[go: up one dir, main page]

JPH07138183A - 胃・十二指腸疾患治療剤 - Google Patents

胃・十二指腸疾患治療剤

Info

Publication number
JPH07138183A
JPH07138183A JP5235603A JP23560393A JPH07138183A JP H07138183 A JPH07138183 A JP H07138183A JP 5235603 A JP5235603 A JP 5235603A JP 23560393 A JP23560393 A JP 23560393A JP H07138183 A JPH07138183 A JP H07138183A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hgf
cells
gastric
therapeutic agent
stomach
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5235603A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinichi Ota
慎一 太田
Toshiichi Nakamura
敏一 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Pharma Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd filed Critical Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
Priority to JP5235603A priority Critical patent/JPH07138183A/ja
Publication of JPH07138183A publication Critical patent/JPH07138183A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 HGF(肝細胞増殖因子)を有効成分として
含有する胃・十二指腸疾患治療剤。 【効果】 本発明の治療剤において、有効成分であるH
GFは胃及び十二指腸の上皮細胞の増殖を促進し、傷害
を受けた胃及び十二指腸の再生を図ることができる。従
って、本発明の治療剤は、慢性及び急性の胃・十二指腸
疾患(例えば、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)の予
防・治療に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は胃・十二指腸疾患治療剤
に関する。より詳細にはHGF(HepatocyteGrowth Fact
or、肝細胞増殖因子)を有効成分とする胃・十二指腸疾
患治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】HGFは本発明者らが再生肝ラット血清
中から成熟肝実質細胞を in vitro で増殖させる因子と
して見いだしたタンパク質である(Biochem Biophys Re
s Commun, 122, 1450, 1984)。本発明者らはさらに、
HGFをラット血小板より単離することに成功し(Pro
c. Natl. Acad. Sci, 83, 6489,1986, FFBS Letter, 2
2,311, 1987)、そのアミノ酸配列を一部決定した。さ
らに、本発明者らは解明されたHGFアミノ酸配列をも
とにヒト及びラット由来のHGFcDNAクローニング
を行い、このcDNAを動物組織に組換えて肝実質細胞
増殖因子をタンパク質として得ることに成功した(ヒト
HGF:Nature, 342, 440, 1989;ラットHGF:Pro
c. Natl. Acad. Sci, 87, 3200, 1990)。
【0003】HGFの分子量はSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動で82〜85kDである。ラットHG
F分子は463アミノ酸残基からなるα鎖と233アミ
ノ酸残基からなるβ鎖が1個のジスルフィド結合により
架橋したヘテロダイマー構造を持ち、α、β両鎖とも2
個のグルコサミン型糖鎖結合部位が存在する。ヒトHG
Fもまたほぼ同じ生理活性を有し、463アミノ酸残基
からなるα鎖と234アミノ酸残基からなるβ鎖とから
なる。α鎖中には線溶酵素プラスミンと同様のクリング
ル構造が4個存在し、β鎖のアミノ酸配列においてもセ
リンプロテアーゼ活性を有するプラスミンのB鎖と約3
7%のホモロジーを有する。ラットHGFとヒトHGF
のアミノ酸配列のホモロジーはα鎖において91.6%、β
鎖において88.9%と非常に高い相同性を持ち、その活性
は全く互換性がある。
【0004】肝実質細胞を特異的に増殖させる因子とし
て発見されたHGFは、本発明者をはじめとする研究者
