以下、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において対応する要素には同一の符号を付す。
例えば、安静な状態でセンサにより計測された対象者の体温、心拍、および血圧などのバイタルデータを、正常値や目安となる基準値と比較することで、対象者のその日の体調不良などを検出することができる。例えば、人間の体温は平常時には36℃台であることが多く、対象者の体温が37℃台の後半を超えた場合、異常と判定して体調不良を検出することができる。それにより、例えば、体調不良が検出された対象者には、その日の業務を取りやめさせるなどの対策をとることができる。
しかしながら、例えば、或る時点で対象者に不調が見られなかったとしても、その後の対象者の行動により、疲労度が高まったり、集中力が低下したりして、ヒヤリ・ハットなどの危難に直結し得る事象を引き起こす可能性が高まった異常な状態になることがある。
一例として、対象者のその日の作業量が多かったり、重い荷物を運搬していたりなどで作業負荷が高まった場合が挙げられる。また、別な例として、高齢者などの見守り対象の対象者が、急ぎの用事などで普段よりも無理をして行動している場合などが挙げられる。
例えば、この様な場合に、対象者が危難に直結し得る事象を引き起こす可能性が高まった異常な状態になることがある。なお、実施形態において異常とは、対象者が正常に行動している状態では発生しない外れた状態を指してよい。異常は、例えば、必ずしも対象者の不調などを指さなくてもよく、通常の作業では意図されていない動作および状態を含んでよい。異常は、例えば、スリップ、転倒しそうになる、衝突しそうになり回避する、バランスを崩す、冷や汗をかく(精神性発汗)などのヒヤリ・ハットの事象を含む。また、一実施形態においては、異常は、例えば、転倒、落下、衝突、物を落とす(手放す)などのその他の事象を含んでもよい。
また、一方で、対象者の作業内容および作業負荷などに応じてセンサの計測値のばらつきの範囲も変化し得る。そのため、対象者が作業を正常に遂行していると判定すべきセンサの計測値の範囲である正常範囲も、対象者の作業内容および作業負荷などに応じて変わることがある。更に、こうした正常範囲は、各個人の体力および体質などによっても変わることがあり、例えば、同じ負荷を受けた場合にも対象者によって正常範囲が異なることがある。例えば、日常的に運動している人と、あまり運動していない人とでは、同じ作業であっても感じる負荷および体への影響が異なり、それによりセンサの計測値の正常範囲に違いが生じる。或いは、同じ人であっても、日ごとの体調の差異に起因して、同じ作業であっても感じる負荷および体への影響が異なり、それによりセンサの計測値の正常範囲に違いが生じることがある。
そのため、例えば、センサの計測値に対して一律の固定的な閾値などを設定し、対象者の状態の異常を判定しようとしても、センサの計測値の正常範囲が人および状況に応じて異なるため、異常の検出が難しかったり、検出精度が低下したりすることがある。そのため、作業負荷に応じて対象者の状態が変化しても異常を適切に検出することのできる技術の提供が望まれている。
以下で述べる実施形態では、例えば、対象者が正常に作業を行っている状態で計測されるセンサの計測値の範囲を表す正常範囲を設定する。そして、センサの計測値が正常範囲を外れる値を示した場合に、対象者の異常を検出する。
例えば、歩行、走る、荷物を運ぶなど、立って操作するなどといった人の作業は、周期的な運動を含むことが多い。そのため、例えば、対象者が作業を正常に実行している状態で、センサで対象者の状態に関する情報を計測すると周期的に変動する、または一定の大きさに収まる計測値を取得することができる。一方で、例えば、スリップおよびバランスを崩すといった異常は突発的な動きを含むことが多く、センサの計測値に急激な変化を生じさせることがしばしばある。そのため、対象者が正常に作業している状態の計測値が収まる範囲として正常範囲を定めて、正常範囲を外れた場合に対象者の異常を検出することが可能である。
また、実施形態では、例えば、異常が検出されていない期間のセンサの計測値のばらつきの範囲に基づいて、対象者の状態に応じた範囲に正常範囲を更新する。例えば、センサの計測値をリアルタイムで判定して対象者の異常を検出する場合、現在から過去の数分から数十分の期間に計測されたセンサの計測値から異常を含まない期間の計測値を取得し、その計測値に基づいて正常範囲が設定または更新されてよい。それにより、例えば、異常の判定対象の期間の直前の作業者の作業負荷および個人の体質などによる体調の変化の影響も考慮して正常範囲を設定または更新することができる。その結果、作業負荷に応じて対象者の状態が変化しても異常を適切に検出することができる。
