以下、図面を参照して、本発明の実施形態における異常判定装置について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両を模式的に示すスケルトン図である。車両1は、走行用の動力源であるエンジン2と、変速機3と、デファレンシャルギヤ4と、車軸5と、駆動輪6とを備えている。この車両1はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車である。エンジン2から出力された動力は、変速機3、デファレンシャルギヤ4、左右の車軸5を順次介して左右の駆動輪6へ伝達される。変速機3は、例えば複数の遊星歯車装置および係合装置を含んで構成された多段変速機である。
車両1は、運転席の近傍に配設されたシフトスイッチ10によって選択されたシフトレンジに応じて変速機3のシフトレンジを電気的に切り替えるシフトバイワイヤシステム20を備えている。シフトバイワイヤシステム20は、シフトスイッチ10を備えるシフト操作装置30と、電子制御装置(ECU)40と、パーキングロック装置50とを含んで構成されている。
シフト操作装置30は、例えば運転席近傍の内装パネルなどに配設され、変速機3のシフトレンジを変更するためのシフトスイッチ10を備えている。シフトスイッチ10は、運転者がシフトレンジを選択する際に操作されるものであり、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチにより構成されている。このシフトスイッチ10は、シフトレンジを指定するためのON/OFFスイッチであって、一つのスイッチでONとOFFとを判断するための複数の接点を有する。
また、シフト操作装置30には、各シフトレンジを選択するために複数のシフトスイッチ10が設けられている。このシフト操作装置30には、シフトスイッチ10として、駐車レンジを選択するためのPスイッチ11と、後進走行レンジを選択するためのRスイッチ12と、動力伝達を遮断する中立レンジを選択するためのNスイッチ13と、前進走行レンジを選択するためのDスイッチ14と、減速前進走行レンジを選択するためのBスイッチ15とが設けられている。
Pスイッチ11は、変速機3のシフトレンジを駐車レンジ(Pレンジ)へ切り替えるためのスイッチであり、運転者がPレンジを選択するときに操作されるものである。Pレンジは、変速機3内の動力伝達経路が遮断され、かつパーキングロック装置50によってパーキングロックが実行されたシフトレンジである。パーキングロック装置50は、駐車時に駆動輪6の回転を機械的に阻止する機構である。例えば、パーキングロック装置50によるパーキングロックが実行されていない場合(非パーキングロック状態)において、所定の条件が成立しているときに運転者がPスイッチ11を押圧操作すると、Pスイッチ11から信号が出力され、その信号を受けた電子制御装置40は変速機3のシフトレンジをPレンジに切り替える。非パーキングロック状態は、駆動輪6の回転が許容された状態である。
Rスイッチ12は、変速機3のシフトレンジを後進走行レンジ(Rレンジ)へ切り替えるためのスイッチであり、運転者がRレンジを選択するときに操作されるものである。Rレンジは、車両1を後進させる駆動力が駆動輪6に伝達されるシフトレンジである。
Nスイッチ13は、変速機3のシフトレンジを中立レンジ(Nレンジ)へ切り替えるためのスイッチであり、運転者がNレンジを選択するときに操作されるものである。Nレンジは、変速機3内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態となるシフトレンジである。このNレンジでは、エンジン2から駆動輪6への動力伝達経路が遮断されるものの、駆動輪6の回転は許容される。
Dスイッチ14は、変速機3のシフトレンジを前進走行レンジ(Dレンジ)へ切り替えるためのスイッチであり、運転者がDレンジを選択するときに操作されるものである。Dレンジは、車両1を前進させる駆動力が駆動輪6に伝達されるシフトレンジである。
Bスイッチ15は、変速機3のシフトレンジを減速前進走行レンジ(Bレンジ)へ切り替えるためのスイッチであり、運転者がBレンジを選択するときに操作されるものである。Bレンジは、Dレンジにおいて車両1にエンジンブレーキ効果を発揮させて駆動輪6の回転を減速させるシフトレンジである。つまり、Dレンジが選択された状態においてBスイッチ15が押圧操作されることによりBレンジを選択することができる。
そして、シフトスイッチ10は、運転者により押圧操作される毎にシフト信号を電子制御装置40へ出力する。シフト信号は、シフトスイッチ10がON操作またはOFF操作されたことを示す電気信号である。電子制御装置40は、シフトスイッチ10からのシフト信号に応じて、シフトスイッチ10が操作されたことを電気的に検出する。
電子制御装置40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。この電子制御装置40は、ROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。例えば、電子制御装置40は、エンジン2の出力制御、変速機3の変速制御、シフトバイワイヤシステム20におけるシフトレンジの変更制御などを実行する。そして、電子制御装置40からは、エンジン2を制御するための指令信号や変速機3を制御するための指令信号が出力される。
シフトレンジの変更制御について説明すると、シフトスイッチ10においていずれかのシフトレンジが選択された際、電子制御装置40は、選択されたシフトレンジに対応して変速機3やパーキングロック装置50や表示装置60などを制御する。例えば、電子制御装置40は、前進走行レンジ以外の非前進走行レンジ(非Dレンジ)から前進走行レンジ(Dレンジ)へ切り替える制御を実行する。この場合、電子制御装置40から表示装置60に指令信号が出力される。その結果、選択中のシフトレンジを表示する表示装置60にはDレンジが表示される。
また、シフトレンジの変更制御には、パーキングロック装置50の状態を切り替える制御が含まれる。例えば、パーキングロック装置50が非パーキングロック状態にあるときにPスイッチ11からの信号が電子制御装置40に入力されると、電子制御装置40は、パーキングロック装置50によるパーキングロックを実行する。そして、パーキングロック装置50がパーキングロック状態であるときに、Rスイッチ12、Nスイッチ13、Dスイッチ14のうちのいずれかが押圧操作された場合には、ブレーキペダルが踏込操作されているなどの所定の条件が満たされていることを条件に、電子制御装置40はパーキングロックを解除する。
また、電子制御装置40は、制御用マイコン41と、監視用マイコン42とを備える。シフトスイッチ10からの信号は、図2に示すように、制御用マイコン41と監視用マイコン42とにそれぞれ入力される。シフトスイッチ10から制御用マイコン41に入力される信号は、制御用のシフト信号である。シフトスイッチ10から監視用マイコン42に入力される信号は、監視用のシフト信号である。この電子制御装置40では、制御用マイコン41が第1マイコンであり、監視用マイコン42が第2マイコンである。
