以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さない。
[実施の形態1]
<電力変換装置の適用例>
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置が適用される無停電電源装置1の構成例を示す回路ブロック図である。無停電電源装置1は、商用交流電源21からの三相交流電力を直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷24に供給するように構成される。図1および図2では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(例えばU相)に対応する部分の回路のみが示されている。
図1を参照して、無停電電源装置1は、交流入力端子T1、バイパス入力端子T2、バッテリ端子T3、および交流出力端子T4を備える。交流入力端子T1は、商用交流電源21から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス入力端子T2は、バイパス交流電源22から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス交流電源22は、商用交流電源であってもよいし、発電機であってもよい。
バッテリ端子T3は、バッテリ23に接続される。バッテリ23は直流電力を蓄える。バッテリ23は「電力貯蔵装置」の一実施例に対応する。バッテリ23の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。交流出力端子T4は負荷24に接続される。負荷24は交流電力によって駆動される。
無停電電源装置1は、電磁接触器2,8,14,16、電流検出器3,11、コンデンサ4,9,13、リアクトル5,12、コンバータ6、双方向チョッパ7、インバータ10、半導体スイッチ15、操作部17、および制御装置18をさらに備える。
電磁接触器2およびリアクトル5は、交流入力端子T1とコンバータ6の入力ノードとの間に直列接続される。コンデンサ4は、電磁接触器2およびリアクトル5の間のノードN1に接続される。電磁接触器2は、無停電電源装置1の使用時にオンされ、例えば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフされる。
ノードN1に現れる交流入力電圧Viの瞬時値は、制御装置18によって検出される。交流入力電圧Viの瞬時値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。電流検出器3は、ノードN1に流れる交流入力電流Iiを検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置18に与える。
コンデンサ4およびリアクトル5は、低域通過フィルタを構成し、商用交流電源21からコンバータ6に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ6で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源21に通過することを防止する。
コンバータ6は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時には、交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1に出力する。商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時には、コンバータ6の運転は停止される。コンバータ6の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。コンバータ6は「コンバータ」の一実施例に対応する。
コンデンサ9は、直流ラインL1に接続され、直流ラインL1の電圧を平滑化させる。直流ラインL1に現れる直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置18によって検出される。直流ラインL1は双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードは電磁接触器8を介してバッテリ端子T3に接続される。
電磁接触器8は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、例えば無停電電源装置1およびバッテリ23のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T3に現れるバッテリ23の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
双方向チョッパ7は、制御装置18によって制御され、通常時には、コンバータ6によって生成された直流電力をバッテリ23に蓄え、停電時には、バッテリ23の直流電力を直流ラインL1を介してインバータ10に供給する。
