JPH0621183B2 - セルロ−スド−プおよびその製造法 - Google Patents
セルロ−スド−プおよびその製造法Info
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- JPH0621183B2 JPH0621183B2 JP2754485A JP2754485A JPH0621183B2 JP H0621183 B2 JPH0621183 B2 JP H0621183B2 JP 2754485 A JP2754485 A JP 2754485A JP 2754485 A JP2754485 A JP 2754485A JP H0621183 B2 JPH0621183 B2 JP H0621183B2
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- Artificial Filaments (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野: 本発明は、セルロースドープおよびその製造法に関す
る。
る。
従来の技術: 一般に再生セルロースの成形物はセルロースをある種の
方法で溶媒に溶解し、そのドープを押出し機を用いて、
非溶媒や再生溶媒中に投入することに依って製造され
る。上記の目的に工業的に利用されるセルロースの溶解
方法は現在でも、1890年代終りには既に発見された銅ア
ンモニア法とビスコース法だけである。これらの方法で
得たドープ中のセルロースはセルロースがそのままの型
で溶解しているのではなく、ある種のセルロース誘導体
として溶解している特徴がある。従って、セルロースに
戻すには、いわゆる再生という操作が必要である。しか
も、上記のいずれのドープを製造する工程でも、またそ
れらドープからの成形に際しても、重金属の排出、毒性
気体の発生等作業環境的見地からも、また公害の見地か
らも問題点が多い。この他、工業的には用いられてはな
いが、セルロースを溶解する方法として、金属錯体、例
えば、カドキセン(カドミウム/エチレンジアミン/ア
ルカリ)、コオキセン(コバルト/エチレンジアミン/
アルカリ)、ジンコセン(亜鉛/エチレンジアミン/ア
ルカリ)、ニオキセン(ニッケル/エチレンジアミン/
アルカリ)、EWNN(鉄/酒石酸/アルカリ)が知られて
いる。しかし、いずれも、重金属、アミン等の毒性成分
を使用する点や経済性の点で、銅アンモニア法やビスコ
ース法を凌駕するものではない。特に、二硫化炭素を用
いるビスコース法は、現在の再生セルロース工業では、
圧倒的に多数の企業が採用しているが、上記の観点から
ビスコース法の工業的存続から危惧する声が欧米で起き
ている。その顕著な現われは1960年代〜1970年
代にかけての多くの企業のビスコース事業(レーヨン事
業)からの撤退である。これら工業的に既存の溶解方法
への反省として、セルロースを直接有機溶媒に溶解し、
繊維や膜製造プロセスをクローズド化して新規な再生セ
ルロース成形品を得ようとする研究が1970年代よ
り、カナダ、米国を中心になされてきた。その結果、実
に多くの溶解方法が見い出されたが、いずれも複雑な多
成分系溶媒を用いる方法であり、溶媒自体のコスト高、
毒性、爆発性、回収困難性等のため実用化された例をみ
ないのが現状である。更に、新しく発見されたセルロー
スの溶解方法は、殆んどすべて、セルロースをある種の
誘導体の形にして、その誘導体を適当な溶媒に溶解して
いるという点で、ビスコース法や銅アンモニア法と大差
のない発想でしかなかった。例えば、ジメチルスルホキ
シド法の場合、セルロースはメチロールセルロースとし
て溶解しているし、ジメチルホルムアミド/N2O4法で
は、セルロースナイトライトとして溶解する。SO2/ア
ミン法、ジメチルホルムアミド/クロラール法等も同様
である。このようなセルロースの溶解技術の歴史をみて
も判るように、セルロースを単純で安価な溶媒に溶解す
るのは至難の技である。
方法で溶媒に溶解し、そのドープを押出し機を用いて、
非溶媒や再生溶媒中に投入することに依って製造され
る。上記の目的に工業的に利用されるセルロースの溶解
方法は現在でも、1890年代終りには既に発見された銅ア
ンモニア法とビスコース法だけである。これらの方法で
得たドープ中のセルロースはセルロースがそのままの型
で溶解しているのではなく、ある種のセルロース誘導体
として溶解している特徴がある。従って、セルロースに
戻すには、いわゆる再生という操作が必要である。しか
も、上記のいずれのドープを製造する工程でも、またそ
れらドープからの成形に際しても、重金属の排出、毒性
気体の発生等作業環境的見地からも、また公害の見地か
らも問題点が多い。この他、工業的には用いられてはな
いが、セルロースを溶解する方法として、金属錯体、例
えば、カドキセン(カドミウム/エチレンジアミン/ア
ルカリ)、コオキセン(コバルト/エチレンジアミン/
アルカリ)、ジンコセン(亜鉛/エチレンジアミン/ア
ルカリ)、ニオキセン(ニッケル/エチレンジアミン/
アルカリ)、EWNN(鉄/酒石酸/アルカリ)が知られて
いる。しかし、いずれも、重金属、アミン等の毒性成分
を使用する点や経済性の点で、銅アンモニア法やビスコ
ース法を凌駕するものではない。特に、二硫化炭素を用
いるビスコース法は、現在の再生セルロース工業では、
圧倒的に多数の企業が採用しているが、上記の観点から
ビスコース法の工業的存続から危惧する声が欧米で起き
ている。その顕著な現われは1960年代〜1970年
代にかけての多くの企業のビスコース事業(レーヨン事