制御用マイコン41は、運転者によりいずれかのシフトスイッチ10が押圧操作された際にそのシフトスイッチ10から出力される信号に基づいて、そのシフトスイッチ10に対応するシフトレンジへとシフトレンジを切り替える変更制御を実行するメインマイコンである。この制御用マイコン41は、決定部41aを有する。
決定部41aは、シフトスイッチ10から入力されるシフト信号に基づいて制御用シフトレンジを決定する。第1マイコンである制御用マイコン41は、決定部41aにより決定された制御用シフトレンジに基づいて変速機3のシフトレンジを切り替える。また、制御用マイコン41から表示装置60に信号が出力される。そのため、決定部41aにより決定された制御用シフトレンジは、選択中のシフトレンジを表示する表示装置60に表示される。
監視用マイコン42は、制御用マイコン41による変更制御を監視するサブマイコンである。この第2マイコンである監視用マイコン42は、シフトスイッチ10から入力される信号と制御用マイコン41から入力される信号とに基づいて、異常が発生したか否かを判定する監視制御を実行する。この監視用マイコン42は、監視部42aを有する。
監視部42aは、電子制御装置40によるシフトレンジの変更制御を監視する。この監視部42aには、決定部41aから出力された信号が入力されるとともに、押圧操作を受けたシフトスイッチ10から出力されたシフト信号が入力される。決定部41aから監視部42aに入力される信号は、決定部41aにより決定された制御用シフトレンジを示す信号である。そのため、監視部42aは、シフトスイッチ10から監視用マイコン42に入力される信号と、制御用マイコン41から監視用マイコン42に入力される信号とに基づいて、シフトスイッチ10の操作により選択されたシフトレンジと制御用マイコン41により決定された制御用シフトレンジとが一致するか否かを判定することができる。
このように、監視用マイコン42は、シフトスイッチ10からのシフト信号と制御用マイコン41での演算結果とを監視することにより、シフトバイワイヤシステム20での異常発生を監視する。この場合、制御用マイコン41の決定部41aから出力された信号が監視部42aに入力されるため、監視用マイコン42は、制御用マイコン41により制御用シフトレンジを切り替える変更制御が実行されたことを検知することができる。例えば、Dスイッチ14からの信号が監視用マイコン42に入力されていないときに、制御用マイコン41が制御用シフトレンジをDレンジへと切り替える制御を実行した場合、監視用マイコン42は、制御用シフトレンジの変更制御に関して異常が発生していると判定する。このように、電子制御装置40は、シフトバイワイヤシステム20の誤作動を監視する装置であって、シフトバイワイヤシステム20の異常を判定する異常判定装置である。
図3は、制御用シフトレンジの監視処理を示すフローチャート図である。なお、図3には、複数のシフトレンジのうち、Dレンジを監視する場合が示されている。また、図3に示す処理は、所定の演算周期にて監視用マイコン42により繰り返し実行される。
監視用マイコン42は、監視用のシフト信号についてDスイッチ14からの信号の入力状態が変化したか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101では、シフト操作装置30から監視用マイコン42に入力されるシフト信号のうち、Dスイッチ14からの信号の入力状態がOFFからONに変化したか否かが判定される。
このステップS101では、Dスイッチ14における複数の接点から入力される信号のうち、一つの信号でも入力状態が変化したか否かを判定することができる。要するに、入力状態が変化する信号は、特性が異なる接点のうち、どの接点から出力された信号であってもよい。Dスイッチ14における複数の接点から入力される信号のうちの一つでも入力状態が変化した時とは、Dレンジ以外の操作によりシフト信号が変化したことではなく、明らかにDレンジを選択する操作をしていることが分かる。
監視用のシフト信号についてDスイッチ14からの信号の入力状態が変化した場合(ステップS101:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジ許可フラグをONに設定するとともに、Dレンジカウンタを所定値Aに設定する(ステップS102)。Dレンジ許可フラグとは、制御用シフトレンジがDレンジに切り替わることを許可するフラグである。Dレンジカウンタとは、Dレンジへの変更を許可する許可時間を表すものである。所定値Aは、ゼロよりも大きい値である。つまり、Dレンジカウンタに所定値Aが設定されることにより、Dレンジへの変更を許可する許可時間として所定時間が設定されたことになる。
監視用のシフト信号についてDスイッチ14からの信号の入力状態が変化していない場合(ステップS101:No)、または、ステップS102の処理を実施後に、監視用マイコン42は、Dレンジカウンタがゼロよりも大きいか否かを判定する(ステップS103)。
Dレンジカウンタがゼロよりも大きい場合(ステップS103:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジカウンタを減算する(ステップS104)。ステップS104では、例えばDレンジカウンタの値がひとつ減算される。減算前のDレンジカウンタが「A」であるとすると、減算後のDレンジカウンタは「A-1」で表すことができる。要するに、ステップS104では、Dレンジカウンタに設定された所定値Aに応じた所定時間からのカウントダウンが行われる。
Dレンジカウンタがゼロよりも大きくない場合(ステップS103:No)、監視用マイコン42は、Dレンジ許可フラグをOFFに設定する(ステップS105)。ステップS105では、現在のDレンジ許可フラグがONである場合にはONからOFFに切り替えられ、現在のDレンジ許可フラグがOFFである場合にはOFFに維持される。
ステップS104の処理を実施後、または、ステップS105の処理を実施後に、監視用マイコン42は、制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化したか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106では、制御用マイコン41から監視用マイコン42に入力される信号に基づいて、制御用シフトレンジがDレンジに切り替わったか否かが判定される。
制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化した場合(ステップS106:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジ許可フラグがONであるか否かを判定する(ステップS107)。
