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JP7578895B2 - 熱延鋼板 - Google Patents

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JP7578895B2 JP2023529703A JP2023529703A JP7578895B2 JP 7578895 B2 JP7578895 B2 JP 7578895B2 JP 2023529703 A JP2023529703 A JP 2023529703A JP 2023529703 A JP2023529703 A JP 2023529703A JP 7578895 B2 JP7578895 B2 JP 7578895B2
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Description

本発明は、熱延鋼板に関する。具体的には、本発明は、疲労特性および延性に優れた高強度熱延鋼板に関する。
本願は、2021年6月14日に、日本に出願された特願2021-098517号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来から、自動車車体の軽量化を目的として、足回り部品および車体の構造用部品に高強度鋼板が多く使われている。しかし、従来の高強度鋼板では、特に自動車の足回り部品において重要な特性である疲労特性を十分に向上させることが困難で、材料を高強度化しても部品の板厚を減少することに改善の余地があった。
一般的に、固溶強化および析出強化により大きな強度上昇が得られるため、これらの効果は高強度鋼板に適用されている。例えば、非特許文献1には、固溶強化・析出強化・細粒強化が引張強さおよび疲労特性に与える影響を調査した結果、引張強さの上昇量に対する疲労強度の上昇量は固溶強化>析出強化>細粒強化であることが開示されている。
固溶強化元素としては、特にSiを添加することにより疲労特性が向上することが知られている。しかし、Si添加により鉄-スケール界面にFeSiOが生成することで、デスケーリング性が低下する。そのため、Si添加鋼において疲労特性を確保するにはデスケーリング条件を精緻に制御する必要があった。
例えば、特許文献1および2には、デスケーリング温度を高温にすることで、デスケーリング性を向上させ、酸洗後の鋼板表面粗さRaを1.2μm以下にして、疲労特性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献3には、仕上げ圧延開始前のスケール厚を制御することにより、地鉄/スケール界面の粗さRaを1.5μm以下とし、疲労特性を向上させる技術が開示されている。
日本国特許第4404004号公報 日本国特許第4518029号公報 日本国特許第5471918号公報
阿部隆ら:鉄と鋼、第70年(1984)第10号第145-152頁
本発明は上記実情に鑑みて案出されたものである。本発明は、高い強度、並びに、優れた疲労特性および延性を有する熱延鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記実情に鑑み、熱延鋼板の化学組成および金属組織と機械特性との関係について鋭意研究を重ねた結果、以下の知見(a)~(h)を得て、本発明を完成した。
(a)延性を高めるためには、延性に富むフェライトを金属組織中に含ませることが好ましい。
(b)しかし、フェライトは軟質な組織であるため、単にこれらを主体とするだけでは、高い強度および優れた疲労特性を確保することができない。
(c)優れた延性を有する熱延鋼板に優れた疲労特性を兼備させるためには、Siによってフェライトを固溶強化することが効果的である。しかし、Si含有によりデスケーリング性が劣化するため、表面粗さの増大による疲労特性の劣化を防ぐためには精緻なデスケーリング条件の制御が必要となる。デスケーリング条件を精緻に制御するためには、追加の設備投資が必要となったり、歩留りが低下したりする場合がある。
(d)Siの代替元素としてSnを含有させ、Si含有量を抑制することで、デスケーリング性が劣化することなく優れた疲労特性を得ることができる。これは、SnにSiと同等の交差すべり抑制効果があり、繰り返し変形中の転位の運動を拘束することにより、疲労試験中において材料に蓄積するダメージを抑制できるためと考えられる。
(e)Snを含有させることにより疲労特性および延性を兼備させるには、Sn濃度の標準偏差を一定値以下とすること、並びに、表面の算術平均粗さを一定値以下とすることが効果的である。
(f)Sn濃度の標準偏差を一定値以下とするためには、スラブ加熱工程およびその後の熱間圧延工程を制御することが効果的である。例えば、スラブを加熱し、700~850℃の温度域で900秒以上保持した後、850℃~1100℃の温度域で合計90%以上の板厚減となるような熱間圧延を行うことが効果的である。
(g)熱延鋼板の表面の算術平均粗さを低下させるためには、熱間圧延中のスケールの生成挙動を制御することが効果的である。例えば、スラブ加熱工程におけるスラブの最高加熱温度を1200℃未満とし、熱間圧延工程における各段の圧下率を30%未満とすることが効果的である。スラブ加熱条件と熱間圧延条件との組み合わせにより、薄く滑らかなスケールを造り込むことがき、表面の算術平均粗さを低下させることができる。
(h)延性に富むフェライトを金属組織中に十分に含ませるためには、熱間圧延後の冷却において、600~750℃の温度域に3秒以上滞留させることが効果的である。
