【発明の詳細な説明】
カテプシンDはアルツハイマー病におけるアミロイド生成プロテアーゼである
発明の背景
本出願は、1992年5月11日提出の米国特許第07/880,914号の一部継続である19
92年12月16日提出の米国特許第07/995,660号の一部継続である。
1)産業上の利用分野
本発明は、アルツハイマー病(以後“AD”と記す)ベータアミロイドタンパク
質に対する前駆体をプロセッシングする特異性を有するタンパク質分解酵素を同
定するための方法;ベータアミロイドタンパク質に対する前駆体に特異的なプロ
テアーゼの阻害剤を同定するための方法;並びにベータアミロイドタンパク質に
対する前駆体に特異的なプロテアーゼの阻害剤、例えばアスパラギン酸プロテア
ーゼ、カテプシンD、及びキモトリプシン様セリンプロテアーゼを用いてベータ
アミロイドタンパク質の生成を調節するための方法に関する。
2)関連技術の説明
本検定は、AD患者の脳におけるアミロイド性ペプチドの生成速度を制御するプ
ロテアーゼの同定に有益である。このように、それらはこのようなタンパク質を
単離するために用い得るし、並びにADの療法として用い得るプロテアーゼ阻害剤
を同定するのにも用い得る。アスパラギン酸プロテアーゼ、即ちアミロイド前駆
体タンパク質(以後“APP”と記す)をプロセッシングするための主なアミロイ
ド原性プロテアーゼとしてのカテプシンDを同定するための検定の適
用を以下に説明する。APPホロタンパク質に対するアミロイド前駆体を生成し得
る二次セリンプロテアーゼの部分的特性表示が提供される。
ADは、通常は前頭、頭頂及び後頭皮質における進行性萎縮を特徴とする脳の進
行性変性疾患である。ADの臨床的発現としては、進行性記憶障害、言語及び視覚
空間識別力の喪失、並びに行動欠損が挙げられる(McKhan et al.,1986,Neuro
logy,34:939)。全体的認識障害は、大脳半球全体に見出されるニューロン細胞
の変性によるものである(Price,1986,Annu.Rev.Neurosci.9:489)。
病理学的には、AD患者の剖検脳の原発性の顕著な特徴は、(1)神経繊維のも
つれの蓄積を含むニューロン神経細胞形質から成る病変;(2)脳血管性アミロ
イド沈着物;及び(3)神経炎斑である。脳血管性アミロイド(Wong et al.,1
985,PNAS,82:8729)及び神経炎斑(Masters et al.,1985,PNAS,82:4249)
はともに、単に“A4”又は“ベータアミロイド”と呼ばれる独特のペプチドを
含有する。
ベータアミロイドは、相対分子量4,500の不溶性の高度に凝集する小ポリペプ
チドであり、39〜42個のアミノ酸から成る。証拠のいくつかのラインは、AD病変
の病因におけるベータアミロイドの役割を支持する。例えばベータアミロイド及
び関連断片はPC−12細胞株に対して有毒であり(Yanker et al.,1989,Science
,245:417)、ニューロンの一次培養に対して有毒であり(Yanker et al.,1990
,Science,250:279)、そして齧歯類の脳におけるニューロン変性及び齧歯類に
おける対応する記憶喪失反応を引き起こす(Flood et al.,1991,PNAS,88:33
63;Kowall et al.,1991,PNAS,88:7247)ことが示されている。しかしながら
最も強力な証拠は、ある種の形態の家族性アルツハイマー病(FAD)と同時分離
するアミノ酸置換の
ホロアミロイド前駆体タンパク質(以後、“APP”と呼ぶ)内の部位から得られ
る。APP内のベータアミロイドペプチド配列に対してN末端(Mullant et al.,1
992,Nature Genetics,1:345)又はC末端(Goate et al.,1991,Nature,349
:704;Yoshioka et al.,1991,Biochem.Biophys.Res.Comm.,178:1141;nur
rell et al.,1991,Science,254:97;及びChartier-Harlin et al.,1991,Na
ture,353:844)に位置するこれらの点突然変異は、断片を含有するベータアミ
ロイドの内部タンパク質分解性放出の速度を変えることによりFADを引き起こす
ことを示唆する(Mullan等及びChartier-Harline等。ともに上記)。
Kang等(1987,Nature,325:733)は、大型前駆体タンパク質から生じるとし
て並びにその一部としてベータアミロイドタンパク質を記載する。この前駆体を
同定するために、公知のベータアミロイド配列から選定されたオリゴヌクレオチ
ドを用いてそのタンパク質をコードする全長相補的DNAクローンを単離し、シー
ケンシングした。予測された前駆体は695この残基を含有したが、これは一般に
“APP 695”(アミロイド前駆体タンパク質695)と呼ばれる。
APPタンパク質をコードする遺伝子を引き続きクローニングした結果、A4領
域が2つの隣接するエクソン上にコードされた(Lemaire et al.,1989,Nuclei
c Acids Res.,17:517)が、これはA4蓄積が択一的にスプライシングされたmR
NAの直接発現の結果である可能性を除外する。これは、A4蓄積がAPP内のペプ
チド領域に対してN及びC末端の部位でのAPPの異常タンパク質分解性分解に起
因しなければならないことを意味する。
APP 695はヒト脳中に見出されるAPPの最も多量にある形態であるが、しかし他
に3つの形態、即ちAPP 714,APP 751及びAPP 770が存在する(Tanzi et al.,1
988,Nature,351:528;Ponte et al
.,1988,Nature,331:525;及びKitaguchi et al.,1988,Nature,331:530)
。異長同形態がヒト第21染色体上に位置する単一APPからの別のスプライシング
から生じる(Goldgaber et al.,1987,Science,235:877;及びTanzi et al.,
1987,Science,235:880)。
APP 751及びAPP 770は56アミノ酸Kunitz阻害剤ドメインを含有し、これはウシ
膵臓トリプシン阻害剤と40%の相同を共有する。これらの形態のAPPはともにプ
ロテアーゼ阻害活性を有し(Kitaguchi et al.,1988,Nature,311:530;及びS
mith et al.,1990,Science,248:1126)、これらの形態の少なくとも1つがお
そらくは以前にプロテアーゼNexin 11として同定されたものである(Oltersdorf
et al.,1989,Nature,341:144;Van Nostrand et al.,1989,Nature,341:5
46)。
アミロイド前駆体タンパク質に関する生理学的役割は、未だ確証されていない
。それは、細胞表面受容体(Kang et al.,1987,Nature,325:733)、付着分子
(Schubert et al.,1989,Neuron,3:689)、成長又は栄養因子(Saitoh et al
.,1989,Cell,58:615:Araki et al.,1991,Biochem.Biophys.Res.Comm.,
181:265;及びMilward et al.,1992,Neuron,9:129)、創傷治癒の調節体(Va
n Nostrand et al.,1990,Science,248:745;及びSmith et al.,1990,Scien
ce,248:1126)であるか、又は細胞骨格系においてある役割を演じる(Refolo e
t al.,1991,J.Neuroscience,11:3888)と提唱されている。
多数の研究が行なわれてADにおける変更APP発現の役割が調べられたが、しか
し結果は相容れないものであった(例えば検討文献:Unterbeck et al.,1990,
Review of Biological Research in Aging,Wiley-Liss,Inc.,4:139参照)。
異形態のAPPの相対量の変化がアミロイド蓄積に依るものか否か
を調べるための研究も行なわれた。このような研究の結果は、同じく紛らわしい
ものであったが、しかしAPPを含有するKunitzドメインの相対発現レベルがADで
は上昇するという結論を支持した(Johnson et al.,1990,Science,248:854)
。したがって上昇APP 751を発現するトランスジェニック動物は皮質及び海馬ベ
ータアミロイド反応性沈着物を示すことが判明した(Quen et al.,1991,Natur
e,352:239)。
最新研究は、A4のN末端から全長APPのC末端に伸びるAPP断片(約100個の
アミノ酸から成るため、以後“C−100断片”と呼ぶ)も、in vitro(Dyrks et
al.,1988,EMBO J.,7:949)及びトランスフェクト化細胞(Wolf et al.,1990
,EMBO J.,9:2079;及びMaruyama et al.,1990,Nature,347;566)の両方で
の凝集が可能であることを示した。トランスフェクト化P19細胞におけるC−10
0断片の過剰発現は細胞毒性を引き起こすことが示された(Fuckuchi et al.,19
92,Biochem.Biophys.Res.Comm.,182:165)。
さらに、ベータアミロイド及びC末端領域をともに含有するC末端断片はヒト
脳中に存在することが示され(Estus et al.,1992,Science,255:726)、トラ
ンスフェクト化細胞株における研究はこれらの断片がエンドソーム−ライソソー
ム経路で産生され得ることを示唆する(Golde et al.,1992,Science,255:728
)。
全体として、上記の報告は、A4領域のN末端でのAPPの単一タンパク質分解
性切断がADに伴う病態生理学的症状を引き起こすに十分であることを示唆する。
一次細胞及び細胞株(ADトランスフェクト体を含む)の培養が、ベータアミロイ
ド(1〜42アミノ酸)と同じN末端を有しおそらく全長ベータアミロイドを包
含する3〜4kDaのペプチドを分泌することを最近の研究は示している(Haas et
al.,1992,Nature,349:322;及びShoji et al.,1992,Science,
258:126)。このようなペプチドはさらに、AD及び非AD患者の脳脊髄液(以後“C
SF”と記す)中に見出された(Scubert et al.,1992,Nature,359:325;及びS
hoji et al.,1992、同上)。
APPは、APP細胞外ドメインの分泌のために生理学的経路中のA4領域内の部位
でも切断される(Esch et al.,1990,Science,248:1122;及びWang et al.,1
991,J.Biol.Chem.,266:16960)。この経路はいくつかの細胞株で働き、必然
的にA4、即ち前駆体のアミロイド領域の破壊を引き起こす。このような経路は
ヒト脳でも働いているという証拠が得られている(Palmert et al.,1989,Bioc
hem.Biophys.Res.Comm.,165:182)。
APPの正常の非病理的プロセッシングに関与する酵素は、“セクレターゼ”と
呼ばれている。セクレターゼ作用に起因するC末端断片はC−100断片(上記)
より17アミノ酸だけ小さく、以後“生理学的C末端断片”と呼ぶ。
A4の正味の病理学的蓄積はAPP分解の病理学的及び生理学的経路の相対的活
性により制御されると仮定されている。
したがって、ADに苦しむ人々の脳中のベータアミロイドの蓄積を説明する下記
のようないくつかの可能性が存在する:
(1)アミロイド原性領域の破壊に伴うセクレターゼの活性又はレベルの不足
;
(2)病理学的経路のプロテアーゼに曝露されるようになり得るようなAPPの
細胞分類の変更;
(3)病理学的プロテアーゼのレベルの増大;
(4)そうでなければ産生されるのと同様に速くアミロイドを分解する分解酵
素のレベルの不足;又は
(5)APPアミノ酸配列の突然変異により引き起こされる病理学的タンパク質
分解性分解に対するAPPの感受性の増大。
他と比べて、細胞中のAPP分類の調節についてはほとんど知られていない。ク
ンパク質キナーゼC活性の変化による少なくとも一部のリン酸化の変化がAPP通
行の変化を引き起こし、最後にAPPプロセッシングの変化を引き起こすという仮
説が育ちつつある(Buxbaum et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6
003)。したがって、細胞リン酸化を変えることを意図した治療は、APPのC末端
断片のパターンの定性的及び定量的変化の両方を引き起こした。
アミロイド原性APPプロセッシングは最初はエンドソーム−ライソソーム事象
であると示唆された(Golde et al.,1992,Science,255:728;及びC.Haas et
al.,1992,Nature,357:500)が、しかしベータアミロイド生成における分泌
経路内又は原形質膜でのプロテアーゼの参加と一致して、択一的にプロセッシン
グされた形態の分泌APP(Suebert et al.,1993,Nature,361:260)と一緒に培
養細胞によりベータアミロイドが放出されるという最新の証拠がある(C.Haas
et al.,1992,Nature,359:322;及びShoji et al.,1992,Science,258:126
)。近年、スウェーデン型のFADに関連したAPP 695を発現するトランスフェクト
化細胞株が野生型APPでトランスフェクトされた細胞より6〜8倍速くベータア
ミロイド様断片を放出することが示された(Citron et al.,1992,Nature,360
:672;並びにCai et al.,1993,Science,259:514;及び1992,Neuroscience L
ett.,144:42)が、しかしロンドン(V〜I)突然変異の効果についての同様の
研究はアミロイド放出に及ぼす作用を示さなかった(Cai等。同上参照)。いく
つかの場合において、培養細胞によるアミロイド放出は、APP前駆体のバリン594
(参照1によるナンバリング)で始まるN末端を有する異常形態のベータアミロ
イドを含有する(C.Haas et al.,1992,Nature,359:322;Busciglio et al.
,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90;2092)が、この意味
は不明である。阻害剤の作用は、これらの系におけるベータアミロイド産生にお
ける酸性細胞区画の参加を圧倒的に支持する(Shoji et al.,1992,Science,2
58:126;Busciglio et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90:2092;及びHaas e
t al.,1993,J.Biol.Chem.,268:3021)が、これはある種のシステイン又は
セリンの関与の欠如を示唆する(Shoji et al.,1992,Science,258:126;Busc
iglio et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90:2092;及びHaas et al.,1993
,J.Biol.Chem.,268:3021)。
近年、Nitsch等(1992,Science,258:304)は、ある種のアセチルコリン受容
体型による細胞株のトランスフェクションとその後の受容体活性化が、タンパク
質キナーゼ活性の変化により生じると結論される工程におけるAPPプロセッシン
グ及び分泌の増大を引き起こすことを示した。リン酸化の変化に関する役割に関
係がある上に、この後者の研究はADに特徴的なコリン作動性神経機能におけるプ
ラーク病態と確立された心の動揺との間の連関を提示する。
上記の観察にもかかわらず、細胞分類のあらゆる根元的変化に対する平衡を元
に戻し得る選択的及び特異的治療薬の設計を可能にするにはAPP分類についての
知識は不十分である。
ベータアミロイドは(単数又は複数の)プロテアーゼの直接作用により生成さ
れねばならない。C−100又はベータアミロイド生成に関与するいわゆる“病的
”脳プロテアーゼ(単数又は複数)の同定は、アミロイド蓄積を遮断するよう意
図された治療用プロテアーゼ阻害剤を開発するための努力における必須段階であ
る。このような酵素の同定には、脳抽出物中に存在する他の脳タンパク質分解酵
素の存在下でプロテアーゼの活性を特異的に測定させるこのようなプロテアーゼ
の活性に対する特異的検定の開発を要する。
次いで、このような検定を用いてプロテアーゼ精製中にプロテア
ーゼを検出する。最後に、本検定を用いて、鉛治療化合物に対する薬学的スクリ
ーニングに必要とされるような酵素の強力な阻害剤の作用を測定することができ
る。
いくつかの研究がセクレターゼ及びうわさの病的プロテアーゼの両方の精製及
び特性表示を試みた。初期の研究は、APP内の予期される切断部位を模倣しただ
けの合成ペプチド基質を特徴とする検定を用いた。このような検定は精製プロテ
アーゼのin vitro活性を測定するには有用であるが、それらはプロテアーゼ精製
をモニタリングするのに必要とされるようなプロテアーゼの混合物中でのあるプ
ロテアーゼの検出を可能にするのに十分な特異性をめったに有していない。した
がって、これらのペプチダーゼ検定は必要なプロテアーゼ特異性を提供できず、
このように定量化されたペプチダーゼ活性を用いても、ヒト脳組織から候補APP
プロセッシング酵素活性の精製をうまく追跡できなかった。本開示に先立って、
いずれの工程に関しても信用できる候補プロテアーゼ(単数又は複数)は出現し
ていないし、種々の研究の結果は相容れないものであった。
例えば、多数の有用な研究が、病的プロテアーゼは:ラインゾーム起源である
(Cataldo et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3861;及びHaas et
al.,1992,Nature,357:500);カルシウム依存性カテプシンG様セリンプロ
テアーゼ又は金属依存性システインプロテアーゼ(Razzaboni et al.,1992,Br
ain Res.,589:207;及びAbrahams et al.,1991,Ao.N.Y.Acad.Sci.,640:1
61);カルパインI(Siman et al.,1990,J.Neuroscience,10:2400);多触
媒性プロテアーゼ(Ishiura et al.,1989,FEBS.Lett.,257:388);セリンプ
ロテアーゼ(Nelson et al.,1990,J.Biol.Chem.,265:3836);トロンビン
(Igarashi et al.,1992,Biochem.Biophys.Res.Comm.,185:1000);ある
いは亜鉛金属−ペプチ
ダーゼ(WIPO出願WO92/07068(Athena Neurosciences,Inc.))であると提案して
いる。
同様の不一致はセクレターゼの同定に際しても生じており、その主張を以下に
示す:金属−ペプチダーゼ(McDcrmott et al.,1991,Biochem.Biophys.Res
.Comm.,179:1148);アセチルコリネラーゼ関連プロテアーゼ(Small et al.
,1991,Biochemistry,30:10795);カテプシンB(Tagawa et al.,Biochem.
Biophys.Res.Comm.,177:377);又は広範な亜部位特異性を有する原形質膜関
連プロテアーゼ(Sisodia,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6075;及び
Maruyama et al.,1991,Biochem.Biophys.Res.Comm.,179:1670)。
APPプロセッシング酵素の性質を同定するための過去及び現在の尽力が一般に
実を結ばないのは、使用した検定の特異性が不十分であったこと、並びに脳組織
に関連したプロテアーゼの複雑な異種性が原因であった。
本発明の要約
本開示は、組換え体APPのタンパク質分解性分解を基礎にした特異的検定を反
応生成物の免疫化学的検出と組み合わせて用いてAPPプロセッシング酵素のいく
つかを同定する方法を記載する。本発明の検定は、APPからのベータアミロイド
の生成にある役割を演じるための正確な特異性及び適切な局在性を有するヒト脳
プロテアーゼを同定する。
ここに開示した検定の書式は、同定プロテアーゼとともに、大量のサンプルを
合理的に処理し、検出の免疫化学的方法により良好な感受性を生じる。さらに本
検定の簡便性により、実験室の技術者が容易に常用し得るし、一貫した再現可能
な結果が生じ得る。これら
の並びにその他の改良を以下に記す。
本発明の一目的は、AD患者を治療するために用い得る薬剤を見出すための方法
を提供することである。前述のように、39〜42アミノ酸ペプチドベータアミロイ
ドを産生するためのAPPのタンパク質分解性分解は、アミロイド斑形成の病態生
理学的工程の第一段階である。証拠のいくつかのラインは、AD脳中に見出される
神経変性特徴におけるベータアミロイド及びアミロイド斑の原因的役割を指し示
す。これらを以下に示す:
(i)変性中のニューロンを伴う斑物質及び異栄養性神経突起の同時局在化(
Price et al.,1989,BioEssays,10:69で検討されている);
(ii)ベータアミロイドが培養中のニューロンに対して有毒であり得る証拠(
Yankner et al.,1990,Science,250:270);
(iii)ベータアミロイドがニューロン変性に関連し、ある種の動物モデルで
試験した場合に記憶を変えたという証拠(Flood et al.,1991,PNAS,88:3363
;及びKowall et al.,1991,PNAS,88:7247);
(iv)APPにおける点突然変異を有するある種の形態の遺伝性ADの同時分離(C
oate et al.,1991,Nature,349:704;Yoshioka et al.,1991,Biochem.Biop
hys.Res.Comm.,178:1141;Chartier-Harlin et al.,1991,Nature,353:844
;Murrell et al.,1991,Science,254:97;及びMullan et al.,1992,Nature
Genetics,1:345)。
したがって、APPのベータアミロイドへのタンパク質分解性変換は、ADの病因
における必須段階であり、例えば治療介在のための重要な標的であると思われる
。関連したプロテアーゼ活性の同定、並びに適切なin vitroすに検定の開発は、
したがってAD患者における
アミロイド斑形成を遮断するための治療として用い得る治療用プロテアーゼ阻害
剤の開発に必ず先要である。
本発明は、タンパク質分解性ベータアミロイド生成の阻害剤を発明するのに用
い得る2つの開発に関する:
(1)ホロAPP基質、及びAPPを分解する高度精製プロテアーゼ又はAPPを分解
し得る未同定プロテアーゼを含有する粗製生物抽出物のいずれかを包含するin v
itro検定;並びに
(2)上記(1)に記載のin vitro検定系とともに用いた場合にアミロイド性
又は前アミロイド性APP C末端断片を精製し得るヒト脳からの特異的プロテアー
ゼの同定及び精製。
本検定は、C末端APP断片を産生するためのin vitro APP分解活性の検出を可
能にする。粗製生物抽出物とともに用いた場合、本検定を用いて検出活性に関与
するプロテアーゼの精製をモニタリングし得るし、又はそのプロテアーゼを特性
表示し得る。
さらに、精製プロテアーゼ又は未同定APP分解酵素活性を含有する粗製生物抽
出物とともに用いた場合、本検定を用いて検定混合物中で同時インキュベートさ
れる化学又は生物化合物によるAPPプロセッシング活性の阻害を測定しうる。そ
れにより同定される阻害化合物は、AD患者に特徴的なin vivoアミロイド斑形成
の治療用阻害剤としての使用法を有する。
上記(2)により同定されるプロテアーゼとしては、アスパラギン酸プロテア
ーゼ、カテプシンD、及びカテプシンGとは異なり、N−[トシル−L−フェニ
ルアラニン−クロロメチルケトン(“TPCK”)及びアルファー2 アンチプラス
ミン、並びにジャガイモからのキモトリプシン阻害剤により阻害されるキモトリ
プシン様セリンプロテアーゼが挙げられる。カテプシンDの同定は特に有意であ
る。カテプシンDは、それぞれ10.0kDa及び5.6kDaの大きさのC−100及
びベータアミロイド様断片を生成し得ることを我々は明示する。
この発見により、上記(1)に記載のin vitro検定又は本発明に記載されてい
るようなより簡単な高スルーブットペプチダーゼ検定を用いてその活性の阻害剤
を探究するためにあらゆる精製又は単離カテプシンDが使用できる。
さらに、カテプシンDの特異性並びに特異的アスパラギン酸プロテアーゼ阻害
剤の設計については多くが公知であるため、アミロイド原性プロテアーゼとして
のカテプシンDの同定は、確立された方法を用いた特異的カテプシンD阻害剤の
開発並びに確立されたカテプシンD阻害剤の利用をともに可能にする。
さらに、カテプシンDは意外にも、Glu(593)−Val(594)(ナンバリングは
Kang等(上記)に依る)間のペプチド結合でAPPを加水分解することを下記に示
す。カテプシンDの好ましい特異性は、普通は、疎水性残基間に認められる。こ
の情報は、カテプシンD阻害剤の設計にさらに用い得る。
上記のように、それによって同定される阻害化合物は、AD患者に特徴的なin v
ivoアミロイド斑形成の治療用阻害剤としての使用法を有する。
本発明の使用により同定されたAPP分解酵素を精製し、使用して:
