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JPH08196616A - 生体内分解吸収性の外科用材料の製造法 - Google Patents

生体内分解吸収性の外科用材料の製造法

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Publication number
JPH08196616A
JPH08196616A JP7268998A JP26899895A JPH08196616A JP H08196616 A JPH08196616 A JP H08196616A JP 7268998 A JP7268998 A JP 7268998A JP 26899895 A JP26899895 A JP 26899895A JP H08196616 A JPH08196616 A JP H08196616A
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polylactic acid
average molecular
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viscosity average
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JP7268998A
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Yasuo Shikinami
保夫 敷波
Yoshito Ikada
義人 筏
Jiyoukou Gen
丞烋 玄
Kaoru Tsuta
薫 蔦
Hidekazu Bouya
英和 棒谷
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BIOMATERIAL UNIVERSE KK
Takiron Co Ltd
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BIOMATERIAL UNIVERSE KK
Takiron Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 粘度平均分子量が30万以上のポリ乳酸
又は乳酸−グリコール酸共重合体を、その融点以上22
0℃以下の温度条件下で溶融成形し、更に60〜180
℃の温度条件下で延伸する、強靱で耐加水分解性に優れ
た生体内分解吸収性の外科用材料の製造法。 【効果】 本発明では、(イ) 高い粘度平均分子量のポリ
乳酸系ポリマーを使用し、 (ロ)特定の調整された条件下
で溶融成形し、且つ延伸したので、従来のポリ乳酸系外
科用材料では得られなかった高い圧縮曲げ強度、圧縮曲
げ弾性率を有する高強度の材料で、且つ耐加水分解性に
も優れた外科用材料が得られる効果がある。また、本発
明の方法は、樹脂成形の分野で汎用される溶融成形の工
程に延伸の工程を付加するのみ、なんら特別の装置を準
備する必要がない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリ乳酸又は乳酸
−グリコール酸共重合体(以下、両者をポリ乳酸系ポリ
マーと略称する)からなる、強靱で耐加水分解性に優れ
た新規な生体内分解吸収性の延伸成形物の外科用材料の
新規な製造法に関する。さらに、本発明の外科用材料の
新規な製造法は、出発原料として粘度平均分子量が30
万〜60万のポリ乳酸系ポリマーを使用して、該ポリ乳
酸系ポリマーの融点以上、該ポリマーの分子量低下を最
低限に抑える220℃以下の温度範囲で溶融成形し、次
いで該ポリマーの更なる分子量低下を招かない特定範囲
の60〜180℃の温度条件下で延伸を行う点に特徴を
有する。
【0002】より詳細には、本発明の方法により得られ
た延伸成形物の外科用材料は、骨と同程度かやや高い圧
縮曲げ強度と圧縮曲げ弾性率、即ち強靱さと優れた耐加
水分解性を有し且つ生体内分解吸収性の材料であって、
生体内における強度の保持特性が大巾に向上し、更に骨
折等の癒合に必要な期間中はその特性を保持するが、そ
の期間を経過すると徐々に分解・吸収されて異物として
長期に生体内に存在することにより生じる様々な悪影響
を除外できる、と云う効果を有する。
【0003】
【従来の技術】整形外科や口腔外科においては、骨折部
の整復に高強度の骨接合プレートやビス等が使用されて
いる。このような骨接合用の人工材料は、骨折が治癒す
るまでの期間だけ機能し、治癒後は骨の弱化を防ぐため
にもできるだけ早期に抜き去る必要がある。現在、臨床
で広く使用されている骨接合プレート等は殆どが金属製
であり、最近セラミックス製のものも出現してきた。し
かし、これらは材料そのものの弾性率が高すぎて骨を変
質させるとか、金属イオンの溶出による生体損傷性等の
問題がある。
【0004】従って、骨と同程度かやや高い弾性率を持
ち、且つ生体内分解吸収性である材料を骨接合に用いる
ならば、抜ていのための再手術が不必要になるだけでな
く、異物が長期にわたって生体内に存在することにより
生じる様々な悪影響を除外できるはずである。かかる事
情から、生体内分解吸収性材料であるポリ乳酸又は乳酸
−グリコール酸共重合体を用いた骨接合材の開発が活発
に進められている。例えば、Makromol Chem.Suppl.Vol.
