JPH08283911A - 加工性に優れた高強度ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
加工性に優れた高強度ステンレス鋼およびその製造方法Info
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- JPH08283911A JPH08283911A JP8579595A JP8579595A JPH08283911A JP H08283911 A JPH08283911 A JP H08283911A JP 8579595 A JP8579595 A JP 8579595A JP 8579595 A JP8579595 A JP 8579595A JP H08283911 A JPH08283911 A JP H08283911A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高強度ステンレス鋼の組織をマルテンサイト
相とオーステナイト相の安定な二相組織とし、加工性を
改善する。 【構成】 C:0.05%以下、Si:1.0%以下、
Mn:5.0%以下、Cr:13.0%〜16.0%、
Ni:7.0%超〜10.0%、N:0.1%以下を含
有し、40%超〜80%のオーステナイト相と残部マル
テンサイト相の二相である鋼、および上記成分範囲の鋼
にAc1 +50〜Ac1 +100℃の温度範囲で焼き戻
し熱処理を行い40%超〜80%のオーステナイト相と
残部マルテンサイト相の二相とすること。 【効果】 組織をオーステナイト相とマルテンサイト相
の安定な二相組織とし、変形時にオーステナイト相がマ
ルテンサイト変態し延性を向上させる。
相とオーステナイト相の安定な二相組織とし、加工性を
改善する。 【構成】 C:0.05%以下、Si:1.0%以下、
Mn:5.0%以下、Cr:13.0%〜16.0%、
Ni:7.0%超〜10.0%、N:0.1%以下を含
有し、40%超〜80%のオーステナイト相と残部マル
テンサイト相の二相である鋼、および上記成分範囲の鋼
にAc1 +50〜Ac1 +100℃の温度範囲で焼き戻
し熱処理を行い40%超〜80%のオーステナイト相と
残部マルテンサイト相の二相とすること。 【効果】 組織をオーステナイト相とマルテンサイト相
の安定な二相組織とし、変形時にオーステナイト相がマ
ルテンサイト変態し延性を向上させる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種構造物、例えば建
築、船舶、車両、化学プラント等の構造材として使用さ
れる加工性に優れた高強度ステンレス鋼に関するものあ
る。
築、船舶、車両、化学プラント等の構造材として使用さ
れる加工性に優れた高強度ステンレス鋼に関するものあ
る。
【0002】
【従来の技術】マルテンサイト系ステンレス鋼は、高強
度を有しているが靭性が低く、溶接性が悪いことから、
バネおよび刃物用材料にしか使用されていなかった。近
年では、CおよびNの低減およびNiの添加により溶接
性および靭性が改善され構造材として、広く使用される
ようになっている。しかしマルテンサイト単相では、高
強度が得られるものの延性が低いため、曲げなどの加工
性に乏しい。
度を有しているが靭性が低く、溶接性が悪いことから、
バネおよび刃物用材料にしか使用されていなかった。近
年では、CおよびNの低減およびNiの添加により溶接
性および靭性が改善され構造材として、広く使用される
ようになっている。しかしマルテンサイト単相では、高
強度が得られるものの延性が低いため、曲げなどの加工
性に乏しい。
【0003】そのため、予め加工を行ってから焼き入れ
を行ったり、あるいは切削により加工を行わなければな
らない。また、マルテンサイト系ステンレス鋼は、構造
材料として使用するには降伏比が高すぎるという問題が
ある。このような問題に対して、適当な組成のマルテン
サイト系ステンレス鋼を550〜675℃で熱処理を行
い、加工性を改善させた例が特開昭62−124218
号公報に開示されている。これは、マルテンサイト組織
の鋼を熱処理によりオーステナイトに逆変態させて安定
化し、約25%程度までのオーステナイト相を残留させ
たマルテンサイト相として、約20%程度の破断伸びを
有する鋼を得るものである。
を行ったり、あるいは切削により加工を行わなければな
らない。また、マルテンサイト系ステンレス鋼は、構造
材料として使用するには降伏比が高すぎるという問題が
ある。このような問題に対して、適当な組成のマルテン
サイト系ステンレス鋼を550〜675℃で熱処理を行
い、加工性を改善させた例が特開昭62−124218
号公報に開示されている。これは、マルテンサイト組織
の鋼を熱処理によりオーステナイトに逆変態させて安定
化し、約25%程度までのオーステナイト相を残留させ
たマルテンサイト相として、約20%程度の破断伸びを
有する鋼を得るものである。
【0004】しかし、マルテンサイト系テンレス鋼に熱
処理を行って延性を改善する方法は、熱処理温度および
時間によってオーステナイト相の残留量が変化しやすい
ため特性が不安定であるという問題がある。
処理を行って延性を改善する方法は、熱処理温度および
時間によってオーステナイト相の残留量が変化しやすい
ため特性が不安定であるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】高強度を有するマルテ
ンサイト系ステンレス鋼の靭性および加工性を改善する
手段として、熱処理により逆変態オーステナイトを残留
させることは有効である。しかし、マルテンサイト相か
ら熱処理によって生成した逆変態オーステナイトは不安
定であり、冷却時にマルテンサイト変態させずにオース
テナイト相として残留させることは、非常に難しい問題
である。温度が低すぎると、オーステナイトへの逆変態
量が少なくなり、また、温度が高すぎると逆変態オース
