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JPH06195770A - 記録再生装置 - Google Patents

記録再生装置

Info

Publication number
JPH06195770A
JPH06195770A JP34774092A JP34774092A JPH06195770A JP H06195770 A JPH06195770 A JP H06195770A JP 34774092 A JP34774092 A JP 34774092A JP 34774092 A JP34774092 A JP 34774092A JP H06195770 A JPH06195770 A JP H06195770A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording
microtip
recording medium
cantilever
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP34774092A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuji Kasanuki
有二 笠貫
Akihiko Yamano
明彦 山野
Toshihiko Miyazaki
俊彦 宮崎
Tsutomu Ikeda
勉 池田
Harunori Kawada
春紀 河田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP34774092A priority Critical patent/JPH06195770A/ja
Publication of JPH06195770A publication Critical patent/JPH06195770A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【目的】走査型プローブ顕微鏡の原理を使用した記録再
生装置において、記録媒体やプローブ表面の酸化や吸着
の影響を防ぎ、かつプローブを複数設けた場合であって
も熱ドリフトの影響を受けないようにする。 【構成】プローブを構成するマイクロティップ121と
記録媒体100とが、フッ素系不活性液体103に浸漬
されるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、記録媒体に対して情報
の記録および/または再生を行なう記録再生装置に関
し、特に、記録媒体に極小距離まで接近したプローブを
有し、走査型プローブ顕微鏡の原理によって記録および
/または再生が行なわれる記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、記録密度の極めて大きな記録再生
装置として、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneli
ng Microscope、以下、STMと略す)や原子間力顕微
鏡(Atomic Force Microscope、以下、AFMと略す)
の原理を応用したものが期待されている。これらはトン
ネル電流や原子間力などを利用して、記録媒体に対し情
報の記録および/または再生を行なうものである。な
お、STMやAFMは、走査型プローブ顕微鏡と呼ばれ
る一群に含まれる。
【0003】STMは、導体の表面原子の電子構造を直
接観察でき、単結晶あるいは非晶質などを問わず実空間
における高い分解能を有する。さらにSTMは、試料や
記録媒体に電流による損傷を与えることなく低電力で観
察でき、さらに大気中において種々の材料に対して適用
できるという利点を有し、広範囲な応用が期待されてい
る。
【0004】STMは、金属のプローブ電極と導電性物
質との間に電圧を加えて1nm程度の距離まで近付ける
とトンネル電流が流れ、このトンネル電流の大きさがプ
ローブ電極と導電性物質の距離に大きく依存することを
利用している。トンネル電流を一定に保つようにプロー
ブ電極を走査することにより、実空間の表面構造を描く
ことができ、面内の分解能は0.1nm程度である。し
たがって、STMの原理を応用すれば十分に原子オーダ
ー(0.数nm)での高密度記録再生が可能となる。S
TMの原理を用いた情報の記録再生方法としては、粒子
線(電子線、イオン線)、X線などの高エネルギー電磁
波、あるいは可視・紫外光などのエネルギー線を用いて
適当な記録層の表面状態を変化させて記録を行ない、こ
れをSTMで再生する方法や、電圧−電流のスイッチン
グ特性に関しメモリ効果を有する材料、例えばπ電子系
有機化合物やカルコゲン化合物などの薄層を記録層をし
て用い、記録および再生をSTMを用いて行なう方法
(例えば特開昭63−161552、同161553号
公報)が提案されている。
【0005】一方、STMの技術を応用したAFMも、
STMと同様に表面の凹凸情報を得ることができ、さら
に、絶縁性の試料に対しても原子オーダーの分解能での
測定が可能である。したがって、情報の記録による記録
層の表面状態の変化に形状の変化が伴う場合には、AF
Mを用いて記録された情報の再生を行なうこともでき
る。AFMの場合、"プローブ電極"は必ずしも導電性で
ある必要はないので、以下、STMにおけるプローブ電
極も含め、プローブと呼ぶことにする。
【0006】これら、STMやAFMで用いられるプロ
ーブとしては、従来は先端が極めて尖った針状のものが
使用されていたが、最近ではカンチレバーを利用したも
のが主流になりつつある。このカンチレバーによるプロ
ーブは、シリコンに対するエッチング技術を適用して作
成されるものである。シリコン単結晶の性質を高度に利
用した異方性エッチングの手法を用いることにより、微
小かつ高精度なカンチレバーを再現性よく形成すること
ができる(K. E. Pertersen, Proc. IEEE, 70,420(198
2))。この手法によれば、極めて容易に、複数個のカン
チレバーを一体化して(モノリシックタイプとして)形
成することもできる。このような複数個のカンチレバー
の自由端にそれぞれマイクロティップを設けてプローブ
とし、記録再生装置に用いれば、カンチレバーの数だけ
同時に情報の記録・再生が行なえ、実質的に情報の転送
速度や記憶容量が増大するという利点が生じる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したSTMやAF
Mの原理を応用した記録再生装置では、以下のような問
題点がある。すなわち、STMやAFMは表面構造の情
報をトンネル電流や原子間力により検出するものであ
り、そのため、大気中における、記録媒体表面やプロー
ブ表面の酸化や吸着現象などに極めて敏感である。この
ため、記録・再生において、情報の信頼性が損なわれる
ことがある。
