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JPH09241226A - 抗生物質ab5366の新規誘導体とそれらの製造法および農園芸用殺菌剤 - Google Patents

抗生物質ab5366の新規誘導体とそれらの製造法および農園芸用殺菌剤

Info

Publication number
JPH09241226A
JPH09241226A JP4520396A JP4520396A JPH09241226A JP H09241226 A JPH09241226 A JP H09241226A JP 4520396 A JP4520396 A JP 4520396A JP 4520396 A JP4520396 A JP 4520396A JP H09241226 A JPH09241226 A JP H09241226A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substance
formula
antibiotic
group
derivative
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4520396A
Other languages
English (en)
Inventor
Atsushi Takahashi
篤 高橋
Masahito Maruyama
雅人 丸山
Takeshi Tamamura
健 玉村
Yasuyuki Tezuka
保行 手塚
Sei Sato
聖 佐藤
Seiichi Kutsuma
誠一 久津間
Tomio Takeuchi
富雄 竹内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hokko Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Hokko Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hokko Chemical Industry Co Ltd filed Critical Hokko Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP4520396A priority Critical patent/JPH09241226A/ja
Publication of JPH09241226A publication Critical patent/JPH09241226A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗カビ活性を有する新規な抗生物質誘導体を
提供することを目的とする。 【解決手段】 抗カビ活性を有して下記の一般式(I)
で表される抗生物質AB5366誘導体およびその塩ならびに
アルキルエステルが得られた。これらの物質は農園芸用
殺菌剤として有用である。一般式(I) (式中、R1は水酸基を示し、R2は水素原子を示すか、
又はR1とR2は共同してヒドロキシイミノ基、オキソ基
又はアルコキシイミノ基を形成し、R3は水素原子又は
スルホン酸基を示し、R4は水素原子又はアシル基を示
す)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗カビ活性を有する
抗生物質AB5366の新規誘導体およびそれらの塩又はアル
キルエステルに関し、またそれらの製造法に関する。本
発明はまた抗生物質AB5366の新規誘導体又はこれらの塩
又はアルキルエステルの少なくとも1つを有効成分とす
る農園芸用殺菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】抗生物質AB5366は、その物理化学的性状
およびその生物学的活性などの諸性質の点で既知の抗生
物質の何れとも一致しない新規な抗生物質(特願平7−
47555号)であり、抗カビ活性を有して農園芸用殺菌剤
として有用である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、農園
芸用殺菌剤分野において利用できて植物病原菌、特に糸
状菌に対し、低濃度で有効な殺菌活性を示し、且つ植物
に薬害を示さず、しかも哺乳類に低毒性である新規な物
質を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決することを目的として、種々の土壌から分離した
微生物が生産する抗生物質について鋭意研究を重ねた。
その結果、自然界から本発明者らにより新たに分離され
AB5366株(FERM P-14662として生工研に寄託)の菌株番
号を付されたピィクニディエラ属に属する新規な菌株の
培養液中に抗カビ活性を示す抗生物質が生産されている
ことを先に発見した。そこで、該菌株の培養物からその
活性物質を分離精製し、それを新規な物質であると認め
てAB5366物質と命名し、それが上記の有用な抗カビ活性
を示すことを見いだし、更にその物質の化学構造を明ら
かにした(特願平7− 47555号;1995年3月7日出
願)。AB5366物質は、植物を用いた植物病害防除試験に
おいて低濃度で高い防除効果を示すが植物に薬害を示さ
ず、しかも哺乳動物に対して低毒性である。
【0005】その抗生物質、AB5366物質は次式(A) で表される化合物である。AB5366物質は比旋光度〔α〕
D 23+ 2.0°(c 1.0,メタノール)を示す淡黄色粉末
である。
【0006】本発明者らは、上記の式(A)の抗生物質
AB5366の抗カビ活性向上を目的に研究を続けた。その結
果としてAB5366物質を酸加水分解あるいは還元あるいは
オキシム化あるいはアセチル化あるいはO−アルキルオ
キシム化もしくはそれらの組み合わせにより、抗カビ活
性を有する6種のアミノ酸型の誘導体を製造することに
成功した。これら誘導体の構造解析の結果、それらは新
規物質であり、それぞれ物質AB5366−1,AB5366−2,
AB5366−3,AB5366−4,AB5366−5およびAB5366−6
と命名した。また、これら6種の物質のカルボン酸基に
おけるアルキルエステルと、AB5366−5及びAB5366−6
の同族体とを合成することにも成功した。本発明者らに
よりこれらの新らたに合成された新規物質は後記の一般
式(I)で、総括的に表わし得るものである。
【0007】すなわち、第1の本発明においては、下記
の一般式(I) (式中、R1 は水酸基を示し、R2 は水素原子を示す
