【発明の詳細な説明】
空洞を有するピストン
本発明は、内部に空洞を有するピストンの製造方法、およびこのようなピスト
ンに関するものである。
内燃機関、または他の目的に使用されるピストンに対しては、場合によっては
空洞を設ける必要がある。本明細書で使用される“空洞”なる用語は、制限され
た開口を有する、実質的に閉鎖された空間を意味し、一方“凹所”なる用語は、
比較的大きな開口を有する空間を表す時に使用される。たとえば、ピストンの頭
部に単数または複数の制限された開口を有する空洞を設け、該開口が頭部内の燃
焼凹所と連通するようになったピストンが提案されている。この燃焼凹所は、ピ
ストンが往復動するシリンダ内の、ピストン頭部上方の空間と共働して燃焼室を
形成し、この燃焼室内で、供給燃料を燃焼させる。上記空洞(米国特許第4、8
98、135号参照)は反応室を形成し、燃料のラヂカルスペシー(radical sp
ecies)がシリンダから排出されないようにし、該ラヂカルスペシーがシリンダ
に戻って次の供給燃料のシーディング(seeding)を助けるようにする。このよ
うなシーディングは燃料の燃焼完全性を改良する。
前記反応室を形成するための空洞は在来においては、ピストンを二つの半体、
すなわち下半分および上半分として形成し、ついで上半分を下半分に装着するこ
とによって製造された。下半分は燃焼室の下方部分を画定すると共に、制限開口
の下方部分、または反応室の開口を含む反応室の下方部分を画定する。上半分は
、燃焼凹所の上方側部と、制限開口(単数または複数)の上方部分を含む反応室
の上方部分を画定する。ピストンの上半分および下半分はボルト、または電子ビ
ーム溶接によって相互に装着することができる。したがってこのようなピストン
の製造は複雑であり、かつピストンの二つの半体が、作動中に離脱する恐れがあ
る。制限開口を設ける別の方法としては、二つの半体を相互に固着した後に、ピ
ストンの材料を通して孔を形成する方法がある。このような孔を使用する場合に
は、これら孔は普通その直径が小さく、かつ長さが比較的大なるために、プロセ
スが
遅くなる。
本発明の目的は、内部に空洞を有するピストンの簡単な製造方法、および信頼
性の大なるピストンを提供することである。
本発明によれば、内部に空洞を有するピストンの製造方法において、ボックス
を形成する段階で、該ボックスが所要空洞の大きさおよび形の内部を有するよう
にする段階と、前記ボックスが少なくとも一つの外方突起を有し、該突起によっ
てボックスが支持されようにする段階と、前記ボックスを、所要ピストンの形を
有する壁によって画界される金型空洞内に装架する段階で、前記外方突起が金型
空洞の壁に形成された凹所内に延び、かつ該凹所内のストッパに触座し、前記突
起がボックスを空洞内において支持しかつ位置決めするようにする段階と、前記
金型空洞内に溶融金属を導入し、該金属がボックスの内部に入ることなく、ボッ
クスを封鎖するようにする段階と、金属を凝固させる段階と、ピストンを金型空
洞から除去する段階と、金属鋳物を越えて延びる突起の部分を機械加工によって
除去する段階とから成ることを特徴としている。
本発明による方法においては、ピストンは本質的に、ボックスの回りに鋳造さ
れた一つの部材であり、したがってこのピストンは作業中に離脱することはなく
、かつ比較的簡単に製造することができる。本方法は前述の反応室を有するピス
トンを形成する時に、使用することができる。
好ましくは、前記ボックスは、突出する少なくとも一つのチューブを有し、該
チューブが空洞の開口の少なくとも部分を形成するようにされる。これによって
空洞の制限開口を形成するための孔を形成する必要がなくなる。もし必要であれ
ば、前記チューブは金属を鋳造する時に、ボックスの内部から空気を除去するた
めに使用することができる。チューブは外方突起として使用することができ、こ
の突起によってボックスは支持され、かつ位置決めされる。複数のチューブが単
一のボックスと関連するようになすことができる。
ピストンの燃焼凹所を囲繞する、前記の如き複数の反応室を必要とする場合が
多いから、ボックスは各個が反応室を封鎖する同様なボックスの組立体の部分と
して形成することができ、該ボックスは隣接ボックスを結合するストラットによ
って、相互に一定の位置に保持される。
好ましくは、ボックス(単数または複数)は二つのシート金属から形成され、
たとえば、ほぼ0.5mmの厚さを有する鋼シートを使用することができる。何
れの場合においても、シートには少なくとも一つの凹所が形成され、該シートは
次に重なり関係を有するように載置され、凹所が共働して空洞を形成し、次でシ
ートは相互に結合される。たとえば、二つの金属シートは、フランジによって画
