JP7616706B1 - 産業資材用帆布、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】布帛の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなる帆布であって、布帛が経糸条群、及び緯糸条群により製織され、経緯双方の糸条群に、マルチフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条が規則的に交互配列されていて、この交互配列の繰り返し単位が2~6本であり、交互配列がマルチフィラメント糸条(1~3本)、及び短繊維紡績糸条(1~3本)による組み合わせの何れか1種で、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に液状ゴム硬化物を含むものとする。
【選択図】なし
Description
本発明の実施例及び比較例に用いた試験方法は下記の通りである。
(1)外観品位(光沢部と乱反射部のバランス)
1:良好
2:あまり良くない
3:良くない
(2)引裂強度(JIS L1096 トラペゾイド法)バランス
経糸の引裂強度(kgf)/緯糸の引裂強度(kgf)の値
1: 0.8~1.25
2: 0.7~0.79 または 1.26~1.43
3: 0.5~0.69 または 1.44~2.0
4: 上記以外
(3)スコット形屈曲往復摩耗試験(JIS L1096 8.19.2 B法準拠)
A)帆布から25mm幅×120mm長さの試験片を採取し、25℃環境に24時間静置した後、スコット形試験機に装着し、1kgf荷重の負荷で1000回及び3000回の往復屈曲を「25℃」の恒温室内で行い、試験後の表面状態を観察し、動的耐寒性を下記のように判定した。
1:軽微な摩耗を認める
2:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に摩耗痕を認めるが問題ない
3:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の剥離、または摩耗により布帛の露出
(10%未満)を認める
4:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の剥離、または摩耗により布帛の露出
(10%を超える)を認める
B)帆布から25mm幅×120mm長さの試験片を採取し、マイナス10℃環境に24 時間静置した後、スコット形試験機に装着し、1kgf荷重の負荷で100回及び300回の往復屈曲を「-10℃」の恒温室内で行い、試験後の表面状態を観察し、動的耐寒性を下記のように判定した。
1:異常を認めない
2:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に軽微な亀裂を認める
3:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の部分剥離または脱落、または亀裂を認める
(4)デマッチャ繰返し屈曲疲労耐久試験(JIS K6301準拠)
帆布から50mm幅×150mm長さの試料を採取し、マイナス10℃環境に24時間静置した後、幅の中心25mmから上下2つ折りに重ね合わせた25mm幅×150mm長の折り畳み状試験片とし、YSSデマッチャ・フレキシング・テスター(株式会社安田精機製作所製)に装着し、試験片の折畳みと開帳の繰り返しの疑似試験を「-10℃」の恒温室で、100回、及び300回行い、試験片の表面状態を観察し下記のように動的耐寒性を判定した。
1:異常を認めない
2:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に軽微な亀裂を認める
3:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の部分剥離または脱落を認める
(5)接合体の耐熱クリープ試験(耐熱試験)
2枚の帆布の緯糸方向の端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、4cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター株式会社製YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流1.0A条件の発振で軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を溶融させて帆布接合体を得た。この接合体より融着接合部を重ね合わせ幅8cmを経糸方向に含む、3cm幅×30cm長(経糸方向)の試験片を採取し、耐クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所株式会社製:100LDR型)を使用して25℃×24時間の条件下、50kgf、60kgf、70kgfの荷重条件で経糸方向の耐熱クリープ性を評価、同様に緯糸方向の試験片を作製して緯糸方向の耐熱クリープ性を評価した。
評価の基準
1 :24時間経過後、接合部に伸びは認める程度(優)
2 :12時間~24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した(良)
3 :1時間~12時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した(劣)
4 :1時間経たずに接合部が破壊し、試験片が分断した(不良)
〈布帛(1)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMSS」交互配列(繰り返し単位4本)、経糸条の打込密度40本/インチ、及び緯糸条の打込密度37本/インチで平織製織した空隙率7%、質量215g/m2の布帛を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
布帛に炭素数6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート/塩化ビニル樹脂共重合体エマルジョン(固形分5質量%)による撥水処理(浸漬、熱処理)を行い、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に異常を生じた場合の雨水の浸透防止(吸水防止)とした。これを布帛(1)とした。