業)からの撤退である。これら工業的に既存の溶解方法
への反省として、セルロースを直接有機溶媒に溶解し、
繊維や膜製造プロセスをクローズド化して新規な再生セ
ルロース成形品を得ようとする研究が1970年代よ
り、カナダ、米国を中心になされてきた。その結果、実
に多くの溶解方法が見い出されたが、いずれも複雑な多
成分系溶媒を用いる方法であり、溶媒自体のコスト高、
毒性、爆発性、回収困難性等のため実用化された例をみ
ないのが現状である。更に、新しく発見されたセルロー
スの溶解方法は、殆んどすべて、セルロースをある種の
誘導体の形にして、その誘導体を適当な溶媒に溶解して
いるという点で、ビスコース法や銅アンモニア法と大差
のない発想でしかなかった。例えば、ジメチルスルホキ
シド法の場合、セルロースはメチロールセルロースとし
て溶解しているし、ジメチルホルムアミド/N2O4法で
は、セルロースナイトライトとして溶解する。SO2/ア
ミン法、ジメチルホルムアミド/クロラール法等も同様
である。このようなセルロースの溶解技術の歴史をみて
も判るように、セルロースを単純で安価な溶媒に溶解す
るのは至難の技である。
他方、セルロースは重合度(以下、「DP」という。)
が極端に小さくなると(例えば、DP=10)、アルカリは
勿論、熱ジメチルスルホキシドに溶解することは知られ
ている。その重合度は20以下であって、とてもセルロ
ース成形品として充分な機械特性を持ちえず、利用でき
るものではない。極低重合度セルロースがアルカリ等に
溶けるのは、セルロースに特徴的な高分子性、例えば水
素結合等で規定される分子形態が失なわれるからであ
る。また、10重量%付近の苛性ソーダ水溶液は重合度
の高いセルロースに対し強い膨潤作用をもつことも周知
の事実である。Journal of Prake.Chem.,N.F.,15
8,233(1941)には、天然セルロース、マーセ
ル化セルロース、再沈殿(多分、再生)したセルロース
の10重量%苛性ソーダ水溶液に対する溶解性が示され
ている。溶解条件、ポリマー濃度等全く記述がないが、
それに依ると、天然、マーセル化セルロースは重合度(D
P)=400迄、再沈殿されたセルロースはDP=120
0迄可溶とされている。しかしながら、これらの記述は
かなりの任意性が含まれるし、また、可溶といっても強
度に膨潤したゲルをも含めていたと予想される。本発明
者が追試した結果、−5〜5℃で10重量%の苛性ソー
ダに対するセルロースの溶解性はポリマー濃度と重合度
の影響をうけ、例えばDP=360の天然セルロース
(綿リンター)の場合、遠心分離(20,000回転、
46分)Lゲルを取り除く操作をするとポリマー濃度
0.5%でも全部が溶解することはなかった。従って、
Journal of Prakt.Chem.,N.F.,158,233(194
1)の記述の“可溶”という意味は、低濃度でしかもゲ
ルを含んだものと判断され、工業的に利用できるもので
はない。これらの点は、アルカリがセルロースのラテラ
ルオーダー毎の分別溶解に用いられた事実(例えば、
“高分子物質の精製と化学反応”、P128〜132.
高分子学会編、昭和33年、共立出版)からも判る。こ
れはセルロースの分子量と分子鎖の集合状態によりアル
カリに溶ける部分と不溶な部分に分ける操作であって、
前者の溶ける部分はゲルも含めたものである。これらの
事実は、溶解したい重合度の高いセルロースを殆んど1
00%溶解し、しかも、セルロースを高濃度に単一組成
のアルカリに溶解することが技術的に極めて困難である
ことを示している。事実、セルロース工業の歴史上、か
かるセルロース/アルカリ溶液が成形用ドープとして利
用されたことはない。
が極端に小さくなると(例えば、DP=10)、アルカリは
勿論、熱ジメチルスルホキシドに溶解することは知られ
ている。その重合度は20以下であって、とてもセルロ
ース成形品として充分な機械特性を持ちえず、利用でき
るものではない。極低重合度セルロースがアルカリ等に
溶けるのは、セルロースに特徴的な高分子性、例えば水
素結合等で規定される分子形態が失なわれるからであ
る。また、10重量%付近の苛性ソーダ水溶液は重合度
の高いセルロースに対し強い膨潤作用をもつことも周知
の事実である。Journal of Prake.Chem.,N.F.,15
8,233(1941)には、天然セルロース、マーセ
ル化セルロース、再沈殿(多分、再生)したセルロース
の10重量%苛性ソーダ水溶液に対する溶解性が示され
ている。溶解条件、ポリマー濃度等全く記述がないが、
それに依ると、天然、マーセル化セルロースは重合度(D
P)=400迄、再沈殿されたセルロースはDP=120
0迄可溶とされている。しかしながら、これらの記述は
かなりの任意性が含まれるし、また、可溶といっても強
度に膨潤したゲルをも含めていたと予想される。本発明
者が追試した結果、−5〜5℃で10重量%の苛性ソー
ダに対するセルロースの溶解性はポリマー濃度と重合度
の影響をうけ、例えばDP=360の天然セルロース
(綿リンター)の場合、遠心分離(20,000回転、
46分)Lゲルを取り除く操作をするとポリマー濃度
0.5%でも全部が溶解することはなかった。従って、
Journal of Prakt.Chem.,N.F.,158,233(194
1)の記述の“可溶”という意味は、低濃度でしかもゲ
ルを含んだものと判断され、工業的に利用できるもので
はない。これらの点は、アルカリがセルロースのラテラ
ルオーダー毎の分別溶解に用いられた事実(例えば、
“高分子物質の精製と化学反応”、P128〜132.
