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JP7574533B2 - 積層フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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JP7574533B2 JP2019151177A JP2019151177A JP7574533B2 JP 7574533 B2 JP7574533 B2 JP 7574533B2 JP 2019151177 A JP2019151177 A JP 2019151177A JP 2019151177 A JP2019151177 A JP 2019151177A JP 7574533 B2 JP7574533 B2 JP 7574533B2
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Description

本発明は、ポリエステルフィルムと樹脂層を有する積層フィルム及びその製造方法に関する。
ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、粘着製品における粘着材層の保護フィルムや、各種工業製品の加工工程におけるキャリアフィルムとして、離型性に優れたフィルムの需要が高まっている。離型性に優れるフィルムとしては、工業的な生産性や耐熱性の点から、シリコーン化合物を樹脂層に含有せしめたフィルムが最も一般的に使用されている(例えば特許文献1参照)。しかし、樹脂層にシリコーン化合物を含有している場合、樹脂層の表面自由エネルギーが低くなるため、被着体の塗布性が不良となる場合がある。
また、樹脂層を有するポリエステルフィルムを、プリント配線基板の製造に用いられる工程フィルムとして用いる場合、樹脂層を有するポリエステルフィルムの樹脂層上に絶縁層を形成した、絶縁層付きポリエステルフィルムとして使用される。絶縁層付きポリエステルフィルムをコア層にラミネート(積層)し、ポリエステルフィルムを剥離することにより、プリント配線基板用の積層板が得られる。絶縁層付きポリエステルフィルムを作成する際、一般に、絶縁層は、絶縁樹脂を含む塗料組成物を、ポリエステルフィルムの樹脂層上に塗布し、その後、80~120℃程度の比較的低温の加熱にて溶媒を飛散させることで形成される。この時、樹脂層にシリコーン化合物が含有されていると、絶縁樹脂を含む塗料組成物をポリエステルフィルムの樹脂層上に塗布した際に、ハジキ、あるいはピンホールが発生し、絶縁層として欠点となる場合がある。また、絶縁層付きポリエステルフィルムをコア層にラミネートし積層板を作成する際、コア層へのラミネート後、ポリエステルフィルムをつけたまま140~180℃程度の比較的高温にて絶縁層を硬化させた後、ポリエステルフィルムを剥離する工程を経ることもある。この時、絶縁層付きポリエステルフィルムをコア層にラミネートする段階では、絶縁層はポリエステルフィルムと密着している必要があるが、絶縁層が高温にて熱硬化した後には、絶縁層とポリエステルフィルムは容易に剥離できる必要がある。つまり、加熱によって樹脂層と絶縁層の剥離力を制御する必要がある。このとき、樹脂層にシリコーン化合物が含有されていると、加熱による剥離力の制御は比較的容易であるが、一方で、樹脂層にシリコーン化合物が含有されていると、ポリエステルフィルムを剥離する際に、絶縁層側に樹脂層のシリコーン成分の転写が生じやすくなる問題がある。
このような課題に対して、シリコーン化合物を含まない離型剤(以下、非シリコーン離型剤と記載する)として、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物、中でも長鎖アルキル基含有樹脂を用いる検討が行われている(例えば特許文献2~5参照)。
特開2010-155459号公報 特開2004-351626号公報 特開2014-151481号公報 特開2004-230772号公報 特開2015-199329号公報
しかしながら、非シリコーン離型剤を含む樹脂層はシリコーン化合物を含有する離型剤を含む樹脂層に比べて、当該樹脂層上に塗布などによって設けられる層が重剥離となる(剥離しにくくなる)傾向があり、また、加熱によって当該樹脂層上に塗布などによって設けられる層の剥離力が大幅に増加してしまうという課題がある。例えば、特許文献2に記載のフィルムについて、本発明者らが検証したところ、樹脂層に粘着テープを貼合し、加熱後に剥離した際、粘着テープが大幅に重剥離になってしまうことが分かった。また、特許文献3や4に記載のフィルムのように、長鎖アルキル基含有樹脂と架橋剤を併用する場合や、特許文献5のように、長鎖アルキルアクリレート樹脂とメラミン樹脂を併用する場合は、加熱による粘着テープの剥離力変化がほとんどないが、依然剥離力が高く、加熱後にも剥離が困難となることが判った。
そこで、本発明では上記欠点を解消し、樹脂層上に塗布によって設けられる層を形成する塗料組成物の塗布性、及び塗布によって樹脂層上に設けられる層の加熱による剥離力の制御に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の物理特性を有する積層フィルムを用いることにより、樹脂層上に塗布によって設けられる層を形成する塗料組成物の塗布性、及び塗布によって樹脂層上に設けられる層の剥離性に優れた積層フィルムとなし得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
[I]ポリエステルフィルムと、樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、前記樹脂層の水接触角が95°以上110°以下であり、前記積層フィルムの初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下である積層フィルム。
[II]飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.01未満である[I]に記載の積層フィルム。
[III]前記積層フィルムの樹脂層の表面側から原子間力顕微鏡(AFM)で押し込み深さ10nmで測定した弾性率P(MPa)が、200≦P≦2000である[I]または[II]に記載の積層フィルム。
[IV]前記樹脂層の静止摩擦係数μsが0.10以上0.30以下である[I]から[III]のいずれかに記載の積層フィルム。
[V]前記樹脂層が、離型剤(A)と、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂または化合物(B)を含有する塗料組成物から形成される[I]~[IV]のいずれかに記載の積層フィルム。
[VI]前記離型剤(A)が、炭素数12以上のアルキル基を有する樹脂を含む[V]に記載の積層フィルム。
[VII]前記炭素数12以上のアルキル基を有する樹脂が、ポリメチレンの主鎖に、炭素数12以上のアルキル基の側鎖を有する樹脂である[VI]に記載の積層フィルム。
[VIII]前記塗料組成物における、離型剤(A)と樹脂または化合物(B)の質量比が、離型剤(A)/樹脂または化合物(B)=10/90~70/30の範囲である[VI]~[VII]のいずれかに記載の積層フィルム。
[IX]前記樹脂層の膜厚が50nm以上200nm未満である[I]~[VIII]のいずれかに記載の積層フィルム。
[X]前記樹脂層の表面自由エネルギーが20mN/m以上30mN/m以下である[I]~[IX]のいずれかに記載の積層フィルム。
[XI]前記樹脂層の表面にエポキシ樹脂を含む層を設けた後、エポキシ樹脂を含む層を剥離する用途に用いる[I]~[X]のいずれかに記載の積層フィルム。
[XII]結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、離型剤(A)を含有する塗料組成物を塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、該ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる工程を含む[I]~[XII]のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
である。
本発明によれば、塗布によって樹脂層上に設けられる層を形成する塗料組成物の塗布性、搬送性、及び塗布によって樹脂層上に設けられる層の低温加熱後の剥離性が大きく、高温加熱後の剥離性が低いという、加熱温度による剥離特性に優れた積層フィルムを提供することができる。さらに搬送時において、樹脂層上に設けられた層が浮き上がることなく、塗布性、剥離性に優れた積層フィルムを提供することができる。
本発明の積層フィルムは、ポリエステルフィルムと、樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、前記樹脂層の水接触角が95°以上110°以下であり、前記積層フィルムの初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下である積層フィルムである。初めにこれらの物理特性の意味と制御方法の例について説明する。
本発明において水接触角とは、JIS R3257:1999年に記載の静滴法にて求められるものである。樹脂層表面上に水滴を乗せ、その雰囲気下で平衡になっているとき、下式により求めることができる値であり、一般には、その固体表面の塗れ性を判断する指標となるものである。すなわち、水接触角の値が小さいほど前記固体表面は塗れ性が良好、値が大きいほど塗れ性が不良であることを表す。
γS = γLcosθ + γSL
(上記式において、γSは固体の表面張力、γLは液体の表面張力、γSLは固体/液体の界面張力、θは接触角を示す)。
上記の式を「ヤングの式」と言い、液体表面と固体表面のなす角度を「接触角」と定義している。水接触角は、広く市販されている装置により測定することができるが、本発明においては、協和界面科学社製の接触角計DropMaster DM-501により測定した値を表す。具体的な水接触角の数値範囲、及び測定方法については後述する。
本発明において初期テープ剥離力は、次に記載の通りと定義する。まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させる。その後、そのテープを貼合した積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離したときの剥離荷重を初期テープ剥離力とした。具体的な初期テープ剥離力の測定方法については、後述する。
また、本発明において100℃30分加熱後テープ剥離力とは、次に記載の通りと定義する。まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させる。その後、そのテープを貼合した積層フィルムを熱風オーブンにて100℃30分加熱した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離したときの剥離荷重を100℃30分加熱後テープ剥離力とした。具体的な100℃30分加熱後テープ剥離力の測定方法については、後述する。
本発明者らが鋭意検討した結果、本発明の積層フィルムの樹脂層上に塗布などによって設けられる層(以降、本発明の積層フィルムの樹脂層上に塗布などによって設けられる層を「表面層」と称する場合がある)の低温加熱後の剥離力(本発明の積層フィルムの樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力)は、初期テープ剥離力(本発明の積層フィルムの樹脂層とアクリル系ポリエステル粘着テープとの剥離力)と相関があることを見出した。ただし、剥離力の大小は逆転する。その理由は以下の通りと考える。
