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JP7627612B2 - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

硫化物固体電解質の製造方法 Download PDF

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JP7627612B2 JP2021078663A JP2021078663A JP7627612B2 JP 7627612 B2 JP7627612 B2 JP 7627612B2 JP 2021078663 A JP2021078663 A JP 2021078663A JP 2021078663 A JP2021078663 A JP 2021078663A JP 7627612 B2 JP7627612 B2 JP 7627612B2
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Description

本発明は、硫化物固体電解質の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたが、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を硫化物固体電解質層に換えた電池の開発が行われている。
硫化物固体電解質層に用いられる硫化物固体電解質の製造方法としては、固相法と液相法に大別され、さらに液相法には、硫化物固体電解質材料を溶媒に完全に溶解させる均一法と、硫化物固体電解質材料を完全に溶解させず固液共存の懸濁液を経る不均一法とがある。例えば、固相法としては、硫化リチウム、五硫化二リン等の原料をボールミル、ビーズミル等の装置を用いてメカニカルミリング処理を行い、必要に応じて加熱処理をすることにより、非晶質又は結晶性の硫化物固体電解質を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、硫化リチウム等の原料に機械的応力を加えて固体同士の反応を促進させることにより硫化物固体電解質が得られる。
一方、液相法のうち均一法としては、硫化物固体電解質を溶媒に溶解して再析出させる方法が知られ(例えば、特許文献2参照)、また不均一法としては、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒中で硫化リチウム等の硫化物固体電解質原料を反応させる方法が知られている(特許文献3、4、及び非特許文献1参照)。例えば、特許文献4には、LiPSI構造の硫化物固体電解質の製造方法として、ジメトキシエタン(DME)を使用し、LiPS構造と結合させてLiPS・DMEを得る工程を含むことが開示されている。得られた硫化物固体電解質のイオン伝導度は5.5×10-5S/cm(カルシウムをドープしたもので3.9×10-4S/cm)である。近年、全固体電池の実用化に向け、汎用性や応用性に加えて簡便かつ大量に合成できる方法として液相法が注目されている。
国際公開第2017/159667号パンフレット 特開2014-191899号公報 国際公開第2014/192309号パンフレット 国際公開第2018/054709号パンフレット
"CHEMISTRY OF MATERIALS"、2017年、第29号、1830-1835頁
ところが、従来のメカニカルミリング処理等を伴う固相法は、固相反応が中心であり、硫化物固体電解質を純度よく得られやすいため高いイオン伝導度を実現できるものの、反応時間が長いという問題点があった。
液相法では、硫化物固体電解質を溶解させるため、析出時に硫化物固体電解質成分の一部の分解や欠損が生じるなどの理由から、固相合成法と比較して高いイオン伝導度を実現することが難しかった。
例えば、均一法では、原料や硫化物固体電解質を一旦完全溶解させるため液中に成分を均一に分散させることができる。しかし、その後の析出工程では、各成分に固有の溶解度に従って析出が進行するため、成分の分散状態を保持したまま析出させることが極めて困難である。その結果、各成分が分離して析出してしまう。また、均一法では溶媒とリチウムとの親和性が強くなりすぎてしまうため、析出後に乾燥しても溶媒が抜けにくい。これらのことから、均一法では、硫化物固体電解質のイオン伝導度が大幅に低下してしまう問題がある。
また、固液共存の不均一法においても、硫化物固体電解質の一部が溶解するため、特定成分の溶出により分離が起こり、所望の硫化物固体電解質を得ることが難しい。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、副反応等が生じにくいため純度が高く、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を簡便に製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
1.後記する錯体(1)と後記する錯体(2)とをそれぞれ調製することにより、副反応等が生じにくく、ハロゲン原子が結晶内から溶出することを抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得ることができること。
2.後記する錯体(1)と後記する錯体(2)を混合することにより、錯体(1)と錯体(2)の反応が迅速に進行し、簡便に、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得ることができること。
すなわち、本発明は以下の[1]~[17]を提供するものである。
[1] リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む硫化物を構成要素として含む錯体(1)と、リチウム原子及びハロゲン原子を含むハロゲン化物を構成要素として含む錯体(2)と、をそれぞれ調製すること、前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合すること、を含む、硫化物固体電解質の製造方法。
[2] 前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することの後に、更に加熱することを含む、[1]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[3] 前記加熱を90~250℃で行う、[2]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[4] 前記加熱を0.1~100.0Paで行う、[2]又は[3]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[5] 前記混合を、溶媒中で行う、[1]~[4]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[6] 前記混合を、粉砕機を用いて行う、[1]~[5]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[7] 前記硫化物が、非晶質LiPS又は結晶性LiPSを含む、[1]~[6]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[8] 前記錯体(1)が更に錯化剤(1)を構成要素として含み、前記錯体(2)が更に錯化剤(2)を構成要素として含む、[1]~[7]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[9] 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、ヘテロ原子を有する化合物を含む、[8]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[10] 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、少なくとも1つのアミノ基又はエーテル結合を有する化合物を含む、[8]又は[9]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[11] 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、分子中に少なくとも二つの第三級アミノ基を有する化合物を含む、[8]~[10]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[12] 前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することにより、前記錯化剤(1)、錯化剤(2)、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を構成成分として含む前駆体を得る、[8]~[11]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[13] 前記前駆体における前記錯体(1)と前記錯体(2)の合計の含有量が、前記前駆体全量基準で、30~80質量%である、[12]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[14] 前記溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、[5]~[13]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[15] 前記錯体(1)及び前記錯体(2)の合計の質量1gに対し前記溶媒を5~50mL用いる、[5]~[14]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[16] 前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む、[1]~[15]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[17] 前記硫化物固体電解質が、CuKα線を用いたX線回折測定において、結晶性LiPSに該当する該当する2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しない、[1]~[16]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
本発明によれば、副反応等が生じにくいため純度が高く、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を簡便に製造する方法を提供することができる。
本実施形態の製造方法の好ましい形態の一例を説明するフロー図である。 (2-3)の調製例で得られたLiPSのTMEDA(N,N,N,N-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン)錯体(LiPS-TMEDA錯体)のX線回折(XRD)スペクトル(XRDパターン)である。 (3-1)の調製例で得られたLiBrのTMEDA錯体(LiBr-TMEDA錯体)のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 (3-2)の調製例で得られたLiIのTMEDA錯体(LiI-TMEDA錯体)のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 (2-3)の調製例で得られたLiPS-TMEDA錯体のTG(示差熱)-DTA(熱重量)の測定結果である。 (3-1)の調製例で得られたLiBr-TMEDA錯体のTG(示差熱)-DTA(熱重量)の測定結果である。 (3-2)の調製例で得られたLiI-TMEDA錯体のTG(示差熱)-DTA(熱重量)の測定結果である。 実施例1~3で得られた前駆体(1)~(3)のX線回折スペクトルである。 実施例1~3及び比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 実施例1及び4で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 実施例1及び5で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 曝露試験において用いられる試験装置の概略構成図である。 曝露試験による、硫化水素の発生量の経時変化を示すグラフである。 曝露試験による、硫化水素の積算発生量の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。
〔硫化物固体電解質の製造方法〕