高分子学会編、昭和33年、共立出版)からも判る。こ
れはセルロースの分子量と分子鎖の集合状態によりアル
カリに溶ける部分と不溶な部分に分ける操作であって、
前者の溶ける部分はゲルも含めたものである。これらの
事実は、溶解したい重合度の高いセルロースを殆んど1
00%溶解し、しかも、セルロースを高濃度に単一組成
のアルカリに溶解することが技術的に極めて困難である
ことを示している。事実、セルロース工業の歴史上、か
かるセルロース/アルカリ溶液が成形用ドープとして利
用されたことはない。
本発明者等は、上述のような現在工業的に行われている
溶解法の欠点や有機溶媒法の思想等を考慮し、セルロー
スの分子構造に変化を与えることによって、セルロース
をより安価で簡単に溶解すべく鋭意検討の結果本発明に
到達した。
溶解法の欠点や有機溶媒法の思想等を考慮し、セルロー
スの分子構造に変化を与えることによって、セルロース
をより安価で簡単に溶解すべく鋭意検討の結果本発明に
到達した。
発明が解決しようとする問題点: 本発明は、比較的高重合度で、低温下でアルカリに溶解
するセルロースのアルカリ水溶液ドープであって、しか
も経済的に且つ公害の見地からも問題を生じることな
く、優れた繊維、膜その他の成形品製造に供したり、他
素材の表面や内部に塗布したり、または他素材を浸漬で
きるセルロースドープおよびその製造法を提供すること
を目的とする。
するセルロースのアルカリ水溶液ドープであって、しか
も経済的に且つ公害の見地からも問題を生じることな
く、優れた繊維、膜その他の成形品製造に供したり、他
素材の表面や内部に塗布したり、または他素材を浸漬で
きるセルロースドープおよびその製造法を提供すること
を目的とする。
問題点を解決するための手段: 本発明は、その一面において、重合度100以上のセル
ロースを実質的に3重量%以上含有するセルロースのア
ルカリ水溶液ドープであって、その13C-NMRスペクトル
において、C4位のカーボンピークが強固な分子内水素結
合に基づく固体セルロースのC4位カーボンピークに比し
7ppm以上高い磁場に見い出されることを特徴とする安
定でかつ成形に適するセルロースドープを提供する。
ロースを実質的に3重量%以上含有するセルロースのア
ルカリ水溶液ドープであって、その13C-NMRスペクトル
において、C4位のカーボンピークが強固な分子内水素結
合に基づく固体セルロースのC4位カーボンピークに比し
7ppm以上高い磁場に見い出されることを特徴とする安
定でかつ成形に適するセルロースドープを提供する。
本発明は、他の一面において、任意の結晶型を有するセ
ルロース100重量部と水素結合解裂性溶液10〜10
00部よりなる混合物を100〜350℃、10〜25
0気圧下に保持後、急速に大気中に放出し得られるセル
ロースをあらかじめ50℃以下に調整したアルカリ水溶
液と混合し、10℃以下で撹拌、溶解させることを特徴
とする上述のようなセルロースドープの製造法を提供す
る。
ルロース100重量部と水素結合解裂性溶液10〜10
00部よりなる混合物を100〜350℃、10〜25
0気圧下に保持後、急速に大気中に放出し得られるセル
ロースをあらかじめ50℃以下に調整したアルカリ水溶
液と混合し、10℃以下で撹拌、溶解させることを特徴
とする上述のようなセルロースドープの製造法を提供す
る。
本発明のセルロースドープは、安定でしかも高濃度にセ
ルロースを含有し、成形に適したドープである。すなわ
ち、本発明のセルロースドープは少なくとも重合度10
0以上のセルロースを3重量%含有するセルロースのア
ルカリ水溶液ドープであって、室温で2日以上ゲル化す
ることなく、安定である。本ドープの最大の特徴は、セ
ルロースを構成するグルコース環のC4位のカーボンの13
C-NMRピークが固体セルロースの結晶部に存在する強固
な分子内水素結合に由来するC4ピーク(セルロースIで
89.1ppm、セルロースIIで89.1ppmと87.9pp
m)に比し、7ppm以上高い磁場に見い出されることであ
る。一般に、セルロース固体は結晶部、非晶部からな
り、それらは、分子間および分子内水素結合のため、C4
位のカーボンの13C-NMRは、結晶系の違いにより上述の
ピークと86〜79ppmにわたるブロードなピークとし
て観察される(第1A図および第1B図参照。両図はそ
れぞれ天然セルロースおよび再生セルロースの固体CP/
MAS13C-NMRスペクトルを表わす。)。後者のピークは主
に分子内水素結合性の破壊の程度により種々のピークの
重なったものと考えられる。通常のセルロースはアルカ
リで膨潤するが、この膨潤したセルロース液の、13C-NM
Rスペクトルでは、C4位カーボンはブロードで、前述の
89.1ppmのピークを基準にして、7ppm以上高い磁場
にシャープな1本のピークとしては見い出されない。本
発明のセルロースのアルカリ溶液では7ppm以上高磁場
でしかも1本のシャープなピークとして観察される(第
2図参照)。
ルロースを含有し、成形に適したドープである。すなわ
ち、本発明のセルロースドープは少なくとも重合度10
0以上のセルロースを3重量%含有するセルロースのア
ルカリ水溶液ドープであって、室温で2日以上ゲル化す
ることなく、安定である。本ドープの最大の特徴は、セ
ルロースを構成するグルコース環のC4位のカーボンの13
C-NMRピークが固体セルロースの結晶部に存在する強固
な分子内水素結合に由来するC4ピーク(セルロースIで
89.1ppm、セルロースIIで89.1ppmと87.9pp
m)に比し、7ppm以上高い磁場に見い出されることであ
る。一般に、セルロース固体は結晶部、非晶部からな
り、それらは、分子間および分子内水素結合のため、C4
位のカーボンの13C-NMRは、結晶系の違いにより上述の
ピークと86〜79ppmにわたるブロードなピークとし
て観察される(第1A図および第1B図参照。両図はそ
れぞれ天然セルロースおよび再生セルロースの固体CP/
MAS13C-NMRスペクトルを表わす。)。後者のピークは主
に分子内水素結合性の破壊の程度により種々のピークの
重なったものと考えられる。通常のセルロースはアルカ
リで膨潤するが、この膨潤したセルロース液の、13C-NM
Rスペクトルでは、C4位カーボンはブロードで、前述の
89.1ppmのピークを基準にして、7ppm以上高い磁場
にシャープな1本のピークとしては見い出されない。本
発明のセルロースのアルカリ溶液では7ppm以上高磁場
でしかも1本のシャープなピークとして観察される(第
2図参照)。
さらに、溶液中のセルロースはアルカリの特異的な配位
が認められない点で従来工業的に用いられる銅アモニア