まず樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力、および初期テープ剥離力は、本発明の積層フィルムの樹脂層と表面層、樹脂層とアクリル系ポリエステル粘着テープの相互作用の強さに依存する。つまり、相互作用が大きいと剥離力は大きくなり(重剥離(剥離しにくい))、相互作用が小さいと剥離力は小さくなる(軽剥離(剥離しやすい))。ここでの相互作用とは水素結合や疎水性相互作用による分子間力や、各層の表面自由エネルギーおよびその差から決定される値であり、更に剥離力として検出される際には、その剥離方向に応じて層の厚みや弾性率の影響を受ける。加熱前後の剥離力の変化において支配的となる因子は樹脂層の分子構造の変化に伴う分子間力の変化と考えられる。
80~120℃程度の低温加熱にて架橋反応が進行して層を形成する成分は、エポキシ樹脂などに代表されるとおり親水性を有する。一方、前述の初期テープ剥離力、加熱後テープ剥離力を測るために用いるアクリル系ポリエステル粘着テープは疎水性である。従って、当該アクリル系ポリエステル粘着テープを用いて、樹脂層と、親水性の性質を有する表面層の剥離力を設計しようとする場合には以下の関係となる。すなわち親水性の表面層との相互作用が小さい樹脂層では、疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープでの剥離力が大きくなり、反対に親水性の表面層との相互作用が大きい樹脂層は、疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープでの剥離力が小さくなる。すなわち、本発明の積層フィルムの樹脂層の初期テープ剥離力(疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープとの剥離力)が小さい場合、樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力が大きくなり、本発明の積層フィルムの樹脂層の初期テープ剥離力が大きい場合、樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力が小さくなる。
また、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、本発明の積層フィルムの樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力から、本発明の積層フィルムの樹脂層と表面層の高温加熱後の剥離力への変化は、初期テープ剥離力から、100℃30分加熱後テープ剥離力への変化と相関がある(本発明の積層フィルムの樹脂層の初期テープ剥離力と加熱後のテープ剥離力の変化は、本発明の積層フィルムの樹脂層と表面層の低温加熱後の剥離力と高温加熱後の剥離力の変化と逆になる)ことを見出した。積層フィルムの樹脂層上に、低温加熱にて表面層が形成されたのち高温加熱される場合、樹脂層自体も同時に高温加熱されることで樹脂層の塗膜構造が変化すると考えられる。高温加熱にて樹脂層が適度に変化することで、表面層との相互作用状態も変化するため、高温加熱後の剥離力変化が大きくなると考えられる。なお、本発明において「低温加熱」とは80~120℃の範囲の加熱、「高温加熱」とは150~180℃の範囲の加熱をあらわす。
本発明の積層フィルムは、樹脂層の水接触角を95°以上110°以下とし、前記積層フィルムの初期テープ剥離力を0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力を8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下に制御することで、樹脂層の表面に設ける表面層を形成する塗料組成物の塗布性と加熱前後の剥離特性を両立することができる。
本発明の積層フィルムの樹脂層の水接触角、初期テープ剥離力及び100℃30分加熱後テープ剥離力を制御する方法としては、例えば後述する樹脂層を構成する成分や塗料組成物や製造方法を挙げることができる。それぞれの好ましい範囲については後述するが、課題となる機能を得る上で好ましい物理特性について、以下に説明する。
テープ剥離力は、樹脂層とテープの相互作用、及び、樹脂層の厚み、及び、樹脂層の弾性率の影響を受ける。従って、樹脂層の厚みや弾性率、構成材料の分布を制御することにより、同一の材料を用いた場合にもより効果的に剥離力や塗工性を制御することができる。弾性率分布については、例えば原子間力顕微鏡法(Atomic Force Microscopy)を、構成材料の分布については例えば飛行時間型2次イオン質量分析(GCIB-TOF-SIMS)を用いて評価することができる。
以下、水接触角、初期テープ剥離力及び100℃30分加熱後テープ剥離力の具体的な数値範囲について記載する。本発明の積層フィルムの樹脂層は、水接触角が95°以上110°以下であることが必要である。本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の水接触角を95°以上とすることで、積層フィルムに良好な離型性を付与することができる。樹脂層の水接触角が95°未満である場合、離型性が不良となり、例えば樹脂層にエポキシ樹脂を塗布し、低温加熱にて硬化させた後、剥離しようとする際、エポキシ樹脂の剥離力が重剥離化となる。
また、本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の水接触角を110°以下とすることで、樹脂層の表面にエポキシ樹脂に代表される成分を含む表面層を形成する塗料組成物の塗布性を良好なものとすることができ、エポキシ樹脂に代表される成分を含む表面層が樹脂層から自然剥離することも防ぐことができる。樹脂層の水接触角が110°より大きい場合、エポキシ樹脂に代表される成分を含む表面層を形成する塗料組成物をハジキやピンホールといった欠点なく塗布することが困難になる上、エポキシ樹脂に代表される成分を含む表面層の一部が樹脂層から脱落するなど品位の低下が発生する。より好ましくは98°以上105°以下である。
本発明の積層フィルムは、初期テープ剥離力は0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力は8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下であることが必要である。初期テープ剥離力は、より好ましくは、0.9N/50mm以上3.5N/50mm以下であり、さらに好ましくは1.2N/50mm以上3.0N/50mm以下である。また、100℃30分加熱後テープ剥離力は、より好ましくは、9.0N/50mm以上13.0N/50mm以下であり、さらに好ましくは9.5N/50mm以上12.0N/50mm以下である。
初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であることは、前記樹脂層と疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープの相互作用が小さいことを表すものであり、つまり、前記樹脂層と低温加熱後の表面層との相互作用は大きいことを表すため、表面層を積層する工程上での、表面層の自然剥離を防ぐことが可能になる。初期テープ剥離力が0.5N/50mm未満の場合、前記樹脂層と疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープの相互作用がごく小さい、つまり、低温加熱後の表面層との相互作用が大きくなりすぎるため、続く高温加熱後の剥離の際に局所的に強い密着部分が存在し、剥離時に振動が発生するなど剥離力が不安定となり好ましくない。また、初期テープ剥離力が4.0N/50mmより大きい場合、低温加熱後の表面層との相互作用が小さくなり、表面層を積層する工程上で表面層の一部が樹脂層から脱落するなど品位の低下が発生する。
上記の初期テープ剥離力を満たし、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下であることは、加熱による樹脂層の構造変化が大きく、前記樹脂層と疎水性のアクリル系ポリエステル粘着テープとの相互作用が大きくなることであり、つまり、その反対に、前記樹脂層と高温加熱後の表面層との剥離力は小さくなるため、剥離しようとする際、容易に剥離することが可能となる。上記の初期テープ剥離力を満たし、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以下の場合、加熱による樹脂層の変化が小さく、高温加熱後の表面層の剥離力が大きいままとなるため、剥離不良となる。上記の初期テープ剥離力を満たし、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が14.0N/50mm以上の場合、高温加熱後の表面層の剥離力が小さすぎるため、表面層の剥離工程前で、表面層もしくは本発明の積層フィルムの一部が樹脂層から脱落するなど品位の低下が発生する。
本発明の積層フィルムは、樹脂層の表面に表面層を設けた後、当該表面層を剥離する用途に好ましく用いられる。このとき、樹脂層の成分が表面層に転写すると、表面層に不要な成分が付着するため、表面層自体の特性を損なうなど悪影響を及ぼす場合がある。上述した、初期テープ剥離力と100℃30分加熱後テープ剥離力が上記の範囲を満たすようにすると、高温加熱後の表面層が容易に剥離でき、表面層を剥離する際に、表面層側へ樹脂層成分の転写を抑制することが可能となる。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
<ポリエステルフィルム>
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとなるポリエステルフィルムについて詳しく説明する。ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。本発明では、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。またポリエステルフィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
また、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
上記ポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向及び長手方向に直行する幅方向に各々2.5~5倍程度延伸し、その後、熱処理を施して、結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなったりするので好ましくない。
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム自身が2層以上の積層構造体であってもよい。積層構造体としては、例えば、内層部と表層部と有する複合体フィルムであって、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10~500μm、より好ましくは23~125μm、最も好ましくは38~75μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
<樹脂層>