〈軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層〉
下記〈配合1〉の軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層形成用の塩化ビニル樹脂組成物ペースト(塩化ビニル樹脂、可塑剤、反応性ブタジエン系液状ゴム)を主体とする加工液を調製した。次に、この加工液が充填された液浴中に布帛(1)をディッピング(浸漬)し、布帛(1)に〈配合1〉の加工液を常圧で含浸させた後、布帛(1)を液浴から引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで圧搾し、余分な加工液を除去して、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した。次に、180℃の熱風炉で3分間ゲル化熱処理を行うことで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層290g/m2を布帛(1)の全面に形成し、質量505g/m2の帆布(1)を得た。このゲル化熱処理は、塩化ビニル樹脂組成物ペーストを軟質塩化ビニル樹脂に転化すると同時に、反応性ブタジエン系液状ゴムをゴム硬化物に転化させることで、得られる軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム硬化物の分子鎖が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったポリマーアロイを形成する工程である。
〈配合1〉軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層形成用の加工液
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
ジイソノニルフタレート(DINP可塑剤) 60質量部
反応性ブタジエン系液状ゴム※ 10質量部
イソシアヌレート(HMDI※の3量体:NCO架橋剤) 2質量部
塩素化パラフィン(防炎剤兼可塑剤) 5質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤(トリアジン系互変異性体) 0.5質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
フタロシアニングリーン(緑顔料) 3質量部
カーボンブラック(黒顔料) 0.5質量部
ベヘンアミド(滑剤) 1質量部
トリクロロエチレン(希釈溶剤) 20質量部
※ブタジエン系液状ゴム:ブロック共重合成分としてスチレンを15質量%含み、
分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状
※HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
HMDIの3量体(イソシアヌレート)は3個のイソシアネート基を有する
実施例1の布帛(1)を布帛(2)に変更し、〈配合1〉を〈配合2〉に変更した以外は実施例1と同様として質量505g/m2の帆布(2)を得た。
〈配合2〉は〈配合1〉の反応性ブタジエン系液状ゴム10質量部を、反応性イソプレン系液状ゴム10質量部に置換したもので、反応性イソプレン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてアクリロニトリルを10質量%含み、分子両末端に-COOH基を有する平均分子量2500の性状である。
〈布帛(2)〉
経糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMMSS」交互配列(繰り返し単位5本)、経糸条の打込密度40本/インチ、緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMSSS」交互配列(繰り返し単位5本)、緯糸条の打込密度37本/インチで平織製織した空隙率7%、質量215g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
実施例1の布帛(1)を布帛(3)に変更し、〈配合1〉を〈配合3〉に変更した以外は実施例1と同様として質量518g/m2の帆布(3)を得た。
〈配合3〉は〈配合1〉の反応性ブタジエン系液状ゴム10質量部を、反応性β-ファネルセン系液状ゴム10質量部に置換したもので、反応性β-ファネルセン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてブタジエンを10質量%含み、分子両末端に-COOH基を有する平均分子量5000の性状である。
〈布帛(3)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMS」交互配列(繰り返し単位3本)、経糸条の打込密度44本/インチ、緯糸条の打込密度40本/インチで平織製織した空隙率8%、質量228g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条(S)は、14番手双糸(844dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)で、マルチフィラメント糸条(M)よりも繊度(dtex)が大きい。これを表1では(S)と表記した。
実施例1の布帛(1)を布帛(4)に変更した以外は実施例1と同様として質量523g/m2の帆布(4)を得た。
〈布帛(4)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MSS」交互配列(繰り返し単位3本)、経糸条の打込密度44本/インチ、緯糸条の打込密度40本/インチで平織製織した空隙率7%、質量233g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、1000デニール(1111dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数192本:撚数200回/m)で、短繊維紡績糸条(S)よりも繊度(dtex)が大きい。これを表1では(M)と表記した。
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
実施例1の布帛(1)を布帛(5)に変更し、〈配合1〉を〈配合2〉に変更した以外は実施例1と同様として質量538g/m2の帆布(5)を得た。