界された半空洞を形成するように押圧され、これら半空洞は相互に、たとえば溶
接またはけん縮によって結合される。この場合は前記チューブは二つのシートの
フランジの間に位置決めされる。
なお、単数または複数のボックスは管状のシート材料から形成することができ
る。たとえば、各ボックスは両端が封鎖されたチューブから形成することができ
る。ボックスの組立体は、単一のチューブから形成することができ、該チューブ
は所要の形状に曲げられ、ボックスの間を押潰して、ボックスの内部が相互に分
離されるようにする。ボックスを形成するなお他の方法としては、棒の中に止め
孔を形成し、次いで入口をプラグで塞ぐ方法がある。
本発明はなお鋳造金属から成るピストンにおいて、鋳造金属内に封入されたボ
ックスを有し、該ボックスの内部がピストン内の空洞の大きさおよび形を画定し
、かつ少なくとも一つのチューブがボックスの内部と連通し、さらに鋳造金属を
通ってピストンの表面に延び、該チューブが空洞の開口を形成するようになった
ことを特徴とするピストンを提供する。
本発明によるピストンにおいては、前記ボックスは鋳造金属内に封入された複
数の同様なボックスの一つとなすことができ、該ボックスは鋳造金属を通って延
びるストラットによって相互に結合される。
次に添付図面を参照して本発明によるピストン、および該ピストンの製造方法
を詳述する。
第1図は第1実施方法に使用されるボックス組立体の平面図;
第2図は第1図の線II−IIに沿って取られた、拡大断面図;
第3図は第1実施方法によつて形成されたピストンの水平断面図で、鋳造金型
空洞内の定位置にあるピストンを示す;
第4図および5図は第1図と同様な図であるが、それぞれ第2および第3実施
方法において使用されるボックス組立体を示す図;
第6図は第4実施方法において使用される組立体の、ボックスの断面図。
第1実施方法は、上向きに開口する燃焼凹所14を画定する、頭部12(第3
図)を備えたピストン10の製造に関するものである。このピストンはその内部
に、反応室16を形成する4個の空洞を有し、該空洞は凹所14の周囲に均一に
配分されている。各室16はチューブ18によって形成された二つの制限開口を
通して、燃焼凹所14と連通している。
第1実施方法はシート材料から、実質的に封鎖された四つのボックス20から
成る組立体21を形成する段階を有している。各ボックス20の内部は、反応室
16を形成するに必要な空洞と等しい大きさおよび形を有している。このボック
ス20は、共に厚さが約0.5mmの2枚の鋼シート22および24から形成さ
れる。各シート22および24は相互に押圧されて、それぞれ4個の凹所22a
および24bを形成する。これら凹所は、シートの面に直角に見た時に(第2図
)、全体が半円形断面を有するようにされる。シート22および24の面内にお
いては、凹所22aおよび24aは細長く、かつ共通中心の回りにおいて弓形を
呈している。シート22および24は、それぞれ凹所22aおよび24aの回り
に、フランジ22bおよび24bを形成するように切断される。シート22およ
び24はなお、フランジ22bおよび24bを連結するウエブ22cおよび24
cを形成するように切断される。このウエブ22cおよび24cは、隣接フラン
ジ22bおよび24bを結合する直角ストラット形成し、組立体はほぼ方形を呈
するようになっている。ウエブ22cおよび24cは、ボックス20の複数の外
方突起を形成し、該突起によってボックスは支持される。
ボックス20は、シート22および24を、相互に重なるように位置決めし、
各凹所22aおよび24aが他のシートの凹所と整合し、かつフランジ22bお
よび24bと、ウエブ22cおよび24cが相互に重なるようになすことにより
、組立てられる。チューブ18は、フランジ22bおよび24bの間に位置決め
される。フランジ24bより遠くに延びるフランジ22bの縁は、フランジ24
bの縁の上に折り曲げられ、シート22および24を相互に固着するようになっ
ている。別の方法として、フランジ22b及び24bは相互に溶接することがで
き
る。
したがって、シート22および24は4つのボックス20を形成し、該ボック
スはウエブ22cおよび24cによって相互に固定状態に保持される。各ボック
ス20の封鎖された内部は、反応室16を形成するように設計され、かつ4個の
室16は、相互に完成したピストン10内において占める位置に保持される。
チューブ18は細い孔を有するチューブであり、2本のチューブが各ボックス
20と関連している。これらチューブは、ボックス20を組立てる前に、フラン
ジ24bに溶接されるとよい。フランジ22bおよび24bはチューブ18の回
りにけん縮され、チューブを定位置に保持すると共に、溶融金属がチューブの回