による最近の研究成果によって、生体内で種々の活性を
示している事が明らかとなり、研究対象としてのみなら
ずヒトや動物の治療薬などへの応用に期待が集まってい
る。本発明者らは、HGFが増殖因子として肝細胞のみ
ならず広く上皮系細胞に働く事を明らかにし、いくつか
の発明を成就した。特願平2−158841号において
は、HGFが腎の近位尿細管細胞の増殖を促進すること
より、腎疾患治療剤としての応用開発を、また特願平2
−419158号においては、HGFがメラノサイト、
ケラチノサイトなど正常上皮細胞の増殖を促進すること
より、上皮細胞促進剤として創傷治療や皮膚潰瘍治療、
毛根細胞の増殖剤などへの応用開発を成就し、その詳細
を開示した。特に、HGFはEGF等他の多くの増殖因
子に見られるガン化作用やガン細胞増殖活性を有さない
ことから、より実用に適している。さらに本発明者ら
は、特願平3−140812号においてHGFのヒト肝
ガン由来HepG2細胞株、リンパ芽球ガン由来IM9
細胞株などのガン細胞増殖抑制活性を利用し、制ガン剤
としても利用可能であることを開示した。
【0005】HGFの医薬品としての実用性を考える上
でさらに重要な点は、HGFがG1期、すなわち増殖期
に入った細胞のみを増殖促進し、G0期、すなわち静止
期にある細胞には作用しないことである。このことは、
傷害のある組織の増殖再生は促進するが、傷害を受けて
いない組織に対しては全く作用を及ぼさないことを意味
する。従って、過剰にHGFを投与しても、あるいは血
液などを介して非患部にHGFが到達しても、正常組織
にガン化を誘導したり過剰な増殖を起こすことがないと
考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記のようにHGFが
肝細胞だけでなく広く上皮細胞の増殖を促進し、またガ
ン細胞の増殖抑制活性を有することから、生体内ではH
GFが組織傷害治癒に働いていることが予想される。H
GF産生細胞は上皮細胞自身ではなく、肝臓ではKup
ffer細胞や類洞壁血管内皮細胞、腎臓では毛細血管
内皮細胞、肺では肺胞マクロファージや血管内皮細胞な
ど主に間葉系の細胞により産生されていることが解明さ
れており、近隣細胞から必要に応じてHGFが供給され
る、いわゆるパラクリン機構が成立していることが明ら
かにされている。しかしながら、肝臓や腎臓に傷害を受
けたとき、傷害を受けていない臓器、例えば肺などにお
いてもHGFの産生が高まることから、いわゆるエンド
クリン機構によってもHGFが供給されていると考えら
れる。
【0007】このように、HGFは種々の臓器・組織で
傷害治癒に働いている増殖因子であるが、胃及び十二指
腸に傷害が加わった時にHGFが胃及び十二指腸の修復
に寄与するか否かは明らかにされていない。本発明者ら
は、HGFの標的細胞の多くは上皮細胞系であることか
ら、胃・十二指腸に傷害が加わった時にHGFが胃・十
二指腸の再生に寄与し、疾患の予防・治療に有効であろ
うと思考し、胃・十二指腸におけるHGFの作用を検討
した。その結果、HGFにより胃粘膜細胞の増殖が著し
く促進されることを見出した。本発明はかかる知見に基
づいてなされたもので、本発明は、胃・十二指腸傷害の
予防・治療に有用な胃・十二指腸疾患治療剤を提供する
こと目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の胃・十二指腸疾患治療剤は、HG
Fを有効成分として含有することからなる。上記の構成
からなる本発明の有効成分であるHGFは、医薬として
使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法
で調製されたものを用いることができる。HGFの調製
方法としては、各種の方法が知られており、例えば、ラ
ット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾
臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小板、白
血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して
得ることができる。また、HGFを産生する初代培養細
胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞な
ど)から分離精製してHGFを得ることもできる。ある
いは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子
を適切なベクターに組込み、これを適当な宿主に挿入し
て形質転換し、この形質転換体の培養物から目的とする
組換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 34
2, 440, 1989、特開平5−111383号公報、Bioche
m. Biophys. Res. Commun., 163, 967, 1989など参
照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝
子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば
大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞など
を用いることができる。
【0009】より具体的には、HGFを生体組織から抽
出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素
を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出し
て粉砕し、S−セファロース、ヘパリンセファロースな
どのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC等の通常
の蛋白質精製法にて精製することができる。また、遺伝
子組換え法を用い、ヒトHGFのアミノ酸配列をコード
する遺伝子を、ウシパピローマウィルスDNAなどのベ
クターに組み込んだ発現ベクターによって動物細胞、例
えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マ
ウスC127細胞、サルCOS細胞などを形質転換し、
その培養上清より得ることができる。
【0010】かくして得られたHGFは、そのアミノ酸
配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されてい
たり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末
端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合し
ていたり、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換されてい
てもよい。
【0011】上記のHGFは、後記実施例に示されるよ
うに、胃粘膜細胞の増殖を促進する作用を有し、また胃
・十二指腸傷害を受けた生体では胃及び十二指腸(並び
に肝臓及び肺)におけるHGF産生が促進されることが
明らかとなった。より詳細には、兎の胃粘膜細胞(上皮
細胞)の1次培養で細胞成長に対するHGFのもたらす
効果を調べたところ、HGFの添加により、細胞のDN
A合成及び増殖は、用量依存的な明瞭な応答を示すこと
が確認された。HGFが生理学的な投与量で細胞成長を
促進することから、HGFが胃上皮細胞の増殖の調節手
段となることが明らかになった。上述の細胞増殖はEG
Fとインシュリンに対して相加的あるいは相乗的であ
り、またチロシンキナーゼ特異阻害剤であるゲニステイ
ンによりブロックされた。従って、各種の成長因子の作
用が仲介されるチロシンキナーゼの通路は、HGFによ
り誘発された胃上皮細胞の増殖促進応答に含まれること
が考えられる。
【0012】また、実験結果は、細胞内遊離Ca2+がH
GFによっては増えなかったことを示し、Ca2+は兎の
胃上皮細胞に対するHGFの作用には重要な役割を果た
している様には見受けられなかった。
【0013】さらに、筋原線維芽細胞との間の識別性に
やや問題はあるが、胃の間葉に由来する線維芽細胞様の
細胞の培養上清(conditioned medium)にはHGFと類似
の増殖促進効果を持つ因子が存在することが示され、更
に線維芽細胞様の細胞の培養上清の増殖促進効果は、E
GF又はインスリンと共力的であり、又ゲニステインに
よりブロックされた。肝臓、腎臓及び肺のような他の臓
器においては、線維芽細胞がHGFを分泌し、これらが
上皮細胞の増殖を促進し、かつ傷害からの治癒プロセス
に寄与することが報告されている。上記の結果及び知見
並びに重大な胃組織欠陥が先ず顆粒化組織により取り代
わられ、次に上皮の再形成がこれに続くこと(J. Clin.
Gastroenterol. 13, Suppl 2, S21-34, 1991)の事実か
ら見て、胃粘膜の修復及び傷害治癒は、HGFが寄与す
る、胃上皮細胞とその下の結合組織との間の相互作用に
より調節されることが推察される。
【0014】以上のように、HGFは胃粘膜細胞の増殖
を促進させる作用を有するので、本発明の治療剤は慢性
又は急性の胃・十二指腸疾患(例えば、胃炎、胃潰瘍、
十二指腸潰瘍など)の予防・治療に利用することができ
る。
【0015】本発明の治療剤は種々の製剤形態(例え
ば、液剤、固形剤、カプセル剤など)をとりうるが、一
般的には有効成分であるHGFのみ又はそれと慣用の担
体と共に注射剤とされるか、又は慣用の担体と共に経口
剤とされる。当該注射剤は常法により調製することがで
き、例えば、HGFを適切な溶剤(例えば、滅菌水、緩
衝液、生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾
過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによ
り調製することができる。注射剤中のHGF含量として
は、通常0.0002〜0.2(W/V%)程度、好ましくは0.001〜0.
