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JP7618230B2 - 精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤 - Google Patents

精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤 Download PDF

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Description

本発明は、精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤に関する。
不安障害や抑うつ障害等に関連する精神的疾患に対する薬物療法ではしばしば抗不安剤や抗うつ剤が用いられている。長期の服用に耐えられるよう、依存性が低く副作用が少ない種々の抗不安剤及び抗うつ剤が開発されてきたが、依存性や副作用の問題は依然として抗不安剤及び抗うつ剤における大きな問題となっている。
ジスルフィラムは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害活性を有し、肝臓におけるエタノール代謝を抑制して悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを体内に蓄積させる。このため、ジスルフィラムを服用すると、少量のアルコールでも悪酔いの症状が生じるようになる。この作用を利用して、ジスルフィラムは慢性アルコール中毒に対する抗酒癖剤として用いられている。この作用の他、ジスルフィラムは、がん細胞やがん幹細胞そのものを死に導く作用により抗がん作用を発揮すること(例えば、非特許文献1~3、特許文献1)、さらには、がん及び炎症における微小環境の構成細胞を制御する作用によって抗がん作用及び抗炎症作用を発揮すること(特許文献2)が知られている。
しかしながら、ジスルフィラムに不安症状やうつ症状等の精神・神経症状を治療、予防ないし改善する作用があることは全く知られていない。それどころか、ジスルフィラムにより不安等の精神障害が生じることが報告されている(非特許文献4~6)。ジスルフィラムを有効成分とする抗酒癖剤「ノックビン」の添付文書(非特許文献7)においても、精神神経系に生じる副作用として抑うつ、情動不安定、幻覚、錯乱、せん妄等(アルコールの禁断による場合もある)、頭痛、めまい、耳鳴、眠気、睡眠障害が記載されているが、不安、抑うつ、睡眠障害等の精神・神経症状を治療、予防ないし改善する作用は全く記載されていない。
特許文献3には、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病に対しジスルフィラムを用いることが記載されている。しかしながら、実施例に記載されたデータによると、ジスルフィラムは、培養細胞を用いたin vitroの実験では野生型APPでトランスフェクトした細胞からのsAPPαの分泌を促進したが、マウス生体を用いた脳取り込み試験ではジスルフィラムの脳血管障壁浸透は非常に低く、アルツハイマーモデルマウスに投与してアルツハイマーのバイオマーカーの変化を測定する実験は、ジスルフィラム以外の化合物での結果しか示されていない。従って、特許文献3がジスルフィラムにMCIやアルツハイマー病の治療・予防効果があることを開示しているとはいえない。
臨床試験情報のデータベースClinicalTrials.gov(https://clinicaltrials.gov/)には、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03469128として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と物質使用障害(SUD)を併発した患者にジスルフィラムを投与する臨床試験(非特許文献11)が登録されている。最新のアップデートは2018年3月19日であり、Recruitment StatusはCompletedであるが、臨床試験の結果は登録されておらず、ジスルフィラム投与群で有意な効果が見られたとする開示はない。また、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03212599として、アルコール中毒患者からジスルフィラム投与前及び投与2週間後に採取された血液検体を用いて、リアルタイムRT-PCRによりADAM10の発現を調べる試験が登録されている(非特許文献12)。NCT03212599のStudy Descriptionには、ADAM10がアミロイドβペプチド防止戦略の有望なターゲットであること、ヒト神経細胞をジスルフィラムで処理するとADAM10の発現が上昇することが知られており、ジスルフィラムに神経保護作用がある可能性を示していることが記載されている。しかしながらこの試験も、最新のアップデートが2017年7月24日であり、Recruitment StatusはCompletedであるが、試験の結果は登録されておらず、ジスルフィラム投与により血中のADAM10の発現が有意に上昇したとする開示はない。