なお、実施形態において正常範囲は、対象者の行動状態に応じて設定されてよい。行動状態とは、例えば、歩行、走る、荷物を運ぶ、立って操作する、階段を上る、階段を降りるなどの対象者の行動の状態であってよい。行動状態は、例えば、作業者の基本的な動作、および作業内容などに応じて他の行動状態と区別されてよい。対象者は、作業中に様々な行動状態になることがあり、行動状態によってセンサの計測値の正常範囲も変わることがある。そのため、実施形態ではセンサの計測値に基づいて、複数の行動状態の中から異常の判定対象の期間における対象者の行動状態を特定し、特定された行動状態と対応する正常範囲を用いて対象者の異常を判定してよい。このように行動状態と対応する正常範囲を用いて対象者の異常を判定することで、対象者が作業中に様々な行動状態になる場合にも、高い精度で異常を検出することができる。以下、実施形態を更に詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る検出システム100を例示する図である。検出システム100は、例えば、センサ101と、情報処理装置102とを含む。センサ101および情報処理装置102は、例えば、無線通信および通信ネットワークなどを介して接続されてよい。情報処理装置102は、センサ101から、センサ101で計測された計測データを受信してよい。或いは、情報処理装置102は、例えば、他の装置を介してセンサ101で計測された計測データを取得してもよい。
センサ101は、例えば、バイタルデータ、運動、位置、および姿勢などの対象者110の状態に関する情報を計測する。例えば、センサ101は、慣性計測装置(IMU)、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、皮膚電気活動センサ、心拍計、血圧計、GPS(Global Positioning System)、屋内位置情報取得端末、および傾斜センサなどを含む。また、センサ101は、例えば、対象者110の身体に取り付けられてよく、また、例えば、計測対象とするデータに応じて対象者110の異なる位置に取り付けられてよい。
例えば、図1では、対象者110の腕、腰、および足のそれぞれにセンサ101が取り付けられている。一例では、腰に取り付けられているセンサ101は、加速度センサ、傾斜センサ、およびGPSなどを含む。例えば、加速度センサを、体の中心付近の腰などに取り付けることで、腕および足の動きといった局所的な体の部位の動きの影響を抑えて体の中心の動きを計測することができる。また、腕に取り付けられたセンサ101は、例えば、心拍計、および血圧計などを含む。センサ101は、例えば、手のひら、および指などに取り付けられてもよく、センサ101は、例えば、皮膚電気活動センサを含んでもよい。皮膚電気活動センサで対象者110の皮膚電気活動の変化を計測することで、対象者110の冷や汗(精神性発汗)などを検出し、ヒヤリ・ハットの事象の発生検出に利用することができる。足に取り付けられたセンサ101は、例えば、圧力センサを含み、足底の圧力を計測する。なお、センサ101は、図1に示すように、対象者110に複数取り付けられてもよいし、別の例では、対象者110に1つのセンサ101が取り付けられてもよい。また、センサ101は、例えば、活動量計、スマートウォッチ、スマートフォン、モバイル端末などの形態で、対象者110に保持されてもよく、或いは、対象者110に埋め込まれていてもよい。
また、センサ101は、例えば、撮像装置であってもよい。例えば、撮像装置で対象者110の作業中の動作を撮影し、得られた映像を解析することで、対象者110の状態を検出することができる。この場合、例えば、映像を解析して得られた解析データをセンサの計測値として用いることができる。一例として、映像から対象者110の頭部などの体の部位の位置を検出し、検出した部位の位置を追跡してセンサの計測値として用いることができる。
また、情報処理装置102は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、モバイルPC、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話機、またはネットワーク上のサーバコンピュータなどであってよい。情報処理装置102は、例えば、センサ101から収集した計測データに基づいて、対象者110の状態の異常を検出する処理を実行する。なお、図1の例では、検出システム100が、センサ101および情報処理装置102を含む例が示されているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、別の実施形態ではセンサ101および情報処理装置102は、統合された1つの装置であってもよい。
