本開示は、1つ以上のFzd受容体と1つ以上のLRP5またはLRP6受容体とに結合し、下流Wntシグナリング経路を調節する、Wntサロゲート分子に関する。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、Wntシグナリング経路を活性化するか、またはWntシグナリング経路を介しシグナリングを増加させる。特定の実施形態において、本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、(i)1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合フラグメント(特定のFzd受容体特異性及び/または機能的特性を有する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む)、ならびに(ii)LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態は、Wnt経路シグナリング及び関連する生物学的効果を増加させるのに有利な、Wntサロゲート分子のFzd結合領域(1つまたは複数)及びLRP5/6結合領域(1つまたは複数)における特定の構造形式または配置を包含する。
本発明の実施形態は、Wntシグナリング経路に関連する疾患及び障害の診断、評価、及び治療のための、Wntサロゲート分子の使用に関する。ある特定の実施形態において、主題のWntサロゲート分子は、細胞または組織内のWntシグナリング経路を調節するのに使用される。ある特定の実施形態において、主題のWntサロゲート分子は、Wntシグナリングの異常もしくは脱制御(例えば、低減)に関連する、またはWntシグナリングを調節する(例えば、増加させる)ことが治療利益をもたらすと考えられる、疾患及び障害の治療または防止で使用される。
本発明の実施には、反対の内容が明示されない限り、ウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、及び組換えDNA技法の従来的方法が当業者の技能範囲内で用いられ、これらの多くについては例示のために後述する。このような技法は、文献で十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular BiologyまたはCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及びその他の類似の参考文献を参照。
本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「1つの(a/an)」及び「当該(the)」は、内容による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含む。
本明細書全体において、文脈上他の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、述べられた要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を含み、ただし、いかなる他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群も除外しないことを意味するものと理解されたい。
本明細書中の各実施形態は、別段の明記がない限り、必要な変更を考慮しながら、他のあらゆる実施形態にも適用されるものとする。
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換については、標準的な技法を使用することができる(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製の技法は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野で一般的に遂行されているように、または本明細書で説明されているように実施することができる。これら及び関連する技法及び手順は、概して、当技術分野で周知されている従来的な方法に従って、また本明細書全体で引用され論じられている様々な全般的及びより具体的な参考文献に記載されているように、実施することができる。具体的な定義が示されない限り、本明細書で説明されている分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医療的化学及び薬学的化学に関連して利用されている名称、ならびにこれらの分野の検査手順及び技法は、当技術分野で周知され一般的に使用されているものである。組換え技術、分子生物学、微生物学、化学合成、化学分析、医薬の調製、製剤、及び送達、ならびに対象の治療については、標準的な技法を使用することができる。
本発明の実施形態は、1つ以上のFzd受容体に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。例示的な抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは相補性決定領域(CDR)は、表1A及び1Bならびに表3の配列番号1~65または129~132に記載されている。使用され得る、または本明細書で開示されているWntサロゲート分子中に存在し得る抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントとしては、限定されるものではないが、「Anti-Frizzled Antibodies and Methods of Use」という表題の米国仮特許出願第62/607,877号(代理人整理番号SRZN-004/00US、2017年12月19日出願)で説明されているものが挙げられる。
本発明の実施形態は、LRP5及び/またはLRP6に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。例示的な抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは相補性決定領域(CDR)は、表2A及び2Bならびに表3の配列番号66~88または133に記載されている。使用され得る、または本明細書で開示されているWntサロゲート分子中に存在し得る抗LRP5/6抗体またはその抗原結合フラグメントとしては、限定されるものではないが、「Anti-LRP5/6 Antibodies and Methods of Use」という表題の米国仮特許出願第62/607,879号(代理人整理番号SRZN-005/00US、2017年12月19日出願)で説明されているものが挙げられる。
当技術分野で周知されているように、抗体は、標的(例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に対し、免疫グロブリン分子の可変領域内にある少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、当該用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、そのフラグメント(例えば、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、1本鎖(scFv)、VHHまたはsdAb、その合成バリアント、天然バリアント、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び必要とされる特異性を有する抗原結合部位またはフラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾構成も包含する。遺伝子融合によって構築された多価性または多重特異的フラグメントである「ダイアボディ」または2scFV-Ig抗体(WO94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993)も、本明細書で企図されている抗体の1つの特定の形態である。CH3ドメインに連結したscFvを含むミニボディも本明細書に含まれる(S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996)。例えば、Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989);Bird et al.,Science,242,423-426,1988;Huston et al.,PNAS USA,85,5879-5883,1988);PCT/US92/09965;WO94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993;Y.Reiter et al.,Nature Biotech,14,1239-1245,1996;S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996を参照。
「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書で使用する場合、目的抗原に、詳細には1つ以上のFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体に結合する、免疫グロブリン重鎖及び/もしくは軽鎖、またはVHHもしくはsdAbの少なくとも1つのCDRを含む、ポリペプチドフラグメントを指す。この点において、本明細書で説明されている抗体の抗原結合フラグメントは、1つ以上のFzd受容体またはLRP5及び/もしくはLRP6に結合する抗体由来の、本明細書に記載のVH及びVL配列の1、2、3、4、5、または6つ全てのCDRを含むことができる。特定の実施形態において、抗原結合フラグメントは、3つ全てのVH CDRまたは3つ全てのVL CDRを含むことができる。同様に、その抗原結合フラグメントは、VHHまたはsdAbの3つ全てのCDRを含むことができる。Fzd特異的抗体の抗原結合フラグメントは、Fzd受容体に結合することができる。LRP5/6特異的抗体の抗原結合フラグメントは、LRP5及び/またはLRP6受容体に結合することができる。本明細書で使用する場合、当該用語は、単離フラグメントを包含するだけではなく、本明細書で開示されている抗体の抗原結合フラグメントを含むポリペプチド、例えば、本明細書で開示されている抗体の抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、例えば、1つ以上のFzd受容体に結合するVHHまたはsdAbと、LRP5及び/またはLRP6に結合するVHHまたはsdAbとを含む、融合タンパク質も包含する。
「抗原」という用語は、選択的結合剤(例えば、抗体)が結合することができ、さらに、動物内で使用してその抗原のエピトープに結合可能な抗体を産生することができる、分子または分子の一部分を指す。ある特定の実施形態において、結合剤(例えば、Wntサロゲート分子またはその結合領域)は、タンパク質及び/または巨大分子の複合混合物内の標的抗原を優先的に認識する場合、抗原と特異的に結合するとされる。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子またはその結合領域(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は、平衡解離定数が≦10-7または≦10-8Mの場合、抗原と特異的に結合するとされる。いくつかの実施形態において、平衡解離定数は≦10-9Mまたは≦10-10Mとすることができる。
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体及びその抗原結合フラグメントは重鎖及び軽鎖のCDRセットを含み、これらはそれぞれ、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域(FR)セットの間に存在する。FRセットは、CDRを支持し、CDRの相互の空間関係を定義する。本明細書で使用する場合、「CDRセット」という用語は、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域を指す。これらの領域は、重鎖または軽鎖のN末端側から進めて、それぞれ「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」として示される。そのため、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の各V領域からのCDRセットを含む、6つのCDRを含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドは、本明細書では「分子認識単位」と呼ばれる。複数の抗原-抗体複合体の結晶学的解析により、CDRのアミノ酸残基が結合抗原と広範な接触を形成し、最も広範な抗原接触が重鎖CDR3による接触であることが実証されている。したがって、分子認識単位は、主に抗原結合部位の特異性を担当する。
本明細書で使用する場合、「FRセット」という用語は、重鎖または軽鎖のV領域のCDRセットのCDRをフレーム化する、4つの隣接するアミノ酸配列を指す。一部のFR残基が結合抗原に接触する場合もあるが、FRは主として、V領域を抗原結合部位に、詳細にはCDRに直接隣接するFR残基に折り畳む役割を担う。FR内では、ある特定のアミノ残基及びある特定の構造的特徴が非常に高度に保存されている。この点において、全てのV領域配列は、およそ90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。V領域が結合部位に折り畳まれると、CDRは、抗原結合表面を形成する突出したループモチーフとして提示される。概して、詳細なCDRアミノ酸配列に関係なく、折り畳まれた形状のCDRループがある特定の「カノニカル」構造になるように影響を及ぼす、FRの保存的構造領域が存在することが認識されている。さらに、ある特定のFR残基は、抗体の重鎖及び軽鎖の相互作用を安定化する非共有結合的なドメイン間接触に関与することが知られている。
免疫グロブリンのCDR及び可変ドメインの構造及び位置は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987及びその最新情報(インターネット(immuno.bme.nwu.edu)で利用可能)を参照することによって決定することができる。代替的に、CDRは、http://www.imgt.orgで利用可能なIMGT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標))を使用することによって決定することができる(例えば、Lefranc,M.-P.et al.(1999)Nucleic Acids Res.,27:209-212;Ruiz,M.et al.(2000)Nucleic Acids Res.,28:219-221;Lefranc,M.-P.(2001)Nucleic Acids Res.,29:207-209;Lefranc,M.-P.(2003)Nucleic Acids Res.,31:307-310;Lefranc,M.-P.et al.(2004)In Silico Biol.,5,0006[Epub],5:45-60(2005)];Lefranc,M.-P.et al.(2005)Nucleic Acids Res.,33:D593-597;Lefranc,M.-P.et al.(2009)Nucleic Acids Res.,37:D1006-1012;Lefranc,M.-P.et al.(2015)Nucleic Acids Res.,43:D413-422を参照)。
モノクローナル抗体」とは、エピトープの選択的結合に関与するアミノ酸(天然または非天然)から構成される、同質の抗体集団を指す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一のエピトープに向けられる。「モノクローナル抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体及び全長モノクローナル抗体を包含するだけでなく、これらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、1本鎖(scFv)、VHHまたはsdAb、これらのバリアント、モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性及びエピトープへの結合能力を有する抗原結合フラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾構成も包含し、本明細書で開示されているWntサロゲート分子もこれに含まれる。抗体の供給源または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物など)については、限定的であるように意図されていない。当該用語は、全免疫グロブリンに加えて、「抗体」の定義において上記で説明されているフラグメントなども含む。
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかのフラグメントを産生し、そのうちの2つ(F(ab)フラグメント)はそれぞれ、インタクトな抗原結合部位を含む共有結合的なヘテロ2量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)2を含めたいくつかのフラグメントをもたらすことができる。本発明のある特定の実施形態に従って使用するFvフラグメントは、IgM免疫グロブリン分子の、稀な場合にはIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的タンパク質切断によって産生することができる。ただし、Fvフラグメントは、当技術分野で公知の組換え技法を用いて誘導するのがより一般的である。Fvフラグメントは、ネイティブ抗体分子の抗原認識及び結合能力の多くを保持する抗原結合部位を含む、非共有結合的VH::VLヘテロ2量体を含む。Inbar et al.(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659-2662;Hochman et al.(1976)Biochem 15:2706-2710;及びEhrlich et al.(1980)Biochem 19:4091-4096。
ある特定の実施形態において、1本鎖Fv抗体、すなわちscFV抗体が企図されている。例えば、カッパボディ(Kappa body)(Ill et al.,Prot.Eng.10:949-57(1997);ミニボディ(Martin et al.,EMBO J 13:5305-9(1994);ダイアボディ(Holliger et al.,PNAS 90:6444-8(1993);またはヤヌシン(Janusin)(Traunecker et al.,EMBO J 10:3655-59(1991)及びTraunecker et al.,Int.J.Cancer Suppl.7:51-52(1992))は、所望の特異性を有する抗体の選択について本出願の教示に従い、標準的な分子生物学技法を用いて調製することができる。また他の実施形態において、本開示のリガンドを包含する二重特異的抗体またはキメラ抗体が作製され得る。例えば、キメラ抗体は、異なる抗体からのCDR及びフレームワーク領域を含むことができ、その一方で、1つの結合ドメインを介して1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、第2の結合ドメインを介して第2の分子と特異的に結合する二重特異的抗体を生成することができる。これらの抗体は、組換え分子生物学の技法を通じて産生することができ、または物理的に一緒に結合体化させることができる。
1本鎖抗体Fv(scFv)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって結合したVH-及びVL-コード遺伝子を含む遺伝子融合から発現する、共有結合VH::VLヘテロ2量体である。Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85(16):5879-5883。抗体V領域からの天然に凝集した(ただし、化学的には分離した)ポリペプチド軽鎖及び重鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に同様の3次元構造に折り畳まれるscFv分子に変換するための、化学構造を識別する複数の方法が説明されている。例えば、Huston et al.に対する米国特許第5,091,513号及び第5,132,405号、ならびにLadner et al.に対する米国特許第4,946,778号を参照。
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体は、ダイアボディの形態をとる。ダイアボディはポリペプチドの多量体であり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインと、免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインとを含み、この2つのドメインは(例えば、ペプチドリンカーによって)結合しているが、互いに会合して抗原結合部位を形成することはできない。抗原結合部位は、多量体内のあるポリペプチドの第1のドメインと、多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合によって形成される(WO94/13804)。
抗体のdAbフラグメントは、VHドメインからなる(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989))。
二重特異的抗体を使用する場合、それは、様々な方法(Holliger,P.and Winter G.Current Opinion Biotechnol.4,446-449(1993))で製造することができる(例えば、化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから調製することができる)従来の二重特異的抗体であってもよく、または上述の任意の二重特異的抗体フラグメントであってもよい。ダイアボディ及びscFvは、可変ドメインのみを用いてFc領域なしで構築することができ、これにより、抗イディオタイプ反応の影響が潜在的に低減される。
二重特異的ダイアボディは、二重特異的全抗体と対比すると、容易に構築しE.coli内で発現させることができるため、特に有用でもあり得る。適切な結合特異性のダイアボディ(及び他の多くのポリペプチド(例えば、抗体フラグメント))は、ファージディスプレイ(WO94/13804)を用いてライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが、例えば、抗原Xに向けられる特異性について定常性を保つようにする場合、他方のアームを変化させ、適切な特異性の抗体が選択されるようにライブラリーを作製することができる。二重特異的全抗体は、ノブズ・イントゥ・ホールズ(knobs-into-holes)操作によって作製することができる(J.B.B.Ridgeway et al.,Protein Eng.,9,616-621,1996)。
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体は、UniBody(登録商標)の形態で提供することができる。UniBody(登録商標)は、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体である(GenMab Utrecht,The Netherlandsを参照;また、例えばUS20090226421も参照)。この独自の抗体技術は、現状の小型抗体形式よりも長い予測治療ウインドウを有する、より小型の安定した抗体形式を創出する。IgG4抗体は不活性であると考えられ、したがって免疫システムと相互作用しない。完全ヒトIgG4抗体は、抗体のヒンジ領域を除去することによって修飾することができ、これにより、対応するインタクトなIgG4に対し異なる安定性特性を有する半分子フラグメントが得られる(GenMab,Utrecht)。IgG4分子を有することで、UniBody(登録商標)上には同族抗原(例えば、疾患標的)に結合することができるエリアが1つしか残らないため、UniBody(登録商標)は、標的細胞上の1つの部位のみに1価で結合する。
ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、VHHまたはsdAbの形態をとることができる。元来、VHHまたはsdAb技術は、ラクダ科(例えば、ラクダ及びリャマ)が、重鎖のみからなり軽鎖を欠いた完全に機能的な抗体を所持することが発見及び特定されてから開発された。このような重鎖のみの抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)と2つの定常ドメイン(CH2、CH3)とを含む。クローニングし単離した単一の可変ドメインは、完全な抗原結合能力を有し、非常に安定している。これらの単一の可変ドメインが、その独特の構造的及び機能的特性によって「VHHまたはsdAb」の基盤を形成する。VHHまたはsdAbは、単一の遺伝子によってコードされ、ほぼ全ての原核生物及び真核生物の宿主内で、例えば、E.coli(例えば、米国特許第6,765,087号を参照)、カビ(例えば、AspergillusまたはTrichoderma)、及び酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、Hansenula、またはPichia)(例えば、米国特許第6,838,254号)内で効率的に産生される。産生プロセスはスケーラブルであり、数キログラムの量のVHHまたはsdAbが産生されている。VHHまたはsdAbは、貯蔵寿命の長い、すぐに使用可能な溶液として製剤化することができる。VHH法またはsdAb法(例えば、WO06/079372を参照)は、所望の標的に対するVHHまたはsdAbを生成するための独自の方法であり、B細胞の自動化高スループット選択に基づいている。VHHまたはsdAbは、ラクダ科特有の重鎖のみの抗体の単一ドメイン抗原結合フラグメントである。VHH抗体またはsdAbのサイズは、典型的にはおよそ15kDaと小さい。
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化されている。これはキメラ分子を意味し、キメラ分子は、概して、組換え技法を用いて調製され、非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有し、分子における残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/または配列に基づいている。抗原結合部位は、定常ドメインと融合した完全な可変ドメインか、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域にグラフトされたCDRのみを含み得る。エピトープ結合部位は、野生型であっても、1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい。これは、ヒト個体における免疫原としての定常領域を除去するが、外的な可変領域に対する免疫応答の可能性は残存する(LoBuglio,A.F.et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220-4224;Queen et al.,PNAS(1988)86:10029-10033;Riechmann et al.,Nature(1988)332:323-327)。本明細書で開示されている抗Fzd抗体をヒト化するための例示的な方法としては、米国特許第7,462,697号に記載の方法が挙げられる。
もう1つのアプローチは、ヒト由来定常領域の提供だけではなく可変領域の修飾にも着目して、できる限りヒトの形態に近づけて再整形するというものである。重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)を含むことが知られている。CDRは問題のエピトープに応答して変化し、結合能力を決定し、4つのフレームワーク領域(FR)と隣接している。FRは所与の種で比較的保存されており、CDRのためのスキャフォールディングを提供すると推定されている。非ヒト抗体が特定のエピトープに対し調製される場合、可変領域は、修飾を行うヒト抗体内に存在するFR上に非ヒト抗体に由来するCDRをグラフトすることにより、「再整形」または「ヒト化」することができる。様々な抗体に対するこのアプローチの適用は、以下文献によって報告されている:Sato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.,et al.,(1988)Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181-4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873;Carter,P.,et al.,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-4289;及びCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149-1154. いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体からの6つ全てのCDRを含むヒト化マウス抗体)。他の実施形態において、ヒト化抗体は、元の抗体に対し改変されている1つ以上(1、2、3、4、5、6つ)のCDRを有し、これは元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも称される。
ある特定の実施形態において、本開示の抗体はキメラ抗体であり得る。この点において、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fc部分と作用可能に結合した、または融合した、抗体の抗原結合フラグメントから構成されている。ある特定の実施形態において、異種Fcドメインはヒト起源のものである。他の実施形態において、異種Fcドメインは、患者抗体からの異なるIgクラスからのものであってもよく、異なるIgクラスにはIgA(サブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、ならびにIgMが含まれる。さらなる実施形態において、異種Fcドメインは、1つ以上の異なるIgクラスからのCH2及びCH3ドメインから構成されてもよい。ヒト化抗体について上記で述べられているように、キメラ抗体の抗原結合フラグメントは、本明細書で説明されている抗体のCDRのうちの1つ以上のみ(例えば、本明細書で説明されている抗体の1、2、3、4、5、または6つのCDR)を含む場合もあれば、全体の可変ドメイン(VL、VH、または両方)を含む場合もある。
Wntサロゲート
本開示は、ある特定の態様においては、1つ以上のFzd受容体と、LRP5及び/またはLRP6の一方または両方とに結合する、Wntサロゲート分子を提供する。Wntサロゲート分子は、「Wntサロゲート」または「Wntミメティック」とも呼ばれることがある。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のヒトFzd受容体と、ヒトLRP5及び/またはヒトLRP6の一方または両方とに結合する。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、Wntサロゲート分子と接触した細胞内のWntシグナリング事象を調節することができるかまたは調節する。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、例えばカノニカルWnt/β-カテニン経路を介して、Wntシグナリングを増加させる。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、ヒトWntシグナリング経路の生物学的活性を特異的に調節する。
本発明のWntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体ならびにLRP5及びLRP6のうちの1つ以上との結合において、そしてWntシグナリングの活性化において生物学的に活性であり、すなわち、Wntサロゲート分子はWntアゴニストである。「Wntアゴニスト活性」という用語は、Wntタンパク質におけるフリズルドタンパク質及び/またはLRP5もしくはLRP6に結合する効果または活性を模倣するアゴニストの能力を指す。本明細書で開示されているWntサロゲート分子及びその他のWntアゴニストにおけるWnt活性を模倣する能力は、複数のアッセイで確認することができる。Wntアゴニストは、典型的には、受容体の天然リガンドが開始する反応または活性と同様のまたは同じ反応または活性を開始する。詳細には、本明細書で開示されているWntアゴニストは、カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路を強化するまたは増加させる。本明細書で使用する場合、「強化する」という用語は、Wntアゴニスト(例えば、本明細書で開示されているWntサロゲート分子)不在下でのレベルに比べての、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルの測定可能な増加を指す。特定の実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルの増加は、(例えば、同じ細胞タイプの)Wntアゴニスト不在下でのWnt/β-カテニンシグナリングのレベルに比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍である。Wnt/β-カテニンシグナリングを測定する方法は、当技術分野において公知であり、本明細書で説明されている方法がこれに含まれる。
特定の実施形態において、本明細書で開示されているWntサロゲート分子は二重特異的であり、すなわち、2つ以上の異なるエピトープ(例えば、1つ以上のFzd受容体ならびにLRP5及び/またはLRP6)と特異的に結合する。
特定の実施形態において、本明細書で開示されているWntサロゲート分子は多価性であり、例えば、各々が同じエピトープと特異的に結合する2つ以上の領域(例えば、1つ以上のFzd受容体内のエピトープに結合する2つ以上の領域、ならびに/またはLRP5及び/もしくはLRP6内のエピトープに結合する2つ以上の領域)を含む。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体内のエピトープに結合する2つ以上の領域と、LRP5及び/またはLRP6内のエピトープに結合する2つ以上の領域とを含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体に結合する領域数:LRP5及び/またはLRP6に結合する領域数の比、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、2:3、2:5、2:7、7:2、5:2、3:2、3:4、3:5、3:7、3:8、8:3、7:3、5:3、4:3、4:5、4:7、4:9、9:4、7:4、5:4、6:7、7:6、1:2、1:3、1:4、1:5、または1:6を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は二重特異的かつ多価性である。
