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JP7634408B2 - アルミニウム合金押出材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金押出材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車等の構造部材に用いられ、強度と曲げ性に優れたアルミニウム合金押出材およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車車体の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車車体のうち、パネル(フード、ドア、ルーフなどのアウタパネル、インナパネル)や、バンパリーンフォースやドアビームなどの補強材などの部分に、それまでの鋼板等の鉄鋼材料に代えて、アルミニウム合金材料を適用することが行われている。
自動車車体の更なる軽量化のためには、自動車部材のうちでも特に軽量化に寄与する、サイドメンバー等のメンバ、フレーム類や、ピラーなどの自動車構造部材にも、アルミニウム合金材の適用を拡大することが必要となる。ただ、これら自動車構造部材には、前記自動車パネル材に比べて、素材板の更なる高強度化や、車体衝突時の衝撃吸収性や乗員の保護にもつながる圧壊性(耐圧壊性、圧壊特性)を新たな特性として付与することが必要である。
近年の自動車の衝突安全基準のレベルアップ(厳格化)によって、ヨーロッパなどでは、前記フレーム、ピラーなどの自動車構造部材には、ドイツ自動車工業会(VDA)で規格化されている「VDA238-100 Plate bending test for metallic materials(以後、VDA曲げ試験と言う)」にて評価される、自動車の衝突時における圧壊特性(耐圧壊性、衝撃吸収性)を満たすことが求められるようになっている。
これまで、VDA曲げ試験による耐圧壊性の評価が実施されている6000系合金には例えば特許文献1に記載の板材がある。特許文献1はVDA曲げ試験による曲げ角度が90°以上、0.2%耐力が250MPa以上と、構造部材として一定の要求特性を満たしているが、近年、自動車等の構造部材においては、更なる高強度化、耐圧壊性の向上が求められている。
また、構造部材の中でも例えばサイドシルでは、断面形状が複雑で、板材を素材としたプレス成形等では製造できない。そのため、複雑な断面形状の製品が長尺で得られる押出材が適しているが、VDA規格に則る圧壊特性を満足する押出材は少ない。例えば、特許文献2では、自動車フレーム材等に用いる6000系合金押出材が提案されているが、曲げ加工条件での割れがないことが特徴とされており、耐圧壊性についての記述はない。
特開2017-125240号公報 特願平5-171328号公報
このような更なる高強度化、耐圧壊性への要求を満足する押出材が、サイドシル等の構造部材には必要とされる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、強度と耐圧壊特性を従来よりも向上させた構造部材の素材となる6000系アルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、Si:0.6~1.3%(質量%、以下同じ)、Mg:0.3~0.6%、Mn:0.4~0.6%、Cu:0.05%未満を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、さらにSi含有量およびMg含有量が下記の式1及び式2を満たす化学成分組成を有し、
内部組織が繊維状組織からなり、
0.2%耐力が240MPa以上であり、
0.2%耐力(MPa)と、VDA曲げ試験における曲げ角度(度)とが、下記の式3を満たす、アルミニウム合金押出材にある。
([Mg%]-0.15)×([Si%]-0.25)≧0.113 (式1)
([Mg%]-0.45)×([Si%]-0.63)≦0.120 (式2)
[曲げ角度]≧-[0.2%耐力]+365 (式3)
上記アルミニウム合金押出材は、上記特定の化学成分組成を有し、式1及び式2を具備するようにMgおよびSiの含有量を制御し、かつ、Mn含有量の範囲の適正化により繊維状組織を得ることによって、曲げ性(=耐圧壊性)を向上させている。これにより、例えば自動車等の構造部材に適した押出材を得ることが可能となる。