Dレンジ許可フラグがONでない場合(ステップS107:No)、監視用マイコン42は、制御シフトレンジの異常処置を行う(ステップS108)。ステップS108において、監視用マイコン42は、Dレンジへの変更が許可されていない状態で制御用シフトレンジがDレンジに切り替わったことを検知し、シフトバイワイヤシステム20に異常が生じていると判断する。そして、このステップS108の処理が実施される場合とは、監視用のシフト信号の入力状態が一つも変化していないときに制御用シフトレンジがDレンジに切り替わる場合である。つまり、この場合となるは、監視用のシフト信号を入力する信号線(接点ごとに設けられた複数の信号線)が全て断線またはショートしたことにより入力信号が変化しなくなった場合(第1異常)、制御用のシフト信号の入力のみに、誤って押圧操作ありと判断するようなノイズが入力された場合(第2異常)、制御のバグや誤作動により、シフト信号の入力がないにもかかわらず押圧操作ありと判断した場合(第3異常)のいずれかである。そのため、電子制御装置40は、制御シフトレンジの異常処置として、車両1の駆動力をカットするなどのフェールセーフ制御を実行する。ステップS108の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化しない場合(ステップS106:No)、または、Dレンジ許可フラグがONである場合(ステップS107:Yes)には、この制御ルーチンは終了する。この場合、監視用マイコン42は制御用シフトレンジのうちDレンジに関する処理が正常であると判断する。
そして、監視用マイコン42が所定の演算周期にて処理を繰り返すため、図3に示す処理はループする。そのため、Dスイッチ14からの信号の入力状態がONに切り替わったと判定されて以降は、ステップS101で否定的に判定されるループに入る。このループに入ると、ステップS104の処理が実施されるたびに、Dレンジカウンタが0に向けてカウントダウンされる。Dレンジカウンタがゼロよりも大きい場合にはDレンジ許可フラグがONに維持されるため、ステップS107で肯定的に判定されるループとなる。そして、何度目かのループでDレンジカウンタが0になると、ステップS103で否定的に判定されて、ステップS105においてDレンジ許可フラグがONからOFFに切り替わる。つまり、Dスイッチ14からの信号の入力状態が変化してから許可時間(所定値Aに応じた所定時間)が経過した後は、Dレンジ許可フラグがOFFとなるため、制御用シフトレンジがDレンジに変化した場合には異常と判定され、ステップS108の処理が実施される。
以上説明した通り、第1実施形態によれば、監視用マイコン42によって誤作動を監視する際、シフトスイッチ10から監視用マイコン42に入力される監視用のシフト信号の状態が変化したときから所定の許可時間が経過するまでの間は、そのシフトレンジへの変更を許可する。そして、監視用マイコン42がそのシフトレンジへの変更を許可していないときに制御用マイコン41が制御用シフトレンジをそのシフトレンジへ変更した場合には、監視用マイコン42は、異常と判定する。これにより、シフト信号の入力状態が変化してから所定の許可時間が経過するまでの間は異常との判定を行わないので、制御用マイコン41と監視用マイコン42との演算タイミングにずれが生じても、異常との誤判定が発生することを抑制することができる。
また、第1実施形態では、シフトスイッチ10が各シフトレンジに対応して一つずつ設けられている構成について説明したがこれに限定されない。シフトスイッチ10は、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、Bレンジなどのうち、少なくとも一つ以上に設けられていればよい。例えば、シフトスイッチ10はPスイッチ11とDスイッチ14とにより構成されてもよい。さらに、図3に示す処理はDレンジ以外の制御用シフトレンジにも適用可能である。例えば、電子制御装置40はPレンジを対象にして図3に示す処理を実行することも可能である。要するに、シフトスイッチ10が設けられたシフトレンジについて図3に示す処理を適用することができる。
また、第1実施形態の変形例として、監視用マイコン42は、異常との仮判定を行い、この仮判定をしてから所定の猶予時間が経過した後に、異常と判定するように構成することができる。この変形例の制御が図4に示されている。
図4は、第1実施形態の変形例における制御用シフトレンジの監視処理を示すフローチャート図である。なお、図4に示す処理は、複数のシフトレンジのうちDレンジを監視する場合であり、所定の演算周期にて監視用マイコン42により繰り返し実行される。また、図4に示すステップS201~ステップS205の処理は、図3に示すステップS101~ステップS105の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS204の処理を実施後、または、ステップS205の処理を実施後に、監視用マイコン42は、Dレンジ許可フラグがONであるか否かを判定する(ステップS206)。
Dレンジ許可フラグがONである場合(ステップS206:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジ異常カウンタをゼロに設定する(ステップS207)。ステップS207の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
Dレンジ許可フラグがONでない場合(ステップS206:No)、監視用マイコン42は、Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きいか否かを判定する(ステップS208)。
Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きくない場合(ステップS208:No)、監視用マイコン42は、制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化したか否かを判定する(ステップS209)。
制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化した場合(ステップS209:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジ異常カウンタを所定値Bに設定する(ステップS210)。Dレンジ異常カウンタとは、Dレンジの処理について異常と判定するまでの猶予時間を表すものである。所定値Bは、ゼロよりも大きい値である。つまり、Dレンジ異常カウンタに所定値Bが設定されることにより、異常との判定が確定するまでの猶予時間(所定値Bに応じた所定時間)が設定されたことになる。言い換えれば、監視用マイコン42は、Dレンジ許可フラグがOFFのときに制御用シフトレンジがDレンジへ切り替わったことを検知した場合、異常と仮判定する。さらに、監視用マイコン42は、この仮判定のままとなる猶予時間を設定する。すなわち、ステップS209の処理により異常と仮判定された後に、ステップS210では、Dレンジ許可フラグがONに変更されるまでの猶予時間が設定されたことになる。ステップS210の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
制御用シフトレンジがDレンジ以外からDレンジに変化しない場合(ステップS209:No)、制御ルーチンはステップS207へ進む。
Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きい場合(ステップS208:Yes)、監視用マイコン42は、Dレンジ異常カウンタを減算する(ステップS211)。ステップS211では、例えばDレンジ異常カウンタの値がひとつ減算される。減算前のDレンジ異常カウンタが「B」であるとすると、減算後のDレンジ異常カウンタは「B-1」で表すことができる。要するに、ステップS211では、Dレンジ異常カウンタに設定された所定値Bに応じた所定時間からのカウントダウンが行われる。
ステップS211の処理を実施後、監視用マイコン42は、Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きいか否かを判定する(ステップS212)。
Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きい場合(ステップS212:Yes)、この制御ルーチンは終了する。この場合、異常と仮判定した状態を維持したままループする。
Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きくない場合(ステップS212:No)、監視用マイコン42は、制御シフトレンジの異常処置を行う(ステップS213)。ステップS212で否定的に判定された場合とは、猶予時間が経過したことを意味する。つまり、異常と仮判定した状態から、異常との判定が確定した状態に移行したことになる。そのため、電子制御装置40は、制御シフトレンジの異常処置として、車両1の駆動力をカットするなどのフェールセーフ制御を実行する。ステップS213の処理を実施後、この制御ルーチンは終了する。
そして、監視用マイコン42が所定の演算周期にて処理を繰り返すため、図4に示す処理はループする。そのため、Dスイッチ14からの信号の入力状態が変化していない状態で制御用シフトレンジがDレンジに切り替わって以降は、ステップS208で肯定的に判定されるループに入る。このループに入ると、ステップS211の処理が実施されるたびにDレンジ異常カウンタが0に向けてカウントダウンされる。Dレンジ異常カウンタがゼロよりも大きい場合にはステップS212で肯定的に判定されるため、異常と仮判定された状態に維持される。そして、何度目かのループでDレンジ異常カウンタが0になると、ステップS212で否定的に判定されるため、異常との判定が確定される。つまり、Dスイッチ14からの信号の入力状態が変化していないときに制御用シフトレンジがDレンジに切り替わってから猶予時間が経過した後は、異常との判定が確定され、ステップS213の処理が実施される。
この変形例によれば、監視用のシフト信号の入力状態が変化していないときに、そのシフトスイッチ10に対応するシフトレンジへと制御用シフトレンジが切り替わった際には、異常との仮判定を行うことができる。そして、仮判定の状態で所定の猶予時間を経過するまでの間に、対応するシフトスイッチ10について、監視用のシフト信号の入力状態が変化した場合には、異常との仮判定を取り消すことができる。これにより、制御用マイコン41と監視用マイコン42との演算タイミングにずれが生じても、異常との誤判定が発生することを抑制することができる。つまり、各マイコンの演算周期が非同期であることや、シフト制御情報をマイコン間の通信でやり取りするためのタイムラグにより、監視側が許可を判断するよりも先に制御側がシフトレンジを変えてしまう虞があるため、これを考慮して、所定の猶予時間だけ待ってから異常判断することでこれを防止することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ノーマルオープン型の接点とノーマルクローズ型の接点とを有するシフトスイッチについて、シフトスイッチの各接点から出力される信号を用いて異常の発生を監視するように構成されている。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については説明を省略しその参照符号を引用する。
図5は、第2実施形態におけるシフトスイッチの概略構成を示す図である。第2実施形態のシフトスイッチ100は、操作部材として機能する一つの可動端子110と、三つの固定端子としての第1固定端子111、第2固定端子112、第3固定端子113と、を備えている。このシフトスイッチ100は摺動接点型スイッチである。各固定端子111,112,113には、それぞれ信号線114,115,116が接続されている。また、可動端子110にはアース線117が接続されている。なお、この説明では、ノーマルオープンをNOと記載し、ノーマルクローズをNCと記載する場合がある。また、シフトスイッチ100は、第1実施形態のシフトスイッチ10に代えて車両1に搭載することが可能である。
第1固定端子111は、可動端子110との間でノーマルオープン型の接点を構成し、三つの接点のうちの第1接点を構成する端子である。この第1固定端子111は、第1NO接点を構成する第1NO端子である。第2固定端子112は、可動端子110との間でノーマルオープン型の接点を構成し、三つの接点のうちの第2接点を構成する端子である。この第2固定端子112は、第2NO接点を構成する第2NO端子である。第3固定端子113は、可動端子110との間でノーマルクローズ型の接点を構成し、三つの接点のうちの第3接点を構成する端子である。この第3固定端子113は、NC接点を構成するNC端子である。
可動端子110は、図5において実線で示す第1位置から一点鎖線で示す第2位置までの範囲で各固定端子111,112,113の上を摺動する。図5に示す黒丸は接点が閉じている状態を示し、図5に示す白丸は接点が開いている状態を示している。第1位置では、可動端子110が第3固定端子113のみと接触している。すなわち、第1位置では、NC接点が閉じて第1NO接点と第2NO接点とは開いている。この状態がシフトスイッチ100のオフ状態である。
また、可動端子110が第1位置から第2位置の方向へと移動すると、可動端子110は第1固定端子111にも接触する。これにより、NC接点と第1NO接点とが閉じて第2NO接点のみが開いた状態となる。
また、可動端子110がさらに第2位置の方向へ移動すると、可動端子110は第3固定端子113との接触が外れて、第1固定端子111のみに接触する。これにより、NC接点と第2NO接点とが開いて第1NO接点のみが閉じた状態となる。
そして、可動端子110がさらに第2位置の方向へ移動すると、可動端子110は第2位置に到着する。第2位置では、可動端子110は第1固定端子111と第2固定端子112とに接触する。すなわち、第2位置では、第1NO接点と第2NO接点とが閉じてNC接点は開いている。この状態がシフトスイッチ100のオン状態である。
このように、三つの固定端子111,112,113は、可動端子110が第1位置から第2位置までの範囲を摺動する際、そのうちの一つまたは二つが可動端子110に接触するように配列されている。つまり、シフトスイッチ100がオフ状態からオン状態に切り替わるまでの間、全ての固定端子111,112,113が可動端子110と接触している状態は発生せず、かつ、どの固定端子111,112,113も可動端子110と接触していない状態も発生しないように、三つの固定端子111,112,113が配列されている。
