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JPH0927645A - 複合基板の製造方法とそれを用いた圧電素子 - Google Patents

複合基板の製造方法とそれを用いた圧電素子

Info

Publication number
JPH0927645A
JPH0927645A JP11331496A JP11331496A JPH0927645A JP H0927645 A JPH0927645 A JP H0927645A JP 11331496 A JP11331496 A JP 11331496A JP 11331496 A JP11331496 A JP 11331496A JP H0927645 A JPH0927645 A JP H0927645A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
piezoelectric
heat treatment
thermal expansion
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11331496A
Other languages
English (en)
Inventor
Akihiko Nanba
昭彦 南波
Tetsuyoshi Koriyou
哲義 小掠
Yoshihiro Tomita
佳宏 冨田
Kazuo Eda
和生 江田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP11331496A priority Critical patent/JPH0927645A/ja
Publication of JPH0927645A publication Critical patent/JPH0927645A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Piezo-Electric Or Mechanical Vibrators, Or Delay Or Filter Circuits (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】熱膨張率の異なる基板を直接接合により接合す
ることにより得られる複合基板において、接合部での応
力を低減することにより基板の破損等の問題を解決し、
量産性の高い複合基板の製造方法およびその基板を用い
ることによって特性の優れた圧電素子を得る。 【解決手段】第1の基板1の少なくとも一方の主面を鏡
面仕上げし、第1の基板1とは熱膨張率の異なる第2の
基板2の少なくとも一方の主面を鏡面仕上げし、第1の
基板1の主面と前記第2の基板2の主面を互いに重ね合
わせ、第1の基板1と第2の基板2が固着を起こす温度
よりも低い温度で第1の熱処理を行い、第1の基板1お
よび前記第2の基板2を重ね合わせた状態で少なくとも
2つ以上の小片に分割し、前記第1の基板と前記第2の
基板が固着を生じる温度で前記小片に第2の熱処理を行
う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電体と他の基板
とを直接接合することにより構成される圧電複合基板の
製造方法、及び圧電複合基板の構造に関するものであ
る。圧電体は通信機器、情報機器などに用いられるデバ
イスの構成材料として、幅広く用いられている。
【0002】
【従来の技術】近年、通信デバイス等の構成材料として
種々の圧電体が使われている。特に、水晶、ニオブ酸リ
チウム、タンタル酸リチウム等の単結晶圧電体は振動子
などのバルク波デバイスやフィルタ等の弾性表面波デバ
イスに幅広く用いられている。
【0003】このような通信デバイスを小型で、量産性
よく製造する技術として、直接接合技術や陽極接合技術
がある。直接接合技術とは、同種、異種によらず、2つ
の基板どうしを接着剤等の中間接着層を介さずに、基板
表面を構成する原子どうしの共有結合、またはイオン結
合により、固着させる技術である。直接接合は、鏡面仕
上げされた2つの基板を重ね合わせ、熱処理することに
より接合を行う。陽極接合とは、鏡面仕上げされた2つ
の基板を重ね合わせ、基板界面に電圧を印可しながら加
熱することにより接合を行う。2つの基板がどれだけ強
固に固着したかの指標となる接合強度は、接合の際の熱
処理温度に依存する。一般に熱処理温度が高いほど、接
合強度は大きくなる。
【0004】しかしながら、熱処理温度を高くすると、
以下の弊害が生じる。すなわち、異なる熱膨張率を持つ
基板どうしを直接接合、陽極接合する場合には、基板の
熱膨張率の違いにより、加熱時に基板が破損する、重ね
合わせた基板が剥離する等の問題が生じる。これは、製
造後の圧電複合基板や、圧電デバイスについても同様で
ある。
【0005】具体的には、25〜300℃での平均熱膨
張率は、シリコンの場合、3.4×10-6/℃であるの
に対して、水晶の場合、15.2×10-6/℃、ニオブ
酸リチウムの場合、18.3×10-6/℃、タンタル酸
リチウムの場合、19.9×10-6/℃となる。ここ
で、圧電体は結晶のX軸方向の平均熱膨張率を示してい
る。すなわち、例えば、水晶のX軸方向では、シリコン
に比べ、約5倍の熱膨張率でとなり、この熱膨張係数の
相違により基板が破損等する問題が生じることとなる。
【0006】特開平5−327383号公報には、水晶
基板と半導体基板を直接接合する際の水晶基板の厚さと
基板の破損が生じる温度の関係が述べられている。すな
わち、水晶基板が薄い程、接合部分にかかる応力が低減
されるため、基板の破損が生じる温度が高いという関係
が経験的に報告されている。例えば、ある大きさのシリ
コン基板においては、水晶基板の厚さが80ミクロンの
とき基板が破損する温度は350℃、水晶基板の厚さが
40ミクロンのとき基板が破損する温度は450℃であ
ること等が報告されている。なお、これらの値は、基板
の大きさ、形状等によって変化する温度である。
【0007】従って、直接接合の熱処理温度としては、
この破損が生じる温度よりも低いこと温度で処理するこ
とが必要となるが、単一の熱処理工程によるのみでは、
以下のような弊害が生じる。
【0008】すなわち、初期の重ね合わせで基板界面に
水構成分子を介した直接接合の場合、低温での初期接着
において、接合界面に水構成分子が存在する。熱処理温
度の上昇とともに、この水構成分子の大部分は除去され
るが、接合により周囲がふさがれてしまい接合界面に取
り残されるものが一部存在する。この部分は、接合がさ
れていないボイドとなる。ボイド部分は接合されておら
ず、接合界面には強固に固着した接合部とボイド部が存
在し、熱応力の不均一分布が生じる。これにより、基板
が破損する、重ね合わせた基板が剥離する問題が生じ
る。その他の接合方法を用いた場合でも、初期の重ね合
わせの時から重ね合わせ界面に存在していたガスや熱処
理中に発生したガスによってボイドが発生し、上記の問
題が発生する。
【0009】以上は、基板の接合工程中に生じる問題で
あるが、接合工程後の熱工程においても同様の問題が発
生しうる。例えば、半田リフロー時の加熱による熱応力
により、ボイドが発生し基板が破損したり、剥離したり
する問題が生じる。
【0010】このような問題を解決するために、従来の
技術では熱処理の温度を2段階に分け、かつ、基板を薄
くすることにより、直接接合を行う方法が行われてい
る。すなわち、基板を比較的低い第1の温度で仮接合し
た後に、基板を機械的方法または化学エッチングにより
薄くした後、比較的高い第2の温度で強固な直接接合を
実現する方法である(特開平5−327383号公報、
特開平4−286310号公報、特開平3−97215
号公報)。すなわち、基板の破損等の問題が生じない第
1の温度で熱処理することにより基板を仮接着した後
に、基板を研磨等により薄くして、さらに基板を接着強
度が十分に得られるような高温で熱処理するという方法
である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の方法に
おいても、前記破損、ボイド等の問題を完全に防止する
ことは困難であり、実際の製造工程においては、歩留ま
りの低下を招くという問題があった。すなわち、基板周
辺部よりも基板中央部の接合界面における水分等の除去
が不十分となるため、基板中央部に発生する応力による
