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JPH06128631A - 低温靱性の優れた高マンガン超高張力鋼の製造方法 - Google Patents

低温靱性の優れた高マンガン超高張力鋼の製造方法

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Publication number
JPH06128631A
JPH06128631A JP28157292A JP28157292A JPH06128631A JP H06128631 A JPH06128631 A JP H06128631A JP 28157292 A JP28157292 A JP 28157292A JP 28157292 A JP28157292 A JP 28157292A JP H06128631 A JPH06128631 A JP H06128631A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
toughness
less
temperature
steel
strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP28157292A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshinaga Hasegawa
俊永 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP28157292A priority Critical patent/JPH06128631A/ja
Publication of JPH06128631A publication Critical patent/JPH06128631A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、高価な合金元素を用いることな
く、高強度でかつ母材靱性、溶接熱影響部靱性の優れた
高張力鋼を提供する。 【構成】 Mnを6〜15%含有することにより焼入性
を高めて高強度化し、高Mn化による粒界脆化感受性の
増加をBの添加により抑制して溶接熱影響部靱性を向上
した高強度高Mn鋼において、熱間圧延条件あるいは熱
処理条件を限定し、またはさらに圧延後あるいは熱処理
後の焼戻し温度を併せて限定することにより、特に母材
靱性の向上をはかる。必要に応じてNi、Cuをさらに
含有させて一層の靱性向上をはかる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は引張り強さが100kg
f/mm2 以上で、良好な母材の低温靱性を有するとと
もに溶接部の靱性にも優れた高マンガン超高張力鋼の製
造方法にかかわるものである。
【0002】
【従来の技術】現在、溶接構造用鋼は種々の分野で用い
られ、強度レベルも引張り強さ40〜100kgf/m
2 程度の広い範囲で使用される。近年は構造物の大型
化、省エネルギー等の目的から強度の高い高張力鋼の使
用が増加している。高張力鋼の内でも引張り強さが70
〜80kgf/mm2 を超えるような高強度鋼は一般的
には焼入れ焼戻し処理によって製造される。圧延に引き
続いて焼入れを行う直接焼入れのような製造方法もある
が、これも焼入れの範疇に入る。焼入れ焼戻しにより製
造される、いわゆる調質高張力鋼は強度・靱性確保のた
めに板厚中心部まで十分焼きを入れる必要性から通常、
Ni,Cu,Cr,Mo等の合金元素を含有する。特に
厚手材であったり、−60℃以下といった厳しい低温靱
性が要求される場合には、焼入性確保、およびマトリク
スの強靱化をはかるために、さらにNiを主とした合金
元素の多量添加が必要となる。Ni,Cr,Mo等を多
く含む鋼は通常の鋼材に比べて不可避的に非常に高価と
なるため、構造物全般に広く使用できるものではない。
従って、厚手材やきびしい強度、低温靱性の要求のもと
でも廉価に製造でき、かつ様々な溶接条件においても優
