JPH0653554B2 - 油圧エレベータ装置及びそのいたずら揺動警報方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はエレベータに係り、更に詳細には油圧エレベー
タのいたずらによる強制加振（いたずら揺動）に対して
警告を発する技術に関する。

〔従来の技術〕

エレベータは、乗客のいたずらにより乗かごが強制加振
を受けることもあり、その振動が著しくなるとガバナが
誤動作し乗客が乗かご内に閉じ込まれる事故につなが
る。

このような不具合をなくすため、従来より、例えば特開
昭56-108680号，特開昭58-69687号，特開昭59-203081号
公報等に開示されるように、ガバナの耐振性を向上させ
たり、乗かごとガバナロープとの連結部にばね等を設
け、乗かごの加振がガバナロープに伝わらないようにす
る等の配慮がなされている。

しかしながら、このような手段は、例えば油圧エレベー
タのように、ロープ系の他に油系のばね定数が付加さ
れ、低い固有振動数（通常２〜３Hz）でかごが強制加振
され易いものについては、その対応に限界がある。特に
数Ｈｚの耐振性を上げる（この場合、ガバナ固有振動数
を１Ｈｚ程度にする必要がある）のは、技術的に非常に
困難であり、仮に可能であつても、この場合、エレベー
タ通常走行時の加速終了端のオーバシユートの影響を受
けてガバナに誤動作が生じ易い問題がある。

そこで、最近では、例えば実開昭60-64961号，実開昭60
-64962号公報等に開示されるように、乗かごの上下揺動
時の加速度やロープ緩み等からいたずら加振を検出し
て、例えばかご揺動の初期段階で警報を発したりしてい
た。

〔発明が解決しようとする課題〕

このような従来のいたずら警報装置は、乗客に注意を促
していたずら揺動を止めさせるのに有効であるが、次の
ような改善すべく点があつた。

例えば、前述の如く加速度によりいたずら揺動を検出し
ようとする場合、エレベータの乗かごには、いたずら揺
動の他に、エレベータ停止時の正常な乗客の乗り込みや
荷の積み降し等によつても振動加速度が生じるので、こ
れらの正常な動作により生じる振動加速度と混同しない
ように、いたずら揺動検出の加速度基準値（警報を発生
する基準の加速度）を設定する必要がある。以上からす
れば、加速度基準値ｇ_１（ガル）は、正常な乗り込み，
積み降し等の振動加速度ｇ_２（ここで、ｇ_２は許される
範囲の最も大きな値）より大きく、またガバナの誤動作
を防止するためガイドの耐振加速度ｇ_３より小さくする
必要がある（ｇ_２＜ｇ_１＜ｇ_３）。

このようにして基準加速度ｇ_１を設定すると、エレベー
タ停止時のいたずら揺動を検出する場合には支障はない
が、エレベータ走行中には、次のような不具合が生じ
る。これを第４図に基づき説明する。

第４図は、エレベータ走行状態を表わす説明図で、エレ
ベータの加速，定格速度，減速，停止の一連の状態を表
わしている。図に示すように、例えば定格速度で走行中
に、乗かごにいたずら揺動があるとこの揺動の加速度ｇ
が走行速度Ｖ_２に乗つて、速度がＶ′に変化する。この
場合、加速度ｇが或る大きくｇ′以上になると、速度
Ｖ′もガバナスイツチの作動速度（ガバナスイツチ作動
点）Ｖ_３に達してしまうが、この時の加速度ｇ′は、一
般にエレベータ停止中の加速度基準値ｇ_１より小さい
（ｇ′＜ｇ_１）関係にある。通常、エレベータ停止中を
基準として定めた加速度基準値ｇ_１と、エレベータ走行
中にガバナを誤動作させる加速度ｇ′とは、ｇ_１≒１．
５ｇ′程度にある。従つて、せつ角、いたずら揺動の加
速度基準値（警報発生基準値）ｇ_１を設定しても、エレ
ベータ走行中には、加速度ｇ_１に達する前、すなわち警
報を発する前にガバナが誤動作してしまうこともある。

なお、加速度以外に、ロープの緩み等から乗りかごの上
下の揺動を検出する場合も、上記同様の問題が生じる。

本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目
的とするところは、エレベータの停止中及び走行中を問
わず、常にいたずら揺動を適確に検出して警報等を発
し、いたずら揺動とガバナ誤動作事故を有効に防止でき
るいたずら揺動警報方法及びその装置を提供することに
ある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、上記目的を達成するためには、振動加速度の
他にエレベータの走行速度の見地からもいたずら揺動判
別用の基準値を定める必要があることに着目し、次のよ
うに構成する。

