【発明の詳細な説明】
ヒトの黄斑変性を治療するための純粋なゼアキサンチンの
3R−3'R立体異性体発明の背景
本発明は、生化学の分野に属し、そしてゼアキサンチン(ZXと略す)と呼ば
れる黄色ピグメントのある種の異性体に関する。医薬又はビタミンとしてヒトに
投与したとき、このピグメントは、網膜を損ない、老人の失明の主な原因となる
黄斑変性と呼ばれる病気を治療し又は予防することができる。
網膜は眼球の奥に存在する組織である。 網膜は極端に複雑であって、1ダー
スの異なった層を有する。これについては、Gittinger 1988,and Vaughn and As
bury 1992(完全引用は末尾参照)などの多くの医学教科書に記載されている。
黄斑と呼ばれる特殊な円形の領域が網膜の中心に存在し、ヒトで直径が約1−
1.5mmである。黄斑は網膜の他の部分と異なる2つの特徴がある。第一に、
黄斑は桿体が比較的少なく、その光受容体の大部分は錐体形をしている(斑点の
中心そのものに存在する窩(fovea)には、桿体は全く存在しない)。第二に、
黄斑は、ルテインおよびゼアキサンチンと呼ばれる2種のピグメントに因る顕著
な黄色を有している。両者は“カロテノイド”と呼ばれる分子群に属している。
これらのカロテノイドピグメントの化学は、黄斑変性の概要の次に後記する。黄斑変性
“黄斑変性”は、網膜の中心部における黄色斑領域での網膜細胞または光受容
錐体に対する進行性障害を含む状態を意味する。これについては、Taylor 1993,
Gittinger 1988,and Vaughan and Asbury 1992などの文献および教科書に記載
されている。
黄斑変性には数種のタイプがある。最も普通のタイプは、“年齢関連黄斑変性
”と言われるもので、通常AMD(いくつかの文献ではARMD)と略号される
。AMDは視力障害を引き起こすことがあり、それは僅かな視力低下から盲目に
ま
で至る。
2種のAMDがあり、しばしば“ウエット”型および“ドライ”型と称せられ
る。ウエット型は毛細管および他の血管が網膜で攻撃的な成長をなすことを含み
、血管が網膜層の固有の組織を崩壊あるいは破壊するまでに至る。この型のAM
Dは、新たに形成する血管を切除するレーザーの使用により治療できるが、レー
ザー処置は暫時、血管の成長を遅らすに過ぎないし、ほぼ全視力の終局的喪失を
通常は阻止できない。ウエットAMDはほとんど常に最後には全盲またはほぼ全
盲に導く。ウエット型はただ、AMD患者の約5−10%である。
いま一つの型は“ドライ”AMDと呼ばれる。これは全例の少なくとも90%
で起きるので、しばしば単にAMDと言われる。この型のAMDは通常、全盲に
まで至らないが、患者の視力に重い障害をもたらし、よく知ったもの、例えば友
人あるいは親戚の顔が分からなく、または識別できなくする。このように、この
AMDは、しばしば機能的盲目をもたらし、運転あるいは公の場所の歩行をでき
なくし、また通常の活動を不可能にする。
症候の一つとして黄斑変性を有する種々の疾患もある。それには、スターガル
ツ(Stargardt)病、ベスト(Best)病、バッテン(Batten)病、スジョグレン
−ラルソン(Sjogren-Larsson)症候群、錐体−桿体ジストロフィー、羊セロイ
ド・リポフスチン症が挙げられる。これらについて記載した文献としてDorey et
al 1993 がある。さらに、リソソーム貯蔵問題(タイ−サッシュ(Tay-Sach)
病など)または進行性神経細胞変性(アルツハイマー病など)を有する他の疾患
も黄斑変性に相関する。
これらの疾患の多くは、家族継承があることから明らかなように、遺伝素因を
有している。これらの疾患を起こす遺伝子のいくつかは単離されており、遺伝子
スクリーニング試験で欠陥遺伝子の保持者が分かる。遺伝子試験または家族歴か
ら、かかる遺伝子を有し、あるいは有すると思われる者は、黄斑変性になる高い
危険性がある。
視力を徐々に奪うことで、AMDは患者に非常な苦痛をもたらしている。これ
は、生産性の喪失および関係者の重い負担において年に数十億ドルを費やしてい
る。関係者には、その家族、保険業者、社会福祉機関はもちろんのこと、盲目あ
るいは重い視力障害に苦しむ者に医療介護および他の援助を提供すべき、あるい
は手助けをする関係者が含まれる。
AMDに因る問題からして、科学者および医師は、数十年にわたって、黄斑変
性による盲目および他の視力消失を治療あるいは予防する方法を探し求めて来た
。しかし、半世紀以上に及ぶすべての努力にもかかわらず、今日でも有効な治療
法が見つかっていない。診断:ドルセンおよびリポフスチン
黄斑変性は網膜の特殊な撮影により通常診断される。ひとつの診断方法では、
医師が患者に蛍光剤を注射し、体内を循環する時間をおいて、アンギオグラムと
言う網膜の拡大撮影を行う。次いで、映像を解析して、2種の細胞破片のいずれ
か、あるいは両者の存在および濃度を測定する。
細胞破片の一つはドルセンとよばれ、数十年にわたって知られ、研究されてき
た。それには二つの異なる型がある。少量のハード・ドルセン(直径63μm以
下の小粒子)が40歳以上のすべての者の眼に常に存在している。異常なレベル
で存在しない限り、ハード・ドルセンは網膜の障害を示さない。
一方、多量の大きいソフト・ドルセン(ウエット・ドルセンとも言う)の沈着
は、実質的な網膜障害が生じているか、始まっていることを示している。なぜな
ら、ソフト・ドルセンの大きい斑点群は、網膜層の破壊あるいは組織崩壊を起こ
し、そして網膜細胞が血液から適当な栄養を摂取するのを阻害し得るからである
。網膜に顕著な量のソフト・ドルセンを含有する患者は黄斑変性に罹患している
と、通常考えられる。
黄斑変性の患者に通常存在する他の型の網膜破片は、リポフスチンと称せられ
る。リポフスチンとAMDとの相関関係はやっと最近に明らかになった(すなわ
ち、Weiter et al 1988,and Dorey et al 1993)。カロテノイド化学
「カロテノイド」の用語は大きなクラスの分子群に関し;600以上の天然の
カロテノイドが同定されている。これらの分子は、以下に示す幾つかの特長を持
っ
ている:
1.カロテノイドは、5個炭素の分子であるイソプレン分子を連結す
ることにより産生される。この建造ブロックが5個の炭素原子を含んでいるので
、大概のカロテノイドは5個の炭素原子の多量体を含んでいる。
2.カロテノイドは多数の不飽和結合を有する。これは、それらにス
ペクトルの青色及びほぼ紫外領域で高エネルギー光波を吸収させる。
3.カロテノイドはスペクトルの青色及びほとんど紫外領域の波長を
吸収するが、スペクトルの他の領域の長い波長は吸収しないので、カロテノイド
は通常、黄色、オレンジ色、褐色又は赤色を有する。「カロテノイド」の名称は
ニンジンに由来する;初めて知られたカロテノイドはニンジンにオレンジ色を与
えるピグメントとして同定された。溶液中のカロテノイドによって生じる色彩は
、濃度および他の化合物の存在などの様々な因子に依存する。
4.カロテノイドは“共役”二重結合を有する。この用語は、二重結
合が一重結合と互い違いになっており、鎖中の各炭素原子は1個の他の炭素原子
と二重結合するが、いずれの炭素も2個の他の炭素原子と二重結合しないことを
示す。この配置は、β−カロテン、ZXおよびルテインの構造を表す図1を見れ
ば理解できる。
異なるカロテノイドは異なった程度の共役を有し、一般的により高い共役の分
子は高エネルギー光線照射による“光毒性”障害に対して大きい保護を提供する
。例えば、図1に示される3種のカロテノイドにおいて、各分子の完全直鎖部分
は交互に二重結合及び単結合と共役する。β−カロテノイドおよびZXでは、共
役は両端環の第一結合にまで伸びる。対照的に、ルテインの一方の末端の環にお
ける二重結合は完全な共役のための適当な配置を持たないので、ルテインはより
低い共役程度である。ZXとルテインの唯一の差異は、末端環の一方(だが両方
でない)における二重結合の位置である。
カロテノイドは青色及びほぼ紫外光線の潜在的に有害なエネルギーを吸収する
ように設計され、選択されている(進化を通じて)ので、自然界で保護ピグメン
トとして使用される。大概の植物の機能の目標の一つは、青色、紫外、ほぼ紫外
光線の照射によって引き起こされる細胞及びDNAの障害を最小にしながら、出来
るだけ多くの日光を吸収する必要があるので、カロテノイドは植物に広範に存在
している。紫外線照射の植物に対する障害は大きな問題であって、カロテノイド
はそれを最小にするのを助ける。
カロテノイド分子は光毒性に対して細胞及びDNAを保護するのに理想的である
ので、動物も又カロテノイドを光保護ピグメントとして利用すべく経路(進化を
通じて)を獲得している。動物はその体内でカロテノイドを合成出来ないので、
植物源からカロテノイド(もしくはカロテノイド先駆体)を摂取しなければなら
ない。β−カロテンは一例である;ほ乳類の細胞はそれを合成できないので、そ
れを植物源すなわち食物から取得しなければならない。ほ乳類の体内に入ると、
β−カロテンは、それを二等分することによって得られるビタミンA(レチノー
ル)などの他の分子に変換される。
カロテノイドは二つの主なクラス、カロテンとキサントフィルに分けられる。
カロテンは酸素分子を含んでいない;炭素及び水素のみから形成される真の炭化
水素である。一方、キサントフイル(ZXやルテインなど)は酸素原子を含む。
図1は、ZXの左右の末端環における炭素原子の番号づけを示す。慣習により
、左末端環の炭素原子は1から6までの番号がつくが、右末端環の炭素原子は3
'炭素(「3プライム」と発音される)など「プライム」番号によって言及され
る。ZXは左右の末端に関して完全にシンメトリーであるので、「左」及び「右
」の用語は単に慣習であり、議論を単純化するために用いられる。しかしながら
、注意すべきは、ルテインはシンメトリーでない;「左」環の二重結合の位置は
「右」環の二重結合の配置と同じではない。
ZXは、その両端の#3の炭化水素に2個のヒドロキシ(−0H)基を加える
ことによって形成されるので、化学名はジヒドロキシ−カロテンである;をカロ
テン−ジオールと呼ぶ化学者もいる。この分子は、トウモロコシにその黄色を与
えるピグメントとして同定されたので、名称“ゼアキサンチン”が与えられた;
トウモロコシの科学名はゼア・メイズ(Zea mays)である。
上で示したように、600個以上の天然カロテノイドが同定されている。数十
種は生化学及び商業で重要である。ZX及びルテインは、ほ乳類及び大概の他の
動物の網膜に存在するので、本発明において特に重要である。
ルテインは、買物客や消費者の嗜好にあわせて、チキンの皮膚や卵黄に黄色を
一層与えるために、チキンへの餌に広く入れられるので(主にマリーゴールドか
らの植物抽出物の形態で)、商業的に重要である。
ZXは、同じ効果を有し、ルテインよりも強力であるが、ZX源は家禽飼料の
用途には高価過ぎる。米国特許5,308,759及び5,427,783号(ギア
ハルト(Gierhardt)よりの譲受人アップライド・フード・バイオテクノロジー;
