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JPH07150363A - AlN基板用無電解Ni系メッキ液 - Google Patents

AlN基板用無電解Ni系メッキ液

Info

Publication number
JPH07150363A
JPH07150363A JP5298590A JP29859093A JPH07150363A JP H07150363 A JPH07150363 A JP H07150363A JP 5298590 A JP5298590 A JP 5298590A JP 29859093 A JP29859093 A JP 29859093A JP H07150363 A JPH07150363 A JP H07150363A
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JP
Japan
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plating solution
plating
aln substrate
electroless
solution
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Application number
JP5298590A
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English (en)
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JP2993336B2 (ja
Inventor
Yasuyuki Morita
康之 森田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP5298590A priority Critical patent/JP2993336B2/ja
Publication of JPH07150363A publication Critical patent/JPH07150363A/ja
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Publication of JP2993336B2 publication Critical patent/JP2993336B2/ja
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Niイオン源として(含結晶水)硫酸ニッケ
ル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)酢酸ニ
ッケル、錯化剤として(含結晶水)エチレンジアミン、
第2錯化剤として乳酸、及び還元剤として(含結晶水)
次亜りん酸ナトリウムを含んでいるAlN基板用無電解
Ni系メッキ液。 【効果】 低温で、AlN基板11を溶解腐食させるこ
となく、AlN基板11上に形成された配線のみに選択
的に、配線との密着性や被膜自身の硬度等の特性に優れ
たリン含有Niメッキ被膜10を迅速に形成することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はAlN基板用無電解Ni
系メッキ液に関し、より詳細には、例えばICパッケー
ジ等の製造工程でAlN基板にNiメッキ処理を施す際
等に有用なAlN基板用無電解Ni系メッキ液に関す
る。
【0002】
【従来の技術】外部から電流を流して、溶液中の金属イ
オンを陰極上に還元、析出させる電気メッキに対し、外
部電流を使わずに溶液中の金属イオンを被メッキ体表面
に還元析出させる方法を、一般に化学メッキと呼んでい
る。この化学メッキは、さらにイオン置換に基づく浸漬
メッキと化学還元剤を用いる無電解メッキとに大別され
る。
【0003】前記浸漬メッキは、例えばNi等の金属を
金のような貴金属のイオンを含有する溶液中に浸漬し、
いわゆる置換反応によってNi上に金を析出させる方法
であり、一旦Ni表面が金で覆われるとメッキの成長も
止まるため、厚メッキが難しいという問題点がある。
【0004】一方前記無電解メッキは、溶液中に析出さ
せる金属の塩、その金属と錯体を形成させるための錯化
剤、金属錯体を還元して金属単体を還元析出させるため
の還元剤、溶液中のpHの変動を抑制するためのpH緩
衝剤、pHの値を一定値にするためのpH調整剤、及び
溶液を安定化させるための安定化剤等を混合した溶液中
に被メッキ体を浸漬し、前記被メッキ体表面に金属を還
元析出させる方法である。
【0005】この方法の問題点としては、電流の代わ
りに還元剤で金属を還元析出させるので、電解メッキに
比べるとコストが高くなること、メッキ速度を速めよ
うとするとメッキ浴中に粉末状態で金属が析出してしま
う虞れがあるためメッキ速度を余り速くすることができ
ないこと等が挙げられる。
【0006】しかし一方、電源や電極等が不要で、メ