本発明の積層フィルムにおける樹脂層とは、積層フィルムの少なくとも一方の表層に有するものであり、前述のポリエステルフィルムの少なくとも片面に有するものであることが好ましい。本発明の積層フィルムの樹脂層上に粘着テープやエポキシ樹脂などの表面層を積層後、積層フィルムから後述の表面層を剥離する工程において、剥離が容易に行われるために必要な層である。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、飛行時間型2次イオン質量分析(GCIB-TOF-SIMS)において、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.01未満であることが好ましい。測定方法の詳細は後述するが、ピーク強度の比が0.01未満である場合、樹脂層がポリジメチルシロキサンに由来する成分が少ないため、本発明の積層フィルムを電子部品製造用の工程フィルムとして使用した際、製品側へのシリコーン化合物(特にポリジメチルシロキサン)の移行がなく、導電不良、絶縁不良、ピンホール欠点などのトラブルを防ぐことができる。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、膜厚が50nm以上400nm未満であることが好ましく、50nm以上200nm未満であることが特に好ましい。樹脂層の膜厚を50nm以上400nm未満とすることで、ポリエステルフィルム上に均一な塗布性、離型性を有する樹脂層を設けることが容易となる。樹脂層の膜厚が400nm以上になると、製造コストが高くなる他、樹脂層の塗布時にムラやスジが発生しやすくなり、積層フィルムの品位が低下する場合がある。
本発明の積層フィルムの初期テープ剥離力を0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力を8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下にする方法としては、特に限定されることはないが、代表的な方法としては、前記樹脂層が、離型剤(A)と、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂または化合物(B)を含有する塗料組成物から形成する方法がある。詳細は塗料組成物の項に記載する。
本発明の積層フィルムは、樹脂層の表面自由エネルギーが20mN/m以上30mN/m以下であることが好ましい。樹脂層の表面自由エネルギーを20mN/m以上とすることで、樹脂層の上に表面層をハジキやピンホールなく塗布することができる上に、表面層の自然剥離を抑制することができる。また、樹脂層の表面自由エネルギーを30mN/m以下とすることで、表面層の剥離力を小さくすることができる。より好ましくは23mN/m以上28mN/m以下である。
<原子間力顕微鏡(AFM)を用いた弾性率測定>
また、本発明の樹脂層にはAFMにより測定される弾性率に好ましい数値範囲が存在する。具体的には押し込み深さ10nmで測定した弾性率P(MPa)が、200以上2000以下であること好ましく、500以上1500MPa以下が特に好ましい。AFMにより測定される弾性率が小さすぎる場合には樹脂層に対して表面層が浸透しやすくなり、剥離力が大きくなりすぎる場合がある。一方でAFMにより測定される弾性率が大きすぎる場合には、積層フィルムが硬質となり、結果として軽剥離となりやすい傾向がある。
ここで原子間力顕微鏡による弾性率測定は、極微小部分の探針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いであるため、ばね定数が既知のカンチレバーを用いて、表面層の弾性率およびその空間分布が測定できる。詳細は実施例の項で記載するが、下記に示す原子間力顕微鏡を用い、カンチレバー先端の探針を樹脂層に接触させ、押し込み深さ10nmにてフォースカーブを測定することができる。この時、押し込み深さに応じて塗膜の深さ方向の情報が得られるが、一般的には押し込み深さ設定値の5~10倍程度までの深さに存在する材料が測定に影響する。従って、押し込み深さ10nmでは下地基材の影響より表面層の特性が支配的となる。また、平面方向の空間分解能については原子間力顕微鏡のスキャン範囲およびスキャンライン数に依存するが、現実的な測定条件では、概ね50nm程度が下限である。詳細および測定方法については後述する。
<樹脂層の静止摩擦係数>
本発明の積層フィルムは、樹脂層の静止摩擦係数に好ましい数値の範囲が存在する。具体的には樹脂層の表面同士を重ね合わせた際の静止摩擦係数μsは0.10以上0.30以下が好ましく、0.15以上0.30以下がより好ましく、0.20以上0.30以下が特に好ましい。静止摩擦係数μsが小さい場合には、本発明の積層フィルムをロール状もしくはシート状に積み重ねて使用する際に、ズレが生じやすくなり次加工の精度に悪影響を与える場合がある。一方、静止摩擦係数μsが小さいが大きい場合には、特にロール状に巻き取りを行う際に、皺が入りやすくなり、フィルムの品位を損なう場合がある。なお静止摩擦係数μsの測定方法については後述する。
本発明の積層フィルムの樹脂層の表面の静止摩擦係数μsを制御する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂層表面に突起形状を付与することなどが挙げられる。通常、突起形状がない平滑な表面は、静止摩擦係数μsが大きく、突起形状を有して平滑でない表面は静止摩擦係数μsが小さい。これは、突起形状のない平滑な表面の場合、面同士が全面で接触するため接触面積が大きく、滑りづらくなるのに対し、突起形状を有する平滑でない表面の場合、面同士は突起の点上でのみ接触するため接触面積が小さく、滑りやすくなるためである。
しかしながら、本発明者らが検討を進めたところ、本発明の好ましい形態である、「表面層を剥離する工程において、剥離が容易に行われるために必要な樹脂層でありながら、ポリジメチルシロキサンに由来する成分が少ない樹脂層」を有する積層フィルムとした場合には、接触面積を増加させた際に滑りがおこりやすく、例えばロール形成時に巻きずれが生じるなど加工性が問題となる場合があることが分かった。このような現象が生じる原因は定かではないが、上記の特徴を有する樹脂層では「剥離性」および「低表面エネルギー」の発現に材料の分子配列状態が寄与しており、平滑面では効率よく配列形状が形成されるため、剥離性と低表面エネルギーという特性だけでなく、滑り性に対しても有効な表面となっていると考えられる。更に、本発明者らが鋭意検討した結果、本発明の積層フィルムの樹脂層の表面に適切な頻度、および高さの突起を設計することが搬送性の向上に重要であることを見出した。これは、材料の分子配列状態が突起形成時に部分的に乱されることで表面が不均一となり、滑りも部分的に阻害されるためと推定している。滑りを制御するためには、突起高さが25nm以上の平均突起個数が0.1個/μm以上2.0個/μm以下であることが好ましく、0.2個/μm以上1.0個/μm以下であることがより好ましく、0.3個/μm以上0.6個/μm以下であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムの樹脂層表面に突起形状を付与する方法は特に限定されないが、例えばポリエステルフィルムの製膜工程において粒子材料を含む原料を使用する、粒子入りポリエステルを使用する方法や、ポリエステルフィルム表面を、高圧放電やプラズマなどの方法で削り出す方法などを適応することが出来る。前述の樹脂層を均一に形成する観点から、樹脂層を形成する塗料組成物に粒子材料を添加する方法が特に好ましい。樹脂層を形成するこのましい塗料組成物については後述する。
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、後述する測定方法により求められる180℃熱収縮率が0%以上2.0%以下であることが好ましい。
本発明の積層フィルムを層間絶縁材料フィルムに用いる場合、本発明の積層フィルムの樹脂層上にエポキシ樹脂などの親水性樹脂を含む塗布した後、低温加熱(80~120℃程度)で加工されたものが製品となる。一方、電子部品などには表面層を組み込む際、実装工程では、本発明の積層フィルムの樹脂層上に表面層を積層した積層体(層間絶縁材料フィルム)が高温加熱(150~180℃程度)された後に用いられる。
このとき、熱収縮率を上述の範囲とすると、低温加熱した後の層間絶縁材料フィルムにおいても、また層間絶縁材料フィルムを高温加熱した後の状態においても、本発明の積層フィルムと、表面層を構成するエポキシ樹脂などの親水性樹脂との熱収縮率差による自然剥離を抑制することが可能となる。より好ましくは、0.5%以上1.5%以下、最も好ましくは0.7%以上1.3%以下である。なお、熱収縮率がマイナスとは、フィルムが膨張することを表す。
本発明の積層フィルムの熱収縮率を上記の範囲とする方法は特に限られるものでは無いが、例えば、二軸延伸した後のポリエステルフィルムをオフアニールする方法、熱処理工程において幅方向および/または長手方向に弛緩処理を施す方法が挙げられる。
<表面層>
本発明の積層フィルムは樹脂層の上に表面層を形成する用途に使用されることが好ましい。ここで表面層とは積層フィルムの樹脂層を有する面の上に形成された樹脂、金属、セラミックなどを含む層状の成型体を指す。表面層の作成方法については特に限定されないが、例えば塗布、蒸着、貼合などの方法によって、樹脂層の表面に形成することができる。表面層の作成に溶媒成分を有する塗液を使用する場合、また表面層が反応性の活性部位を反応させて成る硬化層の場合には、未乾燥の状態及び未硬化の状態を含め、表面層と記載する場合がある。
本発明の積層フィルムは、樹脂層上に設けられる層の低温加熱後の剥離性が大きく、高温加熱後の剥離性が低いという、加熱温度による剥離特性に優れるという特徴を有する。そのため、本発明の積層フィルムは、前記樹脂層の表面に表面層を設けた後、80~120℃で加熱した後、さらに150~180℃で加熱した後、表面層を剥離する用途に好適に用いられる。特に、本発明の積層フィルムの樹脂層の上にエポキシ樹脂などを含む塗料組成物を塗工する工程を経て形成される層間絶縁材料フィルムに好適に用いられる。層間絶縁材料フィルムの製造工程では、本発明の積層フィルムの樹脂層上にエポキシ樹脂などが塗布された後、低温加熱で加工されたものが製品となるため、低温加熱後では、本発明の積層フィルムと表面層は重剥離(剥離しにくい状態)である必要がある。一方、電子部品などには表面層のみが組み込まれるため、実装工程では、本発明の積層フィルムの樹脂層上に低温加熱された表面層が積層された積層体(層間絶縁材料フィルム)が高温加熱されたのち、本発明の積層フィルムのみ剥離するため、高温加熱後では、本発明の積層フィルムと表面層は軽剥離(剥離されやすい状態)である必要がある。そのため、本発明の積層フィルムは、樹脂層の表面にエポキシ樹脂などの親水性樹脂を含む層(表面層)を設けた後、エポキシ樹脂などの親水性樹脂を含む層(表面層)を剥離する用途に好ましく用いられる。
<塗料組成物>
本発明の積層フィルムの樹脂層を形成するための好ましい塗料組成物について記載する。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、離型剤(A)と、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂または化合物(B)を含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。かかる構成とすることで、樹脂層の水接触角を95°以上110°以下とし、初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下となるような樹脂層として、表面層に対する剥離性を良好なものとすることが容易になる。
<離型剤(A)>
