【発明の詳細な説明】発明の名称
HIVプロテアーゼ阻害剤の微生物合成発明の背景
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によりコードされるプロテアーゼ
を阻害する化合物、特に、後述の実施例に記載の化合物Jの誘導体のような特定
のオリゴペプチド類似体の新規な合成法に関する。これらの化合物は、HIV感
染の予防、HIV感染の治療及びその結果としての後天性免疫不全症候群(AI
DS)の治療に有用である。これらの化合物はレニン及び他のプロテアーゼの阻
害にも有用である。
レトロウイルスと称されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、免疫系の進
行性破壊(後天性免疫不全症候群;AIDS)や、中枢及び末梢神経系の変性を
含む症候群の病因因子である。このウイルスは、かつては、LAV、HTLV−
III又はARVとして知られていた。レトロウイルス複製の一般的な特徴は、ウ
イルスの構築及び機能に必要とされる成熟ウイルスタンパク質を産生させるため
の、ウイルスがコードするプロテアーゼによる前駆体ポリタンパク質の広範な翻
訳後プロセシングである。このプロセシン
グを阻害すると、通常は感染性であるウイルスの産生が妨げられる。例えば、K
ohl,N.E.ら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.85,468
6(1988)は、HIVがコードするプロテアーゼを遺伝子操作により不活化
すると、未成熟な非感染性のウイルス粒子が産生されることを証明した。これら
の結果は、HIVプロテアーゼの阻害がAIDSの治療及びHIV感染の予防又
は治療に対する有効な方法であることを示している。
HIVのヌクレオチド配列は、1つの読み取り枠中にpol遺伝子が存在する
ことを示している[Ratner,L.ら,Nature,313,277(1
985)]。アミノ酸配列が相同であることから、該pol配列が逆転写酵素、
エンドヌクレアーゼ及びHIVプロテアーゼをコードすることが証明される[T
oh,H.ら,EMBO J.,4,1267(1985);Power,M.D.
ら,Science,231,1567(1986);Pearl,L.H.ら
,Nature,329,351(1987)]。本発明の新規な方法により製
造し得る特定のオリゴペプチド類似体を含む化合物は、HIVプロテアーゼの阻
害剤である。1993年5月12日に公開されたEPO
541,168号を参照されたい。さらに、例えば、該文献に記載の化合物Jも
参照されたい。
かつては、化合物J及び関連化合物の合成は12段階からなる手順により行わ
れた。この手順は、EPO541,168号に記載されている。該経路は、極め
て長い(12ステップ)ために、時間がかかり且つ多大な労力を要すると共に、
現在のところ高価な多くの試薬及び出発物質を必要とする。経済的にも時間の節
約の点からも反応ステップ及び試薬が少なくてすむ経路が望ましい。
本出願人は、化合物Jを、選択された微生物系、MA7065と共にインキュ
ベートして、化合物Jの種々の誘導体を同定・合成した。該新規な化合物はHI
Vプロテアーゼの有効且つ強力な阻害剤である。発明の要旨
培養株MA7065を用いて発酵させた生物変換産物(biotransfo
rmation products)は有効なHIVプロテアーゼ阻害剤である
。これらの産物は、それ単独でも、他の抗ウイルス剤、免疫調節剤、抗生物質又
はワクチンと組み合わせても、化合物、医薬上許容し得る塩、医薬組成物の成分
として、HIV感染の予
防又は治療、及びAIDSの治療に有用である。AIDSの治療法及びHIV感
染の予防法又は治療法も記載する。発明の詳細な説明
以下の構造:
を有する化合物Jの生物変換産物又はその塩若しくは水和物の合成法を開示する
。
該方法は、
(a)培養株MA7065を得るステップ;
(b)該培養株を化合物Jと共にインキュベートするステップ;
(c)
化合物A
化合物C1
化合物C2
化合物D
化合物E
を含む生物変換産物又はその塩若しくは水和物を単離するステップ
を含む。好ましい化合物は化合物Aである。この方法により得られた精製された
生物変換産物並びに対応化合物も包含される。ATCC寄託物
本願の米国出願の前に、微生物(Merck Culture Collect
ion MA 7065)の試料をAmerican Type Culture C
ollection(ATCC),12301 Parklawn Drive,
Rockville,MD 20852に寄託した。該培養株の受託番号は
である。この寄託物は、ATCCに少なくとも30年間保存され、該寄託物を
開示する特許が認可されれば一般に利用可能となる。寄託物が利用可能であると
いうことは、関係官庁のアクションにより認可された特許権が制限(derog
ation)された場合に、当該発明を実施するライセンスを構成するものでは
ないことを理解されたい。ATCCの一般的な特性
形態学的、培養的、生物学的及び生理学的特性を含む物
理的特性及び生物分類学を以下に簡単に説明する。
これまで行われてきた生物分類学的分析に基づき、該培養株はStrepto
myces目に分類された。
以下は、Streptomyces種、MA7065(AS2023,CRA
−3−4 ATCC )の一般的な説明である。この培養株は、生物変換に
より、HIVプロテアーゼ阻害剤である化合物Jの類似体を産生させる。増殖、
一般的な培養特性及び炭素源の利用について、Shirling及びGottl
eibの方法(Internat.J.System.Bacteriol.1
6,313−340)に従って観察を行った。該細胞の化学組成は、Leche
valier及びLechevalierの方法(Actinomycete
Taxonomy,A.Dietz及びD.W.Thayer編,Society
for Industrial Microbiology,1980)を用いて
決定した。全細胞脂肪酸を誘導体化し、メチルエステル(FAMEs)として、
MIDI Microbial Identification System(
Microbial Identification Systems,Newa
rk,Delaware)を用い、
Miller及びBergerの手順に従い、ガスクロマトグラフィーにより分
析した。培養株の色は、Inter−Society Color Counci
l−National Bureau of Standards Centroi
d Color Charts(NBS Circular 553,1985の付
録であるUSDEPT.of Commerce National Burea
u of Standards)に記載されている色基準と比較して決定した。
