以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
本発明の一実施形態の走行制御装置は、自動車等の車両に搭載され、当該車両の運転者による運転操作を支援するための走行制御を行なう装置である。本実施形態の走行制御装置は、例えば車載カメラユニットやレーダー装置等のセンシングデバイスを用いて車両の前方環境及び周辺環境に関する情報(例えば、前方及び周辺を走行する先行車両,後続車両,対向車両,併走車両等の他車両や自転車,歩行者等の移動体、若しくは建造物,各種構築物等や立体的な障害物等のほか、走行中の道路の路面状況等を含む車両の周辺環境に関する情報等;以下、単に周辺環境情報等という)を取得する。
また、本実施形態の走行制御装置は、上述のようにして取得された周辺環境情報等のほか、通信を行って外部機器である高精度道路地図データベース等から取得される道路地図情報等に基づいて、先行車両や後続車両及び各種構築物や立体的な障害物等に関する情報を含む道路状況等を認識する。そして、本実施形態の走行制御装置は、これら各種の情報(周辺環境情報等,地図情報等,認識情報等)を、運転者の運転操作を支援するための走行制御を実行する際の情報として適宜利用する。
本実施形態の走行制御装置においては、走行車線内に設定された目標走行経路に沿って車両を走行させる車線維持走行支援制御を少なくとも実行し得る構成を有する。そして、本実施形態の走行制御装置においては、車線維持走行支援制御の実行中に、走行車線内の道路表面上に、例えば水溜まり等の平面的な障害物(平面障害物)が認識された場合には、当該水溜まり等を考慮した目標走行経路の再設定を行う機能を有する。
この場合において、当該水溜まり等を考慮した目標走行経路とは、例えば、当該水溜まり等を回避する走行経路である。或いは、周囲を走行する他車両等が存在する場合や、水溜まり等の形状,大きさ等により、水溜まり等を回避し得ない場合であって、当該水溜まり等の上をやむを得ず通過せざるを得ない場合に、当該水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫の飛散を抑止し得る走行経路を指す。さらに、この場合において、当該水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫の飛散方向を考慮して、少なくとも泥土や汚水等の飛沫が車両近傍を歩行中の歩行者等に向けて飛散させないようにする走行経路等でもある。なお、本実施形態の走行制御装置は、上述のような目標走行経路の再設定を行って車両を走行させるのに際しては、水溜まり等から泥土や汚水等の飛沫が飛散するのを抑止するために、必要に応じて減速制御等をも合わせて行う。
簡略に言えば、本実施形態の走行制御装置は、設定された目標走行路に沿う走行制御を行っているときに、走行車線内の道路表面上に、例えば水溜まり等を認識した場合には、当該水溜まり等を回避する目標走行経路の再設定を行う。この場合において、当該水溜まり等を回避することができない場合には、周辺に存在する歩行者,自転車等や他車両,建造物,各種構築物等に対して水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫が飛散するといった悪影響等を考慮して、減速制御を行った上で、当該水溜まり等の上を通過する走行経路を設定する。
なお、このとき、自車両の周囲に歩行者等々が存在せず、水溜まり等からの飛沫の飛散による悪影響等を周囲に及ぼす可能性がない場合であっても、自車両が水溜まり等の上を通過することによる飛沫が自車両を汚してしまう可能性がある。そのため、このような状況の場合には、減速度を若干抑えた減速制御を行う。
ただし、このように、自車両の周囲に歩行者等々が存在していない環境であって、かつ自車両が水溜まり等の上を通過しても自車両に対する飛沫の飛散の悪影響等が少ないと推定される場合(具体的には、例えば変更後の目標走行経路が水溜まりの周縁部分等、飛沫の飛散量が少ないと予想される場合や、車両の走行速度が元々低い設定で走行している場合等)には、減速制御を省略して、そのままの速度での走行を継続しつつ水溜まり等の上を通過するようにしてもよい。 まず、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成について、図1を用いて、以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。
なお、本実施形態の走行制御装置1の構成は、従来の形態の同種の走行制御装置の構成と基本的には略同様である。したがって、本実施形態の走行制御装置1の構成を説明するのに際しては、本発明に関わる主要構成のみについて説明するものとする。そして、本実施形態の走行制御装置1の細部の構成については、従来の走行制御装置と略同様であるものとして、本発明に直接関連する構成以外の構成の詳細な説明は省略する。また、図1においては、本実施形態の走行制御装置1の主要構成のみを図示するに留め、本発明に直接関連しない構成については図示を省略している。
本実施形態の走行制御装置1は、図1に示すように、ロケータユニット11と、周辺監視ユニット20と、カメラユニット21と、走行制御部としての走行制御ユニット22と、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25等を、主な構成ユニットとして具備している。
ここで、ロケータユニット11と、周辺監視ユニット20と、カメラユニット21とは、車両の内外の走行環境を認識するためのセンサユニットであり環境認識装置として機能する構成ユニットである。これらの各ユニット(11,20,21)は、互いに依存することなく、完全に独立した構成ユニットとして存在している。
走行制御ユニット22と、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25の各制御ユニットは、ロケータユニット11、周辺監視ユニット20、カメラユニット21と共に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信回線10を通じて互いに接続され、適宜必要に応じてデータ共有を行っている。
ロケータユニット11は、道路地図上の自車両の位置(自車位置)を推定すると共に、推定された自車位置の主に前方の道路地図情報等を取得する情報取得装置である。
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と、加速度センサ13と、車輪速センサ14と、ジャイロセンサ15と、GNSS受信機16と、道路情報受信機17と、地図情報記憶部としての高精度道路地図データベース(DB;Data Base:なお、図1においては道路地図DBと略記している)18と、ルート情報入力部19等を具備している。
このうち、加速度センサ13,車輪速センサ14,ジャイロセンサ15は、自車両の位置(自車位置)を推定するのに際して必要とする各種センサ類である。例えば、加速度センサ13は自車両の前後加速度を検出するセンサである。車輪速センサ14は(四輪車の場合の)前後左右の各車輪の回転速度を検出するセンサである。ジャイロセンサ15は、自車両の角速度または角加速度を検出するセンサである。これらの各センサ(13,14,15)は、運転状態取得部として機能する自律走行センサ群であり、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
なお、上記自律走行センサ群(各センサ13,14,15)は、例えば、トンネル内走行等においてGNSS衛星(不図示)からの受信感度が低下して測位信号を有効に受信することのできない状況下となったときに、自律走行を可能にするために設けられるセンサ群である。自律走行センサ群としては、上述の各センサ(13,14,15)のほかに、図示されていないが、例えば、車速センサ,ヨーレートセンサ等を有している。
GNSS受信機16は、自車位置取得部として機能し、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)からの各種情報を受信する受信装置である。つまり、このGNSS受信機16は、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。GNSS受信機16は、取得した測位信号を、ロケータユニット11の地図ロケータ演算部12へと出力する。地図ロケータ演算部12は、GNSS受信機16が受信した複数の測位衛星からの測位信号に基づいて自車位置(緯度,経度)を推定する。そのため、このGNSS受信機16は、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
さらに、地図ロケータ演算部12には、道路情報受信機17と、記憶装置としての高精度道路地図データベース18と、ルート情報入力部19等が接続されている。
道路情報受信機17は、所定の基地局(不図示)若しくはインターネットを介して接続されるクラウドサーバ(不図示)等に蓄積された各種情報、例えば自動運転に必要な情報や地図情報等を受信して取得する受信装置である。この道路情報受信機17は、取得した各種情報を、ロケータユニット11の地図ロケータ演算部12へと出力する。なお、道路情報受信機17は、さらに、自車両が有する各種情報を上記基地局やクラウドサーバ(不図示)等へと送信する機能を備え、道路情報送受信装置の形態であってもよい。
地図ロケータ演算部12は、道路情報受信機17が受信した地図情報等に基づいて自車位置を地図上にマップマッチングしたり、入力された目的地と自車位置とを結ぶ目標とする走行ルートを構築する。さらに、地図ロケータ演算部12は、構築された目標走行ルート上に、自動運転を実行させるための目標走行ルートを自車両の前方数キロメートル先まで設定する。ここで、目標走行ルートとして設定する項目は、自車両を走行させる車線(例えば、車線が3車線の場合に何れの車線を走行させるか)、先行車を追い越すため車線変更及び車線変更を開始するタイミング等の各種の項目がある。
高精度道路地図データベース18は、HDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶媒体等によって主に構成されている。この高精度道路地図データベース18には、周知の高精度な道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。ここで高精度道路地図情報は、例えばクラウドサーバ等(不図示)に備えられているグローバルダイナミックマップと同じ層構造を有しており、基盤とする最下層の静的情報階層において、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報等が重畳された階層構造をなしている。
ここで、付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路,高速道路等),道路形状,左右区画線(例えば車道中央線,車道外側線,車線境界線等),高速道路やバイパス道路等の出口,ジャンクションやサービスエリア,パーキングエリア等に繋がる分岐車線や合流車線の出入口長さ(開始位置と終了位置)等の静的な位置情報のほか、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。
そして、この付加的地図情報は、地図ロケータ演算部12によって目標走行ルートが設定された際には、設定された目標走行ルートに沿って自車両を自律走行させるために必要とする周辺情報として、グローバルダイナミックマップから継続的に取得されかつ順次更新される。
また、高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ,車線中央位置座標データ,車線の進行方位角データ,制限速度情報などをも保有している。これらの車線データ等の情報は、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
ルート情報入力部19は、例えば運転者又は搭乗者等、車両に搭乗している人員が操作する端末装置である。このルート情報入力部19は、目的地や経由地(高速道路において立ち寄りたいサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において目標走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
ルート情報入力部19は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル等),スマートフォン等の携帯端末,パーソナルコンピュータ等である。そして、ルート情報入力部19は、地図ロケータ演算部12に対して有線接続或いは無線接続されている。これにより、運転者又は搭乗者がルート情報入力部19を操作して、目的地や経由地の情報(施設名,住所,電話番号等)の入力を行うと、その入力情報が地図ロケータ演算部12に読み込まれる。地図ロケータ演算部12は、ルート情報入力部19から入力された目的地や経由地について、その位置座標(緯度,経度)を設定する。
地図ロケータ演算部12は、自車位置推定部12aと、地図情報取得部12b等を備えている。
自車位置推定部12aは、自車位置を推定する機能を有する構成部である。自車位置推定部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両の位置座標(緯度,経度)を取得する。そして、自車位置推定部12aは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。
また、自車位置推定部12aは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境においては、車輪速センサ14で検出した車輪速に基づき求めた車速データ,ジャイロセンサ15で検出した角速度データ,加速度センサ13で検出した前後加速度データ等の各種データに基づいて自車位置を推定する自律航法に切り換えて、道路地図上の自車位置(緯度,経度)を推定する。
地図情報取得部12bは、自車位置推定部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度,経度)と、運転者等によりルート情報入力部19から入力された目的地や経由地の位置情報(緯度,経度)とに基づき、現在地から目的地までの目標とする走行ルート情報(高精度道路地図情報上での自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は経由地を経由した目的地)とを結ぶ目標走行ルート情報)を、予め設定されているルート条件(推奨ルート,最速ルート等)に従って構築する。このとき、自車位置推定部12aは、自車両の走行している走行車線を特定し、道路地図データに記憶されている走行車線や合流車線等の道路形状を取得して、これらの情報を逐次記憶する。また、地図情報取得部12bは、目標走行ルート情報を自車位置推定部12aへ送信する。
このようにして、地図ロケータ演算部12は、自車位置推定部12aにより推定された自車位置を道路地図上にマップマッチングして自車両の現在地を特定し、その周辺の状況に関する情報を含む道路地図情報を取得する。また、地図情報取得部12bにより自車両の目標とする目標走行ルートを設定する。
カメラユニット21は、自車両の主に進行方向(前方)の環境を認識し、画像情報として取得する周辺環境情報取得装置であり周辺環境認識装置の一部を成す。
カメラユニット21は、具体的には、例えば、自車両の前方又は前側方を走行する他車両(先行車両両,対向車両,併走車両,後続車両等)のほか、併走する自転車,自動二輪車等の移動体を含む立体物,信号現示(点灯色,点滅状態,矢印方向等)や道路標識,停止線や区画線(例えば車道中央線,車道外側線,車線境界線等)等の道路標示等のほか、道路表面状況(例えば路面上の水溜まりの有無,形状,大きさ等の状況)等を含む各種の道路周辺環境等を認識する。
カメラユニット21は、自車両の車室内前部の上部中央等に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU;Image Processing Unit)21cと、走行環境認識部21d等を有して構成されている。
そして、カメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。これら二つのカメラ21a,21bによって取得された2つの画像データは、IPU21cにて所定の画像処理が施される。
走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込んで、両画像間の視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、両画像内の物体の位置ズレ量から距離データ(自車両から対象物までの距離情報)を三角測量の原理を利用して算出すると共に、この距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