本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、様々な異なる構造形式または構成のいずれかを有することができる。Wntサロゲート分子は、ポリペプチド及び/または非ポリペプチド結合部分(例えば、小分子)を含むことができる。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、ポリペプチド領域及び非ポリペプチド結合部分の両方を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、単一のポリペプチドを有する場合もあれば、2つ以上、3つ以上、または4つ以上のポリペプチドを有する場合もある。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子の1つ以上のポリペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲートは2つの抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、一方は1つ以上のFzdに結合し、一方はLRP5及び/またはLRP6に結合する。ある特定の実施形態において、Wntサロゲートは、例えば、互いに連結もしくは結合した、または互いに融合した、1つ、2つ、3つ、または4つのポリペプチドを含む。
Wntサロゲート分子が単一のポリペプチドを含む場合、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd結合ドメインと1つ以上のLRP5/6結合ドメインとを含む融合タンパク質であり得る。この結合ドメインは、直接融合しても、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー(限定されるものではないが、本明細書で開示されている任意のものが含まれる))を介して接続してもよい。
Wntサロゲート分子が2つ以上のポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)及び/または非共有結合的相互作用を介して結合してもよい。例えば、ヒト免疫グロブリンIgGの重鎖は、そのCH3ドメインのレベルでは直接相互作用し、そのCH2ドメインのレベルでは、DEターンのアスパラギン(Asn)N84.4に付着した炭水化物を介して相互作用する。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、抗体またはその抗原結合フラグメントに由来する1つ以上の領域、例えば、抗体重鎖もしくは抗体軽鎖またはそのフラグメントを含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲートポリペプチドは、1つ以上のジスルフィド結合を介して共に結合した2つの重鎖領域(例えば、ヒンジ領域)を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲートポリペプチドは、1つ以上のジスルフィド結合を介して共に結合した抗体軽鎖領域(例えば、CL領域)及び抗体重鎖領域(例えば、CH1領域)を含む。
Wntサロゲートポリペプチドは、2つのポリペプチド間の結合を容易にするように操作されてもよい。例えば、ノブズ・イントゥ・ホールズアミノ酸修飾を2つの異なるポリペプチドに導入してそれらの結合を容易にすることができる。ノブズ・イントゥ・ホールズアミノ酸(AA)変化は、抗体操作において開発された合理的な設計戦略であり、二重特異的IgG抗体の産生において重鎖のヘテロ2量体化に使用される。第1の抗体の重鎖のCH3にノブを作成し、第2の抗体の重鎖のCH3にホールを作成するために、AA変化が操作される。ノブは、AAの「非常に大きい」IMGTボリュームクラスに属するチロシン(Y)によって代表され得、ホールは、「小さい」IMGTボリュームクラスに属するトレオニン(T)によって代表され得る。ポリペプチドに修飾を導入してその結合を容易にするその他の方法は、当技術分野において公知かつ利用可能である。例えば、分子間ジスルフィド結合を形成するためのシステインのように、特定のアミノ酸を導入し架橋のために使用することができる。
Wntサロゲート分子は、様々な異なる構造形式を有することができ、限定されるものではないが、図1に示されるものがこれに含まれる。
1つの実施形態において、Wntサロゲート分子は、VHHもしくはsdAbまたはその抗原結合フラグメントと融合したscFvまたはその抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、scFvは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、VHHまたはsdAbは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、scFvは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合し、VHHまたはsdAbは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する。特定の実施形態において、scFvまたはその抗原結合フラグメントは、VHHもしくはsdAbまたはその抗原結合フラグメントと直接融合し、他の実施形態においては、2つの結合領域はリンカー部分を介して融合している。特定の実施形態において、VHHまたはsdAbはscFvのN末端と融合し、他の実施形態においては、VHHまたはsdAbはscFvのC末端と融合している。特定の実施形態において、scFvは本明細書で説明されているか、または本明細書で説明されている任意のCDRセットを含む。特定の実施形態において、VHHまたはsdAbは本明細書で説明されているか、または本明細書で開示されている任意のCDRセットを含む。
様々な実施形態(限定されるものではないが、図1Aに示されているものを含む)において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFabまたはその抗原結合フラグメントと、1つ以上のVHHもしくはsdAbまたはその抗原結合フラグメント(あるいは代替的に、1つ以上のscFvまたはその抗原結合フラグメント)とを含む。ある特定の実施形態において、Fabは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、VHHもしくはsdAb(またはscFv)は、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、Fabは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合し、VHHもしくはsdAb(またはscFv)は、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、VHHもしくはsdAb(またはscFv)はFabのN末端と融合し、いくつかの実施形態においては、VHHもしくはsdAb(またはscF)はFabのC末端と融合している。特定の実施形態において、Fabは全IgG形式で存在し、VHHもしくはsdAb(またはscFv)は、IgG軽鎖のN末端及び/またはC末端と融合している。特定の実施形態において、Fabは全IgG形式で存在し、VHHもしくはsdAb(またはscFv)は、IgG重鎖のN末端及び/またはC末端と融合している。特定の実施形態において、2つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)は、これらの位置の任意の組合せにおいてIgGと融合している。
Fabは、Fab及びFcフラグメント両方を含む全IgG形式に変換することができ、例えば、遺伝子操作を用いて、Fc領域と融合したFabを含む融合ポリペプチドを生成することができる(すなわち、Fabは全IgG形式で存在する)。全IgG形式におけるFc領域は、限定されるものではないが、野生型もしくは修飾IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、もしくはその他のアイソタイプ、例えば、野生型もしくは修飾ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgG4Pro(IgG4半分子の形成を防止するコアヒンジ領域の変異を含む)、ヒトIgA、ヒトIgE、ヒトIgM、またはIgG1 LALAPGと呼ばれる修飾IgG1を含めた、様々な異なるFcのいずれかに由来することができる。L235A、P329G(LALA-PG)バリアントは、補体結合及び固定を除去することに加えて、Fc-γ依存性の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を除去することがマウスIgG2a及びヒトIgG1の両方において示されている。このようなLALA-PG置換は、マウスと霊長類との間の「エフェクターレス」抗体フレームワークスキャフォールドにより生成された結果をより正確に翻訳することを可能にする。本明細書で開示されている任意のIgGにおける特定の実施形態において、IgGは、以下のアミノ酸置換:N297G、N297A、N297E、L234A、L235A、またはP236Gのうちの1つ以上を含む。
1つ以上のFzd受容体ならびにLRP5及び/またはLRP6の両方に対し2価性である、2価性かつ二重特異的なWntサロゲート分子の非限定的な例は、図1Aに図示された上部の4つの構造として示されており、VHHもしくはsdAbまたはscFvは白色で図示され、FabまたはIgGは黒色で図示されている。示されているように、VHHもしくはsdAb(またはscFv)は、両方の軽鎖のN末端、両方の重鎖のN末端、両方の軽鎖のC末端、または両方の重鎖のC末端と融合することができる。さらに、例えば、VHHもしくはsdAb(またはscFv)が、重鎖及び/もしくは軽鎖のN末端及びC末端両方、軽鎖及び重鎖のN末端、重鎖及び軽鎖のC末端、重鎖のN末端及び軽鎖のC末端、または重鎖のC末端及び軽鎖のN末端と融合し得ることも企図されている。他の関連する実施形態において、2つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)は、任意選択でリンカー部分を介して、共に融合してもよく、これらの位置の1つ以上においてFabまたはIgGと融合してもよい。関連する実施形態において、Wntサロゲート分子はヘテロIgG形式を有し、Fabは半抗体として存在し、1つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)は、FcのN末端、FabのN末端、FcのC末端、またはFabのC末端のうちの1つ以上と融合している。この形式における、二重特異的であるが各受容体に対し1価性であるバージョンは、図1Aの下部に図示されている。ある特定の実施形態において、Fabまたはその抗原結合フラグメント(またはIgG)は、VHHもしくはsdAb(またはscFv)またはその抗原結合フラグメントと直接融合し、他の実施形態においては、結合領域はリンカー部分を介して融合している。特定の実施形態において、Fabは本明細書で説明されているか、または本明細書で説明されている任意のCDRセットを含む。特定の実施形態において、VHHもしくはsdAbまたはscFvは本明細書で説明されているか、または本明細書で開示されている任意のCDRセットを含む。
様々な実施形態(限定されるものではないが、図1Bに示されているものを含む)において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体に結合する1つ以上のFabまたはその抗原結合フラグメントと、LRP5及び/またはLRP6に結合する1つ以上のFabまたはその抗原結合フラグメントとを含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体に結合する2つのFabもしくはその抗原結合フラグメント、ならびに/またはLRP5及び/もしくはLRP6に結合する2つのFabもしくはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態において、Fabのうちの1つ以上は全IgG形式で存在し、ある特定の実施形態においては、両方のFabは全IgG形式で存在する。ある特定の実施形態において、全IgG形式のFabは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、他方のFabは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、Fabは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、全IgG形式のFabは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、Fabは、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合し、全IgG形式のFabは、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する。ある特定の実施形態において、Fabは、任意選択でリンカーを介して、IgGのN末端(例えば、重鎖または軽鎖のN末端)と融合している。ある特定の実施形態において、Fabは、IgGの重鎖のN末端と融合し、軽鎖とは融合しない。特定の実施形態において、2つの重鎖は、直接またはリンカーを介して、共に融合してもよい。このような二重特異的であり両方の受容体に対し2価性である例は、図1Bの上部に示されている。他の関連する実施形態において、2つ以上のVHHまたはsdAbは、任意選択でリンカー部分を介して、共に融合してもよく、これらの位置の1つ以上においてFabまたはIgGと融合してもよい。関連する実施形態において、Wntサロゲート分子はヘテロIgG形式を有し、一方のFabは半抗体として存在し、他方のFabは、FcのN末端、FabのN末端、またはFcのC末端のうちの1つ以上と融合している。この形式における、二重特異的であるが各受容体に対し1価性であるバージョンは、図1Bの下部に図示されている。ある特定の実施形態において、Fabまたはその抗原結合フラグメントは、他方のFabもしくはIgGまたはその抗原結合フラグメントと直接融合し、他の実施形態においては、結合領域はリンカー部分を介して融合している。特定の実施形態において、2つのFabの一方または両方は、本明細書で説明されているか、または本明細書で説明されている任意のCDRセットを含む。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、PCT出願公開第WO2017/136820号で説明されている形式、例えば、タンデム型Fab(Fabs-in-tandem)IgG(FIT-IG)形式を有する(Shiyong Gong,Fang Ren,Danqing Wu,Xuan Wu & Chengbin Wu(2017))。また、FIT-IGは、“Fabs-in-tandem immunoglobulin is a novel and versatile bispecific design for engaging multiple therapeutic targets”mAbs,9:7,1118-1128,DOI:10.1080/19420862.2017.1345401に開示されている形式も含む。ある特定の実施形態において、FIT-IGは、2つの親モノクローナル抗体のDNA配列を2つまたは3つのコンストラクトに再編成し、哺乳類細胞でそれらを同時発現させることにより、2つの抗体の機能を1つの分子に集約する。FIT-IG形式及びコンストラクトの例は、PCT出願公開第WO2017/136820号の図1A及び1Bならびに図2A及び2Bに示されている。ある特定の実施形態において、FIT-IGは、Fc変異も、scFvエレメントも、リンカーまたはペプチドコネクターも必要としない。各アームのFabドメインは「タンデムに」働いて、親抗体の生物学的機能を保持する4つの活性かつ独立した抗原結合部位を有する、4価性二重特異的抗体を形成する。特定の実施形態において、WntサロゲートはFab及びIgGを含む。ある特定の実施形態において、Fab結合物質LCは、例えば、間に入る様々な長さのリンカーによって、IgGのHCと融合している。様々な実施形態において、Fab結合物質HCは、IgGのLCと融合していても融合していなくてもよい。この形式のバリエーションは、タンデム型Fab IgG(またはFIT-Ig)と呼ばれている。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は2つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)を含み、これには、1つ以上のFzd受容体に結合する少なくとも1つのVHHもしくはsdAb(またはscFv)と、LRP5及び/またはLRP6に結合する少なくとも1つのVHHもしくはsdAb(またはscFv)とが含まれる。ある特定の実施形態において、結合領域の一方はVHHまたはsdAbであり、他方はscFvである。2つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)を含むWntミメティック分子は、限定されるものではないが、図1Cに図示されたものを含めた様々な構成でフォーマットすることができる。ある特定の二重特異的2価性形式において、2つ以上のVHHもしくはsdAb(またはscFv)は、任意選択で1つ以上のリンカーを介して、タンデムに融合しているか、またはFcの2つの異なる端部と融合している。リンカーが存在する場合、VHHもしくはsdAb(またはscFv)と他方のVHHもしくはsdAb(またはscFv)との間で、あるいはVHHまたはsdAbとFcとの間で、リンカー及びその長さが同じであっても異なっていてもよい。例えば、ある特定の実施形態において、VHHまたはsdAbは、IgG重鎖のN末端及び/またはC末端と融合している。特定の実施形態において、2つ以上のVHHまたはsdAbは、これらの位置の任意の組合せにおいてIgGと融合している。この形式の2価性二重特異的Wntサロゲート分子の非限定的な例は、図1Cの上部の7つの構造として図示されており、第1のVHHまたはsdAbは白色で図示され、FcまたはIgGは黒色で図示され、第2のVHHまたはsdAbは薄い灰色で図示されている。様々な実施形態において、両方のVHHもしくはsdAbは、FcのN末端、FcのC末端と融合していてもよく、または1つ以上のVHHもしくはsdAbは、FcのN末端もしくはC末端の一方もしくは両方と融合していてもよい。関連する実施形態において、Wntサロゲート分子はヘテロIgG形式を有し、一方のVHHまたはsdAbは半抗体として存在し、他方は、FcのN末端またはFcのC末端と融合している。この形式における、二重特異的であるが各受容体に対し1価性であるバージョンは、図1Cの下部に図示されている。ある特定の実施形態において、VHHまたはsdAbは、他方のVHHまたはsdAbと直接融合し、他の実施形態においては、結合領域はリンカー部分を介して融合している。特定の実施形態において、VHHまたはsdAbは本明細書で説明されているか、または本明細書で説明されている任意のCDRセットを含む。様々な実施形態において、任意のこれらの形式は、1つ以上のVHHまたはsdAbの代わりに1つ以上のscFvを含むことができる。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子はダイアボディとしてフォーマットされる。図1Dに示されているように、Fzd及びLRPに対する結合物質は、ダイアボディ(またはDART)構成で共に結合してもよい。また、ダイアボディは1本鎖構成であってもよい。ダイアボディがFcと融合している場合、これは2価性二重特異的形式を創出する。Fcとの融合がなければ、これは1価性二重特異的形式となる。ある特定の実施形態において、ダイアボディは、小ペプチドリンカーによって接続した重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域とからなる、非共有結合的2量体scFvフラグメントである。別のダイアボディの形態は、2つのscFvフラグメントが共有結合的に互いに結合している1本鎖(Fv)2である。
論じられているように、Wntサロゲート分子は、様々な実施形態において、本明細書で開示されている1つ以上の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。したがって、特定の実施形態において、Wntサロゲートは2つのポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、LRP5/6に結合するNabまたはscFvと、1つ以上のWntに結合するNabまたはscFvとを含み、任意選択で、結合ドメインの一方はscFvであり他方はNabである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲートは3つのポリペプチドを含み、第1のポリペプチドは抗体重鎖を含み、第2のポリペプチドは抗体軽鎖を含み、抗体の重鎖及び軽鎖は、LRP5/6または1つ以上のFzdに結合し、第3のポリペプチドは、重鎖Fc領域と融合したVHHまたはsdAbを含み、VHHまたはsdAbは、LRP5/6または1つ以上のFzdのいずれかに結合する。他の実施形態において、Wntポリペプチドは、2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドを含めた4つのポリペプチドを含み、2つの重鎖及び2つの軽鎖は、LRP5/6または1つ以上のFzdに結合し、さらに、重鎖及び/または軽鎖のうちの1つ以上と融合した1つ以上のNabまたはscFvを含み、NabまたはscFvは、LRP5/6または1つ以上のFzdに結合する。別の例示的な実施形態において、Wntサロゲートは、LRP5/6または1つ以上のFzdのいずれかに結合する2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドを含めた少なくとも4つのポリペプチドを含み、Wntサロゲートはさらに、LRP5/6または1つ以上のFzdに結合するFabを含む。例えば、Fabは、各々が2つの重鎖ポリペプチドのうちの1つと融合した2つのポリペプチドと、各々が2つの軽鎖ポリペプチドのうちの1つと融合した2つのポリペプチドを含むことができ、またはFabは、2つの重鎖ポリペプチドのうちの1つと融合した2つのポリペプチドと、各々が重鎖ポリペプチドに融合した2つのポリペプチドのうちの1つに結合することで第2のFabを形成する、2つのさらなるポリペプチドとを含むことができる。他の構成も、本明細書で開示されているWntサロゲートの産生に使用することができる。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合するポリペプチドと融合または結合したFzd結合領域(例えば、抗Fzd抗体)またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態において、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合するポリペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、これは、本明細書で開示されている、または2017年12月19日に出願された代理人整理番号SRZN-004/00US、「Anti-Frizzled antibodies and Methods of Use」という表題の米国仮特許出願第62/607,877号(当該出願はその全体が参照により本明細書に援用される)で開示されている、抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、表1Aに示されている、1つ以上のFzd受容体に結合する例示的な抗体またはそのフラグメントのいずれかについて開示されている、3つの重鎖CDR及び/または3つの軽鎖CDRを含む。特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、表1Aに示されている、1つ以上のFzd受容体に結合する例示的な抗体またはそのフラグメントのいずれかについて開示されている、3つの重鎖CDR及び/または3つの軽鎖CDRを含み、これらのCDRは、合わせて1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、または付加)を含む。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、VHHもしくはsdAbであるか、またはVHHもしくはsdAbから誘導されたものであり、そのため表1Aは3つの重鎖CDRのみを含む。特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、表1Aに示されている3つのCDR HC配列またはバリアントを含み、これらのCDRは、合わせて1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのアミノ酸修飾を含む。特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、表1Bまたは配列番号1~65もしくは129~132に示されている1つ以上のFzd受容体に結合する任意の例示的な抗体またはそのフラグメント(あるいはいずれかの抗原結合フラグメントまたはバリアント)の重鎖フラグメント及び/または軽鎖フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインはFabであるか、またはFabから誘導されたものであり、そのため表1Bの重鎖はVH及びCH1配列を含むが、CH2またはCH3配列を含まない。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、VHHもしくはsdAbであるか、またはVHHもしくはsdAbから誘導されたものであり、そのため表1BはVHHドメインを含む。ある特定の実施形態において、Fzd結合領域は、1つ以上のFzd受容体との結合においてこれらの抗体のいずれかと競合するポリペプチド(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)である。
ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、例えば、少なくとも約1×10-4M、少なくとも約1×10-5M、少なくとも約1×10-6M、少なくとも約1×10-7M、少なくとも約1×10-8M、少なくとも約1×10-9M、または少なくとも約1×10-10MのKDの親和性でFzdに結合する任意の結合ドメインから選択することができる。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、高い親和性で、例えば、約1×10-7M未満、約1×10-8M未満、約1×10-9M未満、または約1×10-10M未満のKDで1つ以上のFzd受容体に結合する任意の結合ドメインから選択することができる。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、Wntサロゲート分子の文脈において、高い親和性で、例えば、約1×10-4M以下、約1×10-5M以下、約1×10-6M以下、約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、または少なくとも約1×10-10MのKDでFzdに結合する任意の結合ドメインから選択することができる。
好適なFzd結合ドメインとしては、限定されるものではないが、新規に設計されたFzd結合タンパク質、抗体由来の結合タンパク質(例えば、scFv、Fzbなど)、及び1つ以上のFzdタンパク質と特異的に結合する抗体の他の部分;VHHまたは単一ドメイン抗体由来の結合ドメイン;ノッチンベースの操作されたスキャフォールド;ノリン及びノリン由来の操作された結合フラグメント、天然のFzd結合ドメイン、などが挙げられる。Fzd結合ドメインは、所望される1つまたは複数のFzdタンパク質への結合を強化して、例えば、組織選択性をもたらすように、親和性選択的であり得る。
いくつかの実施形態において、Fzd結合ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の異なるフリズルドタンパク質、例えば、ヒトフリズルドタンパク質Fzd1、Fzd2、Fzd3、Fzd4、Fzd5、Fzd6、Fzd7、Fzd8、Fzd9、Fzd10のうちの1つ以上に結合する。いくつかの実施形態において、Fzd結合ドメインは、Fzd1、Fzd2、及びFzd7に結合する。いくつかの実施形態において、Fzd結合ドメインは、Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する。他の実施形態において、Fzd結合ドメインは、1つ以上の目的フリズルドタンパク質に対し選択的であり、例えば、1つ以上の所望のフリズルドタンパク質に対し、他のフリズルドタンパク質との対比で少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、またはそれ以上の特異性を有する。
ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、汎特異的フリズルド抗体OMP-18R5(バンチクツマブ(vantictumab))の6つのCDR領域を含む。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、汎特異的フリズルド抗体OMP-18R5(バンチクツマブ(vantictumab))の6つのCDR領域を含むscFvである。例えば、米国特許第8507442号を参照(参照により具体的に本明細書に援用される)。例えば、OMP-18R5のCDR配列は、GFTFSHYTLS(配列番号270)を含む重鎖CDR1、VISGDGSYTYYADSVKG(配列番号677)を含む重鎖CDR2、及びNFIKYVFAN(配列番号1033)を含む重鎖CDR3と、(ii)SGDKLGKKYAS(配列番号1152)またはSGDNIGSFYVH(配列番号1153)を含む軽鎖CDR1、EKDNRPSG(配列番号1200)またはDKSNRPSG(配列番号1201)を含む軽鎖CDR2、及びSSFAGNSLE(配列番号1435)またはQSYANTLSL(配列番号1436)を含む軽鎖CDR3と、を含む。特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、限定されるものではないが、scFv、ミニボディ、VHHまたは単一ドメイン抗体(sdAb)、及びこれらのCDR配列のいずれかを含む様々な抗体ミメティックを含めた抗体またはその誘導体である。ある特定の実施形態において、これらのCDR配列は、1つ以上のアミノ酸修飾を含む。
他の実施形態では、Fzd結合ドメインは、複数のフリズルド特異的抗体のいずれかからの可変領域配列、またはそのCDRを含み、このような抗体は当技術分野において公知であり、商業的に入手可能であり、または新規に生成することができる。任意のフリズルドポリペプチドは、免疫原として使用することができ、または抗体を開発するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。フリズルド結合ドメインの非限定的な例としては、Biolegendから入手可能な抗体、例えば、ヒトフリズルド4(CD344)に対し特異的なクローンCH3A4A7;ヒトFzd9(CD349)に対し特異的なクローンW3C4E11;Abcamから入手可能な抗体、例えば、Fzd7に対し特異的なab64636;ヒトFzd4に対し特異的なab83042;ヒトFzd7に対し特異的なab77379;ヒトFzd8に対し特異的なab75235;ヒトFzd9に対し特異的なab102956;などが挙げられる。その他の好適な抗体の例は、中でも米国特許出願第20140105917号、米国特許出願第20130230521号、米国特許出願第20080267955号、米国特許出願第20080038272号、米国特許出願第20030044409号などで説明されており、各々が参照により具体的に本明細書に援用される。
Wntサロゲート分子のFzd結合領域は、Wntタンパク質のフリズルド結合領域に対する構造的相同性によって選択される、操作されたタンパク質であり得る。このようなタンパク質は、相同性についての構造データベースをスクリーニングすることによって特定することができる。このようにして、最初のタンパク質(例えば、微生物のBh1478タンパク質)が特定される。次いで、ネイティブなタンパク質は親和性を増加させるアミノ酸置換をもたらすように操作され、さらに、所望のフリズルドタンパク質への結合における親和性及び選択性を増加させるために親和性成熟によって選択されてもよい。フリズルド結合部分の非限定的な例としては、Fz27及びFz27-B12タンパク質が挙げられる。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合するポリペプチドと融合したLRP5/6結合ドメイン(例えば、抗LRP5/6抗体)またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態において、LRP5/6と特異的に結合するポリペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、これは、2017年12月19日に出願された代理人整理番号SRZN-005/00US、「Anti-LR5/6 Antibodies and Methods of Use」という表題の米国仮特許出願第62/607,879号で開示されている、抗体またはその抗原結合フラグメントであり、当該出願はその全体が参照により本明細書に援用される。特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、表2Aに示されている、LRP5及び/またはLRP6に結合する例示的な抗体またはそのフラグメントのいずれかについて開示されている、3つの重鎖CDR及び/または3つの軽鎖CDRを含む。特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、表2Aに示されている、1つ以上のFzd受容体に結合する例示的な抗体またはそのフラグメントのいずれかについて開示されている、3つの重鎖CDR及び/または3つの軽鎖CDRを含み、これらのCDRは、合わせて1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、または付加)を含む。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、VHHもしくはsdAbであるか、またはVHHもしくはsdAbから誘導されたものであり、そのため表2Aは3つの重鎖CDRのみを含む。ある特定の実施形態においてLRP5/6結合ドメインは、表2Aに示されている3つの重鎖CDRまたはバリアントを含み、これらのCDRは、合わせて1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのアミノ酸修飾を含む。特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、表2Bまたは配列番号66~88もしくは133に示されているLRP5及び/またはLRP6に結合する任意の例示的な抗体またはそのフラグメント(あるいはいずれかの抗原結合フラグメントまたはバリアント)の重鎖フラグメント及び/または軽鎖フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインはFabであるか、またはFabから誘導されたものであり、そのため表2BはVH及びCH1配列を含むが、CH2またはCH3配列を含まない。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、VHHもしくはsdAbであるか、またはVHHもしくはsdAbから誘導されたものであり、そのため表2BはVHHドメインを含む。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合領域は、LRP5及び/またはLRP6との結合においてこれらの抗体のうちの1つと競合するポリペプチド(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)である。
ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、Wntサロゲート分子の文脈において、約1×10-4M以下、約1×10-5M以下、約1×10-6M以下、約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、または約1×10-10M以下のKDでLRP5またはLRP6に結合する任意の結合ドメインから選択することができる。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、Wntサロゲート分子の文脈において、約1×10-4M以上、約1×10-5M以上、約1×10-6M以上、約1×10-7M以上、約1×10-8M以上、約1×10-9M以上、または約1×10-10M以上のKDでLRP5またはLRP6に結合する任意の結合ドメインから選択することができる。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、高い親和性で、例えば、約1×10-7M未満、約1×10-8M未満、約1×10-9M未満、または約1×10-10M未満のKDでLRP5またはLRP6に結合する任意の結合ドメインから選択することができる。
その他の好適なLRP5/6結合ドメインとしては、限定されるものではないが、新規設計されたLRP5/6結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及び1つ以上のFzdタンパク質と特異的に結合する抗体の他の部分;VHHまたはsdAb由来の結合ドメイン;ノッチンベースの操作されたスキャフォールド;天然LRP5/6(限定されるものではないが、DKK1、DKK2、DKK3、DKK4、スクレロスチンを含む);Wise;上記のいずれかを含む融合タンパク質;上記のいずれかの誘導体;上記のいずれかのバリアント;ならびに上記のいずれかの生物学的活性フラグメントなどが挙げられる。LRP5/6結合ドメインは、結合を強化するように親和性選択的であり得る。
Dickkopf(DKK)遺伝子ファミリー(Krupnik et al.(1999)Gene 238(2):301-13を参照)のメンバーとしては、DKK-1、DKK-2、DKK-3、及びDKK-4、ならびにDKK-3関連タンパク質Soggy(Sgy)が挙げられる。hDKK1~4は、10個のシステイン残基の位置がファミリーメンバー間で高度に保存されている、2つの異なるシステインリッチドメインを含む。ヒトDkk遺伝子及びタンパク質の例示的な配列は公的に入手可能であり、例えば、Genbankアクセッション番号NM_014419(soggy-1);NM_014420(DKK4);AF177394(DKK-1);AF177395(DKK-2);NM_015881(DKK3);及びNM_014421(DKK2)がある。本発明のいくつかの実施形態において、Lrp6結合部分はDKK1ペプチドであり、限定されるものではないが、ヒトDKK1のC末端側ドメインがこれに含まれる。C末端側ドメインは、配列:KMYHTKGQEGSVCLRSSDCASGLCCARHFWSKICKPVLKEGQVCTKHRRKGSHGLEIFQRCYCGEGLSCRIQKDHHQASNSSRLHTCQRH(配列番号2190)(Genbankアクセッション番号NP_036374を参照)またはその生物学的活性フラグメントを含むことができる。
DKKタンパク質のLRP5/6との結合については、例えば、Brott and Sokol Mol.Cell.Biol.22(17),6100-6110(2002);及びLi et al.J.Biol.Chem.277(8),5977-5981(2002)で論じられており、各文献は参照により本明細書に明確に援用される。ヒトDKK2の対応領域(Genbank参照NP_055236)は、配列:KMSHIKGHEGDPCLRSSDCIEGFCCARHFWTKICKPVLHQGEVCTKQRKKGSHGLEIFQRCDCAKGLSCKVWKDATYSSKARLHVCQK(配列番号2191)またはその生物学的活性フラグメントを含むことができる。
LRP5またはLRP6と特異的に結合する抗体は当技術分野において公知であり、市販されており、または新規に生成することができる。LRP5、LRP6、またはそのフラグメントは、免疫原として使用することができ、または抗体を開発するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。公知の抗体の例としては、以下に限定されないが、Gong et al.(2010)PLoS One.5(9):e12682;Ettenberg et al.(2010)Proc Natl Acad Sci U S A.107(35):15473-8に記載の抗体;及び、例えば、Santa Cruz biotechnology抗体クローン1A12(ヒト起源の合成LRP5/6に対し生成したものであり、マウス及びヒト起源のLRP6及びLRP5の全長フラグメント及びタンパク質分解フラグメントの両方に結合する);モノクローナル抗体2B11;LRP5に特異的なCell Signaling Technology抗体(D80F2)、カタログ番号5731;などから商業的に入手可能なものが挙げられる。
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、2つ以上の結合領域を含む1つ以上のポリペプチドを含む。例えば、2つ以上の結合領域が、2つ以上のFzd結合領域または2つ以上のLRP5/6結合領域であってもよく、または1つ以上のFzd結合領域及び1つ以上のLRP5/6結合領域を含んでもよい。結合領域は、直接連結しても隣接してもよく、またはリンカー(例えば、ポリペプチドリンカーもしくは非ペプチドリンカーなど)によって分離されてもよい。リンカーの長さ、すなわち結合ドメイン間の間隔は、シグナル強度を調節するために使用することができ、またWntサロゲート分子の所望される使用に応じて選択することができる。結合ドメイン間の強制的距離は様々であり得るが、ある特定の実施形態では、約100オングストローム未満、約90オングストローム未満、約80オングストローム未満、約70オングストローム未満、約60オングストローム未満、約50オングストローム未満とすることができる。いくつかの実施形態において、リンカーはリジッドリンカーであり、他の実施形態において、リンカーはフレキシブルリンカーである。ある特定の実施形態において、リンカーがペプチドリンカーである場合、リンカーは、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸またはそれ以上であり得、結合ドメイン間の距離を強化するのに十分な長さ及びアミノ酸組成である。いくつかの実施形態において、リンカーは、1つ以上のグリシン及び/またはセリン残基を含むか、またはそれらからなる。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、配列番号89~128もしくは134~157のいずれかに開示されているポリペプチド配列に対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する、または配列番号89~128もしくは134~157のいずれかに開示されているポリペプチド配列の抗原結合フラグメントに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する、ポリペプチド配列を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、配列番号89~128もしくは134~157のいずれかに記載のポリペプチド配列またはその抗原結合フラグメントを含むか、またはそれからなる。特定の実施形態において、抗原結合フラグメントは、1つ以上のFzd受容体に結合し、さらにLRP5及び/またはLRP6にも結合する。
Wntサロゲート分子は、例えば、Fcドメインを介し、連鎖、コイルドコイル、ポリペプチドジッパー、ビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン多量体化などにより、多量体化することができる。また、Wntサロゲート分子は、当技術分野で公知のようにPEG、Fcなどのような部分に連結させてin vivoで安定性を強化することもできる。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、1つ以上のFzdタンパク質及びLRP5/6に結合することにより、詳細には、細胞表面上、例えば、ヒト細胞の表面上のこれらのタンパク質に結合することにより、カノニカルWntシグナリングを直接活性化する。Wntサロゲート分子によるWntシグナリングの直接活性化は、ネイティブWntタンパク質が存在する場合のみ活性を強化するWntシグナリング増強とは対照的である。
Wntサロゲート分子は、例えば、フリズルドタンパク質に結合するWntタンパク質の効果または活性を模倣することにより、Wntシグナリングを活性化することができる。本発明のWntサロゲート分子がWntの活性を模倣する能力は、複数のアッセイで確認することができる。Wntサロゲート分子は、典型的には、受容体の天然リガンドが開始する反応または活性と同様のまたは同じ反応または活性を開始する。詳細には、本発明のWntサロゲート分子は、カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路を強化する。本明細書で使用する場合、「強化する」という用語は、本発明のWntサロゲート分子の不在下でのレベルと比べての、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルの測定可能な増加を指す。
Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを測定するための様々な方法が当技術分野において公知である。このような方法としては、以下に限定されないが、Wnt/β-カテニン標的遺伝子発現、TCFレポーター遺伝子発現、β-カテニン安定化、LRPリン酸化、アキシンの細胞質から細胞膜への転座及びLRPへの結合を測定するアッセイが挙げられる。カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路は、最終的には、転写因子TCF7、TCF7L1、TCF7L2(別名TCF4)、及びLEFを介して遺伝子発現の変化をもたらす。Wnt活性化への転写応答は、複数の細胞及び組織で特性が明らかにされている。そのため、当技術分野で周知の方法による全般的な転写プロファイリングは、Wnt/β-カテニンシグナリングの活性化または阻害の評価に使用することができる。
Wnt応答性遺伝子発現の変化は、概して、TCF及びLEF転写因子によって媒介される。TCFレポーターアッセイは、TCF/LEF制御遺伝子の転写の変化を評価して、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを決定する。TCFレポーターアッセイは、最初にKorinek,V.et al.,1997によって説明された。TOP/FOPの別名でも知られているこの方法は、最適なTCFモチーフCCTTTGATCの3つのコピーまたは変異モチーフCCTTTGGCCの3つのコピーを、ルシフェラーゼ発現を推進する最小限のc-Fosプロモーターの上流に使用して(それぞれpTOPFl_ASH及びpFOPFl_ASH)、内在性p-カテニン/TCF4のトランス活性化活性を決定することを伴う。この2つのレポーター活性(TOP/FOP)の比率が高いほどβ-カテニン/TCF4活性が高いことを示し、この2つのレポーター活性が低いほどβ-カテニン/TCF4活性が低いことを示す。
Wntシグナルに応答する様々な他のレポーター導入遺伝子がインタクトな状態で動物内に存在し、そのため、内在性Wntシグナリングを有効に反映する。このようなレポーターは、LacZまたはGFPの発現を推進する多量体化されたTCF結合部位に基づいており、当技術分野で公知の方法により容易に検出可能である。このようなレポーター遺伝子としては、TOP-GAL、BAT-GAL、ins-TOPEGFP、ins-TOPGAL、LEF-EGFP、アキシン2-LacZ、アキシン2-d2EGFP、Lgr5tm1(cre/ERT2)、TOPdGFPが挙げられる。
脱リン酸化β-カテニンの膜への動員、β-カテニンの安定化及びリン酸化状態、ならびにβ-カテニンの核への転座(Klapholz-Brown Z et al.,PLoS One.2(9)e945,2007)、は、いくつかの場合にはTCF転写因子及びTNIKとの複合体形成により媒介され、Wntシグナリング経路における重要なステップである。安定化は、「破壊」複合体を阻害するディシブルドファミリータンパク質により媒介され、その結果、細胞内β-カテニンの分解が低減され、その後にβ-カテニンの核への転座が行われる。そのため、細胞内でのβ-カテニンのレベル及び位置の測定は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを良好に反映するものである。このようなアッセイの非限定的な一例は、「BioImage β-Catenin Redistribution Assay」(Thermo Scientific)であり、これは、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のC末端に融合したヒトβ-カテニンを安定的に発現する組換えU20S細胞を提供する。イメージング及び解析は、EGFP-β-カテニンのレベル及び分布の可視化を可能にする蛍光顕微鏡またはHCSプラットフォームを用いて実施される。
破壊複合体を阻害するもう1つの方法は、アキシンをWnt共受容体LRPの細胞質側末端に動員することによるアキシン除去による方法である。アキシンは、リン酸化形態のLRPテールと優先的に結合することが示されている。そのため、アキシン転座の可視化(例えば、GFP-アキシン融合タンパク質を用いて)は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを評価するためのもう1つの方法である。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、上記のアッセイで、例えば、TOPFlashアッセイで測定した場合に、カノニカルWntシグナリング(例えば、β-カテニンシグナリング)を、中性物質または陰性対照により誘発されるβ-カテニンシグナリングと比べて少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、150%、200%、250%、300%、400%、または500%強化するまたは増加させる。このようなアッセイでは陰性対照が含まれ得る。特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、上記のアッセイ、例えば、TOPFlashアッセイ、または本明細書で言及されている他のアッセイのいずれかで測定したときに、β-カテニンシグナリングを、Wntサロゲート分子の不在下での活性と比べて2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10000倍、またはそれ以上強化することができる。
「Wnt遺伝子産物」または「Wntポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ネイティブ配列Wntポリペプチド、Wntポリペプチドバリアント、Wntポリペプチド断片、及びキメラWntポリペプチドを包含する。特定の実施形態において、Wntポリペプチドは、ネイティブヒト全長成熟Wntタンパク質である。
例えば、本出願における目的ヒトネイティブ配列Wntタンパク質としては、以下のものが挙げられる:Wnt-1(GenBankアクセッションNo.NM_005430);Wnt-2(GenBankアクセッションNo.NM_003391);Wnt-2B(Wnt-13)(GenBankアクセッションNo.NM_004185(アイソフォーム1)、NM_024494.2(アイソフォーム2))、Wnt-3(RefSeq.:NM_030753)、Wnt3a(GenBankアクセッションNo.NM_033131)、Wnt-4(GenBankアクセッションNo.NM_030761)、Wnt-5A(GenBankアクセッションNo.NM_003392)、Wnt-5B(GenBankアクセッションNo.NM_032642)、Wnt-6(GenBankアクセッションNo.NM_006522)、Wnt-7A(GenBankアクセッションNo.NM_004625)、Wnt-7B(GenBankアクセッションNo.NM_058238)、Wnt-8A(GenBankアクセッションNo.NM_058244)、Wnt-8B(GenBankアクセッションNo.NM_003393)、Wnt-9A(Wnt-14)(GenBankアクセッションNo.NM_003395)、Wnt-9B(Wnt-15)(GenBankアクセッションNo.NM_003396)、Wnt-10A(GenBankアクセッションNo.NM_025216)、Wnt-10B(GenBankアクセッションNo.NM_003394)、Wnt-11(GenBankアクセッションNo.NM_004626)、Wnt-16(GenBankアクセッションNo.NM_016087))。各メンバーは、当該ファミリーに対し様々な程度の配列同一性を有するが、全てが、小さい(すなわち、39~46kD)、アシル化され、パルミトイル化され、スペーシングが高度に保存された23~24個のシステイン保存残基を含む、分泌糖タンパク質をコードする(McMahon,A P et al.,Trends Genet.1992;8:236-242;Miller,JR.Genome Biol.2002;3(1):3001.1-3001.15)。目的Wntポリペプチドの他のネイティブ配列としては、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、実験用、またはペット用動物を含めた任意の哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、虫などからの上記のオルソログが挙げられる。
「Wnt経路シグナリング」または「Wntシグナリング」は、生物学的活性Wntが、細胞の活性を調節するために細胞に対しその効果を発揮する機構を指すように本明細書で使用されている。Wntタンパク質は、フリズルド(Fzd)ファミリータンパク質からのタンパク質、RORファミリータンパク質からのタンパク質、LRPファミリータンパク質からのタンパク質LRP5、LRP6、タンパク質FRL1/crypto、及びタンパク質Derailed/Rykを含めたWnt受容体に結合することにより、細胞活性を調節する。Wnt受容体(1つまたは複数)は、ひとたびWnt結合により活性化されると、1つ以上の細胞内シグナリングカスケードを活性化する。このようなシグナリングカスケードは、カノニカルWntシグナリング経路;Wnt/平面内細胞極性(Wnt/PCP)経路;Wnt-カルシウム(Wnt/Ca2+)経路(Giles,RH et al.(2003) Biochim Biophys Acta 1653,1-24;Peifer,M.et al.(1994) Development 120:369-380;Papkoff,J.et al(1996) Mol.Cell Biol.16:2128-2134;Veeman,M.T.et al.(2003) Dev.Cell 5:367-377);及び当技術分野で周知されているような他のWntシグナリング経路を含む。
例えば、カノニカルWntシグナリング経路が活性化された結果、細胞内タンパク質β-カテニンのリン酸化が阻害され、β-カテニンのサイトゾル中での蓄積とその後の核への転座とにつながり、核においてβ-カテニンは転写因子(例えば、TCF/LEF)と相互作用して、標的遺伝子を活性化する。Wnt/PCP経路の活性化により、RhoA、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、及びネモ様キナーゼ(NLK)シグナリングカスケードが活性化されて、組織極性及び細胞運動のような生物学的プロセスをコントロールする。例えば、Wnt-4、Wnt-5A、またはWnt-11の結合によるWnt/Ca2+の活性化は、カルシウムイオンの細胞内放出を誘発し、それによりタンパク質キナーゼC(PKC)、カルシウム-カルモジュリン依存性キナーゼII(CamKII)、またはカルシニューリン(CaCN)のようなカルシウム感受性酵素が活性化される。上記のシグナリング経路の活性をアッセイすることにより、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート分子)の生物学的活性を容易に決定することができる。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子の機能的特性は、当業者に知られている様々な方法を用いて評価することができ、このような方法としては、例えば、親和性/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴法、競合阻害アッセイ)、細胞傷害性アッセイ、細胞生存能アッセイ、in vitroまたはin vivoモデル(限定されるものではないが、本明細書で説明されている任意のものを含む)を用いたWnt、癌細胞、及び/または腫瘍成長阻害に応答した細胞の増殖または分化アッセイが挙げられる。本明細書に記載のWntサロゲート分子は、Fzd受容体内在化に及ぼす効果、in vitro及びin vivoの有効性などについても試験され得る。このようなアッセイは、当業者に知られている十分に確立したプロトコル(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY);Current Protocols in Immunology(編集:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NYを参照)、または市販のキットを用いて実施することができる。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子のFzd結合領域(例えば、抗Fzd抗体の抗原結合フラグメント)は、本明細書で説明されている抗Fzd抗体のCDRのうちの1つ以上を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子のLRP5/6結合領域(例えば、抗LRP5/6抗体の抗原結合フラグメント)は、本明細書で説明されている抗LRP5/6抗体のCDRのうちの1つ以上を含む。この点において、場合により、所望の特異的結合を保持しながら抗体のVHCDR3のみの移行を実施できることが示されている(Barbas et al.,PNAS(1995)92:2529-2533)。また、McLane et al.,PNAS(1995)92:5214-5218,Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.(1994)116:2161-2162も参照。
また、本明細書では、Fzd受容体に対し特異的な抗体または抗原結合ドメインを得るための方法であって、本明細書で示されるVHドメインまたは当該VHドメインのアミノ酸配列バリアントであるVHドメインのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換、または挿入によって提供することと、任意選択で、このようにして提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組み合わせることと、VHドメインまたはVH/VL組合せ(1つまたは複数)を試験して、1つ以上のFzd受容体に対し特異的な、及び任意選択で1つ以上の所望の特性を有する、抗体抗原結合ドメインの特異的結合メンバーを特定することとを含む、方法が開示されている。VLドメインは、実質的に本明細書で示されているアミノ酸配列を有することができる。本明細書で開示されているVLドメインの1つ以上の配列バリアントが1つ以上のVHドメインと組み合わされる、類似の方法が用いられてもよい。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は水溶性である。「水溶性」とは、界面活性剤の不在下で水性緩衝液に可溶であり、ポリペプチドの生物学的有効用量をもたらす濃度で通常可溶である組成物を意味する。水溶性である組成物は、実質的に均質な組成物を形成し、その比活性は、精製の元となる出発材料の少なくとも約5%、通例的には出発材料の少なくとも約10%、20%、または30%、より通例的には出発材料の約40%、50%、または60%であり、約50%、約90%、またはそれ以上の場合もある。本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、典型的には、少なくとも25μM以上の濃度、例えば、少なくとも25μM、40μM、または50μM、通例的には少なくとも60μM、70μM、80μM、または90μM、時として100μM、120μM、または150μMもの濃度の、実質的に均質な水溶液を形成する。言い換えれば、本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、典型的には、約0.1mg/ml、約0.5mg/ml、約1mg/mlまたはそれ以上の濃度の、実質的に均質な水溶液を形成する。
抗体またはその抗原結合フラグメントに「特異的に結合する」または「優先的に結合する」(本明細書では交換可能に使用される)抗原またはエピトープは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を決定する方法も当技術分野で周知されている。ある分子(例えば、Wntサロゲート分子)が、代替的な細胞または物質よりも高頻度に、迅速に、長い持続期間で、及び/または高い親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合する場合、その分子は「特異的な結合」または「優先的な結合」を示すものとされる。分子またはその結合領域(例えば、Wntサロゲート分子またはその結合領域)が、標的抗原(例えば、Fzd受容体)と「特異的に結合する」または「優先的に結合する」のは、その抗体が、他の物質に対するよりも大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で結合する場合である。例えば、Fzd1受容体と特異的または優先的に結合するWntサロゲート分子またはその結合領域は、他のFzd受容体または非Fzdタンパク質に対するよりも大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で、Fzd1受容体に結合する抗体である。また、この定義を読み取ることにより、例えば、第1の標的と特異的または優先的に結合するWntサロゲート分子またはその結合領域は、第2の標的と特異的または優先的に結合する場合もあれば結合しない場合もあることも理解される。そのため、「特異的な結合」または「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を必要とするわけではない(ただし、これを含むことはできる)。概して、ただし必ずではないが、結合に対する言及は優先的な結合を意味する。
いくつかの実施形態において、Wntサロゲート分子の1つ以上のFzd結合領域のいずれかは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の異なるフリズルドタンパク質、例えば、ヒトフリズルドタンパク質Fzd1、Fzd2、Fzd3、Fzd4、Fzd5、Fzd6、Fzd7、Fzd8、Fzd9、Fzd10のうちの1つ以上に結合する。いくつかの実施形態において、任意のFzd結合領域は、Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する。様々な実施形態において、任意のFzd結合領域は、(i)Fzd1、Fzd2、Fzd7、及びFzd9;(ii)Fzd1、Fzd2、及びFzd7;(iii)Fzd5及びFzd8;(iv)Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(v)Fzd1、Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(vi)Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(vii)Fzd4及びFzd9;(viii)Fzd9及びFzd10;(ix)Fzd5、Fzd8、及びFzd10;(x)Fzd4、Fzd5、及びFzd8;Fzd1、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する。いくつかの実施形態において、Fzd結合領域は、1つ以上の目的Fzdタンパク質に対し選択的であり、例えば、1つ以上の所望のFzdタンパク質に対し、他のFzdタンパク質との対比で少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、またはそれ以上の特異性を有する。いくつかの実施形態において、Wntサロゲート分子の1つ以上のFzd結合領域のいずれかは単一特異的であり、Fzd1、Fzd2、Fzd3、Fzd4、Fzd5、Fzd6、Fzd7、Fzd8、Fzd9、またはFzd10のうちの1つのみと特異的に結合する。
いくつかの実施形態において、Wntサロゲート分子の1つ以上のLRP5/6結合領域のいずれかは、LRP5/6の一方または両方に結合する。便宜上、「LRP5/6」という用語は、LRP5及び/またはLRP6のいずれかまたは両方を総称して指すために使用される。
免疫学的結合とは、概して、免疫グロブリン分子とその免疫グロブリン分子が特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有結合的な相互作用を指し、例えば、限定ではなく例示として、静電気的、イオン的、親水的及び/または疎水的な引力または反発、立体的な力、水素結合、ファンデルワールス力、及びその他の相互作用が挙げられる。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)の観点で表現することができ、Kdが小さいほど親和性が大きいことを表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を用いて定量化することができる。1つのこのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度を測定することを伴い、このような速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何的パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)及び「オフ速度定数」(Koff)の両方は、濃度の計算ならびに会合及び解離の実際の速度によって決定することができる。Koff/Konの比は、親和性に関係しない全てのパラメーターの解除を可能にし、したがって解離定数Kdに等しい。全般的には、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem.59:439-473を参照。
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているWntサロゲート分子またはその結合領域は、1つ以上のFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体に対し、約10,000未満、約1000未満、約100未満、約10未満、約1未満、または約0.1nMの親和性を有し、いくつかの実施形態においては、抗体はさらに高い親和性を有し得る。
免疫グロブリンの定常領域は、可変領域よりも少ない配列多様性を示し、複数の天然タンパク質に結合して重要な生化学的事象を誘発する役目を果たしている。ヒトにおいては、5つの異なる抗体クラスが存在し、これにはIgA(サブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、ならびにIgMが含まれる。これらの抗体クラスを区別する特徴は定常領域であるが、V領域内によりわずかな相違が存在することがある。
抗体のFc領域は、複数のFc受容体及びリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる多数の重要な機能的能力を付与する。IgGの場合、Fc領域はIgドメインCH2及びCH3を含み、N末端側ヒンジはCH2につながっている。IgGクラスにおけるFc受容体の重要なファミリーは、Fcガンマ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫システムの細胞アームとの間の情報交換を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。ヒトにおいては、このタンパク質ファミリーは、FcγRI(CD64)(アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、及びFcγRIcを含む);FcγRII(CD32)(アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1及びFcγRIIb-2を含む)、ならびにFcγRIIcを含む);ならびにFcγRIII(CD16)(アイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びF158を含む)ならびにFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1及びFcγRIIIb-NA2を含む)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。これらの受容体は、典型的には、Fcとの結合を媒介する細胞外ドメインと、膜貫通領域と、細胞内の何らかのシグナリング事象を媒介し得る細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞を含めた様々な免疫細胞内で発現する。Fc/FcγR複合体の形成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原部位に動員し、典型的には、細胞内のシグナリング事象及び後に続く重要な免疫応答、例えば、炎症メディエーターの放出、B細胞活性化、エンドサイトーシス、食作用、及び細胞傷害性攻撃をもたらす。