破損等の問題を完全に除去することは困難であるからで
ある。この問題は、製造コストを下げるために基板サイ
ズを拡大する上で、大きな問題となる。
【0012】また、基板の破損、剥離等の問題を回避で
きた場合でも、接合が不十分なことにより基板に加わる
応力が、複合基板に形成された素子の特性に悪影響を与
える場合がある。具体的には、圧電振動子、圧電フィル
タ等の圧電素子において、周波数の温度特性に影響を与
えるおそれがある。すなわち、温度の変化により基板に
加わる熱応力がさらに誇張されるためである。
【0013】また、熱膨張係数の相違による応力は、結
晶構造の変化をももたらす場合がある。すなわち、分子
構造が同じでも、種々の結晶構造が存在し得る場合に
は、圧力や温度を加えることにより、結晶構造が変化し
てしまうことがある。例えば、水晶を無加圧状態で57
3℃以上に加熱した場合には、水晶はα相からβ相への
転移を生じる。ここで、相転移は、α−β転移の他にも
種々の形態が考えられる。水晶に応力が加わった場合に
起こるドフィネ双晶型の相転移もその例であり、高温で
非可逆なドフィネ双晶型の相転移の発生が報告されてい
る(アニュアルシンポジウム フレキュエンシー コン
トロール(Annual Symposium FrequencyControl),vol.3
1,p171(1977))。これらの相転移がいったん生じた基板
に素子を形成した場合には、結果として、期待される素
子の特性が得られないことになる。具体的には、ATカ
ット水晶の場合には、相転移すると、周波数の温度に対
する依存性が大きくなり、安定な動作を有する水晶振動
子、水晶フィルタ等の圧電素子を得ることが困難とな
る。
【0014】本発明は、前記従来の問題を解決するた
め、異なる熱膨張率を持つ基板どうしを直接接合、陽極
接合する場合、基板の熱膨張率の違いにより、加熱時に
基板が破損することを防止し、重ね合わせた基板が剥離
することを防止し、熱応力により基板の結晶構造が変化
することを防止し、残留応力により圧電複合基板が歪み
を受けることを防止する複合基板の製造方法とそれを用
いた圧電素子を提供することを目的とする。
【0015】また、本発明は異なる熱膨張率を持つ基板
から構成される圧電複合基板を用いた圧電デバイスに発
生する基板の破損、剥離、結晶構造の変化、残留応力に
よる特性劣化、周辺の温度変化によって発生する応力に
よる特性劣化等のない複合基板の製造方法とそれを用い
た圧電素子を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の複合基板の第1番目の製造方法は、下記A
〜Fの工程を含む複合基板の製造方法である。 A.第1の基板の少なくとも一方の主面を鏡面仕上げ
し、 B.前記第1の基板とは熱膨張率の異なる第2の基板の
少なくとも一方の主面を鏡面仕上げし、 C.前記第1の基板の主面と前記第2の基板の主面を互
いに重ね合わせ、 D.その後、前記第1の基板と前記第2の基板が固着を
起こす温度よりも低い温度で第1の熱処理を行い、 E.その後、前記第1の基板および前記第2の基板を重
ね合わせた状態で少なくとも2つ以上の小片に分割し、 F.前記第1の基板と前記第2の基板が固着を生じる温
度で前記小片に第2の熱処理を行う。
【0017】前記第1番目の方法のA工程における「一
方の主面」とは、C工程において第2の基板と重ね合わ
せる面のことである。また「鏡面仕上げ」とは、基板の
中心線平均粗さRaが10nm以下に仕上げることをい
う。
【0018】また前記B工程における「熱膨張率」は、
例えばシリコンは3.4×10-6 /℃程度、水晶はx軸方向
で15.2×10-6/℃程度、ニオブ酸リチウムはx軸方向で
18.3×10-6/℃程度、タンタル酸リチウムはx軸方向で
19.9×10-6/℃程度、ガラス基板は材料組成を変えるこ
とで種々の熱膨張率を実現できるが、主なもので3×10
-6/℃〜15×10-6/℃程度の熱膨張率を持つ。これらの
材料の組み合わせでは、最大で約6倍程度の熱膨張率の
差が出る。また、圧電基板は異方性材料で、熱膨張率も
異方性を持つ。例えばATカット水晶では、x軸の熱膨
張率は15.2×10 -6/℃程度であるが、x軸に垂直なz´
軸方向(z軸より35°22´傾いた軸)では熱膨張率
は11×10-6/℃程度となり、ガラス、半導体等の等方性
の熱膨張率を持つ材料と完全に熱膨張率を合わせること
はできない。したがって、本発明における「熱膨張率の
異なる」とは、10%程度以上の熱膨張率差があれば好
ましく、より好ましくは、ATカット水晶の例のよう
に、x軸の熱膨張率:15.2×10-6/℃程度と、z´軸方
向の熱膨張率:11×10-6/℃程度以上の熱膨張率差であ
る。
【0019】また前記D工程における「第1の熱処理の
温度」とは、ファンデルワールス力による吸着を維持
し、イオン結合や共有結合をまだ十分に生じない温度で
あって、水分等の除去が行える温度をいう。具体的にい
うと、第1の熱処理後の基板の接合の状態は、2つの基
板をまだ機械的方法によって剥離することが可能な状態
である。
【0020】前記第1番目の方法においては、第1の基
板が圧電体からなることが好ましい。圧電体は、通信機
器、に用いられるフィルタ、発振子等の素子の構成材料
として幅広く用いられている。第1の基板として、圧電
基板を用いることで、これら素子を製造するために用い
られる複合基板を圧電体本来の特性を損なうことなく、
かつ歩留まりよく製造することができる。
【0021】また前記第1番目の方法においては、前記
第2の基板が半導体およびガラスから選ばれる少なくと
も一つの物質からなることが好ましい。(なぜ半導体ま
たはガラスが好ましいのかその理由を記載下さい。第2
の基板として半導体を用いれば、回路と圧電素子を一体
化した発振機などの製造に用いられる複合基板を圧電体
本来の特性を損なうことなく、かつ歩留まりよく製造す
ることができる。
【0022】また前記第1番目の方法においては、前記
第2の基板が圧電体からなることが好ましい。複数の圧
電素子を一体化した発振機などの製造に用いられる複合
基板を圧電体本来の特性を損なうことなく、かつ歩留ま
りよく製造することができる。
【0023】また前記第1番目の方法においては、前記
第1の基板が水晶基板であって、前記第2の熱処理の温
度が、前記水晶基板が相転移する温度よりも低いことが
好ましい。ここでいう「相転移」とは、高温、高圧下で
結晶構造が変化してしまうことである。熱膨張率の異な
る基板を接合し、熱処理すると、熱膨張率の違いから、
基板は加圧されることになる。例えば8×10-6/℃程度
のガラス基板とATカット水晶基板を接合し、熱処理す
ると、熱処理温度が300℃以下の低温においてもAT
カット水晶基板が相転移し、周波数の温度に対する安定
度が低下する。したがって、前記水晶基板が相転移する
温度よりも低い温度で第2の熱処理を行うことが好まし
い。
【0024】次に本発明の複合基板の第2番目の製造方
法は、下記a〜fの工程を含む複合基板の製造方法であ
る。 a.第1の基板の少なくとも一方の主面を鏡面仕上げ
し、 b.前記第1の基板とは熱膨張率の異なる第2の基板の
少なくとも一方の主面を鏡面仕上げし、 c.前記第1の基板の主面と前記第2の基板の主面を互
いに重ね合わせ、 d.その後、前記第1の基板と前記第2の基板が固着を
起こす温度よりも低い温度で第1の熱処理を行い、 e.その後、前記第2の基板の一部を前記第1の基板に
達するまで除去し、 f.前記第1の基板と前記第2の基板が固着を生じる温
度で第2の熱処理を行う。
【0025】前記において、e工程の「基板の一部を前
記第1の基板に達するまで除去し」とは、第2の基板の
一部を前記第1の基板に達するまで除去することであ
る、すなわち、圧電素子が形成しているか、または圧電
素子を形成する予定の第1の基板部分と重ね合わされて
いる第2の基板部分を除去することである。第2の基板
は、少なくとも第1の基板との重ね合わせ部分が除去さ
れていれば良く、第2の基板を貫通させなくても良い。
【0026】前記第2番目の方法においては、前記第1
の基板が圧電体からなることが好ましい。また前記第2
番目の方法においては、前記第2の基板が半導体および
ガラスから選ばれるいずれかの物質であることが好まし
い。
【0027】また前記第2番目の方法においては、前記
第2の基板が圧電体からなることが好ましい。また前記
