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JPH11277104A - 銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法 - Google Patents

銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法

Info

Publication number
JPH11277104A
JPH11277104A JP7792698A JP7792698A JPH11277104A JP H11277104 A JPH11277104 A JP H11277104A JP 7792698 A JP7792698 A JP 7792698A JP 7792698 A JP7792698 A JP 7792698A JP H11277104 A JPH11277104 A JP H11277104A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
copper
stainless steel
slab
antioxidant
austenitic stainless
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7792698A
Other languages
English (en)
Inventor
Susumu Nakagami
晋 中上
Takashi Kawagoe
崇史 川越
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Steel Co Ltd filed Critical Nisshin Steel Co Ltd
Priority to JP7792698A priority Critical patent/JPH11277104A/ja
Publication of JPH11277104A publication Critical patent/JPH11277104A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱
間圧延時における2枚割れの発生を防止する。 【解決手段】 銅:1.0〜5.0重量%,硼素:0.
004〜0.05重量%を含むオーステナイト系ステン
レス鋼のスラブを予め定める長さに切断し、切断された
スラブの一方および他方の切断面に酸化防止剤を塗布
し、その後、スラブを加熱して熱間圧延を行う。これに
よって、銅および硼素のミクロ偏析によって酸化しやす
くなっているオーステナイト粒界の酸化が抑制され、熱
間圧延時における2枚割れの発生が防止される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性に優れた銅
含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】銅含有オーステナイト系ステンレス鋼
(以後、含銅ステンレス鋼と略称することがある)から
成る熱間および冷間圧延鋼帯は、抗菌性に優れた材料と
して最近注目を浴びており、衛生面の特徴を生かした用
途、たとえば厨房機器などに需要が拡大している。含銅
熱間圧延ステンレス鋼帯は、通常次のような製造工程に
よって製造される。溶製−連続鋳造−疵取り−加熱−熱
間圧延。また含銅冷間圧延ステンレス鋼帯は、たとえば
前記熱間圧延後に次のような製造工程を付加することに
よって製造される。焼鈍酸洗−冷間圧延−焼鈍酸洗−精
整。なお以後、連続鋳造によって製造された鋳片をスラ
ブと呼ぶ。
【0003】前記熱間圧延は、加熱したスラブを粗熱間
圧延し、粗熱間圧延材の頭尾部(以後、クロップと呼
ぶ)を切断した後、粗熱間圧延材を仕上げ熱間圧延する
ことによって行われる。このようにクロップの切断を行
うのは、粗熱間圧延によって不揃いになった頭尾部の形
状を整え、粗熱間圧延材の仕上げ圧延機への噛込みを円
滑にするためである。クロップは、通常予め定められる
標準切断長さ、たとえば250mmになるように切断さ
れる。なお以後、クロップの切断長さをクロップカット
量と呼ぶ。
【0004】抗菌性に優れた含銅ステンレス鋼に関して