特開2013-100268号公報 国際公開第2016/111307号 特表2013-534256号公報
Cancer Research, Vol.66, pp.10425-10433 (2006) Clinical Cancer Research, Vol.15, pp.6070-6078 (2009) Molecular Cancer Therapeutics, Vol.1, pp.197-204 (2002) South African Medical Journal, Vol.57, pp.551-552 (1980) Clinical Psychopharmacology and Neuroscience Vol.15, pp.68-69 (2017) Indian Journal of Psychiatry, Vol.48, pp.62-63 (2006) 「ノックビン原末」添付文書、2015年4月改訂第10版(承認番号22000AMX02130) Chronobiologia. 1975 Oct-Dec;2(4):307-16 J Psychiatr Res. 1972 Dec;9(4):293-314 Acta Psychiatr Scand. 1967;43(4):376-84 ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03469128, "Cognitive Processing Therapy Versus Medication for the Treatment of Post Traumatic Stress Disorder & Substance Use Disorder Egyptian Patients." [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT03469128] ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03212599, "Disulfiram as a Modulator of Amyloid Precursor Protein-processing (DIMAP)." [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03212599]
本発明は、不安障害、抑うつ障害等の精神・神経系の疾患又は症状の治療等に有効であり、かつ、依存性や副作用の問題が生じにくく安全性の高い新規な手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、驚くべきことに、ジスルフィラム及びその類縁化合物が既存のベンゾジアゼピン系抗不安剤であるジアゼパムに匹敵する抗不安様作用及び抗うつ様作用を有し、従来の薬剤と比べて依存性が低く副作用も少ない抗不安剤及び抗うつ剤として利用できること、さらには、ジスルフィラムが認知機能向上作用も有し、認知症及びこれに伴う行動・心理症状等の精神・神経症状にも有効であることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記(1)~(5)のいずれかを有効成分として含有する、精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤を提供する。
(1) ジスルフィラム
(2) ジエチルジチオカルバメートの金属錯体
(3) 生体内でジエチルジチオカルバメートを生成できるジスルフィド
(4) (1)、(2)又は(3)の薬剤的に許容される塩
(5) (1)、(2)、(3)又は(4)の溶媒和物
本発明により、ジスルフィラム及びその類縁化合物(ジエチルジチオカルバメートの金属錯体、生体内でジエチルジチオカルバメートを生成できるジスルフィド)を有効成分とする、精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤が提供された。ジスルフィラムは抗酒癖剤としてわが国では1983年より使用されている薬剤であり、長期にわたる安全性は確立している。本発明の剤は、従来の抗不安剤及び抗うつ剤と比べて依存性や副作用の問題を生じにくく、より安全性が高い。
実施例で用いた高架式十字迷路(EPM)装置の模式図である。 EPM装置を用いた実験により、ジスルフィラムの抗不安様作用の用量依存性を検討した結果である。 EPM装置を用いた実験により、ジアゼパムの抗不安様作用を評価した結果である。 EPM装置を用いた実験により、ジスルフィラムの抗不安様作用の時間依存性を検討した結果である。 EPM装置を用いた実験により、シアナミドの抗不安様作用を評価した結果である。 EPM装置を用いた実験により、ジエチルジチオカルバメート(DDC)の鉄(III)錯体の抗不安様作用を評価した結果である。 EPM装置を用いた実験により、DDC銅錯体の抗不安様作用を評価した結果である。 実施例で行なった新規物体位置認識試験(NOL)の概要を説明する図(上段)、及びNOL想起テストの結果(下段)である。 モリス水迷路試験の結果である。逃避台への到達距離を指標に空間学習能力を評価した(A)。また、プローブテスト中、逃避台のあったエリアを探索した時間の割合から被検薬物が空間記憶の形成に与える影響を評価した(B)。 マウスにジスルフィラムを慢性投与し、情動過多反応性および過活動性を評価した結果である。 マウスにジスルフィラムを慢性投与し、ストレス負荷後の社会的相互作用を評価した結果である。