第2番目の方法においては、前記第1の基板が相転移す
る基板であって、前記第2の熱処理の温度が前記第1の
基板と前記第2の基板との接合部以外における前記第1
の基板が相転移する温度よりも低いことが好ましい。
【0028】また前記第2番目の方法においては、前記
第1の基板が水晶からなることが好ましい。また前記第
2番目の方法においては、前記第2の基板が集積回路の
形成されたシリコン基板であることが好ましい。
【0029】また前記第2番目の方法においては、前記
第1の基板と前記第2の基板の重ね合わされた部分が実
質的な長方形であり、前記第1の基板の前記長方形の長
辺方向における熱膨張率が前記第1の基板の前記長方形
の短辺方向における熱膨張率と相違し、前記第1の基板
の前記長辺方向における熱膨張率と前記第2の基板の熱
膨張率の差が前記第1の基板の前記短辺方向における熱
膨張率と前記第2の基板の熱膨張率の差よりも小さいこ
とが好ましい。
【0030】次に本発明の第1番目の圧電素子は、励振
用電極が形成されている圧電体からなる圧電基板と、前
記圧電基板の一部に設けられた接合部に共有結合または
イオン結合により接合されている保持基板とを備えた圧
電素子において、前記励振用電極が形成されている部分
における圧電基板の結晶構造と前記接合部の圧電基板の
結晶構造が異なることを特徴とする。前記において、
「圧電基板の結晶構造と前記接合部の圧電基板の結晶構
造が異なる」とは、保持基板との接合部は相転移してお
り、励振用電極が形成されている部分における圧電基板
は相転移しておらず、水晶本来の特性を有していること
をいう。接合部は相転移しており、強固に保持されてお
り、また、接合による残留応力を緩和する働きを持つ場
合もある。
【0031】前記圧電素子においては、前記圧電基板が
水晶基板であることが好ましい。また前記圧電素子にお
いては、前記接合部の周辺における前記圧電基板の前記
長方形の長辺方向における幅が前記長方形の長辺の長さ
よりも小さいことが好ましい。熱膨張率が2倍以上異な
る場合には、長さの比が2倍以上あることが好ましい。
【0032】また前記圧電素子においては、前記保持基
板が集積回路の形成されたシリコン基板からなることが
好ましい。また前記圧電素子においては、前記保持基板
が半導体またはガラスのいずれかからなることが好まし
い。
【0033】次に本発明の第2番目の圧電素子は、電極
が形成されている圧電体からなる圧電基板と、前記圧電
基板の一部に設けられた接合部に共有結合またはイオン
結合により接合されている保持基板とを備えた圧電素子
において、前記接合部が実質的な長方形であり、前記第
1の基板の前記長方形の長辺方向における熱膨張率が前
記第1の基板の前記長方形の短辺方向における熱膨張率
と相違し、前記第1の基板の前記長辺方向における熱膨
張率と前記第2の基板の熱膨張率の差が前記第1の基板
の前記短辺方向における熱膨張率と前記第2の基板の熱
膨張率の差よりも小さいことを特徴とする。
【0034】前記圧電素子においては、前記圧電基板が
水晶基板であることが好ましい。また前記圧電素子にお
いては、前記接合部の周辺における前記圧電基板の前記
長方形の長辺方向における幅が前記長方形の長辺の長さ
よりも小さいことが好ましい。
【0035】また前記圧電素子においては、前記基板が
集積回路の形成されたシリコン基板からなることが好ま
しい。また前記圧電素子においては、前記保持基板が半
導体およびガラスから選ばれる少なくとも一つの物質か
らなることが好ましい。
【0036】本発明は以上の構成により、熱膨張係数の
異なる基板を直接接合する際においても、接合部の応力
を大幅に低減でき、基板の破損等の問題を解決でき、複
合基板の量産性を高めることができる。また、基板への
応力が低減されることにより、基板に形成される素子の
応力による特性の悪化等の問題を解消できる。さらに、
水晶基板においては、応力により助長される相転移の問
題を解消することもできる。
【0037】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に
説明する。 (実施例1)本発明の製造方法の第1の実施例について
図1を用いて説明する。図1Aは使用する基板の断面図
で、1は水晶基板で2はシリコン基板である。シリコン
基板2の大きさは、例えば、縦:12m×横:12mm
で、厚みは450μm、水晶基板1の大きさは、例え
ば、縦:12mm×横:12mmで、厚みは80μmと
した。
【0038】まず、水晶基板1とシリコン基板2の表面
を鏡面研磨し、フッ酸系のエッチング液により、表面層
を除去した。次に、水晶基板1とシリコン基板2をアン
モニア、過酸化水素、純水の混合液に浸漬し、表面を親
水化処理し、更に、純水で十分洗浄した。親水化処理に
より、各基板表面は水酸基により終端された。次に、2
枚の基板の鏡面研磨した面を重ね合わせた。2枚の基板
はファンデルワールス力により吸着した。
【0039】次に、第1の熱処理を150℃で5時間行
った。かかる熱処理は、基板に付着する余分な水分等を
除去するために行った。第1の熱処理は通常、100〜
300℃の範囲で数分から数十時間、好ましくは基板の
固着が生じない100〜200℃の温度範囲で1時間か
ら数十時間行うのが良い。すなわち、余分な水分を除去
するためにはある程度の加熱が必要であるが、イオン結
合や共有結合による固着を基板の全体に生じてしまう
と、結合界面に応力が発生し、基板の破損等の問題を生
じるおそれがあるからである。すなわち、第1の熱処理
の温度とは、ファンデルワールス力による吸着を維持
し、イオン結合や共有結合をまだ十分に生じない温度で
あって、水分等の除去が行える温度をいう。具体的にい
うと、第1の熱処理後の基板の接合の状態は、2つの基
板をまだ機械的方法によって接合界面から剥離すること
が可能な状態である。
【0040】次に、第2の熱処理を300℃で3時間行
った。かかる熱処理は、接合部分における水分等を除去
してイオン結合または共有結合による固着を起こさせる
ために行うものである。水晶基板とシリコン基板の場
合、第2の熱処理は第1の温度よりも高い温度で、水晶
の相転移温度である573℃未満の温度で数分から数十
時間行なうが、好ましくは、200から500℃の温度
がよい。図1Bは第1の熱処理後の圧電複合基板で、2
つの基板は接合界面21において、前記したように、主
に水酸基、または水構成分子による結合により吸着して
いる。ここで、水構成分子とは、水分子を基礎とした分
子をいい、水分子に種々の界面に存在する原子または分
子が付加した分子のことをいう。
【0041】これらの結合は比較的弱い結合で、2つの
基板の接合界面からの水やその他の気体の除去は円滑に
行われた。従って、基板の接着界面にボイドはほとんど
形成されなかった。図1Cは第2の熱処理後の圧電複合
基板で、接合界面22において2つの基板は共有結合
(シロキサン結合)を主とした結合によって、原子レベ
ルで非常に強固に固着した。
【0042】以上説明した製造方法により、基板を薄く
する工程を必要としないで、熱処理の工程のみで、熱処
理中に発生するボイドを抑え、応力を軽減した直接接合
を得ることができた。この結果、圧電複合基板の製造歩
留まりを向上させることが可能となった。
【0043】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0044】また、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板に
も実施可能である。
【0045】また、同種の圧電基板同士の直接接合にお
いても、熱膨張率が異方性を有する基板を結晶方位をず
らして接合する場合には、異種基板の接合の場合と同様
の応力の問題が発生する。この場合においても、本発明
を実施することにより応力の問題を解決することができ
る。
【0046】(実施例2)本発明の製造方法の第2の実
施例を図2を用いて説明する。図2Aに示すように、基
板材料、形状は実施例1と同じである。実施例1と同様
に、重ね合わせまでの工程を行った。次に、第1の熱処
理を250℃で5時間行った。図2Bでは、実施例1に
比べ、次工程のダイシングによる剥離を防止するために
熱処理温度をやや高くし、接合強度を増加させた。
【0047】次に、圧電複合基板を縦:3mm×横:3
mmの大きさにダイシング・ソーにより切断した。図2
Cは第1の熱処理後切断された圧電複合基板である。第