は、いくつかの先行技術が開示されている。たとえば、
特開平9−176800号公報には含銅ステンレス鋼を
熱間圧延後、熱処理し、マトリックス中に銅を主体とす
る第2相を均一に分散させた含銅ステンレス鋼およびそ
の製造方法が開示されている。この含銅ステンレス鋼
は、優れた抗菌性を有しているけれども、本発明者らの
調査によれば銅のミクロ偏析が生じやすく、熱間圧延時
に2枚割れと呼ばれる欠陥が発生することがある。2枚
割れは、熱間圧延された板材が板厚方向に2層に分離す
る現象である。含銅ステンレス鋼における2枚割れの発
生位置はほぼ限定されており、熱間圧延鋼帯の頭尾部に
発生する。したがって、この問題に対しては、前記クロ
ップカット量を増大する対策が取られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】熱間圧延時における前
記クロップカット量の増大は、含銅ステンレス熱延鋼帯
の歩留まりを低下させる。また、一度に切断することの
できるクロップカット量には限界があるので、クロップ
カット量を増大させると切断作業を複数回行う必要があ
る。このため、熱間圧延の能率および生産性が低下す
る。
【0006】本発明の目的は、前記問題を解決し、クロ
ップカット量を増大させることなく、熱間圧延時におけ
る2枚割れの発生を防止することのできる銅含有オース
テナイト系ステンレス鋼帯の製造方法を提供することで
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、銅含有オース
テナイト系ステンレス鋼スラブを予め定める長さに切断
し、切断されたスラブを加熱して、熱間圧延する銅含有
オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法において、
銅含有オーステナイト系ステンレス鋼には、銅が1.0
〜5.0重量%含まれ、スラブの一方および他方の切断
面を、加熱前に酸化防止剤で被覆することを特徴とする
銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法であ
る。
【0008】本発明に従えば、銅含有オーステナイト系
ステンレス鋼から成るスラブの一方および他方の切断面
を、酸化防止剤で被覆した後、スラブの加熱が行われ
る。オーステナイト粒界には、銅のミクロ偏析が生じや
すく、銅の偏析したオーステナイト粒界は、加熱時に酸
化しやすくなっているけれども、酸化防止剤の被覆によ
って酸化が抑制される。これによって、変形能の小さい
酸化領域が減少するので、2枚割れと呼ばれる板材の板
厚方向への2層分離が防止される。また銅の上限値が適
正に定められているので、熱間加工性の低下を回避する
ことができる。
【0009】また本発明の前記銅含有オーステナイト系
ステンレス鋼は、硼素:0.004〜0.05重量%を
含むことを特徴とする。
【0010】本発明に従えば、銅含有オーステナイト系
ステンレス鋼には、硼素が適正量含まれているので、熱
間加工性が向上する。これによって、熱間圧延時におけ
る耳割れの発生を防止することができる。
【0011】また本発明の前記酸化防止剤は、炭化珪素
を主成分として含むことを特徴とする。
【0012】本発明に従えば、酸化防止剤には炭化珪素
が主成分として含まれているので、スラブのオーステナ
イト粒界の酸化を効果的に抑制することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形
態である抗菌性の優れた銅含有オーステナイト系ステン
レス鋼帯の製造工程を示す工程図である。図1を参照し
て、銅含有オーステナイト系熱間圧延ステンレス鋼帯の
製造方法について説明する。工程1では、銅含有オース
テナイト系ステンレス鋼(以後、含銅ステンレス鋼と呼
ぶことがある)の溶製が行われる。溶製は、転炉で粗精
錬された溶鋼を真空脱炭法(VOD法)で仕上げ精練す
ることによって行われる。
【0014】本実施の形態における含銅ステンレス鋼
は、C:0.1重量%以下,Si:2重量%以下,M
n:5重量%以下,Cr:10〜30重量%,Ni:5
〜15重量%,銅(Cu):1.0〜5.0重量%,硼
素(B):0.004〜0.05重量%を含む。Crの
範囲が10〜30重量%に限定されるのは、10%未満
