JPH0729881B2 - 哺乳動物の胚または卵子の包埋剤、包埋体およびその製造方法 - Google Patents
哺乳動物の胚または卵子の包埋剤、包埋体およびその製造方法Info
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- JPH0729881B2 JPH0729881B2 JP63296596A JP29659688A JPH0729881B2 JP H0729881 B2 JPH0729881 B2 JP H0729881B2 JP 63296596 A JP63296596 A JP 63296596A JP 29659688 A JP29659688 A JP 29659688A JP H0729881 B2 JPH0729881 B2 JP H0729881B2
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Description
vitroでのハンドリングなどに好適なカプセルおよびマ
イクロカプセル等の包埋体を形成するための包埋剤、こ
れにより形成された包埋体、および包埋体の製造方法に
関するものである。
子を保存、利用しようとする働きが活発化している。特
に、畜産分野においては、1979年にS.M.Willadsenによ
って開発された、マイクロマニピュレーターを利用した
胚の切断技術による一卵性多胎児の作出と凍結保存技術
とが相まって、貴重な遺伝資源の利用が飛躍的に拡大さ
れつつある。
中へ浸漬することによって行われるが、切断胚のように
冷却前から透明帯が不完全なもの、あるいは冷却途上で
透明帯が破損した胚は、胚細胞質まで氷晶の影響が直接
到達するため、移植後の受胎率が低下するとされてい
る。事実、H.Heymanは、切断胚の凍結融解後の生存率は
一般的に低く、未切断を胚を用いた場合に比べ30〜40%
も低くなると報告している(Theriogenology,23:63,198
5)。また、Y.Tsunodaらは人為的に切断された透明帯に
納められた切断胚は、氷晶の影響を直接受けるため融解
後の生存率が悪いが、切断胚を寒天中に包埋すれば生存
率が著しく改善されることを確認している(Theriogeno
logy,28:317−322,1987)。
勿論のことであるが、さらに透明帯の破損をいかにして
防ぐかを工夫することも移植後の生存率を高めるために
は重要なことになる。透明帯は胚の切断時に破損するの
は勿論であるが、invitroでのハンドリング中あるいは
凍結過程において、氷晶が成長して行くときにも損傷を
受けるし、また凍結胚を融解する際にも部位間の膨張開
始の時間が異なるために生じる氷晶の断層が胚あるいは
透明帯の表面を通過するために損傷を受ける。このよう
な透明帯の損傷を防御する技術としては、前述したY.Ts
unodaらの寒天を包埋剤として用いる方法があるが、他
に胚を包埋剤に包み込む技術として、T.S.Hollingswort
hらが報告しているポリリジン/アルギン酸塩を用いて
マイクロカプセルをつくる方法(Theriogenology,29:26
2,1988)、およびG.Adaniyaらが報告しているアルギン
酸ナトリウムをカルシウムイオンでゲル化してカプセル
化する方法(Biology of Reproductin,19th Annual Mee
ting of Society of Biology of Reproduction,July 14
−17,1986)がある。
を用いる場合には次のような問題点があった。
り、温度管理を誤れば胚のへい死を招く。
正確に把握できない。
とその周囲に配座している処理液との屈折率が近似して
いるために、境界面が判断し難いので作業性が悪い。
は、次のような問題点があった。
