JPH10509369A - 肩の大結節−肩峰全プロテーゼ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 大結節の位置に固定する手段を有する凸状の球形部分の形をした大結節プロテーゼ要素(13)と、この大結節プロテーゼ要素(13)との当接面を有しかつ肩峰の下側表面に固定する手段を有する肩峰プロテーゼ要素(12)との２つの要素を有し、肩峰プロテーゼ要素(12)は大結節プロテーゼ要素(13)を覆い、肩峰プロテーゼ要素(12)は鎖骨までは延ない寸法を有し、肩峰を肩甲棘の柱の所で切断した状態で肩峰プロテーゼ要素(12)が肩峰と一緒に自由に変位できるような、肩の大結節−肩峰の全プロテーゼ。

Description

【発明の詳細な説明】 肩の大結節−肩峰全プロテーゼ 本発明は肩の大結節−肩峰（trochitero-acromiale）の全プロテーゼ（prothe ses totale、全体を人工器官に代えること）すなわちカフ（coiffe、回施腱板） の裂傷として知られる肩の機械的な障害やリューマチ性障害または肩甲上腕骨（ acapulohumerale）の関節周囲炎(Periarthrites)を治療するためのプロテーゼに 関するものである。 上記障害は極めて普通に起こり、肩峰と肩峰鳥口靱帯とで形成されるアーチ部 が不自然になり、上腕骨の大結節とそれに付着した筋肉（これは次第に破壊され る）との間の関節が不自然になるということは知られている。 こうした関節異常は痛みを伴い、肩甲骨に対する上腕骨の運動が大きく制限さ れる。 本発明の目的は、肩の機械的関節すなわち関節窩−上腕骨の関節に影響を与え ずに、肩の運動の自由を修復し、障害に起因する痛みを無くすことにある。 フランス特許第 2,418,644号で提案されているプロテーゼは２つの部材すなわ ち予め切断した大結節の位置に固定される手段を備えた球状扇形の大結節要素と 、ほぼ円筒形または球状をしたセグメントの形をした肩峰−鳥口要素とで構成さ れ、この肩峰−鳥口要素は大結節要素を覆い、その軸線は肩甲上腕骨−関節窩の 関節の中心を通り、その一端は鳥口突起に固定され、その他端は肩峰の下側面に 固定されて人工関節アーチを形成している。 米国特許第 4,550,450号には肩の全プロテーゼが提案されている。この特許で は大結節プロテーゼが肩峰の端部の下に配置された関節窩プロテーゼおよび肩峰 プロテーゼと係合し、肩峰プロテーゼの縦方向長さは鎖骨の切除された先端へ向 かって横方向に延びている。このプロテーゼは上記フランス特許またはフランス 特許第 2,541,890号に記載のような大結節球の支持部の役目をする単一の肩峰− 関節窩プロテーゼとほぼ同じ機能を有している。 また、肩甲骨の関節窩内で上腕骨を外転した時に上腕骨頭部を下方へ変位させ るために、上腕骨頭部または関節窩の中心に対して横方向へ中心がズレた球状扇 形の大結節要素を用いることも既に提案されている。この大結節要素は上腕骨を 外転した時に肩峰−鳥口要素の下側と当接してカムとして作用し、外転時に上腕 骨の頭部と一緒に下がるようになっている。 しかし、多くの場合、特に、腕を外転した時または上げた時に通常は上腕骨を 下方へ移動させる関節周囲の筋または膜筋が欠如しているか、全く無能である場 合には、プロテーゼとそれを支持する骨組織に極めて強い力が加わり、最後には 損傷することになる。 本発明は、上記の力から考えて、三角筋の収縮時に三角筋の挙上筋頭部の滑車 作用では上腕骨を適当に下げるには不十分な場合に上記問題点を解決するもので ある。 