ではオーステナイト系ステンレス鋼としての耐食性を確
保することができないからであり、30%を超えると製
造性および加工性が劣化するからである。Niの範囲が
5〜15重量%に限定されるのは、5%未満ではオース
テナイト相を安定化させることが困難になるからであ
り、15%を超えるとコストの上昇が著しくなるからで
ある。
【0015】Cuは、抗菌性を向上させる元素である。
Cuの範囲が1.0〜5.0重量%に限定されるのは、
1%未満では抗菌性を充分に確保することができないか
らであり、5%を超えると次のように熱間加工性が損な
われるからである。すなわち、Cuの含有率が5%を超
えるとCu富化相が析出し、析出したCu富化相は後記
加熱時に融点以上の温度で加熱される。これによって、
Cu富化相は後記熱間圧延の粗熱間圧延時に液相状態で
熱間圧延されるので、液膜脆化が生じ、熱間加工性が損
なわれる。
【0016】Bは、熱間加工性を改善する元素である。
Bの範囲が0.004〜0.05重量%に限定されるの
は、下限値未満ではBの熱間加工性改善効果が乏しく、
熱間圧延時に耳割れが生じやすくなるからであり、上限
値を超えるとCuの場合と同様に熱間圧延時に液膜脆化
が生じ、熱間加工性が損なわれるからである。
【0017】工程2では、溶製された含銅ステンレス溶
鋼の連続鋳造が行われる。連続鋳造は、溶鋼を水冷鋳型
内に鋳込み、表層の凝固した鋳片を連続的に引抜くこと
によって行われる。引抜かれた鋳片(以後、スラブと呼
ぶ)は、内部まで凝固した後に予め定める長さ、たとえ
ば8mに切断される。含銅ステンレス鋼のスラブは、次
のような金属組織を有する。
【0018】前記スラブから光学顕微鏡用サンプル(以
後、検鏡サンプルと呼ぶ)を採取し、その光学顕微鏡組
織を観察した。前記検鏡サンプル14は、図2(1)に
示すようにスラブの一方の切断面15から採取され、そ
の採取位置は、切断面15の板厚方向および板幅方向に
おける中央部である。検鏡サンプル14は、図2(2)
に示すようにサイコロ状であり、光学顕微鏡による観察
面16はスラブの一方の側面17に平行な面である。検
鏡サンプル14の光学顕微鏡組織には、図3に示すよう
にCr−B,P,S析出相19と、Cu−Mn析出相2
0と、気孔21とが認められる。これらはいずれもオー
ステナイト粒界に沿って存在する。これら各析出相1
9,20は、凝固時におけるミクロ偏析によってCu,
Bなどが富化して生じたものである。なお、光学顕微鏡
組織の析出相の成分同定は、蛍光X線分析装置を用いて
行った。
【0019】このように、含銅ステンレス鋼においてミ
クロ偏析が明瞭に認められるのは、オーステナイト系ス
テンレス鋼ではフェライト系ステンレス鋼に比べて元素
の拡散が遅いからである。また、スラブの最終凝固位置
である切断面15の板厚中心部付近には、図4中に斜線
で示すように前記ミクロ偏析の集合体であるマクロ偏析
領域23が存在しており、マクロ偏析領域23はスラブ
の長さ方向全長にわたって延びている。
【0020】工程3では、スラブの疵取りが行われ、ス
ラブの表面欠陥がグラインダによって研削除去される。
工程4では、酸化防止剤の塗布が行われる。この処理は
スラブの一方および他方の切断面を対象として行われ、
他の面には行われない。これによって、スラブの切断面
は酸化防止剤によって被覆される。酸化防止剤の塗布
は、切断面の全域にわたって行ってもよく、前記マクロ
偏析領域23のみに限定して行ってもよい。酸化防止剤
は粉末状であり、水または溶剤と混合してスラリー状に
された後、刷毛によって塗布される。塗布後、酸化防止
剤は自然乾燥され、乾燥後、再度塗布・乾燥が繰返され
る。酸化防止剤は、たとえば3層に塗布され、合計塗布
厚さは1mm以下である。酸化防止剤を塗布する理由お
よび酸化防止剤の成分組成については後述する。
【0021】工程5では、スラブの加熱が行われる。こ
の処理は加熱炉にスラブを挿入し、バーナからの燃焼熱
でスラブを加熱することによって行われる。加熱炉は大
気開放形であり、スラブの表面には酸化スケールが形成
される。加熱炉におけるスラブの加熱条件は、たとえば
加熱温度:1230℃,加熱時間:1hrである。工程
6では、熱間圧延設備において熱間圧延が行われる。加
熱炉で加熱されたスラブは、たとえば図5に示すように