上記知見に基づいてなされた本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る熱延鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.040~0.250%、
Si:0.30%以下、
Mn:1.00~4.00%、
sol.Al:0.001~1.000%、
Sn:0.300~1.000%、
P :0.100%以下、
S :0.0300%以下、
N :0.1000%以下、
O :0.0100%以下、
Ti+Nb+V:0~0.500%、
Cu:0~2.00%、
Cr:0~2.00%、
Mo:0~1.00%、
Ni:0~2.00%、
B :0~0.0100%、
Ca:0~0.0200%、
Mg:0~0.0200%、
REM:0~0.1000%、
Bi:0~0.020%、
Zr、Co、ZnおよびWのうち1種または2種以上:合計で0~1.00%を含有し、
残部がFeおよび不純物からなり、
金属組織が、
面積%で、フェライトが20.0%以上、90.0%未満であり、
Sn濃度の標準偏差が0.50質量%以下であり、
表面の算術平均粗さが2.00μm未満であり、
引張強さが590MPa以上である。
(2)上記(1)に記載の熱延鋼板は、前記化学組成が、質量%で、
Ti+Nb+V:0.020~0.500%、
Cu:0.01~2.00%、
Cr:0.01~2.00%、
Mo:0.01~1.00%、
Ni:0.02~2.00%、
B :0.0001~0.0100%、
Ca:0.0005~0.0200%、
Mg:0.0005~0.0200%、
REM:0.0005~0.1000%、および
Bi:0.0005~0.020%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高い強度、並びに、優れた疲労特性および延性を有する熱延鋼板を得ることができる。本発明の上記態様に係る熱延鋼板は、自動車部材、機械構造部材および建築部材に用いられる工業用素材として好適である。
本実施形態に係る熱延鋼板の化学組成および金属組織について、以下により具体的に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
以下に「~」を挟んで記載する数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「未満」または「超」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。以下の説明において、鋼板の化学組成に関する%は特に指定しない限り質量%である。
1.化学組成
本実施形態に係る熱延鋼板は、質量%で、C:0.040~0.250%、Si:0.30%以下、Mn:1.00~4.00%、sol.Al:0.001~1.000%、Sn:0.300~1.000%、P:0.100%以下、S:0.0300%以下、N:0.1000%以下、O:0.0100%以下、並びに、残部:Feおよび不純物を含む。以下に各元素について詳細に説明する。
(1-1)C:0.040~0.250%
Cは、硬質組織の分率を上昇させるとともに、変態点を低下させてフェライトおよび硬質組織の強度を上昇させる。C含有量が0.040%未満では、所望の強度を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.040%以上とする。C含有量は、好ましくは0.050%以上、より好ましくは0.060%以上である。
一方、C含有量が0.250%超では、フェライトの分率が低下することで、熱延鋼板の延性が低下する。したがって、C含有量は0.250%以下とする。C含有量は好ましくは0.150%以下である。
(1-2)Si:0.30%以下
Siは、鉄-鉄酸化物界面にFeSiOを生成させてデスケーリング性を低下させる。デスケーリング性の条件を精緻に制御できない場合には、酸洗後の鋼板の表面粗さが増加するため、結果として熱延鋼板の疲労強度を低下させる場合がある。上記作用を抑制するため、Si含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.20%以下である。
Si含有量は0%でもよいが、Siはフェライトの生成を促進して熱延鋼板の延性を向上させる作用と、交差すべりを抑制し、繰り返し変形中のひずみの蓄積を抑制することで疲労強度を向上させる作用とを有するため、Si含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
(1-3)Mn:1.00~4.00%
Mnは、硬質組織の分率を上昇させるとともに、変態点を低下させてフェライトおよび硬質組織の強度を上昇させる。Mn含有量が1.00%未満では、590MPa以上の引張強さを得ることができない。したがって、Mn含有量は1.00%以上とする。Mn含有量は、好ましくは1.10%以上であり、より好ましくは1.20%以上である。
一方、Mn含有量が4.00%超では、硬質組織の分率が高くなりすぎ、所望の延性を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は4.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは3.70%以下、より好ましくは3.50%以下である。
(1-4)sol.Al:0.001~1.000%