本発明でいう離型剤(A)とは、塗料組成物に含有することにより、塗布層の表面に離型性(すなわち樹脂の表面自由エネルギーを低下させたり、樹脂の静止摩擦係数μsを低下させたりする特性)を付与する化合物を示す。本発明において用いることのできる離型剤(A)としては、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。中でも、長鎖アルキル基含有樹脂は、良好な剥離性を付与できる点で好ましい。
長鎖アルキル基含有化合物は市販されているものを使用してもよく、具体的には、アシオ産業社製の長鎖アルキル系化合物である“アシオレジン”(登録商標)シリーズ、一方社油脂工業社製の長鎖アルキル化合物である“ピーロイル”シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル系化合物の水性分散体である“レゼム”シリーズなどを使用することができる。前記離型剤(A)は、炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数16以上のアルキル基を有することがより好ましい。アルキル基の炭素数を12以上にすることで、疎水性が高まることとなり、離型剤(A)として十分な離型性能を発現させることができる。アルキル基の炭素数が12未満であると、離型性能が不十分なものとなる恐れがある。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが、25以下であると製造が容易であるため好ましい。
前記炭素数12以上のアルキル基を有する樹脂は、ポリメチレンの主鎖に炭素数12以上のアルキル基の側鎖を有する樹脂であることがより好ましい。主鎖がポリメチレンであることで、樹脂全体の親水基が少なくなるため、離型剤(A)の離型効果をより優れたものとすることができる。
なお炭素数12のアルキル基の含有有無については積層フィルムからも、例えばTOF-SIMS(TOF-SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析法)にて得られる信号の内、アルキル基に相当する物の強度を用いて評価することが出来る。この時、イオンスパッタ法による切削法を併用することで深さ方向に連続的に測定を行うことが可能で有り、アルキル基含有化合物の
分布状態についても評価することが出来る。
<樹脂または化合物(B)>
本発明において用いることのできる樹脂または化合物(B)としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。中でも、メラミン樹脂やアクリル樹脂は、水酸基による相互作用を制御しやすく、かつ、高温加熱による樹脂層が変化しやすくなるため好ましい。
樹脂または化合物(B)として用いることができるエポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系架橋剤などを用いることができる。エポキシ樹脂として、市販されているものを使用してもよく、例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)EX-611、EX-614、EX-614B、EX-512、EX-521、EX-421、EX-313、EX-810、EX-830、EX-850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR-EG、SR-8EG、SR-GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON”(登録商標)EM-85-75W、あるいはCR-5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましく用いられる。
樹脂または化合物(B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるオキサゾリン化合物は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであり、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン化合物において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーは、該オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであり、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン-α,β-不飽和モノマー類、スチレン及びα-メチルスチレンなどのα,β-不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるカルボジイミド化合物は、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物である。このようなカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド及びウレア変性カルボジイミド等を挙げることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものが好ましい。
該ポリエステル樹脂の原料となるジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ビスフェノキシエタン-p-p’-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
該ポリエステル樹脂の原料となるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’-メチレンジフェノール、4、4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-、m-、及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、4,4’-イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン-1、2-ジオール、シクロヘキサン-1,2’-ジオール、シクロヘキサン-1、2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオールなどを用いることができる。
また、該ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
樹脂または化合物(B)として用いることができるアクリル樹脂は、特に限定されることはないが、アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。
アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムの樹脂層は、樹脂または化合物(B)としてイソシアネート化合物を含んでいても良い。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、イソシアネート基は水と反応し易いため、塗剤のポットライフの点で、イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。この場合、ポリエステルフィルムに塗料組成物を塗布した後の乾燥工程において熱がかかることで、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が露出する結果、架橋反応が進行することになる。
本発明の積層フィルムの樹脂層をなす塗料組成物は、離型剤(A)と樹脂または化合物(B)の質量比が10/90~70/30の範囲であることが好ましい。より好ましくは15/85~65/35の範囲である。かかる範囲とすることで、樹脂層における離型剤(A)が充分量となり初期テープ剥離力および低温加熱後の表面層との剥離力を良好なものにすることができる。それと同時に、加熱による変化しやすい樹脂または化合物(B)も充分量となるため、加熱前後での剥離特性を良好なものにすることができる。
<粒子成分(C)>
本発明の積層フィルムの樹脂層をなす塗料組成物は、離型剤(A)と樹脂または化合物(B)のほかに、粒子成分(C)を含んでいても良い。前述したとおり、本発明の積層フィルムの樹脂層は、フィルム表面が平滑であると従来のフィルムとは異なり、滑り性が高くなる。本発明の積層フィルムにおいて、巻取性が悪化するほどに滑り性が高い場合には、塗料組成物中にかかる粒子成分(C)を含めることで、樹脂層表面に突起形状を付与することができ、搬送性が良好となる。
本発明において用いられる粒子成分(C)としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ヒ素(As)、テルル(Te)及びアスタチン(At)を結ぶ斜めの線上および左に位置する元素の酸化物微粒子を好適に用いることが出来る。
このような粒子成分(C)としては、SiO、TiO、ZrO、ZnO、CeO、SnO、Sb、インジウムドープ酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、Y、La、Al、などが挙げられる。
これらの粒子成分(C)は1種を単独で用いても良く、2種以上を組合せて用いてもよい。分散安定性や屈折率の観点から、SiO、TiO、ZrOが特に好ましい。
ここで、該粒子成分(C)の数平均粒子径について説明する。ここで数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)により求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する10個の粒子の外径を、10視野について合計100個の粒子を測定した数平均粒子径である。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
本発明の積層フィルムの樹脂層に用いる粒子成分(C)は、数平均粒子径が3nm以上500nm以下であることが好ましい。より好ましくは80nm以上400nm以下、さらに好ましくは100nm以上300nm以下である。該粒子成分(C)の数平均粒子径が小さすぎると、粒子同士のファンデルワールス力が非常に大きくなるため凝集しやすくなる傾向にある。一方、該粒子成分(C)の数平均粒子径が大きすぎると、樹脂層から脱落しやすくなる。
粒子成分(C)の製造方法は特に限定されるものではないが、粒子成分(C)をアクリル樹脂で表面処理する方法などを挙げることができ、具体的には、以下の(i)~(iv)の方法が例示される。なお、本発明において、表面処理とは、粒子成分(C)の表面の全部または一部にアクリル樹脂を吸着・付着させる処理をいう。
(i)粒子成分(C)とアクリル樹脂をあらかじめ混合した混合物を溶媒中に添加した後、分散する方法。
(ii)溶媒中に、粒子成分(C)とアクリル樹脂を順に添加して分散する方法。
(iii)溶媒中に、粒子成分(C)とアクリル樹脂をあらかじめ分散し、えられた分散体を混合する方法。
(iv)溶媒中に、粒子成分(C)を分散した後、得られた分散体に、アクリル樹脂を添加する方法。
これらのいずれの方法によっても目的とする効果を得ることができる。
また、分散を行う装置としては、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ミーダー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、SCミル、アニュラー型ミル、ピン型ミル等が使用できる。
また、分散方法としては、上記装置を用いて、回転軸を周速5~15m/sで回転させる。回転時間は5~10時間である。