溶液中やビスコース中のセルロースと全く異なった溶解
状態を呈しており、成形に際していわゆる再生操作を必
要としない。
が認められない点で従来工業的に用いられる銅アモニア
溶液中やビスコース中のセルロースと全く異なった溶解
状態を呈しており、成形に際していわゆる再生操作を必
要としない。
本発明のドープを構成するセルロースの重合度は100
以上で、好ましくは200〜700である。700を超
えると、粘性が高くゲル化し易い点で成形操作上やや問
題があるが、この問題はエキストルーダーの如き装置を
用い溶液調製後直ちに成形操作を行えば解決できるた
め、上限地は格別限定的でない。
以上で、好ましくは200〜700である。700を超
えると、粘性が高くゲル化し易い点で成形操作上やや問
題があるが、この問題はエキストルーダーの如き装置を
用い溶液調製後直ちに成形操作を行えば解決できるた
め、上限地は格別限定的でない。
本発明のセルロースドープは、種々の結晶型を有するセ
ルロースを前処理して、C3-O5′(C3位のOHとリング酸
素間)、C2-C6(C2OHとC6OまたはC2OとC6′OH間)の分
子内水素結合性の低いセルロースとし、それを低温でア
ルカリ水溶液に溶解することによって得られる。本発明
のドープを製造するのに必要なセルロースは、例えば、
セルロースI結晶型をもつもの(天然セルロース)、セ
ルロースII、III、IV結晶型をもつもの(再生セルロー
ス)と水素結合解裂剤との混合物を100〜350℃,
10〜250気圧下に保持後、急激に常温、大気下に放
出することによって得られる。
ルロースを前処理して、C3-O5′(C3位のOHとリング酸
素間)、C2-C6(C2OHとC6OまたはC2OとC6′OH間)の分
子内水素結合性の低いセルロースとし、それを低温でア
ルカリ水溶液に溶解することによって得られる。本発明
のドープを製造するのに必要なセルロースは、例えば、
セルロースI結晶型をもつもの(天然セルロース)、セ
ルロースII、III、IV結晶型をもつもの(再生セルロー
ス)と水素結合解裂剤との混合物を100〜350℃,
10〜250気圧下に保持後、急激に常温、大気下に放
出することによって得られる。
温度と圧力は互に相関し、水素結合解裂剤中に存在する
蒸散し得る成分のある特定温度での蒸気圧となる。従っ
て、温度はセルロースの熱分解点(350℃)以下でな
ければならない。また、水以外の蒸散性成分の再利用を
考慮するなら、該成分の分解点以下で操作することが望
ましい。また、蒸気の蒸気圧以外の例えば、エクストル
ダー等による外圧が加わった場合には、外圧に応じて、
処理温度を適宜上げるように調整することが望ましい。
上記雰囲気下にセルロースを保持する時間は限定的では
なく、セルロースの熱変質、熱分解に応じて決定すれば
よい。通常20秒から20分位で充分である。
蒸散し得る成分のある特定温度での蒸気圧となる。従っ
て、温度はセルロースの熱分解点(350℃)以下でな
ければならない。また、水以外の蒸散性成分の再利用を
考慮するなら、該成分の分解点以下で操作することが望
ましい。また、蒸気の蒸気圧以外の例えば、エクストル
ダー等による外圧が加わった場合には、外圧に応じて、
処理温度を適宜上げるように調整することが望ましい。
上記雰囲気下にセルロースを保持する時間は限定的では
なく、セルロースの熱変質、熱分解に応じて決定すれば
よい。通常20秒から20分位で充分である。
水素結合解裂剤中の蒸散し得る成分の使用量は、セルロ
ースに対し10〜100重量%が適当である。蒸散し得
る成分が10重量%未満の場合は、セルロースと水素結
合解裂剤との混合物を高温高圧状態より大気下に放出す
るに際し、水素結合解裂剤を構成する液体の急速な蒸発
によるセルロース内部の破壊(分子内水素結合の破壊)
が不充分で、低温下でのアルカリ可溶性が不足する。10
00重量%を超えると、エネルギー的にコスト高となる。
水素結合解裂剤としては、水,アルカリ水溶液,無機酸
水溶液,塩水溶液,尿素類水溶液,両性酸化物や両性水
酸化物の水溶液または水分散液,グリコール類,アミド
類,スルホキシド類,ハロゲン化酢酸類,ポリフェノー
ル等が用いられる。勿論これらの混合物を用いることも
できる。上記水素結合解裂剤中、水溶液または水分酸液
と記してあるものは、水で湿潤させたセルロースにその
溶質または分散質を固体状態で供給しても同様な効果が
達成される。これら溶質または分散質成分のセルロース
に供給すべき水に対する比率は限定的ではなく、溶質ま
たは分散質成分の水に対する飽和溶解度域を上限とす
る。それら成分は一般的に処理すべきセルロース分子鎖
が完全にすべて分子内水素結合(1ケ/グルコース残
基)していると仮定した場合の1当量〜3倍当量あれば
充分である。それを超える添加は経済的に不利である。
但し、水溶液が酸性を呈するものでは、PHが余り高いと
セルロースが必要以上に解重合するので使用酸種によっ
て適宜調整する。一般に、酸性を呈する水溶液では、1
0重量%以下の濃度で供給することが望ましい。当然、
本発明のドープは上記の如く処理されたセルロースをア
ルカリに溶解した溶液であるため、この意味からも、セ
ルロース処理段階で、酸性を示す水溶液を過度に用いる
のは、経済的にも不利である。また、酸化性物質、例え
ば、硝酸,過塩素酸等は極力少量を低濃度で使用するの
が完全上必要である。水素結合解裂剤中,アルカリ水溶
液としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸
化リチウム,水酸化ベリリウム,酸化カルシウム,ケイ
酸ソーダ,炭酸ソーダ,テトラアルキルアンモニウム等
の水溶液が好ましい。無機酸水溶液としては、硫酸,塩
酸,硝酸,リン酸,オルトリン酸,メタリン酸,ピロリ
ン酸,過塩素酸,次亜塩素酸,亜塩素酸,亜硝酸,亜硫
酸,ほう酸等の水溶液が好ましい。塩水溶液としては、
塩化リチウム、塩化亜鉛,チオシアン酸カルシウム,チ
オシアン酸アンモニウム,チオシアン酸ナトリウム等の
水溶液が好ましい。また、両性酸化物および水酸化物と
しては、アルミニウムや亜鉛等の酸化物及び水酸化物が
好適に用いられる。
ースに対し10〜100重量%が適当である。蒸散し得
る成分が10重量%未満の場合は、セルロースと水素結
合解裂剤との混合物を高温高圧状態より大気下に放出す
るに際し、水素結合解裂剤を構成する液体の急速な蒸発
によるセルロース内部の破壊(分子内水素結合の破壊)
が不充分で、低温下でのアルカリ可溶性が不足する。10
00重量%を超えると、エネルギー的にコスト高となる。
水素結合解裂剤としては、水,アルカリ水溶液,無機酸