テナイトが不安定になってしまうため冷却中にマルテン
サイト変態し、オーステナイト相を残留させることがで
きない。このように、マルテンサイト相とオーステナイ
ト相の適正な比率の組織を得るのは容易ではなく、成分
範囲と熱処理条件を最適化しなければ達成できない。
ンサイト系ステンレス鋼の靭性および加工性を改善する
手段として、熱処理により逆変態オーステナイトを残留
させることは有効である。しかし、マルテンサイト相か
ら熱処理によって生成した逆変態オーステナイトは不安
定であり、冷却時にマルテンサイト変態させずにオース
テナイト相として残留させることは、非常に難しい問題
である。温度が低すぎると、オーステナイトへの逆変態
量が少なくなり、また、温度が高すぎると逆変態オース
テナイトが不安定になってしまうため冷却中にマルテン
サイト変態し、オーステナイト相を残留させることがで
きない。このように、マルテンサイト相とオーステナイ
ト相の適正な比率の組織を得るのは容易ではなく、成分
範囲と熱処理条件を最適化しなければ達成できない。
【0006】本発明はこのような問題を解決するため
に、高強度ステンレス鋼の組織をマルテンサイト相とオ
ーステナイト相の安定な二相組織とし、加工性を改善す
る最適成分範囲および最適熱処理方法を提供するもので
ある。
に、高強度ステンレス鋼の組織をマルテンサイト相とオ
ーステナイト相の安定な二相組織とし、加工性を改善す
る最適成分範囲および最適熱処理方法を提供するもので
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、組織を加工
誘起マルテンサイト変態するいわゆる準安定オーステナ
イト相とマルテンサイト相の安定な二相組織とし、変形
時にマルテンサイトに変態して応力を緩和し延性を向上
させる方法を指向した。詳細な検討の結果、この効果を
充分に発現させるため必要なオーステナイトは40%超
であるが、オーステナイト量が過剰になると十分な強度
が得られなくなり、その限界は80%であることがわか
った。また、詳細な検討の結果、適正な成分範囲におい
て、Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよ
びCreq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nbの式
に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq. −
0.2Creq. >29.6を満足する成分に調整すれ
ば、組織が40%超〜80%のオーステナイト相とマル
テンサイト相の安定な二相となることを知見した。
誘起マルテンサイト変態するいわゆる準安定オーステナ
イト相とマルテンサイト相の安定な二相組織とし、変形
時にマルテンサイトに変態して応力を緩和し延性を向上
させる方法を指向した。詳細な検討の結果、この効果を
充分に発現させるため必要なオーステナイトは40%超
であるが、オーステナイト量が過剰になると十分な強度
が得られなくなり、その限界は80%であることがわか
った。また、詳細な検討の結果、適正な成分範囲におい
て、Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよ
びCreq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nbの式
に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq. −
0.2Creq. >29.6を満足する成分に調整すれ
ば、組織が40%超〜80%のオーステナイト相とマル
テンサイト相の安定な二相となることを知見した。
【0008】さらに、上記のように調整された成分範囲
においてAc1 +50〜Ac1 +100℃の温度範囲で
熱処理すれば、逆変態したオーステナイト相が安定化
し、冷却時にマルテンサイト変態することなく40%超
〜80%のオーステナイト相が残留することがわかっ
た。また、Moを添加すれば、固溶強化により延性を損
なうことなく強度を向上させることができる。またNb
およびVを単独あるいは複合で添加すれば、Nbおよび
Vの炭窒化物が粒内に微細に析出し、さらに強度を大き
くすることができる。
においてAc1 +50〜Ac1 +100℃の温度範囲で
熱処理すれば、逆変態したオーステナイト相が安定化
し、冷却時にマルテンサイト変態することなく40%超
〜80%のオーステナイト相が残留することがわかっ
た。また、Moを添加すれば、固溶強化により延性を損
なうことなく強度を向上させることができる。またNb
およびVを単独あるいは複合で添加すれば、Nbおよび
Vの炭窒化物が粒内に微細に析出し、さらに強度を大き
くすることができる。
【0009】本発明はこのような知見に基づいて、10
%以上の均一伸びと25%以上の破断伸びを有する延性
が優れた高強度ステンレス鋼板を提供するもので、その
要旨は以下のとおりである。すなわち、 1)重量%で、C:0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下を含有し、残部実質的
にFeおよび不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼、 2)重量%で、C:0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下、Mo:0.5%以下
を含有し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物から
なり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼であり、 3)重量%で、C :0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下、Mo:0.5%以
下、さらに、Nb:0.01〜0.3%およびV:0.