本発明の剤は、精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤であり、下記(1)~(5)のいずれかを有効成分として含有する。
(1) ジスルフィラム
(2) ジエチルジチオカルバメートの金属錯体
(3) 生体内でジエチルジチオカルバメートを生成できるジスルフィド
(4) (1)、(2)又は(3)の薬剤的に許容される塩
(5) (1)、(2)、(3)又は(4)の溶媒和物
1つの態様において、本発明の剤は、ジスルフィラム、ジスルフィラムの薬剤的に許容される塩、又はジスルフィラム若しくはその薬剤的に許容される塩の溶媒和物を有効成分とする。別の態様において、本発明の剤は、ジエチルジチオカルバメートの金属錯体、該錯体の薬剤的に許容される塩、又は該錯体若しくはその薬剤的に許容される塩の溶媒和物を有効成分とする。
上記(1)のジスルフィラム(化学名:テトラエチルチウラムジスルフィド)は、それ自体は公知の化合物であり、従来より慢性アルコール中毒に対する抗酒癖剤として用いられている。ジスルフィラムは日本薬局方収載の処方箋医薬品であり、製造方法も周知である。
上記(2)のジエチルジチオカルバメート(DDC)の金属錯体は、いずれの金属の錯体でもよい。金属は1価でも2価以上でもよい。1つの態様において、ジエチルジチオカルバメートの金属錯体は、2価以上の金属の錯体である。金属錯体の具体例を挙げると、1価の金属の錯体としてはナトリウム錯体、リチウム錯体など、2価以上の金属の錯体としては銅錯体、鉄(II)錯体、鉄(III)錯体、亜鉛錯体、白金錯体、金錯体、アルミニウム錯体、マグネシウム錯体、バナジウム錯体、セレン錯体、コバルト(II)錯体、コバルト(III)錯体などを挙げることができるが、これらに限定されない。DDCの金属錯体は、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムのようなジエチルジチオカルバメート化合物と金属イオンとの間で錯形成させることにより調製でき、種々の市販品も存在する。
上記(3)のジスルフィドは、典型的には、1分子の当該ジスルフィド化合物のS-S結合の開裂により、少なくとも1分子のDDC、例えば1分子のDDCを生体内で生じる化合物である。そのようなジスルフィド化合物は、下記の式1に示される構造を分子内に有する化合物であってよい。式1中の波線は、この部分より先の構造部分を省略していることを示している。波線部より先の構造は、S-S結合の開裂を妨げない限り、いかなる構造であってもよい。このような構造のジスルフィドは、化学合成の分野で公知の方法により製造できる。
Figure 0007618230000001
上記(3)のジスルフィドの具体例として、酸化型グルタチオン(GSSG、Glutathione-S-S-Glutathione)のようなジスルフィド化合物とDSFのss交換反応により形成されるDDC付加ジスルフィド化合物(式1において、波線部の先の構造がグルタチオンである化合物)、チオレドキシンのような、少なくとも1対の機能的システイン残基を有するタンパク質とDSFとのss交換反応により形成されるDDC付加タンパク質(例えば、式1において、波線部の先の構造がチオレドキシンである化合物)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
(1)~(3)の化合物は、薬剤的に許容される塩の形態で用いてもよい。酸付加塩と塩基付加塩のいずれであってもよい。酸付加塩の具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩などの無機酸塩、並びにクエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びパラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。塩基付加塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアンモニウム塩などの無機塩基塩、並びにトリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、及びジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩を挙げることができる。いずれの塩も、化学合成分野において公知の方法により製造することができる。