本件の出願人)は、ZXが動物飼料の用途のためには高価過ぎるという問題に取
り組むことを意図していた。これらの特許は、着色の目的のために家禽及び魚に
ZXを与えることができるように、商業的な量でゼオキサンチンを生産するため
に細菌を用いることに関する。
いくつかのカロテノイドは、植物以外に、ある種のバクテリアによっても合成
される。これらのバクテリアは、直接日光に晒される場所において生育し、その
カロテノイドは植物におけると同様の光線保護の役割を果たす。バクテリアのカ
ルチノイドについて記載した文献及び特許としては、マックダモットら(McDer
mott et al)1972年及び米国特許5,429,939(Misawa et al)があり、
さらに両者に引用された他の文献がある。
米国特許5,429,939(Misawa et al)は、ZXを含む種々のカロテノイ
ドの生合成に関与する酵素をコードする多数の遺伝子の DNA 配列を記載する。
ZXの創造における各主要遺伝子(crtE,crtB,crtI,crtYお
よびcrtZを含む)の役割についても記載されている。これらの遺伝子含有プ
ラスミドを含む細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(エル
ウイニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)ATCC 19321やエルウイニ
ア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)ATCC 39368など)及び微工研(
例えば、イー・コーリ(E.coli)FERM BP2377)に寄託されている。ゼアキサンチン立体化学及び異性体
カロテノイド化学の重要な一面は「立体化学」及び「立体異性体」である。こ
の事項は、有機化学に関する大学教科書のすべてに説明されている。
有機分子が4個の相違する原子または分子基と結合した炭素原子を有している
と、この炭素原子は“キラル”炭素原子と呼ばれる。
キラル炭素原子が有機分子中に存在するときはいつでも、そのキラル炭素原子
に結合する4個の異なった基は、2種の空間配置のいずれにも配置され得る。こ
の相違する配置を立体異性体と言う。これら立体異性体の一つが「右手の方法」
で偏光を回転させ、一方、今一つの立体異性体は「左手の方法」で偏光を回転さ
せる。右手の回転を引き起こす異性体は、R立体異性体とよばれる(D立体異性
体とも呼ばれる)。左手の回転を引き起こす異性体は、S立体異性体と呼ばれる
(L立体異性体とも呼ばれる)。
ZXには#3および#3'炭素原子の二つがキラルであるので、ZXは4個の
可能な立体異性体を有する。3R−3R'異性体において、#3及び#3'キラル
炭素原子の両者はR立体配置をとる。3S−3'S異性体において、#3及び#
3'キラル炭素原子の両者はL立体配置をとる。便宜的に、これらの両立体異性
体は、ここではR−R異性体及びS−S異性体と称する。
第3及び第4の異性体は二つの「混合」又は「メソ」(一方はR、他方はS)
の異性体である:3R−3'S異性体及び3S−3'R異性体である。ZXは中点
について完全にシンメトリであるので、これらの両異性体は全ての点で同一であ
り;もし紙面上で3R−3'S異性体を描き、単に紙面を回転させれば、3S−
3'R異性体となる。実際に、単一の「メソ」異性体は、S−RおよびR−S異
性体の両方により形成される。
ZXを合成するために標準的な化学手法を用いると、4種の可能な異性体はそ
れぞれ全体の約25%存在する。しかし、S−RとR−S異性体は実際には同じ
であるので、その“メソ”異性体は全体の50%であり、一方、R−RおよびS
−S異性体はそれぞれ約25%存在する。3種の立体異性体すべての混合物は“
ラセミ”混合物と呼ばれる。
しかし、網膜組織におけるカロテノイドの細胞及び酵素の特異性は極めて厳密
であり、相違する異性体および立体異性体で互換性はない。ルテインとZXとは
、
通常の化学用語においては互いに異性体であると見なされうるものであるが(そ
れらは同数の炭素、水素、及び酸素原子を有しているので)、完全に相違する独
特の分子として網膜細胞により扱われる。
生物学的要因からして、ここで関連する唯一の異性体は立体異性体である。こ
こで用いられるZXの「異性体」は、特定のZXの立体異性体を意味し、ルテイ
ンを含まない。ルテインとZXは、まったく相違するカロテノイドと考える。
カロテノイドにおける立体異性体上の差異は、小さくて、微妙で、ほとんどと
るに足りないと見られるかもしれないが、網膜組織に達するときには、事実上極
めて重要である。明らかに、ヒトの網膜細胞によって適当に取り込まれ、用いら
れる唯一のZX立体異性体は、R−R異性体(すなわち、3R−3'R立体異性
体)である。
網膜組織中に微量のメソ異性体が見つけられたと言う報告がある。しかしなが
ら、この微量は、ルテイン先駆体からメソ−ゼアキサンチンの生成を導く、何ら
かの条件下に同時に生じうる、ある分子転換に恐らく由来するものであろう(ボ
ン、ランドラム、ら(Bone,Landrum,et al)、1993年及び1994年)。
研究室において、キラル・カラム・クロマトグラフィー(参照、例えば、ボー
ン、ランドラムら(Bone,Landrum,et al)、1993年)又はサーキュラー二色
性分析(参照、例えば、ブリトン(Britton)、1994年)などの方法を用いて
、ZXの異性体をそれぞれ識別できる。黄斑におけるZX及びルテイン
1970年までに光毒性に対する植物の保護におけるカロテノイドの役割は、
よく知られていた。また、カロテノイドが動物組織中に存在すること、及び動物
はカロテノイドを合成することができないので、動物組織中の全てのカロテノイ
ドは本来植物源に由来することも、知られていた。その情報に基づき、種々の文
献で、動物及び植物のカロテノイドの類似性が指摘され、カロテノイドは動物に
おける光毒性に対して保護すると、結論されている。
動物におけるカロテノイドの光保護の役割が認められた後に、研究者は網膜に
おけるカロテノイドの化学及び役割を研究し始めた。研究の一つの方向は、カロ
テノイドを含まない穀物や種子(マイロ種子など)から調製されたカロテノイド
を全く含まない餌を実験動物に与える試験を行った。その結果、カロテノイドが
与えられない実験動物の網膜では黄色の黄斑領域が成長しないで、これらの網膜
に異常に高い量のソフト・ドルセンが含まれ、網膜障害を示すことが明らかにな
った。(マリナウら(Malinow et al)1980年、キルシュフェルド(Kirschfeld
)1982年、ハムら(Ham et al)1984年及びスノダリら(Snodderly et al)
1984年)。これらの知見から、研究者は、カロテノイドが健全な網膜に必須
と思われることを示唆した。これらの研究者は実際に、人参や葉の多い緑色野菜
が目によいものを含んでいるとの古くからの知恵を支持する分子を探し始めた。
しかしながら、科学者達は、網膜中の黄色ピグメントが最終の形で直接摂取しな
ければならないかどうか、又はそれらがβ−カロテンもしくはリコペンなどの他
の前駆体を用いて動物細胞中に合成できるかどうかを、なお知らなかった。
ルテインは黄斑中の黄色ピグメントの一つとして同定された(ウオルド(Wald)
1949年)。ZXは相当のちまで他の黄斑ピグメントとしては同定されなかっ
た(Bone et al、1985)。1980年代中頃および後期までに黄斑について知られ
ていることをまとめた文献として、Handelman and Dratz 1986,Werner et al 1
987,Pease et al 1987,Haegerstrom-Portnoy 1988,and Handelman et al 1988
がある。とりわけ、これらの文献は、ZX(それは十分に共役し、それ故に、光
エネルギーによって引き起こされる損傷に対して、ルテインよりも何らかの優れ
た保護を提供する)が黄斑の中心での小さな領域の窩(fovea)における優勢なピ
グメントであることを、確立した。窩から同心的に離れ黄斑の外周に向かうに従
って、ZXの量は徐々に減少し、ルテインの量が増加し、黄斑外周末梢ではルテ
インが圧倒的な黄色ピグメントである。網膜の老化及び損傷の様々な局面に向け
て、さらに網膜における保護剤としてカロテノイドに特に焦点を合わせている最
近の文献としては、スペルダトら(Sperduto et al)1990年、ゲルスタ(Gerst
er)1991年、シャルフ(Schalch)1992年及びセドンら(Seddon et al)19
94年が挙げられる。
要約すると、ルテイン及びZXが黄斑におけるピグメントであることは10年
以上前から知られており、これら二つのピグメントが光毒性による障害に対して
黄斑を保護することは科学者により推測されていた。
しかしながら、これらの発見及び示唆が全て10年以上前になされていたと言
う事実にもかかわらず、未だ誰も、黄斑変性の段階的な進行を有意義に予防又は
遅滞させる(単に逆戻りさせる)ことに有効である、どの様な型の医薬も、どの
様な栄養剤も、ダイエット補助剤も、その他の型の治療形態も開発していない。
β−カロテン、ビタミンA、及びビタミンEは全て、網膜組織の保護を助ける
につき、何らかの程度の有効な効果を持つことが知られているので、前の文は幾
分条件をつける必要がある(参照、例えば、米国特許5,310,764、バラノウイツ
ら(Baranowitz et al)1994年及び以下に引用する眼病ケース制御研究グルー
プによる二つの論文)。これらの特許及び論文は、β−カロテン、ビタミンA、
及びビタミンEが、黄斑変性に関連した障害を予防もしくは減少せしめるのに検
出できる作用を持ち得ることを主張または示唆してきた。
その様な主張は、カロテノイド、ビタミンA及びビタミンEの一般的な酸化作
用からして正しいであろう。しかしながら、網膜においてβ−カロテン、ビタミ
ンA、及びビタミンEによりもたらされた利益は極めて制限的であって、本当に
有効な治療の程度に達していないことも、残念ながら真実である。全ての実際的
な目的において、黄斑変性は、予防できない、阻止できない、回復できないもの
である。また広範なスペクトルの抗酸化剤(β−カロテン、ビタミンA、及びビ
タミンEなど)は単なる緩和策である。本当に有効であるものは何も入手出来な
いので、これらのビタミン類は、黄斑変性により引き起こされた容赦のない障害
を遅くする試みのために用いられてきた(極めて限定的な、不満足な成功である)
。
先行技術の問題として、同じく注意すべきは、多くの健康食品店が目及び視力
に有益であるとラベルしたカロテノイド製剤を販売していることである。β−カ
ロテン及びビタミンAが一般的な抗酸化剤として目に有益であると知られている
(上記の通り)ので、カロテノイド合剤についての該ラベルは理にかなっている
のかもしれない。しかしながら、市販されているカロテノイド合剤は極端に少量