か、又はR1 とR2 は共同してヒドロキシイミノ基、オ
キソ基又はアルコキシイミノ基を形成し、R3 は水素原
子又はスルホン酸基を示し、R4 は水素原子又はアシル
基を示す)で表される抗生物質AB5366誘導体又はそれら
の塩又はアルキルエステル(カルボキシレート)を提供
するものである。
【0008】一般式(I)の誘導体で式(I)に示され
るR1 及びR2 が形成するアルコキシイミノ基のアルキ
ル部分の炭素数は1〜2が好ましい。アルコキシイミノ
基としてはメチルオキシイミノ基、エチルオキシイミノ
基等の低級アルコキシイミノ基があり、エチルオキシイ
ミノ基が好ましい。また、R4 が示すアシル基はアルキ
ルカルボニル基であるのが好ましく、これのアルキル部
分の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜2である。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチ
リル基等があり、アセチル基が好ましい。
【0009】本発明の抗生物質AB5366誘導体の塩の例と
して、第4級アンモニウムなどとの有機塩基塩と、各種
金属、たとえばアルカリ金属との塩、特にナトリウム塩
またはカリウム塩、ならびにアルカリ土類金属との塩、
特にカルシウム塩がある。本発明の抗生物質AB5366誘導
体のアルキルエステル(カルボキシレート)のアルキル部
分は炭素数1〜10のアルキル基であることができ、その
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基
等があり、メチル基が好ましい。
【0010】第1の本発明による一般式(I)の抗生物
質AB5366誘導体は後記されるAB5366−1物質、AB5366−
2物質、AB5366−3物質、AB5366−4物質、AB5366−5
物質およびAB5366−6物質、ならびにAB5366−3物質の
メチルエステルを包含する。
【0011】第1の本発明によるAB5366−1物質は、下
記の構造式(Ia)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C1939NO8S (3) 分子量:441 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図1に示
す。
【0012】(5) 溶解性:メタノール、水に可溶、アセ
トンに不溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.46 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質。
【0013】第1の本発明によるAB5366−2物質は、下
記の構造式(Ib)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C193828S (3) 分子量:454 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図2に示
す。
【0014】(5) 溶解性:メタノール、水に可溶、アセ
トンに不溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.51 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質。
【0015】第1の本発明によるAB5366−3物質は、下
記の構造式(Ic)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C1937NO5 (3) 分子量:359 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図3に示
す。
【0016】(5) 溶解性:メタノール、水、アセトンに
難溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.75 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:両性物質。
【0017】第1の本発明によるAB5366−4物質は、下
記の構造式(Id)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C1939NO5 (3) 分子量:361 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図4に示
す。
【0018】(5) 溶解性:メタノール、水、アセトンに
難溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.68 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:両性物質。
【0019】第1の本発明によるAB5366−5物質は、下
記の構造式(Ie)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C2139NO6 (3) 分子量:401 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図5に示
す。
【0020】(5) 溶解性:水に難溶、メタノール、アセ
トンに可溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.93 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質。
【0021】第1の本発明によるAB5366−6物質は、下
記の構造式(If)で示され、また下記の物理化学的性
状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C21422 8 S (3) 分子量:486 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図6に示
す。
【0022】(5) 溶解性:水に可溶、メタノール、アセ
トンに難溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.50 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:酸性物質。
【0023】第1の本発明によるAB5366-3物質のメチ
ルエステルは、下記の構造式(Ig)で示され、また下