また、分散時に、ガラスビーズ等の分散ビーズを用いることが分散性を高める点でより好ましい。ビーズ径は、好ましくは0.05~0.5mm、より好ましくは0.08~0.5mm、特に好ましくは0.08~0.2mmである。
混合、攪拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや攪拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
樹脂層における粒子成分(C)の含有量は、樹脂層全体に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、1質量%以上7質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上5質量%以下である。粒子成分(C)の含有量を、樹脂層全体に対して、0.5質量%以上10質量%以下とすることで、該樹脂層の造膜性を損なうことなく、表面形状を付与することができる。その結果、所望の搬送性を十分に発現させることが可能となる。
<製造方法>
本発明の積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表層に樹脂層を設ける方法は、インラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができる。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。特に、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも一方の表層に、離型剤(A)を含有する塗料組成物を塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、該ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる製造方法によって製造されることが好ましい。 また、オフコート法とは、製造が完了したポリエステルフィルムの少なくとも一方の表層に、前述の塗料組成物を塗布し、次いで乾燥、硬化することにより形成する方法である。樹脂層の硬化の際、熱処理を施すが、オフコート法にて高温熱処理を施すとフィルムの平面性が損なわれる可能性があるため、インラインコート法が好ましい。
<塗布方式>
ポリエステルフィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式を任意で用いることができる。例えばワイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法などが挙げられる。
<樹脂層の形成方法>
本発明では、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗料組成物を塗布した後、乾燥せしめることにより樹脂層を形成させることが好ましい。本発明において、塗料組成物に溶媒を含有せしめる場合は、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れる。
ここで、水系溶媒とは、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
塗料組成物のフィルムへの塗布方法は、特に限定するものではないが、前述したとおり、インラインコート法であることが好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)フィルム(Aフィルム)、その後に長手方向または幅方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)フィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向または長手方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)フィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、塗料組成物を塗布し、その後、フィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、フィルムの製膜と、塗料組成物の塗布乾燥(すなわち、樹脂層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットもある。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、塗料組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が優れている。この方法の場合、未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、塗料組成物を塗布した後の延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層の欠陥や亀裂が発生しづらく、平滑性に優れた樹脂層を形成できるためである。また、先述の通り、結晶配向完了前のフィルムへ塗料組成物を塗布することで、樹脂層とポリエステルフィルムとの密着性を付与することができる。
従って、本発明において好ましい樹脂層の形成方法は、水系溶媒を用いた塗料組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、乾燥、熱処理することによって形成する方法である。またより好ましくは、一軸延伸後のBフィルムに塗料組成物をインラインコートする方法である。本発明の積層フィルムの製造方法において、乾燥は塗料組成物の溶媒の除去を完了させるために、80~130℃の温度範囲で実施することができる。また、熱処理はポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに塗料組成物の熱硬化を完了させ樹脂層の形成を完了させるために、160~240℃の温度範囲で実施することができる。
さらに塗料組成物の固形分濃度は40質量%以下であることが好ましい。固形分濃度を40質量%以下とすることにより、塗料組成物に良好な塗布性を付与でき、均一な樹脂層を有する積層フィルムを製造することができる。
なお、固形分濃度とは、塗料組成物の質量に対して、塗料組成物の質量から溶媒の質量を除いた質量が占める割合を表す(すなわち、[固形分濃度(質量%)]=[(塗料組成物の質量)-(溶媒の質量)]/[塗料組成物の質量]×100である)。
<積層フィルムの製造方法>
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。まず、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)のペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。この時、Bフィルムの片面に所定の濃度に調製した離型剤(A)を有する塗料組成物を塗布しても良く、さらに、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、樹脂組成物のハジキを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80~130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1~5.0倍延伸する。引き続き150~250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き1~30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。なお、この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を施してもよい。
<特性の測定方法及び効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法、及び効果の評価方法は次の通りである。
(1)初期テープ剥離力
初期テープ剥離力は下記の通り測定した。
まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作成した。その後、テープ貼合積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を初期テープ剥離力とした(すなわち、[初期テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(2)100℃30分加熱後テープ剥離力
100℃30分加熱後テープ剥離力は下記の通り測定した。
まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、本発明の積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から、2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作成した。その後、テープ貼合積層フィルムを熱風オーブンにて100℃30分加熱した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を100℃30分加熱後テープ剥離力とした(すなわち、[100℃30分加熱後テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(3)水接触角、及び表面自由エネルギーの算出方法
まず、積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後する。その後、同雰囲気下で、積層フィルムの樹脂層の表面側に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、協和界面科学社製 接触角計DropMaster DM-501により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γ )、極性力成分(γ )、及び水素結合力成分(γ )の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の分散力、極性力、水素結合力及び分散力と極性力の和である表面自由エネルギーを算出する。
具体的な算出方法を示す。各記号の意味について下記する。γ は固体と液体の界面での張力である場合、数式(1)が成立する。
γ : 樹脂層と表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ: 樹脂層の表面自由エネルギー
γ: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ : 樹脂層の表面自由エネルギーの分散力成分
γ : 樹脂層の表面自由エネルギーの極性力成分
γ : 樹脂層の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ =γ+γ-2(γ ・γ )1/2-2(γ ・γp)1/2-2(γ ・γ )1/2 ・・・ 数式(1)。
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は次式で表現される(Youngの式)。
γ=γ +γcosθ ・・・ 数式(2)。
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、次式が得られる。