Alは、鋼を脱酸して、鋼を健全化する(鋼にブローホールなどの欠陥が生じることを抑制する)作用を有するとともに、フェライトの生成を促進し、熱延鋼板の延性を高める作用を有する。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用による効果を得ることができない。したがって、sol.Al含有量は、0.001%以上とする。sol.Al含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.050%以上である。
一方、sol.Al含有量が1.000%超では、上記効果が飽和するとともに経済的に好ましくない。そのため、sol.Al含有量は1.000%以下とする。sol.Al含有量は、好ましくは0.700%以下、より好ましくは0.500%以下、より一層好ましくは0.400%以下である。
なお、sol.Alとは酸可溶性Alを意味し、固溶状態で鋼中に存在する固溶Alのことを示す。
(1-5)Sn:0.300~1.000%
Snは、本実施形態において重要な役割を担う元素である。Snは、フェライトを固溶強化して熱延鋼板の強度を上昇させる作用を有する。加えてSnは、交差すべりを抑制することにより繰り返し変形中の転位の不可逆な運動を抑制し、疲労試験中の蓄積ひずみを低下させることで熱延鋼板の疲労特性を向上させる作用を有する。これらの作用を得るため、Sn含有量は0.300%以上とする。好ましくは0.350%以上、より好ましくは0.400%以上である。
一方、Snは偏析しやすい元素であり、Sn含有量が1.000%超であると熱延鋼板の延性が劣化する。そのため、Sn含有量は1.000%以下とする。好ましくは0.950%以下、より好ましくは0.900%以下である。
(1-6)P:0.100%以下
Pは、一般的に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により熱延鋼板の強度を高める作用を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよいが、Pは偏析し易い元素であり、P含有量が0.100%を超えると、粒界偏析に起因する熱延鋼板の延性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は、0.100%以下とする。P含有量は、好ましくは0.030%以下である。
P含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点から、0.001%以上とすることが好ましい。
(1-7)S:0.0300%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して熱延鋼板の延性を低下させる。S含有量が0.0300%を超えると、熱延鋼板の延性が著しく低下する。したがって、S含有量は0.0300%以下とする。S含有量は、好ましくは0.0050%以下である。
S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点から、0.0001%以上とすることが好ましい。
(1-8)N:0.1000%以下
Nは、不純物として鋼中に含有される元素であり、熱延鋼板の延性を低下させる作用を有する。N含有量が0.1000%超では、熱延鋼板の延性が著しく低下する。したがって、N含有量は0.1000%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0800%以下であり、より好ましくは0.0700%以下であり、より一層好ましくは0.0100%以下である。
N含有量の下限は特に規定する必要はないが、0.0001%以上としてもよい。また、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させて金属組織をより微細化する場合には、炭窒化物の析出を促進させるために、N含有量は0.0010%以上とすることが好ましく、0.0020%以上とすることがより好ましい。
(1-9)O:0.0100%以下
Oは、鋼中に多く含まれると破壊の起点となる粗大な酸化物を形成し、脆性破壊および水素誘起割れを引き起こす。そのため、O含有量は0.0100%以下とする。O含有量は、好ましくは0.0080%以下、より好ましくは0.0050%以下である。
溶鋼の脱酸時に微細な酸化物を多数分散させるために、O含有量は0.0005%以上、または0.0010%以上としてもよい。
本実施形態に係る熱延鋼板の化学組成の残部は、Feおよび不純物であってもよい。本実施形態において、不純物とは、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から混入されるもの、および/または本実施形態に係る熱延鋼板に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物としては例えば、H、Na、Cl、Ga、Ge、As、Se、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、Cs、Ta、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、Poが挙げられる。これらの不純物は合計で0.100%以下の含有量で含まれていてもよい。
本実施形態に係る熱延鋼板は、Feの一部に代えて、Ti、Nb、V、Cu、Cr、Mo、Ni、B、Ca、Mg、REM、Bi、Zr、Co、ZnおよびWを任意元素として含有してもよい。上記任意元素を含有させない場合の含有量の下限は0%である。以下、上記任意元素について詳細に説明する。
(1-10)Ti、NbおよびVの1種または2種以上:合計で0.020~0.500%
