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JPH06297207A - 靭性に優れた気相合成ダイヤモンド切削工具 - Google Patents

靭性に優れた気相合成ダイヤモンド切削工具

Info

Publication number
JPH06297207A
JPH06297207A JP8652893A JP8652893A JPH06297207A JP H06297207 A JPH06297207 A JP H06297207A JP 8652893 A JP8652893 A JP 8652893A JP 8652893 A JP8652893 A JP 8652893A JP H06297207 A JPH06297207 A JP H06297207A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diamond
layer
film
diamond film
cutting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP8652893A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshiki Sato
俊樹 佐藤
Tsutomu Ikeda
孜 池田
Seiji Kameoka
誠司 亀岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP8652893A priority Critical patent/JPH06297207A/ja
Publication of JPH06297207A publication Critical patent/JPH06297207A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 多結晶ダイヤモンド膜の靭性を更に向上さ
せ、刃先部の耐欠損が生じない様なろう付け気相合成ダ
イヤモンド切削工具を提供する。 【構成】 気相合成法によって合成された多結晶ダイヤ
モンド膜が、工具母材のすくい面側の切削作用部分にろ
う付けによって取付けられた気相合成ダイヤモンド切削
工具において、前記多結晶ダイヤモンド膜は、ラマン分
光分析によるダイヤモンドのピーク強度I1 に対する非
ダイヤモンド炭素のピーク強度I2 の強度比(I2 /I
1 )が0.7以下の層と、当該強度比(I2 /I1 )が
0.9以上の層が交互に積層された多層型多結晶ダイヤ
モンド膜である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気相合成法によって合
成した多結晶ダイヤモンドを切削工具母材にろう付けし
た気相合成ダイヤモンド切削工具に関し、殊に高靭性で
耐欠損性や耐摩耗性に優れ、非鉄金属やセラミックス材
料の切削に適した気相合成ダイヤモンド切削工具に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、硬質材料として従来か
ら用いられてきたアルミナ,窒化珪素,タングステンカ
ーバイド等と比べても極めて高い硬度を有し、また熱伝
導率も高いことから、切削工具や耐摩耗性工具等への応
用開発が盛んに行なわれている。
【0003】ダイヤモンドを応用した工具として、ダイ
ヤモンド微粉末を高温・高圧下で焼結したダイヤモンド
焼結体を用いた工具も開発され、非鉄金属やセラミック
ス等の切削加工用工具や研削加工用工具として広く使用
されている。しかしながらダイヤモンド焼結体は、焼結
助剤として5〜10%程度のCoを含有しており、この
Coはダイヤモンドの粒界に存在して粒界強度を低下さ
せるので、この様なダイヤモンド焼結体を切削工具とし
て応用しても切削時に刃先のチッピングやカケを生じ易
いという問題がある。
【0004】一方、ダイヤモンドの気相合成法が確立さ
れて以来、複雑な形状の工具にも容易に且つ安価に応用
できる可能性があることから、気相合成法によってダイ
ヤモンドを主体とする多結晶膜(以下、多結晶ダイヤモ
ンド膜と呼ぶことがある)を工具母材表面に被覆した工
具の開発も活発化している。しかしながら、気相合成し
た多結晶ダイヤモンド膜は、高強度,高熱伝導性という
工具部材として優れた特性を持っている反面、膜の内部
応力が大きく工具母材との密着性が低いので、例えば切
削工具にコーティングしても切削中に容易に剥離すると
いう欠点を有し、必ずしも十分な性能が得られていると
は言えない。
【0005】そこで多結晶ダイヤモンド膜の内部応力を