供給源−培養株MA7065は、試料採取の48時間前に制御殺菌した休閑地の
そばの防火帯で採取した土壌試料から分離した。該休閑地の所在地は、Sant
a Rosa Park,Guanacaste PR,Costa Ricaであ
った。
化学分類学的特性 − MA7065のペプチドグリカンは、LL−ジアミノピメ
リン酸を含んでいる。主要な全細胞脂肪酸を表1に列記する。
一般的な増殖特性 − 酵母エキス麦芽エキス寒天、グリセロール−アスパラギン
、無機塩−スターチ寒天、ツァペック寒天、サブローマルトース寒天、オートミ
ール寒天及びトリプチカーゼ大豆ブイヨン寒天上で、良好〜優秀な増殖が認めら
れた。水道水寒天上で中程度の増殖が認められた。増殖は、27°と37°で生
起した。表2参照。
コロニー形態 −(21dの酵母−麦芽寒天上)基体の菌糸は暗黄褐色である。
気中胞子集団は豊富で、綿毛状であり、色は黄色っぽい灰色である。コロニーは
不透明で盛り上がっており、全周に縁があり、表面は光沢がない。コロニーは弾
性の菌糸組織を有する。
微小形態 − 気中菌糸(0.57μm)は輪生状に基質菌糸から盛り上がってい
る。成熟培養株(7−28d p.i.)では、気中菌糸は、胞子の鎖をなして終端し
、短くゆるや
かな螺旋を形成している。胞子形成は、酵母エキス麦芽エキス寒天、無機塩−ス
ターチ寒天、オートミール寒天、グリセロールアスパラギン寒天、ツァペック寒
天及び水道水寒天上で生起する。気中胞子集団は、無機塩−スターチ寒天上では
合体している。
その他の生理学的反応 − 培養株は、ペプトン−鉄寒天ではH2Sを産生しない
。メラノイド色素は、ペプトン−鉄寒天でもトリプトン−酵母エキスブイヨンで
も形成されなかった。スターチは軽度に加水分解されていた。炭素源の利用パタ
ーンは以下の通りであった:D−アラビノース、L−アラビノース、D−フルク
トース、α−D−グルコース、イノシトール、α−D−ラクトース、β−D−ラ
クトース、D−マルトース、D−マンニトール、D−マンノース、L−ラムノー
ス及びスクロースの利用は良好;D−ラフィノース及びD−キシロースの利用は
中程度であった。表3参照。
鑑別 − 細胞壁を分析すると、MA7065がタイプIの細胞壁を有することが
示される。微小形態学的実験により、該培養株が、気中菌糸から盛り上がった偽
輪生を形成する短い螺旋形の坦胞子体上に短い胞子鎖を生成させることが示され
る。これらは、Streptomyces種のいくつかの菌株に典型的な特性で
ある。MA7065の表現型データを、妥当な根拠に基づいて生物分類学文献に
発表されたStreptomyces種の表現型データと比較す
ると、前者の菌株がStreptomyces albogriseolus、
Stmy.lydicus、Stmy.parvulus及びStmy.roc
heiiと幾らか相似していることが示される。これらの種のうちでは、Stm
y.lydicusのみが気中胞子集団の合体を示すと報告されている。しかし
、Stmy.lydicusの坦胞子体は、偽輪生を形成してはいない。MA7
065の脂肪酸プロフィールをMIDI放線菌類ライブラリー(3.7バージョ
ン)と比較すると、Stmy.lydicusとの相似度は低いことが示された
。
測定基準としてユークリッドの距離を用い、グループ中で分類学的距離が一番
遠いものを分析してクラスター分析を行った。この分析結果から、MA7065
が他の関連菌株よりもStmy.lydicusに対する相似度が高いことが証
明された。これらの知見は、形態学的データ及び生理学的データと一致する。こ
れらの知見を基にすれば、MA7065はStmy.lydicusの新規な菌
株である。
好ましい窒素源は、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、グルテンミール、綿実
油ミール、大豆ミール及び他の植物
ミール(部分的に又は完全に脱脂したもの)、カゼイン加水分解産物、大豆加水
分解産物及び酵母加水分解産物、コーンスティープリカー、酵母粉末、小麦胚芽
、フェザーミール、ピーナッツパウダー、DS(ディスティラーズソルブルス)
など、並びにアンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、
リン酸アンモニウムなど)のような無機及び有機窒素化合物、尿素、アミノ酸な
どである。
炭素源及び窒素源は、組み合わせて用いると有利であるが、それらを純粋な形
態で用いる必要はない。というのは、微量の増殖因子と、大量の無機栄養素を含
む、より純度の低い物質も使用に適しているからである。所望なら、炭酸ナトリ
ウム若しくはカルシウム、リン酸ナトリウム若しくはカリウム、塩化ナトリウム
若しくはカリウム、ヨウ化ナトリウム若しくはカリウム、マグネシウム塩、銅塩
、コバルト塩などのような鉱物塩を培地に加えてもよい。必要なら、特に培地が
高度に発泡性である場合には、流動パラフィン、脂肪油、植物油、鉱物油又はシ
リコーンのような消泡剤を加えてもよい。
本発明の化合物は、熟練した技術者による合成有機手順
によっても得ることができる。
大量にMA7065を生産するための条件としては、浸漬好気性培養条件が好
ましい。少量の生産には、フラスコ又はビン中での振とう又は表面培養を用いる
。さらに、増殖を大型タンク中で行う場合、生産プロセスにおける増殖遅延を回
避するために、生産タンク中での接種に微生物の栄養形を用いるのが好ましい。
従って、先ず、比較的少量の培地に「斜面」で生産された微生物の胞子又は菌糸
を接種し、「シード培地」とも称される該接種培地を培養して微生物の栄養形接
種原を生産し、次いで、培養された栄養形接種原を大型タンクに無菌移入するの
が望ましい。接種原を生産する発酵培地は、一般に、接種前に培地をオートクレ
ーブに入れて殺菌する。
培養混合物の攪拌及び通気は多様な方法で実施し得る。攪拌は、プロペラ若し
くは類似の機械的撹拌装置を用いたり、発酵混合物を回転若しくは振とうしたり
、種々のポンプ装置を用いたり、又は培地に無菌空気を通したりして行うことが
できる。通気は、発酵混合物に無菌空気を通して行うことができる。
発酵は、通常、約20〜40℃、好ましくは25〜35℃
の温度で、約10〜64時間実施するが、発酵の条件及びスケールに応じて異な
り得る。産生培養株は、220rpmで操作される回転式振とう培養機上28℃
で約48時間インキュベートするのが好ましく、その場合、発酵培地のpHは収
穫時まで4.85に維持する。
発酵の実施に好ましい培養/産生培地には以下の培地が含まれる:
シード培地(KE培地):0.1%デキストロース、1%デキストリン、0.3
%肉エキス、0.5%Ardamine pH、0.5%NZアミン タイプE、
0.005%MgSO4・7H2O及び0.037%K2HPO4(0.05%Ca