ッキ液中に被メッキ体を浸漬するだけで、密着力、均質
性等に優れた均一厚さの被膜が得られること、メッキ
膜の厚さやその物性等を、メッキ液組成等のメッキ処理
条件を変化させることにより制御し易く、要求特性に合
致する被膜の形成が可能であること、いかなる形状の
ものにも、付き回りよくメッキすることが可能であるこ
と、プラスチック、ガラス、セラミックス等のような
非導電性物質にも直接メッキすることが可能であるこ
と、等の優れた特徴を有するため広く工業的に利用され
ている。
【0007】被メッキ体に前記した無電解メッキ処理を
施した場合に、溶液中でどのような反応が進行し、メッ
キ被膜が形成されるかについて、完全にその機構が解明
されているわけではない。
【0008】しかし、例えば還元剤として次亜りん酸塩
を用い、セラミックス基板等に無電解Niメッキ処理を
施した場合には、溶液中で下記の化1式〜化3式に示す
化学反応が進行するといわれている。
【0009】
【化1】 Ni2++H2 PO2 -+H2 O → Ni+H2 PO3 -+2H
【0010】
【化2】H PO2 -+H2 O → H2 PO3 -+H2
【0011】
【化3】H2 PO2 -+H → P+H2 O+OH- 上記化1式に示したように、次亜りん酸イオン中のリン
の酸化が進行して、Niが還元され、被メッキ体表面に
析出する。このとき、化2式の反応も同時に進行し、水
が還元されて水素が発生する。化1式に示したNiの還
元析出については、実際には水素も関与しており、上記
化2式の反応で一旦還元された水素原子がNiイオンに
電子を受け渡すことによりNiが還元されるといわれて
いる。さらに、次亜りん酸については不均化反応が進行
し、化2式に示したように一部のリンが酸化されると同
時に、化3式に示したように他の一部のリンは還元され
てリンが析出する。すなわち、化2式の反応で一旦還元
された水素原子は、次亜りん酸イオン中のリンに対して
も電子を放出し、これにより次亜りん酸イオン中のリン
も還元される。このため、析出被膜は通常Niとリンと
の合金となる。このNi合金は、Ni単独の被膜と比較
すると、被膜の硬度、基板との密着性等により優れると
いう効果をもたらす。
【0012】無電解Niメッキでは、上述したような反
応によりメッキ被膜の析出反応が進行すると考えられる
が、この析出反応により優れた耐摩耗性や耐熱性を有す
る被膜が形成されるため、工業的に利用されると同時に
古くから研究されてきており、その反応機構も次第に明
らかになりつつある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】このように無電解メッ
キは広く利用されているにもかかわらず、この無電解N
iメッキ処理を施す対象となる被メッキ体は限られてい
た。すなわち、用いられる被メッキ体は、Al23
やCu板、Au板のように比較的酸や塩基に対して安定
であり、また高温溶液中に長時間浸漬させた場合でも基
板の腐食が起こりにくいものが殆どである。従って従来
においては、上記した被メッキ体を対象として90〜1
00℃程度の高温域でメッキ処理を施すことが可能であ
った。
【0014】なお最近では、プリント配線板等のメッキ
にも用いられるようになってきており、この場合には被
膜を形成する温度は低温であることが望ましいため、3
0〜60℃程度の低温でメッキ処理を施すことができる
低温用のNi系メッキ液も開発されてきている。しか
し、これらNi系メッキ液も比較的耐食性を有する被メ
ッキ体を対象としており、AlN基板のように化学的に
不安定な基板を対象としていない。従来から使用されて
いる高温域でメッキ処理を行うNi系メッキ液の組成を
表1に、また低温域でメッキ処理を行うNi系メッキ液
の組成を下記の表2に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】CuやWペーストを用いて同時焼成するこ
とにより形成された配線、又はスパッタ法等の方法を用
いて形成された配線を表面に有するAlN基板の配線等
に無電解メッキ処理を施そうとする場合、表1及び表2
に示したような従来から用いられているNi系メッキ液
のどれを用いた場合でも、金属配線部分以外の場所にメ
ッキ被膜が形成されるブリード現象が発生したり、Al
N基板自体が溶解したり、又は溶液の自己分解反応が発
生した。
【0018】このようにAlN基板表面の金属配線のみ
にメッキ処理が施されるような条件を見つけることは難
しく、特に着色剤等としてAlN基板中にW等の金属が
含有されている場合には、前記金属が露出している部分
にメッキ被膜が形成され、この部分を起点にしてメッキ
被膜が広がって行くため、前記ブリード現象を防止する
ことが難しかった。AlN基板中に存在するW等の着色
剤は、通常AlN基板中を紫外線等が透過してSi基板
等が劣化するのを防止するために、添加されているもの
である。
【0019】Ni系メッキ液によるAlN基板の溶解に
ついては、AlN自体が酸又はアルカリに対して安定で
はなく、酸性又はアルカリ性の溶液中では下記の化4式