・γ )1/2+(γ ・γ )1/2+(γ ・γ )1/2=γ(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γL 、γL 、γL )を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面自由エネルギー(γ)、分散力成分(γ )、極性力成分(γ )、及び水素結合力成分(γ )が算出される。
(4)樹脂層表面の組成の分析方法GCIB-TOF-SIMS(GCIB:ガスクラスターイオンビーム、TOF-SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析法)を用いて、積層フィルムの樹脂層表面の組成を分析した。測定条件は、下記の通りであった。
<スパッタリング条件>
イオン源:アルゴンガスクラスターイオンビーム
<検出条件>
1次イオン:Bi3++(25keV)
2次イオン極性:Negative
質量範囲:m/z 0~1000
測定範囲:200×200μm
最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度をK、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメント(SiCH フラグメントイオン(M/Z=43))のピーク強度をPとし、その比P/Kを算出した。P/K<0.01の場合、樹脂層は実質的にシリコーン化合物を含んでいないと判断した。
(5)樹脂層の厚み
積層フィルムをRuO及び/またはOsOを用いて染色した。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得た。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万~100万倍で観察し、断面写真を得た。その10点(10個)のサンプルの樹脂層厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層厚みとした。
(6)初期エポキシ樹脂剥離力
初期エポキシ樹脂剥離力については、下記組成に混合したエポキシ樹脂を、アプリケータを用いて最終厚み40μmとなるように本発明の積層フィルムの樹脂層上に塗布した後、熱風オーブンで100℃×5分乾燥を行い、エポキシ樹脂積層シートを形成した。該エポキシ樹脂積層シートのエポキシ樹脂上に、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を支持体として貼合し、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を初期エポキシ樹脂剥離力とした(すなわち、[初期エポキシ樹脂剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
以下の評価を行った。○を良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
○:初期エポキシ樹脂剥離力8.5N/50mm以上
△:初期エポキシ樹脂剥離力2.0N/50mm以上8.5N/50mm未満
×:初期エポキシ樹脂剥離力2.0N/50mm未満。
(7)加熱後エポキシ樹脂剥離力
加熱後エポキシ樹脂剥離力については、以下の通り測定した。「(6)初期エポキシ樹脂剥離力」項に記載のエポキシ樹脂積層シートを、さらに、熱風オーブンで150℃×30分加熱処理を行い、加熱後エポキシ樹脂積層シートを形成した。該加熱後エポキシ樹脂積層シートのエポキシ樹脂上に、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を支持体として貼合し、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を加熱後エポキシ樹脂剥離力とした(すなわち、[加熱後エポキシ樹脂剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(8)加熱後エポキシ樹脂剥離性評価
「(6)初期エポキシ樹脂剥離力」「(7)加熱後エポキシ樹脂剥離力」の項で算出した剥離力から、下記式にて加熱前後のエポキシ樹脂剥離力差(Δ剥離力)を算出し、以下の評価を行った。○以上のものを良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
[Δ剥離力(N/50mm)]=初期エポキシ樹脂剥離力―加熱後エポキシ樹脂剥離力
○:Δ剥離力7.0N/50mm以上10.0N/50mm以下
△:Δ剥離力1.0N/50mm以上7.0N/50mm未満
×:Δ剥離力1.0N/50mm未満、もしくは、Δ剥離力10.0N/50mm以上。
(9)エポキシ樹脂塗布性
「(6)初期エポキシ樹脂剥離力」の項で示した組成のエポキシ樹脂を、アプリケータを用いて3種類の最終厚み(40μm、10μm、1μm)で本発明の積層フィルムの樹脂層上に塗布した後、熱風オーブンで100℃×5分乾燥を行い、エポキシ樹脂積層フィルムを形成した。該エポキシ樹脂積層フィルムのハジキの有無について、目視評価を行った。○以上のものをスラリー塗布性が良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。なお一般に、エポキシ樹脂の塗布厚みを薄くするほど、ハジキが発生しやすくなる傾向がある。
◎:いずれの塗布厚みでもハジキが見られない。
○:塗布厚み40μm、10μmではハジキが見られないが、1μmではハジキが見られる。
△:塗布厚み40μmではハジキが見られないが、10μm、1μmではハジキが見られる。
×:すべての塗布厚みにおいてハジキが見られる。
(10)原子間力顕微鏡(AFM)による弾性率の測定
樹脂層の表面の弾性率測定は、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施した。得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
具体的にはまず積層フィルムの測定面が上面に来るように両面テープを用いて試料台に固定した。次いでPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT Modulusチャンネルのデータを樹脂層の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 5(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)。
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値を樹脂層の弾性率とした。
(11)静止摩擦係数μsの測定
静止摩擦係数μsは、静摩擦係数測定機(HEIDON社製)を用いて測定した。測定の際、積層フィルムを200mm×100mmに切り出したサンプルを、測定機の上昇板側に設置した。次に、積層フィルムを75mm×35mmに切り出したサンプルを、測定機の平面圧子側に設置した。この際、積層フィルムの樹脂層面同士が接触するようにして静止摩擦係数μsを測定した。
(12)平均突起個数の測定
突起高さが25nm以上である突起の平均突起個数はAFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、ScanAsystモードにて測定を実施した。得られた表面粗さ像から付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、特定高さの突起を抽出した。
具体的にはまず積層フィルムの測定面が上面に来るように両面テープを用いて試料台に固定した。次いでScanAsystモードのマニュアルに従い、サンプルの表面形状の測定を実施した。測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 10(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 20(μm/s)
次いで得られたHeightSensorチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析した。まずFlattenにてFlatten Order:3rdの条件で平滑化処理を施した。次いでBearing Analysisを使用して突起部分の抽出を実施した。具体的には、Bearing Depthが25nmとなるようにBearingAreaの閾値(Threshhold)を設定し、突起高さ25nm以上のドメインを選択した。次いで選ばれた領域の個数を数え、1μmあたりの個数を求めた。同様の測定を5回繰り返し、その平均値を突起高さが25nm以上の平均突起個数(個/μm)として求めた。
(13)積層フィルムの滑り性の評価
積層フィルムを5cm×10cmに切り取り、10cm×10cmのガラス板上の中央に、積層フィルムの樹脂層面が上になるように、テープで固定した。次に、同じ積層フィルムを5cm×5cmに切り取り、積層フィルムの樹脂層面同士が接するように、ガラス板上の積層フィルムの上に重ね合わせた。更にその上から重さ2kgの重りを乗せた。続いてガラス板の一端を徐々に持ち上げ、フィルムが滑り出す角度を評価した。以下の5段階に分類分けを実施し、3以上を搬送性合格と判定した。
1:0度を超えて5度以下の間で滑り出す。もしくは、45度を超えても全く滑らない。
2:30度を超えて45度以下の間で滑り出す。
3:5度を超えて10度以下の間で滑り出す。
4:10度を超えて15度以下の間で滑り出す。
5:15度を超えて30度以下の間で滑り出す。
(14)積層フィルムの熱収縮率
積層フィルムを幅10mm、長さ150mmに、フィルムの幅方向が長さ方向になるように切り出し、フィルム表面に、測定長役100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL0とする。この積層フィルムを180℃のオーブン中に15分間、3.0gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定し、これをL1とし、下式より熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(L0-L1)/L0}×100
フィルムの幅方向を長さ方向に切り出したものについて3か所の測定を行い、平均値を求めた。
(15)浮き抑制性
浮き抑制性については、下記組成に混合したエポキシ樹脂を、アプリケータを用いて最終厚み40μmとなるように本発明の積層フィルムの樹脂層上に塗布した後、熱風オーブンで100℃×5分乾燥を行い、エポキシ樹脂積層シートを形成した。該エポキシ樹脂積層シートの10cm角のシートについて、60℃×90%RHの雰囲気下に100時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後にエポキシ樹脂積層シートの状態を目視で観察して浮き抑制性を評価した。
<浮き抑制性評価の基準>
◎: 浮き、剥離または気泡の発生が全く無し。
〇: 浮き、剥離または気泡の発生が端部に数か所有り。
△: 浮き、剥離または気泡の発生が中央部に有り。
×: 浮き、剥離または気泡の発生が全面に有り。
以下の評価を行った。○を良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
なお、上記の評価において、フィルムの長手方向、幅方向が不明な場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を幅方向、幅方向に直行する方向を長手方向とみなす。
(16)樹脂層の膜厚の評価方法