記の物理化学的性状を有する。 (1) 外観:白色粉末 (2) 分子式:C2039NO5 (3) 分子量:373 (4) 赤外部吸収スペクトル(KBr) :添付図面の図7に示
す。
【0024】(5) 溶解性:水に難溶、メタノール、アセ
トンに可溶である。 (6) 薄層クロマトグラフィー:Rf値=0.86 吸着剤:メルク社製キーゼルゲル 60F254 展開溶媒:クロロホルム−メタノール−ギ酸(10:5:
1) (7) 呈色反応:バニリン硫酸、ヨウ素反応に陽性であ
る。 (8) 塩基性、酸性、中性の区別:塩基性物質。
【0025】更に第2の本発明によると、前記の式
(A)の抗生物質AB5366を還元して式(Ia)の物質AB
5366−1を生成することを特徴とする式(Ia)の物質
AB5366−1の製造法が提供される。更に第3の本発明に
よると、前記の式(A)の抗生物質AB5366をオキシム化
して式(Ib)の物質AB5366−2を生成することを特徴
とする式(Ib)の物質AB5366−2の製造法が提供され
る。更に第4の本発明によると、前記の式(A)の抗生
物質AB5366を酸加水分解して式(Ic)の物質AB5366−
3を生成することを特徴とする式(Ic)の物質AB5366
−3の製造法が提供される。
【0026】更に第5の本発明によると、前記の式(I
c)の物質AB5366−3を還元して式(Id)の物質AB53
66−4を生成することを特徴とする式(Id)の物質AB
5366−4の製造法が提供される。更に第6の本発明によ
ると、前記の式(Ic)の物質AB5366−3をアセチル化
して式(Ie)の物質AB5366−5を生成することを特徴
とする式(Ie)の物質AB5366−5の製造法が提供され
る。更に第7の本発明によると、前記の式(A)の抗生
物質AB5366をO−エチルオキシム化して式(If)の物質
AB5366−6を生成することを特徴とする式(If)の物
質AB5366−6の製造法が提供される。
【0027】更に第8の本発明によると、前記の式(I
c)の物質AB5366−3のカルボキシル基をメチル化して
式(Ig)の物質AB5366−3メチルエステルを生成する
ことを特徴とする式(Ig)の物質AB5366−3メチルエス
テルの製造法が提供される。
【0028】次に、本発明による前記の物質AB5366−
1,−2,−3,−4,-5および-6ならびに物質AB53
66-3のメチルエステルの各物質の製造法について説明
する。
【0029】第2の本発明の方法を実施するには、原料
としての抗生物質AB5366を、適当な溶媒に溶解し、適当
な還元剤により還元することによりAB5366−1物質を製
造することができる。この際に使用される還元剤は、原
料物質のケトン基(オキソ基)が還元され2級アルコー
ル(水酸基)を形成できうるものであればどれでもよ
く、たとえば水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。また
還元剤の添加量は、モル比で原料物質の2〜3倍量であ
り、好ましくは2倍量である。使用される溶媒は原料あ
るいは反応生成物が溶解する溶剤が使用され、好ましい
溶剤としてはメタノール、エタノールなどの低級アルコ
ールが使用される。反応は、室温条件下で行い、原料物
質の消失または反応生成物の適当な生成量のところを反
応の終了点の目安とし、その後に適当な後処理、精製工
程を経ることにより、目的物として式(Ia)のAB5366
−1物質を得る。
【0030】第3の本発明の方法を実施するには、原料
としての抗生物質AB5366を、適当な溶媒に溶解し、適当
なオキシム化剤によりオキシム化することによりAB5366
−2物質を製造することができる。この際に使用される
オキシム化剤は、原料物質のケトン基(オキソ基)が脱
水縮合されてオキシム基を形成できうるものであればど
れでもよく、たとえばヒドロキシアンモニウムクロリド
が好ましい。またオキシム化剤の添加量は、モル比で原
料物質の 1.1〜 1.5倍量であり、好ましくは、1.2倍量
である。使用される溶媒は原料あるいは反応生成物が溶
解する溶剤が使用され、好ましい溶剤としてはメタノー
ル、エタノールなどの低級アルコールが使用される。反
応は、室温あるいは還流条件下で行い、原料物質の消失
または反応生成物の適当な生成量のところを反応の終了
点の目安とし、その後に適当な後処理、精製工程を経る
ことにより、目的物として式(Ib)のAB5366−2物質
を得る。
【0031】第4の本発明の方法を実施するには、原料
としての抗生物質AB5366を適当な溶媒に溶解し、適当な
鉱酸で酸処理により加水分解することによりAB5366−3
物質を製造することができる。この際に使用される鉱酸
は、原料物質の硫酸エステル部が加水分解されてアルコ
ールを形成できうるものであればどれでもよく、たとえ
ば塩酸あるいは硫酸が好ましい。また鉱酸の濃度は、0.
5規定〜6規定であり、好ましくは1規定の濃度であ
る。使用される溶媒は原料あるいは反応生成物が溶解す
る溶剤が使用され、好ましい溶剤としてはメタノール、
エタノールなどの低級アルコールまたは水が使用され
る。反応は、室温あるいは還流条件下で行い、原料物質
の消失または反応生成物の適当な生成量のところを反応
の終了点の目安とし、その後適当な後に処理、精製工程を
経ることにより、目的物として式(Ic)のAB5366−3物
質を得る。
【0032】第5の本発明の方法を実施するには、原料
としての前記の抗生物質AB5366−3を適当な溶媒に溶解
し、適当な還元剤で処理により還元することによりAB53
66−4物質を製造することができる。この際に使用され
る還元剤は、原料物質のケトン基(オキソ基)が還元さ
れ2級アルコール(水酸基)を形成できうるものであれ
ばどれでもよく、たとえば水素化ホウ素ナトリウムが好
ましい。また還元剤の添加量は、モル比で原料物質の2
〜3倍量であり、好ましくは、2倍量である。使用され
る溶媒は原料あるいは反応生成物が溶解する溶剤が使用
され、好ましい溶剤としてはメタノール、エタノールな
どの低級アルコールが使用される。反応は、室温条件下
で行い、原料物質の消失または反応生成物の適当な生成
量のところを反応の終了点の目安とし、その後に適当な
後処理、精製工程を経ることにより、目的物として式
(Id)のAB5366−4物質を得る。
【0033】第6の本発明の方法を実施するには、原料
としての抗生物質AB5366−3を適当な溶媒に溶解し、適
当なアセチル化剤で処理によりアセチル化することによ