実施例2の金属組織の光学顕微鏡写真。 比較例12の金属組織写真。 実施例22の腐食試験結果を示す断面の光学顕微鏡写真。 実施例23の腐食試験結果を示す断面の光学顕微鏡写真。 比較例24の腐食試験結果を示す断面の光学顕微鏡写真。 比較例25の腐食試験結果を示す断面の光学顕微鏡写真。
まず、上記化学成分組成について説明する。
Si:0.4~1.3%;
Si(ケイ素)は、Mgと共存してMg2Siを形成して強度向上に効果がある。Si含有量が0.4%より少ないとその効果が得られず、1.3%を超えると、Siの粒界析出が多くなり、靭性が低下するとともに、押出性が低下する。従って、Si含有量は0.4~1.3%の範囲、好ましくは0.6~1.3%の範囲、さらに好ましくは0.7~1.3%の範囲とするのがよい。
Mg:0.3~0.9%;
Mg(マグネシウム)は、Siとともに強度向上に効果がある。Mg含有量が少な過ぎると析出強化の効果が十分に得られず、Mg含有量が多過ぎると、押出時の変形抵抗が大きくなり、押出性が悪くなる。従って、Mg含有量は0.3~0.9%の範囲、好ましくは0.3~0.7%の範囲、さらに好ましくは0.3~0.6%の範囲とするのがよい。
Mn:0.4~0.6%;
Mn(マンガン)は、AlMnSi相として晶出し、晶出しないMnは析出して押出時の再結晶を抑制する効果がある。この効果によって熱間押出加工後の組織を繊維状組織化でき、かつ、これにより高強度化と曲げ性の向上の両立が実現できる。Mn含有量が少な過ぎると、再結晶抑制の効果が得られず再結晶組織が粗大化して強度が低下するとともに、繊維状組織を得られないため曲げ性が低下する。一方、Mn含有量が多過ぎると、焼入れ性を著しく低下させ、強度向上の効果が得られなくなる。従って、Mn含有量は0.4~0.6%の範囲とする。
Cu:0.05%未満(0%の場合を含まず);
Cu(銅)は、固溶強化により強度向上させる効果があるが、耐食性を低下させる恐れがあるため、0.05%未満に規制する。Cuはアルミニウムよりも自然電位が高く、アルミニウムの局部腐食を促進させる。なお、Cuは、不純物として含有されうるため、完全に0%にすることは困難である。
その他の元素;
Ti、B、Fe、Zn、V等のその他の元素は不可避的な不純物であり、6000系合金としてJIS規格などで規定する範囲での各々の含有を許容する。例えば、Tiは、0.10%以下、Bは、0.10%以下、Feは、0.15%以下、Znは、0.10%以下、Vは、0.10%以下まで不可避不純物としての含有が許容される。
Mg、Siの範囲;
MgおよびSiは下記の式1、式2を満たす必要がある。これらの式は、6000系アルミニウム合金において、強度をある一定の範囲とするために、MgとSiを規定するものである。式1を満たさない場合、強度が低く、構造部材として適さない。また式2を満たさない場合、強度が高すぎて、曲げ性が悪くなる。従って、MgとSiは前記の成分範囲で、かつ、これらの式1及び式2を満たすことが必要である。
([Mg%]-0.15)×([Si%]-0.25)≧0.113 (式1)
([Mg%]-0.45)×([Si%]-0.63)≦0.120 (式2)
<製造方法>
上記アルミニウム合金押出材の製造方法としては、次の方法を採用することができる。
すなわち、上記化学成分組成を有する鋳塊を均質化処理し、
該鋳隗に熱間押出加工を施して押出材を作製し、
該押出材に焼入れ処理を施した後、焼き戻し処理を行い、
上記焼入れ処理は、上記熱間押出加工直後に上記押出材を急冷する、または、上記熱間押出加工後に冷却された上記押出材を溶体化処理温度に再加熱した後に急冷することにより行うと共に、
上記急冷は、少なくとも100℃までの冷却を10℃/秒以上の冷却速度で行う、上記アルミニウム合金押出材の製造方法である。以下、さらに詳しく説明する。
(鋳造)
溶解、鋳造工程では、上記化学成分組成の範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、半連続鋳造(DC鋳造)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造し、鋳隗(ビレット)を作製する。
(均質化処理)
均質化処理は、組織の均質化、すなわち鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすとともに、Al-Mn-Si系化合物を微細析出させることで、熱間加工後の繊維状組織を安定化することを目的とする。この均質化処理の条件は、450~590℃の温度範囲で、5~24hの保持時間実施される。均質化処理の加熱温度が450℃よりも低い場合には、鋳塊中の偏析層が均質化されず、さらにAl-Mn-Si系化合物の析出が不十分になることで、熱間加工後の組織が不均一となる。一方、590℃より高い場合には、鋳塊が局部的に溶融するおそれがあるため、実質的な製造が困難となる。