5,p30〜41(1981)には、M.Vert;F.Chabotらは、骨接合プ
レートとしてポリ乳酸や乳酸−グリコール酸共重合体を
合成し、ポリ乳酸100%のもので圧縮曲げ弾性率が
3.4GPa(340kg/mm2)という低い値を報
告している。
【0005】また、第9回USA バイオマテリアル学会要
旨集,6号.p47.(1983) には、D.C.Tuncは圧縮曲げ弾性率
510kg/mm2 という値のポリ乳酸骨接合プレート
を報告している。また、特開昭59−97654号公報
には、吸収性の骨固定用器具として使用できるポリ乳酸
又は乳酸−グリコール酸共重合体の合成法が開示されて
いるが、この場合に該骨固定用材料として挙げられてい
るのは重合生成物自体であり、このポリ乳酸の引張強度
が約580kg/cm2 と低い値であり、しかもこの材
料の成形加工については何ら説明されておらず、その強
度を人の骨程度に上げる試みは示されていない。
【0006】つい最近、Biomaterials,Vol.8,p42(1987)
には、P.Tormala他がグリコール酸−乳酸共重合体繊維
により強化されたグリコール酸−乳酸共重合体の複合体
からなる骨接合プレートを報告しており、その圧縮曲げ
強度が265MPa (26.5kg/ mm2 ) と高い
が、in vitro加水分解に伴う強度劣化が極めて速く、約
1ケ月で強度がなくなっている。また、J.W.Leenslag,
A.J.Pennings らは、粘度平均分子量約100万のポリ
乳酸を合成し、その高分子量ポリ乳酸の骨接合プレート
の圧縮曲げ弾性率が5GPa(500kg/mm2 )と
いう値であると報告している。
【0007】また、「人工臓器」Vol.16,No.3(1987) に
は、中村らが、ポリ乳酸に無機物質であるハイドロキシ
アパタイト(HA)少量(5〜20重量%)を含有させ
熱圧縮成形によりプレート状に成形後、延伸して円柱状
ピンを得たと報告しているが、これは、あくまでもHA
の存在下での延伸であって、本発明のようにポリ乳酸系
ポリマー単独の延伸の可能性については全く示唆してい
ない。このように、従来のポリ乳酸系骨接合材の圧縮曲
げ強度等の機械的性質を向上させて骨のそれに近づける
ための研究が数多く報告され、様々な方法が試みられて
いるが、未だ臨床で十分に使用されて満足できる圧縮曲
げ強度等を有し、且つ治癒後は徐々に分解吸収される生
体内分解吸収性材料は開発されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の課題
に鑑みてなされたもので、従来公知のポリ乳酸系骨接合
材の圧縮曲げ強度と圧縮曲げ弾性率等の機械的特性と耐
加水分解性を大きく上回る、高い圧縮曲げ強度並びに圧
縮曲げ弾性率を有しており且つ耐加水分解性に優れたポ
リ乳酸系の生体内分解吸収性の延伸成形物の外科用材料
の製造法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
種々検討した結果、特定範囲の高い粘度平均分子量を持
つポリ乳酸系ポリマーを特定の調整された温度条件下で
溶融成形し且つ延伸することにより、該延伸成形物の外
科用材料の圧縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率が骨と同程
度かやや高いようにできることを見出し、本発明を完成
するに至った。即ち、本発明は;粘度平均分子量が30
万〜60万のポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体
を、その融点以上220℃以下の温度条件下で溶融成形
し、更に60〜180℃の温度条件下で延伸することを
特徴とする、強靱で耐加水分解性に優れた生体内分解吸
収性の外科用材料の製造法である。
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。本発明
に係るポリ乳酸系生体内分解吸収性の延伸成形物の外科
用材料の製造方法を以下に説明する。出発原料であるポ
リ乳酸系ポリマー、特にポリ乳酸は、例えば光学活性を
有するL体又はD体の乳酸から常法(C.E.Loweによる米
国特許第2,668,162 号明細書) に従って乳酸の環状二量
体であるラクチドを合成した後、そのラクチドを開環重
合することによって得られるものである。このポリ乳酸
は、溶融成形時の分子量低下を考慮すると、少なくとも
粘度平均分子量が30万以上のものであることが必要で
あり、該分子量が高いものほど高い圧縮曲げ強度、圧縮
曲げ弾性率の外科用材料を得るのに適する。しかし、該
分子量があまり高すぎると、溶融成形、特に押出成形の
際に高温・高圧が必要となるため分子量の大幅な低下を
招き、結果的に溶融成形後の分子量が20万を下回るよ
うになるので、目的とする高い圧縮曲げ強度、高い圧縮
曲げ弾性率の外科用材料を得ることが困難となる。従っ
て、該原料のポリ乳酸の粘度平均分子量は30万〜60
万程度、好ましくは40〜50万程度の分子量であるこ
とが望ましい。
【0011】また、本発明では、出発原料として上記ポ
リ乳酸に代えて乳酸−グリコール酸共重合体も用いられ
る。この共重合体は、ポリ乳酸と同程度の粘度平均分子
量を有し、乳酸含有割合の大きい方が適しており、なか
でも乳酸とグリコール酸の重量比が99:1〜75:2
5の範囲にあるものが好ましく使用される。グリコール
酸が少量で上記範囲内の場合には、得られる外科用材料
が優れた耐加水分解性を有するため、37℃の生理食塩
水中に3ケ月間浸漬しても(骨折の癒合に必要と考えら
れる3ケ月間生体内に埋植させた状況に相当する)殆ど
圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率などの強度劣化を生じな
いが、グリコール酸が上記範囲を越えて増加すると、耐
加水分解性が低下して早期に該強度劣化を招くという不
都合が生じるからである。
【0012】本発明の方法により得られる外科用材料
は、上記特定範囲内の高い粘度平均分子量を有するポリ
乳酸系ポリマーを出発原料とし、これをロッド又は帯状
(プレート状)など所定の形状に溶融成形、例えば押出
成形、プレス成形した後、更に長軸方向に一軸に延伸す
ることによって得られる。溶融成形の中でも、特に押出