〈布帛(5)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMSSS」交互配列(繰り返し単位5本)、経糸条の打込密度40本/インチ、緯糸条の打込密度37本/インチで平織製織した空隙率8%、質量238g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、ポリエステル繊維(フィラメント数192本:撚数200回/m)からなり、フィラメント同士がルーズに嵩高交絡した状態でS撚10T/mを施した1000デニール(1111dtex)のタスラン加工糸条で、これを表1では「薄墨のM」と表記した。
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
実施例1の布帛(1)を布帛(6)に変更し、〈配合1〉を〈配合3〉に変更した以外は実施例1と同様として質量525g/m2の帆布(6)を得た。
〈布帛(6)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMSS」交互配列(繰り返し単位4本)、経糸条の打込密度38本/インチ、緯糸条の打込密度34本/インチで平織製織した空隙率8%、質量220g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、ポリエステルマルチフィラメント長繊維糸条750デニール(833dtex:撚数200回/m)を芯として、その全周を1.4デニール(1.56dtex)の短繊維長さ100mmのポリエステルステープルで、重量比65/35の芯/鞘になるように被覆したコアスパン芯鞘糸条で、これを表2では「薄墨のM」と表記した。
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
実施例1の布帛(1)を布帛(7)に変更した以外は実施例1と同様として質量532g/m2の帆布(7)を得た。
〈布帛(7)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMMSSS」交互配列(繰り返し単位6本)、経糸条の打込密度40本/インチ、緯糸条の打込密度37本/インチで平織製織した空隙率8%、質量227g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、2本が500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)、この中央に500デニール(555dtex)の全芳香族ポリアミド繊維(フィラメント数300本:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)によるマルチフィラメント糸条を配置(表2では大文字のM表記とした)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
実施例1の布帛(1)を布帛(8)に変更した以外は実施例1と同様として質量536g/m2の帆布(8)を得た。
〈布帛(8)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MS」の交互配列(繰り返し単位2本)、経糸条の打込密度40本/インチ、緯糸条の打込密度37本/インチで平織製織した空隙率8%、質量236g/m2の布帛(撥水処理は実施例1と同じ)を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex:撚数200回/m)の全芳香族ポリアミド繊維(フィラメント数300本:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)によるマルチフィラメント糸条(表2では大文字のM表記とした)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)の全芳香族ポリアミド繊維(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)表2では大文字のM表記とした。
実施例1の〈配合1〉の加工液を、〈配合4〉の加工液に変更した以外は実施例1と同様として、質量505g/m2の帆布(9)を得た。
〈配合4〉の加工液は〈配合1〉の加工液に、表面改質シリカ粒子を2質量部追加したものである。
表面改質シリカ粒子は、乾式シリカ(ゲル法:平均粒子径2μm、BET比表面積300m2/g)を、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)の5質量%水溶液中で24℃×3時間攪拌したものを分離、乾燥したもので、シリカのシラノール基に結合する-Si-R-Si(OCH3)3修飾と、シロキサン部分に結合する(-O)3Si-R-NH2修飾が混在する。
実施例1の帆布(1)の表面に、下記〔配合5〕のフッ素系樹脂塗料を100メッシユのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、〔配合5〕のフッ素系樹脂塗料を硬化させて防汚塗膜層(4g/m2)を形成し、質量509g/m2の帆布(10)を得た。
〔配合5〕フッ素系樹脂塗料(防汚層形成用)
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体(フッ素系樹脂)
100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体(イソシアネート)
10質量部
コロイダルシリカ(帯電防止) 8質量部
トリアジン互変異性体(紫外線吸収剤) 5質量部
硬化触媒:ジブチル錫ジラウレート(フッ素系樹脂に対し約10ppm)
トルエン/酢酸ブチル(質量比1:1の希釈剤) 400質量部
実施例1の〈配合1〉の加工液を〈配合6〉の加工液に変更した以外は実施例1と同様として、質量503g/m2の帆布(11)を得た。
〈配合6〉の加工液は、〈配合1〉の反応性ブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部、及びイソシアヌレート(HMDIの3量体:NCO架橋剤)2質量部を省略した配合である。