CO3を用いてpHを7.1に調整)からなる;
生物変換培地(大豆−グルコース):2%グルコース、0.5%大豆ミール、0
.5%酵母エキス、0.5%NaCl、0.98%MES(pHを7.0に調整
)を含む。
生産物は、他の公知物質の回収に一般に用いられている慣用手段により培地か
ら回収し得る。産生された物質は、培養ブイヨンのろ過若しくは遠心により、減
圧下の濃縮、凍結乾燥、塩化メチレン若しくはメタノールなどのような慣用溶媒
による抽出、pHの調整、慣用樹脂(例えば、ア
オン若しくはカチオン交換樹脂、非イオン吸着樹脂など)による処理、慣用吸着
剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による
処理、結晶化、再結晶などのような慣用法により得られる。
本発明の化合物は、抗ウイルス化合物用のスクリーニングアッセイの調製及び
実施に有用である。例えば、本発明の化合物は、より強力な抗ウイルス化合物用
の優れたスクリーニングツールである酵素突然変異体の分離に有用である。さら
に、本発明の化合物は、例えば、競合阻害による、HIVプロテアーゼに対する
他の抗ウイルス物質の結合部位の確立又は決定に有用である。従って、本発明の
化合物は、これらの目的で販売されるべき市販品である。
本発明の化合物は、HIVプロテアーゼの阻害、ヒト免疫不全ウイルス(HI
V)感染の予防又は治療、及びAIDSのような後天性病原性病態の治療に有用
である。AIDSの治療又はHIV感染の予防若しくは治療とは、多岐にわたる
HIV感染状態:症候性及び非症候性のAIDS、ARC(AIDS関連症候群
)、並びにHIVに対する実際若しくは潜在的接触の治療を含むがそれらには限
定されないものと定義される。本発明の化合物は、例えば、輸血、
臓器移植、体液交換、咬傷、偶発的な注射針の一剌し又は手術中の患者血液への
接触による過去のHIVへの接触に起因し得るHIV感染の治療に有用である。
これらの目的で、本発明の化合物は、経口的に、非経口的に(皮下注射、静脈
内、筋肉内、胸骨内注射若しくは注入法)、吸入スプレーにより、又は経腸的に
、慣用の無毒性の医薬上許容し得る担体、アジュバント及びビヒクルを含む用量
単位剤形として投与し得る。
従って、本発明により、HIV感染及びAIDSを治療するための方法及び医
薬組成物も提供される。該治療には、そのような治療を要する患者に、医薬担体
及び治療上有効量の本発明の化合物又はその医薬上許容し得る塩を含む医薬組成
物を投与することを含む。
これらの医薬組成物は、経口投与し得る懸濁剤又は錠剤;経鼻スプレー;例え
ば、滅菌注射用水性若しくは油性懸濁剤のような滅菌注射用製剤;又は座薬の形
態であってよい。
懸濁剤として経口投与する場合、これらの組成物は、医薬製品業界で周知の方
法に従って製造され、賦形剤としての微晶質セルロース、懸濁剤としてアルギン
酸若しくはア
ルギン酸ナトリウム、増粘剤としてメチルセルロース及び当業界では公知の甘味
剤/着香剤を含み得る。即放性錠剤として、これらの組成物は、微晶質セルロー
ス、リン酸二カルシウム、スターチ、ステアリン酸マグネシウム及びラクトース
並びに/又は当業界において公知の他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈
剤及び滑沢剤を含み得る。
経鼻エアゾール又は吸入により投与する場合、これらの組成物は、医薬品業界
において周知の方法に従って製造され、ベンジルアルコール若しくは他の適当な
保存剤、生物利用性を促進する吸収促進剤、フルオロカーボン、並びに/又は当
業界において公知の他の可溶化剤若しくは分散剤を用い、生理食塩水溶液として
製造し得る。
注射用溶剤又は懸濁剤は、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リン
ガー液若しくは等張塩化ナトリウム溶液のような適当な無毒性で非経口的に許容
し得る希釈剤若しくは溶媒、又は合成のモノ−若しくはジグリセリドを含む低刺
激性の滅菌不揮発性油及びオレイン酸を含む脂肪酸のような適当な分散剤若しく
は湿潤剤及び懸濁剤を用い、公知方法に従って調剤し得る。
座薬の形態で経腸投与する場合、これらの組成物は、薬
剤を、常温では固体であるが直腸内で液化及び/若しくは溶解して薬剤を放出す
る、ココアバター、合成グリセリドエステル若しくはポリエチレングリコールの
ような適当な無刺激性賦形剤と混合して調剤し得る。
上記症状の治療又は予防には、1日当たり、0.02〜5.0又は10.0g
の範囲の用量レベルで、2回〜5回以上にわけて経口投与するのが有用である。
例えば、HIV感染は、1日当たり、体重1gにつき、1.0〜50mgの該化
合物を、1回〜4回に分けて投与して治療するのが効果的である。1つの好まし
い投与計画では、各患者に、100〜400mgの用量を6時間置きに経口投与
する。しかし、特定の患者に対する特定の用量レベル及び投与頻度は、用いられ
る特定の化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用期間、患者の年齢、体重
、全身的な健康状態、性別、食事、投与の形態及び時間、排泄速度、薬剤の組み
合わせ、特定の症状の重篤度並びに宿主が受けている療法に応じて異なり得る。
本発明はさらに、HIVプロテアーゼ阻害性化合物とAIDSの治療に有用な
1種以上の薬剤との組み合わせにも関する。例えば、本発明の化合物は、接触前
でも接触後で
も、当業者には公知の有効量のAIDS抗ウイルス剤、免疫調節剤、感染防止剤
又はワクチンと組み合わせて投与するのが効果的であり得る。
本発明の化合物とAIDS抗ウイルス剤、免疫調節剤、抗感染剤又はワクチン
との組み合わせの範囲は、上記表中のリストには限定されず、原則として、AI
DSの治療に有用ないずれの医薬組成物とのどの組み合わせをも包含するものと
理解されたい。
表Cの特定の化合物は以下の通りである:
化合物Bは、6−クロロ−4−(S)−シクロプロピル−3,4−ジヒドロ−
4−((2−ピリジル)エチニル)キナゾリン−2(1H)−オンであり;化合
物Cは、(−)−6−クロロ−4(S)−トリフルオロメチル−1,2−ジヒド
ロ−4(H)−3,1−ベンズオキサジン−2−オンであり;ネビラピン(ne
virapine)は、11−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−4−メチ
ル−6H−ジピリド[3,2−b:2′,3′−e][1,4]ジアゼピン−6
−オンである。化合物B及びCは、EP0,
569,083号(参照として本明細書に組み込むものとする)の方法に従って
合成する。ネビラピンは、Klunder,J.M.ら,J.Med.Chem
.35,1887(1992);Hargrave,K.D.ら,J.Med.