(i)プロテアーゼの同時局在化をAD脳病態とさらに相関させるのに必要な免
疫化学試薬を開発し;そして
(ii)対応するプロテアーゼを単離し得る。次にクローン化cDNAを用いてプロ
テアーゼ過剰発現の作用を査定し得るADのためのトランスジェニック動物モデル
を構築する。
本発明の使用により同定されるAPP分解酵素阻害剤はさらに、例えばアフィニ
ティークロマトグラフィーによるAPP分解酵素の精製
における配位子として有用である。カラムは一般に、必要な場合には炭化水素ス
ペーサーアームを介して間接的に、酵素阻害剤が取り付けられた不活性マトリッ
クス、例えばアガロースで包む。次に酵素を含有する組成物をカラムに適用し、
他のすべてのタンパク質が通過し、廃棄される間に、阻害剤により止められる。
次に酵素の特性を変え、もはや阻害剤と結合できないpHでの変形緩衝剤を用いて
溶離することにより、又は阻害剤を置換する競争的対配位子の使用により、酵素
をカラムから遊離させる。どちらの場合も、酵素はカラムを通過して収集され、
ここに至っては他のタンパク質は存在しない。さらに詳しくは、例えばT.Palme
r,Understanding Enzymes,1991,Ellis Horwood,New York,3rd Edition(こ
の記載内容は、参照により本明細書中に含めるものとする)を参照して頂きたい
。
合成ペプチド基質を組み込んだ検定は高度精製プロテアーゼ製剤のin vitro酵
素学的研究に有用であるが、しかし一般的に過多のプロテアーゼを含有する粗製
生物抽出物中の所望のプロテアーゼ活性の選択的検出を可能にするには不十分な
特異性を有する。例えば、脳組織は広範なそして種々のペプチドプロセッシング
及び分解酵素が豊富であるが、このことは、合成ペプチド基質を用いて特異的脳
APP分解プロテアーゼを単離する努力がなぜ首尾よく行かなかったかを説明し得
る(上記背景の項を参照)。
したがって下記の実施例3では、合成ペプチド検定により、特異化検定条件下
でC末端断片を産生するためのAPPを分解できないいくつかのペプチダーゼの同
定がなされ、APP分解プロテアーゼのパターンはいかなる点でも脳ペプチダーゼ
の対応するパターンに類似しないことが示される。
この問題のさらに限定的なアプローチは、ホロAPPの基質として
の使用、並びにプロテアーゼ含有分画を用いたインキュベーション後のその特異
的分解を査定する方法である。このために、本発明は、脳プロテアーゼ分画によ
る組換え体APPの酵素分解がAPPのC末端領域に対する抗体を用いたイムノプロッ
トによりモニタリングされるような方法を記載する。
我々の検定手順は、全長ベータアミロイドペプチドを含むのに十分なサイズの
APPからのC末端断片の生成に焦点を合わせている(内部タンパク質分解を要す
る工程。A4領域に対するN末端)。
ヒト脳組織(非AD対照又はAD)を均質化し、次いで慣用的超遠心分離を用いて
可溶性分画(以後“S”)、1,500g後ペレット(以後“P−2”)及びミクロ
ソーム分画(以後“M”)に亜分別する。膜性M及びP−2分画をTriton X-100
製剤で可溶化する。その結果生じるM及びP−2、並びにS分画からの可溶性分
画を次に別々にMono−Q強陰イオン交換カラム上でクロマトグラフィー処理する
と、異なる脳プロテアーゼが分離する。
ベータアミロイドのN末端周囲のアミノ酸配列をまねた合成ペプチドを用いて
、M、可溶性及びP−2分画からの精製による個々のモノ−Q分画のペプチダー
ゼ活性を査定する。ペプチダーゼ活性の別々のピークの回収に基づいてカラム分
画の連続プールを作る。
ペプチダーゼ活性のプールを用いて、トランスフェクト化CHO細胞株から精製
された高度精製組換え体APPのタンパク質分解性分解の検出のための検定条件を
確立する。APP C末端ドメイン又はベータアミロイド領域に向けられる抗体を用
いてC末端APP断片を置くイムノプロット検定を開発する。本検定を用いて、全
長ベータアミロイドを潜在的に含有するのに十分大きいサイズのAPP C末端断片
を生成することができる6つの潜在的に異なるタンパク質分解活性を同定する。
モノ−Qプール間のAPP分解活性の回収が段階2で確
立されたペプチダーゼ活性プロフィールとよく相関することは見出されなかった
。阻害剤研究により、APP分解活性にはセリン及びアスパラギン酸プロテアーゼ
活性の両方が含まれることが明らかになった。
酵素精製をモニタリングするためにペプチダーゼ検定を用いることは断念され
ている。組換え体APPのより大きな供給は、バキュロウイルス特定昆虫細胞系中
での発現により得られ、タンパク質精製中のAPP分解活性をモニタリングするた
めの主要な方法としてのAPP分解検定の使用を可能にする。主なアスパラギン酸
プロテアーゼ活性は、P−2分画のモノ−Q精製からの分画中で同定される。
さらなる精製及び特性表示実験は、酵素がカテプシンDである個とを立証する
。カテプシンDは、5.6kDaのベータアミロイド様断片を生成するホロAPPを加水
分解することが示されている。
アプロチニンセファロースアフィニティークロマトグラフィーを用いて、上記
で同定されたアプロチニン感受性APP分解活性を単離しようとした。11,14及び1
8kDaの特異的C末端断片を生成するためにAPPを分解し得るキモトリプシン様セ
リンプロテアーゼ活性を一部精製するが、これは免疫化学的手段により全長ベー
タアミロイドを含有することが示された。
この手順により、APPのアミロイド原性分解にある役割を演じる可能性が高い
いくつかの脳プロテアーゼ活性をわれわれは同定した。本明細書に記載した同定
又は非同定活性の各々を、APP分解検定とともに用いて、治療的価値を有する選
択的プロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。
本明細書中で用いる場合、“APP基質”という用語は、生物供給源からの単離
又は精製により得られるかあるいはAPP又はその類似体、及びタンパク質又はそ
の一部の消化により得られる断片、APPタ
ンパク質の一部をコードする遣伝子の発現によりエンドソーム−ライソソームれ
る断片、及びAPPの一部に対応するアミノ酸配列を有する合成ペプチドを含めた
あらゆるこのようなタンパク質の断片をコードするクローン化遣伝子の発現によ
り得られるか否かにかかわらず、全長APPを意味する。
本発明の検定のためのAPP基質は、種々の形態で試験試薬として提供される。A
PP 695に好ましくは由来するか、又はそのアミノ酸配列に少なくとも一部対応す
るけれども、他のAPP同型(上記)の誘導体又は類似体が、同様に本発明の方法
に用いるために意図される。APP 695は、Schubert等(1989,Proc.Natl.Acad
.Scj.USA,86:2066)が記載しているように、天然供給源から生化学的分離又
は精製により、あるいはタンパク質又はその機能性部分をコードする組換え体DN
Aクローンの発現(knops et al.,1991,J.Biol.Chem.,266:7285;及びBhasi
n et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:10307)により得られる。
APPタンパク質の断片は、関連するタンパク質分解試験サンプル活性(上記)
による認識及び切断に十分なアミノ酸の配列を包含する。生物物質からのAPPの
単離は、通常、クロマトグラフィー、特にアフィニティークロマトグラフィーの
ような慣用的技術による精製を包含する。精製APP又はその断片を用いてモノク
ローナル又はポリクローナル抗体を調製し、次いでこれを慣用的手法によるアフ
ィニティー精製に用い得る。その結果生じた精製APP物質をさらに処理し、例え
ば化学的又は酵素消化により断片化し得る。関連するタンパク質分解試験サンプ
ル活性(上記)に対する所望の感受性に関してスクリーニングすることにより、
有用な断片を同定する。
前述のように、APP基質は、APP又はその一部をコードする組換え体DNAクロー
ンの発現により調製し得る。クローン化APP遣伝子
は、それ自体天然でも合成でもよく、天然遣伝子は、公知のアミノ酸配列を基礎
にした変性プローブを用いてcDNA又はゲノムライブラリーから得られる(Kang e
t al.,1987,Nature,325:733)。適切な組換え体DNAを得るための他の方法、
並びにクローン化遣伝子を発現するための方法は、当業者には明らかである。
試験サンプルの存在下でのAPP基質のタンパク質分解性切断の検出には、種々
の便利な方法が適用できる。目下のより好ましい方法のいくつかを以下に示すが
、しかしながらこれについての本発明の特徴から逸脱しない限りこの工程に多数
の他の方法を用い得ることは当業者には認識される。概して、このためには、AP
P基質のタンパク質分解性切断の発生を検出できるあらゆる方法を用い得る。こ
のことは切断が単一産生種、例えば光学的反応性物質、例えば着色又は蛍光染料
を生じるようにAPP基質の適切な設計によりもたらされる。
別の主なアプローチとしては、イムノアッセイによるといったような、1つ又
はそれ以上の切断生成物の感受性検出が含まれる。現在、このような切断生成物
は好ましくはAPP基質のC末端断片デある;しかしながら、サンプルとのインキ
ュベーション時に出現するあらゆる断片が検出の対象である。
病的タンパク質分解活性の特徴である1つ又はそれ以上の切断生成物の検出は
、多数の方法により達成し得る。下記の実施例でさらに実証されるこのような方
法の1つは、ウエスターンブロットとして一般に公知の手順を包含する。典型的
には、試験サンプルと一緒にAPPをインキュベーション後に、ゲル電気泳動を実
施して成分を分離して反応混合物を生じる。次に分離タンパク質成分をニトロセ
ルロース膜のような固体マトリックスに移す。
APP分解に特徴的な断片に特異的な抗体を次に膜に固定された成
分と反応させ、二次酵素標識化抗体抱合体の付加により検出する。その結果生じ
た結合抱合体の位置選定を酵素標識のための色原性基質で発現させる。
一般に有用な試験系を受けることが可能な種々のイムノアッセイ書式は、APP
断片の検出に適用できる。典型的には、APP基質を試験サンプルと一緒にインキ
ュベートし、その結果生じた無傷APPを固定化させ(例えば固相上に捕獲するこ
とにより)、あるいは試験サンプルを固定化形態のAPP基質と一緒にインキュベ
ートする。次に固定化APP基質をAPP基質の一部に対する抗体試薬と反応させるこ
とによりタンパク質分解性切断を検出して、APP基質から切断し、又は切断部位
を限定する。
抗体試薬は、全抗体又はFab又はFab′のような抗原結合部位を含む抗体断片を
包含し得るし、モノクローナル型であっても又はポリクローナル型であってもよ
い。固定化相と結合した抗体試薬の検出は、特徴的タンパク質分解性切断の非存
在示す。逆に、固定化相と結合している抗体がないことは、APP切断を示す。抗
体試薬の結合の検出は、一般に標識化形態のこのような抗体試薬の使用、あるい
は二次又は抗−抗体、即ち標識された抗体の使用を伴う。
APPの捕獲又は固定化は、多数の方法で達成し得る。抗体は、切断可能な断片
上にないAPPのエピトープに特異的に産生される。このような抗体を固定化し、
使用して無傷面APPを捕獲又は固定化し得る。あるいは、配位子又はハプテンをA
PPに共有的に付着させて、対応する固定化受容体又は抗体を用いてAPPを捕獲又
は固定化し得る。このために有用な典型的配位子:受容体対は、ビオチン:アビ
ジンである。このために有用なハプテンの例は、フルオレセイン及びジギトキシ
ゲニンである。
APP基質が固定化又は捕獲される固相は、微小滴定プレートウエ
ル、試験管、ストリップ、ビーズ、粒子等を含めた種々の物質から成る。特に有
用な固相は、磁性又は常磁性粒子である。このような粒子を誘導化して、簡単な
化学反応により種々の化合物と結合し得る化学的に活性な基を含有させることが
できる。粒子を入れた容器に磁石を近づけて粒子を懸濁液から取り除く。かくし
てやっかいな遠心分離又は濾過に依らずに粒子を繰り返し洗浄して、検定手順を
十分に自動化するための基礎を提供する。
一次又は二次抗体試薬のための標識は、当業界で十分公知のものから選択し得
る。このような標識のいくつかは、蛍光又は化学発光性標識、放射性同位元素で
あり、そしてより好ましくはこのための酵素はアルカリ性ホスファターゼ、ペル
オキシダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼである。これらの酵素は種々の条件下で
安定であり、高触媒回転率を有し、簡単な色原性基質を用いて検出し得る。
APP基質のタンパク質分解性切断は、クロマトグラフィー法によっても検出さ
れ、APP断片が分離され、次いで検出される。高圧液体クロマトグラフィー(HPL
C)はこの点で特に有用である。この方法を用いるに際しては、蛍光標識したAPP
基質を調製する。試験サンプルとともにインキュベーション後、反応混合物をク
ロマトグラフィーカラムにかけて、蛍光性断片対無傷APPの移動の示差速度を観
察する。
本発明はさらにAD罹患患者を治療するための方法であって、このような患者に
単独の又は非毒性不活性の製薬上許容可能な賦形剤との混和物中のアスパラギン
酸プロテアーゼのそのために有効な量の阻害剤を投与することを包含する方法に
関する。
本発明はさらに、非毒性不活性の製薬上許容可能な賦形剤との混和物中のアス
パラギン酸プロテアーゼのこのような阻害剤を含有する製剤処方物に関する。
本発明はさらに、用量単位でのこのような製剤処方物を包含する。これは、処
方物が個別パーツ、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル、カプレット、ピル、坐薬及
びアンプルの形態で存在し、その阻害剤含量は分画又は多数回に分けた個々の投
与量に対応することを意味する。用量単位は、例えば1,2,3又は4回分に分
けた量、あるいは個々の用量の1/2、1/3又は1/4を含有し得る。個別用
量は、好ましくは1回の投与で与えられる、そして通常は1日用量の全部、1/
2、1/3又は1/4に対応する活性化合物の量を含有する。
非毒性、不活性の製薬上許容可能な賦形剤により、固体、半固体又は液体希釈
剤、充填剤及び全タイプの処方物補助剤が考えられる。
言及し得る好ましい製剤処方物は、錠剤、糖衣錠、カプセル、カプレット、ピ
ル、顆粒、坐薬、溶液、懸濁液及び乳濁液、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、
ローション、散粉及びスプレーである。錠剤、糖衣錠、カプセル、カプレット、
ピル及び顆粒は、例えば(a)充填剤及び増量剤、例えばデンプン、ラクトース
、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸、(b)結合剤、例えばカ
ルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン及びポリビニルピロリドン
、(c)湿潤剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシ
ウム及び炭酸ナトリウム、(e)溶液抑制剤、例えばパラフィン、(f)吸収促
進剤、例えば第四アンモニウム化合物、(g)浸潤剤、例えばセチルアルコール
及びグリセロールモノステアレート、(h)吸収剤、例えばカオリン及びベント
ナイト、(i)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マ
グネシウム及び固体ポリエチレングリコール、あるいは上記(a)〜(i)に列
挙した物質の混合物のような通例の賦形
剤に加えて阻害剤を含有し得る。
錠剤、糖衣錠、カプセル、カプレット、ピル及び顆粒は、任意に乳白剤を含有
する通例のコーティング及びシェルで提供し得るし、それらが阻害剤のみを又は
好ましくは腸管のある部分に、任意に遅延方式で放出し得るような組成物であっ
てもよい。用い得る包埋組成物の例は、高分子物質及びワックスである。
阻害剤はさらに微小カプセル封入体形態で、適切な場合には1つ又はそれ以上
の上記賦形剤とともに存在し得る。
坐薬は、阻害剤の他に、通例の水溶性又は水不溶性賦形剤、例えばポリエチレ
ングリコール、脂肪、例えばカカオ脂肪及び高級エステル(例えばC10脂肪酸を
有するC14−アルコール)、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、阻害剤の他に、通例の賦形剤、例えば
動物性及び植物性脂肪、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、
セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ
酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。
散粉及びスプレーは、阻害剤の他に、通例の賦形剤、例えばラクトース、タル
ク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又は
これらの物質の混合物を含有し得る。スプレーはさらに通例の推進剤、例えばク
ロロフルオロカーボンを含有し得る。
溶液及び乳濁液は、阻害剤の他に、通例の賦形剤、例えば溶剤、可溶化剤及び
乳化剤、例えば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルボ
ネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロ
ピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、
特に綿実油、
落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロー
ル、グリセロールホルマル、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレン
グリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、又はこれらの物質の混合物を含
有し得る。
非経口投与のために、溶液及び乳濁液は血液と等張の滅菌形態であってもよい
。
懸濁液は、阻害剤の他に、通例の賦形剤、例えば液体希釈剤、例えば水、エチ
ルアルコール又はプロピレングリコール、及び懸濁剤、例えばエトキシル化イソ
ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステ
ル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及
びトラガカントゴム、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。
上記の処方形態は、着色剤、防腐剤、並びに香り−及び風味改良添加剤、例え
ばペパーミント油及びユーカリ油、並びに甘味剤、例えばサッカリン又はアスパ
ルタムを含有し得る。
阻害剤は総混合物の約0.1〜99.5重量%、好ましくは約0.5〜95重量%の濃度で
上記の製剤処方物中に存在する必要がある。
上記の製剤処方物は多数の阻害剤を含有し得るが、この場合、上記製剤処方物
中の阻害剤の総量は、総混合物の約0.1〜99.5重量%、好ましくは約0.5〜95重量
%である。本発明の処方物は、本発明の阻害剤に加えて他の活性成分を含有し得
る。
上記の製剤処方物は、公知の方法により、例えば単数又は複数の活性化合物を
単数又は複数の賦形剤と混合することにより、通例の方法で調製し得る。
上記の処方物は、経口的に、経直腸的に、経頬的に、非経口的に(静脈内、筋
肉内又は皮下に)、槽内に、膣内に、腹腔内に又は局所的に(散粉、軟膏又は滴
剤)投与し得る。適切な処方物は、注射
液、経口治療様の溶液及び懸濁液、ゲル、ポアーオン処方物、乳濁液、軟膏又は
滴剤である。眼科用及び皮膚科用処方物、銀塩及び他の塩、耳用滴剤、眼用軟膏
、粉末又は溶液を局所治療に用い得る。さらに、ゲル、粉末、散粉、錠剤、持続
性放出錠剤、プレミックス、濃縮物、顆粒、ペレット、カプセル、カプレット、
エアゾール、スプレー及び吸入物を用いることができる。阻害剤はさらに、他の
キャリヤー物質、例えばプラスチック(例えば局所治療用のプラスチックの鎖)
、コラーゲン又は骨セメント中に組み込み得る。
作用部位は脳であるため、阻害剤は血管脳関門を通過しなければならない。こ
れには、いくつかの場合には、例えば親液性キャリヤーとの結合により、又は親
液性置換基、例えば炭化水素、例えば長鎖アルキル基、アルケニル基、例えばビ
ニル等の導入により、阻害剤の親液性が増大されることが必要である。親液性を
増大するためのこのような修飾は、慣用的であって、当業者の技術の範囲内であ
る。例えば、R.B.Silverman,“The Organic Chemistry of Drug Design and D
rug Action”,1992,Academic Press,San Diego(この記載内容はすべて参照
により本明細書中に含めるものとする)の特に361〜364ページを参照して頂きた
い。親液性増大を達成するためのあらゆる慣用的方法が意図される。適切な親液
性キャリヤーの例としては、N.Bodor等が創案し、Silverman(同上)が362ペー
ジで考察している可逆的酸化還元剤供給系がある。N.Bodor et al.,1983,Pha
rmacol.Ther.,19:337;及びN.Bodor,1987,Ann.N.Y.Acad.Sci.,507:289
(これらの記載内容はすべて参照により本明細書中に含めるものとする)も参照
のこと。
概して、24時間毎に体重1kg当たり約0.5〜500mg/kg、好ましくは5〜100mg
/kgの総量で、適切な場合には何回かに分けて投与する形態で、阻害剤を投与し
て、所望の結果を達成するのが有益で
ある。個々の用量は、好ましくは約1〜約80mg/kg、特に3〜30mg/kgの量で阻
害剤を含有する。しかしながら、言及した用量から逸脱する、特に疾病の性質及
び重症度の、処方物の性質の、医薬剤の投与の、並びに投与実施の期間又は間隔
の関数としてそうする必要があるかもしれない。したがって、ある場合には、上
記量以下の阻害剤で処理に十分であるかも知れないが、他の場合には専門的知識
に基づいてあらゆる専門家が上記量の阻害剤を容易に確定し得る。定義
本明細書中で用いるアミノ酸の3文字又は1文字での略語を下記に示す:
図面の簡単な説明
図1a〜1fは、ADヒト皮質亜分画と比較した場合の対照のペプチダーゼ活性
の二次元等値線ブロットを示す。
P−2,S及びM分画のイオン交換(モノ−Q)分離により、実施例1にした
がって亜分画を調製した。Mono−Q分画によるN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-
Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)の酵素的
切断を実施例3に記載されているように実施した。各ブロットは、同一インキュ
ベーション条件下で各モノ−Q分画(縦座標)のインキュベーションにより得ら
れる各蛍光性物質(横座標)の相対量を示す。物質の量は、等値線により垂直に
示す。等値線が多い程、特定の物質の量も多いことを示す。対照S(a)、AD
S(b)、対照M(c)、AD M(d)、対照P−2(e)、AD P−2(f)
からのモノ−Q分画に分析を施した。3つのADプロットの右手縦座標上のローマ
数字は、実施例3に記載のプール領域の位置を示し、次に実施例8にしたがって
これを検定すると、有意APP分解活性を含有することが判明した。
図2a〜2fは、AD皮質に由来するM,S、又はP−2分画のイオン交換分離
からの選択モノ−Qに関連したAPP 695分解活性のイムノブロット分析を示す。
プールは、実施例3に記載されているようなペプチダーゼ活性のそれらの含量
を基礎にして作った。イムノブロット検定は、実施例8に記載されているように
実施した。以下のプールに関する代表的
検定を示す:
図2a: P−2プールVに関連した活性: APPは、レーン2〜6の各々に
認められた。PMTI 73からのC−100(レーン1)、無P2−Vブランク(レーン
2)、P2−V(レーン3)、P2−V+EDTA(レーン4)、P2−V+メタノ
ール(レーン5)、及びP2−V+メタノールに溶解したペプスタチンA(レー
ン6)。
図2b: MプールIIIに関連した活性:APPは、レーン2〜7に認められた。
PMTI 73からのC−100(レーン1)、M−III+シスタチンC(レーン2)、M
−III+アプロチニン(レーン3)、M−III+カプトプリル(レーン4)、M−
III+EGTA(レーン5)、M−III+N−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-As
p-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)(レーン6)、阻害
剤を伴わないM−III(レーン7)、及び予染分子量マーカー(レーン8)。
図2c: SプールIに関連した活性: APPは、レーン2〜6の各々に認め
られた。S−I+N−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-net-Asp-Ala-Glu-Phe-Ar
g-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)(レーン2)、S−I+EGTA(レーン
3)、S−I+カプトプリル(レーン4)、S−I+アプロチニン(レーン5)
、S−I+シスタチン(レーン6)、及びPMTI 73からのC−100(レーン7)。
レーン1は予染分子量マーカーを含有する。
図2d: AD P−2の分離からの個々のモノ−Q分画中で回収した活性:
P−2プールVIIが他所で観察される伝導領域に対応するモノ−Q分画38〜43を