成形は生産性が良いので好ましく利用でき、この場合通
常の押出機を用いることができる。溶融成形(例えば押
出成形)の条件は、上記ポリ乳酸系ポリマーの融点以
上、220℃以下の温度範囲とする必要がある。この場
合に、溶融成形温度がポリ乳酸系ポリマーの融点より低
いと溶融成形が困難となり、逆に220℃を越えるとポ
リ乳酸系ポリマーの分子量低下が著しくなり、溶融成形
後の粘度平均分子量が所定の20万を下回るからであ
る。
【0013】溶融成形時のポリ乳酸系ポリマーの分子量
低下を最小限に抑えるには、原料ポリ乳酸系ポリマーの
融点より僅かに高い温度で溶融成形することが大切であ
る。従って、原料ポリ乳酸系ポリマーとして上述のよう
に40〜50万程度の粘度平均分子量を有するものを使
用する場合には、200℃以下の温度条件で溶融成形す
ることが望ましい。同様に、溶融押出成形の圧力条件
は、原料ポリ乳酸系ポリマーの分子量低下を極力抑える
ために、溶融したポリ乳酸系ポリマーの粘度(粘度平均
分子量)に応じて押出可能な最小限の押出圧力とするの
が望ましい。
【0014】従って、原料ポリ乳酸系ポリマーの粘度平
均分子量が60万までの場合には、260kg/cm2
以下、該分子量が40〜50万程度の場合には170〜
210kg/cm2 程度の押出圧力とするのが適当であ
る。なお、溶融成形の前に、原料のポリ乳酸系ポリマー
のペレットを予め減圧加熱乾燥して水分を十分に除去し
ておくのが好ましい。溶融成形によって得られた成形物
は、粘度平均分子量が20万以上に保たれているので、
かなりの圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を有するが、ま
だ目的とする(骨に匹敵する)値には及ばない。
【0015】そこで、本発明では、上記溶融成形物を更
に流動パラフィン、油等の熱媒体中で長軸方向(押出方
向)に一軸延伸することにより、ポリマー分子を配向さ
せて圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を向上させている。
この一軸延伸は60〜180℃での温度条件で行うこと
が必要である。この延伸温度が60℃より低い温度で
は、ポリ乳酸系材料のガラス転移点に近すぎるため延伸
による分子配向が不十分となり、逆に180℃より高い
温度では材料の分子量低下をきたし、いずれの場合も延
伸によって満足に圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を向上
させることが困難となる。好ましい温度条件は、溶融成
形後のポリ乳酸系材料の分子量によって変動するが、そ
の分子量が20万〜25万程度であれば100℃前後で
ある。
【0016】また、延伸倍率は2倍又はそれ以上とする
のが望ましい。2倍より小さい延伸倍率では分子配向が
不十分となり、満足に圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を
向上させることが困難となるからである。従来、ポリ乳
酸系材料を単独で使用して骨に匹敵する高い圧縮曲げ強
度、圧縮曲げ弾性率並びに優れた耐加水分解性を有する
外科用材料、特に骨接合用材料は得られなかった。然る
に、上述のように、本発明の方法により得られた新規な
外科用材料では、30万〜60万程度という特定範囲の
高い粘度平均分子量を持つ原料ポリ乳酸系ポリマーを選
択し且つ溶融成形温度条件を特定範囲(その融点以上、
220℃以下)としたので、溶融成形時のポリ乳酸系ポ
リマーの分子量低下を最低限に抑えることができ、ま
た、溶融成形後の粘度平均分子量を20万以上としたポ
リ乳酸系材料をガラス転移点付近(60℃)〜融点付近
(180℃)の温度、好ましくはそのガラス転移点に近
い温度(100℃程度)で一軸延伸することにより、初
めて高強度で耐加水分解性に優れた延伸成形物の外科用
材料を提供できる点に技術的意義を有する。
【0017】本発明の方法により得られた新規な外科用
材料は、ポリ乳酸系ポリマーからなる生体内分解吸収性
材料の延伸された成形物であって、その圧縮曲げ強度が
1.6×103 kg/cm2 以上、圧縮曲げ弾性率が
5.0×102 kg/mm2 以上、溶融成形後の粘度平
均分子量が20万以上である、強靱で耐加水分解性に優
れた外科用材料となる。この外科用材料は、その後に適
当な寸法に切断され、最終的に種々のサイズ及び形状の
骨接合プレート、ピン、ビス、スクリュー等に切削加工
され、整形外科、口腔外科、胸部外科等の領域で臨床に
使用できる。
【0018】本発明の方法により得られた新規な外科用
材料は、ポリ乳酸系ポリマーのみよりなるから、生体内
分解吸収性も極めて良好であり、従来の金属又はセラミ
ックス製外科用材料のように生体内で悪影響を与える心
配は殆どない。より詳細には、本発明の方法により得ら
れた新規な外科用材料は、骨と同程度かやや高い圧縮曲
げ強度、圧縮曲げ弾性率を有していて、外科治療に際し
骨折等の部位の固定をし、骨の再生につれて徐々に分解
しても、骨折が修復される3ケ月程度までは強度を保持
し、その後は分解が進んで強度が低下するものの骨が再
生されて全体として強度保持がなされるのである。
【0019】しかも、本発明の方法により得られた新規
な外科用材料では、溶融成形時の分子量低下を最小限に
抑えて溶融成形後の粘度平均分子量を20万以上に保
ち、更に延伸によって分子配向及び結晶配向を与えてい
るため、その圧縮曲げ強度が1.6×103 kg/cm
2 以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×102 kg/mm2
以上と、従来のポリ乳酸系外科用材料では到達できなか
った高い圧縮曲げ強度、高い圧縮曲げ弾性率を示し、ま
た、耐加水分解性も向上し、37℃の生理食塩水中に約
3ケ月浸漬しても(骨折の癒合に必要と考えられる3ケ
月間生体内に埋植させた状況に相当する)、殆ど強度劣
化を生じることがない効果がある。
【0020】本発明の方法により得られた新規な外科用
材料は、溶融成形後の粘度平均分子量が20万以上であ
る必要がある。このような粘度平均分子量値であると、
埋植時において骨と同程度かやや高い初期圧縮曲げ強度
及び初期圧縮曲げ弾性率を与え、さらに癒合に必要と考