細胞傷害性及び食作用性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊する有力な機構である。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739-766;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)と呼ばれる。全てのFcγRは、Cg2(CH2)ドメインのN末端及びすぐ前のヒンジでFc上の同じ領域に結合する。この相互作用は、構造的に十分に特徴づけられており(Sondermann et al.,2001,J Mol Biol 309:737-749)、ヒトFcγRIIIbの細胞外ドメインに結合したヒトFcのいくつかの構造が解明されている(pdbアクセッションコード1E4K)(Sondermann et al.,2000,Nature 406:267-273)(pdbアクセッションコード1IIS及び1IIX)(Radaev et al.,2001,J Biol Chem 276:16469-16477)。
異なるIgGサブクラスはFcγRに対する異なる親和性を有し、典型的に、IgG1及びIgG3は、IgG2及びIgG4よりも実質的に良好に受容体に結合する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。全てのFcγRは、IgG Fc上の同じ領域に、ただし異なる親和性で結合し、高親和性結合物質FcγRIはIgG1に対し10-8M-1のKDを有し、低親和性受容体FcγRII及びFcγRIIIは概してそれぞれ10-6及び10-5で結合する。FcγRIIIa及びFcγRIIIbの細胞外ドメインは96%同一であるが、FcγRIIIbは細胞内シグナリングドメインを有しない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、及びFcγRIIIaが、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することを特徴とする、正の制御物質であるのに対し、FcγRIIbは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフを有し、そのため阻害性である。したがって、前者は活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは阻害性受容体と呼ばれる。これらの受容体は、異なる免疫細胞上での発現のパターン及びレベルも異なる。また別のレベルの複雑性は、ヒトプロテオームにおける複数のFcγR多形の存在である。特に臨床的重要性に関連する多形は、V158/F158 FcγRIIIaである。ヒトIgG1は、F158アロタイプに対するよりも高い親和性でV158アロタイプと結合する。この親和性の違い、ならびに推定されるADCC及び/またはADCPに及ぼすその効果の違いは、抗CD20抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC Pharmaceuticals Corporationの登録商標)における有効性の重要な決定因子であることが示されている。V158アロタイプを有する対象は、リツキシマブの治療に好都合に応答するが、低親和性F158アロタイプを有する対象は十分に応答しない(Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。ヒトのおよそ10~20%がV158/V158ホモ接合性であり、45%がV158/F158ヘテロ接合性であり、ヒトの35~45%がF158/F158ホモ接合性である(Lehrnbecher et al.,1999,Blood 94:4220-4232;Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。したがって、ヒトの80~90%はプアレスポンダーであり、すなわち、少なくとも1つのF158 FcγRIIIaアレルを有する。
Fc領域は、補体カスケードの活性化にも関与する。古典的な補体経路では、C1はそのC1qサブユニットによって、抗原(1つまたは複数)と複合体を形成したIgGまたはIgMのFcフラグメントに結合する。本発明のある特定の実施形態において、Fc領域に対する修飾は、本明細書で説明されているFzd特異的抗体の能力を改変(強化または減少)して、補体システムを活性化する(例えば、米国特許第7,740,847号を参照)。補体活性化を評価するために、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996)を参照)。
したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、機能的特性の改変(例えば、CDC、ADCC、もしくはADCP活性の低減もしくは強化、または特定のFcγRに対する結合親和性の強化、または血清半減期の増加)を伴った修飾Fc領域を有する抗Fzd抗体を提供する。本明細書で企図されているその他の修飾Fc領域は、例えば、発行済みの米国特許第7,317,091号、第7,657,380号、第7,662,925号、第6,538,124号、第6,528,624号、第7,297,775号、第7,364,731号、公開された米国出願US2009092599、US20080131435、US20080138344、及び公開された国際出願WO2006/105338号、WO2004/063351、WO2006/088494、WO2007/024249で説明されている。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合した所望の結合特異性を有する抗体可変ドメインを含む。ある特定の実施形態において、融合物は、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含むIg重鎖定常ドメインとの融合物である。特定の実施形態において、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物の少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物及び(所望の場合)免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入し、好適な宿主細胞に同時形質移入する。このことにより、等しくない比率の3つのポリペプチド鎖を構築に使用することで所望の二重特異的抗体の最適な収率がもたらされる実施形態では、3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合を調整する際により高い柔軟性がもたらされる。ただし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらす場合や、比率が、所望の鎖の組合せの収率に意味のある影響を及ぼさない場合は、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を単一の発現ベクターに挿入することが可能である。
本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、例えば、精製または診断の応用先で使用するために、エピトープタグまたは標識を含むように修飾することもできる。抗体結合体を作製するための多数の結合基が当技術分野で公知であり、このような結合基としては、例えば、米国特許第5,208,020号または欧州特許第0 425 235 B1号、及びChari et al.,Cancer Research 52:127-131(1992)で開示されているものが挙げられる。結合基としては、上記で特定した特許で開示されているように、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、感光基、ペプチダーゼ不安定基、またはエステラーゼ不安定基が挙げられ、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子内に存在する抗LRP5/6抗体及びその抗体結合フラグメントならびに/または抗Fzd抗体及びその抗体結合フラグメントは、モノクローナルである。ある特定の実施形態において、これらはヒト化されている。
本発明はさらに、ある特定の実施形態において、本明細書で開示されているWntサロゲート分子内に存在するポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。核酸には、DNA及びRNAが含まれる。これら及び関連する実施形態は、本明細書で説明されている1つ以上のFzd受容体及び/またはLRP5もしくはLRP6に結合する抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本明細書で使用する場合、「単離ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源またはこれらの何らかの組合せのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源に基づき、単離ポリヌクレオチドは、(1)単離ポリヌクレオチドが自然界で見られる場合においてポリヌクレオチドの全てまたは一部分と会合しない、(2)自然界では結合しないポリヌクレオチドと結合する、または(3)自然界ではより大きな配列の一部として発生しない。単離ポリヌクレオチドは、天然及び/または人工の配列を含むことができる。
「作用可能に結合した」という用語は、当該用語が適用される構成要素が、好適な条件下でその固有の機能を実行できる関係性にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列と「作用可能に結合した」転写制御配列は、制御配列の転写活性と適合性の条件下でタンパク質コード配列の発現が達成されるように、タンパク質コード配列と連結している。
本明細書で使用する場合、「制御配列」という用語は、自らが連結または作用可能に結合したコード配列の発現、プロセッシング、または細胞内局在化に影響を及ぼすことができるポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態において、原核生物の転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含むことができる。他の特定の実施形態において、真核生物の転写制御配列は、1つまたは複数の転写因子の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列、転写終結配列、及びポリアデニル化配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、「制御配列」は、リーダー配列及び/または融合パートナー配列を含むことができる。
本明細書で言及する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、1本鎖または2本鎖の核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。前述の修飾としては、塩基修飾(例えば、ブロモウリジン)、リボース修飾(例えば、アラビノシド及び2’,3’-ジデオキシリボース)、ならびにヌクレオチド間結合修飾(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホルアニラダート、及びホスホロアミダート)が挙げられる。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、1本鎖及び2本鎖の形態のDNAを含む。
「天然ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホルホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホルアニラダート、ホスホロアミダートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al.,1986,Nucl.Acids Res.,14:9081;Stec et al.,1984,J.Am.Chem.Soc.,106:6077;Stein et al.,1988,Nucl.Acids Res.,16:3209;Zon et al.,1991,Anti-Cancer Drug Design,6:539;Zon et al.,1991,OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.),Oxford University Press,Oxford England;Stec et al.,米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman,1990,Chemical Reviews,90:543を参照(これらの開示内容は、あらゆる目的において参照により本明細書に援用される)。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたはそのハイブリダイゼーションの検出を可能にするために、検出可能な標識を含むことができる。
「ベクター」という用語は、コード情報を宿主細胞に転送するのに使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すために使用される。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に好適であり、かつ、挿入された異種核酸配列の発現を指示及び/または制御する核酸配列を含むベクターを指す。発現には、限定されるものではないが、転写、翻訳、及びイントロンが存在する場合はRNAスプライシングなどのプロセスが含まれる。
当業者が理解するであろうように、ポリヌクレオチドには、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現する、または発現するように適合され得るゲノム配列、ゲノム外及びプラスミドコード配列、ならびにより小さな操作遺伝子セグメントが含まれ得る。このようなセグメントは、天然に単離されても、当業者によって合成的に修飾されてもよい。
これもまた当業者が認識するであろうように、ポリヌクレオチドは、1本鎖(コードまたはアンチセンス)であっても2本鎖であってもよく、またDNA分子(ゲノム、cDNA、または合成)であってもRNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含みDNA分子に一対一で対応するHnRNA分子と、イントロンを含まないmRNA分子とが含まれ得る。さらなるコード配列または非コード配列は、その必要があるわけではないが、本開示に従うポリヌクレオチド内に存在してもよく、ポリヌクレオチドは、その必要があるわけではないが、他の分子及び/または支持材料に結合してもよい。ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列を含んでもよく、またはこのような配列のバリアントもしくは誘導体をコードする配列を含んでもよい。
当業者には、遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書で説明されている抗体をコードするヌクレオチド配列が多数存在することが理解されよう。このようなポリヌクレオチドのいくつかは、Wntサロゲート分子内のポリペプチドをコードするネイティブまたは元のポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列に対し、最小限の配列同一性を有する。それでも、本開示により、コドン使用の相違によって異なるポリヌクレオチドが明示的に企図されている。ある特定の実施形態において、哺乳類発現に対しコドン最適化された配列が特に企図されている。
そのため、本発明の別の実施形態において、変異誘発アプローチ(例えば、部位特異的変異誘発)が、本明細書で説明されているポリペプチドのバリアント及び/または誘導体の調製のために用いられ得る。このアプローチにより、ポリペプチド配列における特定の修飾は、それらをコードする基礎ポリヌクレオチドの変異誘発を通じて行われ得る。これらの技法は、1つ以上のヌクレオチド配列変化をポリヌクレオチドに導入することにより、例えば、前述の考慮事項のうちの1つ以上を組み込んで、配列バリアントを調製及び試験するための分かりやすいアプローチをもたらす。
部位特異的変異誘発は、所望の変異のDNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列と、十分な数の隣接ヌクレオチドとを使用して、横断されている欠失接合部の両側に安定したデュプレックスを形成するために十分なサイズ及び配列複雑性のプライマー配列を提供することにより、変異体の産生を可能にする。変異は、選択されたポリヌクレオチド配列で用いて、ポリヌクレオチド自体の特性を改善、改変、減少、修飾、または他の形で変化させる、かつ/またはコードされたポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、または一次配列を改変することができる。
ある特定の実施形態において、発明者らは、Wntサロゲート分子内に存在するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を変異誘発して、コードされたポリペプチドの1つ以上の特性(例えば、結合親和性、または特定のFc領域の機能、または特定のFcγRに対するFc領域の親和性)を改変することを企図している。部位特異的変異誘発の技法は当技術分野で周知されており、ポリペプチド及びポリヌクレオチド両方のバリアントを創出するのに広く使用されている。例えば、部位特異的変異誘発は、DNA分子の特定の部分を改変するのにしばしば使用される。このような実施形態において、典型的には約14~約25ヌクレオチド長程度を含むプライマーが用いられ、配列の接合部の両側の約5~約10残基が改変される。
当業者が理解するであろうように、部位特異的変異誘発技法は、多くの場合、1本鎖及び2本鎖両方の形態で存在するファージベクターを用いる。部位特異的変異誘発に有用な典型的なベクターとしては、M13ファージなどのベクターが挙げられる。このようなファージは容易に商業的に入手可能であり、その使用は当業者に広く周知されている。また、2本鎖プラスミドも、目的遺伝子をプラスミドからファージに移行させるステップを省く部位特異的変異誘発で通例的に用いられている。
部位特異的変異誘発を用いての、選択されたペプチドをコードするDNAセグメントの配列バリアントの調製は、潜在的に有用な種を産生する手段をもたらすものであり、これらをコードするペプチド及びDNA配列の配列バリアントが得られ得る他の方法が存在するため、限定的であるようには意図されていない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組換えベクターは、ヒドロキシルアミンなどの変異原性剤で処理して、配列バリアントを得ることができる。このような方法及びプロトコルに関する具体的な詳細は、Maloy et al.,1994;Segal,1976;Prokop and Bajpai,1991;Kuby,1994;及びManiatis et al.,1982の教示内容に見出され、各文献はこの目的において参照によって本明細書に援用される。
多くの実施形態において、Wntサロゲート分子のポリペプチドをコードする1つ以上の核酸は、宿主細胞に直接導入され、細胞は、コードされるポリペプチドの発現を誘発するのに十分な条件下でインキュベートされる。本開示のWntサロゲートポリペプチドは、当業者に周知された標準的な技法を、本明細書で提供されるポリペプチド及び核酸配列と組み合わせて用いて調製することができる。ポリペプチド配列は、本明細書で開示されている特定のポリペプチドをコードする適切な核酸配列を決定するのに使用することができる。核酸配列は、当業者に周知された標準的方法に従って、様々な発現システムにおける特定のコドン「優先性」を反映するように最適化することができる。
ある特定の関連する実施形態によれば、本明細書で説明されている1つ以上のコンストラクト(例えば、Wntサロゲート分子またはそのポリペプチドをコードする核酸を含むベクター)を含む組換え宿主細胞、ならびにコードされた産物を産生する方法であって、そのためのコード核酸から発現させることを含む、方法が提供される。発現は、適切な条件下で、核酸を含む組換え宿主細胞を培養することにより、好都合に達成することができる。発現により産生した後、抗体またはその抗原結合フラグメントは、任意の好適な技法を用いて単離及び/または精製し、次いで所望に応じて使用することができる。
ポリペプチド、ならびにコード核酸分子及びベクターは、例えばそれらの天然の環境から実質的に純粋もしくは均質な形態で、または、核酸の場合は、所望の機能を有するポリペプチドをコードする配列以外で核酸もしくは起源の遺伝子を含まずにもしくは実質的に含まずに、単離及び/または精製することができる。核酸は、DNAまたはRNAを含み得、全体的または部分的に合成であり得る。本明細書で示されるヌクレオチド配列への言及は、文脈上他の意味が要求されない限り、指定の配列を有するDNA分子を包含し、また、Tの代わりにUが用いられた指定の配列を有するRNA分子を包含する。
様々な異なる宿主細胞でポリペプチドをクローニング及び発現するためのシステムは周知されている。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳類細胞、酵母、及びバキュロウイルスシステムが挙げられる。異種ポリペプチド発現の技術分野で利用可能な哺乳類細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウス黒色腫細胞、その他多数の細胞が挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主はE.coliである。
E.coliなどの原核細胞内でのポリペプチド(例えば、抗体及びその抗原結合フラグメント)の発現は、当技術分野で十分に確立されている。概説については、Pluckthun,A.Bio/Technology 9:545-551(1991)を参照。また、培養下の真核細胞内での発現も、抗体またはその抗原結合フラグメントの産生における選択肢として、当業者には利用可能である。最近の概説として、例えば、Ref,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573-576;Trill J.J.et al.(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553-560を参照。
プロモーター配列、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列を含めた適切な制御配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じてその他の配列を含む好適なベクターが選択または構築され得る。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス(例えば、ファージ)、またはファージミドとすることができる。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。核酸の操作、例えば、核酸コンストラクトの調製、変異誘発、シークエンシング、細胞内へのDNA導入及び遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作については、多くの公知の技法及びプロトコルがCurrent Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992、または後続の改訂で詳細に説明されている。
「宿主細胞」という用語は、本明細書で説明されているポリペプチドのうちの1つ以上をコードする核酸配列が導入された、または導入させることが可能である、そしてさらに、選択された目的遺伝子(例えば、本明細書で説明されている任意のポリペプチドをコードする遺伝子)を発現させる、または発現させることが可能である細胞を指すために使用される。当該用語は、親細胞の後代を含み、選択された遺伝子が存在する限り、その後代が形態学または遺伝子的構成において元の親と同一であるかどうかにかかわらずこれを含む。したがって、このような核酸を宿主細胞に導入することを含む方法も企図されている。この導入は、任意の利用可能な技法を用いることができる。真核細胞については、好適な技法としては、リン酸カルシウム形質移入、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介形質移入、及びレトロウイルスまたは他のウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、または昆虫細胞の場合はバキュロウイルス)を用いた形質導入を挙げることができる。細菌細胞については、好適な技法としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを用いた形質移入を挙げることができる。導入の後は、例えば、宿主細胞を遺伝子発現向けの条件下で培養することにより、核酸からの発現を引き起こすまたは可能にすることができる。1つの実施形態において、核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。組込みは、標準的な技法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって促進することができる。
また、本発明は、ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているようなWntミメティック分子などの特定のポリペプチドを発現させるために、発現システム内で上述のようにコンストラクトを使用することを含む方法も提供する。「形質導入(transduction)」という用語は、通常はファージにより、遺伝子をある細菌から別の細菌へ移行することを指すために使用される。また「形質導入」は、レトロウイルスによる真核細胞配列の取得及び移行も指す。「形質移入(transfection)」という用語は、細胞が外的または外来DNAを取り込むことを指し、外来DNAが細胞膜の内側に導入された場合、細胞は「形質移入」されたことになる。複数の形質移入技法が当技術分野で周知されており、本明細書で開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et al.,1986,BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier;及びChu et al.,1981,Gene 13:197を参照。このような技法は、1つ以上の外来DNA部分を好適な宿主細胞に導入するのに使用することができる。
本明細書で使用する場合、「形質転換(transformation)」という用語は、細胞の遺伝子的特徴の変化を指し、細胞が新たなDNAを含むように修飾された場合、細胞は形質転換したことになる。例えば、細胞は、そのネイティブな状態から遺伝子的に修飾されている場合、形質転換している。形質移入または形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込むことによって細胞のDNAと組換えを行う場合もあれば、複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持される場合もあれば、プラスミドとして独立に複製する場合もある。細胞は、DNAが細胞分裂で複製される場合、安定的に形質転換したとみなされる。「天然」または「ネイティブ」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などのような生物学的材料と共に使用される場合、自然界に見られ、ヒトによって操作されていない材料を指す。同様に、本明細書で使用する場合、「非天然」または「非ネイティブ」という用語は、自然界に見られず、ヒトによって構造的に修飾または合成された材料を指す。
「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」、ならびに「糖タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、いかなる特定の長さにも限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。当該用語は、ミリスチル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化、及びシグナル配列の付加または欠失のような修飾を除外しない。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、アミノ酸の1つ以上の鎖を意味し、各鎖は、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸を含み、当該ポリペプチドまたはタンパク質は、ネイティブタンパク質の、すなわち、天然であり明確に組換えでない細胞によって産生されたタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって共に非共有結合及び/または共有結合した複数の鎖を含んでもよく、また、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列からの欠失、ネイティブ配列に対する付加、及び/もしくはネイティブ配列の1つ以上のアミノ酸の置換を有する分子を含んでもよい。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、具体的には、Wntサロゲート分子、そのFzd結合領域、そのLRP5/6結合領域、本明細書で開示されているFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体に結合するその抗体及びその抗体結合フラグメント、あるいはこれらのポリペプチドのいずれかの1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、及び/または置換を有する配列を包含する。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、1つのアミノ酸鎖(「単量体」と称される)も複数のアミノ酸鎖(「多量体」と称される)も含むことができる。
本明細書で言及されている「単離タンパク質」、「単離Wntサロゲート分子」、または「単離抗体」という用語は、主題のタンパク質、Wntサロゲート分子、または抗体が、(1)典型的には自然界で共に見られると考えられる少なくともいくつかの他のタンパク質を含まないこと、(2)同じ供給源からの(例えば、同じ種からの)他のタンパク質を本質的に含まないこと、(3)異なる種からの細胞によって発現すること、(4)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは自然界で会合している他の材料の少なくとも約50%から分離されていること、(5)「単離タンパク質」が自然界で会合しているタンパク質の一部と(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用によって)会合していないこと、(6)自然界で会合していないポリペプチドと(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用によって)作用可能に会合していること、または(7)自然界で発生しないことを意味する。このような単離タンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、もしくはその他のRNAによってコードすることができ、または合成起源のものであってもよく、またはこれらの任意の組合せであってもよい。ある特定の実施形態において、単離タンパク質は、天然及び/または人工のポリペプチド配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、単離タンパク質は、その使用(治療用、診断用、予防用、研究用、または他の用途)を妨害すると考えられる、タンパク質もしくはポリペプチドまたは天然の環境で見られるその他の混入物を実質的に含まない。
本明細書で説明されている任意のポリペプチド(例えば、Wntサロゲート分子またはそのFzd結合領域もしくはLRP5/6結合領域)のアミノ酸配列修飾(1つまたは複数)が企図されている。例えば、Wntサロゲート分子の結合親和性及び/またはその他の生物学的特性を改善するのが望ましい場合がある。例えば、Wntサロゲート分子のアミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化を抗体もしくはその鎖をコードするポリヌクレオチドに導入することにより、またはペプチド合成により、調製することができる。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/または当該残基への挿入、及び/または当該残基の置換が挙げられる。最終Wntサロゲート分子に到達するために任意の組合せの欠失、挿入、及び置換を行うことができるが、最終コンストラクトが所望の特徴(例えば、1つ以上のFzd及び/またはLRP5/6受容体に対する高親和性結合)を所持することを条件とする。また、アミノ酸変化は、抗体の翻訳後プロセスも改変し得、例えば、グリコシル化部位の数また配置の変化をもたらし得る。本発明のポリペプチドについて上記で説明された任意のバリエーション及び修飾は、本発明の抗体に含めることができる。