の“痕跡”以上にはZXを含んでいない。健康食品店で販売されているカロテノ
イド合剤中の大部分のカロテノイドは非ZXカロテノイド(主にβ−カロテン及
びビタミンA)である。
幾つかの主要な政府機関及び研究財団の現状および研究目標にも注意を払うべ
き価値がある。米国において、NIH(ナショナル・インスティテュート・オブ
・ヘルス)(NEI(ナショナル・アイ・インスティテュート)及びナショナル
・アドバイザリー・カウンスルを経由して行動)は、最新の二つのレポートを発
行した。これら二つのレポートは「視力研究:国家計画1994−1998」,NIH Publication No.93-3186
(1994; 特に55−65頁参照)及び「年齢
に関連した眼病研究」NIH Publication No.93-2910(1993)である。両出版
及びそこに記載された研究プロジェクトは、AMDを治療するために最も期待で
きる化合物として、(ZXよりもむしろ)β−カロテンに焦点を当てている。出
願人の知る限りでは、そのテーマについてNEIの職員と議論がなされた後に、
NEIもナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルスと親密な関係にある他
の機関も、AMDの潜在的な治療法としてZXに関するいかなる研究にも資金を
出す気はないし、また最近に資金を出したことはなかった。一方、NIH及び税
金が使われている他の機関は、AMDを治療し、予防するため、最も有望な候補
薬剤としてβ−カロテンについての研究を行うために数百万ドルを当てている。
注目に値する他の研究グループは、「眼疾患症例コントロール試験グループ」
である。このグループは、「抗酸化剤事情及び新生血管の年齢に関連した黄斑変
性」、Arch.Ophthalmol.11:104-109(1993)及び「新生血管の年齢に関連した
黄斑変性の危険因子」、Arch.Ophthalmol.10:1701-1708(1992)と言う表題の
二つの論文を最近発表した。公式のNIHレポートにおけるように、これらの論
文は、いづれもAMDを治療するための薬剤としてZXの使用を教示または示唆
していない。この財団もまた、AMDを治療あるいは予防するための潜在的な薬
剤としてのZXの研究に基金を出していないし、あるいは出すのを拒絶してきた
。
同じく注目すべきことに、カロテノイドが特にガンを治療または予防する点(P
eto et al、1981)およびコレステロール生成を阻害し、さらに動脈内のプ
ラーク沈着を減少する点(Jialal et al 1991)に大きい興味がある。カロテノイ
ドの種々の生物学的活性を扱った膨大な科学文献があり、ルテイン及びZXを含
む、多数の重要なカロテノイドを合成する方法に大きな興味があった。しかしな
がら、過去数十年の全てのカロテノイド研究及び合成努力にもかかわらず、黄斑
変性を治療もしくは予防する有効な方法を誰も未だ報告していない。黄斑変性の
社会や犠牲者に与える巨大な費用および苦痛を考慮すると、それは、対処しなけ
ればならない大きな課題である。
従って、本発明の主題は、(1)黄斑変性に罹患していると診断された患者を
治療するための安全かつ有効な薬剤、及び(2)中年以降に黄斑変性になる危険
性を減少せしめることを願うすべての者により摂取され得る、ビタミン剤に匹敵
するような栄養補助剤を提供することであり、非常に重要な躍進をもたらす。ルテイン及びゼアキサンチンの合成:先行技術
先行技術にZXを製造する様々な方法が記載されている。これらの項目は二つ
の種類に分けられる:微生物が製造方法において重要な役割を演ずる発酵法;及
び純粋に化学反応が用いられる非発酵合成法。先行技術のほとんどは、ZXが、
肉の色を薄黒くして、肉をより魅力的なものにするために、家禽や魚のおける添
加物などとして、既知の目的のため用いられることを示唆している。しかしなが
ら、これらの努力はいずれも、商業的な量のZXを現実に製造したり、販売する
ことにまで至らなかった。
1995年10月現在で、精製した形で、又はZXを製剤重量の5%以上を含
む、半濃縮の形で、ZXを購入する唯一の方法は、ミリグラム量のZXを、アト
メルジック・ケミカルズ・コーポレイション(ニュウヨーク・ファルミングダー
ル)、スペクトラム・ケミカル・マニュファクチャリング・カンパニー(カルフ
ォルニア、ガーデナ)などの専門化学会社からの購入することを必要とする。所
望でないS−S異性体及びS−R異性体を含む合成ラセミ混合物として、これら
の専門メーカーから精製ZXの1995年の購入価格はmg当たり約$90〜約$
125であり、それはラセミ混合物のZXg当たり、約$100,000に相当
する。明らかに、これらのものは、その価格および望ましくなく、かつ危険なS
−
Sおよびメソ異性体からして、薬剤または栄養補助剤として使用する現実的価値
はなかった。本発明以前には、精製または半精製ゼアキサンチンはいかなる形態
においても一般に利用できなかった。
微生物発酵によるZXの製造を記載する先行技術の項目は、次の通りである:
(1)カーリントン及びグドウィン(Courington and Goodwin)1955年
は、フラボバクター属の微生物によるZXの製造を記載した最も早い既知文献で
ある。
(2)米国特許3,891,504(ショチャー及びウイス(Schocher &
Wiss)、1975年、ホフマン・ラロッシュへ譲渡)。この特許もフラボバクタ
ー細胞によるZXの製造を記載する。ZXを含む細胞はニワトリに与えられ、適
当な着色がもたらされた。
(3)米国特許3,841,967(ダセクら(Dasek et al)1974年、ネ
ッスルへ譲渡)および米国特許3,951,743(シェファードら(Shepherd et
al)1976年、同じくネッスルへ譲渡)。細菌によって製造されるZXの量を
増やすために使用できる方法及び栄養培地を記載。
(4)最近二つのさらなる特許(米国特許5,308,759及び5,427,783、とも
にギアハートにより発明され、本出願と同一譲受人であるアップライド・フード
・バイオテクノロジー・インク.へ譲渡)は、ミズーリ河から単離した細菌の菌
種(フラボバクテリウム・マルチボラム(Flavobacterium multivorum))を記載
する。これらのバクテリアは、相当量の他のカロテノイドを製造せずに、ZXを
製造することが発見された。このことは、家禽や魚の肉をより薄黒くするために
、重要である。なぜなら、カロテノイド類は互いに、動物が食した後に血中への
取り込みにおいて競合するからである。Gierhart により同定された F.multivo
rum 株からは他のカロテノイドが存在しないので、動物組織のためのピグメント
としてZXをより利用でき、従って、その効力および効果が増大する。
’759特許は、AFBのエフ・マルチフォルム(F.multivorum)菌を用いて
、ZXを製造する方法をクレームする。’783特許は、分割出願であるが、餌
混合物をクレームする。これらの両特許は家禽や魚の餌にZXを用いることに限
定
されており、ヒトを治療するためにZXを用いることについては、一言もふれて
いない。
ふたつのGierhart特許はいずれも、ZXの特殊な立体異性体に言及していな
い。その理由は、(1)出願時の1989年には、AFBの F.multivorum 細胞か
らつくられるZX異性体の状態が分かっていなかった、(2)家禽または魚の餌
としてZXを使用することに特許の関心があったので、相違する異性体に気をつ
けねばならない明白な理由はなかったことである。
AFBのF.multivorum 野生種はATCCに寄託され、ATCC受託番号5
5238を受けた。これらの細菌は、スフィンゴリピドと呼ばれる脂質の一種を
生成するので、ATCCは、これらの細菌をSpingobacterium multivorumとして
再分類し、この名前でカタログに掲載している。このカタログでの名称は、微生
物組織学の公式の指針であるBergy's Manual of Systematic Bacteriology(Int
ernational Journal of Systematic Bacteriology により追加され最新のものに
される)引用として現れていない。
標準的化学手段(微生物発酵を使用しないで)によりZXを合成するための様
々な努力が、過去20年にわたって報告されてきた(例えば、米国特許4,153,61
5,Saucy,1979; 4,952,716,Lukac et al,1990; 5,227,507,Lukac et al,19
93)。しかしながら、非発酵法には重大な欠点がある。それは、典型的に多数の
反応工程を要し、それぞれの工程は100%に達しない収率を示すので、多数工
程プロセスの終わりのZXの最終収率は比較的低い。さらに、化学合成は、通常
、酸化されたゼアキサンチン及び直鎖部分及び/又は末端環における1もしくは
2個以上の二重結合を失ったゼアキサンチン分子などの様々な転換生成物および
分解生成物と同様に、望ましくないS−S及びS−R立体異性体を生成する。
要約すると、本発明以前には、薬剤または栄養補助剤としてヒトに用いるのに
適した精製R−Rゼアキサンチン源は知られていなかった。
従って、本発明の一つの目的は、AFBのエフ・マルチヴォラム(F.multivoru
m)株(ATCCアクセス番号55238)及びその突然変異株が、検出できる量の
望ましくないS−SおよびS−R異性体なしに、唯一の検出できる異性体とし
てZXのR−R立体異性体を製造することを、開示することにある。
本発明の他の目的は、黄斑変性、とりわけ年齢と関連した黄斑変性を患ってい
ると診断された患者を治療する薬剤の製造に、AFBのエフ・マルチヴォラム(F
.multivoraum)(ATCCアクセス番号55238)からの細胞を利用する方法を
開示することである。
本発明の他の目的は、中高年における黄斑変性のおそれを減少させるため、ビ
タミン類に類似した形で、あるいはマーガリンなど食品への添加剤として、栄養
補助剤の製造に、AFBのエフ・マルチヴォラム(F.multivorum)株(ATCCア
クセス番号55238)からの細胞を利用する方法を開示することである。
本発明の第3の目的は、唯一もしくは極めて優勢な異性体としてR−R立体異
性体を含有するゼアキサンチン製剤を開示することであり、その処方は、網膜疾
患または変性を治療する薬剤として、あるいは老人における視力喪失の危険性を
減少せしめる栄養補助剤として、ヒトの経口摂取に適している。 これらの及び
他の目的は、下記の発明の要約及び発明の説明において一層明らかになるであろ
う。
発明の要約
本発明は、薬剤もしくは栄養補助剤としてヒトが摂取するのために、唯一もし
くは極めて優勢な立体異性体として、3R−3'R立体異性体(あるいはR−R異
性体またはR−Rゼアキサンチンともいう)を含むZX製剤を製造する方法を開
示する。ヒトの網膜の中心の黄斑細胞中に天然に存在する黄色ピグメントである
ZXは、青色及び近接した紫外の光線照射を吸収し、それにより光毒性障害から
