【発明の詳細な説明】
シスプラチン耐性遺伝子及びその利用発明の背景
化学療法剤シスプラチン(シス−ジアミンジクロロ白金又はCDDP)は、1
968年に細胞毒性を有することが発見され、広く世界中で多くの腫瘍、特に固
形腫瘍例えば卵巣癌、精巣癌並びに頭部及び頚部の癌の治療に用いられている。
この白金薬剤は、DNAのプラチネーションにより作用し、それによりDNAを
架橋(鎖間及び鎖内の両方)し且つ細胞プロセスを混乱させると考えられている
。シスプラチンの臨床効果は、シスプラチン耐性癌細胞の出現により制限される
。ある種の癌は、本来的な若しくは天然のシスプラチン耐性を示し、初期化学療
法に対してすら緩解を受けない。他の腫瘍は初期治療には良く応答するが再発時
には薬剤に対して減少した応答を示す。この型の耐性は、シスプラチンを用いた
治療の後で生じ、獲得耐性と呼ばれる。シスプラチン耐性を予防し、克服し若し
くは逆転させる能力は、悪性疾患の治療に対して大きな利益となるであろう。
シスプラチン耐性の機構を同定するための試みが為されたが、この機構は解明
されないままになっている。様々な研究において、シスプラチン耐性は、この薬
物の減少した細胞内蓄積、増大したDNA修復機能及び/又は
細胞内チオールによる増大した薬剤無毒化と関連した(可能なシスプラチン耐性
の機構の総説は、例えば、Andrews,P.A.及びHowell,S.B.(1990)Cancer Cells 2:
35-43; Kelley,S.L.及びRozcncweig,M.(1989)Eur.J.Clin.Oncol.25:1135-1140;
Perez,R.P.等(1990)Pharmacol.Ther.48:19-27;及びTimmer-Bosscha,H.等(1992)
Br.J.Cancer 66:227-238 を参照されたい)。細胞内チオールによる薬剤の無毒
化に関する役割は、増大したグルタチオン及びメタロチオネインレベルを有する
ある種の癌細胞株においてシスプラチン耐性の関係のためであると仮定された(
Godwin,A.K.等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3070-3074;及びKelley,S.L
.等(1988)Science241:1813-1815を参照されたい)。
シスプラチン耐性表現型の獲得を特定の遺伝子と関係付ける試みも為された。
例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)及びメタロチオネイ
ンの遺伝子を細胞株にトランスフェクトしてそれらの細胞にシスプラチン耐性を
与えることが試みられた。GSTは細胞にシスプラチン耐性を与えると報告され
たが、増大された耐性のレベルは1.5〜3.0倍の範囲に過ぎなかった(Miya
zaki,M.等(1990)Biochem.Biophys.Res.Commun.166:1358-1364;及びPuchalski
,R.B.等(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2443-2447を参照されたい)。他の
研究は、メタロチオネイン遺伝子での細胞のトランスフェクションが細胞にシス
プラチン耐性を与え
るがやはり増大した耐性のレベルは5倍未満であることを報告した(Kelley,S.L
.等(1988) Science 241:1813-1815を参照されたい)が、その他の研究は、メタ
ロチオネイン遺伝子での細胞のトランスフェクションに際してシスプラチン耐性
の増大を見出さなかった(Morton,K.A.等(1993) J.Pharmacol.Exp.Ther.267:697
-702;及びKoropatnick,J.及びPearson,J.(1993)Molec.Pharmacol.44:44-50を参
照されたい)。他の研究において、c−myc遺伝子でトランスフェクトした細
胞がシスプラチン耐性を獲得したと報告されたが、やはり増大した耐性レベルは
非常に低かった(即ち、3倍未満)。
アントラサイクリン類(例えば、ドキソルビシン、エピポドフィロトキシン、
及びビンカアルカロイド)に対する腫瘍細胞の多剤耐性は、2つの異なる遺伝子
[その一方は、P−糖蛋白質(Roninson,I.B.等(1984)Nature309:626-628;及び
Riordan,J.R.等(1985) Nature 316:817-819を参照)をコードし、他方は、M
RP(Cole,S.P.C.等(1992) Science 258:1650-1654を参照)をコードする]の
1つの増大された発現と関係していることが見出された。mdr1遺伝子(P−
糖蛋白質をコード)又はMRP遺伝子での細胞のトランスフェクションは、細胞
に多剤耐性を与えることが出来る(Gros,P.等(1986) Nature 323:728-731;及び
Cole,S.P.C.(1984)Cancer Res.54:357-361を参照されたい)。しかしながら、
P−糖蛋白質もMRPも細胞に高レベルのシスプラ
チン耐性を与えることは出来ず、それ故に、腫瘍細胞において認められるシスプ
ラチン耐性を説明するものではない。
上記の何れの研究も、腫瘍細胞の内因性の若しくは獲得したシスプラチン耐性
を納得のゆくようには説明しない。従って、細胞に高レベルのシスプラチン耐性
を与え得るシスプラチン耐性決定遺伝子は同定されないままであると結論するこ
とが出来る。発明の要約
この発明は、細胞内で発現されるその細胞に高レベルのシスプラチン耐性を与
えることの出来る単離された核酸分子に関するものである。好適具体例において
、この発明の核酸の細胞中での発現は、その細胞に、シスプラチン感受性細胞と
比較して少なくとも5倍増のシスプラチン耐性を与える。更に好ましくは、耐性
は少なくとも10〜15倍に増大される。従って、この発明の核酸は、シスプラ
チン耐性決定遺伝子として機能する。この発明は、少なくとも部分的に、シスプ
ラチン耐性の卵巣癌細胞株からの特異的なcDNAライブラリーのスクリーニン
グによるcDNAの単離並びに、それのシスプラチン耐性との関係及び細胞に導
入されたときにシスプラチン感受性細胞に高レベルのシスプラチン耐性を与える
その能力の両方の発見に基づいている。この発明の核酸は、更に、細胞に、重金
属例えばカドミウム及び銅に対
する耐性を与えることが出来る。一具体例において、この発明の核酸は、SEQ ID
NO:1で示したヌクレオチド配列又はそれと実質的に同じであるヌクレオチド配
列を含む。この発明は、シスプラチン感受性細胞にシスプラチン耐性を与えるこ
との出来る単離された核酸、それとアンチセンスである核酸、この発明の核酸を
含む組換え発現ベクター(センス又はアンチセンス)、この発明の組換え発現ベ
クターを含む宿主細胞並びにこの発明の核酸を含むトランスジェニック及び相同
組換え非ヒト動物を提供する。
この発明は、更に、細胞内で発現されるとその細胞に高レベルのシスプラチン
耐性を与えることの出来る単離された蛋白質にも関係する。好適具体例において
、この発明の蛋白質は、細胞中で発現されたときにその細胞に少なくとも5倍増
のシスプラチン耐性を与えることが出来る。更に好ましくは、耐性は少なくとも
10〜15倍増加する。この蛋白質は、更に、細胞中で発現されたときに、重金
属例えばカドミウム及び銅に対する耐性を細胞に与えることが出来る。一具体例
において、この蛋白質は、SEQ ID NO:2に示したアミノ酸配列又は実質的にそれ
と同じアミノ酸配列を含む。この発明は、シスプラチン感受性細胞にシスプラチ
ン耐性を与え得る単離された蛋白質、この発明の蛋白質に結合する抗体及びこの
発明の抗体を含む製薬組成物を提供する。この発明の抗体は、検出可能な物質又
は毒性若しくは治療活性を有する
物質で標識することが出来る。
この発明は、更に、細胞のシスプラチンに対する耐性を阻止するための方法に
関係する。従って、この発明の方法を用いて、腫瘍細胞のシスプラチン耐性を阻
止することが出来、それにより、シスプラチンをそれらの細胞に対して治療用に
用いることが可能となる。これらの方法は、シスプラチン耐性細胞を、細胞にシ
スプラチン耐性を与える蛋白質の活性を阻止する薬剤に接触させることを含む。
好ましくは、この蛋白質は、細胞に、感受性細胞と比較して少なくとも5倍増の
シスプラチン耐性を与える。1つの具体例において、この蛋白質の活性を阻止す
る薬剤は、この蛋白質をコードする核酸に対してアンチセンスである核酸である
。他の具体例において、この薬剤は、この蛋白質に結合する分子例えば抗体であ
る。この抗体は、更に、毒性若しくは治療活性を有する物質で標識することが出
来る。更に他の具体例において、この薬剤は、この蛋白質の活性を阻害する小分
子例えば薬物である。この方法は、更に、細胞をシスプラチンと接触させて細胞
の成長を阻止することを含み得る。
この発明は、更に、細胞にカドミウム及び銅耐性を含む重金属に対する耐性を
与えるための方法に関係する。この方法は、重金属の成長阻害効果から細胞(例
えば、シスプラチンで治療を受けている患者の非悪性のシスプラチン感受性細胞
)を保護するのに有用である。この方
法は、細胞にシスプラチン耐性好ましくはシスプラチン感受性細胞と比較して少
なくとも5倍増のシスプラチン耐性を与え得る核酸(その細胞中での発現に適し
た形態)を細胞中に導入することを含む。1つの具体例において、この発明の核
酸を用いてシスプラチン耐性を与える。他の具体例においては、SEQ ID NO:1の
核酸と相同であるミトコンドリアND1遺伝子を用いてシスプラチン耐性を与え
る。
この発明の他の面は、シスプラチン耐性細胞に対して細胞毒性であるか又はシ
スプラチンの化学増感剤である物質を同定するために用いることの出来るスクリ
ーニングアッセイを含む。これらの方法は、シスプラチン耐性細胞(例えば、シ
スプラチン耐性腫瘍細胞)に対する治療用に用いてそれらの細胞の生育を阻止す
ることが出来る物質を同定するために有用である。これらの方法においては、細
胞にシスプラチン耐性を与える核酸を細胞に導入してシスプラチン耐性細胞を創
る。この核酸は、この発明の核酸(例えば、SEQ ID NO:1)又はミトコンドリア
のND1遺伝子であってよい。次に、シスプラチン耐性細胞を試験すべき物質と
接触させる。シスプラチンの化学増感剤を同定するための方法においては、細胞
を試験すべき物質の存在下又は不在においてシスプラチンと接触させる。次いで
、その細胞に対する試験物質の細胞毒性又は試験物質を伴うシスプラチンの細胞
毒性を測定する。これらのスクリーニングアッセイにおいて用い
る細胞は、例えば、イン・ビトロでこの発明の核酸でトランスフェクトした細胞
であってよい。或は、これらの細胞は、この発明の核酸を有するトランスジェニ
ック動物内の細胞であってよく、これらの物質をトランスジェニック動物に投与
することが出来る。
この発明は又、シスプラチン耐性腫瘍細胞を同定するための方法をも提供する
。一具体例において、この方法は、腫瘍細胞からの核酸(例えば、mRNA又は
cDNA)を、この発明の核酸とハイブリダイズする核酸プローブと接触させ、
シスプラチン感受性細胞と比較して腫瘍細胞からの核酸に対するプローブの増大
したハイブリダイゼーションに基づいてシスプラチン耐性腫瘍細胞を同定するこ
とを含む。他の具体例において、この方法は、腫瘍細胞の試料をこの発明の蛋白
質に結合する分子(例えば、抗体)と接触させ、ここに、この分子は検出可能な
物質(例えば、蛍光マーカー、放射性同位体又は酵素)で標識したものであり、
そして、腫瘍細胞に結合した物質を腫瘍細胞のシスプラチン耐性の指標として検
出することを含む。図面の簡単な説明
図1は、cDNA62を単離するために用いたディフェレンシャルcDNAラ
イブラリースクリーニングの図式表示である。
図2は、ライブラリースクリーニングのためのcDN
Aを調製するために用いた「ショットガン」PCR法の図式表示である。
図3Aは、HAC2/P細胞株(レーン1)及びHAC2/0.4細胞株(レ
ーン2)におけるcDNA62の発現を示すノーザンブロットの写真である。
図3Bは、次の細胞におけるcDNA62の発現を示すノーザンブロットの写
真である:デキサメタゾンの不在におけるトランスフェクトしてないNIH3T
3細胞(レーン1);デキサメタゾン存在下のトランスフェクトしてないNIH
3T3細胞(レーン2);デキサメタゾン不在におけるpMAMneoでトラン
スフェクトしたNIH3T3細胞(レーン3);デキサメタゾン存在下のpMA
MneoでトランスフェクトしたNIH3T3細胞(レーン4);デキサメタゾ
ン不在におけるpMAMneo62F−1−3でトランスフェクトしたNIH3
T3細胞(レーン5);デキサメタゾン存在下のpMAMneo62F−1−3
でトランスフェクトしたNIH3T3細胞(レーン6)。
図4は、下記の肺癌細胞株におけるcDNA62の発現を示すノーザンブロッ
トの写真である:L231(レーン1);L231/CDDP耐性(レーン2)
;PC7(レーン3);PC7/CDDP耐性(レーン4);PC9(レーン5
);PC9/CDDP耐性(レーン6);PC14(レーン7);PC14/C
DDP耐性(レーン8)。
図5は、下記のヒト組織におけるcDNA62の発現を示すノーザンブロット
の写真である:心臓(レーン1);脳(レーン2);胎盤(レーン3);肺(レ
ーン4);肝(レーン5);骨格筋(レーン6);腎臓(レーン7);膵臓(レ
ーン8);脾臓(レーン9);胸腺(レーン10);前立腺(レーン11);精
巣(レーン12);卵巣(レーン13);小腸(レーン14);大腸(レーン1
5);末梢血液白血球(レーン16)。
図6は、16SrRNA−tRNALeu-NDI−tRNAIle遺伝子を含むヒ
トミトコンドリアDNAのヌクレオチド配列(下段行;Anderson,S.等、(1981)
Nature 290:457-465)と比較したcDNA62のヌクレオチド配列(上段行;SE
Q ID NO:1)を示す。ミトコンドリアDNAについては、cDNA62と比較し
て異なるヌクレオチドのみを示してある。cDNA62のオープンリーディング
フレームのアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)もヌクレオチド配列の下に示してある
。
図7は、cDNA62によりコードされる蛋白質の疎水性を示すグラフである