れた溶接継手靱性を有する高張力鋼の製造技術の確立が
望まれる。
【0003】本発明者らは先に特願平3−144089
号においてMnを6〜15%含む鋼にBを微量添加する
ことにより粒界破壊を防止して優れた溶接熱影響部(H
AZ)靱性の得られる鋼を提案した(以降、特願平3−
144089号の請求範囲の成分を有する鋼をB添加高
Mn鋼と呼ぶ)。B添加高Mn鋼の強度靱性と製造条件
の関係を詳細に検討した結果、本鋼は特定の製造条件に
よって強度靱性が大幅に変化することが判明した。従っ
て、B添加高Mn鋼においても一層優れた母材特性を得
るための適正な製造技術が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】B添加高Mn鋼のHA
Z靱性は化学成分により決まるため、特願平3−144
089号で示した成分範囲とすることにより広い入熱範
囲で優れたHAZ靱性を確保することが可能であるが、
母材の強度、靱性は製造履歴により変化し、場合によっ
てはHAZ靱性に比べて特性が大きく劣化する可能性が
あることが判明した。従って、廉価に製造可能な調質高
張力鋼としてB添加高Mn鋼を低温靱性要求の厳しい部
材として使用するためには、低温靱性確保のための適切
な母材製造条件を確立することが課題となる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはB添加高M
n鋼を製造する場合、特定の焼戻し温度範囲において本
鋼は粒界破壊により大きな脆化を生じるため、靱性の劣
化を防止するためには、焼戻し温度の適正化と不純物元
素、特にP量の低減が特に重要であるとの結論を得、本
発明に至った。その要旨とするところは、重量%で、
C:0.01〜0.06%、Si:0.01〜1.0
%、Mn:6〜15%、P:0.005%以下、S:
0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、B:
0.0003〜0.010%、N:0.010%以下、
必要に応じて適正量の、Cr、Mo、Ni、Cuを含有
し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼を、焼入れ
焼戻し処理で製造する場合は、1000℃以上に加熱し
た後熱間圧延し、続いてAc3 変態点〜1000℃の温
度域に再加熱した後、該温度から冷却するに際して70
0℃〜300℃の温度域の平均冷却速度が0.1℃/s
以上となるように冷却し、さらに必要に応じて450℃
〜Ac1 変態点+50℃の温度で焼き戻すことを特徴と
し、再加熱処理をせずに製造する場合は、950℃〜1
150℃に加熱し、900℃以下での圧下率が10〜5
0%で、仕上げ温度が750℃〜850℃である熱間圧
延を施し、圧延後の冷却に際して700℃〜300℃の
温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上となるように
冷却し、さらに必要に応じて450℃〜Ac1 変態点+
50℃の温度に焼き戻すことを特徴とする低温靱性の優
れた高マンガン超高張力鋼の製造方法にある。
【0006】
【作用】先ず、化学成分の限定理由を以下に述べる。本
発明の目的とする特性を達成するためには各々の構成元
素量について適正範囲に限定する必要がある。Cは強度
を向上するために有効な成分であるが、本発明者らが詳
細に検討した結果によれば、本発明の如き高Mn鋼にお
いてはC量が増加するにつれて母材靱性、HAZ靱性が
劣化する。Cの悪影響は母材靱性においてより顕著であ
り、0.01%の添加あたりシャルピー試験のエネルギ
ー遷移温度が約10〜15℃上昇する。本発明では母材
強度を確保でき、母材靱性を極端に劣化させない範囲と
してCを0.01%〜0.06%とした。
【0007】次に、Siは溶鋼の脱酸を行う上で有効な
元素であり、強度上昇にも効果があるが多量に添加した
場合、粗大な酸化物を生成しやすく、本発明のような強
度の高い鋼では延性や靱性を大きく損ねるため、0.0
1〜1.0%の範囲とした。Mnは本発明の最も重要な