本開示は、本明細書で開示されている任意のポリペプチド(例えば、Wntサロゲート分子またはそのFzd結合領域もしくはLRP5/6結合領域、またはその抗体もしくは抗原結合フラグメント)のバリアントを提供する。ある特定の実施形態において、バリアントは、本明細書で開示されているポリペプチドに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。ある特定の実施形態において、このようなバリアントポリペプチドは、1つ以上のFzd受容体に、及び/または1つ以上のLRP5/6受容体に対し、本明細書に具体的に記載されたWntサロゲート分子の少なくとも約50%、少なくとも約70%、ある特定の実施形態においては少なくとも約90%結合する。さらなる実施形態において、このようなバリアントWntサロゲート分子は、1つ以上のFzd受容体に対し、及び/または1つ以上のLRP5/6受容体に対し、本明細書に記載のWntサロゲート分子よりも高い親和性で結合し、例えば、本明細書に具体的に記載された抗体配列の少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%定量的に結合する。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子またはその結合領域(例えば、Fab、scFv、またはVHHもしくはsdAb)は、a)i.本明細書で説明されている選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、重鎖可変領域;及び/またはb)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、軽鎖可変領域を含むことができ、抗体は、選択された標的(例えば、1つ以上のFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体)と特異的に結合する。さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、バリアント抗体またはその抗原結合フラグメントであり、当該バリアントは、VH及びVL領域のCDR領域内の最大8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上のアミノ酸置換以外では、選択された抗体と同一である重鎖及び軽鎖を含む。この点において、選択された抗体のCDR領域内に1、2、3、4、5、6、7、8、またはある特定の実施形態においては9、10、11、12、13、14、15以上のアミノ酸置換が存在し得る。置換は、VH及び/またはVL領域のいずれかにおけるCDR内のものであり得る。(例えば、Muller,1998,Structure 6:1153-1167を参照)
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子またはその結合領域(例えば、Fab、scFv、またはVHHもしくはsdAb)は、a)本明細書で説明されている抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域に対し少なくとも80%同一、少なくとも95%同一、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;及び/あるいはb)本明細書で説明されている抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域に対し少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有し得る。例示的なその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列は、配列番号1~128に記載されている。
ポリペプチドは、別のポリペプチドに対する一定の「配列同一性」パーセントを有し、これは、アラインメントした場合に、2つの配列を比較するとアミノ酸のパーセンテージが同じであることを意味する。配列類似性は、複数の異なる方式で決定することができる。配列同一性を決定するために、配列は、方法及びコンピュータープログラムを用いてアラインメントすることができ、コンピュータープログラムとしては、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で入手可能なBLASTが挙げられる。もう1つのアラインメントアルゴリズムは、Oxford Molecular Group,Inc.の完全所有子会社Madison,Wis.,USAからGenetics Computing Group(GCG)パッケージで入手可能なFASTAである。その他のアラインメント技法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.(Harcourt Brace & Co.,San Diego,Calif.,USAの一部門)で説明されている。特に関心対象となるのは、配列中のギャップを許容するアラインメントプログラムである。スミス・ウォーターマンは、配列アラインメントにおけるギャップを許容するアルゴリズムの1タイプである。Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)を参照。また、ニードルマン及びウンシュのアラインメント法を用いたGAPプログラムも、配列のアラインメントに利用することができる。J.Mol.Biol.48:443-453(1970)を参照。
関心対象は、Smith及びWatermanの局所ホモロジーアルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981))を用いて配列同一性を決定するBestFitプログラムである。ギャップ生成ペナルティーは、概して1~5、通常は2~4の範囲となり、多くの実施形態において3となる。ギャップ延長ペナルティーは、概して約0.01~0.20の範囲となり、多くの場合において0.10となる。当該プログラムは、比較対象となる入力された配列により決定されるデフォルトパラメーターを有する。配列同一性は、当該プログラムにより決定されるデフォルトパラメーターを用いて決定されることが好ましい。このプログラムは、Madison(Wis.,USA)製のGenetics Computing Group(GCG)パッケージからも入手可能である。
もう1つの関心対象プログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149,1988,Alan R.Liss,Inc.で説明されている。配列同一性パーセントは、以下のパラメーターに基づいてFastDBにより計算される:
ミスマッチペナルティー:1.00;ギャップペナルティー:1.00;ギャップサイズペナルティー:0.33;及び連結ペナルティー:30.0。
特定の実施形態において、Wntサロゲート分子またはその結合領域(例えば、Fab、scFv、またはVHHもしくはsdAb)は、a)i.本明細書で説明されている選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、重鎖可変領域;及びb)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、軽鎖可変領域を含むことができ、抗体は、選択された標的(例えば、Fzd1などのFzd受容体)と特異的に結合する。さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、バリアント抗体であり、当該バリアントは、VH及びVL領域のCDR領域内の最大8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上のアミノ酸置換以外では、選択された抗体と同一である重鎖及び軽鎖を含む。この点において、選択された抗体のCDR領域内に1、2、3、4、5、6、7、8、またはある特定の実施形態においては9、10、11、12、13、14、15以上のアミノ酸置換が存在し得る。置換は、VH及び/またはVL領域のいずれかにおけるCDR内のものであり得る。(例えば、Muller,1998,Structure 6:1153-1167を参照)
代表的なポリペプチド(例えば、本明細書で提供されるWntサロゲート分子のバリアントFzd結合領域またはLRP5/6結合領域)の3次元構造の決定は、そのように誘導された構造的バリアントが本明細書で開示されている種の空間充填特性を保持するかどうかを決定する目的で、選択された天然または非天然のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換、付加、欠失、または挿入が仮想的にモデル化できるように、通例的な方法論を通じて行うことができる。 例えば、Donate et al.,1994 Prot.Sci.3:2378;Bradley et al.,Science 309:1868-1871(2005);Schueler-Furman et al.,Science 310:638(2005);Dietz et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103:1244(2006);Dodson et al.,Nature 450:176(2007);Qian et al.,Nature 450:259(2007);Raman et al.Science 327:1014-1018(2010)を参照。 これら及び関連する実施形態に、例えば、結合領域の合理的な設計に使用され得る、コンピューターアルゴリズムの追加的ないくつかの非限定的例としては、3Dグラフィック及びビルトインスクリプトを用いて大きな生体分子システムを表示、動画化、及び分析するための分子視覚化プログラムであるVMDが挙げられる(Theoretical and Computational Biophysics Group,University of Illinois at Urbana-Champagneのウェブサイト:ks.uiuc.edu/Research/vmd/を参照)。エネルギー最小化立体構造の空間充填モデルからの原子寸法(ファンデルワールス半径)の決定を可能にする他の多数のコンピュータープログラムが、当技術分野で公知であり、当業者が利用可能であり、異なる化学基に対する高親和性の領域を決定して結合の強化を試みるGRID、数学的アラインメントを計算するMonte Carlo研究、力場計算及び分析を評価するCHARMM(Brooks et al.(1983)J.Comput.Chem.4:187-217)及びAMBER(Weiner et al(1981)J.Comput.Chem.106:765)がある(Eisenfield et al.(1991)Am.J.Physiol.261:C376-386;Lybrand(1991)J.Pharm.Belg.46:49-54;Froimowitz(1990)Biotechniques 8:640-644;Burbam et al.(1990)Proteins 7:99-111;Pedersen(1985)Environ.Health Perspect.61:185-190;及びKini et al.(1991)J.Biomol.Struct.Dyn.9:475-488も参照)。様々な適切な計算的コンピュータープログラムが商業的にも入手可能である(例えば、Schrodinger(Munich,Germany))。
組成物
本明細書で説明されているWntサロゲート分子と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを含む。
さらなる実施形態において、本明細書で説明されているWntサロゲート分子をコードする核酸を含むポリヌクレオチドと、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
さらなる実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド(例えば、発現カセット)内に存在する。
本発明はさらに、Wntサロゲート分子をコードする核酸と作用可能に結合したプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む細胞と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物を企図している。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む細胞を含む。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド(例えば、発現カセット)内及び/または同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
本開示は、第1の活性薬剤としてのWntサロゲート分子を送達するための第1の分子と、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを送達するための第2の分子とを含む、医薬組成物を企図している。第1及び第2の分子は、同じタイプの分子であっても異なるタイプの分子であってもよい。例えば、ある特定の実施形態において、第1及び第2の分子はそれぞれ、以下のタイプの分子から独立に選択され得る:ポリペプチド、有機小分子、第1及び第2の活性薬剤をコードする核酸(任意選択でDNAまたはmRNA、任意選択で修飾RNA)、第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含むベクター(任意選択で発現ベクターまたはウイルスベクター)、ならびに第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含む細胞(任意選択で発現カセット)。
主題分子は、単独または組合せで、概して安全で、無毒性で、望ましい製剤の調製に有用な医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び試薬と共に組み合わせることができ、哺乳類(例えば、ヒトまたは霊長類)の使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合には気体であり得る。このような担体、希釈剤、及び賦形剤の例としては、限定されるものではないが、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。追加の活性化合物も製剤に組み込むことができる。製剤に使用される溶液または懸濁液としては、無菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌化合物、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化合物、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸;凝集を防止するための界面活性剤、例えば、Tween 20;ならびに浸透圧調整用化合物、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースが挙げられ得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基を用いて調整することができる。特定の実施形態において、医薬組成物は無菌である。
医薬組成物はさらに、無菌水溶液または分散液、及び無菌注射溶液または分散液を即時調製するための無菌散剤を含んでもよい。静脈内投与向けには、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。場合によっては、組成物は無菌であり、シリンジに取り込むまたはシリンジから対象に送達することができるように液体であるべきである。ある特定の実施形態において、組成物は、製造条件及び貯蔵条件下で安定し、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から守られる。担体は、例えば、溶媒または分散媒とすることができ、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散させる場合には必要な粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めるのが好ましいと考えられる。内部組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによりもたらされ得る。
無菌溶液は、必要とされる量の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(またはコードポリヌクレオチドもしくはこれを含む細胞)を、必要に応じて上記で挙げた成分のうちの1つまたは組合せを有する適切な溶媒に組み込み、その後にフィルター滅菌することにより、調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本分散媒と上に挙げた他の成分のうち必要な成分とを含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及びフリーズドライであり、これらを用いることで事前に滅菌濾過した溶液から活性成分及び任意の追加的な所望成分を含む粉末がもたらされる。
1つの実施形態において、医薬組成物は、抗体またはその抗原結合フラグメントを身体からの急速な除去に対し保護する担体(例えば、留置用剤及びマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤)を用いて調製される。生分解性、生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであると考えられる。材料も商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液も、医薬的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
投与を容易にし薬用量を均一にするために、薬用量単位形態で医薬組成物を製剤化することは有利であり得る。本明細書で使用する場合、薬用量単位形態とは、治療する対象の単位薬用量に適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に所望の効果をもたらすように計算された活性の抗体またはその抗原結合フラグメントの所定量を含む。薬用量単位形態の仕様は、抗体またはその抗原結合フラグメントに特有の特徴、達成すべき特定の治療効果、及び個体の治療向けにこのような活性の抗体またはその抗原結合フラグメントを配合する技術分野に固有の制約によって規定され、これらに直接的に依存する。
医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサー、例えばシリンジ、例えば充填済みシリンジ内に、投与の説明書と共に含めることができる。
本発明の医薬組成物は、任意の医薬的に許容される塩、エステル、もしくはこのようなエステルの塩、または、ヒトを含む動物に投与したときに、生物学的活性の抗体もしくはその抗原結合フラグメントを(直接的もしくは間接的に)提供することができる他の任意の化合物を包含する。
本発明は、本明細書で説明されているWntサロゲート分子の医薬的に許容される塩を含む。「医薬的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理的かつ医薬的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、所望でない毒性学的効果をそれに付与しない塩を指す。様々な医薬的に許容される塩が当技術分野で公知であり、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition,Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,USA,1985(及び最近の版)、“Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology”,3rd edition,James Swarbrick (Ed.),Informa Healthcare USA(Inc.),NY,USA,2007、及びJ.Pharm.Sci.66:2(1977)で説明されている。また、好適な塩の概説については、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”(Stahl and Wermuth)(Wiley-VCH,2002)も参照。
医薬的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、または有機アミンを用いて形成される。カチオンとして使用される金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどを含む。アミンは、N-N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインを含む(例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharma Sci.,1977,66,119を参照)。前述の酸性化合物の塩基付加塩は、従来的な方法で、遊離酸形態を、塩を産生するのに十分な量の所望の塩基に接触させることにより、調製される。遊離酸形態は、従来的な方法で、塩形態を酸に接触させ遊離酸を単離することにより、再生することができる。遊離酸形態は、それぞれの塩形態とは、ある特定の物理的特性(例えば、極性溶媒における可溶性)が多少異なるが、他の点では、本発明の目的において、塩はそれぞれの遊離酸と同等である。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で説明されているWntサロゲート分子またはその医薬的に許容される塩の治療有効量を、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/または賦形剤(例えば、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リン酸及びアミノ酸、ポリマー、ポリオール、糖、緩衝液、保存料、及びその他のタンパク質)と混和して含む。例示的なアミノ酸、ポリマー、及び糖などは、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、ポリエチレングリコールモノステアラート化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、グルコース、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、キシリトール、ラクトース、トレハロース、ウシまたはヒト血清アルブミン、シトラート、アセタート、リンゲル液、ハンクス液、システイン、アルギニン、カルニチン、アラニン、グリシン、リジン、バリン、ロイシン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、及びグリコールである。好ましくは、この製剤は4℃で少なくとも6ヵ月間安定性である。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は緩衝液を含み、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水、及び当業者に公知のその他の緩衝液、例えば、Good et al.(1966)Biochemistry 5:467によって説明されているものを含む。緩衝液のpHは、6.5~7.75、好ましくは7~7.5、最も好ましくは7.2~7.4の範囲内とすることができる。
使用方法
本開示は、例えば、Wntシグナリング経路を調節して、例えば、Wntシグナリングを増加させるために、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を使用するための方法、及び本明細書で開示されているWntサロゲート分子を様々な治療設定で投与する方法も提供する。本明細書では、Wntサロゲート分子を用いた治療方法が提供される。1つの実施形態において、Wntサロゲート分子は、Wntシグナリングの不適切性または脱制御、例えば、Wntシグナリングの増加または低減に関係する疾患を有する対象に提供される。
Wntシグナリング経路の増加及び関連する治療方法
ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるために使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるまたはWntシグナリングを増加するための方法であって、組織または細胞を、本明細書で開示されているWntサロゲート分子またはその医薬的に許容される塩の有効量に接触させることを含み、Wntサロゲート分子がWntシグナリング経路アゴニストである、方法を提供する。いくつかの実施形態において、接触は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行う。特定の実施形態において、細胞は培養細胞であり、接触はin vitroで行う。ある特定の実施形態において、本方法はさらに、組織または細胞を、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドに接触させることを含む。
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織または細胞を、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を含むポリヌクレオチドの有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、標的組織または細胞を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドにも接触させる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織または細胞を、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列を含むベクターの有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、組織または細胞を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターにも接触させる。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じベクター(例えば、同じ発現カセット)内に存在する。
関連する態様において、本発明は、組織内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織を、本発明のWntサロゲート分子をコードする核酸配列を含む細胞の有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、組織を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞にも接触させる。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、Wntサロゲート分子またはWntポリペプチドもしくはNorrinポリペプチドをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものである。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、例えば、標的とされる細胞、組織、または臓器内のWntシグナリングを増加させることにより、疾患、障害、または状態を治療するために使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、その必要のある対象における疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、対象を、本開示の組成物の有効量に接触させることを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、組成物は、以下のいずれかを含む医薬組成物である:Wntサロゲート分子;Wntサロゲート分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはmRNA、任意選択で修飾mRNA;Wntサロゲート分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えば、発現ベクターまたはウイルスベクター;あるいはWntサロゲート分子をコードする核酸配列を含む細胞、例えば、Wntサロゲート分子をコードする発現ベクターまたはウイルスベクターを形質導入した細胞。特定の実施形態において、疾患または状態は、病理学的な疾患もしくは障害、または損傷(例えば、創傷から生じる損傷)である。ある特定の実施形態において、創傷は、別の治療的処置の結果であり得る。ある特定の実施形態において、疾患または状態は、組織の修復、治癒、もしくは再生の不良を含み、または組織の修復、治癒、もしくは再生の増加から利益を得ると考えられる。いくつかの実施形態において、接触はin vivoで行われ、すなわち、主題組成物が対象に投与される。
ある特定の実施形態において、本方法はさらに、対象を、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを含む医薬組成物に接触させることを含む。本開示は、対象を、第1の活性薬剤としてのWntサロゲート分子を送達するための第1の分子と、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを送達するための第2の分子とに接触させることを企図している。第1及び第2の分子は、同じタイプの分子であっても異なるタイプの分子であってもよい。例えば、ある特定の実施形態において、第1及び第2の分子はそれぞれ、以下のタイプの分子から独立に選択され得る:ポリペプチド、有機小分子、第1及び第2の活性薬剤をコードする核酸(任意選択でDNAまたはmRNA、任意選択で修飾RNA)、第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含むベクター(任意選択で発現ベクターまたはウイルスベクター)、ならびに第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含む細胞(任意選択で発現カセット)。
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、本明細書で開示されているWntサロゲート分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの有効量を含む医薬組成物にも接触させる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列を含むベクターの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターの有効量を含む医薬組成物にも接触させる。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じベクター(例えば、同じ発現カセット)内に存在する。
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列を含む細胞の有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞にも接触させる。ある特定の実施形態において、Wntサロゲート分子をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、Wntサロゲート分子またはWntポリペプチドもしくはNorrinポリペプチドをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものである。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
Wntシグナリングは、幹細胞の発生プロセス及び維持において重要な役割を担っている。Wntシグナルの再活性化は、損傷及び疾患の後のほとんどの組織の再生及び修復に関連する。Wntサロゲート分子は、損傷及び疾患に応答して治癒及び組織修復の利益を提供することが期待される。組織ダメージ及び喪失の原因としては、限定されるものではないが、加齢、変性、遺伝性状態、感染症及び炎症、外傷性損傷、毒素/代謝誘発性毒性、またはその他の病理学的状態が挙げられる。Wntシグナル及びWntシグナルのエンハンサーは、成体の組織常在性幹細胞を活性化することが示されている。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、病的なまたはダメージを受けた組織の治療で使用するために、組織再生で使用するために、細胞の成長及び増殖で使用するために、ならびに/または組織操作で使用するために投与される。
Wnt経路の変異に関連するヒト疾患は、疾患の治療及び防止においてWntシグナルの強化の強力なエビデンスを提供する。前臨床in vivo及びin vitro試験からは、Wntシグナルが多くの疾患状態に関与するさらなるエビデンスがもたらされており、様々なヒト疾患におけるWntサロゲート分子の利用をさらに支持するものである。例えば、本発明の組成物は、骨の成長または再生、骨グラフト、骨折の治癒、骨粗鬆症及び骨粗鬆症性骨折、脊椎癒合、椎骨圧迫骨折を含めた脊髄損傷、術前脊椎手術最適化、整形外科デバイスの骨結合、腱-骨結合、歯の成長及び再生、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築、ならびに顎の骨壊死の治療を促進するまたは増加させるのに使用することができる。また、本発明の組成物は、脱毛症の治療;感覚器官の再生強化、例えば、難聴の治療(内及び外有毛細胞再生、前庭機能低下の治療を含む)、黄斑変性の治療、網膜症(硝子体網膜症、糖尿病性網膜症、その他の網膜変性疾患を含む)、フックスジストロフィー、その他の角膜疾患などの治療;卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、多発性ジストロフィー(multiple dystrophy)、サルコペニアまたはカヘキシーの結果としての筋萎縮、及び血液脳関門の変性または完全性に影響を及ぼすその他の状態の治療で使用することもできる。また、本発明の組成物は、口腔粘膜炎の治療、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)、特に瘻孔形成を伴うCDを含む)、その他の胃腸管障害の治療;メタボリックシンドローム、脂質異常症の治療、糖尿病の治療、膵炎、膵外及び膵内分泌組織がダメージを受けている状態の治療;表皮再生強化が所望される状態、例えば、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、歯、爪、または皮膚の形成不全を伴う症候群など、血管新生が有益な状態の治療;心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全の治療;造血細胞の成長の強化、例えば、骨髄、動員末梢血からの造血幹細胞移植の強化、免疫不全、移植片対宿主病などの治療;急性腎損傷、慢性腎疾患の治療;肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症(特発性肺線維症を含む)の治療、肺組織の再生強化で使用することもできる。また、本発明の組成物は、肝細胞の再生(例えば、肝再生)の強化、肝硬変の治療、肝移植の強化、急性肝不全の治療、C型もしくはB型肝炎ウイルス感染を伴うまたは抗ウイルス薬療法後の慢性肝疾患、アルコール性肝炎を含めたアルコール性肝疾患、肝脂肪化または脂肪性肝炎を伴う非アルコール性肝疾患などの治療で使用することもできる。本発明の組成物は、限定されるものではないが、再生的細胞成長が所望される状態を含めた、疾患及び障害を治療することができる。
Wntシグナリング構成要素における機能喪失または機能獲得変異を伴うヒト遺伝学により、骨成長のためのWntシグナル強化を支持する強力なエビデンスが示されている。骨成長の強化が所望される状態としては、限定されるものではないが、骨折、グラフト、人工装具周囲の骨成長、骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、脊椎癒合、椎骨圧迫骨折、脊椎手術のための術前最適化、顎の骨壊死、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築などが挙げられる。Wntサロゲート分子は、骨再生の促進に極めて重要なWntシグナルを強化及び促進する。骨組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。いくつかの実施形態において、骨髄細胞は本発明の分子に曝露され、その結果骨髄細胞内の幹細胞が活性化される。