本発明のプロテーゼは２つの要素、すなわち例えばフランス特許第 2,418,644 号に記載の形式の直径が好ましくは上腕骨頭部以下である凸状の球形部分(secte ur)の形を有し且つ大結節への固定手段を有する大結節プロテーゼ要素と、この 大結節要素に対する当接面を有し且つ肩峰の下側表面に固定する手段を 有する肩峰プロテーゼ要素とで構成され、肩峰プロテーゼ要素は大結節部材を覆 い、肩峰プロテーゼ要素の寸法は、鎖骨の所までは延びずに、肩甲棘から柱の所 で肩峰を切断した時に肩峰プロテーゼ要素が肩峰と一緒に自由に変位できるよう な寸法である。 従って、損傷を受けていない腱および靱帯を介して肩峰を鎖骨および菱形筋上 部に固定した状態で、肩峰を柱の所で切断すると、肩峰と肩峰プロテーゼ要素と で形成された組立体が実際の小皿状要素を形成する。この小皿状要素は三角筋収 縮時に上腕骨頭部を強く押して下げる。この滑車(poulie)作用は腕を上げる動作 の開始時に強くなる。この作用は腕を上げる動作の終了時に、鎖骨、肩峰および 上腕骨が同一水平面上にきた時には無効になる。 肩峰プロテーゼ要素の当接面は凹部にするのが好ましく、その半径は大結節プ ロテーゼ要素の凸状球形部分の半径にほぼ等しいか、それ以上にして、２つの要 素の相対横方向移動を小さくすることができる。 肩峰プロテーゼ要素肩の寸法は柱の所で肩甲棘を切除したことによって解放さ れた肩峰のほぼ全長にすることができる。 一般に、肩峰プロテーゼ要素は柱の所の切断で肩甲棘から解放された肩峰の一 部の下側表面から出ないのが好ましい。 本発明はさらに、大結節プロテーゼ要素を移植する通常の段階の外に、柱の所 で肩甲棘から肩峰を切断し、切断前または切断後に肩峰の下に肩峰プロテーゼ要 素を固定する段階を有し、肩峰は肩峰プロテーゼ要素によって小皿状の関節の役 目をするために肩甲棘に対して自由であるプロテーゼの移植方法を提供する。 大結節プロテーゼ要素の中心はフランス特許第2,418,644 号の場合のように上 腕骨頭部の中心に対して横方向へズラすことができる。 大結節プロテーゼ要素は少なくとも１本のアンカーピンを有する球状セグメン ト、好ましくは金属で形成できる。アンカーピンは上記フランス特許に記載のよ うに、上腕骨頭部の大結節プロテーゼ要素に形成された穴にセメント、その他の 周知の任意手段で固定でき、切断、切削加工で作ることができる。 本発明の第１実施例では、大結節プロテーゼ要素はアンカーピンを有する中実 な球状セグメントで構成され、アンカーピンはセメントまたは周知の他の任意手 段で上腕骨頭部の切断部に形成した溝中に固定される。 この場合は、大結節プロテーゼ要素を高密度ポリエチレンまたはそれに類似し た他の任意材料で作ることができる。 本発明の１つの変形例では、大結節プロテーゼ要素が端縁部に複数の固定タブ を有する球状キャップの形をしている。固定タブは上腕骨頭部の切断部に形成し た溝中にセメントまたは周知の他の任意手段でアンカー・固定される。 この場合、大結節プロテーゼ要素は高密度ポリエチレンまたは人体で許容され るステンレス鋼等の金属で作ることができ、完全に摺動できるようにするために 、艶出し・研磨可能な高い硬度を有する材料、例えば酸化クロム、その他の任意 材料の高密度セラミックで艶出しまたは被覆することができる。 大結節プロテーゼ要素の内側表面は用いる密封セメント、例えばメチルメタク リレートに完全に結合させるために粗面または有孔セラミックで被覆するのが好 ましい。また、有孔セラミックが存在すると骨が回復する。 肩峰プロテーゼ要素は肩峰の下側表面全体を覆う単一部品、好ましくは高密度 ポリエチレンで構成するのが好ましい。その関節表面は凸状の球状大結節プロテ ーゼ要素とほぼ同じ直径の凹状球面であるのが好ましい。この肩峰プロテーゼ要 素の結合面はわずかに凹状をした肩峰の下側表面と対向するように配置され且つ 肩峰の下側表面に形成された溝に確実に固定可能なスタッドまたはペグ等の固定 手段を有している。 