りに近づくのを阻止する。各チューブ18の孔は、関連するボックス20の内部
と連通する。チューブ18は全体が水平に、ピストン10の中心の方に延びてい
る。このチューブ18としては、ハイパーデレミック(hyperdermic)針として
使用される形式のチューブが適当である。ボックス20から遠い方のチューブ1
8の端部は開放状態に留められ、鋳造を行う時に、ボックス2の内部を通気させ
るようになっている。
第1実施方法においては、ボックス20は、ピストン鋳造金型の空洞26(第
3図参照)内に装架されている。金型空洞26は、閉鎖線32に沿って相互に係
合する二つの金型半体28および30によって画定され、該半体28および30
は相互に、空洞26を画界する壁を画定し、かつ所要ピストン10の形を有して
いる。ボックス20はウエブ22cおよび24cによって形成される突起によっ
て支持され、かつ位置決めされるように装架される。前記ウエブは直角な隅部に
おいて、金型空洞26の壁に設けられた凹所34内に延び、かつ該凹所34内の
ストッパに触座する。したがってボックス20は、ピストン10内の反応室16
に対する所要位置に装架される。凹所34は垂直溝の形を有し、金型空洞26の
一端から、ウエブ22cおよび24cが衝当する前記ストッパに延びている。溝
34内には、碇着部材(図示せず)を導入し、ウエブ22cおよび24cを、ス
トッパに対して保持するようになすことができる。ボックス20から遠い方の、
チューブ18の端部は、金型空洞26内に装架されたコアー38内の溝孔36に
入る。このコアー38は燃焼凹所14を画定するために使用される。溝孔36は
、
コアー38内の孔40によって通気される。
ボックス20を空洞26内に装架した後、この第1実施方法は、溶融金属、特
にアルミニウム合金を金型空洞26に導入し、この時金属がボックス20の内部
に入ることなく、該ボックスを囲繞するように行われる。溶融金属から出た熱は
、室に流入する空気を加熱し、かつ膨張させる。これによって空気はチューブ1
8を通って、室16から流出し、かつ溶融金属が該チューブ18を通って室16
に入るのを阻止する。
溶融金属は次に凝固せしめられ、ボックス20を含むピストンブランクが形成
される。次にこのピストンブランクが、金型空洞26から取外され、かつその最
終形を有するように成るまで、機械加工を受ける。この機械加工は鋳造金属を越
えて延びるウエブ22cおよび24cの部分を除き、かつコアー38内に突出す
るチューブ18の端部を除き、チューブ18の端部が凹所14の表面と、同じ高
さとなるようにする。
もし必要であれば、シート22および24は錫を鍍金し、その周囲のアルミニ
ウムと結合し、ボックス20の組立体が、ピストンの残余の部分とさらに堅く結
合するようになすことができる。
第2、第3および第4実施方法が、第1実施方法と異なる点は、ボックスおよ
び、使用される支持突起の形成である。したがって、次にはこれらの点について
説明する。
第2実施方法においては、第4図に示されたボックス50の組立体51が使用
される。円形に配置されている6個の各ボックス51は、両端が塞がれた直線状
のチューブから成り、該チューブの内部が空洞を形成するようになっている。ボ
ックス50の側壁の孔を通して、前記チューブ18と同様な3個のチューブ52
が装着される。これらチューブ52はボックス50の内部と連通し、かつ組立体
51の内方に延びている。組立体51の中央にはリング54が設けられ、該リン
グにはチューブ52の内端が装着される。このチューブ52はリング54の中空
内部と連通するが、これは必ずしも必要ではない。
第2実施方法においては、チューブ52はボックス50の外方突起として使用
され、該突起によってボックスは支持され、かつ位置決めされる。ボックス50
を金型空洞内に装架した時には、リング54およびチューブ52の内端は、金型
空洞のコアー内の凹所に入り、ボックス50は所要の位置に支持され、かつ位置
決めされる。鋳造が行われた後、チューブ52を切断して、リング54を除去し
、かつ機械作業によって、鋳造金属から突出するチューブ52の端部を除去する
。
リング54と同様なリングを、前述の組立体21と同様な組立体、および次に
述べる組立体71に使用することができる。このようなリングを使用することに
よって、チューブ18、52または72の内端が相互に固定関係を有するように
支持され、したがってボックス20、50または70によって得られる空洞に対
する開口の所定の関係が得られるようになる。さらにチューブ18、52または
72、およびリング54がボックスの支持および位置決め突起として使用される
場合には、機械加工によって、ピストンの外面から突起を除去する必要がなくな