2基の粗圧延機26で粗熱間圧延され、クロップシヤ2
7を経て7スタンドの仕上げ圧延機28にて所定の板厚
に仕上げ熱間圧延され、テンションリール30に巻取ら
れる。これによって、含銅熱間圧延ステンレス鋼帯の製
造が終了する。クロップシヤ27では、粗熱間圧延材の
頭尾部であるクロップが切断される。クロップカット量
は、頭尾部の不揃いな形状を切捨てることのできる前記
標準切断長さ、250mmである。
【0022】前述のように、スラブの一方および他方の
切断面には加熱前に酸化防止剤が塗布される。この処理
が行われるのは、本発明者らの次のような知見に基づく
ものである。図6は、スラブの切断面に酸化防止剤を塗
布しないで加熱した場合における加熱後のスラブ切断面
近傍の光学顕微鏡組織を示す模式図である。図6の検鏡
サンプルは、図2のサンプル採取方法によって採取した
ものであり、図3の検鏡サンプルと対応するものであ
る。したがって、図6の右側の上下に延びる領域はスラ
ブの切断面を表す。図6から、スラブの切断面には加熱
によって酸化スケール33が形成されていること、オー
ステナイト粒界には粒界に沿って延びる酸化相34が形
成されていることなどが判る。前述のようにオーステナ
イト粒界にはCu,Bなどがミクロ偏析によって富化し
ており、加熱温度が1230℃と高温であるので、加熱
時にはCu,Bの富化相は半溶融状態を呈する。したが
って、加熱時におけるオーステナイト粒界の酸素の拡散
が速くなり、前記酸化相34は切断面からスラブ内部に
向かって急速に、かつ深く進行する。
【0023】図7は、スラブの切断面に酸化防止剤を塗
布しないで加熱した場合における加熱後、粗熱間圧延後
および仕上げ熱間圧延後の各鋼材を長手方向の側面から
見た断面図である。したがって、図7の上下方向は板厚
方向を表す。加熱後には、図7(1)に示すようにスラ
ブの一方および他方の切断面15にスラブの長手方向内
方へ延びる酸化相34が形成される。粗熱間圧延後に
は、図7(2)に示すように粗熱間圧延材36の頭部3
7および尾部38にクラック39の発生が認められる。
このクラック39は、粗熱間圧延時における含銅ステン
レス鋼材と前記酸化相34との変形能の差に基づいて発
生するものである。また、前記頭部37および尾部38
は、第1位置40および第2位置41においてそれぞれ
切断される。このクロップの切断によって、前記クラッ
ク39の長さが短いときには、前記クラック39は前記
尾部38におけるようにクロップとともに切捨てられ
る。これに対して、前記クラック39の長さが長いとき
には、クラック39は前記頭部37におけるようにクロ
ップとともに切捨てられないで残存する。
【0024】仕上げ熱間圧延後には、図7(3)に示す
ように仕上げ熱間圧延材43の頭部に2枚割れ44の発
生が認められる。2枚割れ44は、前記粗熱間圧延材3
6に残存しているクラック39が仕上げ熱間圧延によっ
て圧延方向に延ばされたものである。したがって、前記
2枚割れ44の長さは粗熱間圧延材36と仕上げ熱間圧
延材43との板厚比、すなわち圧延比に基づいて定ま
る。しかしながら、仕上げ熱間圧延材43の頭部に発生
した2枚割れ44の長さは、前記圧延比に基づく長さよ
りも長く形成される。これは、仕上げ熱間圧延材43の
頭部においては、前記クラック39内に存在する空気が
仕上げ熱間圧延によって閉込められ、高圧に圧縮された
空気が圧延方向下流側にクラックを進展させるからであ
る。これに対して、仕上げ熱間圧延材43の尾部におい
ては、前記クラックが残存していても前記クラック39
内に存在する空気が圧延方向下流側に放出されるので、
2枚割れ44の長さは前記圧延比に基づく長さに延ばさ
れる。
【0025】このように、スラブの切断面に酸化防止剤
を塗布しないで加熱した場合には、Cu,Bなどのミク
ロ偏析によって酸化しやすくなっているオーステナイト
粒界において酸化が深く進行するので、熱間圧延時に2
枚割れが発生する。したがって、2枚割れを防止するに
は、オーステナイト粒界の酸化を抑制する必要があり、
それにはスラブの切断面に酸化防止剤を塗布することが
有効である。前述のように、本実施の形態においてスラ
ブの切断面に酸化防止剤が塗布されるのは、以上の理由
によるものである。
【0026】本実施の形態では、酸化防止剤としてMg