個別にAPP分解活性に関して調べた。各分画に関しては、組換え体APP 695の非存
在下(−)又は存在下(+)の両方でインキュベーションを実施した。分画番号
は、図2上に記してある。使用したC−100基準は、PMTI 100からのものであ
った。Mrは分子サイズマーカーを示す。
図2e: PMTI 73又はPMTI 100により向けられるC−100生成物の移動位置の
比較:PMTI 73(レーン1及び3)及びPMTI 100(レーン2及び4)のタンパク
質生成物を分子マーカー(レーン5)と比較して示す。
図2f: 生成物形成の典型的時間経過:APP+M−IIIを、t=0時間(レー
ン1)、5時間(レーン2)、20.5時間(レーン3)、44.5時間(レーン4)及
び55時間(レーン5)に分析した。分子量マーカー(レーン6)、C−100 PMTI
73(レーン7)及びM−IIIを伴わないAPP(レーン8)を示す。
上記図2a〜2fの各々に関しては、移動は上から下までであった。2e〜2
d及び2fでは、上実線矢印はホロAPPの移動位置を示し、下実線矢印はC−100
の移動位置を示す。図2dでは、二重線矢印は酵素により生じたC−100断片の
推定上のオリゴマーの移動の位置を示す。全阻害剤の濃度は後述の表4に列挙す
る。
図3a及び3bは、ゲル濾過によりP−2 VIIプールをさらに精製した結果を
示す。
図3a: モノ−Q10/10クロマトグラフィーからのP2プールVII分画をプー
ルし、0.25mlに濃縮して、150mM NaClを含有する10mM Tris-HCl緩衝液pH7.5中で
平衡させた縦配列の2つのSuperose 6HR 10/30カラムに適用した。0.3ml/分の
流速で溶離を実施し、カラム溶離液を280nmでモニタリングした。分画(0.24ml
)を収集し、イムノブロットを用いてペプチダーゼ活性及びAPP分解検定を施し
た。矢印は、APP分解活性が回収されたクロマトグラムの領域の位置を示す。K
−M(黒丸)及びM−D(白丸)結合切断に関連したペプチダーゼ活性も示す。
クロマトグラフィーは22℃で実施した。
図3b: 公知の分子量を有する指示標準タンパク質に対するAPP分解活性の
移動を用いて、実施例8に列挙したAPP分解プロテアーゼのMr見掛けを算出した
。
図4は、ベータアミロイドペプチドに対して生じたネズミ類モノクローナル抗
体のペプチドエピトープマッピングを示す。微小滴定プレートを合成APP 695(5
97〜638)(ベータアミロイド1〜42)50ngで覆い、遮断して、次に予インキュ
ベート(室温で60分)した100μlのC286.8A(80ngのIgG)とともに指示濃
度の競争相手ペプチドの存在下又は非存在下でインキュベートした。ペプチド1
〜7はペプチド配列番号:1と呼ばれることに留意。室温で60分インキュベーシ
ョン後、プレートを洗浄し、結合抗体の量を、標準手法(Wunderlich et-al.,1
992,J.of Immumol.Methods,147:1)にしたがってホースラディッシュペルオ
キシダーゼ−結合ヤギ抗マウスポリクローナル抗体で展開することにより確定し
た。プレートに結合する抗体の%競合(%C)を、以下の等式を用いて450nmで
の吸光率データから算出した:
図5: ヒト脳P−2亜分画の精製からのイオン交換分画で回収されたAPP 69
5プロセッシング活性。123分画すべてをカラムから収集した。最初の32分画は負
荷及び洗浄相に対応した。塩勾配は分画33で開始した。分画3〜18(パネルa)
、21〜32(パネルb)、33〜38(パネルc)及び39〜44(パネルd)のスクリー
ンを示す。各分画に関して、APP 695基質の非存在下(−)及び存在下(+)で
インキュベーションを実施した。0又は24時間に関するAPP 695のインキュベー
ションは、適切な場合には位置を示す。インキュベーションは以下のように実施
した:バキュロ由来ホロAPP 695(80nm
)を、100mM Mes緩衝液pH6.5,0.008%(v/v)Triton X-100,160mn NaCl,6
.7mM Tris(APPストックから)を含有する総量15μl中の各カラム分画5μlと
ともにインキュベートした。SDS-PAGEサンプル緩衝液を付加することにより24時
間後に反応を終了させた。実施例8に記載されているように、実施例6のC末端
ポリクローナル抗血清を用いてイムノブロットを展開させた。矢印は生成断片の
位置を示す。分画45〜86も調べたが、しかし相対的に低い活性しか示さなかった
(したがって図示していない)。ピークA及びBは、主要活性の位置を示す。
図6は、ゲル濾過におけるP−2由来APP分解活性の精製結果を示す:カテプ
シンDの溶離との相関。パネル(a)Superose 6HRカラム上でのP−2ピークB
の精製に関する280nm溶離プロフィール。パネル(b)及び(c)実施例5に記
載されているようにして必然的に確定される溶離分画49〜60における対応するAP
P C末端プロセッシング活性。矢印は主要生成帯の位置を示す。パネル(d)及
び(e)カテプシンD(1/300希釈液)に対するウサギポリクローナル抗体を
用いた溶離分画のイムノブロット分析。矢印は免疫反応帯の移動位置を示す。ヒ
ト肝臓カテプシンDも比較のために分析した。
図7は、P−2亜分画から単離されたプロテアーゼ活性のプロテアーゼ阻害剤
特異性を示す。反応(32μl)はAPP付加により37℃で開始して、その後の初期
成分条件を達成した:ゲル濾過の15〜25kDa領域からのP−2酵素(2.54μg/m
l)分画(図6);96mM Mes緩衝液pH6.5中のAPP(168nM)。15μlの3xサンプ
ル緩衝液を付加することにより26時間後に反応を終了させて、APP C末端に対す
るウサギポリクローナル抗血清の1/1000希釈液を用いてイムノブロット分析し
た。以後の阻害剤付加の効果を示す;阻害剤無含有
(レーン7及び20)、1mM EDTA(レーン5);エタノール中の400μM PMSF(
レーン9);エタノール単独(レーン11);100μME−64(レーン13);10μ
g/mlアプロチニン(レーン22);DMSO中の100μMペプタチンA(レーン26)
;DMSOのみ(レーン24)。0時間(レーン2及び30)及び26時間(レーン3及び
28)のAPPインキュベーションの効果も示す。レーン4,8,12,19,23及び27
はC−100標準を含有した。予染分子量マーカーはレーン1及び29に存在する。1
8及び28kDaのC末端生成物断片の位置を矢印で示す。
図8は、APP C末端ドメインに対する抗体を用いてモニタリングしたカテプシ
ンD触媒APP切断の時間経過を示す。パネル(a)は、86μMペプスタチンAの
非存在下(レーン10〜14)又は存在下(レーン4〜8)でのカテプシンDによる
APPタンパク質分解の時間経過を示す。APPは単独でも(レーン1〜3)インキュ
ベーションした。数値は反応開始後の時間(時間)を示す。反応は、APPを付加
することにより37℃で開始し、以下の初期成分濃度を達成した:MeS緩衝液pH6.5
中のAPP(82nM)、カテプシンD(9.2μg/ml)、ペプスタチンを含有しないサ
ンプルには、同量の溶媒(1.3%v/vメタノール)を入れた。t=0,43,84
,140及び215分で、アリコート(15μl)を除去して7.5μlのSDS-PAGEサンプ
ル緩衝液と混合し、APP C末端ドメインに対するウサギ抗血清を用いてイムノブ
ロット分析した。18及び28kDaの反応生成物の位置を矢印で示す。
図9は、P−2由来酵素又はカテプシンDによるAPP C末端プロセッシングのp
H及びイオン強度依存性を示す。バネル(a)は、カテプシンD及びP−2酵素
で観察されたpH依存性を示す(ピークB、図5、ゲル濾過クロマトグラフィー後
、図6)。パネル(b)は
、pH6.5での両酵素に関するイオン強度依存性を示す。反応は、酵素付加により3
7℃で開始し、以下の初期成分濃度を達成した:カテプシンD(9.2μg/ml)又
は図6からのP−2酵素(11.7μg/ml)、酢酸ナトリウム、MeS及びTris-HCl
の各々中に100mM、及び精製APP(79nM)。t=0及び3時間で、アリコート(15
μl)を除去して7.5μlの3xサンプル緩衝液と混合し、実施例8にしたがっ
てC末端ポリクローナル抗血清を用いてイムノブロット分析した。28,18及び14
kDaの反応生成物の位置を矢印で示す。
図10は、Superose 6HR上でさらに精製後のカテプシンD及びP−2酵素(ピー
クB、図5)によるN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-
Arg-NH2(配列番号:7)の切断を示す。反応を酵素/阻害剤付加により37℃で
開始し、それにより以下のt=0成分濃度を達成した:酢酸塩、MeS及びTris pH
5.0の各々中に130mMを包含するカクテル緩衝液中にカテプシンD(2.8μg/ml
)又は図6からのP−2酵素(17.5μg/ml)、N−ダンシル−ペプチド(58μ
M)、カプトプリル(0.3mM)。サンプルはペプスタチンA(3%v/v最終メ
タノール中に213μM)又は最終的に等濃度のメタノールのみを含有した。0,
2,4,8及び24時間で、12%(v/v)TFA(10μl)を付加して反応を終了
させて、実施例2及び3にしたがってHPLC分析を施した。以下のものに関する代
表的痕跡を示す:P−2酵素、t=0時間(パネルA);P−2酵素、t=24時
間(パネルB);P−2酵素+ペプスタチンA、t=24時間(パネルC);カテ
プシンD、t=0時間(パネルD);カテプシンD、t=24時間(パネルE);
及びカテプシンD+ペプスタチンA、24時間(パネルF)。
図11は、カテプシンD及びP−2酵素(ピークB)によるN−ダンシル−Ile-
Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2(配列
番号:7)切断のpH依存性を示す。反応条件は本質的に図10に記載されていると
おりであったが、但しカクテル緩衝液は指示pH値に調整し、インキュベーション
時間はP−2酵素に関しては23時間、カテプシンDに関しては5時間であった。
(a)カテプシンDによる切断、及び(b)P−2酵素による切断。-Glu-Val-
(黒丸)及び-Met-Asp-(白丸)結合での切断率を各場合で示す。
図12は、カテプシンDによるAPPの予備的消化からの反応生成物のSDS-PAGE分
析である。パネル(a)は帯切断前のコーマシーcoomassie染色したエレクトロ
ブロットの写真であり、パネル(b)は、帯切断後の対応するブロットであり、
パネル(c)はパネル(a)及び(b)に示したものに対する一連の平行する反
応の対応するイムノブロット分析(モノクローナル286.8Aの1/100希釈液)で
ある。(a)における反応は、基質付加により37℃で開始して、それにより以下
の初期成分濃度を達成した:30mM NaClを含有する40mM酢酸ナトリウムpH5.0中に
APP(15.6μM)、カテプシンD(0.17μM,7.145μg/ml)。t=16時間で、
反応混合物を高速真空により15μlに濃縮し、7.5μlの3xサンプル緩衝液と
混合し、SDS-PAGE処理した。(c)における反応は、本質的に同一方法で実施し
たが、但しAPP濃度は3.2μMに下げた。両実験(a及びcにおける)に関しては
、完全インキュベーション系を用いて(レーン3)、カテプシンDの非存在下で
(レーン4、同一緩衝液付加直後にカテプシンDをあらためて加えた)実施した
。各場合のレーン5は、カテプシンDのみの対照を含有し、一方レーン6は移動
基準として精製APPを含有した。予染分子量マーカーはレーン1に存在する。(
c)では、主要免疫反応生成物の位置を矢印で示す。
図13は、ベータアミロイドのN末端に対するモノクローナル抗体を用いてモニ
タリングしたカテプシンD触媒APP分解の時間経過を
示す。APP付加により37℃で反応を開始して、それにより以下の初期成分濃度を
達成した:83mM酢酸ナトリウムpH5.0中にAPP(448μM)、カテプシンD(30μ
M)、含有する場合にはペプスタチンA(97.2μM)。指示時点で、アリコート
(20μl)を取り出して、10μlの3x SDS-PAGEサンプル緩衝液と混合し、モ
ノクローナル抗体286.8A(1/100)を用いてイムノブロット分析した。反応は
ペプスタチンA(メタノールに溶解して供給)の非存在下(−)で又は存在下(
+)で実施した。サンプルにはすべて2.7%(v/v)メタノールを入れた。レ
ーン1及び12は予染Mrマーカーを含有した。レーン10及び18はC−100 Mrマーカ
ーを含有した。レーン11及び13はカテプシンDを含まずにそれぞれ0及び21時間
インキュベートしたAPPを含有した。主要生成物断片を矢印で示す。
図14は、カテプシンD及びP−2由来酵素(ピークB)による合成ペプスタチ
ンの加水分解の時間経過におけるアミノ酸置換の効果を示す。反応を基質付加に
より37℃で開始して、以下の初期成分濃度を達成した:Tris,MeS及び酢酸塩緩
衝液pH5.0の各々中の135mM緩衝液中にカテプシンD(2.5μg/ml)又はP−2
ピークB酵素(7.5μg/ml)、N−ダンシル−ペプチド(58μM)、カプトプ
リル(0.3mM)で、ペプスタチンA(213μM)、塩化ナトリウム(75mM)を含有
してもよい。種々の時点でアリコート(30μl)を取り出して、TFA中で12.5%
に調整して、RP−HPLC分析した。その後の基質/プロテアーゼ組合せに関する加
水分解の時間経過を示す:
(a)カテプシンDによるN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-
Glu-Phe-Arg-NH2(配列番号:7);
(b)カテプシンDによるN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Asn-Leu-Asp-Ala-
Glu-Phe-Arg-NH2(配列番号:3);
(c)P−2酵素(ピークB、図5、ゲル濾過後、図6)による
N−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2(配列番号
:7);
(d)P−2酵素(ピークB、図5)によるN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-
Asn-Leu-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2(配列番号:3)。
E−V結合(矩形、パネルA及びC)、M−D結合(中黒菱形、A及びC)で
の、又は保持時間4.4分で代謝生成物を生じるため(B及びD)の切断を示す。
図15は、アプロチニンセファロース上での可溶化P−2分画の精製を示す。実
施例1にしたがって実験を実施した。(a)は典型的A280nm溶離プロフィール
であり、そして(b)は溶離分画におけるAPPプロセッシング活性に関するイム
ノブロット検定(APPのC末端ドメインに対するウサギ抗血清)である。矢印は
主要APP分解生成物の移動を示す。酸性溶離からの分画8〜13における破壊生成
物の出現に留意。
図16は、モノ−Q上のP−2由来アプロチニン結合プロテアーゼの精製を示す
。(a)はA280nm溶離プロフィールであり、そして(b)は検出のためにウサ
ギ抗C末端APP抗血清(1/1000希釈液)を用いた溶離分画の活性を示し、そし
て(c)はMab 286.8A(1.61mg/ml精製IgGの/100希釈液)を用いた溶離分画
の活性を示す。3つの矢印は、11,14及び18kDa C末端APP分解生成物の移動を
示す。
図17は、プールYセリンプロテアーゼにより触媒されるAPP分解のpH及びイオ
ン強度依存性を示す。パネル(a)は、pH依存性を示す。37℃で反応を開始して
、以下のt=0成分濃度を達成した:指示pHに調整した酢酸塩、nes及びTrisの
各々中に32mMを包含するカクテル緩衝液中のプールYプロテアーゼ(図16からの
5μlの分画16)、APP(38nM)。反応混合物(16μl)は、7.5μlの3xサン
プル緩衝液を付加することにより2時間後に反応を終結した。本質的には実施例
8に記載の通りに、APP C末端ドメインに対するウサギポリクローナル抗血清を
用いて、イムノブロットを展開させた。レーン1及び12は予染Mrマーカーを含有
した。レーン9はC−100を含有し、レーン10及び11はプールYを含まずにpH6.5
でそれぞれ0及び3時間インキュベートしたAPPを含有した。パネル(b)は、
イオン強度依存性を示す。反応は本質的に(a)と同様に実施したが、但し緩衝
液は指示モル濃度の塩化ナトリウムを含有する95mM MeS pH6.5であった。プール
Yの非存在下(レーン2〜7)又は存在下(レーン9〜14)でのAPP切断を、各
濃度の塩化ナトリウムに関して示す。レーン1及び8はそれぞれMrマーカー及び
C−100基準を含有した。矢印は11,14及び18kDaのAPP断片の移動を示す。
図18は、プールYプロテアーゼの阻害剤選択性を示す。酵素付加により37℃で
反応を開始して、16μlの容量中の以下の初期成分濃度を達成した:30mM Mes緩
衝液pH6.5中のsuperdex 75カラム上での精製後のプールY #3〜5(14μg/
ml)、APP(35nM)。7.5μlの3xサンプル緩衝液を付加することにより反応を
終結させた。実施例8にしたがって、APP C末端ドメインに対するウサギ抗血清
を用いて、イムノブロットを展開させた。以下の阻害剤に関するデータを示す:
パネル(a)メタノール中の860μM PMSF(レーン4)、メタノール中の400μ
Mペプスタチン(レーン6)、5mMベンズアミジン(レーン8)、350μM E
−64(レーン9)、7.7mM EDTA(レーン10)、15μMアプロチニン(レーン11)
、及び0.1%(w/v)デオキシコレート(レーン15)。以下の対照も処理した
:阻害剤無含有(レーン12)、エタノール(レーン3)、メタノール(レーン5
)、プールYのみ(レーン2)、0時点での(レーン13)及び4時間目(レーン
14)のAPPのみ。レーン1及び7
はそれぞれ予染Mrマーカー及びC−100標準を示す。パネル(b)1.8μMアルフ
ァ−1−抗キモトリプシン(レーン2)、156μMTLCK(レーン3)、46μMキ
モトリプシン阻害剤I(レーン4)、119μMキモトリプシン阻害剤II(レーン
5)、4μMアルファ−2−抗血清(レーン6)、51μMアルファ−1−抗トリ
プシン(レーン7)、DMSO中に投与される98μMキモスタチン(レーン10)、15
3μMメタノール性TPCK(レーン12)。対照を以下に示す:阻害剤無含有(レー
ン8)、DMSO(レーン11)、及びメタノール(レーン13)。予染分子量マーカー
及びC−100標準をレーン1及び9にそれぞれ適用した。矢印は11,14及び18kDa
のAPP分解生成物を示す。
図19は、1)DMSOもDMSO+10μMペプスタチンAもHEK293細胞の成長に影響を
及ぼさず(パネルA)、2)DMSO+ペプスタチンAで処理した後期対数相培養か
ら収穫した条件付きの培地は、DMSOのみで処理した培養より有意に低いレベルの
15kDa APP C末端断片を示す(パネルB)。パネルA HEK293細胞(ATCC CRL 157
3、懸濁培養に適している)を、MoAb培地(JRH Bioscience,Lenexa,Kansas)
+0.2%v/vウシ胎児血清400ml(中黒矩形)を含入するローラーボトル中に植
えつけた。別のローラーは0.01%v/vDMSO(中白矩形)又は0.01%DMSO+10μ
MペプスタチンA(中黒菱形)を含入した。細胞増殖は、5% CO2/95%大気中
で37℃であった。トリパンブルー処理サンプル中の生育可能細胞数を血球計で定
量し、時間により一定パーセンテージ(60%)であった。対数相の終了時(7日
目に矢印で位置を示した)に条件付き培地を収穫して、BeckmanGs−6ベンチト
ップ遠心分離器中で1500RPMで遠心分離して、固定化抗ベータアミロイドモノク
ローナル抗体(C286.8A)のカラム上でクロマトグラフィー処理した。
パネルB ウサギ抗APP C末端抗血清を用いたイムノブロット。レーン1 予
染分子量マーカー;レーン2〜7は、DMSO処理細胞からの培地の精製からの分画
1〜6のそれぞれの分析である;レーン9〜14はDMSO/ペプスタチンA処理細胞
からの培地の精製からの分画1〜6のそれぞれの分析である。レーン8はC−10
0標準を含有し(実施例5,PMTI 100から)、そしてレーン15は実施例7の方法
2により精製した組換え体ホロAPP 695を含有した。DMSOのみ処理からの分画5
及び6は、DMSO/ペプスタチンA処理における対応する分画からは存在しない15
kDa帯を含有した。さらに詳しくは実施例12の本文に記載されている。
図20は、APPプロセッシング活性を有するアスパラギン酸プロテアーゼのヒト
脳からの精製を要約する。 a)モノ−Q HR10/10カラム上での可溶化P−2
分画(140mgタンパク質)の精製に関する溶離プロフィール。タンパク質濃度(
白丸)、伝導(破線)及び10μMペプスタチンAの非存在下(黒丸)又は存在下
(白三角)でのN−ダンシル−ISEVKMDAEFR−NH2からのN−ダンシル−ISEを、
各収集分画に関して示す。 b)MAb 286.8Aを用いたAPP加水分解に関するイム
ノブロット検定:レーン1 C−100標準;レーン2 単独でインキュベートし
た1(b)からのプール分画24〜45(4℃で2.0〜5.3mmho);レーン3 APPと
ともにインキュベートしたプール分画;レーン4 プール分画+APP+10μM最
終ペプスタチンA。矢印は生成物断片を示す。 c)競合的EIAによるMAb 286.8
Aのエピトープマッピング。ヒトAPP 695のアミノ酸645〜695を含有するペプチ
ド、ベータアミロイドの他の指示セグメントのN−ダンシル−ISEVKMDAEFRHDDDD
(1〜7)を、C286.8Aと免疫原との結合を遮断する能力に関して試験した。ベ
ータアミロイド1〜42,1〜28,1〜16及びN−ダンシル−ISEVKMDAEFRHDDDD(
1〜7
を含有)はC286.8A結合用量を依存的に阻害し、一方12〜28,25〜35及び645〜69
5は阻害せず、したがってC286.8Aに関する反応性エピトープをA4領域のN末端
7アミノ酸に局在化した(APP 597〜603)。 d)カテプシンDに対するウサギ
ポリクローナル抗体の1/300希釈液を用いた活性分画のイムノブロット分析。
APPプロセッシング:31μg/mlの均質ホロAPP 695(実施例7の方法2にした
がって調製)を酢酸塩、Mes及びTris pH4.0,0.002%(v/v)Triton X-100及
び30mM外生NaClの各々中に40mMを含有する総量15μl中の5μlの各カラム分画
とともにインキュベートした。SDS-PAGEサンプル緩衝液を付加して最終的に1x
として反応を24時間後に終了させて、10〜20%アクリルアミド勾配トリクリンゲ
ル(Novex)上で100Vに一定に保って電気泳動し、次いでProblott膜(Applied
Biosystems)上で電気プロティング処理した。アルカリ性ホスファターゼと結合
した適切な二次抗体を用いて標準サンドイッチ法により、ブロットをモノクロー
ナル抗体C286.8Aを用いて最終50μg/mlで展開した。組換え体C−100を本方法
に記載されているように調製した。
ペプチダーゼ:カラム分画のアリコート(20μl)を10μlの反応混合物に加
えて以下の初期成分濃度を達成した:50mM酢酸ナトリウムpH5を包含するカクテ
ル緩衝液中に合成N−ダンシル−ISEVKMDAEFR−NH2(58μM)、カプトプリル(
0.2mM)、メタノール(0.3v/v)、及び含まれている場合にはメタノールに溶
解したペプスタチンA(10μM)。40μMペプスタチンA 10μlの付加により
、24時間後に反応を停止させた。酵素的生成物を検出し、RP−HPLCにより定量し
た(実施例2)。
図21は、ヒトカテプシンDに対する固定化抗体が溶液からヒト脳APP分解活性
を選択的に除去することを示す。 a)対照(実線)
及び抗カテプシンD(破線)カラムに関するA280nm溶離プロフィール。番号を
振った矢頭は以下を示している:1 付加の開始;2 平衡緩衝液で洗浄;3
100mMグリシンpH2.2で溶離;4 50mM塩酸ジエタノールアミンpH11で溶離;5
100mMグリシン,0.5%(v/v)Triton X-100で溶離。 b)APPプロセッシン
グ活性を、抗CD(+)又は対照(−)からの選択無効分画(1〜27)に関して、
並びにアプリセート(Qプール)、精製カテプシンD(CD)又はAPP単独に関し
て示す。APP加水分解活性は、分画40より上では検出されなかった。 c)21倍
に濃縮した又はカテプシンDに対するポリクローナル抗体に向けてグリシン/ト
リトン溶離物(分画80〜89、8倍に濃縮)をプールした流動分画9のイムノブロ
ット反応性。濃縮は10%(v/v)TCAを用いた沈殿により行なった。
クロマトグラフィー:記載(T.T.Ngo et al.,1992,Chromatography,597:1
01)の通りに強ALクロマトグラフィーにより対照及び抗カテプシンDウサギ抗血
清を精製し、標準方法(R.Axen et a1.,1967,Nature,214:1302)によりCnBr
活性化セファロース4B(Pharmacia)と結合させた。APPプロセッシング活性を
含有した図21bからの等量(44mlの100mM NaClを含有する110mM重炭酸ナトリウ
ムpH8.1中に4.1mgタンパク質)のプール分画を固定化抗カテプシンD IgG又は固
定化対照IgGの同サイズカラム(4.2ml樹脂)に平行して適用した。カラムを各々
、500mlのNaClを含有する28mlの100mM NaHCO3 pH8.3,28mlの100mMグリシンpH2.