図2は、実施形態に係る情報処理装置102の機能ブロック構成を例示する図である。情報処理装置102は、例えば、制御部201、記憶部202、および通信部203を含む。制御部201は、例えば検出部211、更新部212、特定部213、および通知部214などを含み、またその他の機能部を含んでもよい。情報処理装置102の記憶部202は、例えば、後述する判定情報300、範囲情報600、履歴情報800、および通知情報900などの情報を記憶している。通信部203は、例えば、制御部201の指示に従ってセンサ101などの他の装置と通信する。これらの各部の詳細および記憶部202に格納されている情報の詳細については後述する。
図3は、実施形態に係る判定情報300を例示する図である。図3の例では判定情報300には、行動状態と対応づけて、作業者の行動状態を判定するためのセンサ101の計測値に対する判定条件が登録されている。なお、判定条件は、例えば、センサごとに設定されていてよい。
例えば、図3の判定情報300では、行動状態として歩行、走る、階段歩行、荷物運搬、手を挙げた作業が含まれている。また、図3の判定情報300では、加速度センサおよび気圧センサに対して行動状態を判定するための判定条件が登録されている。
例えば、図3において行動状態:歩行を検出するための判定条件を参照すると、加速度センサの計測値が第1の閾値未満である条件が登録されている。この場合、例えば、情報処理装置102の制御部201は、加速度センサの計測値が第1の閾値未満の大きさである場合に、行動状態を歩行と判定してよい。
図4は、実施形態に係る対象者110の行動状態と対応するセンサ101の計測値を例示する図である。図4(a)および図4(b)は、対象者110に取り付けられた3軸の加速度センサにより計測される或る軸方向での加速度を例示している。例えば、対象者110が或る行動状態にある場合、その行動状態における動きの周期性および動きの速さの変化に応じて加速度が生じる。
図4(a)は、対象者110が歩行している状況で計測された加速度の計測値である。また、図4(b)は、対象者110が走っている状況で計測された加速度の計測値である。例えば、歩行の行動状態は、走る行動状態と比較して、ゆっくりとした運動である。そのため、例えば、加速度の変動の周期の間隔を比較すると、走る場合と比較して歩行では周期が長くなる傾向が見られることがある。また、例えば、歩行の場合、走る場合よりも運動の速度も遅くなるため、加速度の変化量も小さくなる傾向がある。そのため、例えば、判定情報300において歩行の行動状態に対して設定されている第1の閾値を用いて対象者110の歩行の行動状態と、走る行動状態とを識別することが可能である。
図4(a)および図4(b)には、歩行の行動状態を判定するための第1の閾値の大きさの範囲が、判定条件として示されている。図4(a)の歩行の行動状態では、対象者110の加速度の大きさが第1の閾値の大きさの範囲に収まっており、対象者110の加速度の大きさが歩行の第1の閾値未満の判定条件を満たすため、制御部201は、対象者110の行動状態を歩行と判定することができる。
一方、図4(b)の走る行動状態では、対象者110の加速度の大きさが第1の閾値の大きさの範囲を超えており、対象者110の加速度の大きさが歩行の第1の閾値未満の判定条件を満たさない。そのため、制御部201は、対象者110の行動状態は歩行ではないと判定することができる。また、例えば、この場合に、制御部201は、対象者110の加速度の大きさが判定情報300に示す第2の閾値の大きさ以上の判定条件を満たせば、対象者110の行動状態が走るであると判定することができる。
この様に、判定情報300に登録されているセンサ101の計測値に対する閾値および判定範囲などを用いた判定条件に基づいて、対象者110の行動状態を判定することができる。
なお、ここでは、加速度の大きさに対して閾値を設定し、行動状態を判定する例を示しているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、別の実施形態では、加速度の変動の周期に対して閾値などの判定条件が設定されてもよい。例えば、対象者110の行動状態が周期的な運動である場合、センサ101の計測値は、周期的に変化する。また、この場合に、周期の長さは、例えば、その行動状態に応じた長さとなり得る。そのため、例えば、制御部201は、対象者110の動きの周期に基づいて対象者110の行動状態を判定してもよい。例えば、歩行状態と走る状態とでは運動の周期が異なることが推定されるため、それぞれの行動状態を判定するための閾値および判定範囲などを設定することで、センサ101の計測値の変動の周期に基づいて行動状態を判定することが可能である。また、別の実施形態では制御部201は、所定の単位時間当たりの計測値の信号強度を積分し、行動状態の判定に用いてもよい。更には、制御部201は、例えば、加速度の大きさと、加速度の変動の周期などの複数の判定条件を組合せて対象者の行動状態を判定してもよい。