いくつかの実施形態において、応答性の細胞集団(例えば、骨髄、骨前駆細胞、骨幹細胞など)を本明細書で開示されているWntサロゲート分子の有効用量に接触させることにより、骨再生が強化される。骨組織を再生するための方法はWntサロゲート分子の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施される。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、以下に限定されないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、ポリマーミクロスフェア、ナノ粒子、骨セメントなどが挙げられる。
特定の実施形態において、本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子(またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチド、またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくは細胞)を含む組成物は、限定されるものではないが、以下のいずれかを含めた骨疾患もしくは骨障害の治療もしくは防止に、または、限定されるものではないが、以下のいずれかに関連する損傷の治療もしくは防止に使用される:骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、脊椎圧迫骨折を含めた骨折、癒合不全骨折、癒合遅延骨折、脊椎固定、骨壊死、顎、臀部、大腿骨頭などの骨壊死、(例えば、部分的または全体的な膝または臀部の置換後の回復を加速するための)移植物の骨結合、骨形成不全症、骨移植、腱修復、顎顔面再構築、歯科インプラント、遺伝性疾患、変性、加齢、薬物、または損傷に起因するその他の全ての骨障害または骨異常。1つの実施形態において、Fzd1、Fzd2、及びFzd7、ならびにLRP5及び/またはLRP6に結合するWntサロゲート分子は、任意の骨疾患または骨障害の治療または防止のために使用される。1つの実施形態において、Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8、ならびにLRP5及び/またはLRP6に結合するWntサロゲート分子は、任意の骨疾患または骨障害の治療または防止のために使用される。さらなるFzd受容体に結合する他のFzd分子も、LRP5及び/またはLRP6結合物質と共に使用することができる。
特定の実施形態において、本明細書で開示されている組成物及び方法は、対象における骨ミネラル密度の増加、骨体積の増加(例えば、脛骨及び/または大腿骨の体積)、(例えば、骨梁部または大腿骨中央骨幹の)皮質厚の増加、ミネラル付着率の増加、(例えば、骨内の)骨芽細胞数の増加及び/または破骨細胞数の減少、骨合成の増加、骨折ポイントに対する極限荷重の増加、骨折に対する骨耐性の改善、骨吸収の減少、骨粗鬆症に関連する骨喪失の減少、あるいは骨の生化学的強度の増加のために使用することができる。1つの実施形態において、Fzd1、Fzd2、及びFzd7に結合するWntサロゲート分子は、示されているこれらの使用法のいずれかで使用される。1つの実施形態において、Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合するWntサロゲート分子は、示されているこれらの使用法のいずれかで使用される。
骨疾患または骨障害の治療または防止のための方法を含めた本明細書で開示されている方法は、その必要のある対象に、Wntサロゲート分子及び骨吸収抑制剤の両方を提供することを含む方法を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、骨粗鬆症、任意選択で閉経後骨粗鬆症、の治療のために使用される。
また、本開示は、その必要のある対象における骨吸収を阻害または低減するための方法であって、対象にWntサロゲート分子の有効量を提供することを含み、Wntサロゲート分子がWntシグナリング経路のアゴニストである、方法も提供する。ある特定の実施形態において、当該方法はさらに、対象に骨吸収抑制剤を提供することを含む。ある特定の実施形態において、対象は、骨粗鬆症、任意選択で閉経後骨粗鬆症、と診断されているか、またはそのリスクがある。様々な骨吸収抑制剤が当技術分野で知られており、限定されるものではないが、本明細書で開示されているものがこれに含まれる。
Wntサロゲート分子が別の治療剤(例えば、骨吸収抑制剤)と組み合わせて対象に提供される場合、2つの薬剤は、同じ医薬組成物で提供されても異なる医薬組成物で提供されてもよい。2つの薬剤は、同じ時間に、異なる時間に、例えば、同時に、連続的に、または重複するもしくは重複しない期間中に対象に提供することができる。ある特定の実施形態において、2つの薬剤は、重複する期間中、対象内で治療的に活性である。
本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子(またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチド、またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくは細胞)を含む組成物は、骨格組織欠損のin vivo治療で使用することができる。「骨格組織欠損」とは、骨または他の骨結合組織の欠損であって、どのように欠損が生じたかにかかわらず、例えば、外科的介入、腫瘍の除去、潰瘍、移植、骨折、または他の外傷もしくは変性状態のいずれかの結果として、骨または結合組織の回復が所望される任意の部位における欠損を意味する。本発明の組成物は、結合組織に対する軟骨機能の回復、軟骨組織の異常または病変の修復、例えば、変性摩耗及び関節炎、組織への外傷、半月板断裂の置換、半月板切除術、靱帯裂傷による関節脱臼、関節のアラインメント不良、骨折、または遺伝性疾患によるものの修復のためのレジメンの一部として使用することができる。
Wntサロゲート分子は、歯周病の治療にも使用することができる。歯周病は、歯喪失の主因であり、複数の全身状態に関連づけられる。いくつかの実施形態において、応答性細胞集団を接触させることにより、歯または基底骨の再生が強化される。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。その他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施され、続いて、活性化された幹細胞または前駆細胞の移植が行われる。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、限定されるものではないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、骨セメント、ポリマーミクロスフェア、ナノ粒子などが挙げられる。
複数の試験により、Wntシグナリング及びR-スポンジンの生物学は、損傷、加齢、または変性の後の内耳における感覚有毛細胞の再生を促進できることが示されている。難聴または前庭機能低下に関与する内耳における感覚有毛細胞の喪失も、本発明の組成物から利益を得ることができる。内耳において、聴覚器官は、音の振動を電気インパルスに変換するのに必要とされる機械感受性の有毛細胞を収容している。半規管(SSC)、卵形嚢、及び球形嚢から構成される前庭器官も、頭部の位置及び動きを検出するために感覚有毛細胞を含む。本発明の組成物は、聴覚再生の強化のために、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または、その他の耳への局所的適用で、使用することができる。
Wntサロゲート分子は、網膜組織の再生にも使用することができる。成体哺乳類の網膜では、ミュラーグリア細胞は、例えばin vivoの神経毒性損傷後に、光受容体を含めた網膜細胞を再生することができる。Wntシグナリング及びWntシグナリングのエンハンサーは、損傷後または変性中のミュラーグリア由来網膜前駆細胞の増殖を促進することができる。本発明の組成物は、眼内の組織及びその他の細胞タイプの再生に使用することもできる。例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、その他の網膜変性疾患、角膜疾患、フックスジストロフィー、硝子体網膜症、遺伝性疾患などは、本発明の組成物から利益を得ることができる。AMDは、中心視野及び視力の進行的な減少によって特徴づけられる。フックスジストロフィーは、角膜内皮細胞の進行的な喪失によって特徴づけられる。Wntシグナル及びWntシグナルの強化は、眼組織内の角膜内皮、網膜上皮などの再生を促進することができる。他の実施形態において、本発明の組成物は、黄斑変性の網膜再生及び治療のために、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または眼へのその他の局所的適用で、使用することができる。
肝細胞の恒常的再生における特定の増殖細胞集団が系統追跡研究を通じて特定されており、その例が中心周囲領域内のアキシン2陽性細胞である。系統追跡研究はさらなる潜在的な肝前駆細胞も特定しており、限定されるものではないが、Lgr陽性細胞がこれに含まれる。自己再生肝細胞、ならびにLgr5陽性細胞及びアキシン2陽性細胞を含めたその他の潜在的前駆細胞集団は、損傷後にWntシグナル及び/またはR-スポンジンに応答した再生が可能であることが明らかになっている。急性肝損傷及び慢性肝疾患における多数の前臨床モデルにより、肝細胞の回復及び再生はWntシグナルから利益を得ることが示された。
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子(またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチド、またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくは細胞)を含む組成物は、肝再生の促進、線維化の低減、及び/または肝機能の改善に使用される。ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている組成物及び方法は、肝臓重量の増加、肝臓対体重比の増加、肝臓内のPCNA及びpH3陽性核数の増加、肝臓内のKi67及び/もしくはサイクリンD1の発現の増加、肝細胞の増殖及び/もしくは有糸分裂の増加、慢性肝損傷後の線維化の減少、または肝細胞機能の増加に使用される。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、急性肝不全、急性アルコール性肝損傷の治療、C型またはB型ウイルス肝炎感染を伴うまたは抗ウイルス薬療法後の慢性肝疾患、慢性アルコール性肝疾患、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、肝硬変及び全ての原因の慢性肝疾患の治療、ならびに肝細胞の再生の強化で使用することができる。肝組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。このような方法としては、限定されるものではないが、全身投与の方法及び局在化投与の方法、例えば、肝組織への注射により、肝臓につながる静脈または血管への注射により、持続放出製剤の留置などによる局在化投与が挙げられる。
特定の実施形態において、本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子(またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチド、またはWntサロゲート分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくは細胞)を含む組成物は、限定されるものではないが、以下を含めた肝疾患または肝障害の治療もしくは防止に、または以下のいずれかに起因する肝傷害もしくは肝障害の治療もしくは防止に使用される:急性肝不全(あらゆる原因)、慢性肝不全(あらゆる原因)、肝硬変、肝線維症(あらゆる原因)、門脈圧亢進症、アルコール性肝炎を含めたアルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(脂肪肝)、アルコール性肝炎、C型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HCV)、B型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HBV)、その他のウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HAV)及びD型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HDV))、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、肝臓手術、肝損傷、肝移植、肝臓の手術及び移植における「過小グラフト(small for size)」症候群、先天性肝疾患及び肝障害、遺伝性疾患、変性、加齢、薬物、または損傷に起因するその他の任意の肝障害または検出。
Wntシグナルは、様々な上皮組織の再生において重要な役割を担っている。様々な表皮状態は、本発明の化合物を用いた処置から利益を得る。粘膜炎は、胃腸管の内側を覆う上皮細胞の迅速な分裂が途絶したときに生じ、粘膜組織が潰瘍及び感染を受けやすい状態で放置される。口内を覆う上皮内層部分は、口腔粘膜と呼ばれ、身体の中で最も敏感な部分の1つであり、化学療法及び放射線に対し特に脆弱である。口腔粘膜炎は、癌治療において、詳細には化学療法及び放射線において、おそらくは最も一般的な衰弱性の合併症である。加えて、本発明の組成物は、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、またはその他の胃腸管障害の治療にも利益をもたらし得る。その他の表皮状態としては、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、歯、爪、または皮膚の形成不全に関係する症候群などが挙げられる。本発明の分子は、全てのこのような状態で使用することができ、このとき再生細胞は本発明の化合物に接触される。上皮組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。接触は、例えば、局所的(皮内、皮下を含む)であり、ゲル、ローション、クリームなどにおいて、標的部位などに適用され得る。
WntシグナルならびにWntシグナルの強化及び促進は、皮膚及び胃腸管に加えて、前臨床モデルにおける膵臓、腎臓、及び肺を含めた組織の修復及び再生でも重要な役割を担っている。Wntサロゲート分子は、膵外分泌部及び膵外分泌部、腎臓、または肺に影響を及ぼす様々な疾患状態に利益をもたらし得る。Wntサロゲート分子は、メタボリックシンドロームの治療、糖尿病の治療、急性または慢性の膵炎、膵外分泌機能不全の治療、急性腎損傷、慢性腎疾患の治療、限定されるものではないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、詳細には特発性肺線維症(IPF)、及び肺上皮組織の喪失を引き起こすその他の状態を含めた肺疾患の治療で使用することができる。これらの組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。
他の発生因子経由のシグナリングと協働した表皮Wntシグナリングは、成人の毛包再生に極めて重要である。脱毛は一般的な問題であり、アンドロゲン性脱毛症(しばしば男性型脱毛症と呼ばれる)は、男性における脱毛の最も一般的な形態である。いくつかの実施形態において、応答性細胞集団を本発明の分子に接触させることにより、毛包再生が強化される。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施される。当該分子は、例えば、局所的なローション、ゲル、クリームなどで作用部位に局在化させることができる。
卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び血液脳関門(BBB)に影響を及ぼすその他の状態は、Wntサロゲート分子を用いて治療することができる。血管新生は、酸素及び栄養を身体全体にわたる多くの組織に供給することを確実にするために極めて重要であり、また中枢神経系にとっては、神経組織が低酸素症及び虚血に対し敏感であることから、特に重要である。BBBを形成する中枢神経系内皮細胞は、タイトジャンクションによって共に保持されている高分極性の細胞であり、かつ特定のトランスポーターを発現するという点において、非神経組織内の内皮細胞とは異なる。Wntシグナリングは、中枢神経系の血管形成及び/または機能を制御する。BBBが損なわれている状態は、本発明の化合物の投与から利益を得ることができ、投与は、全身的であっても、例えば、直接注射、髄腔内投与、徐放性製剤の植込みなどによって局在的であってもよい。加えて、Wntシグナルは、神経発生に積極的に関与しており、損傷後の神経保護という役割を担う。本発明の組成物は、脊髄損傷、その他の脊髄疾患、卒中、外傷性脳損傷などの治療でも使用することができる。
Wntシグナルは、血管新生でも役割を担う。Wntサロゲート分子は、血管新生が有益であるような状態や、心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全、糖尿病性網膜症などの治療や、遺伝性疾患に由来する状態に利益をもたらし得る。これらの組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、例えば、ダメージを受けた、または組織もしくは細胞の低減もしくは喪失を受けた組織における、組織再生を促進する。喪失またはダメージは、細胞数を減少させる任意の事象とすることができ、このような事象には疾患または損傷が含まれる。例えば、事故、自己免疫障害、治療の副作用、または疾患状態は、外傷を構成すると考えられる。組織再生は、組織内の細胞数を増加させ、好ましくは組織の細胞間の接続が再確立するのを可能にし、より好ましくは組織の機能性が回復するのを可能にする。
「投与する」または「導入する」または「提供する」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物を対象の1つの細胞、複数の細胞、組織、及び/もしくは臓器に、または対象に送達することを指す。このような投与または導入は、in vivo、in vitro、またはex vivoで行うことができる。
特定の実施形態において、医薬組成物は、非経口的に(例えば、静脈内に)、経口的に、直腸に、または注射によって投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局在的に(例えば、局所的または筋肉内に)投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、標的組織に(例えば、骨、関節、耳組織、眼組織、胃腸管、皮膚、創傷部位、または脊髄に)投与される。本発明の方法は、in vivoまたはex vivoで実施することができる。いくつかの実施形態において、標的細胞または組織をWntサロゲート分子に接触させることはex vivoで実施し、続いて、細胞または組織(例えば、活性化した幹細胞または前駆細胞)を対象に移植する。当業者は、治療する疾患または障害に基づき、適切な投与の部位及び経路を決定することができる。
用量及び投薬レジメンは、医師によって容易に判断される様々な因子、例えば、疾患または障害の性質、対象の特徴、及び対象の病歴に依存し得る。特定の実施形態において、対象に投与または提供するWntサロゲート分子の量は、対象の体重当たり約0.01mg/kg~約50mg/kg、0.1mg/kg~約500mg/kg、または0.1mg/kg~約50mg/kgの範囲内である。
「治療」、「治療すること」などの用語は、本明細書では、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを広く意味するように使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に防止する(例えば、疾患もしくはその症状が対象に生じる可能性を低減する)という観点で予防的であってもよく、かつ/または、疾患もしくは疾患に起因し得る有害作用を部分的もしくは完全に治癒するという観点で治療的であってもよい。本明細書で使用する場合、「治療」は、哺乳類における疾患の任意の治療を網羅し、(a)疾患にかかりやすい可能性があるがまだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを防止すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその発生を抑止すること;または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことを含む。治療剤(例えば、Wntサロゲート分子)は、疾患または損傷の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。進行中の疾患の治療は、その治療が患者の望ましくない臨床的症状を安定化または低減する場合、特に関心対象となる。このような治療は、患部組織が完全に機能喪失する前に実施することが望ましい。主題療法は、疾患の症候段階中に投与し、場合によっては疾患の症候段階後に投与することが望ましい。いくつかの実施形態において、主題方法は、治療利益(例えば、障害の発生の防止、障害の進行の停止、障害の進行の逆行など)をもたらす。いくつかの実施形態において、主題方法は、治療利益が達成されたことを検出するステップを含む。当業者は、このような治療有効性の尺度が、修飾されている特定の疾患に適用可能であることを理解し、治療有効性の測定に使用するのに適切な検出方法を認識するであろう。
他の実施形態は、部分的には、細胞、組織、及びオルガノイドの成長または増殖を促進または強化するための、本明細書で開示されているWntサロゲート分子の使用であって、これは、例えば、細胞または組織を、任意選択でNorrinまたはRスポンジンポリペプチドと組み合わせて、1つ以上のWntサロゲートに接触させることによって行う。ある特定の実施形態において、細胞または組織は、ex vivo、in vitro、またはin vivoで接触させる。このような方法は、例えば、対象に移植またはグラフティングされる、治療使用のための細胞、組織、またはオルガノイドの生成に使用することができる。また、このような方法は、研究使用のための細胞、組織、またはオルガノイドの生成に使用することもできる。Wntサロゲート分子は、非治療的方法、例えば、in vitroの研究方法で広範に適用される。
本発明は、ダメージを受けた組織(例えば、上記で論じられた組織)の組織再生のための方法であって、Wntサロゲート分子を細胞に投与することを含む方法を提供する。Wntサロゲート分子は、in vivoで細胞に直接投与しても、経口的に、静脈内に、または当技術分野で公知の他の方法により対象に投与しても、ex vivo細胞に投与してもよい。Wntサロゲート分子がex vivo細胞に投与されるいくつかの実施形態において、このような細胞は、Wntサロゲート分子を投与する前、後、または最中に、対象に移植され得る。
Wntシグナリングは、幹細胞培養の主要な構成要素である。例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているような幹細胞培地。本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、このような幹細胞培地で使用するのに好適なRスポンジン代替物であり、またはRスポンジンと組み合わせることができる。
したがって、1つの実施形態において、本開示は、幹細胞の増殖を強化するための方法であって、幹細胞を、本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子に接触させることを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を含む細胞培地を提供する。いくつかの実施形態において、細胞培地は、通常はWntまたはRスポンジンを含む、当技術分野で既に知られている任意の細胞培地であって、WntまたはRスポンジンが、本明細書で開示されているWntサロゲート分子(1つまたは複数)で(完全にまたは部分的に)置き換えられているか、または補充されている、任意の細胞培地とすることができる。例えば、培地は、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているようなものであってもよく、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。
幹細胞培地は、多くの場合、追加の成長因子を含む。したがって、当該方法は、幹細胞に成長因子を供給することを追加的に含んでもよい。細胞培地で一般的に使用される成長因子としては、上皮成長因子(EGF、(Peprotech))、形質転換成長因子(TGF-アルファ、Peprotech)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、Peprotech)、脳由来神経栄養因子(BDNF、R&D Systems)、肝細胞成長因子(HGF)、及びケラチノサイト成長因子(KGF、Peprotech、FGF7の別名でも知られている)が挙げられる。EGFは、様々な培養された外胚葉及び中胚葉細胞に対する強力な分裂促進因子であり、in vivo及びin vitroでの特定の細胞の分化と、細胞培養におけるいくつかの線維芽細胞の分化とに、著明な効果を有する。EGF前駆体は、タンパク質切断されて細胞を刺激する53アミノ酸ペプチドホルモンを生成する、膜結合分子として存在する。EGFまたはその他の分裂促進成長因子は、このようにして幹細胞に供給され得る。幹細胞の培養中、分裂促進成長因子を2日に1回培地に添加してもよく、一方、培地は4日に1回取り替えることが好ましい。概して、分裂促進因子は、i)EGF、TGF-アルファ、及びKGF;ii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF7;iii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF;iv)EGF及びKGF;v)EGF及びFGF7;vi)EGF及びFGF;vii)TGF-アルファ及びKGF;viii)TGF-アルファ及びFGF7;またはix)TGF-アルファ及びFGFからなる群より選択される。ある特定の実施形態において、本開示は、例えば、任意選択で、本明細書に記載の1つ以上の成長因子またはその組合せと組み合わせて、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を含む、幹細胞培地を含む。
幹細胞の増殖を強化するこれらの方法は、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)で説明されているように、幹細胞から新たなオルガノイド及び組織を成長させるのに使用することができる。
いくつかの実施形態において、Wntサロゲート分子は、幹細胞再生の強化に使用される。例示的な目的幹細胞としては、限定されるものではないが、筋サテライト細胞;造血幹細胞及びそれに由来する前駆細胞(米国特許第5,061,620号);神経幹細胞(Morrison et al.(1999) Cell 96:737-749を参照);胚幹細胞;間葉幹細胞;中胚葉幹細胞;肝臓幹細胞;脂肪組織由来幹細胞などが挙げられる。
本発明の他の実施形態は、部分的には、1つ以上のFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体を発現する細胞または組織の存在を検出するための診断的適用に関する。したがって、本開示は、試料中の1つ以上のFzd受容体またはLRP5もしくはLRP6受容体を検出する方法、例えば、Fzd1を発現する細胞または組織を検出する方法を提供する。このような方法は、限定されるものではないが、免疫組織化学検査(IHC)、免疫細胞化学検査(ICC)、in situハイブリダイゼーション(ISH)、全載in situハイブリダイゼーション(WISH)、蛍光DNA in situハイブリダイゼーション(FISH)、フローサイトメトリー、酵素イムノアッセイ(EIA)、及び酵素結合イムノアッセイ(ELISA)を含めた様々な公知の検出形式に適用することができ、例えば、Wntサロゲート分子の結合を検出することにより行うことができる。
ISHは、標識された相補的DNAまたはRNA鎖(すなわち、一次結合剤)を使用して、細胞もしくは組織の一部分もしくは切片内で(in situ)、または組織が十分に小さい場合は全体の組織内で(全載)、特定のDNAまたはRNA配列を局在化させるハイブリダイゼーションのタイプである。当業者であれば、このISHが、抗体を一次結合剤として用いて組織切片内でタンパク質を局在化させる免疫組織化学検査とは異なるということを理解するであろう。DNA ISHは、染色体の構造を決定するためにゲノムDNA上で使用することができる。蛍光DNA ISH(FISH)は、例えば、染色体の完全性を評価するために医学的診断で使用することができる。RNA ISH(ハイブリダイゼーション組織化学検査)は、組織切片または全載内のmRNA及びその他の転写物を測定及び局在化するために使用される。
様々な実施形態において、本明細書で説明されているWntサロゲート分子は、直接的または間接的に検出することができる検出可能な標識と結合体化する。この点において、抗体「結合体」とは、検出可能な標識と共有結合したWntサロゲート分子を指す。本発明において、DNAプローブ、RNAプローブ、モノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、その抗体誘導体、例えば、1本鎖可変フラグメント抗体またはエピトープタグ化抗体は、全て検出可能な標識と共有結合することができる。「直接的検出」では、1つのみの検出可能抗体、すなわち、検出可能な一次抗体が使用される。したがって、直接的検出とは、検出可能な標識と結合体化している抗体が、それ自体、第2の抗体(二次抗体)を追加する必要なく検出することができることを意味する。
「検出可能な標識」とは、試料中の標識の存在及び/または濃度を示す(例えば、視覚的、電気的、または別の形で)検出可能なシグナルを産生することができる分子または物質である。検出可能な標識は、抗体と結合体化している場合、特定の抗体が向けられている標的を位置特定及び/または定量化するために使用することができる。それにより、試料中の標的の存在及び/または濃度は、検出可能な標識によって産生されたシグナルを検出することにより、検出することができる。検出可能な標識は直接的または間接的に検出することができ、異なる特定の抗体と結合体化したいくつかの異なる検出可能な標識を使用して、1つ以上の標的を検出することができる。
直接的に検出することができる検出可能な標識の例としては、蛍光色素及び放射性物質及び金属粒子が挙げられる。これに対し、間接的な検出は、一次抗体の適用後に1つ以上のさらなる抗体、すなわち、二次抗体の適用が必要となる。したがって、検出は、二次抗体または結合剤における、検出可能な一次抗体との結合を検出することにより、実施される。二次結合物質または抗体の追加を必要とする検出可能な一次結合剤または抗体の例としては、検出可能な酵素結合剤及び検出可能なハプテン結合剤が挙げられる。
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、(例えば、ISH、WISH、またはFISHプロセスにおいて)第1の結合剤を含む核酸ポリマーと結合体化する。他の実施形態において、検出可能な標識は、(例えば、IHCプロセスにおいて)第1の結合剤を含む抗体と結合体化する。
本開示の方法で使用されるWntサロゲート分子と結合体化することができる検出可能な標識の例としては、蛍光標識、酵素標識、放射性同位体、化学発光標識、電気化学発光標識、生物発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、金属粒子、ハプテン、及び色素が挙げられる。
蛍光標識の例としては、5-(及び6)-カルボキシフルオレセイン、5-または6-カルボキシフルオレセイン、6-(フルオレセイン)-5-(及び6)-カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、テトラメチルローダミン、ならびにCy2、Cy3、及びCy5などの色素、任意選択で置換されたクマリン(AMCAを含む)、PerCP、フィコビリンタンパク質(R-フィコエリトリン(RPE)及びアロフィコエリトリン(APC)を含む)、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその類似体、ならびにR-フィコエリトリンまたはアロフィコエリトリンの結合体、無機蛍光標識、例えば、コーティングされたCdSeナノ結晶子のような半導体材料に基づく粒子が挙げられる。
ポリマー粒子標識の例としては、蛍光色素を埋め込むことができるポリスチレン、PMMA、もしくはシリカの微粒子もしくはラテックス粒子、または色素、酵素、もしくは基質を含むポリマーミセルもしくはカプセルが挙げられる。
金属粒子の例としては、金粒子及びコーティング金粒子が挙げられ、これらは銀染色によって変換することができる。ハプテンの例としては、DNP、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、ビオチン、及びジゴキシゲニンが挙げられる。酵素標識の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)、β-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、及びグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。一般的に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼの基質の例としては、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケル強化を伴うジアミノベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジン二塩酸塩(BDHC)、ハンカー・イエーツ(Hanker-Yates)試薬(HYR)、インドファン(Indophane)ブルー(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(CN)、アルファ-ナフトールピロニン(アルファ-NP)、o-ジアニシジン(OD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2-(p-ヨードフェニル)-3-p-ニトロフェニル-5-フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-ベータ-D-ガラクトシド/フェリシアン化鉄(II)(BCIG/FF)が挙げられる。
