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JP7593512B2 - 複合半透膜、複合半透膜エレメントおよびろ過装置 - Google Patents

複合半透膜、複合半透膜エレメントおよびろ過装置 Download PDF

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Description

本発明は、複合半透膜、複合半透膜エレメントおよびろ過装置に関する。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば、海水、かん水、有害物を含んだ水などからの飲料水の製造や、飲料水の軟水化、食品用途、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。中でも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
従来、1価イオンや、多価イオン、有機物の混合溶液から特定の物質を分離するためにナノろ過膜が広く使われており、脂肪族アミンと酸ハロゲン化物を反応させて得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を備えたナノろ過膜が提案されている。
例えば、ピペラジンに多官能芳香族カルボン酸塩化物を反応させて得られるポリアミドからなるナノろ過膜が開示されている(特許文献1)。一方、ナノろ過膜を用いる膜分離プラントで起こる問題の1つに、無機物や有機物によるファウリングがある。ナノろ過膜はファウリングによって透水性能が著しく低下する。これを改善する方法として、酸や薬品を用いて洗浄することで、透水性能を回復させる方法なども提案されており、耐薬品性の高いナノろ過膜(特許文献2)も知られている。また、耐薬品性の高いナノろ過膜として、比表面積の大きな中空ひだ状かつ疎水的な化学組成のポリアミド分離機能層を形成することで、酸やアルカリによるポリアミドの加水分解を抑制することで、長期間にわたり優れた多価イオン除去性を維持できることも知られている(特許文献3)。
日本国特開2007-277298号公報 日本国特表2003-534422号公報 国際公開第2021/085600号
このように、ナノろ過膜に要求される性能には、透水性能や選択分離性能だけでなく、耐薬品性も存在するが、特許文献1に記載の膜は耐薬品性が低い。一方、特許文献2に記載の膜は特許文献1に記載の膜と比較して耐薬品性が高いが、1価イオンと多価イオンの選択分離性が低いという問題があった。また、特許文献3に記載の膜は、酸やアルカリの接触による加水分解を抑制し、中性条件における高い多価イオン除去性能を維持しているが、酸性条件では、孔径が変化するため、酸性条件で膜を使用した際の1価イオンと多価イオンとの選択分離性には改善の余地があった。
本発明の目的は、酸性条件において優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能を示す複合半透膜、複合半透膜エレメントおよびろ過装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成をとる。
[1]多孔性支持層と、上記多孔性支持層の一方の面側に位置する分離機能層とを備える複合半透膜であって、
上記分離機能層は半芳香族架橋ポリアミドを含有し、
上記複合半透膜の上記分離機能層側の面を第1面とし、上記第1面とは反対側の面を第2面とし、
上記複合半透膜に上記第1面側から陽電子ビームを照射し、陽電子消滅寿命測定法から導出される上記分離機能層の平均孔径R1および平均孔径R2が0.30nm以上2.00nm以下であり、かつ0.90≦R1/R2≦1.10を満たす、複合半透膜。
R1:陽電子ビーム強度が0.1keVの条件での平均孔径
R2:陽電子ビーム強度が0.5keVの条件での平均孔径
[2]上記平均孔径R1が0.55nm以上1.00nm以下である、上記[1]に記載の複合半透膜。
[3]上記複合半透膜の表面に対して垂直な上記分離機能層の断面において、孔径が0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数P1と、孔径が0.50nm以上0.80nm未満の孔の総数P2と、孔径が0.80nm以上1.20nm以下の孔の総数P3と、孔径が1.20nmを超える孔の総数P4とが、0.20<P2/P1<0.40、P3/P2<0.20およびP4/P1≦0.01を満たす、上記[1]または[2]に記載の複合半透膜。
[4]上記複合半透膜の表面に対して垂直な上記分離機能層の断面において、上記第1面側から上記第2面側に向けて、上記分離機能層を等間隔に5分割した各領域を領域a~eとしたとき、領域bにおけるアミノ基密度Nbと、領域dにおけるアミノ基密度Ndが、Nb/Nd≦0.80を満たす、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の複合半透膜。
[5]上記Nbが1.0×10-23mol/nm以下である、上記[4]に記載の複合半透膜。
[6]0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmグルコース水溶液を透過させたときのグルコース透過率をB、0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmスクロース水溶液を透過させたときのスクロース透過率をCとしたとき、B/Cが10以上である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の複合半透膜。
[7]上記分離機能層が中空状のひだ状構造を有する、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の複合半透膜。
[8]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の複合半透膜を備える、複合半透膜エレメント。
[9]上記[8]に記載の複合半透膜エレメントを備える、ろ過装置。
本発明の複合半透膜は、分離機能層の膜厚方向の孔径分布が均一であるため、分離機能層内をイオンが拡散する方向が均一となり、分離機能層内を自由に動くことができる大きさである1価イオンの透過抵抗を十分に抑制しながら、多価イオンの透過を有効に阻止することができ、その結果、酸性条件において優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能を実現できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合半透膜の断面を示す模式図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る複合半透膜エレメントを示す模式図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る複合半透膜における分離機能層の断面を示す模式図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る複合半透膜の分離機能層が有する中空状のひだ状構造の模式図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
1.複合半透膜
本実施形態に係る複合半透膜は、多孔性支持層と、多孔性支持層の一方の面側に設けられた分離機能層とを備える。複合半透膜において、分離機能層側の面を第1面、第1面とは反対側の面を第2面と呼ぶ。本実施形態に係る複合半透膜は、逆浸透膜と限外ろ過膜との間に位置づけられる分画特性を有する領域の膜であり、一般的にナノろ過膜と定義される。
逆浸透膜とは、一般に大部分の有機物、イオンを除去する傾向にあり、一方、限外ろ過膜は、通常、大部分のイオン種を除去せず、高分子量の有機物を除去する。
(1-1)支持膜
本実施形態に係る複合半透膜は、多孔性支持層と分離機能層を備えていればよく、多孔性支持層は支持膜を構成する層である。支持膜は、多孔性支持層のみからなってもよく、図1に示すように、基材2と、基材2上に配置された多孔性支持層3とを備えていてもよい。すなわち、図1に示すように、複合半透膜1は、多孔性支持層3と分離機能層4を備えていればよく、多孔性支持層3が構成する支持膜は、多孔性支持層3のみからなってもよく、基材2と多孔性支持層3とを備えていてもよい。
支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与えるためのものである。支持膜自体は、低分子有機物、イオンなどの分離性能を実質的に有さない。
支持膜における孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔となり、かつ、分離機能層が形成される側の表面における微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような孔が好ましい。
基材の材質としては、ポリエステルおよび芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種からなる布帛が例示される。中でも、機械的および熱的に安定性の高いポリエステルを使用することが特に好ましい。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布、短繊維不織布などが挙げられる。基材上に高分子溶液を流延した際に、高分子溶液が過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持層が剥離したり、さらには基材の毛羽立ちなどにより膜の不均一化やピンホールなどの欠点が生じないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布を用いることが好ましい。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントにより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布を含むことにより、短繊維不織布のみを用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材において多孔性支持層と接する面とは逆側の面での繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れなどを防ぐことができるため好ましい。ここで、「縦配向」とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることをいう。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向という。