また、(1)~(3)の化合物、及びそれらの薬剤的に許容される塩は、溶媒和物の形態で用いてもよい。溶媒和物の具体例としては、水和物及びエタノール和物などを挙げることができるが、これらに限定されず、医薬として許容される溶媒との溶媒和物であればいかなるものであってもよい。(1)~(3)の化合物及びこれらの塩の溶媒和物は、化学合成分野において公知の方法により製造することができる。
1つの態様において、精神・神経系の疾患又は症状は、不安障害(不安症)又は不安症状である。不安障害又は不安症状という語には、種々の不安障害(不安症)、不安状態及びこれらに伴う症状が包含され、例えば、広場恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、対人恐怖症、疾病恐怖症、強迫性障害、全般性不安障害、過敏性腸症候群、混合性不安抑うつ障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、パニック発作、パニック障害、広場恐怖を伴うパニック障害、適応障害、不安分離症等の種々の不安障害、並びに、これらの不安障害における不安感、恐怖感、緊張感、心臓の動悸、呼吸困難、息切れ、疲労、吐き気、頭痛(例えば、緊張性頭痛)、頻脈、筋力低下、筋緊張、胸痛、胃痛、蒼白、顔の紅潮、発汗、震え、瞳孔散大、めまい等の種々の症状、さらには、認知症に伴う不安等の、各種の精神・神経疾患等に関連した種々の不安状態が包含されるが、これらに限定されない。PTSDは、物質使用障害(SUD)を併発していないPTSDであり得る。例えば、本発明における不安障害又は不安症状は、PTSDを包含する、SUDを併発していない不安障害又は不安症状であり得る。あるいは、本発明における不安障害又は不安症状は、PTSDを除く不安障害又は不安症状であるか、PTSD、急性ストレス障害及び適応障害を除く不安障害又は不安症状であり得る。
本発明の別の態様において、「不安障害又は不安症状」という語は、米国精神医学会による「精神障害の診断と統計の手引き第5版」(DSM-5)による疾患分類において不安障害群に分類される不安障害・症状を意味する。具体例として、分離不安症、選択性緘黙、限局性恐怖症、社交不安症(社交恐怖)、パニック障害、パニック発作特定用語、広場恐怖症、全般性不安障害、及び物質・医薬品誘発性不安障害等が包含される。
1つの態様において、本発明が対象とする精神・神経系の疾患又は症状は、DSM-5による疾患分類で強迫症および関連症群に分類される強迫症および関連症である。具体例として、強迫性障害、醜形恐怖症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症、物質・医薬品誘発性強迫症および関連症等が包含される。
DSM-5による分類では、PTSD、急性ストレス障害、及び適応障害は、反応性愛着障害、脱抑制型対人交流障害等と共に「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類される。本発明の1つの態様において、不安障害又は不安症状という語には、DSM-5の分類による心的外傷およびストレス因関連障害に該当する疾患は包含されない。別の態様において、本発明が対象とする精神・神経系の疾患又は症状は、DSM-5の分類による心的外傷およびストレス因関連障害である。
1つの態様において、精神・神経系の疾患又は症状は、うつ病又はうつ症状である。うつ病又はうつ症状という語には、種々のうつ病、うつ症状及び抑うつ障害が包含され、例えば、大うつ病性障害(MDD)、非定型うつ病、メランコリー型うつ病、精神病性大うつ病または精神病性うつ病、緊張病性うつ病、産後うつ病、季節性情動障害(SAD)、慢性うつ病(気分変調症)、二重うつ病、他に特定されないうつ病性障害、抑うつ性人格障害(DPD)、再発性軽度うつ病(RBD)、小うつ病性障害(小うつ病)、強迫症、月経前症候群、月経前不快気分障害、慢性身体疾患(例えば、癌、慢性疼痛、化学療法、慢性ストレス)によって引き起こされるうつ病などの種々のうつ病や、これらのうつ病における、抑うつ感、悲哀感、孤独感などの気分障害、活動意欲の低下、思考の渋滞、悲観的観念、睡眠の障害、食欲の低下、双極性障害群に見られるうつ症状、PTSDに見られるうつ症状、物質関連障害および嗜癖性障害に見られるうつ症状などの種々のうつ症状が包含されるが、これらに限定されない。
1つの態様において、精神・神経系の疾患又は症状は、認知症、又は認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)である。認知症には、アルツハイマー型認知症、及びその他の各種の精神・神経疾患に伴う認知症が包含される。BPSDには、記憶障害、見当識障害、失語・失行・失認、抑うつ、不安、幻覚、妄想、睡眠障害、行動障害、易刺激性、叫声、拒絶、徘徊、不潔行為、異食等が包含される。あるいは、本発明における認知症は、アルツハイマー型認知症を除く認知症であり得る。