緩和させるという観点から、例えば特開平1−2127
66号公報や同1−212767号公報等の技術が提案
されている。これらの技術は、気相合成法によって適当
な基板上に厚さ100μm以上の多結晶ダイヤモンド膜
を析出させ、生成した膜を一旦基板から取り外して刃先
形状に切断して工具母材の刃先部にろう付けによって取
り付け、刃立て加工したものである。この様な工具(以
下、ろう付け工具と呼ぶことがある)では、多結晶ダイ
ヤモンド膜を工具母材にろう付けによって取り付けたも
のであるので、工具母材とダイヤモンド膜の密着強度が
高く、また多結晶ダイヤモンド膜中にはCo等の結合助
剤を含まないので耐摩耗性にも優れているという利点を
有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ろう付け工具はこれま
での工具では得られない優れた利点を有するものである
が、それでも切削時に刃先に高い荷重や衝撃が加わると
刃先が欠損してしまうという問題があり、靭性を更に向
上させることが望まれている。
【0007】本発明は上記の様な事情に着目してなされ
たものであって、その目的は、多結晶ダイヤモンド膜の
靭性を更に向上させ、刃先部の耐欠損が生じない様なろ
う付け気相合成ダイヤモンド切削工具を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明とは、気相合成法によって合成された多結晶ダイヤ
モンド膜が、工具母材のすくい面側の切削作用部分にろ
う付けによって取付けられた気相合成ダイヤモンド切削
工具において、前記多結晶ダイヤモンド膜は、ラマン分
光分析によるダイヤモンドのピーク強度I1 に対する非
ダイヤモンド炭素のピーク強度I2 の強度比(I2 /I
1 )が0.7以下の層と、当該強度比(I2 /I1 )が
0.9以上の層が交互に積層された多層型多結晶ダイヤ
モンド膜である点に要旨を有する気相合成ダイヤモンド
切削工具である。
【0009】
【作用】気相合成多結晶ダイヤモンド膜が欠損し易い原
因の一つは、膜を構成する各ダイヤモンドが柱状組織で
あることによると考えられる。これを図面を用いて説明
する。これまで気相合成によって多結晶ダイヤモンド膜
を形成する過程は図2に示す様に行なわれている。まず
合成初期に基板1上にダイヤモンドの核2が形成され
[図2(a)]、次いでこれらの核が粒成長してダイヤ
モンド粒3となって基板1全面を覆う[図2(b)]。
ダイヤモンド粒3は各々成長速度が異なり、成長の速い
粒が優勢となって成長し、粗大化した柱状の粒からなる
組織4となる[図2(c)]。粗大化した柱状組織にな
ると、それに伴い粒界が大きくなり粒界欠陥も大きくな
る。この結果、多結晶ダイヤモンド膜の靭性が低下し欠
損を生じ易くなると考えられる。
【0010】一般にセラミックス材料でいわれている様
に、靭性向上には微細な粒状組織にすることが耐欠損性
向上の一つの方法となるが、ダイヤモンドの成長は、各
粒に関してはエピタキシャル成長であり、粒の表面に2
次核が発生するまで粒成長する。この2次核は、ある程
度粒が成長しないと発生せず、発生頻度も少ないために
ダイヤモンドの粒状組織化は非常に困難である。そこで
本発明者らは、粒成長を抑制して耐欠損性を改善できる
多結晶ダイヤモンド膜の構造について様々な角度から検
討した。その結果、多結晶ダイヤモンド膜を上述した様
な多層型構造とすれば、各ダイヤモンド粒の粒成長が抑
制されて耐欠損性が改善され、靭性が極めて優れた気相
合成ダイヤモンド切削工具が実現できることを見出し、
本発明を完成した。
【0011】本発明に係る多層型多結晶ダイヤモンド膜
は、例えば下記の手順[図1(a)〜(e)]で形成さ
れる。まず合成初期は通常のダイヤモンドの成長と同様
で、基板1上にダイヤモンドの核2が形成される[図1
(a)]。次いで、これらの核2を粒成長させて、ラマ
ン分光分析によるピーク強度比(I2 /I1 )が0.7
以下のダイヤモンド層5を形成する[図1(b)]。引
き続き、ダイヤモンド層5の表面に、ピーク強度比(I
2 /I1 )が0.9以上となる、ダイヤモンドと非ダイ
ヤモンド炭素の混合層6または非ダイヤモンド炭素のみ
の層6を析出させる[図1(c)]。
【0012】ところでピーク強度比(I2 /I1 )が
0.7以下の層にも非ダイヤモンド炭素が含まれること
があるが、ピーク強度比(I2 /I1 )が0.9以上の
層に比べて非ダイヤモンド炭素の含有量は少ないので、
以後ピーク強度比(I2 /I1)が0.7以下の層をダ
イヤモンド層5、ラマンピーク比(I2 /I1 )が0.