塩類の影響、あるいはpHの変化によってゲル強度が著し
く低下する。
るカルシウムイオンを多量に添加することが行われてい
るが、この方法ではゲル強度の点は改善されても、浸透
圧の上昇などによって胚または切断胚の生存率が低下す
る。
生理食塩水(以下、PBSと略称する)のようなキレート
効果を有するリン酸イオンなどを含む培養液で処理する
と、形成したゲルが溶解してしまう。
崩壊する率が多い。
これらの問題点をすべて解決できる方法は現在のところ
未だ開発されていない。
卵子をin vitroでのハンドリングあるいは凍結、融解な
どで生じる様々な物理的衝撃から確実に保護し、しかも
穏和な条件下でカプセル化またはマイクロカプセル化し
て安定かつ透明な凍結保存用の包埋体を形成でき、かつ
胚または卵子の生存率を向上させることが可能な哺乳動
物の胚または卵子の胚埋剤、胚埋体およびその製造方法
を提供することである。
討を重ねた結果、特定の組成比率を有するアルギン酸ア
ルカリ金属塩を原料としたカプセルまたはマイクロカプ
セルがハンドリング特性と耐凍性に優れており、かつ胚
および卵子の生存に適していること、さらにカプセルま
たはマイクロカプセルを形成した後、リンゲル液のよう
なリン酸イオンあるいはカルシウムイオンを含んでいな
い培養液、もしくはそれらを含んでいてもごく少ない培
養液で洗浄すれば、透明度が長期間維持できることを見
いだし、本発明に到達した。
およびその製造方法である。
液で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この胚また
は卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液と接触
させてゲル化し、胚または卵子の凍結保存用の包埋体を
形成するための包埋剤であって、アルギン酸部分のD−
マンヌロン酸(M)とL−グルロン酸(G)との成分比
率(M/G比)が0.3〜1.8であるアルギン酸アルカリ金属
塩を含有することを特徴とする哺乳動物の胚または卵子
の包埋剤。
液で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この胚また
は卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液と接触
させてゲル化した胚または卵子の凍結保存用の包埋体で
あって、前記アルギン酸アルカリ金属塩はアルギン酸部
分のD−マンヌロン酸(M)とL−グルロン酸(G)と
の成分比率(M/G比)が0.3〜1.8であることを特徴とす
る哺乳動物の胚または卵子の包埋体。
グルロン酸(G)との成分比率(M/G比)が0.3〜1.8で
あるアルギン酸アルカリ金属塩の0.5〜5重量%水溶液
で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この胚または
卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液と接触さ
せてゲル化し、形成された胚または卵子の凍結保存用の
包埋体をリン酸イオンの少ない洗浄率で洗浄することを
特徴とする哺乳動物の胚または卵子の包埋体の製造方
法。
受精卵および未受精卵を含む。また包埋体としてはカプ
セル、マイクロカプセルなど、胚または卵子を包埋して
保護するすべてのものを含む。
で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この胚または
卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液と接触さ
せてゲル化し、胚または卵子の包埋体を形成するための
包埋剤であって、アルギン酸部分のD−マンヌロン酸
(M)とL−グルロン酸(G)との成分比率(M/G比)