繊維の繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましい。ここで、「繊維配向度」とは、不織布の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布の幅方向を90°としたときの、不織布を構成する繊維の平均の角度を意味する。したがって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性などに問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布を用いた基材においては、多孔性支持層と接する側の面と逆側の面の繊維配向度と、多孔性支持層側の面の繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、加熱工程などで加えられる熱による幅方向の寸法変化を抑制できるため好ましい。
基材の通気度は0.5cc/cm/s以上であることが好ましい。通気度がこの範囲であると、複合半透膜の透水性能が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持層の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファンおよび空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出できる。フラジール形試験機は、例えば、カトーテック株式会社製KES-F8-AP1などが使用できる。
基材の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上120μm以下であることがより好ましい。
多孔性支持層の材質としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、化学的、機械的および熱的に安定性の高いポリスルホンまたはポリエーテルスルホンが特に好ましい。
多孔性支持層の厚みは、得られる複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。多孔性支持層の厚みは、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、50μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上250μm以下であることがより好ましい。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などにより観察できる。例えば、走査型電子顕微鏡で観察する場合は、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で複合半透膜表面に垂直な方向に切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金-パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3~15kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(以下、「UHR-FE-SEM」)によって観察する。UHR-FE-SEMとしては、例えば、株式会社日立製作所製S-900型電子顕微鏡などが使用できる。
支持膜は、例えば、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(製品名)、東洋濾紙株式会社製“ウルトラフィルターUK10”(製品名)などのような各種市販材料から選択してもよく、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法などに従って製造してもよい。
基材の厚みおよび複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定できる。なお、分離機能層の厚みは支持膜と比較して非常に薄いため、複合半透膜の厚みを支持膜の厚みとみなすことができる。つまり、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、これを支持膜の厚みとみなすことができる。また、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、例えば、株式会社尾崎製作所のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、異なる20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材の厚みおよび複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。この場合、1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。
(1-2)分離機能層
複合半透膜の構成要素のうち、実質的に溶質の分離性能を有するのは分離機能層である。図1に示すように、分離機能層4は、多孔性支持層3の一方の面側に配置される。
分離機能層は、多官能脂肪族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる半芳香族架橋ポリアミドを含有する。分離機能層の成分の内、半芳香族架橋ポリアミドが占める割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、半芳香族架橋ポリアミドのみからなることが特に好ましい。分離機能層が半芳香族架橋ポリアミドを50質量%以上含有することで、ポリアミド中の芳香環に由来するπ-π相互作用による過度な緻密化が抑制され、優れた1価イオン透過性が得られやすい。ここで、「架橋ポリアミド」とは、3つ以上のアミド結合を有し、かつ分岐構造を有する分子量400以上の化合物を意味する。
多官能脂肪族アミンは脂環式ジアミンであることが好ましい。脂環式ジアミンとしてはビピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体が挙げられる。
脂環式ジアミンの分子量は90以上160以下が好ましい。
脂環式ジアミンの分子量は90以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、110以上であることがさらに好ましい。脂環式ジアミンの分子量が90以上であることで、アミンの拡散係数が小さくなり、界面重縮合時にポリアミドが徐々に形成されていくことで、1価イオンの透過抵抗を抑制しながら多価イオンの透過を阻害するような孔を形成できる。
また、脂環式ジアミンの分子量は、160以下が好ましく、150以下がより好ましい。通常、重縮合初期に、有機層と接している第1面側でオリゴマーが過剰生成し、第1面側の孔が閉塞されるため、膜厚方向での孔径分布が不均一化しやすい。脂環式ジアミンの分子量が160以下であることで、生成するオリゴマーの分子量を小さくし、半芳香族架橋ポリアミドとの相互作用を低減できるため、後述する高湿度条件で製膜した直後の液切り工程および後処理工程でのオリゴマー除去が容易となる。なお、オリゴマーの分子量を小さくすることで、膜厚方向の孔径が均一、すなわち後述する分離機能層の平均孔径R1および平均孔径R2が0.90≦R1/R2≦1.10を満たす分離機能層が形成されやすくなり、1価イオン透過率の高い膜が得られる。
分子量が90以上160以下である脂環式ジアミンとしては、例えば、ピペラジン環が炭素数1~3のアルキル基で置換された置換ピペラジン(例えば、2-メチルピペラジン、2-エチルピペラジン、2-ノルマルプロピルピペラジン、2,2-ジメチルピペラジン、2,2-ジエチルピペラジン、2,3-ジメチルピペラジン、2,3-ジエチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,5-ジエチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、2,6-ジエチルピペラジン、2,3,5,6-テトラメチルピペラジンなど)やホモピペラジンが挙げられる。
「多官能芳香族酸ハロゲン化物」とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する芳香族酸ハロゲン化物を意味し、上記多官能脂肪族アミンとの反応により半芳香族架橋ポリアミドを与えるものであれば特に限定はない。多官能芳香族酸ハロゲン化物としては、例えば、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸などのハロゲン化物が挙げられる。多官能芳香族酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さなどの点から、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロリド(以下、「TMC」)、1,3-ベンゼンジカルボン酸の酸ハロゲン化物であるイソフタル酸クロリド、1,4-ベンゼンジカルボン酸の酸ハロゲン化物であるテレフタル酸クロリド、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸の酸ハロゲン化物である1,3,5-ベンゼントリスルホン酸クロリド、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸の酸ハロゲン化物である1,3,6-ナフタレントリスルホン酸クロリドが好ましい。上記多官能芳香族酸ハロゲン化物は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよいが、三官能のTMC、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸クロリド、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸クロリドに、二官能のイソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリドのどちらか一方を混合することにより、ポリアミド架橋構造の分子間隙が拡大し、均一な孔径分布を持った膜を広範囲に制御することができる。三官能酸クロリドと二官能酸クロリドの混合モル比は、1:20~50:1が好ましく、1:1~20:1がより好ましい。