また、制御部201は、例えば、センサ101の計測値を処理して得られた変換データに基づいて対象者110の行動状態を判定してもよい。一例として、制御部201は、所定期間の加速度センサの計測値をフーリエ変換して周波数スペクトルを生成し、周波数スペクトルのピークの位置に基づいて対象者110の行動状態を判定してもよい。図4(c)は、加速度センサの或る軸方向の計測値をフーリエ変換した周波数スペクトルを例示している。そして、図4(c)に示すように、例えば、行動状態が歩行であれば2Hzの周辺に歩行に特徴的な最大のピークが表れるとする。この場合、2Hzの前後の所定範囲に最大のピークがあれば歩行と判定するといった判定条件を設定することで、周波数スペクトルを用いて歩行を検出することができる。同様に、例えば、行動状態ごとに、周波数スペクトルのピークに対して判定条件を設定することで、周波数スペクトルを用いて対象者110の行動状態を判定することが可能である。なお、制御部201は、周波数スペクトルの1つのピークに基づいて対象者110の行動状態を判定してもよいし、複数のピークのパターンに基づいて対象者110の行動状態を判定してもよい。
更には、対象者110の行動状態の判定は、例えば、複数のセンサ101の計測値に基づいて実行されてもよい。例えば、図3では判定情報300は、センサ2として気圧センサの判定条件を含んでいる。気圧センサの計測値は、例えば、歩行および走るなどのように、高度があまり変化しない行動状態であれば、所定時間において所定の誤差範囲内でほぼ一定の値を示す。一方、階段歩行などのように高度が変化する行動状態である場合、気圧センサの計測値は上昇または下降に応じて値が変化する。
そして、例えば、歩行と、階段歩行とでは加速度の変化が類似しているとする。即ち、例えば、図3の判定情報300においてセンサ1(加速度センサ)に対する第1の閾値と第3の閾値とが近しい値となっており、加速度センサの計測値に基づいて、歩行と階段歩行とを正確に判定することが難しいとする。この場合にも、制御部201は、例えば、気圧センサの値が、ほとんど変動していなければ歩行であり、一方、気圧センサの値が上昇または下降方向に変動していれば階段歩行であると判定することができる。この様に、一実施形態によれば、制御部201は、複数のセンサ101の計測値に基づいて、対象者110の行動状態を判定してもよい。複数のセンサの計測値に対する判定を組み合わせることで、対象者110の行動状態の判定精度を向上させることができる。なお、行動状態の判定では、例えば、手を挙げた動作など、手を振る動作などと比較して周期性が見られないことも一つの特徴として判定が実行されてもよい。
以上に述べたように、1つまたは複数のセンサ101の計測値に対して、行動状態に応じた特有の特徴を検出するための判定条件を設定し、判定情報300に登録する。それにより、制御部201は、判定情報300に基づいて、センサ101の計測値から行動状態を判定することが可能である。判定条件は、例えば、閾値、変化の方向、範囲、周期、並びに、周波数領域におけるピーク位置、およびピークのパターンなどを用いた条件を含んでよい。
続いて、実施形態に係る異常検出処理の例を説明する。
図5は、実施形態に係る異常検出処理の動作フローを例示する図である。例えば、制御部201は、異常検出処理の実行指示が入力されると、図5の動作フローを開始してよい。
ステップ501(以降、ステップを“S”と記載し、例えば、S501と表記する)において情報処理装置102の制御部201は、例えば、センサ101で計測された計測値を取得する。例えば、制御部201は、センサ101から計測値を受信してもよいし、記憶部202に記憶されているセンサ101の計測値を読み出してもよい。
S502において制御部201は、センサ101の計測値に基づいて、対象者110の行動状態を特定する。例えば、制御部201は、行動状態の判定対象期間のセンサ101の計測値が、判定情報300のいずれかの行動状態の判定条件を満たすか否かにより、判定対象期間の行動状態を特定してよい。なお、行動状態の判定対象期間は、例えば、対象者110の異常検出を行う対象とする期間を含んでよく、別の例では、異常検出を行う対象とする期間の前の所定期間内に含まれる期間であってよい。
S503において制御部201は、行動状態が変化したか否かを判定する。例えば、制御部201は、今回のS502の処理の実行で特定された行動状態と、前回のS502の処理の実行で特定された行動状態とが異なっている場合に、S503においてYESと判定してよい。一方、例えば、今回のS502の処理の実行で特定された行動状態と、前回のS502の処理の実行で特定された行動状態とが同じである場合、制御部201は、S503においてNOと判定してよい。なお、図5の動作フローにおいてS503の処理を最初に実行する場合は前の行動状態が未だ無く、この場合、制御部201は、S503でYESと判定してよい。そして、行動状態が変化していない場合(S503がNO)、フローはS505に進む。一方、行動状態が変化した場合(S503がYES)、フローはS504に進む。