すなわち、方法的には、乗かごの加速度及び速度相当値
のいずれかが基準値を超えた時に、前記乗かごにいたず
ら揺動があったものとして警報を発生させるようにし、
かつ前記基準値のうち加速度の基準値をガバナを作動さ
せる耐振加速度よりも小さく、速度の基準値はガバナを
作動させる速度よりも小さく設定した。

また、基本的な装置として、乗かごの加速度及び速度相
当値のいずれかが基準値を超えると警報を発する手段と
を備え、かつ前記基準値のうち加速度の基準値はガバナ
を作動させる耐振加速度よりも小さく、速度の基準値は
ガバナを作動させる速度よりも小さく設定して成る油圧
エレベータ装置を提案する。

なお、上記エレベータにいたずら揺動警報方法及び装置
は、前記加速度及び速度のいずれか１つの検出値が夫々
の基準値を超えた場合に、前記警報を発生させるほか
に、乗かごを最寄り階に停止させて扉が開かるよう制御
してもよく、更に、この扉の開動作によりエレベーター
を通常の状態に自動復帰させる手段を加えてもよい。

〔作用〕

このような構成によれば、エレベータの運転（停止，走
行）中に加速度及び速度が加速度基準値ｇ_１，速度基準
値Ｖ_１のいずれか１つを超えると警報が発せられる。

例えば、エレベータ停止中に乗かごにいたずら揺動が生
じ、この揺動が次第に大きくなると、この場合は、速度
基準値Ｖ_１以前に加速度の方が加速度基準値ｇ_１を超
え、このｇ_１を超えた時点で警報が発せられる。

また、エレベータが定格速度で走行している時にいたず
ら揺動が生じると、この場合は、加速度基準値ｇ_１より
小さな揺動（加速度）であっても、その揺動に起因して
エレベータ走行速度の変動値が速度基準値Ｖ_１を超える
ことが多く、この速度変動値が速度基準値Ｖ_１を超えた
時点で警報が発せられる。

また、エレベータの加減速中には、エレベータの速度が
加速度よりも先に対応の基準値Ｖ_１に達したり、或いは
加速度が速度よりも先に対応の基準値ｇ_１に達したり、
状況に応じて様々なので、速度及び加速度のどちらかが
先に基準値Ｖ_１，ｇ_１のいずれかより大きくなつた時点
で警報が発せられる。

以上のように、本発明は速度及び加速度の検出値が夫々
の基準値Ｖ_１，ｇ_１のうちいずれかを超えた時点で警報
を発する。従つて、仮にエレベータ走行中に加速度基準
値ｇ_１より小さい加速度（乗かご揺動）で、エレベータ
走行速度がガバナ作動点Ｖ_３に近づいても、速度基準値
Ｖ_１の存在によつて、ガバナ作動前に警報を発し、いた
ずら揺動を制止することができる。従つて、エレベータ
の停止，走行のいずれの状態時においても、エレベータ
乗かごのいたずら揺動を適確に検出して、ガバナ作動前
に、警報を発し、この警報を通していたずら揺動の中止
を促す。これにより有効ないたずら揺動防止及びガバナ
誤動作防止を図り得る。

更に、いたずら揺動が検出されると、警報の他に前記乗
かごを最寄階に停止させて扉を開け、その後エレベータ
を通常の状態に復帰させるようにすれば、いたずら揺動
を強制的に止めさせることができ、より一層のいたずら
揺動防止効果と、ガバナ誤動作防止効果を奏し得る。

〔実施例〕

本発明の一実施例を第１図ないし第３図に基づき説明す
る。

第１図及び第２図は本発明の一実施例たるエレベータの
システム構成図、第３図はその動作説明図である。

本実施例のエレベータは油圧式で、第１図において、１
は乗かご、２はガイドローラ、３はレール、４はプー
リ、５は油圧シリンダ、６はプランジヤ、７は作動油、
８はロープである。

シリンダ５の油圧は、油圧制御弁９が作動油７を給排す
ることで制御され、この油圧制御によりプランジヤ６が
上下動する。プランジヤ６の上端にはプーリ４が取付け
られ、プランジヤ６が上下動するとプーリ４，ロープ８
を介して、乗かご１がレール３に沿つて上下動する。