Chem.34,2231(1991);Cohen,K.A.ら,J.Bio
l.Chem.266,14670(1991)(これら3つの参考文献は全て
参照として本明細書に組み込むものとする)に従って合成する。
好ましい組み合わせは、HIVプロテアーゼ阻害剤とHIV逆転写酵素非ヌク
レオシド阻害剤との同時又は交互治療である。該組み合わせ中の任意成分である
第3の成分は、AZT、dC又はddIのようなHIV逆転写酵素ヌクレオシド
阻害剤である。好ましいHIVプロテアーゼ阻害剤は化合物Aである。好ましい
HIV逆転写酵素非ヌクレオシド阻害剤には、化合物B、化合物C又はネビラピ
ンが含まれる。これらの組み合わせは、HIV感染の広がり(spread)の阻
害にも相乗作用を有し得る。好ましい組み合わせには、以下の、(1)化合物A
と、好ましいHIV逆転写酵素非ヌクレオシド阻害剤と、場合によって、AZT
又はddI若しくはddCとの組み合わせ;(2)化
合物Aと、AZT又はddI若しくはddCとの組み合わせが含まれる。微生物中で発現されたHIVプロテアーゼの阻害アッセイ
大腸菌中で発現されたプロテアーゼと、ペプチド基質[Val−Ser−Gl
n−Asn−(ベータナフチル)Ala−Pro−Ile−Val、反応開始時
には0.5mg/ml]との反応の阻害実験を、50mM 酢酸ナトリウム(p
H5.5)中、30℃で1時間行った。25μlのペプチド水溶液に、1.0μ
lのDMSO中の種々の濃度の阻害剤の溶液を加えた。0.133M 酢酸ナト
リウム(pH5.5)及び0.1%ウシ血清アルブミンの溶液中0.33nMプ
ロテアーゼ(0.11ng)15μlを加えて反応を開始した。160μlの5
%リン酸を加えて反応をクエンチした。反応生成物を、HPLC(VYDAC広
孔5cmのC−18逆相、アセトニトリル勾配、0.1%リン酸)にかけて分離
した。反応阻害度を、生成物のピーク高からIC50として測定した。別々に合成
した生成物をHPLCにかけ、定量標準及び生成物の組成を確認した。
細胞感染の広がりアッセイ
Nunberg,J.H.ら,J.Virol.65,
4887(1991)に従って、細胞培養におけるHIV感染の広がりの阻害を
測定した。このアッセイでは、予決定された接種原を用いてMT−4 T−リン
パ球にHIV−1(特に断りのない限り、野生型)を感染させ、培養物を24時
間インキュベートした。間接免疫蛍光法によると、この時点では、細胞の≦1%
が陽性であった。次いで、細胞を徹底的に洗浄し、96ウエルの培養皿に分配し
た。該ウエルに2倍希釈系列の阻害剤を加え、さらに3日間培養を継続した。感
染後4日目には、対照培養中100%の細胞が感染した。HIV−1 p24の蓄
積はウイルス感染の広がりに比例していた。細胞培養阻害濃度を、感染の広がり
を少なくとも95%低減させる阻害剤濃度、即ちCIC95と定義し、ナノモル/
リットルで表した。
ウイルス感染の広がりの阻害
A.HIVに感染したMT−4細胞の懸濁液の調製
0日目に、MT細胞に、250,000/mlの濃度でHIV−1菌株IIIb
ストックの1:1000希釈液(1日目に≦1%の感染細胞を、4日目に25〜
100%の感染細胞を得るに十分な最終125pg p24/ml)を感染させた
。以下の培地中で細胞に感染させ、増殖させた:R
PMI 1640(Whittaker BioProducts)、10%不活化
ウシ胎児血清、4mM グルタミン(Gibco Labs)及び1:100のペニ
シリン−ストレプトマイシン(Gibco Labs)。
混合物を5%CO2雰囲気下に37℃で一晩インキュベートした。
B.阻害剤による治療
ナノモル範囲の濃度のペア組み合わせのマトリックスを用意する。1日目に、
96ウエルマイクロタイター細胞培養プレート中の等量のHIV感染MT−4細
胞(1ウエル当たり50,000個)に、阻害剤の125μlアリコートを加え
る。5%CO2雰囲気下に37℃で3日間インキュベーションを継続する。
C.ウイルス感染の広がりの測定
マルチチャンネルピペットを用い、沈殿した細胞を再懸濁し、125μlを別
のマイクロタイタープレート中に採取する。上清をHIV p24抗原について
アッセイする。
以下に記載のように、酵素イムノアッセイにより、HIV p24抗原の濃度
を測定する。測定すべきp24抗原のアリコートを、HIVコア抗原に特異的な
モノクローナル
抗体でコーティングしたマイクロウエルに加える。この時点及び後続の他の適切
なステップで、マイクロウエルを洗浄する。次いで、ビオチニル化HIV特異的
抗体、次いで、結合したストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼを加
える。加えられた過酸化水素及びテトラメチルベンジジン基質から色反応が生じ
る。色の濃さはHIV p24抗原の濃度に比例する。相乗作用度及び阻害増進度の計算
相乗作用が存在する場合、阻害剤のペア組み合わせは、各阻害剤のみ、又は各
阻害剤の単なる相加阻害の場合に比べて、ウイルス感染の広がりの阻害が著しく
増進されたことが知見される。
該データは以下のように処理される:部分阻止濃度率〔FIC(fracti
onal inhibitory concentration ratios)
〕は、Elionら,J.Biol.Chem.,208,477(1954)
に従って計算する。最大相乗作用であるFICSの最小和を、種々のペア組み合
わせについて測定する。その数が小さければ小さいほど、相乗作用は大きくなる
。
実施例1
A.培養株の調製
培養株MA7065を、それぞれ、シード培地及び生物変換培地中で増殖させ
た。シード培地(KE培地)は、0.1%デキストロース、1%デキストリン、
0.3%肉エキス、0.5%ArdaminepH、0.5%NZアミンタイプ
E、0.005%MgSO4・7H2O及び0.037%K2HPO4(0.05%
CaCo3を用いてpHを7.1に調整)からなる。生物変換培地(大豆−グル
コース)は、2%グルコース、0.5%大豆ミール、0.5%酵母エキス、0.