【0008】また、複数のカンチレバーを用いたいわゆ
るマルチプローブでは、上記の問題点の他に、熱ドリフ
トによる問題が発生する。図7は複数のカンチレバーを
使用する従来の記録再生装置の構成を示す平面図であ
る。
【0009】複数のカンチレバー702は相互に平行し
て配置されており、これに対応して、記録媒体703上
に情報ビット列701が形成されている。このとき、各
々のカンチレバー702の自由端に設けたマイクロティ
ップでこの情報ビット列701をトレースしようとする
とき、記録媒体703とカンチレバー702側との間に
温度差が生じると、熱膨張の影響によって、特定のカン
チレバー702のマイクロティップが対応する情報ビッ
ト列701を正確にトレースしていると、他のカンチレ
バー702が対応する情報ビット列701からずれてし
まい、他のカンチレバー702の自由端にあるマイクロ
ティップが情報ビット列701を正確にトレースできな
くなる。このため、カンチレバーを複数設けたとして
も、全てのカンチレバーによって同時に並列的に情報を
処理することが極めて困難となる。これが、熱ドリフト
による問題である。
【0010】このことは、カンチレバーをマルチ化した
記録再生装置において、サーボ面によるサーボを行なう
ことを困難にさせている。すなわち、記録媒体の一部に
トラッキング用のサーボ情報を書き込みこのサーボ情報
を利用して記録媒体にアクセスしたとき、サーボ情報読
み出し用のカンチレバーが正確な位置にあったとして
も、情報ビット列をトレースするための他のカンチレバ
ーの位置がこの情報ビット列からずれてしまうからであ
る。
【0011】本発明の目的は、走査型プローブ顕微鏡の
原理を使用した記録再生装置において、記録媒体やプロ
ーブ表面の酸化や吸着の影響を防ぎ、かつプローブを複
数設ける構成とした場合であっても熱ドリフトの影響を
受けることのないものを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の記録再生装置
は、マイクロティップを有するプローブを備え、前記マ
イクロティップに近接して配置された記録媒体に対し情
報の記録および/または再生を行なう記録再生装置にお
いて、前記記録媒体および前記マイクロティップがフッ
素系不活性液体中に浸漬されている。
【0013】
【作用】マイクロティップと記録媒体とがフッ素系不活
性液体に浸漬されているので、マイクロティップや記録
媒体表面の酸化や吸着を防止でき、長期間わたって安定
した記録再生特性を維持できるようになる。また、フッ
素系不活性液体は熱伝達効率が高いので、記録媒体とマ
イクロティップ側との間の温度差がなくなって温度分布
が均一になり、熱ドリフトの影響をなくすことができ
る。したがって、サーボ面サーボの手法によって多数の
情報ビット列に同時にアクセスすることが可能となる。
【0014】本発明の記録再生装置では、マイクロティ
ップと記録媒体間のトンネル電流によって、あるいは原
子間力などマイクロティップと記録媒体との間に作用す
る力によって、少なくとも情報の再生が行なわれるよう
にするとよい。このため、記録媒体とマイクロティッ
プとの間にバイアス電圧を印加する手段と、前記記録媒
体と前記マイクロティップとの間に流れるトンネル電流
を検出する手段とを備えるようにしたり、記録媒体と
マイクロティップとの間に作用する力を検出する手段を
備えるようにしたりするとよい。
【0015】マイクロティップを備えたプローブとして
は、PZTなどからなる円筒型圧電アクチュエータの先
端部にマイクロティップを取り付けた構成のものでもよ
いが、量産性や並列動作の可能性などから、カンチレバ
ーの自由端にマイクロティップを設けた構成のものとす
ることが望ましい。この場合、記録媒体の任意の記録位
置にアクセスできるように、マイクロティップと記録媒
体との相対的位置関係を変化させる手段を設けるとよ
い。
【0016】多数のカンチレバーをモノリシックタイプ
に形成し、各カンチレバーの自由端にそれぞれマイクロ
ティップが設けられるような構成の記録再生装置とする
ことによって、本発明の効果を特に発揮することができ
る。このような記録再生装置では、トラッキング用のサ
ーボ情報が記録されているサーボ面が記録媒体の少なく
とも一部に設けられ、少なくとも1個のカンチレバーが
サーボ面に対応し、当該カンチレバーの自由端にあるマ
イクロティップによってサーボ情報が読み出されてサー
ボ面サーボが行なわれるようにすることが望ましい。
【0017】以下、本発明の構成について詳細に説明す
る。
【0018】〈自由端にマイクロティップを有するカン
チレバーの製造方法〉自由端にマイクロティップを有す
るカンチレバーについて、シリコンの異方性エッチング
を利用した製造方法を説明する。
【0019】図4(a)は、シリコン基板502上に一端
が固定されたカンチレバー510を示す断面図である。
シリコン基板502の両表面には、後述する貫通孔51
1の側壁や底壁となる部分を除き、マスク層501が形
成されている。シリコン基板502には貫通孔511が
設けられ、シリコン基板502の表面のうち貫通孔51
1の周縁にあたる部分に、カンチレバー510の一端
(固定端)が固定され、カンチレバー510の自由端は
貫通孔511の上に迫り出している。このカンチレバー
510の自由端において、自由端のシリコン基板502
の反対側にあたる面に、トンネル電流を検出するための
マイクロティップ505が設けられている。このマイク
ロティップ505は、カンチレバー510の表面に対し
ほぼ垂直方向に延びて先端が尖っている。
【0020】カンチレバー510は、3層の電極層50
3の各層間に圧電体層504をそれぞれ設けた合計5層
からなるバイモルフ構成となっている。各電極層503
に適宜の電圧を印加することにより、カンチレバー51
0の自由端側がシリコン基板502の表面に垂直な方向
(図示上下方向)に変位し、これによって、マイクロテ
ィップ505の先端と記録媒体の表面との距離が制御さ
れる。
【0021】上記のような構成のカンチレバーを以後、
圧電バイモルフプローブユニットと呼ぶことにする。図
4(a)においては1本のカンチレバー510しか描かれ
ていないが、シリコン基板502の1つの貫通孔511
に対して複数のカンチレバー510を配置することが可
能である。1つの貫通孔511に対して複数のカンチレ
バー510を設ける場合、これら複数本のカンチレバー
510は平行に、すなわち図面紙背方向に順次配列する
ように配置するのが一般的である。
【0022】まず、図4(b)に示されるように、シリコ
ン(100)基板502の両面にマスク層501を成膜
する。そして、シリコン基板502の裏面側(図示下
側)のマスク層501をパターニングしてエッチング用
の開口部を形成したのち、結晶異方性エッチングによ
り、シリコン基板502をエッチングする。その結果、
図4(c)に示されるように、シリコン基板502の裏面
側から表面側に延びる台形断面の凹部512が形成され