りAB5366−5物質を製造することができる。この際に使
用されるアセチル化剤は、原料物質のアミノ基がアセチ
ル化され、N−アセチル基を形成できうるものであれば
どれでもよく、たとえば無水酢酸が好ましい。またアセ
チル化剤の添加量は、モル比で原料物質の 1.1〜 1.5倍
量であり、好ましくは 1.2倍量である。使用される溶媒
は原料あるいは反応生成物が溶解する溶剤が使用され、
好ましい溶剤としてはメタノール、エタノールなどの低
級アルコールが使用される。反応は、室温条件下で行
い、原料物質の消失または反応生成物の適当な生成量の
ところを反応の終了点の目安とし、その後適当な後処
理、精製工程を経ることにより、目的物として式(I
e)のAB5366−5物質を得る。
【0034】なお、一般式(I)の誘導体でR4がアシル
基である場合の化合物は、一般に、上記の無水酢酸に代
えて、適当な酸無水物を用いることによって製造でき
る。
【0035】第7の本発明の方法を実施するには、原料
としての抗生物質AB5366を、適当な溶媒に溶解し、適当
なO−エチルオキシム化剤によりO−エチルオキシム化
することによりAB5366−6物質を製造することができ
る。この際に使用されるO−エチルオキシム化剤は、原
料物質のケトン基(オキソ基)が脱水縮合されてO−エ
チルオキシムを形成できうるものであればどれでもよ
く、たとえばO−エチルヒドロキシルアンモニウムクロ
リドが好ましい。またO−エチルオキシム化剤の添加量
は、モル比で原料物質の1.1〜1.5倍量であり、好ましく
は 1.2倍量である。この際に使用される溶媒は原料ある
いは反応生成物が溶解する溶剤が使用され、好ましい溶
剤としてはメタノール、エタノールなどの低級アルコー
ルが使用される。反応は、室温あるいは還流条件下で行
い、原料物質の消失または反応生成物の適当な生成量の
ところを反応の終了点の目安とし、その後適当な後処
理、精製工程を経ることにより、目的物として式(I
f)のAB5366−6物質を得る。
【0036】なお、一般式(I)の誘導体でR1がアルコ
キシイミノ基である場合の化合物は、一般に、上記のO
−エチルヒドロキシルアンモニウムクロリドに代えてO
−アルキルヒドロキシルアンモニウムクロリドを用いる
ことによって製造できる。
【0037】第8の本発明の方法を実施するには、原料
としての前記の抗生物質AB5366−3を適当な溶媒に溶解
し、適当なメチル化剤で処理してメチル化することによ
りAB5366−3物質のメチルエステルを製造することがで
きる。この際に使用されるメチル化剤は、原料物質のカ
ルボキシル基がメチル化されメチルエステルを形成でき
うるものであればどれでもよく、たとえばジアゾメタン
が好ましい。またメチル化剤の添加量は、モル比で原料
物質の 1.1〜 1.5倍量であり、好ましくは 1.2倍量であ
る。この際に使用される溶媒は原料あるいは反応生成物
が溶解する溶剤が使用され、好ましい溶剤としてはメタ
ノール、エタノールなどの低級アルコールが使用され
る。反応温度は、室温条件下で行い、原料物質の消失ま
たは反応生成物の適当な生成量のところを反応の終了点
の目安とし、その後適当な後処理、精製工程を経ること
により、目的物として式(Ig)のAB5366−3物質のメ
チルエステルを得る。
【0038】なお、本発明による一般式(I)の誘導体
のアルキルエステルは、一般に、原料として用いられる
対応のカルボン酸の形の一般式(I)の化合物にジアゾ
アルカンを反応させて、上記のメチルエステル化の反応
と同様にエステル化反応を行うことによって製造でき
る。
【0039】第1の本発明による一般式(I)の誘導体に
包含される前記の物質AB5366−1,−2,−3,−4,
−5、および−6、ならびにAB5366−3のメチルエステ
ルは後記の試験例に示すように植物病原菌生育阻止活性
を有する。
【0040】次に、第1の本発明の一般式(I)のAB5366
誘導体が植物病原菌に対し生育阻止活性を有して殺菌剤
として有用であることを後記の試験例によって説明す
る。
【0041】試験例1 AB5366−1,−2,−3,−
4,−5、および−6物質ならびにAB5366−3物質メチ
ルエステルの植物病原菌に対する生育阻止効果 AB5366−1(Na塩),−2(Na塩),−3(HCl
塩),−4(Na塩),−5、および−6(Na塩)の各
物質ならびにAB5366−3物質メチルエステルの各種植物
病原菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)(μg /m
l)をポテト・スクロース寒天培地を用いて寒天平板希
釈法にて測定した。また、同様にして抗生物質AB5366
(Na塩)の最小生育阻止濃度(MIC)(μg /ml)
も比較のため測定した。その結果を、次の表1に示し
た。
【0042】
【0043】
【0044】従って、第9の本発明によると、一般式
(I)で表される抗生物質AB5366誘導体あるいはこれら
の塩又はアルキルエステルの少なくとも1つを有効成分
として含有する農園芸用殺菌剤が提供される。
【0045】
【発明の実施の形態】第1の本発明による一般式(I)
のAB5366誘導体あるいはこれらの塩又はアルキルエステ
ルの少なくとも1つを農園芸用殺菌剤として用いる場合
には、その使用目的に応じて単体でも用いることができ
るが、生物効果を助長、あるいは安定化するために、慣
用される適当な固体または液体状の単体と混和し、また
必要に応じて補助剤を追加して組成物の形にし、これを
直接に使用するか、あるいは必要に応じて希釈して用い
る。
【0046】
【実施例】次に実施例をあげて本発明をより具体的に説
明するが、これは単なる一例であって、これによって本
発明が限定されるものではない。また、ここに例示しな
かった多くの変法あるいは修飾手段を用いるようなこと
は言うまでもなく可能なことであり、有効な手段となり
うる。なお、実施例中に部とあるのは重量部を示してい
る。
【0047】実施例1 AB5366−1物質の製造 抗生物質AB5366ナトリウム塩50mg(0.11ミリモル)を1
mlのメタノールに溶解した。その溶液に水素化ホウ素ナ
トリウムを添加後、室温で1時間攪拌した。反応終了
後、 100mlの蒸留水を加え、あらかじめ水で平衡化した
ダイヤイオンHP20(登録商標)(10ml)のカラムに供
し、 100mlの蒸留水で水洗した後、50mlの80%含水メタ
ノールを用いて溶出した。溶出液を濃縮乾固して、AB53
66−1物質のナトリウム塩として白色粉末を37.0mg(0.