5%NaCl、0.98%MES(pHは7.0に調整)を含む。
B.生物変換スクリーニング
MA7065をKEシード培地中で増殖させた。回転振とう培養盤(220r
pm)を用い27℃で一晩インキュベートした後、各培養株2mlを、50ml
の大豆−グルコース生物変換培地を含む250ml容量のバッフル付きフラスコ
に移した。0時間に、0.5mlのDMSOに溶解した5mgの化合物Jを各フ
ラスコに加え、シード培養の場合と同じようにインキュベーションを継続した。
種々の時間間隔で、生物変換培養物試料をHPLCにかけて調
べた。HPLCで測定して、基質の最大変換時点で培養物を採取し、分離、精製
し、特性決定した。
C.生物変換産物の分離及び特性決定
初期に25mgのHIVプロテアーゼ阻害剤、化合物Jを含んでいた10個の
フラスコの内容物をプールし、遠心した。上清を回収し、14%オクタデシル担
体を含む活性化カラムの頂部に加えた。カラムを水で洗浄し、次いで、20→8
0%勾配の水性メタノールで溶離した。溶離された各画分を分析カラム上のHP
LCにかけて調べた。このカラムは、タンクA及びBからなる勾配溶媒系で展開
させた。タンクAは、10%酢酸アンモニウム、0.1%ギ酸を含み、タンクB
は、67%アセトニトリル、33%メタノール、0.1%ギ酸を含んでいた。勾
配は、30分後に、30→85%溶媒Bに変えた。分析カラムから得られた結果
に基づき、所望の代謝物を含む画分を、活性化カラムから60→85%水性メタ
ノールで溶離した。従って、この画分は、セミ−プレプでさらに精製された。分
析カラムから4つに分割された画分をそれぞれ分離し、さらに精製した後で、N
MR、FAB−MS分析及び生物学的評価にかけた。
実施例2
HIVタンパク質阻害剤化合物Jと細菌培養株MA7065とをインキュベー
トしたものから分離した4試料を質量スペクトル分析にかけて特性決定した。以
下に示すように、化合物A、C1、C2,D及びEについて特性決定した。イン
ダニル環、フェニル環及びピリジン環の酸化が認められた。
イオンスプレーインターフェース(ionspray interface)を
用い、質量分析計上のLC/MS/MSにより、質量スペクトル及び娘イオンス
ペクトルを得た。試料を、50%CH3CN/50% 10mM NH4OAc/0
.1%TFAからなる移動相に直接注入して分析した。陽性イオン検出法を用い
た。
化合物J
Jの質量スペクトルから、613Daの分子量を示す(M
+H)+=614を得た。m/z513、465、421及び338でのJの娘イ
オンスペクトルにおける4つの主要フラグメントイオンから、これらの試料の一
般的な代謝部位を決定することができた。以下の表は、これらのスペクトルの分
析結果を要約したものであり、MA7065生物変換産物(68051−A、6
8051−9C、68051−12F1及び68051−12F3)並びに他の
微生物由来の産物の試料を含んでいる。
これらの化合物の構造はNMR分光分析と合致した。
実施例3 化合物Jの生物変換産物のHIVプロテアーゼ阻害活性
上記プロトコルに従い、微生物中で発現されたHIVプロテアーゼの阻害アッ
セイにより、7種の化合物Jの生物変換産物を、in vitroHIVプロテア
ーゼ阻害についてアッセイした。該生物変換産物のうち4種は、MA7065を
インキュベーションしたものから単離した、化合物A、C1、C2、D及びEで
あった。親化合物JのIC50を、各テスト化合物のIC50で割り、100を掛け
、Jに対する各化合物の力価%を計算した。
いくつかのケースでは、テスト化合物の希釈率は、呼称重量を基準とした。他
のケース、特に重量が250μg未満のケースでは、標準としてJを用いてHP
LCにかけて濃度を調べた。
化合物Jに対する力価%
実施例4 アミド1の調製
熱電対プローブ、機械的撹拌装置、並びに窒素送込口用アダプター及びバブラ
ーを具備した50L容量の丸底フラスコ中の、17.8Lの無水THF(KF=
55mg/ml)(KFは、カールフィッシャー水分滴定値を表す)及びトリエ
チルアミン(868ml,6.22mol)に溶解した(−)−シス−1−アミノ
インダン−2−オール(884g,5.93mol)の溶液を15℃に冷却した。
次いで、氷−水冷却浴で内部温度を14〜24℃に維持しながら、3−フェニル
プロピオニルクロリド(1000g,5.93mol)を75分かけて加えた。
添加後、混合物
を18〜20℃で30分間熟成させ、(−)−シス−1−アミノインダン−2−
オールの消失についてHPLC分析にかけて調べた。
反応の進行を、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析〔25cm
Dupont C8−RXカラム、60:40アセトニトリル/10mM(KH2
PO4/K2HPO4)、流速=1.0ml/分、注入量=20ml、検出=20
0nm、試料の調製=500×希釈〕にかけてモニターした。おおよその保持時
間:
保持時間(分) 化合物名
6.3 シス−アミノインダノール
反応物を、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(241g,0.96mol
,0.16当量)で処理し、10分間撹拌した(1mlの試料を等量の水で希釈
した後の混合物のpHは4.3〜4.6である)。次いで、2−メトキシプロペ
ン(1.27L,13.24mol,2.2当量)を加え、反応物を2時間38
〜40℃に加熱した。反応混合物を20℃に冷却し、酢酸エチル(12L)と5
%水性NaHCO3(10L)に分配した。混合物を攪拌し、相を分離した。酢
酸エチル抽出物を5%水性NaHCO3(1
0L)と水(4L)で洗浄した。酢酸エチル抽出物を常圧蒸留により脱水し、溶
媒をシクロヘキサン(総量〜30L)に交換した。蒸留及び濃縮(酢酸エチル抽
出物質量の20質量%)した後、高温シクロヘキサン溶液をゆっくり25℃に冷
却して、生成物を結晶化した。得られたスラリーをさらに10℃に冷却し、1時
間熟成させた。生成物を濾過して分離し、湿潤ケークを冷(10℃)シクロヘキ
サン(2×800ml)で洗浄した。洗浄したケークを40℃で真空乾燥(水銀柱
26″)して、1.65kgのアセトニド1(HPLCにより、86.4%、
98面積%)を得た。1H NMR(300.13MHz,CDCl3、主要回転
異性体)δ7.36−7.14(m,9H),5.03(d,J=4.4,1H
),4.66(m,1H),3.15(m,2H),3.06(広幅s,2H)
,2.97(m,2H),1.62(s,3H),1.37(s,3H);13C
NMR(75.5MHz,CDCl3,主要回転異性体)δc168.8,14
0,9,140.8,140.6,128.6,128.5,128.4,12
7.1,126.3,125.8,124.1,96.5,78.6,65.9
,38.4,36.2,31,9,2
6.5,24.1。C21H23NO2の元素分析:計算値:C,78.47;H,
7.21;N,4.36%;実測値:C,78.65;H,7.24;N,4.