る。凹部512の底部に相当する部分では、表面側のマ
スク層501の他に、シリコン基板502が薄い厚さで
残され、凹部512の底面とシリコン基板502の表面
との距離はごく短いものとなっている。続いて、シリコ
ン基板502の表面側に、電極層503と圧電体層50
4とを交互に積層して、カンチレバー510(圧電バイ
モルフ)を形成する(図4(d))。
【0023】次に、カンチレバー510の自由端となる
べき部位の表面にマイクロティップ505を形成する
(図4(e))。マイクロティップ505の形成方法とし
ては、電子線放射用の冷陰極(電界放射用電極)に関す
る製造方法、特にSRI研究所のスピントの報告(J. A
ppl. Phys. 39, 3504(1968))による方法がある。すな
わち基板(カンチレバー510)の前方に、小さな開口
部を有するマスク板を配置し、このマスク板に金属を斜
方蒸着する。すると、開口部を介してカンチレバー表面
にも蒸着膜が形成されるが、開口部自体の面積が蒸着の
進行とともに小さくなるので、マスクの開口部の下には
円錐状あるいは角錐状の形状の突起が形成されることに
なる。この突起をマイクロティップ505とする。
【0024】マイクロティップ505の形成後、シリコ
ン基板502の凹部512の異方性エッチングを行な
い、凹部512側から表面側のマスク層501が完全に
除去されるようにして、図4(a)に示す圧電バイモルフ
プローブユニットを完成させる。なお、シリコン基板5
02の裏面側から最初にエッチングを行なう際(図4
(c))に表面側のマスク層501のみならずシリコン基
板502を薄く残しておくのは、カンチレバー510を
構成する電極層503と圧電体層504との積層を行な
うとき、マスク層501だけでは強度が不足し、歩留り
が低下するからである。
【0025】次に、マイクロティップが金属膜を被覆さ
れたマスク層からなるカンチレバー(以下、メタルコー
トカンチレバーという)について説明する。このメタル
コートカンチレバーは、トンネル電流の検出に用いられ
るほか、AFMの原理による原子間力の測定にも用いら
れるものである。
【0026】このメタルコートカンチレバー550は、
図5(a)に示すように、シリコン基板552上に一端が
固定され、他端(自由端)側が、シリコン基板552に
設けられた貫通孔561の上に迫り出している。メタル
コートカンチレバー550は、マスク層551aとこの
マスク層551aの上に設けられた金属膜553とによ
って構成され、自由端側がΛ字状に屈曲し、このΛ字状
の部分がマイクロティップ555を形成している。この
マイクロティップ555は、カンチレバー550の表面
に対しほぼ垂直方向に延びて先端が尖っている。シリコ
ン基板552の表面(図示上側の面)のうち貫通孔56
1を除く部分にも、マスク層551aが設けられてい
る。シリコン基板552の裏面(図示下側の面)には、
貫通孔556に対応する部分を除いてマスク層551が
形成されている。
【0027】次に、このメタルコートカンチレバー55
0の製造方法について説明する。
【0028】まず、図5(b)に示すように、シリコン基
板552の両面にマスク層551を形成する。そして、
表面側に設けたマスク層551について、マイクロティ
ップ555の先端となるべき部分以外を除去し、シリコ
ン基板552の結晶異方性エッチングを行なう。このと
き、マイクロティップ555の先端となるべき位置で
は、マスク層551を円形もしくは正方形状にパターニ
ングしておく。その結果、シリコン基板552は、マイ
クロティップ555となるべき部分がΛ字状に突出する
ようになる(図5(c))。続いて、シリコン基板552
の表面の全面に、マスク層551aを形成する(図5
(d))。このマスク層551aはマイクロティップ55
5となるべき部分を除いて平面であり、マイクロティッ
プ555となるべき位置でΛ字状に突出している。
【0029】次に、シリコン基板552の裏面側のマス
ク層551をパターンニングして開口部を形成し(図5
(e))、裏面側からシリコン基板552に対して結晶異
方性エッチングを行ない、断面が台形状である貫通孔5
56を形成する(図5(f))。このとき、貫通孔556
の底部に露出しているマスク層551aのうち、メタル
コートカンチレバー550を構成することとなる部分以
外の部分も除去されるようにする。最後に、シリコン基
板552の表面側のマスク層551aの表面に、真空蒸
着やスパッタリングなどによって金属膜553を被着
し、メタルコートカンチレバー550を完成させる。
【0030】〈記録媒体〉本発明の用いられる記録媒体
としては、電流−電圧特性においてメモリスイッチング
現象(電気メモリ効果)をもつ材料を使用することがで
きる。そして、このような効果を有する材料を記録層と
し、この記録層を下地電極上に形成したものとすること
が好ましい。このような効果を有する材料としては、例
えば、 (1) 酸化物ガラスやホウ酸塩ガラスあるいは周期律表II
I,IV,V,VI族元素を化合したSe,Te,Asを含んだカ
ルコゲン化物ガラスなどのアモルファス半導体が挙げら
れる。これらは、光学的バンドギャップEgが0.6〜
1.4eVあるいは電気的活性化エネルギーΔEが0.7
〜1.6eV程度の真性半導体である、カルコゲン化物
ガラスの具体例としては、As-Se-Te系、Ge-A
s-Se系、Si-Ge-As-Te系、例えばSi16Ge
14As5Te65(添え字は原子%、以下同じ)、あるい
はGe-Te-X系、Si-Te-X系(Xは少量のV族あ
るいはVI族元素)例えばGe15Te81Sb22が挙げら
れる。さらにはGe-Sb-Se系カルコゲン化物ガラス
も用いることができる。
【0031】上記化合物を下地電極上に堆積してアモル
ファス半導体層としたものにおいて、膜面に垂直な方向
にプローブ電極を用いて電圧を印加することにより、媒
体の電気メモリ効果を発現させることができる。
【0032】かかる材料の堆積法として従来から公知の
薄膜形成技術を用いることにより、十分本発明の目的を
達成することができる。例えば好適な成膜法としては、
真空蒸着法やクラスターイオンビーム法などを挙げるこ
とができる。一般的には、かかる材料の電気メモリ効果
は数μm以下の膜厚で観測されており、記録媒体として
の記録分解能(記録密度)に関してはより薄い方が好ま
しいが、記録性や膜の均一性の観点から、10nm以上
1μm以下の膜厚が好ましく、100nm以下の膜厚と
することがさらに好ましい。
【0033】(2) さらには、テトラシアノキノジメタン
(TCNQ)、TCNQ誘導体、例えばテトラフルオロ
テトラシアノキノジメタン(TCNQF4)、テトラシ
アノエチレン(TCNE)およびテトラシアノナフトキ
ノジメタン(TNAP)などの電子受容性化合物と銅や
銀などの還元電位が比較的低い金属との塩を下地電極上
に堆積させた有機半導体層も挙げることができる。