肩峰プロテーゼ要素は大結節プロテーゼ要素に対する小皿状アーチの役目をす るのに十分な機械的強度を有する金属で作ることができる。この肩峰プロテーゼ 要素は人体に許容される艶出しされたステンレス鋼で作るのが好ましい。 大結節プロテーゼ要素がポリエチレンまたは高密度セラミックで被覆された金 属で作られていれば完全であるが、逆に、大結節プロテーゼ要素を艶出しされた スデンレス鋼の球状キャップとし、肩峰プロテーゼ要素の少なくとも下側表面を 高密度セラミックで被覆したものにすることもできる。 肩峰の下側表面と接触する肩峰プロテーゼ要素のこの表面は骨の回復が容易に なるような表面粗度を有するように処理するか、回復を容易にする他の手段、例 えばヒドロキシアパタイトの層やアルミナ等の有孔セラミックで被覆することが できる。 種々の固定手段、特にセメントを用いることができるが、機械的固定手段を補 助するためにヒドロキシアパタイトを用いるのが望ましいことが多く、いずれに 場合でも効果が直ちに現れる。すなわち、機械的手段によって一次的固定が保証 された上に、骨の面と接触して表面に噴霧されたヒドロキシアパタイトによって 外科後の数カ月には二次的固定が得られる。機械的固定を袖助するこの固定は物 理化学的な自然な固定で、ヒドロキ シアパタイト、一般にカルシウムヒドロキシアパタイトに骨の成分が吸着させて 得られる。 本発明の上記以外の特徴および利点は、添付図面を参照した下記の説明から明 らかになろう。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。 図１は通常状態での肩の概念的正面断面図。 図２はプロテーゼを含む肩の、腕を上げる運動の最初の段階での正面断面図。 図３はプロテーゼを含む肩の、腕を上げる運動の最終段階での正面断面図。 図４は大結節プロテーゼ要素の投影図。 図５は肩峰プロテーゼ要素の投影図。 図１は関節窩３を有する肩甲骨２と、この肩甲骨２と共働する上腕骨頭部４の 関節表面とを示している。上腕骨頭部４の上には柱６を介して肩甲骨２と一体に なった肩峰５がある。上腕骨頭部４は棘上筋７によって肩峰５から分離されてい る。上腕骨頭部４は鎖骨外側部分に固定された三角筋８と、肩峰５と、肩甲棘と によって取り囲まれている。肩峰５は肩峰−鎖骨靱帯10によって鎖骨９にも固定 されている。菱形筋上部11は肩峰５と鎖骨２とに共通している。 図２は本発明のプロテーゼを有する肩を示している。この場合、肩峰５は切断 されて柱６から離れており、棘上筋７は障害のため消失している。 肩峰プロテーゼ要素12は凹んだ球状関節表面12a を有し、図から分かるように 、鎖骨９までは延びておらず、従って、肩峰プロテーゼ要素12は鳥口突起とは干 渉しない。肩峰プロテーゼ要素12は、外科医が肩峰５に形成した溝内に挿入した スタッド を介して肩峰５の下側面に通常の外科用セメントを用いて固定される。 また、大結節は除去されており、凹んだキャップ12a とほぼ同じ半径を有する 球状キャップの形をした大結節プロテーゼ要素13に置換されている。 肩峰プロテーゼ要素12の厚さは、棘上筋７の消失による肩峰５の下方に残され た空間を補うために、約８〜10mmにするのが好ましい。運動能力を上げる場合に はこの厚さを増加する。 上腕カフ筋の筋肉伸張度は、肩峰プロテーゼ要素12の厚さを選択するか、上腕 骨骨幹に沿った大結節要素の位置または長さを選択することによって調節するこ とができる。例えば、長さおよび／または厚さの異なる複数の肩峰プロテーゼ要 素12を用意しておくことができる。 腕を上げる運動の開始状態を示す図２の位置では、肩峰５およびそのプロテー ゼ12は三角筋８の収縮によって下方へ引張られ、肩峰プロテーゼ要素12は大結節 要素13を介して上腕骨頭部４を下方へ押す。