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ23に蓄える場合には、直流ラインL1の直流電圧VDCを降圧してバッテリ23に与える。また、双方向チョッパ7は、バッテリ23の直流電力をインバータ10に供給する場合には、バッテリ23の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力する。直流ラインL1は、インバータ10の入力ノードに接続されている。
インバータ10は、制御装置18によって制御され、コンバータ6または双方向チョッパ7から直流ラインL1を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。すなわち、インバータ10は、通常時にはコンバータ6から直流ラインL1を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、停電時にはバッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ10の出力で夏が、所望の値に制御可能になっている。インバータ10は「インバータ」の一実施例に対応する。
インバータ10の出力ノード10aはリアクトル12の第1の端子に接続され、リアクトル12の第2の端子(ノードN2)は電磁接触器14を介して交流出力端子T4に接続される。コンデンサ13はノードN2に接続される。
電流検出器3は、インバータ10の出力電流Ioの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置18に与える。ノードN2に現れる交流出力電圧Voの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
リアクトル12およびコンデンサ13は、低域通過フィルタを構成し、インバータ10で生成された商用周波数の交流電力を交流出力端子T4に通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の信号が交流出力端子T4に通過することを防止する。
電磁接触器14は、制御装置18によって制御され、インバータ10によって生成された交流電力を負荷24に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。
半導体スイッチ15は、サイリスタを含み、バイパス入力端子T2と交流出力端子T4との間に接続される。電磁接触器16は、半導体スイッチ15と並列接続される。半導体スイッチ15は、制御装置18によって制御され、通常はオフされ、インバータ10が故障した場合は瞬時にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する、半導体スイッチ15は、オンしてから所定時間経過後にオフする。
電磁接触器16は、インバータ給電モード時にはオフされ、バイパス給電モード時にはオンされる。また、電磁接触器16は、インバータ10が故障した場合にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する。つまり、インバータ10が故障した場合には、半導体スイッチ15が瞬時に所定時間だけオンするとともに電磁接触器16がオンする。これにより、半導体スイッチ15が過熱されて損傷することを防止できる。
操作部17は、無停電電源装置1のユーザによって操作される複数のボタン、種々の情報を表示するディスプレイなどを含む。ユーザが操作部17を操作することにより、無停電電源装置1の電源をオンおよびオフしたり、バイパス給電モードおよびインバータ給電モードのうちの何れか一方のモードを選択することが可能となっている。
制御装置18は、プロセッサ180およびメモリ182を内蔵し、メモリ182に記憶された情報や各センサからの情報に基づいて無停電電源装置1の各機器を制御する。すなわち、制御装置18は、交流入力電圧Viの検出値に基づいて停電が発生したか否かを検出し、交流入力電圧Viの位相に同期してコンバータ6およびインバータ10制御する。
また、制御装置18は、通常時は、直流電圧VDCが所望の参照電圧VDCrになるようにコンバータ6を制御し、停電時はコンバータ6の運転を停止させる。
さらに、制御装置18は、通常時は、バッテリ23の端子間電圧VBが所望の参照電圧VBrになるように双方向チョッパ7を制御し、停電時は、直流電圧VDCが所望の参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ7を制御する。
次に、無停電電源装置1の動作について説明する。通常時において、インバータ給電モードが選択されると、半導体スイッチ15および電磁接触器16がオフするとともに、電磁接触器2,8,14がオンする。
商用交流電源21から供給される交流電力は、コンバータ6によって直流電力に変換される。コンバータ6によって生成された直流電力は、双方向チョッパ7によってバッテリ23に蓄えられるとともに、インバータ10に供給される。インバータ10は、コンバータ6から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷24に供給する。負荷24はインバータ10から供給される交流電力によって駆動される。