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む硫化物と、必要に応じ錯化剤(1)と、を構成要素として含む錯体(1)と、リチウム原子及びハロゲン原子を含むハロゲン化物と、必要に応じ錯化剤(2)と、を構成要素として含む錯体(2)と、をそれぞれ調製すること、前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することを含む製造方法である。
本明細書において、「含む」及び「構成要素として含む」には文言通りのそのまま「含む」ほか、他の原子や他の分子等と結合して「含む」場合、例えば、混合する際の化合物の構成を残しながら、当該化合物を構成する少なくとも一の原子が、他の化合物を構成する少なくとも一の原子と結合等をするようにして含むような場合も含まれる。
本明細書において、「硫化物固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態における硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、リチウム原子に起因するイオン伝導度を有する硫化物固体電解質である。
「硫化物固体電解質」には、本実施形態の製造方法により得られる結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶質硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンに、硫化物固体電解質由来のピークが観測される硫化物固体電解質であって、これらにおいての硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わない材料である。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であってもよい、ものである。そして、結晶性硫化物固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶質硫化物固体電解質が含まれていてもよいものである。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶質硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、図1に図示したように後記する錯体(1)と後記する錯体(2)を混合することを含み、必要に応じ後記する乾燥等の他の工程を含んでいてもよい。錯体(1)及び錯体(2)を混合して、後記する前駆体とすることが好ましい。
前駆体の詳細については後述するが、好ましくは錯化剤(後記する錯化剤(1)又は錯化剤(2))により錯化された錯体(1)及び錯体(2)を混合して得られるものであり、また乾燥等により錯化剤を除去することで、硫化物固体電解質を形成するものであることから、本明細書において、錯体(1)及び(2)を混合して得られるものを、「前駆体」と称する。この「前駆体」は、後述するが構成成分として錯化剤(1)及び錯化剤(2)を含むことが好ましい。
硫化物固体電解質は、空気中の湿気等の水分と接触することにより加水分解反応が進行する等の理由により、硫化水素を発生する場合がある。したがって、硫化物固体電解質や電池の製造工程は、水分の少ない低露点の環境下で行われることが理想であるが、全ての工程を低露点で行うことは、経済的、物理的に難しく、現実的にはドライルームレベルの高露点(例えば、露点-60~-20℃)で硫化物固体電解質を扱えることが要求される。
本発明の製造方法によれば、高露点での製造が可能となり、製造工程のスケールアップに優れた効果を発揮する。
<混合>
本実施形態の混合は、錯体(1)と錯体(2)とを混合するものであれば特に制限されることはなく、液相法と固相法による混合のいずれであってもよく、さらに液相法としては、硫化物固体電解質材料を溶媒に完全に溶解させて混合する均一法であっても、硫化物固体電解質材料を完全に溶解させず固液共存の懸濁液を経て混合する不均一法であってもよい。
混合工程で粒径が大きくなる造粒が生じず、また低温で簡易な装置で製造可能であるとの観点からは、均一法及び不均一法のように溶媒中で行うことが好ましく、高いイオン伝導度を達成する観点及び溶媒の使用に伴う環境負荷を低減する観点からは固相法が好ましい。
錯体(1)と錯体(2)は固体であっても液体であってもよいが、通常これらは固体又は後記するスラリーである。
錯体(1)及び錯体(2)の混合の方法には特に制限はなく、錯体(1)及び錯体(2)を混合できる装置に、それぞれ調製した錯体(1)及び錯体(2)を投入して混合すればよい。また、混合は、混合時間を短縮し、均一の錯体(1)及び錯体(2)を得るために、後記するように溶媒中で行うことが好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法においては、錯体(1)及び錯体(2)を混合することを含む。混合するための装置としては少なくとも混合できれば特に制限はないが、粉砕機を用いて行うことが好ましい。例えばボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される固体原料の粉砕を目的として用いられる機器を用いてもよいし、溶媒中で例えば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機により混合してもよい。
混合に用いる粉砕機としては、粒子を混合できるものであれば特に制限なく、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。媒体式粉砕機の中でも、前駆体が、主に錯化剤、溶媒等の液体を伴う液状態、又はスラリー状態であることを考慮すると、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、混合操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
また、混合物の量によっては乳鉢等を用いて混合することもできる。
また、粉砕機で混合する前駆体がスラリー状態である場合には、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機であることが好ましい。より具体的には、特開2010-140893号公報に記載されているような、スラリーを混合する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応容器)との間で循環させるような形態の粉砕機を用いることが好ましい。
上記粉砕機で用いられるビーズのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、0.05mmφ以上5.0mmφ以下程度とすればよく、好ましくは0.1mmφ以上3.0mmφ以下、より好ましくは0.3mmφ以上2.5mmφ以下である。
上記粉砕機で用いられるビーズの材質は、チタニア、アルミナ又はジルコニアを適宜選択することができる。
機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、硫化物やハロゲン化物
(以下、原料含有物とも記載する。)と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、原料含有物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型等が好ましい。
また、混合物の量によっては撹拌子を用い、メカニカルスターラーによって撹拌してもよい。
錯体(1)及び錯体(2)を混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。
また混合時間は、固相法であれば0.1~150時間程度、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは1~120時間、より好ましくは2~100時間である。
また混合時間は、液相法であれば0.1~100時間程度が好ましく、錯体の構成成分である錯化剤が後記するアミン化合物である場合には、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは1~50時間、より好ましくは2~10時間であり、錯体の構成成分である錯化剤が後記するアミン化合物以外、例えばエーテル系化合物である場合には、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは20~90時間、より好ましくは30~80時間である。
リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む硫化物を構成要素として含む錯体(1)、及びリチウム原子及びハロゲン原子を含むハロゲン化物を構成要素として含む錯体(2)を混合することで、錯体(1)及び錯体(2)に含まれるリチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子と錯化剤との作用が促進される。これにより硫化物及びハロゲン化物に含まれる各原子が錯化剤を介して及び/又は介さずに直接互いに結合した前駆体が得られる。すなわち、本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において、錯体(1)及び錯体(2)を混合して得られる前駆体は、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子により構成されるものであり、上記の錯体(1)及び錯体(2)を混合することにより、前駆体を含有する物が得られることとなる。
このように錯体(1)及び錯体(2)を別々に作製し混合することにより、前記のようにハロゲン原子及び硫黄原子を前駆体に取り込むことができる。更に、錯体(1)及び錯体(2)を別々に作製することで、副生成物の抑制ができ、また、錯体(1)を作製する際の副生成物及び錯体(2)を作製する際の副生成物を除去することができるため、前駆体の純度を改善することができる。加えて、錯体(1)及び錯体(2)のように錯体同士の反応となるため、反応時間を短縮することが可能となる。
本実施形態において、溶媒中で混合する場合には得られる前駆体は、通常、固体である前駆体を含む懸濁液(スラリー)として得られるが、その後、後記する乾燥工程により粉末状としてもよい。
<錯体(1)>
本実施形態の錯体(1)は、後記する硫化物を構成要素として含むことをし、更に後記する錯化剤(1)を構成要素として含んでいてもよい。
これらを1種のみ用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
錯体(1)は、非晶質LiPS又は結晶性LiPSを含むことが好ましい。
錯体(1)中の錯化剤(1)の含有量は、イオン伝導度が高い固体電解質を得る観点から、錯体(1)全量基準で10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、結晶形成の観点から80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
錯体(1)は粒子状であることが好ましく、その粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、後記する錯体(2)は、錯体(1)と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち錯体(1)の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
(硫化物)
本実施形態の硫化物は、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含み、PS構造等を有するLiPS等が好ましい。本実施形態の製造方法は、固体電解質に主構造として存在するLiPS等のリチウムを含む構造体を原料として用いるため、特許文献3等のように本実施形態の硫化物を経ずに硫化物固体電解質を製造する場合に比べて、当該構造体の構成比率を高くすることができ、イオン伝導度が向上する。
本実施形態の硫化物は、非晶質LiPS又は結晶性LiPSを含むことが好ましい。
本実施形態の硫化物を構成要素とする錯体を使用し、かつ後記する錯体(2)と混合することにより、ハロゲン原子が分散して定着した硫化物固体電解質が、より得られやすくなる。その結果、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られることとなる。
硫化物の原料として、例えばリチウム原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる少なくとも一種を含む化合物を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