〜化5式に示したような分解反応が進行するため、Al
N基板が腐食されることになる。Alは両性であるので
酸性においても、アルカリ性においてもイオンとして溶
液中に溶解する。
【0020】
【化4】AlN+3H+ → Al3++NH3
【0021】
【化5】 AlN+OH- +H2 O → AlO2 -+NH3 pHが中性に近づくとプロトンや水酸基の濃度が低下す
るため、反応は進行しにくいが、わずかにはAlN中に
焼結助剤として添加されたCaOの溶解が認められ、A
lNを含む粒界に存在する物質が溶解するものと考えら
れる。このような反応によりAlイオンが溶液中に存在
するようになると、下記の化6式〜化7式に示した反応
が進行するようになる。
【0022】
【化6】 3Ni(en)2 2+ +2Al3+ → 2Al(en)3 3+ +3Ni2+
【0023】
【化7】 2Ni(en)3 2+ +2Al3+ → 2Al(en)3 3+ +2Ni2+ すなわり、Ni錯イオンの配位子であるエチレンジアミ
ン(en)はAlイオンの方に配位し易いため、溶液中
にAlN基板より溶解したAlイオンが存在するように
なると、配位子のエチレンジアミンはNiイオンを離れ
てAlイオンの方に配位するようになり、配位子が剥ぎ
取られたNiイオンは不安定となって溶液中で自己分解
反応が進行し、粉末状のNiや箔片状のNiが溶液中に
還元析出するようになる。このため、析出した粉末が基
板上に付着したり、溶液中のNi濃度が変化して被膜形
成のための条件が変化することになる。
【0024】上記のような理由から、従来から用いられ
ているNi系メッキ液を用いてAlN基板上に形成され
た配線に無電解メッキ法によりメッキを施そうとした場
合、上記した種々の不都合が生じ、安定してAlN基板
上の配線にメッキ処理を施すのは非常に難しいという課
題があった。
【0025】本発明はこのような課題に鑑みなされたも
のであり、AlN基板を腐食することなく、無電解メッ
キ法によりAlN基板に形成された配線のみに、膜密着
性や硬度等の特性に優れたメッキ被膜を選択的、かつ迅
速に形成することができるAlN基板用無電解Ni系メ
ッキ液を提供することを目的としている。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係るAlN基板用無電解Ni系メッキ液は、
Niイオン源として(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結
晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)酢酸ニッケル、錯
化剤として(含結晶水)エチレンジアミン、第2錯化剤
として乳酸、及び還元剤として(含結晶水)次亜りん酸
ナトリウムを含んでいることを特徴としている。
【0027】本発明でNiイオン源として使用される
(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニッケル
又は(含結晶水)酢酸ニッケルの前記Ni系メッキ液中
の濃度は、0.01〜0.10モル/リットル程度が好
ましい。ここで、例えば硫酸ニッケルが(含結晶水)硫
酸ニッケルと記載されているのは、硫酸ニッケルが結晶
水を含むものであっても、無水物であってもよいことを
意味している。このことはその他の化合物においても同
様である。以下、(含結晶水)が付加されている化合物
については、(含結晶水)を省略して表示することにす
るが、実際には結晶水を含む化合物も含まれる。
【0028】前記硫酸ニッケル、塩化ニッケル又は酢酸
ニッケルの前記Ni系メッキ液中の濃度が0.01モル
/リットル未満であると、該Ni系メッキ液中のNiイ
オン濃度が低下するためにNi被膜の形成が難しくな
り、メッキ被膜の形成速度が低下し、他方前記硫酸ニッ
ケル又は塩化ニッケルの前記Ni系メッキ液中の濃度が
0.10モル/リットルを超えると、溶液中で粉末状又
は箔片状のNiが析出し易くなり、却って析出速度が低
下する。
【0029】錯化剤として使用されるエチレンジアミン
の前記Ni系メッキ液中の濃度は、0.05〜0.20
モル/リットル程度が好ましい。エチレンジアミンのN
i系メッキ液中の濃度が0.05モル/リットル未満で
あると、Ni2+と完全に錯体を形成することができず、
Niイオンの自己分解が発生し易くなり、他方エチレン
ジアミンのNi系メッキ液中の濃度が0.20モル/リ
ットルを超えると錯化剤の量が多くなり過ぎるため、N
iの安定な錯体が形成されて、Niが析出しにくくな
る。
【0030】錯化剤としてエチレンジアミンと共に使用
される第2錯化剤である乳酸の前記Ni系メッキ液中の
濃度は、0.15〜0.30モル/リットル程度が好ま
しい。乳酸の前記Ni系メッキ液中の濃度が0.15モ
ル/リットル未満であると、Niの析出速度は高いが前
記Ni系メッキ液のpHが不安定になり安定な速度でメ
ッキ被膜が形成されなくなり、またブリード現象も発生
し易く、他方乳酸の前記Ni系メッキ液中の濃度が0.