る。
第2実施方法の変形においては、組立体51は隣接ボックス50を結合するス
トラットとして働く弓形棒56を設け、該ボックスをさらに確実に定位置に保持
するようになすことができる(このような棒56は第4図に示されている)。棒
56の中央から、外方に棒58を突出させることによって追加的な支持および位
置決め突起を設けることができる。
第3実施方法においては、第5図に示されたボックス70の組立体71が使用
されている。この組立体71は、1本のチューブから成り、該チューブは円形に
形成され、かつその端部は外方に曲げられている。この外向き端部を含むチュー
ブ区画は、次にボックス70を形成する非押潰区画を残して、平らに押潰される
。押潰された外向き端部73は、クランプ74によって結合され、組立体が所定
の形を保持するようにされる。この押潰区画75は、ボックス70を結合するス
トラットを形成する。チューブ18と同様なこのチューブ72は、ボックス70
から内方に延び、かつ該ボックス70の内部と連通する。チューブ72の内端7
6は、鋳造作業が行われる時に、チューブを密封するように押潰される。
第3の実施方法においては、押潰された外向き端部73は、支持および位置決
め突起として使用され、この突起によってボックス70は金型空洞内に支持され
る。端部73は金型空洞の壁の凹所に入り、かつ定位置に締着される。
第4実施方法は、ボックスの形成以外においては、第2実施方法と同様である
。ボックス50の代わりに、第6図に示された形のボックス80が使用される。
このボックス80は、棒材料の一端に止まり孔82を明け、かつ該孔82の開放
端をプラグ84によって閉鎖することによって形成される。この時棒には封鎖さ
れた内部空間が生じる。次いで、3個の段付き孔86を、横方向に延びかつ空洞
と連通するように形成する。これらの孔86は、チューブ52を受け入れる大き
な入口を有している。
前記四つの実施方法によれば、それぞれアルミニウム合金鋳物から成るピスト
ン10が得られ、該ピストンはアルミニウム合金鋳物内に封入されたボックス2
0、50、70または80を有し、このボックスの内部は、ピストン10内の空
洞16の大きさおよび形を画定する。各空洞はチューブ18、52または72を
有し、これらチューブはボックスの内部と連通し、かつアルミニウム合金鋳物を
通って、ピストン10の燃焼凹所14内のピストン外面に延び、チューブが空洞
の開口を形成するようになっている。ボックスは多くの場合相互に、アルミニウ
ム合金鋳物を通って延びるストラット22c、24c、56、または75によっ
て結合される。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年1月19日
【補正内容】
明細書
空洞を有するピストン
本発明は、内部に空洞を有するピストンの製造方法、およびこのようなピスト
ンに関するものである。
内燃機関、または他の目的に使用されるピストンに対しては、場合によっては
空洞を設ける必要がある。本明細書で使用される“空洞”なる用語は、制限され
た開口を有する、実質的に閉鎖された空間を意味し、一方“凹所”なる用語は、
比較的大きな開口を有する空間を表す時に使用される。たとえば、ピストンの頭
部に単数または複数の制限された開口を有する空洞を設け、該開口が頭部内の燃
焼凹所と連通するようになったピストンが提案されている。この燃焼凹所は、ピ
ストンが往復動するシリンダ内の、ピストン頭部上方の空間と共働して燃焼室を
形成し、この燃焼室内で、供給燃料を燃焼させる。上記空洞(米国特許第4、8
98、135号参照)は反応室を形成し、燃料のラヂカルスペシー(radical sp
ecies)がシリンダから排出されないようにし、該ラヂカルスペシーがシリンダ
に戻って次の供給燃料のシーディング(seeding)を助けるようにする。このよ
うなシーディングは燃料の燃焼完全性を改良する。
前記反応室を形成するための空洞は在来においては、ピストンを二つの半体、
すなわち下半分および上半分として形成し、ついで上半分を下半分に装着するこ
とによって製造された。下半分は燃焼室の下方部分を画定すると共に、制限開口
の下方部分、または反応室の開口を含む反応室の下方部分を画定する。上半分は
、燃焼凹所の上方側部と、制限開口(単数または複数)の上方部分を含む反応室
の上方部分を画定する。ピストンの上半分および下半分はボルト、または電子ビ
ーム溶接によって相互に装着することができる。したがってこのようなピストン
の製造は複雑であり、かつピストンの二つの半体が、作動中に離脱する恐れがあ
る。制限開口を設ける別の方法としては、二つの半体を相互に固着した後に、ピ