5,40mlの50mM塩酸ジエタノールアミンpH11、及び最後に0.5%(v/v)Triton
X-100を含有する30mlの100mMグリシンpH2.5で引き続き洗浄した。産又は塩基中
に回収された分画をTrisで中和した。0.5ml/分の流速でクロマトグラフィーを
実施して、2mlの分画を全体で収集した。全操作は4℃で行なった。
APPプロセッシング:均質ハロAPP 695(最終31μg/ml)を酢酸塩、Mes及びT
ris pH4.0,0.002%(v/v)Triton X-100及び40mM外生NaClの各々中に40mMを
含有する総量15μl中の5μlの各カラム分画とともにインキュベートした。SD
S-PAGEサンプル緩衝液を付加して反応を24時間後に終了させて、モノクローナル
抗体286.8Aで展開させたイムノブロットにより分析した。矢印は生成物断片を
示す。高度精製ヒトカテプシンDは、最終1.27μg/mlで酵素的インキュベーシ
ョン中に存在した。
図22は、カテプシンDに対する固定化抗体がAPP類似ペプチドを分解するヒト
脳ペプチダーゼを吸着する個とを示す。 a)及びb)N−ダンシル−ISEVKMDA
EFR−NH2の分解における流動分画及びプール化グリシン/トリトン溶離物(分画
80〜89、図21a、21倍に濃縮)中のそれぞれのペプチダーゼ活性。 c)及びd
)N−ダンシル−ISEVNLDAEFR−NH2加水分解に関する対応するデータ。a)では
、流動分画のE−V加水分解活性(丸)を示す。c)では、L−D加水分解を示
す。結合対照(中黒記号)又は抗カテプシンD IgG(中白記号)を含有するカラ
ムから回収された分画からの活性を示す。三角形は、インキュベーション終了時
に残存する議論の余地のない基質の量に及ぼす10μMペプスタチンAの効力を示
す。b)及びd)では、ペプスタチンAの非存在下(中白棒グラフ)又は存在下
(中黒棒グラフ)で活性を測定した。
方法: カラム分画(20μl)の付加により37℃で反応を開始して、30μl中
の以下の初期成分濃度を達成した:酢酸塩、Mes及びTris pH5.0の各々中に40mM
を含有するカクテル緩衝液中のペプチド基質(58μM)、カプトプリル(0.28mM
)、メタノール(0.1%v/v)。含まれる場合、ペプスタチンは最終濃度10μ
Mである。最終10μMペプスタチンAの付加により20時間後に反応を終了させて
、実施例2にしたがってC−10,RP−HPLC分析を施した。
図23は、初期割当が表5に報告されているために、なされたカテプシンDによ
るAPP 695の加水分解から生成されたベータアミロイド断片の配列割り当ての更
新された要約を示す。 a)イムノブロット(図12Cから得たイムノブロットレ
ーン:レーン1 βAPP 695のみ;レーン2 βAPP 695+CD)上でのC286.8A免
疫反応性に対するβAPP由来断片のN末端配列。矢印は、イムノブロット帯と、C
286.8Aエピトープを含有するに十分な配列及びサイズを有するシーケンシングブ
ロットの対応するセグメントにおいて同定された断片とを結びつける。下部のケ
ースの文字は、不定配列割当を意味する。APP 695アミノ酸ナンバリングは、kan
g等(1987,Nature,325:733)に依る。 b)C286.8Aエピトープを含有する(
斜線入り)又はしない(中白)全回収断片を含むベータAPP 695断片化パターン
。各断片の長さは、断片当たりの残基の概算数に比例して描かれ、指示断片サイ
ズ(SDS-PAGE)から算出され、平均残基質量は110であると思われた。いくつか
の断片サイズに及ぼすグリコシル化の潜在的作用は、説明されない。成熟βAPP
695(影を付けたセグメント)中のβAPの位置も示す。b)では、加水分解され
た結合は、βAPP 695残基に対応した:122〜123(F−V);303〜304(Y−L
);405〜406(L−Q);459〜460(L−R);532〜533(L−P);549〜550
(F−G);593〜594(E−V)。
方法: 実施例12に記載されているように反応を実施した。完全インキュベー
ションに特異的な断片を含有する、又は平行イムノブロットにおけるCD−依存性
免疫反応帯と同時移動するコーマシー染色した電気ブロットのセグメントを切り
出し、次いで気相においてApplide Biosystems 477A型タンパク質シーケンサー
上でシーケンシングした。80%のβAPPをより小さな断片に加水分解した。12.7
pmolの検出可能なN末端配列を産生するのと平衡するβAPPの量をゲルに適用し
た。
本発明の詳細な説明
以下の実施例で本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1.ヒト脳プロテアーゼ単離
プロテアーゼ単離のために、2つの一般的アプローチを取った。初期の研究で
は、下記の“方法1”に記載したようにして脳プロテアーゼ活性を単離した。そ
の結果生じるイオン交換クロマトグラフィーから得られた酵素活性の特性表示を
実施例3及び8に記載し、組換え体CHO細胞由来APPを分解できる(実施例8)が
しかしペプチダーゼとして相対的に不活性である(実施例3)6つの異なる活性
の同定がなされた。
6つの活性の内の1つはその後カテプシンDと同定され(実施例9)、ゲル濾
過上でのそのクロマトグラフィーによりさらに特徴表示された。
アフィニティー精製を試みるための代替アプローチにおいて、実施例8(表4
)、“方法2”に記載のヒト脳セリンプロテアーゼのいくつかを実行した。この
手法は、初期段階でアプロチニンセファロースを用いたセリンプロテアーゼのア
フィニティー精製を基礎にし、APP C末端プロセッシングに関する能力を示すセ
リンプロテアーゼ(実施例10)の同定を成す。
方法1:
(i)亜細胞(sub-cellulor)分別 4名の別々の年齢に見合ったAD患者か
らのヒト前頭皮質極9領域の切片を凍結(−70℃)しながら計量し、4℃で0.32
Mのスクロース150mlに加えて、鋏で細
切した。バッチ中で100ml Elvehjemガラステフロン陶器を用いて懸濁液を均質化
した(10リターンストローク)。併合ホモジネートをSorval SS-34ローター中で
遠心分離した。
密でないペレットを取り出して、再均質化し、上記のように遠心分離した。各
抽出のための上清を併合し、Sorval SS-34ローター中で15,000gで30分遠心分離
した。その結果生じた“P−2”ペレットを攪拌しながら100mlの氷冷0.32Mス
クロース中に再懸濁し、−70℃で保存した。最後の回転からの上清を15,000gで
60分遠心分離して上清又は可溶性分画(“S”)、及びミクロソーム分画(“M
”)を産生して、これを60mlの0.32Mスクロース中に再懸濁した。S及びMはと
もに−70℃で保存した。
(ii)可溶化 膜性対照又はAD亜分画(P−2又はM)を以下の条件を調整
して可溶化した:50mM Tris-HCl緩衝液pH7.5を含有する2%(v/v)Triton X
-100。4℃で3.5時間攪拌後、懸濁液をBeckman 70 Tiローター中で105,000gで6
0分遠心分離した。以下の最終タンパク質濃度をP−2(3.9〜4.0mg/ml);及
びM(1.4〜1.6mg/ml)に関する可溶化に用いた。可溶化上清を後に使用するた
めに−70℃で保存した。可溶性分画は洗剤では処理しなかったが、しかしストッ
ク1M緩衝液の付加によりTris-HCl pH7.5中に50mMに調整した。
(iii)イオン交換クロマトグラフィー 50ml Rheodyneステンレス製ループ
インジェクター7125型を備え、モノQ HR10/10カラム(Pharmacia,Piscataway
,NJ)に接続したGilson勾配液体クロマトグラフ(305及び306型ポンプ)を用い
てクロマトグラフィーを実施した。Pharmacia UV-M検出器及びKippen-zonenチャ
ートレコーダーを用いて、280nmでカラム溶離液の吸光度をモニタリングした。
P−2、ミクロソーム(M)又は可溶性(S)タンパク質分画をカラム上に載
せ、2ml/分の流速で、50mM Tris-HCl pH7.5で平衡させた。次にカラムを、溶
離液中のA280nmがゼロに低減し、その時点でカラム流速が4ml/分に増大する
まで平衡緩衝液で洗浄した。
タンパク質を以下のように溶離した:
溶媒:A=50mM Tris-HCl pH7.5
B=50mM Tris-HCl pH7.5(1M NaCl含有)
計画:0〜50% B 70分間
50% Bを10分間保持
50〜100% B 10分間
100% Bを10分間保持
再平衡
4ml分画をクロマトグラフィー全体で収集した。以下のタンパク質付加を1回
のカラム処理当たり適用した:P−2 97mg(対照)及び95mg(AD);S 50mg
(対照)及び68mg(AD);並びにM 36mg(対照)及び31mg(AD)。
初期研究では、A280nm、総タンパク質(Bradford検定)及びペプチダーゼ活
性に関して溶離分画をモニタリングした(実施例2及び3に記載されているよう
に)。ペプチダーゼ活性を基礎にして作ったプールを次に調製し(実施例3)、
CHO細胞由来APP C末端的
に処理するそれらの能力に関して試験した(実施例8に記載)。
しかしながら、さらなる試験のすべてにおいて、バキュロウイルス特定発現に
より得られる組換え体APPのC末端プロセッシングに関するそれらの能力に関し
て、溶離分画を別々に試験した(実施例9)。
(iv)ゲル濾過クロマトグラフィー ゲル濾過の典型的例を図3に示す。さ
らに一般的には、以下のようにクロマトグラフィーを実施する。P−2の精製さ
らの、APP C末端プロセッシング活性を含有するモノ−Q分画をプールし、0.25m
l未満に濃縮して、10mM Tris-HCl緩衝液pH7.5で平衡させ、150mM NaClを含有す
る縦配列の2つのSepharose 6HRカラムに適用した。終始0.3ml/分の流速を用い
た。A280nm、総タンパク質(Bradford検定)、ペプチダーゼ活性、及び組換え
体APPのC末端プロセッシングに関する活性に関して溶離分画をモニタリングし
た。
方法2:
(i)亜細胞分別 上記の方法1に記載されているようにしてこれを実施し
た。
(ii)可溶化 本質的に上記の方法1に記載されているのと同様に実施した
。
(iii)アプロチニン−Sepharoseクロマトグラフィー 上記の可溶性(230m
g)、P−2(216mg)又はミクロソーム(47mg)分画を、予め20mM Tris-HCl緩
衝液pH7.0で平衡させたアプロチニンSepharose(Sigma、カタログ番号42268,1-
5×10cm)のカラムに適用した。一旦カラムを負荷し、平衡緩衝液(100ml)で洗
浄して、次に500mM塩化ナトリウムを含有する60mlの50mM酢酸ナトリウム緩衝液p
H5.0で溶離した。流速は終始1.0mL/分であった。溶離分画(4ml)を280nmでモ
ニタリングし、Bradford検定を用いて分析し、バキ
ュロウイルス系中での発現により得られる組換え体APPを用いて、実施例8に記
載されているようにAPP C末端プロセッシング活性に関して調べた。活性分画は
、抗APP C末端抗体を用いてイムノブロット上で検出可能な11,14及び18kDa(お
よそ)断片を形成し得る(抗体産生の方法に関しては実施例6参照)。
(iv)イオン交換クロマトグラフィー アプロチニン−Sepharose上のP−
2分画の精製からの活性分画をプールし、50mM Tris-HCl pH7.5に対して透析し
て、透析緩衝液で予め平衡させたモノ−Qカラム(HR5/5)に適用した。いっ
たん負荷し、上記の方法1と本質的に同様に、カラムを溶離した。活性分画(2
ml)をA280nm、総タンパク質(Bradford検定)に関して、並びにバキュロウイ
ルス由来APP C末端プロセッシングに関するそれらの能力に関して、モニタリン
グした。APP分解活性の広範なピークが観察され、これはAPP C末端抗体並びにベ
ータアミロイドペプチドのN末端に向けられるモノクローナル抗体の両方と反応
する11,14及び18kDa APPC末端断片を形成し得る(抗体産生の方法に関しては実
施例6参照)。
活性分画を含有する領域と交わるA280nmプロフィールに基づいて、活性の3
つのプールを明白なA280nmピークと各々重ねて調製した。プールは以下の伝導
範囲を包含した:プールX(12.2〜14.4mmho)、プールY(14.9〜18.9mmho)及
びプールZ(20.2〜22.9mmho)。
(v)ゲル濾過クロマトグラフィー プールX,Y及びZを各々2ml(プー
ルX及びY)又は3.6ml(プールZ)に濃縮し、150mM塩化ナトリウムを含有する
50mM Tris-HCl pH7.5で予め平衡させたSuperdex 75カラム(Pharmacia,Piscata
way,NJ)に別々に適用した。いったん負荷し、平衡緩衝液でカラムを溶離した
。終始1.0
ml/分の流速でクロマトグラフィーを実施した。A280nm、総タンパク質(Bradf
ord検定)に関して、及びバキュロ発現APPのC末端プロセッシングに関して分画
(1ml)をモニタリングした。各々のいかの標準タンパク質のクロマトグラフィ
ーによりゲル濾過を測定した:チログロブリン(570kDa)、ウシガンマグロブリ
ン(158kDa)、オバルブミン(44kDa)、ミオグロビン(17.5kDa)及びビタミン
B12(1.35kDa)。
実施例2.ペプチダーゼ検定開発
“細胞外”ドメイン(単数又は複数)とベータアミロイドペプチド領域のN末
端との間の接合部でのAPP加水分解に適した特異性を有するヒト脳組織中のエン
ドプロテアーゼの高スループット検出を可能にするようにペプチダーゼ検定を開
発した。選択した技術は、RP-HPLC分離による蛍光性ペプチド生成物質のその後
の検出、及び後カラム蛍光検出とともに、ダンシル化ペプチド基質を用いた。
ペプチド基質配列の進化: ヒトAPPのベータアミロイドペプチド配列のN末
端領域周囲に観察されたのと同様のアミノ酸配列を含有する蛍光的標識化ドデカ
ペプチド基質を、固相ペプチド合成により調製した。ペプチドは、Fmoc/NMP-Ho
BL化学物質を用いてApplied Biosystems 430A型ペプチド合成機上に合成した(F
ields et al.,1990,Int.J.Pepeide Protein Res-,35:161;Knorr et al.
,1989,Totrahedron Letters,30:1927)。通常は、ペプチドを切断し、90%
トリフルオロ酢酸、4%チオアニソール、2%エタンジチオール、及び4%液化
フェノール中で室温で2時間脱保護化した。
しかしながら、ペプチドN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Gl
u-Phe-Arg-His(配列番号:2)は、粗製組織分画とともにインキュベートした
場合、望ましくないカルボキシペプチダー
ゼ消化を受けることが判明した。カルボキシペプチダーゼ消化を弱めるために、
以下の修飾基質を設計した:N−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-
Glu-Phe-Arg-NH2(配列番号:7)及びN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met
-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)。
この後者のペプチドは、粗製組織分画の存在下でさえカルボキシペプチダーゼ
消化に対して相対的に不感受性であり、実施例3のペプチダーゼプロファイリン
グ研究に用いた。さらに精製した酵素分画を用いて、C末端アルファアミド基質
(配列番号:7)を実施例9のペプチダーゼ試験に用いた。下記の実施例3のHP
LCプロトコールを用いて、いずれかのペプチドの分解をモニタリングした。
実施例3.正常対照及びAD脳の亜分画におけるペプチダーゼ活性の測定
(i)インキュベーション 実施例1に記載されたカラム分画のアリコート
(20μl)を10μlの反応混合物と一緒にインキュベートして、以下の成分濃度
を達成した:Mes,Tris-HCl及び酢酸塩pH6.5の各々中に100mMを含むカクテル緩
衝液中にN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-As
p-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)(50μM)、カプトプリル(300μM)。
イオン交換分画を用いたインキュベーションを37℃で24時間実施し、その後TF
A中に最終濃度3%(v/v)に調整することにより反応を終わらせた。
(ii)タンパク質分解性生成物のHPLC定量 二液溶媒供給、加熱カラムコン
パートメント及びオートインジェクターで完全なものになるHewlet-Packard HP
1090を用いてHPLC分析を実施した。イン−ラインGilson 121型フィルター蛍光計
(310〜410nmで励起、480〜520nmで放射)をHPLC chem-station(DOSシリーズ)
及びデータ
分析に適したソフトウエアとともに用いて、蛍光検出(カラム後)を実施した。
上記の酸性化インキュベーション混合物のアリコート(通常10μl)をガード
C18 5μMガード(20×4.6mm)を取り付けたHypersil 5μM C18カラム
(100×4.6nm)上に射出した。27%(v/v)アセトニトリルを含有する100mM
酢酸ナトリウム緩衝液pH6.5を用いて平等な分離を達成した。合成ペプチド生成
物の移動による同定及び比較、その構造をPTC−アミノ酸分析及びFAB−MSにより
確証した(下記の表2参照)。
さらに、上記の表2に列挙したある代謝物質の保持時間は、HPLC作動時に変わ
りやすいため、N−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-
His(配列番号:2)の切断に閏して実施例2に引用したものとは異なる。例え
ば表2に列挙したデータを反映する試験は、HPLCカラムと一列にガードカラムを
用いてクロマトグラフィーを実施したため、相対的に長い保持時間を有する。
全実験において、実験サンプルと平衡して合成生成物標準の分析
により酵素的生成物の保持時間の日々の変化に対してHPLCカラムを度盛りした。
HP CHEMステーションデータ獲得ソフトウエアを用いて、個々のイオン交換分画
のタンパク質分解性代謝物質プロフィールに関するデータを収集した。
6つの切断生成物の各々に関する曲線下の面積及びそれらの保持時間をピーク
表ファイルに保存する。全ピーク表をつき合わせてEXCEL(プログラム言語Cで
書いたカスタムユーティリティーを使用)で(6xn)エリア配列に移す(ここで
、n=モノ−Q分画の数)。配列の各列はモノQ分画からの単一ペプチダーゼ分
析を示す。ゼロをデータの各カラム間に挿入して人工的に列方向の値の勾配を確
立する。
SpyGlassはこの配列をとり、生成した物質に関するモノQ分画数、切断V及び
面積%が3軸である3次元面に変換する。手動でSpyGlassプログラム内に設定さ
れる以下の判定基準にしたがって等値線を限定する:一次等値線は、特定物質へ
の1.5%基質変換が観察されたブロットの連続領域と接続する。同様に、連続等
値線は5%,10%,20%,30%,40%及び50%の領域と接続し、基質変換も示さ
れた。その結果生じた等値線プロットは、分画数が縦座標にかかり、ペプチド結
合切断Vが横座標上にあり、生成物質の量が等値線により示される脳ペプチダー
ゼ地図を示す。
対照及びAD脳亜分画のペプチダーゼプロファイリングの結果:
図1は、イオン交換クロマトグラフィーによりさらに亜分別を施した対照並び
にAD P-2,S及びM分画によりN−ダンシルペプチド基質の切断に関して得られ
たペプチダーゼプロフィールの比較を示す。分析により、対照及びAD脳の亜分画
全体の洗剤的に異なる多数のペプチダーゼ活性が同定できる。
各分析(図1のa〜f)に関して、各ペプチド結合での切断に関
する活性の量はシリーズを通じて低減した:V−K>K−M>M−D>S−E>
E−V。しかしながらK−M及びM−D切断は、C−100生成を引き起こすAPP加
水分解の部位を示しているという見込みが大きいために、最も興味深い。1.6分
で回収された代謝物質は、おそらく過酸化水素による基質の処理が同一保持時間
(rt)を有する物質を生じるので、基質中のスルホキシドへのメチオニン酸化に
よるものと思われる。1.0及び1.3及び3.3分のrtで生成される代謝物質は、現在
のところ同定されていない。
K−M切断に関しては、対照及びADに関する酵素のスペクトル及びピーク活性
についての活性の全レベルはシリーズを通して低下した:P−2>S=M。これ
は、ADにおけるM−D切断に関しても真実であるが、一方対照分画に関してはそ
の順序はS>P−2=Mであった。
ADにおいて認められた最も豊冨なペプチダーゼピーク(1つより多い等値線に
より境されるもののみ)に関しては、以下の数の明白に決定されたペプチダーゼ
ピークを区別し得る:P−2 3つのK−Mピーク及び1つのM−Dピーク;M
3つのK−Mピーク及び2つのM−Dピーク;S K−Mピークなし、1つの
M−Dピーク。対応する対照及びAD間のより多くのピークのレベル間の定性的比
較により、1つの顕著な差異のみが明らかにされた。差異はミクロソーム分画で
観察され、個の場合対照Mプロフィールは単−M−D生成物を分画75周囲に含有
し、一方ADプロフィールでは、同一領域は明らかにダブレットを含有した。
正常及び疾病状態集団におけるペプチダーゼ間の考え得る変異のために、対照
及びAD間のペプチダーゼレベルの定量的差異を際立たせる点はほとんどない。
要するに、少ペプチダーゼ形態のレベルにおける対照及びAD分画
間の定性的又は有意に定量的な差異が存在し得るということを無視することはで
きないけれども、全体的プロフィールは、1つだけの明白な差異がペプチダーゼ
活性のより多くのピークにはあきらかである。
(iii)別個のプール中へのペプチダーゼ活性の統合 N−ダンシル−Ile-S
er-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1
)基質を用いて得られたペプチダーゼ活性プロフィールを基礎にして、P−2,
S及びM分画のイオン交換分離からのカラム分画を隣接するプール中に統合した
(Mに関しては12プール、P−2に関しては13プール、Sに関しては14プール)
。各場合にAD及び対照分画に関するクロマトグラフィープロフィールの同一領域
をプールするよう注意し、YSI35型伝導計を用いて各プールの電導度をモニタリ
ングすることにより工程の精度を検査した。
プール中は分画を4℃に維持し、−70℃で保存した。Amicon Centriprep-10膜
を用いて各ペプチダーゼを濃縮した。濃縮前に、各Centriprep膜を50mM Tris-HC
l,pH7.5中で洗浄した。5ml以上の容量を含有するペプチダーゼプールに関して
は、15ml Centriprepを用いた。これらのプールをDu Pont Sorval卓上遠心分離
機上で2700rpmで約40分間濃縮した。4ml未満を含有するプールは、2ml Centri
prepを用いて、Du Pont Sorval RC遠心分離機(SS34ローター)上で5000rpmで約
40分間濃縮した。
遠心分離後、各濃縮プールを等量の50mM Tris-HCl,pH7.5で洗浄した。遠心分
離工程中はプールを4℃に維持し、−70℃で保存した。プールを、電導度(cond
uctance)及び最終濃縮容量とともに下記の表3に列挙する。
実施例4.組換え体APP 695の発現
本実施例は、ホロAPP 695を発現し、次いで実施例7に記載のように精製し、
次いで実施例8〜10に記載されているようにAPP分解検定のための組換え体基質
として用いる方法を記載する。2つのアプローチを用いた。
最初にCHO細胞発現系を用いてAPP 695を生成した。基質としてAPPのこの供給
源を用いた実験には、ヒト脳P−2,S及びM分画の精製からのモノ−Q分画の
連続プールで検出可能な6つの異なるプロテアーゼ活性を同定させる初期活性測
定が含まれた。これらの試験は実施例8に記載する。
次いで、バキュロウイルス特定系を用いた発現により、組換え体APP 695を得
た。それにより生じたより多量のAPP 695により、実施例9及び10に略記したよ
り詳細な試験の実施が可能になり、ある種のAPP分解酵素の同定が成された。
発現の両方法を以下に示す:
方法1:ホロAPP 695を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の
開発
(i)ベクター構築 FC−4(Kang等、上記)からのAPP 695cDNAの公知の2
.36kb NruI/Spel断片を大腸菌E.coli DNAポリメラーゼIの大型断片により充填
して、pMTI−5(T3プロモーター下でのAPP 695)を生じるKS Bluescript M13
+(Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA)のSmalクローニング部位中に
盲端挿入した。次に新規の最適KozakコンセンサスDNA配列を、オリゴ:
5′-CTCTAGAACTAGTGGGTCGACACGATGCTGCCCGGTTTG-3′(配列番号:8)によりPMT
I−39を作るために、特定部位の突然変異誘発を用いて作った(Kunkel et.al.
,1987,Methods in Enzymology,154:367)。次にこのプラスミドを特定部位
の突然変異誘発(Kunkel等、同上)より変更して、位置614のバリンをグルタメ
ードに変えた(開放読み枠はKang等(同上)にしたがってナンバリングした)。
最適Kozakコンセンサス配列及びValのGluへの突然変異を含有する全長APP cDN
Aを次に、NotI及びHindIII部分消化によりPMTI−39から切り出す。次いで2.36kb
APP 695断片をゲル精製して、NotI/HindIII切断pcNAINeo(Invitrogen Corp.
,San Diego,CA)に結紮して、PMTI90を作り、このなかでAPP 695発現がCM部位
プロモーターの制御下で起きる。ValのGluへの突然変異は確証済配列であり、ベ
クターを用いてCHO細胞を安定的に形質転換する。
(ii)APP 695 matenesを発現する安定CHO細胞株の生成。
APP 695構築物によるトランスフェクションのためにチャイニーズハムスター卵
巣K−1細胞(ATCC CCL61)を用いた。APP 695及びネオマイシン薬剤耐性マー
カーを含有する20μgの発現プラスミドを0.5mlのPBS中の1×107CHO細胞中に、
Bio-Rad Gene Apparatus(Bio-Rad Laboratories,Richmond,CA)を用いて電気
穿孔によりトランスフェクトした。25μfキャパシタンスで1200Vの単一パルス
を細胞に施した。
電気穿孔後、細胞を氷中で10分間インキュベートし、遠心分離により収集した
。細胞ペレットをAlpha MEn,10%ウシ胎児血清中に5×104細胞/mlの密度で再
懸濁し、1mlアリコートを24ウエル組織培養クラスタープレートの各ウエル中に
分布させた。48時間インキュベーション後、1mg/mlのGeneticin(GIBCO-BRL,
Grand Island,NY)を含有する培地1mlを付加してネオマイシン薬剤耐性マーカ
ーを含有する細胞を選択して、インキュベーションを続け、薬剤含有倍地を1週
間に2回変えた。
ウエスタンブロットにより、薬剤耐性細胞をAPP 695発現に関して試験した。A
PP 695発現に対して陽性な細胞を限定希釈によりクローニングし、個々のクロー
ンを単離して、APP 695発現に関して調べた。APP 695発現に対して陽性なクロー
ンを亜培養し、APP 695発現細胞の大規模産生とその後の組換え体タンパク質の
単離のためにローラーボトルに広げた。
方法2:バキュロウイルス感染昆虫細胞を用いた組換え体ホロAPP 695の発現
(i)組換え体ベクターの構築 バキュロウイルスベクターpVL1392(Invit
rogen)をXba I(ポリリンカー中)で切断し、pMTI−39からのグル単離2.36kb X
ba I断片と結紮した(Bluescript M13 SmaI部位へのAPP 695 NruI/SpcI,T3
配向、Smal/NruIプラント融合部位に新規のKozak及びXbaI部位を用いる)。こ
れによりpMTI 103が生じる:これをDH5α中に形質転換し、Amp上で選択して、
プラスミドDNAのリチウムprepをトランスフェクション用に作った。
(ii)細胞及びウイルス American Type Culture Collection(ATCC)から
購入したSpodoptera frugiperda(Sf9)を懸濁培養として28℃で、10%ウシ胎児
血清を含有するTNMFH培地(Summers,M.D.,and Smith,G.E.,1987,A Manual
of Methods for Baculovi
rus Vectors and Insect Cell Procedures,Bulletin no.1555,Texas Agric
.Exp.Stn.and Texas A & M Univ.,University Station,TX)中で増殖させ
た。野生型AcMNPV DNAは、Invitrogen,SanDiego,CAから購入した。
(iii)DNA トランスフェクション及びプラーク検定 リン酸カルシウム法
(Summers et al.,1987,同上)を用いてSf9細胞中に精製プラスミドDNA(4
μg)及び直鎖ウイルスDNA(1μg)を同時トランスフェクションすることに
よる相同組換えにより、外来DNAをポリヘドリン遺伝子座のAcMNPVのゲノム中に
挿入した。トランスフェクト化細胞により放出されたウイルスを2ラウンドのプ
ラーク検定(Summer et al.,1987,同上)により精製し、組換え体ウイルスをポ
リヘドリン陰性プラークに関する肉眼的スクリーニングにより同定した。次に精
製組換え体ウイルス培養をウエスタンブロットにより昆虫細胞中にAPPを産生す
るそれらの能力に関してスクリーニングした。
(iv)組換え体タンパク質産生 10%ウシ胎児血清を含有するTMNFH培地中
で懸濁培養として1×106細胞/mlで増殖させたSf9細胞の5リットルバッチを
、1のM.O.I.で組換え体ウイルスで感染させた。感染24時間後に細胞を収穫し、
細胞溶解物を組換え体タンパク質の精製のために調製した。
実施例5.哺乳類細胞の一過性感染による組換え体C−100標準の産生のため
の発現ベクターの開発
C−100ペプチド断片は、A4ペブチドのN末端から全長APPのC末端に及ぶAP
PのC末端部分を含有する(上記 背景の項参照)。C−100断片は、A4ペプチ
ドの最終的形成を引き起こす初期分解生成物を意味する。
本発明の一態様において、組換え体C−100を発現するHela S3