また、各接点から延びる信号線114,115,116は電子制御装置40に接続されている。図6に示すように、各信号線114,115,116は、制御用マイコン41と監視用マイコン42とに接続されている。信号線114は、第1NO接点からの信号である第1信号を伝達する。信号線115は、第2NO接点からの信号である第2信号を伝達する。信号線116は、NC接点からの信号である第3信号を伝達する。開状態の接点からはOFF信号が出力される。閉状態の接点からはON信号が出力される。
電子制御装置40は、各信号線114,115,116から入力される信号の組み合わせに基づいて、シフトスイッチ100に対して行われた操作を判定する。例えば信号線114,115,116の信号の組み合わせがON・ON・OFFとなる場合、電子制御装置40は、シフトスイッチ100に対してオン操作されたと判定する。信号線114,115,116の信号の組み合わせがOFF・OFF・ONとなる場合、電子制御装置40は、シフトスイッチ100に対してオフ操作されたと判定する。このシフトスイッチ100は、P,R,N,D,Bなどレンジ毎に一つ設けられる。そして、シフトスイッチ100に対するオン操作には、各レンジへの切り替え処理が割り当てられる。第2実施形態では、シフトスイッチ100として、少なくともDスイッチ14を備えている。そのため、Dレンジについて説明する際に、シフトスイッチ100をDスイッチ14と記載する場合がある。
また、電子制御装置40は、各信号線114,115,116から入力される信号の組み合わせに基づいて、異常が発生したか否かを判定する。制御用マイコン41は、各信号線114,115,116からの信号を用いて異常の有無を判定する異常判定部41bを有する。異常判定部41bは、シフトスイッチ100の各接点から入力される信号と、監視用マイコン42から入力される判定結果を示す情報とに基づいて、制御用マイコン41側で異常が発生しているか否かを判定する。また、監視用マイコン42は、各信号線114,115,116からの信号を用いて異常の有無を判定する異常判定部42bを有する。異常判定部42bは、シフトスイッチ100の各接点から監視用マイコン42に入力される信号と、シフトスイッチ100の各接点から制御用マイコン41に入力される信号とに基づいて、監視用マイコン42側で異常が発生しているか否かを判定する。この異常判定部42bによる判定結果は制御側の異常判定部41bに入力される。
シフトスイッチ100によれば、三つの接点のどれにも異常が発生していない場合、可動端子110が第1位置にあるときは、第1NO接点と第2NO接点とは開状態であり、NC接点は閉状態である。また、三つの接点のどれにも異常が発生していない場合、可動端子110が第2位置にあるときは、第1NO接点と第2NO接点とは閉状態であり、NC接点は開状態である。そして、三つの接点のどれにも異常が発生していない場合、可動端子110を第1位置から第2位置へ変位させる過程で、全ての接点が開状態になることはなく、全ての接点が閉状態になることもない。
つまり、シフトスイッチ100によれば、第1NO接点と第2NO接点とNC接点との全てが開状態になる場合は、シフトスイッチ100に異常が生じた場合に限られる。同様に、これらの接点の全てが閉状態になる場合も、シフトスイッチ100に異常が生じた場合に限られる。仮に、オン操作あるいはオフ操作の過程で全ての接点が同じ状態になる状態を経由するように構成されたスイッチの場合、全ての接点が同じ状態になったことがオフ固着やオン固着といった接点の異常によるものなのかどうか、すぐには判断することができない。これに対して、シフトスイッチ100によれば、正常であれば全ての接点が同じ状態になることはないので、異常との誤判定を抑制することができる。
ここで、シフトスイッチ100に生じる異常の種類について説明する。
まず、図7を参照して、NC接点の断線について説明する。図7に示すように、可動端子110が一点鎖線で示す位置にある場合において、全ての接点が開状態になっていたとする。この場合、各信号線114,115,116から電子制御装置40に入力される信号の組み合わせはOFF・OFF・OFFとなるが、このような信号の組み合わせは正常な状態のシフトスイッチ100では存在しない。よって、どこかの接点においてオフ固着、つまり断線が起きていることが確定する。
可動端子110が図7に実線で示す位置に移動すると、第1固定端子111と第2固定端子112とがともに正常である場合には、それらは閉状態になる。そのため、信号線114,115から電子制御装置40に入力される信号はOFFからONに切り替わる。一方、第3固定端子113に対応する信号線116から電子制御装置40に入力される信号はOFFに維持される。信号線114,115の信号の変化から第1NO接点と第2NO接点がともに正常であることが判明した時点で、異常が生じている接点はNC接点であることと、その異常が断線であることとが判明する。つまり、NC接点に断線が起きていることが確定する。
次に、図8を参照して、NC接点のショートについて説明する。図8に示すように、可動端子110が一点鎖線で示す位置にある場合において、全ての接点が閉状態になっていたとする。この場合、各信号線114,115,116から電子制御装置40に入力される信号の組み合わせはON・ON・ONとなる。ところが、そのような信号の組み合わせは正常な状態のシフトスイッチ100では存在しない。よって、どこかの接点においてオン固着、つまりショートが起きていることが確定する。
可動端子110が図8に実線で示す位置に移動すると、第1固定端子111と第2固定端子112とがともに正常である場合には、それらは開状態になる。そのため、信号線114,115から電子制御装置40に入力される信号はONからOFFに切り替わる。一方、第3固定端子113に対応する信号線116から電子制御装置40に入力される信号はONに維持される。信号線114,115の信号の変化から第1NO接点と第2NO接点がともに正常であることが判明した時点で、異常が生じている接点はNC接点であることと、その異常がショートであることとが判明する。つまり、NC接点にショートが起きていることが確定する。
これらの異常判定方法が可能であることは、シフトスイッチ100について、可動端子110が全ての固定端子111,112,113と接触する状態がなく、かつ、可動端子110がどの固定端子111,112,113にも接触していない状態がないように構成されているためである。仮に、可動端子が摺動する過程でどの固定端子にも接触しない状態となるように構成された場合には、全ての信号がOFFであることを根拠に、すぐには断線が起きているとは確定できない。この場合、実際に断線が起きているかどうか判定するためには、例えば、全ての信号がOFFの状態が所定時間続くかどうかを判定することが考えられる。しかし、この場合には、運転者が可動端子を少しだけ動かした状態が続いた際、実際には異常が起きていないにも関わらず、シフトスイッチに断線が生じたと誤判定される虞がある。あるいは、可動端子が摺動する過程で全ての固定端子と接触する状態となるように構成された場合には、全ての信号がONであることを根拠に、すぐにはショートが起きていると確定できない。この場合も、運転者が可動端子を少しだけ動かした状態が続いた際、実際には異常が起きていないにも関わらず、シフトスイッチにショートが生じたと誤判定される虞がある。