ストンの材料を通して孔を形成する方法がある。このような孔を使用する場合に
は、これら孔は普通その直径が小さく、かつ長さが比較的大なるために、プロセ
スが
遅くなる。
本発明の目的は、内部に空洞を有するピストンの簡単な製造方法、および信頼
性の大なるピストンを提供することである。
本発明は内部に空洞を有するピストンの製造方法で、ボックスを形成し、該ボ
ックスが所要空洞の大きさおよび形の内部を有するようにする段階と、ボックス
に少なくとも一つの外方突起を設け、該突起によってボックスを支持し得るよう
にする段階と、該ボックスを所要ピストンの形を有する壁によって画定される空
洞内に装架する段階と、空洞内に溶融金属を導入し、該金属がボックスの内部に
入ることなく、ボックスを封入するようにする段階と、金属を凝固させる段階と
、ピストンを金型空洞から除去する段階とを有する方法において、前記ボックス
を金型空洞内に装架し、前記外方突起が金型空洞の壁に形成された凹所内に延び
、かつ前記凹所内のストッパに触座し、前記突起がボックスを空洞内に支持しか
つ位置決めするようにする段階と、ピストンを空洞から除去した後に、鋳造金属
を越えて延びる突起の部分を機械加工によって除去する段階と、ピストン頭部内
の燃焼凹所内に、前記空洞の開口を形成する段階とを有することを特徴とする方
法を提供する。
本発明による方法においては、ピストンは本質的に、ボックスの回りに鋳造さ
れた一つの部材であり、したがってこのピストンは作業中に離脱することはなく
、かつ比較的簡単に製造することができる。本方法は前述の反応室を有するピス
トンを形成する時に、使用することができる。
好ましくは、前記ボックスは、突出する少なくとも一つのチューブを有し、該
チューブが空洞の開口の少なくとも部分を形成するようにされる。これによって
空洞の制限開口を形成するための孔を形成する必要がなくなる。もし必要であれ
ば、前記チューブは金属を鋳造する時に、ボックスの内部から空気を除去するた
めに使用することができる。チューブは外方突起として使用することができ、こ
の突起によってボックスは支持され、かつ位置決めされる。複数のチューブが単
一のボックスと関連するようになすことができる。
ピストンの燃焼凹所を囲繞する、前記の如き複数の反応室を必要とする場合が
多いから、ボックスは各個が反応室を封鎖する同様なボックスの組立体の部分と
して形成することができ、該ボックスは隣接ボックスを結合するストラットによ
って、相互に一定の位置に保持される。
好ましくは、ボックス(単数または複数)は二つのシート金属から形成され、
たとえば、ほぼ0.5mmの厚さを有する鋼シートを使用することができる。何
れの場合においても、シートには少なくとも一つの凹所が形成され、該シートは
次に重なり関係を有するように載置され、凹所が共働して空洞を形成し、次でシ
ートは相互に結合される。たとえば、二つの金属シートは、フランジによって画
界された半空洞を形成するように押圧され、これら半空洞は相互に、たとえば溶
接またはけん縮によって結合される。この場合は前記チューブは二つのシートの
フランジの間に位置決めされる。
なお、単数または複数のボックスは管状のシート材料から形成することができ
る。たとえば、各ボックスは両端が封鎖されたチューブから形成することができ
る。ボックスの組立体は、単一のチューブから形成することができ、該チューブ
は所要の形状に曲げられ、ボックスの間を押潰して、ボックスの内部が相互に分
離されるようにする。ボックスを形成するなお他の方法としては、棒の中に止め
孔を形成し、次いで入口をプラグで塞ぐ方法がある。
本発明はなお、鋳造金属から成るピストンで、鋳造金属内に封入されたボック
スを有し、該ボックスの内部がピストン内の空洞の大きさおよび形を画定するピ
ストンにおいて、ピストンがなお少なくとも一つのチューブを有し、該チューブ
がボックスの内部と連通し、かつ鋳造金属を通って、ピストン頭部の燃焼凹所内
の開口に延びるようになっていることを特徴とするピストンを提供する。
本発明によるピストンにおいては、前記ボックスは鋳造金属内に封入された複
数の同様なボックスの一つとなすことができ、該ボックスは鋳造金属を通って延
びるストラットによって相互に結合される。
次に添付図面を参照して本発明によるピストン、および該ピストンの製造方法
を詳述する。
第1図は第1実施方法に使用されるボックス組立体の平面図;
第2図は第1図の線II−IIに沿って取られた、拡大断面図;
第3図は第1実施方法によつて形成されたピストンの水平断面図で、鋳造金型
空洞内の定位置にあるピストンを示す;
第4図および5図は第1図と同様な図であるが、それぞれ第2および第3実施
方法において使用されるボックス組立体を示す図;