細胞(ATCC CCL 2.2)からの細胞溶解物を、脳分画でインキュベートしていた組
換え体APPサンプルと平衡してイムノブロット検定で分析し、モノ−Qクロマト
グラフィーにより亜分画化した(実施例3参照)。C−100断片の移動及び検出
は、概してC末端APP断片の免疫検出のために病的プロテアーゼ並びに陽性対照
により生成される物質の発生に関するサイズマーカーとして役立つ。
酵素的に生成した物質のサイズとC−100断片のサイズの比較は、酵素的に生
成した断片がA4ペプチドのN末端近くの、あるいはセクレターゼにより触媒さ
れるようにA4セグメント内での切断から得られるか否かについての見識を提供
し得る。
(i)プラスミド構築 2つの方法を用いてC−100発現のためのプラスミ
ドを作製した。各プラスミドはPMTI73又はPMTI100として別々に同定される。
PMTI73構築: 市販のプラスミドPUC−19をEcoRIで消化してそのポリリンカー
を制限した。市販PWE16を次に消化済PUC19中に挿入して、PMTI2300を作った。PM
TI2301は、オリゴヌクレオチドアダプターを用いてBamHI/HindIII消化後にPMTI
2300から得た。APPのEcoRIプロモーター断片を、盲端結紮によりPMTI2301のHind
III部位に挿入して、PMTI2307を生成した。
PC−4(Kang等。上記)からのBamHI断片をPMTI2307のBamHI部位に結紮してPM
TI2311を生成した。FC−4からのXhoI断片をPnTI2311のXhoI部分に挿入して、PM
TI2312を生成した。マウス金属チオニン−1遺伝子のEcoRIゲノムクローンから
の2.2kb BglII/EcoRI断片をPMTI2312のClaI部位中に挿入することにより、PMTI
2323を作った。微小遺伝子PMTI2337を生成するために、PMTI2323のKpnI及びBglI
I部位間の配列を欠失させて、合成オリゴヌクレオチドアダプター sp−スペー
サー−4を用いてクローンを結紮した。
PMTI2337をBamHI/SpcIで切断し、断片をBluescript KS(1)(Stratagene)
のBamHI/XbaI制限部位中に結紮して、PMTI2371を生成した。PMTI2371をHindIII
/NotIで切断して、APP695の末端100アミノ酸をコードする0.7kb断片を放出させ
た。この挿入物をpcDNAINEO(Invitrogen Corp.)のHindIII/NotI部位に結紮し
て、プラスミドPMTI73を作った。
PMTI 100構築: PMTI90(実施例4、方法1参照)をXbaI/HindIIIで切断し
てこれもAPP695の末端100アミノ酸をコードする0.6kb断片を放出させ、これをpc
DNAINEOのXbaI/HindIII部位に結紮して、PMTI100を作った。各場合、ベクター
、挿入物及びプラスミドを当業者に公知の方法で精製した。
(ii)C−100断片のトランスフェクション及び発現 6ウエルコースター
クラスター(直径3.5cm)を各ウエル中に5×105細胞のHela Sl細胞を使用の24
時間前に植えつけることにより、C−100標準の小規模発現のための調製を開始
した。
十分量のワクシニアウイルスVTE7−3をトリプシン処理して多数の20プラー
ク形成単位/細胞を感染させ、等量の粗製憂いするストック及び0.25mg/mlトリ
プシンを混合し、次いで激しく攪拌した。トリプシン処理ウイルスを10分間隔で
攪拌しながら、37℃で30分インキュベートした。凝集塊が残存した場合、インキ
ュベーション混合物を0℃に冷却して、音波処理水浴中で30秒間音波処理した。
冷却音波処理を凝集塊が検出されなくなるまで繰り返した。
Hela S1細胞を入れた各ウエルが0.5mlのウイルスを有するに十分な血清無含有
DMEMでトリプシン処理ウイルスを希釈した。培地を吸い出して、次いで細胞をウ
イルスに30分間感染させて、10分間隔で揺すってウイルスをかき混ぜた。
感染終了の約5分前に、新鮮なトランスフェクション混合物を以
下のように調製した:各ウエルに対して、0.015mlのリポフェクチン試薬(Bethe
sda Research Labs,Gaithersburg,MD)をポリスチレン試験管中のOPTIMUM(Be
thesda Research Labs,Gaithersburg,MD)に加え、静かに混合した。攪拌はし
なかった。ついで3μgのCsCl精製DNAを加えて、静かに混合した。
ウイルス混合物を細胞から吸い出して、次にトランスフェクション溶液を導入
した。その結果生じた混合物を37℃で3時間インキュベートした。次に各ウエル
を1mlのOPTIMUMで覆って、CO2インキュベーター中で37℃で一夜インキュベート
した。
遠心分離によりトランスフェクション後20時間に細胞を収穫し、1%Triton X
-100,10μg/ml BPTI,10μg/mlロイペプチン、200mM NaCl,10mM HEPES,
1mM CaCl2,1mM MgCl2,1mM EDTAを含有し、pH7.5に調整した溶解緩衝液0.2m
lを加えて、氷上で溶解物を調製した。光学顕微鏡で完全溶解をモニタリングし
、直ちに収穫した。溶解は1分未満で完全に起きて、この段階での遅延はゼラチ
ン状塊を生じる核の溶解を引き起こした。
組換え体溶解物を後に使用するために−20℃で保存した。好ましくは、組換え
体溶解物は、凍結前に、2−メルカプトエタノールを欠いた(3x)SDS−PAGE
サンプル緩衝液中で1:50に希釈すべきである。
APP C末端抗体によるSDS−PAGE/イムノブロットを用いたPMTI73又はPMTI100
による発現によって産生されたタンパク質のサイズの比較を実施した(図2c)
。試験は、PMTI100が単一免疫反応帯の発現に向けられ、一方PMTI73は小分子サ
イズの2つの主要帯の発現に向けられることを示した。中間サイズの弱い帯も、
多量でゲルに適用した場合に(図2a〜2d)、PMTI73中に明らかであった。
PMTI100タンパク質を多量にSDS−PAGEゲルに適用すると、一連
のぼんやりした帯(例えば図2d)が現れる。明白なMr11.7kDaのC−100モノマ
ーの強い帯の他に、Mr25.5kDa,35kDa及び45kDaでぼんやりした帯が観察され、
これはそれぞれC−100モノマーの二量体、三量体及び四量体凝集物に寄与する
。Mr18.9kDaの別のかすかな帯も観察される。同様の現象は、文献でも同様の解
釈で報告されている(Dyrks et al.,1988,EMBO J.,7;949)。
PMTI73により生成される最大の3つの帯は、PMTI100に関して観察される単一
帯よりわずかに大きかった。PMTI73発現からの最大帯は、単一ペプチド配列が初
期翻訳物質から切断されて、N末端で5つの余分のアミノ酸を含有するC−100
断片を産生した。
実施例6.免疫化学試薬の生成
3つの異なる免疫化学試薬を本発明の試験に用いた。
(i)APPのC末端を認識するウサギポリクローナル抗血清を得て、実施例8
に記載の検定条件にしたがってタンパク質分解的プロセッシングにより生成した
C末端APP断片のイムノブロット検出のために用いた。
(ii)APPのC末端を認識するアフィニティー精製抗体を調製して、バキュロ
ウイルス特定系で発現されるAPPのアフィニティー精製のためのイムノアフィニ
ティーカラムを合成するために用いた(実施例7参照)。
(iii)ベータアミロイドペプチドのN末端を認識するマウスモノクローナル
抗体を生成し、ホロAPP695のタンパク質分解性消化により生成されるC末端APP
断片が全長ベータアミロイドペプチドを含有するか否かを測定するためにイムノ
ブロット検定に用いた(特定の適用に関しては実施例9及び10参照)。
3つの免疫化学物質の各々の生成方法を以下に示す:
(i)APPのC末端に対するウサギポリクローナル抗血清
抗血清をヒトAPP695のC末端ドメインに引き出して、Buxbaum等(1990,Proc
.Natl.Acad.Sci.,87:6003)の方法にしたがって調製した。APP695のCOOH末
端領域に対応する合成ペプチド(以後“β APP 645−694”と呼ぶ)をYale Univ
ersity,Protein and Nucleic Acid Chemistry Facility,New Haven,CTから得
た。
β APP 645−694を用いてウサギを免疫化して、ポリクローナル抗体を引き出
した。ヒトAPP695のアミノ酸19〜695を含有する融合タンパク質を発現する大腸
菌E.coliの溶解物のイムノブロット分析により、血清をスクリーニングした。組
換え体融合タンパク質に対して免疫反応性である血清を、連続的in vitro転写(
Stratagene,La Jolla,CAから購入したキット)及び翻訳(Promega Corp.,Mad
ison,WIから購入した網状赤血球溶解キット)によりβ APP 645−694 cDNAから
産生した〔36S〕メチオニン標識化APP695に対する免疫沈降活性に関してさらに
スクリーニングした。
(ii)ホロAPPの精製のためのポリクローナル抗体アフィニティーカラム
合成APP C末端ペプチド免疫原の精製: N末端にシステイン残基を有するAPP
(649−695)のC末端に及ぶ粗製合成ペプチド(P−142)80〜90mgを、HPLCに
より精製した(収率42%;34mg)。アミノ酸分析、N末端配列分析及び飛行質量
分光測定のレーザー着脱時間Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrome
tryは、精製ペプチドが全長及びN末端で剪頭されたペプチドの混合物(1/2
全長/剪頭)であることを示した。
精製P−142免疫原によるウサギの免疫化: HPLC精製ペプチドAPP(649−695
)を用いてウサギを免疫化した。2羽のウサギは各々、完全フロイントアジュバ
ント中の125μgのペプチドで、その後不完全フロイントアジュバント中の同量
のペプチドの増強により、
3週間間隔で初期試験を施した。9か月間に14の採血標本を収集し、16〜32週目
の採血に関してAbの最適産生を観察した(ワクシニアC−100及びCHO APPを用い
たウエスタン分析で示された)。この期間の採血を90〜100mlの抗血清のおよそ
の量に対してプールした。
抗血清の精製のための免疫化APP649−695アフィニティーマトリックスの調製
: BSAによるPierce Imject活性化免疫原抱合キットを用いて、9.7mgの精製ペ
プチドAPP(649−695)をマレイミド活性化BSAと結合させた。Ellman試薬で測定
すると、約40%のペプチド(3.88mg)がBSAと結合した。BSA結合ペプチドを、ゲ
ル濾過により非結合ペプチドから分離した(キットからの精製緩衝液=83mM NaH2
PO4 pH7.2;900mM NaCl)。ゲル濾過カラムからのプール化無効容量(2.9mg P
−142がBSAと抱合/12.5ml)を1g(3.5ml)のCNBr活性化セファロースと結合
させた(>90%のペプチド抱合体が標準Pharmaciaプロトコールにより結合)。
残りの部位をエタノールアミンで遮断した。セファロースアフィニティーマトリ
ックスを1.0×3.5cmガラスカラム中に包装した。
APP(649−695)アフィニティーカラムを用いたウサギポリクローナル抗体の 精製
: 最適Ab産生の採血からの併合ウサギ抗血清をプールし(100ml/3.9gタ
ンパク質)、洗浄緩衝液(100mM NaHCO3 pH8.3;750mn NaCl)で1:1(v/v
)希釈して、ペプチドアフィニティーカラム上に1.0ml/分で4℃で負荷した。
負荷(200ml)後、A280が0に戻るまで洗浄緩衝液(75ml)でカラムを洗浄下。
IgGを100mMグリシンpH2.5(40ml)で溶離した。1分分画を、100μlの1.0M Tr
is-HCl pH8.0を入れた試験管中に収集した。中和低pHIgG溶離物をプールし(34m
l;14.7mg)、1.0リットルの100mM NaHCO3 pH8.3;500mM NaClに対して4℃で透
析した。
イムノアフィニティーカラムの調製: 精製ウサギIgGとセファロースSepharo seとの結合
5.0gのCnBr Sepharoseを50mlの結合緩衝液(100mM NaHCO3 pH8.3
;500mM NaCl)で活性化し、オルビトロン上で4℃で21時間、透析済IgGプール
と混合した。結合後、樹脂を浸漬ガラスフィルターを通して結合緩衝液で1回、
その後100mlの遮断緩衝液(100mM NaHCO3 pH8.3:500mM NaCl;1.0Mエタノール
アミン)で3回洗浄した。結合緩衝液(100ml)、次いで低pH緩衝液(100mM NaO
Ac pH4.0;500mM NaCl)による2つの連続した中間洗浄工程、並びに結合緩衝液
(100ml)による最終洗浄により樹脂調製は完了する。結合は、総量17.5mlの樹
脂の87%に認められた(0.727mg IgG/ml樹脂)。
(iii)ベータアミロイドペプチドに対するモノクローナル抗体の生成及びエ
ピトープマッピング
ハイブリドーマ法 以下の2つの合成ペプチドの混合物を多数回注射するこ
とにより、Balb/cマウスを免疫化した: 1)ベータアミロイドを含有するホ
ロAPP695のアミノ酸597〜638(ナンバリングはKang等、同上による)、及び2)
C末端ドメインを含有するAPP295アミノ酸645−695。標準手法(Herzenberg et
al.,1978,:D.M.Weir(Ed-),Handbook of Experimental Immunology,pp 25.
1-25.7,Blackwell Scientific Publicatins,Oxford,UK)を用いて、固定化動
物からのSplenoytesをX63/Ag8.653マウス骨髄腫細胞と融合させた。その結果
生じたハイブリッドからの上清を、ベータアミロイドペプチド免疫原を微小滴定
プレートと結合させるEIAを用いて抗ペプチド特異的抗体の存在に関してハイブ
リッドを試験した。免疫原として用いた合成ペプチドと反応する抗体を分泌する
培養を、限定希釈により2回クローニングし、それらのアイソタイプを記載(Wu
nderlin et al_,1992,J_ of Immunol.Method
s,147:1)通りに確定した。分泌IgGを、使いつくした培養液のプロテインAア
フィニティークロマトグラフィーによりクローン化ハイブリドーマ細胞の血清無
含有発酵プロスから精製した。
エピトープマッピング 抗ペプチドモノクローナル抗体の1つであるC286.8
Aと呼ばれるIgG 2bは、EIA並びにイムノブロット検定により、合成ベータアミロ
イドペプチドとの良好な反応性を示した。モノクローナルのエピトープ反応性を
、競合EIAを用いて測定した。ヒトAPP695のアミノ酸597−612,597−624,597−
638,608−624,621−631及び645−695(ナンバリングはKang等による)を含有
する合成ペプチド、並びにN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Gl
u-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)を、C286.8AのAPP597−638と
の結合を遮断する能力に関して試験した。
抗体により認識されるペプチドは、溶液中の抗体で予備インキュベートした場
合には、微小滴定プレートと結合するベータアミロイドとのその後の反応に有用
な抗体の溶液濃度を低下させる。このような実験の結果は、図4に示し、本明細
書で後述する。
ペプチドAPP597−612,597−624,597−638及びN−ダンシル−Ile-Ser-Glu-V
al-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号:1)のみが
、用量依存様式でのC286.8A結合を阻害し得た。これらのペプチドは、それぞれ
ベータアミロイド配列のアミノ酸1−16,1−28,1−42及び1−7を含有する
(N末端アスパラギン酸残基からナンバリング)。あらゆるベータアミロイド配
列、例えばAPP649−695を欠く、又はベータアミロイドペプチド配列12−28又は2
5−35(それぞれAPP608−624及びAPP621−631)を含有するペプチドは、モノク
ローナル抗体の相同抗原との結合を阻害しなかった。これらの結果は、このモノ
クローナル抗体に関する反
応性エピトープが、少なくとも一部、ヒトAPPのA4領域、即ちAPP597−601の最
初の7個のアミノ酸中に存在することを示す。
実施例7.組換えホロ−APP695の精製
APP C末端プロセシングの最初の試験は、上記実施例4に述べたようにしてCHO
細胞で発現された組換えAPP695を用いて行い、次いで下記の方法1のようにして
精製した。この基質を用いる特性決定の試験は後記実施例8で説明し、この試験
によって、C末端のプロセシングを行うことができる可能性のある六つの異なる
APP減成酵素が同定された。
次にバキュロウイルスの発現系を成長させ(実施例4参照)、CHO発現系が達
成可能なレベルより高いレベルのAPPを得た。バキュロウイルス系由来のホロ−A
PP695の精製は下記の方法2で述べる。バキュロウイルス由来の精製したホロ−A
PP695は、下記実施例9と10で述べるプロテアーゼ特性決定試験を行うのに使用
した。
特にことわらない限り、ステップはすべて0〜4℃で行った。ホロ−APP695の
検出は、特に下記実施例8に記載されているように、抗ヒトAPP695C末端抗体を
用い免疫ブロット分析法によって行った。
方法1.安定にトランスフェクトされたCHO細胞由来のホロ−APP695の精製
(a)形質膜の単離。ローラーボトル内でのCHO細胞の連続培養で得た全細胞ペ
レット(179g)(実施例4参照)を遠心分離(1500g×5分間)で収集し、塩
化ナトリウム(30mM)、塩化マグネシウム(1mM)、EDTA(10mM)、PMSF(200
μg/ml)、E−64(42μg/ml)およびペプスタチン(3.8μg/ml)を含有
する50mMトリス−HCl緩衝液(pH8.0)中に再懸濁させて全容積を600mlにした。
この細胞を、テフロンポッター(10回の戻り工程)を用いてホモジナイズし
、次いで41%スクロースを含有しプロテアーゼインヒビターのEDTA,PMSF,E−
64およびペプスタチンを含有していないホモジナイゼーション緩衝液10ml中で層
分離させた(25ml/遠心分離管)。Beckman SW−28ローター内で遠心分離(26,8
00RPM×60分間)を行ってから、中間層を注意深く取り出し(合計量約150ml)、
同容積のホモジナイゼーション緩衝液(プロテアーゼインヒビターを除く)で希
釈し、テフロンポッター(3回の戻りストローク)を用いて再懸濁させ、次いで
上記のようにして再び遠心分離して、しっかり固まったペレットを得た。上澄み
液をデカントし、次いでペレットを5mMトリスHCl pH8.0に再懸濁させ全容積100
mlにした(テフロンポッター、3回戻りストローク)。再び遠心分離(Beckman
70 Tiローター中50,000RPM×60分間)に付し、ペレットを50mMトリスHCl,pH8.0
中に再懸濁させて全容積を57mlにした。
(b)形質膜の可溶化。上記の再懸濁させたCHO形質膜標品の37mlづつを、プロ
テアーゼインヒビターと原液の20%(v/v)トリトンX−100の混合物に順次
添加して、上記のホモジナイゼーション緩衝液中(全可溶化容積45ml)、次の成
分濃度:EDTA(1mM)、E−64(24μg/ml)、PMSF(53μg/ml)、ペプスタ
チンA(11μg/ml)およびトリトンX−100(最終的に2.2%v/v)にした。
この混合物を4℃て30分間ゆるやかに振盪させ、次いで非可溶化物質を遠心分離
(Beckman 70 Tiローター中50,000RPM×40分間)で除いた。可溶化されたホロ−
APPを含有する上澄み液を、0.45μMのディスクフィルターで濾過した。
(c)強力なアニオン交換クロマトグラフィによる、可溶化APP695の精製。ホロ
−APP695を含有する上記上澄み液を同容積の蒸留水で希釈し、0.1%トリトンX
−100を含有する20mMトリス−HCl緩衝液pH8.0で予め平衡化したMono-Q HR 10/1
0カラムに加えた。負荷
してから、全容積210mlの平衡緩衝液に0〜1MのNaClを含有する直線勾配液で
カラムを溶離した。流量は終止3ml/minに維持した。17〜22mmho(4℃)の伝
導率の範囲内で溶離するタンパク質は、大部分の免疫反応性APP695を含有してお
り、これを合して0.025%のトリトンX−100を含有する5mMトリス−HCl pH8.0
の2lに対しし4時間透析し、次いで遠心分離(Beckman SW 28ローター中26,80
0RPM×60分間)によってわずかの濁りを除いて清澄にした。
(d)ヘパリンアガロースクロマトグラフィ。上記の清澄試料を、透析緩衝液で
予め平衡化したヘパリンアガロースのカラム(15×1.6cm)に加えた。負荷中は
、カラムの頂部1/3内に淡褐色のバンドが生成した。負荷してから5分間づつ
画分を集めた(流量は終止1ml/minにした)。カラムは、塩化ナトリウムの最
終濃度を連続的に0,150,300,600および2000mMに調節した平衡緩衝液85mlで
段階的に溶離した。免疫で検出可能な(immunodetectable)ホロ−APPの大部分
は600mM NaClで溶出し、次の定量的画分は300mMで回収された。300mMと600mMのN
aClで回収されたAPPは別々に集めて、−80℃で別々に貯蔵した。以下の試験で使
用したAPPはその300mM NaClによる画分由来のAPPである。300mMヘパリンアガロ
ース溶出液由来の部分的に純品のAPPの収量は、湿潤CHO細胞ペレット1g当り5.
5μgであった(ブラドフォード検定法)。この標品中のAPPは、SDS PAGEによる
分析に基づいて純度が約25%であると判定した。
方法2.組換えバキュロウイルスでインフェクトされた昆虫細胞由来のホロ−AP
P695の精製
(a)細胞ペレットの可溶化。二つの5Lづつの発酵実験から収穫した細胞ペレ
ットを含し(全重量8.9gの検出可能なタンパク質)、下記のインヒビター:ペ
プスタチンA(25μg/ml);ロイペプ
チン(25μg/ml)キモスタチン(25μg/ml);アンチパイン(25μg/ml)
;アプロチニン(25μg/ml);ベンズアミジン(4mg/ml);PMSF(0.87mg/
ml)およびEDTA(25mM)を含有する0.32Mスクロース160mlに添加し、次いでテ
フロンポッター(10回戻りストローク)によってホモジナイズした。そのホモジ
ネートを遠心分離(Beckman 70 Tiローター中、105,000gで1時間)に付し、得
られたペレットを、0.5M NaClおよび先に述べたのと同じインヒビターを同じ濃
度で含有する10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)160ml中に、テフロンポッター(1
0回戻りストローク)を使用して再懸濁させた。軽く音波処理を行った後(Brans
on Sonifier Cell,2分間、パワーレベル4)、トリトンX−100を最終濃度5
%(v/v)まで添加し、次にその懸濁液を4℃で20分間ゆっくり撹拌した。そ
の混合物を遠心分離(Beckman Ti 70ローター中、50,000RPM,60分間)に付し、
そしてヘパリンアガロースクロマトグラフィにかける第一上澄み液(574mgのタ
ンパク質)を注意深く取り出した。ペレットを、0.5M NaClおよび上記の各イン
ヒビターを上記の濃度で含有する10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)160mlに、テ
フロンポッター(20回戻りストローク)を使って再懸濁させた。上記のように、
5%(v/v)トリトンX−100で可溶化し次いで遠心分離して第二の可溶化上
澄み液(683mgのタンパク質)を得た。
(b)ヘパリン−アガロースの放射状フロークロマトグラフィー。上記(a)で
得た上澄み液の両方を、以下のようにしてヘパリンアガロースで別個に精製した
。これら上澄み液に精製水と1MトリスpH9.5を加えて希釈し、容積を3.5Lにし
、コンダクタンスを1.8mmhoにおよびpHを8.0にし、パックされた樹脂250mlが入
っていてかつ0.1%トリトンX−100を含有する5mMトリス−HCl緩衝液pH8.0で予
め平衡化されたSuperflow250カラム(Sepragen社)に注入
した。負荷してから、上記カラムを平衡緩衝液3Lで洗浄し、次いで600mM NaCl
を含有する平衡緩衝液で溶離した。30ml/minの流量を全体にわたって使用した
。45mlづつの画分を、A280nmで全タンパク質について監視し(ブラドフォード
検定法)、免疫反応性APPのレベルを、実施例6i)の抗APP C末端抗血清に対す
る免疫ブロット法で検出した。有意なAPPを含有する画分を合して、抗体アフィ
ニティークロマトグラフィーに付した。
(c)抗体アフィニティークロマトグラフィー。第一上澄み液(276mgのタンパ
ク質を含有している)と第二上澄み液(113mgのタンパク質を含有)をヘパリン
アガロースで精製して600mM NaClで溶離したプールを合して、pHを8.3に調節し
、次いで実施例6ii)に記載されているようにセファロースに結合されたアフィ
ニティー精製C末端抗体が入っていて、500mM NaCl,0.1%トリトンX−100を含
有する100mM重炭酸ナトリウム緩衝液pH8.3で予め平衡化された抗体アフィニティ
ーカラム(10.5×1.5cm)に加えた。クロマトグラフィーは全体にわたって1ml
/分の流量で実施した。負荷してからカラムを70mlの平衡緩衝液で洗浄し、次い
で0.1%のトリトンX−100を含有する100mMグリシンpH2.4の50mlで溶離した。5
mlつづの画分を収集して各々1Mトリス−HCl(pH8.0)0.5ml中に入れ、A250nm
で全タンパク質を監視し(ブラドフォード検定法)、前記ののようにして免疫で
検出可能なAPPを検出した。有意なAPPを含有する画分を合した。この合したヘパ
リンアガロース溶出液を、合計5回アフィニティ精製法に付した。連続精製の各
工程から回収したAPPのプールを合してAPPの合計量は9mgになった。
(d)強い陰イオン交換クロマトグラフィ。抗体アフィニティクロマトグラフィ
からの組合せ分画(タンパク質9.0mg)を、0.025%(体積/体積)のトリトンX
−100及び150mMのNaClを含むpH8.0
の20mMのトリス−HCl緩衝液で予め平衡化されたモノ−QHR5/5カラムに適用し
た。ひとたび装荷した後、カラムを合計70mlの中で線形0.15〜1MのNaCl勾配で
溶出させた。全体にわたり0.5ml/分の流速を使用した。有意で免疫検出可能なA
PPを含む溶出された分画を組合せ、使用するまで−80℃でアリュート中に保存し
た。APPの最終調製物は、クーマシーブリリアントブルーで現像されたSDS−PAGE
に基づいて95%以上の純度を有しており、理論上の組成と86%の一致の範囲内に
あるアミノ酸組成を示し、成熟タンパク質について以下のN末端配列を示した:
Leu-Glu-Val-Pro-Thr-Asp-Gly-Asn-Gly-Leu-、2回の5L発酵ランからのペレッ
トから5.6mgの精製タンパク質が得られた。
アミノ酸分析は、基本的に他の文献中で記述されている通りに行なった(Dupo
nt,D.R.,Keim,P.S.,Chui,A.H.,Bello,R.Bozzini,M.及びWilson,K.J.
,「アミノ酸分析に対する広範なアプローチ」、Techniques in Protein Chemis
try内、編集:Tony E.Hugli,Academic Press,284〜294(1989))。2時間160
℃で2.0%のフェノールと共に6Nの塩酸を用いて蒸気相内のアルゴンの下で試
料を加水分解した。オンライン式130A型分離システム及びネルソン分析用2600
型クロマトグラフィソフトウェアを用いて、Applied Biosystemsの420A型デリ
ヴィタイザー(Derivitizer)上でフェニルチオカルバモイル−アミノ酸分析を
行なった。
例8.ヒト脳プロテアーゼ下位分画を触媒としたAPP695の分解の検出のための
イムノブロット検定
(a)基質APPを用いたインキュベーション
(i)所要量の2Mの保存緩衝液を付加することによりpH6.5のMES緩衝液中の最
終的な140mMにまで調整された組換え型ヒトAPP695(10.75μl)を用いて、37℃
で24時間、(例1に記述されていると
おりの段階から得られたイオン交換分画又は濃縮された分画プール(例3)の5
μlアリュートをインキュベートする。インキュベーション中の最終的緩衝液濃
度は95mM,pH6.5であった。インキュベーション時間中、APP695のいくつかのタ
ンパク質分解による劣化が起こり、より低いMrフラグメントを生み出す。
(ii)36%(体積/体積)のグリセロール及び12%(体積/体積)のSDS,10%
(体積/体積)の2−メルカプトエタノール及び微量のブロモフェノールブルー
トラッキング用染料を含む1.5MのトリスHCl,pH8.45といった3xのLaemlie SD
S−PAGE試料緩衝液を7.5μl付加することによって、タンパク質分解反応を終結
させた。試料を加熱し(100℃×87分)、次に冷却させた。
(b)SDSPAGE分析:
10〜20%のアクリルアミド勾配トリシンゲルのウエルに対して、反応混合物(
15μl)を適用した(日常的には、厚み1.0mmの15ウエルNovexプレキャストゲル
、Novex Experimental Technology,San Diego,CA)。ゲルを恒常電圧条件下で
、そして50Vにて、試料がゲルの中に入るまで走行させ、入った時点で電圧を10
0Vにまで上昇させた。トラッキング用染料がゲル底面から0.5cm以内のところに
達した時点で、電気泳動を中断させた。Mrが3〜195kDaの範囲内にある予め染色
されたMr標識を用いて(Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD)
、ゲルを較正した。高分子量と低分子量の標識を含むキットを各々10マイクロリ
ットルずつ10μlの3x試料緩衝液と混合し、(a)(ii)項に記載されている
とおりに処理した。予め染色された標識としてはキット内に以下の分子量標識タ
ンパク質が存在していた:ミオシンH鎖(196kDa);ホスホリラーゼB(106kDa
);ウシ血清アルブミン(71kDa);オバルブミン(45.3kDa);炭酸脱水酵素(
29.1kDa);ベーターラクトグロブリン(
18.1kDa);リゾチーム(14.4kDa);ウシトリプシン阻害物質(5.8kDa);及び
インシュリンA及びB鎖(3KDa)。
(c)イムノブロット法、
(i)その後ゲルを小型トランスブロット電気泳動セル(Biorad labs,Richmon
d,CA)に移した。150mMのグリシン及び20%(v/v)のメタノールを含むpH8.