水溶液,塩水溶液,尿素類水溶液,両性酸化物や両性水
酸化物の水溶液または水分散液,グリコール類,アミド
類,スルホキシド類,ハロゲン化酢酸類,ポリフェノー
ル等が用いられる。勿論これらの混合物を用いることも
できる。上記水素結合解裂剤中、水溶液または水分酸液
と記してあるものは、水で湿潤させたセルロースにその
溶質または分散質を固体状態で供給しても同様な効果が
達成される。これら溶質または分散質成分のセルロース
に供給すべき水に対する比率は限定的ではなく、溶質ま
たは分散質成分の水に対する飽和溶解度域を上限とす
る。それら成分は一般的に処理すべきセルロース分子鎖
が完全にすべて分子内水素結合(1ケ/グルコース残
基)していると仮定した場合の1当量〜3倍当量あれば
充分である。それを超える添加は経済的に不利である。
但し、水溶液が酸性を呈するものでは、PHが余り高いと
セルロースが必要以上に解重合するので使用酸種によっ
て適宜調整する。一般に、酸性を呈する水溶液では、1
0重量%以下の濃度で供給することが望ましい。当然、
本発明のドープは上記の如く処理されたセルロースをア
ルカリに溶解した溶液であるため、この意味からも、セ
ルロース処理段階で、酸性を示す水溶液を過度に用いる
のは、経済的にも不利である。また、酸化性物質、例え
ば、硝酸,過塩素酸等は極力少量を低濃度で使用するの
が完全上必要である。水素結合解裂剤中,アルカリ水溶
液としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸
化リチウム,水酸化ベリリウム,酸化カルシウム,ケイ
酸ソーダ,炭酸ソーダ,テトラアルキルアンモニウム等
の水溶液が好ましい。無機酸水溶液としては、硫酸,塩
酸,硝酸,リン酸,オルトリン酸,メタリン酸,ピロリ
ン酸,過塩素酸,次亜塩素酸,亜塩素酸,亜硝酸,亜硫
酸,ほう酸等の水溶液が好ましい。塩水溶液としては、
塩化リチウム、塩化亜鉛,チオシアン酸カルシウム,チ
オシアン酸アンモニウム,チオシアン酸ナトリウム等の
水溶液が好ましい。また、両性酸化物および水酸化物と
しては、アルミニウムや亜鉛等の酸化物及び水酸化物が
好適に用いられる。
上記のようなセルロースの処理はバッチ式でも連続式で
も行なえる。バッチ式の場合、セルロースと水素結合解
裂剤との混合物を耐圧容器中に設置し、100〜350
℃外部加熱し、混合物中の気化成分の蒸気圧雰囲気に数
秒〜数分静置後、耐圧容器内の圧を急速に落すため、あ
らかじめ上記容器に取りつけたバルブ、ノズルを開放
し、セルロースを放出させることによって得られる。得
られるセルロースは、必要に応じて水洗後、乾燥し、溶
解工程に供される。連続式の場合は、上記混合物を外部
加熱された1軸または2軸スクリュー式エクストルダー
に供給し、混合物中の気化成分の蒸気圧とエクストルー
ダーピッチの配置により加圧された混合物をエクストル
ーダ先端より放出させることによって得られる。この場
合、外部加熱はゾーン毎に設定することができる。ま
た、セルロースと水素結合解裂剤との混合はエキストル
ーダ内で行うこともできる。即ち、セルロースとフィー
ドスクリューで送りながら、エクストルーダー側部に設
けた開孔部から圧送注入すればよい。スクリューは、フ
ィードスクリュー、リバーススクリュー、シールスクリ
ューを任意に組合せることができる。この様にして得ら
れたセルロースの重合度は処理前にあらかじめ、酸やア
ルカリで調整することもできるし、上記操作中に調整す
ることもできる。いずれにしても100以上に調整され
る。このように処理されたセルロース/水素結合解裂剤
混合物は最終的に不要成分を水洗等により除去し、乾燥
する。但し、セルロースの溶解性を阻害しない水素結合
解裂剤中の成分は最終的に混在しても差支えない。その
ような成分は、基本的には酸性を呈さない物質である。
も行なえる。バッチ式の場合、セルロースと水素結合解
裂剤との混合物を耐圧容器中に設置し、100〜350
℃外部加熱し、混合物中の気化成分の蒸気圧雰囲気に数
秒〜数分静置後、耐圧容器内の圧を急速に落すため、あ
らかじめ上記容器に取りつけたバルブ、ノズルを開放
し、セルロースを放出させることによって得られる。得
られるセルロースは、必要に応じて水洗後、乾燥し、溶
解工程に供される。連続式の場合は、上記混合物を外部
加熱された1軸または2軸スクリュー式エクストルダー
に供給し、混合物中の気化成分の蒸気圧とエクストルー
ダーピッチの配置により加圧された混合物をエクストル
ーダ先端より放出させることによって得られる。この場
合、外部加熱はゾーン毎に設定することができる。ま
た、セルロースと水素結合解裂剤との混合はエキストル
ーダ内で行うこともできる。即ち、セルロースとフィー
ドスクリューで送りながら、エクストルーダー側部に設
けた開孔部から圧送注入すればよい。スクリューは、フ
ィードスクリュー、リバーススクリュー、シールスクリ
ューを任意に組合せることができる。この様にして得ら
れたセルロースの重合度は処理前にあらかじめ、酸やア
ルカリで調整することもできるし、上記操作中に調整す
ることもできる。いずれにしても100以上に調整され
る。このように処理されたセルロース/水素結合解裂剤
混合物は最終的に不要成分を水洗等により除去し、乾燥
する。但し、セルロースの溶解性を阻害しない水素結合
解裂剤中の成分は最終的に混在しても差支えない。その
ような成分は、基本的には酸性を呈さない物質である。
発明の効果 本発明のドープは比較的高重合度の特定のセルロースを
低温下にアルカリ水溶液に溶解することによって調製さ
れる。このドープにおいては、前述したように分子内水
素結合のない状態で、しかもアルカリの特異的なグルコ
ース環への配位もない状態でセルロースが溶解している
ため、従来、工業的に用いられるセルロース溶液(銅ア
ンモニア溶液、ビスコース溶液)とは全く異なった溶解
状態を呈している。従って、本ドープから得られるセル
ロース成形品も従来のものとは異った特徴を有してい
る。本ドープからの成形には、通常の押し出し装置を用
い紡孔またはスリットから溶液を押し出し凝固、延伸等
の操作ののち中和すれば、繊維状にも膜状にも成形でき
る。他素材の表面や内部に塗布したり、他素材をドープ
中に浸漬することによりコーティングを形成することも
できる。
低温下にアルカリ水溶液に溶解することによって調製さ
れる。このドープにおいては、前述したように分子内水
素結合のない状態で、しかもアルカリの特異的なグルコ
ース環への配位もない状態でセルロースが溶解している
ため、従来、工業的に用いられるセルロース溶液(銅ア