08ミリモル)得た。このときの回収率は72.7%であっ
た。
【0048】実施例2 AB5366−2物質の製造 抗生物質AB5366ナトリウム塩 140mg(0.30ミリモル)を
950μl の炭酸ナトリウム水溶液(18mg/ml)に溶解し
た。その溶液にヒドロキシルアミンクロリド(10mg/m
l)のエタノール溶液2450μl を添加後、室温で7時間
攪拌した。反応終了後、 100mlの水を加え、あらかじめ
蒸留水で平衡化したダイヤイオンHP20(登録商標)
(10ml)のカラムに供し、 100mlの蒸留水で水洗した
後、50mlの80%含水メタノールを用いて溶出した。溶出
液を濃縮乾固して、AB5366−2物質のナトリウム塩とし
て白色粉末を 100mg(0.21ミリモル)得た。このときの
回収率は70.0%であった。
【0049】実施例3 AB5366−3物質の製造 抗生物質AB5366ナトリウム塩 201mg(0.44ミリモル)を
5N塩酸5mlに溶解し110℃で3時間反応した。反応終
了後、室温で静置させ、生じた沈殿をグラスフィルター
を用いて濾集し、濾液のpHがpH試験紙で酸性を示さ
なくなるまで充分に蒸留水で水洗した。その後にその固
体を減圧下で乾燥させ、AB5366−3物質の塩酸塩として
白色粉末を 128mg(0.32ミリモル)得た。このときの回
収率は72.7%であった。
【0050】実施例4 AB5366−4物質の製造 実施例3で得たAB5366−3物質の塩酸塩40.8mg(0.10ミ
リモル)を1mlのメタノールに溶解した。その溶液に水
素化ホウ素ナトリウムを添加後、TLC上でAB5366−3
物質が完全に消失するまで室温で攪拌した。反応終了
後、反応液を1Nの水酸化ナトリウムを用いて中和後、
減圧下で濃縮した。生じた沈殿を濾集後、充分に水洗
し、減圧下で乾燥して、AB5366−4物質のナトリウム塩
を白色粉末として32.3mg(0.08ミリモル)得た。このと
きの回収率は80.0%であった。
【0051】実施例5 AB5366−5物質の製造 実施例3で得たAB5366−3物質の塩酸塩40.5mg(0.10ミ
リモル)を2mlのメタノールに溶解した。その溶液に無
水酢酸4mlを添加後、室温で18時間攪拌した。反応終了
後、氷冷下で50mlの蒸留水を加え、 100ml容分液ロート
に移しかえ、酢酸エチル50mlを入れ激しく振とうし、分
液した。酢酸エチル相を分取し、蒸留水を20ml加え上記
の操作を3度繰り返し、酢酸エチル相を水洗した。水洗
した酢酸エチル相を減圧下で濃縮乾固後、2mlのメタノ
ールに溶解させ、あらかじめメタノールで平衡化したセ
ファデックスLH20(登録商標)(200ml)のカラムに供
し、メタノールを用いて展開した。得られた画分を濃縮
乾固して、AB5366−5物質の白色粉末を23.3mg(0.062ミ
リモル)得た。このときの回収率は62.0%であった。
【0052】実施例6 AB5366−6物質の製造 抗生物質AB5366ナトリウム塩 103mg(0.22ミリモル)を
0.65mlの炭酸ナトリウム水溶液(18mg/ml)に溶解し
た。その溶液にO−エチルヒドロキシルアミンクロリド
(15mg/ml)のエタノール溶液1.75mlを添加後、37℃で
17時間攪拌した。反応終了後、100mlの蒸留水を加え、
あらかじめ蒸留水で平衡化したダイヤイオンHP20(登
録商標)(10ml)のカラムに供した。100mlの蒸留水で水
洗した後、50mlの80%含水メタノールを用いて溶出し、
濃縮乾固して、AB5366−6物質のナトリウム塩として白
色粉末を83.3mg(0.16ミリモル)得た。このときの回収
率は72.7%であった。
【0053】実施例7 AB5366−3物質のメチルエステ
ルの製造 実施例3で得たAB5366−3物質の塩酸塩41.2mg(0.10ミ
リモル)を2mlのメタノールに溶解した。その溶液にエ
ーテル性ジアゾメタンを4ml添加後、室温で2時間攪拌
した。反応終了後、減圧下で濃縮乾固し、2mlのメタノ
ールに溶解させ、あらかじめメタノールで平衡化したセ
ファデックスLH20(登録商標)(200ml)のカラムに供
し、メタノールを用いて展開した。得られた画分を濃縮
乾固して、AB5366−3物質のメチルエステルを白色粉末
として15.0mg(0.04ミリモル)得た。このときの回収率は
40.0%であった。
【0054】実施例8(水和剤) 本発明による物質AB5366−1または−2または−3また
は−4または−5または−6またはAB5366−3物質メチ
ルエステルの20部、アルキルベンセンスルホン酸カリウ
ム3部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル5
部、および白土72部を均一に混合し、粉砕して、活性成
分を20%含有する水和剤を得た。
【0055】実施例9(粉剤) 物質AB5366−1または−2または−3または−4または
−5または−6またはAB5366−3物質メチルエステルの
2部、PAP(物理性改良材)1部およびクレー97部を
均一に混合し、粉砕して、活性成分2%を含有する粉剤
を得た。
【0056】実施例10(乳剤) 物質AB5366−1または−2または−3または−4または
−5または−6またはAB5366−3物質メチルエステルの
30部、メチルエチルケトン40部およびポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテル30部を混合して、活性成分30
%を含有する乳剤を得た。
【0057】更に、第9の本発明による農園芸用殺菌剤
に用いる植物病害防除効果を試験例2、3、4および5
に例証する。
【0058】試験例2 灰色カビ病の防除試験 温室内で直径6cmの大きさのビニール樹脂製ポットで土
耕栽培した子葉期のキュウリ苗(品種:相模半白)に、
実施例8に準じて調製した水和剤を所定濃度に希釈した
薬液を1鉢当たり10mlを散布した。薬液散布1日後、予
めPSA培地で生育させた灰色カビ病菌(Botrytis ci
nerea :ボトリチス・シネレア)の胞子を胞子濃度5×
105 胞子数(個)/mlになるように1%ブドウ糖水溶液
に懸濁してつくった胞子懸濁液を、子葉の中央へ滴下し
た。ついで子葉を20℃、湿度 100%の接種箱内で保温、