えられる3ケ月間該骨接合材を生体内にインプラントさ
せても圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を低下させないよ
うに保持できる。また、溶融成形後の粘度平均分子量が
20万より低いと、上記初期の圧縮曲げ強度及び圧縮曲
げ弾性率は目標値(骨と同じかそれを上回る値)を下回
り、骨接合材の分解も早くなって使用できなくなり、外
科用材料としては強度的並びに、耐加水分解性の両面で
実用化できなくなる。
【0021】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、こ
れらは本発明の範囲を制限しない。実施例中に示した圧
縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率はJIS K−7203
に基づいて測定したものである。 (実施例1)初期の粘度平均分子量が44万のポリ乳酸
のペレットを減圧下に120〜140℃で一昼夜乾燥
し、この乾燥ペレットを押出機に入れて減圧下に約20
分間放置した後、下記表1に示した温度条件で、角棒又
は丸棒状に溶融押出成形した。得られた角棒又は丸棒状
成形物の粘度平均分子量を測定したところ、下記表1に
示すように22万であった。
【0022】なお、この場合の粘度式は:
【数1】 〔η〕=5.45×10-4v 0.73(クロロホルム 25℃) を用いた。次いで、この成形物を100℃の流動パラフ
ィン中で長軸方向に2倍に一軸延伸し、これを切断して
試験片(寸法:幅10mm×厚み5mm×長さ80m
m)を作製した。得られた試験片の圧縮曲げ強度及び圧
縮曲げ弾性率を測定したところ、下記表1に示すよう
に、圧縮曲げ強度が1,720kg/cm2 、圧縮曲げ
弾性率が610kg/mm2 であった。
【0023】更に、この試験片を37℃の生理食塩水中
に3ケ月間浸漬し、その後、該試験片の圧縮曲げ強度及
び圧縮曲げ弾性率を測定したところ、下記表1に示すよ
うに、圧縮曲げ強度が1,700kg/cm2 、圧縮曲
げ弾性率が600kg/mm2 であり、強度劣化が殆ど
見られなかった。
【0024】(実施例2)初期の粘度平均分子量が42
万のポリ乳酸のペレットを用いた以外は実施例1と同様
にして試験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間
浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出
成形後の粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表
1に示す。
【0025】(実施例3)初期の粘度平均分子量が40
万の乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸
=90:10)を用いた以外は実施例1と同様にして試
験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間浸漬後の
圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出成形後の
粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表1に示
す。
【0026】(実施例4〜5)延伸温度をそれぞれ70
℃と170℃に変更した以外は実施例1と同様にして2
種類の試験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間
浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出
成形後の粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表
1に併せて示す。
【0027】(比較例1〜2)初期の粘度平均分子量が
それぞれ70万及び28万のポリ乳酸を用いて、溶融押
出成形の温度条件を下記表1に示す温度に変更した以外
は実施例1と同様にして2種類の試験片を作製し、この
試験片の初期及び3ケ月間浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮
曲げ弾性率並びに溶融押出成形後の粘度平均分子量を測
定した。その結果を下記表1に併せて示す。
【0028】
【表1】
【0029】前記表1より、実施例1〜5により得られ
た本発明の生体内分解吸収性の延伸成形物の外科用材料
は、いずれも溶融成形後の粘度平均分子量が20万以上
であって、圧縮曲げ強度が1.6×103 kg/cm2
以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×102 kg/mm2
上と優れた強度を有しており、また、生理食塩水中で3
ケ月間浸漬しても殆ど強度劣化を生じない高耐加水分解
性を有することが分かる。これに対し、比較例1の材料
は、分子量が70万と極めて高いポリ乳酸を用いたにも
拘らず、溶融押出成形の温度及び圧力が高いため、成形
後の分子量が20万を下回り、一軸延伸しても、結果的
に圧縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率が目標値を下回り、
満足な強度が得られないことが分かる。また、比較例2
は、分子量が30万より低いため、溶融押出成形の温度
及び圧力を低くして分子量低下を極力抑えても、成形後
の分子量が20万を遙かに下回り、そのために一軸延伸
しても、満足な強度が得られないことが分かる。
【0030】
【発明の効果】以上の説明及び実施例の結果から明らか
ように、本発明の方法は、(イ) 出発原料として特定範囲
の高い粘度平均分子量を有するポリ乳酸系ポリマーを使
用し、(ロ)該ポリマーの分子量低下を最低限に抑える特
定の温度範囲で溶融成形し、 (ハ)該ポリマーの更なる分
子量低下を招かない特定の温度条件下で延伸を行うとい
う、特定の調整された条件下でポリ乳酸系生体内分解吸
収性の延伸成形物の外科用材料を製造したので、
【0031】従来のポリ乳酸系外科用材料では得られな
かった高い圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を具備し、且