本発明の剤の投与経路は特に限定されず、全身投与でも局所投与でもよく、経口投与でも非経口投与でもよい。非経口投与の例として、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、経皮投与、経鼻投与、腹腔内投与等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の剤の剤形も特に限定されず、有効成分のジスルフィラム等を、各投与経路に適した薬剤的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、懸濁化剤、乳化剤、着色剤、矯味剤、安定剤等の添加剤と適宜混合して製剤することができる。製剤形態としては、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤や、吸入剤、注射剤、座剤、液剤、スプレー剤、ゲル剤、貼付剤などの非経口剤などを挙げることができる。製剤方法及び使用可能な添加剤は、医薬製剤の分野において周知であり、いずれの方法及び添加剤をも用いることができる。また、本発明の剤(特に、ジエチルジチオカルバメートの金属錯体、薬剤的に許容されるその塩、又はこれらの溶媒和物)は、健康食品やサプリメントの形態で提供することもできる。
徐放製剤化の技術も周知である。本発明の剤は、有効成分の血中濃度安定化及び維持のために徐放性(sustained release)製剤として提供してもよい。ここでいう徐放という語は、制御放出(controlled release)と同義であり、時限放出(delayed release)等も包含される。徐放化技術は、徐放性製剤の形態からシングルユニット型とマルチプルユニット型に分類され、また放出制御機構からリザーバー型、マトリックス型などに分類され、複数の機構を組み合わせたハイブリッド型も知られている。本発明の剤を徐放性製剤として調製する場合は、いずれの徐放化技術を用いてもよい。リポソーム等のDDSを利用したものであってもよい。錠剤、顆粒剤、カプセル剤等のいずれの剤形でも徐放性製剤として調製し得る。ジスルフィラムの徐放性製剤の具体例を挙げると、例えばWO 2012/076897 A1には、リポソームをDDSとしたジスルフィラムの製剤が記載されており、International Journal of Pharmaceutics 497 (2016) 3-11には、徐放性ポリマーとしてポリビニル酢酸-ポリビニルピロリドン混合物又はヒプロメロースを用いたジスルフィラムの固体分散体錠剤が記載されている。上記した(2)~(5)の化合物の徐放性製剤もこれらの技術に準じて製造できる。もっとも、本発明の剤において採用可能な徐放性製剤はこれらの具体例に限定されるものではない。
本発明の剤の投与量は、患者の状態や体重、投与経路等に応じて適宜選択される。特に限定されないが、例えば、成人(体重約60 kg)に対し有効成分量として約0.001mg~約20g程度、例えば約0.1mg~約5g程度、又は約1g~約10g程度を1日に1回~数回に分けて投与してよい。既存の抗不安剤及び抗うつ剤等と本発明の剤を併用してもよい。
本発明の剤は、精神・神経系の疾患又は症状を治療又は改善する目的で、そのような疾患又は症状を有する対象に投与することができる。また、精神・神経系の症状の発現を抑制する目的で、対象に対し予防的に投与することもできる。
本発明の剤を投与する対象は、典型的には哺乳動物であり、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等の種々の哺乳動物に対して用いることができる。1つの態様において、投与対象はヒトである。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
I. ジスルフィラムの抗不安様作用
1. 実験方法
(1) 使用動物
雄性ICRマウス 6~8週齢
(2) 被験薬物
ジスルフィラム: 田辺三菱製薬社製の「ノックビン」を使用した。
シアナミド: 田辺三菱製薬社製の「シアナマイド」を使用した。
ジアゼパム:富士フィルム和光純薬株式会社製の「ジアゼパム」を使用した。
DDC金属錯体(Fe(DDC)3、Cu(DDC)2):東京化成工業株式会社DIETHYLDITHIOCARBAMIC ACID FERRIC SALTおよびCOPPER DIETHYLDITHIOCARBAMATEを使用した。
(3) 投与薬物の調製方法
ノックビン、シアナミド及びDDC金属錯体は、DMSOに溶解させた後、-30℃にて冷凍保存した。試験当日に、Tween80およびコーンオイルを用いて、溶媒濃度が2%Tween80 /10%DMSO /88%コーンオイルとなる様に希釈した。
(4) 試験方法
高架式十字迷路(EPM)装置(図1)を用いて、被検薬物投与マウスの不安様行動を評価した。EPM装置とは、壁のない走行路(Open arm)と壁のある走行路(Closed arm)からなる十字型の迷路装置であり、動物の不安様行動の評価に用いられる。ベンゾジアゼピン(BZD)系抗不安剤を投与された動物は、Open arm滞在時間率および侵入回数率を延長させることが知られている。EPM装置を用いた試験は、抗不安剤評価系として最も代表的な試験方法である。