一般的に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼの基質アルカリホスファターゼの基質の例としては、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスファート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスファート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ニューフクシン(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルホスファート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-d-ガラクトピラノシド(BCIG)が挙げられる。
発光標識の例としては、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2-ジオキセタン、及びピリドピリダジンが挙げられる。電気化学発光標識の例としては、ルテニウム誘導体が挙げられる。放射性標識の例としては、ヨウ化物、コバルト、セレニウム、トリチウム、炭素、硫黄、及びリンの放射性同位体が挙げられる。
検出可能な標識は、本明細書で説明されている抗体と結合しても、目的の生物学的マーカーと特異的に結合する他の任意の分子(例えば、抗体、核酸プローブ、またはポリマー)と結合してもよい。さらに、当業者であれば、検出可能な標識は、第2の、及び/または第3の、及び/または第4の、及び/または第5の結合剤または抗体などと結合体化してもよいことを理解するであろう。さらに、当業者であれば、目的の生物学的マーカーを特徴づけるために使用される各々の追加の結合剤または抗体がシグナル増幅ステップとしての働きをすることも理解するであろう。生物学的マーカーは、検出可能な標識が例えば、色素、コロイド金粒子、または発光試薬である場合に、例えば光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡を用いて、視覚的に検出することができる。また、生物学的マーカーに結合した視覚的に検出可能な物質は、分光光度計を用いて検出することもできる。検出可能な物質が放射性同位体である場合、検出は、オートラジオグラフィーによって視覚的に行うこともあれば、シンチレーションカウンターを用いて非視覚的に行うこともある。例えば、Larsson,1988,Immunocytochemistry:Theory and Practice,(CRC Press,Boca Raton,Fla.);Methods in Molecular Biology,vol.80 1998,John D.Pound(ed.)(Humana Press,Totowa,N.J.)を参照。
本発明はさらに、試料中の1つ以上のFzdもしくはLRP5/6受容体または1つ以上のFzdもしくはLRP5/6受容体を発現する細胞もしくは組織を検出するためのキットであって、本明細書で説明されている少なくとも1つの抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞を含む、キットを提供する。ある特定の実施形態において、キットは、緩衝液、酵素、標識、基質、本発明の抗体が付着するビーズまたはその他の表面など、及び使用説明書を含むことができる。
本明細書で参照されている、及び/または出願データシートに列挙されている上記全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。
上記のことから、例示の目的で本発明の特定の実施形態が説明されているものの、様々な変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されよう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲以外で限定されることはない。
実施例1
例示的なWntサロゲート分子の形式
本明細書で開示されている様々な異なる形式を有するWntサロゲートを作製した。このような形式には、以下に示す例示的な形式が含まれ、その各々が、1つ以上のFzd受容体に結合する結合ドメイン(「結合物質」)と、LRP5及び/またはLRP6受容体に結合する結合ドメイン(「結合物質」)とを含むものであった。
図1Aに示されているように、一方の受容体に対する結合物質がFabで、他方の受容体に対する結合物質がNabまたはscFvである場合、これらはいくつかの異なる構成にまとめることができる。あるいくつかの場合において、Fab結合物質を最初に全IgG形式に再フォーマットすることができ、次いでNab結合物質をIgGの4つの利用可能な末端のいずれかと融合することができる。例えば、Nabの融合は、IgG軽鎖のN末端と(LC、融合物はNLと称し左上に示す)、IgG重鎖のN末端と(HC、融合物はNHと称し右上に示す)、LCのC末端と(融合物はCLと称し中央右に示す)、そしてHCのC末端と(融合物はCHと称し、中間の左に示す)行うことができる。IgGとNabとの間のリンカー及びリンカーの長さは様々なものとすることができる。これらの4つの形式は二重特異的かつ2価性であり、受容体の各々に対する2価性結合物質である。代替的な2つの結合物質をまとめる方法は、Fab結合物質が半抗体として提示され、NabがFcのN末端と融合しているヘテロIg形式(下方中央に示す)である。2つの半分は、ヘテロ2量体の形成に好都合に働くCH3ドメインの変異(例えば、ノブズ・イントゥ・ホールズ)によって一緒にまとめることができる。Nab結合物質とFcとの間のリンカー及びその長さは様々なものとすることができる。この形式は、二重特異的であり、ただし各受容体に対しては1価性となる。本実施例で説明されている任意の形式は、scFvフラグメント結合物質で置き換えることもできる。
図1Bに示されているように、一方の受容体に対する結合物質がFabで、他方の受容体に対する結合物質もFabである場合、これらはいくつかの異なる構成にまとめることができる。1つのアプローチでは、一方のFab結合物質を最初に全IgG形式に再フォーマットする(上部に示す)。第2のFab結合物質は、IgGのN末端と融合していてもよい。2つのHCは、間にあるリンカーで共に融合していてもよい。LCは融合していても融合していなくてもよい。リンカー及びその長さは様々なものとすることができる。この形式は、二重特異的かつ2価性の形式である。代替的に、第2のFab結合物質LCは、間に入る様々な長さのリンカーによって、IgGのHCと融合していてもよい。第2のFab結合物質HCは、IgGのLCと融合しても融合していなくてもよい。この形式のバリエーションは、タンデム型Fab IgG(またはFIT-Ig)と呼ばれている。別のアプローチでは、2つの結合物質を、ヘテロ2量体の集成に好都合に働くCH3ドメインの変異により、ヘテロIgとして一緒にまとめることができ、2つのアームは各々1つの受容体に結合する(下部に示す)。この形式は、二重特異的かつ1価性の結合物質である。
図1Cに示されているように、一方の受容体に対する結合物質がNabで、他方の受容体に対する結合物質もNabである場合、これらはいくつかの異なる構成にまとめることができる。二重特異的かつ2価性の形式では、ある特定の場合において、2つのNab結合物質は、タンデムに融合(上の列に示す)していても、Fcの2つの異なる端部と融合(中間の列に示す)していてもよい。NabとNabまたはNabとFcとの間のリンカー及びその長さは様々なものとすることができる。代替的に、2つのNabをヘテロIgとして一緒に集成して、二重特異的かつ1価性の形式(下の列に示す)を生成してもよい。図1Aと同様に、ここでのNabドメインは、結合物質のscFvドメインで置き換えることもできる。全ての実施例において、Nab及びscFvは、ある特定の組合せで混合させることもできる。
図1Dに示されているように、Fzd及びLRPに対する結合物質は、ダイアボディ(またはDART)構成で共に結合してもよい。また、ダイアボディは1本鎖構成であってもよい。ダイアボディがFcと融合している場合、これは2価性二重特異的形式を創出する。Fcとの融合がなければ、これは1価性二重特異的形式となる。
異なる構成に該当する複数のWntサロゲートを産生した。このようなサロゲートには表3に記載のWntサロゲートが含まれる。このような例示的Wntサロゲートには、1つ、2つ、または3つのポリペプチドが含まれ、これらの配列は、配列1、配列2、及び/または配列3として示される。配列は、リーダーペプチド配列、Nab配列、リンカー、及び/または重鎖もしくは軽鎖配列を含むことができる。アノテーション付きの配列が図19に示されている。リーダーペプチド配列はイタリック体で示され、リンカー配列は下線で示され、Nab配列は太字で示され、残りの配列は重鎖または軽鎖の配列である。Fzd結合物質ID及びLRP結合物質IDは、様々なFzdに結合するまたはLRP5/6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントについての表1A~B及び2A~Bに示されているクローン番号に対応している。
「R2M3」で始まるWntサロゲートは、001S-A04という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。表3において「18R5」で始まる最初の6つのWntサロゲートは、18R5という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントのN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「1R」で始まるWntサロゲートは、異なる抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントのN末端と融合した「009S-E04」という名称の抗LRP6抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。「R2M3-26CH」の場合、LRP6結合領域は、Fzd結合領域のC末端と融合している。「R2M3-26NH」の場合、LRP6結合領域は、Fzd結合領域のN末端と融合している。「R2M3-26CL」の場合、LRP6結合領域は、Fzd結合領域のC末端と融合している。「R2M3-26NL」の場合、LRP6結合領域は、Fzd結合領域のN末端と融合している。「R2M3-26Fab」及び「R2M3-32Fab」の場合、LRP6結合領域は、Fzd結合領域のN末端と融合している。「ヘテロ-Ig」の場合、LRP6結合領域は、ヒトFc_ホールのN末端と融合し、Fzd結合物質の軽鎖及び重鎖ヒトIgG1_ノブと対形成する。「17SB9」で始まるWntサロゲートは、017S-B09という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「1R-C07」で始まるWntサロゲートは、001S-B03という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「R2M13」で始まるWntサロゲートは、004S-G06という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「3SD10」で始まるWntサロゲートは、003S-D10という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「4SD1」で始まるWntサロゲートは、004S-D01という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。「14SB6」で始まるWntサロゲートは、014S-B06という名称の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖領域のN末端と融合した異なるLRP6結合ドメインを含む。
実施例2
Wntサロゲート分子R2M3-26のキャラクタリゼーション
R2M3-26分子は、Fzd結合物質(R2M3)及びLRP6結合物質(26)からなる。図2Aに示されているように、5アミノ酸リンカーを用いてLRP6結合物質26をR2M3 LCのN末端と融合した。R2M3は、IgGの形態をとった。タンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECからの吸光度トレース及びSEC画分のSDS-PAGEゲルを図2Bに示した。R2M3-26のカノニカルWntシグナリング活性化能力を、Wnt応答293レポーター細胞株(293STF)で試験した。SEC画分全体における293STFレポーター活性トレースを図2Bに示す。レポーター活性のピークはタンパク質のピークと相関していた。R-スポンジンの不在下及び存在下における293STF細胞の用量応答によって、ピーク画分をさらにキャラクタリゼーションした(図2D)。R2M3-26は、用量依存的にレポーター活性を誘発しており、また、天然のWntリガンドと同様、R-スポンジンの存在によって強化された。一方、LRP結合アームの付着なしの単独のR2M3 IgGはレポーター活性を誘発しなかった。R2M3-26におけるその標的Fzd1 ECDとの相互作用能力をOctet相互作用アッセイで実施し(図2C)、結果からは、LRP6結合アーム26の融合が、R2M3におけるその標的Fzdとの相互作用に影響を及ぼさないことが示された。
実施例3
Wntサロゲート分子R2M3-32のキャラクタリゼーション
R2M3-32分子は、Fzd結合物質(R2M3)及びLRP6結合物質(32)からなる。図3Aに示されているように、5アミノ酸リンカーを用いてLRP6結合物質32をR2M3 LCのN末端と融合した。R2M3は、IgGの形態をとった。タンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECからの吸光度トレース及びSEC画分のSDS-PAGEゲルを図3Bに示した。R2M3-32のカノニカルWntシグナリング活性化能力を、Wnt応答293レポーター細胞株(293STF)で試験した。SEC画分全体における293STFレポーター活性トレースを図3Bに示す。レポーター活性のピークはタンパク質のピークと相関していた。R-スポンジンの不在下及び存在下にお
ける293STF細胞の用量応答によって、ピーク画分をさらにキャラクタリゼーションした(図3D)。R2M3-32は、用量依存的にレポーター活性を誘発しており、またR-スポンジンの存在によって強化された。一方、LRP結合アームの付着なしの単独のR2M3 IgGはレポーター活性を誘発しなかった。R2M3-32におけるその標的Fzd1細胞外ドメイン(ECD)との相互作用能力をOctet相互作用アッセイで実施した(図3C)。結果からは、LRP6結合アーム32の融合が、R2M3におけるその標的Fzdとの相互作用に影響を及ぼさないことが示された。
実施例4
R2M3-26及びR2M3-32の活性は、可溶性のFzd ECDによって、及びLRP結合アームを伴わないR2M3 IgG単体によって阻害され得る
293STFレポーターアッセイを用いて、可溶性Fzd細胞外ドメイン(ECD)またはR2M3 IgG単独におけるWntサロゲート阻害能力を定量した。R2M3-26またはR2M3-32の固定濃度にて、Fzd1ECD-FcまたはR2M3 IgGを293STFレポーターアッセイで滴定した。Fzd1ECD-Fc及びR2M3 IgGの両方が、用量依存的にR2M3 IgG(図4A)及びR2M3-32(図4B)が誘発するレポーターシグナリングを阻害し、一方陰性対照分子のFc単独は影響を及ぼさなかった。
実施例5
293、Huh7、A375、BNL.CL2 Wnt依存的レポーターアッセイにおけるR2M3-LRP6結合物質融合物のキャラクタリゼーション
Fzd結合物質R2M3をさらなるLRP6結合物質23、25、26、27、28、29、31、32、33、及び36と融合した。LRP6結合物質をNabとし、5アミノ酸リンカーを用いてR2M3 LCのN末端と融合した。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。融合タンパク質を、293、Huh7、A375、及びBNL.CL2細胞株におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験し、これらはWntシグナリングを様々なレベルまで活性化した。またR2M3を、2つの非LRP6結合物質Nab(24及び34)に対しても、Lrp6結合物質と同じ形式で融合した。これらの2つの非結合物質は、Wnt依存的293レポーターアッセイで活性を示さなかった(図5)。このことは、R2M3の23、25、26、27、28、29、31、32、33、及び36との融合物で観察されたWnt活性が、天然リガンド機能を模倣するFzd及びLrp両方の存在に依存することを示唆するものである。
実施例6
293、A375、及びBNL.CL2 Wnt依存的レポーターアッセイにおける18R5-LRP6結合物質融合物のキャラクタリゼーション
Fzd結合物質18R5をLRP6結合物質26、28、31、32と融合した。LRP6結合物質をNabとし、5アミノ酸リンカーを用いて18R5 LCのN末端と融合した。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。融合タンパク質を、293、A375、及びBNL.CL2細胞株におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験し、これらはWntシグナリングを活性化する能力を示した(図6)。
実施例7
293 Wnt依存的レポーターアッセイにおける18R5-LRP5結合物質融合物のキャラクタリゼーション
Fzd結合物質18R5をLRP5結合物質5、7、8、9と融合した。LRP5結合物質をNabとし、5アミノ酸リンカーを用いて18R5 LCのN末端と融合した。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。融合タンパク質を、293細胞株におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験し、これらはWntシグナリングを活性化することができた(図7)。
実施例8
293 Wnt依存的レポーターアッセイにおける様々なFzd結合物質-LRP6結合物質26融合物のキャラクタリゼーション
IgG形式の様々なFzd結合物質1R-B05、1R-C01、1R-C07、1R-E01、1R-E06、1R-G05、1R-G06、1R-H04をLRP6結合物質26と融合した。LRP6結合物質Nabを、5アミノ酸リンカーを用いて様々なFzd結合物質LCのN末端と融合した。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。SECピーク画分のSDS-PAGEゲル解析を図8Aに示した。融合タンパク質を、Rspoの存在下の293細胞株におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験し、これらはWntシグナリングを活性化することができた(図8B)。
実施例9
IgG-Nab融合形式のSAR解析
図1Aに図示されているようにIgG HCまたはLCの異なる末端に対しNabの付着位置を回転させることにより、IgG-Nab融合物のSAR解析を実施した。CHは、重鎖のC末端にNabを付着させることを示し、NHは、重鎖のN末端にNabを付着させることを示し、CLは、軽鎖のC末端にNabを付着させることを示し、NLは、軽鎖のN末端にNabを付着させることを示す。3対のIgG-Nab融合物のSARを示した。これらは、R2M3及び26、R2M3及び32、ならびに18R5及び26の間の対である。Rspoの存在下のWnt応答性293レポーター細胞上でアッセイを実施し、Wntシグナリングが様々なレベルまで活性化された(図9)。これらの結果は、融合の付着位置ならびにFzd及びLRPの結合ドメイン間の幾何学的配置が、Wntサロゲート分子のWntシグナリング活性化能力で役割を担うことを実証するものである。
実施例10
Fab形式のR2M3-26のキャラクタリゼーション
分子R2M3-26 Fabは、Fzd結合物質(R2M3)及びLRP6結合物質(26)からなる。図10Aに示されているように、5アミノ酸リンカーを用いてLRP6結合物質26をR2M3 LCのN末端と融合した。R2M3は、Fabの形態をとった。タンパク質をNi-NTAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECからの吸光度トレース及びSEC画分のSDS-PAGEゲルを図10Bに示す。Fab形式としてのR2M3-26のカノニカルWntシグナリング活性化能力を、Wnt応答293レポーター細胞(293STF)で試験した。SEC画分における293STFレポーター活性トレースを図10Bに示す。図2に示すようなR2M3がIgG形式をとった場合とは異なり、Fab形式のR2M3からのレポーター活性のピークは、タンパク質のピークと相関しなかった。これらの結果は、Fab形式のR2M3-26融合物が、レポーターアッセイによる検出においてカノニカルWntシグナリングを有効に誘発しないことを示唆するものである。
実施例11
Fab形式のR2M3-32のキャラクタリゼーション
分子R2M3-32 Fabは、Fzd結合物質(R2M3)及びLRP6結合物質(32)からなる。図11Aに示されているように、5アミノ酸リンカーを用いてLrp6結合物質32をR2M3 LCのN末端と融合した。R2M3は、Fabの形態をとった。タンパク質をNi-NTAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECからの吸光度トレース及びSEC画分のSDS-PAGEゲルを図11Bに示した。Fab形式としてのR2M3-32のカノニカルWntシグナリング活性化能力を、Wnt応答293レポーター細胞(293STF)で試験した。SEC画分における293STFレポーター活性トレースを図11Bに示す。図3に示すようなR2M3がIgG形式をとった場合とは異なり、Fab形式のR2M3からのレポーター活性のピークは、タンパク質のピークと相関しなかった。これらの結果は、Fab形式のR2M3-32融合物が、レポーターアッセイによる検出においてカノニカルWntシグナリングを有効に誘発しないことを示唆するものである。
実施例12
ヘテロIg形式のR2M3-26のキャラクタリゼーション
分子R2M3-26ヘテロIgは、図12Aに図示され図1Aに記載されているように、Fzd結合物質(R2M3)及びLRP6結合物質(26)からなる。タンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECカラムからのピーク画分について、R-スポンジンの不在下または存在下でのWnt応答性293STFレポーター細胞における用量応答性を試験した(図12B)。IgG形式のR2M3-26(図2に記載)と比較して、R2M3-26ヘテロIgは、293レポーターアッセイによる検出において、カノニカルWntシグナリングを有効に誘発しなかった。
実施例13
Nab-Nab形式の26-17SB9のキャラクタリゼーション
分子26-17SB9 Nab-Fc-Nabは、図13Aに図示され図1Cに記載されているように、LRP6結合物質(26)及びFzd結合物質(17SB9)からなる。タンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ステップによって精製した。SECカラムからのピーク画分について、R-スポンジンの不在下または存在下でのWnt応答性293STFレポーター細胞における用量応答性を試験した(図13B)。Nab-Fc-Nab形式の26-17SB9は、293レポーターアッセイにおける検出で、カノニカルWntシグナリングを誘発した。
26及び17SB9のさらなる組合せも構築し(図13C)、293レポーターアッセイで試験した。図13D及び13Eに示されているように、26及び17SB9を異なるタンデム形式でまたはFcフラグメントの異なる端部上で配置したこれらの様々な組合せは全て、20nM R-スポンジンの存在下、Wntシグナリングを様々なレベルまで活性化した。
実施例14
タンデムscFv形式の18R5-LRP5結合物質融合物のキャラクタリゼーション
Fzd結合物質18R5、LRP6E1E2結合物質1115.3(PCT出願公開第WO2009/064944号に記載)、及びLRP6E3E4結合物質YW211.31.57(PCT出願公開第WO2011/119661号に記載)をscFv形式に変換した。5、10、または15アミノ酸リンカーを用いて1115.3_scFvまたはYW211.31.57_scFvを18R5_scFvのN末端に集成し、18R5_scFv C末端をヒトFcドメインと融合する。別のセットの例では、5、10、または15アミノ酸リンカーを用いて1115.3_scFvまたはYW211.31.57_scFvを18R5 scFvのC末端に集成し、ヒトFcドメインをLRP結合物質のC末端と融合する。これらの形式は、図14Gの左パネルに図示されている。別の例では、18R5_scFv及びLRP結合物質、1115.3_scFv、またはLRP結合物質、YW211.31.57_scFvをヒトFcドメインの2つの端部と融合した(図14Gの右パネルに図示)。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。
融合タンパク質を293細胞におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験した。5、10、または15merリンカーを用いた18R5_scFv-1115.3_sdFv-Fc及び1115.3_scFv-18R5_scFv-Fcは、Wntシグナリングを活性化することができた(図14A及び14B)。異なるリンカーを用いた18R5_scFv-YW211.31.57_scFv-Fc及びYW211.31.57_scFv-18R5_scFv-FcはWntシグナリングを活性化した(図14C及び14D)。加えて、Fcの2つの端部と融合した18R5_scFv及び1115.3_scFvまたはYW211.31.57もWntシグナリングを活性化した(図14E及びF)。これらのscFv形式全てがWntシグナリングを活性化したが、効力及び全体の最大有効性は、結合物質の組合せ、リンカーの長さ、及び相対的配向に応じて異なり得る。
別の例では、さらなるFcの融合を伴わずに、5、10、または15アミノ酸リンカーを用いて1115.3_scFvまたはYW211.31.57_scFvを18R5_scFvのN末端またはC末端に集成して、二重特異的であるがFzdまたはLRPの各々に対し1価性の結合を創出する。図14Hに示されているように、1115.3_scFv及び18R5_scFv融合物は、293レポーター細胞において20nM R-スポンジンの存在下でWntシグナリングを有効に活性化しなかった。
実施例15
Fab-IgG形式のWntサロゲート分子の生成
Wntミメティックまたはサロゲート分子は、FZD及びLRP両方の結合物質がFabである場合に様々な形式で生成することができる。電荷対形成、「ノブズインホールズ」、Fabにおける重鎖及び軽鎖のクロスオーバーなどの様々なアプローチを用いて、適切な重鎖及び軽鎖の対形成を確実にすることができる。2つの実施例を以下に示す。
1.FabオンIgG形式に対する電荷対形成(cp)アプローチ:抗LRP6 Fabの重鎖(VH-CH1)ドメインを、5、10、または15merアミノ酸リンカーにより、抗FZD結合物質の重鎖(VH-CH1-CH2-CH3)のN末端とタンデムに融合した。抗LRP6及び抗FZD両方のVH-CH1ドメインは、各々それら自身のパートナー軽鎖との対形成のための3つのアミノ酸変異(抗LRP6 FabではQ39D、Q105D、S183K、抗FZD FabではQ39K、Q105K、S183E)を含み、パートナー軽鎖も3つの相補的なアミノ酸変異(抗LRP6軽鎖ではQ38K、A/S43K、S176E、抗FZD軽鎖ではQ38D、A/S43D、S176K)を含む。抗LRP6及び抗FZD Fabの順序は反転させてもよく、その場合、抗FZD結合物質はFabであり、IgG形式をとる抗LRP結合物質と融合している(図15A)。
2.FabオンIgG形式に対するHC-LCクロスオーバーアプローチ:抗LRP6結合物質の軽鎖(VL-CL)ドメインを、5、10、または15merアミノ酸リンカーにより、抗FZD結合物質の重鎖(VH-CH1-CH2-CH3)のN末端とタンデムに融合した。第2のコンストラクトは抗LRP6結合物質のVH-CH1であり、第3のコンストラクトは抗FZD結合物質のVL-CLであった。上記の実施例と同様に、抗LRP6及び抗FZD結合物質の順序は反転させてもよく、その場合、抗FZD結合物質Fabは、IgG形式をとる抗LRP結合物質のN末端と融合している(図15A)。
LRP及びFZD結合物質のいくつかの異なる対をこれらの形式で集成し、Wnt応答性293レポーター細胞株(293STF)で試験した。一例として、抗LRP6E1E2結合物質421.1(PCT出願公開第WO2009/064944号に記載)を、電荷対形成アプローチを用いて抗FZD結合物質R2M3のN末端と融合して、421.1-R2M3 cpを生成した。421.1-R2M3 cpは、293レポーターアッセイにおいてWntシグナリングを用量依存的に活性化した(図15B)。5、10、または15merリンカーを用いて、抗FZD結合物質1RC07を抗LRP結合物質10SA7のN末端と融合した。3つの融合タンパク質全てがWntシグナリングを活性化した(図15C)。抗FZD結合物質1RC07と抗LRP結合物質10SG7とのさらなる融合を、IgG形式の10SG7がFab形式の1RC07と融合するように、またはFabとしての10SG7がIgGとしての1RC07のN末端と融合する反転した順序で、5、10、または15merアミノ酸リンカーを用いて行った。全ての融合分子はWntシグナリングを活性化したが、配向及びリンカー長におけるいくらかのプレファレンスが観察された(図15D及び15E)。
HC-LCクロスオーバーFab-IgG形式についても試験した。抗FZD結合物質1RC07 LCを抗LRP6結合物質10SA7 HCのN末端と融合して、1RC07-5:10SA7 L->Hを生成した。5または10merリンカーを用いて、抗LRP6E1E2結合物質1115.3(PCT出願公開第WO2009/064944号に記載)のLCを抗FZD結合物質R2M3 HCのN末端と融合して、それぞれ1115.3:5:R2M3 L->Hまたは1115.3:10:R2M3 L->Hを生成した。これらの分子もWntシグナリングを活性化した(図15F及び15G)。
実施例16
F(ab’)2形式のR2M3-26のキャラクタリゼーション
R2M3-26 IgG1をIDES(Promega,WI)により37℃にて2時間消化させた。消化産物の大多数はR2M3-26F(ab’)2であり(図16A)、一方のFabがFcに付着したままの部分消化産物(ここではR2M3-26F(ab’)2-Fcと称する)もいくらか検出され、切断されていないR2M3-26は検出されなかった。切断産物を抗ラムダレジンによって精製してFcフラグメントを除去し、次いでSEC研磨をその後に行って、R2M3-26F(ab’)2-FcからR2M3-26F(ab’)2を分離した。最終精製タンパク質のSDS-PAGEゲルを図16Bに示す。HEK293細胞におけるSTFアッセイでR2M3-26F(ab’)2活性を測定した。R2M3-26F(ab’)2はWntシグナリングを活性化することができた(図16C)。
実施例17
さらなるWntサロゲート分子のキャラクタリゼーション
FZD結合物質をLRP結合物質と融合した。この実施例では、LRP5または6結合物質をNab(またはVHH)とし、5アミノ酸リンカーを用いて(図17Aに示されているように)FZD結合物質LCのN末端と融合した。これらのタンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。精製したタンパク質を、20nM R-スポンジンの存在下、293細胞(図17B、C、D、H)、またはFZD4発現コンストラクトを同時形質移入した293細胞(図17E、F)、またはFZD9発現コンストラクトを同時形質移入した293細胞(図17G)におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験した。これらの分子は、Wntシグナリングを様々なレベルの効力及び有効性で活性化した。
実施例18
2Fv-Ig形式の10SG11-1RC07のキャラクタリゼーション
分子10SG11-1RC07は、N末端LRP結合物質(10SG11)及びFzd結合物質(1RC07)からなる。図18Aに示されているように、5アミノ酸リンカーを用いて10SG11のFvを1RC07のN末端と融合した。1RC07は、Fc変異L234A/L235A/P329Gを伴うIgG1の形態をとった。タンパク質をプロテインAアフィニティーカラムによって、次いでSECステップによって精製した。融合タンパク質を、293細胞株におけるWnt依存的レポーターアッセイで試験し、Wntシグナリングを活性化する能力を示した(図18B~C)
実施例19
R2M3-26のin vivo PK/PDキャラクタリゼーション
6週齢のC57Bl/6JマウスをJackson Laboratories(Bar Harbor,ME,USA)から入手し、ケージ当たり3頭収容した。全ての動物実験は、米国科学アカデミーが作成した「実験動物の管理と使用に関する指針」の基準に従った。動物実験のプロトコルは、Surrozen Institutional Animal Care and Use Committeeによる承認を受けた。マウスを、実験開始前に最低2日間順化させた。マウスは、精製された実験室グレードの酸性化水を無制限に利用可能とし、自由に摂食させた(2018 Teklad global 18%タンパク質げっ歯類飼料)。マウスの飼育は、30%~70%の湿度環境及び20℃~26℃の範囲の室温において12/12時間の明暗サイクルで行った。
薬物動態(PK)試験(図20A)用に群当たりn=3を使用した。静脈内(IV)または腹腔内(i.p.)注射を用いて、マウスに1mg/kg(食塩水中10ml/kg)のR2M3-26(エフェクターレスfc変異を伴う)を投与した。マウスをイソフルランで麻酔し、注射から10分、30分、1、4、24、72、または144時間後に後眼窩神経叢、尾静脈、または心臓から血液を取り出した。血液を室温で凝固させ、次いで8,000gで7分間遠心分離した。血清を取り出し、抗ヒトIgG Fcフラグメント(Jackson Immuno Research Labs NC9747692)を用いてELISAにより血清中R2M3-26濃度を測定するまで-20℃で保管した。