１０は油ポンプ、１１は油ポンプ駆動用のモータであ
る。

１２は乗かごに連動するロータリエンコーダ（パルス発
生装置）、１３はエレベータを駆動制御する演算制御装
置、１４はエレベータに種々の動作指令を与える制御指
令装置である。ロータリエンコーダ１２は、エレベータ
乗かごの加速度及び速度を検出する手段となる。

演算制御装置１３は、エレベータ動作に必要な各種演算
を行う他に、ロータリエンコーダ１２からのパルス信号
を入力し、単位時間のパルスをカウントしたり、微分演
算して、エレベータの走行速度や加速度を演算する回路
と、この走行速度や加速度の演算値（検出値）を予め定
めた基準値と比較して、乗かごのいたずら揺動を判定す
る回路を有する。警報器１５は、この判定回路の出力に
より作動制御される。すなわち、この警報器１５及び演
算制御装置１３とで、乗かごの加速度及び速度相当値の
いずれかが基準値を超えると警報を発する手段を構成す
る。演算制御装置１３で定める基準値のうち、加速度の
基準値ｇ_１は、エレベータ停止時の乗客等の乗り込みで
生じる正常な加速度ｇ_２よりも大きく、ガバナを作動さ
せる耐振加速度ｇ_３よりも小さくし（ｇ_２＜ｇ_１＜
ｇ_３）、一方、速度の基準値Ｖ_１は、エレベータ走行中
の定格速度Ｖ_２よりも大きく、ガバナスイツチを作動さ
せる速度Ｖ_３より小さく（Ｖ_２＜Ｖ_１＜Ｖ_３）設定して
ある。

本実施例のガバナ系は第２図に示され、１６は乗かご１
に装備される非常止め装置（図示せず）を作動させるレ
バー、１７はガバナロープ、１８はガバナである。

次に本実施例の動作を説明する。

エレベータの運転時には、ロータリエンコーダ１２が乗
かご１の動きに応じてパルスを発生し、演算制御装置１
３に送られる。

演算制御装置１３は、このパルス数をカウントしたり微
分演算して、速度及び加速度を算出する。

そして、この速度検出値及び加速度検出値のいずれかが
基準値ｇ_１，Ｖ_１のいずれか以上であると、いたずら揺
動があるものと判定される。この判定がなされると、警
報器１５に作動指令が出され警報音を発すると共に、制
御指令装置１４が指令を出して、乗かご１を最寄りの階
へ停止させ、扉を開ける。その後、扉が閉まると、エレ
ベータを通常の運転モードに戻す。

例えば、エレベータ停止中に乗かご１にいたずら揺動が
生じ、この揺動が次第に大きくなると、この場合は、一
般に基準速度Ｖ_１以前に加速度の方が加速度基準値ｇ_１
を超えるので、このｇ_１を超えた時点で警報が発せられ
る。すなわち、加速度検出値が乗客の乗り込み等で生じ
る正常な加速度ｇ_２レベル以上でガバナの耐振加速度ｇ
_３に達する前に警報が発せられる。

また、エレベータが定格速度で走行している時にいたず
ら揺動が生じると、この場合は、第３図に示すように定
格速度Ｖ_２に加速度ｇが乗つて、加速度ｇが或るレベル
に至ると、基準値ｇ_１より小さな揺動（加速度）であつ
ても、その揺動に起因してエレベータ走行速度の変動値
が速度基準値Ｖ_１を超えることが多く、この速度変動値
（検出値）が速度基準値Ｖ_１を超えた時点で警報が発せ
られる。すなわち、この場合には、第３図にも示す如
く、速度検出値が定格速度Ｖ_２とガバナ作動速度Ｖ_３の
間の所定レベルになると警報が発せられる。

また、エレベータの加減速中には、エレベータの速度が
加速度よりも先に対応の基準値Ｖ_１に達したり、或いは
加速度が速度よりも先に対応の基準値ｇ_１に達したり、
状況に応じて様々なので、速度及び加速度のどちらかが
基準値Ｖ_１，ｇ_１のいずれかより大きくなつた時点で警
報が発せられる。

しかして、本実施例によれば、乗かごのいたずら揺動を
速度基準値と加速度基準値の２本立で監視するので、エ
レベータの停止及び走行のいずれにおいても適確にいた
ずら揺動を検出して、ガバナ作動前に警報を発し、エレ
ベータを最寄階に停止させることができる。従つて、い
たずら揺動防止と、ガバナ誤動作を極めて有効に抑制す
ることができる。