が0.3〜1.8であるアルギン酸アルカリ金属塩を含有する
ものである。
の強度には、アルギン酸を構成しているD−マンヌロン
酸(M)とL−グルロン酸(G)の成分比(M/G比)が
密接に関与している。そしてこのM/G比が胚および卵子
の生存に深く関わっており、また凍結、融解の際に生じ
る物理的衝撃に対する耐性にも関与している。すなわ
ち、M/G比が高いほど(Mが多いほど)形成されるゲル
は弾力性に富んだものとなり、またM/G比が低くなるほ
ど(Gが多いほど)ゲル強度が高くなって、硬いゲルが
得られる。
の構成アルギン酸のM/G比が0.3〜1.8の範囲のものであ
り、その中でも特に0.6〜1.6の範囲にあるものが耐凍性
に優れ、凍結、融解工程を経てもひび割れ、収縮等によ
るしわの形成がなく、胚または卵子の細胞質に損傷を与
えることが少ない。M/G比が1.8を超えるものはゲル強度
が低く、ハンドリングする際に破損する割合が多く、ま
たM/G比が0.3未満のものはゲル強度は高いが、かえって
脆く、凍結、融解工程を経るとひび割れを生じるので、
これらのようなM/G比を持つアルギン酸から成るアルギ
ン酸アルカリ金属塩は本発明の目的には適さない。ま
た、M/G比を特定しないでアルギン酸アルカリ金属塩を
使用するときには、カプセル、マイクロカプセル等の包
埋体の強度、耐凍性などにバラツキが見られ、さらに包
埋されている胚あるいは卵子の生存率に再現性がなくな
ってしまうので、工業的使用に際しては十分留意する必
要がある。
上記のようなM/G比のアルギン酸のナトリウム塩、カリ
ウム塩などがあげられる。これらのアルギン酸アルカリ
金属塩は、水溶液で使用され、その濃度は0.5〜5重量
%、好ましくは1〜3重量%である。
剤はカルシウムイオンを含む水溶液であって、塩化カル
シウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウ
ム塩が用いられるが、このうち特に塩化カルシウムが安
価で使い易い。
プセル状保護体を形成し得る天然の水溶性高分子で、工
業的に生産されているものには、ほぼ次のようなものが
ある。穀類、イモ類ではデンプン、コンニャク;海藻抽
出物では寒天、カラギーナン、ファーセルラン;果実抽
出物ではペクチン;豆類ではグァーガム、タマリンド、
ローカストビーンガム;樹液由来のものではアラビアガ
ム、トラガントガム;微生物由来ではデキストラン、プ
ルラン、カードラン、キサンタンガム;また動物由来で
はゼラチンなどがある。
作り出せるものの、その状態は長続きせず、また凍結に
より極端に劣化して脆くなるため、本発明の目的には適
さない。コンニャクは60℃前後で水酸化カルシウム等の
アルカリを添加しなければゲル化しないし、また胚また
は卵子の生存限界温度を越えているので作用できない。
寒天、ファーセルランおよびカードランは、ゲル化温度
が胚または卵子の生存限界温度に近似していて、取扱に
は熟練を要する上にいづれもゲル強度が低く、操作中に
破損し易いという欠点がある。カラギーナンには、カッ
パー、ラムダーおよびイオターカラギーナンの3種類が
あるが、カッパーカラギーナンとイオターカラギーナン
のゲルは強度が低く実用に耐えないし、またラムダーカ
ラギーナンはゲル化しない。ペクチンは高メトキシルペ
クチンおよび低メトキシペクチンともに、一定量以上の
糖分がなければゲル化しないし、同様にタマリンドもゲ
ル化させるためには単糖類や二糖類を加える必要がある
ので、本発明の目的には適さない。グァーガムとローカ
ストビーンガムは、いづれもpH依存性があるため、ゲル
化させる時には系を酸性領域あるいはアルカリ性領域へ
移行させなければならないため、胚や卵子の生存率が低
下する。アラビアガムとトラガントガムはゲル化能が低
いため、一定の形態を保持できない。デキストランとプ