マウスを実験室に60分間順化させた後、被験薬物を0.25 mL/20gで調製して投与した。薬物投与から所定の時間を経過した後に、EPM装置を用いてマウスの探索行動を5分間測定した。下記の式により、被検薬物がマウスの探索行動に与える影響を評価した。統計処理はDunnettの多重比較検定により行ない、P<0.05を有意差ありとした。
Open arm滞在時間(%)
=Open arm滞在時間(sec)/{Open arm滞在時間(sec)+Closed arm滞在時間(sec)}×100
Open arm進入回数(%)
=Open arm進入回数(回)/{Open arm進入回数(回)+Closed arm進入回数(回)}×100
総進入回数(回)
=Open arm進入回数(回)+Closed arm進入回数(回)
2. 結果
(1) ジスルフィラムの抗不安様作用の用量依存性
ジスルフィラムを20, 40, 又は80 mg/kgの用量でマウス(各群n=8)に腹腔内投与し、投与30分後にEPM装置を用いてマウスの探索行動を評価した。陽性コントロールとして、BZD系抗不安剤であるジアゼパムを1.5 mg/kgの用量(ヒトの臨床使用相当量)でマウスに皮下投与し、同様にEPM装置を用いてマウスの探索行動を評価した。溶媒コントロール投与群には2%Tween80 /10%DMSO /88%コーンオイルの溶液を腹腔内投与した。
ジスルフィラムの結果を図2に、ジアゼパムの結果を図3にそれぞれ示す。ジスルフィラムは、用量依存的かつ有意にopen arm滞在時間率および進入回数率の増加を示した(溶媒投与群に対し、*はP<0.05、**はP<0.01)。40 mg/kg~80 mg/kgの用量では、open arm滞在時間率および進入回数率の増加はジアゼパム(図3)と同等のレベルであった。また、ジスルフィラムは、総進入回数に対して有意な影響を示さなかったことから、運動機能に影響を及ぼさないことが示唆された。以上より、ジスルフィラムにはジアゼパムにも匹敵する抗不安様作用があることが確認された。
(2) ジスルフィラムの抗不安様作用の時間依存性
ジスルフィラムを40 mg/kgでマウス(各群n=8)に投与し、投与から15, 30, 60, 又は120分後にEPM装置を用いてマウスの探索行動を評価した。
結果を図4に示す。ジスルフィラムは投与15分後から有意なopen arm 滞在時間率の増加を示し(溶媒投与群に対し、*はP<0.05、**はP<0.01)、その効果は投与60分後まで認められた。ジスルフィラムの抗不安様作用は30分をピークに認められた。
(3) シアナミドの抗不安様作用の検討
ジスルフィラムとシアナミド(H2N-CN)はいずれも、アルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害活性を有する薬物であり、アルコール摂取時に悪酔い症状を生じやすくすることで断酒を促す抗酒癖剤として従来より用いられている。シアナミドにも抗不安様作用があるか否かを検討した。シアナミドは80 mg/kg、ジスルフィラムは40 mg/kgの用量でマウスに投与し(各試験群n=6)、投与30分後にEPM装置を用いてマウスの探索行動を評価した。
結果を図5に示す。シアナミドはopen Arm滞在時間率および進入回数率に有意な影響を示さず、抗不安様作用を有しないことが確認された。
(4) DSF類縁化合物の抗不安様作用-Fe(DDC)3
ジスルフィラム(DSF)の類縁化合物として、ジエチルジチオカルバメート(DDC)の鉄(III)錯体(Fe(DDC)3)の抗不安様作用を検討した。Fe(DDC)3投与群(n=5)及びDDC投与群(n=4)には、各薬剤を40 mg/kgの用量で腹腔内投与した。溶媒コントロール投与群(n=9)には2%Tween80 /10%DMSO /88%コーンオイルの溶液を腹腔内投与した。投与30分後に5分間の高架式十字迷路試験を実施した。
結果を図6に示す。Fe(DDC)3投与群のマウスのうち3匹では、鎮静作用が強く現れて探索行動を示さず、抗不安様作用の評価ができなかった。鎮静作用を示さなかった2匹では、open arm滞在時間率および進入回数率の有意な増加が認められた(図6のFe(DDC)3投与群のデータはこの2匹の平均値である)。これにより、DDCの金属錯体であるFe(DDC)3に抗不安様作用があることが確認された。
(5) DSF類縁化合物の抗不安様作用-Cu(DDC)2
DSFの類縁化合物として、DDC銅錯体(Cu(DDC)2)の抗不安様作用を検討した。Cu(DDC)2は40 mg/kgの用量でマウス(n=4)に経口投与した。溶媒コントロール投与群(n=4)には2%Tween80 /10%DMSO /88%コーンオイルの溶液を経口投与した。投与60分後に5分間の高架式十字迷路試験を実施した。