構成元素のひとつである。本発明においては冷却速度の
広い範囲でほぼマルテンサイト単相組織となって、安定
して母材強度、HAZ靱性を確保するに必要な量として
下限を6%とした。さらにMn量を高めるとHAZ靱性
は向上するが、15%を超えると逆に靱性が劣化しはじ
める。母材靱性も同様に15%を超えるMn量では靱性
が劣化する傾向にあり、その劣化量はHAZ靱性におけ
るよりも顕著であるため、本発明においてはMn量の上
限を15%とした。
【0008】Pは粒界脆化を助長して母材、HAZとも
靱性を劣化させるため、極力低減することが好ましい。
特に焼入れ焼戻し処理を施す場合は粒界脆化感受性が高
くなるため、圧延ままで使用する場合よりも一層低減す
る必要があるため、許容できる量として0.005%以
下とした。SについてもMnSを形成したり粒界に偏析
して延性や靱性を劣化させるため、極力低減することが
好ましいが、許容できる量として0.01%以下とし
た。AlはSiと同様、脱酸元素として有効であるが、
過剰に添加すると、粗大な酸化物を形成して延性、靱性
の劣化要因となるため、0.005〜0.1%の範囲と
した。
【0009】Bは高Mn鋼における粒界脆化を抑制する
ために特に重要な元素であり、その効果を生じさせるた
めには0.0003%以上の添加が必要である。しか
し、0.010%を超える添加を行うと、析出物を生成
しやすくなり粒界脆化抑制効果が失われると共に、析出
物による靱性劣化を生じるため、0.0003〜0.0
10%の範囲とした。NはBNを形成してBの粒界脆化
抑制効果を減ずるため、含有量は少ない方が好ましい
が、許容できる範囲として、上限を0.010%とし
た。
【0010】以上が、本発明鋼の基本成分の各々の限定
理由であるが、母材及びHAZの特性向上の目的で、必
要に応じてCr、Moの内1種以上、あるいは、Ni、
Cuの内1種以上、さらに、Cr、Moの内1種以上、
および、Ni、Cuの内1種以上を含有することができ
る。Crは母材強度、特に降伏点を高めるのに有効であ
るが、2.0%を超えて添加すると、靱性を低下させる
ため、上限を2.0%とした。MoはCrと同様、降伏
点を高め、さらに粒界脆化抑制効果を有するため、有用
な元素であるが、2.0%を超えて過剰に添加した場合
は粒界脆化抑制効果が飽和し、一方で靱性を劣化させる
ため、好ましくない。従って、Moの上限は2.0%と
した。
【0011】Niは含有量が多いほど母材靱性、HAZ
靱性共に遷移温度としては改善されるが、一方で、シェ
ルフエネルギーが低下する傾向にあり、3.0%を超え
る添加をしても、靱性改善効果が飽和するため、経済性
も考慮して3.0%を上限とした。Cuの効果も定性的
にはNiとほぼ同様であるが、1.5%を超える多量の
添加は鋳片の割れや析出脆化の問題等が顕著になるた
め、上限を1.5%とした。
【0012】以上が本発明の化学成分の限定理由である
が、B添加高Mn鋼において好ましい強度・靱性を得る
ためには上記成分組成範囲に転炉、電気炉等の溶解炉で
溶製され、造塊−分塊法や連続鋳造法等で製造した鋼片
を鋼板に製造する際、以下に示す適正な製造方法とする
必要がある。即ち、焼入れままあるいは焼入れ焼戻し処
理で製造する場合は、1000℃以上に加熱した後熱間
圧延し、続いてAc3 変態点〜1000℃の温度域に再
加熱した後、該温度から冷却するに際して700℃〜3
00℃の温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上とな
るように冷却する、あるいは冷却後さらに450℃〜A
1 変態点+50℃の温度で焼き戻す必要がある。ま
た、再加熱処理をせずに製造する場合は、950℃〜1
150℃に加熱し、900℃以下での圧下率が10〜5
0%で、仕上げ温度が750℃〜850℃である熱間圧
延を施し、圧延後の冷却に際して700℃〜300℃の
温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上となるように
冷却し、あるいは冷却後さらに450℃〜Ac1 変態点