Ti、NbおよびVは、炭化物および窒化物として鋼中に微細析出し、析出強化により鋼の強度を向上させる元素である。この効果をより確実に得るためには、Ti、NbおよびVの合計の含有量を0.020%以上とすることが好ましい。なお、Ti、NbおよびVの全てが含有されている必要はなく、いずれか1種でも含まれていればよく、その合計の含有量が0.020%以上であればよい。Ti、NbおよびVの合計の含有量は、より好ましくは0.030%以上、より一層好ましくは0.040%以上である。
一方、Ti、NbおよびVの合計の含有量が0.500%を超えると、熱延鋼板の延性が劣化する。そのため、Ti、NbおよびVの合計の含有量を0.500%以下とする。好ましくは0.300%以下であり、より好ましくは0.250%以下であり、より一層好ましくは0.200%以下である。
(1-11)Cu:0.01~2.00%、Cr:0.01~2.00%、Mo:0.01~1.00%、Ni:0.02~2.00%およびB:0.0001~0.0100%
Cu、Cr、Mo、NiおよびBは、いずれも、熱延鋼板の焼入性を高める作用を有する。また、CuおよびMoは鋼中に炭化物として析出して熱延鋼板の強度を高める作用を有する。さらに、Niは、Cuを含有させる場合においては、Cuに起因するスラブの粒界割れを効果的に抑制する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。
上述したようにCuは、熱延鋼板の焼入れ性を高める作用および低温で鋼中に炭化物として析出して熱延鋼板の強度を高める作用を有する。上記作用による効果をより確実に得るためには、Cu含有量は0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。しかし、Cu含有量が2.00%超では、スラブの粒界割れが生じる場合がある。したがって、Cu含有量は2.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.00%以下である。
上述したようにCrは、熱延鋼板の焼入性を高める作用を有する。上記作用による効果をより確実に得るためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。しかし、Cr含有量が2.00%超では、熱延鋼板の化成処理性が著しく低下する。したがって、Cr含有量は2.00%以下とする。
上述したようにMoは、熱延鋼板の焼入性を高める作用および鋼中に炭化物として析出して熱延鋼板の強度を高める作用を有する。上記作用による効果をより確実に得るためには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。しかし、Mo含有量を1.00%超としても上記作用による効果は飽和して経済的に好ましくない。したがって、Mo含有量は1.00%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.20%以下である。
上述したようにNiは、熱延鋼板の焼入性を高める作用を有する。またNiは、Cuを含有させる場合においては、Cuに起因するスラブの粒界割れを効果的に抑制する作用を有する。上記作用による効果をより確実に得るためには、Ni含有量は0.02%以上とすることが好ましい。Niは、高価な元素であるため、多量に含有させることは経済的に好ましくない。したがって、Ni含有量は2.00%以下とする。
上述したようにBは、熱延鋼板の焼入れ性を高める作用を有する。この作用による効果をより確実に得るためには、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましく、0.0002%以上とすることがより好ましい。しかし、B含有量が0.0100%超では、熱延鋼板の成形性が著しく低下するため、B含有量は0.0100%以下とする。B含有量は、0.0050%以下とすることが好ましい。
(1-12)Ca:0.0005~0.0200%、Mg:0.0005~0.0200%、REM:0.0005~0.1000%およびBi:0.0005~0.020%
Ca、MgおよびREMは、いずれも、鋼中の介在物の形状を好ましい形状に調整することにより、熱延鋼板の延性を高める作用を有する。また、Biは、凝固組織を微細化することにより、熱延鋼板の延性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。上記作用による効果をより確実に得るためには、Ca、Mg、REMおよびBiのいずれか1種以上を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、Ca含有量またはMg含有量が0.0200%を超えると、あるいはREM含有量が0.1000%を超えると、鋼中に介在物が過剰に生成され、却って熱延鋼板の延性を低下させる場合がある。また、Bi含有量を0.020%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、経済的に好ましくない。したがって、Ca含有量およびMg含有量を0.0200%以下、REM含有量を0.1000%以下、並びにBi含有量を0.020%以下とする。Bi含有量は、好ましくは0.010%以下である。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を指し、上記REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
(1-13)Zr、Co、ZnおよびWのうち1種または2種以上:合計で0~1.00%