分離機能層の厚みは、15nm以上50nm以下であることが好ましく、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。分離機能層の厚みが15nm以上であることで、十分な透水性を備えた複合半透膜を容易に得ることができ、また、分離機能層の厚みが20nm以上であることにより、欠点の発生に伴う除去性の低下を招くことなく、十分な透水性を備えた複合半透膜を安定に得ることができる。また一方で、分離機能層の厚みは、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは40nm以下である。分離機能層の厚みが50nm以下であることで、安定した膜性能を得ることができ、分離機能層の厚みが40nm以下であることにより、さらに十分な透水性が得られる。
分離機能層の厚みは、透過型電子顕微鏡、TEMトモグラフィー、集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)などの観察手法を用いて分析できる。
本発明者らは鋭意検討の結果、以下の要件を満たす複合半透膜が酸性条件において優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能を示すことを見出した。
本実施形態に係る複合半透膜に第1面側から陽電子ビームを照射し、陽電子消滅寿命測定法から導出される、分離機能層の平均孔径R1および平均孔径R2が0.30nm以上2.00nm以下であり、0.90≦R1/R2≦1.10を満たす、複合半透膜。
ここでR1、R2は以下の通り定義される。
R1:陽電子ビーム強度が0.1keVの条件での平均孔径
R2:陽電子ビーム強度が0.5keVの条件での平均孔径
「陽電子消滅寿命測定法」とは、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ピコ秒から数十ナノ秒のオーダー)を測定し、その消滅寿命に基づいて、0.1~10nmの空孔の大きさ、その数密度およびその大きさの分布などの情報を非破壊的に評価する手法である。
なお、試料に入射させる陽電子ビームのエネルギー量によって、試料表面からの深さ方向の測定域を調節できる。エネルギーを高くするほど試料表面からより深い部分が測定域に含まれることになるが、その深度は試料の密度によって左右される。例えば、複合半透膜の分離機能層を測定する際に、複合半透膜の第1面側から0.1keV程度のエネルギーの陽電子ビームを照射すれば、通常、試料表面から0~5nmの深さの領域が測定され、0.5keV程度のエネルギーの陽電子ビームであれば、通常、試料表面から0~50nmの深さの領域が測定される。なお、本実施形態において、分離機能層の上に保護層などの他の層が設けられている場合は、保護層などの他の層を事前に取り除くことによって、分離機能層の平均孔径R1および平均孔径R2を測定できる。
上記の通り、陽電子ビーム強度が弱いほど第1面側、強いほど第2面側の孔径を反映しており、R1/R2が1に近いほど膜厚方向に孔径が均一であることを意味する。本実施形態においては、0.90≦R1/R2≦1.10を満たすことで、優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能が実現できる。
上記のメカニズムは、詳細はよく解明されていないものの、膜厚方向に孔径が均一であることで分離機能層内をイオンが拡散する方向が均一となり、分離機能層内を自由に動くことができるサイズである1価イオンの透過抵抗が抑制されると推測している。その結果として優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能が実現するものと考えている。そのため、分離機能層の平均孔径R1およびR2は0.95≦R1/R2≦1.05を満たすことがより好ましく、0.97≦R1/R2≦1.03を満たすことがさらに好ましい。
本実施形態に係る複合半透膜における分離機能層の平均孔径R1およびR2は0.30nm以上2.00nm以下である。平均孔径R1およびR2が上記範囲内にあることで実質的なナノろ過膜としての機能が発現する。R1は、0.55nm以上1.00nm以下であることが好ましく、0.55nm以上0.80nm以下であることがより好ましく、0.55nm以上0.70nm以下であることがより好ましく、0.57nm以上0.68nm以下であることがさらに好ましく、0.60nm以上0.65nm以下であることが特に好ましい。R1が上記範囲内にあることで、1価イオンの透過抵抗を抑制しつつ、多価イオンの透過を阻害する効果が顕著となる。また、ナノろ過膜としての機能を発現する観点から、R2は0.50nm以上1.10nm以下であることが好ましく、0.50nm以上0.80nm以下であることがより好ましく、0.50nm以上0.77nm以下であることがより好ましく、0.55nm以上0.70nm以下であることがさらに好ましく、0.60nm以上0.65nm以下であることが特に好ましい。
平均孔径R1およびR2は、例えば、高湿度条件で界面重縮合を行うこと、界面重縮合に使用する多官能脂肪族アミンの分子量、界面重縮合時の多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布する温度などにより制御できる。具体的には、多官能脂肪族アミンが分子量90以上160以下の脂環式ジアミンである場合、後述する高湿度条件で製膜した直後の液切り工程および後処理工程でのオリゴマーの除去が容易となり、R1/R2を特に好ましい範囲に制御できる。
本実施形態に係る複合半透膜は、複合半透膜表面に対して垂直な分離機能層の断面において、孔径が0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数P1と、孔径が0.50nm以上0.80nm未満の孔の総数P2と、孔径が0.80nm以上1.20nm以下の孔の総数P3と、孔径が1.20nmを超える孔の総数P4とが、0.20<P2/P1<0.40、P3/P2<0.20およびP4/P1≦0.01を満たすことが好ましい。
ここで、孔径0.30nm以上0.50nm未満の孔は水のみが通る孔であり、孔径0.50nm以上0.80nm以下の孔は水と1価イオンのみを通す有効孔であり、孔径0.80nm以上1.20nm以下の孔は水、1価イオンと多価イオンを通す粗大孔であり、孔径1.20nmを超える孔は多価イオンを通す粗大孔である。すなわち、P2/P1は、孔径0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数に対する、水と1価イオンのみを通す有効孔の割合を意味し、P3/P2は、水と1価イオンのみを通す有効孔に対する、多価イオンと水を通す粗大孔の割合を意味し、P4/P1は孔径0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数に対する多価イオンがより透過しやすい粗大孔の割合を意味する。
複合半透膜表面に対して垂直な分離機能層の断面において0.20<P2/P1<0.40およびP3/P2<0.20を満たす複合半透膜である場合、孔径0.30nm以上0.50nm未満の水のみが通る孔、孔径0.80nm以上1.20nm以下の多価イオンと水を通す粗大孔に対する、孔径0.50nm以上0.80nm以下の水と1価イオンのみを通す有効孔の存在比が高く、1価イオンの透過抵抗を抑制しつつ、多価イオンの透過を阻害する効果が顕著となり、酸性条件下において優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能が得られる。P1およびP2は、0.26≦P2/P1≦0.35を満たすことがより好ましく、0.31≦P2/P1≦0.35を満たすことがさらに好ましい。P1およびP2が上記範囲を満たすことで1価イオンの優れた透過性が発現しやすくなる。また、P2およびP3は、P3/P2≦0.12を満たすことが好ましく、P3/P2≦0.09を満たすことがより好ましく、P3/P2≦0.05を満たすことがさらに好ましい。P2およびP3が上記範囲を満たすことで多価イオンの透過を阻害する効果がより顕著となる。
さらに、P4/P1≦0.01である場合、より優れた1価イオン/多価イオンの選択分離性が発現する。P4/P1>0.01である場合、多価イオンが透過しやすい粗大孔が多数存在することとなり、1価イオン/多価イオンの選択分離性が低下する。そのため、P4/P1はP4/P1≦0.007であることがより好ましく、P4/P1≦0.005であることがさらに好ましく、P4は存在しないことが特に好ましい。
P1、P2、P3およびP4は、例えば、界面重縮合に使用する多官能脂肪族アミンの分子量、界面重縮合時の多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布する温度、親水性溶媒処理などにより制御することができる。より具体的には、多官能脂肪族アミンとして分子量100以上160以下の脂環式ジアミンである場合、後述する高湿度条件で製膜した直後の液切り工程および後処理工程でのオリゴマーの除去が容易となり、P2/P1を特に好ましい範囲に制御できる。
本実施形態に係る複合半透膜における分離機能層は、図3に示すように、複合半透膜の表面に対して垂直な断面(第1面に垂直な断面)において、第1面側から第2面側に向けて、上記分離機能層を等間隔に5分割した各領域を領域a~eとしたとき、領域bにおけるアミノ基密度Nbと、領域dにおけるアミノ基密度Ndが、Nb/Nd≦0.80を満たすことが好ましい。
界面重縮合により形成される半芳香族架橋ポリアミドを主成分とする分離機能層は、末端官能基としてアミノ基およびカルボキシ基を有する。特にアミノ基密度が高い分離機能層は酸性条件下で、疎な構造となり、1価イオンの透過性も高まる一方で、サイズの大きい多価イオンの阻止性は低下する。また、アミノ基密度が低い分離機能層においては、分離機能層は酸性条件下で、密な構造となり、1価イオンの透過性は低下する一方で、多価イオンの阻止性は高まる。このように、1価イオンの透過性と多価イオンの阻止性にはトレードオフの関係があり、アミノ基密度が一様に分布された分離機能層を形成することで、1価イオンの透過性と多価イオンの阻止性のバランスのとれた性能が得られる。