+50℃の温度に焼き戻す必要がある。以下にその理由
を示す。
【0013】先ず、焼入れままあるいは焼入れ焼戻し処
理により製造する場合は、熱処理に先だつ熱間圧延によ
り、所望の板厚とする。この熱間圧延は形状を調整する
ことが主目的であるため、特に複雑な圧延条件とする必
要はなく、溶体化を十分図るために加熱温度が1000
℃以上となっていれば良い。従って、冷鋼片を1000
℃以上に再加熱しても、あるいは溶鋼を凝固させた後、
冷却途中1000℃以上で保持し、鋼片の温度分布を均
一化した後、熱間圧延を行っても何等効果は異ならな
い。また、熱間圧延後の冷却は空冷ままでも水冷あるい
は徐冷でも構わない。熱間圧延を行った後、Ac3 変態
点〜1000℃の温度範囲に再加熱する。
【0014】これは、Ac3 点以下では完全にオーステ
ナイト化しないため、組織が不均一となって強度、靱性
が劣化し、1000℃を超えるとオーステナイト粒が混
粒化、粗大化して靱性が劣化するため、この温度範囲と
する必要がある。一般の調質高張力鋼では靱性に有害な
粗大なベイナイトの生成を抑制するために加熱後の冷却
は水冷等により可能な限り速い冷却速度で冷却すること
が必須条件となるが、本発明鋼ではMn量を高めて焼入
性を十分確保しているため、急冷する必要はない。
【0015】ただし、強度確保のために確実にマルテン
サイト単相組織とするため、及び徐冷による不純物の粒
界偏析を避けるため、冷却するに際して700℃〜30
0℃の温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上となる
ように冷却することが好ましい。この条件を満足する限
りは必ずしも水冷等の焼入れ処理を施す必要はない。加
熱温度〜700℃、300℃以下については特に限定し
ないが、粒界脆化をできる限り助長しないという意味
で、炉冷のような徐冷は避ける方が好ましい。
【0016】以上の製造方法により十分優れた強度、靱
性を得ることが可能であり、通常の調質高張力鋼のよう
に靱性向上のための比較的高温での焼戻し処理を行うこ
とは必須条件ではない。ただし、Ac3 変態点〜100
0℃の温度に再加熱、冷却ままでは降伏強度が低めにな
るため、さらに降伏強度を高める必要のある場合は45
0℃〜Ac1 変態点+50℃の温度範囲で焼き戻せば引
張り強度、靱性の大幅な低下を伴わずに降伏点の上昇が
達成できる。即ち、図1はCを約0.02%、Siを約
0.1%、Bを約0.001%含み、Mnを約8%〜1
0%含む鋼を850℃に再加熱し、水焼入れした後、種
々の温度で焼戻したときの焼戻し温度と強度、靱性(シ
ャルピー試験において、吸収エネルギーが7.0kgf
mとなる温度:vTr7.0 )の関係を調べた図である
が、B添加高Mn鋼は焼戻し温度が400℃以下の焼戻
し温度範囲において顕著な靱性劣化を示すため該温度域
を避けて焼戻しを施す必要がある。この靱性劣化は粒界
破壊に起因するものである。
【0017】焼入れまま(as Q)ではB添加により
粒界破壊を抑制しているため、靱性は良好であり、焼入
れままで用いることが可能である。ただし、焼入れまま
では若干降伏強度(0.2%耐力)が低めとなる傾向が
あるため、高降伏強度を必要とする場合は焼戻しを施す
必要がある。図1で明らかなように焼戻し温度が450
℃〜550℃の範囲では引張り強さの大幅な低下を生ず
ることなく、0.2%耐力の上昇が可能であり、この温
度範囲ならば靱性の劣化も生じない。600℃以上で
0.2%耐力の大きな低下が生じるが、これはAc1
態点を超えて焼戻したため、オーステナイトが析出した
ことによる。低降伏点鋼あるいは低降伏比鋼を目的とす
る場合はこのようなAc1 変態点を超えて焼戻せば靱性
や引張り強さに支障なく、降伏点の低下が可能である。
【0018】ただし、例えば図1の10〜12%Mn鋼
を650℃に焼戻した場合のようにAc1 変態点を大き
く超えて焼き戻すと靱性が劣化する。実験結果に基づい
た検討から、Ac1 変態点+50℃を焼戻し温度の上限
とすることが好ましい。従って、用途により焼戻しを行