Zr、Co、ZnおよびWについて、本発明者らは、これらの元素を合計で1.00%以下含有させても、本実施形態に係る熱延鋼板の効果は損なわれないことを確認している。そのため、Zr、Co、ZnおよびWのうち1種または2種以上を合計で1.00%以下含有させてもよい。
上述した熱延鋼板の化学組成は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、sol.Alは、試料を酸で加熱分解した後の濾液を用いてICP-AESによって測定すればよい。CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用い、Oは不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法を用いて測定すればよい。
2.熱延鋼板の金属組織
次に、本実施形態に係る熱延鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態に係る熱延鋼板は、金属組織が、面積%で、フェライトが20.0%以上、90.0%未満であり、Sn濃度の標準偏差が0.50質量%以下である。そのため、本実施形態に係る熱延鋼板は、優れた疲労強度および延性を得ることができる。
なお、本実施形態では、圧延方向に平行な断面で、表面から板厚の1/4深さ(表面から1/8深さ~表面から3/8深さの領域)且つ板幅方向中央位置における金属組織における組織分率を規定する。その理由は、この位置における金属組織が、鋼板の代表的な金属組織を示すからである。
(2-1)フェライトの面積率:20.0%以上、90.0%未満
フェライトは、比較的高温でfccがbccに変態したときに生成する組織である。フェライトは加工硬化率が高いため、熱延鋼板の強度-延性バランスを高める作用がある。上記の作用により所望の強度および延性を得るため、フェライトの面積率は20.0%以上とする。好ましくは30.0%以上であり、より好ましくは40.0%以上である。
一方、フェライトは強度が低いため、面積率が過剰であると所望の引張強さを得ることができない。そのため、フェライト面積率は90.0%未満とする。好ましくは85.0%未満であり、より好ましくは80.0%未満である。
なお、本実施形態に係る熱延鋼板には、フェライト以外の残部組織として、合計の面積率が10.0%超、80.0%以下のパーライト、ベイナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの1種または2種以上からなる硬質組織が含まれる。残部組織の面積率は、15.0%超、または20.0%超としてもよい。また、残部組織の面積率は、70.0%以下、60.0%以下としてもよい。
フェライトの面積率の測定は、以下の方法で行う。
熱延鋼板から、圧延方向に平行な断面で、表面から板厚の1/4深さ(表面から1/8深さ~表面から3/8深さの領域)且つ板幅方向中央位置が観察できるようにサンプルを採取する。サンプルの圧延方向に平行な断面を鏡面に仕上げ、室温においてアルカリ性溶液を含まないコロイダルシリカを用いて8分間研磨し、サンプルの表層に導入されたひずみを除去する。
サンプル断面の長手方向の任意の位置において、長さ50μm、表面から板厚の1/4深さ位置(表面から板厚の1/8深さ~表面から板厚の3/8深さの領域)、且つ板幅方向中央位置の領域を、0.1μmの測定間隔で電子後方散乱回折法により測定して結晶方位情報を得る。測定には、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成されたEBSD装置を用いる。この際、EBSD装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kV、照射電流レベルは13、電子線の照射レベルは62とする。
さらに、同一視野において反射電子像を撮影する。まず、反射電子像からフェライトとセメンタイトとが層状に析出した結晶粒を特定し、その結晶粒をパーライトと判別する。その後、パーライトと判別された結晶粒を除く結晶粒に対し、得られた結晶方位情報をEBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Grain Average Misorientation」機能を用いて、Grain Average Misorientation値が1.0°以下の領域をフェライトと判定する。フェライトと判定された領域の面積率を求めることで、フェライトの面積率を得る。
パーライトを除く残部組織の面積率は、100%から、パーライトおよびフェライトの面積率を差し引くことで得る。
(2-2)Sn濃度の標準偏差:0.50質量%以下
本実施形態に係る熱延鋼板の表面から板厚の1/4深さ(表面から1/8深さ~表面から3/8深さの領域)且つ板幅方向中央位置におけるSn濃度の標準偏差は0.50質量%以下である。これにより、Sn濃化部の早期破壊を防ぐことができ、熱延鋼板の延性を向上することができる。Sn濃度の標準偏差は、0.47質量%以下が好ましく、0.45質量%以下がより好ましい。
Sn濃度の標準偏差の下限は、延性確保の観点から、その値は小さいほど望ましいが、製造プロセスの制約より、実質的な下限は0.10質量%である。
Sn濃度の標準偏差は以下の方法により得る。
熱延鋼板の圧延方向に平行な断面(L断面)を鏡面研磨した後に、表面から板厚の1/4深さ(表面から板厚の1/8深さ~表面から板厚の3/8深さの領域)、且つ板幅方向中央位置を電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)で測定して、Sn濃度の標準偏差を測定する。測定条件は加速電圧を15kVとし、倍率を5000倍として、表面から板厚の1/8深さ~表面から板厚の3/8深さ、且つ試料圧延方向に20μmの範囲の分布像を測定する。より具体的には、測定間隔を0.1μmとし、40000か所以上のSn濃度を測定する。次いで、全測定点から得られたSn濃度に基づいて標準偏差を算出することで、Sn濃度の標準偏差を得る。