。正の指数は、疎水性を示し、他方、負の指数は親水性を示す。
図8は、組換え発現ベクターpMAMneo62F及びPMAMneo62T
の構築を示す図式表示である。発明の詳細な説明
この発明は、細胞中で発現した場合にその細胞に高レベルのシスプラチン耐性
を与える核酸及び蛋白質に関係する。この発明は、少なくとも部分的に、シスプ
ラチン耐性決定遺伝子の単離に基づくものである。実施例に記載したように、シ
スプラチン耐性の卵巣癌細胞株から、ディフェレンシャルcDNAライブラリー
スクリーニングによってcDNAを単離した。このcDNA(ここでは、cDN
A62として言及する)は、幾つかのシスプラチン耐性癌細胞株において、それ
らの非耐性の親細胞株と比較して一層高レベルで発現され且つ、シスプラチンに
一層感受性である組織に比べて一層シスプラチン耐性であるヒト組織において一
層高レベルで発現される。従って、cDNA62の発現は、シスプラチン耐性と
関連している。更に、シスプラチン感受性細胞におけるcDNA62又はそのコ
ード領域の発現は、その細胞に高レベルのシスプラチン耐性を与えることが出来
る(例えば、感受性細胞の18倍増)。更に、cDNA62は、それが発現され
る細胞にカドミウム及び銅に対する耐性を与えることが出来る(例えば、カドミ
ウム及び銅について、それぞれ、感受性細胞の15倍及び4倍増)。従って、c
DNA62は、シスプラチン耐性が重金属耐性の一種であるとすれば、重金属耐
性決定遺伝子と考えることが出来る。従って、この発明の目的のために、用語「
重金属」は、シスプラチン、カドミウム及び銅を含むものとする。
この発明の他の面は、単離した核酸、アンチセンス核酸、組換え発現ベクター
、宿主細胞、トランスジェニック及び相同組換え非ヒト動物、単離した蛋白質、
抗体及びシスプラチン耐性を阻止し若しくは与える方法に関連する。この発明の
種々の面を下記において説明する。I.単離した核酸
この発明の一つの面は、単離した核酸であってその核酸が発現される細胞に高
レベルのシスプラチン耐性を与える核酸に関係する。薬剤(例えば、シスプラチ
ン)に対する細胞の「耐性」とは、感受性細胞と比較して高濃度の薬物に、細胞
障害を伴わずに耐える細胞の能力をいう。それ故、細胞のシスプラチン耐性を、
適当なシスプラチン感受性細胞と比較して測定する。例えば、薬物に継続的にさ
らした細胞のシスプラチン耐性を、薬物耐性細胞が由来する親の感受性細胞と比
較して測定することが出来る。或は、シスプラチン耐性を与える核酸を導入した
細胞のシスプラチン耐性を、その核酸を発現していない同じ細胞のシスプラチン
感受性と比較して測定することが出来る。薬物に継続的にさらすことによりイン
・ビボで薬物耐性にした天然の腫瘍細胞のシスプラチン耐性を、同じ腫瘍細胞を
最初に薬物にさらしたときのシスプラチン感受性に比較して測定することが出来
る。薬剤(例えば、シスプラチン)に対する細胞の耐性は、典型的には、対照の
感受性細胞に対するIC50(50%の細
胞生育阻止に必要な薬剤濃度)の増加として定量する。
この発明の核酸は、その核酸が発現されている細胞にシスプラチン感受性細胞
と比較して高レベルのシスプラチン耐性を与えることが出来る。核酸の「発現」
とは、その核酸を含むヌクレオチド配列のRNAへの転写のことをいう。この発
明の目的のために、高レベルのシスプラチン耐性とは、シスプラチン感受性細胞
と比較して少なくとも5倍増のシスプラチン耐性を意味するものとする。一層好
ましくは、耐性の増加は少なくとも10倍である。更に好ましくは、耐性の増加
は少なくとも15倍である。この発明の核酸は、更に、それが発現されている細
胞に、カドミウム感受性細胞に比較してカドミウム耐性を与えることが出来る。
好ましくは、カドミウム耐性の増加は少なくとも3倍、一層好ましくは少なくと
も5倍、更に好ましくは8倍である。この発明の核酸は、更に、それが発現され
る細胞に、銅感受性の細胞と比較して銅耐性を与えることが出来る。好ましくは
、銅耐性の増加は少なくとも2倍、一層好ましくは少なくとも3倍、更に好まし
くは4倍である。
この発明は、単離した核酸を提供する。用語「単離した」とは、組換えDNA
技術により生成する場合には細胞性物質又は培養培地を実質的に含まない核酸を
いい、化学合成する場合には化学前駆体その他の化学物質を実質的に含まない核
酸のことをいう。「単離した」核酸は
又、その核酸が由来した生物中で天然においてその核酸と隣接している配列(即
ち、その核酸の5’及び3’末端に位置する配列)を含まない。用語「核酸」は
、DNA及びRNAを含むものとし且つ二本鎖であっても一本鎖であってもよい
。
好適具体例において、高レベルのシスプラチン耐性を与え得るこの発明の核酸
は、SEQ ID NO:1に示した核酸配列(即ち、cDNA62のヌクレオチド配列で
あり、図6にも示してある)を含む。pBluescript SK- プラスミッド中の完全長
のcDNA62(cDNA62F)をブダペスト条約の規定に従って、日本国茨
城県筑波市在、生命工学工業技術研究所に寄託し、寄託番号FERM BP−4
629を与えられた。他の具体例において、この核酸は、SEQ ID NO:1に示した
ヌクレオチド配列のコード領域を含む。SEQ ID NO:1のコード領域は、ヌクレオ
チド1599からヌクレオチド1847にまで及ぶ。他の具体例において、この
核酸は、SEQID NO:2に示したアミノ酸配列を含む蛋白質をコードする。
実施例3で論じるように、cDNA62のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)
は、16SrRNA遺伝子の一部からtRNALeu遺伝子及びND1遺伝子を通
ってtRNAIle遺伝子まで及ぶミトコンドリアDNAのヌクレオチド配列と約
99%同一である。これらの2つの配列を図6において比較する。ヒトミトコン
ドリア
DNAのヌクレオチド配列は、Anderson,S 等(1981)Nature 290:457-465に開示
されている。部分的に、cDNA62とミトコンドリアDNAのヌクレオチド配
列が違っていることから、cDNA62は核のDNA中の遺伝子によりコードさ
れるものと考えられる。従って、種々の具体例において、この発明の核酸は、天
然において核のゲノムDNA中に位置するヌクレオチド配列と同一のヌクレオチ
ド配列を含み、それにより、ミトコンドリアDNA中に存在するヌクレオチド配
列例えばミトコンドリアND1遺伝子を排除する。SEQ ID NO:1のオープンリー
ディングフレームは、83アミノ酸(SEQID NO:2に示す)をコードし、84位
に停止コドンを有する。このアミノ酸配列は、ミトコンドリアND1蛋白質のN
末端の83アミノ酸に対応するが、これはミトコンドリアにおけるNADH−ユ
ビキノンオキシドレダクターゼ複合体の成分である。しかしながら、ミトコンド
リアND1mRNA転写物においては84位のアミノ酸がトリプトファンとして
翻訳され、従って、このミトコンドリアND1蛋白質は83位を超えて伸長する
。従って、SEQ ID NO:2の83アミノ酸の蛋白質はこのミトコンドリアND1遺
伝子の翻訳によっては生成しないが、それでもこの蛋白質は細胞にシスプラチン
耐性を与えることが出来る(実施例4参照)。ミトコンドリアDNA様の配列を
有するヒトの核DNAにおける分子構造が、この分野において記載されている(
例えば、Nomiyama H
等 (1985) Nucl.Acids Res.5:1649-1658を参照されたい)。
この発明が、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列に実質的に類似するヌク
レオチド配列を有し、又はSEQID NO:2に示したアミノ酸配列に実質的に類似す
るアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする高レベルのシスプラチン耐性を与え
ることの出来る核酸を含むことは認められよう。この用語「実質的に類似する」
は、ヌクレオチド又はアミノ酸配列に関して、SEQ ID NO:1及びSEQID NO:2に
開示された配列と僅かに異なるヌクレオチド及びアミノ酸配列を意味し、例えば
、相同な核酸は、実質的に同じ活性(例えば、細胞にシスプラチン耐性を与える
能力)を有する実質的に同じポリペプチドを現実の配列として実質的に同じ様式
で生成するように機能する。ヌクレオチド又はアミノ酸配列を、核酸又はそれに
コードされる蛋白質の機能に影響を与えずに置換し又は改変することが出来るこ
とは予想される。例えば、遺伝コードの縮重は、幾つかのアミノ酸を1つより多
くのトリプレットコドンによって指定することを可能にする(例えば、CAU及
びCACは、両者ともヒスチジンをコードする)。従って、SEQ ID NO:1のヌク
レオチドの変化(特に、コドンの第3塩基の変化)は、コードされるアミノ酸に
影響しない「サイレント」突然変異をDNA中に生じ得る。これらのサイレント
突然変異は、1つの集団中に自然に生じ得るものであり(DNA多型)又
は、標準的組換えDNA技術により導入することが出来る。更に、SEQ ID NO:2
に示したアミノ酸配列における変化を生ずるDNA配列多型が自然の対立遺伝子
変異により集団内に存在し又は、蛋白質の機能的活性を変えずに、標準的技術に
より創られ得ることは当業者に認められるべきである。従って、SEQ ID NO:1に
実質的に類似する核酸配列を有するか又はSEQ ID NO:2に実質的に類似するアミ
ノ酸配列を有する蛋白質をコードする核酸であって、細胞に少なくとも5倍増の
シスプラチン耐性を与える能力を保持する核酸は、この発明に含まれるものであ
る。
他の具体例において、この発明の核酸は、高緊縮(high stringency )又は低
緊縮条件下で第2の核酸とハイブリダイズする。この第2の核酸は、SEQ ID NO:
1に示したヌクレオチド配列を含み又はSEQ ID NO:2に示したアミノ酸配列を有
する蛋白質をコードする。「高緊縮及び低緊縮条件」は、当業者に公知であり、
又はCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley& Sons,N.Y.(1989)
,6.3.1-6.3.6中に見出すことが出来る。例えば、フィルターハイブリダイゼー
ションにおいて、緊縮条件を、典型的には、フィルターを適当なハイブリダイゼ
ーション条件下で核酸プローブとインキュベートした後にフィルターを洗浄する
間に調整する。フィルターの洗浄の間に、非特異的若しくは不完全にハイブリダ
イズした核酸は、洗浄条件の緊縮度を高めるとフ
ィルターから除去される。緊縮条件は、典型的には、塩濃度を変える(例えば、
標準クエン酸ナトリウム緩衝液SSCの濃度を変える)ことにより及び/又は温
度を変えることにより調整する。典型的低緊縮条件は、室温(例えば、約22℃
)で約2.0×SSCである。典型的高緊縮条件は、約50〜65℃で約0.2
×SSCである。
この発明の核酸は、シスプラチン耐性細胞株から単離することが出来る。かか
る細胞株の一例は、HAC2/0.4であり、これは、実施例1に記載のように
して生成した。他の適当な細胞株を、典型的には数週間から数か月の期間にわた
って濃度を増大させるシスプラチンの存在下で非耐性細胞を段階的に選択するこ
とによって生成することが出来る。細胞のシスプラチン耐性の増倍度は、耐性細
胞が由来した親細胞株と比較して評価する(例えば、耐性細胞株についてのシス
プラチンのIC50対親細胞株のIC50)。この発明の核酸は、実施例1に詳細に
記載のように、ディフェレンシャルcDNAライブラリースクリーニングによっ
てシスプラチン耐性細胞株(例えば、HAC2/0.4)から単離することが出
来る。簡単に言えば、HAC2/0.4細胞からの全mRNAからcDNAライ
ブラリーを構築する。このライブラリーをプレートし、レプリカフィルターの2
セットを標準法により調製する。次いで、フィルターの1セットを、HAC2/
0.4mRNAから(例えば、実施
例1に記載の「ショットガンPCR」法によって)調製したcDNAでスクリー
ニングし且つ他のフィルターのセットを、親HAC2/P細胞株のmRNAから
調製した等量のcDNAを用いてスクリーニングする。このライブラリーをスク
リーニングするために用いるcDNAは、典型的には放射性標識を用いて標識す
る。標準的手順によりハイブリダイゼーション結果を可視化した後に、HAC2
/PcDNAと比較してHAC2/0.4cDNAとの増大したハイブリダイゼ
ーションを示すcDNAクローンをこのライブラリーから選択する。これらのc
DNAは、HAC2/P細胞と比較してHAC2/0.4において過剰発現され
たmRNAから誘導される。ディフェレンシャルcDNAライブラリースクリー
ニング法の説明については、 King,C.R.等、J.Biol.Chem.254,6781(1979);Van
der Bliek,A.M.等、Mol.Cel1l.Biol.6,1671(1986)を参照されたい。
この発明の核酸は又、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列に基づいて標準
的分子生物学技術によっても単離することが出来る。例えば、SEQ ID NO:1の全
部又は部分に対応するヌクレオチド配列を有する標識した核酸プローブを用いて
、cDNA又はゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることが出来る。
例えば、上記のようなシスプラチン耐性細胞株から作成したcDNAライブラリ
ーを、SEQ ID NO:1の全部又は部分を含むプローブを用いてスクリーニングする
ことが出来る。或
は、この発明の核酸を、その核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて
選択的に増幅することによって単離することが出来る。例えば、mRNAをシス
プラチン耐性細胞株から(例えば、Chirgwin等 (1979)Biochemistry,18,5294
-5299 のグアニジニウム−チオシアネート抽出手順によって)単離することが出
来、逆転写酵素(例えば、メリーランド、Bethesda在、Gibco/BRL から入手可能なMolo
ney MLV 逆転写酵素、又はフロリダ、St.Petersburg在、Seikagaku America,Inc.