S504において制御部201は、範囲情報600に基づいて行動状態に応じた正常範囲を取得する。
図6は、実施形態に係る範囲情報600を例示する図である。範囲情報600には、例えば、行動状態と対応づけて、その行動状態におけるセンサの計測値の正常範囲が登録されている。正常範囲は、例えば、対応する行動状態において対象者が正常な状態にあると判定するセンサ101の計測値の範囲であってよい。範囲情報600の正常範囲には、例えば、対象者110が、その正常範囲と対応する行動状態にある場合に、計測値のばらつきの範囲が収まるように初期の範囲が設定されていてよい。また、後述するS508の正常範囲の更新により、センサ101の過去の異常を含まない計測値に基づいて、範囲情報600の正常範囲は更新されてよい。
そして、S504の処理では制御部201は、例えば、S502で特定された行動状態と対応する正常範囲を範囲情報600から取得する。例えば、S502において行動状態が歩行と判定された場合、制御部201は、範囲情報600から正常範囲:A1~A2を取得してよい。
続く、S505において制御部201は、取得した行動状態と対応する正常範囲を用いて異常の検出を実行する。例えば、制御部201は、異常検出を行う対象とする期間のセンサ101の計測値が正常範囲に収まる場合、正常と判定してよい。一方、制御部201は、異常検出を行う対象とする期間のセンサ101の計測値が正常範囲を外れる値を含む場合、異常と判定してよい。
図7は、実施形態に係る異常検出の一例を示す図である。図7(a)では、センサ101の計測値は、正常範囲内にあり、この場合、制御部201は、正常であると判定してよい。一方、図7(b)では、対象者110が転倒しそうになってバランスを崩した場合のセンサの計測値を例示しており、センサ101の計測値が大きく変動している。その結果、図7(b)では、センサ101の計測値が正常範囲を超えて変動しており、即ち、センサ101の計測値は、正常範囲を外れる値を含んでいる。一例では、制御部201は、このように異常の判定対象の期間のセンサ101の計測値が正常範囲を外れる値を含んでいる場合、異常と判定してよい。
S505において異常が検出されなかった場合(S505が正常)、フローはS508に進む。一方、S505において異常が検出された場合(S505が異常)、フローはS506に進む。
S506において制御部201は、異常を通知する。例えば、制御部201は、対象者110が保持するセンサ101に異常を通知してよく、センサ101は通知を受けると、通知を受けたことを示すアラームなどを出力して、対象者110に異常を通知してよい。別の実施形態では制御部201は、対象者110が保持するセンサ101に注意を喚起するメッセージなどを通知してよく、センサ101は通知を受けると、メッセージをセンサ101が備える表示装置の表示画面に表示させてよい。或いは、情報処理装置102の制御部201は、対象者110が保持するスマートフォンなどのその他の端末、または対象者110を管理する管理者もしくは周囲の者が利用する別のコンピュータに異常の通知を送信してもよい。
S507において制御部201は、検出した異常を記録する。例えば、制御部201は、検出した異常に関する情報を履歴情報800に登録してよい。
図8は、履歴情報800を例示する図である。図8の例では履歴情報800には、異常の検出日時が、異常が検出された行動状態と対応づけて登録されている。なお、履歴情報800は、一例では、対象者110ごとに生成されてよく、図8の例では、識別情報:001で識別される対象者に対する履歴情報800が示されている。
続いて、S508において制御部201は、例えば、異常な計測値を含まない所定期間の計測値に基づいて、正常範囲を更新し、フローはS501に戻る。異常な計測値を含まない計測値は、例えば、異常が検出された場合には異常が検出されたタイミングから前後の所定時間のデータを制御部201が除くことで取得されてよい。或いは、別の例では制御部201は、異常が検出されなかった所定期間の計測値を取得して、正常範囲の更新に用いてもよい。なお、所定期間の計測値は、例えば、所定数の計測値を含んでよく、制御部201は、所定数の計測値を正常範囲の更新に用いてよい。