また、走行環境認識部21dは、カメラユニット21によって取得され、IPU21cにより処理済みの距離画像情報等に基づいて、例えば自車両の走行している走行車線の左右を区画する区画線(例えば車道中央線,車道外側線,車線境界線等)等を含む各種さまざまな道路標示を、周辺環境情報として認識する。この場合、走行環境認識部21dは、走行車線の区画線等を検出する区画線検出部として機能する。
また、走行環境認識部21dは、自車両が走行する走行路(自車走行レーン)の左右区画線(車線境界線等)の中央の道路曲率[1/m],左右区画線間の幅(車線幅)等を求める。
なお、区画線間中央の道路曲率や車線幅の求め方は種々知られているが、例えば、走行環境認識部21dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、さらに、両区画線間の曲率の差分から車線幅を算出する。そして、当該走行環境認識部21dは、自車線の左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率を求める。
また、走行環境認識部21dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール,縁石,各種立体物(自車両周辺に存在する歩行者,二輪車,二輪車以外の車両等)の認識を行う。ここで、走行環境認識部21dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別,立体物までの距離,立体物の移動速度,立体物と自車両との相対速度などの認識が行われる。
さらに、走行環境認識部21dは、IPU21cにより処理済みの画像データ等に基づいて、走行車線内を走行中の車両に前方において、当該走行車線内の道路表面上に形成されている水溜まり等を認識する。
走行環境認識部21dによる水溜まり等の検出は、例えば、次のような処理によって行われる。
まず、走行環境認識部21dは、カメラユニット21によって取得されIPU21cにより処理済みの画像データに基づいて、1フレーム分の画像枠(図2の符号200参照)内に予め設定された所定の路面探索領域(図2の符号SA参照)における道路表面の輝度(以下、路面輝度という)の平均値を、連続的に取得される各画像データ毎に求める。そして、走行環境認識部21dは、連続して取得される複数の画像データ毎に対応する複数の路面輝度の平均値に基づいて、自車両が走行中の道路における通常路面輝度値を所定時間(数秒間)毎に推定し、通常路面輝度推定値を求める。このとき走行環境認識部21dは、通常路面輝度推定部として機能する。
ここで、路面探索領域SAは、二つのカメラ21a,21bのそれぞれによって取得される各画像データよって表示される画像領域のうち、主に道路表面が写り込むと推測される領域に設定される。具体的には、例えば、道路表面が写り込む領域としては、矩形状の画像枠200内において略中央領域のやや下側寄りの領域であることが多い。
さらに、走行環境認識部21dは、路面探索領域内において、車両の走行に伴って変化する路面輝度の変化(輝度差)を検出する。
これにより、通常路面輝度推定値に対して所定の輝度値以上の高輝度領域を検出すると共に、検出された高輝度領域毎に所定の形状推定処理を行って、通常の道路表面上に設置されている定形の路面標示等であるか、若しくは道路表面上に存在している平面的で不規則形状領域からなる水溜まり等(図2の符号208参照)であるかを、その面積分布から推定する。
こうして推定された水溜まり等208については、走行環境認識部21dにより周辺環境情報として認識される。この場合、走行環境認識部21dは、水溜まり等の道路表面状況を認識する道路表面状況認識部であり水溜まり推定部としての平面障害物推定部として機能する。
ここで、所定の形状推定処理は、走行環境認識部21dによって検出された高輝度領域毎の形状と、路面標示等の表面形状との比較を行って、当該高輝度領域の形状が路面設置物体形状と略一致するか否かを判定し、その形状を推定する処理である。
なお、路面標示等としては、例えば、マンホール蓋(図2の符号206参照)や各種の道路標示(図2の符号207で示す制限速度標示等)等がある。これらの路面標示等の形状は、一般に規格化されているものである。したがって、それらの形状規格データ等を、当該走行制御装置1における所定の記憶領域(例えば走行制御ユニット22の内部記憶領域(不図示)等)に予め記憶しておき、上記形状推定処理にて参照し比較する。また、路面標示等の形状規格データ等は、道路地図情報等に含まれているものもあることから、地図データベース等から読み込むようにしてもよい。
そして、上述の形状推定処理において、走行環境認識部21dによって検出された高輝度領域毎の形状と、路面標示等の表面形状との比較により、両者の形状が略一致する場合には、路面標示等であると判定する。また、路面標示等と一致せずに、不規則形状領域であると判定した場合には、不規則形状の高輝度領域は、水溜まり等であるものと推定する。
この場合において、例えば、水溜まり等であっても、定形の路面標示等に類似している形状を有している場合には、路面標示等であるか水溜まり等であるかを確実に判定することができない場合もある。このような場合には、安全のため、水溜まり等であると推定して扱うようにするのが望ましい。また、上述したように、本実施形態においては、水溜まり等の推定は、高輝度領域の検出によるものとしている。例えば、道路表面上に形成される物体の影などの場合は低輝度であるために、水溜まり等の推定条件に合致せず除外されることになる。
このようにして走行環境認識部21dにより認識される各種の周辺環境情報は、走行制御ユニット22へと出力される。
周辺監視ユニット20は、自車両の周辺の状況を認識し情報として取得する周辺環境情報取得装置であり周辺状況認識装置の一部を成す。この周辺監視ユニット20は、周辺環境認識センサ20aと、周辺環境認識部20b等を有して構成されている。
周辺環境認識センサ20aは、例えば、超音波センサ,ミリ波レーダ,ライダー(LIDER;Light Detection and Ranging),カメラ等のセンシングデバイスと、これらを組み合せてなる周辺環境検出手段としての自律センサ群である。
具体的には、例えば、周辺環境認識センサ20aとしての複数のミリ波レーダが、車両の四隅部分(例えば、左前側方,右前側方,左後側方,右後側方等)にそれぞれ配設される。このうち、左右前側方のミリ波レーダは、例えばフロントバンパの左右側部に設けられ、カメラユニット21の2つのカメラ21a,21bにより取得される画像によって認識することの困難な車両周辺の一部領域(車両の左右斜め前方及び側方の領域)を監視するのに用いられる。
また、左右後側方のミリ波レーダは、例えばリヤバンパの左右側部に設けられ、上記左右前側方のミリ波レーダでは監視し得ない車両周辺の一部領域(車両の側方から後方にかけての領域)を監視するのに用いられる。
周辺環境認識部20bは、周辺環境認識センサ20aからの出力信号に基づいて自車両の周辺の移動体(例えば、併走車両,後続車両,対向車両等)に関する情報である周辺環境情報を取得する。
周辺監視ユニット20とカメラユニット21とによって、本実施形態の走行制御装置1における周辺環境情報取得装置であり周辺状況認識装置が構成されている。ここで、カメラユニット21の走行環境認識部21dと、周辺監視ユニット20の周辺環境認識部20bとは、車内通信回線10を通じて走行制御ユニット22の入力側に接続されている。また、走行制御ユニット22と地図ロケータ演算部12との間は、車内通信回線10を通じて双方向通信自在に接続されている。そして、走行制御ユニット22の入力側には、車両内部環境情報を検知する複数の各種スイッチ類若しくは複数のセンサ群として、モード切換スイッチ33と、ハンドルタッチセンサ34と、操舵トルクセンサ35と、ブレーキセンサ36と、アクセルセンサ37等が接続されている。
モード切換スイッチ33は、運転者が各種の運転モードの選択や、運転支援制御に関わる複数の制御機能を選択するためのオンオフ切換等を行うスイッチ群を指す。運転者は、モード切換スイッチ33を操作することによって、例えば、手動運転モード,第1の運転支援モード,第2の運転支援モード,退避モード等の各種の運転モードのオンオフの切り換えを選択的に行うことができる。
ここで、手動運転モードとは、運転者による保舵を必要とする運転モードである。例えば、運転者による運転操作(ステアリング操作,アクセル操作,ブレーキ操作など)に従って自車両を走行させる運転モードである。
第1の運転支援モードは、運転者による保舵を必要とする運転モードであって、運転者による運転操作を反映しつつ、各種センサ類等により認識された自車両の周辺環境等の状況に応じて、運転者の操作を支援する半自動運転モードである。
即ち、当該第1の運転支援モードは、例えば、エンジン制御ユニット23,パワーステアリング制御ユニット24,ブレーキ制御ユニット25等を制御して、主として先行車追従制御,車線維持走行支援制御,車線逸脱抑制制御,車線変更制御等の各種制御を組み合わせて行って、設定された目標走行ルートに沿って自車両を走行させると共に、運転者の意志を反映させて適宜走行制御を行う半自動運転モードである。
第2の運転支援モードは、運転者による保舵やアクセル操作及びブレーキ操作等を必要とすることなく、例えば、エンジン制御ユニット23,パワーステアリング制御ユニット24,ブレーキ制御ユニット25等による制御を通じて、例えば車線維持走行支援制御等、各種の走行制御等を組み合わせて行って、目標走行ルートに沿って自車両を自動走行させる自動運転モードである。
退避モードは、例えば、第1,第2の運転支援モードによる走行中に、自車両の走行が継続不能となり、かつ運転者への運転操作を引き継ぐことができなかった場合(即ち、手動運転モード又は第1の運転支援モードへの遷移ができなかった場合)等に、自車両を自動的に安全に停止させるための緊急的な運転モードである。
さらに、モード切換スイッチ33は、本実施形態の走行制御装置1が実行し得る各種の走行制御(例えば車線維持走行支援制御等)のうち運転者が所望する走行制御のオンオフ切り換えを、運転者が選択的に行うことができる操作部材をも含む。
ハンドルタッチセンサ34は、運転者がステアリング装置におけるステアリングホイール(不図示;以下、単にステアリングと略記する)を把持している状態、即ち運転者の保舵状態を検知するためのセンサである。ハンドルタッチセンサ34は、車両のステアリングの所定の部位に設けられている。ハンドルタッチセンサ34は、運転者がステアリングの所定の部位を把持しているとき(保舵状態にあるとき)オン信号を出力する。
操舵トルクセンサ35は、運転者による運転操作量としての操舵トルクを検出するセンサである。操舵トルクセンサ35は、車両のステアリング装置におけるステアリングシャフト(不図示)に設けられている。
なお、ハンドルタッチセンサ34と操舵トルクセンサ35とは、自車両の運転者によるステアリングの保舵状態を認識するためのセンサであって保舵状態認識部として機能する。これら両センサ(34,35)の出力信号は走行制御ユニット22へと出力される。
ブレーキセンサ36は、運転者による運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するセンサである。
アクセルセンサ37は、運転者による運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するセンサである。
一方、走行制御ユニット22の出力側には、モニタパネルやスピーカ等を備えた報知装置38等が接続されている。この報知装置38は、走行制御ユニット22が走行環境認識部21dや周辺環境認識部20b等によって取得された周辺環境情報,周辺環境情報等に基づいて認識される周辺環境に応じた警報(例えばモニタパネル等の表示装置への視覚的な警報表示や、スピーカ等の発音装置への音声や警笛等による聴覚的な警報表示等)を、運転者に対して報知する装置である。
また、報知装置38は、運転者に対して、運転者が行うべき操作を示唆する表示(具体的には、例えば「ブレーキペダルを踏み込んでください」,「アクセルを離してください」,「ステアリングの修正操作を行ってください」等の示唆報知等)等を、聴覚的に若しくは視覚的に知覚させる各種の表示を必要に応じて行う。
走行制御ユニット22は、車両の走行制御を統括的に行う構成ユニットである。例えば、走行制御ユニット22は、走行環境認識部21dや周辺環境認識部20b等によって取得された各種情報(周辺環境情報等)に基づいて設定された目標走行経路に沿って車両を走行させ、走行中の走行車線を維持しながら車両の走行を安全に継続させる車線維持走行支援制御を実行する際の走行制御に寄与する。
この場合において、本実施形態の走行制御装置1における走行制御ユニット22は、車線維持走行支援制御の実行中に、例えば、走行車線内の道路表面上に水溜まり等を含む障害物等を認識した場合には、これらの障害物等を回避し、若しくは水溜まり等を考慮した新たな目標走行経路を設定し直す走行制御部として機能する。
そのために、走行制御ユニット22は、操舵支援制御部22aと、目標走行経路設定部22bと、車輪通過位置推定部22c等を具備して構成されている。
操舵支援制御部22aは、車両を走行車線内において安定させて走行させるためのステアリング操作に加え、車両が走行中に遭遇する危険等や走行経路上の障害物等との衝突又は接触を回避する際に、運転者によって行われるステアリング操作を支援する等、本実施形態の走行制御装置1が実行し得る各種制御のうち操舵操作を伴う走行制御を支援する制御を行う。
例えば、操舵支援制御部22aは、設定された目標走行経路に沿って車両を走行させるための車線維持走行支援制御の実行中において適宜必要に応じて操舵支援制御を行う。また、操舵支援制御部22aは、車線維持走行支援制御によって走行中の自車両が、例えば、前方の道路表面上に水溜まり等を含む障害物等を認識した場合に、これを回避するための操舵支援制御を必要に応じて行う。
目標走行経路設定部22bは、カメラユニット21の走行環境認識部21dにより認識された周辺環境情報に基づいて求められた自車両の走行車線(自車走行レーン;図2の符号201参照)の左右区画線(図2の符号LL,LR参照)に関する情報等に基づいて、認識された左右区画線のそれぞれの内側縁に沿う目標設定線(図2の符号TL,TRで示す二点鎖線参照)を左右それぞれに仮想的に設定すると共に、この目標設定線TL,TRの中央位置を、車線幅データ等に基づいて目標走行経路(図2の符号TCで示す二点鎖線参照)として設定する。
そして、目標走行経路設定部22bは、目標設定線TL,TRに挟まれる領域を自車両が走行する走行車線として認識する。こうして認識された走行車線の中央位置に引かれた目標走行経路TCは、自車線内に設定されており、車線維持走行支援制御を実行して自車両を走行させる際の目標とする仮想的な走行線となる。
車輪通過位置推定部22cは、目標走行経路設定部22bによって設定された目標走行経路TCに沿って車両を走行させたときに、自車両の前後左右の車輪が通過することが予想される位置を繋げた予想線(車輪通過予想経路)を推定する。この場合において、車輪通過予想位置の推定は、設定されている目標走行経路TCと、自車両の車両幅データ若しくはトレッド幅データ等の自車両に関する各種の情報(自車両情報)に基づいて行う。
なお、自車両の車両幅データやトレッド幅データ等の自車両情報は、当該走行制御装置1における所定の記憶領域(例えば走行制御ユニット22の内部記憶領域(不図示)等)に予め記憶してあるものを参照する。
また、走行制御ユニット22は、カメラユニット21の走行環境認識部21dや周辺監視ユニット20の周辺環境認識部20b(即ち周辺環境情報取得装置)からの出力情報のほか、地図ロケータ演算部12を通じて得られる各種情報に加えて、モード切換スイッチ33や各種センサ(34,35,36,37)等により取得される車両内部環境情報等に基づいて、各種所定の状況判定等を行い、それらの判定結果に基づいて、エンジン制御ユニット23,パワーステアリング制御ユニット24,ブレーキ制御ユニット25等を通じて自車両の走行制御を行う。
なお、走行制御ユニット22は、地図ロケータ演算部12によって設定された目標走行ルート中に、自動運転制御が許可された自動運転区間が設定されている場合には、当該自動運転区間において自動運転制御を行うための走行ルートを設定する。そして、自動運転区間においては、エンジン制御ユニット23,パワーステアリング制御ユニット24,ブレーキ制御ユニット25等を適宜制御して、各種情報に基づき推定された自車位置から設定された目標走行ルートに沿って自車両を第2の運転支援モードによって自動走行させる機能をも有する。
その際、走行制御ユニット22は、走行環境認識部21dで認識した周辺環境情報に基づいて例えば先行車追従制御,車線維持走行支援制御等により、先行車が検出された場合は先行車に追従させ、先行車が検出されない場合は制限速度内のセット車速で自車両を走行させる。また、車線維持走行支援制御,車線逸脱抑制制御,車線変更制御等、適宜選択された操舵支援制御を実行し、さらに、場合によっては運転者異常時対応制御を実行する等の走行制御を行う。