9以上の層を混合層6と呼ぶことにする。尚非ダイヤモ
ンド炭素は、非晶質炭素やグラファイト等のダイヤモン
ド構造を持たない炭素のことを指すが、ダイヤモンド構
造を持たないダイヤモンドと異質の非ダイヤモンド炭素
がダイヤモンドの表面に析出することにより、下層のダ
イヤモンドのエピタキシャル成長を抑制するのである。
【0013】その後、再びダイヤモンドが析出する条件
にすると、混合層6中のダイヤモンドまたは非ダイヤモ
ンド炭素がダイヤモンドの核発生点となって混合層6上
にダイヤモンドの粒が成長しダイヤモンド層5となって
混合層6上を覆う[図1(d)]。以後混合層6とダイ
ヤモンド層5を交互に積層することにより、粒状組織に
近い靭性の高い多層型多結晶ダイヤモンド膜10が得ら
れるのである。また本発明の多層型多結晶ダイヤモンド
膜10では、ダイヤモンドよりも柔らかい非ダイヤモン
ド炭素を含む混合層6が介在することも靭性の向上に寄
与していると考えられる。但し、非ダイヤモンド炭素は
耐摩耗性においてはダイヤモンドに劣るため、混合層6
の割合が高くなると耐摩耗性が劣化する。従って、後述
する様に各層には最適な厚みや厚み比率がある。
【0014】尚上記膜形成手順においては、初めにダイ
ヤモンド層5を基板1上に形成しているが、初めに混合
層6を基板1上形成してから多層型多結晶ダイヤモンド
膜を形成しても工具性能に何等問題はない。またこの多
層型多結晶ダイヤモンド膜は基板を除去された後、工具
表面にろう付けされるが、すくい面には膜の成長面側で
も元の基板面側でもどちらをとっても良い。更に、すく
い面はダイヤモンド層5でも混合層6でもどちらでも構
わない。
【0015】本発明に係る多層型多結晶ダイヤモンド膜
10において、ダイヤモンド層5のピーク強度比(I2
/I1 )は0.7以下とする必要がある。これは、ピー
ク強度比(I2 /I1 )がそれより高くなると非ダイヤ
モンド炭素の含有率が高くなり、耐摩耗性が劣化するか
らである。また、混合層6のピーク強度比(I2 /I
1 )を0.9以上とする必要があるのは、それより低い
と非ダイヤモンド炭素の含有率が少なくなり、ダイヤモ
ンドのエピタキシャル成長を抑制することができず、粒
が粗大化し柱状組織となるからである。
【0016】次に、ダイヤモンド層5の平均厚さは0.