01〜0.3%のうち1種または2種以上を含有し、残
部実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼、および 4)上記1)〜3)の何れかに記載された所定の組成を
有する鋼塊または鋼片を熱間圧延または熱間圧延および
冷間圧延によって鋼板とし、800〜1100℃の温度
範囲で焼鈍を行った後、Ac1 +50〜Ac1 +100
℃の温度範囲で焼き戻し熱処理を行い、組織を40%超
〜80%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の
二相とすることを特徴とする加工性に優れた高強度ステ
ンレス鋼の製造方法である。
%以上の均一伸びと25%以上の破断伸びを有する延性
が優れた高強度ステンレス鋼板を提供するもので、その
要旨は以下のとおりである。すなわち、 1)重量%で、C:0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下を含有し、残部実質的
にFeおよび不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼、 2)重量%で、C:0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下、Mo:0.5%以下
を含有し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物から
なり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼であり、 3)重量%で、C :0.05%以下、 S
i:1.0%以下、Mn:5.0%以下、
Cr:13.0%〜16.0%、Ni:7.0%超〜1
0.0%、 N :0.1%以下、Mo:0.5%以
下、さらに、Nb:0.01〜0.3%およびV:0.
01〜0.3%のうち1種または2種以上を含有し、残
部実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼、および 4)上記1)〜3)の何れかに記載された所定の組成を
有する鋼塊または鋼片を熱間圧延または熱間圧延および
冷間圧延によって鋼板とし、800〜1100℃の温度
範囲で焼鈍を行った後、Ac1 +50〜Ac1 +100
℃の温度範囲で焼き戻し熱処理を行い、組織を40%超
〜80%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の
二相とすることを特徴とする加工性に優れた高強度ステ
ンレス鋼の製造方法である。
【0010】
【作用】次に、本発明鋼の成分および熱処理の範囲の限
定理由を説明する。CおよびNは、マルテンサイト相を
強化し、強度を向上させるのに有効な元素であるが、靭
性および延性劣化の原因となるため、それぞれ0.05
%および0.1%以下とした。Siは、製鋼時の脱酸の
ために必要な元素であるが、過剰に添加すると靭性およ
び加工性が低下し、またδフェライトを生じ易くなるの
で、1.0%を上限とした。Mnは、オーステナイト相
を安定にする元素であるが、5%を超えると製鋼が難し
くなるので上限とした。
定理由を説明する。CおよびNは、マルテンサイト相を
強化し、強度を向上させるのに有効な元素であるが、靭
性および延性劣化の原因となるため、それぞれ0.05
%および0.1%以下とした。Siは、製鋼時の脱酸の
ために必要な元素であるが、過剰に添加すると靭性およ
び加工性が低下し、またδフェライトを生じ易くなるの
で、1.0%を上限とした。Mnは、オーステナイト相
を安定にする元素であるが、5%を超えると製鋼が難し
くなるので上限とした。
【0011】Crは、マルテンサイトとオーステナイト
の安定な二相組織を得るためには13.0%以上必要で
あるため下限とし、16.0%を超えるとフェライト相
を生じ易くなるため上限とした。Niは、マルテンサイ
トとオーステナイトの安定な二相組織を得るためには
7.0%超以上必要であるため下限とし、過剰な添加に
よりマルテンサイト相が減少し、高強度を得られなくな
るので、その上限を10.0%とした。
の安定な二相組織を得るためには13.0%以上必要で
あるため下限とし、16.0%を超えるとフェライト相
を生じ易くなるため上限とした。Niは、マルテンサイ
トとオーステナイトの安定な二相組織を得るためには
7.0%超以上必要であるため下限とし、過剰な添加に
よりマルテンサイト相が減少し、高強度を得られなくな
るので、その上限を10.0%とした。
【0012】以上、本発明の必須の鋼組成についてその
限定理由を説明したが、場合により添加されるMo,N
bおよびVについて以下に説明する。Moは、固溶強化
により強度を向上させる元素であるが、5.0%以上で
はδフェライトを生じ靭性および延性を低下させるの
で、上限とした。Nbは、NbCおよびNbNを粒内に
微細に析出させ強度を大きくするが、0.01%未満で
はこの効果は小さいので下限とし、過剰な添加は靭性お
よび延性を低下せしめるので0.3%を上限とした。V
は、VCおよびVNを粒内に微細に析出させ強度を大き