から入手可能なAMV逆転写酵素)を用いてcDNAを調製することが出来る。
合成オリゴヌクレオチドプライマーを、PCRで用いるために、SEQ ID NO:1に
示したヌクレオチド配列に基づいてデザインすることが出来る。この発明の核酸
をcDNA(或は、ゲノムDNA)から、これらのオリゴヌクレオチドプライマ
ー及び標準PCR増幅技術を用いて増幅することが出来る。そのように増幅した
核酸を適当なベクター中にクローン化し、DNA配列分析によって特性決定する
ことが出来る。
この発明のRNAを、この発明のcDNAをそのcDNAの転写を与えてRN
A分子を生成する適当なベクター中にクローン化することによって単離すること
が出来る。例えば、cDNAをベクター中のバクテリオファージプロモーター例
えばT7プロモーターの下流にクローン化することが出来、そのcDNAをT7
ポリメラーセを用いてイン・ビトロで転写することが出来る。そ
の結果生成したRNAを標準的技術によって単離することが出来る。
この発明の核酸、例えばオリゴヌクレオチドを、標準技術を用いて化学合成す
ることも出来る。ペプチド合成と同様に市販のDNA合成装置において完全自動
化された固相合成を含むポリデオキシヌクレオチドを化学合成する種々の方法が
知られている(例えば、Itakura等、米国特許第4,598,049号;Caruthe
rs 等、米国特許第4,458,066号;及びItakuta 、米国特許第4,40
1,796及び4,373,071号を参照されたい)。
この発明の単離した核酸又はそのオリゴヌクレオチド断片は、当業者が、生物
材料例えば腫瘍細胞試料中の相補的ヌクレオチド配列の検出において利用するた
めのヌクレオチドプローブを構築することを可能にする。かかる分子プローブを
診断に用いてシスプラチン耐性腫瘍細胞を同定することが出来る。ヌクレオチド
プローブを検出手段として適当なシグナルを与え且つ検出に有用であるために十
分な半減期を有する放射性元素例えば32P、3H、14C等で標識することが出来
る。プローブを標識するのに用い得る他の物質には、特異的標識抗体によって認
識される抗原、蛍光化合物、酵素、標識抗原に特異的な抗体及び化学発光性化合
物が含まれる。適当な標識を、検出すべき核酸へのプローブのハイブリダイゼー
ション及び結合の速度並びにハイブリダイゼーションに利
用可能なヌクレオチドの量に関して選択することが出来る。核酸プローブを用い
て、例えば、慣用のドットブロット、ノーザンハイブリダイゼーション又はイン
・シトゥー(in situ )ハイブリダイゼーション手順において、生物試料例えば
診断目的の腫瘍バイオプシーの細胞からの全細胞RNA又はポリ(A) + RN
A中のmRNAをプローブすることが出来る。更に、この発明の核酸のヌクレオ
チド配列に基づいてデザインしたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PC
Rによって、cDNA又はゲノムDNAを増幅して細胞試料(例えば、腫瘍細胞
試料)における核酸の発現を検出し且つ定量することが出来る。II.アンチセンス核酸
この発明は又、細胞に高レベルのシスプラチン耐性を与えることの出来る核酸
に対してアンチセンスである核酸にも関係する。「アンチセンス」核酸は、「セ
ンス」核酸に相補的なヌクレオチド配列例えばワトソン−クリックの塩基対合の
規則に従って形成された蛋白質をコードするmRNA配列に対して相補的なヌク
レオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合する
ことが出来る。mRNAの配列に相補的なアンチセンス配列は、mRNAのコー
ド領域中に見出される配列に相補的であってよく又はmRNAの5’若しくは3
’非翻訳領域に相補的であってよい。SEQ ID NO:1
に示したヌクレオチド配列のコード領域は、ヌクレオチド1599〜1847を
含む。好ましくは、アンチセンス核酸は、mRNAの開始コドンの前の領域若し
くは開始コドンに及ぶ領域又は3’非翻訳領域中の領域に対して相補的である。
アンチセンス核酸は、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列に基づいてデザイ
ンすることが出来る。示した核酸のコード領域又は非翻訳領域の配列に相補的な
配列を有する核酸をデザインする。
この発明のアンチセンス核酸を、当業者に公知の手順を用いる化学合成及び酵
素的ライゲーション反応を利用して構築することが出来る。アンチセンス核酸(
例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を、天然のヌクレオチド又は分子の
生物学的安定性を増大し若しくはアンチセンス及びセンス核酸の間で形成される
二本鎖の物理的安定性を増大するようにデザインした様々な改変ヌクレオチドを
用いて化学合成することが出来、例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリ
ジン置換ヌクレオチドを用いることが出来る。或は、核酸をアンチセンス配置(
即ち、挿入した核酸から転写されるRNAが、興味のある標的核酸に対してアン
チセンス配置になる)で内部にサブクローン化した発現ベクターを用いて、アン
チセンス核酸を生物学的に生成することが出来る。アンチセンス発現ベクターは
、高効率の制御領域の制御下でアンチセンス核酸が生成される組換えプラスミッ
ド、ファージミド又は弱毒化ウイルスの形態であってよい(そ
の能力は、ベクターを導入した細胞型によって測定することが出来る)。アンチ
センス遺伝子を用いる遺伝子発現の制御の検討は、Weintraub,H.等、Antisens
e RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews- Trends in Genet
ics,Vol.1(1) 1986 を参照されたい。
この発明のアンチセンス核酸は、細胞にシスプラチン耐性を与える蛋白質をコ
ードする核酸(例えば、mRNA)の発現を阻止し、それによりその蛋白質の発
現を減少させるのに有用である。かかる蛋白質の発現を減らすことは、アンチセ
ンス核酸を導入した細胞のシスプラチン耐性を阻止し又は逆転させるための手段
として利用することが出来る。アンチセンス核酸を、培養においてシスプラチン
耐性細胞に導入してこの発明の蛋白質の発現を阻止することが出来る。1種以上
のアンチセンス核酸例えばオリゴヌクレオチドを培養培地中の細胞に典型的には
約200μg/mlで加えることが出来る。この発明の蛋白質の発現が阻止され
た培養シスプラチン耐性細胞は、シスプラチン耐性の阻止された細胞に対する潜
在的治療剤の効力を試験するのに有用である。
この発明のアンチセンス核酸又はそのオリゴヌクレオチドは又、遺伝子治療に
おいて患者におけるシスプラチン耐性を逆転させ又は阻止するために利用するこ
とも出来る。例えば、アンチセンス配列を用いてシスプラチン耐性の悪性細胞を
化学療法剤に感受性にすることが出来
る。アンチセンス核酸の患者への投与は、アンチセンス核酸がアンチセンスRN
Aの連続的産生を与える組換え発現ベクター中に含まれるときに最も効果的であ
り得る。アンチセンス核酸又はそのオリゴヌクレオチドを含む組換え体分子を、
送達用ビヒクル例えばリポソーム、レトロウイルスベクター若しくはアデノウイ
ルスベクターを用いてイン・ビボで直接組織中に導入することが出来る。患者中
の関心のある細胞(例えば、シスプラチン耐性腫瘍細胞)を標的とすることの出
来る送達用ビヒクルを選択することが出来る。
一具体例において、この発明のアンチセンス核酸は、SEQ ID NO:1の核酸と結
合するが、ミトコンドリアDNAとは結合しない。cDNA62とミトコンドリ
アDNA(この2つの配列を図6において比較する)間のヌクレオチド配列不同
の範囲に及ぶアンチセンス核酸、例えばオリゴヌクレオチドをデザインすること
が出来る。従って、このアンチセンス核酸は、配列においてcDNA62に対応
する核酸とミトコンドリア核酸とを識別することが出来る。かかるアンチセンス
核酸は、細胞においてミトコンドリアのND1蛋白質の機能を混乱させずにシス
プラチン耐性を阻止するのに有用であり得る。
他の具体例において、この発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボ
ザイムは、それらが相補性領域を有する一本鎖核酸例えばmRNAを開裂するこ
との出来るリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNA分子で
ある。シスプラチン耐性を与えるこの発明の核酸に対する特異性を有するリボザ
イムを、この発明の核酸のヌクレオチド配列に基づいてデザインすることが出来
る。例えば、活性部位の塩基配列がシスプラチン耐性決定mRNA中の開裂され
るべき塩基配列に相補的なテトラヒメナL−19IVSRNAの誘導体を構築す
ることが出来る。例えば、Cech等、米国特許第4,987,071号及びCech等
、米国特許第5,116,742号を参照されたい。或は、この発明の核酸を用
いて、特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAをRNA分子のプール
から選択することが出来る。例えば、Bartel,D.及びSzostak,J.W.(1993) Scien
ce 261,1411-1418を参照されたい。III.組換え発現ベクター
この発明の核酸を、公知の方法で、宿主における核酸の十分な発現を確実にす
る組換え発現ベクターに取込ませることが出来る。この発明の組換え発現ベクタ
ーは、この発明の核酸を「その核酸の宿主細胞における発現に適した」形態で含
み、これは、これらの組換え発現ベクターが、発現のために使用されるべき宿主
細胞に基づいて選択された1つ以上の制御配列をその核酸に機能的に結合して含
むことを意味する。機能的に結合してとは、核酸がその核酸のRNAへの転写を
与える様式で制御配列に結合されることを意味することを意図する。従っ
て、組換え発現ベクターを用いて、宿主細胞においてRNA(例えば、アンチセ
ンスRNA)を発現させることが出来、一層典型的には、宿主細胞においてその
RNAによりコードされる蛋白質を発現するために用いられる。用語「制御配列
」は、当分野で認められており、プロモーター、エンハンサー及び他の制御要素
(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。かかる制御配列は
、当業者に公知であり、Goeddel,GeneExpression Technology: Methods in Enz
ymology 185,Academic Press,カリフォルニア、San Diego(1990)に記載されている
。発現ベクターのデザインがトランスフェクトされるべき宿主細胞の選択及び/
又は発現させることを望む蛋白質の型等の因子に依存し得ることは理解されるベ
きである。かかる発現ベクターを用いて、細胞をトランスフェクトし、それによ
り、この発明の核酸によりコードされる蛋白質若しくはペプチドを生成し又はア
ンチセンス核酸を生成することが出来る。
この発明の組換え発現ベクターを、原核生物又は真核生物細胞中でのコードさ
れた蛋白質の発現用にデザインすることが出来る。例えば、蛋白質を大腸菌等の
細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス使用)、酵母細胞又は哺乳動物細胞にお
いて発現させることが出来る。他の適当な宿主細胞は、Goeddel,Gene Expressi
on Technology: Methods in Enzymology 185,Academic Press,カリフォルニア、San D
iego (1990)中に見出すことが出
来る。
原核生物中の蛋白質の発現は、最もしばしば大腸菌において、融合若しくは非
融合蛋白質の何れかを指示する構成的若しくは誘導可能なプロモーターを含むベ
クターを用いて行なわれる。融合ベクターは、それらの中にコードする蛋白質に
幾つかのアミノ酸を、通常組換え蛋白質のアミノ末端に加える。かかる融合ベク
ターは、典型的には、次の3つの目的に役立つ:1)組換え蛋白質の発現を増大
させる;2)組換え蛋白質の溶解度を増大させる;及び3)アフィニティー精製
におけるリガンドとして作用することにより組換え蛋白質の精製を助成する。し
ばしば、融合発現ベクターにおいて、融合部位と組換え蛋白質との接合点に蛋白
質分解による開裂部位を導入して融合蛋白質の精製後に組換え蛋白質を融合部位
から分離することを可能にする。かかる酵素及びそれらの同起源の認識配列には
、Xa因子、トロンビン及びエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベ
クターには、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、マルトースE結
合蛋白質又はプロテインAを標的組換え蛋白質に融合させるpGEX(オースト
ラリア国、Melbourne 在、Amrad Corp.)、pMAL(マサチューセッツ、Beverly 在、
New England Biolabs )及びpRIT5(ニュージャージー、Piscataway在、Pharmacia
)が含まれる。
誘導可能な非融合発現ベクターには、pTrc
(Amann等(1988)Gene 69:301-315 )及びpETシリーズのベクター(Studier
等、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185,Academic Pre
ss,カリフォルニア、San Diego(1990)60-89)が含まれる。pTrcにおいて、標的
遺伝子発現は、ハイブリッドtrc−lac融合プロモーターからの宿主のRN
Aポリメラーゼによる転写に依存する。pETベクターにおいては、挿入された
標的遺伝子の発現は、同時発現されるウイルス性RNAポリメラーゼ(T7gn
l)により媒介されるT7gn10−lac0融合プロモーターからの転写に依
存する。このウイルス性ポリメラーゼは、宿主株BL21(DE3)又はHMS
174(DE3)により、T7gnlを有する常在性λファージから、lacU
V5プロモーターの転写制御下で供給される。
大腸菌における組換え蛋白質の発現を最大にする1つの戦略は、その蛋白質を
組換え蛋白質を蛋白質分解により開裂する能力の欠損した宿主細菌において発現
させることである(Gottesman,S.,Gene Expression Technology: Methods in
Enzymology 185,Academic Press,カリフォルニア、San Diego(1990)119-128)。他
の戦略は、発現ベクターに挿入すべき核酸の核酸配列を変えて各アミノ酸に対す
る個々のコドンを高度に発現される大陽菌蛋白質において優先的に用いられてい
るものにすることである(Wada等(1992)Nuc.Acids Res.20:2111-
2118)。この発明の核酸配列のかかる変更は、標準的DNA合成技術により行な
うことが出来る。
酵母S.cerivisae における発現のためのベクターの例には、pYepSecl
(Baldari 等、(1987)Embo J.6:229-234)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz(1
982)Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz 等(1987)Gene 54:113-123 )