黄斑細胞を保護する。望ましいR−R異性体のみを含むZX製剤は、フラヴォバ
クテリウム・マルチヴォラム(Flavobacterium multivorum)細胞の菌種(ATCC
アクセス番号55238)により生産される。これらの微生物は、検出できる量
の望ましくないS−S及びS−R立体異性体を生産しないし、またそれらは、経
口摂取後、栄養の吸収においてZXと競合するおそれのあるβ−カロテンやルテ
インなどの他のカロテノイドを、いかなる有意義な量でも生産しない。これらの
細菌による生産後、ZXは、溶媒抽出などの方法により精製され、さらに黄斑変
性の患者のための医療薬剤として、あるいは凡そ50歳あるいは60歳を越える
人々に多い年齢に関連した黄斑変性に罹患する危険性を減らしたいと思う者は誰
でも栄養補助剤として、経口で服用できる。簡便に摂取できる組成物として、(
1)植物性オイルなどの担体に混合したR−Rゼアキサンチンを含む防水性カプ
セル;(2)添加剤としてR−RZXを含む、様々な食品(例えば、マーガリン
、乳製品、シロップ、クッキーねり粉、激しい調理を要しない肉製品);及び(
3)スープ、サラダ、飲料、その他の食品に添加される粒状組成物などが開示さ
れる。図面の簡単な説明
図1は、β−カロテン、ルテイン及びゼアキサンチンの分子構造を描き、3種
のカロテノイド全ての構造及び末端環の番号付けシステムを示す。これらの構造
は先行技術によって知られている。
図2は、立体異性体として純粋な3R−3'Rゼアキサンチンを合成する微生
物により生産されるZXを発酵し、精製する主要な工程を描くフローチャートを
含む。好ましい態様についての説明
本発明は、黄斑変性すなわち視力障害をもたらし、失明に至るかも知れない疾
患症状を予防あるいは軽減するために、ヒトに投与される薬剤または栄養補助剤
を製造するための方法を開示する。ヒトに摂取されるゼアキサンチン製剤は、“
極めて圧倒的な”異性体としてZXの3R−3'R立体異性体を含有する。ここ
に定義するように、“極めて圧倒的な異性体”とは、製剤中に全ゼアキサンチン
製剤に対し少なくとも90%以上のR−R異性体を含有し、望ましくないS−S
またはS−R−異性体は10%以下であることを意味する。望ましくは、ヒトに
用いられる製剤は唯一の検出されるZXの異性体としてはR−R異性体のみを含
み、望ましくないS−SまたはS−R異性体は含有しないことである。かかる製
剤をここに開示する。
キラル・カラム・クロマトグラフィー解析(Bone et al.,1993に記載)を用い
て、Applied Food Biotechnology(AFB)により分離されたF.multivorum菌種(ATC
C accession number 55238)が、実施例のように醗酵せしめたときに、唯一の検
出できるZX異性体としてR−R異性体のみを産生することが最近に発見された
。実施例4に記載するように、Landrum教授の分析によると、この下F.multivorm
株からの細胞の醗酵によって産生されるZX製剤中には、S−S異性体もR−S
メソ異性体も検出されなかった。
ゼアキサンチンのR−R、R−SまたはS−S−異性体間における相違は、Z
X製剤が薬剤あるいは栄養補助剤としてヒトに投与される際には、非常に重要で
ある。なぜなら、ヒト網膜に天然に存在する唯一のZX異性体はR−R異性体で
あるからである。R−5およびS−S異性体の有意な量の摂取は、医学的観点か
ら非常に望ましくなくかつ危険であると考えられる。その理由は、(1)R−S
およびS−S異性体はヒト網膜には天然には生起しない。ただ例外的にルテイン
が網膜細胞中で変性したときに副産物として極めて少量で形成されるのみである
。(2)R−SおよびS−S異性体は網膜組織中で望ましいR−R異性体と競合
的に置き換わることがあり、重大な長期の細胞障害および医学的合併症をもたら
しかねない。
F.multivorum菌種の醗酵により製造されるZX製剤が立体異性的に純粋である
ことは、ZXを化学的に合成した後に立体異性体を分離することが非常に困難か
つ費用のかかるので、非常に価値がある。立体異性体の分離は小規模な実験室で
可能であるが、商業的な量については費用の点から避けるべきことである。AMD患者への処方薬としての使用
本発明の第1点は、開示のR−Rゼアキサンチン製剤を、黄斑変性であると診
断された患者あるいは症候または状態として黄斑変性をおこし得る疾患、例えば
スターガルツ病、ベスト病、バッテン病、ジョグレン−ラーソンシンドローム、
錐体−桿体ヂストロフィー、羊セロイド・リポフスチン沈着症、あるいはタイ−
ザッファ病などのリソソーム貯蔵病に罹患している患者を治療するために医師が
処方できる薬剤として調剤し、投与することである。
かかる治療において、ZX製剤は治療的レベルに達するのに充分な量のZXの
R−R異性体を下記するようにヒトへの投与に適した担体中および形態(カプセ
ルなど)で、含有すべきである。望ましい実施態様において、医学的処置のため
のZXは、カプセルまたは錠剤などの単位含量形態中に包装される。各用量は、
望ましくは少なくとも約1mgのR−Rゼアキサンチン製剤を含むべきであり、
よりよい医療効果のためには約3−10mgの範囲のゼアキサンチン製剤を含有
する。
本発明の第2点は、開示のR−Rゼアキサンチン製剤を予防薬として、上記し
た疾患のいずれかについて家族歴あるいは遺伝子診断によって、黄斑変性になる
可能性が高いと診断された患者に、調剤し投与することである。AMDの危険性
は高いが、まだ実際にはAMDになっていないような患者に対する投与において
は、その製剤単位含量は、例えば約0.1−2mgとより少ない含量である。
これらの含量は、ここでの開示を利用して商業的に合理的な費用で提供される
。油性液状担体中に25mg(またはそれ以下)を含有するカプセルは、溶媒抽
出工程と結合した微生物醗酵を用いて、商業的方法で製造される。高量を含有す
る粉末製剤は、実施例4記載の方法などの拡大精製を用いて、製造することがで
きる。ビタミンまたは栄養補助剤としての使用
本発明の第3の観点において、黄斑変性に現在は罹患していないが、後半に黄
斑変性になる危険性を低減しようとする者に用いるために、ZXはビタミンまた
は栄養補助剤または食品添加剤の形態で製造され、包装される。この目的のため
に摂取されるときは、適当な用量は、健康食品の店で通常的に販売されている粉
末中の量よりも実質的に多くなければならないが、AMDと診断された者に薬剤
としてZXが用いられるときよりも少量である。かかる用量は、毎日摂取される
用量として、約0.05−5mgの範囲であろう。例えば、0.05−1.0の用
量がR−Rゼアキサンチンが多種ビタミン錠またはカプセルの多くの有効成分の
1つであるときには、0.05−1.0の用量が適当であり、一方、より高用量を
望む者への店頭での販売には1−5mgの用量が提供され得る。
治療剤あるいは栄養補助剤のいずれで用いられても、ヒト用のZX製剤はZX
の唯一または“極めて圧倒的な立体異性体”としてR−R異性体を含有していな
ければならない。用語“極めて圧倒的な立体異性体”は混合物中に全ゼアキサン
チン製剤に対し少なくとも90%以上のR−R異性体を含有し、望ましくないS
−SまたはSR−異性体は10%以下の製剤について用いられる。
望ましくは、すべてヒト用の製剤においてR−R異性体が唯一の検出可能な異
性体であるべきである。このことは、本発明により、F.multivorum細菌ライン
がZXの唯一の検出可能な立体異性体としてR−R異性体のみを産出するので商
業的な量および合理的な費用において可能である。精製後に醗酵混合物中にS−
SまたはS−R異性体が存在していても、その量は少なくて、実施例4の方法に
より検出されない。
加うるに、多くの菌種と異なり、ここに記載のF.multivorum細胞はカロテノ
イドの混合物を産生しない。該細胞は唯一の検出可能なカロテノイドとしてR−
Rゼアキサンチンを産生する。このことは、食物の取り込みおよび組織沈着にお
いてZXが他のカロテノイドと競合するので、経口摂取後のZX取り込みおよび
網膜沈着を増大さすために、特に、黄斑変性と診断された病気の治療にZXを薬
剤として用いる際に、有用である。細菌醗酵による商業規模での製造
当業者がよく承知しているように、実験室で用いられた醗酵法を大きい製造操
作にすることは、費用がかかり、難しい。従って、出願人は、F.multivorum細
胞の商業的使用のための栄養素および方法を改善してきた。この改善された栄養
素および方法は、米国特許第5,308,759および5,427,783に記載さ
れた培地および条件に比して操作が簡単であり、ZXのg当たりで費用が非常に
低い。望ましい栄養素および条件は実施例1に記載される。
醗酵後、精製中のZXの変性を防止するために1以上の安定剤を細胞に加える
ことができる。細胞がまだ醗酵容器中にあり、殺菌または他の処置を始める前に
、安定剤を添加することができる。種々の可能と考えられる安定剤が出願人によ
って試験された。今日までに得られた最良の結果は実施例2に掲げる安定剤の併
用である。
安定剤を加えた後、ZXに影響を与えずに細菌を殺すために55℃まで25分
間で加熱して殺菌する。次いで、培養物を室温に冷し、十字流精密濾過などの機
械的手段により細胞液体を除去する。これによって細胞および固体の濃度が容量
で最初の約10%から約60−80%の濾過濃度に増加する。
F.multivorum細胞をそのままおよび生存状態で、生存または殺−しかし−損
傷微生物細胞を含む他の食品(チーズ、ヨーグルト、ビール等)と同様に、ヒト
の直接の摂取に供することも可能である。F.multivorum細胞には病原性は知ら
れていない。この細胞は冷水から分離されるものであり、冷水中で生存するのに
適しているので、人体内の温度ではうまく生存また繁殖できない。さらに、該細
胞はいかなる既知毒性成分も有していない。グラム陰性であり、グラム−陽性菌
を特徴ずける細胞壁構造を有していない。魚や鳥に細胞ペーストの形態で直接与
えたとき、細菌細胞は運搬体として非常に適しているようである。細胞が動物に
より消化されると、ZXが放出され、血流に吸収され、そして種々の組織(網膜
を含む)の適当な部位に沈着する。
従って、R−Rゼアキサンチンを含む無傷のF.multivorum細胞は、次の3形
態のいずれでも直接的なヒトの摂取に適し得る。(1)無傷の生存形態、(2)
殺菌または他の適当な処置後の無傷の死滅形態、(3)細菌細胞を殺し、その壁
を破壊して、細胞をむきだしにしてZXにより接近しやすくした製剤。これは、
超音波(高周波音波を用いて)、高圧、または粉砕の手段でなし得る。別法とし
て、細胞壁を破棄するような溶媒抽出方法を用いたときは、この手段は省略でき
る。
所望により、細胞製造手順に細胞水洗手順が含まれ、醗酵が完了した後に、安
定剤、保存剤、芳香剤などの望ましい成分を含有する溶液で細胞を流洗すること
により、残りの栄養素および無駄な代謝物を除去する。精製
