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチ
ル、酢酸ブチルなどのエステル類;ベンゼン、トルエン
等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。
方法は、イオン性の第四級ジオールが水溶性であり、ビ
ス−β−ナフトール化合物は水不溶性であることを利用
して、水相と油相に液−液分配させる方法である。即
ち、結晶を水と水不混和性有機溶媒の2相系に分散させ
ると、包接錯体中のビス−β−ナフトール化合物はほと
んど有機溶媒相に分配され、第四級ジオールはほとんど
水相に分配されるため、包接錯体を分解して両成分を高
い効率で分離することができる。適当な有機溶媒の例と
しては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、
メチルイソブチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチ
ル、酢酸ブチルなどのエステル類;ベンゼン、トルエン
等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0034】有機層中に溶解している光学活性なビス−
β−ナフトール化合物は、濃縮および/または貧溶媒の
添加により回収することができる。一方、水層に溶解し
ている光学活性な第四級アンモニウムプロパンジオール
は、濃縮および/または適当な溶媒との共沸により水を
除去することで、回収することができる。こうして水層
から回収した光学活性な第四級ジオールは、ビス−β−
ナフトール化合物の光学分割剤として繰り返し使用でき
る。
β−ナフトール化合物は、濃縮および/または貧溶媒の
添加により回収することができる。一方、水層に溶解し
ている光学活性な第四級アンモニウムプロパンジオール
は、濃縮および/または適当な溶媒との共沸により水を
除去することで、回収することができる。こうして水層
から回収した光学活性な第四級ジオールは、ビス−β−
ナフトール化合物の光学分割剤として繰り返し使用でき
る。
【0035】上記の光学異性体の製造方法により、通常
は1回の操作で光学純度 (エナンチオマー過剰率, ee)
が99.9%前後またはそれ以上と高純度の光学活性ビス−
β−ナフトール化合物を80%前後の高い回収率で得るこ
とができる。操作の不具合などにより十分な光学純度が
得られない場合は、析出した結晶を再結晶させることで
光学純度の向上が可能である。
は1回の操作で光学純度 (エナンチオマー過剰率, ee)
が99.9%前後またはそれ以上と高純度の光学活性ビス−
β−ナフトール化合物を80%前後の高い回収率で得るこ
とができる。操作の不具合などにより十分な光学純度が
得られない場合は、析出した結晶を再結晶させることで
光学純度の向上が可能である。
【0036】上記方法において、ビス−β−ナフトール
化合物の一方の光学異性体を含む包接錯体の結晶を析出
させて回収した後に残る溶液 (回収法が濾過の場合、濾
液)は、ビス−β−ナフトール化合物の他方の光学異性
体のほぼ全量を、残留する少量のもう一方の光学異性体
と共に含有しており、通常はその他方の光学異性体の光
学純度は約40〜90%である。
化合物の一方の光学異性体を含む包接錯体の結晶を析出
させて回収した後に残る溶液 (回収法が濾過の場合、濾
液)は、ビス−β−ナフトール化合物の他方の光学異性
体のほぼ全量を、残留する少量のもう一方の光学異性体
と共に含有しており、通常はその他方の光学異性体の光
学純度は約40〜90%である。
【0037】本発明によれば、このビス−β−ナフトー
ル化合物の他方の光学異性体をより多く含有する溶液
(以下、濾液という) から、この他方の光学異性体を分
離して、光学活性なビス−β−ナフトール化合物を製造
することができるが、その方法には二つある。
ル化合物の他方の光学異性体をより多く含有する溶液
(以下、濾液という) から、この他方の光学異性体を分
離して、光学活性なビス−β−ナフトール化合物を製造
することができるが、その方法には二つある。
【0038】一つは、前述した本発明の方法をまた適用
する方法である。即ち、上記方法において、第四級アン
モニウムプロパンジオールのR-体を用いた場合には、ビ
ス−β−ナフトール化合物の(S)-(-)-体が回収され、濾
液はビス−β−ナフトールの他方の光学異性体である
(R)-(+)-体をより多く含んでいる。従って、今度は、第
四級アンモニウムプロパンジオールのS-体を使用して上
記方法を繰り返す。具体的には、この濾液に第四級ジオ
ールのS-体を添加すればよく、必要であれば、適宜加熱
および/または溶媒の追加を行う。その後、上記と同様
に結晶の析出と回収、次いで結晶 (包接錯体) の分解を
行うと、他方の光学異性体である(R)-(+)-体からなる光
学活性なビス−β−ナフトールが得られる。
する方法である。即ち、上記方法において、第四級アン
モニウムプロパンジオールのR-体を用いた場合には、ビ
ス−β−ナフトール化合物の(S)-(-)-体が回収され、濾
液はビス−β−ナフトールの他方の光学異性体である
(R)-(+)-体をより多く含んでいる。従って、今度は、第