30モル/リットルを超えると、全体として錯化剤の量
が多くなりすぎるためNiの析出量が抑制される。ここ
で、乳酸は、エチレンジアミンと共に錯化剤として作用
するが、エチレンジアミンが主なる錯化剤であるため、
第2錯化剤と称することが通例である。さらにこの乳酸
は、pH調整剤としての役目も果たす。前記乳酸はキラ
ル中心を有するので、2種の光学異性体が存在するが、
本発明ではいずれのものを使用しても良く、また通常使
用されているラセミ体を使用しても良い。
【0031】還元剤として使用される次亜りん酸ナトリ
ウムの前記Ni系メッキ液中の濃度は、0.05〜0.
30モル/リットルが好ましい。次亜りん酸ナトリウム
の前記Ni系メッキ液中の濃度が0.05モル/リット
ル未満であると、還元力が弱く、Niの析出が起こら
ず、他方次亜りん酸ナトリウムの前記Ni系メッキ液中
の濃度が0.30モル/リットルを超えると、化1式に
示した次亜リン酸イオンの酸化反応が進行し、また遊離
Niイオンの量も増加するため、同様にNiの析出量が
減少する。
【0032】本発明に係るAlN基板用無電解Ni系メ
ッキ液では、通常前記Niイオン源、前記錯化剤、前記
第2錯化剤、前記還元剤を用いて適当な組み合わせで混
合し、酸を添加してpHを調整することによりメッキ液
として使用することができるが、下地の金属の種類やメ
ッキ層の厚さ等の条件によっては、他の添加剤を添加し
たメッキ液を用いてもよい。ここで、前記したpHの調
整に用いる酸は塩酸が好ましい。硫酸や硝酸を用いた場
合には、硫酸中のSO4 2- イオンや硝酸中のNO3 -イオ
ンが、形成されているNi錯体の安定性に悪影響を与え
るため、好ましくない。特に、NO3 -イオンの場合は、
Ni(NO32 が安定な塩を形成するので好ましくな
い。また前記添加剤としては、pH緩衝剤の役目を果た
す有機酸塩やpH調整剤の役目を果たす有機酸等が挙げ
られる。また具体的には、前記有機酸塩として、例えば
コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリ
ウム等が挙げられ、前記有機酸として、例えばリンゴ
酸、マロン酸等が挙げられる。
【0033】次に、このAlN基板用無電解Ni系メッ
キ液を用いてAlN基板にメッキ処理を施す方法につい
て説明する。
【0034】通常、メッキ処理を施す際の液温は60〜
80℃の範囲が好ましい。優れた特性を有する均質な被
膜を形成するためには、メッキ処理を施す間中、前記N
i系メッキ液の温度を±1℃以内、pHを±0.05以
内に保つのが好ましく、またNi系メッキ液の撹拌やA
lN基板の回転を十分に行って、常にAlN基板に新鮮
な溶液が供給されるようする必要がある。また、窒素又
はアルゴンガスを前記Ni系メッキ液に吹き込むことに
より溶存酸素を除去する必要もある。
【0035】
【作用】本発明に係るAlN基板用無電解Ni系メッキ
液によれば、Niイオン源として(含結晶水)硫酸ニッ
ケル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)酢酸
ニッケル、錯化剤として(含結晶水)エチレンジアミ
ン、第2錯化剤として乳酸、及び還元剤として(含結晶
水)次亜りん酸ナトリウムを含んでおり、低温で、Al
N基板が溶解腐食されることなく、AlN基板上に形成
された配線のみに選択的に、配線との密着性や被膜自身
の硬度等の特性に優れたリン含有Niメッキ被膜が迅速
に形成される。
【0036】図7は有機酸の緩衝容量とNiの析出量と
の関係を示したグラフであるが、図7に示すように、N
iの析出量と有機酸の緩衝容量とは大きな相関関係があ
り、緩衝容量が大きくなるほど、Niの析出量が大きく
なる傾向にある。従って、緩衝容量の大きい乳酸を使用
した本発明に係るAlN基板用無電解Niメッキ液はメ
ッキ被膜が迅速に形成される。ただし、この緩衝容量と
Niの析出量とが完全に対応していないのは、その他に
もNiの析出量に関係する因子があるからであると考え
られる。
【0037】
【実施例及び比較例】以下、本発明の実施例に係るAl
N基板用無電解Ni系メッキ液を用い、AlN基板にメ
ッキ処理を施した場合について説明する。なお比較例と
して、本発明に係る無電解Ni系メッキ液の組成と異な
る組成の無電解Ni系メッキ液を用いてメッキ被膜を形
成した場合についても説明する。
【0038】AlN基板としては、粒界にカルシウムア