本実施形態に係る複合半透膜における分離機能層において、領域bにおけるアミノ基密度Nbと領域dにおけるアミノ基密度NdがNb/Nd≦0.80を満たす場合、すなわち分離機能層の厚み方向にアミノ基密度が上記のような密度差を有する半芳香族架橋ポリアミドを含有する分離機能層である場合、より優れた1価イオン透過性と多価イオン阻止性能を有する複合半透膜が得られる。1価イオン透過性と多価イオン阻止性能を両立する観点から、アミノ基密度Nbとアミノ基密度Ndは、Nb/Nd≦0.70を満たすことがより好ましく、Nb/Nd≦0.65を満たすことがさら好ましく、Nb/Nd≦0.60を満たすことが特に好ましい。また、過度なアミノ基の密度差によるポリアミド構造の変化、およびそれに伴う顕著な性能変動を抑制する観点から、アミノ基密度Nbとアミノ基密度Ndは、Nb/Nd≧0.10を満たすことが好ましい。アミノ基分布を上記の範囲内に制御するためには雰囲気湿度は80%以上に制御する必要があり、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。これは、形成されるポリアミドの水分の蒸発を抑えられ、余剰に生成したアミノ基の多いオリゴマーの分子間水素結合による不溶化を抑制することで、液切り工程や溶媒処理工程でオリゴマーを効率的に除去できるためである。また、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層表面に塗布することにより分離機能層を形成する方法によっても、第1面側の末端アミノ基密度を第2面側のアミノ基密度に比して低減することができる。
また、本実施形態に係る複合半透膜における分離機能層は、領域bにおけるアミノ基密度Nbが1.0×10-23mol/nm以下であることが好ましい。Nbが1.0×10-23mol/nm以下であることで、優れた1価イオン透過性を実現できる。Nbは、0.9×10-23mol/nm以下であることがより好ましく、0.8×10-23mol/nm以下であることがさらに好ましい。また、分離機能層を形成するポリアミドの疎水化に伴う透水性低下抑制の観点から、Nbは、0.1×10-23mol/nm以上であることが好ましい。アミノ基密度Nbは、界面重合時の多官能酸ハロゲン化物の濃度を高めることにより低く制御できる。しかし、多官能酸ハロゲン化物の濃度を高めることにより界面重合時のモノマーバランスが崩れた場合、重合度が上がらないため、粗大な孔を多く形成しやすく、多価イオンの除去性が低くなる。また、界面重合後に分離機能層の第1面側のアミノ基を酸無水物と反応させることで、アミノ基密度Nbを低減することはできるが、一価イオンの透過性および透水性の低下を招くため好ましくない。そのため、アミノ基分布Nbを上記の範囲内に制御するためには、上述のとおり、雰囲気湿度は80%以上に制御する必要があり、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。加えて、後述する親水性溶媒での処理工程を合わせて実施することで、アミノ基分布Nbをさらに低減することができる。
分離機能層を等間隔に5分割した各領域a~eは以下の方法によって決定する。
複合半透膜をタングステン酸水溶液に複数回浸漬する。この複合半透膜において分離機能層の厚み方向に垂直な分離機能層の断面を電界放出形走査透過電子顕微鏡(以下、「STEM」)により10万倍率で撮影する。得られた画像で、図3に示すように、分離機能層の外表面(多孔性支持層側の面と逆側の面)の任意の位置に基準点Pを設け、基準点Pを通る法線Y0を中心として、法線Y0に直交する方向の両側に3~10nmの任意の間隔で、法線に平行な直線Y1およびY2を描く。
また、基準点Pを通る分離機能層の外表面の接線X1と、それに平行な分離機能層の内表面(多孔性支持層側の面)の接線X2を描く。X1とX2との間を、等間隔に5分割する4つの直線を描く。Y1とY2とに囲まれ、かつ、X1、X2とその間の4つの直線に囲まれる領域を、分離機能層の外表面から順に領域a~eとする。
なお、分離機能層が複数のひだ状構造を形成している場合は、上記と同様の方法によって断面画像を撮影し、得られる画像における各ひだ状構造のうち、最もひだ高さが高いひだを基準として、分離機能層の第2面側の表面(支持膜の表面)から凸部の頂点までの高さの50~100%に含まれる任意の領域において、同様の手順によってY1およびY2を描く。次いで、上記と同様の手順により、領域a~eが求められる。なお、領域a~eのそれぞれの面積は5nm以上30nm以下とする。
分離機能層を等間隔に5分割して得られる各領域a~eにおけるアミノ基密度は、以下の方法によって求められる。
上述のX1、X2またはその間の4つの直線、およびY1、Y2で囲まれた各領域(領域a~eからなる各領域)についてSTEMにより輝度を測定する。領域毎に最小輝度Lminおよび最大輝度Lmaxを求める。得られた最小輝度Lminおよび最大輝度Lmaxにおいて、{Lmin+(Lmax-Lmin)/3}以上の輝度を示す箇所の面積を、領域毎に積分する。この積分値は、タングステン(W)がラベリングされたアミノ基を有する部分の面積(nm)に相当する。得られた積分値を、アミノ基1分子当たりの面積(0.04nm)、アボガドロ定数(6.0×1023個/mol)および各領域の面積で割ることで、アミノ基密度(mol/nm)を算出できる。無作為に選択した5つのひだ状構造の各領域について得られるアミノ基密度の平均値を各領域のアミノ基密度とする。
本実施形態に係る複合半透膜において、1価イオン除去率は75%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。1価イオン除去率が上記範囲内にあることで、透過水中の1価イオン濃度が高くなり、1価イオンの精製プロセスにおける1価イオンの濃縮工程を効率化または省くことができ、精製時間の短縮および精製の低コスト化に寄与する。多価イオン除去率は99.4%以上であることが好ましく、99.6%以上であることがより好ましく、99.8%以上であることがさらに好ましい。多価イオン除去性が上記範囲内にあることで、透過水中の多価イオン濃度が低くなり、1価イオンの精製工程を効率化または省くことができる。また、非透過水中の多価イオン濃度が高まるため、効率的に多価イオンを精製することができる。
以下の「1価イオン/多価イオンの選択性」とは、1価イオンと多価イオンを含む水溶液を供給水として、分離膜で膜ろ過処理を行った際に得られる透過水中に含まれるイオン濃度をもとに算出される1価イオン除去率と多価イオン除去率から下記式により算出される値を意味する。なお、本願明細書において、1価イオン/多価イオンの選択性の算出に使用するイオンはカチオンを意味する。
1価イオン/多価イオンの選択性=(100-1価イオン除去率)/(100-多価イオン除去率)
1価イオン/多価イオンの選択性は70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、100以上であることがさら好ましい。1価イオン/多価イオンの選択性が上記範囲内にあることで、1価と多価イオンの両方の精製効率が向上し、精製時間の短縮、精製の低コスト化に寄与する。
本実施形態に係る複合半透膜の分離機能層は中空状のひだ状構造を有することが好ましい。複合半透膜の分離機能層が中空状のひだ状構造を有する場合、単位膜面積当たりの見かけ上の孔数が多くなる。その結果、複合半透膜で溶液を処理する際に必要な圧力を下げることができ、運転装置の排熱や電気量を削減できる。
分離機能層のひだ状構造は、複合半透膜表面に対して垂直な分離機能層の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した画像において、図4に示す、多孔性支持層3上の分離機能層4に関して、ひだ高さ201および分離機能層の厚み202を測定し、分離機能層の厚みに対するひだ高さの比率(ひだ高さ/分離機能層の厚み)を求める。分離機能層のひだ高さ/分離機能層の厚みが1.2以上であれば、分離機能層がひだ状構造を有しているとし、1.2未満であれば分離機能層がひだを有さないとする。
「分離機能層の厚み」とは、分離機能層の断面画像において、分離機能層の供給水側と透過水側の二点を最短で結んだ線分の長さを意味し、図4の分離機能層の厚み202で示す長さに相当する。供給水側の測定点は、分離機能層の断面画像を10区間に分割し、各区間において支持膜からの距離が最も離れた点とする。分離機能層がひだ状構造を形成しており、かつひだ状構造が上記区間をまたがって形成されている場合は、支持膜との距離がより離れている区間を測定点とする。
「ひだ高さ」とは、分離機能層の厚みを測定した際の供給水側の点から支持膜表面に下ろした垂線と支持膜表面との交点の二点を結ぶ線分の長さであり、図4のひだ高さ201で示す長さに相当する。ひだ高さは、複合半透膜表面に対して垂直な分離機能層の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した画像において、無作為に選択した100個のひだを測定し、平均値を算出する。
ひだ高さは、透水性の観点から、20nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上300nm以下であることがより好ましい。20nm以上とすることで十分に分離機能層の比表面積を大きくでき、低い圧力で高い透水性を得ることができる。また、500nm以下とすることで、隣り合うひだの重なりによる水流路の閉塞や膜面での濃度分極を抑制することができるので、低い圧力で高い透水性を得ることができる。ひだの高さの制御は多官能アミンの脂溶性と分子量、界面重合時の温度で制御できる。
中空状のひだ状構造を有する分離機能層を形成するためには、界面重縮合に使用する多官能脂肪族アミンのlogPが-0.5以上2.0以下であることが好ましく、-0.5以上1.5以下であることがより好ましい。
「logP」とは、非特許文献1に基づき化合物のオクタノール-水分配係数を、化合物が含有する各官能基のオクタノール-水分配係数から算出した値を意味し、本願明細書においては構造式作画ソフトであるChem Drawにより計算した値とする。
ポリアミドの界面重合は、アミンが有機相に分配・拡散し、有機相中で多官能酸ハロゲン化物と反応することで進行することは古くから知られており(非特許文献2)、logPが-0.5以上2.0以下であることで、界面重縮合時の有機溶媒への多官能脂肪族アミンの分配、拡散が最適化され、中空状のひだ状構造を有する分離機能層が形成されやすくなる。
logPが-0.5以上2.0以下である多官能脂肪族アミンとしては、例えば、ピペラジン環が合計炭素数1~4のアルキル基で置換された置換ピペラジン(例えば、2-メチルピペラジン、2-エチルピペラジン、2-ノルマルプロピルピペラジン、2,2-ジメチルピペラジン、2,2-ジエチルピペラジン、2,3-ジメチルピペラジン、2,3-ジエチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,5-ジエチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、2,6-ジエチルピペラジン、2-エチル-3-メチルピペラジン、2-エチル-5-メチルピペラジン、2-エチル-6-メチルピペラジン、2-メチル-3-プロピルピペラジン、2-メチル-5-プロピルピペラジン、2-メチル-6-プロピルピペラジン、2,5-ジエチルピペラジン、2,3,5,6-テトラメチルピペラジンなど)、ビピペリジン誘導体(例えば、2,2’-ビピペリジン、3,3’-ビピペリジン、4,4’-ビピペリジンなど)などが挙げられる。