このように硫化物を構成要素とする錯体を使用することで、容易に高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る観点から、原料としては、硫化リチウム(LiS)、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リンが挙げられ、原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム及び五硫化二リンの組み合わせが好ましく挙げられる。
硫化物として硫化リチウム及び五硫化二リンから作製したLiPSを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性、及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70~80mol%が好ましく、72~78mol%がより好ましく、74~76mol%が更に好ましい。
また、必要に応じて、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;などを用いてもよい。
(錯化剤(1))
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法では、錯化剤として錯化剤(1)及び錯化剤(2)を用いることで、錯体(1)及び錯体(2)が得られやすくなり、イオン伝導度が高い固体電解質がえられるため好ましい。
錯化剤(1)及び後記する錯化剤(2)は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
本明細書において、錯化剤(錯化剤(1)及び後記する錯化剤(2))とは、錯体(1)の構成要素である硫化物及び錯体(2)の構成要素であるハロゲン化物と錯体形成する化合物である。好ましくはリチウム原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子等と錯体形成することが可能な物質であり、より好ましくは前駆体に含まれるリチウム原子を含む錯体(1)の構成要素である硫化物や錯体(2)の構成要素であるハロゲン化物等と作用して前駆体の形成を促進させる性状を有するものである。
錯化剤としては、上記性状を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム原子との親和性が高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、塩素原子等のヘテロ原子を含む化合物が好ましく、これらのヘテロ原子を含む基を有する化合物がより好ましく挙げられる。これらのヘテロ原子、該へテロ原子を含む基は、リチウムと配位(結合)し得るからである。
錯化剤は、その分子中のヘテロ原子がリチウム原子との親和性が高く、本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質に主構造として存在する代表的にはPS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体、またハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料と結合し、集合体を形成しやすい性状を有するものと考えられる。そのため、上記原料含有物と、錯化剤とを混合することにより、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体が満遍なく存在することとなり、ハロゲン原子がより分散して定着した前駆体が得られるので、結果としてイオン伝導度が高く、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質が得られるものと考えられる。
したがって、錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、ヘテロ原子を有する化合物を採用することが好ましい。
更に分子中に少なくとも二つの配位(結合)可能なヘテロ原子を有することが好ましく、分子中に少なくとも二つヘテロ原子を含む基を有することがより好ましい。分子中に少なくとも二つのヘテロ原子を含む基を有することにより、錯体(1)と錯体(2)とを混合することで、錯体(1)の構成要素である例えば代表的にはPS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体である硫化物と、錯体(2)の構成要素であるハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とを、分子中の少なくとも二つのヘテロ原子を介して結合させることができる。これにより前駆体中でハロゲン原子がより分散して定着する。その結果、イオン伝導度が高く、硫化水素の発生が抑制された硫化物固体電解質が得られることとなる。また、ヘテロ原子の中でも、酸素原子又は窒素原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。酸素原子を含む場合にはエーテル結合を分子内に有することが好ましく、窒素原子を含む基としてはアミノ基が好ましい、すなわち錯化剤としてはアミン化合物が好ましい。
このため、錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、少なくとも1つのアミノ基又はエーテル結合を有する化合物を含むことが好ましい。
アミン化合物としては、分子中にアミノ基を有するものであれば、前駆体の形成を促進し得るので特に制限はないが、分子中に少なくとも二つのアミノ基を有する化合物が好ましい。このような構造を有することで、PS構造を含むLiPS等のリチウムを含む硫化物と、ハロゲン化リチウム等のリチウムとを、分子中の少なくとも二つの窒素原子で介して結合させることができるので、前駆体中でハロゲン原子がより分散して定着するため、その結果、イオン伝導度の高い硫化物固体電解質が得られることとなる。
このため、錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、分子中に少なくとも二つの第三級アミノ基を有する化合物を含むことが好ましい。
このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルジアミノプロパン、N,N’-ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N-ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N-メチルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルフェニレンジアミン、N,N’-ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルナフタレンジアミン、N-ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N-ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、上記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン、またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物、ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物、モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物、イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、上記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン、上記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン、上記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他、例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス[(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
上記の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、アミノ基として第三級アミノ基を有する三級アミンであることが好ましく、二つの第三級アミノ基を有する三級ジアミンであることがより好ましく、二つの第三級アミノ基を両末端に有する三級ジアミンが更に好ましく、第三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンがより更に好ましい。上記のアミン化合物において、三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパンが好ましい。
アミン化合物以外の他の錯化剤としては、例えば、酸素原子、塩素原子等のハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基を有する化合物は、リチウム原子との親和性が高く、上記のアミン化合物以外の他の錯化剤として挙げられる。また、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。
上記の他の錯化剤として窒素原子を持たない化合物を用いることもできる。例えばエタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;後記するエーテル系溶媒;トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等のハロゲン原子含有芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、エーテル系溶媒が好ましく、例えば、脂肪族エーテル、脂環式エーテル、複素環式エーテル、芳香族エーテル等のエーテル化合物が挙げられる。分子内にエーテル結合は、1個でも良いが2個以上有していてもよく、リチウム原子等との配位結合の強さの観点からは、2個以上有しているグリコール系が好ましい。
より具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール、ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましく、ジメトキシエタン(DME)が更に好ましい。
アミン化合物以外の他の溶媒としては、例えば、酸素原子、塩素原子等のハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基を有する化合物は、リチウム原子との親和性が高く、上記のアミン化合物以外の他の錯化剤として挙げられる。また、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。ただし、本実施形態の製造方法において、アミン化合物以外の他の錯化剤は、単独で用いる場合は錯化剤として機能するが、アミン化合物と併用する場合、アミン化合物が既述の錯化剤としての機能を支配的に果たすため、錯化剤としての機能は実質的に果たさず、後述する溶媒としての機能を果たすものとなり得る。
なお、これらの溶媒は、その一部、例えばヘテロ原子を有するエーテル系溶媒は、後記の溶媒としても用いられ得るものである。既述のように、錯化剤としてアミン化合物を用いる場合、アミン化合物が既述の錯化剤としての機能を支配的に果たすため、アミン化合物以外の溶媒は実質的に錯化剤としての機能は実質的に果たさず、溶媒としての機能を果たすものとなり得る。
その他錯化剤として記載したエーテル系溶媒は、錯化剤としてアミン化合物を用いた場合は溶媒としての機能を果たし、アミン化合物を用いない場合は錯化剤としての機能を果たすものとなり得る。そのため、エーテル溶媒については、その他溶媒としても例示した。
溶媒を用いる場合、錯化剤及び溶媒の合計量に対する極性溶媒の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、上限として好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
(硫化物の作製方法)
硫化物は、前記の硫化物の原料を混合することにより、作製することができる。混合は前記の混合方法と同様に行うことができる。
(錯体(1)の作製方法)
錯体(1)は、前記の硫化物と錯化剤(1)とを混合することにより、作製することができる。混合は前記の混合方法と同様に行うことができる。
<錯体(2)>
本実施形態の錯体(2)は、リチウム原子及びハロゲン原子を構成要素として含むことを要し、更に後記する錯化剤(2)を構成要素として含むことが好ましい。