四級アンモニウムプロパンジオールのS-体を使用して上
記方法を繰り返す。具体的には、この濾液に第四級ジオ
ールのS-体を添加すればよく、必要であれば、適宜加熱
および/または溶媒の追加を行う。その後、上記と同様
に結晶の析出と回収、次いで結晶 (包接錯体) の分解を
行うと、他方の光学異性体である(R)-(+)-体からなる光
学活性なビス−β−ナフトールが得られる。
【0039】こうして得られた他方の光学異性体の光学
純度および回収率は、上記とほぼ同程度であるが、原料
である濾液中の他方の光学異性体の光学純度がラセミ体
より高いこともあって、回収率はやや高くなる傾向があ
る。また、包接錯体の分解により光学活性な第四級ジオ
ールも回収できるが、これも上記と同様に再利用でき
る。
純度および回収率は、上記とほぼ同程度であるが、原料
である濾液中の他方の光学異性体の光学純度がラセミ体
より高いこともあって、回収率はやや高くなる傾向があ
る。また、包接錯体の分解により光学活性な第四級ジオ
ールも回収できるが、これも上記と同様に再利用でき
る。
【0040】上記濾液から、これに多く含まれる他方の
光学異性体を分離して、光学活性なビス−β−ナフトー
ル化合物を製造する第二の方法は、第四級アンモニウム
プロパンジオールのラセミ体をこの濾液に添加する方法
である。この第四級ジオールのラセミ体の添加により、
物理的性質の異なるジアステレオマー錯体の混合物とな
り、上記と同様に結晶析出を行うと、より含有率の高い
ビス−β−ナフトール化合物の他の光学異性体との結晶
が優先的に析出するものと考えられる。
光学異性体を分離して、光学活性なビス−β−ナフトー
ル化合物を製造する第二の方法は、第四級アンモニウム
プロパンジオールのラセミ体をこの濾液に添加する方法
である。この第四級ジオールのラセミ体の添加により、
物理的性質の異なるジアステレオマー錯体の混合物とな
り、上記と同様に結晶析出を行うと、より含有率の高い
ビス−β−ナフトール化合物の他の光学異性体との結晶
が優先的に析出するものと考えられる。
【0041】以下、この第四級ジオールのラセミ体を使
用する方法を、第二の方法といい、先に説明した光学活
性な第四級ジオールを使用する方法を第一の方法とい
う。
用する方法を、第二の方法といい、先に説明した光学活
性な第四級ジオールを使用する方法を第一の方法とい
う。
【0042】第二の方法における第四級ジオールのラセ
ミ体の添加量の範囲は、第一の方法より広くなり、また
ラセミ体であるため添加量を多めにしてもよい。具体的
には、濾液中に含まれる目的とする (分離しようとす
る) ビス−β−ナフトール化合物の光学異性体のモル量
の 0.5〜2.5 倍モルの範囲内が好ましく、より好ましく
は 1.0〜2.2 倍モルである。収率を高めるには、特に
1.5〜2.1 倍モルの範囲が有利である。温度は、添加し
た第四級ジオールのラセミ体が溶解すれば特に制限され
ない。
ミ体の添加量の範囲は、第一の方法より広くなり、また
ラセミ体であるため添加量を多めにしてもよい。具体的
には、濾液中に含まれる目的とする (分離しようとす
る) ビス−β−ナフトール化合物の光学異性体のモル量
の 0.5〜2.5 倍モルの範囲内が好ましく、より好ましく
は 1.0〜2.2 倍モルである。収率を高めるには、特に
1.5〜2.1 倍モルの範囲が有利である。温度は、添加し
た第四級ジオールのラセミ体が溶解すれば特に制限され
ない。
【0043】その後の結晶の析出および回収、回収した
結晶の分解は、第一の方法と同様に実施すればよい。こ
の第二の方法によれば、光学分割剤としてラセミ体を使
用するため、目的とする光学活性なビス−β−ナフトー
ル化合物の回収率は、第一の方法より5〜20%程度低く
なるが、その光学純度は第一の方法と遜色がない。回収
率の低下は、この第二の方法で結晶分離後に得られた濾
液を、例えば、第一の方法に再循環させることで、カバ
ーすることができる。
結晶の分解は、第一の方法と同様に実施すればよい。こ
の第二の方法によれば、光学分割剤としてラセミ体を使
用するため、目的とする光学活性なビス−β−ナフトー
ル化合物の回収率は、第一の方法より5〜20%程度低く
なるが、その光学純度は第一の方法と遜色がない。回収
率の低下は、この第二の方法で結晶分離後に得られた濾
液を、例えば、第一の方法に再循環させることで、カバ
ーすることができる。
【0044】この第二の方法において、ラセミ体という
ずっと安価な物質を用いて光学活性なビス−β−ナフト
ール化合物を製造できることは、その製造コスト低下に
つながり、工業的に大きな意味がある。また、前述した
本発明の方法において光学分割剤として使用する光学活
性な第四級アンモニウムプロパンジオールが、原料の制
約その他の理由によりR-体またはS-体の一方しか合成で
きない場合、その一方の光学活性な第四級ジオールを用
いてビス−β−ナフトールの一方の光学異性体を製造し
た後、他方の光学異性体は、第四級ジオールのラセミ体
を用いて製造できるので、第四級ジオールが一方の光学
異性体しか用意できなくても、ビス−β−ナフトールの
2種類の光学異性体がいずれも高純度で製造可能にな
る。
ずっと安価な物質を用いて光学活性なビス−β−ナフト
ール化合物を製造できることは、その製造コスト低下に