なお、上記実施例では、乗かごの加速度及び速度の検出
値のいずれかが対応の基準値ｇ_１，Ｖ_１のいずれかに達
すると直ちに警報を発するようにしたが、これに代え
て、加速度及び速度の検出値のいずれかが対応の基準値
ｇ_１，Ｖ_１を所定時間内で断続的に超えた時、すなわ
ち、加速度及び速度の検出値のいずれかが所定時間内に
対応する基準値ｇ_１，Ｖ_１を所定回数断続して超えた時
に、警報を発するようにしてもよい。この場合、ガバナ
耐振加速度ｇ_３やガバナ作動速度Ｖ_３を超えないで、加
速度や速度の検出値が基準値ｇ_１，Ｖ_１レベルを断続的
に超えるようにする必要があり、それには、ｇ_１，Ｖ_１
のレベルをｇ_２〜ｇ_３又はＶ_２〜Ｖ_３の範囲内で低くす
ればよい。

〔発明の効果〕

以上のように本発明によれば、エレベータの停止中及び
走行中を問わず、常に乗かごのいたずら揺動を適確に検
出して警報等を発し、いたずら揺動の制止とガバナ誤動
作事故の防止を有効に図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示すシステム構成図、第２
図は上記実施例のガバナ系を示す構成図、第３図は上記
実施例の動作説明図、第４図は従来のエレベータにおけ
る問題点を説明するための動作説明図である。 １…乗かご、１２…加速度・速度検出手段（ロータリエ
ンコーダ）、１３…いたずら揺動判定手段（演算制御装
置）、１５…警報器、１８…ガバナ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米田 健治 茨城県勝田市市毛1070番地 株式会社日立 製作所水戸工場内 (72)発明者 増田 勝太郎 茨城県勝田市市毛1070番地 株式会社日立 製作所水戸工場内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】乗かごの加速度及び速度相当値のいずれか
   が基準値を超えると警報を発する手段を備え、かつ前記
   基準値のうち加速度の基準値はガバナを作動させる耐振
   加速度よりも小さく、速度の基準値はガバナを作動させ
   る速度よりも小さく設定して成ることを特徴とする油圧
   エレベータ装置。
2. 【請求項２】乗かごの加速度及び速度を検出する手段
   と、この加速度及び速度の検出値を夫々の基準値と比較
   して、これらの検出値のいずれか１つが基準値を超える
   と警報を発する手段とを備え、かつ、前記基準値のうち
   加速度の基準値ｇ_１は、エレベータ停止中の乗客，荷物
   等の乗り込みによって生じる正常な加速度ｇ_２よりも大
   きく、ガバナを作動させる耐振加速度ｇ_３よりも小さ
   く、一方、速度の基準値Ｖ_１は、エレベータ走行中の定
   格速度Ｖ_２よりも大きく、ガバナを作動させる速度Ｖ_３
   よりも小さく設定されていることを特徴とする油圧エレ
   ベータ装置。
3. 【請求項３】乗かごの加速度及び速度を検出する手段
   と、この加速度及び速度の検出値のいずれかが基準値を
   超えると警報を発する手段と、前記検出値が基準値を超
   えると前記乗かごを最寄階に停止させて扉を開けた後エ
   レベータを通常の状態に復帰させる制御手段とを備え、
   かつ、前記基準値のうち加速度の基準値ｇ_１は、エレベ
   ータ停止中の乗客，荷物等の乗り込みによって生じる正
   常な加速度ｇ_２よりも大きく、ガバナを作動させる耐振
   加速度ｇ_３よりも小さくし、一方、速度の基準値Ｖ
   _１は、エレベータ走行中の定格速度Ｖ_２よりも大きく、
   ガバナを作動させる速度Ｖ_３よりも小さく設定されてい
   ることを特徴とする油圧エレベータ装置。
4. 【請求項４】前記乗かごの加速度及び速度を検出する手
   段は、前記乗かごと連動してパルスを発生するエンコー
   ダより成ることを特徴とする請求項２又は請求項３記載
   の油圧エレベータ装置。
5. 【請求項５】乗かごの加速度及び速度相当値のいずれか
   が基準値を超えた時に、前記乗かごにいたずら揺動があ
   ったものとして警報を発生させるようにし、かつ前記基
   準値のうち加速度の基準値をガバナを作動させる耐振加
   速度よりも小さく、速度の基準値をガバナを作動させる
   速度よりも小さく設定して成ることを特徴とする油圧エ
   レベータ装置のいたずら揺動警報方法。