ンモニア溶液、ビスコース溶液)とは全く異なった溶解
状態を呈している。従って、本ドープから得られるセル
ロース成形品も従来のものとは異った特徴を有してい
る。本ドープからの成形には、通常の押し出し装置を用
い紡孔またはスリットから溶液を押し出し凝固、延伸等
の操作ののち中和すれば、繊維状にも膜状にも成形でき
る。他素材の表面や内部に塗布したり、他素材をドープ
中に浸漬することによりコーティングを形成することも
できる。
本発明のドープ中でセルロースは完全に分子分散してい
るため、中和により、セルロース固体に戻す際には却っ
てより完全な高次構造をとり易い。本ドープから得られ
るセルロース成形品の最大の特徴は、従来存在する再生
セルロース繊維や膜に比し、分子内水素結合性が高いこ
とである。分子内水素結合性は赤外吸収やNMRにより評
価できる。このように、得られる成形品の分子内結合性
が高いため、機械的特性や耐薬品性に優れている。
るため、中和により、セルロース固体に戻す際には却っ
てより完全な高次構造をとり易い。本ドープから得られ
るセルロース成形品の最大の特徴は、従来存在する再生
セルロース繊維や膜に比し、分子内水素結合性が高いこ
とである。分子内水素結合性は赤外吸収やNMRにより評
価できる。このように、得られる成形品の分子内結合性
が高いため、機械的特性や耐薬品性に優れている。
実施例 以下、本発明を実施例について説明する。
実施例1 本実施例は、天然セルロース(セルロースI結晶型)か
ら二軸エクストルーダー型の高温高圧装置を用いること
により直接アルカリ可溶性を呈するセルロースを製造す
る例を開示する。
ら二軸エクストルーダー型の高温高圧装置を用いること
により直接アルカリ可溶性を呈するセルロースを製造す
る例を開示する。
天然セルロースにはユーカリを原料とするサイカパルプ
(平均重合度910)および解重合を目的としたこれら
の酸加水分解物解重合パルプ(平均重合度580)を用
いた。一方ツインスクリューエクストルーダー型高温高
圧装置には末広鉄工所製α−100型を用いた。該装置
の主な仕様は処理能力50〜100Kg/H,スクリュー
回転数65〜260rpm、温度制御範囲水温〜300
℃、耐圧200Kg/cm2以下、スクリュー径80mmφ、
スクリュー長640mm(スクリューユニット5個で一本
のスクリューを構成)であり、本実施例でフィードスク
リュー(I)(ピッチ50mm)、シールスクリュー、フィ
ードスクリュー(II)(ピッチ35mm)、フィードスクリ
ュー(III)(ピッチ30mm)、リバーススクリュー(ピ
ッチ20mm)の組合せから成るスクリュー系を採用し
た。被処理物の吐出口には、口径が10mmφのダイを用
いた。温度はフィードスクリュー(I)、シールスクリュ
ー部を除き150℃に設定し、ダイ部、リバーススクリ
ュー部、フィードスクリュー(III)の3箇所で計測し
た。圧力は、ダイ部とリバーススクリュー部の2箇所で
計測した。但し、この圧力は剪断圧であって、水素結合
解裂剤中の蒸散成分の蒸気圧ではない。また、スクリュ
ー回転数は120rpmに設定した。実際の処理にあたっ
てセルロースは20倍(重量)の水に浸漬攪拌してスラ
リー状にしたのち、脱水してセルロース1重量に対し、
水素結合解裂剤として水を3重量部との混合物を使用
し、このものを1時間当り20Kgの速度で前期処理装置
に供給した。
(平均重合度910)および解重合を目的としたこれら
の酸加水分解物解重合パルプ(平均重合度580)を用
いた。一方ツインスクリューエクストルーダー型高温高
圧装置には末広鉄工所製α−100型を用いた。該装置
の主な仕様は処理能力50〜100Kg/H,スクリュー
回転数65〜260rpm、温度制御範囲水温〜300
℃、耐圧200Kg/cm2以下、スクリュー径80mmφ、
スクリュー長640mm(スクリューユニット5個で一本
のスクリューを構成)であり、本実施例でフィードスク
リュー(I)(ピッチ50mm)、シールスクリュー、フィ
ードスクリュー(II)(ピッチ35mm)、フィードスクリ
ュー(III)(ピッチ30mm)、リバーススクリュー(ピ
ッチ20mm)の組合せから成るスクリュー系を採用し
た。被処理物の吐出口には、口径が10mmφのダイを用
いた。温度はフィードスクリュー(I)、シールスクリュ
ー部を除き150℃に設定し、ダイ部、リバーススクリ
ュー部、フィードスクリュー(III)の3箇所で計測し
た。圧力は、ダイ部とリバーススクリュー部の2箇所で
計測した。但し、この圧力は剪断圧であって、水素結合
解裂剤中の蒸散成分の蒸気圧ではない。また、スクリュ
ー回転数は120rpmに設定した。実際の処理にあたっ
てセルロースは20倍(重量)の水に浸漬攪拌してスラ
リー状にしたのち、脱水してセルロース1重量に対し、
水素結合解裂剤として水を3重量部との混合物を使用
し、このものを1時間当り20Kgの速度で前期処理装置
に供給した。
サイカパルプ並びにその酸加水分解物の処理時の圧力は
20〜50Kg/cm2であった。処理後のセルロースは供
に白色の粉末で数十%の水分を含んでいた。該粉末状セ
ルロースを40℃で24時間真空乾燥し、アルカリ可溶
性の評価に供した。カドキセン中の粘度を求めたとこ
ろ、重合度はそれぞれ760,420となっていた。ア
ルカリには9.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、溶
解機にはヘンシェル型溶解機(容量5)、溶解温度5
±5℃、溶解濃度6.5重量%、溶解時間2時間等の条
件で溶解させた結果、上記のように処理したサイカパル
プ、酸加水分解物供に粘稠、透明で光沢のある溶液が得
られた。この溶液の1部をとって、重水をわずかに添加
し、それをロック・シグナルとして、TSPを基準として
13C-NMRを測定した。その結果を第2図に示す。明らか
に、C4カーボンは79.95ppmに1本のシャープなピ
ークとして観測された。光学顕微鏡(直交ニコル下)で
その溶解状態を観察した結果、サイカパルプの場合、僅
かに未溶解繊維が認められたが、フィルタプレス等の濾
過によって充分除去可能であった。一方、処理した酸加
水分解物の場合には全く未溶解粒子が認められず、極め
て均一な溶液を形成していることが確められた。このも
のは室温にて3〜5日安定であった。
20〜50Kg/cm2であった。処理後のセルロースは供
に白色の粉末で数十%の水分を含んでいた。該粉末状セ
ルロースを40℃で24時間真空乾燥し、アルカリ可溶
性の評価に供した。カドキセン中の粘度を求めたとこ
ろ、重合度はそれぞれ760,420となっていた。ア