2の熱処理を350℃で3時間行なった。図2Dは第2
の熱処理後の圧電複合基板である。
【0048】本実施例では、第1の熱処理後、圧電複合
基板を小片に分割し、基板一枚あたりの接合面積を小さ
くすることで、第2の熱処理中に接合界面22にわずかな
がら残っている水構成分子、気体の除去は円滑に進ん
だ。この結果、第2の熱処理中に不均一に加わる熱応力
が実施例1の製造方法よりも更に軽減された。
【0049】この方法は、基板の大きさが大きいときに
は、非常に有効である。すなわち、基板の中央部に残留
している水分等も完全に除去することが可能となるから
である。
【0050】以上に説明した製造方法により、基板を薄
くする工程を必要としないで、熱処理の工程のみで、熱
処理中に発生するボイドを抑え、応力を軽減した直接接
合を得ることができた。この結果、圧電複合基板の製造
歩留まりを向上させることが可能となった。特に、基板
のサイズが大きいときに、圧電複合基板の製造歩留まり
は大幅に向上した。
【0051】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0052】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および、圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板
にも実施可能である。
【0053】また、同種の圧電基板同士の直接接合にお
いても、熱膨張率が異方性を有する基板を結晶方位をず
らして接合する場合には異種基板の接合の場合と同様の
応力の問題が発生する。この場合においても、本発明を
実施することにより応力の問題を解決することができ
る。
【0054】(実施例3)本発明の製造方法の第3の実
施例を図3を用いて説明する。図3Aに示すように、基
板材料、形状は実施例1と同じである。実施例2と同様
に、重ね合わせまでの工程を行った(図3B)。21は
接合界面である。次に、第1の熱処理を250℃で5時
間行った。
【0055】次に、図3Cに示すように、フッ酸系のエ
ッチング液により、接合面21と対向する面からシリコ
ン基板2の一部を除去した。次に、第2の熱処理を35
0℃で3時間行った。
【0056】本実施例での第1の熱処理では、2つの基
板の接合界面からの水やその他の気体を円滑に除去し、
シリコン基板2のエッチング加工を行うための圧電複合
基板の仮接合を行った。第2の熱処理では、圧電複合基
板の接合面積が減少したため、接合界面の水構成分子、
ガスなどの除去が円滑に行われた。
【0057】以上の製造方法により、熱処理中に発生す
るボイドを抑え、応力を軽減した直接接合を得ることが
できた。この結果、圧電複合基板の製造歩留まりを向上
させることが可能となった。特に、基板のサイズが大き
いときに、圧電複合基板の製造歩留まりは大幅に向上し
た。
【0058】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0059】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および、圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板
にも実施可能である。
【0060】また、同種の圧電基板同士の直接接合にお
いても、熱膨張率が異方性を有する基板を結晶方位をず
らして接合する場合には異種基板の接合の場合と同様の
応力の問題が発生する。この場合においても、本発明を
実施することにより応力の問題を解決することができ
る。
【0061】(実施例4)本発明の製造方法の第4の実
施例について説明する。本実施例では、シリコン基板の
代わりにガラス基板を用いた場合を示す。なお、説明を
簡単にするために実施例1の場合にガラス基板を用いた
場合についてのみ説明するが、実施例2または実施例3
の態様で実施すれば各実施例において示した基板中央部
における応力の低減が図れる効果が同様に得られるもの
である。
【0062】本実施例の場合、ガラス基板を用いること
により、以下の利点がある。ガラス基板は、水酸化ナト
リウムなどのアルカリ成分等を混入することにより熱膨
張率を変えることができた。ガラス基板の熱膨張率を水
晶基板に近づけることにより、第2の熱処理温度を高く
でき、強固に固着した圧電複合基板を歩留まり良く製造
することができた。また、ガラスは基板材料としては安
価で、コストを削減することも可能であった。
【0063】水晶基板1の大きさは、縦:12mm×
横:12mmで、厚みは80μm、ガラス基板は縦:1
2mm×横:12mmで、厚みは400μmとした。ガ
ラス基板の熱膨張率は14×10-6/℃とした。
【0064】製造方法は、まず、ガラス基板と水晶基板
の表面を鏡面研磨し、フッ酸系のエッチング液により、
表面層を除去した。次に、ガラス基板と水晶基板をアン
モニア、過酸化水素、純水の混合液にしたし、表面を親
水化処理し、更に、純水で十分洗浄した。親水化処理に
より、各基板表面は水酸基により終端された。次に、2
枚の基板の鏡面研磨した面を重ね合わせた。2枚の基板
はファンデルワールス力により吸着した。
【0065】次に、第1の熱処理を150℃で5時間行
った。かかる熱処理は、基板に付着する余分な水分等を
除去するために行った。第1の熱処理は通常、100〜
300℃の範囲で数分から数十時間行うが、好ましくは
基板の固着を生じない100〜200℃の温度で、1時
間から数十時間行うのが良い。すなわち、余分な水分を
除去するためにはある程度の加熱が必要であるが、イオ
ン結合や共有結合による固着を基板の全体に生じてしま
うと、結合界面に応力が発生し、基板の破損等の問題を
生じるおそれがあるからである。すなわち、第1の熱処
理の温度とは、ファンデルワールス力による吸着を維持
し、イオン結合や共有結合をまだ十分に生じない温度で
あって、水分等の除去が行える温度をいう。具体的にい
うと、第1の熱処理後の基板の接合の状態は、2つの基
板をまだ機械的方法によって剥離することが可能な状態
である。
【0066】次に、第2の熱処理を300℃で3時間行
った。かかる熱処理は、接合部分における水分等を除去
してイオン結合または共有結合による固着を起こさせる
ために行うものである。第2の熱処理は第1の温度より
も高い温度で行なった。
【0067】第1の熱処理後の圧電複合基板は、接合界
面において、前述したように、主に、水酸基、あるい
は、水構成分子による結合により吸着している。これら
の結合は比較的弱い結合で、2つの基板の接合界面から
の水やその他の気体の除去は円滑に行われる。従って、
基板の接着界面にボイドはほとんど形成されない。結果
として、第2の熱処理後、接合界面において2つの基板
は共有結合(シロキサン結合)を主とした結合によっ
て、原子レベルで非常に強固に固着している。
【0068】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0069】以上に説明した製造方法により、熱膨張係
数を調整できる、コストダウンが図れる等の利点を有す
るガラス基板との直接結合においても、基板を薄くする
工程を必要としないで、熱処理の工程のみで、熱処理中
に発生するボイドを抑え、応力を軽減した直接接合を得
ることができる。すなわち、熱膨張係数を接合する基板
に応じて調整できるので、応力がよりいっそう低減でき
る。これらの結果、圧電複合基板の製造歩留まりを向上
させることが可能となる。
【0070】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。
【0071】(実施例5)本発明の製造方法の第5の実
施例について説明する。使用する基板は、ニオブ酸リチ
ウム基板とシリコン基板である。なお、説明を簡単にす
るために実施例1の場合にニオブ酸リチウム基板を用い
た場合についてのみ説明するが、実施例2または実施例
3の態様で実施すれば各実施例において示した基板中央
部における応力の低減が図れる効果が同様に得られるも
のである。
【0072】本実施例で、シリコン基板の大きさは、例
えば、縦:12mm×横:12mmで、厚みは450μ
m、ニオブ酸リチウム基板4の大きさは、例えば、縦:
12mm×横:12mmで、厚みは80μmとした。
【0073】まず、実施例1と同様の工程で2つの基板
の重ね合わせまでの処理を行った。次に、第1の熱処理