これらを1種のみ用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上を組み合わせて用いる場合、複数のハロゲン化物と錯化剤(2)とからハロゲン化錯体を作製してもよいが、1種のハロゲン化物Aと錯化剤(2)とからハロゲン化錯体Aを作製し、別のハロゲン化物Bを用いてハロゲン化錯体Bを作製し、これらを混合してハロゲン化錯体を作製することがより好ましい。
錯体(2)中の錯化剤(2)の含有量は、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質を得る観点から、錯体(2)全量基準で20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、結晶形成の観点から90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
(ハロゲン化物)
ハロゲン化物は、リチウム原子及びハロゲン原子を含むものであり、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質を得る観点から、ハロゲン化物の原料は塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等のハロゲン化リチウムが好ましい。
錯体(2)を2種以上組み合わせて使用する場合には、塩化リチウム及び臭化リチウムの組み合わせ又は臭化リチウム及びヨウ化リチウムの組み合わせが好ましく、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの組み合わせがより好ましい。
臭化リチウム錯体とヨウ化リチウム錯体とを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、錯体中の錯体を除いた臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~90mol%がより好ましく、40~80mol%が更に好ましく、50~70mol%が特に好ましい。
また、必要に応じて、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム等のリチウム以外のアルカリ金属のハロゲン化物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などを用いてもよい。前記する錯体(2)も同様である。
(錯化剤(2))
錯化剤(2)については錯化剤(1)に記載したとおりである。錯化剤(2)は錯化剤(1)と同一であっても、異なっていてもよい。
(ハロゲン化物の作製方法)
ハロゲン化物は、前記のハロゲン化物の原料を混合することにより、作製することができる。混合は前記の混合方法と同様に行うことができる。
(ハロゲン化物錯体の作製方法)
ハロゲン化物錯体は、前記のハロゲン化物と錯化剤(2)とを混合することにより、作製することができる。混合は前記の混合方法と同様に行うことができる。
<錯体(1)と錯体(2)>
本実施形態は、錯体(1)と錯体(2)とを混合することを要する。
錯体(1)と錯体(2)の使用量は使用する錯体(1)と錯体(2)の種類により決まるため一概にはいえないが、錯体(1)として硫化リチウム及び五硫化二リンから作製したLiPS錯体を用い、錯体(2)として臭化リチウム錯体とヨウ化リチウム錯体を用いる場合、錯化前のLiPSに対する臭化リチウムとヨウ化リチウムの割合は、イオン伝導度を向上させる観点から30~70mol%が好ましく、35~65mol%がより好ましく、40~60mol%が更に好ましい。
(溶媒)
硫化物と錯化剤(1)の混合時、ハロゲン化物と錯化剤(2)の混合時、錯体(1)と錯体(2)の混合時に溶媒を加えることが好ましい。溶媒を用いて硫化物と錯化剤(1)の混合し、ハロゲン化物と錯化剤(2)の混合することで、錯体(1)と錯体(2)の形成が促進される。更に溶媒を用いて錯体(1)と錯体(2)を混合することで、前駆体の形成が促進され、PS構造等のリチウムを含む錯体(1)、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む錯体(2)を満遍なく存在させやすくなる。これにより、ハロゲン原子がより分散して定着した前駆体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
このような性状を有する溶媒としては、溶解度パラメータが10以下の溶媒が好ましく挙げられる。本明細書において、溶解度パラメータは、各種文献、例えば「化学便覧」(平成16年発行、改定5版、丸善株式会社)等に記載されており、以下の数式(1)により算出される値δ((cal/cm1/2)であり、ヒルデブランドパラメータ、SP値とも称される。

(数式(1)中、ΔHはモル発熱であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Vはモル体積である。)
溶解度パラメータが10以下の溶媒を用いることにより、上記の錯化剤に比べて相対的にハロゲン原子、ハロゲン化リチウム等のハロゲン原子を含む原料、更には前駆体に含まれる共結晶を構成するハロゲン原子を含む成分(例えば、ハロゲン化リチウムと錯化剤とが結合した集合体)等を溶解しにくい性状を有することとなり、前駆体内にハロゲン原子を定着させやすくなり、得られる前駆体、更には硫化物固体電解質中に良好な分散状態でハロゲン原子が存在することとなり、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。すなわち、本実施形態で用いられる溶媒は、前駆体を溶解しない性状を有することが好ましい。これと同様の観点から、溶媒の溶解度パラメータは、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
硫化物固体電解質の製造方法で用いられる溶媒としては、より具体的には、硫化物固体電解質の製造において従来より用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等の炭素原子を含む溶媒;等が挙げられ、これらの中から、好ましくは溶解度パラメータが上記範囲であるものから、適宜選択して用いればよいが、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。
より具体的には、ヘキサン(7.3)、ペンタン(7.0)、2-エチルヘキサン、ヘプタン(7.4)、オクタン(7.5)、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン(8.2)、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン(8.8)、キシレン(8.8)、メシチレン、エチルベンゼン(8.8)、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン(9.5)、クロロトルエン(8.8)、ブロモベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール(12.7)、ブタノール(11.4)等のアルコール系溶媒;酢酸エチル(9.1)、酢酸ブチル(8.5)等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(10.3)、ジメチルホルムアミド(12.1)等のアルデヒド系溶媒、アセトン(9.9)、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル(7.4)、ジイソプロピルエーテル(6.9)、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(9.1)、ジメトキシエタン(7.3)、シクロペンチルメチルエーテル(8.4)、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトニトリル(11.9)、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値はSP値である。
これらの溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソールがより好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましく、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルがより更に好ましく、特にジブチルエーテルが好ましい。本実施形態で用いられる溶媒は、好ましくは上記例示した有機溶媒であり、上記の錯化剤と異なる有機溶媒である。本実施形態においては、これらの溶媒を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
溶媒を用いる場合、錯体(1)及び錯体(2)の合計の質量1gに対し溶媒を5~50mL用いることが好ましく、10~30mL用いることがより好ましい。
<前駆体>
前駆体は、前述のように、硫黄原子及びリン原子を含む硫化物を構成要素として含む前記錯体(1)と前記リチウム原子及びハロゲン原子を含むハロゲン化物を構成要素として含む錯体(2)を前記混合することにより得られ、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を構成成分として含むものである。
前駆体を得ることにより、硫化物固体電解質はハロゲン原子がより分散し、均一な固体電解質となり、高いイオン伝導度を持つため好ましい。
ここで、前駆体に含まれる錯化剤は、錯化剤(1)及び錯化剤(2)に由来するものである。
また、前駆体は、硫化物固体電解質と異なる構造を有するものであることを特徴とするものである。このことは実施例において具体的に確認されている。図9には実施例で得られた硫化物固体電解質のX線回折パターンも示されており、前駆体(図8)の回折パターンと異なることがわかる。
前駆体は共結晶をとなっていることが好ましい。
共結晶は、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子により構成されており、典型的には、リチウム原子と、他の原子とが、錯化剤を介して及び/又は介さずに直接結合した錯体構造を形成しているものと推認される。
本実施形態の固体電解質の製造方法において、ハロゲン原子を含む共結晶を形成することが、イオン伝導度の向上の点で、好ましい。錯化剤を用いることにより、PS構造等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)し、ハロゲン原子がより分散して定着した共結晶が得られやすくなり、イオン伝導度が向上する。
ここで、前駆体が共結晶を構成していることは、例えば、ガスクロマトグラフィー分析によって確認することができる。具体的には、前駆体の粉末をメタノールに溶解させ、得られたメタノール溶液のガスクロマトグラフィー分析を行うことで共結晶に含まれる錯化剤を定量することができる。
前駆体中のハロゲン原子が共結晶を構成していることは、前駆体含有物の固液分離を行っても所定量のハロゲン原子が前駆体に含まれていることによって確認できる。共結晶を構成しないハロゲン原子は、共結晶を構成するハロゲン原子に比べて容易に溶出し、固液分離の液体中に排出されるからである。また、前駆体又は硫化物固体電解質のICP分析(誘導結合プラズマ発光分光分析)による組成分析により、該前駆体又は硫化物固体電解質中のハロゲン原子の割合が原料により供給したハロゲン原子の割合と比べて顕著に低下していないこと、によって確認することもできる。
前駆体に留まるハロゲン原子の量は、仕込み組成に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。前駆体に留まるハロゲン原子の量の上限は100質量%である。
前駆体中の錯化剤(錯化剤(1)及び錯化剤(2))の含有量は、イオン伝導度が高い固体電解質を得る観点から、前駆体全量基準で30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、結晶形成の観点から90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
(粉砕)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、さらに硫化物、ハロゲン化物、前駆体及び/又は硫化物固体電解質を粉砕することを含むことが好ましい。硫化物、ハロゲン化物、前駆体及び/又は硫化物固体電解質を粉砕することで、イオン伝導度の低下を抑制しながら粒径の小さい硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態における粉砕に用いる粉砕機としては、粒子を粉砕できるものであれば特に制限なく、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。媒体式粉砕機の中でも、前駆体が、主に錯化剤、溶媒等の液体を伴う液状態、又はスラリー状態であることを考慮すると、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