ルカリには9.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、溶
解機にはヘンシェル型溶解機(容量5)、溶解温度5
±5℃、溶解濃度6.5重量%、溶解時間2時間等の条
件で溶解させた結果、上記のように処理したサイカパル
プ、酸加水分解物供に粘稠、透明で光沢のある溶液が得
られた。この溶液の1部をとって、重水をわずかに添加
し、それをロック・シグナルとして、TSPを基準として
13C-NMRを測定した。その結果を第2図に示す。明らか
に、C4カーボンは79.95ppmに1本のシャープなピ
ークとして観測された。光学顕微鏡(直交ニコル下)で
その溶解状態を観察した結果、サイカパルプの場合、僅
かに未溶解繊維が認められたが、フィルタプレス等の濾
過によって充分除去可能であった。一方、処理した酸加
水分解物の場合には全く未溶解粒子が認められず、極め
て均一な溶液を形成していることが確められた。このも
のは室温にて3〜5日安定であった。
他方、処理していない上記のセルロースを同一条件で溶
解したところ、一見して濁った溶液状を呈し、粘度も低
く、光学顕微鏡(クロスニコル下)の全視野が殆んど未
溶解部による明視野を与え、この未溶解部をフィルタプ
レス等で除くことは不可能に近かった。この溶液状物を
固体NMRで測定した所、80ppmにシャープなピークはあ
るが、87.8ppm,85〜82ppmにもかなり大きなピ
ークが存在した。
解したところ、一見して濁った溶液状を呈し、粘度も低
く、光学顕微鏡(クロスニコル下)の全視野が殆んど未
溶解部による明視野を与え、この未溶解部をフィルタプ
レス等で除くことは不可能に近かった。この溶液状物を
固体NMRで測定した所、80ppmにシャープなピークはあ
るが、87.8ppm,85〜82ppmにもかなり大きなピ
ークが存在した。
上記実施例条件のうち、水素結合解裂剤としての水の重
量をセルロース1重量部当り、0.1重量部として、上
記操作条件で酸加水分解サイコアパルプを処理したとこ
ろ、わずかにフィブリル化した粉末状物として得られら
たが、重合度は580から320となり、前記溶解操作
によって溶解させたところ、未処理パルプに比べ溶解性
は向上していたが、光学的にかなりの未溶解物が存在す
るのが認められた。
量をセルロース1重量部当り、0.1重量部として、上
記操作条件で酸加水分解サイコアパルプを処理したとこ
ろ、わずかにフィブリル化した粉末状物として得られら
たが、重合度は580から320となり、前記溶解操作
によって溶解させたところ、未処理パルプに比べ溶解性
は向上していたが、光学的にかなりの未溶解物が存在す
るのが認められた。
実施例2 実施例1に記したツインスクリューエクストルーダを用
い、同一条件で、表1に記した水素結合解裂剤をセルロ
ースに対し、種々の割り合いで混合し、処理後、不要成
分を除いた場合と、除かない場合の2通りについて、セ
ルロース濃度6.5%とし、実施例1に記した条件で溶
解させた。結果を表1に記載する。表中、○は本発明の
ドープ、△は未溶解物が10%程度で、未処理に比べて
かなり改善されたドープ、×は未処理と大差ないドープ
であることをそれぞれ示す。本実施例における処理用原
料セルロースはアラスカパルプ(A(DP=75
0)),コットンリンター(B(DP=1100)),銅ア
ンモニア溶液より再生した再生繊維(C(DP=55
0))である。
い、同一条件で、表1に記した水素結合解裂剤をセルロ
ースに対し、種々の割り合いで混合し、処理後、不要成
分を除いた場合と、除かない場合の2通りについて、セ
ルロース濃度6.5%とし、実施例1に記した条件で溶
解させた。結果を表1に記載する。表中、○は本発明の
ドープ、△は未溶解物が10%程度で、未処理に比べて
かなり改善されたドープ、×は未処理と大差ないドープ
であることをそれぞれ示す。本実施例における処理用原
料セルロースはアラスカパルプ(A(DP=75
0)),コットンリンター(B(DP=1100)),銅ア
ンモニア溶液より再生した再生繊維(C(DP=55
0))である。
表1より明らかなように、種々の水素結合解裂剤を用い
て本発明のドープを製造することができる。また、表1
より判明する如く、処理されたセルロース中に残存する
物質は、処理されたセルロースをアルカリに溶解するに
際し、不利になることがあるので注意を要する。表中○
を付した本発明のドープの13C-NMRスペクトルでは、C4
カーボンはすべて80〜79ppmにシャープな1本のピ
ークとして観察された。
て本発明のドープを製造することができる。また、表1
より判明する如く、処理されたセルロース中に残存する
物質は、処理されたセルロースをアルカリに溶解するに
際し、不利になることがあるので注意を要する。表中○
を付した本発明のドープの13C-NMRスペクトルでは、C4
カーボンはすべて80〜79ppmにシャープな1本のピ
ークとして観察された。
実施例−3 本実施例は、セルロースと水よりなる混合物を高温高圧
下に短時間保持した後、急速に大気中に放出せしめてな
る、いわゆる爆砕(イクスプロージョン)法によりセル
ロースを処理する方法ならびに、そのセルロースとアル
カリ水溶液からなるドープの調製方法を例示する。
下に短時間保持した後、急速に大気中に放出せしめてな
る、いわゆる爆砕(イクスプロージョン)法によりセル
ロースを処理する方法ならびに、そのセルロースとアル
カリ水溶液からなるドープの調製方法を例示する。
天然セルロースには、木材パルスを5Nの硫酸で60
℃,90分処理したものを使用した。該セルロースは、
カドキセン中の粘度より約600の重合度を有してい
た。このセルロース500gを5の水に浸漬撹拌しス
ラリー状の混合物にした後、この混合物を18のオー
トクレーブに投入した。270℃に加熱したシリコーン
オイルをオートクレープジャケットに流し、オートクレ
ーブ内の温度が250℃に達してから5分後、減圧バル
ブを急速に開き減圧させた。9重量%の苛性ソーダ水溶
液4650gを20℃に制御したジャケット付ヘンシェ
ル溶解機に注ぎ、撹拌しながら得られたセルロース35
0gを徐々に加えた。添加30分後、ジャケット温度を
一10℃に冷却し、3時間撹拌を続けた。得られた溶液
を光学顕微鏡(直交ニコル下)で観察した結果、未溶解
粒子はほとんど認められなかった。
℃,90分処理したものを使用した。該セルロースは、
カドキセン中の粘度より約600の重合度を有してい
た。このセルロース500gを5の水に浸漬撹拌しス
ラリー状の混合物にした後、この混合物を18のオー
トクレーブに投入した。270℃に加熱したシリコーン
オイルをオートクレープジャケットに流し、オートクレ