を250℃で5時間行った。第1の熱処理は通常、10
0〜300℃の範囲で数分から数十時間行ったが、好ま
しくは基板の固着を生じない100〜240℃の温度範
囲で、1時間から数十時間行うのが良い。
【0074】第2の熱処理を350℃で3時間行った。
ニオブ酸リチウム基板とシリコン基板の場合、第2の熱
処理は通常、200〜1000℃の温度で数分から数十
時間行なった、好ましくは、250から400℃の温度
がよい。なぜなら、250℃は、シリコンとニオブ酸リ
チウムが固着を開始する温度であり、400℃以上では
基板が破損するおそれがあるからである。
【0075】圧電基板は構成材料、カット角によって
は、非常に割れやすく、弱い結合の状態でも、熱応力が
不均一に加わることによって破損する。ただし、水晶基
板のように結晶の相転移の温度が破損温度よりもかなり
高いので、相転移の問題により第2の熱処理の上限値を
決定する必要はない。本実施例において、第1の熱処理
温度は低温であるため、比較的弱い結合で、2つの基板
は接合されている。接合界面からの水やその他の気体の
除去は円滑に行われる。従って、基板の接着界面にボイ
ドはほとんど形成されず、接合速度の面内ばらつきはほ
とんどない。この結果、応力集中により基板破損するこ
とはない。第2の熱処理後の圧電複合基板は、接合界面
22において原子レベルでの結合で、非常に強固に固着
している。
【0076】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0077】以上に説明した製造方法により、ニオブ酸
リチウムとシリコン基板との直接接合においても、基板
を薄くする工程を必要としないで、熱処理の工程のみ
で、熱処理中に発生するボイドを抑え、応力を軽減した
直接接合を得ることができる。この結果、圧電複合基板
の製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0078】(実施例6)本発明の第6の実施例におけ
る製造方法について説明する。使用する基板は、水晶基
板と、シリコン基板である。なお、説明を簡単にするた
めに実施例1の場合と同様の場合についてのみ説明する
が、実施例2または実施例3の態様で実施すれば各実施
例において示した基板中央部における応力の低減が図れ
る効果が同様に得られるものである。
【0079】本実施例で、水晶基板の大きさは、例え
ば、縦:10mm×横:10mmで、厚みは56μmと
した。シリコン基板の大きさは、例えば、縦:10mm
×横:10mmで、厚みは450μmとした。
【0080】まず、水晶基板とシリコン基板の表面を鏡
面研磨し、フッ酸系のエッチング液により、表面層を除
去した。次に、水晶基板とシリコン基板をアンモニア、
過酸化水素、純水の混合液に浸漬し、表面を親水化処理
し、更に、純水で十分洗浄した。親水化処理により、各
基板表面は水酸基により終端された。次に、2枚の基板
の鏡面研磨した面を重ね合わせた。2枚の基板はファン
デルワールス力により吸着した。
【0081】次に、第1の熱処理を150℃で5時間行
った。かかる熱処理は、基板に付着する余分な水分等を
除去するために行った。第1の熱処理は通常、100〜
300℃の範囲で数分から数十時間行うが、好ましくは
100〜200℃の温度で、1時間から数十時間行うの
が良い。すなわち、余分な水分を除去するためにはある
程度の加熱が必要であるが、イオン結合や共有結合によ
る固着を基板の全体に生じてしまうと、結合界面に応力
が発生し、基板の破損等の問題を生じるおそれがあるか
らである。すなわち、第1の熱処理の温度とは、ファン
デルワールス力による吸着を維持し、イオン結合や共有
結合をまだ十分に生じない温度であって、水分等の除去
が行える温度をいう。具体的にいうと、第1の熱処理後
の基板の接合の状態は、2つの基板をまだ機械的方法に
よって剥離することが可能な状態である。
【0082】次に、第2の熱処理を250℃で3時間行
った。ここで、実施例1で説明したように、水晶基板の
場合、無加圧では第2の熱処理の温度は、水晶のα−β
相転移温度である573℃であればよいが、実際に基板
に接合による応力がかかった場合には、相転移は573
℃よりも低い温度で生じ得る。そこで、本実施例では、
相転移の問題を完全に防止すべく、実施例1の場合より
も50℃低い温度で行った。
【0083】本実施例では、第1の熱処理後2つの基板
は主に水素結合により吸着していた。水晶基板1は熱応
力による結晶構造の変化、つまり、相転移は全く発生し
ていなかった。
【0084】本実施例においては、低温での第1の熱処
理中は重ね合わせ界面からの水分子、ガスの除去は円滑
に行われ、水構成分子、ガスは重ね合わせ界面で一様に
広がっており、水晶基板に加わる不均一な熱応力が大幅
に軽減された。従って、水晶基板の面内での部分的な応
力集中はなく、水晶基板が相転移してしまうことはなか
った。また、第2の熱処理中も第1の熱処理を行ったこ
とにより、接合面内での熱応力はほぼ均一に加わり、水
晶基板1は相転移することはなかった。
【0085】以上に説明した製造方法により、基板を薄
くする工程を必要としないで、熱処理の工程のみで、熱
処理中に発生するボイドを抑え、応力を軽減した直接接
合を得ることができた。この結果、圧電複合基板の製造
歩留まりを向上させることが可能となった。また、圧電
基板の相転移を完全に防止でき、所望の特性の圧電複合
基板を製造することができた。
【0086】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると、接合界面の水、気体の除去効果は更に大き
くなった。すなわち、急激に加熱することによりも段階
的にまたは徐々に加熱することで水分等の除去がスムー
ズに行えることになった。例えば、第1の熱処理の低温
側は通常、100〜200℃で数分から数十時間、好ま
しくは、100〜180℃で1時間から数十時間行うの
がよかった。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上で
あって、300℃以下で数分から数十時間、好ましくは
低温側の熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間
から数十時間行うのがよかった。
【0087】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および、圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板
にも実施可能である。
【0088】また、同種の圧電基板同士の直接接合にお
いても、熱膨張率が異方性を有する基板を結晶方位をず
らして接合する場合には異種基板の接合の場合と同様の
応力の問題が発生する。この場合においても、本発明を
実施することにより応力の問題を解決することができ
る。
【0089】(実施例7)本発明の製造方法の第7の実
施例を説明する。使用する基板は、水晶基板とガラス基
板である。なお、説明を簡単にするために実施例1の場
合と同様の場合についてのみ説明するが、実施例2また
は実施例3の態様で実施すれば各実施例において示した
基板中央部における応力の低減が図れる効果が同様に得
られるものである。
【0090】本実施例では、シリコン基板の代わりにガ
ラス基板を用いた。ガラス基板はそれを構成する材料を
変えることで熱膨張率を変化させることができた。接合
する圧電体に近い熱膨張率を選ぶことにより強固に固着
した圧電複合基板を歩留まり良く製造することができ
た。また、ガラスは基板材料としては安価で、保持基板
として用いる場合、コストを抑えることもできた。
【0091】水晶基板の大きさは、縦:12mm×横:
12mmで、厚みは80μm、ガラス基板は縦:12m
m×横:12mmで、厚みは400μmとした。ガラス
基板の熱膨張率は10×10-6/℃とした。基板を鏡面
研磨、洗浄、親水化処理し、重ね合わせた。第1の熱処
理は150℃で5時間行った。
【0092】第1の熱処理は通常、90〜350℃の温
度範囲で行うが、好ましくは、150℃〜300℃の温
度範囲がよい。次に、第2の熱処理を250℃で3時間
行った。ここで、実施例1で説明したように、水晶基板
の場合、理論的には第2の熱処理の温度は、水晶の相転
移温度である573℃であればよいが、実際に基板に接
合による応力がかかった場合には、相転移は573℃よ