上腕骨頭部４上に加わる肩峰５の圧 力は腕が上がるにつれて低下するということは理解できよう。また、図３から分 かるように、上腕骨頭部４が水平になった時には三角筋８、肩峰５と肩峰プロテ ーゼ要素12で形成される小皿状組立体および鎖骨９はほぼ水平面内に整列する。 肩峰プロテーゼ要素12を、その柱６から離して、肩峰５の下側表面の下に固定 するために、肩峰プロテーゼ要素12の上側表面12b にペグまたはスタッド12c を 設け、このスタッド12c を肩峰５に形成した溝に挿入し、セメントで固定する。 上側表面12b およびスタッド12c を表面処理するか、適当な材料の層で被覆して 、骨の同化を容易にするのが好ましい。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．大結節の位置に固定する手段を有する凸状の球形部分の形をした大結節プロ テーゼ要素(13)と、この大結節要素(13)との当接面を有しかつ肩峰の下側表面に 固定する手段を有する肩峰プロテーゼ要素(12)との２つの要素を有し、肩峰プロ テーゼ要素(12)は大結節プロテーゼ要素(13)を覆い、肩峰プロテーゼ要素(12)は 鎖骨までは延ない寸法を有し、肩峰を肩甲棘の柱の所で切断した状態で肩峰プロ テーゼ要素(12)が肩峰と一緒に自由に変位できるような、肩の大結節−肩峰の全 プロテーゼ。 ２．当接面が凹部、好ましくは球状である請求項１に記載のプロテーゼ。 ３．当接面が大結節プロテーゼ要素の球形部分とほぼ同じ半径を有する請求項２ に記載のプロテーゼ。 ４．柱の所で切断することによって肩甲棘から解放された肩峰の下側表面から肩 峰プロテーゼ要素(12)が外へ出ない請求項１〜３のいずれか一項に記載のプロテ ーゼ。 ５．肩峰プロテーゼ要素(12)が肩峰の解放された部分の下側表面全体を覆う請求 項１〜４のいずれか一項に記載のプロテーゼ。 ６．肩峰プロテーゼ要素(12)の上側表面(12b)が肩峰の下側表面と合うように配 置され、肩峰の下側表面に形成された穴に固定する固定手段(12c)を有する請求 項１〜５のいずれか一項に 記載のプロテーゼ。 ７．肩峰プロテーゼ要素の厚さが約８〜10mmである請求項１〜６のいずれか一項 に記載のプロテーゼ。 ８．大結節プロテーゼ要素(13)がアンカーピンを有する球状セグメントで構成さ れる請求項１〜７のいずれか一項に記載のプロテーゼ。 ９．大結節プロテーゼ要素(13)が球状キャップの形をしている請求項１〜７のい ずれか一項に記載のプロテーゼ。 10．大結節プロテーゼ要素(13)および／または肩峰プロテーゼ要素(12)が金属、 特にステンレス鋼、特に高密度セラミックで関節表面が被覆されたまたは高密度 ポリエチレンで作られている請求項１〜９のいずれか一項に記載のプロテーゼ。 11．大結節プロテーゼ要素(13)および／または肩峰プロテーゼ要素(12)が固定用 セメントへの結合および骨の同化を容易にする材料で処理または被覆されている 請求項10に記載のプロテーゼ。 12．大結節プロテーゼ要素(13)および／または肩峰プロテーゼ要素(12)の結合面 がヒドロキシアパタイト、特にカルシウムヒドロキシアパタイトで被覆されてい る請求項１〜11のいずれか一項に記載のプロテーゼ。 13．大結節プロテーゼ要素を移植する通常の段階の外に、柱の所で肩甲棘から肩 峰を切断し、切断前または切断後に肩峰の下に肩峰プロテーゼ要素を固定する段 階を有し、肩峰は肩峰プロテーゼ要素によって小皿状の関節の役目をするために 肩甲棘に対して自由である請求項１、４または５のいずれか一項に記載のプロテ ーゼの移植方法。 14．肩峰プロテーゼ要素の厚さを変えて肩のカフ（回施腱板）の筋肉の伸張を調 節する請求項13に記載の方法。