ルランは、エピクロルヒドリンのような低分子架橋剤を
用いてゲル化することは知られているが、このような刺
激性のある架橋剤を用いるのは適当ではない。キサンタ
ンガムは単独ではゲル化しないが、ローカストビーンガ
ムと併用すれば、弾力性があり保水性の強いゲルを作る
こができるが、このゲルを形成させるためには胚や卵子
の生存限界温度を越える温度である80℃で両方のガム質
水溶液を加熱する必要がある。ゼラチンカプセルは医薬
品の保持体として使用されているが、本発明の用途で使
用した場合、融解の工程でカプセル被膜が水中へ溶け始
め胚もしくは卵子が湯中へ飛び出すことがある。できる
だけ損傷を受けずに胚または卵子を保存しようとする場
合にはゼラチンは適さない。
セルを形成する物質は多く存在するが、胚または卵子の
保護体となり得るものは現時点では、工業的に生産され
ている水溶性高分子物質の中ではアルギン酸アルカリ金
属塩が最適である。
ルカリ金属塩の水溶液で哺乳動物の胚または卵子の周囲
を覆い、この胚または卵子を覆う液をカルシウムイオン
を含む水溶液と接触させてゲル化したものである。包埋
体としてはカプセル状またはマイクロカプセル状のもの
が好ましい。
ル状あるいはマイクロカプセル状にすると、一つのカプ
セルまたはマイクロカプセル中に任意に定めた数の胚ま
たは卵子を挿入して単位として扱えるという利点がある
だけでなく、挿入した胚の透明帯を保護するのに適した
形であり、また切断された透明帯に格納された胚または
卵子を用いるときには、胚または卵子が透明帯の外側に
飛び出さないよう位置を固定するのに適している。
アルカリ金属塩の水溶液で胚または卵子の周囲を覆い、
胚または卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液
と接触させてゲル化し、形成された包埋体をリン酸イオ
ンの少ない洗浄液で洗浄する。
を形成するときは、胚または卵子を覆ったアルギン酸ア
ルカリ金属塩水溶液の液滴をカルシウムイオンを包む水
溶液中に滴下してゲル化させることができる。またシリ
ンダー状の包埋体を形成するときは、胚または卵子を覆
ったアルギン酸アルカリ金属塩水溶液をひも状に押出し
て、カルシウムイオンを含む水溶液中でゲル化させる。
る。第1図は胚または卵子をアルキン酸ゲルのカプセル
またはマイクロカプセル中に包埋する包埋体の製造方法
を示す模式図、第2図は得られた包埋体の断面図であ
る。図において、1は包埋体であって、アルギン酸ゲル
2中に胚または卵子3が包埋されている。胚または卵子
3は細胞質4を囲卵腔5および透明帯6が取囲んだ製造
になっている。7はアルギン酸アルカリ金属塩水溶液、
8はカルシウムイオンを含む水溶液、9は反応容器であ
る。
量%アルギン酸ナトリウム・リンゲル溶液等のアルギン
酸アルカリ金属塩水溶液7中に移し、注射筒に吸引した
後、尖端を落とした20ゲージの注射針10から、液滴11と
して一滴ずつ、100mM塩化カルシウム水溶液等のカルシ
ウムイオンを含む水溶液8の液面約10cmの高さから同水
溶液8中に滴下する。アルギン酸アルカリ金属塩水溶液
7は、カルシウムイオンを含む水溶液8と接触すると、
室温下で瞬時にしてアルギン酸カルシウムから成るアル
ギン酸ゲル2に変化する。アルギン酸ゲル2に包まれた
状態で、胚または卵子3は約30分間カルシウムイオンを
含む水溶液8中に置かれる。
シリンダー中に包埋する包埋体の製造方法を示す模式
図、第5図は得られた包埋体の断面図である。包埋体1
の製造方法は、胚または卵子3を2重量%アルギン酸ナ
トリウム・リンゲル溶液等のアルギン酸アルカリ金属塩
水溶液7中に移した後、先端が胚または卵子3の径の約
2〜3倍の内径を持つパスツールピペット12に上記の溶
液7と共に吸引する。この際、胚または卵子3を連珠状