第6図は第4実施方法において使用される組立体の、ボックスの断面図。
第1実施方法は、上向きに開口する燃焼凹所14を画定する、頭部12(第3
図)を備えたピストン10の製造に関するものである。このピストンはその内部
に、反応室16を形成する4個の空洞を有し、該空洞は凹所14の周囲に均一に
配分されている。各室16はチューブ18によって形成された二つの制限開口を
通して、燃焼凹所14と連通している。
第1実施方法はシート材料から、実質的に封鎖された四つのボックス20から
成る組立体21を形成する段階を有している。各ボックス20の内部は、反応室
16を形成するに必要な空洞と等しい大きさおよび形を有している。このボック
ス20は、共に厚さが約0.5mmの2枚の鋼シート22および24から形成さ
れる。各シート22および24は相互に押圧されて、それぞれ4個の凹所22a
および24bを形成する。これら凹所は、シートの面に直角に見た時に(第2図
)、全体が半円形断面を有するようにされる。シート22および24の面内にお
いては、凹所22aおよび24aは細長く、かつ共通中心の回りにおいて弓形を
呈している。シート22および24は、それぞれ凹所22aおよび24aの回り
に、フランジ22bおよび24bを形成するように切断される。シート22およ
び24はなお、フランジ22bおよび24bを連結するウエブ22cおよび24
cを形成するように切断される。このウエブ22cおよび24cは、隣接フラン
ジ22bおよび24bを結合する直角ストラット形成し、組立体はほぼ方形を呈
するようになっている。ウエブ22cおよび24cは、ボックス20の複数の外
方突起を形成し、該突起によってボックスは支持される。
ボックス20は、シート22および24を、相互に重なるように位置決めし、
各凹所22aおよび24aが他のシートの凹所と整合し、かつフランジ22bお
よび24bと、ウエブ22cおよび24cが相互に重なるようになすことにより
、組立てられる。チューブ18は、フランジ22bおよび24bの間に位置決め
される。フランジ24bより遠くに延びるフランジ22bの縁は、フランジ24
b
の縁の上に折り曲げられ、シート22および24を相互に固着するようになって
いる。別の方法として、フランジ22b及び24bは相互に溶接することができ
る。
したがって、シート22および24は4つのボックス20を形成し、該ボック
スはウエブ22cおよび24cによって相互に固定状態に保持される。各ボック
ス20の封鎖された内部は、反応室16を形成するように設計され、かつ4個の
室16は、相互に完成したピストン10内において占める位置に保持される。
チューブ18は細い孔を有するチューブであり、2本のチューブが各ボックス
20と関連している。これらチューブは、ボックス20を組立てる前に、フラン
ジ24bに溶接されるとよい。フランジ22bおよび24bはチューブ18の回
りにけん縮され、チューブを定位置に保持すると共に、溶融金属がチューブの回
りに近づくのを阻止する。各チューブ18の孔は、関連するボックス20の内部
と連通する。チューブ18は全体が水平に、ピストン10の中心の方に延びてい
る。このチューブ18としては、ハイパーデレミック(hyperdermic)針として
使用される形式のチューブが適当である。ボックス20から遠い方のチューブ1
8の端部は開放状態に留められ、鋳造を行う時に、ボックス2の内部を通気させ
るようになっている。
第1実施方法においては、ボックス20は、ピストン鋳造金型の空洞26(第
3図参照)内に装架されている。金型空洞26は、閉鎖線32に沿って相互に係
合する二つの金型半体28および30によって画定され、該半体28および30
は相互に、空洞26を画界する壁を画定し、かつ所要ピストン10の形を有して
いる。ボックス20はウエブ22cおよび24cによって形成される突起によっ
て支持され、かつ位置決めされるように装架される。前記ウエブは直角な隅部に
おいて、金型空洞26の壁に設けられた凹所34内に延び、かつ該凹所34内の
ストッパに触座する。したがってボックス20は、ピストン10内の反応室16
に対する所要位置に装架される。凹所34は垂直溝の形を有し、金型空洞26の
一端から、ウエブ22cおよび24cが衝当する前記ストッパに延びている。溝
34内には、碇着部材(図示せず)を導入し、ウエブ22cおよび24cを、ス
トッパに対して保持するようになすことができる。ボックス20から遠い方の、
チューブ18の端部は、金型空洞26内に装架されたコアー38内の溝孔36に
入る。このコアー38は燃焼凹所14を画定するために使用される。溝孔36は
、コアー38内の孔40によって通気される。
ボックス20を空洞26内に装架した後、この第1実施方法は、溶融金属、特