所望により、細胞ペスト(無傷または破壊細胞のいずれか)は、細胞の濃度を
上げそして乾燥塊(マス)のZX濃度を増すために、乾燥できる。これは、噴霧
乾燥(熱を用いて)または凍結乾燥(真空下での凍結−乾燥)などの機械的手段
によりなされる。乾燥を用いたときは、得られた固体残留物は通常、乾燥バイオ
マスと呼ぶ。これは、約1−10重量%のZXを含み、他の細胞固形物、醗酵培
地からの固形残査および上述の安定剤をも含む。
破壊または乾燥の前または後(またはそれに代わって)に、主に細胞壁に蓄積
しているZXの濃度を上げるために抽出工程を実施することができる。抽出のた
めの適当な溶媒は一般的に極性有機溶媒である。現在までに確認されている最善
の溶媒はテトラヒドロフラン(THF)であり、これは細胞壁をよく攻撃し、分
離膜破壊を不必要とする。THFを実験室で用いるときは、撹拌は不必要である
が、商業ベースでの製造においては、溶媒混合工程中の撹拌がおそらく必要であ
ろう。
他の溶媒も試験したが、また試験しているが、今日までのところTHFほどの
ものは見つかっていない。試験した非環状有機溶媒(アセトンおよびジエチルエ
ーテルなど)はZX溶解度が低く、他方、メタノール、エタノールおよびヘキサ
ンなどの他の溶媒はより低いZX溶解度である。
溶媒は、溶媒がゼアキサンチンをできるだけ多く溶解するような条件で、細胞
ペストまたは乾燥バイオマスと混合される。次いで、遠心分離または濾過などの
機械的手段を用いて、溶解液体分画を固体から分離する。固体は捨てるか、また
は他の製法工程の材料とする(所望により、溶媒抽出サイクルを繰り返す)。液
体分画は、通常、蒸発によって、溶媒を除去するよう処置する。R−Rゼアキサ
ンチンを含む粘稠な油分と、溶媒により細胞ペストから取り出された他の溶解成
分が残留する。THFを1−3重量%のZXを含む細胞について単一抽出方法で
用い、次いでTHFを蒸発で除去すると、得た液体は約5−約20重量%のZX
を含有していた。
予備的によい結果が得られた他のタイプの溶媒抽出に、超−臨界液体(すなわ
ち、大気圧では通常は気体であるが、加圧下では溶媒として作用する液体になる
)の使用がある。二酸化炭素が超臨界抽出で最も広く用いられている溶媒であり
、商業的規模のCO2抽出システムは利用可能である。このようなシステムにお
いて、液化二酸化炭素は、高圧反応器中で細胞ペストまたは乾燥バイオマスと混
合する。次いで液体を、段階的に圧を減じた一連の室に通す。ZXは、かなりの
高圧において溶液から沈殿し、初期の減圧段階で寄せ集めることができ、一方、
不
純物の大半は、二酸化炭素に溶けたままであり、そして圧をさらに減じた他の反
応室に移す。超臨界溶媒抽出の効率は、共沸剤(エタノール、プロピレングリコ
ール、エチルアセテートなど)を用いることによりさらに増大せしめ得る。これ
らの共沸剤のいくつかは、予備的試験で用いられ、超臨界二酸化炭素中のゼアキ
サンチンの溶解性を増大することが示された。
二酸化炭素は最も広く使用されている超臨界剤であるが、種々の他の化合物(
種々の窒素またはクロロフルオロ炭素化合物を含む)も商業的規模のシステムに
おいて同じ目的で用いられる。圧によって気体および液体相の両者となるような
化合物は、ここに記した微生物からゼアキサンチンを精製するのに適しているか
試みることができる。
所望により、溶媒または超臨界抽出により生じたZXを含む油状の流体は、親
油性担体物質(植物油など)と混合し、次いでゼアキサンチンをさらに精製する
ことなく、直接ヒト用のカプセルに封入できる。これは、R−Rゼアキサンチン
の半精製消化型をつくるのに適した経済的な方法を提供するものであり、黄斑変
性の患者に対する薬剤として、あるいは高齢期に黄斑変性になる恐れを減らそう
とする者に対する栄養補助剤として用いることができる。
また、半精製型のR−Rゼアキサンチンは、ZX濃度を増大し、不純物を除去
するために、さらに精製することができる。これは、(1)2選択溶媒の併用に
よる2−溶媒システム、(2)ZXの結晶化をもたらす基質(織編フィルター床
など)上での吸収、または(3)向流クロマトグラフィー。ZXを約98%の純
度に精製するのに用いたクロマトグラフィー法は、実施例4に記載する。
他のカノチノイドについての他の精製方法は、特許第5,382,714号(Kh
achik 1995)および米国特許4,851,339(Hills 1989)に開示されている
。投与方法
経口摂取が網膜保護のためヒトにZXを投与するのに最も望ましい方法であり
、下記するように毎日または週ごとのカプセルあるいはゼアキサンチン−補強食
品または食品添加物として用いられる。このような摂取は、(毎日または週ごと
ピルのような)一定間隔で定期的になされることは要しないで、不定期断続的な
摂
取でもって黄斑組織に少量のゼアキサンチンを適当にかつ徐々に蓄積するように
、服用間隔をあける合理的な期間(1日またはそれ以上、望ましくは1週間以内
)が適している。ビタミン補助として一回服用でも、有益であろうが、適当な少
量服用を1年以上なすほどには有益でない。ヒトおよび試験動物におけるカロテ
ノイド摂取の薬力学的研究によれば、血液濃度に示される“積み”因子により、
毎日摂取が週または他の間隔での摂取よりも好ましいことが指摘されている。
経口摂取後のカロテノイドの取り込みは比較的少ないので、重い黄斑変性の患
者に対しては他の投与形態、例えば筋注、静注または徐放植込みなどを利用する
ことが望まれる。注射用の基剤の処方は、水、緩衝液およびプロピレングリコー
ル、デキストラン、シクロデキストラン化合物のような水酸基を複数有する有機
化合物を含む。
酸化からZXを保護し、またZXの油状性を保持し得る限り、経口摂取につき
種々の包装形態が用いられる。
経口接種のための適切な組成物の例は次のものを含む。
(a)消化できる防水性カプセルおよびその中に含有される液体からなり、カプ
セルおよび液は飲み込みやすい大きさおよび形状であり、薬理学的に許容される
ものであり、液体はR−Rゼアキサンチンを植物油などの適当な担体または希釈
剤と共に含む。所望により、液体化ZXは、実施例9また10に記載のようにミ
クロカプセル化すなわちミセル中に封入されて、胃中での変性からZXを保護す
る。該カプセルは、比較的硬く造ることができるが、ビタミンE含有カプセルに
通常用いられている硬質材料または軟質材料からなる。カプセルが胃酸に対し耐
容性があり、腸内で酵素により消化されるときは、ZXは胃中での変性から保護
され、ZXの生物学的利用性は増大する。しかし、少なくとも、咀嚼された植物
マスの成分として胃に入ったZXの部分は作用を受けずに胃を通過できる。従っ
て、胃酸からZXを保護することは必須ではなく、カプセル材料の選択は、科学
的な要請よりも経済的観点からなされるであろう。
(b)ヒトに経口摂取される錠剤はR−Rゼアキサンチンと加圧結合剤を含む。
この結合剤は、適当な圧力で圧縮した後に錠剤が形を保ちうるためであり、錠剤
は、薬理学的に許容され、支障なく飲み込むのに適した大きさである。所望によ
り錠剤はコーティングされて、胃酸からZXが保護される。
(c)ヒト用の食材を含む組成物で、栄養学的に許容され、味も優れ、ゼアキサ
ンチンの基質として適当であり、添加物としてR−Rゼアキサンチンを含有する
。ZXは、黄−オレンジ色のピグメントであって、植物油、ショートニング、チ
キン脂などと一般的に同一の疎水性である。ZXはまた、β−カロテンなどの他
のカロテノイド食品色素と類似である。従って、ZXは、マーガリン、乳製品、
シロップ、焼食品材、クッキーダウ、ブラウニー、苛酷な調理をなさない肉類お
よびスープ成分などの種々の食品材料に添加し得る。他の適当な食品材料には顆
粒化処方のもので、スープ、サラダ、ベーキングなどの添加物に用いる塩、香、
味などをつけた混合物などである。所望によって、顆粒化処方において保護コー
ティングをして、ZXの胃酸により変性を低下することができる。β−カロテン
および他のカロテノイドの食品色素および栄養添加剤としての処方および利用に
関連する多数の文献がある。その文献には、例えばKlaui et al 1970;Klaui
and Bauernfeind 1981;Colombo and Gerber 1991,が含まれ、一方、関連す
る米国には米国特許第4,522,743(Horn et al 1985)、5,180,747
(Matsuda et al 1993)、5,350,773(Schweikert et al 1994)およ
び5,356,636(Schneider et al 1994)が含まれる。その非常に近い化
学的類似性および物理的性質により、ヒトの摂取を意図したいかなるタイプの食
品におけるβ−カロテンまたはルテインを添加する技術、付加、他の方法は、R
−Rゼアキサンチンに直接的に適用可能でもある。
d)ヒト経口摂取用の食材を含む組成物で、その食材はヒトに無毒で、ゼアキサ
ンチンのR−R異性体を含有する細菌細胞を含む。該食材は、チーズ、ヨーグル
ト、ミルクおよびビールから選択し得る。細菌細胞は、生きていてもよいし、所
望によって殺菌またはフラグメンテーションにより殺されていてもよい。
他の形態の包装も容易であり、種々の使用に好ましいであろう。動物におけるR−Rゼアキサンチンの試験
ATCC 55238株からのフラボバクテリウム・マルチボラム細胞を用い
て合成したZXを、通常は日本ウズラと呼ばれているCoturnix coturnix japon
icaを選択して、網膜保護について、試験した。この種は、下記のようないくつ
かの理由によってヒトの黄斑変性について有用な動物モデルを提供する。
(1)日本ウズラの全網膜はいくつかの重要な点においてヒト網膜の斑領域に
似ている。例えば、ウズラの網膜はZXとルテインの両方を含み、ヒトの斑のよ
うに光線レセプターの錐体に杆体よりも豊富である。
(2)日本ウズラの網膜はヒトの網膜といくつかの同じ病理を表す。例えば、
日本ウズラの網膜は、ヒトにおけるAMDの発生と大きく相関するソフト結晶腔
およびリポフシンを蓄積する。
(3)ウズラの網膜は、ヒトの網膜よりも非常に小さいが、ZXおよびルテイ
ンの存在により黄色である。このことは、ヒト網膜の中心の小さい斑領域のモデ
ルとして役立つことを可能にし、解析および観測をより容易にする。
(4)日本ウズラの網膜は、駆血的であり、ヒト網膜の窩領域に類似した構造
を有する。
(5)日本ウズラは、おおまかに雌で1−1.5年、雄で3−4年の寿命を有
する。このことは、より長く生きる他の種では非常に難しいであろう加齢過程に
ついての“長さ”の研究を可能にする。
これらの理由については、より詳細にFite et al 1991およびFite et al 19
93に述べられている。
これらの試験は実施例5−8に記載されている。結果は、優れており、F.mul
tivorumによりつくられたR−Rゼアキサンチンが、(1)経口摂取後、適切に
黄斑に蓄積し、(2)光毒性損傷に対して網膜細胞を保護するのに非常に効果的
であること、を明白に示している。