40%。
実施例5 エポキシド3の調製
熱電対、機械的撹拌装置、滴下漏斗及び窒素送込口用アダプターを具備した5
0L容量の四首丸底フラスコ中の、15.6LのTHF(KF=22mg/ml
)に溶解したアセトニド1(1000g,3.11mol)及び2(S)−グリ
シジルトシラート2(853g,3.74mol,1.2当量)の溶液を真空−
窒素パージにより3回ガス抜きし、−56℃に冷却した。次いで、内部温度を−
50〜−45℃に維持しながら、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiN[(
CH3)3Si]2)(2.6L,1.38M,1.15当量)を2時間かけて加
えた。反応混合物を
−45〜−40℃で1時間攪拌し、次いで、1時間かけて−25℃に温めた。混
合物を−25〜−22℃で4時間(又は出発アセトニドが3.0面積%になるま
で)攪拌した。
反応の進行を、HPLC分析〔25cm×4.6nm Zorbax Sili
caカラム、ヘキサン中20%酢酸エチル、流速=2.0ml/分、注入量=2
0ml、検出=254nm、試薬の調製=100×希釈〕にかけてモニターした
。おおよその保持時間:
保持時間(分) 化合物名
5.5 アミド1
6.5 グリシジルトシラート2
13.5 エポキシド3
−15℃でDI水(6.7L)を加えて、反応混合物をクエンチし、酢酸エチ
ル(10L)で分配した。混合物を撹拌し、層を分離した。酢酸エチル抽出物を
、1%水性NaHCO3(5L)と飽和NaCl(0.5L)の混合物で洗浄し
た。酢酸エチル抽出物(28.3L)を真空蒸留(水銀柱 28″)して濃縮し
、追加の酢酸エチルを加えて、酢酸エチルへの溶媒交換(最終容量=11.7L
)を完了した。酢酸エチル濃縮物をさらにMeOHに溶媒交換して
生成物を結晶化し、3.2Lの最終容量に濃縮した。10Lのメタノールを装入
し、10Lの蒸留物を回収して、残留酢酸エチル溶媒を除去した。得られたスラ
リーを22℃で1時間攪拌し、次いで、5℃に冷却、0.5時間熟成させた。生
成物を濾過して分離し、湿潤ケークを冷メタノール(2×250ml)で洗浄し
た。洗浄したケークを、25℃で真空乾燥(水銀柱 26″)し、727gのエ
ポキシド3(HPLCにより、主要エポキシドの61.2%,98.7面積%)
を得た。13C NMR(75.5MHz,CDCl3)δ171.1,140.6
,140.5,139.6,129.6,128.8,128.2,127.2
,126.8,125.6,124.1,96.8,79.2,65.8,50
.0,48.0,44.8,39.2,37.4,36.2,26.6,24.
1。
実施例6 前末端化合物(penultimate)6の調製
機械的攪拌装置、還流冷却器、蒸気浴、テフロンコーティングした熱電対及び
窒素送込口を具備した、4つの入口を有する72L容量の丸底フラスコ中の、イ
ソプロパノー
ル(2−プロパノール,18.6L)中の2(S)−t−ブチルカルボキサミド
−4−N−Boc−ピペラジン4(1950g,6.83mol,>99.5%
ee)(ee=エナンチオマー過剰率)及びエポキシド3(4S/Rエポキシド
の97.5:2.5混合物,2456g,6.51mol)のスラリーを加熱還
流した(内部温度は84〜85℃)。40分後に均質溶液を得た。混合物を28
時間加熱還流した。
還流中の内部温度は84〜85℃であった。反応の進行をHPLC分析〔25
cm Dupont C8−RXカラム、60:40アセトニトリル/10mM(
KH2PO4/K2HPO4)、流速=1.0ml/分、検出=220nm、試料の
調製=アセトニトリル中1mlに希釈した反応混合物2μl〕にかけてモニター
した。おおよその保持時間:
保持時間(分) 化合物名
4.8 ピペラジン4
8.9 エポキシド3
15.2 結合化合物5
28時間後、残留していたエポキシド3と結合生成物5
(HPLC分析による)は、それぞれ1.5面積%と91〜93面積%であった
。混合物を0〜5℃に冷却し、温度を15℃以下に維持しながら、20.9Lの
6N HClを加えた。添加完了後、混合物を22℃に温めた。この時点でガス
(イソブチレン)の放出が認められた。混合物を20〜22℃で6時間熟成させ
た。
反応の進行を上記と同じ条件下にHPLC分析にかけてモニターした。おおよ
その保持時間:
保持時間(分) 化合物名
7.0 シス−アミノインダノール
11.9 前末端化合物6
15.1 結合生成物5
混合物を0℃に冷却し、温度を25℃以下に維持しながら、7.5Lの50%
NaOHをゆっくり加えて、混合物のpHを11.6に調整した。混合物を酢酸
エチル(40L)と水(3L)に分配した。混合物を撹拌し、層を分離した。有
機層(60L)を減圧(水銀柱 29″)下に濃縮し、溶媒をDMFに交換し、
10.5L(KF=1.8mg/ml)の最終容量に濃縮した。酢酸エチル中の
6の収率をHPLCでアッセイすると、86.5%であった。D
MF中の前末端化合物6をさらに精製せずにそのまま次のステップに用いた。単
離した6の13C NMR(75.4MHz,CDCl3)δ175.2,170.