くするが、0.01%未満ではこの効果は小さいので下
限とし、過剰な添加は靭性および延性を低下せしめるの
で0.3%を下限とした。
限定理由を説明したが、場合により添加されるMo,N
bおよびVについて以下に説明する。Moは、固溶強化
により強度を向上させる元素であるが、5.0%以上で
はδフェライトを生じ靭性および延性を低下させるの
で、上限とした。Nbは、NbCおよびNbNを粒内に
微細に析出させ強度を大きくするが、0.01%未満で
はこの効果は小さいので下限とし、過剰な添加は靭性お
よび延性を低下せしめるので0.3%を上限とした。V
は、VCおよびVNを粒内に微細に析出させ強度を大き
くするが、0.01%未満ではこの効果は小さいので下
限とし、過剰な添加は靭性および延性を低下せしめるの
で0.3%を下限とした。
【0013】また、Nieq. =Ni+30(C+N)+
0.5MnおよびCreq. =Cr+Mo+1.5Si+
0.5Nbの式に従うNieq. およびCreq. は、オー
ステナイト相含有量を表す指標である。詳細な検討によ
り、4.4Nieq. −0.2Creq. が29.6以下で
あるとオーステナイト量が40%以下となるため下限と
した。
0.5MnおよびCreq. =Cr+Mo+1.5Si+
0.5Nbの式に従うNieq. およびCreq. は、オー
ステナイト相含有量を表す指標である。詳細な検討によ
り、4.4Nieq. −0.2Creq. が29.6以下で
あるとオーステナイト量が40%以下となるため下限と
した。
【0014】次に、40%超〜80%のオーステナイト
相をマルテンサイト中に生成させる熱処理条件を規定し
た理由を説明する。焼鈍は、800℃以下では熱間加工
時に生じた析出物の固溶化が不十分であるため下限と
し、1100℃以上ではオーステナイト結晶粒が粗大化
して延性が低下するため上限とした。焼き戻しは、オー
ステナイト相を残留させ、均一伸びを向上させるために
重要な熱処理である。本発明の成分範囲では、Ac1 +
50℃未満では、残留オーステナイト量が40%以下と
なるため下限とし、Ac1 +100℃を超えるとオース
テナイト相が不安定で、マルテンサイト変態するため上
限とした。
相をマルテンサイト中に生成させる熱処理条件を規定し
た理由を説明する。焼鈍は、800℃以下では熱間加工
時に生じた析出物の固溶化が不十分であるため下限と
し、1100℃以上ではオーステナイト結晶粒が粗大化
して延性が低下するため上限とした。焼き戻しは、オー
ステナイト相を残留させ、均一伸びを向上させるために
重要な熱処理である。本発明の成分範囲では、Ac1 +
50℃未満では、残留オーステナイト量が40%以下と
なるため下限とし、Ac1 +100℃を超えるとオース
テナイト相が不安定で、マルテンサイト変態するため上
限とした。
【0015】
【実施例】表1に供試鋼の化学組成およびAc1 点を示
した。A〜Dは、本発明の適合成分で、EおよびFは比
較成分である。これらを溶製し、20kgの鋳片として、
この鋳片を熱間圧延により板厚10mmの鋼板とした。こ
の鋼板に、700〜1200℃の範囲で焼鈍熱処理を行
った後、550〜600℃の範囲で焼き戻し熱処理を行
った。表2にAc1 点、熱処理条件およびオーステナイ
ト量を示した。1および6〜8は、本発明方法に適合し
ており、2〜5,9および10は比較方法である。表3
には、これらの鋼の室温における機械的性質を示した。
した。A〜Dは、本発明の適合成分で、EおよびFは比
較成分である。これらを溶製し、20kgの鋳片として、
この鋳片を熱間圧延により板厚10mmの鋼板とした。こ
の鋼板に、700〜1200℃の範囲で焼鈍熱処理を行
った後、550〜600℃の範囲で焼き戻し熱処理を行
った。表2にAc1 点、熱処理条件およびオーステナイ
ト量を示した。1および6〜8は、本発明方法に適合し
ており、2〜5,9および10は比較方法である。表3
には、これらの鋼の室温における機械的性質を示した。
【0016】本発明方法に適合している1および6〜8
は、強度、均一伸びおよび破断伸びが大きい。2は、焼
戻し温度が低いためにオーステナイト量が少なく、延性
が低くなっている。3は、焼き戻し温度が高いためにオ
ーステナイト量が多すぎ、強度が低下している。4は、
焼鈍温度が低いため、Cr炭窒化物が十分に固溶してお
らず、延性が低下している。5は、焼鈍温度が高く、オ
ーステナイト結晶粒が粗大化し、強度および延性が低下
している。9は、Ni量が少ないため、オーステナイト
量が少なくなっており、均一伸びが低い。10は、Ni
量が多いため、オーステナイト単相になっており、強度
が低くなっている。
は、強度、均一伸びおよび破断伸びが大きい。2は、焼
戻し温度が低いためにオーステナイト量が少なく、延性
が低くなっている。3は、焼き戻し温度が高いためにオ
ーステナイト量が多すぎ、強度が低下している。4は、
焼鈍温度が低いため、Cr炭窒化物が十分に固溶してお
らず、延性が低下している。5は、焼鈍温度が高く、オ
ーステナイト結晶粒が粗大化し、強度および延性が低下
している。9は、Ni量が少ないため、オーステナイト
量が少なくなっており、均一伸びが低い。10は、Ni