つながり、工業的に大きな意味がある。また、前述した
本発明の方法において光学分割剤として使用する光学活
性な第四級アンモニウムプロパンジオールが、原料の制
約その他の理由によりR-体またはS-体の一方しか合成で
きない場合、その一方の光学活性な第四級ジオールを用
いてビス−β−ナフトールの一方の光学異性体を製造し
た後、他方の光学異性体は、第四級ジオールのラセミ体
を用いて製造できるので、第四級ジオールが一方の光学
異性体しか用意できなくても、ビス−β−ナフトールの
2種類の光学異性体がいずれも高純度で製造可能にな
る。
【0045】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0046】(実施例1)本実施例は、ラセミ体からの第
一の方法による (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフト
ールの製造を例示する。
一の方法による (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフト
ールの製造を例示する。
【0047】1−ブタノール 700gに、 (±) −1,1'−
ビス−β−ナフトール[(1)式でR1=R2=Hの化合物のラ
セミ体] 57.6g(0.2モル) と、 (R)−(2,3−ジヒドロキ
シプロピル) トリメチルアンモニウムブロマイド[(2)式
でR3=R4=R5=メチル、X=臭素イオンの化合物のR-
体] 23g(0.107モル) とを添加し、90〜100 ℃に加熱し
て添加成分を両方とも溶解させた後、室温まで冷却し
た。析出した結晶を濾過および乾燥して、粗結晶を46.8
g得た。
ビス−β−ナフトール[(1)式でR1=R2=Hの化合物のラ
セミ体] 57.6g(0.2モル) と、 (R)−(2,3−ジヒドロキ
シプロピル) トリメチルアンモニウムブロマイド[(2)式
でR3=R4=R5=メチル、X=臭素イオンの化合物のR-
体] 23g(0.107モル) とを添加し、90〜100 ℃に加熱し
て添加成分を両方とも溶解させた後、室温まで冷却し
た。析出した結晶を濾過および乾燥して、粗結晶を46.8
g得た。
【0048】この粗結晶にジエチルエーテル 150gと水
130gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 310g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
2.9g (回収率79.5%) を得た。HPLC分析 [ダイセ
ル化学工業 (株) 製、Chiralpak AS] により光学純度を
調べたところ、99.9%eeに相当していた。
130gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 310g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
2.9g (回収率79.5%) を得た。HPLC分析 [ダイセ
ル化学工業 (株) 製、Chiralpak AS] により光学純度を
調べたところ、99.9%eeに相当していた。
【0049】(実施例2)本実施例は、濾液からの第二の
方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
【0050】実施例1において、粗結晶を分離した後に
残った濾液 (1−ブタノール溶液)は、HPLC分析の
結果 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学
純度70%eeで含有していた。この濾液に (±) −(2,3−
ジヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマ
イド42.6g(0.2モル) を添加し、90〜100 ℃に加熱して
添加成分を溶解させた後、室温まで冷却した。析出した
結晶を濾過および乾燥して、粗結晶を42.8g得た。
残った濾液 (1−ブタノール溶液)は、HPLC分析の
結果 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学
純度70%eeで含有していた。この濾液に (±) −(2,3−
ジヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマ
イド42.6g(0.2モル) を添加し、90〜100 ℃に加熱して
添加成分を溶解させた後、室温まで冷却した。析出した
結晶を濾過および乾燥して、粗結晶を42.8g得た。
【0051】この粗結晶にジエチルエーテル 120gと水
100gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 250g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
1.0g (回収率72.9%) を得た。実施例1と同様に光学
純度を調べたところ99.9%eeに相当していた。
100gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 250g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