ーブ内の温度が250℃に達してから5分後、減圧バル
ブを急速に開き減圧させた。9重量%の苛性ソーダ水溶
液4650gを20℃に制御したジャケット付ヘンシェ
ル溶解機に注ぎ、撹拌しながら得られたセルロース35
0gを徐々に加えた。添加30分後、ジャケット温度を
一10℃に冷却し、3時間撹拌を続けた。得られた溶液
を光学顕微鏡(直交ニコル下)で観察した結果、未溶解
粒子はほとんど認められなかった。
さらに同様にして、あらかじめ230℃に加熱したオー
トクレーブ中に、あらかじめ12.5重量%の水分を含
ませた重合度約400の酸化水分解(本実施例中記載の方
法と同様に180分処理したもの)パルプを入れ、23
0気圧の蒸気を蒸気圧が一定になるまで吹きこみ、密封
して8分間保った。これを前と同様に、減圧バルブを急
速に開き減圧させた。得られたセルロースは、前と同様
の方法で同様に良好に溶解した。
トクレーブ中に、あらかじめ12.5重量%の水分を含
ませた重合度約400の酸化水分解(本実施例中記載の方
法と同様に180分処理したもの)パルプを入れ、23
0気圧の蒸気を蒸気圧が一定になるまで吹きこみ、密封
して8分間保った。これを前と同様に、減圧バルブを急
速に開き減圧させた。得られたセルロースは、前と同様
の方法で同様に良好に溶解した。
また、前記溶液を9重量%の重水素化苛性ソーダ溶液で
セルロース濃度を5重量%まで希釈し13C-NMRスペクト
ルを測定したところ第2図と同様のスペクトルが得られ
た。
セルロース濃度を5重量%まで希釈し13C-NMRスペクト
ルを測定したところ第2図と同様のスペクトルが得られ
た。
一方、前記溶液をガラス板に500μmのナイフコータ
ーを用いて流延後、10重量%の硫酸ソーダ水溶液を凝
固し、2重量%の硫酸で洗浄,水洗,乾燥して得られた
フィルムは、透明感があり強度的には実用に耐えるもの
であった。
ーを用いて流延後、10重量%の硫酸ソーダ水溶液を凝
固し、2重量%の硫酸で洗浄,水洗,乾燥して得られた
フィルムは、透明感があり強度的には実用に耐えるもの
であった。
実施例4 本実施例は、実施例1で処理された酸加水分解サイカパ
ルプを用いて、種々の濃度のアルカリに溶解したドープ
を開示する。溶解条件,ドープの性状,安定性を表2に
示す。溶解はヘンシェル型ミキサーを使用した。
ルプを用いて、種々の濃度のアルカリに溶解したドープ
を開示する。溶解条件,ドープの性状,安定性を表2に
示す。溶解はヘンシェル型ミキサーを使用した。
第1A図および第1B図は、それぞれ天然セルロースお
よび再生セルロースの固体CP/MAS 13C-NMRスペクトル
を表わし、矢印のピークは強固な分子内水素結合に基づ
くC4位のカーボンピークを示す。 第2図は、本発明のドープ溶液の13C-NMRスペクトルを
表わし、C4位はするどい1本のピークとして観察され
る。
よび再生セルロースの固体CP/MAS 13C-NMRスペクトル
を表わし、矢印のピークは強固な分子内水素結合に基づ
くC4位のカーボンピークを示す。 第2図は、本発明のドープ溶液の13C-NMRスペクトルを
表わし、C4位はするどい1本のピークとして観察され
る。
Claims (2)
- 【請求項1】重合度100以上のセルロースを実質的に
3重量%以上含有するセルロースのアルカリ水溶液ドー
プであって、その13C−NMRスペクトルにおいて、C
4位のカーボンピークが強固な分子内水素結合に基づく
C4位カーボンピークに比し、7ppm以上高い磁場に見
い出されることを特徴とする成形に適するセルロースド
ープ。 - 【請求項2】任意の結晶型を有するセルロース100重
量部と水素結合解裂性溶液10〜1000部よりなる混
合物を100〜350℃、10〜250気圧下に保持
後、急速に大気中に放出し、得られるセルロースをあら
かじめ50℃以下に調整したアルカリ水溶液と混合して
10℃以下で撹拌、溶解させることを特徴とするセルロ
ースドープの製造法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US06/675,762 US4634470A (en) | 1983-12-26 | 1984-11-28 | Cellulose dope, process for preparation and method for application thereof |
US675762 | 1984-11-28 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS61130353A JPS61130353A (ja) | 1986-06-18 |
JPH0621183B2 true JPH0621183B2 (ja) | 1994-03-23 |
Family
ID=24711874
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2754485A Expired - Lifetime JPH0621183B2 (ja) | 1984-11-28 | 1985-02-16 | セルロ−スド−プおよびその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0621183B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4994285A (en) * | 1986-10-22 | 1991-02-19 | Asahi Kasei Kogyo Kabushiki Kaisha | Edible body and process for preparation thereof |
CN112552539B (zh) * | 2020-12-10 | 2023-05-30 | 四川三联新材料有限公司 | 低吸附疏水性纤维素膜及其制备方法和应用 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6031331B2 (ja) * | 1979-07-25 | 1985-07-22 | アイテイ−テイ−・インダストリ−ズ・インコ−ポレ−テツド | セルロ−スの溶解方法 |
-
1985
- 1985-02-16 JP JP2754485A patent/JPH0621183B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS61130353A (ja) | 1986-06-18 |
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