5の20mMのトリスHCl緩衝液といった4℃に維持したトランスファ緩衝液を用いて
、100V(恒常)で1時間ProBlott(TM)膜(Applied Biosystems.Foster City
,CA)上でタンパク質を電気ブロットに付した。
(ii)ProBlott膜をとり出し、150mMのNaClを含むpH8.0の10mMのトリスHCl緩衝
液中の5%(重量/体積)の脱脂粉乳という組成の15mlの遮断用緩衝液内に1時
間室温で放置した。
(d)APP及びC末端分解産物の免疫検出:
合成ヒトAPP695C−末端ペプチド免疫原に対して惹起されたウサギポリクロー
ナル抗血清の1:1000希釈液を含む15mlの遮断用緩衝液に膜を移し、一晩4℃で
インキュベートした。
5分間穏やかに振とうさせながら連続三回の15mlの体積の遮断用緩衝液で、膜
を洗い流した。次に、アルカリ性ホフファターゼでカップリングされたヤギ抗ウ
サギIgGの1:1000希釈液(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)を含む15mlの
遮断用緩衝液に膜を移し、90分間室温でインキュベートした。その後、10分間穏
やかに振とうさせながら、連続三回の15mlの体積の遮断用緩衝液を用いて、膜を
洗い流した。
次に、100mMのNaCl及び5mMのMgCl2を含むpH9.5の100mMのトリスHClを含むア
ルカリ性ホスファターゼ緩衝液を各々15mlの体積で5分間、連続三回用いて、膜
を洗浄した。次に100mMのNaCl,5mMのMgCl2及び50μlのBCIP基質(50mg/ml,
Promega,Madison,
WI)そして99μlのNBT基質(50mg/ml,Promega)を含むpH9.5の100mMのトリス
HCl 15mlを用いて、暗所でゲルをインキュベートした。低いMrの免疫反応性バン
ドが見かけ上さらに強まることが全くなくなるまでインキュベーションを続行し
た(標準的には室温で3時間)。次にゲルを脱イオン水で洗い流し、乾燥させた
。
APP695を酵素的に分解してC−末端断片を生ずる細分画ヒトAD皮質のモノ−Qプ
ールの能力の分析
実施例3に記載するP−2,Sおよびmプールの各々を前述のイムノブロット
アッセイにかけた。真性のAPP基質分子の使用と組み合わせた、免疫原検出法の
特異性は、高度に精製された酵素調製物を使用する必要性を回避する、比較的粗
製の生物学的抽出物中のAPP分解性酵素の活性を検出する選択的方法を提供する
。こうして、部分的に精製したプールのあるものは、時間依存的態様でC−末端
APP断片を形成できるタンパク質分解活性を有した。ヒトAD脳のイムノブロット
分析の代表例は、P−2V(パネルa)、M III(パネルb)およびSI(パネ
ルc)について、ならびにP−2VIIプール(パネルd)のプール前の個々の画
分については第1図に示されている。
プールM IIIについて、例えば、第2f図に描写されているような、時間過程
の実験は、これらの断片が時間0に基質または酵素画分の中に存在しないことを
示した。さらに、基質単独のインキュベーションはそれらを形成しなかった(例
えば、第2a図、レーン2、第2d図、レーン2、第2f図、レーン8を参照の
こと)。バンドの大きさの範囲は、酵素画分に依存して、Mrがほぼ11.5kDa〜25k
Daの間で変化したが、反応において形成した異なる生成物の数は驚くほど少なか
った。pH6.5において、合計39のADプールのうちの8つはこのような活性を有す
ることが発見された。プールはi)脳
の細分画、ii)カラムの溶離のイオン強度、およびiii)定性的APP切断パターン
に基づいて互いに区別することができた。
6つの選択したプール(「M−III,M−VIII,S−I,S−III,P−2V、
およびP−2VII」と表示する)は有意なAPP分解活性を有することが発見された
。対応する対照脳プールはまた、多少の上記の活性を含有したが、活性のレベル
が対照プールとADプールとの間で異なるか否かを決定することは不可能であった
。上記の6プールの各々は11kDaのAPPのC−末端断片を形成できる酵素活性を有
した。
MRが11.5kDaのタンパク質分解生成物はとくに興味あるものであった。なぜな
ら、それは、それ以上の研究において、通常主要な免疫検出可能なC−末端生成
物であり、そしてベータ−アミロイドペプチドのn−末端アスパルテートで開始
しそして全長の分子(C−100断片)のC−末端に延長するオープンリーディン
グフレームからなるAPPの組換えC−末端断片と共移動することが発見されたか
らである。この共移動は第2d図に例示されている。この意味は、11.5kDaのバ
ンドがA4領域のN−末端またはその付近のAPPの内部タンパク質分解生成物で
あること、およびこの断片を形成できる前述のプロテアーゼ活性は、アミロイド
発生ペプチドの発生において生体内である役割を演ずることができることにある
。
第2d図は、少なくともP2プールVIIの場合において、APPタンパク質分解の
11.5kDaのC−末端の酵素生成物は凝集することができることを示す。PMTI100推
進C−100標準と共移動するMr11.5kDa、および18kDaの断片におけるペプチドの
バンドの出現に加えて、Mr24.3,27.4および35.5kDaに他のバンドが出現する。2
4.3および35.5kDaのバンドは、C−100断片の、それぞれ、二量体および三量体
について期待されるMrをもち、そして凝集のためであるC
−100における対応するかすかなバンドとほぼ共移動する(詳細については実施
例5を参照のこと)。
第2a図〜第2c図は、また、古典的プロテアーゼインヒビターの作用を検査
するためにこのアッセイを使用できることを示す助けをする。例えば、第2a図
から明らかなように、P−2Vはメタノールにより部分的に阻害されそしてメタ
ノール性ペプスタチンAにより完全に阻害されるが、M−III(第2b図)およ
びS−I(第2c図)の両方はアプロチニンおよびシステインにより完全に阻害
される。こうして、このアッセイは、1つの態様において、APP分解酵素の新規
な生体外インヒビターについて探索に適用される。これにより同定される効力の
ある化合物を、適当に動物モデル、例えば、APPまたはそのベータ−アミロイド
含有断片を過度に発現するようにデザインされたトランスジェニック動物を使用
して生体内の効能について試験する。
下表4は、ペプチド生成物の大きさ、生成物の形成についての見掛けのpH依存
性、および商業的に入手可能なプロテアーゼインヒビターの作用を包含する、モ
ノ−Q画分から回収されるAPP分解活性の6つの主要なプールの性質のいくつか
を要約する。
活性のいくつかはアルカリ性の範囲の最適なpHを有し、そしてリソソームのカ
テプシンの作用のためであるように思われなかった。この観察は意味がある。な
ぜなら、いく人かの研究者らは、病理学的APPのプロセシングはエンドソーム−
リソソームの経路内でプロテアーゼにより実施されると報告したからである(Ca
taldoら、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3861;Benowitzら、1989,E
xperimental Neurology,106:37;Coleら、1989,Neurochem.Res.14:933)
。この経路内の酵素は活性pH最適値を示すことが期待されるであろう。
入手可能なデータに基づいて、M−IIIおよびS−Iはすべての列挙した基準
により高度に類似し、そして多分SおよびM画分の各々の同一の酵素の交差汚染
を表す。したがって、ヒト能がAPPを分解して11.5kDaのC−100様生成物断片を
生ずることができる最小5つの異なるプロテアーゼ活性を含有する可能性がある
。
表4が示すように、活性のいくつかは試験したインヒビターのいずれかによる
阻害に対して不感受性であり、そしてこれらの酵素は異常なグループの構成員を
表すことができる。M−IIIおよびSIにおける11.5kDaのC−100断片の形成に
関係する活性はセリンまたはシステイン型であるか、あるいは異常なグループの
構成員を表す。あるいは、これらの画分はセリンおよびシステインの両方のプロ
テアーゼを含有することができ、両方の酵素はC−100の生産において絶対的(
順次の)役割を演ずる。P2Vはアスパラギン酸プ
ロテアーゼ活性およびセリンプロテアーゼ活性の両方を含有するP2VIIはPMSFに
向かうその感受性に基づくセリンプロテアーゼ活性を含有する。しかしながら、
引き続く研究において、ペプスタチン阻害可能な活性が認められ、表4における
セリンプロテアーゼ活性と一緒にアスパラギン酸プロテアーゼのP2中の共局在
化を示した。S IIIまたはM VIIIにおける酵素活性のいずれも試験したイン
ヒビターのいずれに対しても感受性ではなかった。いずれの場合においても、実
施例3において使用したN−ダンシルペプチド基質を使用する酵素プールの共イ
ンキュベーションによるAPP分解の阻止を証明することができなかった。
APP活性(実施例8)とモノ−Qプールのペプチダーゼ活性(実施例3および
第1図)の回収を比較すると、2つの活性の間に相関関係がほとんど存在しない
ことが明瞭に示される。こうして、APP分解活性は比較的ペプチダーゼ活性をほ
とんど示さないプールの中に大部分含有された。これが示唆するように、APP分
解活性は劣ったペプチダーゼであり、そして活性のために無傷の折りたたまれた
APP基質を必要とすることがあるか、あるいは選択したペプチドは病理学的APPプ
ロセシングの誤った位置を表す(しかしその可能性は少ない)。それにもかかわ
らず、この発見は他の研究者らがペプチド基質に基づくアッセイを使用して普通
のAPP分解酵素の同定に成功しなかった理由を説明する。
上の考察から、本発明のアッセイはヒト脳からの特定のAPP分解酵素の単離を
可能とするために十分な特異性を有すると結論される。
それ以上の研究において、P−2VII関連APPアーゼの回収を追跡するためにイ
ムノブロットアッセイをわれわれは使用した。研究はこのプールに集中された。
なぜなら、それは6つの特徴づけられ
た活性の最大の発生量を表し、かつアミロイド的であると思われるC−末端断片
を発生したからである。それはP−2細分画のイオン交換分離から回収可能な主
要な活性を表し、そしてペプチダーゼ活性の主ピークと一致しない勾配中の一点
において溶離される。
APPアーゼを表示するP−2VII画分をプールし、そして2つの直列のスパロー
ス(Superose)12カラム(ファーマシア)の大きさ排除クロマトグラフィーにか
けた。溶離された画分中のペプチダーゼおよびAPPアーゼを分析した(第3a図
)。K−M切断活性は一部分オーバーラップすると思われたが、M−D活性のピ
ークは再びまたAPPアーゼのピークと一致しなかった。既知の分子量のマーカー
に対するクロマトグラフィーの目盛り定めは、P−2VII画分のAPPアーゼ活性に
ついて±6.5kDaの不確実さをもつ31.6KDaの見掛けのメジアンMrを生じた(第3
b図)。
実施例9 APPC−末端のプロセシング酵素としてのカテプシンDの同定
実施例4、方法2、に記載するバキュロウイルスの発現系、および実施例7、
方法2、の精製系を使用することによって、より大きい量のホロ−APP695が得ら
れたので、ペプチダーゼ活性に基づいて作った画分のプール中のAPP分解酵素の
含量を評価する(実施例8において実施したように)よりむしろ、ヒト脳酵素の
精製からの個々のカラムの画分中のAPP分解酵素の回収を追跡することができる
ようになった。
実施例1の方法に従う可溶化P−2画分の精製からの個々のモノ−Q画分につ
いて、APP分解酵素活性の含量を第5図に示す。モノ−Qクロマトグラフィーに
かけた可溶性およびミクロソームの画分の同様な分析と比較したとき、酵素のC
−末端APP断片についての相対的染色強度はモノ−QからのP−2細分画におい
て首尾一貫し
て最大であった。P−2におけるAPP分解活性は、2つの明確な移動ピークとし
てモノ−Qから回収された(AおよびB、第5図)。
ピークAは、われわれの初期の研究において見られるように、負荷および低い
イオン強度の洗浄において、すなわち、P−2Vの回収にほぼ相当する領域にお
いて溶離される(表4)が、ピークBはP−2VII活性が前に観察されたプール
した領域とオーバーラップし(表4)、そしてセリンおよびアスパラギン酸プロ
テアーゼ活性の両方からなることが示された。同様な大きさの分解生成物はMrほ
ぼ28,18および14および<11kDaにおいてピークAおよびBの両方の活性をもつ
ことが観察されたが、18kDaバンドの相対的染色強度はピークAよりピークBに
おいて非常に大きかった。ピークBをプールし、そして実施例1、方法1に記載
するようにスパロース(Superose)6HRで精製した。溶離された画分は2つの定
性的に明確な型の活性を含有し、これらはそれらの溶離のプロフィルがオーバー
ラップした。もとのピークBの画分で観察されたものに最も密接に類似するAPP
破壊パターンを生成する活性(第5図)が、ゲル濾過からの画分51〜56において
回収され(第6b図および第6c図)、15〜25kDaの見掛けのMrと一致した。こ
の溶離のピークの前に、主として18kDaの破壊生成物を形成する活性の溶離が存
在し、そしてこれは多分より大きい見掛けのMrのプロテアーゼにより触媒される
。この後者の活性は、実施例8、表4におけるP−2VIIプール中の前述のセリ
ンプロテアーゼ活性に多分相当する。ピークB(および15〜25kDaのMr領域内の
)のゲル濾過精製からの活性画分は古典的プロテアーゼインヒビターによる阻害
について試験した(第7図)。これらの研究により、ピークB活性はペプスタチ
ンAにより定量的阻害により決定してアスパラギン酸プロテアーゼにより大きく
触媒されることが確証された。
比較的わずかのヒトアスパラギン酸プロテアーゼが知られている。同定された
ものは、カテプシンDおよびE、およびペプシンを包含する。観察された活性が
これらの酵素のいくつかに相当することができる可能性を試験するために、バキ
ュロ誘導ホロ−APPを酵素的に分解するそれらの能力について、ヒトレニンの商
業的調製物(カルビオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州サンディエゴ、カ
タログNo.553864)、およびヒトカテプシンD、およびヒトカテプシンD(ヒト
肝臓、カルビオケム(Calbiochem)、サンディエゴ、カタログNo.219401)を検
査した。
ヒトカテプシンD(カタログNo.219401、カルビオケム(Calbiochem)、カリ
フォルニア州サンディエゴ)は、銀染色で展開したSDS−PAGE上で電気泳動的に
均質であり、カテプシンDの理論的組成とのすぐれた(93%の)一致を示すアミ
ノ酸組成を示した。すべてのN−末端はカテプシンDに相当し、主要な配列は成
熟プロテアーゼの軽鎖(GPIPEVLKNY)および重鎖(GGVKVERQVF)に相当する当量
モル量で存在する。
レニンは不活性であった(示されていない)が、カテプシンDはAPPを選択的
に切断して、モノ−Qからの前述のP−2ピークB(第5図)で観察されたもの
と同様なC−末端分解生成物のパターンを生成する。こうして、商業的カテプシ
ンD調製物は時間依存的方式でホロ−APPを分解して近似Mr18および28kDaの主要
なC−末端生成物を生成した。ペプスタチンAによる活性の阻害はこの反応にお
けるカテプシンDの関与を確証した(第8図)。
ヒトカテプシンDに対する商標的ポリクローナル抗体を入手し(ダコ・コーポ
レーション(Dako Corp.)、カリフォルニア州カーピンテリア、カタログNo.A5
61)、そしてイムノブロット上のヒトカテプシンDに対して反応性であり、Mr27
〜28kDaの免疫反応性バン
ドを発生することが発見された。この抗体をイムノブロットアッセイにおいて使
用して、P−2、可能性またはミクロソームの画分のモノ−Q精製からのクロマ
トグラフィーの画分が免疫反応性カテプシンDを含有するかどうかを検査した。
抗体はイムノブロット上のヒトレニンと交差反応しなかった。
有意な量のカテプシンDがP−2のモノ−Q画分(第20d図)およびAPP分解
活性を有する可溶性画分(データは示されていない)において観察された。興味
あることには、P−2のモノ−Q画分の分析においてカテプシンDの反応性の2
つのクロマトグラフィー的に明確なピークが観察され、それらの各々はピークA
およびBと一致した(示されていない)。ピークA活性に関連する免疫反応性ア
スパラギン酸プロテアーゼ、カテプシンDは、実施例8のP2Vが前に同定され
た領域と一致した。これが示唆するように、ピークAおよびBはカテプシンDの
多数の形態のためであることができる。カテプシンDの多数の形態はどこかに記
載し、そして単一の遺伝子生成物の翻訳後の修飾の差に帰属された。P−2のピ
ークB(第5図)のそれ以上の精製からのゲル濾過カラムの画分のイムノブロッ
トアッセイは、カテプシンDの免疫反応性の存在がAPP分解活性のピークと正確
に一致することを示した(第6b図)。
カテプシンDの免疫反応性との共移動性およびカテプシンDに対する分解性AP
Pの類似性に加えて、ゲル濾過によりさらに精製したピークBのプロテアーゼは
、C−末端のAPP分解存在の形成についてのカテプシンDと同一のpH最適値(pH
4〜5)およびイオン強度の依存性を示した(第9図)。最後に、P−2画分に
おいて観察された免疫反応性バンドは、バイオラド・ミニフォル(Biorad ninip
hor)クロマトグラフィー系の分離用IEFにかけたとき、カテプシンDについて報
告したのもに類似するpI(4〜6)を示した(示され
ていない)。集合的に、ヒト脳P−2のモノ−Q画分後に観察されるペプスタチ
ン感受性APPプロテアーゼ活性はカテプシンDの作用のためであるという事実を
、これらのデータが強く支持する。
次いで、ピークBプロテアーゼ(ゲル濾過により精製した)およびカテプシン
Dのペプチダーゼ活性を、基質として合成ペプチドN−ダンシル-Ile-Ser-Glu-V
al-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2(配列識別番号:7)を使用して比較した
。両方の酵素はこのペプチドを時間依存性方式で非常に遅い速度にかかわらず加
水分解した。両方の酵素について、主要な切断は-Glu-Val-結合において観察さ
れ、そしてより少ない程度に-Met-Asp-結合において観察された(第10図)。第1
0図において、Met-Asp切断生成物の大部分をさらに描写した24時間の時点までに
Glu-Val生成物に変換されたことに注意すべきである。期待されるように、カテ
プシンDおよびP−2酵素調製物により触媒されるペプチダーゼ反応の両方はペ
プスタチンAにより阻害された。
両方の酵素はGlu-Val-結合における加水分解のための酸性最適値をpH4に示し
た(第1図)。-Met-Asp-における加水分解は、また、カテプシンDで酸性最適
値(<pH3.0)を示したが、P−2酵素では、2つの最適値が観察され(pH3.0お
よびpH7.0において)、これは多分中性のpH最適値での反応における追加の汚染
性P−2プロテアーゼの沈澱のためであった(第11図)。カテプシンDは通常疎
水性残基の間で加水分解する。しかしながら、酸性pHにおいて、AspおよびGlu側
鎖のプロトン化(中性の)形態はプロテアーゼのサブサイト結合の要件を満足す
るために十分な疎水性であるように思われる。Asp側鎖のpKaはGlu残基よりいっ
そう酸性であり、そして第11図において検査したpH範囲を通じてGlu残基より少
ない程度にプロトン化されるであろう。これはカテプシンDでは-Met-Asp-結
合においてより低い切断速度、および-Glu-Val-結合と比較したとき、この部位
における切断についてより低いpH最適値におけるヒント(hint)を説明すること
ができる。
イムノブロットアッセイにおけるモノクローナル抗体C286.8Aを使用する他の
研究により、P−2酵素活性がカテプシンDのためであることが確証された。わ
れわれのいっそう最近の研究において、この活性は可溶化P−2画分のイオン交
換クロマトグラフィーからの塩の勾配で初期のかなり狭い数の画分にわたって溶
離された単一のピークとして回収された(第20a図)。APP695を生体外で加水分
解して15〜38kDaの大きさの範囲の断片を形成し(第20b図)、それらのすべて
はベータ−アミロイドの最初の7つのN−末端残基を認識するネズミモノクロー
ナル抗体(C286.8A)に対して反応した(第20c図)。プールした画分の活性は1
0μMのペプスタチンA、アスパラギン酸プロテアーゼインヒビターにより完全
に阻害された(第20b図)が、他のプロテアーゼの阻害、例えば、EDTA(1mM)
、PMSF(0.4mM)、E−64(0.1mM)、およびアプロチニン(10μg/ml)により
影響を受けなかった(示されていない)。APP分解活性は、APP模倣N−ダンシル
−ISEVKMDAEFR−NH2を−E−V−結合において加水分解するペプスタチン感受性
プロテアーゼの溶離と一致した(第20a図)。カテプシンDは、20kDaのカテプ
シンD軽鎖のイムノブロット分析により判定して、ホロ−APPおよびペプチド分
解活性と共溶離した(第20d図)。
高度に純粋なカテプシンDはホロ−APPを分解して、P−2アスパラギン酸プ
ロテアーゼ活性を使用して観察されたものと区別できないC286.8A免疫反応性生
成物(第21b図)のパターンを生成した(第21b図)。免疫吸着実験を実施して
、P−2アスパラギン酸プロテアーゼとカテプシンDとの間の可能な免疫学的同
一性を検査し
た。それらのAPP分解活性に基づいてプールしたイオン交換画分(第20a図)を
、カテプシンDに対するイムノアフィニティー精製した抗体のカラムか、あるい
は精製した対照を含有する対照カラムに等しい量で適用した。2つのカラムのた
めのA280の溶離のプロフィルを重ねることができた(第21a図)。対照カラム
からの貫流画分は、最初の空隙後に適用したプールと同一レベルのAPP分解活性
を含有した(すなわち、画分5以降、第21b図)。対照的に、APP分解活性は抗
カテプシンDカラムからの貫流から画分9(追加の5.7空隙体積)まで本質的に
存在せず、そして画分27(31空隙体積)までの適用したプールの中に存在するレ
ベルに等しいレベルに到達しなかった。抗カテプシンDカラムからの貫流中のAP
P分解活性のこの損失は、固定化されたのと同一の抗カテプシンD抗体で検出さ
れた免疫反応性カテプシンDの軽鎖(20kDa)および重鎖(27kDa)の消耗と一致
した(第21c図)。カテプシンDの免疫反応性は抗カテプシンDカラムから回収
されたが、0.5%のトリトンX−100を含めたとき100mMのグリシンpH2.5を使用す
る溶離により対照カラムから回収されなかった。免疫反応性カテプシンDに相当
するバンド以外のタンパク質バンドはこの溶離において検出されなかったことに
注意すべきである(第21c図)。これにより、吸着されたAPP分解活性がカテプ
シンDそれ自体以外の免疫学的に交差反応性のプロテアーゼから生ずる可能性は
ありそうに思われない。不都合なことには、微量のみのAPP分解酵素活性が抗カ
テプシンDカラムから回収された(示されていない)。これは多分この活性が中
和された溶離緩衝液により阻害されたためである:溶離緩衝液の組成物は、また
、精製されたカテプシンDによるホロ−APPの分解を定量的に阻害した(示され
ていない)。
ヒトカテプシンDに対する固定化されたポリクローナル抗体は、
また、イオン交換プールの中に存在するAPPペプチド加水分解活性を免疫吸着し
た(第22図)。部分的加水分解の条件下に、イオン交換プールはダンシル−ISEV
KMDAEFR-NH2をM−DおよびE−Vの両方の結合において切断した(第20図にお
けるように延長したインキュベーションの条件下に、M−D切断からの生成物は
二次タンパク質分解によりE−V生成物に究極的に変換された)。APP分解活性
を使用するときのように、E−V(第22a図)およびM−D(示されていない)
結合の切断の蛍光生成物を生ずるペプチダーゼ活性は、最初に、対照IgGカラム
からの貫流の画分5の中に現れたが、画分12〜13まで抗カテプシンDカラムから
本質的に見られなかった(第22a図)。低いレベルのM−DおよびE−Vペプチ
ダーゼ活性は引き続いて抗カテプシンDカラムから回収されたが、グリシン/ト
リトンpH2.5を使用する溶離により対照IgGカラムから回収されたなかった(第22
b図)。貫流の中に、あるいは酸性溶離により回収されたペプチダーゼ活性の各
々はペプスタチンAにより完全に阻害された。いわゆるスウェーデンのFADにお
いて観察されたAPP位置の対応するペプチド模倣(N−ダンシル−ISEVNLDAEFR-N
H2)を使用する並行実験において、同様な結果が得られた(第22c図および第22
d図)。しかしながら、この後者のペプチドでは、蓄積する主要な蛍光生成物が
L−D結合の切断から生じた。このペプチドの蓄積速度は非常に速かったので、
この反応に利用可能な基質のすべてはインキュベーション時間内によく消耗され
、第22c図の貫流画分の中に異なる活性の低い評価に導いた。再び、貫流の中に
、あるいは溶離により回収されたペプチダーゼ活性はペプスタチンAにより阻害
された。ペプチダーゼは、野性型APP模倣基質におけるM−D結合の切断につい
て観察された速度より速い見掛け速度でスウェーデンのペプチド模倣の中に存在
するL−D結合を加水分解した。
期待されるように、他の基質のカテプシンDの加水分解について報告されたも
のとおおよそ一致した切断に相当するいくつかの生成物が観察された(Moriyama
ら、1980,J.Biochem.88:619)。報告
されたカテプシンDを除外して、カテプシンD特異性はバンド3の主要な生成物
、およびバンド5の小さい生成物を形成する-Glu-Val-切断、バンド1および2
の-Leu-Arg-切断生成物を含んだ(表5)。
APP593-594における-Glu-Val結合の切断は、ペプスタチン阻害性反応において
ペプチド基質(前述したような)中の対応する結合を切断するカテプシンDの観
察された能力と一致した。カテプシンDは通常ある種の疎水性残基の対の間を加
水分解する。Glu-Val結合における切断は、予期されなかったが、グルタメート
残基の側鎖のプロトン化(pKa=4.25)のために酸性(pH5)条件下に多分起こ
り、それを中性とする。
事実、-Glu-側鎖の18%はpH5.0においてプロトン化されるであろうと結論する
ことができる。このような酸性条件はリソゾームまたは分泌顆粒中で起こるか、
あるいは組織の損傷のときに、か、あるいはヒポキシアまたは虚血後に誘発され
ることがある。
最も有意には、カテプシンDは、普通の形態のベータ−アミロイドのN−末端
と称される-Asp-残基に対してN−末端の3アミノ酸残基を-Glu-Val-結合におい
て異形加水分解により、5.6kDaの生成物(バンド3、表5)を発生した。この断
片はカテプシンDを使用しないインキュベーションから取ったブロットの同等の
区画の中に存在しなかった。さらに、この断片は全長のベータ−アミロイドペプ
チドを含有する正しい大きさ(5.6kDa)を有し、そしてその発生はカテプシンD
が、また、ベータ−アミロイドペプチドのC−末端領域に密接する第2部位にお
いてAPPを切断しなくてはならないことを示唆する。
事実、このようなC−末端の切断のための前駆体基質は、また、バンド5にお
いて同定され、これはMr(10.0kDa)を示した。この断
片の配列が示唆するように、それはC−末端ドメインのすべてでないにしても、
大部分を含有し、そしてそれはAPP593−594における単一の-Glu-Val-切断により
発生した。
APP695は、カテプシンD切断のための理想的な基質であったと思われ、しかも
カテプシンDにより切断されなかった多数の他のペプチド結合を含有する。それ
らが加水分解されなかったという事実は、折りたたまれたAPP構造内のカテプシ
ンDに対するアクセスから離れた、これらの部位の高度の隔離を反映する:疎水
性対の大部分は疎水性APPタンパク質コアに位置することが期待されるであろう
。同一の考察は、カテプシンDにより加水分解されることが示された部位(表5
)が最適なカテプシンD認識モチーフを常に含有しなかった理由を説明する。タ
ンパク質表面上に位置するためには、このような部位はカテプシンDが触媒する
切断のために理想的であるより大きい程度の極性または電荷を含有しなくてはな
らないであろう。これに関して、5つの内部の切断部位のうちの3つは2つのプ
ロリン残基を含有し、それらの各々は切断容易な結合の8残基内に存在したこと
は注目に値する。このような残基はしばしば二次構造中の破壊に関連するか、あ
るいはタンパク質表面にしばしば見出される屈曲(turns)に関連する。
平行のイムノブロット(第12c図)において、生成物のペプチドのいくつか(
矢印の位置)はベータ−アミロイドのN−末端残基に対するモノクローナル抗体
C286.8A)と反応した。これらは第12a図(表5)中のバンド3と同一の位置に
おいて移動するMr5.6におけるバンド、第12a図(表5)中のバンド5と共移動
するMr9〜10kDaの間のタブレット、およびMr14kDaにおけるタブレット、および
第12a図中のバンド6と共移動する16〜18kDaにおけるタブレット、Mr40kDaにお
けるバンドを含んだ。配列決定したバンド(表5)
のうちで、バンド3,5および6のみが第12c図により検出されたバンドと共移
動した。これに一致して、表5中のこれらの同一の3バンドのみは適当なN−末
端配列をもち、そしてベータ−アミロイドのエピトープを含有する大きさであっ
た。
第12図に記載するベータ−アミロイドの免疫反応性分解生成物の時間的順序の
形成を、わずかに異なるモル比のカテプシンDおよびAPP(第13図)下に、ペプ
チダーゼ活性の不存在または存在の両方において実施した。インヒビターの不存
在下に、低分子量断片の時間依存性蓄積が観察され、これは、それぞれ、Mrほぼ
16〜18および28kDaにおけるバンドの形成で最初に開始された。2時間において
、Mrほぼ40kDaにおけるバンドが観察された。16〜18および40kDaのバンドは2時
間を越えてさらに増強されたが、28kDaのバンドの強度は時点を越えて一定に止
まった。16〜18および40kDaの強度は8時間を越えてさらに増加した。8時間と2
1時間との間に、Mrほぼ14,10および5.6kDaにおいて検出可能なバンドの強度の
実質的な増加が存在した。これらの後者の3つのバンドは16〜18または40kDaと
平行に増強しなかったので、14,10および5.6kDaのバンドは16〜18または40kDa
のバンドのいずれかまたはすべての二次的分解から誘導された可能性が存在する
。第13図に記載する16〜18または40kDaのバンドは、表5中に列挙しかつ第12c
図に示す同一のMrバンドに相当した。第13図において観察されるバンドのすべて
はペプチダーゼ活性により阻害され、それらがカテプシンDの作用により発生し
たことを確証した。
第23図は、表5が作成されて以来同定されたものを包含するように、カテプシ
ンDにより形成されたAPP断片の配列の更新を提供する。それは、また、第12c
図において観察される特定のC286.8A免疫反応性バンドに配列を関係づける。各C
286.8A免疫反応性バンド
について、配列決定ブロットの対応するセグメントは、C286.8Aエピトープを含
有しかつこうしてイムノブロットのバンドを説明するために十分な大きさおよび
配列の1または2以上の断片を生じた(第23a図)。成熟βAPPのN−末端の外
に、CDを使用する消化は7つの異なる切断から生ずるβAPPのN−末端を生じ(
第23b図)、これらはカテプシンDの報告された特異性とおおよそ一致した(A
.Moriyamaら、1990,J.Biochem.88:619;J.van Noortら、1989,J.Biol.