1.0g (回収率72.9%) を得た。実施例1と同様に光学
純度を調べたところ99.9%eeに相当していた。
【0052】(実施例3)本実施例は、ラセミ体からの第
一の方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフト
ールの製造を例示する。
一の方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフト
ールの製造を例示する。
【0053】(R)−(2,3−ジヒドロキシプロピル) トリ
メチルアンモニウムブロマイドを、(S)−(2,3−ジヒド
ロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマイドに
変更した以外は、実施例1と同様に操作したところ、
(R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール23.1g (回
収率80.2%) が得られた。この生成物の光学純度は同様
に99.9%eeに相当していた。
メチルアンモニウムブロマイドを、(S)−(2,3−ジヒド
ロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマイドに
変更した以外は、実施例1と同様に操作したところ、
(R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール23.1g (回
収率80.2%) が得られた。この生成物の光学純度は同様
に99.9%eeに相当していた。
【0054】(実施例4)本実施例は、濾液からの第二の
方法による (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
方法による (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
【0055】実施例3において粗結晶を分離した後の濾
液 (1−ブタノール溶液) は、HPLC分析の結果、
(S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学純度7
2%eeで含有していた。この溶液を実施例2と同様に処
理したところ、 (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフト
ール21.5g (回収率74.6%) が得られた。この生成物の
光学純度は99.8%に相当していた。
液 (1−ブタノール溶液) は、HPLC分析の結果、
(S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学純度7
2%eeで含有していた。この溶液を実施例2と同様に処
理したところ、 (S)− (−) −1,1'−ビス−β−ナフト
ール21.5g (回収率74.6%) が得られた。この生成物の
光学純度は99.8%に相当していた。
【0056】(実施例5)本実施例は、濾液からの第一の
方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
方法による (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール
の製造を例示する。
【0057】実施例1において粗結晶を分離した後の濾
液 (1−ブタノール溶液) は、実施例3で述べたよう
に、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学
純度70%eeで含有している。実施例1を再度繰り返し
て、粗結晶の分離後に得られた濾液に、 (S)− (2,3 −
ジヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマ
イド23g(0.107モル) を添加し、90〜100 ℃に加熱して
添加成分を溶解させた後、室温まで冷却した。析出した
結晶を濾過および乾燥して粗結晶を46.8g得た。
液 (1−ブタノール溶液) は、実施例3で述べたよう
に、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトールを光学
純度70%eeで含有している。実施例1を再度繰り返し
て、粗結晶の分離後に得られた濾液に、 (S)− (2,3 −
ジヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムブロマ
イド23g(0.107モル) を添加し、90〜100 ℃に加熱して
添加成分を溶解させた後、室温まで冷却した。析出した
結晶を濾過および乾燥して粗結晶を46.8g得た。
【0058】この粗結晶にジエチルエーテル 130gと水
130gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 310g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
2.9g (回収率81.2%) を得た。実施例1と同様に光学
純度を調べたところ、99.9%eeに相当していた。