つ耐加水分解性にも優れた外科用材料を得ることがで
き、整形外科、口腔外科、又は胸部外科等の領域におい
て、骨接合用のプレート、スクリュー、ピン又はビス等
として頗る好適に使用することができる。また、本発明
の製造法は、樹脂成形の分野で汎用される溶融成形の工
程に延伸の工程を付加するのみであるから、なんら特別
の装置を準備することなく容易且つ高能率で実施でき、
且つ必要に応じて連続工程も可能であり、量産性、作業
性等に優れるといった効果がある。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリ乳酸又は乳酸
−グリコール酸共重合体(以下、両者をポリ乳酸系ポリ
マーと略称する)からなる、強靭で耐加水分解性に優れ
た新規な生体内分解吸収性の延伸成形物の外科用材料の
新規な製造法に関する。さらに、本発明の外科用材料の
新規な製造法は、原料として粘度平均分子量が30万〜
60万のポリ乳酸系ポリマーを使用して、該ポリ乳酸系
ポリマーの融点以上、該ポリマーの分子量低下を最低限
に抑える220℃以下の温度範囲で溶融成形し、次いで
該ポリマーの更なる分子量低下を招かない特定範囲の6
0〜180℃の温度条件下で延伸を行う点に特徴を有す
る。
【0002】より詳細には、本発明の方法により得られ
た延伸成形物の外科用材料は、骨と同程度かやや高い圧
縮曲げ強度と圧縮曲げ弾性率、即ち強靭さと優れた耐加
水分解性を有し且つ生体内分解吸収性の材料となり、生
体内における強度の保持特性が大巾に向上し、更に骨折
等の癒合に必要な期間中はその強度を保持するが、その
期間を経過すると徐々に分解・吸収されて異物として長
期に生体内に存在することにより生じる様々な悪影響を
除外できる、と云う特性を有するものである
【0003】
【従来の技術】整形外科や口腔外科においては、骨折部
の整復に高強度の骨接合プレートやビス等が使用されて
いる。このような骨接合用の人工材料は、骨折が治癒す
るまでの期間だけ機能し、治癒後は骨の弱化を防ぐため
にもできるだけ早期に抜き去る必要がある。現在、臨床
で広く使用されている骨接合プレート等は殆どが金属製
であり、最近セラミックス製のものも出現してきた。し
かし、これらは材料そのものの弾性率が高すぎて骨を変
質させるとか、金属イオンの溶出による生体損傷性等の
問題がある。
【0004】従って、骨と同程度かやや高い弾性率を持
ち、且つ生体内分解吸収性である材料を骨接合に用いる
ならば、抜ていのための再手術が不必要になるだけでな
く、異物が長期にわたって生体内に存在することにより
生じる様々な悪影響を除外できるはずである。かかる事
情から、生体内分解吸収性材料であるポリ乳酸又は乳酸
−グリコール酸共重合体を用いた骨接合材の開発が活発
に進められている。例えば、Makromol Che
m.Suppl.Vol.5,p30〜41(198
1)には、M.Vert,F.Chabotらは、骨接
合プレートとしてポリ乳酸や乳酸−グリコール酸共重合
体を合成し、ポリ乳酸100%のもので圧縮曲げ弾性率
が3.4GPa(340kg/mm)という低い値を
報告している。
【0005】また、第9回USAバイオマテリアル学会
要旨集,6号.p47.(1983)には、D.C.T
uncは圧縮曲げ弾性率510kg/mmという値
のポリ乳酸骨接合プレートを報告している。また、特開
昭59−97654号公報には、吸収性の骨固定用器具
として使用できるポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重
合体の合成法が開示されているが、この場合に該骨固定
用材料として挙げられているのは重合生成物自体であ
り、このポリ乳酸の引張強度が約580kg/cm
低い値であり、しかもこの材料の成形加工については何
ら説明されておらず、その強度を人の骨程度に上げる試
みは示されていない。
【0006】つい最近、Biomaterials,V
ol.8,p42(1987)には、P.Tormal
a他がグリコール酸−乳酸共重合体繊維により強化され
たグリコール酸−乳酸共重合体の複合体からなる骨接合
プレートを報告しており、その圧縮曲げ強度が265M
Pa(26.5kg/mm)と高いが、in vit
ro加水分解に伴う強度劣化が極めて速く、約1ケ月で
強度がなくなっている。また、J.W.Leensla
g,A.J.Penningsらは、粘度平均分子量が
約100万のポリ乳酸を合成し、その高分子量ポリ乳酸
の骨接合プレートの圧縮曲げ弾性率が5GPa(500
kg/mm)という値であると報告している。
【0007】また、「人工臓器」Vol.16,No.
3(1987)には、中村らが、ポリ乳酸に無機物質で
あるハイドロキシアパタイト(HA)少量(5〜20
重量%)含有させ熱圧縮成形によりプレート状に成形
後、延伸して円柱状ピンを得たと報告しているが、これ
は、あくまでもHAの存在下での延伸であって、ポリ乳
酸系ポリマー単独の延伸の可能性については全く示唆し
ていない。このように、従来のポリ乳酸系骨接合材の圧
縮曲げ強度等の機械的性質を向上させて骨のそれに近づ
けるための研究が数多く報告され、様々な方法が試みら
れているが、未だ臨床で十分に使用されて満足できる圧
縮曲げ強度等を有し、且つ治癒後は徐々に分解吸収され
る生体内分解吸収性材料は開発されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の課題
に鑑みてなされたもので、従来公知のポリ乳酸系骨接合
材の圧縮曲げ強度と圧縮曲げ弾性率等の機械的特性と耐
加水分解性を共に大きく上回る、高い圧縮曲げ強度並び
に圧縮曲げ弾性率を有し且つ耐加水分解性に優れたポリ
乳酸系の生体内分解吸収性の延伸成形物の外科用材料の
製造法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
種々検討した結果、特定範囲の高い粘度平均分子量を持
つポリ乳酸系ポリマーを特定の調整された温度条件下で
溶融成形し且つ延伸することにより、該延伸成形物の外
科用材料の圧縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率が骨と同程
度かやや高いようにできることを見出し、本発明を完成