本実施形態に係る複合半透膜は、リチウムなどのイオン性溶質の他、非イオン性溶質の分離にも好適であり、それぞれの溶質の透過性の比に特徴がある。例えば、非イオン性溶質としては、グルコース、スクロースが挙げられる。0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmグルコース水溶液を透過させたときのグルコース透過率をB、0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmスクロース水溶液を透過させたときのスクロース透過率をCとしたとき、B/Cが10以上であることが好ましく、30以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。B/Cの上限は特に限定されないが、例えば、1000以下である。ここで各溶質の透過率は100×(透過水中の溶質濃度/供給水中の溶質濃度)で表される。B/Cが高いことで、例えば、糖精製における、単糖と多糖の分離精製時間の短縮、精製の低コスト化に寄与する。
2.複合半透膜の製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。上記複合半透膜の製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(2-1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、多孔性支持層の形成工程と言い換えることもできる。本工程は、例えば、基材に高分子溶液を塗布する工程および高分子溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、例えば、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃以上60℃以下であることが好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により基材に強固に接合した多孔性支持層を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
高分子溶液の溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」)が好ましい。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1秒以上5秒間以下であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常、水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の温度は、-20℃以上100℃以下であることが好ましく、10℃以上50℃以下であることがより好ましい。凝固浴の温度が100℃以下であれば、熱運動による凝固浴面の振動を抑えることができ、膜形成後の膜表面の平滑性を保持できる。また温度が-20℃以上であれば凝固速度を維持できるため、製膜性を向上できる。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄してもよい。このときの熱水の温度は40℃以上100℃以下であることが好ましく、60℃以上95℃以下であることがより好ましい。洗浄温度が100℃以下であれば、支持膜の収縮度が大きくなり過ぎず、透水性能の低下を抑制することができる。また、洗浄温度が40℃以上であれば高い洗浄効果が得られる。
(2-2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程の一例を説明する。分離機能層の形成工程では、多官能脂肪族アミン化合物を含有する水溶液と、多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合によって半芳香族架橋ポリアミドを形成する。
具体的には、分離機能層を形成する工程は、
(a)多官能脂肪族アミン水溶液で上記多孔性支持層表面を被覆するステップと、
(b)上記(a)の後に、さらに、10℃以上38℃以下の多官能芳香族酸ハロゲン化物含有溶液を接触させるステップと、を有する。
多官能脂肪族アミン化合物を含有する水溶液における、多官能脂肪族アミンの濃度は0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
多官能脂肪族アミンを含有する水溶液には、アルコール類が含まれていてもよい。アルコール類としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。多官能脂肪族アミンを含有する水溶液にアルコール類が含まれることで、上述の界面活性剤と同様の効果が得られる。
多官能脂肪族アミンを含有する水溶液には、アルカリ性化合物が含まれていてもよい。アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリエチルアミンなどが挙げられる。アルカリ性化合物が含まれることで、界面重縮合反応にて発生するハロゲン化水素が除去され、多官能脂肪族アミンの反応性低下を抑制できるため、ポリアミド化反応が促進し、選択分離性に加え、酸、アルカリに対する耐久性を向上させることができる。
多官能芳香族酸ハロゲン化物含有溶液における溶媒は有機溶媒である。有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、支持膜を破壊しないものであり、かつ半芳香族架橋ポリアミドの生成反応を阻害しない、溶解性パラメーター(以下、「SP値」)が15.2(MPa)1/2以上、かつlogPが3.2以上の有機溶媒を用いることが好ましい。SP値が15.2(MPa)1/2以上、かつlogPが3.2以上であることで、界面重縮合時の多官能脂肪族アミンの分配、拡散が最適化され、官能基量を増加することができる。
SP値が15.2(MPa)1/2以上、かつlogPが3.2以上である有機溶媒としては、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1-オクテン、1-デセンなどの単体またはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能脂肪族アミン化合物を含有する水溶液には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、スチレンビス(ナフタレンスルホン酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。界面活性剤が含まれることで、多孔性支持層の表面を上記水溶液で均一に被覆できるので、分離機能層が均一に形成され、膜性能が安定する効果および分離機能層と多孔性支持層との接着性を高める効果が得られる。
多官能脂肪族アミン化合物を含有する水溶液や多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、それぞれ必要に応じて、アシル化触媒、極性溶媒、酸捕捉剤、酸化防止剤などの化合物が含まれていてもよい。
多官能脂肪族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物の界面重縮合を多孔性支持層上で行うために、まず、多官能脂肪族アミンを含有する水溶液で多孔性支持層表面を被覆し、被覆層を形成する。上記多官能脂肪族アミンを含有する水溶液で多孔性支持層表面を被覆する方法としては、多孔性支持層の表面がこの水溶液によって均一に、かつ連続的に被覆されればよく、例えば、水溶液を多孔性支持層表面に塗布する方法、支持膜を水溶液に浸漬する方法などが挙げられる。中でも、水溶液を多孔性支持層表面に塗布する方法が好ましい。多官能脂肪族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層表面に塗布することで、浸漬する手法と比較して、多孔性支持層が含有する水分量が少なくなる、すなわち支持膜が含有するアミン量が少なくなるため、多官能芳香族酸ハロゲン化物を塗布した後の界面重縮合初期において、反応場へのアミンの過剰供給を抑制でき、1価イオンの透過抵抗を抑制しながら多価イオンの透過を阻害するような孔の形成に寄与すると同時に、形成される分離機能層の第1面側の末端アミノ基密度を第2面側のアミノ基密度に比して低減することができる。
次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法などがある。液切り後、膜面を乾燥させ、膜面の水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
その後、上記多官能脂肪族アミンを含有する水溶液を含む多孔性支持層に、上述の多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布する。塗布温度は、10℃以上38℃以下で行うことが好ましく、20℃以上35℃以下であるとより好ましい。塗布温度が10℃以上であることで、有機溶媒中へのアミンの拡散速度が十分となり、多価イオン選択除去性に必要な孔径のポリアミド形成が容易となる。また、塗布時の温度が38℃以下であると、反応速度の向上による拡散の阻害が抑制されるため、孔構造が均一となり、選択分離性が向上する。
多官能芳香族酸ハロゲン化物としてトリメシン酸クロリドを含有している場合、有機溶媒溶液におけるトリメシン酸クロリドの濃度は、0.05質量%以上0.7質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以上0.3質量%以下であることがより好ましい。トリメシン酸クロリドの濃度がこの範囲内であれば、十分な透水性能、選択分離性能、酸に対する耐久性能が得られる。その他の3官能酸クロリド、2官能酸クロリドを用いる際は、上述のトリメシン酸クロリドの分子量比に合わせて、酸クロリドのモル濃度が同程度になるよう調整して用いる。
こうして多官能脂肪族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物とを接触させることで、両者を界面重縮合させる。界面重縮合は、10℃以上の温度条件下で行われることが好ましく、80℃以上の温度条件下で行われることがより好ましく、多官能脂肪族アミンの融点以上で行われることがさらに好ましい。また、界面重縮合は、120℃以下の温度条件下で行われることが好ましい。10℃以上で界面重縮合が行われることで、界面重縮合反応において、オリゴマーの運動性の低下を抑制することができ、反応系で多官能脂肪族アミンが高い運動性を維持でき、効率的な架橋反応が進行し、優れた多価イオン選択除去性を達成できる。また、120℃以下で界面重縮合が行われることで、多孔性支持層の過乾燥を防ぐことができ、実用的な透水性を確保することができる。