1(W/V%)程度に調整される。また、経口薬としては、例
えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル
剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの剤形に製剤
化され、これらの製剤は製剤化の常法に準じて調製する
ことができる。製剤中のHGF含量は、剤形、適用疾患
などに応じて適宜調整することができる。
【0016】製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添
加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロ
ブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキス
トラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さら
に、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦
形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等
を含んでいてもよい。液状製剤とした場合は凍結保存、
又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ま
しい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水などを加
え、再溶解して使用される。
【0017】本発明の製剤は、該製剤の形態に応じた適
当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の形
態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与することが
できる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などに
より適宜調整されるが、通常HGFとして0.01mg〜100m
gであり、これを1日1回ないし数回に分けて投与する
のが適当である。
【0018】
【発明の効果】本発明の治療剤において、有効成分であ
るHGFは胃・十二指腸細胞の増殖を促進し、傷害を受
けた胃・十二指腸の粘膜を再生し修復を図ることができ
る。従って、本発明の治療剤は、慢性及び急性の胃・十
二指腸疾患(例えば、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍な
ど)の予防・治療に有用である。
【0019】
【実施例】以下、実施例及び製剤例に基づいて本発明を
より詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。なお、以下の実施例1〜3で使用した
試薬類は下記の通りである。 ヒトEGF(ワクナガ社製)、ヒトインスリン(シオ
ノギ社製)及びゲニステイン(genistein、Sigma社製)
は購入品を使用した。 HGFは、Nakamuraらの方法(Nature 342, 440-443,
1989)に準じ、ヒトHGF全長cDNAを含む発現ベク
ターでトランスフェクトされたCHO細胞の培養上清か
ら精製されたヒト組換体HGFを使用した。 胃上皮細胞分離及び培養用の試薬は下記の通りであっ
た。:Coonの改変Ham's F-12培地 (KC biological 社
製)、BME(Basal medium Eagle)、MEM(minimal es
sential medium、Sigma社製)、アミノ酸、N−2−ヒド
ロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸
(N-2-hydroxyethylpiperadine-N-2-ethanesulonic aci
d、HEPES) 緩衝液(Sigma社製)、ウシ血清アルブミン (B
SA)(フラクションV、Sigma社製)、ハンクス液(HBS
S、Gibco社製)、クルードタイプIコラゲナーゼ(Sigma
社製)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、Sigma社
製)。トリチウムラベル化チミジン([3H]−チミジ
ン、New England Nuclear社製)、クリスタルバイオレ
ット(Crystal violet、Sigma社製)及びIndo-1AM(螢光
Ca2+プローブ、ワコー社製)は購入品を使用した。
【0020】実施例1胃基底粘膜細胞の分離及び細胞培養方法 胃基底粘膜細胞(以下、胃粘膜細胞という)は、成体兎
(体重2.5−3.0kgの日本白兎を雌雄の別なく使用
した)から分離し、Otaらの方法(Gastroenterologia Ja
ponica 25, 1-7, 1990)に準じて培養した。概略的に
は、基底粘膜を兎の胃から迅速に分離し、付着物を粗く
こすり取った後、2〜3mm2の小片に切断した。切断
した組織は、クルードタイプIコラゲナーゼ(0.35
mg/ml)を含むBMEの中でインキュベートした。
次に1ミリモルのEDTAを含むBMEの中でのインキ
ュベーションをし、更に上記のクルードタイプIコラゲ
ナーゼを含むBME溶液の中でのインキュベーションを
行ったが、このインキュベーションは5%CO2及び9
5%O2の環境下37℃,pH7.4の条件で続けて2回
実施した。最後のインキュベーションから取り出した細
胞は、HBSSにより洗浄し、かつ5%CO2を含む3
7℃の湿潤環境下で培養した。培養培地はF−12培地
であり、これに10%の非動化(56℃、30分間)し