また、粉砕機で粉砕する前駆体がスラリー状態である場合には、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機であることが好ましい。より具体的には、特開2010-140893号公報に記載されているような、スラリーを粉砕する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応容器)との間で循環させるような形態の粉砕機を用いることが好ましい。
上記粉砕機で用いられるビーズのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、0.05mmφ以上5.0mmφ以下程度とすればよく、好ましくは0.1mmφ以上3.0mmφ以下、より好ましくは0.3mmφ以上2.5mmφ以下である。
硫化物、ハロゲン化物、前駆体及び/又は硫化物固体電解質の粉砕に用いる粉砕機としては、超音波を用いて対象物を粉砕し得る機械、例えば超音波粉砕機、超音波ホモジナイザー、プローブ超音波粉砕機等と称される機械を用いることができる。
この場合、超音波の周波数等の諸条件は、所望の前駆体の平均粒径等に応じて適宜選択すればよく、周波数は、例えば1kHz以上100kHz以下程度とすればよく、より効率的に前駆体を粉砕する観点から、好ましくは3kHz以上50kHz以下、より好ましくは5kHz以上40kHz以下、更に好ましくは10kHz以上30kHz以下である。
また、超音波粉砕機が有する出力としては、通常500~16,000W程度であればよく、好ましくは600~10,000W、より好ましくは750~5,000W、更に好ましくは900~1,500Wである。
粉砕することにより得られる前駆体及び/又は硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、所望に応じて適宜決定されるものであるが、通常0.01μm以上50μm以下であり、好ましくは0.03μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下である。このような平均粒径とすることで、平均粒径1μm以下という小さい粒径の硫化物固体電解質の要望に対応することが可能となる。
粉砕する時間としては、硫化物、ハロゲン化物、前駆体及び/又は硫化物固体電解質が所望の平均粒径となる時間であれば特に制限はなく、通常0.1時間以上100時間以内であり、効率的に粒径を所望のサイズとする観点から、好ましくは0.3時間以上72時間以下、より好ましくは0.5時間以上48時間以下、更に好ましくは1時間以上24時間以下である。
粉砕することは、硫化物、ハロゲン化物、前駆体及び/又は硫化物固体電解質を乾燥し、前駆体を粉末としてから、行ってもよい。
この場合、本製造方法において用い得る粉砕機として例示した上記の粉砕機の中でも、乾式粉砕機のいずれかを用いることが好ましい。
(乾燥)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、錯体(1)、錯体(2)、前駆体及び/又は硫化物固体電解質を乾燥することを含んでもよい。これにより錯化剤及び溶剤等を除去し、錯体(1)、錯体(2)、前駆体及び/又は硫化物固体電解質の粉末が得られる。事前に乾燥することにより、効率的に加熱すること可能となる。なお、乾燥と、その後の加熱とを同一工程で行ってもよい。
乾燥は、錯体(1)、錯体(2)、前駆体及び/又は硫化物固体電解質を、溶媒や残存する錯化剤(乾燥対象物に取り込まれていない錯化剤)の種類に応じた温度で行うことができる。例えば、溶媒や錯化剤の沸点以上の温度で行うことができる。また、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤を揮発させて行うことができる。
また、乾燥は、錯体(1)、錯体(2)、前駆体及び/又は硫化物固体電解質をガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。本実施形態においては、固液分離を行った後、上記の温度条件による乾燥を行ってもよい。
固液分離は、具体的には、錯体(1)、錯体(2)、前駆体及び/又は硫化物固体電解質が沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
(加熱)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することの後に、加熱することを更に含むことも好ましい。つまり、前駆体を加熱して非晶質硫化物固体電解質を得ること、また前駆体又は非晶質硫化物固体電解質を加熱することで、結晶性硫化物固体電解質を得ること、を含むことが好ましい。
前駆体を加熱することを含むことで、前駆体中の錯化剤及び溶媒等が除去され、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む非晶質硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質が得られる。また、本加熱により加熱される前駆体は、上記の粉砕することにより粉砕された前駆体の粉砕物であってもよい。
ここで、前駆体中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が前駆体の共結晶を構成していることが明らかであることに加え、前駆体を加熱することで錯化剤を除去して得られた硫化物固体電解質が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた硫化物固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
本実施形態の製造方法において、硫化物固体電解質は、前駆体を加熱することにより、該前駆体中の錯化剤を除去して得られ、硫化物固体電解質中の錯化剤は少ないほど好ましいものであるが、硫化物固体電解質の性能を害さない程度に錯化剤が含まれていてもよい。硫化物固体電解質中の錯化剤の含有量は、通常10質量%以下となっていればよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
本実施形態の製造方法において、結晶性硫化物固体電解質を得るには、前駆体を加熱して得てもよいし、また前駆体を加熱して非晶質硫化物固体電解質を得た後、該非晶質硫化物固体電解質を加熱して得てもよい。すなわち、本実施形態の製造方法においては、非晶質硫化物固体電解質を製造することもできる。
従来、イオン伝導度が高い結晶性硫化物固体電解質、例えば後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質を得るには、メカニカルミリング等の機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等により非晶質硫化物固体電解質を作製した後に該非晶質硫化物固体電解質を加熱して得ることを要していた。しかし、本実施形態の製造方法では、機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等を行わない方法によってもチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質が得られる点で、従来のメカニカルミリング処理等による製造方法に比べて優位であるといえる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において、非晶質硫化物固体電解質を得るか、結晶性硫化物固体電解質を得るか、さらには非晶質硫化物固体電解質を得てから結晶性硫化物固体電解質を得るか、前駆体から直接結晶性硫化物固体電解質を得るかは、所望に応じて適宜選択されるものであり、加熱温度、加熱時間等により調整することが可能である。
前駆体の加熱温度は、例えば、非晶質硫化物固体電解質を得る場合、該非晶質硫化物固体電解質(又は前駆体)を加熱して得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該非晶質硫化物固体電解質(又は前駆体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度-40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に非晶質硫化物固体電解質が得られる。
非晶質硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、250℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
また、加熱は減圧下で行うことが好ましく、装置上の観点から0.1Pa以上であることが好ましく、1.0Pa以上であることがより好ましく、5.0Pa以上であることが更に好ましく、イオン伝導度が高い固体電解質を得る観点から
100.0Pa以下であることが好ましく、50.0Pa以下であることがより好ましく、20.0Pa以下であることが更に好ましい。
また、非晶質硫化物固体電解質を加熱して、又は前駆体から直接結晶性硫化物固体電解質を得る場合、結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、非晶質硫化物固体電解質を得るための上記加熱温度よりも高いことが好ましく、具体的には、該非晶質硫化物固体電解質(又は前駆体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性硫化物固体電解質が得られる。結晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
加熱時間は、所望の非晶質硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。結晶性硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
(非晶質硫化物固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる非晶質硫化物固体電解質としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される硫化物固体電解質;更に酸素原子、珪素原子等の他の原子を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の硫化物固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される硫化物固体電解質が好ましい。
非晶質硫化物固体電解質を構成する原子の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において得られる非晶質硫化物固体電解質が、少なくともLiS-Pを有するものである場合、LiSとPとのモル比は、より高いイオン伝導度を得る観点から、65~85:15~35が好ましく、70~80:20~30がより好ましく、72~78:22~28が更に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において得られる非晶質硫化物固体電解質が、例えば、LiS-P-LiI-LiBrである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量の合計は、60~95モル%が好ましく、65~90モル%がより好ましく、70~85モル%が更に好ましい。また、臭化リチウムとヨウ化リチウムとの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましく、40~80モル%が更に好ましく、50~70モル%が特に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において得られる非晶質硫化物固体電解質において、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.6が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.05~0.5がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.08~0.4が更に好ましい。また、ハロゲン原子として、臭素及びヨウ素を併用する場合、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、臭素、及びヨウ素の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.3:0.01~0.3が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.02~0.25:0.02~0.25がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.03~0.2:0.03~0.2がより好ましく、1.35~1.45:1.4~1.7:0.3~0.45:0.04~0.18:0.04~0.18が更に好ましい。リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の配合比(モル比)を上記範囲内とすることにより、後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する、より高いイオン伝導度の硫化物固体電解質が得られやすくなる。