薬力学(PD)試験(図20B)用に群当たりn=6を使用した。マウスに指示用量(食塩水中10ml/kg)のR2M3-26をi.p.注射した。対照マウスには食塩水のみを投与した。8時間後、マウスをイソフルランで麻酔し、心臓穿刺術によって血液を収集した。血液を室温で凝固させ、次いで10,000gで7分間遠心分離した。血清を取り出し、ELISAにより血清中R2M3-26濃度を測定するまで-20℃で保管した。肝臓左葉の一部を液体窒素でスナップ凍結し、RNA解析用に-80℃で保管した。MagMAX(商標)mirVana(商標)Total RNA Isolation kit(ThermoFisher,A27828)を用いて肝臓試料からRNAを抽出した。high-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ThermoFisher,43-688-14)を用いてcDNAを産生した。TaqMan Fast Advanced Master Mix(ThermoFisher,4444963)及びMm00443610_m1 Axin2 Probe(Thermofisher,4331182)を用いてアキシン2 mRNA発現を測定した。
これらの試験から、アキシン2 mRNA発現の誘発によって示されたように、R2M3-26はin vivoで安定性であり生体利用能及び活性が高いことが示された。
実施例20
AAV送達Wntサロゲートのin vivo骨モデル及びキャラクタリゼーション
Flag及びHisタグ化18R5-DKK1cタンパク質を発現するAAVベクター(AAV-18R5-DKK1c-FlagHis)をマウスに感染させることにより、in vivo実験を行った。18R5-DKK1cは、DKK1cと融合したscFv形式のフリズルド結合抗体18R5を含む融合タンパク質である(PCT出願公開第WO2016/040895号(例えば、図5)に記載)。対照マウスを、ビヒクルのみ、ロモソズマブ、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAVベクター(AAV-CAG-GFP)、または変異DKK1cと融合した抗GFP scFVを含む融合タンパク質を発現するAAVベクター(AAV-ScFv(抗GFP)-DKK1cF234K-Flag-His)で処置した。感染から28日後に動物を屠殺し、骨ミネラル密度、骨体積、及びその他の特性を測定した。図21A~21Eに示されているように、18R5-DKK1cの全身発現は、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)スキャンによる定量において、18R5-DKK1c全身発現から早くも14日で骨ミネラル密度の有意な増加をもたらした。18R5-DKK1cの全身発現は、ナイーブマウスにおいて、DEXAスキャンによる測定で骨ミネラル密度(BMD)を増加させ(図21A)、血清中P1NP骨形成マーカーのレベルを増加させた(図21C)。AAV-ScFv(抗GFP)-DKK1cF234K及び18R5-DKK1cの血清中レベルを血清中で検出し、in vitroで定量したEC50を十分上回ることが分かった(図21B)。AAV-CAG-GFP及びAAV-ScFv(抗GFP)-DKK1cF234Kを陰性対照とした。ロモソズマブを陽性対照とし、ビヒクルのみを陰性対照とした。図20D及び20Eに示されているように、18R5-DKK1cは腰椎及び全身の骨密度も増加させる(*はP値<0.05を示し、**はP値<0.0001を示す)。図22A~22Dに示されているように、ナイーブマウスにおける処置の28日後、AAVを介した18R5-DKK1c発現は、マイクロCTによる測定において、脛骨及び大腿骨ならびに大腿骨中央骨幹の皮質厚も増加させた(****はP値<0.0001を示す)。
図23A及び23Bに示されているように、18R5-DKK1cの全身発現は、最後の8日間におけるベースラインから単一標識までのミネラル付着率の有意な増加をもたらした。
また、図24A~24Dに示されているように、18R5-DKK1cの全身発現は、骨芽細胞数の増加及び破骨細胞数の減少ももたらした。
図25A~25Cに示されているように、18R5-DKK1c処置は、生体力学試験における骨剛性と骨折に対する極限荷重とを増加させた。このことは、骨折に対する耐性の改善を示唆するものである。
これらの試験からは、AAVを用いた18R5-DKK1cの全身発現がDEXAによる測定における骨ミネラル密度(BMD)を増加させることが実証され、また、18R5-DKK1cが処置から早くも14日で、マイクロCTによる測定における骨体積を増加させることも示された。18R5-DKK1cは、治療から28日後に皮質厚も増加させた。18R5-DKK1cの全身発現は、ミネラル付着率の有意な増加をもたらし、骨芽細胞数を増加させ、破骨細胞数を減少させた。また、骨剛性及び骨折に対する極限荷重も増加させたことから、骨折に対する耐性の改善が示唆される。
実施例21
組換えタンパク質として産生したWntサロゲートのin vivo骨モデル及びキャラクタリゼーション
i.p.注射を介した様々な薬用量の組換え産生R2M3-26タンパク質を用いてマウスを処置することにより、in vivo実験を行った。対照マウスを、ビヒクルのみ(陰性対照)、ロモソズマブ(陽性対照)、抗ベータガラクトシダーゼ(陰性対照)、またはIgG2-抗GFP(陰性対照)を用いて処置した。DEXAで測定した骨ミネラル密度(BMC)及びマイクロCTで測定した骨体積を、指示された時点で縦方向にモニターした。処置から4週間後、動物を屠殺し、骨特性を測定した。R2M3-26の単回注射について実験データをモニターし、治療後2週間のデータを示す。
図26A~26Dに示されているように、組換えR2M3-26を用いた処置は、ナイーブマウスにおいて骨ミネラル密度(BMD)及び骨体積の迅速かつ持続的な増加を誘発した。骨体積及びBMDの両方が迅速に増加したことから、骨折に対する耐性が示唆される。
卵巣摘出誘発性骨粗鬆症モデルは、タンパク同化療法におけるホルモン切除に伴う骨喪失を克服する能力を判定するための、十分に確立されたハイハードルモデルである(Zhou,S.et.al.,Journal of Cellular Biochemistry,PMID:11455579)。図27A~27Cに示されているように、組換えR2M3-26処置を用いた処置は、卵巣摘出誘発性骨粗鬆症マウスモデルにおける骨喪失を回復させた。骨梁部で皮質厚の増加が観察されたことから、圧迫強度の増加が示唆される。図27Dに示されているように、R2M3-26処置は、マイクロCTによる測定において、42日後に大腿骨中央骨幹の皮質厚を増加させた。BMDも、DEXAによる測定において、R2M3-26により増加した(図27Eに示す)。
図28A~28Cに示されているように、R2M3-26の単回注射は、1週間以内に迅速な骨形成及び骨体積を誘発するのに十分である(*はP値<0.05を示す)。
図29A~29Dに示されているように、R2M3-26及び1R-C07-26を用いた高用量処置は、骨体積及び骨ミネラル密度を迅速かつ有意に増加させ、骨の生体力学的強度(破損に対する極限荷重及び剛性)を改善した。1R-C07-26は骨増加に対しロバストかつ有意な効果を示し、効果は28日間持続した。R2M3-26及び1R-C07-26の両方が、治療の28日後に、生体力学試験により、骨折に対する耐性を有意に増加させた。
図30A~Eに示されているように、R2M3-26及び1R-C07-3の高用量処置は、処置からわずか14日後に骨体積、骨ミネラル密度、及び皮質厚を迅速かつ有意に増加させた。10mpkの1R-C07-3は、この前臨床モデルで試験した他のいずれの処置よりも、骨量の増加に有効であるように思われた。
これらの試験は、ナイーブマウス及びマウス骨粗鬆症モデルにおいて、組換えタンパク質処置が骨ミネラル密度及び骨体積の迅速かつ持続的な増加を誘発し得ることを実証するものである。骨体積及び骨ミネラル密度(BMD)の両方が迅速に増加したことから、骨折に対する耐性が示唆される。IgG2-抗GFPは陰性対照とする。抗ベータガラクトシダーゼ(抗bgal)は陰性対照とした。
骨粗鬆症の卵巣摘出誘発性モデルにおいて、Wntサロゲート分子の全身骨格効果を判定するために、さらなる実験を行った。卵巣摘出時に4週齢のC57BL/6のメス(n=8/群)をシャム手術及び同齢ナイーブマウスと比較した。手術から7ヵ月後、動物に組換えWntサロゲート分子をi.p.注射し、骨粗鬆症の発症時期を確認した。実験群には、R2M3-26、1RC07-3、抗Bgal(抗体対照)、及びビヒクル(PBS)が含まれた。比較のため、別のコホートのマウスにロモソズマブ皮下注射を行った。動物を週2回処置し、4週間追跡した。
図31に示されているように、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)を用いて全身骨ミネラル密度(BMD)を毎週測定した。Wntサロゲート分子を用いた治療は、総BMDを回復するだけでなく、ナイーブ動物または非手術動物に見られる総BMDを上回る可能性もある。処置から4週間後、動物について、圧迫骨折に対する椎骨の耐性を評価した。
骨折解析が示されているように(図32)、Wntサロゲート分子を用いた処置は、圧迫骨折に対する椎骨の耐性を有意に増加させた。1RC07-3は、椎骨を圧迫骨折させるのに必要な最大力を最もロバストに増加させる。
アインホルン骨折モデル(Bonnarens F,Einhorn TA. J Orthop Res. 1984;2(1):97-101.PMID: 6491805)及びWntサロゲート分子を用いた遅延処置を使用して、この療法における骨折治癒を誘発する能力を判定した。1RCO7-3またはR2M3-26を用いた遅延処置を試験して、大腿骨の中横断(mid-traverse)骨折後にいずれかの分子が骨折治癒の増加に寄与可能であるかを判定した。骨折時に16週齢のC57BL/6メス(n=8/群)を使用した。処置を開始する前に、全ての動物において、骨折から2週間後の軟骨仮骨の存在を確認した。仮骨形成を可能にする遅延処置を用いて、既に存在する仮骨の迅速なミネラル化による純粋な骨形成シグナルを引き出すことができた。
以下の実験群:R2M3-26、1RCO7-3、抗Bgal(抗体対照)、及びビヒクル(PBS)において、動物に組換えWntサロゲート分子をi.p.注射した。比較のため、別のコホートのマウスにロモソズマブ皮下注射を行った。動物を週2回処置し、6週間追跡した。放射線撮影を使用して、実験全体における仮骨のミネラル化の変化を可視化した(図33A及びB)。Wntサロゲート処置によるミネラル化及び得られた仮骨サイズの増加は、1週間及び6週間両方の処置で明らかである。迅速な骨折治癒及び骨折に対する耐性を予測できる迅速なミネラル化を誘発するには、1週間で十分であった。1RCO7-3は、R2M3-26よりも大きな程度でミネラル化を誘発するように思われた。処置の6週間後に撮影した放射線写真は、1RCO7-3群における高度にミネラル化した仮骨の持続性を示し、一方R2M3-26群の骨折仮骨の一部は減少した(図33B及びD)。
実験全体において全身DEXAを測定して、骨折した大腿骨だけでなく対側の骨折していない大腿骨における骨ミネラル密度を調べたところ、処置後、予想された骨ミネラル密度の増加が生じた(図33C及びD)。これは、既に骨折した肢及び付属肢骨格における二次骨折のリスクを低減する。42日時における対側大腿骨のBMDを図33Cに示す。
仮骨確認後の処置から6週間後、マイクロコンピューター断層撮影で大腿骨をスキャンし、治癒後の骨折に対する耐性増加に関連した複数のパラメーターを決定した。検証した目的領域内での仮骨組織体積、その仮骨内の骨体積、そして特に骨ミネラル含量がいずれも有意に増加している(図33D)。質的に、再構築物は処置骨折内の厚い類骨及びミネラルの普及を示す。これらのパラメーターは骨折に対するロバストな耐性を示唆し、また、自発的な軟骨性仮骨形成後のWntサロゲート分子を用いた遅延処置が、骨形成の迅速かつ有意な増加を開始し得ることを示す。
別の実験では、投与スケジュールを試験して、Wntサロゲート分子療法が有意な骨タンパク同化効果を誘導し得るか、その効果がどのくらい持続するかを判定し、また休薬後、どのように骨がさらなる処置に応答するかを判定した。全身骨格効果について、タンパク同化効果、休薬、及びベースライン確立後の再投与に対する1RCO7-3の可変的投与と比較した。12週齢のC57BL/6メス(n=8/群)において、以下の実験群を用いて組換えWntサロゲート分子をi.p.注射した:実験の0日目に2つの群に1RCO7-3、1つに抗bgal(抗体対照)、及び1つにビヒクル(PBS)。比較のため、0日目に別のマウスのコホートにロモソズマブの皮下注射を行った(ロモソズマブは、骨粗鬆症に伴う骨喪失を回復させ得る抗スクレロスチン抗体である(Saag et al.,N Engl J Med.2017 Oct 12;377(15):1417-1427;PMID:28892457)。1RC07-3処置群の動物は、14日までに骨形成を有意かつ迅速に誘発した(図34)。1つの群に14日目に第2の注射を投与して、骨タンパク同化効果がさらに強化され得るかを判定した。興味深いことに、処置にかかわらず、35日後に全ての処置効果は回復し正常化した。第2ラウンドの処置の前にベースラインレベルに戻るために2週間という期間を与えた。49日目に、全ての実験群に対し第2ラウンドの処置を行った。Wntサロゲート処置した動物は迅速に応答したが、最初の処置と同じ規模ではなかった(図34)。全ての群において、最後の注射から5週間後、新たな骨形成は行われなくなった。このことは、単回注射は骨形成を有意に増加可能であるが、タンパク同化効果は迅速に喪失することを示す。このことは、タンパク同化効果を維持するために、骨吸収抑制剤がWntサロゲート療法との組合せで求められ得ることを示唆するものである。
ロモソズマブの作用機序は、内在的Wntシグナリングの阻害物質(スクレロスチン)を除去することによる骨形成の刺激に依存する。動物にWntサロゲート分子及びロモソズマブを用いて処置して、組合せ試験においてWntサロゲート分子処置がロモソズマブと協同可能であるかを判定した。
10週齢のC57BL/6オス(n=8/群)に対し、以下の実験群において、組換えWntサロゲート分子とロモソズマブとの組合せをi.p.注射した:1RC07-3(0.1mpk)、1RCO7-3(1mpk)、1RCO7-3(10mpk)、1RCO7-3(0.1mpk)+ロモソズマブ(25mpk)、1RCO7-3(1mpk)+ロモソズマブ(25mpk)、1RCO7-3(10mpk)+ロモソズマブ(25mpk)、ロモソズマブ(25mpk)単独、抗Bgal(抗体対照)、及びビヒクル(PBS)。動物を週2回処置し、3週間追跡した。
全身BMDを毎週測定した。結果を図35に示す。この試験の結論は、内在的ロモソズマブは、高用量の1RC07-3の存在下でさらなる骨成長を刺激し得るというものである。これらのデータはさらに、ピークタンパク同化作用がまだ10mpk 1RCO7-3処置に達していないことを示唆する。また、これらのデータは、ロモソズマブが1RCO7-3の存在下であっても骨形成を刺激し得ることも示す。全体的には、この試験は、Wntサロゲート分子処置が、週2回の処置からわずか21日後に、骨タンパク同化効果を強化するようにロモソズマブと協同し得ることを示す。
全体の骨における遺伝子発現の変化を、マウスにおけるWntサロゲート分子療法後の時間経過で測定して、この療法がどのように増殖及び骨形成に関連する遺伝子マーカーの発現を制御するかを評価した。13週齢のC57BL/6メス(n=5/群)に1RCO7-3または抗Bgal(抗体対照)を1回i.p.注射した。比較のため、別のコホートのマウスにロモソズマブ皮下注射を行った。処置から8、24、48、及び120時間後に動物のコホートを屠殺し、RNA抽出のために脛骨及び血清を単離し、瞬間凍結した。ELISAを使用して、上記のように実験の間の血清中の治療分子のレベルを測定した(図36)。
骨からのRNA精製のため、新たに屠殺した動物からの切除脛骨を以下のように処理した:脛骨の両端を切って髄腔を露出させ、髄腔を30ゲージ針によって氷冷食塩水で流した。全ての筋組織及び軟骨が確実に除去されるようにステップを実施した。骨は完全に白色に見え、赤色の骨髄構成要素は残留していなかった。脛骨を1.5mLエッペンドルフ管に入れ、液体窒素で瞬間凍結した。溶解させるため、単一の組織溶解ビーズを骨の入った管に入れ、凍結した骨及びビーズに直接トリゾールを添加した。高速の組織溶解器を使用して完全に均質化した。次いで、ホモジェネートをクロロホルム抽出に供して核酸相を分離した。RNeasy mini kit(Quagen)を用いてさらなる単離及び精製を行った。
脛骨から単離したRNAについて、Runt関連転写因子2(RunX2)、コラーゲンI型アルファ1鎖(Col1A1)、象牙質マトリックス酸性リンタンパク質1(Dmp1)、アルカリホスファターゼ(Alp)、核内因子カッパB活性化受容体(RankL)、Dickkopf WNTシグナリング経路阻害物質1(Dkk1)、スクレロスチン(Sost)、サイクリンD1(Ccnd1)、アキシン2、及びKi67の相対転写レベルを試験した。
抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)処置と比較して、諸時点にわたる遺伝子発現シグネチャーは、Wntサロゲート分子療法において明確であり、ロモソズマブ処置が引き起こす場合よりもロバストなアキシン2及びKi67発現を誘発する。
実施例22
AAV送達Wntサロゲートのin vivo肝臓再生モデル及びキャラクタリゼーション
Flag及びHisタグ化18R5-DKK1cタンパク質を発現するAAVベクター(AAV-18R5-DKK1c-FlagHis)をおよそ8週齢のC57BL/6Jマウスに感染させることにより、in vivo実験を行った。18R5-DKK1cは、DKK1cと融合したscFv形式のフリズルド結合抗体18R5を含む融合タンパク質である(PCT出願公開第WO2016/040895号(例えば、図5)に記載)。対照マウスに対し、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)のみまたはロモソズマブ(10mg/kg)を皮下注射し、または緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAVベクター(AAV-CAG-GFP)、もしくは変異DKK1cと融合した抗GFP scFVを含む融合タンパク質を発現するAAVベクター(AAV-ScFv(抗GFP)-DKK1cF234K-Flag-His)を静脈内(IV)注射した。感染から28日後、動物を秤量し屠殺した。肝臓を秤量し、肝臓対体重比を計算した。小腸及び結腸をリン酸緩衝食塩水で流し、穏やかに圧迫して内容物を排出させることにより、内容物を除去した。次いで、小腸及び結腸の内容物を秤量した。
18R5-DKK1c-FlagHisの全身発現は、肝臓重量の有意な増加をもたらした(図37A)。陰性対照であるeGFPまたは抗eGFP-Dkk1cF234Kの全身発現は、肝臓対体重比に影響を及ぼさなかった。ロモソズマブ組換えタンパク質またはビヒクル対照の投与は、肝臓対体重比に影響を及ぼさなかった。
いかなる処置も、小腸(図37B)または結腸(図37C)の体重との比に影響を及ぼさなかった。
これらの試験からは、18R5-DKK1c-FlagHisが肝臓重量を増加させ、ただし小腸または大腸の重量は増加させないことが示された。このことは、18R5-DKK1c-FlagHisが肝臓再生を促進し得ることを示唆するものである。
実施例23
組換え産生したWntサロゲートのin vivo肝臓再生モデル及びキャラクタリゼーション
マウスに対し、様々な薬用量の組換え産生した抗eGFP、R2M3-26、1R-C07-26、ロモソズマブ、またはRspo2タンパク質を用いて処置することにより、in vivo実験を行った。Rspo2タンパク質は、Rspo2遺伝子のショートスプライスバリアント及びヒトFcフラグメントの融合タンパク質である。
ある試験では、ケージ当たりマウス4頭を収容し、処置群当たりn=8を使用した。およそ8週齢のC57BL6/Jマウスに、組換えタンパク質の抗eGFP(1mg/kg)、R2M3-26(1または10mg/kg)、または1R-C07-26(1、5、または10mg/kg)を週2回4週間、腹腔内(i.p.)投与した。加えて、マウスの群にロモソズマブ(30mg/kg)またはPBSビヒクル対照を皮下投与した。
開始時及び処置の全体においてマウスを秤量した。組換えタンパク質を用いたいずれの処置も、総体重に有意な影響を及ぼさなかった(図38A)。28日目に肝臓を秤量し、肝臓対体重比を計算した(図38B)。R2M3-26の最高用量(10mg/kg)は、肝臓対体重比の有意な増加をもたらした。他の処置はいずれも肝臓重量に有意な影響を及ぼさなかった。
R2M3-26に応答した肝臓重量の増加は、この組換えタンパク質が肝臓再生を促進し得ることを示唆するものである。
別の試験では、ケージ当たりマウス5頭を収容し、処置群当たりn=10を使用した。およそ8週齢のC57BL/6Jマウスに、抗eGFP(0.56mg/kg)、R2M3-26(0.3mg/kg)、もしくはRspo2(0.46mg/kg)単独、またはR2M3-26(0.1mg/kg)とRspo2(0.46mg/kg)との組み合わせを含む単回i.p.注射を投与した。
注射から24または48時間後、マウスを安楽死させた。肝臓左葉の一部を液体窒素でスナップ凍結し、RNA解析用に-80℃で保管した。Mm00432359_m1 Ccnd1プローブ及びMm01278617_m1 Ki67プローブ(Thermofisher,4331182)を用いてqPCRを実施することにより、サイクリンD1及びKi67の発現を測定した。肝臓左葉のさらなる一部を、免疫組織化学解析用にホルマリンで固定しパラフィン包埋した。切片を抗増殖細胞核抗原(PCNA)(Abcam,ab18197)または抗ホスホヒストンH3(pH3)ウサギ抗体(Abcam,ab47297)で染色した。画像処理ソフトウェアImage Jを用いて陽性核の数をカウントした。
Rspo2は単独でKi67(図39A)及びサイクリンD1(図39B)のmRNA発現を増加させた。R2M3-26と組み合わせた場合、Rspo2は、組換えタンパク質を用いた処置から24及び48時間後に、Rspo2単独の場合よりもさらにKi67及びサイクリンD1の発現を増加させた。Rspo2は単独で、肝臓切片内のPCNA(図39C)及びpH3(図39D)陽性核の数を増加させた。R2M3-26と組み合わせた場合、Rspo2は、組換えタンパク質を用いた処置から48時間後に、Rspo2単独の場合よりもさらにPCNA及びpH3陽性核の数を増加させた。
これらの試験は、増殖マーカーであるKi67 mRNA、サイクリンD1 mRNA、及びPCNAの陽性核、ならびにpH3有糸分裂マーカーがR2M3-26及びRspo2組換えタンパク質によって誘発されることを示し、これらの組換えタンパク質が肝臓再生を促進し得ることを示唆するものである。
実施例24
AAV送達Wntサロゲートのin vivo慢性肝損傷モデル及びキャラクタリゼーション
チオアセタミド(TAA)及びCCl4誘発性の2つの肝硬変マウスモデルにおける2つのin vivo実験を行って、18R5-DKK1c-FlagHisまたはRspo2タンパク質を発現するAAVベクターが慢性肝損傷に及ぼす効果を試験した。6週齢のC57BL/6Jマウスの飲水に、TAA処置期間全体にわたって300mg/Lの濃度のTAAを添加した。ケージ当たり5頭のマウスを収容し、n=10を使用した。ただし、TAA処置を伴わない対照群は例外とし、群当たりn=5を使用した。
試験1(図40A、40C、40E、40G~H)では、TAA処置ありマウス(n=10)またはTAA処置なしマウス(n=5)を秤量し、飲水にTAAを添加してから9週間後に屠殺して、ベースライン値を測定した。肝臓を秤量し、mRNA及び組織学的解析のために肝臓試料を収集した。残りのマウスの飲水においてはTAA追加を維持し、これらのマウスに、強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)(3e10ゲノム粒子(GC))、18R5-DKK1c-FlagHis(3e10または1e11 GC)、もしくはRspo2タンパク質(1e11 GC)、または18R5-DKK1c-FlagHis(3e10 GC)とRspo2(1e11 GC)との組合せを発現するAAVベクターをIV注射した。5頭の同齢ナイーブ動物(TAAなし)を陰性対照として飼育した。AAV注射から3週間後、全てのマウスを秤量し安楽死させた。肝臓を秤量し、mRNA及び組織学的解析のために肝臓試料を収集した。
18R5Dkk1FHまたはRspo2を用いた処置は、TAAへの継続的曝露を経たマウスにおいて肝臓重量(図40C)及び肝臓対体重比(図40E)の有意な増加をもたらした。18R5Dkk1FHとRspo2との組合せを用いた処置は、いずれかの処置単独で観察された増加を上回る肝臓重量及び肝臓対体重比のさらなる増加をもたらした。
18R5Dkk1FHとRspo2との処置の組合せは、線維化マーカーであるCol1a1 mRNA発現の減少をもたらした(図40G)。組織学的肝臓切片をシリウスレッドで染色して、線維性領域内のコラーゲンの蓄積を可視化した(図40H)。Image J解析ソフトウェアを用いた赤色のパーセンテージの定量化により、TAA処置マウスにおける線維性領域の有意な増加が示された。18R5Dkk1FHとRspo2との組合せは、eGFP陰性対照で処置したマウスと比較した場合に線維性領域増加からの回復をもたらした。Rspo2単独を用いた処置も有意な回復をもたらしたが、組合せ処置よりも小さな回復であった。
試験2(図40B、40D、40F)では、マウスをTAA追加水に11週間曝露し、その後AAV処置の2日前に標準的な飲水に戻した。AAV処置の開始時にTAA曝露あり(n=10)または曝露なし(n=5)マウスを秤量し、屠殺してベースライン測定用に肝臓試料を収集した。残りのマウスに、強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)(1.3e11ゲノム粒子(GC))、18R5-DKK1c-FlagHis(3e10または1e11 GC)、もしくはRspo2タンパク質(1e11 GC)、または18R5-DKK1c-FlagHis(3e10 GC)とRspo2(1e11 GC)との組合せを発現するAAVベクターを注射した。5頭の同齢ナイーブ動物(TAAなし)を陰性対照として飼育した。AAV注射から3週間後、全てのマウスを秤量し安楽死させた。肝臓を秤量し、mRNA及び組織学的解析のために肝臓試料を収集した。
試験1で観察されたものと同様の肝臓重量及び肝臓対体重比の増加が、18R5-DKK1c-FlagHis及びRspo2のいずれか単独または組合せを用いて処置したマウスで観察された(図40D、40F)。
これらの試験からは、18R5-DKK1c-FlagHis及びRspo2が、TAA誘発性肝硬変モデルにおいて肝臓重量を増加させ線維化マーカーを低減し得ることが示される。これらの結果は、18R5-DKK1c-FlagHis及びRspo2が、慢性肝損傷の後の肝臓組織修復を促進し得ることを示唆するものである。
実施例25
組換え産生したWntサロゲートのin vivo慢性肝損傷モデル及びキャラクタリゼーション
肝硬変のチオアセタミド(TAA)誘発性及びCCl4誘発性マウスモデルにおいて、マウスに対し、組換え産生した抗eGFP、R2M3-26、及びRspo2タンパク質を用いて処置することによってin vivo実験を行った。
TAA誘発性肝硬変モデルでは、6週齢のオスマウスをTAA追加飲水(300mg/L)におよそ22週間曝露した(図41A)。組換えタンパク質を用いた処置を開始する2日前にTAA曝露を除去し、マウスに新鮮な飲水を提供した。ケージ当たりマウス5頭を収容し、処置群当たりn=10を使用した。単一処置試験(図41B、41D、41F、41H、41J、41L)では、マウスに抗eGFP(1mg/kg)またはRspo2(1mg/kg)を週2回i.p.注射した。組合せ処置試験(図41C、41E、41G、41I、41K、41M)では、マウスに抗eGFP(1.3mg/kg)またはR2M3-26(0.3mg/kg)とRspo2(1mg/kg)との組合せを週2回i.p.注射した。次いで、処置の開始後3、7、または14日目にマウスを秤量し屠殺した。両方の試験の0日目及び14日目に、TAAへの曝露なしの対照マウス群(群当たりn=5)を安楽死させた。
Rspo2タンパク質の単独またはR2M3-26との組合せを用いた処置は、肝臓対体重比の増加(図41B及び41C)と、アキシン2発現の増加によって示されるWntシグナリング経路の一過性刺激(図41D及び41E)とをもたらした。Rspo2タンパク質の単独またはR2M3-26との組合せを用いた処置は、以下の増殖マーカー:サイクリンD1(図41F、41G)及びKi67(図41H及び41I)mRNA発現、PCNA(図41J、41K)及びpH3(図41L、41M)陽性核を誘発した。
さらなる試験では、プロトロンビン時間測定のために血漿を収集した。TAA誘発性肝硬変モデルでは凝固時間が障害され、これは、TAA曝露なしの正常マウスと比較した場合に、TAAに曝露したマウスにおけるプロトロンビン(PT)試験対正常値の比が増加することによって例示される(図41N)。Rspo2(1mg/kg)及びR2M3-26(0.3mg/kg)を用いた処置は、週2回のRspo2及びR2M3-26の処置から7日後及び14日後におけるPT試験/PT正常比の減少によって示されるように、PT時間の延長を回復させた。
これらの試験からは、Rspo2及びR2M3-26が肝臓細胞の増殖を刺激し、TAA誘発性肝硬変モデルにおけるプロトロンビン時間などの肝細胞の機能的活性を改善し得ることが示される。これらの結果は、Rspo2及びR2M3-26が、慢性肝疾患における肝臓組織修復を促進し得ることを示唆するものである。
CCl4誘発性肝硬変モデルでは、6週齢のC57BL/6Jオスマウスに鉱油中2ml/kg CCl4を週2回8週間i.p.注射した(図42A)。最後のCCl4注射から3日後、マウスに以下の組換えタンパク質を週2回i.p.注射した:抗βガラクトシダーゼ(10mg/kg)、Rspo2(1もしくは10mg/kg)、またはR2M3-26(0.3mg/kg)とRspo2(1mg/kg)との組合せ。3つのさらなる対照群を含め、1つの群にはCCl4(ただしタンパク質なし)を注射し、1つの群には鉱油を注射し、1つは未処置の同齢ナイーブ群とした。各群当たりn=8を使用した。組換えタンパク質を用いた処置から2週間後、マウスを秤量し屠殺した。プロトロンビン時間測定のために血漿を収集した。肝臓を秤量し、組織学的解析のために肝臓試料を収集した。
R2M3-26及びRspo2を用いた処置は、抗βガラクトシダーゼ陰性対照を用いた処置と比較した場合に、肝臓対体重比の有意な増加をもたらした(図42B)。Rspo2(10mg/kg)またはR2M3-26とRspo2との組合せを用いた処置は、プロトロンビン時間の有意な減少をもたらした(42C)。Rspo2(10mg/kg)またはR2M3-26とRspo2との組合せを用いた処置は、CCl4によって誘発された線維性領域の有意な回復をもたらした(図42D)。
この試験からは、Rspo2及びR2M3-26が肝臓重量の増加を誘発し、プロトロンビン時間などの肝細胞の機能的活性を改善し、CCl4誘発性肝硬変モデルにおける線維化マーカーを低減し得ることが示された。これらの結果は、Rspo2及びR2M3-26が、慢性肝疾患における肝臓組織修復を促進し得ることを示唆するものである。
実施例26
組換え産生Wntサロゲートのin vivo急性肝損傷モデル及びキャラクタリゼーション
急性肝損傷のアセトアミノフェン誘発性マウスモデルを用いて、マウスに対し、組換え産生した抗eGFP、R2M3-26、及びRspo2タンパク質を用いて処置することによってin vivo実験を行った。
8週齢のC57BL/6オスマウスをケージ当たり5頭収容した。群当たりn=10を使用した。マウスを終夜12時間絶食させた。アセトアミノフェン(APAP)を致死量以下の用量(300mg/kg)でi.p.投与した。
第1の試験では、APAP注射の直後または3もしくは6時間後に抗eGFP(0.3mpk)またはR2M3-26(0.3mpk)をi.p.注射した(図43)。ALT測定のために、APAP注射の24及び48時間後に血清試料を収集した。APAP注射の48時間後にマウスを屠殺し、mRNA解析のために肝臓試料を収集した。
R2M3-26処置はALTレベルに有意な影響を及ぼさなかった(図43B)。R2M3-26を用いた処置は、サイクリンD1(図43C)及びKi67(図43D)mRNAを有意に誘発し、APAP処置単独が誘発したレベルを上回った。
第2の試験では、APAP注射の直後または3もしくは6時間後にヒトFc(0.46mg/kg)またはRspo2(0.46mg/kg)をi.p.注射した(図44)。APAP注射の24及び48時間後に血清試料を収集した。APAP注射の48時間後に肝臓試料を収集した。Rspo2処置はALT血清中レベルに有意な影響を及ぼさなかった(図44B)。Rspo2を用いた処置は、サイクリンD1(図44C)及びKi67(図43D)mRNAを有意に誘発し、APAP処置単独が誘発したレベルを上回った。
第3の試験では、APAP投与の3時間後に抗eGFP(0.56mg/kg)またはR2M3-26(0.1mg/kg)とRspo2(0.46mg/kg)との組合せをi.p.注射した。ALT測定及びmRNA解析のために、APAP注射の24、36、48、及び60時間後に血清及び肝臓試料を収集した。
R2M3-26とRspo2との組合せ処置はALTレベルに有意な影響を及ぼさなかった(図45B)。R2M3-26及びRspo2を用いた処置は、サイクリンD1(図45C)及びKi67(図45D)mRNAを有意に誘発し、APAP処置単独が誘発したレベルを上回った。
さらなる試験を実施して、Rspo2及びR2M3-26が、600mg/kgのアセトアミノフェンの用量で処置したマウスの生存期間に及ぼす効果を評価した(図46)。APAP投与から3時間後に、抗eGFP(0.3mg/kg)、R2M3-26(0.3mg/kg)、Rspo2(0.46mg/kg)、またはR2M3-26(0.1mg/kg)とRspo2(0.46mg/kg)との組合せをi.p.注射した。次の96時間にわたり1日数回マウスをモニターした。R2M3-26(図46B)、Rspo2(図46C)、またはR2M3-26とRspo2との組合せ(図46D)を用いて処置した群において、一貫した生存期間改善の傾向が観察された。
これらの試験からは、Rspo2及びR2M3-26が増殖マーカーを、APAP誘発性急性損傷モデルで自発的に誘発されるものを上回って誘発し得ることが示される。これらの結果は、Rspo2及びR2M3-26が、急性肝損傷後の肝臓組織修復を強化し得ることを示唆するものである。
上記の様々な実施形態は、組み合わせてさらなる実施形態をもたらすことができる。本明細書で参照されている、及び/または出願データシートに列挙されている全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。実施形態の態様は、なおさらなる実施形態を提供するために様々な特許、出願、及び刊行物の概念を用いる必要がある場合、修正することができる。これら及びその他の変更は、上記の詳細な説明に照らして、実施形態に対し行われ得る。
概して、以下の請求項において、使用されている用語は、請求項を明細書及び請求項で開示されている特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、このような用語は、請求項が権利を有する全ての範囲の等価物と共に、全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、請求項は本開示による限定を受けない。