(熱間押出加工)
均質化処理後の鋳塊を温度450~550℃に加熱し、温度を維持した状態で、熱間押出加工を実施する。鋳塊温度が450℃より低い場合には、押出荷重が高くなり、押出が困難となる。また550℃よりも高い場合には、熱間割れの発生や、晶出物、析出物の粗大化の可能性がある。
(焼入れ処理)
押出加工後においては、押出材に焼入れ処理を施す。この焼入れ処理は、具体的には、熱間押出加工直後に押出材を急冷する方法と、熱間押出加工後に冷却された押出材を溶体化処理温度に再加熱した後に急冷する方法とのいずれかによって行うことができる。いずれの方法を採用する場合でも、上記急冷は、少なくとも100℃までの冷却を10℃/秒以上の冷却速度で行うことを要件とする。
熱間押出加工直後に押出材を急冷する方法は、例えば、熱間押出加工直後の押出材の温度が、500~560℃の範囲内である場合に適用可能である。急冷の方法としては、押出機の出側において押出材を水冷または強制空冷する方法(プレス焼入れ)などがある。
また、熱間押出加工後の押出材の温度が何℃であっても、任意の手法で冷却された押出材を再度500~560℃に加熱した後急冷する方法が選択可能である。冷却方法としては、水冷、強制空冷等がある。
上記いずれの方法においても、急冷は、水焼入れするのが好適である。これにより、少なくとも100℃までの冷却における冷却速度を確実に10℃/秒以上とすることが可能となる。冷却速度が10℃/秒未満の場合には、冷却中に固溶元素の析出が進行して、その後の時効硬化能が低下していまい、十分な強度と耐圧壊性を確保することが困難となる。
溶体化処理の温度は、上述したごとく、500~560℃とすることが好ましい。500℃以下の場合、溶体化処理前に生成していたMg-Si系などの化合物の再固溶が不十分になって、固溶Mg量と固溶Si量が低下し、強度が低下する。560℃を超える設定は、遷移金属を含む微細析出物が粗大となり、繊維状組織が得られなくなるおそれがあるので好ましくない。
(焼き戻し処理(人工時効処理))
次に、焼入れ後の押出材について、例えば150~200℃で5~24h加熱保持する焼き戻し処理(人工時効処理)を実施する。時効処理の温度と保持時間は、所望の強度等から適切な条件を選択する。時効温度が低いまたは時効時間が短い場合には、十分な強度が得られない。一方、時効温度が高いまたは時効時間が長い場合には、析出物が粗大に成長し、強度が低下する。
(ミクロ組織)
上記アルミニウム合金押出材は、上記の熱処理を含む製造方法を採用することにより、Mn添加による再結晶抑制の効果で、結晶粒のアスペクト比の平均が3.5以上となる繊維状組織とすることが可能となる。Mn含有量が上述した適正な範囲を外れていると、得られる押出材の金属組織が、繊維状組織にならず、再結晶組織となる。
繊維状組織の判定のために、結晶粒のアスペクト比を測定する場合は、まず、アルミニウム合金材の押出方向に平行な断面(L-ST断面)を設けた試料を用い、フッ酸エッチング処理をした断面について明視野で観察するか、または陽極酸化処理を施した断面について偏光で観察をすることにより、断面の画像を得る。
次に、得られた画像において、材料の厚さをtとした時に1/4t~3/4tの範囲にある結晶粒についてアスペクト比を測定する。押出方向と平行な方向の結晶粒長さをX、押出方向と直角の方向(厚さ方向)の結晶粒長さをYとした時、X/Yをアスペクト比とする。アスペクト比を測定する場合には、1つの試料に対し、3視野程度を観察することが好ましい。このとき、少なくとも500μm以上の長さの合金材を含む画像を1視野として対象に解析することが好ましい。
アスペクト比の測定には、画像解析ソフトを使用する方法や、画像を直接測定する方法がある。画像を直接測定する場合には、1視野あたり10個以上の結晶粒についてアスペクト比を測定し、平均アスペクト比とすることが好ましい。視野内の結晶粒について、厚さ方向の結晶粒長さYの最大値が100μm以下で、平均アスペクト比が3.5以上のものを繊維状組織、3.5未満のものを再結晶組織と判断する。
また、試験材によっては、結晶粒が線状に観察され、画像解析によるアスペクト比の測定が困難であるものがある。そのような試験材に関しては、アスペクト比3.5の結晶粒見本を利用した目視判定による直接的な測定に基づき繊維状組織か否かを判断する。