りも低い温度で部分的に生じ得る。そこで、本実施例で
は、相転移の問題を完全に防止すべく、実施例1の場合
よりも50℃低い温度で行った。
【0093】本第2の熱処理は通常、100〜573℃
の温度範囲で行うが、好ましくは250〜573℃の温
度範囲がよい。以上に説明した製造方法により、熱膨張
率を調整できるという利点を有するガラス基板を用いた
場合において、基板を薄くする工程を必要としないで、
熱処理の工程のみで、熱処理中に発生するボイドを抑
え、応力を軽減した直接接合を得ることができた。この
結果、圧電複合基板の製造歩留まりを向上させることが
可能となった。また、圧電基板の相転移を完全に防止で
き、所望の特性の圧電複合基板を製造することができ
た。
【0094】なお、圧電基板として、タンタル酸リチウ
ム、ニオブ酸リチウムなどの単結晶圧電体、鏡面研磨可
能なその他の圧電体にも実施可能である。 (実施例8)本発明の製造方法の第8の実施例を図4に
示す。図4Aにおいて、1は水晶基板、2はシリコン基
板である。ここで、シリコン基板には、信号処理のため
の集積回路が形成されている場合もある。すなわち、直
接接合は低温での熱処理で十分なため、加熱により集積
回路の特性に悪影響を与えるという問題もないからであ
る。
【0095】まず、実施例1と同様の工程で基板を鏡面
研磨、洗浄、親水化処理し、重ね合わせた。次に、第1
の熱処理を180℃で5時間行った(図5B)。第1の
熱処理は通常、100〜300℃の範囲で行うが、好ま
しくは、基板固着が生じない100〜200℃の温度が
よい。
【0096】次にフッ酸系のエッチング液により、接合
面と対向する面からシリコン基板2の一部を除去した
(図5C)。実際の圧電素子においては、このように圧
電素子の振動子を形成する部分において基板を除去する
必要がある。
【0097】次に、第2の熱処理を380℃で3時間行
った(図5D)。水晶基板とシリコン基板の場合、第2
の熱処理は通常、第1の熱処理温度よりも高い温度であ
って、573℃以下の温度で数分から数時間行うが、好
ましくは200〜500℃の温度がよい。
【0098】本実施例での第1の熱処理では、シリコン
基板2のエッチング加工を行うための圧電複合基板の仮
接合が行われている。また、第2の熱処理では、シリコ
ン基板2と水晶基板1を強固に固着するために行った。
図5Dでの水晶基板1の5の部分は原子レベルで強固に
固着していた。
【0099】ここで、シリコンとの接合部および接合部
周辺における水晶基板5は相転移しているが、シリコン
基板を除去した部分における水晶基板6は相転移してい
ない。すなわち、本実施例の製造方法によれば、第2の
熱処理において、たとえ、接合部が相転移したとして
も、圧電素子の振動子を形成する部分には相転移の影響
が及ばない基板を作成することができる。いいかえる
と、第2の熱処理は相転移温度の上限による制限を受け
ることなく行うことが可能となる。
【0100】この結果、水晶の相転移していない部分を
用いて、所望の特性のデバイスを作製することができ、
圧電デバイスを歩留まり良く製造することができた。以
上に説明した製造方法により、熱処理中に発生するボイ
ドを抑え、応力を軽減した直接接合を得ることができ
る。この結果、圧電複合基板の製造歩留まりを向上させ
ることが可能となった。また、圧電素子の特性に影響を
与える部分における圧電基板の相転移を完全に防止で
き、所望の特性の圧電複合基板を製造することができ
た。
【0101】なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分
割等すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きく
なる。すなわち、急激に加熱することによりも段階的に
または徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに
行えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0102】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および、圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板
にも実施可能である。
【0103】(実施例9)本発明の圧電複合基板を用い
た場合の圧電素子の斜視図及び上面構造を図5に示す。
本実施例より以降の実施例では、実際の圧電素子に複合
基板を用いた場合について説明する。
【0104】図5において11は圧電基板、例えばAT
カット水晶基板で、大きさは、例えば、縦:4mm×
横:8mmで、厚みは50μmとした。12は半導体基
板で、例えばシリコン基板を用いた。大きさは、縦:8
mm×横:12mmで、厚みは450μmとした。13
は圧電基板と半導体基板の接合部で、大きさは縦:4m
m×横:1mmである。ここで、シリコン基板には、信
号処理のための集積回路が形成してもよい。すなわち、
直接接合は低温での熱処理で十分なため、加熱により集
積回路の特性に悪影響を与えるという問題もないからで
ある。
【0105】本実施例では、接合部13の形状を長方形
とし、長方形の短辺方向をx軸方向、長辺方向をz´
軸方向、つまり、z軸方向より35゜22´ 傾いた方
向とした。本実施例では、更に、圧電基板2の上下面に
励振用電極14a、14bを設け、圧電振動子を形成し
た(図6)。
【0106】次に、本実施例の構造の圧電複合基板の応
用である水晶振動子の製造方法について説明する。 (A)ATカット水晶基板11とシリコン基板12の表
面を鏡面研磨、洗浄を行った。ATカット水晶基板11
はこの段階で所定の厚み、例えば50μmに薄板化され
た。 (B)シリコン基板12をフッ酸系のエッチング液によ
り、くり貫きエッチングし、図7の半導体基板12に対
応する形状に加工した。 (C)ATカット水晶基板11の上下面に、ホトリソグ
ラフィー及び真空蒸着などの手法を用いて、図6の14
a,14bに対応する励振用電極を形成した。裏面電極
14bはATカット水晶基板11の端面で基板上面に電
極を引き出した。 (D)アンモニア、過酸化水素、純水の混合液に浸漬
し、表面を親水化処理し、更に、純水で十分洗浄した。
以上の処理により、各基板表面に水構成分子が付着し
た。 (E)2枚の基板の鏡面研磨した面を重ね合わせた。水
構成分子によるファンデルワールス力により、2枚の基
板は吸着した。 (F)150℃5時間の第1の熱処理により基板を仮接
着した後、350℃で2時間熱処理を行った。ATカッ
ト水晶基板とシリコン基板の場合、第2の熱処理は通
常、100〜573℃程度の温度で数分から数十時間行
なったが、好ましくは、250から500℃程度の温度
がよい。
【0107】ここで、本実施例の圧電振動子の特徴のひ
とつは、直接接合による圧電基板の保持部の形状をを長
方形にし、長方形の長辺方向を熱膨張率が半導体基板に
近い方向としたことである。
【0108】ATカット水晶の熱膨張率はX軸方向で1
5.2×10-6、Z´ 方向で11×10-6であるか
ら、本実施例では、シリコンにより近いZ´ 軸方向を
長辺方向にした。
【0109】以上の構造の水晶振動子は0から60℃の温
度範囲での共振周波数の変化が10ppm以下となっ
た。また、室温から260℃でのヒートショックを加えて
も基板が破損したり、剥離したりすることはなかった。
【0110】また、水晶基板とシリコン基板との接合部
においては、相転移が見られたが実際に圧電素子を作成
する部分における水晶基板には相転移は見られなかっ
た。ここで、相転移の有無は、フッ酸系のエッチャント
を用いて、エッチング後の面の表面状態を観察すること
によって確認できた。また、X線回折を用いて、結晶格
子の面間隔を測定することによって確認できた。
【0111】以上のような構造にすることにより、水晶
基板11はシリコン基板12との熱膨張係数の差に起因
する熱応力の影響を受けにくくなり、圧電振動が熱応力
により阻害されることがない。また、圧電振動子を形成
する部分の水晶基板には相転移が生じないので共振周波
数の温度に対する安定性もATカット水晶本来のものと
同等のものが得られる。さらに、直接接合により確実に
基板が接合されているので、半田リフローなどのヒート
ショックが加わっても、基板は破損しない。