本発明者らは鋭意検討の結果、界面重縮合を実施している間の雰囲気湿度(相対湿度)を80%以上に制御することで本実施形態に係る複合半透膜が得られやすいことを見出した。界面重縮合時の雰囲気湿度を80%以上とすることで、形成されるポリアミドの水分の蒸発を抑えられ、余剰に生成したアミノ基の多いオリゴマーの分子間水素結合による不溶化を抑制できる。これにより、後述する液切り工程や溶媒処理工程でオリゴマーを効率的に除去できるため、酸性条件での膜運用時の半芳香族架橋ポリアミドの膨潤に伴う孔径拡大を抑制でき、分離機能層の第1面側のアミノ基密度を低減し、膜厚方向のアミノ基密度の傾斜が大きくなり、酸性条件での膜運用時に、高濃度の酸が接触する第一面側のポリアミドの膨潤とそれに伴う過度な孔径拡大を抑制でき、優れた1価イオン透過性と優れた多価イオン除去性を両立できると考えられる。したがって、界面重縮合を実施している間の雰囲気湿度は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。なお、雰囲気湿度は、精密空調装置を用いることなどによって調整できる。
界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、1秒以上1分以下であるとより好ましい。
次に、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法などを用いることができる。中でも、特に、水とエアーの混合流体で有機溶媒を除去する方法が特に好ましい。
水とエアーの混合流体を用いると、分離機能層中に水が含まれることで膨潤し、透水性が高くなる。自然流下の場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下の間にあることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。把持する時間が1分以上であることで目的の機能を有する分離機能層を得やすく、5分以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制できる。
上述の方法により得られた複合半透膜は、さらに、25℃以上90℃以下で1分以上、親水性溶媒で処理する工程を付加することで、第一面側の余剰のアミノ基の多いアミドオリゴマー除去が促進され、かつ分離機能層の膜厚方向の孔径分布が均一化されることにより、複合半透膜の1価イオン/多価イオン選択分離性をより一層向上させることができる。ここで、「親水性溶媒」とは10質量%以上水に溶解する溶媒のことであり、10質量%以上の水溶液として用いてもよい。親水性溶媒の水への溶解度は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、親水性溶媒をバルクのまま使用することが特に好ましい。
親水性溶媒としては、支持膜を侵さない溶媒が好適であり、特にアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノールなどの単価アルコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはポリブチレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ジグリセリン誘導体、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも、水洗浄での容易に除去でき、1価イオン/多価イオン選択分離性向上の効果が高いという観点から、分子量500以下のアルコール、グリコール類、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコール類を親水性溶媒として用いることが好ましく、特に、余剰オリゴマーの除去する観点、ポリアミド構造の再構成による孔径均一化効果の観点から、親水性溶媒はポリアミドに対する浸透性が高い分子量200以下のグリコール類が特に好ましい。
3.複合半透膜エレメント
本実施形態に係る複合半透膜エレメントは、本実施形態に係る複合半透膜を備えることを特徴とする。本実施形態に係る複合半透膜エレメントは、本実施形態に係る複合半透膜を備えるため、優れた1価イオン/多価イオン選択分離性能を示す。本実施形態に係る複合半透膜エレメントの構成の一実施形態について、図2を参照しながら説明する。
本実施形態に係る複合半透膜エレメントの一実施形態では、図2に示すように、複合半透膜エレメント100は、複合半透膜1、供給側流路材11、透過側流路材12、集水管6、第一端板7及び第二端板8を備える。複合半透膜1は、貼り合わされることで封筒状膜20を形成している。封筒状膜20は、集水管6の周囲にスパイラル状に巻き付けられることで、巻囲体26を形成している。巻囲体26の外周には、巻囲体26の保護のため、フィルム及びフィラメントなどの他部材が巻き付けられていても構わない。
供給側流路材11は、複合半透膜1の供給側面に対向するように配置され、かつ複合半透膜1と共に集水管6の周囲に巻き付けられる。供給側流路材11としては、例えば、ネットが好ましく用いられる。透過側流路材12は、複合半透膜1の透過側面に対向するように配置され、かつ複合半透膜1と共に集水管6の周囲に巻き付けられる。透過側流路材12としては、例えば、トリコットまたは突起物固着シートなどを用いることができる。なお、複合半透膜における基材側の面に突起(透過側流路材に相当)が直接固着している場合は、透過側流路材12は、省略可能である。集水管6は、中空の筒状部材であり、側面に複数の孔を有する。第一端板7は、複数の供給口を備える円盤状の部材である。第一端板7は、巻囲体26の第一端に配置される。第二端板8は、濃縮水の排出口と透過水の排出口とを備える円盤状の部材である。第二端板8は、巻囲体26の第二端に配置される。
複合半透膜エレメント100による流体の分離について説明する。供給水101は、第一端板7の複数の供給口から巻囲体26に供給される。供給水101は、複合半透膜1の供給側面において、供給側流路材11で形成された供給側流路内を移動する。複合半透膜1を透過した流体(図2中に透過水102として示す)は、透過側流路材12によって形成された透過側流路内を移動する。集水管6に到達した透過水102は、集水管6の孔を通って集水管6の内部に入る。集水管6内を流れた透過水102は、第二端板8から外部へと排出される。一方、複合半透膜1を透過しなかった流体(図2中に濃縮水103として示す)は、供給側流路を移動して、第二端板8から外部へと排出される。こうして、供給水101が、透過水102と濃縮水103とに分離される。
4.複合半透膜エレメントの製造方法
複合半透膜エレメントの製造方法としては、日本国特公昭44-14216号公報、日本国特公平4-11928号公報、または、日本国特開平11-226366号公報などに開示された方法を用いることができる。
5.複合半透膜および複合半透膜エレメントの利用
本実施形態に係る複合半透膜および複合半透膜エレメントは、ナノろ過膜およびナノろ過膜エレメントとして、1価イオンと多価イオンの分離用として好適に用いることができる。本実施形態に係る複合半透膜および複合半透膜エレメントは、例えば、かん水や海水からの塩分除去やミネラル調整、食品分野での塩分除去やミネラル調整、メッキ、精錬など工業用途からの酸の回収、さらには酸溶液中の金属回収などに用いることができる。
本実施形態に係る複合半透膜エレメントは、直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜、複合半透膜エレメントおよび複合半透膜モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
6.ろ過装置
本実施形態に係るろ過装置は、分離装置と流量制御設備と、を備え、上記分離装置は上記複合半透膜エレメントを備え、上記流量制御設備において、分離装置の透過水および濃縮水流量を制御する。
分離装置は、複合半透膜エレメントが充填された圧力容器(ベッセル)を有し、高圧ポンプにより溶液をベッセルに供給できる構造であることが好ましい。
透過水および濃縮水の流量制御設備は、複合半透膜エレメントの透過水および濃縮水の流量を制御するために、複合半透膜エレメントの透過水および濃縮水の流量を測定可能な計器(流量計)を有することが好ましい。透過水の流量制御において、高圧ポンプは透過水流量計のデータを随時受信し、一定の透過水流量になるように高圧ポンプの出力を制御する機構を有することが好ましい。濃縮水流量制御において、濃縮水流量計の付近に電磁バルブを有することが好ましく、電磁バルブは、濃縮水流量計のデータを随時受信し、濃縮水流量を一定に制御する機構を有することが好ましい。
本実施形態に係るろ過装置は、上記に加え、ポンプ、配管、バルブ、槽、ベッセル、温度調節機器、計器類(pH計、電気伝導度計、流量計、圧力計など)などを選定し、任意に組み合わせることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものはない。
<陽電子ビーム法による陽電子消滅寿命測定法>
分離機能層の陽電子消滅寿命測定は、以下のように陽電子ビーム法を用いて行った。複合半透膜を70℃の純水で1時間洗浄した後に、25℃の純水に30分静置した。その後、-30℃減圧下で複合半透膜を凍結乾燥させ、1.5cm×1.5cm角に切断して検査試料とした。陽電子ビーム発生装置を装備した薄膜対応陽電子消滅寿命測定装置(この装置は、例えば、Radiation Physics and Chemistry,58,603,Pergamon(2000)で詳細に説明されている)にて、ビーム強度0.1および0.5keV、室温真空下で、光電子増倍管を使用して二フッ化バリウム製シンチレーションカウンターにより総カウント数500万で検査試料の分離機能層側を測定し、POSITRONFITにより解析を行った。解析により得られた第3成分の平均寿命τから、ビーム強度が0.1keVの場合の平均孔径をR1、ビーム強度が0.5keVの場合の平均孔径をR2として計算した。
<分離機能層断面の孔数および孔径>