130gとを添加し、室温で30分間攪拌した後、分液し
た。エーテル層をn−ヘキサン 310g中に攪拌しながら
添加すると、結晶が析出した。この結晶を濾過および乾
燥して、 (R)− (+) −1,1'−ビス−β−ナフトール2
2.9g (回収率81.2%) を得た。実施例1と同様に光学
純度を調べたところ、99.9%eeに相当していた。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、容易に入手可能な原料
から簡単に合成できる光学活性な第四級アンモニウムプ
ロパンジオールを光学分割剤として、結晶析出、分解、
単離という単純な操作により、ビス−β−ナフトール化
合物のラセミ体から光学純度の高い光学活性ビス−β−
ナフトール化合物を効率よく製造することができる。
から簡単に合成できる光学活性な第四級アンモニウムプ
ロパンジオールを光学分割剤として、結晶析出、分解、
単離という単純な操作により、ビス−β−ナフトール化
合物のラセミ体から光学純度の高い光学活性ビス−β−
ナフトール化合物を効率よく製造することができる。
【0060】また、この方法で結晶析出後に残る濾液か
らは、光学分割剤を第四級アンモニウムプロパンジオー
ルの他方の光学異性体に代えて同じ操作を繰り返すか、
或いは単に第四級アンモニウムプロパンジオールのラセ
ミ体を用いて同様の操作を行うことにより、ビス−β−
ナフトール化合物の他方の光学異性体も、高い光学純度
のものを効率よく製造することができる。
らは、光学分割剤を第四級アンモニウムプロパンジオー
ルの他方の光学異性体に代えて同じ操作を繰り返すか、
或いは単に第四級アンモニウムプロパンジオールのラセ
ミ体を用いて同様の操作を行うことにより、ビス−β−
ナフトール化合物の他方の光学異性体も、高い光学純度
のものを効率よく製造することができる。
【0061】従って、本発明は工業的に有用で大量生産
が望まれていた光学活性なビス−β−ナフトール化合物
を高い光学純度で大量に供給することを可能とするもの
である。
が望まれていた光学活性なビス−β−ナフトール化合物
を高い光学純度で大量に供給することを可能とするもの
である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C07M 7:00
Claims (2)
- 【請求項1】 1,1'−ビス−β−ナフトール化合物の光
学異性体混合物を有機溶媒に溶解させた状態で光学活性
な3−第四級アンモニウムプロパン−1,2 −ジオールと
接触させ、この溶液から結晶を析出させて回収し、回収
した結晶からビス−β−ナフトール化合物を分離するこ
とを特徴とする、光学活性1,1'−ビス−β−ナフトール
化合物の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1記載の方法において結晶を回収
した後に残る溶液に、3−第四級アンモニウムプロパン
−1,2 −ジオールのラセミ体を添加して溶解させ、この
溶液から結晶を析出させて回収し、回収した結晶からビ
ス−β−ナフトール化合物を分離することを特徴とす
る、光学活性1,1'−ビス−β−ナフトール化合物の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9212108A JPH1149713A (ja) | 1997-08-06 | 1997-08-06 | 光学活性ビス−β−ナフトール類の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9212108A JPH1149713A (ja) | 1997-08-06 | 1997-08-06 | 光学活性ビス−β−ナフトール類の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1149713A true JPH1149713A (ja) | 1999-02-23 |
Family
ID=16617019
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9212108A Withdrawn JPH1149713A (ja) | 1997-08-06 | 1997-08-06 | 光学活性ビス−β−ナフトール類の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1149713A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021049294A1 (ja) * | 2019-09-09 | 2021-03-18 | 第一工業製薬株式会社 | 1,1'-ビ-2-ナフトール粉体 |
-
1997
- 1997-08-06 JP JP9212108A patent/JPH1149713A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021049294A1 (ja) * | 2019-09-09 | 2021-03-18 | 第一工業製薬株式会社 | 1,1'-ビ-2-ナフトール粉体 |
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