及びpYES2(カリフォルニア、SanDiego在、Invitrogen Corporation)が含まれる
。培養昆虫細胞(SF9細胞)における蛋白質の発現のための利用可能なバキュ
ロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith 等、(1983)Mol.Cell Biol.3
:2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow,V.A.及びSummers,M.D.(1989)Virolo
gy 170:31-39)が含まれる。
この発明の核酸の哺乳動物細胞における発現は、哺乳動物用発現ベクターを用
いて達成される。哺乳動物用発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,B.(1987
)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman 等(1987)EMBO J.6:187-195)が
含まれる。哺乳動物細胞中で用いる場合に、これらの発現ベクターの制御機能は
しばしばウイルス性物質により与えられる。例えば、一般に用いられるプロモー
ターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロイウルス及び最も頻繁に
シミアンウイルス40から導かれる。一具体例において、PMAMneo発現ベ
クター(Clontechより市販されている)を用いる。PMANneoベクターにお
いては、そのベク
ターに導入された核酸は、MMTVLTR及びSV40からのポリアデニル化シ
グナルの制御下にある。更に、ネオマイシン耐性を与える遺伝子がこのベクター
によりコードされている。他の具体例において、組換え発現ベクターは、特定の
細胞型における核酸の発現を優先的に指示することが出来る。これは、発現ベク
ターの制御機能が、ベクターに含まれる核酸の特定の細胞型における優先的発現
を与える制御配列により与えられ、それにより、コードされる蛋白質の組織又は
細胞型特異的な発現を与えることを意味する。組織特異的な制御要素は当分野に
おいて公知である。
この発明の組換え発現ベクターは、プラスミッドであってよい。更に、この発
明の組換え発現ベクターは、ウイルス性核酸中に導入された核酸の発現を与える
ウイルス又はその部分であってよい。例えば、複製欠損のレトロウイルス、アデ
ノウイルス及びアデノ関連ウイルスを用いることが出来る。
この発明は、更に、発現ベクター中にアンチセンス配置でクローン化されたこ
の発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。即ち、DNA分子は
、そのDNA分子の転写により、この発明の核酸例えばSEQID NO:1のヌクレオ
チド配列を含む核酸に対してアンチセンスであるRNA分子の発現を与える様式
で制御配列に機能的に結合される。様々な細胞型におけるアンチセンスRNA分
子の連続的発現を指示するアンチセンス核酸に機能的に結合された制御配列例え
ばウイルス性プロモーター及び/又はエンハンサーを選択することが出来、或は
、上記のように、組織又は細胞型特異的なアンチセンスRNAの発現を指示する
制御配列を選択することが出来る。IV.宿主細胞
この発明の組換え発現ベクターを細胞に導入することが出来、それにより、こ
の発明の「宿主細胞」を創ることが出来る。用語「宿主細胞」は、この発明の組
換え発現ベクターでトランスフォーム又はトランスフェクトし
た原核及び真核細胞を含むことを意図する。「でトランスフォームした」、「で
トランスフェクトした」、「トランスフォーメーション」及び「トランスフェク
ション」は、当分野で公知の多くの技術の1つによって核酸(例えば、ベクター
)を細胞に導入することを含むことを意図する。原核細胞を、例えばエレクトロ
ポレーション又は塩化カルシウム媒介のトランスフォーメーションにより核酸で
トランスフォームすることが出来る。核酸を、リン酸カルシウム共沈殿、DEA
E−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレ
ーション又はマイクロインジェクション等の従来技術によって哺乳動物細胞に導
入することが出来る。宿主細胞をトランスフォームし及びトランスフェクトする
ための適当な方法は、Sambrook等(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第
二版、Cold Spring Harbor Laboratory press(1989))及び他の実験書中に見出
すことが出来る。
上記のような技術によりこの発明の組換え発現ベクターでトランスフォームさ
れる宿主細胞の数は、用いた組換え発現ベクターの型及び用いたトランスフォー
メーション技術の型に依存する。哺乳動物細胞に導入されたプラスミッドベクタ
ーは、典型的には、低い頻度でのみ宿主細胞のDNAにインテグレートされる。
これらのインテグラントを同定するために、一般に選択可能マーカー(即ち、抗
生物質に対する耐性)を含む遺伝子を関心あ
る遺伝子と共に宿主細胞中に導入する。好適な選択可能マーカーには、ある種の
薬剤、例えばG418及びヒグロマイシンに対する耐性を与えるものが含まれる
。選択可能マーカーは、関心ある核酸とは別個のプラスミッドに導入することが
出来、一層好ましくは、同じプラスミッドに導入する。この発明の核酸及び選択
可能マーカーの遺伝子を含む1つ以上の組換え発現ベクターでトランスフォーム
した宿主細胞を、選択可能マーカーを用いて細胞を選択することにより同定する
ことが出来る。例えば、選択可能マーカーがネオマイシン耐性を与える遺伝子(
実施例で用いるプラスミッドpMAMneoに含まれるもの等)をコードするな
らば、トランスフォーマント宿主細胞をG418で選択することが出来る。選択
可能マーカー遺伝子を取込んだ細胞は生存し、他方、その他の細胞は死ぬ。
実施例に示したように、この発明の核酸は、感受性細胞にトランスフェクトし
た際に、その細胞に重金属(例えば、シスプラチン、カドミウム及び銅)耐性を
与えるとが出来る。従って、この発明の宿主細胞を調製する場合には、独立の選
択可能マーカー(ネオマイシン耐性等)を用いずに、重金属を選択剤として利用
することが可能である。それ故に、この発明の核酸を、その核酸を導入した細胞
の選択可能マーカーとして用いることが出来る。例えば、mdr1遺伝子の選択
可能マーカーとしての利用を記載した米国特許第5,166,059号及
びCroop 等、米国特許第5,198,344号を参照されたい。細胞は、1種以
上の重金属にさらすことにより選択される。例えば、この発明の核酸(例えば、
組換え発現ベクター中)を、関心ある遺伝子を含む第2の核酸と共に細胞に導入
する(別個のベクターで又は一層好ましくは同じベクターで)。次いで、トラン
スフォーマント宿主細胞を、それらの獲得した重金属耐性に基づいて選択する。
選択された重金属耐性細胞は、通常関心ある遺伝子と同時インテグレートされた
この発明の核酸を含む。更に、細胞の選択において用いる重金属の濃度を徐々に
増すことによって、導入された核酸の一層高いコピー数を有するトランスフォー
マントを得ることが可能である(この発明の核酸及び関心ある遺伝子の両方を含
む)。それ故、この発明の核酸は又、増幅可能マーカーとしても有用である。
この発明の宿主細胞を用いてこの発明の核酸によりコードされた単離された蛋
白質、即ち、細胞にシスプラチン耐性を与える蛋白質を調製することが出来る。
従って、この発明は、細胞にシスプラチン耐性を与える単離された蛋白質を調製
する方法を提供する。この方法は、この発明の宿主細胞を適当な培地中で、細胞
にシスプラチン耐性を与える蛋白質が形成されるまで培養し、次いで、その蛋白
質を単離することを含む。宿主細胞を培養するための適当な培地は、当分野にお
いて公知である。例えば、必要な添加物例えば血清、アミノ酸、緩衝剤、
抗生物質等を補ったRPMI−1640又はDMEM。蛋白質を、その蛋白質を
発現している宿主細胞から、硫安沈澱及び分画カラムクロマトグラフィー(例え
ば、イオン交換、ゲル濾過、電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等)
を含む当分野の標準的手順によって単離することが出来る。一般には、「酵素精
製及び関連技術」Mehods in Enzymology,22,233-577(1971)を参照されたい。V.単離された蛋白質
この発明は、細胞内で発現されるとその細胞に高レベルのシスプラチン耐性を
与えることの出来る単離された蛋白質を提供する。この発明の目的のために、高
レベルのシスプラチン耐性とは、シスプラチン感受性細胞と比較して少なくとも
5倍増のシスプラチン耐性を意味することを意図する。一層好ましくは、この耐
性の増加は、少なくとも10倍である。更に一層好ましくは、この耐性の増加は
少なくとも15倍である。この発明の蛋白質は、更に、それが発現された細胞に
、カドミウム感受性細胞と比較してカドミウム耐性を与えることが出来る。好ま
しくは、このカドミウム耐性の増加は、少なくとも3倍、一層好ましくは少なく
とも5倍、更に一層好ましくは8倍である。この発明の蛋白質は、更に、それが
発現された細胞に、銅感受性細胞と比較して銅耐性を与えることも出来る。好ま
しくはこの銅耐性の増加は、少な
くとも2倍、一層好ましくは少なくとも3倍、更に一層好ましくは4倍である。
「単離された」蛋白質とは、組換えDNA技術により生成した場合には細胞性
物質又は培養培地を実質的に含まず、或は、化学合成した場合には化学的前駆物
質又は他の化学物質を実質的に含まない蛋白質をいう。
好適具体例において、この発明の蛋白質は、SEQID NO:2に示したアミノ酸配
列を含む。高レベルのシスプラチン耐性を細胞に与えることが出来且つ核DNA
中に存在するヌクレオチド配列によりコードされる他の蛋白質も又、この発明に
より包含される。他の具体例において、この発明の蛋白質は、SEQ ID NO:2に示
したアミノ酸配列と実質的に類似するアミノ酸配列を含む。上記の第I節でこの
発明の核酸について記載したように、「実質的に類似する」アミノ酸配列とは、
SEQ ID NO:2に開示した配列と僅かの又は取るに足りない配列変化を有するアミ
ノ酸配列を含むことを意図する。即ち、相同な蛋白質は、SEQ ID NO:2を含む蛋
白質と実質的に同じ様式で機能する(例えば、その蛋白質が発現される細胞に少
なくとも5倍増のシスプラチン耐性を与えることが出来る)。更に他の具体例に
おいて、この発明の蛋白質は、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列を有する
第2の核酸と高緊縮又は低緊縮条件下でハイブリダイズする核酸によりコードさ
れる。他の具体例において、この発明の蛋白質は、SEQ ID NO0:2に示したアミ
ノ酸配列を
有する蛋白質をコードする第2の核酸と高緊縮又は低緊縮条件下でハイブリダイ
ズする核酸によりコードされる。
一具体例において、この発明の蛋白質は、免疫原性である。この発明の蛋白質
の免疫原性部分も又、この発明の範囲内にある。免疫原性部分は、典型的には、
蛋白質の表面に露出した蛋白質領域、例えば親水性領域を包含する。SEQ ID NO:
2の蛋白質の疎水性を分析して図7にグラフ化してプロットしてある。この分析
は、3つの親水性ストレッチ:アミノ酸19〜23、アミノ酸27〜33及びア
ミノ酸52〜60を示している。従って、これらの親水性領域を包含するペプチ
ドが免疫原性であることはありそうなことであり、この発明に包含される。
この発明の蛋白質は、適当な宿主細胞における発現により当分野で公知の技術
を用いて単離することが出来る。適当な宿主細胞には、原核又は真核の微生物若
しくは細胞株、例えば酵母、大腸菌及び昆虫細胞が含まれる。上記のこの発明の
組換え発現ベクターを用いて、上記のようにこの発明の蛋白質を単離するために
、宿主細胞中でその蛋白質を発現させることが出来る。
或は、この蛋白質若しくはその部分を、蛋白質化学において周知の技術、例え
ば固相合成(Merrifield(1964)J.Am.Chem.Assoc.85:2149-2154)又は均質溶液中
での合成(Houbenweyl(1987)Methods of Organic Chemistry,
E.Wansch編、15巻I及びII、Thieme,Stuttgart)を用いて、化学合成により調
製することが出来る。VI.抗体
この発明の蛋白質又はその部分を用いて、これらの蛋白質に結合する抗体を調
製することが出来る。抗体という用語は、ここで用いる場合、すべての抗体及び
この発明の蛋白質又はそのペプチドとやはり特異的に反応する抗体の断片を含む
ことを意図する。抗体は、従来技術を用いて断片化することが出来る。例えば、
F(ab')2断片を、抗体をペプシンで処理することにより生成することが出来る。
その結果生成したF(ab')2断片を処理して、ジスルフィド橋を還元してFab’断
片を生成することが出来る。
従来の方法を用いて抗体(ポリクローナル又はモノクローナル抗体)を調製す
ることが出来る。例えば、哺乳動物(例えば、マウス、ハムスター又はラット)
を、哺乳動物において抗体応答を誘発する蛋白質又はペプチドの免疫原形態を用
いて免疫化することが出来る。蛋白質又はペプチドに免疫原性を与えるための技
術には、キャリアーへの結合又は他の当分野で周知の技術が含まれる。例えば、
蛋白質又はペプチドを、アジュバントの存在下で投与することが出来る。免疫化
の進行を、血漿又は血清中の抗体力価の検出により監視することが出来る。この
免疫原を抗原として使用して標準的ELISA
又は他のイムノアッセイを用いて抗体レベルを評価することが出来る。免疫化の
後に、抗血清を得ることが出来、もし所望であればその血清からポリクローナル
抗体を単離することが出来る。
モノクローナル抗体を生成するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫化動
物から採取し、標準的体細胞融合手順によってミエローマ細胞と融合してこれら
の細胞を不滅化してハイブリドーマ細胞を産出することが出来る。かかる技術は
、当分野で周知である。例えば、Kohler及びMilstein(Nature(1975)256:495-49
7)により最初に開発されたハイブリドーマ技術、並びに、他の技術、例えばヒ
トB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor等(1983)Immunol.Today 4:72)及びヒト
モノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole等 Mo
noclonal Antibodies in Cancer Therapy(1985)Allen R.Bliss,Inc.,77-96頁)
。ハイブリドーマ細胞を、蛋白質又はペプチドと特異的に反応する抗体の産生に
ついて免疫化学的にスクリーニングし、モノクローナル抗体を単離することが出
来る。
この発明の蛋白質又はそのペプチドに対して反応性の特異的抗体若しくは抗体
断片を生成する他の方法は、免疫グロブリン遺伝子又はその部分(細菌において
発現される)をコードする発現ライブラリーをこの発明の蛋白質又はペプチドで
スクリーニングすることである。例えば、完全なFab断片、VH領域及びFV領
域を、ファー
ジ発現ライブラリーを用いて細菌中で発現させることが出来る。例えば、Ward等