また、走行制御ユニット22は、上述したように、エンジン制御ユニット23と、パワーステアリング制御ユニット24と、ブレーキ制御ユニット25等の各制御ユニットとの間で、車内通信回線10を通じて互いに接続されている。これにより、走行制御ユニット22は、各制御ユニット(23,24,25)等を制御する。
エンジン制御ユニット23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、エンジン制御ユニット23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
パワーステアリング制御ユニット24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構に電動モータの回転力で操舵トルクを付与するものである。手動モード以外の運転モード(第1,第2の運転支援モード,退避モード等)においては、パワーステアリング制御ユニット24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、ステアリングの操作(即ち、操舵)を支援する各種の操舵支援制御が実行される。また、操舵トルクセンサ35は、電動パワステモータ28の駆動量の変化、若しくはステアリング機構の駆動量等を検知することによって操舵トルク値を提示する。
ブレーキ制御ユニット25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、ブレーキ制御ユニット25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、車両を強制的に減速させる。
なお、地図ロケータ演算部12,周辺環境認識部20b,走行環境認識部21d,走行制御ユニット22,エンジン制御ユニット23,パワーステアリング制御ユニット24,ブレーキ制御ユニット25等については、例えばCPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)や不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ及びその周辺機器等によって構成されているものである。そして、ROMにはCPUが実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。本実施形態の走行制御装置1の概略構成は、以上である。
このように構成された本発明の一実施形態の走行制御装置1を搭載した車両が道路を走行しているとき、カメラユニット21によって取得される画像データによって表示される画像は、図2のようになる。
なお、本実施形態の以下の説明においては、自車両の通行区分が左側である左側通行を基本とする道路システムの場合を例示している。したがって、右側通行を基本とする道路システムに、本発明の構成を適用するには、左右を入れ替えて考慮するのみで容易に応用することができる。
図2は、本実施形態の走行制御装置を搭載した車両が道路上を走行中に、カメラユニット21により取得される画像データに基づき表示される1フレーム分の画像の表示例である。
本実施形態の走行制御装置1におけるカメラユニット21によって取得される画像データの1フレーム分の表示画像は、図2の符号200で示す横長の矩形状からなる画像枠で示される。
表示画像200には、自車両(不図示)の走行している走行車線を、自車線201として示している。この自車線201は、左側区画線LLと、右側区画線LRとによって設定される目標設定線TL,TRに挟まれる領域である。そして、自車線201の中央位置には、目標走行経路TCが設定されている。
なお、目標設定線TL,TRと、目標走行経路TCは、本走行制御装置1によって仮想的に設定される設定線のイメージであり、カメラユニット21によって取得される画像データに基づいて表示される表示画像上に必ずしも表示されるものではなく、図2においては、説明の便宜上から示しているものである。
自車線201の右側領域には、自車線201に沿って対向車線204が存在している。つまり、図2においては、片側一車線の形態の道路を例示している。そして、この場合において、自車線201の右側区画線LRは、当該二車線道路の左右の車線(201,204)を区画する中央線でもあり、対向車線204を走行する他車両(図3の符号M2で示す対向車)にとっての右側区画線でもある。
また、自車線201の左側区画線LLの左側縁には、歩道205と、当該歩道205と車道(自車線201)との境界となる縁石202が設けられている。この場合において、図2の符号203は、道路左端を示している。
そして、図2においては、自車線201内の道路表面上には、平面障害物等として、例えばマンホール蓋206と、道路標示207と、水溜まり208等が存在していることを示している。
これらの平面障害物等としてのマンホール蓋206,道路標示207,水溜まり208等は、カメラユニット21によって取得される画像データに基づいてIPU21cにより画像処理済みデータに基づいて、走行環境認識部21dが所定の処理を施すことにより認識される。
また、表示画像200の所定の領域には、路面探索領域SAが設定されており、図2においては、点線で示される矩形枠領域で示している。この路面探索領域SAの表示枠についても、仮想的な表示であり、実際の画像上に必ずしも表示されるものではなく、図2においては、説明の便宜上から示しているものである。
この場合において、本実施形態の走行制御装置1における走行環境認識部21dは、カメラユニット21によって取得されIPU21cによって所定の画像処理が施された画像データに基づいて、道路表面の通常路面輝度推定値や、走行に伴って変化する路面輝度の変化(輝度差)を検出する。そして、通常路面輝度推定値よりも所定の輝度値以上の高輝度領域を検出した場合には、形状推定処理を行って、当該高輝度領域の面積分布から、道路表面上に水溜まり等208が存在することを推定すると共に、その水溜まり等208の形状,面積,位置等を推定する。なお、これらの水溜まり等208に関する情報を水溜まり情報と言うものとする。
このようにして、当該走行制御装置1が、前方の走行車線内に水溜まり等208を認識した場合には、当該走行制御装置1は、当該認識した水溜まり等208を考慮した目標走行経路の再設定処理を行って、新たに設定された目標走行経路に沿う走行制御を行う。
図3は、図2と同様の状況を俯瞰的に示す概念図である。なお、図3においては、図面の繁雑化を避けるために、図2において図示したマンホール蓋206及び道路標示207の図示を省略している。
図3において、本実施形態の走行制御装置1(図3には不図示)を搭載した自車両Mが、自車線201内を目標走行経路TC(二点鎖線矢印)に沿って走行しているものとする。この場合において、自車線201内の前方には、水溜まり等208が形成されている。図3に図示する例においては、当該水溜まり等208は、例えば自車線201内の一部領域から左側区画線LLを跨いで道路左端203までの領域において平面的にかつ不規則形状に形成されているものとする。つまり、図3においては、水溜まり等208は、少なくとも一部が自車線201内にあって、かつ当該自車線201の中央位置に設定された目標走行経路TCに対して左寄りの領域に形成されている例を示している。
そして、図3においては、当該水溜まり等208が形成されている領域の横位置における歩道205上には、歩行者等Hが存在していることを示している。この場合において、歩行者等Hは、自車両Mの進行方向に対して略平行となる方向に歩行しているものとする。さらに、対向車線204には、対向車M2が走行していることを示している。なお、ここで、横位置とは、道路の延出方向であって自車両Mの進行方向(目標走行経路TCに沿う方向)に対して直交する左右方向(自車両Mの幅方向)を指すものとする。
このような状況下において、自車両Mの走行制御装置1は、走行中の自車両Mの周辺環境情報等を取得し、取得した周辺環境情報等に基づいて、自車線201内の前方の水溜まり等208や、歩道上の歩行者等H,周辺を走行する他車両(図3の対向車M2)等を認識する。
そして、自車線201内の前方に水溜まり等208が認識された場合には、走行制御装置1は、まず、現在設定されている目標走行経路TCに沿って自車両Mを走行させた場合に、自車両Mの車輪(図3では左側車輪MT(L)参照)の通過が予想される経路である車輪通過予想経路TA(図3の二点鎖線矢印参照)を推定する。そして、当該車輪通過予想経路TAが水溜まり等208上を通過するか否かを推定する(図3の例示では通過している例を示す)。つまり、自車両Mが現在の目標走行経路TCに沿って、そのまま走行を継続した場合の所定の時間経過後に、自車両Mの車輪MT(L)が水溜まり等208上を通過するか否かを推定する。
そして、車輪通過予想経路TAが水溜まり等208の上を通過すると推定された場合には、本走行制御装置1は、認識されている水溜まり等208を回避し得る新たな目標走行経路TC2の再設定を行う(図3の二点鎖線参照)。そして、先に設定されている目標走行経路TCから新たに設定された目標走行経路TC2へと切り換えて円滑で安全に走行するために操舵制御を伴う走行制御が行われる。図3の例示では、当初の目標走行経路TCから符号TC1で示す変更経路を経て新たな目標走行経路TC2へと至る経路を示している。
こうして自車両Mが、当初設定されていた目標走行経路TCに沿って走行している状態から、新たな目標走行経路TC2に沿って走行する状態に移行し、やがて、水溜まり等208の横位置を通過することになる。図3においては、水溜まり等208の横位置に至ったときの自車両の位置を符号M1で示している。
そして、当該認識された水溜まり等208の横位置を通過して回避したことが確認されると、走行制御装置1は、当初設定されていた目標走行経路TCへと設定を戻し、当該目標走行経路TCに沿う走行を継続する走行制御が行われる。図3においては、目標走行経路TC2から符号TC3で示す変更経路を経て当初の目標走行経路TCへと復帰する例を示している。
なお、この場合において、走行制御装置1は、水溜まり等208の横位置近傍に歩道205上の歩行者等Hや、対向車線204上の対向車M2をも認識している。この場合においては、本走行制御装置1は、所定の減速制御等を同時に、若しくは目標走行経路の変更のための操舵制御を行う以前に実行する。
このように、本実施形態の走行制御装置1は、走行車線内の前方に認識された水溜まり等208を考慮し、かつ歩行者等Hや他車両(対向車M2)等の周囲環境をも考慮しながら、当該水溜まり等208を回避し、若しくは回避し得ない場合に水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫を飛散させることによる周囲への影響等を抑止することのできる新たな目標走行経路の再設定を行って、新たな目標走行経路に沿う走行制御を行う。なお、自車両Mが前方の水溜まり等208を回避する際の異なる状況の場合や、自車両Mが前方の水溜まり等208を回避し得ない場合等、図3で説明した場合とは異なるその他の状況と、各対応する作用の詳細は後述する。
次に、本実施形態の走行制御装置1において、水溜まり等を考慮した目標走行経路を設定する際の作用を、図3~図24を用いて、以下に説明する。
図3~図5は、本実施形態の走行制御装置を搭載した車両が道路を走行中に自車線の前方に走行を阻害する可能性のある水溜まり等を認識した場合に、自車両が当該水溜まり等を回避する走行制御を行って、当該水溜まり等の上を通過することなく確実に回避する場合の態様例を示す概念図である。このうち、図3,図4は、自車両が自車線の範囲内で回避走行制御を行う場合の二例を示す。なお、図3は、自車両が自車線内にて操舵によって右寄りに走行経路を変更して水溜まり等を回避する場合(自車線範囲内操舵回避)の例示である。また、図4は、自車両が自車線内にて操舵によって左寄りに走行経路を変更して水溜まり等を跨いで回避する場合(自車線範囲内跨ぎ回避)の例示である。図5は、自車両が自車線から対向車線側にはみ出して回避走行制御を行う場合(対向車線はみ出し回避)の一例を示している。
図6~図16は、本実施形態の走行制御装置の作用のうち、水溜まり等を考慮した目標走行経路を設定して走行制御を行う際の作用を示すフローチャートである。このうち、図6は、本実施形態の走行制御装置において水溜まり等を考慮した目標走行経路を設定する際の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図7は、図6のステップS12の処理(目標走行経路設定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。図8は、図6のステップS14の処理(水溜まり等推定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。図9は、図6のステップS18の処理(目標走行経路再設定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図10は、図9のステップS58の処理(自車線範囲内での回避経路設定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。図11は、図9のステップS55の処理(対向車線へのはみ出し回避経路設定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。図12は、図9のステップS59の処理(自車線範囲内で水溜まり領域通過経路設定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図13は、図12のステップS93,S98,S99,105,106,図15のステップS141の処理(減速制御処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。図14は、図12のステップS97,S100の処理(第2,第3形状パターン対応走行経路設定処理(左右))のサブルーチンを示すフローチャートである。図15は、図12のフローチャートの一部(図12のステップS102の処理から分岐した後の処理シーケンス)を示すフローチャートである。図16は、図12のステップS104,S107の処理(第2,第3形状パターン対応走行経路設定処理(中央))のサブルーチンを示すフローチャートである。
図17は、本実施形態の走行制御装置を搭載した車両が道路を走行中に自車線の前方に走行を阻害する可能性のある水溜まり等を認識した場合に、自車両が当該水溜まり等を回避し得ずに、当該水溜まり等の領域上を通過する場合の態様例を示す概念図である。なお,図17においては、自車両が自車線の範囲内で回避走行制御を行う場合の一例を示している。なお、図17に示す基本的な周囲の状況については、図3~図5に準じたものとしている。
図18~図20は、本実施形態の走行制御装置を搭載した車両が道路上の水溜まり等を考慮した走行を行う際の状況を示す概念図である。このうち、図18は、車両が水溜まり等の上を通過することなく確実に回避する場合の三態様を示している。図19,図20は、車両が水溜まり等の横位置を通過するとき、充分な回避領域を確保することができず、車両が水溜まり等を回避し得ずに、当該水溜まり等の領域上をやむを得ず通過せざるを得ない状況の態様を示している。このうち、図19は、水溜まり等からの飛沫が車両の外側に向けて飛散する状況の一態様を示している。図20は、水溜まり等からの飛沫が車両の内側に向けて飛散する状況の一態様を示している。
図21~図24は、水溜まり等の平面形状を類型化して認識する際の各態様例を示す概念図である。このうち、図21は水溜まり等の平面形状の第1形状パターン(矩形形状を特徴点として類型化する場合)の一態様を示す図である。図22は水溜まり等の平面形状の第1形状パターン(楕円形状を特徴点として類型化する場合)の別の一態様を示す図である。図23は水溜まり等の平面形状の第2形状パターン(三角形を特徴点として類型化する場合の横方向突出領域が手前側の場合)の一態様を示す図である。図24は水溜まり等の平面形状の第2形状パターン(三角形を特徴点として類型化する場合の横方向突出領域が奥側の場合)の別の一態様を示す図である。
本実施形態の走行制御装置1を搭載した自車両Mが起動されて、カメラユニット21,周辺監視ユニット20,走行制御ユニット22等の各構成ユニットの作動が開始した後、自車両Mは、運転者の所定の操作を受けて道路上での走行を開始する。
このとき、まず、図6のステップS11において、走行制御ユニット22は、周辺環境認識部20b,走行環境認識部21d等を通じて自車両の前方環境及び周辺環境の認識処理を開始する。
ここで、周辺環境認識部20b,走行環境認識部21d等は、自車線や隣接車線等の左右区画線等を含む前方及び周辺の環境を認識する。また、ここで、走行制御ユニット22は、自車両自身の状態(例えば車速等のほか、選択設定されている走行制御の種別等)について検出する。ここで行われる周辺環境認識処理は、当該走行制御装置1の起動中は常時継続して行われている。