そして、正常範囲の更新では制御部201は、例えば、異常な計測値を含まない所定期間の計測値に含まれる値の最大値と最小値との範囲を、計測値のばらつきの範囲として特定してよい。続いて、制御部201は、例えば、ばらつきの範囲を所定の条件で拡張して正常範囲を決定してよい。一例では、ばらつきの範囲を中心から110%~120%など所定の比率で拡張するように正常範囲を決定してよい。なお、別な例では、制御部201は、ばらつきの範囲を正常範囲として用いてもよい。そして、制御部201は、行動状態に対して新たに決定した正常範囲を用いて、範囲情報600の正常範囲を更新し、フローはS501に戻る。
なお、正常範囲の更新に用いる計測値を取得する所定期間は、一例では、図5の動作フローの次のS505の実行で異常の検出対象とする期間であってよい。或いは、別の例では、図5の動作フローの次のS505の実行で異常の検出対象とする期間の直前の期間などであってもよい。このように、例えば、異常の検出対象とする期間、またはその直前の期間の計測値を正常範囲の更新に用いることで、異常の検出対象とする期間の対象者110の状態および作業負荷などに応じて正常範囲を定めることができる。
以上で述べたように、図5の動作フローによれば制御部201は、異常を含まない所定期間のセンサ101の計測値に基づいて正常範囲を更新している。それにより、例えば、対象者110の状態および作業負荷などを考慮して正常範囲を設定し、異常の検出を実行することができる。
また、上述の実施形態では行動状態ごとに異なる正常範囲を用いている。それにより、行動状態に応じた異常の検出を実行することができ、異常の検出精度を向上させることができる。
従って、実施形態によれば作業負荷に応じて対象者の状態が変化しても異常を適切に検出することができる。
なお、上述の実施形態では、加速度センサを例に説明を行っているが実施形態は加速度センサに限定されるものではない。例えば、別の実施形態では、制御部201は、足底全体の圧力変化、足底の重心変化、皮膚電気活動の変化などのその他の値に対して正常範囲を設定し、設定した正常範囲に基づいて異常を判定してよい。
例えば、対象者110の足底の重心位置などをセンサ101で計測するとする。この場合に、例えば、足が接地したときの足の重心位置は、歩行、走るなど、正常な動作中には、足底の所定の領域内に収まる傾向がある。そのため、制御部201は、例えば、正常に作業中の対象者110の足底の重心位置に基づいて正常範囲として所定の領域を設定してよい。また、スリップ、転倒しそうになった、衝突しそうになって回避したなどの異常が発生した場合、対象者110はバランスを崩し、足底の局所に圧力が急激に表れることがあり、所定の領域から外れた位置に重心が検出されることがある。そのため、制御部201は、例えば、センサ101で計測される重心位置が、正常範囲を示す所定の領域から外れた場合に、異常を検出してよい。
なお、この場合にも、対象者110の重心位置の正常範囲とする領域は、例えば、対象者110の疲労などに応じてズレが生じ得、或いは、対象者110によって異なる領域となり得る。そのため、対象者110の状態に応じて計測値から正常範囲を設定することで、状況によって変化し得る対象者110の状態に応じて異常を適切に判定することができる。
また、例えば、皮膚電気活動で対象者110の精神性発汗を計測する場合、作業負荷が小さく対象者110が安静な状態にある場合と、作業負荷が大きく対象者110がいつもより汗をかいている状態とでは、皮膚電気活動の正常範囲が異なり得る。また、発汗の量は、対象者110の体質によっても異なる。この場合にも、実施形態によれば対象者110の置かれた状況に応じて計測値から正常範囲を設定することで、状況によって変化し得る対象者110の状態に応じて異常を適切に判定することができる。
(変形例)
上述の実施形態では、例えば、S506の処理において対象者110の異常が検出された場合に異常の通知を行っている。しかしながら、実施形態に係る異常の通知はこれに限定されるものではない。例えば、別の実施形態では、情報処理装置102の制御部201は、対象者110に対して検出された異常の検出頻度に基づいて、異常の通知を実行してもよい。
例えば、対象者110の10分間の作業において1回の異常が検出されたとする。この場合、対象者110が良好な状態にあっても、たまたま不注意などで異常が検出されることがある。そのため、例えば、このような所定の頻度未満の低頻度で異常が検出された場合には、制御部201は、異常の検出を記録はしても、対象者110に注意喚起などの通知をしなくてもよいことがある。一方で、対象者110の10分間の作業において3回など、所定の頻度以上の高い頻度で異常が検出された場合、対象者110が疲れていたり、集中力が切れて他のことに気をとられながら作業をしていたりといった、危険な状態にある可能性がある。そのため、制御部201は、例えば、所定の頻度以上の高頻度で異常が検出された場合、対象者110に注意喚起などの通知を実行してよい。