(1989)Nature 345:544-546;Huse等(1989)Science 246:1275-1281及びMcCafferty
等(1990)Nature 348:552-554 を参照されたい。或は、SCID−huマウスを
用いて抗体又はその断片を生成することが出来る。
非ヒト患者において生成した抗体をヒトの治療に用いる場合、それらは様々な
程度で外来として認識され、免疫応答が患者内で生じ得る。この問題を最小化し
又は排除するための一つのアプローチは、全般的免疫抑制に好適なものであるが
、キメラ抗体誘導体即ち非ヒト動物可変領域とヒト定常領域を結合した抗体分子
を生成することである。キメラ抗体分子は、例えば、マウス、ラットその他の種
の抗体からの抗原結合ドメインとヒト定常領域を含む。キメラ抗体を作成するた
めの様々なアプローチが記載されており、それらを利用してこの発明の蛋白質に
結合する免疫グロブリン可変領域を含むキメラ抗体を作成することが出来る。例
えば、Morrison等(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851; Takeda等(1985)Na
ture 314:452; Cabilly 等、米国特許第4,816,567; Boss等、米国特
許第4,816,397;Tanaguchi 等、欧州特許出願EP171496;英国
特許GB2177096Bを参照されたい。かかるキメラ抗体は、対応する非キ
メラ抗体よりもヒトにおいて低免疫原性であることが予想される。
ヒトの治療目的のために、更に、この発明のモノクローナル抗体又はキメラ抗
体を、ヒト可変領域キメラを生成することによりヒト化することが出来、可変領
域の部分、特に抗原結合ドメインの保存されたフレームワーク領域をヒト起源と
し、超可変領域のみを非ヒト起源とすることが出来る。かかる改変免疫グロブリ
ン分子は、当分野で公知の幾つかの技術(例えば、Teng等(1983)Proc.Natl.Acad
.Sci.U.S.A.,80:7308-7312; Kozbor等、(1983)Immunology Today,4:7279; Olsso
n等(1982)Meth.Enzymol.,92:3-16 )によって作成することが出来るが、PCT
公開WO92/06193又はEPO239400の教示によって作成するのが
好ましい。ヒト化抗体を、例えば、英国、ミドルセックス、Twickenham,HollyRoad在、
Scotgen Limitedによって商業的に生成することが出来る。免疫原性を減じたヒ
ト化抗体は、ヒト患者における免疫療法に好適である。ヒト化抗体を用いる免疫
療法は、恐らく、任意の付随した免疫抑制の必要性を減じるであろうし、慢性病
状態又は反復抗体治療を必要とする状態の治療について増大した長期の効力を生
じ得る。
この発明のポリクローナル又はモノクローナル抗体を検出可能な物質とカップ
ルさせることが出来る。「カップルさせる」という語は、検出可能な物質を物理
的に抗体に結合させることを意味することを意図する。適当な検出可能な物質に
は、種々の酵素、置換基、蛍光物質、
発光物質及び放射性物質が含まれる。適当な酵素の例には、西洋ワサビペルオキ
シダーセ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリ
ンエステラーゼが含まれ、適当な置換基複合体の例には、ストレプトアビジン/
ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ、適当な蛍光物質の例には、アンベリ
フェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、
ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリ
トリンが含まれ、発光物質の例には、ルミノールが含まれ、適当な放射性物質の
例には 125I、 131I、35S又は 3Hが含まれる。
この発明の抗体は又、毒性又は治療活性を有する物質にカップルさせることも
出来る。毒性を有する物質の例には放射性核種及び毒素例えばジフテリア毒素及
びリシン又はその弱毒化誘導体が含まれる。毒性物質なる語には、細胞毒性細胞
例えばマクロファージ、好中球、エオシン好性細胞、NK細胞、LAK細胞及び
大型顆粒リンパ球も含むことを意図する。抗体を細胞毒性細胞上のFcレセプタ
ーにより細胞毒性細胞にカップルさせることが出来ることは認められよう。治療
活性を有する物質の例は、メトトレキセート等の化学療法剤である。
本発明は、熟練者に、この発明の蛋白質に結合する二特異性抗体及び4量体抗
体複合体を製造することを可能にする。二特異性抗体は、ハイブリッドハイブリ
ドーマ
を形成することによって製造することが出来る。ハイブリッドハイブリドーマは
、Staerz及びBevan(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:1453及びImmunologyT
oday(1986)7:241 )に開示されたような当分野で公知の手順を用いて調製するこ
とが出来る。一般に、ハイブリッドハイブリドーマは、この発明の蛋白質に結合
することの出来る第1のモノクローナル抗体を産生する第1の細胞株と検出可能
な物質又は毒性若しくは治療活性を有する物質に結合し得る第2のモノクローナ
ル抗体を産生する第2の細胞株とを融合させることによって形成される。二特異
性抗体は又、Staerz等(Nature(1985)314:628 )及びPerez 等(Nature(1985)31
6:354)により開示されたような手順を用いる化学的手段によって構築すること
も出来る。
4量体抗体複合体は、この発明の蛋白質に結合し得る第1のモノクローナル抗
体及び検出可能な物質又は毒性若しくは治療活性を有する物質に結合し得る第2
のモノクローナル抗体を調製することによって製造することが出来る。第1及び
第2の抗体は、第1の動物種からのものである。第1及び第2の抗体を、ほぼ等
モル量の第2の動物種の抗体又はそのFab断片(これらは、第1の動物種の抗
体のPc断片に対するものである)と反応させる。次いで、形成された4量体を
単離する(4量体抗体複合体の製造方法の説明は、Lansdorpの米国特許第4,8
68,109を参照されたい)。
前に論じたように、SEQ ID NO:2の蛋白質は、ミトコンドリアND1蛋白質の
最初の83アミノ酸に対応する。一具体例において、この発明の抗体は、ミトコ
ンドリアND1蛋白質に結合しない(即ち、この抗体は、SEQ ID NO:2の蛋白質
とミトコンドリアND1蛋白質とを識別することが出来る)。例えば、SEQ ID N
O:2の蛋白質のC末端のユニークなコンホメーション(ND1蛋白質中には見出
されない)を認識する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を、標準的技術によ
り生成し、SEQID NO:2の蛋白質には結合し得るがND1蛋白質には結合し得な
いその能力によって選択することが出来る。
この発明の蛋白質に結合するこの発明の抗体(モノクローナル抗体、二特異性
抗体及び4量体抗体複合体を含む)を、シスプラチン耐性腫瘍を有する患者に投
与して、例えばその腫瘍を検出し又は治療することが出来る(例えば、抗体を毒
性又は治療活性物質にカップルさせた場合)。従って、この発明は、この発明の
抗体及び製薬上許容し得るキャリアーを含む製薬組成物を提供する。用語「製薬
上許容し得るキャリアー」とは、ここで用いる場合、希釈剤例えば塩溶液及び緩
衝剤水溶液を含むことを意図する。製薬上許容し得るキャリアーは、例えば、水
、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び
液体ポリエチレングリコール等)を含む溶剤又は分散媒、又はそれらの適当な混
合物であってよい。注射用途に適した製薬組成物に
は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散及び無菌注射溶液又は分散を即座に調
製するための無菌粉末が含まれる。抗体を非経口投与以外によって投与するため
には、抗体をその不活性化を防ぐ物質で被覆するか又は該物質と同時投与する必
要がある。酵素阻害剤には、膵臓トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフル
オロホスフェート及びトラシロールが含まれる。通常の貯蔵及び使用条件下にお
いて、これらの調製物は、微生物の成育を防ぐために防腐剤を含むことが出来る
。VII.トランスジェニック動物及び相同組換え動物
この発明の核酸を用いて、トランスジェニック動物又は相同組換え動物を生成
することが出来、それらは又、治療上有用な試薬のスクリーニングにおいて有用
である。トランスジェニック動物は、その動物又はその動物の先祖に、出生前例
えば胎児期に導入されたトランスジーンを含む細胞を有する動物である。トラン
スジーンは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中にインテグレー
トされ且つ成熟動物のゲノム中に維持されて、それにより、トランスジェニック
動物の1つ以上の細胞型又は組織においてコードされた遺伝子生成物の発現を指
示するDNAである。従って、一具体例において、この発明は、細胞にシスプラ
チン耐性を与える核酸を発現するようにトランスフェクトされた細胞を含む非ヒ
トトランスジェニック動物を提供する。好ましくは、
非ヒト動物は、限定はしないが、マウスである。トランスジェニック動物は、例
えば、蛋白質をコードする核酸を、受精した卵母細胞の雄性前核に、例えばマイ
クロインジェクションによって導入し(典型的には、適当な制御要素例えばエン
ハンサーにリンクさせる)、その卵母細胞を偽妊娠の雌養育動物中で発生させる
ことによって創ることが出来る。例えば、シスプラチン耐性を与える核酸を発現
するトランスジェニック動物(例えば、マウス)を、SEQ ID NO:1に示した単離
した核酸を用いて作成することが出来る。イントロンの配列及びポリアデニル化
シグナルをもトランスジーン中に含ませて、そのトランスジーンの発現効率を増
大させることが出来る。これらの単離した核酸を、一種以上の特定の細胞型にお
いて、コードされた蛋白質の発現を指示する制御配列に結合させることが出来る
。トランスジェニック動物(特に、マウス等の動物)を生成する方法は、当分野
において慣用的となっており、例えば、米国特許第4,736,866及び4,
870,009及びHogan,B 等、(1986)A Laboratory Manual,(ニューヨーク、Cold
Spring Harbor在、Cold Spring Harbor研究所)に記載されている。トランスジ
ェニック創出動物を用いて、トランスジーンを有する更なる動物を繁殖させるこ
とが出来る。
この発明のトランスジェニック動物を用いて、シスプラチン耐性の分子的基礎
を研究することが出来る。この発明のトランスジェニック動物を用いて、シスプ
ラチン
耐性の発生を阻止し、遅延させ又は逆転させる能力について物質を試験すること
が出来る。トランスジェニック動物を、未処理の対照用トランスジェニック動物
と並行してその物質で処理することが出来る。この発明のトランスジェニック動
物からの細胞を、標準的組織培養技術を用いて培養することが出来る。特に、こ
の発明の組換え分子を有する細胞を培養して、シスプラチン耐性を阻止し、遅延
させ又は逆転させる能力について物質を試験するのに利用することが出来る。
この発明の単離した核酸を用いて、更に、非ヒト相同動物を創ることが出来る
。用語「相同組換え動物」とは、ここで用いる場合、相同組換えにより修飾され
た遺伝子を含む動物を記述することを意図している。相同組換え事象は、完全に
遺伝子を混乱させて、機能的遺伝子生成物はもはや生成し得ない(しばしば、「
ノックアウト」動物と呼ばれる)か、又は相同組換え事象は、遺伝子を修飾して
、未だ機能的であるが、改変された遺伝子生成物を生成する。従って、相同組換
えを用いて、改変されたシスプラチン耐性決定遺伝子を欠くか又は含む動物を生
成することが出来る。好ましくは、非ヒト動物はマウスである。例えば、この発
明の単離した核酸を用いで、シスプラチン耐性決定遺伝子において組換え事象が
起きた相同組換えマウスを創ることが出来る。一具体例において、この発明は、
SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列を含む改変された遺伝子を有する細胞を
含む非
ヒト相同組換え動物を提供する。
相同組換えされた核酸を有する動物を創るために、内在性フランキングDNA
配列に相同なDNA配列により隣接される内在性DNA配列に置き換わるべきD
NA配列を含むベクターを製造する(例えば、Thomas,K.S.及びCapecchi,M.R.(
1987)Cell 51:503を参照されたい)。このベクターを胎児幹細胞株に導入し(例
えば、エレクトロポレーションによる)、導入されたDNAが内在性DNAと相
同組換えされた細胞を選択する(例えば、Li,E.等(1992)Cell 69:915 を参照さ
れたい)。次いで、選択した細胞を、動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注入し
て、凝集キメラを形成する(例えば、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Ce
lls,E.J.Rovertson 編、(IRL,Oxford,1987)中のBradley,A.,A Practical Appro
ach,113-152頁を参照されたい)。次いで、キメラ胎児を適当な偽妊娠の雌養育
動物中に移植し、分娩日まで育てることが出来る。この相同組換えDNAを生殖
細胞中に有する子孫を用いて、すべての細胞がこの相同組換えDNAを含む動物
を繁殖させることが出来る。VIII.発明の方法
この発明の一つの面は、細胞のシスプラチン耐性を阻止する方法に関係する。
例えば、この方法を用いて、問題の腫瘍細胞のシスプラチン耐性を阻止し、それ
により
この腫瘍細胞に対するシスプラチンの治療効果を増大させることが出来る。従っ
て、シスプラチン耐性を阻止する好適細胞型は、腫瘍細胞である。特に、シスプ
ラチン耐性を示す固形腫瘍、例えば、卵巣、精巣並びに頭部及び頚部の腫瘍を、
この方法の適用の標的細胞とすることが出来る。
この方法は、シスプラチン感受性細胞と比較して好ましくは少なくとも5倍、
10倍又は15倍のシスプラチン耐性を細胞に与える細胞により発現された蛋白
質の活性を阻害する薬剤と細胞を接触させることを含む。好ましくは、細胞にシ
スプラチン耐性を与えるこの蛋白質は、SEQ ID NO:2に示したアミノ酸配列又は
実質的にそれと類似のアミノ酸配列を含む。或は、この蛋白質は、この発明の蛋
白質の他の具体例を構成することが出来る(第V節に記載の通りである)。
SEQ ID NO:2の蛋白質は、アミノ酸配列において、ミトコンドリアND1蛋白
質のN末端83アミノ酸に対応しているので、ND1蛋白質がシスプラチン耐性
に関与し得ると予想するのは妥当なことである。従って、他の具体例において、
この活性が阻害される蛋白質は、ミトコンドリアND1蛋白質である。用語「ミ
トコンドリアND1蛋白質」とは、ミトコンドリアDNA中にコードされ且つN
ADH−ユビキノンオキシドレダクターゼ複合体の成分である蛋白質を記述する
ことを意図している。ヒトND1蛋白質のアミノ酸配列は、Anderson,S.