分離機能層断面の孔数および孔径の測定は、以下のように電界放出形透過顕微鏡(以下、「STEM」)を用いて行った。-30℃減圧下で複合半透膜を凍結乾燥させ、1.5cm×1.5cm角に切断して観察試料とした。ソフトウェアとして、GMS3(Gatana社製)、plug-inとしてDeConv.HAADF(HREM社製)を使用したSTEM(日立製HF5000)を用いて、この複合半透膜における分離機能層の断面を加圧電力200kV、球面収差(Cs)1μm、絞り22mrad、観察倍率10万倍率の条件で画像を撮影した。得られた画像を、ImageJ(Fiji)を用いて、孔面積を真円に換算した円相当直径を算出し、小数点第3位を四捨五入した値を孔径とした。得られた孔径を基に、孔径が0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数P1、孔径が0.50nm以上0.80nm未満の孔の総数P2、孔径が0.80nm以上1.20nm以下の孔の総数P3および孔径が1.20nmを超える孔の総数P4を計測した。無作為に選択した異なる3箇所の断面について、それぞれ3枚の画像を解析し、得られた値の平均値を算出した。
<アミノ基密度の測定>
基材を物理的に剥離させた5cm×5cmの複合半透膜を凍結超薄切片法で処理後、グリッド上に載せ、純水中に4時間浸漬したのち、10質量%の2-プロパノール水溶液中に1時間浸漬し、洗浄し、試料とした。得られた試料を、pH3.8、25℃に調整したNaWO・2HOの1.0×10-3mol/L水溶液中に10分間浸漬する作業を計3回、続けてpH3.8、25℃に調整したNaWO・2HOの1.0×10-7mol/L水溶液中に試料を7分間浸漬する作業を計4回実施した。その後、試料の水分をろ紙で除いた後、-30℃で凍結乾燥し、アミノ基密度測定サンプルとした。得られたアミノ基密度測定サンプルの断面画像を、STEM(日立ハイテク製 HF5000)を用いて加速電圧200kVの条件にて撮影し、10万倍率のSTEM画像を取得した。得られた画像を画像処理ソフトで解析し、上述の方法によって、複合半透膜の表面に垂直な断面(第1面に垂直な断面)において、第1面側から第2面側に向けて、上記分離機能層を等間隔に5分割した各領域を領域a~eとし、輝度値から各領域a~eについてアミノ基密度を算出した。領域bにおけるアミノ基密度をNbとし、領域dにおけるアミノ基密度をNdとして、Nb/Ndを算出した。
<Mg除去率、Li除去率>
複合半透膜に、温度25℃、pH1、硫酸濃度100mmol/L、硫酸リチウム濃度45mmol/L、硫酸マグネシウム濃度115mmol/Lに調整した水溶液を3.5L/minの流量で供給し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値である膜透過流束が0.4m/m/日となるよう圧力を調整し、膜ろ過処理を行った。供給水および透過水のマグネシウムイオン(以下、「Mg2+」)濃度およびリウムイオン(以下、「Li」濃度を日立株式会社製のP-4010型ICP(高周波誘導結合プラズマ発光分析)装置を用いて測定して、下記式に基づいて、Mg除去率、Li除去率を算出した。
Mg除去率(%)={1-(透過水中のMg2+濃度)/(供給水のMg2+濃度)}×100
Li除去率(%)={1-(透過水中のLi濃度)/(供給水のLi濃度)}×100
<1価イオン/2価イオン選択性>
上記「Mg除去率、Li除去率」の測定により算出したMg除去率、Li除去率の値を用い、下記式に基づいて、1価イオン/2価イオン選択性を算出した。
1価イオン/2価イオン選択性=(100-Li除去率)/(100-Mg除去率)
なお、上記評価はMg2+の除去率を用いて評価を行ったが、Mg2+の透過を阻害できれば、その他の多価イオンの透過も阻害できるものとみなすことができる。これは、Mg2+は代表的な2価イオンであり、一般に3価以上の多価イオンは2価イオンよりもイオンサイズが大きくなるためである。
<グルコース透過率、スクロース透過率>
複合半透膜に、0.5MPaの操作圧力で温度25℃、pH6.5の1000ppmグルコース水溶液を透過させた際のグルコース透過率Bおよび0.5MPaの操作圧力で温度25℃、pH6.5の1000ppmスクロース水溶液を透過させた際のスクロース透過率Cをそれぞれ下記式によって求め、スクロース透過率に対するグルコース透過率(B/C)を算出した。なお、グルコース濃度およびスクロース濃度は屈折率計(株式会社島津製作所製RID-6A)により求めた。
グルコース透過率B=(透過水中のグルコース濃度/供給水中のグルコース濃度)×100
スクロース透過率C=(透過水中のスクロース濃度/供給水中のスクロース濃度)×100
<支持膜の作製>
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm/s、厚み42μm)上に、ポリスルホンの18質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)下、塗布厚み180μmでキャストした後、ただちに純水中に5分間浸漬することによって基材上に多孔性支持層を形成し、支持膜を作製した。
<複合半透膜の作製>
(実施例1)
上記で得られた支持膜に対して25℃に調整したエアーを吹き付け余分な水分を除去しつつ、支持膜の膜面温度を25℃に調整した。ホモピペラジン(logP:-0.65)2.0質量%、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム250ppm、リン酸三ナトリウム1.0質量%を溶解した30℃の水溶液に15秒間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付け余分な水溶液を除去することで支持膜上にアミン水溶液の被覆層を形成させた。さらにTMC0.2質量%を含む38℃のn-デカン溶液に浸漬させ、その後、雰囲気湿度(相対湿度)80%、25℃で1分間静置し、膜面に2流体(純水とエアー)を吹き付けて、表面の溶液を除去した。その後、80℃の純水で洗浄し、複合半透膜を得た。
(実施例2)
実施例1と同様の操作を行った後、さらに、80℃のグリセリンに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(実施例3)
実施例1と同様の操作を行った後、さらに、80℃のトリエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(実施例4)
支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することにより、被覆層を形成した以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例5)
支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することにより、被覆層を形成した以外は実施例3と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例6)
多官能脂肪族アミンを2-メチルピペラジン(logP:-0.44)に変更した以外は実施例4と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例7)
雰囲気湿度を90%に変更した以外は実施例6と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例8)
雰囲気湿度を95%に変更した以外は実施例6と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例9)
実施例8と同様の操作を行った後、さらに、80℃の1,3-ブタンジオールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(実施例10)
多官能脂肪族アミンを2,5-ジメチルピペラジン(logP:-0.12)に変更した以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例11)
雰囲気湿度を90%に変更した以外は実施例10と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例12)
支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することによって、被覆層を形成した以外は実施例11と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例13)
実施例12と同様の操作を行った後、さらに、80℃のジエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(実施例14)
多官能脂肪族アミンを2,5-ジエチルピペラジン(logP:0.85)に変更した以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例15)
多官能脂肪族アミンを2,5-ジエチルピペラジンに変更し、ジエチレングリコールをエチレングリコールに変更した以外は実施例13と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例16)
多官能脂肪族アミンを2,5-ジエチルピペラジンに変更した以外は実施例8と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(実施例17)
実施例16と同様の操作を行った後、さらに、80℃のエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例1)
多官能脂肪族アミンをピペラジンとし、雰囲気湿度を75%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例2)
実施例1と同様の操作を行った後、さらに、80℃のグリセリンに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例3)
支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することにより、被覆層を形成した以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例4)
比較例3と同様の操作を行った後、80℃のエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例5)
多官能酸クロリド濃度を0.4質量%に変更した以外は、比較例3と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例6)
界面重縮合時の温度を80℃に変更した以外は、比較例3と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例7)
比較例3と同様の操作を行った後、さらに、25℃の1.0質量%の無水プロピオン酸水溶液に10分浸漬し、次いで、25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例8)