Chem.264:14159;およびM.Tanjiら、1991,Biochem.Biophys.Res.Comm.1
76:798)。断片化パターン(第23b図)が示唆するように、5.5kDaの断片はよ
り大きい前駆体、例えば、38kDaのペプチド、あるいは第13図のさらに特徴づけ
られない一時的28kDaの断片の漸進的N−末端およびC−末端の減少により起こ
る。5.5kDaの免疫反応性断片は同一配列をもつ10〜12kDaの断片から直接誘導す
ることができるであろう。これらの断片およびMr15〜16の断片の両方は、βAPの
全長のコピーを含有するために十分な大きさを有するように思われる。明らかな
ように、他の生成物、例えば、10〜12kDaの免疫反応性断片のそれ以上のプロセ
シングから生ずる生成物は、多分それ以上の分解、あるいはエレクトロブロッテ
ィングの間の損失のために、検出されないままであることがある。
アルツハイマー病のアミロイド−シスにおける主要なプロテアーゼとしてカテ
プシンDの関係は、ここで、アルツハイマー病に関してなされた他の観察を説明
する。第1に、APPがリゾチームの中に蓄積しそしてそこでプロセシングされて
アミロイドを有する断片を生ずるという増大すう証拠が存在する(Haasら、1992
,Nature,357:500)。アミロイドの沈積はリソソームの酸性pHにおいて好適で
ある(Burdickら、1992,J.Biol.Chem.267:546)。第2に、カテプシンDは
リソソームのプロテアーゼであるが、また、アルツハイ
マーの脳におけるアミロイドの沈積に関連する有意なレベルで存在することが組
織化学的に示された(Cataldoら、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3861
)。
第3に、培養において細胞により解放されるベータ−アミロイドは残基Val594
で開始する小さいN−末端配列からなり(Haasら、1992,Nature,359:322)こ
の配列はベータ−アミロイド1−42において普通に見られるAsp597で開始するよ
り豊富な配列に対してN−末端の3アミノ酸である。小さい配列は、多分、位置
593−594、すなわち、カテプシンDにより特定のタンパク質分解を行うことが現
在示されたのと同一部位、における-Glu-Val-結合の直接的内部タンパク質分解
により発生する。ここで、カテプシンDは-Glu-Val-および-Met-Asp-の両方の結
合を加水分解するので、それはHaasらにより配列決定されたベータ−アミロイド
断片の両方を形成するために必要な特異性を有することが強調される。
第4に、システインプロテアーゼのインヒビターE−64およびロイベプチンは
LC−99細胞によるベータ−アミロイドの解放に影響を及ぼさないが、一般的リソ
ソームのインヒビターはこの解放をブロックし(Shojiら、1992,Science,258
:126)、これらの細胞によるベータ−アミロイドの形成はシステインプロテア
ーゼ以外のリソソームの酵素により触媒されることを示した。このような反応の
ための残りの候補のプロテアーゼは、それらの研究において使用したシステイン
プロテアーゼインヒビターにより阻害されない。
さらに、APPはベータ−アミロイドのC−末端と膜アンカー配列との間の疎水
性残基のストレッチを含有する。この領域におけるペプチド結合のあるものはカ
テプシンDにより加水分解されることができるであろう。事実、位置645−646に
おける-Leu-Val-結合は、PEPTIDESORTコンピュータープログラムにより、可能な
カテプシ
ンD認識部位であるとして強調される。この部位は、家族性アルツハイマー病(
FAD)のある形態と共分離することが示された3つの点突然変異の位置に密接す
る。この領域内の切断ならびに位置593−594における-Glu-Val-結合は、表5に
おけるバンド3の大きさを説明することができるであろう。この部位におけるFA
D突然変異は、この領域内のカテプシンDによるAPP切断速度を増強することがで
きるであろう。
最後に、位置595〜596における-Lys-Met-から-Asn-Leu-への二重突然変異は、
また、FADと共分離する。この突然変異は、特定のアミロイド発生プロテアーゼ
が-Lys-Met-結合付近の切断のための特異性をもって存在する可能性をなくする
ように思われる。なぜなら、その突然変異はこのような酵素による切断を増強す
るよりむしろ妨害することが期待されるであろうからである。むしろ、ベータ−
アミロイドを生ずる一次的内部タンパク質分解がこのジペプチドに隣接して、好
ましいそれに対してN−末端で起こる可能性を増加する。Glu-Val-結合は、S1
およびS1′位置において影響を受けないで残った、最も近いN−末端部位を表
す。
考えられるところでは、-Glu-Val-の切断容易な結合へのS2′およびS3′
部位における-Asn-Leu-の突然変異はカテプシンDによる切断を増強することが
できるであろう。これが真実であるかどうか試験するために、基質N−ダンシル
-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2(配列識別番号:7)、お
よびK−M対がNLで置換され、これにより前述のFAD突然変異を模擬する、同様
なペプチドを加水分解するカテプシンDおよびP−2酵素の能力をわれわれは比
較した。両方の酵素はより長い時間のフレームでM−DおよびE−V結合におい
て野生型ペプチドを切断したが、第14図に示す短いインキュベーション時間で非
常にわずかの切断が観察さ
れた。対照的に、両方の酵素による突然変異ペブチドの切断は、野生型ペプチド
を使用して観察されたより30〜50倍速い開始速度で起こった。すべき発生した単
一の代謝物質は4.4分の保持時間を示し、そして野生型ペプチドを使用して前に
見られなかった。この生成物を引き続いて精製し、そして質量スペクトル〔M−
H〕+=907およびアミノ酸組成の分析の組み合わせにより、N−ダンシル−ISEV
NL(配列識別番号:9)と同定された。したがって、生成物は基質のL−D結合
の間の加水分解から生じなくてはならない。カテプシンDによるこの切断は、ま
た、ベータ−アミロイドの主要な形態において見出されるものと同一であるN−
末端をもつペプチドを遊離し、そしてアミロイド発生プロテアーゼカテプシンD
によりいっそう急速に切断される部位を提供することによって、この特定の初期
の発現FADにおいて観察される−NL−突然変異がベータ−アミロイド形成速度を
増大するメカニズムを提供する。生じうるベータ−アミロイド蓄積速度の増加は
、このAPP突然変異に連鎖したアルツハイマー病の初期の発現形態を誘発するこ
とができるであろう。
アルツハイマー病の重大な候補としてのカテプシンDの同定は、この病気のた
めの治療的インヒビターの開発の努力を有意に促進する。例えば、特定のカテプ
シンDインヒビターはベータ−アミロイドの毒性の蓄積を阻止することによって
治療的利益を提供することができるであろう。ここにおいて提供する新しい情報
は、他のアスパラギン酸プロテアーゼ、例えば、レニンおよびHIV−プロテアー
ゼの新規なインヒビターのデザインのために達成されたように、堅固に結合性の
インヒビターを合理的にデザインするために、それを比較的に簡単とする。
あるいは、カテプシンDは次に生体外ペプチダーゼアッセイを使用して高い処
理量のスクリーンにおける使用に適合させて、化学的
ライブラリーのランダムまたは半ランダム探索により治療的インヒビターを同定
することができる。このような目的のために適当なアッセイは、本発明の実施例
2および3に記載するN−ダンシル−ペプチドのアッセイを包含することができ
る。
実施例10 C−末端のAPPのプロセシングに対する特異性をもつセリンプロテア
ーゼの同定
第4図は、ヒト脳が組換えAPPのC−末端をプロセシングすることができるセ
リンプロテアーゼを含有すること、およびある場合においてこれらのセリンプロ
テアーゼがアプロチニンで阻害可能であったことを示す。このようなプロテアー
ゼのいっそう円滑な単離を試みるために、初期の工程としてアプロチニン−セフ
ァローズによるアフィニティー精製組み込んだ別の単離の計画を提出した(実施
例1、方法2)。
P−2画分のそれ以上の精製のためのこの手順の適用は、APP分解活性の単離
において有望であった(第15図)。酸性溶離によりアプロチニン−セファロー
ズのカラムから回収された活性画分をモノ−Qカラムでさらに精製した(第16
図)。活性画分(第16a図)は、APPのC−末端に対するモノクローナル抗体を
使用するイムノブロットにより分析したとき(第16b図)、11kDa,14kDaおよび
18kDaのAPPのC−末端を形成する能力を示した。最小の生成物は組換えC−100
標準と共移動した。抗ベータ−アミロイドモノクローナル抗体を使用する活性画
分中のAPP分解の再アッセイは、同一の3つの生成物のバンドの検出に導いた(
第16b図)。抗体C286.8Aは、実施例6(iii)におけるように、ベータ−アミロ
イドのペプチドの最初の7アミノ酸残基を認識するので、この実験はすべての3
つの生成物が全長のベータ−アミロイドを含有したことを示す。
これらの生成物のペプチドの1または2以上はアミロイドである
か、あるいはベータ−アミロイド領域に対してC−末端のこれらのペプチドをさ
らにプロセシングすることによってベータ−アミロイドを生ずることができるで
あろう。したがって、これらの存在の形成に関係するセリンプロテアーゼはアミ
ロイド−シスにおいてある役割を演ずることができるであろう。
前述の11,14および18kDaの生成物のバンドを形成した酵素活性はモノ−Qか
ら広いピークとして溶離し、そして多分2以上のプロテアーゼの作用から生じた
であろう。モノ−QカラムからのA280nm吸収性成分の回収に基づいて、プールX
,YおよびZと呼ぶタンパク質分解活性の3つの異なるプローブをモノ−Qカラ
ムから調製した(方法2、実施例1)。
スーパーデックス75上の各プールのクロマトグラフィーの間に空隙体積から、
見掛けMr>75kDaと一致する、酵素活性回が収された(データは示されていない
)が、クロマトグラフィーの間の可能なタンパク質凝集を除外することができな
い。プールYはSDS−PAGEで分析したとき最も純粋なプールを表し、そしてほぼ1
00kDaのMrに主要な染色されたバンドを示した。プールYをそれ以上の特性決定
のために選択した。プールYによるAPPの加水分解のためのpH依存性はpH7〜9
の最適値を示し(第17a図)、そして酵素活性は塩化ナトリウム濃度を42mMを越
えて増加することによって徐々に阻害された(第17b図)。酵素のインヒビター
の感受性の研究(第18a図)により、それがセリンプロテアーゼであり、PMSFお
よびアプロチニンにより阻害されるが、ペプスタチンA,E−64またはEDTAによ
り影響を受けないことが確証された(第18a図)。セリンプロテアーゼインヒビ
ターのベンズアミジンは酵素に対する作用をもたず、それがトリプシン様エンド
プロテアーゼでありえないことを示唆した。この酵素は、S1サブサイトに中性
の疎水性残基を含有する基
質の切断に対する特異性をもつキモトリプシンの族である可能性が強い。
したがって、それ以上のインヒビターの研究(第18b図)は、プールYの活性
がキモトリプシンインヒビターII、アルファー2−抗プラスミンおよびTPCKによ
り強く阻害されることを示した。弱い阻害は、また、キモスタチンおよびアルフ
ァ−1−抗キモトリプシンで観察されたが、TLCKはまったく阻害しなかった。カ
テプシンGは他の研究者らによりAPPのプロセシングにおいてある役割を演ずる
ことが示唆されたが、カテプシンGに対するポリクローナル抗体を使用するプー
ルYプロテアーゼ画分のイムノブロット分析はこのセリンプロテアーゼを検出す
ることができなかった。11,14および18kDaのN−末端の配列決定は切断部位を
同定し、そして既に進行している。
実施例11 治療的カテプシンDインヒビターのデザイン
この実施例はSchechterら、1967,Biochem.Biophys.Res.Comm.27:157の
名称を利用してペプチドの特異性を記載し、ここで切断容易な結合をフランキン
グする基質中のアミノ酸を酵素により切断されるペプチド結合に関するそれらの
位置に従い番号をつける。切断容易な結合に対してN−末端のペプチド基質のア
ミノ酸側鎖は切断容易な結合から増加する距離で連続的にP1〜Pnと番号をつ
ける。切断容易な結合に対してC−末端のペプチド基質のアミノ酸側鎖は連続的
にP1′〜Pn′と番号をつける。P1およびP1′アミノ酸側鎖は切断すべき
ペプチド結合の形成に関係するアミノ酸に相当する。側鎖P1〜PnおよびP1
′〜Pn′は、それぞれ、酵素のサブサイトS1〜SnおよびS1′〜Sn′の
対応する部位との特異的相互作用を形成することをもくろむ。P側鎖と対応する
Sサブサイトとの間の相互作用はプロテアーゼ−基質複合体の安
定化のための結合エネルギーに寄与し、こうして相互作用に対する特異性を付与
する。
ペプチド模倣インヒビターの開発のために取ったアプローチは、実施例2およ
び3のn−ダンシルペプチド基質のアッセイ、あるいは実施例8に記載するホロ
−APP分解のアッセイを利用して、精製たカテプシンDと組み合わせて、酵素学
的測定を行うことができる。
生体外のカテプシンDによりタンパク質分解切断のために最適なペプチド長さ
および配列の定量。配列Dns-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-NH2
(配列識別番号:7)のドデカペプチドを使用して出発して、酵素加水分解の
ための見掛けの反応速度論的パラメーターへのN−末端またはC−末端からのペ
プチドの短縮の効果を酸性のpHおよび最適なイオン強度で決定する。最適な長さ
のペプチド中の各位置におけるアミノ酸の変動の加水分解のKmおよびVmaxへの効
果を決定する。
インヒビターの合成。最適な切断に必要な必須アミノ酸配列(上の1a,bから
)、および適当なスペーサーを含有するペプチド模倣化合物を合成する。これら
のペプチド中のアミノ酸配列はAPP基質中の切断部位付近に観察されるもの、例
えば、Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp(配列識別番号:4)およびTrp-His-S
er-Phe-Gly-Ala-Asp-Ser(配列識別番号:5)と同一であるか、あるいはカテプ
シンDの生体外の阻害についてのそれらの効能の研究に基づいてカテプシンDに
対する最適な結合を付与することが発見されたものから選択することができるで
あろう。Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp(配列識別番号:4)およびTrp-His
-Ser-Phe-Gly-Ala-Asp-Ser(配列識別番号:5)の場合において、P1およびP
1′は、それぞれ、E−VおよびF−Gである。
上の配列または最適なカテプシンD阻害を示す配列(N−および/またはC−
置換を含有する、より短い変異型を包含する)を含有するペプチドインヒビター
を合成し、ここでP1およびP1′の間のペプチド結合のCO−NH−原子は次の標
準のスペーサーの群により置換されておりそして適当な合成ルートを使用してそ
れらの任意の可能な立体化学的立体配置を得る;還元されたアミド、ヒドロキシ
同配体、ケトン同配体、ジヒドロキシ同配体、スタチン類似体、ホスホネートま
たはホスホンアミド、逆アミド。これらのインヒビターの大部分はトランジショ
ン状態の類似体として機能するであろう。
本発明の生体外アッセイ(N−ダンシル−ペプチドアッセイまたはホロ−APP
分解アッセイ)のいずれかを使用して決定されたこれらの第1世代の化合物の効
能は、次のいずれかまたはすべてにより最適化することができるであろう:
(i)フランキングアミノ酸残基の付加または欠失;
(ii)インヒビター中の各位置におけるアミノ酸側鎖の型(DまたはL)の変
更;
(iii)ブロッキング基、例えば、Bocまたはアセチル(N−末端)、またはO
−Me、O−ベンジル、N−ベンジル(C−末端)を使用するN−またはC−末端
の置換。
上の方法に従い合理的に開発されたインヒビターの外に、他の既知のカテプシ
ンDインヒビターの全体または一部分をアルツハイマー病のための治療的インヒ
ビターとして、あるいはインヒビターの効能の最適化およびアルツハイマー病の
治療のために新しい誘導体の開発のための出発点として使用できるであろう。こ
のようなインヒビターは次のものを包含する:1−デオキシノジリミシン(Lema
nskyら、1984,J.Biol.Chem.259:10129);ジアゾアセチル−ノ
ルロイシンメチルエステル(Keilovaら、1970,Febs Lett.9:348);Gly-Glu
-Gly-Phe-Leu-Gly-Asp-Phe-Leu(配列識別番号:6)(Gubenseckら、1976,Feb
s Lett.71:42):カイチュウ属(Ascaris)からのペプシンインヒビター(Kei
lovaら、1972,Biochim.Biophys.Acta.284:461);ペプスタチン(Yamamoto
ら、1978,European Journal of Biochemistry,92:499)。
実施例12 培養において維持されたヒト胎児の腎(HEK)293細胞によるAPPC−末
端の断片の形成へのペプスタチンA、カテプシンDのインヒビターの作用
次の実施例は、生体外のカテプシンDによりAPP695から形成されることが示さ
れたもの(実施例9)と同一の大きさ(15kDa)のAPPのC−末端断片を形成しそ
して組織培養培地の中に解放するHEK293細胞の能力を、ペプスタチンA、カテプ
シンD活性が生体外で阻害することを示す。HEK細胞はトランスフェクションさ
れたAPP695からベータ−アミロイドを解放することが知られており、それゆえア
ミロイド発生APPプロセシングに必要なプロテアーゼを含有する〔C.Haassら、1
992,Nature,359:322〕。したがって、これらの細胞はベータ−アミロイド形
成の研究のための許容された細胞モデルを提供する。これらの細胞の中に存在す
るAPP751/770の内因性レベルは下に概説する研究のための基質として働いた。わ
れわれは400mlの懸濁培養においてHEK293細胞を成長させた。いくつかの培養物
は、DMSO溶媒単独(0.01%v/v最終)を含有したか、あるいはDMSO+10μM最
終のペプスタチンAを含有した。第19a図から明らかなように、DMSOまたはDMSO
+ペプスタチンのいずれも、使用したこれらの物質の濃度においてHEK293細胞の
成長速度に悪影響を及ぼさなかった。DMSOまたはDMSO+ペプスタチンAで処理し
た細胞から後期対数期に取った培地のアリコート(185ml)を、推奨される手順
〔Axen R.ら、1967,Nature,214:1302〕によりCNBr活性化セファローズ4B
(ファーマシア)を使用してセファローズ4B上に固定化したモノクローナルC2
86.8A(実施例6)の同一大きさのカラム(1.5×5cm)の上に通した。負荷の前
に、カラムを500mMのNaClを含有する100mMの重炭酸ナトリウム緩衝液pH8.3で平
衡化した。HEK293細胞により組織培養培地の中に解放されたAPP断片を含有する
ベータ−アミロイドは固定化モノクローナル抗体に結合し、そして引き続いて0.
025%v/vのトリトンX−100を含有する100mMのグリシンpH2.4で洗浄すること
によって1ml/分でカラムから溶離された。溶離された画分(4ml)を実施例8
のイムノブロット手順にかけて、カラムに結合しそして引き続いてカラムから溶
離されたAPP断片を検出した。イムノブロット検出は実施例6方法i)の抗C−
末端抗体を使用して実施した。この手順により検出された画分はベータ−アミロ
イドのN−末端のペプタペプチド配列(固定化C286.8Aへの結合を説明するため
に)ならびにC−末端ドメインまたはその一部分(抗C−末端抗体との反応性を
説明するために)を含有しなくてはならないであろう。
第19b図は、DMSOのみまたはDMSO+ペプスタチンAの存在下に成長させた細胞
からの培地を負荷した固定化C286.8Aのカラムからの溶離画分の中に回収された
C−末端断片の量を比較する。クロマトグラフィーを平行に同一条件下に実施し
た。理解できるように、ペプスタチンAを使用する処理はイムノブロットにより
検出できる溶離された15〜16kDaのAPP誘導断片の量を有意に減少した。この断片
はN−末端配列G−A−D−S−V P−A−(表5および第23図)をもつカテ
プシンDにより生体外で形成された断片と同一大きさであり、そしてベータ−ア
ミロイドのある形態に相当するN−末端をもつ同様な5.6kDaの断片の細胞の形成
における中間体を表すこ
とができるであろう。生体外でカテプシンDにより形成される他のAPP断片はこ
の実験において検出されなかった。検出されなかった断片は、検出限界より下に
存在したか、あるいは他のプロテアーゼにより細胞中でさらに分解した可能性が
ある。この実験が示すように、HEK293細胞。すなわち、細胞のアミロイド形成の
特徴を示す許容される細胞系は、カテプシンDにより生体外で形成されたAPP695
断片に類似する少なくとも1つのAPP断片を作りかつ解放し、そしてこの断片の
形成は無毒の投与量のカテプシンDインヒビターにより阻害される。こうして、
カテプシンDのペプチドに基づくインヒビターは細胞のAPPのプロセシングを変
更するとき実用性を有する。
実施例13:阻害の研究
カテプシンDによるN−ダンシル−ISEVKMDAEFR−NH2の生体外加水分解を使用
して、レニンおよびHIV−プロテアーゼインヒビターのプログラムから選択され
た250のペプチド化合物を、ヒトカテプシンDを阻害するそれらの能力について
スクリーニングした。これらのうちで、下表6において同定された化合物は効力
のあるカテプシンD阻害の効能を示した。
表6に記載する番号に対応するインヒビターの構造を下表7に表
す:
ここにおけるすべての式において、略号BOCはt−ブトキシカルボニルを表す
。
以上のインヒビターは次のようにして製造することができる:インヒビター1
,2,3,4,5,10および20はドイツ国特許出願(DE)第4,215,874号、1992
年5月14日出願(これは米国特許出願第08
/059,488号、1993年5月10日出願に相当する)に記載されている。これらの出願
の両方をここに引用によって加える。インヒビターは抗ウイルス剤、ことにHIV
プロテアーゼインヒビターであると開示されている。インヒビター1は次のよう
にして製造した:
第1工程:10mlの無水ジクロロメタン中の614mg(2.20mmol)の(2R)−N
−(t−ブトキシカルボニル)−2−アミノ−2−〔2−(1,3−ジチオラン
−2−イル)〕酢酸(欧州特許(EP)第412 350号)および337mg(2.20mmol)の
1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の撹拌した0℃に冷却した溶液を43
4mg(2.10mmol)のジシクロヘキシルカーボジイミド(DDC)で処理し、そしてこ
の混合物を5分間撹拌する。次いで、10mlのジクロロメタン中の1.10g(2.20mm
ol)の1−{(2R,S,4S,5S)−〔5−アミノ−6−シクロヘキシル
4 ヒドロキシ−2−(1−メチル)エチル−ヘキサノイル〕}−S−イソロイ
シニル−2−ピリジルメチルアミド二塩酸塩(欧州特許(EP)第437 729号)お
よび0.88ml(8.0mmol)のN−メチルモルホリンの溶液を滴々添加する。冷却浴
を除去し、そして反応混合物を室温において2時間撹拌する。反応の終わりを薄
層クロマトグラフィーにより決定する。生ずる尿素を濾過により除去し、濾液を
真空濃縮し、そして粗組成物を90gのシリカゲル(ジクロロメタン:メタン95:
5)のクロマトグラフィーにより精製する。1.29g(理論値の88%)の化合物:
が淡い粉末として得られる。
第2工程:17mlの無水ジオキサン中の塩化水素ガスの4N溶液中の2.41g(3.