2〜5μmとするのが好ましい。即ち、ダイヤモンド層
5の平均厚さが0.2μm未満になると、ダイヤモンド
の粒径が小さくなり耐摩耗性が劣化する。一方、5μm
より厚くなると、耐欠損性が劣化するからである。また
混合層6の平均厚さは、0.02〜5μmとなるのが好
ましい。即ち、混合層6の厚さが0.02μm未満にな
ると、完全にダイヤモンドの表面を被覆できず、ダイヤ
モンドの粒成長を抑制できない。一方、5μmより厚く
なると耐摩耗性が劣化する。更に、ダイヤモンド層5の
厚み(δ1 )と混合層6の厚み(δ2 )の比(δ1 /δ
2 )は0.5以上であることが好ましい。この比率が
0.5より小さくなると、混合層6の割合が高くなり、
耐摩耗性が劣化する。
【0017】尚、ダイヤモンド層5における各ダイヤモ
ンド粒の粒径については、0.2〜0.5μmとするの
が好ましい。即ち、0.2μm未満であるとダイヤモン
ドの粒が小さすぎて耐摩耗性が劣化し、5μmより大き
くなると粒の粗大化により耐欠損性が劣化するからであ
る。
【0018】本発明の気相合成ダイヤモンド切削工具
は、上記の様な多層型多結晶ダイヤモンド膜10を、工
具母材のすくい面側の切削作用部分にろう付けによって
取り付けることによって構成されるが、このときの多層
型多結晶ダイヤモンド膜10の全体厚さは50μm以上
とするのが好ましい。即ち、多層型多結晶ダイヤモンド
膜の厚さが50μm未満では、膜全体の強度が低くなっ
て、膜が破損し易くなるからである。一方多層型多結晶
ダイヤモンド膜の厚さが、あまり大きくなっても、性能
上あまり変わりがないばかりでなく、成膜に長時間を要
することから厚みの上限は1000μm程度が適当であ
る。
【0019】また本発明の気相合成ダイヤモンド切削工
具において、多層型多結晶ダイヤモンド膜10のすくい
面に相当する部分は、その表面粗さがRmax で0.3μ
m以下の鏡面状態とするのが良い。即ち、すくい面に相
当する部分を鏡面状態とすることによって、工具使用時
に被削材の切り屑の排出が円滑になり、該切り屑がすく
い面に溶着して構成刃先を形成することもなく、被削面
粗さも良好となる。また表面粗さがRmax で0.3μm
以下の多層型多結晶ダイヤモンド膜10を得るには、該
ダイヤモンド膜10を研磨することによっても達成され
るが、例えば工具切削作用部分と対応した凹形基板の内
面をRmax で0.3μm以下となる様にしておき、この
凹形基板内面に多層型多結晶ダイヤモンド膜10を析出
させた後剥離し、これを工具切削作用部分にろう付けす
る様にすれば、より簡単にRmax:0.3μm以下の鏡
面を有する気相合成ダイヤモンド工具が得られる。
【0020】本発明の気相合成ダイヤモンド工具は、上
記の様な多層型多結晶ダイヤモンド膜10を工具母材の
切削作用部分にろう付けによって取り付けたものを基本
的な構成とするものであるが、下記の様な構成によって
も本発明の目的が達成される。即ち、工具母材にろう付
けされる気相合成多結晶ダイヤモンド膜を、表面層とし
てピーク強度比(I2 /I1 )が0.7以下の層と0.
9以上の層が交互に積層された厚さ20〜50μm未満
の多結晶ダイヤモンド膜(上記多層型多結晶ダイヤモン
ド膜10)と、下地層としてピーク強度比(I2 /I
1 )が0.7以下の多結晶ダイヤモンド膜とを備えた合
計厚さ50μm〜1mmの多結晶ダイヤモンド膜の構成
とし、且つ前記表面層がすくい面となる様に工具母材に
ろう付けによって取り付ける様にしても良い。この様な
構成において、下地層のダイヤモンド層の厚さが50μ
m以上で多層型多結晶ダイヤモンド層10の厚さ20μ
m以上であれば、刃先の欠損や膜の破損を生じない。ま
た表面層の厚さを50μm未満とするのは、それより厚
くしても性能上は変わらないが、成膜の煩雑さが増すだ
けで上記構成を採用する利点が得られないからである。
更に、下地層のダイヤモンド層のピーク強度比(I2
1 )を0.7以下とするのは、それより高いと非ダイ
ヤモンド炭素成分が多くなり耐摩耗性が劣化するからで
ある。表面層と下地層の合計の厚みを1mm以下とする