商用交流電源21からの交流電力の供給が停止されると、すなわち停電が発生すると、コンバータ6の運転が停止され、バッテリ23の直流電力が双方向チョッパ7によってインバータ10に供給される。インバータ10は、双方向チョッパ7からの直流電力を交流電力に変換して負荷24に供給する。したがって、バッテリ23に直流電力が蓄えられている期間は、負荷24の運転を継続することができる。
また、インバータ給電モード時においてインバータ10が故障した場合には、半導体スイッチ15が瞬時にオンし、電磁接触器14がオフするとともに、電磁接触器16がオンする。これにより、バイパス交流電源22からの交流電力が半導体スイッチ15および電磁接触器16を介して負荷24に供給され、負荷24の運転が継続される。一定時間後に半導体スイッチ15がオフされ、半導体スイッチ15が過熱されて損傷することが防止される。
図2は、図1に示したインバータ10およびその周辺部の構成を示す回路ブロック図である。図2において、コンバータ6とインバータ10との間には、正側の直流ラインL1と負側の直流ラインL2とが接続されている。コンデンサ9は、直流ラインL1,L2間に接続されている。
通常時は、コンバータ6は、商用交流電源21からの交流入力電圧Viを直流電圧VDCに変換して直流ラインL1,L2間に出力する。停電時は、コンバータ6の運転は停止され、双方向チョッパ7が、バッテリ23の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインL1,L2間に直流電圧VDCを出力する。
インバータ10は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1~Q4およびダイオードD1~D4を含む。IGBTQ1~Q4は「スイッチング素子」の一実施例に対応する。スイッチング素子には、IGBT以外に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの任意の自己消弧型のスイッチング素子を用いることができる。
IGBTQ1,Q3のコレクタはともに直流ラインL1に接続され、それらのエミッタは出力ノード10a,10bにそれぞれ接続される。IGBTQ2,Q4のコレクタは出力ノード10a,10bにそれぞれ接続され、それらのエミッタはともに直流ラインL2に接続される。ダイオードD1~D4は、それぞれIGBTQ1~Q4に逆並列に接続される。ダイオードD1~D4の各々は、対応するIGBTのオフ時にフリーホイール電流を流すために設けられている。なお、スイッチング素子がMOSFETである場合には、フリーホイールダイオードは寄生のダイオード(ボディダイオード)で構成される。
インバータ10の出力ノード10aはリアクトル12を介してノードN2に接続され、出力ノード10bは中性点NPに接続される。コンデンサ13は、ノードN2と中性点NPとの間に接続される。
IGBTQ1,Q4とIGBTQ2,Q3とは、交互にオンされる。IGBTQ1,Q3がオンされるとともにIGBTQ2,Q3がオフされると、コンデンサ9の正側端子(直流ラインL1)がIGBTQ1を介して出力ノード10aに接続されるとともに、出力ノード10bがIGBTQ4を介してコンデンサ13の負側端子(直流ラインL2)に接続され、出力ノード10a,10b間にコンデンサ9の端子間電圧が出力される。すなわち、出力ノード10a,10b間に正の直流電圧が出力される。
IGBTQ2,Q3がオンされるとともにIGBTQ1,Q4がオフされると、コンデンサ9の正側端子(直流ラインL1)がIGBTQ3を介して出力ノード10bに接続されるとともに、出力ノード10aがIGBTQ2を介してコンデンサ9の負側端子(直流ラインL2)に接続され、出力ノード10b,10a間にコンデンサ9の端子間電圧が出力される。すなわち、出力ノード10a,10b間に負の直流電圧が出力される。
上述したIGBTQ1~Q4のオンオフは、インバータ制御回路30によって制御される。インバータ制御回路30は制御装置18に含まれている。
ここで、インバータ10の動作上の問題点について説明する。図3は、図2に示したインバータ10の動作を説明するための図である。
図3の上段において、破線はインバータ10の出力電流Ioの目標値である電流指令値Io*の波形を示している。電流指令値Io*は、後述するように、参照交流電圧Vorに基づいて生成される。電流指令値Io*は商用周波数の正弦波信号であり、その位相は三相(U相、V相、W相)のうちの対応する相(ここではU相)の参照交流電圧Vorの位相に同期している。
図3の上段において、実線は、電流検出器11により検出されるインバータ10の出力電流Io(ここではU相電流)の波形を示している。図3の下段は、インバータ10の出力ノード10a,10b間の出力電圧Voの波形を示している。
インバータ制御回路30では、電流指令値Iorと電流検出器11により検出される出力電流Ioとの偏差ΔIoが0となるように電圧指令値が生成され、生成された電圧指令値に基づいてインバータ10のIGBTQ1~Q4のオンオフが制御される。