ルミニウム酸化物やカルシウムイットリウムアルミニウ
ム酸化物等を有する(株)住友金属セラミックス製のA
lN基板を用いた。そして、このAlN基板に、所定の
配線パターンになるように、スパッタ法により順次T
i、Mo、Cuの被膜をそれぞれ0.05μm、0.5
μm、0.5μmの厚さで形成し、メッキ被膜形成のた
めの下地金属層とした。この配線の最小線幅は50μm
程度である。
【0039】この下地金属層の上に表1に示した組成の
無電解Ni系メッキ液を用いてメッキ被膜を形成するわ
けであるが、まず基本的成分(Niイオン源、錯化剤、
還元剤)として、それぞれ塩化ニッケル6水塩(NiC
2 ・6H2 O)、次亜リン酸ナトリウム1水塩(Na
2 PO2 ・H2 O)、エチレンジアミン(en)を用
い、表3に示した濃度に調整した。この濃度は、Ni−
ロッシェル塩錯体からNiを化学的に還元させる時に、
皮膜析出量が最大となる値を選択している。
【0040】また有機酸と有機酸塩についても表3に示
すものを用い、濃度はEDTA・2Naのみ0.01モ
ル/リットルで、他の有機酸、有機酸塩はすべて0.0
8モル/リットルとした。この濃度に設定した理由は、
同じくNi−ロッシェル塩錯体溶液中のpH緩衝剤、第
2錯化剤の適性濃度がそれぞれ0.075モル/リット
ルであったため、ほぼ同一濃度に調整してその効果の比
較検討するためである。実施例に係るNi系メッキ液調
製の方法としては、500mlビーカーに基本的成分を
それぞれ添加した。添加量は全体で1リットルにした場
合に表1に示した濃度になるような量である。これらの
成分をよく撹拌して混合し、pHが6.4〜6.6の範
囲になるように希塩酸を用いて調整した。その後、表3
に示した有機酸及び有機酸塩を添加し、1リットルのメ
スフラスコにメスアップした後に、後述する所定のpH
に調整した。これは、一度にすべての試薬を調合した後
にメスアップし、pH調整を行うと、溶液に強い緩衝作
用が働き、pH調製が困難になり、これによってメッキ
液の液性が変化するおそれがあるからである。
【0041】このNi系メッキ液に上記方法により得ら
れた金属薄膜を有するAlN基板を浸漬してメッキ処理
を施した。このとき、前記Ni系メッキ液の温度を60
±1℃以内、pHを6.00±0.01以内に保ち、該
Ni系メッキ液の撹拌や前記AlN基板の回転を十分に
行い、常にAlN基板に新鮮な溶液が供給されるように
した。また、メッキ処理を施している間は、窒素を前記
Ni系メッキ液に吹き込み、溶存酸素を除去した。メッ
キ処理時間は15分である。
【0042】次に、前記メッキ処理によりメッキ被膜が
形成された前記AlN基板を、混酸溶液で濃硝酸(キシ
ダ化学(株)製の特級試薬)25mlと濃硫酸(キシダ
化学(株)製の特級試薬)25mlとを混合した後に純
水で希釈して100mlとした溶液に浸漬し、メッキ被
膜を溶解させた。そして、このメッキ被膜が溶解した溶
液中の金属イオン濃度をICP(Inductively Coupled
Plasma) 発光分光分析により測定して、溶解したNiイ
オンとPイオンの濃度を求め、Pイオンの含有量を求め
た。
【0043】このAlN基板の混酸溶液中への浸漬によ
り、下地金属層のMo、Cu等やAlN基板自体も腐食
溶解したが、NiイオンとPイオンの定量分析には、特
に影響を及ぼさなかった。結果を下記の表3及び表4に
示す。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】上記表3及び表4において、メッキ被膜を
溶解させた溶液中にPイオンが検出されているのは、次
亜リン酸ナトリウムがNiメッキ被膜が形成される際に
同時に析出し、Niとの合金を形成しているためであ
る。
【0047】表3よりわかる通り、乳酸を第2錯化剤と
して使用した場合にNiの析出量が多くなっており、特
に基本的成分に乳酸を単独で加えた場合が最も析出量が
多くなっている。この結果より、実施例に係る3種類の
基本成分に第2錯化剤として乳酸を加えた組成を、基本
的な組成とする無電解Ni系メッキ液が析出量が多くN
i系メッキ液として優れた特性を有することがわかる。
また、この実施例に係るNi系メッキ液を使用した場合
は、ブリードも発生しなかった。
【0048】このように上記メッキ液がNi系メッキ液
として良好な特性を有するのは、メッキ液の緩衝容量等
が起因しているものと思われる。