たウシ胎児血清(FBS, Gibco社製)、15ミリモルHE
PESバッファー、100単位/mlペニシリン、10
0単位/mlストレプトマイシン及び5μg/ml Fung
izoneを添加した。
【0021】培養した細胞は、Teranoらの方法(Gastroe
nterology 83, 1280-1291, 1982)に準じ、過ヨウ素酸シ
ッフ(PAS)染色により、48時間後に調べた。培養
された細胞は、接種後48時間で準飽和細胞密度(Sub-c
onfluent)の単一層を形成した。これらの単一層の90
%以上が細胞質中にPAS-陽性の物質を持っており、
培養細胞が主として粘膜形成細胞からなっていることを
示した。これらの細胞は1ヶ月後に死滅し、線維芽細胞
様の細胞(細胞形態から判別)が主体を占めた。
【0022】また、胃基底線維芽細胞様の細胞(以下、
線維芽細胞様細胞という)は、上述のように培養が1ヶ
月以上に及んだ際、胃粘膜細胞が死滅し、線維芽細胞が
主体を占めた時に得られた。この期間中、10%FBS
を添加したF−12培地は毎週交換した。線維芽細胞の
培養上清は、線維芽細胞が主体を占めた後に培養系から
得た。
【0023】実施例2各種増殖因子の細胞増殖効果 各種増殖因子の胃粘膜細胞に対する増殖効果は、DNA
合成促進及びクリスタルバイオレット法により測定し
た。その詳細は下記の通りである。 A.細胞増殖方法及び増殖の測定方法 DNA合成に対する各種増殖(成長)因子の及ぼす
影響は、[3H]−チミジン取り込み法により測定し
た。分離した胃粘膜細胞は、24-ウエル培養プレート
(Primaria社製)上に1.4×105細胞/cm2の密度
で接種し、10%FBSを添加したF−12培地中で2
4時間培養した。次に血清を含まないF−12培地を用
いて24時間培養した後、培地を試験物質(EGF、イ
ンシュリン、HGF、線維芽細胞の培養上清又はゲニス
テイン)及び0.1%BSAを添加した無血清F−12
培地に変えた。同時に[3H]−チミジン(最終濃度:
1.0mCi/ml)を添加した。試験物質を添加してから
24時間後に細胞を洗浄し、5%のトリクロロ酢酸を添
加した。細胞は1時間、4℃下で放置し、次に1NのN
aOHの中で可溶化し、HClで中和した。溶液は、固
体シンチレーターを塗布してあるReadycap(Beckman ins
trument社製)に移し、一夜にわたって風乾した。次いで
放射活性を液体シンチレーションカウンターを用いてカ
ウントした。
【0024】 クリスタルバイオレット法による増殖
の測定のために、胃粘膜細胞は96−ウエル培養プレー
ト(Primaria社製)に接種し、かつ上記のように成長さ
せた。試験物質を添加してから24時間後に、培養した
細胞は、0.1%のクリスタルバイオレットを含む25
%メタノールの中に10分間浸漬することにより、固定
すると共に染色した。次いで染色した細胞層を、洗浄
し、乾燥した。600nmでの吸光度をマルチウェルス
ペクトロフォトメーター(Immunoreader 2000、 InterM
ed社製)を用いて測定した。
【0025】B.試験結果 上記の試験の結果は以下のとおりであった。 胃粘膜細胞に対するHGFの増殖効果 試験物質としてHGFを用いて、24時間培養した細胞
のDNA合成量([3H]−チミジン取り込み量に基づ
く。以下同様)を図1に、クリスタルバイオレット染色
法による成長反応を図2に示す[平均値+標準誤差、
*:対照(コントロール)との比較結果 p<0.0
1]。なお、試験結果は、対照に対する比率(%)で示
した(以下、同様)。図1に示されるように、HGF
は、用量依存的にDNA合成を有意に促進し、また図2
に示されるように、この増殖はクリスタルバイオレット
染色法により確認された。
【0026】胃粘膜細胞に対するHGF、EGF及び
インスリンの増殖効果 試験物質としてHGFのみ、EGFのみ及びHGF+E
GFを用い、24時間培養した細胞のDNA合成量を図
3に示し、また試験物質としてHGFのみ、インスリン
(INS)のみ及びHGF+INSを用い、24時間培
養した細胞のDNA合成量を図4に示す[平均値+標準
誤差、 *:対照との比較結果 p<0.01、**:H
GFのみ、EGFのみ(又はINSのみ)との比較結果
p<0.01]。図3及び図4に示されるように、EG
F及びINSもDNA合成を促進し、かつHGFと相加
的あるいは相乗的に作用した。
【0027】胃粘膜細胞に対する線維芽細胞様細胞の
培養上清の増殖効果 試験物質として、培養した線維芽細胞様細胞の培養上清
を濃度を変化させて用い、24時間培養した細胞のDN
A合成量を図5に示す(平均値+標準誤差、*:対照と
の比較結果 p<0.01)。また、培養した線維芽細胞
様細胞と10分間又は120分間共存させた培養上清を
試験物質として用い、24時間培養した細胞のDNA合
成量を図6に示す(平均値+標準誤差、*:対照との比
較結果p<0.01)。図5及び図6に示されるよう
に、線維芽細胞様細胞の培養上清は、用量依存的及び共
存時間依存的にDNA合成を促進した。なお、別途の試
験から、線維芽細胞様細胞の培養上清は、EGF及びイ
ンスリンと相加的あるいは相乗的に作用することが示さ
れた。
【0028】細胞増殖に対するゲニステインの抑制効
果 上記のように、HGF及び線維芽細胞様細胞培養上清に
より促進されることが判明したDNA合成が、チロシン
キナーゼ特異阻害剤であるゲニステインにより抑制され
るか否かを検討した。図7にはHGFにより促進された
DNA合成のゲニステインによる抑制結果を示した。判
定は[3H]−チミジン取り込み量によった(平均値+
標準誤差、*:HGF+DMSOとの比較結果 p<0.