また、非晶質硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の非晶質硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
(結晶性硫化物固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等が挙げられる。
また、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照)等も挙げられる。本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、上記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。
ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであってもよいし、主結晶として有するものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として有するものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として有する」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2、23.6°付近に現れる。なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
上記したとおり、本実施形態においてチオリシコンリージョンII型結晶構造が得られる場合には、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
図9~11に本実施形態の製造方法により得られた結晶性硫化物固体電解質のX線回折測定例を示す。本実施形態の硫化物固体電解質は、結晶性LiPSに見られる2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しないか、有している場合であってもチオリシコンリージョンII型結晶構造の回折ピークに比べて極めて小さいピークが検出される程度である。
上記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7-x1-ySi及びLi7+x1-ySi(xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)で示される結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。上記の組成式Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。また、上記の組成式Li7-xPS6-xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2~1.8)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
結晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の結晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
〔正極合材、負極合材〕
例えば、正極層、負極層に用いる場合には、前駆体含有物である前駆体含有液又は前駆体含有スラリーに、正極活物質、負極活物質をそれぞれ分散させて混合し、乾燥させることで、活物質表面に前駆体が付着する。さらに上記の実施形態と同様に、前駆体を加熱することで非晶質硫化物固体電解質または結晶性硫化物固体電解質となる。このときに活物質とともに加熱することで活物質表面に硫化物固体電解質が付着した正極合材、または負極合材が得られる。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、本実施形態においてイオン伝導度を発現させる原子として好ましく採用されるリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
本実施形態において、正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、本実施形態においてイオン伝導度を発現させる原子として好ましく採用される原子、好ましくはリチウム原子と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム原子との合金等の、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
本実施形態で用いられる電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、本実施形態で用いられる結晶性硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する原子、好ましくはリチウム原子の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4-2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4-xGe1-x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3-xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3-y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO-B-P系、LiO-B-ZnO系、LiO-Al-SiO-P-TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種原子を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種原子を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、上記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分~10時間程度であり、好ましくは10分~4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、原子分析値、BET表面積と、から算出することができる。
また、上記電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の硫化物固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
(1) 測定方法を記載する。
(1-1) 体積基準平均粒子径(D50)
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製、LA-950V2モデルLA-950W2)で測定した。
脱水処理されたトルエン(和光純薬製、特級)とターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を93.8:6.2の重量比で混合したものを分散媒として用いた。装置のフローセル内に分散媒を50mL注入し、循環させた後、測定対象を添加して超音波処理した後、粒子径分布を測定した。なお、測定対象の添加量は、装置で規定されている測定画面で、粒子濃度に対応する赤色光透過率(R)が80~90%、青色光透過率(B)が70~90%に収まるように調整した。また、演算条件には、測定対象の屈折率の値として2.16を、分散媒の屈折率の値として1.49をそれぞれ用いた。分布形態の設定において、反復回数を15回に固定して粒径演算を行った。
(1-2) イオン伝導度測定
各例で製造した硫化物固体電解質を、錠剤成形機に充填し、22MPaの圧力を加え成形体とした。電極としてカーボンを成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、測定用の成形体(直径約10mm、厚み0.1~0.2cm)を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度を測定した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
(1-3) X線回折(XRD)測定
XRD測定により、得られた結晶性の生成物を測定した。
各例で製造した前駆体又は固体電解質の粉末を、直径20mm、深さ0.2mmの溝に充填し、ガラスで均して試料とした。この試料を、XRD用カプトンフィルムで空気に触れさせずに測定した。
株式会社BRUKERの粉末X線回折測定装置D2 PHASERを用いて以下の条件にて実施した。
管電圧:30kV
管電流:10mA
X線波長:Cu-Kα線(1.5418Å)
光学系:集中法
スリット構成:ソーラースリット4°、発散スリット1mm、Kβフィルター(Ni板)使用
検出器:半導体検出器
測定範囲:2θ=10-60deg
ステップ幅、スキャンスピード:0.05deg、0.05deg/秒
(2) 錯体(1)(LiPS-TMEDA錯体)の作製例を記載する。
(2-1) 硫化リチウム(LiS)の作製例
(2-1-1)LiSの作製例
非水溶性媒体としてトルエン(住友商事株式会社製)を脱水処理(カールフィッシャー水分計にて測定し、水分量が100ppm以下であることを確認した。)た303.8kgを、窒素気流下で、500L(リットル)ステンレス製反応釜に加え、続いて無水水酸化リチウム33.8kg(本荘ケミカル株式会社製)を投入し、95℃で2時間、ツインスター撹拌翼を用いて、131rpmで撹拌しスラリーとした。
更に撹拌を継続しながら、スラリー中に硫化水素(住友精化株式会社製)を100L/分の供給速度で吹き込みながら、104℃まで昇温した。反応釜からは、水とトルエンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、反応液レベルを一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後24時間で水の留出は認められなくなった。なお、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分は無かった。
この後、硫化水素を窒素に切り替え100L/分で1時間流通した。
得られた固形分をろ過及び乾燥して、白色粉末であるLiSを得た。LiSのD50は412μmであった。
(2-1-2) LiSの粉砕
(2-1-1)で得たLiSを、窒素雰囲気下にて、定量供給機を有するピンミル(ホソカワミクロン株式会社製 100UPZ)にて粉砕した。投入速度は80g/min、円板の回転速度は18000rpmとした。
粉砕処理後のLiSのD50は7.7μmであった。
(2-2) 五硫化二リン(P)の作製例
(2-2-1) Pの粉砕
(2-1-2)において、(2-1-1)で得たLiSに換えてP(サーモフォス製、D50=125μm)を用いる以外は同様にして粉砕した。
粉砕処理後のPのD50は8.7μmであった。
(2-3) 錯体(1)の作製例
(2-3-1) 錯化剤(1)としてN,N,N,N-テトラメチルエタンー1,2-ジアミン(TMEDA)を用いたLiPS-TMEDA錯体(錯体(1))の作製例