【0112】なお、長方形の角を曲線状にしても同様の
効果が期待できる。また、保持部の形状をそれ以外のも
のにしても、圧電基板の熱膨張率が半導体基板に近い方
向を保持部の形状に対して短くすることにより同様の効
果が期待できる。
【0113】なお、接合部を圧電基板の両端にすること
により、落下などの衝撃に対する強度を強くすることが
できる。なお、第1の熱処理を低温側と高温側に分割等
すると接合界面の水、気体の除去効果は更に大きくな
る。すなわち、急激に加熱することによりも段階的にま
たは徐々に加熱することで水分等の除去がスムーズに行
えることになる。例えば、第1の熱処理の低温側は通
常、100〜200℃で数分から数十時間、好ましく
は、100〜180℃で1時間から数十時間行うのがよ
い。高温側は、通常低温側の熱処理温度以上であって、
300℃以下で数分から数十時間、好ましくは低温側の
熱処理温度以上で200℃以下の温度で1時間から数十
時間行うのがよい。
【0114】なお、以上の実施例において、圧電基板と
して、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単
結晶圧電体、鏡面研磨可能なその他の圧電体にも実施可
能である。また、圧電基板と接合する基板材料としてガ
リウム砒素、インジウムリンなど半導体基板、ガラス基
板、および圧電基板と熱膨張率の異なる他の圧電基板に
も実施可能である。
【0115】(実施例10)本発明の第10の実施例の
上面構造及び断面構造を図7に示す。図7において11
は圧電基板で、例えばATカット水晶基板で、大きさ
は、例えば、縦:4mm×横:8mmで、厚みは50μ
mとした。12は半導体基板で、例えばシリコン基板
で、大きさは、縦:8mm×横:12mmで、厚みは4
50μmであった。ここで、シリコン基板には、信号処
理のための集積回路が形成してもよい。すなわち、直接
接合は低温での熱処理で十分なため、加熱により集積回
路の特性に悪影響を与えるという問題もないからであ
る。
【0116】13は圧電基板と半導体基板の接合部で、
大きさは縦:4mm×横:1mmである。シリコ接合部
13の形状は角部分を曲線化した実質的な長方形で、短
辺方向をx軸方向、長辺方向をz´ 軸方向、つまり、
z軸方向より35゜22´ 傾いた方向とした。また、
水晶基板11上の接合部と非接合部の境界付近に応力を
軽減するためのくびれ構造を設けた。本実施例では、図
8に示すように、更に、水晶基板11の上下面に励振用
電極14a、14bを設け、水晶振動子を形成した。
【0117】本実施例の圧電複合基板を応用した水晶振
動子の特徴は、水晶基板11上の接合部と非接合部の境
界付近にくびれ構造を設けた点である。このようなくび
れ構造とすることにより、熱応力による水晶の破損や熱
応力、残留応力の振動部への影響を軽減した。
【0118】以上のような構造にすることにより、水晶
基板11はシリコン基板12との熱膨張係数の差に起因
する熱応力の影響をさらに受けにくくなり、圧電振動が
熱応力により阻害されることがなかった。また、圧電振
動子を形成する部分の水晶基板には相転移が生じないの
で共振周波数の温度に対する安定性もATカット水晶本
来のものと同等のものが得られた。さらに、直接接合に
より確実に基板が接合されているので、半田リフローな
どのヒートショックが加わっても、基板は破損しなかっ
た。
【0119】なお、本実施例では、圧電基板としてAT
カット水晶を用いたが、用途に応じて、その他のカット
角の水晶基板を用いてもよい。また、水晶と比べ、温度
変化に対する周波数安定性は劣るが、電気機械結合係数
が高いニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどを圧
電基板として用いても同様の効果が得られる。
【0120】(実施例11)本発明の圧電複合基板の応
用である圧電振動子の第11の実施例を説明する。構造
は、実施例9(図5、図6)のATカット水晶基板1の
代わりにXカットタンタル酸リチウム15を用いた構造
である。Xカットタンタル酸リチウム基板15は、大き
さは、例えば、縦:4mm×横:8mmで、厚みは50
μmとした。接合部では長方形の短辺方向をx軸方向、
長辺方向をz軸方向とした。
【0121】本実施例が実施例9と異なるのは、圧電基
板としてタンタル酸リチウムを用いた点である。タンタ
ル酸リチウムは水晶と比べ、温度変化に対する周波数安
定性は劣るが、電気機械結合係数が高く、またQ値が低
いため、高効率で比較的広い帯域を必要とする電圧制御
発振器などに広く用いられる。同様の理由で、圧電基板
として、ニオブ酸リチウムを用いてもよい。
【0122】以上のような構造にすることにより、タン
タル酸リチウム基板15はシリコン基板12との熱膨張
係数の差に起因する熱応力の影響を受けにくくなり、圧
電振動が熱応力により阻害されることがない。また、圧
電振動子を形成する部分におけるタンタル酸リチウム基
板には相転移が生じないので共振周波数の温度に対する
安定性もATカット水晶本来のものと同等のものが得ら
れる。さらに、直接接合により確実に基板が接合されて
いるので、半田リフローなどのヒートショックが加わっ
ても、基板は破損しない。
【0123】なお、長方形の角を曲線状にしても同様の
効果が期待できる。また、保持部の形状をそれ以外のも
のにしても、圧電基板の熱膨張率が半導体基板に近い方
向を保持部の形状に対して短くすることにより同様の効
果が期待できる。
【0124】なお、接合部を圧電基板の両端にすること
により、落下などの衝撃に対する強度を強くすることが
できる。 (実施例12)本発明の圧電複合基板の応用である圧電
振動子の第12の実施例を説明する。構造は、実施例9
(図5、図6)のATカット水晶基板1の代わりにXカ
ットタンタル酸リチウム15をシリコン基板12の代わ
りに、ガラス基板16を用いた構造である。xカットタ
ンタル酸リチウム基板15は、大きさは、例えば、縦:
4mm×横:8mmで、厚みは50μmとした。ガラス
基板16は、大きさは、縦:8mm×横:12mmで、
厚みは400μm、熱膨張率は10×10-6/℃とし
た。接合部では長方形の短辺方向をx軸方向、長辺方向
をz軸方向とした。
【0125】本実施例が実施例9と異なるのは、シリコ
ン基板の代わりにガラス基板を用いた点である。ガラス
基板は熱膨張率の変えることでき、接合する圧電体に合
わせて熱膨張率を選ぶことができた。また、ガラス基板
は安価で、保持基板に用いるにはコストの低減をはかる
ことができた。
【0126】以上のような構造にすることにより、タン
タル酸リチウム基板15はガラス基板16との熱膨張係
数の差に起因する熱応力の影響を受けにくくなり、圧電
振動が熱応力により阻害されることがなかった。また、
圧電振動子を形成する部分におけるタンタル酸リチウム
基板には相転移が生じないので共振周波数の温度に対す
る安定性もATカット水晶本来のものと同等のものが得
られた。さらに、直接接合により確実に基板が接合され
ているので、半田リフローなどのヒートショックが加わ
っても、基板は破損しなかった。
【0127】なお、長方形の角を曲線状にしても同様の
効果が期待できる。また、保持部の形状をそれ以外のも
のにしても、圧電基板の熱膨張率が半導体基板に近い方
向を保持部の形状に対して短くすることにより同様の効
果が期待できる。
【0128】なお、接合部を圧電基板の両端にすること
により、落下などの衝撃に対する強度を強くすることが
できる。
【0129】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の第1〜2
番目の製造方法及び第1〜2番目の圧電素子によれば、
熱膨張係数の異なる基板を直接接合する際においても、
接合部の応力を大幅に低減でき、基板の破損等の問題を
解決でき、複合基板の量産性を高めることができる。ま
た、基板への応力が低減されることにより、基板に形成
される素子の応力による特性の悪化等の問題を解消でき
る。さらに、水晶基板においては、応力により助長され
る相転移の問題を解消することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 A〜Dは本発明の実施例1の圧電複合基板を
製造する工程説明図。
【図2】 A〜Dは本発明の実施例2の圧電複合基板を
製造する工程説明図。
【図3】 A〜Dは本発明の実施例3の圧電複合基板を
製造する工程説明図。