ただし、インバータ10の出力ノード10a,10bにはリアクトル12が接続されているため、インバータ10の出力電流Ioは、電流指令値Iorに従った正弦波信号に対して高周波(スイッチング周波数に相当)のリプル電流Irippleが重畳された波形となる。そのため、図3に示すように、出力電流Ioの正側のピーク値は、電流指令値Io*の正側のピーク値よりもリプル電流Iripple分だけ大きい値となる。また、出力電流Ioの負側のピーク値は、電流指令値Io*の負側のピーク値よりも小さい値となる。
ここで、インバータ10においては、IGBTQ1~Q4に過電流が流れてIGBTQ1~Q4が損傷することを防止するための対策として、IGBTの定格電流に応じて定められる過電流検出レベルよりも低い電流値に、出力電流Ioのリミット値(以下、「出力電流リミット値」とも称する)が設定されている。出力電流リミット値は、出力電流Ioの上限値(正値)と、出力電流Ioの下限値(負値)とによって規定される。
図3において、Iovrは正側の過電流検出レベルを示し、Io_limは正側の出力電流リミット値(すなわち、出力電流Ioの上限値)を示している。なお、図示は省略するが、負側の出力電流リミット値Io_lim(すなわち、出力電流Ioの下限値)は、負側の過電流検出レベルIovrよりも大きい。
そして、インバータ10の制御において、出力電流リミット値Io_limに従ってインバータ10の出力電流Ioを制限することにより、IGBTにおける過電流の発生を抑制することができる。具体的には、インバータ制御回路30では、出力電流リミット値Io_limに応じて、電流指令値Io*のリミット値(以下、「電流指令リミット値」とも称する)が予め設定される。インバータ制御回路30は、この電流指令リミット値に従う範囲内に電流指令値Io*を制限するように構成される。これによると、制限された電流指令値Io*に従って出力電流Ioが制御されることとなり、結果的に出力電流Ioを出力電流リミット値Io_limに従う範囲内に収めることが可能となる。
このような過電流保護機能を実現しつつ、インバータ10のスイッチング素子が有する電流駆動能力を最大限に発揮させるためには、電流指令リミット値をどのように設定するかが重要となってくる。本実施の形態は、電流指令リミット値の設定方法を提供するものである。
インバータ10においては、入力ノードに印加される直流電圧VDCが大きくなるに従って、出力電流Ioにおける正弦波信号のピーク値が大きくなる。そのため、無停電電源装置1の運用上想定される最大の直流電圧VDCの下でインバータ10を動作させた場合においても、電流指令値Io*に従う出力電流Ioが、出力電流リミット値Io_limに従う範囲を超えることがないように、電流指令リミット値を設定する必要がある。
また、図3に示すように、インバータ10の出力電流Ioはリプル電流Irippleを含んでいる。リプル電流Irippleは次式(1)で表すことができる。
Iripple=VDC/(2L)×1/fsw/2 ・・・(1)
式(1)中、Lはリアクトル12のインダクタンスであり、fswはIGBTQ1~Q4のスイッチング周波数である。
式(1)から分かるように、リプル電流Irippleの大きさは直流電圧VDCおよびインダクタンスLによって決まる。ただし、インダクタンスLは固定値であるため、リプル電流Irippleは、専ら直流電圧VDCに応じて変化する。直流電圧VDCが大きくなるに従って、リプル電流Irippleも大きくなる。
このように直流電圧VDCが大きくなるに従って、出力電流Ioにおける正弦波信号のピーク値が増加するとともに、リプル電流Irippleも増加する。したがって、運用上最大の直流電圧VDCの下においても出力電流Ioが出力電流リミット値Io_limを超えることがないように、電流指令リミット値を設定することが求められる。
その一方で、無停電電源装置1の運用では、通常、直流電圧VDCは上述した運用上想定される最大電圧よりも低い電圧値に制御されている。そのため、正弦波信号のピーク値およびリプル電流Irippleともに、直流電圧VDCが最大電圧のときに比べて電流値が小さくなる。したがって、上述のように直流電圧VDCの最大電圧を考慮して電流指令リミット値を設定した場合には、実際の運用において、インバータ10の出力電流Ioは、出力電流リミット値Io_limに対して十分な余裕を持たせた設計となってしまう。つまり、インバータ10のスイッチング素子の電流駆動能力を最大限に発揮できていない点が問題となる。
そこで、本実施の形態では、直流電圧VDCの大きさに応じて、電流指令リミット値を可変に設定する構成とする。これにより、過電流保護機能を実現しつつ、インバータ10のスイッチング素子の電流駆動能力を最大限に発揮させることを可能とする。
図4は、図2に示したインバータ制御回路30の構成を示す回路ブロック図である。
図4を参照して、インバータ制御回路30は、電圧指令部31、三角波発生器32、比較器33、バッファ34、インバータ35、およびゲート駆動回路36,37を含む。これらの機能構成は、図1に示す制御装置18において、プロセッサ181が所定のプログラムを実行することで実現される。