【0034】かかる有機半導体層の形成法としては、銅
あるいは銀の下地電極の上に前記電子受容性化合物を真
空蒸着する方法が用いられる。かかる有機半導体層の電
気メモリ効果は数十μm以下の膜厚のもので観測されて
いるが、成膜性、均一性の観点から10nm〜1μmの
膜厚とすることが好ましい。
【0035】(3) さらには、アモルファスシリコンを材
料とした記録媒体を挙げることができる。これは、例え
ば金属/a-Si層(p+層/n層/i層)あるいは金属
/a-Si層(n+層/p層/i層)の層構成を有する記
録媒体であり、a-Siの各層の堆積は、従来から公知
の方法によって十分行なうことが可能である。本発明で
は、好適には、グロディスチャージ法(GD法)が用い
られる。a-Siの各層の膜厚は、n層に対しては20
0〜300nm、i層、p+層に対しては100nm程
度が好適であり、a-Si層全体の膜厚は500nm〜
1μm程度のものが好ましい。
【0036】(4) またさらには、π電子準位をもつ群と
σ電子準位のみをもつ群を併有する分子を下地電極上に
積層させた記録媒体を挙げることができる。
【0037】本発明に好適なπ電子系を有する色素の構
造としては、例えば、フタロシアニン、テトラフェニル
ポルフィンなどのポルフィリン骨格を有する色素、スク
アリリウム基およびクロコニックメチン基を結合鎖とし
てもつアズレン系色素およびキノリン、ベンゾチアゾー
ル、ベンゾオキサゾールなどの2個の含窒素複素環をス
クリリウム基およびクロコニックメチン基により結合し
たシアニン系類似の色素、またはシアニン色素、アント
ラセンおよびピレンなどの縮合多環芳香族、および芳香
環および複素環化合物が重合した鎖状化合物およびジア
セチレン基の重合体、さらにはテトラシアノキノジメタ
ンまたはテトラチオフルバレンの誘導体およびその類縁
体およびその電荷移動錯体またさらにはフェロセン、ト
リスビピリジンルテニウム錯体などの金属錯体化合物が
挙げられる。
【0038】有機記録媒体の形成に関しては、具体的に
は蒸着法やクラスターイオンビーム法などの適用も可能
であるが、制御性、容易性そして再現性から公知の従来
技術の中ではラングミュラー・ブロジェット法(以下、
LB法とする)が極めて好適である。LB法は、分子内
に親水性部位と疎水性部位とを有する構造の分子におい
て、両者のバランス(両親媒性のバランス)が適度に保
たれているとき、水面上において、分子が親水性基を下
に向けて単分子の層になることを利用して単分子膜また
はその累積膜を作製する方法である。
【0039】このLB法によれば、1分子中に疎水性部
位と親水性部位とを有する有機化合物の単分子膜または
その累積膜を基板上に容易に形成することができ、分子
オーダーの厚みを有し、かつ大面積にわたって均一、均
質な有機超薄膜を安定に供給することができる。
【0040】疎水性部位を構成する基としては、一般に
広く知られている飽和および不飽和炭化水素基や縮合多
環芳香族および鎖状多環フェニル基などの各種疎水性基
が挙げられる。これらはそれぞれ単独あるいはその複数
が組み合わされて疎水性部分を構成する。一方、親水性
部分の構成要素として最も代表的なものは、例えばカル
ボキシル基、エステル基、酸アミド基、イミド基、ヒド
ロキシル基、さらにはアミノ基(1、2、3級および4
級)などの親水性基などが挙げられる。これらもそれぞ
れ単独あるいはその複数が組み合わされて上記分子の親
水性部分を構成する。
【0041】これらの疎水性基を親水性基をバランスよ
く併有し、かつ適度の大きさをもつπ電子系を有する色
素分子であれば、水面上で単分子膜を形成することが可
能であり、本発明に対して極めて好適な材料となる。
【0042】具体例としては、例えば下記のような分子
などが挙げられる。 [I]クロコニックメチン色素
【0043】
【化1】
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】 ここでR1は、前述のσ電子準位をもつ群に相当したも
のであり、しかも水面上で単分子膜を形成しやすくする
ために導入された長鎖アルキル基で、その炭素数nは、
5≦n≦30が好適である。
【0054】以上具体例として挙げた化合物は基本構造
のみであり、これらの化合物の種々の置換体も本発明に
おいて好適であることは言うに及ばない。 [II]スクアリリウム色素 [I]で挙げた化合物のクロコニックメチン基を下記の
構造をもつスクアリリウム基で置き換えた化合物。
【0055】
【化12】 [III]ポルフィリン系色素化合物
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】 ここでRは単分子膜を形成しやすくするために導入され
たもので、ここで挙げた置換基に限られるものではな
い。また、R1〜R4、Rは前述したσ電子準位をもつ群
に相当している。 [IV]縮合多環芳香族化合物
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】 [V]ジアセチレン化合物
【0063】
【化20】 Xは親水基であって、一般には−COOHが用いられる
が、−OHや−CONH2なども使用できる。 [VI]その他
【0064】
【化21】
【0065】
【化22】
【0066】
【化23】
【0067】
【化24】
【0068】
【化25】
【0069】
【化26】 なお、上記以外でもLB法に適している色素材料であれ
ば、本発明に好適なのはいうまでもまお。例えば、近年
研究が盛んになりつつある生体材料(例えばバクテリオ
ロドプシンやチトクロームc)や合成ポリペプヂド(P
BLGなど)も適用可能である。
【0070】これらのπ電位準位を有する化合物の電気
メモリ効果は数十μm以下の膜厚のもので観測されてい
るが、成膜性、均一性の観点から、1.5〜200nm
の膜厚のものが好ましい。
【0071】〈下地電極〉下地電極としては、ある程度
の導電性があればどのようなものでも使用できるが、好
ましくは、表面が酸化しにくく、かつ平坦なものが適し
ている。下地電極に好適に用いられる材料としては、A
u,Pt,Pd,Ir,Agなどの貴金属や、HOPG,M
oS2,MoSe2などの層状化合物が挙げられる。
【0072】中でもAuは、種々の基板上に真空蒸着、
スパッタリング、CVD、電解メッキ、無電解メッキな
どの方法で下地電極として形成できるという利点があ
る。また結晶性においても、真空蒸着法により、マイカ
(雲母)上に数十μmの大粒径の単結晶を形成できる
(Dennis J. Trevor, et al., Phys. Rev. Lett., 62
(8),20(1989))など、下地電極の材料として特に優れて
いる。
【0073】金薄膜の形成方法の一つとして、核形成密
度の大きい材料からなる面と核形成密度の小さい材料か
ら面とを隣接して配した基板に対し、核形成密度の大き
い材料からなる面のみに単結晶群からなる金結晶薄膜を