28mmol)の上の化合物21の溶液を0℃において30分間する。次いで15mlのトルエ
ンを添加し、そしてこの混合物を真空濃縮する。この方法をさらに2回反復し、
次いで残留物をエーテルで粉砕し、吸引濾過し、そして高真空下に水酸化カリウ
ム(KOII)の存在下に乾燥すると、2.29g(理論値の98%)の化合物:
が無色の粉末として得られる。
第3工程:20mlの無水ジクロロメタン中の0.80g(2.40mmol)の(2S)−3
−t−ブトキシカルボニル−2−(1−ナフチルメチル)−プロピオン酸(H.B
uhlmayerら、1988,J.Med.Chem.31:1839に従い製造した)および0.40g(2.
64g(2.64mmol)のHOBTの撹拌し、0℃に冷却した溶液を0.52g(2.52mmol)の
DCCで処理し、そして5分間撹拌する。次いで30mlのジクロロメタン中の1.55g
(2.19mmol)の上の化合物22および0.96ml(8.74mmol)のN−メチルモルホリン
の溶液を滴々添加し、そして反応混合物を室温において2時間撹拌する。生ずる
尿素を濾過により除去し、濾液を真空濃縮し、そして粗生成物を、必要に応じて
、360gのシリカゲル(ジクロロメタン:メタノール95:5)のクロマトグラフ
ィーにより精製すると、586mg(理論値の28%)の非極性(2R)異性体が無色
の粉末としておよび690mg(33%)の極性(2S)一異性体がまた無色の粉末と
して得られる。
インヒビター2,3,4,10および20は同様に適当な酸を適当なアミン塩酸塩
(これらは既知であるか、あるいは普通の手段により製造することができる)と
カップリングすることによって製造することができる。インヒビター3および20
の集合において、式:
を有する化合物から出発することが必要であろう。化合物23の製造は化合物21の
それに類似するが、249mg(0.89mmol)の(2R)−N−(t−ブトキシカルボ
ニル)−2−アミノ−2−〔2−(1,3−ジチオラン−2−イル)〕酢酸(欧
州特許(EP)第412 350号)および440mg(0.81mmol)の1−{(2R,S,4S
,5S)−〔5−アミノ−6−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−(2−プ
ロペニル)−ヘキサノイル〕}−S−イソロイシニル−2−ピリジルメチルアミ
ド二塩酸塩(欧州特許(EP)第437 729号)から出発し、そして粗生成物を24g
のシリカゲル(ジクロロメタン:メタノール9:1)のクロマトグラフィーによ
り、553mg(93%)の化合物23が淡い粉末として得られる。次いでアミン塩酸塩
の製造は化合物22に類似するが、560mg(0.91mmol)の化合物23から出発する
。452mg(91%)のアミン塩酸塩が無色の粉末として得られる。
インヒビター10は式:
の出発物質を必要とするであろう。化合物24の製造は化合物21のそれに類似する
が、258mg(0.92mmol)の(2R)−N−(t−ブトキシカルボニル)−2−ア
ミノ−2−〔2−(1,3−ジチオラン−2−イル)〕酢酸(欧州特許(EP)第
412 350号)および500mg(0.84mmol)の1−{(2R,S,4S,5S)−〔5
−アミノ−6−シクロヘキシル−4−ビドロキシ−2−(2−フェニル)−ヘキ
サノイル〕}−S−イソロイシニル−2−ピリジルメチルアミド二塩酸塩(欧州
特許(EP)第437 729号)から出発し、そして粗生成物を20gのシリカゲル(ジ
クロロメタン:メタノール9:1)のクロマトグラフィーにより、593mg(90%
)の化合物24が非晶質粉末として得られる。次いでアミン塩酸塩の製造は化合物
22に類似するが、589mg(0.75mmol)の化合物23から出発する。484mgのアミン塩
酸塩が無色の粉末として得られる。
インヒビター7は公開された欧州特許出願(EP)第0 472 077号(これは1992
年2月26日に公開され、そしてその内容全体をここに引用によって加える)から
知られている。このインヒビターはその
中にHIVプロテアーゼ活性をもつインヒビターとして開示されている。
インヒビター8は公開された欧州特許出願(EP)第0 441 912号(これは1991
年8月14日に公開され、そしてその内容全体をここに引用によって加える)から
知られている。このインヒビターはそのレニンのインヒビターとして開示されて
いる。
インヒビター9,15,16および19は公開された欧州特許出願(EP)第0 472 07
8号(これは1992年2月26日に公開され、そして1992年9月15日に発行された米
国特許第5,147,865号に等しい)から知られている。両方の刊行物の内容全体を
ここに引用によって加える。これらのインヒビターはその中にHIVプロテアーゼ
活性をもつインヒビターとして開示されている。
インヒビター11および12はドイツ国特許出願(DE)第41 26 485号(これは199
1年8月10日に出願され、そして1992年7月24日に出願された米国特許出願第07/
920,216号に対応する)に記載されている。3件の刊行物の開示全体をここに引
用によって加える。これらのインヒビターはその中にHIVプロテアーゼ活性をも
つインヒビターとして開示されている。これらのインヒビターの両方は次のよう
にして製造することができる:
第一ステップ 無水ジオキサンに気体塩化水素を溶解した4N溶液100mlに、5
.00g(20.21mmol)の(S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−フ
ェニルブテ−3−エン〔J.R.Lulyら、J.Org.Chem.52巻、1487頁、1987年〕
を溶解した溶液を、室温で30分間撹拌する。次にトルエン15mlを添加し、得られ
た混合物を減圧で濃縮する。この工程をさらに2回繰返し、次いで残留物を少量
のエーテルと共に研和(trituate)し、吸引して濾別し、高真空下KOHで乾燥し
て、下記化合物3.69g(理論量の99%)を無色の結晶
として得る。
第二ステップ 無水ジクロロメタン40mlに、N−(tert−ブトキシカルボニル
)−L−バリン4.81g(22.13 mmol)とHOBT3.29g(24.35mmol)を溶解し攪拌
して得た溶液を0℃まで冷却し、次いでDDC5.29g(25.65mmol)で処理し5分間
撹拌する。次に、ジクロロエタン30mlに、3.70g(20.12mmol)の化合物25と8.8
5g(80.48mmol)のN−メチルモルホリンを溶解して得た溶液を滴下して加える
。冷却浴を外し反応混合物を室温で2時間撹拌する。反応が終了したことは薄層
クロマトグラフィーで測定した。生成した尿素を濾過して除き、濾液を減圧で濃
縮し、次いでその粗生成物をシリカゲル450g(ジクロロメタン:メタノール95
:5)によって精製して下記化合物6.07g(理論量の87%)を無色泡状物として
得る。
第三ステップ 無水ジオキサンに気体塩化水素を溶解した4N溶液100mlに、6
.08g(17.53mmol)の化合物26を溶解して得た溶液を室温で30分間撹拌する。次
にトルエン15mlを添加し、得られた混合
物を減圧で濃縮する。この工程をさらに2回繰返し、次いで残留物を少量のエー
テルで研和し、吸引して濾別し、高真空下KOHで乾燥して、下記化合物4.90g(
理論量の99%)を無色粉末として得る。
第四ステップ 1.50g(4.47mmol)の(2S)−3−tert−ブチルスルホニル
−2−(1−ナフチルメチル)−プロピオン酸〔H.B
って製造した〕と0.66g(4.92mmol)のHOBTを、15mlの無水ジクロロメタンに溶
解し撹拌して得た溶液を0℃まで冷却し、次いでDCC0.97g(4.69mmol)で処理
し5分間撹拌する。次に、1.15g(4.07mmol)の化合物27と1.80ml(16.27mmol
)のN−メチルモルホリンをジクロロメタン10mlに溶解した溶液を滴下して加え
、反応混合物を室温で1時間撹拌する。生成した尿素を濾過して除き、濾液を減
圧で濃縮し、次いでその粗生成物を、シリカゲル270gのクロマトグラフィー(
ジクロロメタン:メタノール95:5)で精製して下記の化合物2.01g(理論量の
88%)を無色泡状物として得る。
第五ステップ ジクロロメタン中に化合物28を加え撹拌して得た懸濁液を0℃
まで冷却し、次いで2当量のm−クロロ過安息香酸(MCPBA)(80%濃度)で処
理し、上記温度で2時間撹拌する。さらに1当量のMCPBAを添加し次いでその混
合物をさらに1時間室温で撹拌する。次に酢酸エチルを添加しその反応混合物を
10%Na2SO3溶液のに加えて撹拌する。有機層を分取し、NaHCO3溶液で3回洗浄し
次いでMgSO4で乾燥する。溶媒を減圧蒸発させた後、残留物を少量のエーテル/
ペンタンと共に研和(trituate)して下記の化合物を無色の粉末として得る。
第六ステップ 化合物29、および(2S)−2−(トリフルオロメチル)−ピ
ロリジン〔G.V.Shustovら、Isvest.Akad.Nauk.
SSSR,1422,1987年(英文)参照〕(インヒビター11を製造する場合)または(
2S)−2−(トリフルオロメチル)−ピペリジン(インヒビター13を製造する
場合)をn−プロパノールに溶解した溶液を、高温下圧力容器内で撹拌する。反
応混合物を冷却した後、減圧で濃縮し次にシリカゲルのクロマトグラフィーにか
ける。n−ペンテンと共に研和したした後インヒビターを得る。
インヒビター5と6は前掲のヨーロッパ特許第0441912号の一般教示事項に入
っており、この特許に教示されている製造図式にしたがって製造することができ
る。したがってインヒビター5は下記のようにして製造することができる。
第一ステップ L−フェニルアラニン300g(1.91mol)を、ジオキサン360ml
および水360mlの混合物中に懸濁させる。ジ−tertブチルジカーボネート432.9g
(1.98mol)を撹拌しながらpH9.8で添加する。このpHは約975mlの4N NaOHで一
定に維持する。16時間後、反応混合物をエーテルで抽出し、その水性層を、クエ
ン酸を用いてpHを3〜4に調節し、次いでエーテルで2回および酢酸エチルで2
回洗浄する。有機相を合し次に水で3回洗浄する。ロータリーエバポレーターで
濃縮し次いでジエチルエーテル/ヘキサンから結晶化させて下記の化合物291.6
g(60.7%収率)を得る。
第二ステップ 265g(1.0mol)の化合物30を2Lのメタノールに溶解し、20
gの5%Rh/Cで40気圧下5時間水素化する。触媒を
吸引しながらセライトで濾別し、メタノールで洗浄し、得られた溶液を濃縮する
。下記の化合物271g(100%収率)が得られる。
第三ステップ 163.0g(0.601mol)の化合物31と40.3g(0.661mol)のN,
O−ジメチルヒドロキシルアミンを2Lの塩化メチレン室温で溶解する。0℃で
、303.5g(3.005mol)のトリエチルアミンを滴下して加える(pHは約8)。塩
化メチレンにnPPaを溶解した50%濃度の溶液390.65ml(0.601mol)を最高−10℃
で滴下して加える。得られた混合物を一夜25℃まで昇温させ、16時間撹拌する。
その反応混合物を濃縮し、残留物に飽和重炭酸塩溶液500mlを加え、次いでその
混合物を25℃で20分間撹拌する。酢酸エチルで3回抽出した後、有機相をNa2SO4
で乾燥し次いで濃縮する〔粗収量:178g(94.6%)〕。この粗物質をシリカゲ
ルのクロマトグラフィ(移動相系CH2Cl2:CH3OH 98:2)に付して下記の化合物
36.6gを得る。
第四ステップ 窒素雰囲気下、炎をあてて乾燥した装置内で、63
.7g(0.21mol)の化合物32をアルミナで処理したエーテル1.5Lに溶解し、0℃
でLiAlH4 10g(0.263mol)を少しづつ添加し、次にその混合物を0℃で20分間
撹拌する。次に50g(0.367mol)のKHSO4の水(1L)溶液を0℃で注意深く滴
下して加える。相分離が起こり、水性相をジエチルエーテル300mlづつで3回抽
出し、次いで合した有機相を、3N HClで3回、NaHCO3溶液で3回次にNaCl溶
液で2回洗浄する。有機相をNa2SO4で乾燥し濃縮する。下記の化合物45g(84.1
%収率)を回収した。
この化合物33は直ちに処理するかまたは1〜2時間−24℃で貯蔵する。
第五ステップ 14.6g(35mmol)の“インスタントイリド(instant ylide)
”(Fluka 69500)を、90mlの無水テトラヒドロフラン中に懸濁させる。氷中で
冷却しながら20℃〜25℃の反応温度で、無テトラヒドロフラン45mlに9.0g(35m
mol)の化合物33を溶解した溶液を滴下して加える。その反応混合物を15分間撹
拌し、氷250ml中に注入し、酢酸エチル/n−ヘキサン3:1 150mlづつを用い
て2回抽出する。Na2SO4で乾燥し濃縮した後、残留物をシリカゲルのクロマトグ
ラフィー(移動相エーテル:ヘキサン7:3)に付して下記の化合物3.2g(40.
0%収率)が得られる。
第六ステップ 202.4g(0.8mol)の化合物34を1000mlのメシチレンに溶解し
、水トラップを用いて140℃まで加熱する。この温度で、197g(1.6mol)のN−
ベンジルヒドロキシルアミンと1.6molのアセトアルデヒドのメシチレン800ml中
混合物を2時間かけて滴下して加える。4時間と8時間の反応時間が経過した後
、メシチレン中、同じ量のN−ベンジルヒドロキシルアミンとエチルアルデヒド
を滴下する。全反応時間の16時間が経過した後、混合物を濃縮し、残留物にジエ
ーテルを添加し、得られた混合物を1MのKHSO4溶液で洗浄する。Na2SO4で乾燥
し濃縮した後、残留物をシリカゲルのクロマトグラフィー(移動相エーテル:ヘ
キサン3:7)にかける。下記の化合物が得られる。
第七ステップ 18.1g(45mmol)の化合物35(ジアステレオマー
C)をメタノール300mlに溶解する。14.2g(225mmol)のギ酸アンモニウムを添
加した後、装置をN2で充分にフラッシュし次いで3.6gのパラジウム/炭(10%
)を添加する。得られた混合物を還流しながら3時間撹拌する。冷却し、続いて
濾過によって触媒を除き、溶液を濃縮し、酢酸エチルに溶解し、次いで飽和重炭
酸塩溶液で2回洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、
次いで高真空度下で乾燥する。下記の化合物11.36gが得られる。
第八ステップ 6.6g(21mmol)の化合物36を塩化メチレン500mlに溶解する。
水分を遮断して(CaCl2管)、無水ペンタン酸〔塩化メチレン50ml中の、2.16g
(21mmol)のペンタン酸と2.16g(10.5mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミ
ドとで製造し濾過して得られる〕を塩化メチレンに溶解した溶液を室温で添加す
る。3時間後、濃縮を行い続いて酢酸エチル中に投入し、飽和重炭酸塩溶液で洗
浄し次いで硫酸ナトリウムで乾燥する。濾過し濃縮し、次いで高真空下で乾燥す
る。8.0g(理論量の95.2%)の下記の化合物が得られる。
第九ステップ 7.57g(19mmol)の化合物37を、4N塩酸/ジオキサン70ml中
で、水分を遮断して30分間撹拌する。得られた溶液を濃縮しジエチルエーテルと
混合し次いで蒸発乾固する。高真空下で乾燥した後、生成した塩酸塩5.54g(16
.5mmol)、HOBT 4.46g(33mmol)およびBoc-Val-OH 16.5mmolを塩化メチレン50
0mlに溶解する。0℃まで冷却した後、N−メチルモルホリンを用いてpHを8.5に
調節し、次いで3.57g(17.3mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを添加す
る。20℃で16時間経過後、尿素を濾別し、溶液を濃縮し、酢酸エチルに投入し、
次いで飽和重炭酸塩溶液で洗浄する。酢酸ナトリウムで乾燥し、続いて濃縮し高
真空度下で乾燥する。下記の化合物が得られる。
第十ステップ 1.8mmolの化合物38を11mlの4N塩酸/ジオキサン中で30分間
撹拌する。得られた溶液を濃縮し、ジエチルエーテル
と混合し次いで蒸発乾固する。高真空度下で乾燥した後、生成した塩酸塩1.8mmo
lを塩化メチレン50mlに溶解し、0℃まで冷却する。BOC−フェニルアラニン1.8m
molを添加した後、トリエチルアミンでpHを約8に調節し、次に875.2mg(1.98mm
ol)のベンゾトリアゾリルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘ
キサフルオロホスフェートを添加する。室温で16時間反応させ、続いて濃縮し、
酢酸エチル中に投入し次に飽和重炭酸塩溶液で3回洗浄する。インヒビター5が
粗製形態で得られ次いでシリカゲルのクロマトグラフィーにかける。
インヒビター6は、第八ステップにおいて、無水3−メチルペンタン酸〔塩化
メチレン50ml中、21mmolの3−メチルペンタン酸と2.16g(10.5mmo1)のジシク
ロヘキシルカルボジイミドとで製造し濾過して得られる〕を塩化メチレンに溶解
した溶液を使用することを除いて、インヒビター5と類似の方法で得られる。
インヒビター17は前掲のヨーロッパ特許第0472077号の一般教示事項に入って
おり、この特許に教示されている製造図式にしたがって製造することができる。
したがってインヒビター17は下記のようにして製造できる。
第一ステップ 無水ジオキサンに気体塩化水素を溶解した4N溶液100mlに、5
.07g(20.00mmol)の(S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−シ
クロヘキシルブテ−3−エン〔J.R.Lulyら、J.Org.Chem.,52巻、1487頁、19
87年〕を溶解して得た溶液を室温で30分間撹拌する。次にトルエン15mlを添加し
、得られた混合物を減圧で濃縮する。この工程をさらに2回繰返し、次いで残留
物を少量のエーテルで研和し、吸引濾別し、次いで高真空度下KOHで乾燥する。
下記の化合物3.76g(理論量の99%)が無色の結晶として得られる。
第二ステップ 4.63g(21.3mol)のN−(tert−ブトキシカルボニル)−L
−バリンと3.29g(24.35mmol)のHOBTとを40mlの無水ジクロロメタンに溶解し
た溶液を攪拌し0℃まで冷却し、次いで5.29g(25.65mmol)のDDCで処理し、次
いでその混合物を5分間撹拌する。3.60g(19.00mmol)の化合物39および8.85m
l(80.48mmol)のN−メチルモルホリンをジクロロメタン30mlに溶解した溶液を
滴下して加える。冷却浴を外し、反応混合物を室温で2時間撹拌する。反応の完
了は薄層クロマトグラフィーで測定する。生成した尿素を濾過して除き、濾液を
減圧で濃縮し、次いで粗生成物を450gのシリカゲル(ジクロロメタン/メタノ
ール95:5)のクロマトグラフィーで精製する。4.33g(理論量の65%)の下記
化合物が無色の結晶として得られる。
第三ステップ 無水ジオキサンに気体塩化水素を溶解した4N溶液100mlに、4
.32g(12.30mmol)の化合物40を溶解した溶液を室温で30分間撹拌する。次にト
ルエン15mlを添加し、得られた混合物を
減圧で濃縮する。この工程をさらに2回繰返し、次に残留物を少量のエーテルで
研和し、吸引濾別を行い高真空度下KOHで乾燥する。3.37g(理論の95%)の下
記の化合物が無色の粉末として得られる。
第四ステップ 4.47mmolのBoc−L−シクロヘキシルアラニン〔M.C.Khosla
ら、J.Med.Chem.,15巻、792頁、1972年〕と0.66g(4.92mmol)のHOBTとを無
水ジクロロメタン15mlに懸濁させて撹拌し0℃に冷却し、次いで0.97g(4.69mm
ol)のDCCで処理し得られた混合物を5分間撹拌する。次に、4.07mmolの化合物4
1と1.80ml(16.27mmol)のN−メチルモルホリンをジクロロメタン10mlに溶解し
た溶液を滴下して加え、次いでその反応混合物を室温で1時間撹拌する。生成し
た尿素を濾過して除き、濾液を減圧で濃縮し、次にその粗生成物を270gのシリ
カゲル(ジクロロメタン:メタノール95:5)のクロマトグラフィーにかける。
下記化合物が得られる。
第五ステップ 0.60mmolの化合物42をジクロロメタン3mlに入れ撹拌して調製
し0℃まで冷却した懸濁液を、2当量のm−クロロ過安息香酸(80%濃度)で少
しづつ処理し、得られた混合物を上記温度で2時間撹拌する。次いで、さらに1
当量のm−クロロ過安息香酸を添加し、続いてその混合物を室温で1時間撹拌す
る。酢酸エチル10mlを添加し、その反応混合物を20mlの10%濃度のNa2SO3の溶液
に入れて撹拌する。有機相を分取し、NaHCO3溶液10mlで3回洗浄し次いでMgSO4
で乾燥する。溶媒を減圧で蒸発させた後、残留物を少量のエーテル/ペンタンで
研和し、インヒビター17が得られる。
インヒビター14は、1991年7月24日に公開されかつ米国特許第5,145,951号(1
992年9月8日に発行された)に対応するヨーロッパ特許願公開第0437729号によ
って公知である。これら両刊行物の全内容は本願に援用するものである。このイ
ンヒビター14はこれら刊行物に、HIVプロテアーゼ活性のインヒビターとして開
示されている。
インヒビター18は、1990年12月27日に公開され、かつ1992年4月28に出願され
現在係属中の米国特許願第07/876,697号(1990年5月16日に出願されすでに放棄
された米国特許願第07/524,779号の継続出願である)に対応するヨーロッパ特許
願公開第0403828号によって公知である。これらの三つの出願の全開示事項は本
願に援用するものである。このインヒビター18はこれら出願に、HIVプロテアー
ゼ活性のインビターとして開示されている。
本願の明細書と特許請求の範囲は例示のために記載されているので本発明を限
定せず、そして本発明の思想と範囲を逸脱することなく各種の改変と変更を行う
ことができることは分かるであろう。具体的に述べると、上記出願に開示されて
いる他のインヒビターも本願で述べているように有用である。本願の特許請求の
範囲にはこれ
らの他の実施態様も含まれる。
配列表
一般情報
出願人:タンブリーニ,ポール ピー;ベンツ,ギュンター;
ヘビッヒ,ディエター
発明の名称:カテプシンDはアルツハイマー症でアミロイドを生
成するプロテアーゼである
配列の数:9
通知送付先
受取人:Miles Inc.
住所:モーガン・レーン・400
都市名:ウェストヘーブン
州名:コネティカット
国名:米国
郵便番号(ZIP):06516
コンピュータの読出し可能なフォーム
媒体の種類:ディスケット、3.50インチ、800Kb記憶
コンピュータ:Sharp PC 4600
オペレーティングシステム:MS−DOS
ソフトウェア:Word Perfect 5.1
本件出願のデータ
出願番号:割り当てられていない
出願日:
分類:割り当てられていない。
原出願のデータ
出願番号:07/995,660
出願日:1992年12月16日
原出願のデータ
出願番号:07/880,914
出願日:1992年5月11日
弁護士/弁理士の情報
氏名:パメラ エイ シモントン
登録番号:31,060
名簿番号:MTI 224.2
通信の情報
電話番号:(203)937−2340
ファクシミリ番号:(203)937−2975
配列番号:1
配列の長さ:16
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:2
配列の長さ:12
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:3
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:4
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:5
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:6
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:7
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
配列番号:8
配列の長さ:39
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
刊行物の情報
著者:カングら
雑誌名:Nature
巻数:325
頁数:733
発行時:1987年
配列
配列番号:9
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 45/00 AED 9450−4H C07F 9/572 Z
C07F 9/572 9152−4B C12N 9/99
C12N 9/99 6807−4B C12Q 1/37
C12Q 1/37 8310−2J G01N 33/53 D
G01N 33/53 8310−2J 33/561
33/561 9159−4C C07D 207/08
// C07D 207/08 9284−4C 211/60
211/60 7329−4C 303/36
303/36 9455−4C 339/06
339/06 7602−4C 409/12 211
409/12 211 7602−4C 213
213 7602−4C 409/14 213
409/14 213 8517−4H C07K 7/06
C07K 7/06 8517−4H 7/08
7/08 8517−4H 14/81
14/81 9455−4C A61K 37/02 ADD
(72)発明者 ベンツ,ギュンター ハンス ハインツ
ヘルベルト
アメリカ合衆国,コネチカット 06437,
ギルフォード,シルバン ヒルズ ロード
81
(72)発明者 ハービッヒ,ディーター
ドイツ連邦共和国,デー―42115 ブッペ
ルタル,クルマヘールシュトラーセ 82
(72)発明者 ドレイヤー,ロバート ノーマン
アメリカ合衆国,コネチカット 06492,
ウォーリングフォード,イースト センタ
ー ストリート 838