電圧指令部31は、ノードN2(図1)に現れる交流出力電圧Voの瞬時値と、電流検出器11(図1)の出力信号Iofとに基づいて、正弦波状の電圧指令値Vo#を生成する。電圧指令値Vo#の位相は、三相(U相、V相、W相)のうちの対応する相(ここではU相)の交流入力電圧Viの位相に同期している。
三角波発生器32は、商用周波数よりも十分に高い周波数の三角波信号Cu1を出力する。比較器33は、電圧指令部31からの電圧指令値Vo#と三角波発生器32からの三角波信号Cu1との高低を比較し、比較結果を示すPWM(Pulse Width Modulation)信号Au1を出力する。バッファ34は、PWM信号Au1をゲート駆動回路36,37に与える。インバータ35は、PWM信号Au1を反転させ、PWM信号Bu1を生成してゲート駆動回路36,37に与える。
ゲート駆動回路36は、PWM信号Au1,Bu1に基づいて、IGBTQ1,Q2をオンおよびオフするためのゲート駆動信号VG1,VG2を生成する。ゲート駆動回路37は、PWM信号Au1,Bu1に基づいて、IGBTQ3,Q4をオンおよびオフするためのゲート駆動信号VG3,VG4を生成する。
図5は、図4に示した電圧指令部31の構成を示す回路ブロック図である。
図5を参照して、電圧指令部31は、参照電圧生成部40、電圧制御部42、リミッタ回路44、減算器46、電流制御部48、加算器50、電圧検出器56、およびリミット値設定部60を含む。
参照電圧生成部40は、三相の参照交流電圧Vorを生成する。各相の参照交流電圧Vorは、商用周波数の正弦波信号である。電圧制御部42は、参照電圧生成部40からの参照交流電圧Vorに基づいて、三相の電流指令値Io*を生成する。
リミッタ回路44は、電圧制御部42により生成された電流指令値Io*を電流指令リミット値Io*_limに従う範囲内に制限して電流指令値Io#を生成する。電流指令リミット値Io*_limに従う範囲は、上限値(+Io*_lim)と下限値(-Io*_lim)とによって規定される。
リミッタ回路44では、電流指令値Io*のピーク値(絶対値)が電流指令リミット値Io*_lim以下である場合には、Io*がそのままIo#となる。電流指令値Io*のピーク値(絶対値)が電流指令リミット値Io*_limよりも大きい場合には、Io*_limがIo#のピーク値(絶対値)となる。
減算器46は、電流指令値Io#と電流検出器11により検出された出力電流Ioとの偏差ΔIo=Io#-Ioを求める。電流制御部48は、偏差ΔIoが0となるように電圧指令値Vo*を生成する。電流制御部48は、例えば偏差ΔIoを比例制御または比例積分制御に従って増幅することにより電圧指令値Vo*を生成する。
加算器50は、電圧指令値Vo*と交流出力電圧Voの検出値とを加算して電圧指令値Vo#を生成する。
電圧検出器56は、直流ラインL1に現れる直流電圧VDCの瞬時値を検出する。リミット値設定部60は、電流指令リミット値Io*_limを設定してリミッタ回路44に与える。リミット値設定部60は、以下に説明するように、電圧検出器56による直流電圧VDCの検出値に基づいて電流指令リミット値Io*_limを設定するように構成される。
図6は、図5に示したリミット値設定部60における電流指令リミット値Io*_limの設定方法を説明するための図である。
図6には、電流指令リミット値Io*_limと直流電圧VDCとの関係の一例が示される。また、図5には、上記関係とともに、過電流検出レベルIovrおよび出力電流リミット値Io_limが併せて示される。なお、図6において、電流指令リミット値Io*_lim、過電流検出レベルIovr、および出力電流リミット値Io_limは何れも絶対値で示されている。
過電流検出レベルIovrは、インバータ10を構成するスイッチング素子(例えばIGBT)の定格電流に応じて定められる。電流検出器11により検出される出力電流Ioの大きさが過電流検出レベルIovrを超えた場合には、制御装置18(インバータ制御回路30)は、IGBTQ1~Q4を全てオフすることによってインバータ10の運転を停止させる。さらに制御装置18は、コンバータ6の運転を停止させ、半導体スイッチ15を瞬時にオンし、電磁接触器14をオフするとともに、電磁接触器16をオンする。これにより、無停電電源装置1はインバータ給電モードからバイパス給電モードに切り替えられる。なお、制御装置18は、一定時間後に半導体スイッチ15をオフする。
出力電流リミット値Io_limは、無停電電源装置1の運用上最大の直流電圧VDC(図中の最大電圧VDC_max)時におけるリプル電流Irippleを考慮して、インバータ10の出力電流Ioが過電流検出レベルIovrを超えない値に設定される。