5,140.8,140.5,139.9,129.1,128.5,127.
9,126.8,126.5,125.2,124.2,73.0,66.0,
64.8,62.2,57.5,49.5,47.9,46.4,45.3,3
9.6,39.3,38.2,28.9。
40mlのDMF中に溶解した10.0g(0.019mol)のN−(2(
R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4(
S)−ヒドロキシ)−5−(1(−2(S)−N−(t−ブチルカルバモイル)
−ピペラジニル)−ペンタンアミド6及び3.45g(0.021mol)の3
−ピコリルクロリドに、5.85ml(0.042mol)のトリエチルアミン
を加えた。3時間後、追加の0.313gの3−ピコリルクロリドを加えた。さ
らに2時間経過後、反応物を400mlのEtOAcで希釈し、水(3×75m
l)、ブライン(1×100ml)で洗浄し、MgSO4で脱水、濃縮した。残
留物を30mlのEtOAcですり砕き、得られた白色
沈殿物を回収した。さらにEtOAcから再結晶して、生成物である化合物J(
融点:167.5−169℃)を得た。
実施例7 ピラジン−2−t−ブチルカルボキサミド9
72L容量の三首フラスコ中、N2下に、カルボン酸8を27LのEtOAc
及び120mlのDMFに機械的に攪拌しながら懸濁し、懸濁液を2℃に冷却し
た。温度を5〜8℃に維持しながら、塩化オキサリルを加えた。
添加は5時間で完了した。発熱性添加の間に、CO及びCO2が発生した。形
成されたHClはおおむね溶液のままであった。ピラジン酸塩化物のHCl塩と
思われる沈殿物が存在した。反応物の無水試料をt−ブチルアミンでクエンチし
て、酸塩化物形成アッセイを行った。アッセイ完了後、酸8の<0.7%が残っ
た。
酸塩化物形成の完全性についてのアッセイは重要である。何故ならば、反応が
不完全であればビス−t−ブチルオキサミド不純物が形成されるからである。
HPLC〔流速1ml/分及び250nmで検出する25cm Dupont
Zorbax RXC8カラム;30分で、98%の0.1%水性H3PO4及び2
%CH3CN→50%水性H3PO4及び50%CH3CNへの直線勾配〕にかけて
反応をモニターし得る。保持時間:酸8=10.7分、アミド9=28.1分。
反応混合物を5℃で1時間熟成させた。得られたスラリーを0℃に冷却し、内
部温度を20℃以下に維持するような速度でt−ブチルアミンを加えた。
反応が極めて発熱性であったために、添加には6時間を要した。生成されたt
−ブチルアンモニウムヒドロクロリ
ドの小部分をふわふわした白色固体として反応物から払い落とした。
混合物を18℃でさらに30分間熟成させた。沈殿したアンモニウム塩を濾過
して除去した。フィルターケークを12LのEtOAcで洗浄した。合わせた有
機層を6Lの3%NaHCO3及び2×2Lの飽和水性NaClで洗浄した。有
機層を200gのDarco G60炭素で処理、Solka Flokを通して
濾過し、ケークを4LのEtOAcで洗浄した。
炭素処理により、生成物の紫色がかった色あいが効果的に取り除かれた。
9のEtOAc溶液を10ミリバール下に初期容量の25%に濃縮した。30
Lの1−プロパノールを加え、20Lの最終容量に達するまで蒸留を継続した。
この時点で、EtOAcは、1H NMR(<1%)の検出限界以下であった。
この溶媒交換における内部温度は<30℃であった。3の1−プロパノール/E
tOAc溶液は数日間常圧還流させても安定であった。アリコートを蒸発させて
褐色固体(融点:87−88℃)を得た。13C NMR(75MHz,CDCl3
,ppm)161.8,1
46.8,145.0,143.8,142.1,51.0,28.5.
実施例8
rac−2−t−ブチル−カルボキサミド−ピペラジン10
材料
1−プロパノール溶液12L、20%Pd(OH)2/C16重量%、水14
4g中のピラジン−2−t−ブチルカルボキサミド9 2.4kg(14.3m
ol)。
ピラジン−2−t−ブチルカルボキサミド9/1−プロパノール溶液を5ガロ
ン容量のオートクレーブに装入した。触媒を加え、混合物を65℃、40psi
(3atm)のH2下に水素化した。
24時間後、反応物を理論量の水素に入れ、GCにかけると、<1%の9が示
された。混合物を冷却し、N2でパージし、触媒をSolka Flocを通して
濾過して除去した。触媒を2Lの温1−プロパノールで洗浄した。
フィルターケークの洗浄に温1−プロパノールを用いると、濾過が改善され、
フィルターケーク上の生成物の損失が減少することが知見された。
反応を、GC〔30m Megaboreカラム、10℃/分で100〜16
0℃、5分間保持、次いで、10℃/分で250℃に;保持時間:9=7.0分
、10=9.4分〕にかけてモニターした。反応は、溶媒としてEtOAc/M
eOH(50:50)及び展開剤としてNinhydrinを用いるTLCによ
ってもモニターし得る。
アリコートを蒸発させると、アミド化及び水素化後の収率は88%であり、1
0の濃度は133g/lであることが示された。
アリコートを蒸発させて、白色固体として10(融点:150−151℃)を
得た。13C NMR(75MHz,D2O,ppm)173.5,59.8,52
.0,48.7,45.0,44.8,28.7。
実施例9
(S)−2−t−ブチル−カルボキサミド−ピペラジン ビス(S)−ショウノ ウスルホン酸塩(S)−11
材料
1−プロパノール中のアミン10の溶液を、バッチ濃縮装置を連結した100
L容量のフラスコに装入した。溶液を、10ミリバール下<25℃の温度で、約
12Lの容量に濃縮した。
この時点で、溶液から生成物が沈殿したが、混合物を50℃に加熱すると、溶
液に戻った。
均質アリコートを分析すると、10の濃度は341g/lであると示された。
HPLC〔流速1.5ml/分、210nmで検出、アイソクラチック(98/
2)CH3C
N/0.1%水性H3PO4で溶離する25cm DupontZorbax RX
C8カラム〕にかけて濃度を測定した。10の保持時間:2.5分。
アセトニトリル(39L)及び水(2.4L)を加えて、透明でやや茶色っぽ
い溶液を得た。
KF滴定により含水量を、及び1H NMR分光法によりCH3CN/1−プロ
パノール比を測定すると、CH3CN/1−プロパノール/H2Oの比は26/8
/1.6であると示された。溶液中の濃度は72.2g/lであった。
(S)−10−ショウノウスルホン酸を4部にわけ20℃で30分かけて装入
した。CSAを加えると、温度が40℃に上昇した。数分後、濃厚な白色沈殿物
が形成された。該白色スラリーを76℃に加熱して固体全てを溶解し、次いで、
やや茶色っぽい溶液を8時間かけて21℃に冷却した。
62℃で生成物が沈殿した。生成物を21℃で熟成させずに濾過し、フィルタ
ーケークを5LのCH3CN/1−プロパノール/H2O 6/8/1.6溶媒混合
物で洗浄した。フィルターケークをN2流下に真空オーブン中35℃で乾燥して
、白色結晶性固体として、5.6kg(3
9%)の11〔融点:288−290℃(分解)〕を得た。[α]D25=18.