なお、車線維持走行支援制御等の走行支援に関する機能は、運転者が、例えばモード切換スイッチ33等に含まれる各種操作部材を操作することによって、任意に選択的にオンオフ設定を行うことができるように構成されている。しかしながら、本実施形態においては、説明を簡略化するために、このステップS11の処理の時点において、車線維持走行支援制御を実行するための指示信号が、既にオン状態となっているものとする。
次に、ステップS12において、走行制御ユニット22は、ステップS11の処理にて認識された自車線の左右区画線情報等や自車両Mの位置情報,道路地図情報等に基づいて、車線維持走行支援制御を行うための目標走行経路TC(自車線の目標設定線TL,TRや車線中央位置等)を目標走行経路設定部22b等によって設定する。また、この時点において、自車両Mが走行している道路の形態情報(例えば二車線道路,片側二車線若しくは三車線道路等の形態情報)などに加えて、自車両Mが走行している自車線の位置情報(例えば片側三車線道路の中央車線などの情報)なども取得されているものとする。
ここで、ステップS12の目標走行経路設定処理の詳細は、図7に示す処理シーケンスである。ここで行われる目標走行経路設定処理は、従来の走行制御装置によって行われる処理と同様である。したがって、本実施形態の目標走行経路設定の処理シーケンスについては、以下に簡略に説明するに留める。
まず、図7のステップS31において、走行環境認識部21dは、左右区画線LL,LRを認識する。
次に、ステップS32において、走行制御ユニット22の目標走行経路設定部22bは、認識された左右区画線LL,LRのそれぞれの内側縁に沿う目標設定線TL,TRを左右それぞれに設定する。
続いて、ステップS33において、走行制御ユニット22の目標走行経路設定部22bは、地図情報等から取得した車線幅データ等に基づいて、目標設定線TL,TRの中央位置を目標走行経路TCとして設定する。
さらに、ステップS34において、走行制御ユニット22の目標走行経路設定部22bは、目標設定線TL,TRに挟まれる領域を走行車線(自車線201)として認識する。その後、本目標走行経路設定処理シーケンスを抜けて(リターン)、図6のステップS13の処理に進む。
図6に戻って、ステップS13において、走行制御ユニット22は、設定された目標走行経路TCに沿う車線維持走行支援制御を開始する。この車線維持走行支援制御は、その基本的な処理シーケンスは、従来の走行支援制御において行われるものと略同様である。したがって、車線維持走行支援制御の詳細な説明は省略する。
続いて、ステップS14において、走行制御ユニット22は、水溜まり等推定処理を開始する。ここで、ステップS14の水溜まり等推定処理の詳細は、図8に示す処理シーケンスである。
まず、図8のステップS41において、走行環境認識部21dは、カメラユニット21によって取得されIPU21cにより処理済みの画像データに基づいて、1フレーム分の画像枠内に予め設定された所定の路面探索領域SA(図2参照)における路面輝度の平均値を、連続的に取得される各画像データ毎に算出する。
次に、ステップS42において、走行環境認識部21dは、連続して取得される複数の画像データ毎に対応する複数の路面輝度の平均値に基づいて、自車両Mが走行中の道路における通常路面輝度値を所定時間(数秒間)毎に推定し、通常路面輝度推定値を算出する。
ステップS43において、走行環境認識部21dは、路面探索領域内において、車両の走行に伴って変化する路面輝度の変化(輝度差)を検出する。
続いて、ステップS44において、走行環境認識部21dは、通常路面輝度推定値に対して所定の輝度値以上の高輝度領域が検出されたか否かの確認を行う。ここで、高輝度領域が検出された場合には、次のステップS45の処理に進む。また、高輝度領域が検出されない場合には、ステップS43の処理に戻る。
ステップS45において、走行環境認識部21dは、検出された高輝度領域毎に形状推定処理を行って、検出された高輝度領域に対応する物体が路面標示等であるか、若しくは水溜まり等であるかのいずれであるかを推定する。ここで行う形状推定処理とは、例えば、高輝度領域の面積分布等に基づいて、その平面形状等を推定する処理である。
一般に、路面標示等としては、例えばマンホール蓋206(図2参照)や各種の道路標示207(図2参照)等がある。これらの路面標示等の形状は規格化されているものであることから、それらの形状規格データ等を予め記憶しておき、上記形状推定処理にて、当該形状規格データを参照し、検出された高輝度領域と比較することによって、当該高輝度領域が路面設置物体に相当するものであるか否かを容易に判定できる。
また、路面標示等(206,207)についての情報(位置や形状情報等)は、道路地図情報等にも含まれている場合がある。したがって、路面標示等であるかどうかの判定は、上述の形状推定処理に加えて、道路地図情報等を参照することによっても可能である。
なお、この形状推定処理においては、検出された高輝度領域を水溜まり等と推定した場合、自車線201内における位置,形状,面積(大きさ)等の関連情報も同時に取得する。
このようにして、ステップS44の処理において検出された高輝度領域についての形状推定処理(ステップS45の処理)が終了すると、その後、本水溜まり等推定処理シーケンスを抜けて(リターン)、図6のステップS14の処理に進む。
図6に戻って、ステップS15において、走行制御ユニット22は、上述のステップS14の処理にて、自車線201内の前方に水溜まり等208を認識したか否かを確認する。ここで、水溜まり等208が認識されている場合は、ステップS16の処理に進む。また、水溜まり等208が認識されていない場合は、ステップS13の処理に戻る。
ステップS16において、走行制御ユニット22は、現在の目標走行経路TCに沿う走行を継続した場合の車輪通過予想経路を推定する。この車輪通過予想経路は、図3の例示においては、自車両Mの左側前輪MT(L)が通過する車輪通過予想経路TAが相当する。
ステップS17において、走行制御ユニット22は、上述のステップS16の処理にて推定した車輪通過予想経路TA、即ち自車両Mの左右いずれかの車輪の経路が、現在認識されている水溜まり等208の上を通過する可能性があるか否かを確認する。
ここで行われる確認処理は、例えば、次のような処理による(図3参照)。即ち、上述の水溜まり等推定処理(図6のステップS14)にて認識された水溜まり等208は、走行車線(自車線201)内において、どの位置に、どのような形状で、どの程度の大きさ(面積)で存在しているのか等について、当該水溜まり等推定処理により判明している。
したがって、まず、走行車線(自車線201)に関する情報の上に、認識されている水溜まり等208に関する情報を重ねる。これにより、自車線201の範囲内において水溜まり等208が、どの位置に、どのような形態で分布しているかが判明する。そして、自車線201内に設定されている目標走行経路TCと、自車線201の車線幅データと、自車両Mの車両幅データやトレッド幅データ等に基づいて、自車両Mの車輪通過予想経路TAを求め、当該車輪通過予想経路TAの情報を、水溜まり等208の情報を含む自車線201の関連情報に重ねる。これによって、当該車輪通過予想経路TAと、水溜まり等208とが重なり合うか否かを確認できる。
ここで、車輪通過予想経路TAは、次のように求めることができる。即ち、図3に示すように、目標走行経路TCは、目標設定線TL,TRの中央位置であり、自車線201の略中央位置に設定されている。そして、自車両Mが、当該目標走行経路TCに沿って走行するとき、自車両Mの幅方向の中心位置を目標走行経路TCに一致させるようにする。したがって、これにより、車輪通過予想経路TAは、目標走行経路TCに対してトレッド幅W2の2分の1(W2/2)だけ横方向の左右にそれぞれ離れた各位置に設定される。
図3,図4に示す例では、当初設定された目標走行経路TCに沿って自車両Mが走行を継続した場合に、所定時間が経過した後、当該自車両Mの車輪通過予想経路TAが水溜まり等208の上を通過する状況(即ち、車輪通過予想経路TAと水溜まり等208とが重なり合う場合の状況)を示している。
また、自車両Mの自車線201の範囲内の前方に水溜まり等208を認識した場合において、この水溜まり等208に対して、自車両Mの車輪通過予想経路TAが重ならない場合(車輪が水溜まり等の上を通過する可能性がない場合)の一例としては、例えば、次のような場合がある。
即ち、水溜まり等208が自車線201の範囲内において、当該自車線201の略中央領域近傍に存在しており、かつ当該水溜まり等208自体の横方向の長さ(幅寸法)は自車両Mのトレッド幅W2よりも小であり、さらに水溜まり等208の外縁部(左端,右端の各位置)と、各位置に対して対向する位置の各目標設定線TL,TRとのそれぞれの間に横方向の所定の距離が存在しているような場合である。この場合には、自車両Mは、必要に応じて所定の回避走行制御が行われることによって、車輪が水溜まり等208の上を通過することなく、当該水溜まり等208を跨いで回避することができる。
なお、詳細は後述するが、図4において符号M1で示す車両は、当初設定されていた目標走行経路TCに沿って走行する自車両Mが、自車線201の範囲内の前方に認識された水溜まり等208を回避する回避走行制御を行って、新たに設定した目標走行経路TC2に沿って走行している場合の自車両を示すものである。
この図4においては、自車両M1が変更後の目標走行経路TC2に沿って走行した場合に変更後の車輪通過予想経路TA1が水溜まり等に重ならない場合(車輪が水溜まり等の上を通過する可能性がない場合)の例示となる。
即ち、図6のステップS17の処理にて、車輪通過予想経路TAが水溜まり等208に重なることが確認された場合(車輪が水溜まり等の上を通過する可能性がある場合)には、ステップS18の処理に進む。
また、車輪通過予想経路TAが水溜まり等208に重ならないことが確認された場合(車輪が水溜まり等の上を通過する可能性がない場合)は、自車両Mの車輪は、水溜まり等208上を通過することなく走行が継続されることから、泥土や汚水等の飛沫を飛散させることによる周囲への悪影響を発生させないものと考えられる。したがって、この場合は、ステップS13の処理に戻り、そのままの走行制御を継続しつつ、同様の処理を繰り返す。
なお、上述したように、車輪通過予想経路TAは、自車両の前後左右の車輪が通過することが予想される位置を繋げた予想線として設定している。しかしながら、実際の車両に用いられる車輪は、横方向に所定の幅寸法を有している。したがって、車両が通過する予想線としての車輪通過予想経路TAは、実際には横方向に車輪幅と略同等の幅寸法を有する。
ところで、上述の説明では、自車両Mのトレッド幅データを用いて車輪通過予想経路TAを求めるようにしている。一般に、トレッド幅は、車両の左右車輪の各接地面の中心間距離(横方向間隔)を指すものである(図3の符号W2参照)。したがって、上述の説明では、この車輪幅を考慮していない説明となっている。
このことから、例えば、車輪通過予想経路TAが水溜まり等208の外縁部直近位置を通過すると推定された場合、車輪幅分を考慮していない分、自車両Mの車輪が水溜まり等208の外縁部の一部に重なってしまう可能性がある。したがって、車輪通過予想経路TAを求める際に、より正確さを得るためには、トレッド幅に対して車輪一本分(左右それぞれに車輪幅の2分の1)の幅寸法を考慮する必要がある。つまり、車輪通過予想経路TAを求める際には、「トレッド幅W2+車輪一本分の幅データ」を用いるのが理想的である。
しかしながら、本明細書においては、説明の煩雑化を避けるために、単に「トレッド幅データ」として表記している。このことは、以下の説明において、トレッド幅データを用いる場合にも同様であるものとする。
図6のステップS17の処理にて、車輪通過予想経路TAと水溜まり等208が重なる(車輪が水溜まり等の上を通過する可能性がある)ものと推定されて、ステップS18の処理に進むと、このステップS18において、走行制御ユニット22は、現在設定されている目標走行経路TCについて、水溜まり等208を回避するための新たな目標走行経路に変更する目標走行経路再設定処理を実行する。ここで、ステップS18の目標走行経路再設定処理の詳細は、図9に示す処理シーケンスである。
まず、図9の目標走行経路再設定処理においては、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に加えて、設定されている目標走行経路TCと、当該走行車線(自車線201)の車線幅データWと、自車両Mの車両幅データW1やトレッド幅データW2と、現在認識されている水溜まり等208に関するデータ(位置,形状,面積(大きさ)等)等の各種の情報(以下、これらをまとめて周辺環境情報等という)に基づいて、現在認識されている水溜まり等208の横位置に回避領域があるか否かの確認をする。
ここで、水溜まり等208の横位置の回避領域とは、自車両Mが水溜まり等208を回避するために、現在設定されている目標走行経路TCから逸れた走行経路をとった場合にも、安全に走行を継続することができるだけの横方向の空間的領域をいうものとする。
例えば、図3に示すように、自車両Mが走行している走行車線(自車線201)の車線幅Wが、自車両Mの車両幅W1に比べて充分に広く設定されているものとする。ここで、道路の車線幅Wは、一般的な道路の場合3m前後に設定されている。また、普通乗用車等の車両幅は、1.7m前後に設定されている。
このような道路を一般的なサイズの普通乗用車等(自車両M)が走行する場合、走行車線上に存在する水溜まり等208の位置,形状,面積(大きさ)によっては、自車両Mは自車線201からはみ出す(逸脱する)ことなく、当該自車線201の範囲内で走行経路を横方向にずらすことのみで、水溜まり等208を回避し得る場合がある。
例えば、図3に示す例は、自車両Mが自車線201の範囲内からはみ出すことなく水溜まり等を回避し得る場合の具体的な一例を示している。
図3において、自車線201の車線幅を符号W、自車両Mの車両幅を符号W1、同自車両Mのトレッド幅を符号W2として示している。
また、図3に示す例では、水溜まり等208は、自車線201の範囲内において、自車両Mから見て前方左寄りの位置に形成されているものとしている。この場合において、当該水溜まり等208は、横方向の左端位置(図3の符号B参照)が少なくとも左側区画線LLに接しているか若しくは左側区画線LLよりも左寄り領域まで拡張しているものとする(図3に示す例では水溜まり等208の左端位置Bは道路左端203近傍に位置している)。また、同水溜まり等208の横方向の右端位置(図3の符号A参照)は、左側区画線LLから自車線201の中央領域に向けて所定の長さだけ拡がって形成されている水溜まり等208における最も右端位置を示すものとする。
なお、ここでは(回避領域の存在の有無の確認を行う際には)、水溜まり等208における縦方向(車両進行方向)の長さと、全体形状については特に考慮していない。これらの情報(形状など)は、後述する所定の処理にて利用される。
このような形態の水溜まり等208において、横方向の全体距離(幅寸法)は、左端位置Bから右端位置Aの間の距離で示すことができる。また、当該水溜まり等208が自車線201の範囲内に存在している領域に着目すると、左側区画線LLから右端位置Aまでの横方向の距離(幅寸法;図3の符号W3)で示される領域が相当する。
ここで、図3において、水溜まり等208の右端位置Aから右側区画線LRまでの横方向の距離(幅寸法)を符号W4として示している。この符号W4で示される横方向の距離は、自車線201の範囲内において、水溜まり等208が存在していない領域の横方向の距離(幅寸法)を示している。したがって、図3の符号W4で示す領域は、自車線201の範囲内において、自車両Mが水溜まり等208を回避する際の回避領域と考えることができる。即ち、図3に示すように、車線幅Wは、
車線幅W≒水溜まり等208の車線内の領域の横幅W3+回避領域の横幅W4
で表すことができる。この場合において、
回避領域の横幅W4>車両幅W1(若しくはトレッド幅W2)
の関係が成立する場合には、自車両Mの左側前輪MT(L)が水溜まり等208の上を通過することなく、自車両Mは水溜まり等208を確実に回避することができる。したがって、この場合、水溜まり等208の横位置に、回避領域が存在するものと推定できる。
なお、図3においては、水溜まり等208が自車線201の範囲内において前方左寄りに位置している場合を例示したが、これとは別に、例えば水溜まり等が自車線の範囲内において前方右寄りに位置している場合は、左右を入れ替えることで同様に考慮することができる。したがって、水溜まり等が自車線の範囲内において右寄りに位置する場合の説明は省略する。
さらに、これらとは別に、自車両Mが自車線201の範囲内からはみ出すことなく水溜まり等208を回避し得る場合の例示として、例えば図4に示すような場合が考えられる。