に吸引する。そのピペット12を、ガラス製ペトリ皿(90
mm×15mm)等の容器9中に入れた濾過滅菌済みの100mM
の塩化カルシウム蒸留水溶液等のカルシウムイオンを含
む水溶液8中に移し、ペトリ皿を緩やかに回転(右手が
ピペットの場合は左回転)させながら、静かに胚または
卵子3を含むアルギン酸アルカリ金属塩水溶液7をピペ
ット12からシンリンダー状に押し出す。アルギン酸アル
カリ金属塩水溶液7は、カルシウムイオンを含む水溶液
8と接触すると、室温下で瞬時にしてアルギン酸ゲル2
に変化する。紐状のアルギン酸ゲル2を胚または卵子3
を中心にして、外科用メス13の刃を用いて実体顕微鏡下
で約1mm長の短冊状に切断して包埋体1を形成する。ア
ルギン酸ゲル2に包まれた状態で、胚または卵子3は約
30分間カルシウムイオンを含む水溶液8中に置かれる。
ンを含む水溶液8から取り出し、洗浄液で洗浄する。
は50mg/以下のものが好適である。カルシウムイオン
も少ないものが好ましく、カルシウムイオン0.8重量%
以下、好ましくは0.4重量%以下のものが好適である。
このような洗浄液としては、リンゲル液、あるいはリン
酸イオンやカルシウムイオンの含量の少ない培養液を用
いることができる。このようなリンゲル液、あるいはリ
ン酸イオンやカルシウムイオンの含量の少ない培養液
で、前記アルギン酸アルカリ金属塩、もしくはアルギン
酸アルカリ金属塩と反応させるためのカルシウムイオン
を含む水溶液を調整することも可能である。
カプセルまたはマイクロカプセルは、PBSなどの培養液
中で処理されることが多かった。リン酸イオンの影響で
ゲルが溶解し始めるのと、表面にリン酸カルシウムの白
い結晶が生じてくるのがほぼ同時に進行するため、カプ
セルまたはマイクロカプセルの強度が低下し、また内部
の観察が難しくなってくる。このように、リン酸イオン
やカルシウムイオンを多量に含むPBSのような種類の培
養液を用いるのは適当ではない。
ングに供され、また凍結により保存される。
セル状あるいはマイクロカプセル状にして哺乳動物の胚
または卵子の包埋体を形成すると、in vitroでのハンド
リングおよび凍結保存において取扱が容易となる他に、
胚または卵子を包埋する場合には透明帯を保護し、また
切断胚を包埋する場合には胚細胞質が直接氷晶で損傷を
受けないよう保護されるために、胚、卵子、切断胚等の
生存率、および移植後の受胎率が大幅に向上する。ま
た、カプセル化またはマイクロカプセル化後にPBSのよ
うなリン酸イオンやカルシウムイオンを多く含む培養液
中で処理する代わりに、これらのイオンを含まないか、
もしくは極小量を含む培養液、例えばリンゲル液あるい
は細胞培養用培地GIT液中で処理することにより、カプ
セルまたはマイクロカプセルの透明度が維持でき、内部
の観察が容易になり、作業性が著しく向上する。
カリ金属塩の特定濃度の溶液を包埋剤として凍結保存用
の包埋体を形成するようにしたので、穏和な条件で包埋
体を形成して、強度、弾性に優れ、かつpH変化や塩類の
影響に対して安定かつ透明な包埋体を形成することがで
き、これにより、胚または卵子をin vitroでのハンドリ
ングや凍結、融解などにおける物理的衝撃等から保護
し、胚または卵子の生存率を向上させることができる。
る包埋体を形成した。試験は表1に示す各アルギン酸ナ
トリウムの2重量%水溶液を調製し、この水溶液を注射
器で吸い上げ、100mMの塩化カルシウム水溶液中へ滴下
して30分間反応させ、直径1.0〜1.5mmのカプセルを形成
させた。このカプセル30個を40重量%グリセリン液3ml
を入れた共栓付き試験管中に移し、液体窒素中に正確に
3分間浸漬した後、37℃の恒温水槽中へ入れて融解し、
破損した数と外観の変化を観察した。
カプセルの耐凍試験の結果を示す。