O系酸化防止剤を用いることが好ましく、さらにSiC
系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。この理由は
次の通りである。含銅ステンレス鋼から成るスラブの一
方および他方の切断面にSiC系酸化防止剤およびMg
O系酸化防止剤を塗布し、酸化防止剤を塗布しないスラ
ブとともに加熱炉に装入して加熱温度:1300℃,加
熱時間:1hr,雰囲気:大気の条件で熱処理を行っ
た。熱処理後、図2に示す方法で検鏡サンプルを採取
し、光学顕微鏡組織の観察を行った。表1に、SiC系
およびMgO系酸化防止剤の成分組成をそれぞれ示す。
【0027】
【表1】
【0028】MgO系酸化防止剤は、MgOを主成分と
して含み、さらにAlなどが含まれる。SiC系酸化防
止剤は、SiCを主成分として含み、さらにCr23
よびB23などが含まれる。SiC系酸化防止剤の溶融
開始温度は、900℃であり、加熱温度1200〜13
00℃においては半溶融状態である。酸化防止剤は、刷
毛によって3層に塗布され、総塗布厚さは0.8mmで
ある。
【0029】表2に各検鏡サンプルの光学顕微鏡組織の
観察結果を示す。表2には、酸化の程度を表す測定値、
すなわち平均酸化深さと、最大酸化深さとが示されてい
る。
【0030】
【表2】
【0031】表2から、酸化防止剤を塗布したスラブは
無塗布スラブに比べて酸化が大幅に抑制されること、S
iC系酸化防止剤を塗布したスラブは、MgO系酸化防
止剤を塗布したスラブに比べて酸化がさらに抑制される
ことが判る。
【0032】このように、本実施の形態は含銅ステンレ
ス鋼から成るスラブの切断面に酸化防止剤を塗布した
後、スラブを加熱するように構成されているので、加熱
時におけるCu,Bなどのミクロ偏析によって酸化しや
すくなっているオーステナイト粒界の酸化を抑制するこ
とができる。したがって、変形能の小さい酸化領域が減
少し、熱間圧延時における2枚割れの発生を防止するこ
とができる。またCuが適正量含有されているので、優
れた抗菌性を発揮することができる。さらにBが適正量
含有されているので、熱間加工性が改善され、耳割れの
発生を防止することができる。
【0033】以上述べたように、本実施の形態は銅含有
オーステナイト系熱間圧延ステンレス鋼帯の製造方法に
関するものである。これに対して、銅含有オーステナイ
ト系冷間圧延ステンレス鋼帯は、次のように製造するこ
とができる。すなわち、銅含有オーステナイト系冷間圧
延ステンレス鋼帯を製造するときには、本実施の形態の
熱間圧延に引続いて、焼鈍酸洗−冷間圧延−焼鈍酸洗−
精整から成る通常の一連の製造工程を付加して製造して
もよく、前記特開平9−176800号公報における熱
処理を施した後、前記通常の一連の製造工程を付加して
製造してもよい。また本実施の形態では、連続鋳造によ
ってスラブの製造が行われているけれども、それに代わ
って含銅ステンレス鋼の鋼塊を製造し、鋼塊を分塊圧延
することによってスラブを製造するようにしてもよい。
さらに、酸化防止剤は刷毛によってスラブ切断面に塗布
されているけれども、酸化防止剤を噴射することによっ
てスラブの切断面を被覆するように構成してもよい。
【0034】本発明の第2の実施の形態として、銅含有
オーステナイト系ステンレス鋼がC:0.1重量%以
下,Si:2重量%以下,Mn:5重量%以下,Cr:
10〜30重量%,Ni:5〜15重量%,Cu:1.
0〜5.0重量%を含むように構成してもよい。これ
は、前記第1の実施の形態からBを除いた成分構成であ
る。本実施の形態のその他の構成は、前記第1の実施の
形態と同一である。本実施の形態は、前記第1の実施の
形態と同様に優れた抗菌性を有しており、熱間圧延時に
おける2枚割れの発生を防止することができる。
【0035】(実施例)銅含有オーステナイト系ステン
レス鋼から成るスラブの一方および他方の切断面に酸化
防止剤を塗布して加熱する発明例と、酸化防止剤を塗布
しないで加熱を行う比較例とについて、熱間圧延時の2
枚割れ発生率の比較を行った。発明例は、図1に示す製
造工程で製造を行い、比較例は図1の製造工程のうち酸
化防止剤塗布工程を除いた製造工程で製造を行った。銅
含有オーステナイト系ステンレス鋼の成分は、C:0.