量が多いため、オーステナイト単相になっており、強度
が低くなっている。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】本発明により、加工性に優れた高強度ス
テンレスを提供でき、曲げ加工が可能になり、あるい
は、これまで成形後に行っていた焼き入れを省略できる
など、産業上の効果は極めて大である。
テンレスを提供でき、曲げ加工が可能になり、あるい
は、これまで成形後に行っていた焼き入れを省略できる
など、産業上の効果は極めて大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58 C22C 38/58
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.05%以下、 Si:1.0%以下、 Mn:5.0%以下、 Cr:13.0%〜16.0%、 Ni:7.0%超〜10.0%、 N :0.1%以下を含有し、残部実質的にFeおよび
不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+1.5Si の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼。 - 【請求項2】 重量%で、 C :0.05%以下、 Si:1.0%以下、 Mn:5.0%以下、 Cr:13.0%〜16.0%、 Ni:7.0%超〜10.0%、 N :0.1%以下、 Mo:0.5%以下を含有し、残部実質的にFeおよび
不可避的不純物からなり、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼。 - 【請求項3】 重量%で、 C :0.05%以下、 Si:1.0%以下、 Mn:5.0%以下、 Cr:13.0%〜16.0%、 Ni:7.0%超〜10.0%、 N :0.1%以下、 Mo:0.5%以下、さらに、 Nb:0.01〜0.3%および V :0.01〜0.3%のうち1種または2種以上を
含有し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物からな
り、 Nieq. =Ni+30(C+N)+0.5Mnおよび Creq. =Cr+Mo+1.5Si+0.5Nb の式に従うNieq. およびCreq. が、4.4Nieq.
−0.2Creq. >29.6を満足し、40%超〜80
%のオーステナイト相と残部マルテンサイト相の安定な
二相からなることを特徴とする加工性に優れた高強度ス
テンレス鋼。 - 【請求項4】 請求項1,2,3の何れかに記載の鋼組
成を満足する鋼塊または鋼片を熱間圧延または熱間圧延
および冷間圧延によって鋼板とし、800〜1100℃
の温度範囲で焼鈍を行った後、Ac1 +50〜Ac1 +
100℃の温度範囲で焼き戻し熱処理を行い、組織を4
0%超〜80%のオーステナイト相と残部マルテンサイ
ト相の二相とすることを特徴とする加工性に優れた高強
度ステンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8579595A JPH08283911A (ja) | 1995-04-11 | 1995-04-11 | 加工性に優れた高強度ステンレス鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8579595A JPH08283911A (ja) | 1995-04-11 | 1995-04-11 | 加工性に優れた高強度ステンレス鋼およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08283911A true JPH08283911A (ja) | 1996-10-29 |
Family
ID=13868830
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8579595A Withdrawn JPH08283911A (ja) | 1995-04-11 | 1995-04-11 | 加工性に優れた高強度ステンレス鋼およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08283911A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006307287A (ja) * | 2005-04-28 | 2006-11-09 | Jfe Steel Kk | 拡管性に優れる油井用ステンレス鋼管 |
-
1995
- 1995-04-11 JP JP8579595A patent/JPH08283911A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006307287A (ja) * | 2005-04-28 | 2006-11-09 | Jfe Steel Kk | 拡管性に優れる油井用ステンレス鋼管 |
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