図9は、第2実施形態におけるシフト操作の監視処理を示すフローチャート図である。なお、図9に示す処理は、複数のシフトレンジのうちのDレンジにおけるシフト操作を監視する場合であり、所定の演算周期にて監視用マイコン42により繰り返し実行される。
監視用マイコン42は、制御用マイコン41からの制御用のシフト信号を受信する(ステップS301)。電子制御装置40では、シフトスイッチ10から制御用マイコン41に入力された制御用のシフト信号が、制御用マイコン41から監視用マイコン42へ出力される。ステップS301では、シフトスイッチ10から制御用マイコン41に入力される信号が監視用マイコン42に入力される。つまり、制御用マイコン41で制御に用いる制御用のシフト信号が監視用マイコン42に入力される。
監視用マイコン42は、監視用のシフト信号についてDスイッチ14からの信号が入力されたことを検出する(ステップS302)。ステップS302では、シフトスイッチ10の各接点から出力された信号が監視用マイコン42に入力される。
監視用マイコン42は、監視用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFであるか否かを判定する(ステップS303)。ステップS303では、各信号線114,115,116から監視用マイコン42に入力される信号の組合せがOFF・OFF・OFFであるか否かが判定される。
監視用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFではない場合(ステップS303:No)、監視用マイコン42は、継続時間をクリアする(ステップS304)。継続時間とは、Dスイッチ14の各接点から監視用マイコン42に入力される信号が全てOFFとなる状態が継続している時間を表すものである。
ステップS304の処理を実施後、監視用マイコン42は、監視側は異常なしと判断する(ステップS305)。ステップS305では、監視側の異常なしを示す判定結果が制御用マイコン41に出力される。
ステップS305の処理を実施後、監視用マイコン42は、Dレンジの監視制御を実施する(ステップS306)。ステップS306では、制御用シフトレンジのうちのDレンジに関する処理の監視制御が実施される。つまり、正常時の監視制御が実施される。ステップS306の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
監視用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFである場合(ステップS303:Yes)、監視用マイコン42は、継続時間をカウントアップする(ステップS307)。ステップS307では、Dスイッチ14の各接点から監視用マイコン42に入力される信号が全てOFFである状態の継続時間が加算される。
ステップS307の処理を実施後、監視用マイコン42は、所定時間Cが経過したか否かを判定する(ステップS308)。ステップS308では、ステップS307によりカウントアップされた継続時間が、所定時間Cを超えているか否かが判定される。所定時間Cは予め設定された所定値である。継続時間が所定時間Cを超えている場合には、所定時間Cが経過したと判定される。
所定時間Cが経過したと判定されていない場合(ステップS308:No)、制御ルーチンはステップS305へ進む。
所定時間Cが経過したと判定された場合(ステップS308:Yes)、監視用マイコン42は、制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFであるか否かを判定する(ステップS309)。ステップS309では、ステップS301で取得した制御用のシフト信号を用いて、Dスイッチ14の各接点から制御用マイコン41に入力された信号が全てOFFであるか否かが判定される。つまり、ステップS309において、監視用マイコン42は、シフトスイッチ100から制御用マイコン41に入力される信号と、シフトスイッチ100から監視用マイコン42に入力される信号とが一致しているか否かを判定する。
制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFである場合(ステップS309:Yes)、監視用マイコン42は、シフトバイワイヤシステム20におけるワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常と判定する(ステップS310)。ステップS310では、シフトスイッチ100と監視用マイコン42との間に設けられたワイヤハーネス(W/H)、またはシフトスイッチ100のモジュールに異常が発生していると判定される。この異常には、ワイヤハーネスの断線またはショート、あるいは、シフトスイッチ100の断線またはショートが含まれる。すなわち、Dスイッチ14に接続された信号線114,115,116、またはシフトスイッチ100自体に異常が発生していると判定される。また、ステップS310では、ワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常を示す判定結果が制御用マイコン41に出力される。ステップS310の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFではない場合(ステップS309:No)、監視用マイコン42は、監視側の入力回路の異常と判定する(ステップS311)。ステップS311では、監視用マイコン42の入力回路に異常が発生していると判定される。また、ステップS311では、監視用マイコン42の入力回路の異常を示す判定結果が制御用マイコン41に出力される。ステップS311の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
そして、監視用マイコン42が所定の演算周期にて処理を繰り返すため、図9に示す処理はループする。そのため、監視用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力される信号が全てOFFである判定されて以降は、ステップS307の処理を実施するループに入る。このループに入ると、ステップS307の処理が実施されるたびに、継続時間がカウントアップされる。継続時間が所定時間Cよりも短い場合にはステップS308で否定的に判定されるため、監視側の異常なしと判断される。そして、何度目かのループで継続時間が所定時間Cを超えると、ステップS308で肯定的に判定されるため、異常と判定される。
また、図9に示す処理フローにおいて、異常の有無に関する判定結果として監視用マイコン42から制御用マイコン41に出力されるため、制御用マイコン41は、監視用マイコン42の制御を監視することができる。
図10は、第2実施形態における制御用シフトレンジの判断処理を示すフローチャート図である。なお、図10に示す処理は、制御用シフトレンジにDレンジを判断する場合であり、所定の演算周期にて制御用マイコン41により繰り返し実行される。
制御用マイコン41は、制御用のシフト信号についてDスイッチ14からの信号が入力されていることを検出する(ステップS401)。ステップS401では、シフトスイッチ10の各接点から出力された信号が制御用マイコン41に入力される。