比較例の帆布(11)の外観品位は良好であったが、実施例1の帆布(1)に比べると、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域にゴム構造の生成を伴わないことが要因で、氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)、及び炎天下での耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)に、明らかに劣るものであった。
実施例1の〈配合1〉の加工液を〈配合7〉の加工液に変更した以外は実施例1と同様として、質量503g/m2の帆布(12)を得た。
〈配合7〉の加工液は、〈配合1〉の反応性ブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部を、分子両末端に官能基を有さない平均分子量3000のブタジエン系液状ゴム10質量部に置換し、イソシアヌレート(HMDIの3量体:NCO架橋剤)2質量部を省略した配合である。
官能基を有さないブタジエン系液状ゴムは、液状のまま軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に滞留し、塩化ビニル樹脂のガラス転移温度を下げる効果を発現することで、比較例1の帆布(11)よりも氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)に優れていた(実施例1の帆布(1)同等)が、逆にブタジエン系液状ゴムの存在が耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)に悪影響を及ぼし、比較例1の帆布(11)よりも劣る結果であった。
実施例1の〈配合1〉の加工液を〈配合8〉の加工液に変更した以外は実施例1と同様として、質量505g/m2の帆布(13)を得た。
〈配合8〉の加工液は、〈配合1〉の反応性ブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部をブタジエンゴム粉末(登録商標「カネエース」M-711:株式会社カネカ)10質量部に置換し、イソシアヌレート(HMDIの3量体:NCO架橋剤)2質量部を省略した配合である。
ブタジエンゴム粉末(非架橋)は、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に非相溶分散し、ブタジエンゴム自体の耐寒性により、比較例1の帆布(11)よりも氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)にやや優れていた(実施例1の帆布(1)には及ばない)が、非相溶分散の影響により無数の亀裂を生じていた。また耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)に関しては、比較例1の帆布(11)と比較して特段の改善効果は認められなかった。
実施例1の布帛(1)を布帛(9)に変更した以外は実施例1と同様として質量445g/m2の帆布(14)を得た。
〈布帛(9)〉
経糸条群、及び緯糸条群共にマルチフィラメント糸条を用い、経糸条の打込密度28本/インチ、及び緯糸条の打込密度24本/インチで平織製織した空隙率10%、質量165g/m2の布帛(フィラメント織物)を用いた。
※マルチフィラメント糸条は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
この布帛に実施例1と同じ雨水の浸透防止(吸水防止)を施し、これを布帛(9)とした。
得られた帆布(14)は、経糸条群、及び緯糸条群共にマルチフィラメント糸条を用いたことにより、引裂強度、及び経緯の引裂強度バランスに優れていたが、布帛(9)の表面が滑らかとなり、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層との接着性に劣り、氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)で、布帛(9)から軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が剥離した。また耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)では糸抜け破壊を生じた。
実施例1の布帛(1)を布帛(10)に変更した以外は実施例1と同様として質量534g/m2の帆布(15)を得た。
〈布帛(10)〉
経糸条群、及び緯糸条群共に短繊維紡績糸条を用い、経糸条の打込密度46本/インチ、及び緯糸条の打込密度42本/インチで平織製織した空隙率6%、質量235g/m2布帛を用いた。
※短繊維紡績糸条は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
この布帛に実施例1と同じ雨水の浸透防止(吸水防止)を施し、これを布帛(10)とした。
得られた帆布(15)は、経糸条群、及び緯糸条群共に短繊維紡績糸条を用いたことにより、経緯の引裂強度バランスに優れていたが、引裂強度が弱いものであった。しかし布帛(10)の表面が多数の毛羽の凹凸により、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層との接着性が増して、氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)、耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)は実施例1の帆布(1)と同等の性能であった。
実施例1の布帛(1)を布帛(11)に変更した以外は実施例1と同様として質量500g/m2の帆布(16)を得た。
〈布帛(11)〉
経糸条群にマルチフィラメント糸条、及び緯糸条群に短繊維紡績糸条を用い、経糸条の打込密度28本/インチ、及び緯糸条の打込密度38本/インチで平織製織した空隙率が8%、質量223g/m2布帛を用いた。
※マルチフィラメント糸条は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
この布帛に実施例1と同じ雨水の浸透防止(吸水防止)を施し、これを布帛(11)とした。