結果を図7に示す。Cu(DDC)2投与群ではopen arm滞在時間率の有意な増加が認められた。open arm進入回数率は、有意差は認められなかったものの、Cu(DDC)2投与により増加する傾向が明らかに認められた。これにより、DDCの金属錯体であるCu(DDC)2に抗不安様作用があることが確認された。
II. ジスルフィラムの認知機能向上作用
(1)使用動物
雄性C57BL/6Jマウス
(2)被検薬物
ジスルフィラム(DSF):田辺製薬株式会社製
スクロース:富士フイルム和光純薬株式会社
(3)投与薬物の調整方法
DSF餌は、MF餌1gあたり0.8 mgのDSFおよび50 mgのスクロースを添加し、コントロール餌は50 mgのスクロースのみを添加(DSFを含まない)して固形餌を作製した。
(4)試験方法・結果(物体認知機能)
新規物体位置認識試験(Novel object location task; NOL)により、被検薬物投与マウスの物体認知機能を評価した。NOLは物体の位置を認知する能力を評価するために用いられる(Dix, S.L. & Aggleton, J.P., Behav Brain Res: 1999 Mar;99(2):191-200.)。マウスを33 cm四方の白い箱(Open field; OF)にいれ10分間自由に探索させ、これを3日間行った(馴化)。4日目にOF装置に同じ形状の物体を二つ配置し、マウスに物体の位置を学習させた(図8;学習)。5日目に、一方の物体の位置を学習時とは異なる場所に配置し、マウスに物体を5分間探索させ、物体の探索時間を測定した(図8;記憶想起テスト)。マウスは新規探索性を有するため、前日の物体の位置を記憶していた場合、記憶想起テスト時には新しく配置された場所の物体をより長い時間探索する。
DSF餌またはコントロール餌を3週間マウスに与えた(各群 N = 12匹)。NOL想起テストにおいて、各物体の探索時間を測定し、被検薬物がマウスの認知能力に与える影響を評価した。統計処理はStudentのt検定を行い、p < 0.05を有意差ありとした。
その結果、コントロール餌を3週間与えた群では記憶想起テスト時に既存配置と新規配置物体の探索時間の間に有意な差は観察されなかった。一方、DSF餌を与えた群では新規の場所に配置された物体を既存配置物体よりも有意に長い時間探索した(図8;既存配置に対し*はp<0.05で有意差あり)。
(5)試験方法・結果(空間学習能力)
次にモリス水迷路試験(Morris water maze task; WM)により、被検薬物投与マウスの空間学習能力を評価した。WMはマウスの空間学習、記憶の評価に広く用いられる(Morris, R.G.M., Learning and Motivation:1981, 12, 239-260.)。WM装置は直径120 cmの円形のプールに白く着色した水をはり、マウスが脚をついて休める逃避台(PF)を沈める。マウスをランダムな場所から遊泳をスタートさせ、隠された逃避台に到達するまでの遊泳距離を測定した(図9A)。プローブテスト以外の日は1日4回、プローブテストの日は3回のトライアルを行った。プールの外に配置された空間手がかりを指標に、マウスはプラットフォームの位置を学習する。それによりトライアルを重ねることに、逃避台への到達距離が短くなる(図9A)。そのため、逃避台への到達距離を指標に空間学習能力を評価できる。学習の3、5、7、9日目の最初のトライアルにおいて(図9A;白抜き矢印)、逃避台をプールから除去しマウスを1分間遊泳させ、逃避台のあった4分割エリアを探索した時間を測定した(プローブテスト)。プローブテスト中、逃避台のあったエリアを探索した時間の割合から被検薬物が空間記憶の形成に与える影響を評価した。マウスが逃避台の位置をより強く記憶していると、逃避台のあったエリアをより長い時間探索するようになる。
DSF餌(N = 7匹)またはコントロール餌(N = 9匹)を4週間マウスに与えた。WM学習において、逃避台に到達するまでの距離を毎日測定し、被検薬物がマウスの空間学習に与える影響を評価した。また、プローブテストにおいて被検薬物がマウスの空間記憶の形成に与える影響を評価した。統計処理はStudentのt検定を行い、p < 0.05を有意差ありとした。

その結果、DSF餌を4週間与えた群ではコントロール餌群に比べ4、6日目の逃避台への到達距離が短かった(図9A;コントロール餌に対し*はp<0.05で有意差あり)。また、プローブテストにおいて5日目の逃避台エリアの探索時間がコントロール群と比較し、DSF群で有意に大きかった(図9B;コントロール餌に対し*はp<0.05で有意差あり)。
以上より、ジスルフィラムには認知機能向上作用があることが確認された。
III. ジスルフィラムの抗うつ様作用
(1)使用動物
雄性ICRマウス/雄性C57BL/6Jマウス
(2)被検薬物
ジスルフィラム(DSF):田辺製薬株式会社製
スクロース:富士フイルム和光純薬株式会社
(3)投与薬物の調整方法
DSF餌は、MF餌1gあたり0.8 mgのDSFおよび50 mgのスクロースを添加し、コントロール餌は50 mgのスクロースのみを添加(DSFを含まない)して固形餌を作製した。