制御用マイコン41は、監視側の判定結果を監視用マイコン42から受信する(ステップS402)。ステップS402では、監視側の判定結果として、図9に示すステップS305の処理を実施したこと、ステップS310の処理を実施したこと、ステップS3111を実施したこと、これらのうちのいずれかを示す情報が制御用マイコン41に入力される。
制御用マイコン41は、制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFであるか否かを判定する(ステップS403)。ステップS403では、Dスイッチ14に接続された各信号線114,115,116から制御用マイコン41に入力される信号の組合せがOFF・OFF・OFFであるか否かが判定される。
制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFではない場合(ステップS403:No)、制御用マイコン41は、継続時間をクリアする(ステップS404)。この継続時間とは、Dスイッチ14の各接点から制御用マイコン41に入力される信号が全てOFFとなる状態が継続している時間を表すものである。
ステップS403の処理を実施後、制御用マイコン41は、制御側には異常なしと判断する(ステップS405)。
ステップS405の処理を実施後、制御用マイコン41は、制御用シフトレンジをDレンジに切り替えるための判断制御を実施する(ステップS406)。ステップS406では、正常時におけるシフトレンジの変更制御が実施される。つまり、ステップS406において、電子制御装置40は、Dスイッチ14から制御用マイコン41に入力されるシフト信号に基づいてDレンジが選択されたかを否かを判定し、制御用シフトレンジをDレンジに切り替えるための判断を行う。ステップS406の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力された信号が全てOFFである場合(ステップS403:Yes)、制御用マイコン41は、継続時間をカウントアップする(ステップS407)。ステップS407では、Dスイッチ14の各接点から制御用マイコン41に入力される信号が全てOFFである状態の継続時間が加算される。
ステップS407の処理を実施後、制御用マイコン41は、所定時間Dを経過しているか否かを判定する(ステップS408)。ステップS408では、ステップS407により加算された継続時間が、所定時間Dを超えているか否かが判定される。継続時間が所定時間Dを超えている場合には、所定時間Dが経過したと判定される。また、所定時間Dは、所定時間Cよりも長い第2所定時間である。
所定時間Dが経過したと判定されていない場合(ステップS408:No)、制御ルーチンはステップS405へ進む。
所定時間Dが経過したと判定された場合(ステップS408:Yes)、制御用マイコン41は、監視側の判定結果がワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常を示すものであるか否かを判定する(ステップS409)。ステップS409では、ステップS402で取得した監視側の判定結果が、ワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常であるか否かが判定される。すなわち、図9に示すステップS310を実施したか否かが判定される。
監視用の判定結果がワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常を示すものである場合(ステップS409:Yes)、制御用マイコン41は、シフトバイワイヤシステム20におけるワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常と判定する(ステップS410)。ステップS410の処理は、監視側のステップS310の処理と同様である。ステップS410の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
監視用の判定結果がワイヤハーネスまたはシフトスイッチ100の異常を示すものではない場合(ステップS409:No)、制御用マイコン41は、制御側の入力回路の異常と判定する(ステップS411)。ステップS411では、制御用マイコン41の入力回路に異常が発生していると判定される。ステップS411の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
そして、制御用マイコン41が所定の演算周期にて処理を繰り返すため、図10に示す処理はループする。そのため、制御用のシフト信号についてDスイッチ14の各接点から入力される信号が全てOFFであると判定されて以降は、ステップS407の処理を実施するループに入る。このループに入ると、ステップS407の処理が実施されるたびに、継続時間がカウントアップされる。継続時間が所定時間Dよりも短い場合にはステップS408で否定的に判定されるため、制御側の異常なしと判断される。そして、何度目かのループで継続時間が所定時間Dを超えると、ステップS408で肯定的に判定されるため、異常と判定される。
以上説明した通り、第2実施形態によれば、シフトスイッチ10の各接点から制御用マイコン41と監視用マイコン42とに入力される信号とを比較することにより、異常が発生しているか否かを判定する。制御用マイコン41と監視用マイコン42とは、相手側のマイコンから取得した情報を用いて、シフトスイッチ10の各接点から入力される信号が全てOFFである状態が所定時間継続した後に異常と判定することができる。これにより、制御用マイコン41と監視用マイコン42との演算タイミングにずれが生じても、異常との誤判定が発生することを抑制することができる。
また、第2実施形態の変形例として、監視用マイコン42が自身の入力回路に異常が生じていると判定した際に、制御用マイコン41における制御用のシフト信号を用いて監視制御を実施するように構成することができる。さらに、制御用マイコン41が自身の入力回路に異常が生じていると判定した際に、監視用マイコン42における監視用のシフト信号を用いてシフトレンジの変更制御を実施するように構成することができる。この変形例の制御が図11と図12とに示されている。
図11は、第2実施形態の変形例におけるシフト操作の監視処理を示すフローチャート図である。なお、図11に示す処理は、図9に示す処理の変形例である。図11に示すステップS501~S511の処理は、図9に示すステップS301~S311の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS511の処理を実施後、監視用マイコン42は、制御用のシフト信号を監視用のシフト信号として代用する制御状態に移行する(ステップS512)。ステップS512では、監視用のシフト信号の代わりに、ステップS501で取得した制御用のシフト信号を用いる制御状態に切り替わる。
ステップS512の処理を実施後、制御ルーチンはステップS506に進む。この場合、監視用マイコン42は制御用のシフト信号を用いてDレンジのシフト操作に関する監視制御を継続する。