図4において、自車線201の車線幅を符号W、自車両Mの車両幅を符号W1、同自車両Mのトレッド幅を符号W2として示しているのは、図3の場合と同様である。
また、図4に示す例では、水溜まり等208は、自車線201の範囲内において、自車両Mから見て前方略中央領域の位置(図3の例示は中央やや左寄り位置)に形成されているものとしている。
この場合において、当該水溜まり等208は、横方向の最右端位置A及び最左端位置Bが少なくとも左右区画線LL,LRのいずれにも接しておらず、当該水溜まり等208は全体として自車線201の範囲内に形成されているものとしている。なお、ここでは(回避領域の存在の有無の確認を行う際には)、水溜まり等208における縦方向(車両進行方向)の長さと、全体形状について特に考慮していないのは、図3の場合と同様とする。
このような形態の水溜まり等208を前方に認識した自車両Mにおいて、現在の目標走行経路TCに沿って走行を継続した場合の車輪通過予想経路TAが当該水溜まり等208の領域上を通過することが予想される場合(図4には領域上を通過する場合を示している)に、新たな目標走行経路TC2を設定することになる。
ここで、水溜まり等208の横方向の最右端位置Aと最左端位置Bとの間の横方向の距離を符号W3として示し、この符号W3で示される横方向の距離が、自車線201内に存在する水溜まり等208自体の横方向の長さ(幅寸法)を示すものとする。この場合において、
トレッド幅W2>水溜まり等208の領域の横幅W3
が成立する場合には、自車両Mは、左右いずれの車輪MT(L,R)も、水溜まり等208の上を通過することなく跨ぐことができ、よって、自車両Mは水溜まり等208を跨いで回避することができると考えられる。したがって、このとき、水溜まり等208の横方向の距離(幅)W3の中心位置Cに沿うように新たな目標走行経路を設定したとすれば、自車両Mは水溜まり等208を跨ぐことができる。
そこで、水溜まり等208の幅W3の中心位置Cから左側区画線LLまでの横方向の距離(幅)W5とし、水溜まり等208の横方向の距離(幅)W3の中心位置Cから右側区画線LRまでの横方向の距離(幅)W6と、すると、
トレッド幅W2>水溜まり等208の領域の横幅W3
W5>車両幅W1/2(若しくはトレッド幅W2/2)
W6>車両幅W1/2(若しくはトレッド幅W2/2)
の関係のいずれもが成立すれば、自車両Mは、水溜まり等208を跨いで確実に回避したとき、自車両Mの横方向において左右両側に左右の各車輪MT(L,R)をそれぞれ安全に通過させることができると考えられる。したがって、この場合にも、水溜まり等208の横位置には回避領域が存在するものと推定できる。
ところで、図3~図5に示すように、自車両Mが片側一車線道路を走行中の場合には、対向車線204の領域が存在する。この場合、自車両Mは、対向車線204側に、はみ出す(逸脱する)ことによって走行車線(自車線201)内の水溜まり等208を回避することが可能となる場合がある。ただし、この場合には、対向車線204側を走行する対向車M2(図3参照)の存在や、交通規制(車線はみ出し禁止等)等の存在を考慮する必要がある。
また、自車両Mが片側二車線以上の道路を走行中の場合(不図示)には、隣接車線への車線変更を行うことによって走行車線内の水溜まり等208を回避することができる可能性がある。このように車線変更を行なって水溜まり等208を回避する場合には、隣接車線を走行する併走車や後続車等を考慮する必要がある。
そこで、図9の目標走行経路再設定処理(図6のステップS18の処理)においては、まず、ステップS51において、走行制御ユニット22は、自車両Mが走行中の走行車線(自車線201)の範囲内において水溜まり等208の横位置に回避領域が存在するか否かの確認を行う。ここで、回避領域の存在が確認された場合は、ステップS58の処理に進む。また、回避領域の存在が確認されない場合には、ステップS52の処理に進む。
ここで、上述のステップS51の処理にて行われる回避領域の有無の確認は、次のような処理となる。即ち、まず、走行制御ユニット22は、自車線201の範囲内における水溜まり等208の位置を確認する。
自車線201の範囲内における水溜まり等208の位置としては、例えば、図3に示すように、自車線201の範囲内において左寄り領域に形成されており、かつ左端が左側区画線LLに接しているか若しくは左側区画線LLより左寄り領域まで拡がっている場合と、図示していないが右寄り領域の場合(図3の左右を入れ替えた場合)と、図4に示すように、自車線201の範囲内において略中央領域近傍に形成されている場合等がある。
まず、水溜まり等208が、自車線201の範囲内において左寄り領域若しくは右寄り領域にある場合(図3参照)には、走行制御ユニット22は、走行中の自車線201の車線幅Wと、水溜まり等208の横方向の距離(幅)W3とから回避領域の幅W4を求める。そして、算出された回避領域の幅W4と、自車両Mの車両幅W1又はトレッド幅W2の各データとから、自車線201の範囲内における水溜まり等208の横位置の回避領域の有無を確認する。ここで、
回避領域の幅W4>車両幅W1 若しくはトレッド幅W2
が成立すれば、自車線201の範囲内に回避領域があるものと推定されて、図9のステップS58の処理に進む。また、
回避領域の幅W4≦車両幅W1 若しくはトレッド幅W2
であれば、自車線201の範囲内に回避領域はないものと推定されて、図9のステップS52の処理に進む。なお、回避領域がない場合の判定として、回避領域の幅W4と車両幅W1(若しくはトレッド幅W2)とが等しい場合を含めている。このことは、例えば、回避領域の幅W4と車両幅W1(若しくはトレッド幅W2)とが等しい場合には、横方向に余裕の少ない回避領域(W4の側)を走行した場合、水溜まり等208の領域上を走行してしまう可能性があることによる。
一方、水溜まり等208が、自車線201の範囲内において略中央領域近傍にある場合(図4参照)には、走行制御ユニット22は、自車両Mのトレッド幅W2と、水溜まり等208の横方向の距離(幅)W3について、
トレッド幅W2>水溜まり等の幅W3
であるかどうかを確認する。この条件が成立する場合には、水溜まり等208自体の横方向の距離(幅)W3の中心位置Cから左側区画線LLまでの横方向の距離(幅)W5と、水溜まり等208の横方向の距離(幅)W3の中心位置Cから右側区画線LRまでの横方向の距離(幅)W6と、自車両Mの車両幅W1若しくはトレッド幅W2について、
W5>車両幅W1/2 若しくはトレッド幅W2/2
W6>車両幅W1/2 若しくはトレッド幅W2/2
がいずれも成立する場合には、自車線201の範囲内に回避領域があるものと推定されて、図9のステップS58の処理に進む。
なお、
水溜まり等の幅W3≧トレッド幅W2
である場合には、自車線201の範囲内に回避領域がないものと推定されて、図9のステップS52の処理に進む。
このように、上述の図9のステップS51において、自車線201の範囲内に回避領域があるものと推定された場合は、図9のステップS58の処理に進む。また、自車線201の範囲内に回避領域がないものと推定された場合は、図9のステップS52の処理に進む。
ここで、回避領域があるものと推定されて図9のステップS58の処理に進むと、このステップS58において、走行制御ユニット22は、自車線201の範囲内において水溜まり等208を確実に回避できる新たな走行経路を設定する処理を実行する。この処理の詳細は、図10に示す処理シーケンスである。
まず、図10の処理シーケンスを説明する前に、自車両Mが水溜まり等208を確実に回避できる場合の状況について図18を用いて説明する。
図18は、車両が水溜まり等の横位置を通過するときに、当該水溜まり等の領域上を通過することなく、同水溜まり等を確実に回避し得る場合(即ち、車両の車輪が水溜まり等の領域上を通らずに走行を継続し得る場合)における車両と水溜まり等との横位置関係を示している。
例えば、図18に示す水溜まり等208Aは、自車線201(図18には不図示;図3参照)の範囲内にあって、自車両Mに対して左寄り領域に存在する場合を示している。この場合において、自車両Mが水溜まり等208Aを回避するためには、例えば、現在設定されている目標走行経路TC(同18には不図示;図3参照)よりも右寄りに走行経路を変更して、自車両Mの左側車輪MT(L)(の車輪通過予想経路TA;図18には不図示)が水溜まり等208Aの領域上を通過しない目標走行経路を設定する。
そのためには、例えば、左側車輪MT(L)が水溜まり等208Aの右端位置Aよりも横方向において右寄りの位置を通る走行経路を設定する。このような走行経路を設定した場合、自車両Mは、水溜まり等208Aの右側の横位置領域(回避領域)を、充分な距離を置いて通過する。換言すると、水溜まり等208Aは、自車両Mの車体の左側面の横方向に位置するような走行経路が設定される。これにより、自車両Mは、当該水溜まり等208Aを確実に回避することができる。
なお、この場合には、水溜まり等208Aの右側の横位置領域に、自車両Mの車両幅以上の寸法を有する回避領域が必要である。ここで、回避領域としては、自車線201の範囲内のみに限らず、例えば、自車両Mが片側一車線道路を走行中の場合であれば(図3参照)、自車両Mが対向車線204側に、はみ出す(逸脱する)ことができれば、充分な回避領域を確保できる(図5参照)。
ここで、自車両Mが走行中の道路において対向車線領域が存在する場合には、自車両Mは対向車線204側にはみ出して走行することにより、当該対向車線領域を回避領域として利用することができるものと考えられる。この場合、対向車線204を走行してくる対向車等の存在の確認や、車線からのはみ出し(逸脱)走行が禁止されているか否か等の交通規制等を考慮する必要がある。
したがって、自車両Mが走行中の道路が片側一車線道路である場合であって、対向車の存在を認識していたり、若しくは、はみ出し禁止等の交通規制情報を得ている場合には、自車両Mは対向車線側に、はみ出して走行することができない。そのような場合に、自車両Mが水溜まり等208等を確実に回避して走行するには、自車線201内に回避領域が存在する場合も限られることになる。
なお、自車線の範囲内にて水溜まり等208Aを確実に回避し得るのは、充分な回避領域が確保される場合であって、充分な回避領域が確保できるか否かは、当該水溜まり等208Aの位置,形状,面積(大きさ)等に依存する。
また、自車両Mが片側二車線以上の道路を走行中の場合には、隣接車線への車線変更が可能な状況であれば、充分な回避領域を確保することができる。この場合には、隣接車線を走行注の併走車や後続車等の存在の確認が必要である。
なお、図18においては、水溜まり等208Aが自車線201の範囲内において左寄り領域に存在する場合を例示したが、これとは別に、右寄り領域に存在する場合であっても、左右を入れ替えて考えることによって同様に対応可能である。
ただし、右寄り領域に水溜まり等が存在する場合には、車両は、左側の歩道側へは、はみ出すことができない。そのため、片側一車線道路の場合に、走行車線内の右寄り領域に水溜まり等が存在する場合に、この水溜まり等を確実に回避するための条件としては、水溜まり等の左側の横位置に、充分な回避領域が存在することが必要である。したがって、片側一車線道路において、右寄り領域に存在する水溜まり等に対し、走行経路を左寄りに変更して確実に回避できるのは、水溜まり等208Aの位置,形状,面積(大きさ)等に依存する。
一方、図18に示す水溜まり等208Bは、自車線201の範囲内にあって、自車両Mに対して右寄り領域に存在する場合を示している。この場合において、自車両Mが水溜まり等208Bを回避するためには、例えば、現在の走行経路よりも左寄りに走行経路を変更して、自車両Mの右側車輪MT(R)(の車輪通過予想経路TA;図18には不図示)が水溜まり等208Bの領域上を通過しない走行経路を設定すればよい。
そのためには、例えば、右側車輪MT(R)が水溜まり等208Bの左端位置Bよりも横方向において左寄りの位置を通る走行経路を設定する。このような走行経路を設定した場合、自車両Mは、水溜まり等208Bの左側の横位置領域(回避領域)を通過する。換言すると、水溜まり等208Bは、自車両Mの車体の右側面の横方向に位置するような走行経路が設定される。これにより、自車両Mは、当該水溜まり等208Aを確実に回避することができる。
さらに、図18も示す例示では、右側車輪MT(R)が水溜まり等208Bの左端位置Bの上を通過しなければよいので、例えば、自車両Mの車体の右側面よりも内側領域(車両側面のオーバーハング部分CL参照;車両幅W1よりも車両内側部分)が存在する構成の場合、当該内側領域に水溜まり等208Bの左端位置Bが位置するような走行経路を設定してもよい。このような設定によって、自車両Mは、当該水溜まり等208Bを確実に回避することができる。
なお、図18においては、水溜まり等208Bが自車線201の範囲内において右寄り領域に存在する場合を例示したが、これとは別に、左寄り領域に存在する場合であっても、左右を入れ替えて考えることによって同様に対応可能である。
他方、図18に示す水溜まり等208Cは、自車線201内の前方略中央領域に存在し、かつ水溜まり等208Cの横幅が自車両Mのトレッド幅W2以内である場合の例示である。
このような水溜まり等208Cを回避するためには、例えば、自車両Mの左右の車輪MT(L,R)の各車輪通過予想経路TA(図4等参照)の間に水溜まり等208Cが位置するように(つまり、水溜まり等208を跨ぐように)走行経路を設定する。換言すれば、自車両Mのトレッド幅W2内に当該水溜まり等208Cが位置するような走行経路を設定する。これによって、当該水溜まり等208Cを確実に回避することができる。なお、水溜まり等を回避するための新たな走行経路の設定手段の詳細は後述する。
図9に戻って、図9のステップS58の処理、即ち自車線201の範囲内において水溜まり等208を確実に回避できる新たな走行経路を設定する処理(自車線内での回避経路設定処理)の処理シーケンスを、図10を用いて以下に説明する。
まず、図10のステップS71において、走行制御ユニット22は、水溜まり等208の自車線201の範囲内における位置は、自車両Mから見て、左右寄り領域又は略中央領域のいずれに存在するかを確認する。ここで、水溜まり等208が自車両Mから見て左寄り領域又は右寄り領域にある場合(図3の参照)は、ステップS72の処理に進む。また、水溜まり等208が自車両Mから見て略中央領域にある場合(図4の参照)は、ステップS73の処理に進む。
ステップS72において、走行制御ユニット22は、認識された回避領域(図3の符号W4参照)の略中心位置に新たな目標走行経路TC2を設定する(図3参照)。ここで、新たな目標走行経路TC2は、次のようにして設定する。
即ち、上述の図9のステップS51の処理にて求めた回避領域の幅W4の中心位置を求める。回避領域の幅W4の中心位置は、図3に示す例の場合、右側区画線LRから横方向の左側に向けて距離W4/2だけ離れた位置である。若しくは、水溜まり等208の右端位置Aから横方向の右側に向けて距離W4/2だけ離れた位置である。この位置において、自車両Mの走行方向に沿って引かれる線を、新たな目標走行経路TC2に設定する。その後、ステップS74の処理に進む。
一方、ステップS73において、走行制御ユニット22は、認識された水溜まり等208の略中心位置Cに新たな目標走行経路TC2を設定する(図4参照)。ここで、新たな目標走行経路TC2は、次のようにして設定する。
即ち、上述の図9のステップS51の処理にて求めた水溜まり等208の幅W3の中心位置を求める。水溜まり等208の幅W3の中心位置は、水溜まり等208の右端位置Aから横方向の左側に水溜まり等208の幅W3/2だけ離れた位置である。また、水溜まり等208の左端位置Bから横方向の右側に水溜まり等208の幅W3/2だけ離れた位置でもある。この位置において、自車両Mの走行方向に沿って引かれる線を、新たな目標走行経路TC2に設定する。その後、ステップS74の処理に進む。
ステップS74において、走行制御ユニット22は、上述のステップS72,S73にて新たに設定された目標走行経路TC2に沿う車線維持走行支援制御を開始する。これにより、自車両Mは、当初設定されていた目標走行経路TCに沿う走行制御から、変更経路TC1を経て、新たな目標走行経路TC2に沿う走行制御に切り換わる(図3,図4参照)。その後、図10の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図9のステップS56の処理に進む。
図9に戻って、図9のステップS56において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の横位置を通過したか否かの確認を行う。この処理は、自車両Mが水溜まり等208の横位置を通過するまで繰り返す。そして、水溜まり等208の横位置を通過したことが確認されると、次のステップS57の処理に進む。
ステップS57において、走行制御ユニット22は、元の目標走行経路TCに設定を戻す。これにより、自車両Mは、新たな目標走行経路TC2に沿う走行制御から、変更経路TC3を経て、当初設定されていた目標走行経路TCに沿う走行制御に戻る(図3参照;図4では不図示)。