また更に、例えば、対象者110の60分間の作業において10回などより長い期間で見て対象者110から異常が検出され続けている場合、対象者110は、疲労の蓄積による体調不良など、何らかの異常な状態にあることが懸念される。そのため、制御部201は、例えば、所定の期間において所定の頻度以上の高い頻度で異常が検出されている場合、対象者110に今すぐ休むように命令するなどの通知を実行してもよい。
以上に述べたように、実施形態の変形例によれば、対象者110から検出される異常の頻度に応じて対象者110の状態を評価することができる。そして、異常の頻度に応じて通知の有無を制御したり、通知内容を異ならせたりすることで、対象者110の状態に応じた通知を行うことができる。
図9は、変形例に係る通知情報900を例示する図である。通知情報900には、例えば、頻度に基づく通知条件と、通知内容とを対応づけたレコードが登録されている。通知条件には、例えば、異常の通知を実行するか否かを判定するための条件が登録されている。通知内容には、レコードの通知条件が満たされた場合に実行される通知の内容が登録されている。制御部201は、例えば、対象者110から検出された異常に基づいて異常の検出頻度を特定し、異常の検出頻度が通知情報900の通知条件を満たすか否かにより、通知を実行してよい。
図10は、変形例に係る異常検出処理の動作フローを例示する図である。例えば、制御部201は、異常検出処理の実行指示が入力されると、図10の動作フローを開始してよい。
S1001からS1006の処理は、例えば、図5のS501からS505、およびS507の処理とそれぞれ対応していてよく、制御部201は、S501からS505、およびS507の処理を実行してよい。
続く、S1007において制御部201は、異常検出を行う対象とした期間の直近の対象者110の異常の検出頻度を履歴情報800から特定し、特定した異常の検出頻度が通知情報900のいずれかの通知条件を満たすか否かを判定する。異常の検出頻度が通知情報900のいずれの通知条件も満たさない場合(S1007がNO)、フローはS1009に進む。一方、異常の検出頻度が通知情報900のいずれかの通知条件を満たす場合(S1007がYES)、フローはS1008に進む。
S1008において制御部201は、通知条件が満たされた通知情報900のレコードの通知内容に従って通知を実行する。例えば、図9の通知情報900の例では、通知内容:なしの場合には、制御部201は、通知を実行しなくてもよい。また、例えば、通知内容:注意喚起であれば、制御部201は、対象者110に宛てて注意を促すメッセージなどを通知してよい。通知内容:休憩命令であれば、制御部201は、対象者110に宛てて休憩を命令するメッセージを通知してよい。なお、制御部201の通知先は対象者に限定されない。複数の対象者110を管理する管理者もしくは管理システムに通知してもよい。管理システムとは、例えば工事現場などで複数の対象者110を管理する作業管理システムなどである。
続いて、S1009において制御部201は、正常範囲を更新し、フローはS1001に戻る。なお、S1009の処理は、例えば、S508と対応していてよく、制御部201は、S508と同様の処理を実行してよい。
以上で述べたように、変形例では制御部201は、対象者110から検出される異常の頻度に応じて、通知の有無を制御したり、通知内容を異ならせたりする。それにより、対象者110から検出される異常の頻度に基づいて、対象者110の状態の悪さを評価し、それに応じた通知を行うことができる。
以上において、実施形態を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の動作フローは例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。可能な場合には、動作フローは、処理の順番を変更して実行されてもよく、別に更なる処理を含んでもよく、または、一部の処理が省略されてもよい。例えば、図5のS502およびS503の処理は、異常の検出対象とする対象者110の行動状態が1つである場合には、実行されなくてもよい。
また、上述の実施形態において異常の検出は、例えば、センサ101で計測された計測値を情報処理装置102で随時受信し、リアルタイムで実行されてもよい。別の実施形態では情報処理装置102の制御部201は、記憶部202に記憶されているセンサ101の計測値に対して後から異常の検出処理を実行してもよい。
また、上述の実施形態では異常の検出対象とする対象者110の例として、作業者を例に説明を行っているが実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、異常の検出対象とする対象者110は、高齢者および要介護者などの見守り対象者といったその他の対象を含んでもよい。
