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JP7530030B1 - 鋼板 - Google Patents

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JP7530030B1
JP7530030B1 JP2024516934A JP2024516934A JP7530030B1 JP 7530030 B1 JP7530030 B1 JP 7530030B1 JP 2024516934 A JP2024516934 A JP 2024516934A JP 2024516934 A JP2024516934 A JP 2024516934A JP 7530030 B1 JP7530030 B1 JP 7530030B1
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啓太 勝丸
通博 濃野
正春 岡
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Abstract

優れた絞り加工性が得られ、トリミング加工時のバリの発生を抑制できる鋼板を提供する。本実施形態の鋼板は、質量%で、C:0.010~0.100%、Si:0.350%以下、Mn:1.00%以下、P:0.070%以下、S:0.025%以下、sol.Al:0.005~0.100%、N:0.0060%以下、及び、B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、残部がFe及び不純物からなり、0.30μm2以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/m2以上7000個/mm2未満である。

Description

本開示は、鋼板に関し、さらに詳しくは、絞り缶用途に適した鋼板に関する。本明細書において、絞り缶とは、絞り加工(Drawing)により成形された缶、及び、DI加工(Drawing and Ironing)加工により成形された缶を意味する。
二次電池に代表される電池缶は、鋼板又はめっき鋼板を絞り加工又はDI加工して製造される。従って、このような絞り缶の素材として用いられる鋼板には、優れた絞り加工性が求められる。
絞り加工性に優れた鋼板が、国際公開第2016/060248号(特許文献1)に提案されている。特許文献1に開示された絞り缶用の鋼板は、化学成分が、質量%で、C:0.150超~0.260%、Sol.Al:0.005~0.100%、B:0.0005~0.02%、Si:0.50%以下、Mn:0.70%以下、P:0.070%以下、S:0.05%以下、N:0.0080%以下、Nb:0.003%以下、Ti:0.003%以下、を含有し、残部がFe及び不純物からなる。この鋼板ではさらに、化学成分中のホウ素含有量と窒素含有量とが、質量%で、0.4≦B/N≦2.5を満足する。この鋼板ではミクロ組織として、平均粒径が2.7~4.0μmであるフェライトと、粒状セメンタイトとを含む。鋼板を100℃で1時間の時効処理を実施した後に行う引張方向が圧延方向と平行となる引張試験から得られる降伏強度を単位MPaでYPとし、全伸びを単位%でELとし、降伏点伸びを単位%でYP-ELとし、及び降伏比を単位%でYRとしたとき、YPが360~430MPaであり、ELが25~32%であり、YP-ELが0%であり、YRが80~87%である。特許文献1の鋼板では、C含有量を従来の鋼板よりも高くして、さらにBを含有する。これにより、優れた絞り加工性が得られる。
国際公開第2016/060248号
ところで、鋼板に対して絞り加工を実施して絞り缶製品を成形した場合、絞り加工後の絞り缶にはフランジ部分が形成される。フランジ部分は絞り缶製品としては不要な部分である。そのため、絞り加工後、フランジ部分はトリミング加工により除去される。このトリミング加工時に、フランジ部分を切断した後の絞り缶の切り口にバリが発生する場合がある。このようなバリが発生した絞り缶を用いて電池を製造する場合、バリが絞り缶の内部に侵入する場合がある。このようなバリは、電池特性を低下させる。したがって、絞り加工後のトリミング加工において、バリの発生を抑制できる方が好ましい。特許文献1では、トリミング加工時のバリの発生を抑制する手段については検討されていない。
本開示の目的は、優れた絞り加工性が得られ、かつ、トリミング加工時のバリの発生を抑制できる鋼板を提供することである。
本開示の鋼板は、
質量%で、
C:0.010~0.100%、
Si:0.350%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.070%以下、
S:0.025%以下、
sol.Al:0.005~0.100%、
N:0.0060%以下、及び、
B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満である。
本実施形態による鋼板では、優れた絞り加工性が得られ、かつ、トリミング加工時のバリの発生を抑制できる。
図1Aは、実施例中の絞り加工性評価試験において、円筒深絞り加工して得られた円筒缶の斜視図である。 図1Bは、図1Aの円筒缶の側面図である。 図2は、実施例中のトリミング加工試験でのトリミング加工後の切り口面の端部の断面写真である。 図3は、図2と異なる、実施例のトリミング加工試験でのトリミング加工後の切り口面の端部の断面写真である。
本発明者らは、初めに、絞り缶用途に適した鋼板の化学組成を検討した。その結果、本発明者らは、鋼板の化学組成として、質量%で、C:0.010~0.100%、Si:0.350%以下、Mn:1.00%以下、P:0.070%以下、S:0.025%以下、sol.Al:0.005~0.100%、及び、N:0.0060%以下、を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成が適切であると考えた。