なお、この処理に至る以前の処理ステップにて、例えば所定の減速制御処理を経ている場合(後述する例示参照)には、自車両Mは走行速度が低下しているはずである。したがって、この場合には、減速制御処理を行う以前の走行速度に復帰させるための加速制御を行う。この加速制御処理は、上述の減速制御処理と同様に、走行制御ユニット22が、エンジン制御ユニット23を通したスロットルアクチュエータ27の制御等を実行することにより行われる制御処理である。その後、図9の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図6のステップS13の処理に戻る。
一方、上述のステップS51の処理にて、自車線201の範囲内において水溜まり等208の横位置に回避領域がないものと推定されて、ステップS52の処理に進むと、このステップS52において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、自車両Mが走行中の道路形態の確認を行う。この場合において、道路形態は、自車両Mと同一方向に走行する併走他車両のための隣接車線(併走隣接車線)が存在するか否かの確認を行うことによって判断する。ここで、併走隣接車線が存在することが確認されて、片側二車線以上の道路であると確認された場合は、ステップS61の処理に進む。また、併走隣接車線が存在しないことが確認されて、片側一車線以下の道路であると確認された場合は、ステップS53の処理に進む。
ステップS53において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、車線はみ出し禁止等の交通規制区域に該当するか否かの確認を行う。ここで、車線はみ出し禁止等の交通規制区域に該当することが確認された場合は、ステップS59の処理(図12参照)に進む。また、車線はみ出し禁止等の交通規制区域に該当しないことが確認された場合は、ステップS54の処理に進む。
ステップS54において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、対向車線204を走行してくる対向車M2の存在を確認する。ここで、対向車M2の存在が確認された場合は、ステップS59の処理(図12参照)に進む。また、対向車M2の存在が確認されない場合は、ステップS55の処理(図11参照)に進む。
ステップS55において、走行制御ユニット22は、自車両Mが対向車線204に、はみ出すことによって水溜まり等208を確実に回避できる新たな走行経路を設定する処理(図11参照)を実行する。この処理の詳細は、図11に示す処理シーケンスである。なお、この場合の周囲状況については図5を参照のこと。
ここで、図9のステップS55の処理、即ち自車両Mが対向車線204に、はみ出すことによって水溜まり等208を確実に回避できる新たな走行経路を設定する処理(対向線へのはみ出し回避経路設定処理)の処理シーケンスを、図11を用いて以下に説明する。なお、この処理シーケンスが実行される状況は、図5に示すような状況である。
まず、図11のステップS81において、走行制御ユニット22は、水溜まり等208の右端位置Aから横方向の右側(図5の例示参照)に自車両Mの車両幅W1/2若しくはトレッド幅W2/2だけ離れた位置に、自車両Mの走行方向に沿う新たな目標走行経路TC2に設定する。その後、ステップS82の処理に進む。
ステップS82において、走行制御ユニット22は、上述のステップS81にて新たに設定された目標走行経路TC2に沿う車線維持走行支援制御を開始する。これにより、自車両Mは、当初設定されていた目標走行経路TCに沿う走行制御から、変更経路TC1を経て、新たな目標走行経路TC2に沿う走行制御に切り換わる(図5参照)。その後、図11の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図9のステップS56の処理に進む。
他方、上述のステップS52の処理にて、自車両Mが走行中の道路形態が片側二車線以上の道路であると確認されて、ステップS61の処理に進むと、このステップS61において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、車線変更を禁止する交通規制(車線はみ出し禁止若しくは追い越し禁止等)の交通規制区域に該当するか否かの確認を行う。ここで、車線変更禁止区域に該当することが確認された場合は、図9のステップS59の処理に進む(詳細処理シーケンスは図12参照)。また、車線変更禁止区域に該当しないことが確認された場合は、ステップS62の処理に進む。
ステップS62において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、隣接車線(不図示)を走行する併走車又は後続車等の他車両(不図示)の存在を確認する。ここで、隣接車線の併走車又は後続車等の他車両の存在が確認された場合は、図9ステップS59の処理に進む(詳細処理シーケンスは図12参照)。また、隣接車線の併走車又は後続車等の他車両の存在が確認されない場合は、ステップS63の処理に進む。
ステップS63において、走行制御ユニット22は、隣接車線への車線変更制御を実行する。なお、この車線変更制御は、従来一般に行われる走行制御が適用される。したがって、その詳細説明は省略する。その後、ステップS51の処理に戻る。
このようにして、上述のステップS61,S62の処理にて自車両Mが隣接車線への車線変更ができない状況にある場合、若しくは上述のステップS53,S54の処理にて、自車両Mが交通規制若しくは対向車の存在により車線をはみ出すことができない状況の場合等のいずれかの理由により、図9のステップS59の処理に進んだ場合、このステップS59において、走行制御ユニット22は、自車線201の範囲内において水溜まり等208の領域上を通過する新たな走行経路を設定する処理を実行する。この処理の詳細は、図12に示す処理シーケンスである。
ここで、図9のステップS59の処理、即ち自車線201の範囲内において水溜まり等208の領域上を通過する新たな走行経路を設定する処理(自車線内で水溜まり領域通過経路設定処理)の処理シーケンスを、図12を用いて以下に説明する。
まず、図12の処理シーケンスを説明する前に、自車両Mが水溜まり等208を回避できずに、当該水溜まり等208の領域上をやむを得ず通過せざるを得ない場合の状況について図19,図20を用いて説明する。
図19,図20は、車両が水溜まり等の横位置を通過するとき、充分な回避領域を確保することができず、車両が水溜まり等を回避し得ずに、当該水溜まり等の領域上をやむを得ず通過せざるを得ない状況の態様を示している。このうち、図19は、水溜まり等からの飛沫が車両の外側に向けて飛散する状況の一態様を示している。図20は、水溜まり等からの飛沫が車両の内側に向けて飛散する状況の一態様を示している。
例えば、図19に示すように、自車両Mの走行車線(図19には不図示;図4の符号201参照)の範囲内の前方に水溜まり等208Dが存在する場合において、このような水溜まり等208Dを回避するための走行経路を再設定する場合には、周辺環境情報等に加えて、各種の環境情報(道路形態,走行車線の幅,走行車線位置,周辺他車両等)に基づいて回避領域の確認を行うことになる。
この場合において、回避領域が充分に確保できない場合には、当該水溜まり等208Dを確実に回避することができない状況が予想される。したがって、その場合は、水溜まり等208Dの一部領域上を自車両Mの車輪が通過する目標走行経路を設定する。
このとき、水溜まり等208Dの横方向の一方の端部近傍の領域、例えば、図19に示す例では右端位置Aの近傍領域上を、左側車輪MT(L)の車輪通過予想経路が通るような目標走行経路を設定する。これによって、左側車輪MT(L)が水溜まり等208Dの領域上を通過する際に、同領域の一部(右端位置A近傍)上のみを通過するようにしているので、当該水溜まり等208Dから飛散する泥土や汚水等の飛沫が周囲へ悪影響を及ぼすことを最小限に抑えることができる。
また、上述したように、新たな目標走行経路を設定する際に、水溜まり等の一部領域上を車輪が通過する状況になる場合には、水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫が飛散する方向を考慮すれば、周囲への悪影響をさらに抑えることができる場合もある。
例えば、図20に示す状況は、水溜まり208Eの幅W3が自車両Mのトレッド幅W2よりも大(W3>W2)の場合であって、当該水溜まり等208Eを回避するための走行経路の設定を行うのに際し、自車両Mを当該水溜まり208Eを跨ぐように走行させる走行経路を設定する場合の例示である。この場合には、左右車輪MT(L,R)のうちの一方のみが水溜まり等208Eの左右端位置A,Bにいずれか一方の近傍を通過させるようにする。図20の例示では、右側車輪MT(R)が水溜まり等208Eの右端位置Aの近傍を通過するように(水溜まり等208の領域上を通過しないように)した場合を示している。
そして、このとき、例えば、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208Eの左端位置B近傍の一部領域上を通過するような走行経路を設定すれば、水溜まり等208Eからの泥土や汚水等の飛沫は、自車両Mの内側かつ右方向に向けて飛散する。したがって、例えば、左側通行規制の道路においては左側に存在する歩道側への飛沫の飛散を抑えることができ、よって周囲への悪影響を最小限に抑えることに寄与する。
次に、図9に戻って、ステップS59の処理、即ち図12の処理シーケンス(自車線内で水溜まり領域通過経路設定処理)を、以下に説明する。
図12のステップS91において、まず、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、走行車線(自車線201)の範囲内における水溜まり等208の概略位置を確認する。ここで、水溜まり208が自車線201の左右いずれかの区画線LL,LRに偏った領域にある場合(図3,図4参照)は、ステップS92の処理に進む。また、水溜まり208が自車線201の略中央領域にある場合(図5参照)は、ステップS101の処理に進む。
ステップS92において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等と水溜まり形状パターンデータ等に基づいて、水溜まり等208の概略形状を確認する。ここで、水溜まり形状パターンデータは、例えば走行制御ユニット22の内部記憶領域(不図示)等に予め記憶してあるものを参照する。
上述の水溜まり形状パターンデータについては、概略以下のようなものである。水溜まり等208は、道路面の平面上に不規則形状で形成されるのが一般である。そこで、本実施形態においては、水溜まり等208の平面形状を類型化して分類することによって制御処理の単純化を図っている。
ここで、図21~図24は、水溜まり等の平面形状を類型化する際の形態(形状パターン)をいくつか例示する概念図である。このうち図21,図22は、道路平面上において全体として縦横方向に拡がる形状を有する形態を示している。本実施形態の走行制御装置1においては、これらの図21,図22に示す形態を「第1形状パターン」として類型化する。
詳述すると、第1形状パターンは、奥行き方向(前後方向)及び幅方向(左右方向)に略均等に拡張されて形成された例示である。第1形状パターンの具体的な形状としては、例えば、図21に示すように、全体として略矩形状を有する枠F1に納まるような水溜まり等208の形状である。また、図22に示すように、全体として略楕円形状を有する枠F2に納まるような水溜まり等208の形状である。
ここで、第1形状パターンに類型化される水溜まり等に対して車輪を通過させる場合には、水溜まり等208における横方向のどの位置を通過させても、車輪が水溜まり等の領域上を通過する時間が長くなる(図21,図22の車輪通過予想経路TA参照)。したがって、この場合に当該水溜まり等からの飛沫の飛散を抑えるためには、車両の減速制御を伴う処置が有効になる。
一方、図23,図24は、道路平面上において縦方向に広がりを有する領域と、横方向に向けて突出する領域とを有する形状からなる形態を示している。この場合において、縦方向に広がる領域は、横方向の左右いずれか一方に偏在して形成されており、かつ横方向への突出領域は、縦方向に狭い領域から成る形態としている。そして、図23に示すように、横方向への突出領域の突出方向が手前側に形成されている場合を「第2形状パターン」として類型化する。また、図24に示すように、横方向への突出領域の突出方向が奥側に形成されている場合を「第3形状パターン」として類型化する。
この第2,第3形状パターンに含まれる具体例な形状としては、例えば、図23,図24に示すように、全体として略三角形状を有する枠F3,F4に納まるような水溜まり等208の形状がある。なお、図23は、縦方向の領域が左側に偏在しており、横方向の突出領域は進行方向手前側に形成され、右向きに突出して形成されている例示である。これとは別に、第2形状パターンとしては、図23の左右を入れ替えた形状、即ち左向きに突出する形状が考えられる。
また、図24は、縦方向の領域が右側に偏在しており、横方向の突出領域は進行方向奥側に形成され、右向きに突出して形成される例示である。これとは別に、第3形状パターンとしては、図24の左右を入れ替えた形状、即ち左向きに突出する形状が考えられる。
ここで、第2形状パターン,第3形状パターンに類型化される水溜まり等208において車輪を通過させる際には、車輪が横方向の突出領域のできるだけ先端近傍の領域上を通過するような走行経路を設定すれば、当該水溜まり等からの飛沫の飛散をより多く抑えることができる(図23,図24の車輪通過予想経路TA参照)。
なお、詳細は後述するが、図23の第2形状パターンの場合には、横方向突出領域が手前にあるので、より早いタイミングで車輪が水溜まり等の一部領域上を通過することになる。したがって、この場合には、まず、回避のための走行経路の設定を優先しつつ、減速制御を合わせて行うことが適当である。
また、図24の第3形状パターンの場合には、横方向突出領域が奥側にあるので、図23の第2形状パターンに比べれば、車輪が水溜まり等の一部領域上を通過するタイミングは若干遅くなる。したがって、この場合には、まず、減速制御を優先して行いつつ、回避のための走行経路の設定を合わせて行うことが適当である。
図12に戻って、図12のステップS92の処理(水溜まり等の形状確認)において、水溜まり等208の形状が第1形状パターン(図21,図22参照)に相当するものであることが確認された場合は、ステップS93の処理に進む。また、水溜まり等208の形状が第2形状パターン又は第3形状パターン(図23,図24参照)のいずれかに相当するものであることが確認された場合は、ステップS96の処理に進む。
ステップS93において、走行制御ユニット22は、所定の減速制御処理を実行する。この処理の詳細は、図13に示す処理シーケンスである。
ここで、図13を用いて、減速制御の処理シーケンスを説明する。図13のステップS121において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、自車線201に後続車(不図示)が存在するか否かの確認を行う。ここで、後続車の存在が確認された場合は、ステップS122の処理に進む。また、後続車の存在が確認されない場合は、ステップS123の処理に進む。
ステップS122において、走行制御ユニット22は、エンジン制御ユニット23を通したスロットルアクチュエータ27の制御若しくはブレーキ制御ユニット25を通したブレーキアクチュエータ29の制御等によって、第1減速制御処理を実行する。この第1減速制御処理においては、例えば、後続車との相対速度を加味して、例えば減速度0.3G以下の緩やかな減速を行う。その後、ステップS123の処理に進む。
なお、後続車の存在が確認されない場合の減速後の目標設定速度の目安としては、具体的には、例えば、一般道路の場合は20km/h程度とし、高速道路等の場合は60~80km/h程度とするのが望ましい。なお、実際には、自車両Mが走行中の道路の交通規制に準じた法定速度に応じて適宜設定することになる。
ステップS123において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、自車両Mの周辺に歩行者等Hが存在するか否かの確認を行う。ここで、歩行者等Hの存在が確認された場合は、ステップS124の処理に進む。また、歩行者等Hの存在が確認されない場合は、本減速制御処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理シーケンスに戻った後、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