【0049】一方、基本成分のみを使用した比較例32
に係るNi系メッキ液の場合には、メッキ被膜の析出量
は最も多かったが、有機酸、有機塩塩等のpH緩衝剤や
pH調製剤を用いていないので、メッキ処理中に45分
程度の長時間のメッキ処理を行うと、pHの変動が激し
く、また前記Ni系メッキ液の自己分解反応のためにブ
リードが発生した。
【0050】これにより、基本成分に乳酸を添加した系
がメッキ被膜の形成に優れた効果を有することが分かっ
たので、さらに別の実施例としてこれらの成分の好まし
い範囲について検討を行った。図1〜4は、Niイオン
源として塩化ニッケル6水塩、錯化剤としてエチレンジ
アミン、第2錯化剤として乳酸、還元剤として次亜リン
酸ナトリウムの4つの成分を使用し、3成分の濃度を一
定にして、残りの1成分の濃度を変化させた際に析出す
るNiの重量を示したグラフである。変化させた成分
は、図1では塩化ニッケル6水塩(実施例9〜15)、
図2ではエチレンジアミン(実施例16〜25)、図3
では次亜リン酸ナトリウム1水塩(実施例26〜3
4)、図4ではDL−乳酸(実施例35〜40、比較例
32)である。
【0051】図1〜4から、実施例に係るNi系メッキ
液中の塩化ニッケル6水塩の濃度については0.01〜
0.10モル/リットル、エチレンジアミンの濃度につ
いては0.05〜0.20モル/リットル、次亜リン酸
ナトリウムの濃度については0.05〜0.30モル/
リットルの範囲でともにNiの析出量が多くなってお
り、各成分の濃度の好ましい範囲であることがわかる。
なお、乳酸の濃度については0.30モル/リットルを
超えるとNiの析出量が増大しているが、それより濃度
が低い範囲ではNiイオンの析出量はほとんど変化して
いない。しかし、0.15モル/リットルより低濃度で
は、析出時にpHの変動が生じ易くなった。
【0052】さらに比較例33として、市販のNi系メ
ッキ液(ワールドメタル(株)製リンデンSA pH
6.8〜7.2)を用い、該Ni系メッキ液の温度を9
0℃、pHを7.0とした他は実施例と同様の条件でメ
ッキ被膜を形成した。
【0053】図5は、実施例1に係るAlN基板用無電
解Ni系メッキ液を用いて上記メッキ処理を施したAl
N基板の一部につき、そのメッキ状態を示した拡大平面
図であり、一方図6は比較例33に係るNi系メッキ液
を用いて上記メッキ処理を施したAlN基板の一部につ
き、そのメッキ状態を示した拡大平面図である。
【0054】図5及び図6より明らかなように実施例1
に係るAlN基板用無電解Ni系メッキ液を用いてメッ
キ処理を施したものは、AlN基板11に形成された配
線にのみ選択的にNiメッキ被膜10が形成されている
のに対し、比較例33に係るNi系メッキ液を用いてメ
ッキ処理を施したものでは、AlN基板11に形成され
た配線以外の部分にもNiメッキ被膜10が形成されて
おり、前記したブリード現象がはっきりと認められる。
【0055】次に、実施例1に係るAlN基板用無電解
Ni系メッキ液を用いることにより、形成されたメッキ
被膜の密着強度を調べた。膜密着強度の測定は、メッキ
被膜に直径1mmのNiリード線をハンダ付けし、毎分
10mmの速度で垂直方向に引っ張ることにより行い、
メッキ被膜が破断した時の強度を膜密着強度とした。そ
の結果、2.48kg/mm2 以上の値が得られ、十分
な膜密着強度を有することが確認された。
【0056】次に、実施例1の場合と同様の組成のNi
系メッキ液を用い、縦横が50mmの下地金属層を有す
るAlN基板にメッキ処理を行った際に、AlN基板が
溶解しているか否かを調べた。このAlN基板の溶解性
の調査は、AlN基板の主成分であるAl3+イオン及び
前記AlN基板の焼成の際に助剤として添加されている
Ca2+、Y3+が、メッキ処理を終えた液中に存在するか
否かをICP発光分光分析で調べることにより行った。
また被膜形成成分であるNi及びPについても同時にそ
の濃度を測定した。メッキ処理は同じNi系メッキ液を
使用して5回連続して行い、各メッキ処理の後にNi系
メッキ液をサンプリングし、前記した各金属の濃度を測
定した。結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】表5より明らかなように、Al3+、C
2+、Y3+の各イオンはいずれも0.1ppm以下であ
り、AlN基板からの溶解は認められなかった。一方、