た場合とPBSを使用した場合との比較を行った。すなわ
ち、2gのアルギン酸ナトリウム(M/G比1.2)をリンゲル
液またはPBS中に入れて、十分に融解後注射器を用いて1
00mM塩化カルシウム水溶液中に滴下し、30分間反応させ
てカプセルを形成させた。このカプセルをリンゲル液あ
るいはPBSを入れたガラス製ペトリ皿に入れ、実体顕微
鏡で観察した。結果を表2に示す。
造した。
ン 150−M、紀文フードケミファ(株)製、商標)を含
む100mlのリンゲル液を、121℃、20分間の条件でオート
クレーブ滅菌を行い、供試アルギン酸ナトリウム溶液と
した。家兎桑実胚をこのアルギン酸ナトリウム・リンゲ
ル溶液中に移した後、先端が胚の径の約2〜3倍の内径
を持つパスツールピペットのこの溶液と共に吸引した。
この際、胚を連珠状に吸引した。そのピペットを、ガラ
ス製ペトリ皿(90×15mm)中に入れた濾過滅菌済みの10
0mMの塩化カルシウム蒸留水溶液中に移し、ペトリ皿を
緩やかに回転(右手がピペットの場合は左回転)させな
がら、第3図に示すように静かに胚を含むアルギン酸ナ
トリウム溶液をピペットから押し出した。そして第4図
に示すように、紐状のアルギン酸ゲルを胚を中心にし
て、外科用メスの刃を用いて実体顕微鏡下で約1mm長の
短冊状に切断した。アルギン酸ゲルに包まれた状態で、
胚は約30分間塩化カルシウム水溶液中に浸漬した。
保存試験 前述した方法によりアルギン酸ゲル中に包埋した家兎桑
実胚を、塩化カルシウム水溶液中から取り出し、細胞培
養用培地GIT液(和光純薬(株)製、商標)で洗浄し、
凍結媒液(11%ジメチルスルホオキサイド−GIT溶液)
との平衡を開始するまで同液中に保存した。室温下で30
分間、アルギン酸ゲル中に包埋した家兎桑実胚を凍結媒
液と平衡している間に、凍結容器である0.25ml容量のプ
ラスチックストローにゲル包埋された胚を吸引した。冷
却には、大阪酸素工業(株)製のプログラムフリーザー
を用いて、室温から−30℃まで分速1℃で冷却した後、
液体窒素中へ急冷した。途中−7℃で試料温度を10分間
保持したが、外部からの強制的な氷晶形成誘起処置(植
氷)は行わなかった。その代わりに、特開昭61−255655
号および特願昭62−265125号に示されているようにアル
ギン酸ゲル中に固定化したヨウ化銀を凍結媒液中に胚と
共に浸漬することによって、氷晶形成誘起を自動的に行
った。融解に際し、液体窒素中に保存されているストロ
ーを37℃の温水中に浸漬し、氷晶が完全に消失するのを
待って素早く室温中に戻した。融解後、胚を含むゲルを
ストローから回収し、GIT液中に直接移して数回洗浄
し、耐凍剤(ジメチルスルホオキサイド)を胚から除去
した。その後、胚細胞質の正常性および透明帯とムチン
層の破損程度を観察し、ガラス製ペトリ皿に入れて27ゲ
ージの滅菌注射針で周囲のゲルを除去した。ゲルを外し
た胚は、偽妊娠家兎への移植試験と培養試験に供され
た。移植には、細胞質、透明帯およびムチン層の全てが
正常な胚だけを供した。借り腹として胚を移植される家
兎には移植前60時間にhCG(ヒト胎盤性ゴナドトロピ
ン、三共臓器(株)製)50IUを耳静脈内に注射して偽妊
娠を誘起した。全身麻酔下で側復部を切開して卵巣と卵
管を体外に出し、移植胚を極小量のGITと共に卵管采を
経由して卵管に移植した。移植後14日目に下腹部を正中
線切開して着床数および生存胎児数を数えた。その後閉
腹して正常子の娩出を観察した。体外培養は、流動パラ
フィンオイル下のGIT液中で、37℃、5容量%CO2、95容
量%空気の気相下で実施した。
凍結、融解、移植あるいは培養を行った胚を対照とし
た。
質だけはなく透明帯およびムチン層に破損が認められな
い胚の割合が、アルギン酸ゲルに包埋した試験区におい
て包埋無処理の試験区よりも高い割合を示した(P<0.