さらに、実施例8で論じるように、予備的な結果は、光毒性損傷から網膜を保
護するのにR−RのZXがβ−カロテンよりもはるかに強力で効果的であること
を示している。β−カロテンを試験動物に高用量与えたとき、β−カロテンによ
る小さい保護利点も統計的有意のレベルに達しなかった。これと対照的に、同量
のR−RのZXを動物に与えたとき、測定した網膜細胞損傷の指標と死亡の指標
を完全に阻止し、予防した。R−Rゼアキサンチンの微生物源
ここで開示したフラボバクテリウム・マルチボラム細胞は、ATCCに寄託さ
れている(ATCC55238;上記のようにATCCカタログではSphingoba
cterium multivorumと書かれているが、Bergy's Manualでは変わっていない)
。この細胞ラインは、異性体的に純R−RのZXを微生物学的につくるため、い
くつかの選択を当業者に提供する。
最初に、これらの細胞の直接的かつ非修飾の子孫を、他の望ましくない立体異
性の測定可能な量には有していない、R−Rゼアキサンチンをつくるために、用
いることができる。これらの細胞により生じる全カロテノイドは90%以上のZ
X、求めるカロテノイドを含んでいる。
第2に、ATCC 55238株の子孫をZXのR−R異性体の生産レベルが
増加するように修飾した後に使用することができる。かかる突然変異および他の
変種は、無作為または半−無作為によるいくつかの方法のいずれかでつくられ、
増加したZX産生系を有するコロニーを同定するためのスクリーニングテストを
行う。無作為または半−無作為の発生を用いる技術は、(1)野生タイプATC
C 55238子孫を紫外線またはX線の照射などの無作為的作用突然変更源ま
たはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジンなどの種々の既知化学
的突然変異源で処理すること、(2)フラボバクテリウム・マルチボラム細胞を
、微生物間において接合およびDNA交換を促進する他のタイプの微生物と混合
することにより性的組合せをおこさせること、(3)フラボバクテリウム・マル
チボラム細胞を、比較的大量のDNAの再配列をおこし得る微生物トランスポゾ
ンまたはウイルスで処理すること、を含む。これらおよび他の当業者に知られた
技術は、子孫細胞の何千あるいは何百万の夫々に突然変異あるいは他の変化した
遺伝子を有する制御不能で無作為な変化を効果的に導入する。従って、これらの
技術は、望ましいゼアキサンチンの産生の増大した系を有する子孫の少量分画を
同定し、分離するために、クローニングおよびスクリーニング技術と共に接合に
おいて使用されなければならない。
スクリーニング試験は、ZXを産生する生合成経路に含まれる1以上の酵素を
阻害する化学物質(ジフェニルアミン、ニコチンまたはロバスタチンなど)を用
いることにより、容易に実施することができる。layman'sの用語において、これ
らの阻害剤は、異常に多量のZXを産生する突然変更細胞系によってのみ克服さ
れうるハードルまたは障害を形成する。都合のよいことに、多量生産突然変更株
を同定するのに用いられる分析試験は簡単、迅速そして容易である。ZXが黄色
ピグメントであるので、望ましい系を有する突然変更コロニーを同定するのに、
培養プレートの簡単な視覚観察が用い得る。望ましいのは、(1)よい細胞生長
速度(2)黄色ピグメントを異常に多量に産生する能力を有するものである。所
望により、自動装置(48−ウエルまたは96−ウエルのプレート読み器、サイ
トメーターに接続した細胞選別器)も突然変異段階後のスクリーニング試験に用
いられ得る。
これらの突然変異およびスクリーニング技術は、この技術分野で通常かつ周知
のものである。無作為または半作為を突然変異子孫細胞に導入すべく用いた特殊
な方法または試薬にもかかわらず、ATCC 55238株から直接由来するす
べて細胞は、たとえ修飾され、突然変異をうけ、また他の細胞系と性的組合せら
れていても、上記したいかなる方法において、野生タイプATCC 55238
細胞の子孫とみられる。
3番目の別の試みとして、非子孫微生物細胞が、所望のゼアキサンチンのR−
R異性体の合成を行い、ATCC55238細胞系単離されたか、またはそうで
なければ由来のものである遺伝子を含むものを製造できる。このような遺伝子は
既知の技術を用いて、分離および同定し得る。ハイブリダイゼーション・プロー
ブとして例えば、米国特許第5,429,939号(Misawa et al,1995、上記
)に列記のカロテノイド−産生“crt”遺伝子配列から得たDNA配列は、AT
CC55238細胞系のゲノムと相同のDNA配列を有するカロテノイド−産生
遺伝子を研究するためにハイブリダイゼーション・プローブとして用いられる。
これらの細胞から単離されたカロテノイド−産生遺伝子は、プラスミド、コスミ
ド、ファージまたは所望の型の宿主細胞、例えばエシェリキア・コリ細胞、酵母
細胞、
昆虫細胞または哺乳類細胞への遺伝子的形質転換に使用できる他の好適なベクタ
ーに挿入できる。この型の制御可能遺伝子工学は、ATCC55238細胞から
得られる遺伝子を用いて、形質転換細胞がR−Rゼアキサンチンを産生するのを
可能にする。
加えて、ATCC55238細胞由来のゼアキサンチン−産生遺伝子のタンパ
ク質−コード部分(すなわち、メッセンジャーRNAに転写され、続いてZX合
成に関与する酵素への翻訳をする遺伝子の部分)は、非常に強力および/または
誘導可能遺伝子プロモーターの制御下に置くことができる。異なる遺伝子から得
たこのような遺伝子プロモーターを伴う“キメラ”遺伝子は、種々の目的、例え
ば(1)ZX−産生遺伝子の細胞生育相の間の抑制および次いで醗酵中の細胞に
よるZX産生の大きい増加および(2)商業的使用に好適な宿主細胞の新しい型
、例えば非常に確立された高度に最適化された発酵、操作および生成技術により
有利である、広く使用される細胞型であるエシェリキア・コリ細胞または酵母細
胞に遺伝子を挿入するために、使用できる。
ATCC 55238細胞系から単離されたZX−産生遺伝子はまた、当業者
に既知の他の遺伝子工学技術により促進できる。一例として、細菌細胞はしばし
ばmRNAコード配列中の“非好適”コドンを使用し、mRNA分子から翻訳され
るタンパク質の量を制御する。この天然制御機構の回避のために、ATCC55
238細胞系から単離したZX−産生遺伝子のmRNAコード配列の非好適コド
ンを、選択した型の宿主細胞におけるZX−産生酵素の発現を増加させるであろ
う“好適”コドンに置換できる。
他の例として、システイン残基は酵素の活性または安定性を、同じまたは他の
タンパク質分子中の他のシステイン残基と望ましくないジスルフィド結合を形成
することにより、抑制できる。したがって、酵素の活性または安定性は、一個ま
たはそれ以上のシステイン残基を、活性の少ないアミノ酸残基に置換することに
より増加できることがある(例えば、米国特許第4,737,462号、Mark)。
加えて、タンパク質の発現は、しばしばグリシンのような一般的アミノ酸のコド
ンを、あまり一般的でなく、タンパク質のmRNAからの発現を遅延または減少
させる傾向にあるメチオニンおよびトリフトファンに置換することにより増加で
きる。この性質のアミノ酸置換をもたらす合成遺伝子の製造後、修飾タンパク質
を、より多い量または安定形で発現し、所望の酵素活性を残すかどうか測定する
ために試験できる。
これらは、修飾が所望の型の細菌、酵母または他の宿主細胞によるZXの産生
を促進できるか測定するために、ATCC 55238細胞系から単離されたZ
X−産生遺伝子の評価をできる遺伝子工学技術の例である。
“フラボバクテリウム・マルチホルの菌株ATCC寄託番号55238由来の
細胞から得たDNA配列を含有する、少なくとも一つのゼアキサンチン合成遺伝
子を含むように、遺伝子学的に構築される細胞”と言う特許請求の範囲中の文言
は、ATCC55238細胞系またはその子孫により測定されたDNAまたはm
RNA配列を使用して化学的合成されたDNA配列含有遺伝子を含む細胞を含む
。自動DNA合成機械は既知であり、既知の選択遺伝子配列を、元の宿主細胞の
複製の必要なしに2倍にするために使用できる。“ゼアキサンチン合成遺伝子”
は、ゼアキサンチン生物構成経路に関与する酵素または他のタンパク質を発現し
、好適な宿主細胞中に挿入した場合、ゼアキサンチン合成の増加に使用できる遺
伝子を含み、遺伝子がコードするZX生合成経路の特定の酵素を考慮していない
。
実施例実施例1:商業規模発酵
フラボバクテリウム・マルチボラムの最初の小規模研究室試験のために、出願
人に好適な培地は、米国特許第5,308,759号(Gierhart 1994)および第
5,427,783号(Gierhart 1995)の実施例3の栄養培地Eであると同定さ
れた。この栄養培地は高価で処理が難しい幾つかの成分を含んでいた。高い値段
および不便さを減少させるため、良い商業規模の栄養培地を製造するための実質
的な研究が、これらの出願の最初の出願日以後に行われた。商業規模の発酵に現
在のところ好ましい栄養培地は、トウモロコシ粉および他の幾つかの成分を除外
している。これらの好ましい培地は、1から10%w/vの濃度でトウモロコシを
浸けた酒0.5から4%w/vと共に高マルトースコーンシロップまたはサトウダ
イコン糖蜜のいずれか;硫酸アンモニウム七水和物0.5%w/v;塩化ナトリウ
ム0.5%w/v;硫酸マグネシウム七水和物0.1%w/v;酢酸ナトリウム0.1
%w/v;硫酸第1鉄0.001%w/v;酵母抽出液0.2%w/v;チアミン−HCl
0.01%w/v;加水分解カゼイン(NZ Amine HD、Sheffield Produc
ts,Division of Quest International,Norwich,NY販売のような)1か
ら6%w/vの間;および植物油1%v/vを含む。
これらの成分を互いに混合した後、充分なNaOHを添加し、pHを6.5に上
昇させる;対照的に、米国特許第5,308,759号および第5,427,783
号に記載のように栄養培地をpH7.5に調節した場合、多すぎる固体がトウモロ
コシを浸けた酒から沈殿する。
培養培地を121℃、30分オートクレーブで滅菌し、次いで27℃に冷却し
、S−SまたはS−R立体異性体の産生なしにR−Rゼアキサンチンを製造する
フラボバクテリウム・マルチボラムの株を含む“液体前培養”を、5から10%
v/v接種する。
液体前培養の製造に使用する細胞を平板計数寒天(plate count agar)の斜面
管に維持する。これらの斜面培養に、出願人がATCCに寄託した(ATCC受
託番号55238)株の子孫のフラボバクテリウム・マルチボラムのクローンコ
ロニーを接種する。48時間、28℃でのインキュベーションの後、貯蔵斜面を
、液体培地の接種物として使用するまで4℃に冷却する。生存細胞はまた慣用の
冷凍庫、ドライアイスまたは液体窒素を使用して長い貯蔵のために凍結できる。
液体前培養を寒天斜面から取った細胞を使用して製造し、300mL隔壁フラ