にアルミニウム合金を金型空洞26に導入し、この時金属がボックス20の内部
に入ることなく、該ボックスを囲繞するように行われる。溶融金属から出た熱は
、室に流入する空気を加熱し、かつ膨張させる。これによって空気はチューブ1
8を通って、室16から流出し、かつ溶融金属が該チューブ18を通って室16
に入るのを阻止する。
溶融金属は次に凝固せしめられ、ボックス20を含むピストンブランクが形成
される。次にこのピストンブランクが、金型空洞26から取外され、かつその最
終形を有するように成るまで、機械加工を受ける。この機械加工は鋳造金属を越
えて延びるウエブ22cおよび24cの部分を除き、かつコアー38内に突出す
るチューブ18の端部を除き、チューブ18の端部が凹所14の表面と、同じ高
さとなるようにする。
もし必要であれば、シート22および24は錫を鍍金し、その周囲のアルミニ
ウムと結合し、ボックス20の組立体が、ピストンの残余の部分とさらに堅く結
合するようになすことができる。
第2、第3および第4実施方法が、第1実施方法と異なる点は、ボックスおよ
び、使用される支持突起の形成である。したがって、次にはこれらの点について
説明する。
第2実施方法においては、第4図に示されたボックス50の組立体51が使用
される。円形に配置されている6個の各ボックス51は、両端が塞がれた直線状
のチューブから成り、該チューブの内部が空洞を形成するようになっている。ボ
ックス50の側壁の孔を通して、前記チューブ18と同様な3個のチューブ52
が装着される。これらチューブ52はボックス50の内部と連通し、かつ組立体
51の内方に延びている。組立体51の中央にはリング54が設けられ、該リン
グにはチューブ52の内端が装着される。このチューブ52はリング54の中空
内部と連通するが、これは必ずしも必要ではない。
第2実施方法においては、チューブ52はボックス50の外方突起として使用
され、該突起によってボックスは支持され、かつ位置決めされる。ボックス50
を金型空洞内に装架した時には、リング54およびチューブ52の内端は、金型
空洞のコアー内の凹所に入り、ボックス50は所要の位置に支持され、かつ位置
決めされる。鋳造が行われた後、チューブ52を切断して、リング54を除去し
、かつ機械作業によって、鋳造金属から突出するチューブ52の端部を除去する
。
リング54と同様なリングを、前述の組立体21と同様な組立体、および次に
述べる組立体71に使用することができる。このようなリングを使用することに
よって、チューブ18、52または72の内端が相互に固定関係を有するように
支持され、したがってボックス20、50または70によって得られる空洞に対
する開口の所定の関係が得られるようになる。さらにチューブ18、52または
72、およびリング54がボックスの支持および位置決め突起として使用される
場合には、機械加工によって、ピストンの外面から突起を除去する必要がなくな
る。
第2実施方法の変形においては、組立体51は隣接ボックス50を結合するス
トラットとして働く弓形棒56を設け、該ボックスをさらに確実に定位置に保持
するようになすことができる(このような棒56は第4図に示されている)。棒
56の中央から、外方に棒58を突出させることによって追加的な支持および位
置決め突起を設けることができる。
第3実施方法においては、第5図に示されたボックス70の組立体71が使用
されている。この組立体71は、1本のチューブから成り、該チューブは円形に
形成され、かつその端部は外方に曲げられている。この外向き端部を含むチュー
ブ区画は、次にボックス70を形成する非押潰区画を残して、平らに押潰される
。押潰された外向き端部73は、クランプ74によって結合され、組立体が所定
の形を保持するようにされる。この押潰区画75は、ボックス70を結合するス
トラットを形成する。チューブ18と同様なこのチューブ72は、ボックス70
から内方に延び、かつ該ボックス70の内部と連通する。チューブ72の内端7
6は、鋳造作業が行われる時に、チューブを密封するように押潰される。
第3の実施方法においては、押潰された外向き端部73は、支持および位置決
め突起として使用され、この突起によってボックス70は金型空洞内に支持され
る。端部73は金型空洞の壁の凹所に入り、かつ定位置に締着される。
第4実施方法は、ボックスの形成以外においては、第2実施方法と同様である
。ボックス50の代わりに、第6図に示された形のボックス80が使用される。
このボックス80は、棒材料の一端に止まり孔82を明け、かつ該孔82の開放
端をプラグ84によって閉鎖することによって形成される。この時棒には封鎖さ
れた内部空間が生じる。次いで、3個の段付き孔86を、横方向に延びかつ空洞