(4)試験方法・結果(情動過多反応抑制作用を指標とした抗うつ作用)
DSF(200 mg/day)含有餌を3ヶ月自由摂取したICRマウスの情動過多反応性および過活動性を評価した。情動過多反応性は、Kellyらの方法(Kelly, J.P. et al., Pharmacol. Ther. Vol. 74, No. 3, pp. 299-316, 1997)に準じて、A.鼻先に差し出した障害物に対する反応、B.空気を吹きかけた時の反応、C.取扱いに対する抵抗性について、それぞれの情動反応性を下記に従いスコアー化した。
0:無反応
1:対象への関心・わずかに身体が動くだけ・易取扱
2:対象への防御的または逃避的行動・驚愕反応・緊張有あるが易取り扱い
3:噛みつくなどの攻撃行動、著明な驚愕反応・緊張を伴なった取り扱い困難
4:激しい攻撃行動、跳躍行動を伴なった驚愕反応、極めて困難な取り扱い
過活動性は、飼育ケージ4分の1エリアをまたぐ毎に1カウントとし、30秒間測定した。統計処理はStudentのt検定を行い、p < 0.05を有意差ありとした。
その結果、DSF餌群は、コントロール餌群に比べ情動過多反応性(図10A)および過活動性(図10B)の有意な減少が認められた(*はp<0.05、**はp<0.01)。
被験薬物を慢性投与した時の情動過多反応性および過活動性の低下は、抗うつ様作用の指標とされている(Kelly, J.P. et al., 1997(上掲); Saitoh, A. et al., Psychopharmacology (2007) 191:857-865)。従ってDSFは抗うつ様作用を示すことが示唆された。
(5)試験方法・結果(社会的相互作用を指標とした抗うつ様作用)
DSF(200 mg/day)含有餌を3ヶ月自由摂取したC57BL/6Jマウスに社会的敗北ストレス(Social defeat stress:SDS)を10日間負荷させることでうつ病モデル(SDSモデル)を作製した(Golden S.A. et al., Nat Protoc. Vol. 6, No. 8 pp. 1183-1191, 2011)。SDSは、攻撃性の高い雄ICRマウスを長期飼育したホームケージの中に、C57BL/6Jマウスを単独侵入させ、ICRからの身体的攻撃を暴露させることで作製した。試験では、このストレス負荷を1日10分間、連続10日間行った。抑うつ様症状は、社会的相互作用(social interaction (SI))試験により評価した(Golden S.A. et al., 2011(上掲))。SI 試験は、オープンフィールド(45 cm X 45 cm X 30 cm)装置の片側にメッシュケージ(8 cm X 6 cm X 30 cm)を置いた装置を用い、測定時間中(2.5 分間)に、C57BL/6Jマウスが、メッシュケージ内のICR(Target)に対する接近・接触する時間(SI 時間)を、ICR 非存在下(Non-target)と比較することで実施した。
その結果、コントロール群のSI時間は、Target存在下で有意に減少し(*はp<0.05)、社会的相互作用の抑制が認められた。一方、DSF餌群は、Target存在下においてもSI時間の変化は認められなかった。
SDS負荷したマウスにおける社会的相互作用の減少は、抗うつ薬の慢性投与により回復することから、抑うつ様症状の1つとされている(Golden S.A. et al., 2011(上掲))。従って、DSFは抗うつ様作用を示すことが示唆された。

Claims (5)

  1. 下記(1)~(4)のいずれかを有効成分として含有する、精神・神経系の疾患又は症状を治療し、予防し又は改善する剤であって、精神・神経系の疾患又は症状が、分離不安症、選択性緘黙、限局性恐怖症、社交不安症(社交恐怖)、パニック障害、パニック発作特定用語、広場恐怖症、全般性不安障害、及び物質・医薬品誘発性不安障害から選択される不安障害又は不安症状、うつ病又はうつ症状、並びに認知症又は認知症に伴う行動・心理症状から選択される疾患又は症状である、剤。
    (1) ジスルフィラム
    (2) ジエチルジチオカルバメートの鉄(III)錯体又は銅錯体
    (3) (1)又は(2)の薬剤的に許容される塩
    (4) (1)、(2)又は(3)の溶媒和物
  2. 精神・神経系の疾患又は症状が、分離不安症、選択性緘黙、限局性恐怖症、社交不安症(社交恐怖)、パニック障害、パニック発作特定用語、広場恐怖症、全般性不安障害、及び物質・医薬品誘発性不安障害から選択される不安障害又は不安症状である、請求項記載の剤。
  3. 精神・神経系の疾患又は症状が、うつ病又はうつ症状である、請求項記載の剤。
  4. 精神・神経系の疾患又は症状が、認知症又は認知症に伴う行動・心理症状である、請求項記載の剤。
  5. うつ病又はうつ症状が、物質関連障害および嗜癖性障害に見られるうつ症状以外のうつ病又はうつ症状である、請求項1又は3記載の剤。
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