スコ内の上記のように製造した液体培地30mLに接種する。成育条件は、28
℃、pH7.2から7.6、250rpmの撹拌による酸素補給および24時間の培養
である。最初の24時間のインキュベーションの後、1個またはそれ以上の30
mL前培養フラスコに含まれる細胞を、好適な大きさの発酵容器中の10倍量の
栄養培地への接種に使用する。次いで、細胞を48から72時間、28℃でイン
キュベートする。pHを6.80から7.20の間にNaOHおよび/またはリン酸
を使用して維持する。溶解酸素濃度を、容器を400から1000rpmで撹拌し
ながら、容器を通した濾過空気を空気1容量/液体1容量/分の速度でバブリン
グすることにより、飽和の30から40%に保つ。定期的サンプリングおよび高
速液体クロマトグラフィーを使用した試験は、細胞をこれらの条件で発酵させた
場合、ZXの最大量が通常約72時間以内に産生されることを示した。実施例2:安定化剤の添加
実施例1に記載の発酵方法により産生されたZXは、続く精製および製剤を容
易にするためおよび純度を確実にするために安定化する必要がある。製造または
精製工程の間に、安定化化合物をフラボバクテリウム・マルチボラム細胞(また
はZX含有細胞抽出物)に添加できる;一般に、細胞が発酵容器中にある間に、
1種またはそれ以上の最初の安定化剤を細胞に添加すべきである。
種々の安定化剤候補を出願人は試験した。現在まで、最も良い結果が、安定化
剤の混合物を使用した場合に得られ、それは少量の好適な溶媒(20リットルの
発酵容器について約2ミリリットルのエタノールのような)中で、細胞に添加す
る前に混合する。好ましい安定化剤混合物は、第3級ブチルヒドロキノン(TB
HQと略称;2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオールとも呼ばれる)
を、細胞と混合した後、最終濃度約250μg/L(マイクログラム/リットル)
から約50mg/Lの範囲になるような量;混合後濃度が約250μg/Lから約
250mg/Lの範囲のエトキシキン;約250μg/Lから約250mg/Lの濃
度範囲のα−トコフェロール;および約500μg/Lから約500mg/Lの濃
度範囲のEDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)を含む。好適な濃度は広範囲
で変化でき、続く精製工程および包装および摂取の意図される形に依存する。こ
れらの安定化剤の好ましい濃度は、一回通過THF抽出、続く植物油との混合お
よびビタミン型丸薬への防水カプセル包含に使用するために、約25から50mg
/LのTBHQ;250から500μg/Lのエトキシキン、250から500
μg/Lのα−トコフェロール;および500から1000μg/LのEDTAで
ある。
安定化剤添加後、細胞培養を55℃、25から50分加熱することにより、低
温殺菌する。これは、細菌を、それらが産生したZXに障害を与えることなく殺
す。次いで、培養物を室温に冷却し、ZX含有細胞および培養ブロスに存在する
他の固体を液体相から、細胞/固体濃度を最初の値から約10から15%増加さ
せる交差流動微小濾過系で分離し、濾過した濃度を約60から80容量%にする
。この工程は、栄養培地の残余固体をまた幾つか含む細胞ペーストをもたらす。
実施例5−7に記載のように、網膜試験における日本ウズラ(Japanese quail
)食べさせるZX製剤のために、細胞を−70℃で凍結し、次いで完全真空で2
5℃で凍結乾燥により乾燥させ、約2から10重量%ZXを含む乾燥バイオマス
を製造する。過去の試験において、各バッチのZX量を個々に測定し、異なる濃
度のバッチを組み合わせ、互いに混合し、ウズラ試験のための一貫した濃度を確
保した。
ヒト摂取のためのZXを製造するために、実施例3記載のように、溶媒抽出物
を使用し、粘性油状液体を産生する。実施例3:油状液体への半精製
実施例2記載のように細胞ペーストを製造した後、種々の方法で処理できる。
上記のように、望ましい場合、超音波(高頻度音波)、高圧または挽くような手段
で、細胞の温度を約30℃以下に保ち、酸化を防ぎながら、細胞膜を破壊し、細
胞を開け、ZXをより近付き易くする。しかしながら、この工程は、テトラヒド
ロフラン(THF)が機械的補助なしに細胞膜を破壊するのに非常に有効である
ため、溶媒抽出好適にTHFを使用する場合、必要ではない。撹拌は、THFを
研究室規模操作に使用する場合は必要ではない;しかしながら、溶媒混合工程中
の撹拌は、商業的製造操作においては恐らく有利であろう。
今日まで行われた試験において、THF抽出物は、約8から20容量の精製濾
過THFと60−80%固体を含む細胞ペースト1容量を、25℃以下の温度で
2から24時間混合することを含む。THFは積極的に細胞を攻撃し、綿状沈殿
固体の懸濁液の液体を産生する。20,000重力までの数分の遠心後、ほとん
どのTHFはデカントにより回収できる。残ったTHFは真空下で蒸発させ、粘
性油状物を残す。1から3%ZX含有細胞ペーストをTHF抽出物で一回通過操
作により処理した場合、得られる油状物は通常約5から20重量%のZXを含ん
でいた。実施例4:100%純粋R−R異性体の高度に精製したゼアキサンチンの乾燥粉 末形での製造
乾燥粉末形の高度に精製したZX製剤は、実施例3に記載のTHF抽出油状液
体を以下のような液体クロマトグラフィーで処理することにより製造した。油状
ZX−含有液体をヘキサンに溶解し、次いで中性アルミナ粉末含有クロマトグラ
フィーカラムを通過させる。2カラム容量のヘキサンをカラムの洗浄に使用し、
β−カロテンおよびリコペンのようなようなカロテノイド不純物および液体およ
び他の汚染物を除去した、ヘキサン:アセトン80:20の混合物を次いでカラ
ムを通し、ZXを遊離させた。出てきた溶解ZXを真空で乾燥させた。クロマト
グラフィー分析は、少なくとも98%純粋ZXを示唆した;痕跡量の不純物のみ
が検出可能であった。
相対的に非保護状態(通常、正常冷蔵庫で、サンプリングのために適度な頻度
で除去して、抗酸化剤含有なしにおよび空気中酸素との接触を妨げるために気を
付けることなく)でおおよそ6カ月貯蔵した後、このZX製剤のサンプルをFlo
rida,MaiamiのFlorida International UniversityのJohn Landrum教授(
Bone,Landrum et al紙の共著者)に送った。ジカルバメート誘導体のキラル
カラムクロマトグラフィーを使用した彼の分析は、6カ月たった非保護製剤が9
2%ZXを含有することを示唆した。不純物は主に、ZX前に前溶出するケト−
カロテノイド類であることが明らかになった;ケト−カロテノイド類は、カロテ
ノイドのどこかに結合した余分の酸素原子を有し、カロテノイドを酸化に対して
保護せずに貯蔵した場合の通常の副産物である。Landrum博士のキラル分析は、
製剤中のZXの100%が所望のR−R異性体であることを示唆した。望ましく
ないZXのS−SまたはS−R立体異性体は検出可能量はなかった。
上記のようなクロマトグラフィー精製が、完全に実行でき、非常に有効である
が、商業量で高度に精製されたZXを産生するのに理想的に適してはいないこと
は認識されている。米国特許第5,382,714号(Khachik 1995;またKhac
hik et al,1991も参照)に記載され、冷エタノール−水混合物を2溶媒抽出系
で使用し、凍結乾燥する、ルテインの精製のために開発された別法が、商業生産
使用のための評価のために良好な候補方法を提供する。実施例5:異なる食餌群を使用した日本ウズラにおけるZXの試験
ウズラを含むすべての試験は、Applied Food Biotechnology,Inc.(本出
願の譲受人)との契約の下、Harvard Medical School(Boston,Massachus
etts)のSchepens Eye Research Instituteで行った。すべての処置または
対照群は統計的に有意な数の鳥を含んだ。ほとんどの場合、対照群は処置群と同
じ数であった。
カロテノイド欠損鳥餌をPurina Mills(St.Louis,Missouri)から得た
。これらの鳥餌は実験用のみに売られており、天然にカロテノイド類を含まない
通常の穀物(ミロ種子のような)を使用して得る。
ウズラに食べさせるすべてのZX製剤は、発酵させ、実施例2に記載の試薬で
安定化し、細胞を殺すために低温殺菌し、凍結乾燥を使用して乾燥したフラボバ
クテリウム・マルチボラム細胞由来の乾燥バイオマスの形であった。これらの発
酵および製造工程は、Applied Food Biotechnology,Inc.のO'Fallon,M
issouriの施設で行った。
すべての試験動物は、カロテノイド欠損卵から孵化した。これらは鳥が成熟し
た後、親世代(P1鳥と呼ぶ)にカロテノイド欠損餌のみを食べさせて作った。
その卵を破壊して開け、卵がカロテノイド欠損になるまでカロテノイドを分析し
た。完全にカロテノイド欠損親鳥から続けて生まれた卵を、すべての試験および
対照鳥を孵化させるのに、使用した。
試験および対照鳥を、異なった餌を与える大きい4群に分けた。これらの群は
、餌でどのカロテノイド類を摂取するかに依存して、C+群、C−群、BC+群
、ZX(+5)群およびZX(+50)群と命名した。
C+群の鳥は、幾つかのカロテノイドを含む標準商品餌を食べた;この餌はま
た合成α−トコフェロール(ビタミンE)を添加剤として含む。
C−群の鳥は、上記のように実質的にすべてのカロテノイド類が欠損している
餌を食べた。しかしながら、この餌は他のすべての必須栄養素を含み、また合成
ビタミンAおよびEを添加剤として含む。
BC+群の鳥は、高用量ZX群に使用したのと同量(すなわちβ−カロテン5
0mgを餌kg当たりに添加)の添加剤としてのβ−カロテン以外のすべてのカロテ
ノイド類が欠損している餌を食べた。BC+群の鳥は、β−カロテンを含む餌に
、光障害工程開始7日前に移した。この群は、β−カロテンと、同様に光障害7
日前にまたは欠損餌からZX添加餌に移されたZX補給鳥の一つのサブグループ
との直接の比較を可能にする。実施例8に記載のように、この直接の比較は、Z
Xが光毒性障害予防に非常に有効であるが、一方β−カロテンの保護効果は非常
に弱く、統計的に有意な濃度に到達しないことを示す。
ZX+群の鳥は、すべての他のカロテノイドを欠くが、AFBのフラボバクテ
リウム・マルチボラム細胞由来のR−RZXを含む乾燥バオマスを含む、2つの
異なる用量のZXを鳥に食べさせ、網膜障害の種々の指標に関して評価および関
連すべき用量および効果関係を可能にする。ZX(+5)群の鳥は、相対的に少量
のZX、平均餌キログラム当たり5mgのゼアキサンチンを添加したものを食べた
。ウズラは一日当たり約25から35gの餌を食べるため、約0.125から0.
175ミリグラムのZXが、低用量群で鳥当たり一日当たり摂取された。ZX(
+50)群は、10倍量(50mgZX/kg餌)を食べ、鳥当たり一日当たり平均1.