3.表面性状
本実施形態に係る熱延鋼板では、表面の算術平均粗さを制御することが重要である。疲労き裂は通常、熱延鋼板の表面から発生するため、固溶強化元素による疲労特性向上効果を発現させるには、表面の算術平均粗さを一定値以下に保つことが重要である。本発明者らの鋭意検討の結果、熱延鋼板の表面の算術平均粗さが2.00μm未満であると、優れた疲労特性が得られることが分かった。
表面の算術平均粗さを2.00μm未満とすることによって、熱延鋼板に曲げ変形が加えられた際の疲労き裂の発生が抑制され、疲労特性が向上する。そのため、算術平均粗さは2.00μm未満とする。算術平均粗さは1.80μm以下が好ましく、1.60μm以下がより好ましい。
算術平均粗さの下限は、疲労強度確保の観点からその値は小さいほど望ましいが、製造プロセスの制約より、実質的な下限は0.50μmである。
熱延鋼板の表面の算術平均粗さは、酸洗してスケールを取り除いた後、熱延鋼板の表面において、圧延方向および圧延方向と直角な方向に沿って、それぞれランダムに5ラインのプロファイルを測定する。測定は、JIS B 0601:2013に準拠して行い、測定断面曲線にカットオフ値λsの低域フィルタと、カットオフ値λcの高域フィルタとを適用することで粗さ曲線を得て、算術平均粗さの測定値を得る。得られた測定値の平均値を算出することで、算術平均粗さを得る。
なお、熱延鋼板が表面にめっき層を有する場合は、化学研磨によりめっき層を除去してから上述の測定を行えばよい。
4.機械特性
(4-1)引張特性
熱延鋼板の機械的性質のうち引張特性(引張強さ、全伸び)は、JIS Z 2241:2011に準拠して評価する。試験片はJIS Z 2241:2011の5号試験片とする。引張試験片の採取位置は、板幅方向の端部から1/4部分とし、圧延方向に垂直な方向を長手方向とすればよい。
本実施形態に係る熱延鋼板は、引張(最大)強さが590MPa以上である。引張強さが590MPa未満であると、適用部品が限定され、車体軽量化の寄与が小さい。上限は特に限定する必要は無いが、金型摩耗抑制の観点から、1200MPaとしてもよい。
また、熱延鋼板の全伸びは14.0%以上とすることが好ましく、引張強さと全伸びとの積(TS×El)は14000MPa・%以上とすることが好ましい。全伸びは16.0%以上とすることがより好ましく、18.0%以上とすることがより一層好ましい。また、引張強さと全伸びとの積は16000MPa・%以上とすることがより好ましく、18000MPa・%MPa以上とすることがより一層好ましい。全伸びを14.0%以上且つ引張強さと全伸びとの積を14000MPa・%以上とすることで、適用部品が限定されることなく、車体軽量化に大きく寄与することができる。
(4-2)疲労特性
熱延鋼板の疲労強度について、20万回時間強度FSと引張強さTSとから計算される値「FS/(0.3×TS)+150」は1.00以上であるか、またはFSは450MPa以上である。これらのいずれかを満たすと、その熱延鋼板は疲労強度に優れると判断することができる。
なお、「FS/(0.3×TS)+150」の値は、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。
疲労強度は、熱延鋼板の幅方向1/4の位置から、圧延方向と垂直方向(C方向)が長手方向となるようにJIS Z 2275-1978に記載の試験片を採取し、JIS Z 2275-1978に準拠した平面曲げ疲労試験を実施することで評価する。破断繰り返し回数が20万回となるような時間強度を求めることで、20万回時間強度FSを得る。
5.板厚
本実施形態に係る熱延鋼板の板厚は特に限定されないが、1.2~8.0mmとしてもよい。熱延鋼板の板厚が1.2mm未満では、圧延完了温度の確保が困難になるとともに圧延荷重が過大となって、熱間圧延が困難となる場合がある。したがって、本実施形態に係る熱延鋼板の板厚は1.2mm以上としてもよい。好ましくは1.4mm以上である。一方、板厚が8.0mm超では、Sn濃度の標準偏差を低減するために必要な圧下率の確保が困難となり、上述した金属組織を得ることが困難となる場合がある。したがって、板厚は8.0mm以下としてもよい。好ましくは6.0mm以下である。
6.その他
(6-1)めっき層
上述した化学組成および金属組織を有する本実施形態に係る熱延鋼板は、表面に耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn-Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn-Al合金めっき、溶融Zn-Al-Mg合金めっき、溶融Zn-Al-Mg-Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様としてよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
7.製造条件
上述した化学組成および金属組織を有する本実施形態に係る熱延鋼板の好適な製造方法は、以下の通りである。
本実施形態に係る熱延鋼板を得るためには、所定の条件でスラブ加熱および熱間圧延を行い、その後、所定の温度域で滞留時間を確保するような冷却履歴とすることが効果的である。