のは、1mmより厚くしても成膜に時間を要するだけで
性能は変わらず、それ以上厚くする利点がないからであ
る。尚この様な構成を採用する場合においても、この多
結晶ダイヤモンド膜の一部を構成する多層型多結晶ダイ
ヤモンド膜10における、各層の平均厚みδ1 ,δ2
厚み比(δ1 /δ2 )、ピーク強度比(I2 /I1 )が
0.7以下の層のダイヤモンドの平均粒径、および切削
作用部分のすくい面に相当する多結晶ダイヤモンドの表
面粗さ等の好ましい範囲は、多層型多結晶ダイヤモンド
膜10を工具母材にろう付けする場合と同様である。
【0021】本発明の気相合成ダイヤモンド工具を製造
するに当たって、適用する気相合成法については特に制
限するものではなく、例えば水素と炭化水素の原料ガス
を熱電子放射材やマイクロ波無極放電等で励起分解する
化学蒸着法(CVD法)が用いられる。またダイヤモン
ド中に非ダイヤモンド炭素を共析させるには、原料ガス
中の炭化水素濃度を高くしたり、熱電子放射材の温度や
マイクロ波無極放電出力を低くしたりするなど合成条件
の変更によっても得られるが、原料ガスに窒素、ジボラ
ン、シラン等の不純物ガスを混入することによっても可
能である。そして、非ダイヤモンド炭素の共析量は合成
条件や不純物ガスの濃度を適当に選ぶことによって調整
することができる。更に本発明で用いる工具母材として
は、工具母材としての使用に耐える硬度および強度を有
し、ダイヤモンド膜をろう付けによって取り付けること
ができるものであれば良く、特に限定するものではない
が、ろう付けによる熱応力の発生が少ないという観点か
らして、ダイヤモンドの熱膨張係数に近い材質を用いる
のが良い。この様なものとして、超硬合金や窒化珪素系
セラミックス等が挙げられる。
【0022】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0023】
【実施例】
実施例1 マイクロ波プラズマCVD法によって、原料ガスとして
2 :200cc/min,CH4 :2cc/minの
混合ガスを用い、圧力:40torr,マイクロ波出
力:1kwの条件でシリコン基板上に30分で厚さ2μ
mのダイヤモンド層5を形成した。その後圧力:10t
orr,マイクロ波出力:500wに変更して10分間
合成を行い、より多くの非ダイヤモンド炭素を含む厚さ
2μmの混合層6を析出させた。以後これらの合成を交
互に繰り返し行い、全層数:40層,厚み:80μmの
多層型多結晶ダイヤモンド膜を作製した。尚このときの
ダイヤモンド層におけるダイヤモンド粒の平均粒径は約
2μmであった。
【0024】次に、60℃の水酸化ナトリウム水溶液に
よってシリコン基板を溶解除去して多層型多結晶ダイヤ
モンド膜10を取り出した。各層の膜質を調べるため
に、ダイヤモンド膜の断面から各層をビーム径2μmの
顕微ラマン分析した。その結果は、夫々図3および図4
に示す通りであり、1100cm-1から1800cm-1
の間のバックグラウンドから測定した1500cm-1
ら1600cm-1付近の非ダイヤモンド炭素のピーク強
度(I2 )と、1333cm-1のピーク付近をバックグ
ラウンドとして測定したダイヤモンドのピーク強度(I
1 )の比(I2 /I1 )は、ダイヤモンド層5が0.1
1(図3)であり、混合層6が1.31(図4)であっ
た。
【0025】次に、上記多層型多結晶ダイヤモンド膜1
0をYAGレーザーで切断し、該ダイヤモンド膜10の
元の基板面側がすくい面となるように超硬チップにろう
付けによって取付け、刃付加工を行いダイヤモンドろう
付けチップを作製した(本発明例1)。尚このときのチ
ップ形状はSPGN120308とした。
【0026】このとき比較例として、平均粒径約10μ
mの焼結体ダイヤモンドチップ(比較例1)、およびマ
イクロ波プラズマCVD法により、原料ガスとしてH
2 :200cc/min,CH4 :2cc/minを用
い、圧力:40torr、マイクロ波出力:1kwでシ
リコン基板上に作製した厚さ:80μm、ピーク強度比
(I2 /I1 )が0.1の多結晶ダイヤモンド膜をろう