発病させた。接種3日後に1葉当たりの菌叢直径(mm)を
測定した後、下記の計算式により防除価(%)を算出し
た。
【0059】
【0060】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行
い、その平均防除価(%)を求め、更にそれから下記の
基準により防除効果の評価を求めた。また、下記の薬害
調査の基準によりキュウリ(品種:相模半白)に対する
薬害も調査した。 平均防除価(%) 防除効果の評価値 100% 5 90〜 100%未満 4 70〜 90%〃 3 40〜 70%〃 2 40% 〃 1 (薬害の調査基準) 5:激甚 4:甚 3:多 2:若干 1:わずか 0:なし
【0061】なお、比較対照のために、抗生物質AB5366物
質も上記と同様の方法で試験した。無散布区では、有効
成分を含む薬液で供試植物を処理しなかった。以上の結
果は表2に示すとおりである。
【0062】
【0063】試験例3 インゲン菌核病防除効果試験 温室内で直径6cmの大きさのビニール樹脂製ポットで土
耕栽培した子葉期のインゲン苗(品種:姫手芒)に、実
施例8に準じて調製した水和剤を所定濃度に希釈した薬
液を1鉢当たり10mlを散布した。薬液散布1日後、予め
PSA培地で生育させたインゲン菌核病菌(Sclerotinia
sclerotiorum:スクレロチニア スクレロチオラム)
の含菌ディスクを、子葉の中央へ置床した。そして、20
℃、湿度100%の接種箱内で保温、発病させた。接種3
日後に1葉当たりの菌叢直径(mm)を測定した後、試験例
2に示した計算式により防除価(%)を算出した。
【0064】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行
い、その平均防除価(%)を求め、更にそれから試験例
2と同様の基準により防除効果の評価を求めた。また、
試験例2と同様の薬害調査の基準によりインゲン(品
種:姫手芒)に対する薬害も調査した。なお、比較対照
のために、抗生物質AB5366も上記と同様の方法で試験し
た。その結果は表3のとおりである。
【0065】
【0066】試験例4 オオムギうどんこ病防除効果試
験 温室内で直径6cmの大きさのビニール樹脂製ポットで土
耕栽培したオオムギ(品種:アズマゴールデン)の第1
葉期に、実施例8に準じて調製した水和剤を所定濃度に
希釈した薬液を1鉢当たり10mlを散布した。薬液散布1
日後、予め大麦葉上で形成したオオムギうどんこ病菌
Erysiphe graminis:エリシフェグラミニス)の分生
胞子を、展着剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル)の50ppm水溶液にて希釈して胞子濃度5×105 胞子
数(個)/mlに調製し、これをスプレーガンを用いてオ
オムギの茎葉に噴霧接種した。そして、20℃、湿度100
%の接種箱内で保温、発病させた。接種7日後に1葉当
たりのオオムギうどんこ病の病斑長(mm)を調査した。こ
れらのデータから次式により防除価(%)を算出した。
【0067】
【0068】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行
い、その平均防除価(%)を求め、更にそれから試験例
2と同様の基準により防除効果の評価を求めた。また、
試験例2と同様の薬害調査の基準によりオオムギ(品
種:アズマゴールデン)に対する薬害も調査した。な
お、比較対照のために、抗生物質AB5366も上記と同様の
方法で試験した。その結果は表4のとおりである。
【0069】
【0070】試験例5 キュウリべと病防除効果試験 温室内で直径6cmの大きさのビニール樹脂製ポットで土
耕栽培したキュウリ(品種:相模半白)の第2葉期に、
実施例8に準じて調製した水和剤を所定濃度に希釈した
薬液を1鉢当たり10mlを散布した。薬液散布1日後、予
めキュウリ葉上で形成させたキュウリべと病菌(Pseudo
pernospora cubensis:シュウドペルノスポラ キュウ
ベンシス)の胞子を、展着剤(ポリオキシエチレンアル
キルエーテル)の 50ppm水溶液にて希釈して胞子濃度5
×105 胞子数(個)/mlに調製し、これをスプレーガン
を用いてキュウリに噴霧接種した。そして、20℃、湿度
100%の接種箱内で保温、発病させた。接種6日後に1
葉当たりのオオムギうどんこ病の発病面積歩合(%)を
調査し、平均発病面積歩合を求めた。これらのデータか
ら次式に示した計算式により防除価(%)を算出した。
【0071】
【0072】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行
い、その平均防除価(%)を求め、更にそれから試験例
2と同様の基準により防除効果の評価を求めた。また、
試験例2と同様の薬害調査の基準によりキュウリ(品
種:相模半白)に対する薬害も調査した。なお、比較対
照のために、AB5366物質も上記と同様の方法で試験し
た。その結果は表5のとおりである。
【0073】
【0074】第1の本発明による一般式(I)の抗生物
質AB5366誘導体を製造するのに原料として用いる抗生物
質AB5366は新規な物質であるから、これの製造を以下に
説明する。
【0075】抗生物質AB5366の製造には、ピィクニディ
エラ属に属する抗生物質AB5366生産菌を、通常の微生物
が資化しうる栄養物を含有する培地、好ましくは液体培
地中において培養する。本生産菌の培養には、微生物の
培養に用いられる通常の培養方法が適用される。栄養源
としては、使用された微生物が資化しうる炭素源、窒素
源、および無機塩などを程よく含有する培地であれば天
然培地あるいは合成培地のいずれでも利用できる。
【0076】AB5366生産菌の一例としてのAB5366株は工
業技術院生命工学工業技術研究所に寄託申請され、平成
6年11月25日、FERM P-14662として受託されている。こ
のAB5366株の菌学的性質は特願平7− 47555号明細書に
詳記されてある。
【0077】AB5366生産菌の培養に用いる培地に含有さ
れる資化しうる炭素源としては、グルコース、シュクロ
ース、ガラクトース、デキストリン、グリセロール、澱
粉、水飴、糖蜜、動・植物油等を利用できる。また、窒