と連通するように形成する。これらの孔86は、チューブ52を受け入れる大き
な入口を有している。
前記四つの実施方法によれば、それぞれアルミニウム合金鋳物から成るピスト
ン10が得られ、該ピストンはアルミニウム合金鋳物内に封入されたボックス2
0、50、70または80を有し、このボックスの内部は、ピストン10内の空
洞16の大きさおよび形を画定する。各空洞はチューブ18、52または72を
有し、これらチューブはボックスの内部と連通し、かつアルミニウム合金鋳物を
通って、ピストン10の燃焼凹所14内のピストン外面に延び、チューブが空洞
の開口を形成するようになっている。ボックスは多くの場合相互に、アルミニウ
ム合金鋳物を通って延びるストラット22c、24c、56、または75によっ
て結合される。
請求の範囲
1.内部に空洞(16)を有するピストン(10)の製造方法で、ボックス(
20;50;70;80)を形成し、該ボックスが所要空洞の大きさおよび形の
内部を有するようにする段階と、前記ボックスに少なくとも一つの外方突起(2
2c、24c;52;58;73)を設け、該突起によってボックスを支持し得
るようにする段階と、該ボックスを、所要ピストン(10)の形を有する壁によ
って画定される金型空洞(26)内に装架する段階と、金型空洞内に溶融金属を
導入し、該金属がボックスの内部に入ることなく、ボックスを封入するようにす
る段階と、金属を凝固させる段階と、ピストンを金型空洞から除去する段階とを
含む方法において、前記ボックス(20;50;70;80)を金型空洞(26
)内に装架し、前記外方突起が金型空洞の壁に形成された凹所(34)内に延び
、かつ前記凹所内のストッパに触座し、前記突起がボックスを空洞内において支
持しかつ位置決めするようにする段階と、ピストンを金型空洞から除去した後、
鋳造金属を越えて延びる突起の部分を機械加工によって除去する段階と、ピスト
ン頭部内の燃焼凹所内に、前記空洞の開口を形成する段階とを有することを特徴
とする方法。
2.ボックス(20;50;70;80)を、該ボックスから突出する少なく
とも一つのチューブ(18;52;72)を有するように形成し、該チューブが
前記空洞(16)の開口の少なくとも1部分を形成することを特徴とする、請求
項1記載の方法。
3.前記チューブ(18)が、金属を鋳造する時に、ボックス(20)の内部
から、空気を抜くように使用されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
4.前記チューブ(52)が前記外方突起として使用され、該突起によってボ
ックス(50)が支持され、かつ位置決めされることを特徴とする、請求項2お
よび3の何れか一つに記載の方法。
5.ボックス(20;50;70;80)が、それぞれ反応室を封入する同様
なボックスの組立体(21;51;71)の部分として形成され、かつ前記ボッ
クスが相互に一定の位置に保持されることを特徴とする、請求項1から4までの
何れか一つに記載の方法。
6.単数または複数のボックス(20)が、二つのシート金属片(22、24
)から形成され、該シート金属片の各個内に、少なくとも一つの凹所(22a、
24a)が形成され、次に該金属シート片が重なり関係を有するように載置され
、空洞を形成する時に、凹所が共働しかつ相互に結合されることを特徴とする、
請求項1から5までの何れか一つに記載の方法。
7.単数または複数のボックス(50;70)が、チューブ状シート材料から
形成されることを特徴とする、請求項1から5までの何れか一つに記載の方法。
8.鋳造金属から成るピストン(10)で、鋳造金属内に封入されたボックス
(20;50;70;80)を有し、該ボックスの内部がピストン内の空洞(1
6)の大きさおよび形を画定するようになっているピストンにおいて、該ピスト
ンが、なお少なくとも一つのチューブ(18;52;72)を有し、該チューブ
がボックスの内部と連通し、かつ鋳造金属を通って、ピストン頭部の燃焼凹所内
の開口に延びていることを特徴とするピストン。
9.前記ボックス(20;50;70;80)が鋳造金属内に封入された、複
数の同様なボックスの一つであり、該ボックスが鋳造金属を通って延びるストラ
ット(22c、24c;56;75)によって相互に結合されていることを特徴
とする、請求項8記載のピストン。
10.前記単数または複数のボックス(20)が、二つの重ね合わされた金属シ
ートから成っていることを特徴とする、請求項8および9の何れか一つに記載の
ピストン。
11.前記単数または複数のボックス(50;70)が、チューブから形成され
ることを特徴とする、請求項8および9の何れか一つに記載のピストン。