付けによって取付けたチップ(比較例2)についても作
製した。これらのチップについて、被削材としてAl−
20%Si合金の丸棒を用い、切削速度:400m/m
in,切り込み:0.25mm,送り:0.1mm/r
evの条件で乾式切削を行い、切削性能を評価した。そ
の結果、比較例1,2のチップはいずれも切削5分で欠
損していたが、本発明例1のチップでは切削90分で欠
損は全く認められなかった。
【0027】実施例2 直径:0.5mm,長さ:60mmのタンタルフィラメ
ントを用いた熱フィラメントCVD法によって、水素−
エタノール蒸気からなる原料ガスを用いて下記表1およ
び表2に示す条件で、本発明の多層型多結晶ダイヤモン
ド膜をモリブデン基板上に形成した。ここで、層を基板
側から数えたときに奇数層の合成条件(表1)および偶
数層の合成条件(表2)は、各々の試料の多層型ダイヤ
モンド膜においては夫々同じとした。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】この様にして合成した各層の平均厚み、ピ
ーク強度比(I2 /I1 )、ダイヤモンド層5(試料N
o.1,2,4,6〜8の奇数層および試料No.3,5,
9の偶数層)におけるダイヤモンドの平均粒径および全
体の膜厚は、表3に示す通りである。但し、混合層6の
ピーク強度比(I2 /I1 )が0.9よりも小さかった
試料No.7および混合層6の厚さが薄い試料No.8につ
いては、ダイヤモンド粒の成長が見られ、断面観察から
大部分が柱状結晶化していた。
【0031】
【表3】
【0032】次に、1:1の硝フッ酸水溶液によってモ
リブデン基板を除去し、多層型多結晶ダイヤモンド膜1
0のみを取り出した。以下、実施例1と同様にチップの
形に工具化し、切削性能を評価した。このとき被削材の
形状は、円柱の側面から90°間隔で長手方向に4枚の
Al−16%Si合金の板を同じ長さに突き出させたも
のを用い、切削速度:500m/min,切り込み:
0.2mm,送り:0.1mm/revの切削条件で、
突き出したAl−16%Si合金の外周を長手方向に6
0分断続切削した。切削試験結果は表4に示す通りであ
り、この結果から本発明ダイヤモンドチップは耐欠損性
および耐摩耗性に優れることがわかる。
【0033】
【表4】
【0034】実施例3 実施例2の試料6と同様の条件で、表面層として多層型
多結晶ダイヤモンド膜を作製し、その表面に下地層とし
て単層のダイヤモンドを析出させ、実施例1と同様にし
てチップに加工し、実施例2と同様の切削試験を行っ
た。このときのダイヤモンド層の厚み、ピーク強度比
(I2 /I1 )および切削試験結果等を表5に示す。表
5において、試料No.12は第1層厚みが薄すぎたため
に切削10分で欠損した。また試料No.13は第2層中
に比ダイヤモンド炭素が多く含まれたため欠損はしなか
ったものの、逃げ面摩耗が大きくなった。これに対し、
試料No.10,12は本発明の要件を満たす実施例であ
り、耐欠損性および耐摩耗性のいずれにも優れていた。
この結果から明らかな様に、多層型多結晶ダイヤモンド
層10と単層のダイヤモンド層の複合体でも耐欠損性に
優れることがわかる。
【0035】
【表5】
【0036】実施例4 表面粗さがRmax で0.46μmと0.2μmのMo基
板上に、実施例1と同様の条件でマイクロ波プラズマC
VD法により厚さ120μmの多層型多結晶ダイヤモン
ド膜10を析出させ、1:1の硝フッ酸水溶液に浸漬す
ることにより多層型多結晶ダイヤモンド膜10のみを取
り出した。このときの多層型多結晶ダイヤモンド膜10
の元の基板側の表面粗さは基板の表面がほぼ転写されて
おり、それぞれ、Rmax :0.47μm,0.21μm
を示していた。
【0037】次いで、多層型多結晶ダイヤモンド膜10
の元の基板側の表面がチップのすくい面となる様に、チ
ップにろう付けによって取付け、刃付加工を施してSP
GN120308形状のチップとした。これらのチップ
に対して、Al−16%Si合金丸棒の外周を、切削速
度:400m/min,切り込み:0.25mm,送り