積層フィルムについて、OsO染色超薄膜切片方法により試料を作製した。得られた試料の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、積層フィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。20点の樹脂層厚みを測定し、その平均値を樹脂層の膜厚(nm)とした。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H-7100FA型)。
(17)エポキシ樹脂剥離時の転写抑制性
エポキシ樹脂剥離時の転写抑制性については、積層フィルムの樹脂層の膜厚の減少率によって評価した。初期の積層フィルムの樹脂層の膜厚をd0(nm)、「(7)加熱後エポキシ樹脂剥離力」を評価したあとの積層フィルムの樹脂層の膜厚をd1(nm)とし、下式より減少率を算出した。
樹脂層の膜厚の減少率(%)={(d0-d1)/d0}×100
以下の4段階に分類分けを実施し、1および2を転写抑制性合格と判定した。
1:膜厚の減少率が、10%以下。
2:膜厚の減少率が、10%を超えて20%以下。
3:膜厚の減少率が、20%を超えて50%以下。
4:膜厚の減少率が、50%を超える。
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明の積層フィルムを詳細に説明するが、本発明
はこれら実施例のみに限定されるものではない。但し、以下、実施例1~32、35、36、40~44は参考例とする。
(実施例1)
・離型剤(A):長鎖アルキル基含有樹脂(a―1)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕することで、長鎖アルキル基含有樹脂(a―1:ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数18のアルキル基を有する)を得た。これを水で希釈し、20質量%に調整した。
・樹脂または化合物(B):アクリル樹脂(b-1)
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN-3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=94/1/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)~(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂(b-1)を得た。
・塗料組成物:
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)を固形分質量比で(A)/(B)=15/85となるように混合した。さらに、ポリエステルフィルムへの塗布性を向上するために、フッ素系界面活性剤(互応化学工業(株)製“プラスコート”RY-2)を、上記の混合した塗料組成物全体100質量部に対して0.1質量部になるように添加した。
・ポリエステルフィルム:
2種類の粒子(1次粒径0.3μmのシリカ粒子を4質量%、1次粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を2質量%)を含有したPETペレット(極限粘度0.64dl/g)を十分に真空乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.1倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
・積層フィルム
一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電処理を施した後、表1に示す塗料組成物をワイヤーバーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。続いて、塗料組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90~100℃にし、塗料組成物の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.6倍延伸し、続いて240℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、さらに同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μm、樹脂層の厚みは70nmであった。
得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性が良好であり、初期エポキシ樹脂剥離力は重剥離、加熱後エポキシ樹脂剥離力は軽剥離であり、加熱による剥離特性も良好であった。
(実施例2)
樹脂または化合物(B)として下記のメラミン樹脂(b-2)を用い、塗料組成物の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・樹脂または化合物(B):メラミン樹脂(b-2:メチロール化メラミン)
(株)三和ケミカル製、“ニカラック”(登録商標)MW-035(固形分濃度70質量%、溶媒:水)を用いた。
(実施例3~7)
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例8~12)
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例2と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例13)
樹脂および化合物(B)として下記のオキサゾリン化合物(b-3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。・オキサゾリン化合物(b-3):(株)日本触媒製、“エポクロス”(登録商標)WS-500(固形分濃度40質量%、溶媒:水)
(実施例14)
樹脂および化合物(B)として下記のカルボジイミド化合物(b-4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・カルボジイミド化合物(b-4):(株)日清紡ケミカル(株)製、“カルボジライト”(登録商標)V-04(固形分濃度40質量%、溶媒:水)
(実施例15)
樹脂および化合物(B)として下記のエポキシ樹脂(b-5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・エポキシ樹脂(b-5):ナガセケムテック(株)製“デナコール”(登録商標)EX-512(固形分濃度50質量%、溶媒:水))を用いた。
(実施例16)
樹脂および化合物(B)として下記のポリエステル樹脂(b-6)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・ポリエステル樹脂(b-6):下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂の水分散体を調整した。
<共重合成分>
(ジカルボン酸成分)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル:88モル%
5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム:12モル%
(ジオール成分)
ビスフェノールS1モルに対してエチレンオキサイド2モルを付加した化合物:86モル%
1,3-プロパンジオール:14モル%
(実施例17)
樹脂および化合物(B)として下記のウレタン樹脂(b-7)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・ウレタン樹脂(b-7):DIC(株)製“ハイドラン”(登録商標)AP-40(固形分濃度40質量%)を用いた。
(実施例18)
樹脂および化合物(B)として下記のアクリル樹脂(b-8)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・樹脂または化合物(B):アクリル樹脂(b-8)
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN-3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=90/5/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)~(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂(b-8)を得た。
(実施例19)
樹脂および化合物(B)としてアクリル樹脂(b-1)、メラミン樹脂(b-2)を用い、塗料組成物の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例20)
樹脂および化合物(B)としてアクリル樹脂(b-1)、オキサゾリン化合物(b-3)を用い、塗料組成物の比率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例21)
離型剤(A)として下記のオレフィン系樹脂(a―2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・オレフィン系樹脂(a-2):三井化学(株)製、“ケミパール”(登録商標)XEP800H。
(実施例22~23)
樹脂層の厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例24~25)
樹脂層の厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例2と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例26)
離型剤(A)として下記のシリコーン系樹脂(a―3)を用い、樹脂及び化合物(B)としてメラミン樹脂(b-2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに劣るが良好な範囲であった。
・シリコーン系樹脂(a―3):
信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X-62-7655と信越化学工業(株)製のシリコーン成分を含む塗剤、型番X-62-7622と信越化学工業(株)製の触媒、型番CAT―7605を質量比95:5:1で混合した。
(実施例27)
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例24と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例25と比べると、エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに劣るが良好な範囲であった。
(実施例28)
離型剤(A)として下記の長鎖アルキル基含有樹脂(a―4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2,3に示す。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
・長鎖アルキル基含有樹脂(a―4)
オクタデシルイソシアネートの代わりにドデシルイソシアネートを使用した以外は、長鎖アルキル基含有樹脂(a-1)と同様の製法で合成し、長鎖アルキル基含有樹脂(a―4:ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数12のアルキル基を有する)を得た。
(実施例29)
離型剤(A)として下記の長鎖アルキル基含有樹脂(a―5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2,3に示す。実施例1と比べると樹脂層の水接触角が小さく、スラリー剥離力が大きかったが、セラミックスラリーの塗布性、剥離性ともに良好であった。