025)。家兎胚が子宮に着床するためには透明帯の必須
であり、また破損していないムチン層を有することも受
胎率を向上させるために必要であるとされているので、
この結果は凍結、融解後の家兎胚の移植利用率が改善さ
れたことを意味する(P<0.005)。
のような影響があるかを確認するため、アルギン酸ゲル
で包埋し凍結、融解した胚を偽妊娠家兎の卵管へ移植し
た場合の生存性とその体外培養系での生存性を調べた。
その結果アルギン酸ゲルで胚埋したかった胚のそれぞれ
の生存性と有意差は認められず、アルギン酸ゲルへの包
埋処理が胚発育に対して悪影響を有していないことが確
認された。
受胎性に及ぼす影響を表4に示すが、アルギン酸ゲルに
家兎胚を包埋することによって融解後に移植可能胚を高
率に確保することが可能となるので(P<0.025)、凍
結に供した胚に対する受胎する胚の割合は向上する。
ン酸ゲルに包埋された胚または切断胚の生存率、凍結、
融解後の生存率および作業性は従来の方法に比べ著しく
向上していることがわかる。
第2図および第5図は製造された包埋体の断面図であ
る。 各図中、同一符号は同一または相当部分を示し、1は包
埋体、2はアルギン酸ゲル、3は胚または卵子、7はア
ルギン酸アルカリ金属塩水溶液、8はカルシウムイオン
を含む水溶液である。
Claims (3)
- 【請求項1】アルギン酸アルカリ金属塩の0.5〜5重量
%水溶液で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この
胚または卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液
と接触させてゲル化し、胚または卵子の凍結保存用の包
埋体を形成するための包埋剤であって、アルギン酸部分
のD−マンヌロン酸(M)とL−グルロン酸(G)との
成分比率(M/G比)が0.3〜1.8であるアルギン酸アルカ
リ金属塩を含有することを特徴とする哺乳動物の胚また
は卵子の包埋剤。 - 【請求項2】アルギン酸アルカリ金属塩の0.5〜5重量
%水溶液で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この
胚または卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液
と接触させてゲル化した胚または卵子の凍結保存用の包
埋体であって、前記アルギン酸アルカリ金属塩はアルギ
ン酸部分のD−マンヌロン酸(M)とL−グルロン酸
(G)との成分比率(M/G比)が0.3〜1.8であることを
特徴とする哺乳動物の胚または卵子の包埋体。 - 【請求項3】アルギン酸部分のD−マンヌロン酸(M)
とL−グルロン酸(G)との成分比率(M/G比)が0.3〜
1.8であるアルギン酸アルカリ金属塩の0.5〜5重量%水
溶液で哺乳動物の胚または卵子の周囲を覆い、この胚ま
たは卵子を覆う液をカルシウムイオンを含む水溶液と接
触させてゲル化し、形成された胚または卵子の凍結保存
用の包埋体をリン酸イオンの少ない洗浄液で洗浄するこ
とを特徴とする哺乳動物の胚または卵子の包埋体の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63296596A JPH0729881B2 (ja) | 1988-11-24 | 1988-11-24 | 哺乳動物の胚または卵子の包埋剤、包埋体およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63296596A JPH0729881B2 (ja) | 1988-11-24 | 1988-11-24 | 哺乳動物の胚または卵子の包埋剤、包埋体およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH02142701A JPH02142701A (ja) | 1990-05-31 |
JPH0729881B2 true JPH0729881B2 (ja) | 1995-04-05 |
Family
ID=17835596
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP63296596A Expired - Lifetime JPH0729881B2 (ja) | 1988-11-24 | 1988-11-24 | 哺乳動物の胚または卵子の包埋剤、包埋体およびその製造方法 |
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1988
- 1988-11-24 JP JP63296596A patent/JPH0729881B2/ja not_active Expired - Lifetime
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BiologyofReproduction,19thAnnualMeetingofSocietyofBiologyofReproduction,July14−17(1986) |
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