等(1981)Nature 290:457-465 に開示されている。他の種からのND1蛋白質の
アミノ酸配列は、Bibb,M.J.等(1981)Cell 26:167-180(マウス);Anderson,S
.等(1982)J.Mo1lBiol.156:683-717(ウシ);Roe,B.A.等(1985)J.Biol.Chem.260
:9759-9774(アフリカツメガエル);及びJacobs,H.T.等(1988)J.Mol.Biol.202
:185-217(ウニ)に開示されている。
この方法の一具体例において、この蛋白質の活性を阻害する薬剤は、この蛋白
質をコードする核酸にアンチセンスである核酸である。このアンチセンス核酸を
細胞中に導入して、この蛋白質の活性を阻害する(第II節で一層詳細に説明)。
アンチセンス核酸は、この蛋白質をコードするmRNAの翻訳を邪魔することに
より細胞におけるこの蛋白質の発現を阻害することが出来る。或は、この蛋白質
をコードするmRNAを開裂するリボザイムを用いてこの蛋白質の産生を阻止す
ることが出来る。
他の具体例において、この蛋白質の活性を阻害する薬剤は、この蛋白質に結合
する分子である。好適分子は、抗体又はその断片である。分子(例えば、抗体)
は、この蛋白質に結合して、この蛋白質の機能を邪魔する。この蛋白質に結合す
る分子(例えば、抗体)を、毒性又は治療活性を有する物質とカップルさせるこ
とが出来る。「毒性又は治療活性を有する物質」なる語は、ここで用いる場合、
その作用が細胞を破壊し得る分子例えば放射性同位体、毒素(例えば、ジフテリ
ア毒素又はリシン)
又は化学療法剤、並びにその作用が他の細胞を破壊し得る細胞例えば細胞毒性細
胞を含むことを意図する。シスプラチン耐性細胞に結合する分子は、毒性又は治
療活性を有する物質に直接カップルさせることが出来(例えば、リシン結合した
モノクローナル抗体)、或は、その物質に間接的に結合させることが出来る。例
えば、腫瘍細胞と細胞毒性細胞とを架橋させることの出来る二特異性抗体を使用
し、それにより、その腫瘍細胞の溶解を促進することが出来る。二特異性抗体は
、細胞毒性細胞のFcレセプターに結合することにより腫瘍細胞と細胞毒性細胞
とを架橋することが出来る。
更に別の具体例において、細胞のシスプラチン耐性を阻止する薬剤は、この蛋
白質の活性を阻害する低分子例えば薬物である。シスプラチン耐性を阻止する低
分子を、この発明により提供されるようなスクリーニングアッセイにより同定す
ることが出来、又、合理的薬物デザインの原理に基づいて創ることが出来、例え
ば、この発明の蛋白質の活性を阻害し得る分子をこの蛋白質の構造に基づいてデ
ザインすることが出来る。
この細胞のシスプラチン耐性を阻止する方法を、患者にイン・ビボで用いるこ
とが出来る。用語「患者」とは、ヒト及び他の哺乳動物例えばサル、イヌ、ネコ
、ラット、ウサギ、マウス及びこれらのトランスジェニック種を含むことを意図
する。例えば、アンチセンス核酸を、この分野でイン・ビボ遺伝子治療において
用いられ
ている技術により、例えばレトロウイルス若しくはアデノウイルスベクター、リ
ポソームカプセル化又は腫瘍部位への直接的注射により、細胞(例えば、腫瘍細
胞)にイン・ビボで送達することが出来る。シスプラチン耐性蛋白質に結合する
抗体その他の分子を、注射例えば静脈注射又は腫瘍部位への注射によって細胞に
イン・ビボで送達することが出来る。シスプラチン耐性の低分子インヒビターを
、適当な経路例えば静脈投与又は経口投与によって患者に送達することが出来る
。或は、この方法を用いて、細胞のシスプラチン耐性を、例えば細胞をアンチセ
ンス発現ベクターでトランスフェクトするか又は細胞をこの蛋白質と結合する抗
体と共にインキュベートすることによりイン・ビトロで阻止することが出来る。
これらの細胞をイン・ビトロで用いて、例えば、シスプラチン耐性蛋白質の他の
薬剤(例えば、他の重金属)に対する交差耐性への寄与を測定し、シスプラチン
耐性が阻止された細胞に対して細胞毒性である条件(例えば、他の薬剤)を同定
することが出来る。
この方法は、更に、細胞をシスプラチンに接触させてその細胞の成育を阻止す
ることを含む。シスプラチン耐性蛋白質の活性の阻害の後に、細胞は、再びシス
プラチンの効果に感受性となる。従って、シスプラチンを用いて細胞の成育を阻
止することが出来る。患者においては、シスプラチンをその患者に投与すること
が出来る。イン・ビトロの細胞については、それらの細胞をシスプ
ラチンと共に培養することが出来る。
この発明の他の面は、細胞に重金属耐性を与える方法である。一具体例におい
て、重金属はシスプラチンである。他の具体例において、重金属はカドミウムで
ある。更に他の具体例において、重金属は銅である。この方法は、重金属感受性
細胞を、重金属への曝露による細胞毒性から保護するのに有用である。例えば、
腫瘍を有する患者内の非悪性のシスプラチン感受性細胞を、その患者がシスプラ
チンで治療される際に、細胞毒性から保護することが出来る。
この方法は、シスプラチン感受性細胞と比較して高レベルのシスプラチン耐性
を細胞に与える核酸をその細胞中に導入することを含む。好ましくは、シスプラ
チン耐性の増加は少なくとも5倍、一層好ましくは10倍、更に一層好ましくは
15倍である。細胞に導入すべき好適核酸は、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチ
ド配列又はそのコード領域を含む。しかしながら、この発明の核酸の他の具体例
(第I節に記載した通り)を用いることは出来る。例えば、核酸は、SEQ ID NO:
1と実質的に類似するヌクレオチド配列を含むことが出来、SEQ ID NO:2と実質
的に類似するアミノ酸配列を有する蛋白質をコードすることが出来、又は、SEQ
ID NO:1の核酸と高緊縮若しくは低緊縮条件下でハイブリダイズすることが出来
る。
SEQ ID NO:1の核酸とミトコンドリアND1遺伝子と
の間に高度の相同性(図6に示した通り)があるならば、ミトコンドリアND1
遺伝子がそれが発現された細胞に重金属耐性を与え得ることを予想するのは妥当
なことである。従って、一具体例において、細胞にシスプラチン耐性を与える核
酸は、ミトコンドリアND1遺伝子である。用語「ミトコンドリアND1遺伝子
」とは、ミ卜コンドリアDNA中に存在し且つNADH−ユビキノンオキシドレ
ダクターゼ複合体の成分をコードする遺伝子を記述することを意図する。好まし
くは、ミトコンドリアND1遺伝子は、ヒトND1遺伝子であり、そのヌクレオ
チド配列は、Anderson,S.等(1981)Nature 290:457-465 に開示されている。他
の種からのND1遺伝子のヌクレオチド配列は、Bibb,M.J.等(1981)Cell26:167
-180(マウス);Anderson,S.等(1982)J.Mol.Biol.156:683-717(ウシ); Roe
,B.A.等(1985)J.Biol.Chem.260:9759-9774 (アフリカツメガエル);及びJaco
bs,H.T.等(1988)J.Mol.Biol.202:185-217 (ウニ)に開示されている。
細胞に導入する核酸は、「その細胞中でのその核酸の発現に適した形態」であ
り、これは、その核酸が1つ以上の制御配列に、その細胞内でのRNAへの転写
を与える様式で機能的に結合されることを意味する。好適具体例において、核酸
は組換え発現ベクター中にある(前記の第III節に記載の通り)。核酸を、前記
の第IV節にこの発明の宿主細胞の生成に関して記載したような標準的ト
ランスフェクション技術によって細胞中に導入することが出来る。
この方法は、細胞のシスプラチン耐性が望まれる状況において有用である。例
えば、化学療法剤の主な投与量制限因子は、それらの正常細胞並びに腫瘍細胞に
対する細胞毒性である。シスプラチン耐性腫瘍を有する患者において、シスプラ
チンの投与量を増すことは、シスプラチンの正常細胞に対する毒性により妨げら
れ得る。シスプラチンの副作用は、骨髄毒性及び腎毒性を増すことであることが
知られている。従って、細胞にシスプラチン耐性を与えることによってシスプラ
チン(及び他の重金属)の効果から非耐性の正常細胞を保護することは、主要な
臨床上の重要事である。この発明の核酸を、当分野でイン・ビボ遺伝子治療用に
用いられている技術によって、例えばレトロウイルス若しくはアデノウイルスベ
クター、リポソームカプセル化、又は標的部位へ(例えば、腎毒性阻止のために
腎臓へ、又は骨髄毒性阻止のためにミエロイド細胞若しくはその前駆細胞へ)の
直接的注射を用いて、患者の細胞にイン・ビボで導入することが出来る。或は、
細胞を生体外で改変して患者へ戻すことが出来る。例えば、化学療法剤の効果を
受け易い造血幹細胞を患者から分離し、この発明の核酸でイン・ビトロでトラン
スフェクトして(標準的トランスフェクション技術による)、患者に再導入する
ことが出来る。
この発明により提供された方法によって重金属耐性が
与えられた細胞は、更に、重金属(例えば、シスプラチン)耐性細胞に対して有
効な治療剤のスクリーニングアッセイにおいて有用である。これらの薬剤には、
それら自身が体生細胞に対して細胞毒性である薬剤又は他の治療剤の化学増感剤
が含まれる。ここで用いる場合、「化学増感剤」とは、耐性細胞に対する治療剤
の効力を増大させ及び/又は細胞の治療剤に対する耐性を減少させる物質をいう
。例えば、ベラパミルは、P糖蛋白質媒介の多剤耐性の化学増感剤である(多剤
耐性細胞は、ベラパミルの存在下で、アントラサイクリン類の細胞毒性効果を一
層受け易い)。これらのスクリーニング方法を用いて、例えば、シスプラチン耐
性腫瘍を有する患者において(即ち、自然若しくは獲得耐性によりシスプラチン
がもはや有効な治療剤でない状況において)、治療上有用であり得る物質を同定
することが出来る。
従って、この発明は、シスプラチン耐性細胞に対して細胞毒性である物質を同
定するための方法を提供する。この方法は、細胞中に、その細胞にシスプラチン
耐性(好ましくは、シスプラチン感受性細胞と比較して少なくとも5、10又は
15倍のシスプラチン耐性の増加)を与える核酸を導入し、それにより、シスプ
ラチン耐性細胞を創り、そのシスプラチン耐性細胞を試験すべき物質と接触させ
、そしてその物質のその細胞に対する細胞毒性を測定することを含む。好適核酸
は、重金属耐性を細胞に与える方法に関して上述した通りである。例え
ば、一具体例において、この核酸は、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列又
はそのコード領域を含む。他の具体例において、この核酸は、ミトコンドリアN
D1遺伝子を含む。更に、この発明のこれらの核酸の他の具体例も、この方法に
包含される。細胞に対する物質の毒性を、標準的技術、例えば実施例に記載した
MTTアッセイによって測定することが出来る。イン・ビトロで培養した細胞を
、スクリーニングアッセイにおいて用いることが出来、例えば、細胞を物質の存
在下で培養することによりその物質と接触させることが出来る。或は、この細胞
は非ヒトトランスジェニック動物中の細胞であってよく、試験すべき物質をその
非ヒトトランスジェニック動物に投与することが出来る(即ち、「細胞を・・・・と
接触させ」なる語はその物質を動物に投与することを含むことを意図している)
。トランスジェニック動物の場合において、この発明の核酸を動物又はその先祖
に胎児期に導入する(例えば、受精卵母細胞中に導入し、その卵母細胞を標準的
技術により動物に発生させる)。
この発明は、更に、シスプラチンの化学増感剤である物質を同定するための方
法を提供する。この方法において、細胞にシスプラチン耐性を与える核酸をその
細胞に導入することによりシスプラチン耐性細胞を創る。シスプラチン耐性細胞
を創るための好適核酸は上記の通りである。次いで、このシスプラチン感受性細
胞を、試験すべき物質の存在下及び非存在下においてシスプラチンと
接触させ、そしてその細胞のシスプラチンに対する耐性を、試験すべき物質の存
在下及び非存在下において測定する。シスプラチンの化学増感剤である物質を、
その物質が細胞のシスプラチン耐性を阻止する能力に基づいて同定する。細胞に
対するシスプラチンの細胞毒性は、標準的技術、例えばMTTアッセイにより測
定することが出来る。イン・ビトロで培養した細胞をこのスクリーニングアッセ
イで用いることが出来、例えばその細胞をシスプラチン及び試験すべき物質と共
に培養することによりシスプラチン及び試験すべき物質と接触させることが出来
る。或は、この細胞は非ヒトトランスジェニック動物中の細胞であってよく、シ
スプラチン及び試験すべき物質をその非ヒトトランスジェニック動物に投与する
ことが出来る(即ち、「細胞を・・・・と接触させ」なる語は、シスプラチン及びこ
の物質を動物に投与することを含むことを意図している)。
或は、この発明のスクリーニング方法(即ち、シスプラチン耐性細胞に対して
細胞毒性である物質を同定し又はシスプラチンの化学増感剤を同定するための方
法)は、シスプラチンに連続的にさらされることによりシスプラチン耐性となっ
た癌細胞株(例えば、実施例1に記載したようにして創ったもの)を用いて行な
うことが出来る。従って、この発明のスクリーニング方法は、この発明により提
供されるHAC2/0.4細胞株を用いても実施出来る。このHAC2/0.4
細胞株を、ブダペ
スト条約の規定に従って、日本国、茨城県、筑波市在、生命工学工業技術研究所
に寄託し、寄託番号FERMBP−4628を与えられた。HAC2/0.4に
対して細胞毒性である物質を同定するために、この細胞株を試験すべき物質と共