形成する方法がある。この方法では金錯体溶液を使用
し、溶液中の金錯体を分解処理することによって溶液内
の金を過飽和状態に移行させ、それによって核形成密度
の大きい面のみに選択的に金結晶を形成する方法であ
る。この方法によって得られる金結晶薄膜は(111)
面に配向制御され、これによって極めて平滑な表面を有
するようになる。
【0074】ここで、核形成密度の大きな材料としてS
i、核形成密度の小さな材料としてSiO2、金錯体と
して[AuI4-、金錯体の分解処理方法として揮発を
用いた例について、図6を用いて説明する。
【0075】まず、n+型のSi基板401を熱酸化処
理し、表面にSiO2の熱酸化膜402を形成した。次
に、レジストを用いたエッチングにより熱酸化膜402
の一部を除去し、Si面が露出するようにして基板を得
た。
【0076】蒸留水にヨウ化カリウムおよびヨウ素を溶
解させてヨウ素水溶液を作成したのち、これに金を加え
て攪拌溶解させ、[AuI4-を含有する金錯体溶液と
した。このときこの金錯体溶液中には、金錯イオン[A
uI4-のほか、I3 -、K+の各イオンが存在するもの
と考えられる。
【0077】ヨウ素水溶液は、ヨウ化カリウム以外のヨ
ウ化化合物、例えばヨウ化アンモニウムを溶解させるこ
とでも作成できる。また、アルコールを溶媒として用い
たヨウ素アルコール溶液や、アルコールと水との混合物
を溶媒として用いたヨウ素アルコール・水溶液も用いる
ことができる。溶液中のヨウ素とヨウ化化合物の濃度に
よって、溶解することができる金の量が定まる。
【0078】次に、エッチング処理まで終了した前述の
基板の表面にこの金錯体溶液を接触させた後、溶液を3
0〜100℃に昇温させてヨウ素成分の揮発を促進させ
る。溶液系内でヨウ素はI3 -の形で存在するので、ヨウ
素成分が揮発することにより、平衡維持のために[Au
4-からのヨウ素成分の解離あるいは[AuI4-
らのヨウ素成分の直接の揮発が起こると考えられ、結果
として[AuI4-が分解して金が過飽和となる。溶液
中で過飽和状態となった金は、核形成密度の高い部分す
なわちSiが露出している部分にのみ、ランダムな核と
して析出する。
【0079】こののち核の形成はしばらく続くが、ある
程度の数の核が形成されると、核の増加が停止し、核が
自己整合的に単結晶成長する。
【0080】Si基板表面の露出面積や間隔を適切なも
のとすることにより、熱酸化膜402には核発生させ
ず、Si基板表面に金結晶薄膜403を選択的に形成す
ることができる。
【0081】解析の結果、形成された結晶は単結晶であ
り、(111)面がSi基板401表面と平行になって
いる。STMで観察すると、個々の単結晶表面の凹凸
は、1μm角の領域内において0.5nmであった。金
結晶薄膜403は基板上に点在しているが、位置制御可
能なため、金結晶薄膜403とカンチレバーの位置を整
合させることにより、下地電極として用いることができ
る(図3参照)。
【0082】〈フッ素系不活性液体〉カンチレバー先端
のマイクロティップや記録媒体の表面の酸化、吸着など
を防止するため、これまでも、カンチレバーと記録媒体
とを外気から遮断したり、またはパラフィンオイルに浸
漬する方法などがとられていた。液体中に浸漬するのは
吸着や表面の酸化などを防ぐ上で有効な方法であるが、
どのような液体を使用するかにより、その効果は著しく
異なってくる。
【0083】フッ素系不活性液体は、以下に述べるよう
に、従来使用されているものと比較して、種々の点で優
れている。
【0084】まず、絶縁抵抗が大きいことが挙げられ
る。トンネル電流は10-9A以下という極めて小さな電
流であるため、記録媒体やマイクロティップが浸漬され
る液体は絶縁性に優れていなければならないが、フッ素
系不活性液体は、十分な電気的な絶縁性を有している。
【0085】次に、各種材料と反応しないことが挙げら
れる。フッ素系不活性液体は、金属、プラスチック、半
導体などと反応せず、また安定性にも優れているため自
身も全く変化しない。後述するように本発明で使用され
るフッ素系不活性液体は主として完全にフッ素化された
化合物であって一般に水素や塩素を含まないため、水や
油をほとんど溶かさず、表面の酸化や吸着を防止する上
で極めて有効である。
【0086】さらに、熱伝導性にも優れている。良好な
電気的絶縁性と良好な熱伝導性とを兼ね備えており、熱
伝導率の大きいオイルとして従来より知られているシリ
コーン油などに比べても大きな熱伝導率を有し、また、
粘性が小さいため対流による熱の伝導も期待でき、さら
に熱伝導性に優れることになる。このため、熱を迅速に
伝えることができ、記録媒体、マイクロティップやカン
チレバーを含む全体を均一な温度にすることができる。
【0087】このようなフッ素系不活性液体としては、
例えば、CとFからのみなるアルカンと、C-C間にN,
Oを有するCとFとの飽和化合物などを挙げることがで
きる。具体的には、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフ
ルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ-(3,3-ジ
メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ-(1-メチルデカ
リン)などがあり、市販されているものとしては、Fluor
inert FC-40, FC-43,FC-70, FC-72, FC-75, FV-77, FC-
84(以上、3M社製)やFlutec PP1, PP2, PP3, PP9
(以上、ISC社製)などを挙げることができる。
【0088】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して
説明する。図1は本発明の一実施例の記録再生装置の構
成を示すブロック図である。この記録再生装置は、図6
を用いて説明したのと同様のメタルコートカンチレバー
101を使用し、メタルコートカンチレバー101の自
由端側にあるマイクロティップ121がトンネル電流を
検出すると同時に、記録媒体100との間に作用する力
も検出できるように構成されている。
【0089】記録媒体100は、基板106上に下地電
極105と記録層104を順次積層した構成のものであ
り、容器120の底面に固定されている。記録層104
は電気メモリ効果を有する材料からなる。容器120
は、XY軸駆動装置(XYステージ)107によって、
水平面内方向の任意の位置に移動できるようになってい
る。XY軸駆動装置107は、XY軸制御回路108に
よって駆動されるようになっている。メタルコートカン
チレバー101は、その自由端にあるマイクロティップ
121の先端が記録層104と微小の距離をおいて対向
するように、その固定端側がZ軸駆動装置102に取り
付けられてている。Z軸駆動装置102は、容器120
とは機械的に分離されており、したがって、容器120