得られた帆布(16)は、経糸条群にマルチフィラメント糸条、及び緯糸条群に短繊維紡績糸条を用いたことにより、経緯の引裂強度バランスが極端に劣り、また耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)においても、経緯方向での性能差が顕著であり、実使用に適さないものであった。氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)は、比較例4(帆布14)と比較例5(帆布15)との中間的位置付けであった。
実施例1の布帛(1)を布帛(12)に変更した以外は実施例1と同様として質量516g/m2の帆布(17)を得た。
〈布帛(12)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMSSSSSS」交互配列(繰り返し単位8本)、経糸条の打込密度38本/インチ、及び緯糸条の打込密度35本/インチで平織製織した空隙率が7%、質量222g/m2布帛を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
この布帛に実施例1と同じ雨水の浸透防止(吸水防止)を施し、これを布帛(12)とした。
得られた帆布(17)は、「MMSSSSSS」交互配列(繰り返し単位8本)としたことで、外観品位が悪く、性能的には比較例5(帆布15)寄りで、Mの存在で引裂強度がやや改善された反面、氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)、耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)がやや劣るものとなった。
実施例1の布帛(1)を布帛(13)に変更した以外は実施例1と同様として質量515g/m2の帆布(18)を得た。
〈布帛(13)〉
経糸条群、及び緯糸条群に、マルチフィラメント糸条(M)、及び短繊維紡績糸条(S)が「MMMMMMSS」交互配列(繰り返し単位8本)、経糸条の打込密度33本/インチ、及び緯糸条の打込密度30本/インチで平織製織した空隙率が11%、質量174g/m2布帛を用いた。
※マルチフィラメント糸条(M)は、500デニール(555dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸条(フィラメント数96本:撚数200回/m)
※短繊維紡績糸条(S)は、20番手双糸(590dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条(S撚り:撚数400回/m)
この布帛に実施例1と同じ雨水の浸透防止(吸水防止)を施し、これを布帛(13)とした。
得られた帆布(18)は、「MMMMMMSS」交互配列(繰り返し単位8本)としたことで、外観品位が悪く、性能的には比較例4(帆布14)寄りで、Sの存在で、氷点下での屈曲耐久性(スコット屈曲摩耗試験・デマッチャ屈曲疲労試験)、耐熱性(接合部耐熱クリープ試験)がやや改善された反面、引裂強度がやや劣るものとなった。
Claims (5)
- 布帛の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなる帆布であって、前記布帛が経糸条群、及び緯糸条群により製織され、経緯双方の糸条群に、マルチフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条が規則的に交互配列されていて、この交互配列の繰り返し単位が2~6本であり、前記交互配列が前記マルチフィラメント糸条(1~3本)、及び前記短繊維紡績糸条(1~3本)による組み合わせ9種の何れか1種であり、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に液状ゴム硬化物を含み、前記液状ゴム硬化物が、ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上の反応性液状ゴムの重合体、かつ前記反応性液状ゴムとシリカ粒子との複合体で、前記シリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH基)との反応物であることを特徴とする産業資材用帆布。
- 前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層にシリコーン微粒子を含み、このシリコーン微粒子が、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、疎水化シリカパウダー、グラフトシリコーンパウダー、及びシリコーンゴム粒子表面をシリコーンレジンで被覆した複合パウダー、から選ばれた1種以上である請求項1に記載の産業資材用帆布。
- マルチフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条を規則的に交互配列して含む布帛の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が形成された帆布の製造において、1)塩化ビニル樹脂、可塑剤、反応性液状合成ゴム(ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上)、の3種を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を調製する工程、2)前記布帛に前記軟質塩化ビニル樹脂組成物を塗工し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層(ゲル化前)を形成する工程、3)前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成する前記軟質塩化ビニル樹脂組成物のゲル化熱処理と同時に、前記反応性液状合成ゴムをゴム硬化物に転化して、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全体に合成ゴム成分を含ませる工程、を含むことを特徴とする産業資材用帆布の製造方法。
- 前記布帛が経糸条群、及び緯糸条群により製織され、経緯双方の糸条群が、マルチフィラメント糸条/短繊維紡績糸条による合撚糸で構成され、前記マルチフィラメント糸条が、嵩高糸条、または嵩高部分を外周に有する交撚糸条である請求項3に記載の産業資材用帆布の製造方法。
- 前記軟質塩化ビニル樹脂組成物にシリカ粒子を含ませて、シリカ粒子との複合ゴム硬化物に転化する請求項3に記載の産業資材用帆布の製造方法。
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