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、(2-1-2)で得たLiSと(2-2-1)で得たPをモル比で3:1になるように、撹拌子の入ったシュレンク瓶に計10g秤量し、アセトン-液体窒素混合液で冷却した。30分間の冷却後、撹拌子を用いて撹拌した状態で、不活性ガスを流通下でテトラヒドロフラン(THF)を100mL投入し、更に3日間撹拌した。得られたスラリーをろ過し、得られた固体をTHFによる洗浄を5回繰り返し、溶媒を真空乾燥することでLiPS-3THF錯体を得た。この錯体を90℃で5時間真空乾燥することで、非晶質のg-LiPSを得た。前記g-LiPSをグローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、撹拌子の入ったシュレンク瓶に5g秤量し、不活性ガスを流通下でN,N,N,N-テトラメチルエタンー1,2-ジアミン(TMEDA)を20mL投入し撹拌した。3日間反応後、溶媒を真空乾燥することでLiPS-TMEDA錯体(錯体(1))(図2にX線回折(XRD)スペクトルを示した。)を得た。
(2-3-2) 錯化剤(1)としてジメトキシエタン(DME)を用いたLiPS-DME錯体(錯体(1))の作製例
(2-3-1)において、TMEDAに換えてジメトキシエタン(DME)を20mL用いる以外は同様にしてLiPS-DME錯体(錯体(1))を得た。
(3) 錯体(2)の作製例
(3-1) LiBrの粉砕
(2-1-2)において、(2-1-1)で得たLiSに換えてLiBr(本荘ケミカル社製、D50=38μm)を用いる以外は同様にして粉砕した。
粉砕処理後のLiBrのD50は5.0μmであった。
(3-2) 錯化剤(2)としてTMEDAを用いたLiBr-TMEDA錯体(錯体(2))の作製例
(2-3)においてg-LiPSに換えて(3-1)で得たLiBrを5g用いる以外は同様にして、LiBr-TMEDA錯体(図3にX線回折(XRD)スペクトルを示した。)を得た。
(3-3) LiIの粉砕
(2-1-2)において、(2-1-1)で得たLiSに換えてLiI(シグマアルドリッチ社製、D50=308μm)を用いる以外は同様にして粉砕した。
粉砕処理後のLiIのD50は10.0μmであった。
(3-4-1) 錯化剤(2)としてTMEDAを用いたLiI-TMEDA錯体(錯体(2))作製例
(2-3)においてLiSとPに換えて(3-3)で得たLiIを5g用いる以外は同様にして、LiI―TMEDA錯体(錯体(2))(図4にX線回折(XRD)スペクトルを示した。)を得た。
(3-4-2) 錯化剤(2)としてDMEを用いたLiI-DME錯体(錯体(2))の作製例
(3-4-1)において、TMEDAに換えてDMEを20mL用いる以外は同様にして、LiI-DME(錯体(2))を得た。
(実施例1)
(2-3-1)で得たLiPS-TMEDA錯体、(3-2)で得たLiBr-TMEDA錯体及び(3-4-1)で得たLiI―TMEDA錯体を、それぞれのTG-DTA(図5、6及び7)での重量減少後の質量をLiPSの質量、LiBrの質量、LiIの質量としたとき、モル比でLiPS:LiBr:LiI=4:1:1となるように各TMEDA錯体を合計2.0g秤量し、グローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、2mmφのジルコニア製ボール34gが入った、ジルコニア製ボールミルポット(フリッチュ社製 P-7)に投入し、脱水ジブチルエーテル(DBE FUJIFILM 特級)25mLとともにジルコニア製ボールミルポットに投入後、グローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で封止した。前記ジルコニア製ボールミルを200rpmで2時間混合し、溶媒を真空乾燥し、前駆体(1)を得た(図8)。
得られた前駆体(1)をグローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、シュレンク瓶に1.5g秤量し、不活性ガス雰囲気下でグローブボックスから取り出し、10Pa以下に減圧した状態で、180℃で2時間加熱し硫化物固体電解質(1)を得た。硫化物固体電解質(1)のXRDパターンは図9の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は4.2mS/cmであった。
(実施例2)
グローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、実施例1と同様に各TMEDA錯体を撹拌子の入ったシュレンク瓶に2.0g秤量し、不活性ガス雰囲気下でジブチルエーテル20mLを加えて、3日間撹拌した。その後、溶媒を真空乾燥し、前駆体(2)を得た。
得られた前駆体(2)をグローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、シュレンク瓶に1.5g秤量し、不活性ガス雰囲気下でグローブボックスから取り出し、10Pa以下に減圧した状態で、180℃で2時間加熱し硫化物固体電解質(2)を得た。硫化物固体電解質(2)のXRDパターンは図9の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は3.5mS/cmであった。
(実施例3)
グローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、実施例1と同様に各TMEDA錯体を乳鉢に2.0g秤量し、不活性ガス雰囲気下で30分間乾式混合して、前駆体(3)を得た。
得られた前駆体(3)をグローブボックス中、不活性ガス雰囲気下で、シュレンク瓶に1.5g秤量し、不活性ガス雰囲気下でグローブボックスから取り出し、10Pa以下に減圧した状態で、180℃で2時間加熱して硫化物固体電解質(3)を得た。硫化物固体電解質(3)のXRDパターンは図9の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は3.1mS/cmであった。
(実施例4)
実施例1において、2mmφのジルコニア製ボールに換えて0.5mmφのジルコニア製ボールを用いた以外は同様にして、硫化物固体電解質(4)を得た。硫化物固体電解質(4)のXRDパターンは図10の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は4.1mS/cmであった。
(実施例5)
実施例1において、ジブチルエーテルに換えてシクロヘキサンを用いた以外は同様にして、硫化物固体電解質(5)を得た。硫化物固体電解質(5)のXRDパターンは図11の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は3.5mS/cmであった。
(実施例6~8)
(2-3-2)で得たLiPS-DME錯体及び(3-4-2)で得たLiI-DME錯体を用い、LiPS-DME錯体及びLiI-DME錯体の使用量を、それぞれのTG-DTAでの重量減少後の質量をLiPSの質量、LiIの質量としたとき、モル比でLiPS:LiIが表1のようになるように各DME錯体を合計2.0g秤量し、撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に導入した。撹拌子を回転させた後、ジブチルエーテル20mLを加えた。3日間を継続した後、50℃で乾燥(室温:23℃)して粉末を得た。更に、得られた粉末を真空下で200℃で加熱を6時間行い、結晶性硫化物固体電解質を得た。実施例6~8で得られた結晶性硫化物固体電解質について、XRDパターンから結晶構造を確認した。
実施例6で得られた結晶性硫化物固体電解質は、β-LiPS結晶構造及びLiPSI結晶構造が多く、チオリシコンリージョンII型結晶構造を少量含むことが確認された。
実施例7で得られた結晶性硫化物固体電解質は、LiPSI結晶構造が主相であり、β-LiPS結晶構造及びチオリシコンリージョンII型結晶構造を少量含むことが確認された。
実施例8で得られた結晶性硫化物固体電解質は、LiPSI結晶構造が主相であり、LiI結晶構造を少量含むことが確認された。
また、実施例6~8で得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度は表1のとおりであった。
(比較例1)
ビーズミルとして「ビーズミルLMZ015」(アシザワ・ファインテック(株)製)を用い、直径0.5mmのジルコニアボール485gを仕込んだ。また、反応槽として、撹拌機付き2.0リットルガラス製反応器を使用した。
(2-1-2)で得たLiSを34.77g、及び(2-2-1)で得たPを45.87gを反応槽投入し、更に脱水トルエン1000mLを追加してスラリーとした。
反応槽に投入したスラリーを、上記ビーズミル装置内のポンプを用いて600mL/分の流量で循環させ、周速10m/sでビーズミルの運転を開始した後、200mLの脱水トルエンに溶解させたヨウ素(和光純薬 特級)13.97g、臭素(和光純薬 特級)13.19gを反応槽に投入した。
ヨウ素及び臭素の投入終了後、ビーズミルの周速を12m/sとし、外部循環により温水(HW)を通水し、ポンプの吐出の温度が70℃に保持されるように反応させた。得られたスラリーの上澄み液を除去した後、ホットプレートにのせて、80℃で乾燥させて、粉末状の非晶質硫化物固体電解質を得た。得られた粉末状の非晶質硫化物固体電解質を、グローブボックス内に設置したホットプレートを用いて、195℃で3時間加熱し、硫化物固体電解質を得た。前記硫化物固体電解質のXRDパターンは図9の通りで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。イオン伝導度は4.6mS/cmであった。
図9、10、11のXRDパターンの結果から、実施例1~5の硫化物固体電解質と比較例1の硫化物固体電解質は同様の結晶構造をとることが分かった。
(比較例2~4)
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で前記の硫化リチウム15.3g、前記の五硫化二リン24.7gを添加した。撹拌翼を作動させた後、予め-20℃に冷却したテトラヒドロフラン400mLを容器に導入した。室温(23℃)まで自然昇温させた後、72時間撹拌を継続し、得られた反応液スラリーをガラスフィルター(ポアサイズ:40~100μm)に投入して固形分を得た後、固形分を90℃で乾燥させることにより、白色粉末としてLiPS(純度:90質量%)を38g得た。得られた粉末について、XRDパターンの結果から、ハローパターンを示し、非晶質のLiPSであることが確認された。得られたLiPSは、錯化剤を構成成分として含まないものである。
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下、前記の非晶質のLiPSと(3-3)で得られた粉砕処理後のLiIを、モル比でLiPS:LiIが表1のようになるように合計2.0g秤量し、導入した。撹拌子を回転させた後、錯化剤のDME20mLを加えた。3日間を継続した後、50℃で乾燥(室温:23℃)して粉末を得た。更に、得られた粉末を真空下で200℃で加熱を6時間行い、結晶性硫化物固体電解質を得た。比較例2~4で得られた結晶性硫化物固体電解質について、XRDパターンから結晶構造を確認した。
比較例(2)の結晶性硫化物固体電解質は、β-LiPS結晶構造及びLiPSI結晶構造が多く、チオリシコンリージョンII型結晶構造を少量含むことが確認された。
比較例(3)の結晶性硫化物固体電解質は、LiPSI結晶構造が主相であり、β-LiPS結晶構造及びLiI結晶構造を少量含むことが確認された。
比較例(4)の結晶性硫化物固体電解質は、LiPSI結晶構造が主相であり、LiI結晶構造を少量含むことが確認された。
また、比較例(2)~(4)の結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度は表1のとおりであった。
実施例1~3に示すように、錯体(1)及び錯体(2)がTMEDAを構成要素として含む錯体の場合、前記特許文献1に記載の方法で得られる固体電解質と比べ、極めて高いイオン伝導度を示す硫化物固体電解質として得られることが分かった。特に、実施例2(粉砕機を用いない混合)及び3(溶媒を使用しない乾式混合)のような簡便な方法でも、高いイオン伝導度を示す硫化物固体電解質が得られることが分かった。
さらに、混合の条件を変えても(実施例4)、使用する溶媒を変えても(実施例5)同様に高いイオン伝導度を示す硫化物固体電解質が得られることが分かった。
また、比較例2~4で得られた固体電解質は、前記特許文献4に記載の製造方法と同様に、錯化剤としてDMEを用いるが、本実施形態のように錯体(1)及び(2)を経ることなく、得られた固体電解質である。これらの製法では合計で84時間の撹拌が必要であった。これに対し、同様に実施例6~8のように、錯体(1)及び錯体(2)がDMEを構成要素として含む錯体の場合でも、これら比較例2~4より極めて短時間で硫化物固体電解質を得ることができた。またイオン伝導度も、硫化物固体電解質(6)~(8)は、対応する比較例(2)~(4)で得られた結晶性硫化物固体電解質よりも高いイオン伝導度を示すことが確認できた。
(参考:曝露試験)