・長鎖アルキル基含有樹脂(a―5)
オクタデシルイソシアネートの代わりにオクチルイソシアネートを使用した以外は、長鎖アルキル基含有樹脂(a-1)と同様の製法で合成し、長鎖アルキル基含有樹脂(a―5:ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数8のアルキル基を有する)を得た。
(実施例30)
樹脂または化合物(B)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例31)
まず、実施例1のポリエステルフィルムの製法において、一軸延伸フィルム(Bフィルム)の時点で塗料組成物の塗布を行わない以外は、実施例1と同様にして、結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得た。次に、このポリエステルフィルムの上に、表1に示す塗料組成物をバーコーターを用いて塗布厚み約2μmで塗布した。その後、100℃オーブンで20秒間乾燥させ、次いで240℃オーブンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性は劣るが良好な範囲であり、エポキシ樹脂の塗布性も良好であった。
(実施例32)
まず、実施例2のポリエステルフィルムの製法において、一軸延伸フィルム(Bフィルム)の時点で塗料組成物の塗布を行わない以外は、実施例2と同様にして、結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得た。次に、このポリエステルフィルムの上に、表1に示す塗料組成物をバーコーターを用いて塗布厚み約2μmで塗布した。その後、100℃オーブンで20秒間乾燥させ、次いで240℃オーブンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例2と比べると、エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに劣るが良好な範囲であった。
(実施例33)
粒子(C)として(C-1)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・粒子(C-1):触媒化成(株)製“スフェリカ”(登録商標)140(シリカ粒子、粒子径140nm)
(実施例34)
粒子(C)として(C-1)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
(実施例35)
粒子(C)として(C-1)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
(実施例36)
粒子(C)として(C-2)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・粒子(C-2):日本触媒(株)製“シーホスター”(登録商標)KEW-30(シリカ粒子、粒子径500nm)
(実施例37)
粒子(C)として(C-2)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
(実施例38)
粒子(C)として(C-3)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・粒子(C-3):シーアイ化成(株)製“NanoTek”(TiOスラリー、数平均粒子径36nm)
(実施例39)
粒子(C)として(C-4)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・粒子(C-4):日産化学工業(株)製“ナノユース”(登録商標)ZR(ジルコニア粒子、数平均粒子径90nm)
(実施例40)
粒子(C)として(C-5)を用い、塗料組成物の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。エポキシ樹脂の塗布性、加熱による剥離特性ともに良好であった。
・粒子(C-5):堺化学工業(株)製“SZR-CW”(酸化ジルコニウム粒子、数平均粒子径20nm)
(実施例41)
幅方向の弛緩処理を2%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると熱収縮率が1.0%と大きくなり、浮き抑制性が更に優れるものであった。
(実施例42)
幅方向の弛緩処理を1%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると熱収縮率が1.3%と大きくなり、浮き抑制性が更に優れるものであった。
(実施例43)
幅方向の弛緩処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると熱収縮率が4.3%と大きくなり、浮き抑制性がわずかに劣るものであった。
(実施例44)
幅方向の弛緩処理を6%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると熱収縮率が0.3%と小さくなり、浮き抑制性がわずかに劣るものであった。
(比較例1~2)
樹脂層の厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、加熱による剥離特性が不良であった。
(比較例3~4)
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、初期エポキシ樹脂剥離性も小さすぎて不良であり、加熱による剥離特性も不良であった。
(比較例5)
離型剤(A)として下記の長鎖アルキルアクリレート化合物(a―6)を用いた以外は、実施例27と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例27と比べると、初期エポキシ樹脂剥離性が大きすぎて不良であり、加熱による剥離特性も不良であった。
・長鎖アルキルアクリレート化合物(a―6):
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた温度調整可能な反応器中に、トルエン500質量部、ステアリルメタクリレート(アルキル鎖の炭素数18)80質量部、メタクリル酸15質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、アゾビスイソブチロニトリル1部を滴下器に入れ、反応温度85℃にて4時間で滴下して重合反応を行った。その後、同温度で2時間熟成して反応を完了させ得られた化合物を、イソプロピルアルコール5質量%とn-ブチルセロソルブ5質量%を含む水に溶解させ、長鎖アルキルアクリレート化合物(a-6)を含む溶液を得た。
(比較例6)
離型剤(A)として下記の長鎖アルキルアクリレート化合物(a―6)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、初期エポキシ樹脂剥離性も大きすぎて不良であり、加熱による剥離特性も不良であった。
(比較例7)
離型剤(A)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例1と比べると、水接触角が95°より小さく、加熱による剥離特性が不良であった。
(比較例8)
離型剤(A)、樹脂または化合物(B)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例24と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2、3に示す。実施例24と比べると、水接触角が110°より大きく、エポキシ樹脂の塗布性が不良であり、わらに、加熱による剥離特性も不良であった。
Figure 0007574533000001
Figure 0007574533000002
Figure 0007574533000003
本発明の積層フィルムは、エポキシ樹脂に代表される表面層の塗布性、及び加熱温度による剥離特性に優れ、積層型セラミック電子部品、特に層間絶縁材料の製造工程用の工程フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリエステルフィルムと、樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層が少なくとも一方の表層にあり、前記樹脂層の水接触角が95°以上110°以下であり、前記積層フィルムの初期テープ剥離力が0.5N/50mm以上4.0N/50mm以下であり、かつ、100℃30分加熱後テープ剥離力が8.0N/50mm以上14.0N/50mm以下であり、前記樹脂層が、離型剤(A)と、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂または化合物(B)を含有する塗料組成物から形成され、前記離型剤(A)が、炭素数12以上25以下のアルキル基を有する樹脂を含み、前記塗料組成物における、前記離型剤(A)と前記樹脂または化合物(B)の質量比が、離型剤(A)/樹脂または化合物(B)=10/90~70/30の範囲であり、前記樹脂層の静止摩擦係数μsが0.23以上0.30以下であり、前記樹脂層における粒子成分の含有量が、樹脂層全体に対して3質量%以上7質量%以下であり、前記樹脂層の表面に親水性樹脂を含む層を設けた後、前記親水性樹脂を含む層を剥離する用途に用いる、積層フィルム。
  2. 飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.01未満である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記積層フィルムの樹脂層の表面側から原子間力顕微鏡(AFM)で押し込み深さ10nmで測定した弾性率P(MPa)が、200≦P≦2000である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記樹脂層の突起高さが25nm以上の平均突起個数が0.1個/μm以上2.0個/μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記炭素数12以上25以下のアルキル基を有する樹脂が、ポリメチレンの主鎖に、炭素数12以上25以下のアルキル基の側鎖を有する樹脂である請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記樹脂層の膜厚が50nm以上200nm未満である請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記樹脂層の表面自由エネルギーが20mN/m以上30mN/m以下である請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 前記樹脂層の表面に表面層を設けた後、80~120℃で加熱した後、さらに150~180℃で加熱した後、当該表面層を剥離する用途に用いる請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、離型剤(A)を含有する塗料組成物を塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、該ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる工程を含む請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
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