9°(c=0.37,H2O)。13C NMR(75MHz,D2O,ppm)
222.0,164.0,59.3,54.9,53.3,49.0,48.1
,43.6,43.5,43.1,40.6,40.4,28.5,27.2,
25.4,19.9,19.8。
以下のキラルHPLCアッセイによれば、該物質のeeは95%であった:1
1のアリコート(33mg)を4mlのEtOH及び1mlのEt3Nに懸濁し
た。Boc2O(11mg)を加え、反応混合物を1時間熟成させた。溶媒を完
全に真空除去し、残留物を約1mlのEtOAcに溶解し、溶離剤としてEtO
Acを用い、SiO2を含有するパスツールピペットを通して濾過した。蒸発さ
せた生成物画分を約1mg/mlでヘキサンに再溶解した。ヘキサン/IPA(
97:3)溶媒系を用い、流速1ml/分、228nmで検出するDaicel
Chiracell ASカラム上でエナンチオマーを分離した。保持時間:
S対掌体=7.4分、R=9.7分。
実施例10
塩11からの(S)−2−t−ブチルカルボキサミド−4−t−ブトキシカルボニル−ピペラジン4
材料
滴下漏斗を備えた100L容量三首フラスコ中の(S)−CSA塩11に、N2
下に25℃で、EtOH、次いでトリエチルアミンを加えた。Et3Nを加える
と、固体は直ちに溶解した。Boc2OをEtOAcに溶解し、滴下漏斗に装入
した。温度を25℃以下に維持するような速度でBoc2OのEtOAc溶液を
加えた。添加には3時間
を要した。Boc2O溶液の添加完了後、反応混合物を1時間熟成させた。
HPLC〔流速1ml/分、228nmで検出、NaOHでpH=6.8に調
整したアイソクラチック(50/50)CH3CN/0.1M KH2PO4で溶離
する25cm Dupont Zorbax RXC8カラム〕にかけて反応をモ
ニターし得る。4の保持時間=7.2分。先行ステップと同じ系を用いてキラル
アッセイを実施した。反応は、溶媒として100%EtOAcを用いるTLCに
よってもモニターし得る(Rf=0.7)。
次いで、10ミリバール真空下にバッチタイプ濃縮装置中<20℃の内部温度
で溶液を約10Lに濃縮した。20LのEtOAc中でゆっくり放出(blee
ding)させて、約10Lに再濃縮して、溶媒交換を完了した。60LのEt
OAcを用いて反応混合物を抽出器中に洗い出した。有機層を、16Lの5%水
性Na2CO3溶液、2×10LのDi水及び2×6Lの飽和水性塩化ナトリウム
で洗浄した。合わせた水性洗浄液を20LのEtOAcで逆抽出し、有機層を2
×3Lの水及び2×4Lの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄した。合わせたEtO
Ac抽出物を、1
00L容量のバッチタイプ濃縮装置中10ミリバール真空下に<20℃の内部温
度で約8Lに濃縮した。約20Lのシクロヘキサン中でゆっくり放出させ、約8
Lに再濃縮して、シクロヘキサンへの溶媒交換を行った。該スラリーに、5Lの
シクロヘキサン及び280mlのEtOAcを加え、混合物を加熱還流すると、
全てが溶液となった。溶液を冷却し、種(10g)を58℃で加えた。4時間後
に、スラリーを22℃に冷却し、22℃で1時間熟成させた後、生成物を濾過し
て単離した。フィルターケークを1.8Lのシクロヘキサンで洗浄し、真空オー
ブン中N2流下に35℃で乾燥して、やや褐色の粉末として1.87kgの4(
HPLCにより、77%,>99.9面積%、検出レベル以下のR−異性体)を
得た。[α]D25=22.0°(c=0.20,MeOH)、融点=107℃;13
C NMR(75MHz,CDCl3,ppm)170.1,154.5,79.
8,58.7,50.6,46.6,43.6,43.4,28.6,28.3
。
上述の明細書は本発明の原理を教示し、実施例は例示を目的として記載されて
いるが、本発明の実施には、以下の請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれ
る、通常の変
更、改変又は修正が全て包含されるものと理解されたい。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12N 7/00 C12N 7/00
//(C12P 17/16
C12R 1:465)
(C12N 1/20
C12R 1:465)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AL,AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
N,CZ,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG
,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,MG,
MK,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,S
G,SI,SK,TJ,TM,TT,UA,UZ
(72)発明者 チエン,シー−シユン・テイー
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
(72)発明者 アリスン,バイロン・エイチ
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
(72)発明者 ミラー,ランドール・アール
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
(72)発明者 ギヤリテイ,ジヨージ・エム
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
(72)発明者 ハイムバツハ,ブライアン
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126