の水平面内の移動に対して独立している。容器120内
にはフッ素系不活性液体103が満たされ、フッ素系不
活性液体103内に記録媒体100全体とメタルコート
カンチレバー101全体が浸漬されている。フッ素系不
活性溶液103は、メタルコートカンチレバー101
や、記録層104、下地電極105、基板106などの
どの部位とも反応しない安定な液体である。このフッ素
系不活性液体103中に浸漬したことにより、記録層1
04やメタルコートカンチレバー101に表面酸化や吸
着などが完全に防止され、記録再生装置の記録再生特性
を安定に保ち、情報を信頼性よく処理することが可能と
なる。
【0090】メタルコートカンチレバー101の自由端
側にレーザ光を照射するレーザ光源116と、メタルコ
ートカンチレバー101から反射されたレーザ光を検出
してメタルコートカンチレバー101の自由端側のたわ
みを検出する位置センサ115が設けられている。位置
センサ115の出力側には電流電圧変換器114が設け
られ、この電流電圧変換器114の出力は、Z軸駆動装
置102を制御するZ軸制御回路113に入力する。こ
れら位置センサ115、電流電圧変換器114、Z軸制
御回路113、Z軸駆動装置102によってメタルコー
トカンチレバー110の自由端側の変位に対するフィー
ドバックループが形成され、位置センサ115で検出さ
れる変位が一定になるようにZ軸駆動装置102を駆動
することにより、マイクロティップ121と記録層10
4との距離が一定に保たれる。
【0091】マイクロティップ121と記録層104と
の間に流れるトンネル電流を検出するためのトンネル電
流検出器111がマイクロティップ121に電気的に接
続されている。下地電極105には、記録層104に記
録/消去用のパルス電圧を印加するための記録/消去信
号発生器109、トンネル電流検出時にバイアス電圧を
印加するバイアス電源110が接続されている。さら
に、これらXY軸制御回路108、記録/消去信号発生
器109、バイアス電源110、トンネル電流検出器1
11およびZ軸制御回路113を制御するためのマイク
ロコンピュータ112が設けられている。
【0092】次に、この記録再生装置について実際に製
作した例を説明する。
【0093】メタルコートカンチレバー101は、上述
の図5に示した製造工程にしたがって作成されたもので
ある。シリコン基板552(図5)としてはシリコン
(100)基板を使用し、マスク層551,551aと
しては、CVD法によって成膜されたSi34を使用し
た。メタルコートカンチレバー101の寸法は、長さ3
00μm、幅50μmであり、金属膜553(図5)と
して、RFスパッタ法によりカンチレバー全体に成膜さ
れた厚さ約50nmの白金を使用した。
【0094】記録媒体100の基板106として(11
1)フッ化カルシウムを使用し、この上に下地電極10
5として真空蒸着法により金を250nmの厚さ成膜し
た。この真空蒸着の条件は、真空度2×10-6Torr以
下、基板温度450℃、成膜速度0.3Å/sとした。
次に、金からなる下地電極105の上に、スクアリリウ
ム-ビス-6-オクチルアズレン(以下、SOAZとす
る)のLB膜を積層し、記録層104とした。このよう
に作成した記録媒体100を容器120の底部に固定し
た。
【0095】フッ素系不活性液体103としては、フル
オロカーボン不活性液体であるフロリナートFC70
(住友3M社製)を用いた。
【0096】このように製作した記録再生装置を使用
し、情報の記録および再生を行なったところ、従来の記
録再生装置と比較し、吸着の影響によるZ軸制御の不
安定性がなくなり、記録再生特性に経時変化が現れ
ず、安定した記録再生特性が得られるようになった。
これは、メタルコートカンチレバー101および記録層
104の表面が、酸化や吸着などの影響から逃れられ、
安定した状態にあることによるものである。
【0097】次に、本発明の別の実施例の記録再生装置
について、図2を用いて説明する。この記録再生装置
は、上述の図4に示したのと同様の圧電バイモルフプロ
ーブユニット202を複数個有し、同一の記録媒体20
0に対してこの複数個の圧電バイモルフプローブユニッ
トを同時に使用して平行的に情報の記録および/または
再生を行なおうとするものである。
【0098】まず、記録媒体200の構成について説明
する。記録媒体200は、基板221と、基板221上
に設けられ金からなる下地電極222と、下地電極22
2を覆うように設けられ電気メモリ効果を有する材料か
らなる記録層223とによって構成されている。金から
なる下地電極222は、上述の図6を用いて説明した方
法、すなわち核形成密度の大きい材料からなる面と核形
成密度の小さい材料から面とを隣接して配した基板に対
し核形成密度の大きい材料からなる面のみに単結晶群か
らなる金結晶薄膜を形成する方法によって作成されてい
る。この方法によって下地電極222を形成しているの
で、単結晶の金からなる下地電極222は、基板221
上に点在していることになる。また、点在している複数
の下地電極222のうちの1つは、記録媒体200と圧
電バイモルフプローブユニット202側との位置決めを
行なうために使用され、サーボ情報が書き込まれてい
る。サーボ情報は、粗動用と微動用とに分けられてお
り、粗動用は、通常のフォトリソグラフィ技術やフォー
カスイオンビームエッチング、リアクティブイオンビー
ムエッチング(RIE)などにより、サブマイクロメー
タの溝加工を行なうことによって形成される。一方、微
動用のサーボ情報としては、金結晶の原子配列がそのま
ま用いられている。
【0099】次に、圧電バイモルフプローブユニット2
02について説明する。複数の圧電バイモルフプローブ
ユニット202は、同一のシリコン基板250に対し、
一体のものとして形成されている。図3は、圧電バイモ
ルフプローブユニット202の配置を示す平面図であ
る。シリコン基板250に設けられたそれぞれの貫通孔
251に対し、複数本の圧電バイモルフプローブユニッ
ト(カンチレバー)202が設けられている。各圧電バ
イモルフプローブユニット202の自由端は、記録媒体
200側の各下地電極222にそれぞれ対応し、対応す
る下地電極222の直上に位置するようになっている。
上述のサーボ情報の書き込まれている下地電極に対応す
る圧電バイモルフプローブユニットは、サーボ情報を読
み出すために使用され、他の圧電バイモルフプローブユ
ニットは、情報の記録・再生・消去に用いられる。
【0100】記録媒体200は、容器220の底部に固
定されている。一方、各圧電バイモルフプローブユニッ
ト202が一体的に形成されたシリコン基板250は、
XY軸駆動装置207を介して容器220の側壁に取り
付けられている。XY軸駆動装置207は、XY軸制御
回路208によって駆動される。各圧電バイモルフプロ
ーブユニット202のマイクロティップは、記録層22
3の表面にごく至近距離まで接近している。容器220