するに至った。即ち、本発明は;粘度平均分子量が30
万〜60万のポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体
を、その融点以上220℃以下の温度条件下で溶融成形
し、更に60〜180℃の温度条件下で延伸することを
特徴とする、強靭で耐加水分解性に優れた生体内分解吸
収性の外科用材料の製造法である。ここで、本発明にお
いて「耐加水分解性に優れる」とは、骨癒合に必要な3
ケ月程度は必要な強度を保持し、骨の癒合後は徐々に分
解吸収されて生体内に異物として長期間残らない加水分
解性をいう。
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。本発明
に係るポリ乳酸系生体内分解吸収性の延伸成形物の外科
用材料の製造方法を以下に説明する。原料であるポリ乳
酸系ポリマー、特にポリ乳酸は、例えば光学活性を有す
るL体又はD体の乳酸から常法(C.E.Loweによ
る米国特許第2,668,162号明細書)に従って乳
酸の環状二量体であるラクチドを合成した後、そのラク
チドを開環重合することによって得られるものである。
このポリ乳酸は、溶融成形時の分子量低下を考慮する
と、少なくとも粘度平均分子量が30万以上のものであ
ることが必要であり、該分子量が高いものほど高い圧縮
曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を有する外科用材料を得るの
に適する。しかし、該分子量があまり高すぎると、溶融
成形、特に押出成形の際に高温・高圧が必要となるため
分子量の大幅な低下を招き、結果的に溶融成形後の分子
量が20万を下回るようになるので、これを延伸しても
目的とする高い圧縮曲げ強度、高い圧縮曲げ弾性率を有
する外科用材料を得ることが困難となる。従って、原料
であるポリ乳酸の粘度平均分子量は30万〜60万程
度、好ましくは40〜50万程度の分子量であることが
望ましい。
【0011】また、本発明では、原料として上記ポリ乳
酸に代えて乳酸−グリコール酸共重合体も用いられる。
この共重合体は、ポリ乳酸と同程度の粘度平均分子量を
有し、乳酸含有割合の大きい方が適しており、なかでも
乳酸とグリコール酸の重量比が99:1〜75:25の
範囲にあるものが好ましく使用される。グリコール酸が
少量で上記範囲内の場合には、得られる外科用材料が優
れた耐加水分解性を有するため、37℃の生理食塩水中
に3ケ月間浸漬しても(骨折の癒合に必要と考えられる
3ケ月間生体内に埋植させた状況に相当する)殆ど圧縮
曲げ強度、圧縮曲げ弾性率などの強度劣化を生じない
が、グリコール酸が上記範囲を越えて増加すると、耐加
水分解性が低下して早期に該強度劣化を招くという不都
合が生じるからである。
【0012】本発明の方法により得られる外科用材料
は、上記特定範囲内の高い粘度平均分子量を有するポリ
乳酸系ポリマーを原料とし、これをロッド又は帯状(プ
レート状)など所定の形状に溶融成形、例えば押出成
形、プレス成形した後、更に長軸方向に一軸に延伸する
ことによって得られる。溶融成形の中でも、特に押出成
形は生産性が良いので好ましく利用でき、この場合通常
の押出機を用いることができる。溶融成形(例えば押出
成形)の条件は、上記ポリ乳酸系ポリマーの融点以上、
220℃以下の温度範囲とする必要がある。この場合
に、溶融成形温度がポリ乳酸系ポリマーの融点より低い
と溶融成形が困難となり、逆に220℃を越えるとポリ
乳酸系ポリマーの分子量低下が著しくなり、溶融成形後
の粘度平均分子量が20万を下回るからである。
【0013】溶融成形時のポリ乳酸系ポリマーの分子量
低下を最小限に抑えるには、原料ポリ乳酸系ポリマーの
融点より僅かに高い温度で溶融成形することが大切であ
る。従って、原料ポリ乳酸系ポリマーとして上述のよう
に40〜50万程度の粘度平均分子量を有するものを使
用する場合には、200℃以下の温度条件で溶融成形す
ることが望ましい。同様に、溶融押出成形の圧力条件
は、原料ポリ乳酸系ポリマーの分子量低下を極力抑える
ために、溶融したポリ乳酸系ポリマーの粘度(粘度平均
分子量)に応じて押出可能な最小限の押出圧力とするの
が望ましい。
【0014】従って、原料ポリ乳酸系ポリマーの粘度平
均分子量が60万までの場合には、260kg/cm
以下、該分子量が40〜50万程度の場合には170〜
210kg/cm程度の押出圧力とするのが適当であ
る。なお、溶融成形の前に、原料のポリ乳酸系ポリマー
のペレットを予め減圧加熱乾燥して水分を十分に除去し
ておくのが好ましい。溶融成形によって得られた成形物
は、その粘度平均分子量が20万以上に保たれているの
で、かなりの圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を有する
が、まだ目的とする(骨に匹敵する)値には及ばない。
【0015】そこで、本発明では、上記溶融成形物を更
に流動パラフィン、油等の熱媒体中で長軸方向(押出方
向)に一軸延伸することにより、ポリマー分子を配向さ
せて圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を向上させている。
この一軸延伸は60〜180℃での温度条件で行うこと
が必要である。この延伸温度が60℃より低い温度で
は、溶融成形物のガラス転移点に近すぎるため延伸によ
る分子配向が不十分となり、逆に180℃より高い温度
では成形物の分子量低下をきたし、いずれの場合も延伸
によって満足に圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を向上さ
せることが困難となる。好ましい温度条件は、溶融成形
後の成形物の分子量によって変動するが、その分子量が
20万〜25万程度であれば100℃前後である。
【0016】また、延伸倍率は2倍又はそれ以上であっ
て外科材料に適する程度の範囲が望ましい。2倍より小
さい延伸倍率では分子配向が不十分となり、満足に圧縮
曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を向上させることが困難とな
るからである。従来、ポリ乳酸系ポリマーを単独で使用