多官能脂肪族アミンを4,4‘-ビピペリジン(logP:-0.17)に変更した以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例9)
支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することにより、被覆層を形成した以外は比較例8と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例10)
雰囲気湿度を90%に変更した以外は、比較例9と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例11)
雰囲気湿度を75%に変更した以外は、実施例4と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例12)
多官能酸クロリド濃度を0.4質量%に変更した以外は、比較例11と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例13)
界面重縮合時の温度を80℃に変更した以外は、比較例11と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例14)
比較例11と同様の操作を行った後、さらに、80℃のトリエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例15)
比較例11と同様の操作を行った後、さらに、25℃の1.0質量%の無水酢酸水溶液に10分浸漬し、次いで、25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例16)
雰囲気湿度を75%に変更した以外は、実施例6と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例17)
多官能酸クロリド濃度を0.4質量%に変更した以外は、比較例16と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例18)
界面重縮合時の温度を80℃に変更した以外は、比較例16と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例19)
比較例16と同様の操作を行った後、さらに、80℃の1,3-ブタンジオールに2ルに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例20)
比較例16と同様の操作を行った後、さらに、25℃の1.0質量%の無水プロピオン酸水溶液に10分浸漬し、次いで、25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例21)
雰囲気湿度を75%に変更した以外は、実施例12と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例22)
多官能酸クロリド濃度を0.4質量%に変更した以外は、比較例21と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例23)
界面重縮合時の温度を80℃に変更した以外は、比較例21と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例24)
比較例21と同様の操作を行った後、さらに、80℃のジエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例25)
比較例21と同様の操作を行った後、さらに、25℃の1.0質量%の無水酢酸水溶液に10分浸漬し、次いで、25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例26)
雰囲気湿度を75%に変更した以外は、実施例16と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例27)
多官能酸クロリド濃度を0.4質量%に変更した以外は、比較例26と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例28)
界面重縮合時の温度を80℃に変更した以外は、比較例26と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例29)
比較例26と同様の操作を行った後、さらに、80℃のエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例30)
比較例26と同様の操作を行った後、さらに、25℃の1.0質量%の無水酢酸水溶液に10分浸漬し、次いで、25℃の純水に24時間浸漬させることで複合半透膜を作製した。
(比較例31)
多官能脂肪族アミンを2,5-ジイソプロピルピペラジン(logP:1.65)に変更した以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例32)
雰囲気湿度を95%に変更し、支持膜上にアミン水溶液を塗布して15秒間静置することにより、被覆層を形成した後、80℃のエチレングリコールに2分間浸漬し、次いで25℃の純水に24時間浸漬させた以外は比較例31と同様の方法で複合半透膜を作製した。
(比較例33)
多官能脂肪族アミンをメタフェニレンジアミン(logP:0.43)に変更したこと以外は比較例32と同様の方法で複合半透膜を作製した。
Figure 0007593512000001
Figure 0007593512000002
Figure 0007593512000003
Figure 0007593512000004
Figure 0007593512000005
Figure 0007593512000006
表1~6に示す通り、R1およびR2が0.30nm以上2.00nm以下であり、かつ、0.90≦R1/R2≦1.10を満たす実施例1~17の複合半透膜は、比較例1~33の複合半透膜と比して、酸性条件において高い1価イオン/2価イオン選択性を示した。
実施例4と5および実施例11と12の対比から、0.31≦P2/P1≦0.35、P3/P2≦0.09、かつP4/P1≦0.005を満たす複合半透膜は、より優れた1価イオン/2価イオン選択性を示すことがわかる。
実施例1と実施例3の対比から、Nb/Nd≦0.80を満たすことで、1価イオン/多価イオン選択性が向上することがわかる。
また、実施例8と実施例9の対比により、Nbを1.0×10-23mol/nm以下とすることで、1価イオン/多価イオン選択性が向上することがわかる。
分離機能層がひだ状構造を有する実施例6~17では、ひだ状構造を有しない実施例1~5に比べて、より低圧力で運転できることがわかる。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2022年11月30日付けで出願された日本特許出願(特願2022-192377)、2022年11月30日付けで出願された日本特許出願(特願2022-192378)、及び2023年9月29日付けで出願された日本特許出願(特願2023-169359)、に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
1 複合半透膜
2 基材
3 多孔性支持層
4 分離機能層
6 集水管
7 第一端板
8 第二端板
11 供給側流路材
12 透過側流路材
20 封筒状膜
26 巻囲体
100 複合半透膜エレメント
101 供給水
102 透過水
103 濃縮水
201 ひだ高さ
202 分離機能層の厚み
P 基準点
X1 基準点Pを通る薄膜の外表面の接線
X2 接線X1に平行な薄膜の内表面の接線
Y0 基準点Pを通る法線
Y1、Y2 法線Y0に平行な直線
a、b、c、d、e 分離機能層を5分割した各領域

Claims (9)

  1. 多孔性支持層と、前記多孔性支持層の一方の面側に位置する分離機能層とを備える複合半透膜であって、
    前記分離機能層は半芳香族架橋ポリアミドを含有し、
    前記複合半透膜の前記分離機能層側の面を第1面とし、前記第1面とは反対側の面を第2面とし、
    前記複合半透膜に前記第1面側から陽電子ビームを照射し、陽電子消滅寿命測定法から導出される前記分離機能層の平均孔径R1および平均孔径R2が0.30nm以上2.00nm以下であり、かつ0.90≦R1/R2≦1.10を満たす、複合半透膜。
    R1:陽電子ビーム強度が0.1keVの条件での平均孔径
    R2:陽電子ビーム強度が0.5keVの条件での平均孔径
  2. 前記平均孔径R1が0.55nm以上1.00nm以下である、請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記複合半透膜の表面に対して垂直な前記分離機能層の断面において、孔径が0.30nm以上1.20nm以下の孔の総数P1と、孔径が0.50nm以上0.80nm未満の孔の総数P2と、孔径が0.80nm以上1.20nm以下の孔の総数P3と、孔径が1.20nmを超える孔の総数P4とが、0.20<P2/P1<0.40、P3/P2<0.20およびP4/P1≦0.01を満たす、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記複合半透膜の表面に対して垂直な前記分離機能層の断面において、前記第1面側から前記第2面側に向けて、前記分離機能層を等間隔に5分割した各領域を領域a~eとしたとき、領域bにおけるアミノ基密度Nbと、領域dにおけるアミノ基密度Ndが、Nb/Nd≦0.80を満たす、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  5. 前記Nbが1.0×10-23mol/nm以下である、請求項4に記載の複合半透膜。
  6. 0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmグルコース水溶液を透過させたときのグルコース透過率をB、0.5MPaの操作圧力で25℃、pH6.5の1000ppmスクロース水溶液を透過させたときのスクロース透過率をCとしたとき、B/Cが10以上である、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  7. 前記分離機能層が中空状のひだ状構造を有する、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  8. 請求項1または2に記載の複合半透膜を備える、複合半透膜エレメント。
  9. 請求項8に記載の複合半透膜エレメントを備える、ろ過装置。
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