の内部にはフッ素系不活性液体203が満たされてお
り、これら記録媒体200、シリコン基板250および
各圧電バイモルフプローブユニット202は、完全にこ
のフッ素系不活性液体203に浸漬されている。
【0101】この記録再生装置全体の制御を行なうため
のマイクロコンピュータ212が設けられている。そし
て、上述のサーボ情報を読み出すための圧電バイモルフ
プローブユニット202は、トンネル電流検出器211
を介してサーボ回路201の入力側に接続されている。
サーボ回路201の出力はマイクロコンピュータ212
に入力する。マイクロコンピュータ212はXY軸制御
回路208を制御するので、サーボ情報読み出し用の圧
電バイモルフプローブユニット202で読み出されたサ
ーボ情報に基づいてフィードバック制御が行なわれる。
その結果、サーボ情報を読出しながらマイクロコンピュ
ータ212で制御を行なうことにより、サーボ情報読み
出し用以外の各圧電バイモルフプローブユニット202
を同時に所定の記録位置に移動させることができ、任意
の情報にアクセスして並列的に情報の記録・再生・消去
を行なうことが可能となる。これらサーボ情報読み出し
用以外の各圧電バイモルフプローブユニット202は、
それぞれトンネル電流検出器211に接続され、各トン
ネル電流検出器211の出力はマイクロコンピュータ2
12に入力する。さらに、記録媒体200の基板221
には、記録層223に記録/消去用のパルス電圧を印加
するための記録/消去信号発生器209、トンネル電流
検出時にバイアス電圧を印加するバイアス電源210が
接続されている。これら記録/消去信号発生器209、
バイアス電源210も、マイクロコンピュータ212で
制御されるようになっている。
【0102】この記録再生装置では、フッ素系不活性液
体203中に記録媒体200やシリコン基板250、各
圧電バイモルフプローブユニット202とが浸漬されて
いるので、記録媒体200、シリコン基板250あるい
は圧電バイモルフプローブユニット202間相互の温度
差が小さく、均一な温度分布が達成されている。このた
め、いずれの圧電バイモルフプローブユニット202
も、正規の情報ビットから外れることがない。さらに、
記録層223や圧電バイモルフプローブユニット202
表面への酸化や吸着が完全に防止され、記録再生装置の
記録再生特性を安定に保ち、情報を信頼性よく処理する
ことが可能となる。
【0103】次に、この記録再生装置について実際に製
作した例を説明する。
【0104】圧電バイモルフプローブユニット202
は、図4に示した工程によって作製した。シリコン基板
502(図4)としては、シリコン(100)基板を使
用し、マスク層501としてはCVD法によって成膜さ
れたSi34を使用した。各圧電体層504(図4)と
しては、RFスパッタ法によって形成した約300nm
のZnO薄膜を使用した。圧電体層504の成膜は、タ
ーゲットにZnO焼結体を使用し、Ar50%、O2
0%の組成比の雰囲気下、圧力10mTorrの条件で行な
った。このとき基板温度は200℃とした。電極層50
3としては、真空蒸着で成膜した金薄膜を使用した。マ
イクロティップ505(図4)は、前述したスピントの
技術に基づき、銀を厚さ6.5μm成膜し、さらに白金
500nmを銀の表面にコートしてから、リフトオフに
よって(蒸着用)マスクをはがすことによって作製し
た。
【0105】下地電極222は、金錯体の分解処理によ
って形成した。
【0106】蒸留水500mlにヨウ化カリウム40g
およびヨウ素6gを加え攪拌溶解させた。この溶液に金
を3g加えて攪拌溶解させた。金の溶解後、この溶液か
ら100mlを分取して反応容器に移し、ここにさらに
蒸留水を500ml加えて攪拌し、結晶成長用溶液にし
た。
【0107】一方、厚さ0.3μmの熱酸化膜が形成さ
れたn+-Si基板を用意し、この基板上にレジスト層を
形成して露光・現像を行なってパターニングを行なっ
た。このレジストパターンをマスクとしてCF4ガスを
用いたリアクティブイオンビームエッチングを行なって
熱酸化膜をエッチング除去し、Si面を露出させ、その
のちレジスト層を剥離した。露出するSi層のパターン
は、100μm角の領域を300μm間隔で繰り返すラ
イン状のものとした。
【0108】このようにSi面を露出された基板を希フ
ッ化水素酸に浸漬して表面酸化膜を除去した後、この基
板を上述の結晶成長用溶液に接触させ、次いで溶液を8
0℃に加熱して放置し、1.5時間後、基板を取り出し
た。これにより、各Si露出面上に、(111)面が露
出した金の板状単結晶が析出した。STMで観察したと
ころ、単結晶表面の凹凸は、1μm角内で0.5nmで
あった。
【0109】サーボ情報の記録される部位としては、上
記の単結晶のうちの1つを使用した。まず、この基板上
に、電子線レジストであるポリメタクリル酸メチル(P
MMA;商品名OEBR−1000 東京応化工業(株)
製)を1μmの厚さに塗布し、電子線により、2μm四
方の枠内のみ、線幅0.3μmで描画した。現像液を使
用して電子線照射部を溶解させ、さらにスパッタエッチ
ングを行なった。スパッタエッチングにはArガスを使
用し、圧力3Pa、スパッタ電力100Wとした。最後
に、メチルエチルケトンを用いて残存しているPMMA
を溶解除去した。このようにして形成された2μm角の
溝(凹部)は粗動時の位置決め用のものであり、実際の
記録/再生時には、サーボ情報読出し用の圧電バイモル
フプローブユニットがこの凹部内にあるように制御を行
なえばよい。また、この2μm角の凹部内の金単結晶の
原子配列により、微動時の位置決めを行なえばよい。
【0110】記録層223としては、上述のように形成
された金単結晶からなる下地電極222上に、SOAZ
のLB膜を8層積層させたものを用いた。まず、SOA
Zを濃度0.2mg/mlで溶かしたベンゼン溶液を2
0℃の水相上に展開し、水面上に単分子膜を形成して溶
媒の蒸発を待ち、この単分子膜の表面圧を20mM/m
まで高めた。そして表面圧を一定に保ちながら、下地電
極の形成された基板を水面を横切る方向に速度3mm/
分で静かに浸漬して引き上げ、これを繰り返し、SOA
Z単分子膜を8層、金単結晶上に累積させた。
【0111】以上のように作製された記録媒体200
と、圧電体バイモルフプローブユニット202とは、図
3に示すようにして組み合わせた。このとき、圧電バイ
モルフプローブユニット202は、シリコン基板250
上に10本×2列設け、これに対応させて金単結晶も1
0個×2列析出させた。なお、記録媒体200側の金単
結晶のうち端部の1個はサーボ情報読み出し用として利
用した。
【0112】次に、容器220内にフッ素系不活性液体
203(商品名:フロリナート、住友3M社製)を注
ぎ、記録媒体200および各圧電バイモルフプローブユ
ニット202をこの液体に浸漬した。
【0113】以上のようにして完成させた記録再生装置