目視判定について具体的に説明すると、アスペクト比が3.5となる直方体図形を作成して判定する。測定対象の結晶粒が、アスペクト比3.5の直方体と比べて長ければ、アスペクト比3.5以上と判定される。そして、視野内の結晶粒について、厚さ方向の結晶粒長さYの最大値が100μm以下で、かつアスペクト比が3.5以上の結晶粒が1視野あたり10個以上であったとき繊維状組織と判断する。
(強度と耐圧壊性)
構造部材に必要となる強度の目安として、0.2%耐力を使用する。0.2%耐力は、時効処理後の押出材について引張試験を実施して測定する。また、耐圧壊性の目安としてVDA曲げ試験によって得られる曲げ角度を使用する。0.2%耐力および、VDA曲げ試験における曲げ角度が下記の関係式3を満たすものを合格とする。
[曲げ角度]≧-[0.2%耐力]+365 (式3)
次に、上記アルミニウム合金押出材及びその製造方法に関する実施例について詳しく説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
[実験例1]
本例では、表1に示す複数の化学成分組成のアルミニウム合金を加熱して得たアルミニウム合金溶湯を、直径90mmの鋳塊ビレットとし、500~590℃で均質化処理を行い、ビレット加熱温度520℃、押出速度6m/分の条件で押出加工を行うことによって、厚さ1.5mm、幅70mmの押出平板材(試験材)を得た。次いで、表1に示す焼入れ速度で焼入れを行い、185℃で6時間の人工時効処理を実施した。
(ミクロ組織観察)
時効処理後の試験材について、押出方向に平行な断面(L-ST断面)を切り出した後、断面を鏡面研磨し、陽極酸化処理によるエッチングを行った後、光学顕微鏡での断面の偏光観察を実施した。観察された画像を基にアスペクト比を測定し、平均アスペクト比が3.5以上の場合を繊維状組織、平均アスペクト比3.5未満の場合を再結晶組織と判断した。参考のために、繊維状組織の例を示す画像として、実施例2の画像を図1として示し、繊維状組織に該当しない再結晶組織の例を示す画像として、比較例12の画像を図2として示す。
(引張試験)
時効処理後の試験材から、JIS Z 2241:2011の5号試験片を採取し、引張試験を室温にて実施した。試験片の引張方向は、押出方向に平行とした。試験方法はJIS
Z 2241:2011に準拠し、標点間距離50mm、引張速度はまず2mm/分に設定し、0.2%耐力測定以降は、20mm/分に設定した。
(VDA曲げ試験)
衝撃吸収性を評価する曲げ試験は、ドイツ自動車工業会(VDA)の規格「VDA238-100 Plate bending test for metallic materials」に従って実施した。曲げ角度は、前述の規格に記載の式に基づき、最大荷重時のストロークより算出した。
上記の引張試験により得られた0.2%耐力と、VDA曲げ試験により得られた曲げ角度が、下記の式3を満たすものを合格、つまり構造部材としての要求を満たすものとした。
[曲げ角度]≧-[0.2%耐力]+365 (式3)
各試験の結果は表1に示す。
Figure 0007634408000001
実施例1~6は、表1に示した化学成分が適正な範囲内にあるアルミニウム合金を用いて、適切な焼入れ速度で焼入れを実施しているため、図1のように内部組織が平均アスペクト比3.5以上の繊維状組織となっている。このため、高強度と良好な曲げ性を得ることができ、表2に示したように、0.2%耐力とVDA曲げ試験による曲げ角度の関係が式3を満たしている。
比較例7~13は、Mg、Si、Cuの含有量は適正な範囲内であるが、Mnを添加していないため、繊維状組織にならず、図2のように平均アスペクト比3.5未満の再結晶組織となっている。0.2%耐力は250~270MPaと比較的高いが、再結晶組織であるため曲げ角度の値が低く、式3を満たさない。
比較例14~17は、MgとSiの含有量は適正な範囲内であるが、Cuは適正な範囲より多く添加されており、Mn含有量は適正範囲よりも少ない。Cuが添加されているため、0.2%耐力が260~290MPaと比較例7~13よりも高くなっているが、Mn添加量が少ないため、平均アスペクト比3.5未満の再結晶組織を呈しており、曲げ角度の値が低く、式3を満足していない。
比較例18はMg、Si、Cuの含有量が適正な範囲内だが、Mnが多く添加されている。Mn添加量が多すぎると焼入れ性を著しく低下させるため、0.2%耐力が137MPaと強度が低く、式3を満たさない。