本実施形態に係る熱延鋼板の好適な製造方法では、以下の工程(1)~(6)を順次行う。なお、本実施形態におけるスラブの温度および鋼板の温度は、スラブの表面温度および鋼板の表面温度のことをいう。
(1)スラブを700~850℃の温度域で900秒以上保持する。また、スラブの最高加熱温度は1200℃未満とする。
(2)熱間圧延の各段における圧下率は30%未満とする。
(3)熱間圧延において、850~1100℃の温度域での合計の板厚減は90%以上とする。
(4)圧延完了温度Tfが850℃以上、1010℃未満となるように熱間圧延を完了する。
(5)600~750℃の温度域に3秒以上滞留させる。
(6)400℃以下の温度域で巻取る。
上記製造方法を採用することにより、疲労特性および延性に優れる金属組織を有する熱延鋼板を安定して製造することができる。すなわち、スラブ加熱条件と熱延条件とを適正に制御することによって、Sn偏析の低減と鉄-スケール界面の平滑化とが図られ、後述する熱間圧延後の冷却条件と相俟って、所望の金属組織を有する熱延鋼板を安定して製造することができる。
(7-1)スラブ、熱間圧延に供する際のスラブ温度および保持時間
熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造により得られたスラブや鋳造・分塊により得られたスラブなどを用いることができ、必要によってはそれらに熱間加工または冷間加工を加えたものを用いることができる。熱間圧延に供するスラブは、スラブ加熱時に、700~850℃の温度域で900秒以上保持する。この保持の後、更に加熱して、保持する。このとき、スラブの最高加熱温度は1200℃未満とすることが好ましい。なお、700~850℃の温度域での保持時には、鋼板温度をこの温度域で変動させてもよく、一定としてもよい。
スラブを1100℃以上の温度域まで加熱する場合、通常は、加熱炉にスラブを入れ、加熱炉の設定温度を1100℃以上の温度域に設定して、スラブを加熱する。この方法でスラブを加熱すると、700~850℃の温度域での保持時間を十分に確保することができない。例えば、スラブの温度が700℃以上となるまで上昇してから加熱炉の設定温度を下げるなどして調整することで、700~850℃の温度域において十分な保持時間を確保することができる。
700~850℃の温度域におけるオーステナイト変態において、Snがフェライトとオーステナイトとの間で分配される。そのため、その変態時間を長くすることによって、Snがフェライト領域内を拡散することができる。これにより、スラブに偏在するSn濃度の標準偏差を著しく減ずることができる。
また、スラブの最高加熱温度を1200℃未満とすることで、スラブ表面に形成するスケールの厚さを低減し、圧延中のスケール破砕を抑制し、鉄-スケール界面を平滑にすることができる。スラブの最高加熱温度の下限を定める必要は無いが、1100℃未満であると後述する最終圧延温度の確保が難しいため、1100℃としてもよい。700~850℃の温度域で保持した後、1200℃未満の温度域での保持時間は特に限定しない。
熱間圧延は、多パス圧延としてレバースミルまたはタンデムミルを用いることが好ましい。特に工業的生産性の観点および圧延中の鋼板への応力負荷の観点から、少なくとも最終の2段はタンデムミルを用いた熱間圧延とすることがより好ましい。
(7-2)熱間圧延の各段における圧下率:30%未満
熱間圧延の各段における圧下率は30%未満とすることが好ましい。すなわち、熱間圧延の全ての圧延パスにおける圧下率を30%未満とすることが好ましい。ここでいう熱間圧延には、粗圧延および仕上げ圧延を含む。すなわち、本実施形態において、粗圧延の各段における圧下率も30%未満であり、かつ、仕上げ圧延の各段における圧下率も30%未満である。
通常、熱間圧延、特に粗圧延では、最低でも1回以上、35~40%の圧下率で圧延する。粗圧延の初期段階(1~3パス目)では、スラブ温度が高く変形抵抗が低いため、高い圧下率(例えば35~40%)で圧延を行う。粗圧延の初期段階において高い圧下率で圧延を行っておくことで、仕上げ圧延も含めてより少ないパス数で所望の板厚の熱延鋼板を製造することができる。
しかし、本発明者らは、熱間圧延の各段における圧下率を30%未満とすることで、熱間圧延時にスケールが破砕されることを抑制し、鉄-スケール界面が平滑となり、結果として熱延鋼板の表面の算術平均粗さを低減できることを知見した。したがって、熱間圧延の各段における圧下率は30%未満とすることが好ましい。より好ましくは28%未満、更に好ましくは25%未満である。
下限を定める必要は無いが、各段における圧下率が低すぎると圧延パス数が増加して鋼板の温度が下がり、後述する最終圧延温度の確保が難しいため、熱間圧延の各段における最大圧下率は15%以上としてもよい。
(7-3)熱間圧延の圧下率:850~1100℃の温度域で合計90%以上の板厚減
850~1100℃の温度域で合計90%以上の板厚減となるような熱間圧延を行うことにより、主に再結晶オーステナイト粒の微細化が図られるとともに、未再結晶オーステナイト粒内へのひずみエネルギーの蓄積が促進される。そして、オーステナイトの再結晶が促進されるとともにSnの原子拡散が促進され、Sn濃度の標準偏差を小さくすることができる。したがって、850~1100℃の温度域で合計90%以上の板厚減となるような熱間圧延を行うことが好ましい。
なお、850~1100℃の温度域の板厚減とは、この温度域の圧延における最初の圧延前の入口板厚をtとし、この温度域の圧延における最終段の圧延後の出口板厚をtとしたとき、{(t-t)/t}×100(%)で表すことができる。
(7-4)圧延完了温度Tf:850℃以上、1010℃未満