なお、上述の実施形態において、例えば、S505およびS1005の処理では制御部201は、検出部211として動作する。また、例えば、S508およびS1009の処理では制御部201は、更新部212として動作する。例えば、S502およびS1002の処理では制御部201は、特定部213として動作する。例えば、S506およびS1008の処理では制御部201は、通知部214として動作する。
図11は、実施形態に係る情報処理装置102を実現するためのコンピュータ1100のハードウェア構成を例示する図である。図11の情報処理装置102を実現するためのハードウェア構成は、例えば、プロセッサ1101、メモリ1102、記憶装置1103、読取装置1104、通信インタフェース1106、および入出力インタフェース1107を備える。なお、プロセッサ1101、メモリ1102、記憶装置1103、読取装置1104、通信インタフェース1106、入出力インタフェース1107は、例えば、バス1108を介して互いに接続されている。
プロセッサ1101は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアであってもよい。プロセッサ1101は、メモリ1102を利用して例えば上述の動作フローの手順を記述したプログラムを実行することにより、上述した制御部201の一部または全部の機能を提供する。例えば、情報処理装置102のプロセッサ1101は、記憶装置1103に格納されているプログラムを読み出して実行することで、検出部211、更新部212、特定部213、および通知部214として動作する。
メモリ1102は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置1103は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。なお、RAMは、Random Access Memoryの略称である。また、ROMは、Read Only Memory の略称である。
読取装置1104は、例えば、プロセッサ1101の指示に従って着脱可能記憶媒体1105にアクセスする。着脱可能記憶媒体1105は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus )メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD-ROM、DVD、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。CDは、Compact Discの略称である。DVDは、Digital Versatile Disk の略称である。
上述の記憶部202は、例えば、メモリ1102、記憶装置1103、および着脱可能記憶媒体1105を含んでよい。例えば、情報処理装置102の記憶装置1103には、判定情報300、範囲情報600、履歴情報800、および通知情報900が格納されている。
通信インタフェース1106は、例えば、プロセッサ1101の指示に従って、他の装置と通信する。例えば、情報処理装置102は、通信インタフェース1106を介してセンサ101から計測値を収集してよい。通信インタフェース1106は、上述の通信部の一例である。
入出力インタフェース1107は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスである。出力装置は、例えばディスプレーなどの表示装置、およびスピーカなどの音声装置である。
実施形態に係る各プログラムは、例えば、下記の形態で情報処理装置102に提供される。
(1)記憶装置1103に予めインストールされている。
(2)着脱可能記憶媒体1105により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
なお、図11を参照して述べた情報処理装置102を実現するためのコンピュータ1100のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の制御部201の一部または全部の機能がFPGA、SoC、ASIC、およびPLDなどによるハードウェアとして実装されてもよい。なお、FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。SoCは、System-on-a-chipの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。PLDは、Programmable Logic Deviceの略称である。
以上において、いくつかの実施形態が説明される。しかしながら、実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。