にインキュベートし、この物質の細胞株に対する細胞毒性を測定することが出来
る。シスプラチンの化学増感剤を同定するために、HAC2/0.4細胞株を、
試験すべき物質の存在下及び非存在下において、シスプラチンと共にインキュベ
ートし、この細胞株に対するシスプラチンの細胞毒性を測定することが出来る。
この発明は、更に、シスプラチン耐性腫瘍細胞を同定するための方法を提供す
る。一具体例において、この方法は、腫瘍細胞試料からの核酸(例えば、mRN
A又はcDNA)をこの発明の核酸とハイブリダイズするヌクレオチドプローブ
と接触させ、このヌクレオチドプローブのシスプラチン耐性でない細胞に比べて
これらの腫瘍細胞からの核酸に対する増大したハイブリダイゼーションに基づい
てシスプラチン耐性腫瘍細胞を同定することを含む。好ましくは、このヌクレオ
チドプローブは、SEQ ID NO:1に示したヌクレオチド配列又はそのオリゴヌクレ
オチド断片にハイブリダイズする。標準的ハイブリダイゼーション技術、例えば
、ノーザンブロッティング、RNアーセ保護、ドットブロットハイブリダイゼー
ション、イン・シトゥーハイブリダイゼーション等を用
いることが出来る。この方法は、腫瘍細胞試料から逆転写酵素−PCRによりこ
の発明の核酸を増幅することの出来るオリゴヌクレオチドプライマーの利用を含
む。腫瘍細胞内のこの発明の核酸へのプローブのハイブリダイゼーションの増加
を、定性的に(例えば、ハイブリダイゼーションブロット上のバンドサイズによ
り)測定することが出来、又は、例えば定量PCRによって定量的に測定するこ
とが出来る。
他の具体例において、この方法は、腫瘍細胞を、この発明の蛋白質に結合する
分子と接触させ(この分子は、検出可能な物質で標識しておく)、腫瘍細胞に結
合したその検出可能な物質をシスプラチン耐性腫瘍細胞の指標として検出するこ
とを含む。この蛋白質に結合するための好適分子は、抗体である。一具体例にお
いて、この抗体は、ミトコンドリアND1蛋白質に結合しない。即ち、SEQ ID N
O:2の蛋白質とND1蛋白質とを識別する抗体(第VI節に記載)を用いることが
出来る。検出可能な物質例えば蛍光マーカー、酵素又は放射性マーカーで標識し
た抗体を用いて、腫瘍試料中の又はイン・ビボのシスプラチン耐性腫瘍細胞を同
定することが出来る。この発明の抗体例えばモノクローナル抗体をシスプラチン
耐性について試験すべき腫瘍細胞と共にインキュベートすることによりシスプラ
チン耐性腫瘍細胞を同定することが出来る。この抗体の腫瘍細胞への結合は、そ
の腫瘍細胞上にこの発明の蛋白質が存在することを示す。腫瘍細胞に結合する抗
体のレベルを正常対照細胞に結合する抗体のレベルと比較することが出来、正常
細胞と比較して腫瘍細胞に対する抗体の増大した結合をシスプラチン耐性の指標
として用いることが出来る。抗体の細胞(例えば、試験すべき腫瘍細胞又は正常
対照細胞)への結合をその抗体を標識する検出可能な物質を検出することによっ
て測定する。この検出可能な物質を直接抗体にカップルさせることが出来、或は
、抗体に結合し得る他の分
子にカップルさせることが出来る。例えば、ウサギFc領域を有するこの発明の
抗体(例えば、ウサギの免疫化により調製)は、ウサギFc領域に対する第2抗
体を用いて検出することが出来る(第2抗体は、検出可能な物質にカップルさせ
ておく)。
シスプラチン耐性腫瘍細胞を腫瘍試料においてイン・ビトロで、又はイン・ビ
ボで検出することが出来る。例えば、患者から取り出した腫瘍組織を腫瘍試料と
して用いることが出来る。試料は、直ちに使うことも出来るし、−20℃より低
温で保存することも出来る。従って、組織切片例えば患者から取り出した腫瘍組
織の凍結乾燥した又は新たに凍結させた切片を腫瘍試料として使用することが出
来る。顕微鏡のスライドガラス上の腫瘍切片を、標準的免疫化学技術を用いて抗
体と反応させ、又は標準的イン・シトゥーハイブリダイゼーション技術によって
核酸と反応させることが出来る。更に、腫瘍細胞の単離細胞浮遊液が達成可能な
らば、腫瘍細胞を抗体と反応させて、フローサイトメトリーにより分析すること
が出来る。或は、シスプラチン耐性腫瘍細胞を、腫瘍を有する患者においてイン
・ビボで検出することが出来る。標識した抗体を患者内に導入し、腫瘍に結合し
た抗体を検出することが出来る。例えば、抗体を放射性マーカーで標識すること
が出来、その患者内の存在及び位置を標準的映像化技術によって検出することが
出来る。
シスプラチン耐性腫瘍を同定するために用いる試薬、
例えばこの発明の核酸に特異的なヌクレオチドプローブ及び/又はこの発明の蛋
白質と結合する抗体を、診断用キットに取り入れることが出来る。このキットは
、試料を比較する標準を含むことが出来る。種々の試薬を適当な容器にてこのキ
ット中に含めることが出来、このキットには、それらの容器用のホルダーを含め
ることが出来る。この診断用キットには、このキットの使用のための指示マニュ
アルを含めることが出来る。
この発明を、更に、下記の実施例により説明する。しかしながら、これらの実
施例は、単に、この発明の例を説明することを意図するものであり、この発明の
範囲を制限するものと解釈すべきではない。この出願中で引用したすべての参考
文献及び公表された特許及び特許出願の内容を、参考として、本明細書中に援用
する。実施例1:
ディフェレンシャルcDNAライブラリー
スクリーニング及びシスプラチン耐性細胞株
中で優先的に発現されるcDNAの単離
シスプラチン耐性細胞株中で優先的に発現されるcDNAを、ディフェレンシ
ャルcDNAライブラリースクリーニング法を用いて単離した。そのプロトコー
ルを図1に図式的に要約し、下記に詳細に説明する。シスプラチン耐性細胞株の樹立
卵巣癌細胞株(HAC/P)を、未治療の患者から得た。HAC2/Pは、接
着成長を示し、細胞学的には腺
癌細胞型であった。親のHAC2/P細胞株のシスプラチン耐性サブクローン(
HAC2/0.4)を下記のように樹立した。親細胞株の単離細胞浮遊液をトリ
プシン処理により作成した後に、それらの細胞をRPMI−1640培地(ニューヨーク
、Grand Island 在、Gibco)にて1×103 細胞/mlの濃度まで希釈した。
希釈した細胞浮遊液の1mlのアリコートを、0.01μg/mlの初期濃度で
シスプラチンを有する6ウェルプレート(ペンシルベニア、Horsham 在、Linbo)にプレ
ートした。7日後にコロニーを観察したときに、単一コロニーを単離してシスプ
ラチン濃度を増した別の皿にて増殖させた。このクローン化手順を繰り返して耐
性サブ系統を樹立した。単離したクローンを、高濃度のシスプラチンに、最終的
に0.4μg/mlのシスプラチン濃度で成長するクローンが得られるまで4週
間さらした。HAC2/0.4をRPMI−1640ベースの培養培地にて、5
%CO2 の加湿大気中で37℃にて培養した。HAC2/0.4のシスプラチン
耐性表現型は、シスプラチンの非存在下で培養した場合でも5か月より長く安定
であった。HAC2/0.4を用いるディフェレンシャルクローニング実験を、
シスプラチン非存在下での培養の1週間後に行なった。
HAC2/0.4細胞株を、ブダペスト条約の規定に従って、日本国、茨城県
、筑波市在、生命工学工業技術研究所に寄託して、寄託番号FERM BP−4
628
を与えられた。cDNAの調製及びHAC2/0.4cDNAライブラリーの構築
HAC2/P及びHAC2/0.4(各5×107 細胞)からの全RNAを、
市販のRNA単離用キット(Stratagene)を用いて調製した。ポリ(A)+RN
Aを、標準的方法を用いてオリゴ(dt)セルロースクロマトグラフィーにより
得た。オリゴ(dt)プライムしたcDNAを、単離したポリ(A)+RNAか
ら、市販のcDNA合成キット(Amersham製、cDNA合成システムPlus)を用
いて調製した。これらのcDNAを、4μlのライゲーション用ストック溶液[
66mMトリスHCl(pH7.6)、6.6mM MgCl2 、10mMジチ
オスレイトール]、2μlの10mM ATP及び1μlのT4DNAリガーセ
(Takaraより購入)を含む10μlの反応容積にて、20pモルのENBアダプ
ター(Takaraより購入)にライゲートした。ライゲーションの後に、これらのc
DNAを、NH4 OAc/イソプロピルアルコールで沈殿させ、70%エタノー
ルで洗い、そしてH2 Oに溶解させた。これらのENBアダプターを付けたcD
NAを、10μlのリン酸化ストック緩衝液[100mMトリス−HCl(pH
7.6)、20mM MgCl2 、20mM 2−メルカプトエタノール]、1
μlの10mM ATP及び50単位のキナーゼ(Takaraより購入)を含む16
μlの反応容積に
加えて、リン酸化のために37℃で50分間インキュベートした。リン酸化後に
、これらの試料を、フェノール/クロロホルムで抽出し、NH4 OAc/イソプ
ロピルアルコールで沈殿させ、70%エタノールで洗浄してTE緩衝液中に溶解
させた。各細胞株からの全CDNAの半分をガラスビーズ(Gene Cleanキット;
Bio101)を用いてゲル精製した。ENBアダプターを有するHAC2/0.4か
らのcDNAの1/5容を、λZAPII クローニングキット(Stratageneより購入
)を用いて、λZAPII にライゲートし、Gigapack Gold(Stratageneより購入)
を用いてパッケージした。HAC2/0.4からのcDNAの力価は、約106
組換え体であった。ENBアダプターを有するHAC2/P及びHAC2/0.
4からの別のcDNAの1/5容を、更にプローブを調製するために(下記参照
)、SauIII−Al(Takaraより購入)で消化した。cDNAプローブの調製
ライブラリースクリーニング用のcDNAプローブを、図2に図式的に要約し
、下記に詳述する「ショットガン」PCR法によって調製した:合成アダプター
を、配列5'-GATCTCGTTCGCTTCGTCTGTCT-3’(GATC(-)と呼ぶ;SEQ ID NO:3)の
オリゴヌクレオチドを配列5'-AGACAGACGAAAGCGAACGA-3’(SEQ ID NO:4)の相
補的オリゴヌクレオチドに、各鎖570pモルの濃度でアニールさせることによ
り構築した。アダプターを、10μlのT
4ポリヌクレオチドキナーゼ(Takaraより購入)、20μlのPNKストック溶
液[250mMトリスHCl(pH7.6)、50mM MgCl2 、50mM
2−メルカプトエタノール]、2μlの100mMATPを含む100μlの反
応容積中で、その5’末端をキナーゼ処理した。これらのオリゴヌクレオチドは
、ABI DNAシンセサイザーにて合成した。SauIII−Alで消化したEN
Bアダプターを有するHAC2/P及びHAC2/0.4からのcDNA(上記
のように調製)を、このSauIII−Al部位を含む合成アダプターに、4μ
lのライゲーション用ストック緩衝液[330mMトリスHCl(pH7.6)
、33mMMgCl2 、50mMジチオスレイトール]、2μlの10mM A
TP及び1μlのT4DNAリガーゼ(Takaraより購入)を含む20μlの全反
応容積中でライゲートした。
PCRによるcDNA(アダプターに結合)の増幅を、DNAサーマルサイク
ラー(Perkin-Elmer Cetus)中で、94℃で30秒、55℃で30秒のプライマ
ーアニーリング及び72℃で3分間の重合の連続30サイクルにより行なった。
GATC(-)オリゴヌクレオチド(予め上記のアダプター構築にて調製)を、10μ
lのPCRストック溶液[100mMトリス(pH9)、500mM KCl、
1%トリトンX−100、15mMMgCl2 ]、2μlの10mM dNTP
、150
pモルのGATC(-)プライマー及び1μlのAmplitaq(Promega )を含む100μ
lの反応容積中でプライマーとして用いた。増幅後に、PCR生成物を、アガロ
ースゲル電気泳動で分析したところ、常例的にスメアーパターンを与えた。PC
R生成物を、下記のプラークハイブリダイゼーションでプローブとして使用する
ためにガラスビーズ(Gene Cleanキット;Bio 101 )を用いて精製した。ディフェレンシャルライブラリースクリーニング
HAC2/0.4(106 組換え体)(上記のように調製)からのcDNAラ
イブラリーのパッケージ後に、ファージ溶液を、SM緩衝液にて希釈し、103
プラーク/15cm皿の密度で大腸菌pBluescript コンピテント細胞(Stratage
neより購入)上にプレートした。リフトを4重にナイロンフィルター(Hybond+
、Amershamより購入)上に取った。フィルターを0.5M NaCl、0.5M
NaOHで5分間及び1.5M NaCl、0.5MトリスHClで20分間
よく洗った。フィルターを、UV固定により架橋し、ブロッキング溶液(ECL;直
接ヌクレオチド標識及び検出システム、Amersham)で予備ハイブリダイゼーショ
ンした。ディフェレンシャルクローニング用に、2連のフィルターを、それぞれ
HAC2/P及びHAC2/0.4からの10ng/mlの標識プローブ(予め
上記のようにPCRにより調製)を含む同じ溶液で4時間42℃でハイブリダイ
ゼー
ションした(ECL;直接ヌクレオチド標識及び検出システム、Amersham)。プロー
ブは、製造者の指示に従って標識した。105 の組換え体ファージをプレートし
てスクリーニングした。ハイブリダイゼーション後に、これらのフィルターを、
Kodak XAR フィルムを用いてオートラジオグラフィーにかけた。HAC2/0.