う場合の焼戻し温度は靱性劣化を許容できる範囲として
450℃〜Ac1 変態点+50℃の範囲とする。焼戻し
温度に加熱した後の冷却条件は問わないが、炉冷のよう
な徐冷は粒界脆化が助長されるため避けるべきである。
【0019】さらに、本発明鋼は上記のような再加熱処
理を施さずに製造することも可能である。この場合は、
加熱時のオーステナイト粒径の細粒化と溶体化を両立さ
せて強度、靱性を向上させるために、加熱温度は950
℃〜1150℃の範囲が好ましい。加えて、圧延条件を
規制せずに圧延を行うと細粒化が不十分で靱性の低下の
懸念があり、また、0.2%耐力が極端に低下する問題
を生じるため、オーステナイトを細粒化し、かつ、伸長
粒とすることにより、靱性改善と0.2%耐力の上昇を
はかる目的で、900℃以下での圧下率が10〜50%
で、仕上げ温度が750℃〜850℃の条件内で熱間圧
延を施す必要がある。900℃以下の圧下率が10%未
満では効果が明確でなく、50%を超えると材質の異方
性が顕著となる。また、仕上げ温度が750℃未満では
セパレーションが顕著となり、シャルピー試験のシェル
フエネルギーが低下し、材質の異方性も大きくなるので
好ましくなく、逆に850℃を超える高温で圧延を終了
すると、0.2%耐力の上昇が望めない。圧延後の冷却
速度の限定理由は焼入れ焼戻し処理における焼入れ時の
冷却速度の限定理由と同じである。
【0020】圧延ままでも上記製造条件によれば十分優
れた強度、靱性を得ることが可能であるが、強度の調整
あるいは一層の高降伏応力化を必要とする場合はさらに
焼戻し処理を施すが、この場合も焼入れ焼戻し処理にお
ける焼戻し条件の限定理由と同様の理由により、焼戻し
温度の範囲は450℃〜Ac1 変態点+50℃とする必
要がある。
【0021】
【実施例】表1、表2及び表3に本発明に従って試作し
た鋼板及び比較鋼板の化学成分、母材製造履歴、母材強
度靱性、HAZの靱性等を示す。表1の本発明鋼は特許
請求の範囲第1項、第2項の方法に従って製造したもの
である。ここで、No.1〜No.14が本発明鋼であ
り、No.15〜No.25が比較鋼である。また、表
3は表1の本発明鋼No.7を用いて、再加熱処理をせ
ずに、熱間圧延ままか、圧延後焼戻し処理を施したとき
の母材製造履歴、母材強度靱性と圧延条件、焼戻し条件
の関係を検討した結果である。試験片はいずれも板厚中
心部より圧延方向に平行な方向で採取した。母材の強度
は丸棒引張り試験の0.2%耐力及び引張り強さで評価
した。一方、母材靱性はシャルピー衝撃試験における−
60℃での吸収エネルギーで評価した。また、HAZ靱
性は最高加熱温度1400℃、800℃から500℃ま
での冷却時間が160秒である溶接再現熱サイクルを付
与したときのシャルピー衝撃試験の−60℃での吸収エ
ネルギーで評価した。ちなみに本熱サイクル条件は概略
板厚20mmの鋼板を入熱量約100kJ/cmでサブ
マージアーク溶接したときのFLでの熱履歴に相当す
る。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】表2から明らかなように、No.1〜N
o.14の本発明により製造した鋼は比較鋼に比べて優
れた母材強度、靱性及びHAZ靱性を有し、−60℃の
低温でも構造物の安全性確保に十分なシャルピー試験の
吸収エネルギーを示すことが分かる。また、母材の引張
り強さは100kgf/mm2 以上である。即ち、本発
明によれば非常に高い強度と優れた母材、HAZ靱性を
兼ね備えた鋼が得られることが明らかである。
【0025】一方、No.15〜No.25の比較鋼は
本発明の要件を満足しておらず、そのため、母材強度、
靱性あるいはHAZ靱性が本発明鋼に比べて劣ることが
同様に表2から明白である。即ち、比較鋼No.15、
16はBを含有していないためHAZ靱性が著しく劣
る。No.17はP量が過剰なため、母材靱性HAZ靱
性ともに劣る。No.18〜No.21は成分範囲は本
発明範囲内であるが、焼戻し温度が適正範囲をはずれて
いるため、十分な母材靱性が得られない。また、No.