037%,Si:0.62%,Mn:1.77%,N
i:9.33%,Cr:18.07%,Cu:3.75
%,B:0.007%であった。発明例の酸化防止剤
は、表1に示すSiC系酸化防止剤を用いた。熱間圧延
工程における仕上げ熱間圧延前のクロップカット量は、
発明例および比較例とも標準切断量の250mmであっ
た。図8に発明例と比較例との2枚割れ発生率を対比し
て示す。図8から、発明例の2枚割れ発生率は0%であ
り、比較例に比べて2枚割れ発生率が大幅に低下するこ
とが判る。
【0036】このように本発明に従えば、標準のクロッ
プカット量のもとで、熱間圧延時における2枚割れの発
生を確実に防止することができる。したがって、含銅熱
間圧延ステンレス鋼帯の歩留まりが向上する。またクロ
ップカット量が標準であるので、クロップ切断作業を繰
返して行う必要がない。したがって熱間圧延の能率およ
び生産性が大幅に向上する。
【0037】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の本発明によ
れば、銅含有オーステナイト系ステンレス鋼スラブの切
断面を酸化防止剤で被覆した後、スラブの加熱が行われ
るので、加熱時におけるオーステナイト粒界の酸化が抑
制され、熱間圧延時における2枚割れの発生が防止され
る。したがって、銅含有オーステナイト系ステンレス鋼
帯の歩留まりが向上する。
【0038】また請求項2記載の本発明によれば、銅含
有オーステナイト系ステンレス鋼には、硼素が適正量含
まれているので、熱間加工性が向上する。これによっ
て、熱間圧延時における耳割れの発生を防止することが
できる。
【0039】また請求項3記載の本発明によれば、酸化
防止剤には炭化珪素が主成分として含まれているので、
スラブのオーステナイト粒界の酸化を効果的に抑制する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である抗菌性の優れ
た銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造工程を
示す工程図である。
【図2】光学顕微鏡用サンプルの採取方法を示す模式図
である。
【図3】加熱前のスラブの光学顕微鏡組織を示す模式図
である。
【図4】加熱前のスラブのマクロ偏析領域を示す模式図
である。
【図5】熱間圧延設備の構成を簡略化して示す側面図で
ある。
【図6】スラブの切断面に酸化防止剤を塗布しないで加
熱した場合における加熱後のスラブ切断面近傍の光学顕
微鏡組織を示す模式図である。
【図7】スラブの切断面に酸化防止剤を塗布しないで加
熱した場合における加熱後、粗熱間圧延後および仕上げ
熱間圧延後の各鋼材を長手方向の側面から見た断面図で
ある。
【図8】発明例および比較例の2枚割れ発生率を対比し
て示すグラフである。
【符号の説明】
1 溶製 2 連続鋳造 3 疵取り 4 酸化防止剤塗布 5 加熱 6 熱間圧延 14 光学顕微鏡用サンプル 15 切断面 26 粗圧延機 27 クロップシヤ 28 仕上げ圧延機 30 テンションリール 33 酸化スケール 34 酸化相 44 2枚割れ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅含有オーステナイト系ステンレス鋼ス
    ラブを予め定める長さに切断し、切断されたスラブを加
    熱して、熱間圧延する銅含有オーステナイト系ステンレ
    ス鋼帯の製造方法において、 銅含有オーステナイト系ステンレス鋼には、銅が1.0
    〜5.0重量%含まれ、スラブの一方および他方の切断
    面を、加熱前に酸化防止剤で被覆することを特徴とする
    銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記銅含有オーステナイト系ステンレス
    鋼は、硼素:0.004〜0.05重量%を含むことを
    特徴とする請求項1記載の銅含有オーステナイト系ステ
    ンレス鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化防止剤は、炭化珪素を主成分と
    して含むことを特徴とする請求項1または2記載の銅含
    有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法。
JP7792698A 1998-03-25 1998-03-25 銅含有オーステナイト系ステンレス鋼帯の製造方法 Pending JPH11277104A (ja)

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