圧延完了温度(熱間圧延の最終段の圧延温度)Tfは850℃以上、1010℃未満とすることが好ましい。圧延完了温度を850℃以上、1010℃未満とすることで、オーステナイト中のフェライトの核生成サイト数を適正な範囲に制御し、所望のフェライト分率を得ることができる。
(7-5)600~750℃の温度域の滞留時間:3秒以上
熱間圧延完了後、600~750℃の温度域で、3秒以上滞留させることにより、フェライトを十分に生成させることができる。これにより、熱延鋼板の強度と延性とを両立することができる。なお、ここでいう滞留時間とは、鋼板温度が600℃から750℃の間にある時間のことを指し、滞留時間の間に鋼板が冷却されていてもよい。滞留時間の上限は定める必要は無いが、30秒となっても問題無いことを実験で確認している。上記滞留時間を満足させるためには、600~750℃の温度域の全てにおいて水冷を行うことは望ましくない。
(7-6)巻取り温度:400℃以下
巻取り温度は400℃以下とする。巻取り温度を400℃以下とすることで、フェライト分率を所望の範囲に制御し、高い強度を得ることができる。
次に、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1および表2に示す化学組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により厚みが240~300mmのスラブを製造した。得られたスラブを用いて、表3に示す製造条件により、表4に示す熱延鋼板を得た。
得られた熱延鋼板に対し、上述の方法により、金属組織の面積率、Sn濃度の標準偏差、表面の算術平均粗さ、引張強さTS、全伸びEl、20万回時間強度FSを求めた。得られた測定結果を表4に示す。
熱延鋼板の特性の評価方法
(1)引張強度特性
引張強さTSが590MPa以上、かつ全伸びElが14.0%以上、かつ引張強さTS×全伸びElが14000MPa・%以上であった場合、高い強度および優れた延性を有する熱延鋼板であるとして合格と判定した。いずれか一つでも満たさなかった場合、高い強度および優れた延性を有する熱延鋼板でないとして不合格と判定した。
(2)疲労特性
20万回時間強度FSと引張強さTSとから計算される値「FS/(0.3×TS)+150」が1.00以上であるか、FSが450MPa以上であった場合、疲労強度に優れた熱延鋼板であるとして合格とした。一方、20万回時間強度FSと引張強さTSとから計算される値「FS/(0.3×TS)+150」が1.00未満であり、且つFSが450MPa未満であった場合、疲労強度に優れた熱延鋼板でないとして不合格とした。
Figure 0007578895000001
Figure 0007578895000002
Figure 0007578895000003
Figure 0007578895000004
表4を見ると、本発明例に係る熱延鋼板は、高い強度、並びに、優れた延性および疲労特性を有することが分かる。一方、比較例に係る熱延鋼板は、上記特性の1つ以上を有さないことが分かる。なお、製造No.5の熱延鋼板は、粗圧延における最大圧下率が31%であったため、熱延鋼板の表面の算術平均粗さが増加した。

Claims (2)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.040~0.250%、
    Si:0.30%以下、
    Mn:1.00~4.00%、
    sol.Al:0.001~1.000%、
    Sn:0.300~1.000%、
    P :0.100%以下、
    S :0.0300%以下、
    N :0.1000%以下、
    O :0.0100%以下、
    Ti+Nb+V:0~0.500%、
    Cu:0~2.00%、
    Cr:0~2.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Ni:0~2.00%、
    B :0~0.0100%、
    Ca:0~0.0200%、
    Mg:0~0.0200%、
    REM:0~0.1000%、
    Bi:0~0.020%、
    Zr、Co、ZnおよびWのうち1種または2種以上:合計で0~1.00%を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなり、
    金属組織が、
    面積%で、フェライトが20.0%以上、90.0%未満であり、
    Sn濃度の標準偏差が0.50質量%以下であり、
    表面の算術平均粗さが2.00μm未満であり、
    引張強さが590MPa以上であることを特徴とする熱延鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti+Nb+V:0.020~0.500%、
    Cu:0.01~2.00%、
    Cr:0.01~2.00%、
    Mo:0.01~1.00%、
    Ni:0.02~2.00%、
    B :0.0001~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.0200%、
    Mg:0.0005~0.0200%、
    REM:0.0005~0.1000%、および
    Bi:0.0005~0.020%
    からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
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