して骨に匹敵する高い圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並
びに優れた耐加水分解性を有する外科用材料、特に骨接
合用材料は得られなかった。然るに、上述のように、本
発明の方法により得られた新規な外科用材料では、30
万〜60万程度という特定範囲の高い粘度平均分子量を
持つ原料ポリ乳酸系ポリマーを選択し且つ溶融成形温度
条件を特定範囲(その融点以上、220℃以下)とした
ので、溶融成形時のポリ乳酸系ポリマーの分子量低下を
最低限に抑えて成形後の粘度平均分子量を20万以上と
することができ、この溶融成形物をガラス転移点付近
(60℃)〜融点付近(180℃)の温度、好ましくは
100℃前後で一軸延伸することにより、初めて高強度
で耐加水分解性に優れた延伸成形物の外科用材料を得る
ことができる点に技術的意義を有する。
【0017】本発明の方法により得られた新規な外科用
材料は、ポリ乳酸系ポリマーからなる生体内分解吸収性
材料の延伸された成形物であって、その圧縮曲げ強度が
1.6×10kg/cm以上、圧縮曲げ弾性率が
5.0×10kg/mm以上、溶融成形後の粘度平
均分子量が20万以上である、強靭で耐加水分解性に優
れた外科用材料となる。この外科用材料は、その後に適
当な寸法に切断され、最終的に種々のサイズ及び形状の
骨接合プレート、ピン、ビス、スクリュー等に切削加工
され、整形外科、口腔外科、胸部外科、形成外科等の領
域で臨床に使用できる。
【0018】本発明の方法により得られた新規な外科用
材料は、ポリ乳酸系ポリマーのみよりなるから、生体内
分解吸収性も極めて良好であり、従来の金属又はセラミ
ックス製外科用材料のように生体内で悪影響を与える心
配は殆どない。より詳細には、本発明の方法により得ら
れた新規な外科用材料は、骨と同程度かやや高い圧縮曲
げ強度、圧縮曲げ弾性率を有していて、外科治療に際し
骨折等の部位の固定をし、骨の再生につれて徐々に分解
しても、骨折が修復される3ケ月程度までは強度を保持
し、その後は分解が進んで強度が低下するものの骨が再
生されて全体として強度保持がなされるのである。
【0019】しかも、本発明の方法により、溶融成形時
の分子量低下を最小限に抑えて溶融成形後の粘度平均分
子量を20万以上に保ち、更に延伸によって分子配向及
び結晶配向を与えると、得られた外科用材料はその圧縮
曲げ強度が1.6×10kg/cm以上、圧縮曲げ
弾性率が5.0×10kg/mm以上と、従来のポ
リ乳酸系外科用材料では到達できなかった高い圧縮曲げ
強度、高い圧縮曲げ弾性率を示し、また、耐加水分解性
も向上し、37℃の生理食塩水中に約3ケ月浸漬しても
(骨折の癒合に必要と考えられる3ケ月間生体内に埋植
させた状況に相当する)、殆ど強度低下を生じることが
ない効果がある。
【0020】本発明の方法では、溶融成形後の粘度平均
分子量を20万以上にすることが重要である。このよう
な粘度平均分子量を持つ成形物を延伸して得られる外科
用材料は、埋植時において骨と同程度かやや高い初期圧
縮曲げ強度及び初期圧縮曲げ弾性率を与え、さらに癒合
に必要と考えられる3ケ月間該骨接合材を生体内にイン
プラントさせても圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を低下
させないように保持できる。また、溶融成形後の粘度平
均分子量が20万より低いと、これを延伸しても上記初
期の圧縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率は目標値(骨と同
じかそれを上回る値)を下回り、骨接合材の分解も早く
なって使用できなくなり、外科用材料としては強度的並
びに、耐加水分解性の両面で実用化できなくなる。
【0021】本発明において、溶融成形後の粘度平均分
子量は20万以上であることが望ましいとしたが、その
上限は一義的に定めることができない。すなわち、原料
ポリ乳酸系ポリマーの望ましい粘度平均分子量は30万
〜60万であるので60万を越えることはないが、使用
する原料ポリ乳酸系ポリマーの分子量、共重合比、成形
温度や押出圧力等の溶融成形条件等にかなりの幅がある
うえ、上記分子量、共重合比、成形条件により分子量低
下の程度が変化するので上限を一義的に定めることがで
きないのである。
【0022】また、本発明により得られる新規な外科用
材料において、その圧縮曲げ強度が1.6×10kg
/cm以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×10kg/
mm以上であるとしたが、その上限は一義的に定める
ことができない。すなわち、これら外科用材料の強度特
性の下限は、溶融成形後の粘度平均分子量値が20万の
成形物を延伸したことに由来するものであり、従って、
その上限は原料ポリ乳酸系ポリマーの特定範囲の粘度平
均分子量の上限値(60万)に由来して決まる溶融成形
後の粘度平均分子量の上限の成形物を延伸したことに基
づくが、原料ポリ乳酸系ポリマーの分子量、共重合比、
溶融成形条件、延伸倍率等にかなりの幅があるうえ、こ
れらによりその圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率が変化す
るので一義的に上限を定めることができないのである。
【0023】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、こ
れらは本発明の範囲を制限しない。実施例中に示した圧
縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率はJIS K−7203
に基づいて測定したものである。 (実施例1)初期の粘度平均分子量が44万のポリ乳酸
のペレットを減圧下に120〜140℃で一昼夜乾燥
し、この乾燥ペレットを押出機に入れて減圧下に約20
分間放置した後、下記表1に示した温度条件で、角棒又
は丸棒状に溶融押出成形した。得られた角棒又は丸棒状
成形物の粘度平均分子量を測定したところ、下記表1に
示すように22万であった。
【0024】なお、この場合の粘度式は:
【数1】 を用いた。次いで、この成形物を100℃の流動パラフ
ィン中で長軸方向に2倍に一軸延伸し、これを切断して
試験片(寸法:幅10mm×厚み5mm×長さ80m