速度:0.1mm/revの条件で、60分間連続切削
した。各チップとも欠損は見られなかったものの、すく
い面粗さ:Rmax :0.47μmのチップはすくい面に
被削材の溶着が見られ、被削面粗さはRmax :4.8μ
mであった。一方、すくい面粗さRmax :0.21μm
のチップは溶着が無く、被削面粗さもR max :2.1μ
mと良好であった。
【0038】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、多
結晶ダイヤモンド膜をダイヤモンド層と混合層を交層に
積層した多層型の膜構造とすることによって、粒状組織
に近い多結晶ダイヤモンド膜とすることができ、高靭性
で耐欠損性および耐摩耗性に優れた気相合成ダイヤモン
ド切削工具が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層型多結晶ダイヤモンド膜の作
製過程と断面構造を示す図である。
【図2】通常の多結晶ダイヤモンド膜の成長過程と断面
構造を示す図である。
【図3】ダイヤモンド層5のラマンスペクトルを示すグ
ラフである。
【図4】混合層6のラマンスペクトルを示すグラフであ
る。
【符号の説明】 1 基板 2 ダイヤモンド核 3 ダイヤモンド粒 4 柱状組織 5 ダイヤモンド層 6 混合層 10 多層型多結晶ダイヤモンド膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気相合成法によって合成された多結晶ダ
    イヤモンド膜が、工具母材のすくい面側の切削作用部分
    にろう付けによって取付けられた気相合成ダイヤモンド
    切削工具において、前記多結晶ダイヤモンド膜は、ラマ
    ン分光分析によるダイヤモンドのピーク強度I1 に対す
    る非ダイヤモンド炭素のピーク強度I 2 の強度比(I2
    /I1 )が0.7以下の層と、当該強度比(I2 /I
    1 )が0.9以上の層が交互に積層された多層型多結晶
    ダイヤモンド膜であることを特徴とする靭性に優れた気
    相合成ダイヤモンド切削工具。
  2. 【請求項2】 前記強度比(I2 /I1 )が0.7以下
    の各層の平均厚み(δ1 )が0.2〜5μmであると共
    に、前記強度比(I2 /I1 )が0.9以上の各層の平
    均厚み(δ2 )が0.02〜5μmであり、且つ層厚比
    (δ1 /δ2)が0.5以上である請求項1に記載の気
    相合成ダイヤモンド切削工具。
  3. 【請求項3】 多層型多結晶ダイヤモンド膜の厚さが5
    0μm以上である請求項1または2に記載の気相合成ダ
    イヤモンド切削工具。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の多層型多結晶
    ダイヤモンド膜が表面層として20〜50μm未満の厚
    さで形成されると共に、前記強度比(I2 /I1 )が
    0.7以下の層が下地層として形成され、且つ合計厚さ
    が50μm〜1mmである気相合成多結晶ダイヤモンド
    膜が、工具母材の切削作用部分に、前記表面層がすくい
    面となる様にろう付けよって取付けられたものであるこ
    とを特徴とする靭性に優れた気相合成ダイヤモンド切削
    工具。
  5. 【請求項5】 多層型多結晶ダイヤモンド膜中の前記強
    度比(I2 /I1 )が0.7以下の層のダイヤモンドの
    平均粒径が0.2〜5μmである請求項1〜4のいずれ
    かに記載の気相合成ダイヤモンド切削工具。
  6. 【請求項6】 切削作用部分のすくい面に相当する多層
    型多結晶ダイヤモンド膜の表面粗さがRmaxで0.3
    μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の気相合
    成ダイヤモンド切削工具。
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