Ni2+イオン及びPは、各測定毎にほぼ一定量づつ低下
しており、再現性よく、一定量のメッキ被膜がAlN基
板の配線上に形成されていることがわかる。
【0059】以上説明してきたように、実施例に係るA
lN基板用無電解Ni系メッキ液を用いてAlN基板に
メッキ処理を施したところ、AlN基板を溶解すること
なく、AlN基板上の配線にのみ選択的に、膜密着強度
等の特性に優れたメッキ被膜を迅速に形成することがで
きた。
【0060】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係るAlN
基板用無電解Ni系メッキ液にあっては、Niイオン源
として(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニ
ッケル又は(含結晶水)酢酸ニッケル、錯化剤として
(含結晶水)エチレンジアミン、第2錯化剤として乳
酸、及び還元剤として(含結晶水)次亜りん酸ナトリウ
ムを含んでいるので、低温で、AlN基板を溶解腐食さ
せることなく、AlN基板上に形成された配線のみに選
択的に、配線との密着性や被膜自身の硬度等の特性に優
れたリン含有Niメッキ被膜を迅速に形成することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るAlN基板用無電解Ni
系メッキ液において、塩化ニッケル6水塩の濃度を変化
させ、他の3成分を一定の濃度に保った際のNi析出量
と塩化ニッケル6水塩の濃度との関係を示したグラフで
ある。
【図2】本発明の実施例に係るAlN基板用無電解Ni
系メッキ液において、エチレンジアミンの濃度を変化さ
せ、他の3成分を一定の濃度に保った際のNi析出量と
エチレンジアミンの濃度との関係を示したグラフであ
る。
【図3】本発明の実施例に係るAlN基板用無電解Ni
系メッキ液において、次亜リン酸ナトリウム1水塩の濃
度を変化させ、他の3成分を一定の濃度に保った際のN
i析出量と次亜リン酸ナトリウムの濃度との関係を示し
たグラフである。
【図4】本発明の実施例に係るAlN基板用無電解Ni
系メッキ液において、DL−乳酸の濃度を変化させ、他
の3成分を一定の濃度に保った際のNi析出量とDL−
乳酸の濃度との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1に係るAlN基板用無電解N
i系メッキ液を用いてメッキ処理を施したAlN基板の
一部について、そのメッキ状態を示した拡大平面図であ
る。
【図6】比較例33に係るAlN基板用無電解Ni系メ
ッキ液を用いてメッキ処理を施したAlN基板の一部に
ついて、そのメッキ状態を示した拡大平面図である。
【図7】Ni系メッキ液に添加する有機酸の緩衝容量と
Ni析出量との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
11 AlN基板 10 Niメッキ被膜

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Niイオン源として(含結晶水)硫酸ニ
    ッケル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)酢
    酸ニッケル、錯化剤として(含結晶水)エチレンジアミ
    ン、第2錯化剤として乳酸、及び還元剤として(含結晶
    水)次亜りん酸ナトリウムを含んでいることを特徴とす
    るAlN基板用無電解Ni系メッキ液。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1079577A (ja) * 1996-09-03 1998-03-24 Ngk Spark Plug Co Ltd 配線基板の製造方法及び配線基板
JP2007270344A (ja) * 2006-03-09 2007-10-18 Okuno Chem Ind Co Ltd 無電解ニッケルめっき液
JP2013028866A (ja) * 2006-03-09 2013-02-07 Okuno Chemical Industries Co Ltd 無電解ニッケルめっき液
CN116160002A (zh) * 2023-02-16 2023-05-26 昆明理工大学 一种陶瓷粉末的镍包覆方法

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