比較例19~21は、化学成分が適正な範囲内のアルミニウム合金を用いているが、焼入れ速度が遅い。このため、0.2%耐力が150~170MPaと低く、式3を満たさない。
[実験例2]
本例では、表2に示す複数の化学成分組成のアルミニウム合金(実施例22、23及び比較例24、25)を用い、均質化処理及び人工時効処理については、表2に示す条件を採用し、その他の条件は、実験例1と同様として押出平板材(試験材)を得た。実施例22及び23は、すべての主要化学成分が好適な範囲にあり、一方、比較例24及び25は、Cu含有量が0.05%を超える例である。本例では、実験例1の場合の評価項目に加えて、Cu含有量と耐食性との関係を調べる以下の腐食試験を行った。
(腐食試験)
腐食試験は、耐粒界腐食性の評価により行った。耐粒界腐食性の評価試験は、ISO11846 Method Bに準拠した。供試材は、溶体化処理および人工時効処理後の各供試材板とし、アセトンで脱脂後、70%HNO3および48%HFを純水に加えた洗浄溶液を95℃に加熱し、1分浸漬した後、70%HNO3で洗浄後、水洗し、室温乾燥を行った。腐食液として、HClおよびNaClを含む水溶液(NaClを30g/Lおよび36%の濃塩酸を10±1mL/L含有する)を準備し、25℃で24時間、材料の表面積1cm2あたり5mlの腐食液に上記供試材を浸漬させた。次いで、70%HNO3への浸漬およびプラスチックブラシを用いたブラッシングにより腐食生成物を除去し、水洗後、室温乾燥させた。続いて、光学顕微鏡にて各断面を観察した。断面観察により、表面からの最大腐食深さが250μm以下の場合を耐食性に優れ合格(○)と判定し、最大腐食深さが250μmを超える場合を耐食性が低く不合格(×)と判定した。評価結果を他の評価項目とともに表2に示す。
Figure 0007634408000002
また、すべての例について、腐食試験の結果を観察した断面の光学顕微鏡写真を図3~図6に示す。
表2からわかるように、すべての例は、腐食試験以外は良好な結果を示したが、腐食試験において、実施例22、23が合格、比較例24、25が不合格となった。
図3及び図4に示されているように、Cu含有量が0.01%未満の実施例22及びCu含有量が0.03%の実施例23においては、腐食試験後において全く腐食が発生しておらず、耐食性に優れていた。
一方、図5及び図6に示されているように、Cu含有量が0.07%の比較例24及びCu含有量が0.10%の比較例25においては、腐食試験後において、いずれも表面からの最大腐食深さが250μmを超える腐食が発生しており、耐食性が低い結果となった。
この実験例2の結果から、Cu含有量を0.05%以下に制限することが耐食性向上において非常に重要であることが理解できる。

Claims (3)

  1. Si:0.6~1.3%(質量%、以下同じ)、Mg:0.3~0.6%、Mn:0.4~0.6%、Cu:0.05%未満を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、さらにSi含有量およびMg含有量が下記の式1及び式2を満たす化学成分組成を有し、
    内部組織が繊維状組織からなり、
    0.2%耐力が240MPa以上であり、
    0.2%耐力(MPa)と、VDA曲げ試験における曲げ角度(度)とが、下記の式3を満たす、アルミニウム合金押出材。
    ([Mg%]-0.15)×([Si%]-0.25)≧0.113 (式1)
    ([Mg%]-0.45)×([Si%]-0.63)≦0.120 (式2)
    [曲げ角度]≧-[0.2%耐力]+365 (式3)
  2. 上記化学成分組成を有する鋳塊を均質化処理し、
    該鋳隗に熱間押出加工を施して押出材を作製し、
    該押出材に焼入れ処理を施した後、焼き戻し処理を行い、
    上記焼入れ処理は、上記熱間押出加工直後に上記押出材を急冷する、または、上記熱間押出加工後に冷却された上記押出材を溶体化処理温度に再加熱した後に急冷することにより行うと共に、
    上記急冷は、少なくとも100℃までの冷却を10℃/秒以上の冷却速度で行う、請求項1に記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
  3. 上記急冷は、水焼入れにより行う、請求項2に記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
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