22、23は再加熱温度が1200℃と高く、オーステ
ナイトが粗大なため、母材靱性が劣る。No.24、2
5は再加熱後の冷却を炉冷としたため、冷却速度が本発
明範囲外であり、本発明に比べて強度が若干低く母材靱
性も劣化する。
【0026】
【表3】
【0027】また、表3において、再加熱処理を行わな
い場合の熱間圧延条件と母材の強度、靱性の関係を示
す。本発明の要件を満足する条件A〜Hで製造した鋼は
比較鋼に比べて優れた母材靱性を示すとともに0.2%
耐力も高くなっている。これに対して本発明の範囲を逸
脱している条件I〜Nで製造した鋼は、化学成分は本発
明範囲内にもかかわらず、靱性が劣り、0.2%耐力も
低い。即ち、比較鋼I、Jは加熱温度が高すぎるため、
靱性が劣る。加えて比較鋼Iは900℃以下の圧下率、
仕上げ温度が本発明範囲外のため、0.2%耐力も低
い。比較鋼K〜Mは加熱温度は本発明の範囲であるが、
900℃以下の圧下率あるいは仕上げ温度が本発明範囲
をはずれているため、十分な特性が得られない。比較鋼
Nは熱間圧延の諸条件が本発明の要件を満足していても
その後の焼戻し条件が適正範囲をはずれると靱性が大き
く劣化することを示している。以上の実施例から、本発
明によれば引張り強さが100kgf/mm2 以上で、
かつ−60℃程度の低温においても安全な使用に耐える
優れた母材及びHAZ靱性を有する超高張力鋼が得られ
ることが明白である。
【0028】
【発明の効果】本発明は高価なNiなどの合金元素を多
量に含有することなく、非常に高い引張り強さと優れた
母材靱性、及び広い入熱範囲で優れたHAZ靱性を有す
る超高張力鋼を可能としたものであり、本発明による鋼
を用いれば過酷な使用条件に対しても高強度で、かつ安
全性の高い溶接構造物を製造することが可能となり、そ
の効果は極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mn量を変えた鋼について、母材靱性と焼戻し
温度の関係を示す図、
【図2】Mn量を変えた鋼について、母材強度と焼戻し
温度の関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で C :0.01〜0.06% Si:0.01〜1.0% Mn:6〜15% P :0.005%以下 S :0.01%以下 Al:0.005〜0.1% B :0.0003〜0.010% N :0.010%以下 を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼を、
    1000℃以上に加熱した後熱間圧延し、続いてAc3
    変態点〜1000℃の温度域に再加熱した後、該温度か
    ら冷却するに際して700℃〜300℃の温度域の平均
    冷却速度が0.1℃/s以上となるように冷却すること
    を特徴とする低温靱性の優れた高マンガン超高張力鋼の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で C :0.01〜0.06% Si:0.01〜1.0% Mn:6〜15% P :0.005%以下 S :0.01%以下 Al:0.005〜0.1% B :0.0003〜0.010% N :0.010%以下 を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼を、
    1000℃以上に加熱した後熱間圧延し、続いてAc3
    変態点〜1000℃の温度域に再加熱した後該温度から
    冷却するに際して700℃〜300℃の温度域の平均冷
    却速度が0.1℃/s以上となるように冷却し、次いで
    450℃〜Ac1 変態点+50℃の温度で焼き戻すこと
    を特徴とする低温靱性の優れた高マンガン超高張力鋼の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で C :0.01〜0.06% Si:0.01〜1.0% Mn:6〜15% P :0.005%以下 S :0.01%以下 Al:0.005〜0.1% B :0.0003〜0.010% N :0.010%以下 を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼を、
    950℃〜1150℃に加熱し、900℃以下での圧下
    率が10〜50%で、仕上げ温度が750℃〜850℃
    である熱間圧延を施し、圧延後の冷却に際して700℃
    〜300℃の温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上
    となるように冷却することを特徴とする低温靱性の優れ
    た高マンガン超高張力鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で C :0.01〜0.06% Si:0.01〜1.0% Mn:6〜15% P :0.005%以下 S :0.01%以下 Al:0.005〜0.1% B :0.0003〜0.010% N :0.010%以下 を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる鋼を、
    950℃〜1150℃に加熱し、900℃以下での圧下
    率が10〜50%で、仕上げ温度が750℃〜850℃
    である熱間圧延を施し、圧延後の冷却に際して700℃
    〜300℃の温度域の平均冷却速度が0.1℃/s以上
    となるように冷却し、次いで450℃〜Ac1 変態点+
    50℃の温度に焼き戻すことを特徴とする低温靱性の優
    れた高マンガン超高張力鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 さらに重量%で、 Cr:2.0%以下 Mo:2.0%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項第
    1項〜第4項記載の低温靱性の優れた高マンガン超高張
    力鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 さらに重量%で、 Ni:3.0%以下 Cu:1.5%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項第
    1項〜第4項記載の低温靱性の優れた高マンガン超高張
    力鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】 さらに重量%で、 Cr:2.0%以下 Mo:2.0%以下 の1種または2種および、 Ni:3.0%以下 Cu:1.5%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項第
    1項〜第4項記載の低温靱性の優れた高マンガン超高張
    力鋼の製造方法。
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