m)を製作した。得られた試験片の圧縮曲げ強度及び圧
縮曲げ弾性率を測定したところ、下記表1に示すよう
に、圧縮曲げ強度が1,720kg/cm、圧縮曲げ
弾性率が610kg/mmであった。
【0025】更に、この試験片を37℃の生理食塩水中
に3ケ月間浸漬し、その後、該試験片の圧縮曲げ強度及
び圧縮曲げ弾性率を測定したところ、下記表1に示すよ
うに、圧縮曲げ強度が1,700kg/cm、圧縮曲
げ弾性率が600kg/mmであり、強度劣化が殆ど
見られなかった。
【0026】(実施例2)初期の粘度平均分子量が42
万のポリ乳酸のペレットを用いた以外は実施例1と同様
にして試験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間
浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出
成形後の粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表
1に示す。
【0027】(実施例3)初期の粘度平均分子量が40
万の乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸
=90:10)を用いた以外は実施例1と同様にして試
験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間浸漬後の
圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出成形後の
粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表1に示
す。
【0028】(実施例4〜5)延伸温度をそれぞれ70
℃と170℃に変更した以外は実施例1と同様にして2
種類の試験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間
浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出
成形後の粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表
1に併せて示す。
【0029】(実施例6初期の粘度平均分子量が49
万のポリ乳酸のペレットを用い且つ溶融押出成形の温度
条件を下記表1に示す温度に変更し、延伸温度を105
℃に変更して2.5倍に延伸した以外は実施例1と同様
にして試験片を作製し、この試験片の初期及び3ケ月間
浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率並びに溶融押出
成形後の粘度平均分子量を測定した。その結果を下記表
1に併せて示す。
【0030】(比較例1〜2)初期の粘度平均分子量が
それぞれ70万及び28万のポリ乳酸を用いて、溶融押
出成形の温度条件を下記表1に示す温度に変更した以外
は実施例1と同様にして2種類の試験片を作製し、この
試験片の初期及び3ケ月間浸漬後の圧縮曲げ強度、圧縮
曲げ弾性率並びに溶融押出成形後の粘度平均分子量を測
定した。その結果を下記表1に併せて示す。
【0031】
【表1】 前記表1より、実施例1〜6の溶融成形後の粘度平均分
子量はいずれも20万以上であり、これを延伸した生体
内分解吸収性の外科用材料は、圧縮曲げ強度が1.6×
10kg/cm以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×1
kg/mm以上と優れた強度を有しており、ま
た、生理食塩水中で3ケ月間浸漬しても殆ど強度劣化を
生じない高耐加水分解性を有することが分かる。これに
対し、比較例1の材料は、分子量が70万と極めて高い
ポリ乳酸を用いたために、溶融押出成形の温度及び圧力
を高くしないと押出しできず、成形後の分子量が20万
を下回り、一軸延伸しても、結果的に圧縮曲げ強度及び
圧縮曲げ弾性率が目標値を下回り、満足な強度が得られ
ないことが分かる。また、比較例2は、分子量が30万
より低いため、溶融押出成形の温度及び圧力を低くして
分子量低下を極力抑えても、成形後の分子量が20万を
遙かに下回り、そのために一軸延伸しても、満足な強度
が得られないことが分かる。
【0032】
【発明の効果】以上の説明及び実施例の結果から明らか
ように、本発明の方法は、(イ)原料として特定範囲の
高い粘度平均分子量を有するポリ乳酸系ポリマーを使用
し、(ロ)該ポリマーの分子量低下を最低限に抑える特
定の温度範囲で溶融成形し、(ハ)該ポリマーの更なる
分子量低下を招かない特定の温度条件下で延伸を行うと
いう、特定の調整された条件下でポリ乳酸系生体内分解
吸収性の延伸成形物の外科用材料を製造したので、
【0033】従来のポリ乳酸系外科用材料では得られな
かった高い圧縮曲げ強度、圧縮曲げ弾性率を具備し、且
つ耐加水分解性にも優れた外科用材料を得ることがで
き、整形外科、口腔外科、又は胸部外科等の領域におい
て、骨接合用のプレート、スクリュー、ピン又はビス等
として頗る好適に使用することができる。また、本発明
の製造法は、樹脂成形の分野で汎用される溶融成形の工
程に延伸の工程を付加するのみであるから、なんら特別
の装置を準備することなく容易且つ高能率で実施でき、
且つ必要に応じて連続工程も可能であり、量産性、作業
性等に優れるといった効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 玄 丞烋 京都市南区東九条南松ノ木町43番地の1 (72)発明者 蔦 薫 大阪市東区安土町2丁目30番地 タキロン 株式会社内 (72)発明者 棒谷 英和 大阪市東区安土町2丁目30番地 タキロン 株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 粘度平均分子量が30万〜60万のポリ乳酸又は乳酸−
    グリコール酸共重合体を、その融点以上220℃以下の
    温度条件下で溶融成形し、更に60〜180℃の温度条
    件下で延伸することを特徴とする、強靱で耐加水分解性
    に優れた生体内分解吸収性の外科用材料の製造法。
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