25から1.75ミリグラムのZXの消費をもたらす。
対照、欠損およびZX餌におけるカロテノイド濃度は、高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)で、Stacewicz−Sapuntzakis et al 1993に記載の方法を
使用して分析した。結果を表1に示す。
すべての鳥は、正常ひな保育籠で成育および保持した。下記する以外、正常の
広範囲スペクトルの1日当たり10から14時間照明の下に保持した。実施例6:経口摂取ゼアキサンチンの網膜堆積
化学的分析を行い、実施例5に記載の種々の食餌群の鳥の網膜に堆積したZX
(および他のカロテノイド)の濃度を測定した。
これらの分析を行うために、カロテノイド欠損卵から孵化し、少なくとも6カ
月間、それぞれの餌で飼育した鳥を頸椎脱臼により殺した。網膜組織を核出眼の
切開により回収し、一個の網膜由来の組織を蒸留脱イオン水250μL中で、ガ
ラスまたはポリテトラフルオロエチレン(テフロン(商標))乳棒を使用してほとん
ど均一まで挽いた。均質物10μLを回収し、種々の網膜サンプルの結果を標準
化するために、均質物のタンパク質の分析に使用した。2%w/vピロガロール含
有メタノール250μLおよび60%w/v水酸化カリウム50μLを、残ってい
る網膜組織懸濁液240μLに添加した。混合物を水浴で70℃に1時間加熱し
、次いで50%v/vエタノール500μL、続いてヘキサン2mLを添加した。
混合物をボルテックスにかけ、激しく混合し、次いで分離が起きるまで5℃で放
置した。ヘキサンおよび抽出カロテノイド類、トコフェロール類、およびレチノ
ール類を含む上相(すなわち、残った液体の上に浮いている軽い相)を回収した。
更なるヘキサン2mLを組織均質物に添加し、混合物をボルテックスにかけ、再
び分離させた。この上相を回収し、最初のものと合わせた。この工程を更に1回
繰り返し、3回目の抽出サイクルにおいて、完全なカロテノイド類、トコフェロ
ール類およびレチノイド類の抽出を確実にした。
次いで、合わせたヘキサン抽出物を水1mLで洗浄し、残った水酸化カリウム
を回収した。更なるヘキサンをヘキサン−水混合物に添加し、次いでヘキサン相
(上相)を注意深くピペットで回収した。次いでヘキサンを窒素ガスの一定の流
れの下で蒸発させた。残った残渣は、カロテノイド類、トコフェロール類、レチ
ノール類および他の未同定ヘキサン−抽出可能物質が含まれていた。この残渣を
次いで溶媒(メタノール:クロロホルム:トリエチルアミン)に溶解し、上記の
ようにHPLCで分析した。
高強度光暴露後の損傷レベルをまた示す結果を下記表2に列記する。
β−カロテンが記載した餌の鳥から取った網膜から検出されなかったことは注
目すべきである。
表2に列記したこれらの網膜濃度は、フラボバクテリウム・マルチボラム(A
TCC受託番号55238)に由来する細胞の発酵により製造した経口摂取ゼア
キサンチンは、実際、餌添加剤として、食物添加物としてR−Rゼアキサンチン
を投与された試験動物の網膜に堆積した。ZXは、通常の方法で消化され、腸障
壁を通過し、血流に入り、鳥の眼の網膜細胞に、網膜細胞を光毒性障害から防護
するために充分な濃度で取り込まれなければならないため、これらは重要な発見
である。これらの障害のすべては、本明細書に記載の細菌発酵性R−Rゼアキサ
ンチン製剤により克服された。実施例7:R−Rゼアキサンチンによる網膜の保護
各食餌群の鳥の数匹を、1時間の光、続く2時間のほとんど真っ暗のサイクル
を使用した2,000から3,000luxの高強度可視光に28時間付した。光サ
イクル期間に続き、鳥を殺す前にほとんど真っ暗に14時間おいた。この量の高
強度光暴露は、予備試験でカロテノイド欠損群の鳥において一貫してひどい障害
をもたらし、対照(通常の餌)群の鳥において緩和な障害をもたらすことが測定さ
れている。予備試験において、光暴露後の14時間の時間は、非保護(カロテノ
イド欠損)鳥における枯死円錐核の最大数を測定するために必要であることがま
た測定されていた。
対照餌を食べる鳥は、最大枯死を暴露後約24時間で示すが、一方ZX添加餌
を食べる鳥は、24時間より長い時間に最大枯死を示した。障害前の時間の長さ
は、それ自体およびそれ自体のためにZXの保護効果の強い指標として測定でき
る。
これらの鳥の網膜は、微小解剖により単離し、キシレンに固定し、エタノール
で脱水しパラプラスト(オックスフォート、56℃)に埋め込んだ。次いで、パ
ラプラスト中の網膜組織を分画し、Gallyas 1990の方法にしたがってまたはヨ
ウ化プロピジウムで染色し、枯死を特徴付ける核濃縮核を可視化する。400×
(直線)倍の単一顕微鏡視野で見られる核濃縮核の数を計数した。各処置群につ
いて少なくとも6から8の別の領域の核を計数し、値を平均化した。
表2の結果は、網膜細胞死亡および障害は:(1)通常対照餌を与えられた鳥
と比較して、低ZX(+5)濃度でさえ、細菌合成R−Rゼアキサンチンにより、
非常に減少および/または遅延された;(2)高いZX(+50)用量により更に
減少された。ZX(+50)処置群の網膜における核濃縮核の完全な欠損は、フラ
ボバクテリウム・マルチボラム細胞系(ATCC受託番号552387)由来の
R−Rゼアキサンチンは、光毒性障害に対する網膜細胞の保護の劇的および並外
れた飛躍を提供するという注目すべき証拠を提供する。出願人の知識および信念
の限りでは、現在まで試験した他の医薬は、このレベルの保護に到達または近付
きさえしなかった。実施例8:網膜組織保護におけるR−Rゼアキサンチン対β−カロテンの直接の 比較
上記のように、BC+食餌群の鳥は、ZX(+50)群のゼアキサンチンの用量
と同じのβ−カロテン(50mg/餌kg)の用量を食べていた。これは、光毒性障
害に対する網膜細胞の保護の、β−カロテン対ZXの直接の比較を可能にした。
結果は、BC+群の光毒性障害は非常に少ない差であった(平均で約10%ま
たはそれ以下)。対照群における標準分布と比較して、この減少は統計的に有意
ではない;少ない減少が単に無作為変動によるものであるという確率は0.12
から0.14であった。
網膜組織における光毒性障害に対する良好な保護を付与するためのβ−カロテ
ンの失敗、一方R−Rゼアキサンチンが細胞障害および死の同じ指標で全100
%の減少を付与することは、本発見の重要性を完全に証明する。微生物発酵によ
り合成したR−Rゼアキサンチンは、先に既知の試薬を遥かに上回る大きな飛躍
を付与する。実施例9:吸収を高めるための製剤
ゼアキサンチン含有“ミセル”は、直径が1ミクロン以下であり、望ましいゼ
アキサンチンのR−R異性体のみを含有し、Olson 1994記載のように、ある種の
胆汁塩を用いて、実施例3記載のようなバイオマス溶媒抽出物または油状液体の
いずれかから得られる。R−Rゼアキサンチン含有の油状液体は、Marcor Devel
opment Company of Hackensack,New Jerseyにより販売されているグリコ−また
はタウロチコレートのリン酸塩などの適当な胆汁塩と共に、あるいはSalzman Co
rporation of Davenport,Iowa販売の胆汁塩の混合物を含有する胆のう抽出物の
使用により混合できる。この胆汁物は溶媒抽出または油状マスのいずれかと共に
、および塩化ナトリウム、塩化カルシウムあるいは塩化カリウムなどの一定の他
の塩と共に混合できる。この混合物は、回転柄などの混合器を有する機械的ホモ
ゲナイザーに、通常の実験で最適とされる回転速度および回転時間で、かける。
柄の大きさ、形状、回転速度および時間の様々な複合によってミセルの大きさが
変わってくる。得たミセルから溶媒を除き、必要とあれば、植物油などの担体ま
たは希釈液体を用いて、望む濃度に希釈する。この混合物は、服用するのに役立
ち、また胃酸による変性からミセルを保護するカプセルなどに封入される。
小さい粒子径の乳剤を形成するのに、他の乳化剤およリピドを用いることがで
きる。ツインおよびスパンなどの非イオン性の洗剤がOlson 1994記載のように用
いることができる。また、ホスフォリヒドおよびスフィンゴリピドなどのリピド
類も用いられ、小さい径(1ミクロン以下)のリピド小胞を形成する。実施例9:ミクロ−カプセル化ゼアキサンチン
この実施例はミクロカプセル化形態におけるゼアキサンチン製剤について記載
する。ミクロカプセルは核材(R−Rゼアキサンチンなど)からなる10−10
00μmの範囲の固体粒子でコーティング物質すなわち外被によってカプセル化
され、ゼラチン、アラビアゴム、でんぷん、ゼイン(トウモロコシからの1種の
タンパク質)などの種々の物質からつくることができる。外被材の製造中に、形
状柔軟性、安定性あるいは得る製剤についての望ましい特性を保有するために、
他の化合物を添加し得る。かかる物質には、乳化剤、ソルビトール、TBHQま
たは2−[1,1−ジメチル]−1,4−ベンゼンジオールなどの抗酸化剤および
カラゲーナンなどのゲル化剤がある。
純粋または部分的精製のゼアキサンチンを適当な溶媒、例えばエタノール、ア
セトンまたはTHFに溶解する。溶解したZXを水に加えることにより溶液中に
おいて、直径10ミクロン以下のミクロ結晶が形成する。この工程は、溶媒中で
ゼアキサンチンが結晶化した水をツイン80などの乳化剤の存在下に高頻度で超
音波処理すると、改善される。
ミクロ結晶が形成されると、外被材を水、ゼアキサンチンおよび溶媒の混合物
に加える。ゼラチンなどの外被材と共に、混合物を60℃の温度に2時間まで保
持することを要する。外被材が完全に溶けると、結晶を再−乳化するために、全
混合物を5−10分間超音波器にかける。
ミクロカプセルの形成は、噴霧乾燥、米国特許第4,675,140のような、
Sparks et al法による回転ディスク法などの適当な方法で核および外被材の混
合物を乾燥することにより完了する。噴霧乾燥剤は食品およびえさの工業におい
て広く用いられている。回転ディスクは、コントロール条件下である温度で保持
できるディスク(約4”径)からなる機器である。これは、1分間1,000−
10,000回転(rpm)の範囲の種々な速度で操作される。核と外被材の混
合物は、ディスクが例えば4000rpmの速度で回転しているときに、ディス
クの中心に加えられる。液体が加熱されている回転ディスクに接触したときに、
ミクロカプセルが形成される。ミクロカプセルは、遠心力によりディスクの中心
から放出され、疎水性でんぷんまたはデキストリンなどの“収集剤”または“捕
獲剤”であらかじめコートされた平たい面に収集される。ミクロカプセルは、光
および空気から保護する容器に入れられて、経口摂取用のカプセルに詰められる
まで冷蔵状態で保管される。
ヒト用のR−Rゼアキサンチンを含有する薬剤を製造する方法、微生物学的に
合成されたR−Rゼアキサンチンを含有する処方、および黄斑変性の予防および
治療への使用についての新しい有用な手段を記載してきた。本発明はある具体的
実施態様を参考にして、説明および記載の目的で例示されているが、当業者には
説明実施例の多くの変化、置換および類似物が可能であることが明白であろう。
本明細書の教示に直接由来し、本発明の精神および範囲から逸脱しないこのよう
な変更は、本発明によりカバーされている。