ステップS124において、走行制御ユニット22は、エンジン制御ユニット23を通したスロットルアクチュエータ27の制御若しくはブレーキ制御ユニット25を通したブレーキアクチュエータ29の制御等によって、第2減速制御処理を実行する。この第2減速制御処理においては、周辺の歩行者等Hの存在を考慮して、自車両Mを直ちに停止することができる速度(いわゆる徐行)まで減速させる。その後、本減速制御処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理シーケンスに戻った後、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
図13の減速制御処理シーケンスでは、例えば後続車と歩行者等Hの確認を行って、いずれも存在が確認されない場合には、特に減速制御を行わずに走行を継続させるようにしている。このことは、後続車と歩行者等Hが確認されない場合には、自車両Mは、そのままの走行速度による走行を継続して、水溜まり等208の領域上を通過することになる。この場合、水溜まり等208の領域上を通過する自車両Mは、泥土や汚水等の飛沫を飛散させることになる。しかし、後続車や周辺の歩行者等Hが存在しなければ、泥土や汚水等の飛沫を飛散させたとしても、周囲に対して悪影響を及ぼす虞がないものと考えられる。
しかしながら、水溜まり等208の領域上を通過する際に飛散される泥土や汚水等の飛沫は、場合によっては、自車両Mに対しても何らかの影響を及ぼす可能性もある(例えば、自車両Mが飛沫等の飛散によって汚れる等の影響を含む)。そのようなことを考慮して、自車両Mが水溜まり等208の領域上を通過する走行経路を設定する場合には、後続車や歩行者等Hの存在に関わらず、少なくとも第1減速制御を実行するような処理シーケンスとしてもよい。
さらに、後続車と歩行者等Hの存在が、いずれも確認されない場合であって、かつ自車両が水溜まり等の上を通過しても自車両に対する飛沫の飛散の悪影響等が少ないと推定されるような場合(具体的には、例えば変更後の目標走行経路が水溜まりの周縁部分等、飛沫の飛散量が少ないと予想される場合や、車両の走行速度が元々低い設定で走行している場合等)には、減速制御を省略するような処理シーケンスとしてもよい。
一方、上述の図12のステップS92の処理(水溜まり等の形状確認)にて、水溜まり等208の形状が第2形状パターン又は第3形状パターン(図23,図24参照)のいずれかに相当するものであることが確認されて、ステップS96の処理に進むと、このステップS96において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、同水溜まり等208の形状が第2形状パターン(図23参照)に相当するものであるか否かの確認を行う。ここで、当該水溜まり等208の形状が第2形状パターン(図23参照)に相当するものであることが確認された場合は、ステップS97の処理に進む。また、当該水溜まり等208の形状が第3形状パターン(図24参照)に相当するものであることが確認された場合は、ステップS99の処理に進む。
ステップS97において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、第2形状パターンに対応する走行経路設定処理(水溜まり等が左右寄りに存在する場合)を実行する。この処理の詳細は、図14に示す処理シーケンスである。
ここで、図14のステップS131において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の突出領域の先端位置に対向する側の区画線(左右区画線LL,LRのいずれか一方)から反対側の区画線側に向けて車両幅W1/2だけ離れた横位置に新たな目標走行経路を設定する。
ここで、水溜まり等208の突出領域の先端位置は、次にようにして規定できる。即ち、水溜まり等208が自車線201の範囲内において主に左寄り領域に存在する場合の突出領域の先端位置は、図23で示すように、右端位置Aである。また、水溜まり等208が自車線201の範囲内において主に右寄り領域に存在する場合の突出領域の先端位置は、図23の左右を入れ替えて考えることにより、左端位置Bであることが判る。これら右端位置A及び左端位置Bの自車線201の範囲内における各位置情報は、上述の図8の水溜まり等推定処理にて取得済みである。
したがって、ステップS131の処理においては、水溜まり等208が第2形状パターンであって左寄り領域にある場合には、水溜まり等208の右端位置Aに対向する側の右側区画線LRから左側区画線LL側に向けて車両幅W1/2だけ離れた横位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の右端位置A近傍の領域上を通過する(図23の車輪通過予想経路TA参照)。
また、水溜まり等208が第2形状パターンであって右寄り領域にある場合には、水溜まり等208の左端位置Bに対向する側の左側区画線LLから右側区画線LR側に向けて車両幅W1/2だけ離れた横位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの右側車輪MT(R)が水溜まり等208の右端位置A近傍の領域上を通過する。
次に、図14のステップS132において、走行制御ユニット22は、上述のステップS131の処理にて新たに設定された目標走行経路に沿って自車両Mを走行させる車線維持走行支援制御を開始する。その後、図14の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12のステップS98の処理に進む。
なお、上述したように、第2形状パターン(図23参照)に対応する走行経路設定処理として図14の処理シーケンスを用いて説明しているが、この図14の処理シーケンスは、第3形状パターン(図24参照)に対応する走行経路設定処理として、全く同様に適用できる。
図12に戻って、図12のステップS98において、走行制御ユニット22は、所定の減速制御処理を実行する。この処理の詳細は、上述のステップS93と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その説明は省略する。その後、図13の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理に戻った後、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
一方、上述の図12のステップS96の処理にて、水溜まり等208の形状が第3形状パターン(図24参照)に相当するものであることが確認されて、ステップS99の処理に進むと、このステップS99において、走行制御ユニット22は、所定の減速制御処理を実行する。この処理の詳細は、上述のステップS93,S98と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その説明は省略する。その後、図13の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12のステップS100の処理に進む。
図12のステップS100において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、第3形状パターンに対応する走行経路設定処理(水溜まり等が左右寄りに存在する場合)を実行する。この処理の詳細は、上述のステップS97と同様に、図14に示す処理シーケンスと同様である。したがって、その説明は省略する。その後、図14の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理に戻った後、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
他方、上述の図12のステップS91の処理にて、水溜まり等208が走行車線(自車線201)の範囲内において略中央領域にある場合(図5参照)に、ステップS101の処理に進んだ場合の処理シーケンスを以下に説明する。
まず、図12のステップS101において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の左端位置Bと左側区画線LLとの横方向の距離W8と、水溜まり等208の右端位置Aと右側区画線LRとの横方向の距離W9とを算出する(距離W8,W9については後述する図17参照)。
続いて、ステップS102において、走行制御ユニット22は、上述のステップS92と同様の水溜まり等の形状確認を行う。ここで、水溜まり等208の形状が第1形状パターン(図21,図22参照)に相当するものであることが確認された場合は、図15のステップS141の処理に進む(図12,図15の丸数字15参照)。また、水溜まり等208の形状が第2形状パターン又は第3形状パターン(図23,図24参照)のいずれかに相当するものであることが確認された場合は、ステップS103の処理に進む。
ここで、水溜まり等208が第1形状パターンである場合の処理シーケンスを図15を用いて説明する。なお、この場合の具体的な状況は図4を参照するものとする。ただし、図4においては、水溜まり等208の幅W3は、自車両Mのトレッド幅W2よりも小(W3<W2)の場合として図示している。これに対し、図15の処理シーケンスにおいては、図4を参照しながら、水溜まり等208の幅W3が自車両Mのトレッド幅W2以上(W3≧W2)であるものとして考える。
上述の図12のステップS102の処理にて、水溜まり等208の形状が第1形状パターンであると確認されて、図15のステップS141の処理に進むと、このステップS141において、走行制御ユニット22は、減速制御処理を実行する。この処理の詳細は、上述の図12のステップS93,S98,S99と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その詳細説明は省略する。
続いて、図15のステップS142において、走行制御ユニット22は、距離W8と距離W9とを比較して、距離W8≧距離W9であるか否かの確認をする。ここで、距離W8≧距離W9である場合は、当該水溜まり等208は、第1形状パターンを有し、自車線201の範囲内において略中央領域にあって、かつ自車両Mから見て道路中心より右寄り領域に偏在しているものと考えられる。また、距離W8≧距離W9ではない場合、即ち距離W8<距離W9である場合は、当該水溜まり等208は、第1形状パターンを有し、自車線201の範囲内において略中央領域にあって、かつ自車両Mから見て道路中心より左寄り領域に偏在しているものと考えることができる。
そこで、このステップS142において、距離W8≧距離W9である場合はステップS143の処理に進む。また、距離W8<距離W9である場合はステップS144の処理に進む。
ステップS143において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の右端位置Aから横方向左側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの右側車輪MT(R)が水溜まり等208の右端位置Aの近傍を通過する目標走行経路が設定される。このとき、自車両Mの右側車輪MT(R)は、実際には、水溜まり等208の右端位置Aよりも横方向右外側領域(符号W9で示される領域)を通過させるのが望ましい。これにより、自車両Mは、主に左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。
上述したように距離W8≧距離W9である場合は、水溜まり等208は、自車線201の範囲内において自車両Mから見て道路中心より右寄り領域に偏在しているものと考えられる。
そこで、この場合には、自車両Mを自車線201内において右寄りの走行経路を設定することにより、自車両Mは、自車両Mの左側に存在する歩道205から離れた位置に設定された走行経路を走行することになる。さらに、この場合において、自車両Mの右側車輪MT(R)が水溜まり等208の領域外(符号W9の領域)を通過させるようにすれば、左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
また、ステップS144において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の左端位置Bから横方向右側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の左端位置B近傍を通過する目標走行経路が設定されることになる。このとき、自車両Mの左側車輪MT(L)は、実際には、水溜まり等208の左端位置Bよりも横方向左外側領域(符号W8で示される領域)を通過させるのが望ましい。これにより、自車両Mは、主に右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。
上述したように距離W8<距離W9である場合は、水溜まり等208は、自車線201の範囲内において自車両Mから見て道路中心より左寄り領域に偏在しているものと考えられる。
そこで、この場合には、自車両Mを自車線201内において左寄りの走行経路を設定することにより、自車両Mは、自車両Mの左側に存在する歩道205寄りの位置に設定された走行経路を走行しながらも、歩道205寄りの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の領域外(符号W8の領域)を通過させるようにすれば、右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。このとき、右側車輪MT(R)による水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫は、自車両Mの内側に飛散する。さらに、たとえ左側車輪MT(L)が水溜まり等208の左端位置B近傍を通過するとき、水溜まり等208の領域上を通過したとしても、飛散する泥土や汚水等の飛沫は、自車両Mの内側かつ右方向に向けて飛散することになる。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
このようにして、ステップS143,S144の処理において、新たな目標走行経路を設定した後は、図15の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理シーケンスに戻り(図12,図15の丸数字15B参照)、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
一方、上述の図12のステップS102の処理にて、水溜まり等208の形状が第2形状パターン又は第3形状パターン(図23,図24参照)のいずれかに相当するものであることが確認されて、ステップS103の処理に進むと、このステップS103において、走行制御ユニット22は、上述のステップS96と同様の水溜まり等の形状確認を行う。ここで、水溜まり等208の形状が第2形状パターン(図23参照)に相当するものであることが確認された場合は、ステップS104の処理に進む。また、水溜まり等208の形状が第3形状パターン(図24参照)に相当するものであることが確認された場合は、ステップS106の処理に進む。
続いて、ステップS104において、第2形状パターンに対応する走行経路設定処理(水溜まり等が略中央に存在する場合)を実行する。この処理の詳細は、図16に示す処理シーケンスである。
ここで、図17は、第2形状パターンに相当する水溜まり等であって、横方向の幅が自車両のトレッド幅(または車両幅)よりも広い水溜まり等が自車両の走行車線の略中央領域に存在する状況を示す概念図である。
図17に示す状況を詳述すると、自車両Mの走行する自車線201の範囲内の前方において水溜まり等208が存在している。この水溜まり等208は、自車線201の略中央領域にあって、第2形状パターンの相当する形状を有し、かつ突出領域が右側に向けて突出している形状を有している。そして、当該水溜まり等208の幅W3は、自車両Mのトレッド幅W2よりも大である(W3>W2)場合を例示している。
この状況において、自車両Mは、設定された目標走行経路TCに沿って走行しており、その走行中に、自車両Mは、自車線201の範囲内において前方に、上述したような形態の水溜まり等208を認識する。
このとき、自車両Mは、現在設定されている目標走行経路TCに沿って走行を継続した場合に、自車両Mの左右の車輪MT(L,R)が当該水溜まり等208の領域上を通過することが推定される(図17の車輪通過予想経路TA(L,R)参照)。
また、図示していないが、自車両Mは、例えば、対向車M2,道路形態,交通規制等の各種の周囲条件によって、自車線201から逸脱することができない状況にあるものとする。このような状況下において、自車両Mが走行を継続する場合、当該水溜まり等208を回避することができずに、認識された水溜まり等208の少なくとも一部領域上を通過せざるを得ない状況であるものとする。