図6に示すように、電流指令リミット値Io*_limは、直流電圧VDCの大きさに応じて可変に設定される。具体的には、無停電電源装置1の運用上最大の直流電圧VDC(図中の最大電圧VDC_maxに相当)に対応して、電流指令リミット値Io*_limの最小値Ili_minが設定される。この最小値Ilim_minは、直流電圧VDCが最大電圧VDC_maxであるときの出力電流Ioのピーク値の大きさ(絶対値)が、出力電流リミット値Io_limの大きさ(絶対値)以下となるように設定される。
なお、上述したように、出力電流Ioに含まれるリプル電流Irippleは、リアクトル12のインダクタンスLおよびインバータ10におけるスイッチング素子のスイッチング周波数fswによって決まる。したがって、最小値Ilim_minは、無停電電源装置1の運用上の最大電圧VDC_max、リアクトル12のインダクタンスL、およびスイッチング周波数fswに応じて適宜設定することができる。
電流指令リミット値Io*_limは、直流電圧VDCが最大電圧VDC_maxから低下するに従って、電流値が増加するように設定される。これによると、直流電圧VDCが最大電圧VDCに向かって増加するに従って、電流指令リミット値Io*_limは最小値Ilim_minに向かって減少することとなる。
図6に示す関係において、各々の直流電圧VDCに対する電流指令リミット値Io*_limの大きさは、当該直流電圧VDCを入力ノードに受けたインバータ10の出力電流Ioのピーク値の大きさ(絶対値)が出力電流リミット値Io_limの大きさ(絶対値)以下となるように設定される。
図6に示す関係によると、直流電圧VDCが最大電圧VDC_maxよりも低い場合には、電流指令リミット値Io*_limが最小値Ilim_minよりも大きい値に設定されるため、リミッタ回路44において電流指令値Io*に対する制限が緩和される。これによると、直流電圧VDCが低下するに従って、出力電流リミット値Io_limに従う範囲内で、インバータ10の出力電流Ioに含まれる正弦波の振幅を大きくすることができる。よって、過電流保護機能を実現しつつ、インバータ10を構成するスイッチング素子の電流駆動能力を活かすことが可能となる。
図7は、図5に示したリミット値設定部60の構成例を示す図である。
図7を参照して、リミット値設定部60は、減算器62と、乗算器64と、加算器66とを有する。減算器62は、電圧検出器56により検出される直流電圧VDCと、最大電圧VDC_maxとを受ける。最大電圧VDC_maxは、無停電電源装置1の運用上の最大電圧である。減算器62は、直流電圧VDCと最大電圧VDC_maxとの偏差ΔVDC=VDC-VDC_maxを求める。
乗算器64は、偏差ΔVDCに係数kを乗算することにより、電流指令リミット値Io*_limの補正量ΔIlimを算出する。係数kは、図6に示した直流電圧VDCおよび電流指令リミット値Io*_limの関係を表す直線の傾きに相当する。
加算器66は、電流指令リミット値Io*_limの最小値Ilim_minに対して補正量ΔIlimを加算することにより、電流指令リミット値Io*_limを求める。
なお、図6および図7では、直流電圧VDCの増加に応じて電流指令リミット値Io*_limを線形に変化(減少)させる例を示しているが、直流電圧VDCの変化に応じて電流指令リミット値Io*_limを非線形(例えば曲線的)に変化させてもよいし、ステップ的に変化させてもよい。
また、制御装置(インバータ制御回路30)は、電流指令リミット値Io*_limと直流電圧VDCとの関係を示すデータを、内部のメモリに記憶させておくことができる。リミット値設定部60は、当該データを参照することによって、直流電圧VDCの検出値に基づいて電流指令リミット値Io*_limを設定することができる。なお、データの形式はテーブルであっても関数であってもよい。
以上説明したように、実施の形態1に係る電力変換装置によれば、インバータ10の出力電流の電流指令値のリミット値Io*_limは、インバータ10に入力される直流電圧VDCが低くなるに従って、大きくなるように設定される。これによると、過電流保護機能を実現しつつ、インバータ10の電流駆動能力を最大限に発揮させることが可能となる。
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2に係る無停電電源装置に含まれるインバータ10Aおよびその周辺部を示す回路ブロック図である。実施の形態2の無停電電源装置が実施の形態1の無停電電源装置1と異なる点は、コンバータ6、双方向チョッパ7、インバータ10、およびインバータ制御回路30が、コンバータ6A、双方向チョッパ7A、インバータ10A、およびインバータ制御回路30Aとそれぞれ置換されている点である。
図8を参照して、コンバータ6Aとインバータ10Aとの間には、3本の直流ラインL1~L3が接続されている。直流ラインL2は、中性点NPに接続され、中性点電圧(例えば0V)にされる。コンデンサ9は、2つのコンデンサ9a,9bを含む。コンデンサ9aは、直流ラインL1,L2間に接続されている。コンデンサ9bは、直流ラインL2,L3間に接続されている。