まず、曝露試験で用いる試験装置(曝露試験装置1)について、図12を用いて説明する。
曝露試験装置1は、窒素を加湿するフラスコ10と、加湿した窒素と加湿しない窒素とを混合するスタティックミキサー20と、混合した窒素の水分を測定する露点計30(VAISALA社製M170/DMT152)と、測定試料を設置する二重反応管40と、二重反応管40から排出される窒素の水分を測定する露点計50と、排出された窒素中に含まれる硫化水素濃度を測定する硫化水素計測器60(AMI社製 Model3000RS)とを、主な構成要素とし、これらを管(図示せず)にて接続した構成としてある。フラスコ10の温度は冷却槽11により10℃に設定されている。
なお、各構成要素を接続する菅には直径6mmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。本図では管の表記を省略し、代わりに窒素の流れを矢印で示してある。
評価の手順は以下のとおりとした。
露点を-80℃とした窒素グローボックス内で、粉末試料41を約1.5g秤量し、石英ウール42で挟むように反応管40内部に設置し密封した。評価は室温(20℃)で行った。
窒素源(図示せず)から0.02MPaで窒素を装置1内に供給した。供給された窒素は、二又分岐管BPを通過して、一部はフラスコ10に供給され加湿される。その他は加湿しない窒素としてスタティックミキサー20に直接供給される。なお、窒素のフラスコ10への供給量はニードルバルブVで調整される。
加湿しない窒素及び加湿した窒素の流量を、ニードルバルブ付きフローメーターFMで調整することにより露点を制御する。具体的に、加湿しない窒素の流量を800mL/min、加湿した窒素の流量を10~30mL/minで、スタティックミキサー20に供給し、混合して、露点計30にて混合ガス(加湿しない窒素及び加湿した窒素の混合物)の露点を確認した。
露点を-30℃に調整した後、三方コック43を回転して、混合ガスを反応管40内部に2時間流通させた。試料41を通過した混合ガスに含まれる硫化水素量を、硫化水素計測器60で測定した。なお、硫化水素量は15秒間隔で記録した。また、参考のため曝露後の混合ガスの露点を露点計50で測定した。
なお、測定後の窒素から硫化水素を除去するため、アルカリトラップ70を通過させた。
下記参考例1で得られた結晶性硫化物固体電解質、参考例2で得られた非晶質のLiPS、下記参考例3及び4で得られた結晶性硫化物固体電解質について、上記曝露試験方法に従い曝露試験を行った。随時測定した硫化水素の発生量の曝露時間における経時変化を示すグラフを図13に、硫化水素の積算発生量の曝露時間における経時変化を示すグラフを図14に示す。
(参考例1)
実施例1において、下記参考例2で得られた白色粉末1.70g(LiPS:1.53g)、臭化リチウム0.19g、ヨウ化リチウム0.28gを用い、錯化剤の使用量を4.4mL、溶媒としてジブチルエーテルを15.6mL用い、撹拌時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にして前駆体、非晶質硫化物固体電解質及び結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、実施例1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行ったところ、チオリシコンリージョンII型結晶構造有しており、イオン伝導度を測定したところ、4.3mS/cmであり、高いイオン伝導度を有していることが確認された。なお、本参考例1は、錯体同士を混合していないため、長時間の撹拌時間を要しているが、前駆体、非晶質硫化物固体電解質及び結晶性硫化物固体電解質は、本実施形態と同様のものが得られる。
(参考例2)
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム15.3g、五硫化二リン24.7gを添加した。撹拌翼を作動させた後、予め-20℃に冷却したテトラヒドロフラン400mLを容器に導入した。室温(23℃)まで自然昇温させた後、72時間撹拌を継続し、得られた反応液スラリーをガラスフィルター(ポアサイズ:40~100μm)に投入して固形分を得た後、固形分を90℃で乾燥させることにより、白色粉末としてLiPS(純度:90質量%)を38g得た。得られた粉末について、X線回折(XRD)装置(SmartLab装置、(株)リガク製)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行ったところ、ハローパターンを示し、非晶質のLiPSであることが確認された。
(参考例3)
ビーズミルとして「ビーズミルLMZ015」(アシザワ・ファインテック(株)製)を用い、直径0.5mmのジルコニアボール485gを仕込んだ。また、反応槽として、撹拌機付き2.0リットルガラス製反応器を使用した。
硫化リチウム29.66g、五硫化二リン47.83g、臭化リチウム14.95g、ヨウ化リチウム15.36g、及び脱水トルエン1200mlを反応槽投入しスラリーとした。反応槽に投入したスラリーを、上記ビーズミル装置内のポンプを用いて600ml/分の流量で循環させ、周速10m/sでビーズミルの運転を開始し、ビーズミルの周速を12m/sとし、外部循環により温水(HW)を通水し、該ポンプの吐出の温度が70℃に保持されるように反応させた。得られたスラリーの上澄み液を除去した後、ホットプレートにのせて、80℃で乾燥させて、粉末状の非晶質硫化物固体電解質を得た。得られた粉末状の非晶質硫化物固体電解質を、グローブボックス内に設置したホットプレートを用いて、195℃で3時間加熱し、結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、粉末X線解析(XRD)測定を行ったところ、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。
(参考例4)
ビーズミルとして「ビーズミルLMZ015」(アシザワ・ファインテック(株)製)を用い、直径0.5mmのジルコニアボール485gを仕込んだ。また、反応槽として、撹拌機付き2.0リットルガラス製反応器を使用した。
硫化リチウム34.77g、及び五硫化二リン45.87gを反応槽投入し、更に脱水トルエン1000mlを追加してスラリーとした。反応槽に投入したスラリーを、上記ビーズミル装置内のポンプを用いて600ml/分の流量で循環させ、周速10m/sでビーズミルの運転を開始した後、200mlの脱水トルエンに溶解させたヨウ素(和光純薬 特級)13.97g、臭素(和光純薬 特級)13.19gを反応槽に投入した。
ヨウ素及び臭素の投入終了後、ビーズミルの周速を12m/sとし、外部循環により温水(HW)を通水し、ポンプの吐出の温度が70℃に保持されるように反応させた。得られたスラリーの上澄み液を除去した後、ホットプレートにのせて、80℃で乾燥させて、粉末状の非晶質硫化物固体電解質を得た。得られた粉末状の非晶質硫化物固体電解質を、グローブボックス内に設置したホットプレートを用いて、195℃で3時間加熱し、結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、粉末X線解析(XRD)測定を行ったところ、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認された。
上記参考例2で得られた非晶質のLiPS、従来の固相法(メカニカルミリング法)による参考例3で得られた結晶性の固体電解質、また原料としてハロゲン単体を用いた参考例4で得られた結晶性の固体電解質では、最大7ppmの硫化水素が発生し、120分後の積算発生量は1cc/gを超えているところ、本実施形態と同様の前駆体を経た参考例1により得られた固体電解質では硫化水素がほとんど発生しないことが確認された。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法によれば、イオン伝導度が高く、電池性能に優れ、硫化水素の発生を抑制する結晶性硫化物固体電解質を製造することができる。
本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられる電池に好適に用いられる。

Claims (17)

  1. リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、
    リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む硫化物を構成要素として含む錯体(1)と、リチウム原子及びハロゲン原子を含むハロゲン化物を構成要素として含む錯体(2)と、をそれぞれ調製すること、
    前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合すること、
    を含む、硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することの後に、更に加熱することを含む、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記加熱を90~250℃で行う、請求項2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記加熱を0.1~100.0Paで行う、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記混合を、粉砕機を用いて行う、請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記硫化物が、非晶質LiPS又は結晶性LiPSを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  7. 前記錯体(1)が更に錯化剤(1)を構成要素として含み、前記錯体(2)が更に錯化剤(2)を構成要素として含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、ヘテロ原子を有する化合物を含む、請求項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  9. 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、少なくとも1つのアミノ基又はエーテル結合を有する化合物を含む、請求項又はに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  10. 前記錯化剤(1)及び錯化剤(2)がそれぞれ独立して、分子中に少なくとも二つの第三級アミノ基を有する化合物を含む、請求項のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  11. 前記錯体(1)と前記錯体(2)を混合することにより、前記錯化剤(1)、錯化剤(2)、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を構成成分として含む前駆体を得る、請求項10のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  12. 前記前駆体における前記錯体(1)と前記錯体(2)の合計の含有量が、前記前駆体全量基準で、30~80質量%である、請求項11に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  13. 前記混合を、溶媒中で行う、請求項1~12のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  14. 前記溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、請求項13に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  15. 前記錯体(1)及び前記錯体(2)の合計の質量1gに対し前記溶媒を5~50mL用いる、請求項13又は14に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  16. 前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  17. 前記硫化物固体電解質が、CuKα線を用いたX線回折測定において、結晶性LiPSに該当する2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しない、請求項1~16のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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