このような場合においては、まず、図16のステップS111において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の突出領域の突出方向を確認する。ここで、突出領域が左側に向けて突出している場合には、ステップS112の処理に進む。また、突出領域が右側に向けて突出している場合には、ステップS115の処理に進む。
次に、ステップS112において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、距離W8が車輪幅TW以上あるか否か(W8≧TW)の確認を行う。
ここで、当該水溜まり等208は、第2形状パターンを有し、自車線201の範囲内において略中央領域にあって、自車両Mから見て突出領域が左側に向けて突出している状況である。このとき、距離W8≧車輪幅TWである場合は、自車線201の左端領域(符号W8の領域)には車輪幅TW以上の走行可能な領域が存在している状況であると考えられる。このことは、自車線201の左端領域(符号W8の領域)に左側車輪MT(L)を通過させれば、左側車輪MT(L)は水溜まり等208の領域上を通過せずに走行できる可能性がある。
また、距離W8≧車輪幅TWではない場合、即ち距離W8<車輪幅TWである場合は、自車線201の左端領域(符号W8の領域)には車輪幅TWより狭い領域しか存在しない状況であると考えることができる。このことは、自車線201の左端領域(符号W8の領域)に左側車輪MT(L)を通過させると、当該左側車輪MT(L)は水溜まり等208の一部領域上を必ず通過することになる。この状況下において、この領域W8近傍には、水溜まり等208の縦方向に広がる領域(前後方向の長さ寸法が長い領域)が形成されている。この領域(水溜まり等208の縦方向に広がる領域)に車輪を通過させることは、周囲への影響が大であるのでできるだけ避けたい。
そこで、このステップS112において、距離W8が車輪幅TW以上ある場合(W8≧TW)は、ステップS113の処理に進む。また、距離W8が車輪幅TWより小である場合(W8<TW)は、ステップS114の処理に進む。
ステップS113において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、距離W8の中心位置(W8/2)から横方向右側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの左側車輪MT(L)は、水溜まり等208の左側横位置の領域(符号W8の領域)を通過する新たな走行経路が設定される。つまり、このとき、自車両Mの左側車輪MT(L)は水溜まり等208の縦方向に広がる領域(前後方向の長さ寸法が長い領域)上を通過することなく、右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上のうち、前後方向の長さ寸法がより短い領域上を通過する。
上述したように、距離W8≧車輪幅TWである場合は、自車線201の左端領域(符号W8の領域)には車輪幅TW以上の走行可能な領域が存在している状況であると考えられる。
そこで、この場合には、領域W8を自車両Mの左側車輪MT(L)が通過するような走行経路を設定することにより、自車両Mは、右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上を通過する。このとき飛散する泥土や汚水等の飛沫は、自車両Mの内側かつ左方向に向けて飛散する。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
一方、距離W8が車輪幅TWより小である場合(W8<TW)に、ステップS114に進むと、このステップS114において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の右端位置A(突出領域の先端位置)から横方向左側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの右側車輪MT(R)が水溜まり等208の右端位置A(突出領域の先端位置)近傍を通過する目標走行経路を設定されることになる。このとき、自車両Mの右側車輪MT(R)は、実際には、水溜まり等208の右端位置Aよりも横方向右外側領域(符号W9で示される領域)を通過させるのが望ましい。これにより、自車両Mは、主に左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。
上述したように、距離W8<車輪幅TWである場合は、領域W8を自車両Mの左側車輪MT(L)が通過した場合、必ず水溜まり等208の一部領域上を通過することになってしまう状況である。
そこで、この場合には、自車両Mを自車線201内において右寄りの位置を通るようし、右側車輪MT(R)が水溜まり等208の右端位置A(突出領域の先端位置)近傍を通過するような走行経路を設定することにより、自車両Mは、自車両Mの左側に存在する歩道205から離れた位置に設定された走行経路を走行することになる。この場合において、自車両Mの右側車輪MT(R)が水溜まり等208の領域外(符号W9の領域)を通過させるようにすれば、左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
このようにして、ステップS113,S114の処理において、新たな目標走行経路を設定した後は、図16の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12のステップS105の減速制御処理に進む。この処理の詳細は、上述の図12のステップS93,S98,S99と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その詳細説明は省略する。その後、図13の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理シーケンスに戻ると、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
他方、上述の図16のステップS111の処理にて、水溜まり等208の突出領域が右側に向けて突出している場合に、ステップS115の処理に進んだ場合の処理シーケンスは、以下の通りである。なお、以下に説明するステップS115~S117の処理シーケンスは、上述のステップS112~S114の処理シーケンスの考え方と略同様である。
即ち、ステップS115において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、距離W9が車輪幅TW以上あるか否か(W9≧TW)の確認を行う。
ここで、当該水溜まり等208は、第2形状パターンを有し、自車線201の範囲内において略中央領域にあって、自車両Mから見て突出領域が右側に向けて突出している状況である。このとき、距離W9≧車輪幅TWである場合は、自車線201の右端領域(符号W9の領域)には車輪幅TW以上の走行可能な領域が存在している状況であると考えられる。このことは、自車線201の右端領域(符号W9の領域)に右側車輪MT(R)を通過させれば、右側車輪MT(R)は水溜まり等208の領域上を通過せずに走行できる可能性がある。
また、距離W9≧車輪幅TWではない場合、即ち距離W9<車輪幅TWである場合は、自車線201の右端領域(符号W9の領域)には車輪幅TWより狭い領域しか存在しない状況であると考えることができる。このことは、自車線201の右端領域(符号W9の領域)に右側車輪MT(R)を通過させると、当該右側車輪MT(R)は水溜まり等208の一部領域上を必ず通過することになる。この状況下において、この領域W9近傍には、水溜まり等208の縦方向に広がる領域(前後方向の長さ寸法が長い領域)が形成されている。この領域(水溜まり等208の縦方向に広がる領域)に車輪を通過させることは、周囲への影響が大であるのでできるだけ避けたい。
そこで、このステップS115において、距離W9が車輪幅TW以上ある場合(W9≧TW)は、ステップS116の処理に進む。また、距離W9が車輪幅TWより小である場合(W9<TW)は、ステップS117の処理に進む。
ステップS116において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、距離W9の中心位置(W9/2)から横方向左側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの右側車輪MT(R)は、水溜まり等208の右側横位置の領域(符号W9の領域)を通過する新たな走行経路が設定される。
これにより、自車両Mの右側車輪MT(R)は水溜まり等208は水溜まり等208の縦方向に広がる領域(前後方向の長さ寸法が長い領域)上を通過することなく、左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上のうち、前後方向の長さ寸法がより短い領域上を通過する。
上述したように、距離W9≧車輪幅TWである場合は、自車線201の右端領域(符号W9の領域)には車輪幅TW以上の走行可能な領域が存在している状況であると考えられる。
そこで、この場合には、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の領域外(符号W9の領域)を通過するような走行経路を設定する。これにより、左側車輪MT(L)のみが水溜まり等208の領域上を通過する。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
一方、距離W9が車輪幅TWより小である場合(W9<TW)に、ステップS117に進むと、このステップS117において、走行制御ユニット22は、周辺環境情報等に基づいて、水溜まり等208の左端位置B(突出領域の先端位置)から横方向右側に向けてトレッド幅W2/2(または車両幅W1/2)だけ離れた位置に新たな目標走行経路を設定する。これにより、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の左端位置B(突出領域の先端位置)近傍を通過する目標走行経路を設定されることになる。このとき、自車両Mの左側車輪MT(L)は、実際には、水溜まり等208の左端位置Bよりも横方向左外側領域(符号W8で示される領域)を通過させるのが望ましい。これにより、自車両Mは、主に右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。
上述したように、距離W9<車輪幅TWである場合は、領域W9を自車両Mの右側車輪MT(R)が通過した場合、必ず水溜まり等208の一部領域上を通過することになってしまう状況である。
そこで、この場合には、左側車輪MT(L)が水溜まり等208の左端位置B(突出領域の先端位置)近傍を通過するような走行経路を設定することにより、自車両Mの左側車輪MT(L)が水溜まり等208の領域外(符号W8の領域)を通過するようにすれば、右側車輪MT(R)のみが水溜まり等208の領域上を通過することになる。したがって、このような経路を通過させることで、水溜まり等208からの泥土や汚水等の飛沫の飛散による歩行者等Hへの悪影響を抑止するのに寄与する。
このようにして、ステップS116,S117の処理において、新たな目標走行経路を設定した後は、図16の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12のステップS105の減速制御処理に進む。この処理の詳細は、上述の図12のステップS93,S98,S99,図15のステップS141と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その詳細説明は省略する。その後、図13の処理シーケンスを抜けて(リターン)、図12の処理シーケンスに戻ると、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
他方、上述の図12のステップS103の処理にて、水溜まり等208の形状が第3形状パターン(図24参照)に相当するものであることが確認されて、ステップS106の処理に進むと、このステップS106において、走行制御ユニット22は、減速制御処理を実行する。この処理の詳細は、上述の図12のステップS93,S98,S99,S105,図15のステップS141と同様に、図13に示す処理シーケンスである。したがって、その詳細説明は省略する。その後、図12のステップS107の処理に進む。
図12のステップS107において、走行制御ユニット22は、第3形状パターンに対応する走行経路設定処理(水溜まり等が略中央に存在する場合)を実行する。この処理の詳細は、図16に示す処理シーケンスと同様である。したがって、その詳細説明は省略する。その後、図12の処理シーケンスに戻ると、すぐに図9のステップS56の処理に進む(リターン)。
以上説明したように上記一実施形態によれば、周辺環境情報取得装置21d,20bと区画線検出部21dと目標走行経路設定部22bとを有し設定された目標走行経路に沿って車両を走行させる車線維持走行支援制御を実行しながら道路上を走行中の車両に搭載された走行制御装置1であって、通常路面輝度推定部21dは、取得された周囲環境情報に基づいて走行車線内の通常路面輝度を推定し、平面障害物推定部21dは、通常路面輝度よりも所定値以上の高輝度領域を検出し、当該高輝度領域毎に表面形状を推定することで、道路表面上の水溜まりに関する情報を取得する。車輪通過位置推定部22cは、水溜まり情報と、自車両が走行中の道路情報と、自車両に関する自車両情報とを含む周辺環境情報に基づいて、走行車線内に設定された目標走行経路に沿って自車両が走行した場合の当該自車両の車輪通過位置を推定する。そして、目標走行経路設定部は、水溜まり情報と、車輪通過位置情報とに基づいて、水溜まりを考慮した新たな目標走行経路を再設定する。
このような構成により、本実施形態の走行制御装置1は、走行車線内に設定された目標走行経路に沿って車両を走行させる走行制御(車線維持走行支援制御)の実行中に、前方の路面上に存在している水溜まり等を認識した場合には、当該水溜まり等を考慮した新たな目標走行経路を再設定する。この場合において、水溜まり等を確実に回避し得ると推定された場合は、安全な走行を継続させながら当該水溜まり等を確実に回避し得る新たな目標走行経路を再設定し、新たに設定された目標走行経路に沿う走行制御を行う。そして、当該水溜まり等の横位置の通過を確認後は、元の目標走行経路に設定を戻し、この元の目標走行経路に沿う走行制御を行う。
一方、車両周囲の状況に応じて水溜まり等を回避し得ずに、当該水溜まり等の領域上をやむを得ず通過せざるを得ないと推定された場合は、周辺に存在する歩行者,自転車等や他車両,建造物,各種構築物等に対して、水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫が飛散する悪影響等を考慮して、減速を行った上で、当該水溜まり等の領域上を通過させる。このとき、減速によって安全な走行を継続させつつ、かつ水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫の飛散を抑えて歩行者等の周囲へ及ぼす悪影響を抑止し得る新たな目標走行経路を再設定し、新たに設定された目標走行経路に沿う走行制御を行う。そして、当該水溜まり等の横位置の通過を確認後は、元の目標走行経路に設定を戻し、この元の目標走行経路に沿う走行制御を行う。
なお、水溜まり等の領域上をやむを得ず通過せざるを得ない場合であって、自車両の周囲に、歩行者等々が存在せず、水溜まり等からの飛沫の飛散による悪影響等を周囲に及ぼす可能性がない場合であっても、当該飛沫が自車両を汚してしまう可能性がある。このことを考慮して、このような場合には、減速度を若干抑えた減速制御を行う。
ただし、このように、自車両の周囲に歩行者等々が存在していない環境であって、かつ自車両が水溜まり等の上を通過しても自車両に対する飛沫の飛散の悪影響等が少ないと推定される場合(具体的には、例えば変更後の目標走行経路が水溜まりの周縁部分等、飛沫の飛散量が少ないと予想される場合や、車両の走行速度が元々低い設定で走行している場合等)には、そのままの速度での走行を継続しつつ水溜まり等の上を通過し、減速制御を省略してもよい。
なお、新たな目標走行経路の設定は、本実施形態の走行制御装置を搭載した車両の車輪が、認識された水溜まり等の領域上を、できるだけ通過しないような走行経路を設定する。この場合においては、認識された水溜まり等の位置や形状等の水溜まり情報と、車両幅やトレッド幅等の車両情報と、車線幅等の道路情報等を含む周辺環境情報に基づいて、水溜まり等を考慮した新たな目標走行経路の再設定を行う。
このように、水溜まり等を考慮した目標走行経路を再設定し、再設定された新たな目標走行経路に沿う走行制御を行うことで、水溜まり等からの泥土や汚水等の飛沫を飛散させて歩行者等への悪影響が及ぶことを抑止することができる。したがって、これにより、運転者の意図に反して若しくは無意識的に発生してしまう交通違反等を未然に抑止することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。