4cDNAを過剰発現しているがHAC2/PcDNAは過剰発現してない陽性
プラークを取り出し、更なる2ラウンドのスクリーニングにより精製した。陽性
クローンを、pBluescript プラスミッドとして、製造者(Stratagene)の指示に従
ってレスキューした。実施例2:
HAC2/0.4ライブラリーのディフェレ
ンシャルスクリーニングにより単離した
cDNA62の発現
実施例1に記載のHAC2/P及びHAC2/0.4からのcDNAプローブ
でのHAC2/0.4cDNAライブラリーのディフェレンシャルスクリーニン
グは、cDNA62と呼ばれるcDNAクローンの単離をもたらした。pBluescr
ipt SK-プラスミッド中の完全長cDNA62(cDNA62F)を、ブダペス
ト条約の規定に従って、日本国、茨城県、筑波市の生命工学工業技術研究所に寄
託して、寄託番号FERM BP−4629を受けた。
cDNA62をノーザンブロット実験においてプロー
ブとして用いて、シスプラチン感受性及び耐性の癌細胞株並びにヒト組織におけ
るcDNA62の発現を測定した。ノーザン分析用に、4μgのポリ(A)+R
NAを1%アガロース、2.2Mホルムアルデヒドゲル上の電気泳動により分離
し、ナイロンフィルター(Hybond+、Amershamより購入)上にブロットした。こ
れらのフィルターを、ブロッキング溶液中で(プラークフィルターハイブリダイ
ゼーションについて上述したように)42℃で12時間予備ハイブリダイズさせ
、同じ溶液中で、標識した完全長のcDNAとハイブリダイズさせ、洗浄溶液中
で室温で10分間(2回)及び20×SSC中で室温で10分間洗浄し、Kodak
XAR フィルムを用いてオートラジオグラフィーにかけた。
cDNA62の発現を、卵巣癌及び肺癌細胞株において試験した。図3Aは、
卵巣癌細胞株HAC2/P(レーン1)及びそのシスプラチン耐性誘導体HAC
2/0.4(レーン2)におけるcDNA62の発現を示す(cDNA62は、
後者からクローン化された)。この結果は、シスプラチン耐性のHAC2/0.
4株における増大したcDNA62の発現を示している。図4は、4つのシスプ
ラチン耐性誘導体細胞株:L231/R(レーン2)、PC7/R(レーン4)
、PC9/R(レーン6)及びPC14/R(レーン8)並びにそれらの各親細
胞株(それぞれ、レーン1、3、5及び7)におけるcDNA62の発現を示し
ている。この結果
は、cDNA62の発現が4つのシスプラチン耐性細胞株の内の3つ(L231
/R、PC9/R及びPC14/R)においてそれらの親株より高まっているこ
とを示す。従って、試験した5つのシスプラチン耐性癌細胞株の内4つは、それ
らの親細胞株に比較して増大したcDNA62の発現を示した。
cDNA62の発現を、正常ヒト組織においても、Human Multiple Tissue No
rthern Blot I 及び II(Clontechより購入)及び標識したcDNA62(プロ
ーブ)を用いて、ノーザン分析により試験した。この結果を図5に示すが、ここ
での2.4kbのバンドがcDNA62に対応している。比較的高レベルのcD
NA62発現が、脳(レーン2)、腎臓(レーン7)、結腸(レーン15)、膵
臓(レーン8)及び肝臓(レーン5)において見られる。これらの組織の悪性腫
瘍は、シスプラチンに対する低感受性を有することが知られている。比較におい
て、比較的低レベルのcDNA62が、胎盤(レーン3)、卵巣(レーン13)
及び肺組織(レーン4)において見られ、これらは、胎盤絨毛癌、卵巣腺癌及び
肺癌のシスプラチンに対する比較的大きい感受性に相関している。
従って、細胞株及び組織におけるcDNA62の発現パターンを調べるこれら
の研究の結果は、cDNA62の発現がシスプラチン耐性と関連していることを
示している。実施例3:
cDNA62の配列分析
cDNA62を、ファージから直接pBluescript プラスミッドとして切り出し
た。このcDNAインサートは約2.6kbの長さであった。完全なcDNAイ
ンサートのヌクレオチド配列を、オートシーケンサー(ABIModel 373A)を用い
て、標準的ダイターミネーション法により決定した。両鎖についての更なる配列
情報を、標準的ジデオキシチェーンターミネーション法により得た。cDNA6
2のヌクレオチド配列を図6及びSEQID NO:1に示す。cDNA62配列を、相
同性についてSwiss データライブラリーの配列と比較した。この分析により、c
DNA62が、16SrRNA遺伝子からtRNALeu 遺伝子及びND1遺伝子
を通ってtRNAIle 遺伝子に及ぶヒトミトコンドリアDNA断片に99.6%
相同性であることが示された(但し、cDNA62は、16SrRNA遺伝子の
最初の34塩基対を欠く)。このcDNA62のヌクレオチド配列を、図6にお
いてミトコンドリアDNAの配列と比較する。
cDNA62は、1598塩基対の5’非翻訳領域及びその後の83アミノ酸
をコードするオープンリーディングフレーム(1599〜1847ヌクレオチド
)及び停止コドンを有する。対照的に、cDNA62における停止コドンに対応
する位置は、ミトコンドリアND1遺伝子では、トリプトファン残基をコードし
ている(即
ち、核mRNAにおけるUGAは停止コドンとして翻訳されるがミトコンドリア
mRNAにおいてはTrpとして翻訳される)。従って、ミトコンドリアND1
転写物の翻訳は、アミノ酸83を超えて伸長し、cDNA62によりコードされ
る蛋白質はND1蛋白質の最初(N末端)の83アミノ酸に対応する。cDNA
62において、アミノ酸の位置84の停止コドンに続くヌクレオチド配列(即ち
、ヌクレオチド1848〜2564)は、3’非翻訳配列である。
cDNA62によりコードされる蛋白質の疎水性を、図7にグラフ化してプロ
ットしてある。この疎水性分析により、細胞膜に配置される蛋白質と一致する幾
つかの疎水性ストレッチが示された。実施例4:
cDNA62は、宿主細胞にシスプラチン
耐性を与える組換え発現ベクターの構築
宿主細胞中でcDNA62を発現させるために、完全長cDNA及びこのcD
NAのコード領域をそれぞれ発現ベクターPMAMneo(Clontechより購入)
中にサブクローン化した。PMAMneoにおいて、挿入されたcDNA配列は
、5’末端でデキサメタゾン誘導可能なMMTV−LTRに、3’末端でSV4
0ポリアデニル化配列に結合されている。このベクターは又、このプラスミッド
でトランスフェクトした細胞のG418で
の選択を可能にするネオマイシン耐性をコードする配列をも含む。完全長構築物
について、pBluescript 中のcDNA62の2.6kbSmaI−XhoI断片
をゲル精製して、XhoI及びNheIで切断したPMAMneo中にライゲー
トした(PMAMneoのNheIオーバーハングはT4DNAポリメラーゼ(
Takaraより購入)を用いて埋めた)。これは、PMAMneo62F構築物を与
えた。cDNA62のコード領域の発現については、pBluescript 中のcDNA
62をHincIIで切断し、生じた断片をゲル精製した。次いで、このHin
cII断片をHapIIで切断して鈍端化した。この断片は、ほぼヌクレオチド
1533〜1880に対応し、cDNA62のコード領域(ヌクレオチド159
9〜1847)を包含する。この断片を、NheIで切断して鈍端化したPMA
Mneo中にクローン化した。これは、PMAMneo62T構築物を与えた。
これらの2つの発現ベクターPMAMneo62F及びPMAMneo62Tを
、図8に図式的に示す。トランスフェクション
NIH3T3細胞(5×105 )を、10cm皿中で18時間、標準的リン酸
カルシウム法によりトランスフェクトした。トランスフェクタントは、5μgの
完全長cDNA62プラスミッド(PMAMneo62F)、切り詰められたc
DNA62プラスミッド(PMAMneo62F)又は対照用ベクター(PMA
Mneo)
を含んだ。トランスフェクションの最後に、これらの細胞をPBSで一回洗い、
成長培地DMEM/10%仔ウシ血清を供給して、24時間インキュベートした
後にトリプシン処理して分離した。分離の24時間後に、G418(Sigma より
購入)を、0.4mg/mlで加えた。選択を10〜14日間続け、その時点で
幾つかのコロニーが明白であった。これらのコロニーを単離してG418を含む
成長培地にて発達させ、MTTアッセイを用いるシスプラチン耐性の分析に用い
た。トランスフェクトした又はしてない細胞におけるcDNA62の発現を、ノ
ーザン分析により試験した。これらの結果を図3Bに示す。デキサメタゾンの非
存在下(レーン1)又は存在下(レーン2)におけるトランスフェクトしてない
NIH3T3細胞、デキサメタゾンの非存在下(レーン3)又は存在下(レーン
4)における親pMAMneoプラスミッドでトランスフェクトしたNIH3T
3細胞、並びにデキサメタゾンの非存在下におけるpMAMneo62Fでトラ
ンスフェクトしたNIH3T3細胞(レーン5)は、すべて低い又は検出不能な
レベルのcDNA62の発現を示している。対照的に、デキサメタゾン存在下の
pMAMneo62FでトランスフェクトしたNIH3T3細胞(レーン6)は
、ずっと強いレベルのcDNA62の発現を示している。類似の結果が、デキサ
メタゾンでの誘導の際にpMAMneo62TでトランスフェクトしたNIH3
T3細胞
において見られた。MTTアッセイ
cDNA62発現ベクター又はpMAMneo親ベクターでトランスフェクト
したNIH3T3細胞のシスプラチン感受性を、MTTアッセイを用いて試験し
た。これらの細胞株を、プレーティングの48時間前に、挿入cDNAの発現の
ための濃度2.0μMのデキサメタゾンを用いずに又は用いて予備処理した。こ
れらの細胞(1×103 細胞/ウェルの密度)を、96ウェルプレート中に、種
々の濃度のシスプラチンの存在下で、180μlの培地中にプレートした。37
℃で4日間のインキュベーションの後に、ウェルから培地を出来るだけ完全に吸
引した。200μlのジメチルスルホキシドを各ウェルに加えた。次いで、これ
らのプレートをプレートシェーカーにて5分間激しく揺り動かし、光学密度を T
itertek Multiscan MCC プレートリーダーを用いて読んだ。pMAMneoでト
ランスフェクトしたNIH3T3細胞の非存在(−)又は存在下における対照及
びトランスフェクトした細胞株のシスプラチン感受性を、デキサメタゾンのcD
NA62発現ベクター(+)でトランスフェクトしたNIH3T3細胞のそれに
対してIC50(細胞成長を対照の50%に減少させる薬物の濃度)として表す。
結果を表に示す。
pMAMneo62Fプラスミッドでトランスフェクトし、デキサメタゾンで
誘導した細胞は、デキサメタゾンの非存在下のトランスフェクトしてないNIH
3T3細胞に比べて約18倍のシスプラチン耐性を示した。同様に、pMAMn
eo62Tプラスミッドでトランスフェクトし、デキサメタゾンで誘導した細胞
は、デキサメタゾン非存在下のトランスフェクトしてないNIH3T3細胞に比
べて約10倍のシスプラチン耐性を示した。従って、完全長cDNA62及びc
DNA62のコード領域の両者とも、宿主細胞で発現された場合に、高レベル(
即ち、5倍増より大)のシスプラチン耐性を与えることが出来る。実施例5:
cDNA62は、カドミウム及び銅耐性を
宿主細胞に与える
cDNA62でトランスフェクトした細胞の重金属感受性を試験するために、
NIH3T3細胞を、実施例4
に記載のように、デキサメタゾンの存在下又は非存在下で種々の濃度のカドミウ
ム又は銅と共に培養した。細胞毒性を、実施例4に記載したMTTアッセイによ
り測定し、その結果を表2にIC50値として表して示す。
pMAMneo62Fプラスミッドでトランスフェクトし、デキサメタゾンで
誘導した細胞は、デキサメタゾンの非存在下でトランスフェクトしてないNIH
3T3細胞に比べて約15倍のカドミウム耐性及び4倍の銅耐性を示した。従っ
て、シスプラチン耐性の付与に加えて、cDNA62は、他の重金属例えば銅及
びカドミウムに対する高レベルの耐性を宿主細胞に与えることが出来る。実施例6:
抗癌剤に対するcDNA62媒介の耐性の
特異性
cDNA62でトランスフェクトした細胞の他の抗癌剤に対する感受性を試験
するために、NIH3T3細胞トランスフェクタントを、実施例4に記載したよ
うに、
デキサメタゾンの存在下又は非存在下において、種々の濃度のCBDCA、アド
リアマイシン、メルファラン又はCPT−11と共にインキュベートした。細胞
毒性を実施例4に記載したMTTアッセイにより測定し、その結果をIC50値と
して表して表3に示す。
pMAMneo62Fプラスミッドでトランスフェクトし、デキサメタゾンで
誘導した細胞は、メルファランに対する耐性において統計的に有意の増加を示し
た(デキサメタゾン非存在下のトランスフェクトしてないNIH3T3細胞より
約8倍強い耐性)が、CDBCA、アドリアマイシン又はCPT−11に対する
耐性においては増加を示さなかった。これらの結果は、cDNA62により宿主
に与えられる耐性に特異性があることを示している。同等物
当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例に対する多くの同等物認め
、又は常例的実験を用いて確認することが出来るであろう。かかる同等物は、後
述の請求の範囲に含まれるものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07K 16/18 8517−4H C07K 16/18
C12N 5/10 9637−4B C12P 21/02 C
15/02 9358−4B 21/08
C12P 21/02 7823−4B C12Q 1/02
21/08 7823−4B 1/04
C12Q 1/02 7823−4B 1/18
1/04 9453−4B 1/68 A
1/18 0276−2J G01N 33/574 D
1/68 9284−4C A61K 39/00 H
G01N 33/574 9284−4C 39/395 N
// A61K 39/00 9284−4C ADUD
39/395 9281−4B C12N 5/00 B
ADU 9162−4B 15/00 C
(C12P 21/02
C12R 1:91)