図12は、第2実施形態の変形例における制御用シフトレンジの判断処理を示すフローチャート図である。なお、図12に示す処理は、図10に示す処理の変形例である。図12に示すステップS601,S603~S612の処理は、図10に示すステップS401~S411の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS601の処理を実施後、制御用マイコン41は、監視用のシフト信号を監視用マイコン42から受信する(ステップS602)。電子制御装置40では、シフトスイッチ10から監視用マイコン42に入力された監視用のシフト信号が、監視用マイコン42から制御用マイコン41へ出力される。監視用マイコン42で監視制御に用いる監視用のシフト信号が制御用マイコン41に入力される。ステップS602の処理を実施後、この制御ルーチンはステップS603へ進む。
また、ステップS612の処理を実施後、制御用マイコン41は、監視用のシフト信号を制御用のシフト信号として代用する制御状態に移行する(ステップS613)。ステップS613では、制御用のシフト信号の代わりに、ステップS602で取得した監視用のシフト信号を用いる制御状態に切り替わる。
ステップS613の処理を実施後、制御ルーチンはステップS607に進む。この場合、制御用マイコン41は監視用のシフト信号を用いてDレンジへの切り替えを判断する制御を実施する。
また、シフトスイッチ100について変形例を構成することが可能である。シフトスイッチの変形例を図13~図20に例示する。
図13に示すように、変形例におけるシフトスイッチ200は、対向接点型スイッチである。第1NO端子211と第2NO端子212とは、位置を固定されたアース端子216に対向して配置されている。NC端子213は、位置が固定されたアース端子217に対向して設置されている。ただし、NC端子213がアース端子217と対向する方向は、第1NO端子211および第2NO端子212がアース端子216と対向する方向と逆方向である。
第1NO端子211と第2NO端子212は、操作部材210とアース端子216との間に配置されている。第1NO端子211は、操作部材210とばね定数の小さいばね214により接続され、かつアース端子216とばね定数の大きいばね215により接続されている。逆に、第2NO端子212は、操作部材210とばね215により接続され、かつアース端子216とばね214により接続されている。NC端子213は、操作部材210と位置を固定された固定部材218との間に配置されている。NC端子213は、操作部材210とばね214により接続され、かつ固定部材218とばね215により接続されている。
操作部材210に力を入れていない状態では、第1NO端子211および第2NO端子212はアース端子216から離れており、NC端子213はアース端子217に接触している。第1NO端子211はアース端子216とともに第1接点としての第1NO接点を構成し、第2NO端子212はアース端子216とともに第2接点としての第2NO接点を構成している。また、NC端子213はアース端子217とともに第3接点としてのNC接点を構成している。
第1NO端子211、第2NO端子212およびNC端子213のそれぞれには信号線が接続されている。操作部材210に力を加えられていない状態では、図13に示すように、操作部材210は第1位置に位置している。この状態では、第1NO接点と第2NO接点は開いており、それらからはOFF信号が出力されている。一方、NC接点は閉じており、それからはON信号が出力されている。この状態がシフトスイッチ200のオフ状態である。
このシフトスイッチ200において、操作部材210を押し下げていくと、図14に示すように、ばね定数の小さいばね214が縮み、第1NO端子211がアース端子216に接触する。これにより、第1NO接点から出力される信号はON信号となる。さらに操作部材210を押し下げていくと、図15に示すように、ばね定数の大きいばね215が縮み始め、NC端子213がアース端子217から離れる。これにより、NC接点から出力される信号はOFF信号となる。
そして、操作部材210がさらに押し下げられていくと、図16に示すように、操作部材210は第2位置に達する。第2位置では、第2NO端子212がアース端子216に接触する。これにより、第2NO接点から出力される信号はON信号となる。このとき、第1NO接点と第2NO接点は閉じ、NC接点は開いた状態になっている。この状態がシフトスイッチ200のオン状態である。
また、図17に示すように、別の変形例におけるシフトスイッチ300は、二つの摺動接点と一つの対向接点とを有する混合型スイッチである。このシフトスイッチ300は、位置を固定された二つのNO端子311,312と、アース接続された一つの可動端子310とを備えている。各NO端子311,312は、可動端子310との間で摺動接点を構成する。また、シフトスイッチ300は、NC端子313と位置を固定されたアース端子317とを備えている。NC端子313は、アース端子317との間で対向接点を構成する。NC端子313は、操作部材としての可動端子310と固定部材316との間に配置されている。NC端子313は、可動端子310とばね定数の小さいばね314により接続され、かつ固定部材316とばね定数の大きいばね315により接続されている。各NO端子311,312は、可動端子310との間でNO接点を構成している。NC端子313は、アース端子317との間でNC接点を構成している。
可動端子310に力を加えられていない状態では、図17に示すように、可動端子310は第1位置に位置している。この状態では、第1NO接点と第2NO接点は開いており、それらからはOFF信号が出力されている。図17に示す白丸は接点が開いている状態を示している。一方、NC接点は閉じており、それからはON信号が出力されている。この状態がシフトスイッチ300のオフ状態である。
このシフトスイッチ300において、ばね314,315を収縮させる方向に可動端子310を摺動させていくと、図18に示すように、可動端子310が第1NO端子311に接触する。これにより、NC接点と第1NO接点が閉じて第2NO接点のみが開いた状態となる。図18に示す黒丸は接点が開いている状態を示している。このとき、ばね定数の大きいばね314に縮み始めているが、NC端子313はアース端子317に接触したままである。可動端子310をさらに摺動させていくと、図19に示すように、ばね定数の大きいばね315が縮み始め、NC端子313がアース端子317から離れる。これにより、NC接点から出力される信号はOFF信号となる。
そして、可動端子310をさらに摺動させていくと、図20に示すように、可動端子310は第2位置に達する。第2位置では、可動端子310が第2NO端子312に接触する。これにより、第2NO接点から出力される信号はON信号となる。このとき、第1NO接点と第2NO接点は閉じ、NC接点は開いた状態になっている。この状態がシフトスイッチ300のオン状態である。
なお、第2実施形態および各変形例で説明したシフトスイッチ100,200,300はいずれも、第1実施形態に適用することが可能である。つまり、第1実施形態のシフトスイッチ10は、第2実施形態のシフトスイッチ200のように構成することが可能である。