を用いて、記録・再生の実験を行なった。まず、シリコ
ン基板250ごと各圧電バイモルフプローブユニット2
02をXY方向に駆動し、サーボ情報の記録されている
前述の2μm角の凹部を見つけ出した。この凹部の角部
を起点として、金の原子配列を座標として、シリコン基
板250をXY方向に走査し、記録/消去信号発生器2
09によりパルス電圧を印加し、記録層223に情報ビ
ットを書き込んだ。
【0114】次に、このようにして書き込まれたビット
を読み出すことを1週間にわたって繰り返し行なった。
いずれの場合も、全ての圧電バイモルフプローブユニッ
ト202から良好なSN比で再生信号を取り出すことが
できた。すなわち、サーボ情報取り出し用の圧電バイモ
ルフプローブユニットから離れた場所に位置する圧電バ
イモルフプローブユニットにおいて、熱膨張の影響によ
って情報ビット列からのずれが大きくなってSN比が悪
化してしまうなどというようなことはなかった。また、
記録・再生特性に経時変化はなく、安定した特性が得ら
れた。
【0115】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、マイクロ
ティップと記録媒体とをフッ素系不活性液体に浸漬する
ことにより、マイクロティップや記録媒体表面の酸化や
吸着が防止されるので、長期間わたって安定した記録再
生特性を維持できるという効果がある。また、フッ素系
不活性液体は熱伝達効率が高いので、記録媒体とマイク
ロティップ側との間の温度差がなくなって温度分布が均
一になり、熱ドリフトの影響をなくすことができ、サー
ボ面サーボの手法によって多数の情報ビット列に同時に
アクセスすることが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の記録再生装置の構成を示す
ブロック図である。
【図2】本発明の別の実施例の記録再生装置の構成を示
すブロック図である。
【図3】圧電バイモルフプローブユニットの配置を示す
平面図である。
【図4】(a)は圧電バイモルフプローブユニットの構成
を示す模式断面図、(b)〜(e)は圧電バイモルフプローブ
ユニットの製造方法を説明する図である。
【図5】(a)はメタルコートカンチレバーの構成を示す
模式断面図、(b)〜(f)はメタルコートカンチレバーの製
造方法を説明する図である。
【図6】金からなる下地電極の作製方法を説明する模式
断面図である。
【図7】従来の記録再生装置の構成を示す平面図であ
る。
【符号の説明】
100,200 記録媒体 101 メタルコートカンチレバー 102 Z軸駆動装置 103,203 フッ素系不活性液体 104,223 記録層 105,222 下地電極 106,221 基板 107,207 XY軸駆動装置 108,208 XY軸制御回路 109,209 記録/消去信号発生器 110,210 バイアス電源 111,211 トンネル電流検出器 112,212 マイクロコンピュータ 113 Z軸制御回路 114 電流電圧変換器 115 位置センサ 116 レーザ光源 120,220 容器 121,505,555 マイクロティップ 201 サーボ回路 202 圧電バイモルフプローブユニッ
ト 250,502,552 シリコン基板 251,511,561 貫通孔 501,551,551a マスク層 503 電極層 504 圧電体層 510 カンチレバー 553 金属膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 勉 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 河田 春紀 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイクロティップを有するプローブを備
    え、前記マイクロティップに近接して配置された記録媒
    体に対し情報の記録および/または再生を行なう記録再
    生装置において、 前記記録媒体および前記マイクロティップがフッ素系不
    活性液体中に浸漬されていることを特徴とする記録再生
    装置。
  2. 【請求項2】 記録媒体とマイクロティップとの間にバ
    イアス電圧を印加する手段と、前記記録媒体と前記マイ
    クロティップとの間に流れるトンネル電流を検出する手
    段とを備えた請求項1に記載の記録再生装置。
  3. 【請求項3】 記録媒体とマイクロティップとの間に作
    用する力を検出する手段を備えた請求項1に記載の記録
    再生装置。
  4. 【請求項4】 記録媒体とマイクロティップとの間に作
    用する力が原子間力である請求項3に記載の記録再生装
    置。
  5. 【請求項5】 マイクロティップがカンチレバーの自由
    端に設けられ、前記マイクロティップと記録媒体との相
    対的位置関係を変化させる手段を有する請求項1ないし
    4いずれか1項に記載の記録再生装置。
  6. 【請求項6】 モノリシックタイプに形成された複数の
    カンチレバーが設けられ、前記各カンチレバーの自由端
    にそれぞれマイクロティップが設けられている請求項5
    に記載の記録再生装置。
  7. 【請求項7】 トラッキング用のサーボ情報が記録され
    ているサーボ面が記録媒体の少なくとも一部に設けら
    れ、少なくとも1個のカンチレバーが前記サーボ面に対
    応し、当該カンチレバーの自由端にあるマイクロティッ
    プによって前記サーボ情報が読み出されてサーボ面サー
    ボが行なわれる請求項6に記載の記録再生装置。
JP34774092A 1992-12-28 1992-12-28 記録再生装置 Pending JPH06195770A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010091447A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Tohoku Univ 表面形状測定装置および測定方法
US7792011B2 (en) 2002-05-23 2010-09-07 International Business Machines Corporation Storage device and method for scanning a storage medium

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US7792011B2 (en) 2002-05-23 2010-09-07 International Business Machines Corporation Storage device and method for scanning a storage medium
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