01)。また、図8には、線維芽細胞様細胞の培養上清
により促進されたDNA合成のゲニステインによる抑制
結果を示した。判定は[3H]−チミジン取り込み量に
よった(平均値+標準誤差、*:線維芽細胞様細胞の培
養上清+DMSOとの比較結果 p<0.01)。なお、
図中、DMSOはジメチルスルホキシド、GSはゲニス
テイン、FIBは線維芽細胞様細胞の培養上清を示す。
図7に示されるように、HGFによるDNA合成の促進
は、チロシンキナーゼ特異阻害剤であるゲニステインに
より、用量依存的に抑制されることが明らかになった。
また、図8に示されるように、線維芽細胞様細胞の培養
上清によるDNA合成の促進もゲニステインにより抑制
された。
【0029】実施例3細胞内遊離Ca2+の測定 HGF及び線維芽細胞様細胞の培養上清による細胞増殖
により、細胞内の遊離Ca2+が増加するか否かを測定し
た。測定法は以下のとおりである。胃粘膜細胞は、カバ
ーガラス上でF−12培地を用いて培養した。培養した
細胞は、5ミリモルのindo-1AM(蛍光Ca2+プローブ)
を含む培地を用い、37℃下で15分間インキュベート
した。カバーガラスをindo-1AMを含まぬ溶液中で30分
間洗浄し、次に貫流セルチャンバーに移した。上記のカ
バーガラスに、137ミリモルNaCl、3.7ミリモ
ルKCl、0.5ミリモルMgCl2、1.8ミリモルC
aCl2、5.6ミリモル グルコース及び4.0ミリモル
HEPESを含むHEPES緩衝液を連続的に流した。
細胞内遊離カルシュウム濃度はPeetersらの方法(Am. J.
Physiol. 253, H1400-1408, 1987)に準じて測定した。
蛍光は対物レンズにより収光され、2つの個別の光電子
増倍管を用いて410nm及び480nmの両波長での
測定を同時に実施できるように、ビームスプリッターに
より分割した。[Ca2+]iは、両蛍光発光時の410
/480蛍光比から[Ca2+]i=250nm(R−Rm
in)/(Rmax−R)bの式を用いて算定した。Rmax及
びRminは、それぞれindo-1AMにCa2+が結合している
場合とCa2+が存在していない時の値に該当する。Rmi
nを求めるには、培養した胃細胞にindo-1AMを負荷し、
洗浄後、37℃下で2分間"0"Ca2+(0.1ミリモル
のEGTAを添加)にて140ミリモルのKCl、4ミ
リモルHEPES(pH7.05)及び50ミリモル
ジギトニン(digitonin)に浸漬した。Rmaxは[Ca2+
oを0.1ミリモル("High Ca2+")に高めるのに十分
なCa2+を加えることにより求めた。その結果を図9に
示す。図9に示されるように、HGF及びEGFは細胞
内遊離Ca2+を増加させることがなかった。
【0030】製剤例1 生理食塩水100ml中にHGF1mg、マンニトール
1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無
菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結
乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0031】製剤例2 0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び
0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)10
0ml中にHGF1mgとヒト血清アルブミン100m
gを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアル
に分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾
燥製剤を得た。
【0032】製剤例3 注射用蒸留水100ml中にHGF1mg、ソルビトー
ル2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10m
gを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに
分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥
製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験物質としてHGFを用いて24時間培養し
た細胞のDNA合成量を示す図である(平均値+標準誤
差、*:対照との比較結果 p<0.01)。
【図2】試験物質としてHGFを用いて24時間培養し
た細胞の成長反応(クリスタルバイオレット染色法)を
示す図である(平均値+標準誤差、*:対照との比較結
果 p<0.01)。
【図3】試験物質としてHGFのみ、EGFのみ又はH
GF+EGFを用いて24時間培養した細胞のDNA合
成量を示す図である(平均値+標準誤差、*:対照との
比較結果 p<0.01、**:HGFのみ又はEGFの
みとの比較結果 p<0.01)。
【図4】試験物質としてHGFのみ、インスリン(IN
S)のみ又はHGF+INSを用いて24時間培養した
細胞のDNA合成量を示す図である(平均値+標準誤
差、*:対照との比較結果 p<0.01、**:HGF
のみ又はINSのみとの比較結果 p<0.01)。
【図5】試験物質として、培養した線維芽細胞様細胞の
培養上清を濃度を変化させて用い、24時間培養した細
胞のDNA合成量を示す図である(平均値+標準誤差、
*:対照との比較結果 p<0.01)。