素源としては、魚粉、大豆粉、小麦胚芽、コーンスティ
ープリカー、綿実かす、肉エキス、ペプトン、酵母エキ
ス、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリ
ウム、尿素などを使用できる。そのほか必要に応じ、ナ
トリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバ
ルト、塩素、燐酸、硫酸およびその他のイオンを生成す
ることができる無機塩類を培地中に添加することは有効
である。また、使用する抗生物質AB5366生産菌株の発育
を助け、AB5366物質の生産を促進するような無機物質お
よび(または)有機物質を適当に添加できる。なお、培
地中に金属イオンあるいは塩基等が存在する場合、それ
に対応する金属カチオンあるいはアニオンとの塩の形で
抗生物質AB5366が得られることがある。
【0078】抗生物質AB5366生産菌の培養方法には、好
気的条件下での培養法、特に通気下の深部液体培養法が
最も適している。培養に適当な温度は、15〜30℃である
が、多くの場合24〜30℃で培養するのがよい。抗生物質
AB5366の生産は、用いた培地の種類や培養条件によって
異なるが、振とう培養、タンク培養とも3〜10日間の培
養でその蓄積量が最高に達する。培養物中に生産された
抗生物質AB5366の蓄積量が最高に達した時点で培養を停
止し、その培養物から、発酵生産物を採取する一般的な
方法に準じて抗生物質AB5366物質の単離を行うのがよ
い。抗生物質AB5366を効率よく生産させる培養条件は、
前記の培地成分の組成、培養温度、攪拌速度、pH、通
気量、種母の培養時間、種母の接種量等を、使用する生
産菌株の種類および外部条件等に応じて、適宜に調節あ
るいは選択して設定する。液体培養法において発泡があ
る場合は、シリコーン油、植物油および界面活性剤等の
消泡剤を単独または混合して適宜に培地に配合する。
【0079】この様にして抗生物質AB5366生産菌の培養
で得られた培養物中に蓄積された抗生物質AB5366は、下
記の方法により効率的に分離精製できる。培養物中に蓄
積した抗生物質AB5366を培養物中から採取するに際して
は、通常の生理活性物質を培養物中から単離する方法が
適用される。すなわち、培養液からブタノールによる抽
出法、また菌体からメタノール等の有機溶剤による抽出
法により、あるいは水または二種類以上の有機溶媒系を
用いる向流分配法により、もしくはイオン交換樹脂、合
成吸着樹脂、シリカゲル、シラナイズドシリカゲル、ア
ルミナ、セルロース、珪藻土、ゲル濾過剤、活性炭等を
用いるカラムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマト
グラフィーによる活性物質の吸脱着処理法により、ある
いは逆層カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーな
どによって抗生物質AB5366物質を単離できる。
【0080】参考例1 本例は抗生物質AB5366の醗酵的製造を例示する。菌の培
養に用いた生産培地は、ブドウ糖 1.0%、デキストリン
1.5%、酵母エキス 1.0%、マルトエキス 1.0%、KH
2PO4 0.5%、MgSO4・7H2O 0.5%、炭酸カルシ
ウム 0.3%の組成からなる(pH6.5) 。前記の組成の培地
110mlを分注した 500ml容量のバッフル付き三角フラス
コ91本(培地の総量10リットル分)を 121℃で20分間滅
菌した。滅菌された培地に1本当りピィクニディエラ・
エスピーAB5366株(FERM P-14662)の斜面寒天培養菌体
の1〜2白金耳を植菌した。
【0081】その後、ロータリーシェーカー(180rpm)
上で25℃で5日間、回転振とう培養した。培養終了後、
培養液を濾過することにより、培養濾液8リットルと菌
体を得た。上記の濾別された菌体中の活性物質はメタノ
ール4リットルで菌体から抽出し、濾過により菌体を除
いて菌体抽出液として得た。この菌体抽出液を減圧下で
メタノールを溜去し、得られた濃縮液1リットルを、前
記の培養濾液と混合した。この得られた混合溶液9リッ
トルを、合成吸着樹脂、ダイアイオンHP−20(登録商
標)を充填させたカラム (容量:750ml)に吸着させ、そ
の後、2リットルの水および40%メタノール水でそれぞ
れカラムを洗浄した。次いで 100%メタノールを用いて
分画溶出させ、活性画分を集めて減圧下で濃縮乾固させ
ることにより褐色飴状物質 875mgを得た。
【0082】この褐色飴状物質 875mgを少量の50%メタ
ノール水に溶解させた後、同溶媒にして調製したセファ
デックスLH−20(登録商標)のカラム (容量:150ml)
上におき、つづいて同溶媒を用いて分画溶出させた。得
られた活性画分を集めて減圧下に濃縮乾固し、その固体
をクロロホルム−メタノール−ギ酸(20:5:1)の組
成からなる少量の混合溶媒に溶解させた後、さらにシリ
カゲル(メルク社製)を充填したカラム(容量:20ml)
に吸着させ、同溶媒にて展開溶出するクロマトグラフィ
ーを行った。活性画分を集め、減圧下で濃縮乾固するこ
とにより黄色粉末 185mgを得た。
【0083】この黄色粉末 185mgを上記のセファデック
スLH−20カラムで用いた方法と全く同様にして、再度
カラムクロマトグラフィーを行うことにより、目的の活
性成分を単離した。以上の方法により10リットルの菌体
を含む培養液から、抗生物質AB5366の純品の62.1mgを黄
色粉末として得た。
【0084】
【発明の効果】本発明の新規な抗生物質AB5366誘導体
は、以上に述べたように植物病原菌に抗菌活性を有し、
実際の植物病害に対し防除効果を有することから、新規
な農園芸用殺菌剤として期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の物質AB5366−1の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図2】本発明の物質AB5366−2の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の物質AB5366−3の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図4】本発明の物質AB5366−4の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図5】本発明の物質AB5366−5の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図6】本発明の物質AB5366−6の臭化カリウム錠剤中