【図4】 A〜Dは本発明の実施例8の圧電複合基板を
製造する工程説明図。
【図5】 A〜Bは本発明の実施例9の圧電複合基板を
用いて構成された圧電素子の構成図で、Aは斜視図、B
は平面図
【図6】 A〜Bは本発明の実施例9の圧電複合基板を
用いて構成された圧電振動子の構成図で、Aは斜視図、
Bは平面図
【図7】 本発明の実施例10の圧電複合基板を用いて
構成された圧電振動子の構成図で、Aは平面図、BはI
−I線の断面図
【図8】 本発明の実施例10の圧電複合基板を用いて
構成された圧電振動子の構成図で、Aは平面図、BはII
-II線の断面図
【符号の説明】
1:水晶基板(圧電基板) 2:シリコン基板(半導体基板) 3:相転移した基板 4:相転移していない基板 11:ATカット水晶基板 12:単結晶シリコン基板 13:直接接合による保持部 14a:励振用電極 14b:励振用電極 15:Xカットタンタル酸リチウム基板 16:ガラス基板 21:ファンデルワールス力により吸着している接合界
面 22:イオン結合または共有結合により固着している接
合界面
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C30B 33/02 7202−4G C30B 33/02 33/06 7202−4G 33/06 H01L 21/02 H01L 21/02 C 25/16 25/16 41/09 H03H 3/02 B H03H 3/02 9/02 K 9/02 9/05 9/05 H01L 41/08 C (72)発明者 江田 和生 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記A〜Fの工程を含む複合基板の製造
    方法。 A.第1の基板の少なくとも一方の主面を鏡面仕上げ
    し、 B.前記第1の基板とは熱膨張率の異なる第2の基板の
    少なくとも一方の主面を鏡面仕上げし、 C.前記第1の基板の主面と前記第2の基板の主面を互
    いに重ね合わせ、 D.その後、前記第1の基板と前記第2の基板が固着を
    起こす温度よりも低い温度で第1の熱処理を行い、 E.その後、前記第1の基板および前記第2の基板を重
    ね合わせた状態で少なくとも2つ以上の小片に分割し、 F.前記第1の基板と前記第2の基板が固着を生じる温
    度で前記小片に第2の熱処理を行う。
  2. 【請求項2】 前記第1の基板が、圧電体からなる請求
    項1に記載の複合基板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第2の基板が、半導体およびガラス
    から選ばれる少なくとも一つの物質からなる請求項1に
    記載の複合基板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第2の基板が、圧電体からなる請求
    項1に記載の複合基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記第1の基板が水晶基板であって、前
    記第2の熱処理の温度が前記水晶基板が相転移する温度
    よりも低い請求項1に記載の複合基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 下記a〜fの工程を含む複合基板の製造
    方法。 a.第1の基板の少なくとも一方の主面を鏡面仕上げ
    し、 b.前記第1の基板とは熱膨張率の異なる第2の基板の
    少なくとも一方の主面を鏡面仕上げし、 c.前記第1の基板の主面と前記第2の基板の主面を互
    いに重ね合わせ、 d.その後、前記第1の基板と前記第2の基板が固着を
    起こす温度よりも低い温度で第1の熱処理を行い、 e.その後、前記第2の基板の一部を前記第1の基板に
    達するまで除去し、 f.前記第1の基板と前記第2の基板が固着を生じる温
    度で第2の熱処理を行う。
  7. 【請求項7】 前記第1の基板が、圧電体からなる請求
    項6に記載の複合基板の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第2の基板が、半導体およびガラス
    から選ばれるいずれかの物質である請求項6に記載の複
    合基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記第2の基板が圧電体からなる請求項
    6に記載の複合基板の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第1の基板が相転移する基板であ
    って、前記第2の熱処理の温度が前記第1の基板と前記
    第2の基板との接合部以外における前記第1の基板が相
    転移する温度よりも低い請求項6に記載の複合基板の製
    造方法。
  11. 【請求項11】 前記第1の基板が、水晶からなる請求
    項10に記載の複合基板の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記第2の基板が、集積回路の形成さ
    れたシリコン基板である請求項6に記載の複合基板の製
    造方法。
  13. 【請求項13】 前記第1の基板と前記第2の基板の重
    ね合わされた部分が実質的な長方形であり、前記第1の
    基板の前記長方形の長辺方向における熱膨張率が前記第
    1の基板の前記長方形の短辺方向における熱膨張率と相
    違し、前記第1の基板の前記長辺方向における熱膨張率
    と前記第2の基板の熱膨張率の差が、前記第1の基板の
    前記短辺方向における熱膨張率と前記第2の基板の熱膨
    張率の差よりも小さい請求項6に記載の複合基板の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 励振用電極が形成されている圧電体か
    らなる圧電基板と、前記圧電基板の一部に設けられた接
    合部に共有結合またはイオン結合により接合されている
    保持基板とを備えた圧電素子において、前記励振用電極
    が形成されている部分における圧電基板の結晶構造と前
    記接合部の圧電基板の結晶構造が異なることを特徴とす
    る圧電素子。
  15. 【請求項15】 前記圧電基板が、水晶基板である請求
    項14に記載の圧電素子。
  16. 【請求項16】 前記接合部の周辺における前記圧電基
    板の前記長方形の長辺方向における幅が、前記長方形の
    長辺の長さよりも小さい請求項14に記載の圧電素子。
  17. 【請求項17】 前記保持基板が、集積回路の形成され
    たシリコン基板からなる請求項14に記載の圧電素子。
  18. 【請求項18】 前記保持基板が、半導体またはガラス
    のいずれかからなる請求項14に記載の圧電素子。
  19. 【請求項19】 電極が形成されている圧電体からなる
    圧電基板と、前記圧電基板の一部に設けられた接合部に
    共有結合またはイオン結合により接合されている保持基
    板とを備えた圧電素子において、前記接合部が実質的な
    長方形であり、前記第1の基板の前記長方形の長辺方向
    における熱膨張率が前記第1の基板の前記長方形の短辺
    方向における熱膨張率と相違し、前記第1の基板の前記
    長辺方向における熱膨張率と前記第2の基板の熱膨張率
    の差が前記第1の基板の前記短辺方向における熱膨張率
    と前記第2の基板の熱膨張率の差よりも小さいことを特
    徴とする圧電素子。
  20. 【請求項20】 前記圧電基板が、水晶基板である請求
    項19に記載の圧電素子。
  21. 【請求項21】 前記接合部の周辺における前記圧電基
    板の前記長方形の長辺方向における幅が、前記長方形の
    長辺の長さよりも小さい請求項19に記載の圧電素子。
  22. 【請求項22】 前記基板が、集積回路の形成されたシ
    リコン基板からなる請求項19に記載の圧電素子。
  23. 【請求項23】 前記保持基板が、半導体およびガラス
    から選ばれる少なくとも一つの物質からなる請求項19
    に記載の圧電素子。
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