【図6】試験物質として、培養した線維芽細胞様細胞と
10分間又は120分間共存させた培養上清を用い、2
4時間培養した細胞のDNA合成量を示す図である(平
均値+標準誤差、*:対照との比較結果 p<0.0
1)。
【図7】HGFにより促進されたDNA合成のゲニステ
インによる抑制結果(判定は[3H]−チミジン取り込
み量による)を示す図である(平均値+標準誤差、*:
HGF+DMSOとの比較結果 p<0.01)。なお、
図中、DMSOはジメチルスルホキシド、GSはゲニス
テインを示す。
【図8】線維芽細胞様細胞の培養上清により促進された
DNA合成のゲニステインによる抑制結果(判定は[3
H]−チミジン取り込み量による)を示す図である(平
均値+標準誤差、*:線維芽細胞様細胞の培養上清+D
MSOとの比較結果 p<0.01)。なお、図中、DM
SOはジメチルスルホキシド、GSはゲニステイン、F
IBは線維芽細胞様細胞の培養上清を示す。
【図9】HGF及びEGFを用いて培養した細胞の細胞
内遊離Ca2+濃度の変化を示す図である。なお、陽性対
照として、デオキシコール酸を用いた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 HGFを有効成分として含有するこ
    とを特徴とする胃・十二指腸疾患治療剤。
JP5235603A 1993-08-26 1993-08-26 胃・十二指腸疾患治療剤 Pending JPH07138183A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5235603A JPH07138183A (ja) 1993-08-26 1993-08-26 胃・十二指腸疾患治療剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5235603A JPH07138183A (ja) 1993-08-26 1993-08-26 胃・十二指腸疾患治療剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07138183A true JPH07138183A (ja) 1995-05-30

Family

ID=16988459

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5235603A Pending JPH07138183A (ja) 1993-08-26 1993-08-26 胃・十二指腸疾患治療剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07138183A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0722737B1 (en) Use of HGF for the preparation of a medicament against CNS disorders
JP3763479B2 (ja) 生物学的に活性なTGF−β1およびTGF−β2ペプチド
JP3818322B2 (ja) コラーゲン分解促進剤
KR0137017B1 (ko) 감마-인터페론을 이용한 혈관 협착증의 치료방법
JPH05506030A (ja) 哺乳動物に組織修復促進の傾向を与える方法
PT88626B (pt) Processo para a preparacao de um factor de crescimento polipeptidico proveniente de leite
JPH07504650A (ja) 細胞外マトリックスの蓄積を防止するためのトランスフォーミング増殖因子βの阻害
JP2750372B2 (ja) 賢疾患治療剤
JPH07179356A (ja) 上皮細胞増殖促進剤
JP3622015B2 (ja) 肺傷害治療剤
JP3394982B2 (ja) ガン療法用副作用防止剤
KR19990066965A (ko) 신규 펩티드
JP4129994B2 (ja) 組織因子凝固系インヒビター含有血管新生阻害剤
JP3945846B2 (ja) 膵臓機能改善剤
EP1057489B1 (en) Use of midkine family proteins in the treatment of ischemic diseases
JPH08501315A (ja) 消化管潰瘍のモルフォゲン治療
JPH10167982A (ja) 劇症肝炎疾患治療剤
JPH07138183A (ja) 胃・十二指腸疾患治療剤
JP3977452B2 (ja) 動脈疾患治療剤
PT655251E (pt) Composicao farmaceutica para a profilaxia e o tratamento de fracturas
JPH04234325A (ja) 脳および神経障害治療予防剤
JPH07316066A (ja) 創傷治癒剤
JPH06312941A (ja) Hgf産生促進剤
US8106009B2 (en) Pharmaceutical composition for preventing or treating ischemic diseases
CN116925186B (zh) 一种新生儿肺发育不良的间充质干细胞治疗方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040720

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20041207