で測定した赤外部吸収スペクトル図である。
【図7】本発明の物質AB5366−3メチルエステルの臭化
カリウム錠剤中で測定した赤外部吸収スペクトル図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 227/18 9450−4H C07C 227/18 231/02 9547−4H 231/02 233/47 9547−4H 233/47 303/24 7419−4H 303/24 305/10 7419−4H 305/10 (72)発明者 手塚 保行 神奈川県厚木市森の里2丁目24番7号 (72)発明者 佐藤 聖 神奈川県秦野市東田原200番地96 (72)発明者 久津間 誠一 神奈川県厚木市妻田東1丁目5番9号− 901 (72)発明者 竹内 富雄 東京都品川区東五反田5丁目1番11号 ニ ユーフジマンシヨン701

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I) (式中、R1 は水酸基を示し、R2 は水素原子を示す
    か、又はR1 とR2 は共同してヒドロキシイミノ基、オ
    キソ基又はアルコキシイミノ基を形成し、R3 は水素原
    子又はスルホン酸基を示し、R4 は水素原子又はアシル
    基を示す)で表される抗生物質AB5366誘導体又はそれら
    の塩又はアルキルエステル(カルボキシレート)。
  2. 【請求項2】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(Ia) で示される物質AB5366−1である請求項1に記載の誘導
    体又はこれらの塩又はアルキルエステル。
  3. 【請求項3】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(Ib) で示される物質AB5366−2である請求項1に記載の誘導
    体又はこれらの塩又はアルキルエステル。
  4. 【請求項4】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(Ic) で示される物質AB5366−3である請求項1に記載の誘導
    体又はこれの塩又はアルキルエステル。
  5. 【請求項5】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(Id) で示される物質AB5366−4である請求項1に記載の誘導
    体又はこれの塩又はアルキルエステル。
  6. 【請求項6】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(Ie) で示される物質AB5366−5である請求項1に記載の誘導
    体又はこれの塩又はアルキルエステル。
  7. 【請求項7】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体が
    次式(If) で示される物質AB5366−6である請求項1に記載の誘導
    体又はこれの塩又はアルキルエステル。
  8. 【請求項8】 一般式(I)の抗生物質AB5366誘導体の
    アルキルエステルが次式(Ig) で示される物質AB5366−3〔式(Ic)〕のメチルエス
    テルである請求項1に記載の誘導体のメチルエステル。
  9. 【請求項9】 次式(A) で表される抗生物質AB5366を還元して式(Ia)の物質
    AB5366−1を生成することを特徴とする、請求項2に記
    載の物質AB5366−1の製造法。
  10. 【請求項10】 式(A)の抗生物質AB5366をオキシム
    化して式(Ib)の物質AB5366−2を生成することを特
    徴とする、請求項3に記載の物質AB5366−2の製造法。
  11. 【請求項11】 式(A)の抗生物質AB5366を酸加水分
    解して式(Ic)の物質AB5366−3を生成することを特
    徴とする、請求項4に記載の物質AB5366−3の製造法。
  12. 【請求項12】 請求項4に記載の式(Ic)の物質AB
    5366−3を還元して式(Id)の物質AB5366−4を生成
    することを特徴とする、請求項5に記載の物質AB5366−
    4の製造法。
  13. 【請求項13】 請求項4に記載の式(Ic)の物質AB
    5366−3をアセチル化して式(Ie)の物質AB5366−5
    を生成することを特徴とする、請求項1に記載の物質AB
    5366−5の製造法。
  14. 【請求項14】 式(A)の抗生物質AB5366をO−エチ
    ルオキシム化して式(If)の物質AB5366−6を生成す
    ることを特徴とする、請求項7に記載の物質AB5366−6
    の製造法。
  15. 【請求項15】 請求項4に記載の式(Ic)の抗生物
    質AB5366−3のカルボキシル基をメチル化して式(I
    g)の物質AB5366−3メチルエステルを生成することを
    特徴とする、請求項4に記載の物質AB5366−3のメチル
    エステルの製造法。
  16. 【請求項16】 一般式(I) 〔式中、R1 は水酸基を示し、R2 は水素原子を示す
    か、又はR1 とR2 は共同してヒドロキシイミノ基、オ
    キソ基又はアルコキシイミノ基を形成し、R3 は水素原
    子又はスルホン酸基を示し、R4 は水素原子又はアシル
    基を示す)で表される抗生物質AB5366誘導体又はこれの
    塩又はこれのアルキルエステル(カルボキシレート)の
    少くとも1つを有効成分として含有することを特徴とす
    る、農園芸用殺菌剤。
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