コンバータ6Aは、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、商用交流電源21からの交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1~L3に供給する。このときコンバータ6Aは、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDCaが参照電圧VDCrになり、かつ直流ラインL2,L3間の直流電圧VDCbが参照電圧VDCrになるように、コンデンサ9a,9bの各々を充電する。
直流ラインL1,L2,L3の電圧は、それぞれ正の直流電圧(+VDCr)、中性点電圧(0V)、および負の直流電圧(-VDCr)にされる。商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ6Aの運転は停止される。
双方向チョッパ7Aは、通常時には、コンバータ6Aによって生成された直流電力をバッテリ23に蓄える。このとき双方向チョッパ7Aは、バッテリ23の端子間電圧VBが参照電圧VBrになるように、バッテリ23を充電する。
双方向チョッパ7Aは、停電時には、バッテリ23の直流電力をインバータ10Aに供給する。このとき双方向チョッパ7Aは、コンデンサ9a,9bの端子間電圧VDCa,VDCbの各々が参照電圧VDCrになるようにコンデンサ9a,9bの各々を充電する。
インバータ10Aは、通常時には、コンバータ6Aによって生成された直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷24に供給する。このときインバータ10Aは、直流ラインL1~L3から供給される正の直流電圧、中性点電圧および負の直流電圧に基づいて商用周波数の交流出力電圧Voを生成する。
インバータ10Aは、IGBTQ21~Q24およびダイオードD21~D24を含む。IGBTQ21のコレクタは直流ラインL1に接続され、そのエミッタは出力ノード10aに接続される。IGBTQ22,Q24のコレクタは互いに接続され、それらのエミッタはそれぞれ直流ラインL2および出力ノード10aに接続される。IGBTQ23のコレクタは出力ノード10aに接続され、そのエミッタは直流ラインL3に接続される。ダイオードD21~D24は、それぞれIGBTQ21~Q24に逆並列に接続される。出力ノード10aは、リアクトル12を介してノードN2に接続される。
インバータ10Aでは、第1の期間には、IGBTQ23,Q24がそれぞれオフ状態およびオン状態にされ、IGBTQ21,Q22が交互にオンされ、第2の期間には、IGBTQ21,Q22がそれぞれオフ状態およびオン状態にされ、IGBTQ23,Q24が交互にオンされる。
図9は、図8に示したインバータ制御回路30Aの構成を示す回路ブロック図である。インバータ制御回路30Aは制御装置18に含まれている。
図9を参照して、インバータ制御回路30Aは、電圧指令部31、三角波発生器82,83、比較器84,85、バッファ86,87、インバータ88,89、およびゲート駆動回路90,91を含む。これらの機能構成は、図1に示す制御装置18において、プロセッサ181が所定のプログラムを実行することで実現される。
電圧指令部31は、ノードN2(図1)に現れる交流出力電圧Voの瞬時値と、電流検出器11(図1)の出力信号Iofとに基づいて、正弦波状の電圧指令値Vo#を生成する。電圧指令部31は、実施の形態1の電圧指令部31(図5参照)と同様の構成を有している。なお、実施の形態2では、電圧検出器56は、コンデンサ9a,9bの端子間電圧VDCa,VDCbの和である直流電圧VDCを検出する。
三角波発生器82は、商用周波数よりも十分に高い周波数の三角波信号Cu1aを出力する。三角波発生器83は、三角波信号Cu1aと同位相で同じ周波数の三角波信号Cu1bを出力する。
比較器84は、電圧指令部31からの電圧指令値Vo#と三角波発生器82からの三角波信号Cu1aとの高低を比較し、比較結果を示すPWM信号φ1を出力する。バッファ86は、PWM信号φ1をゲート駆動回路90に与える。インバータ88は、PWM信号φ1を反転させ、PWM信号φ2を生成してゲート駆動回路90に与える。
比較器85は、電圧指令部31からの電圧指令値Vo#と三角波発生器83からの三角波信号Cu1bとの高低を比較し、比較結果を示すPWM信号φ3を出力する。バッファ87は、PWM信号φ3をゲート駆動回路91に与える。インバータ89は、PWM信号φ3を反転させ、PWM信号φ4を生成してゲート駆動回路91に与える。
ゲート駆動回路90は、PWM信号φ1,φ2に基づいて、IGBTQ21,Q22をオンおよびオフするためのゲート駆動信号VG21,VG22を生成する。ゲート駆動回路91は、PWM信号φ3,φ4に基づいて、IGBTQ23,Q24をオンおよびオフするためのゲート駆動信号VG23,VG24を生成する。
以上説明したように、実施の形態2においても、インバータ10Aの出力電流の電流指令値のリミット値Io*_limは、インバータ10Aに入力される直流電圧VDCが低くなるに従って、大きくなるように設定される。したがって、実施の形態1と同じ効果が得られる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。