本発明者らはさらに、優れた絞り加工性が得られ、かつ、トリミング加工時にバリの発生を抑制できる手段について、検討を行った。特許文献1でも提案されているとおり、ボロン(B)は鋼板の集合組織をランダム化して、塑性ひずみ比であるr値(ランクフォード値)を1に近づける。これにより、イヤリング特性が向上し、絞り加工性が向上する。さらに、イヤリング特性が向上すれば、絞り加工時にフランジが均一に形成される。そのため、トリミング加工時においてバリが発生しにくくなると考えられる。
そこで、本発明者らは、上記化学組成にさらにBを含有して、質量%で、C:0.010~0.100%、Si:0.350%以下、Mn:1.00%以下、P:0.070%以下、S:0.025%以下、sol.Al:0.005~0.100%、N:0.0060%以下、及び、B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成とすれば、トリミング加工時のバリが抑制されると考えた。
しかしながら、上記化学組成の鋼板であっても、トリミング加工時のバリの発生を十分に抑制することができなかった。そこで、本発明者らはさらに検討を行った。その結果、鋼板において粗大なセメンタイトの個数密度が高ければ、トリミング加工時のバリの発生が抑制されることを見出した。そこで、本発明者らは、セメンタイトのサイズ及び個数密度とバリの発生頻度との関係についてさらに調査を行った。その結果、上述の化学組成を有する鋼板において、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上であれば、トリミング加工を行った場合に、バリの発生を十分に抑制できることを見出した。
一方、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが高すぎれば、絞り加工性が低下してしまうことが判明した。そこで、本発明者らは、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDと、絞り加工性との関係をさらに調査した。その結果、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが7000個/mm未満であれば、優れた絞り加工性が得られることを見出した。
以上の技術思想に基づいて完成した本実施形態の鋼板の要旨は次のとおりである。
第1の構成の鋼板は、
質量%で、
C:0.010~0.100%、
Si:0.350%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.070%以下、
S:0.025%以下、
sol.Al:0.005~0.100%、
N:0.0060%以下、及び、
B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満である。
第2の構成の鋼板は、
第1の構成の鋼板であってさらに、
鋼板の表面上に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Ni合金めっき層、及び、Ni合金拡散めっき層からなる群から選択される1種が形成されている。
以下、本実施形態による鋼板について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[本実施形態の鋼板の特徴]
本実施形態の鋼板は、次の特徴1及び特徴2を満たす。
(特徴1)
化学組成が、質量%で、C:0.010~0.100%、Si:0.350%以下、Mn:1.00%以下、P:0.070%以下、S:0.025%以下、sol.Al:0.005~0.100%、N:0.0060%以下、及び、B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、残部はFe及び不純物からなる。
(特徴2)
0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満である。
以下、特徴1及び特徴2について説明する。
[(特徴1)化学組成について]
本実施形態による鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.010~0.100%
炭素(C)は、鋼板の強度を高める。C含有量が0.010%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.100%を超えれば、粗大な炭化物が過剰に生成する。この場合、鋼板の被削性が低下する。したがって、C含有量は0.010~0.100%である。
C含有量の好ましい下限は0.015%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.025%である。
C含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
C含有量の好ましい範囲は例えば0.015~0.090%であり、さらに好ましくは0.020~0.080%であり、さらに好ましくは0.025~0.070%である。
Si:0.350%以下
シリコン(Si)は不可避に含有される不純物である。つまり、Si含有量は0%超である。Siは、鋼板のめっき密着性を低下させる。Siはさらに、製缶後の鋼板の塗装密着性を低下させる。したがって、Si含有量は0.350%以下である。
Si含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Si含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産性を考慮すれば、Si含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Si含有量の好ましい上限は0.250%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%である。
Si含有量の好ましい範囲は例えば0.001~0.250%であり、さらに好ましくは0.002~0.100%であり、さらに好ましくは0.005~0.050%であり、さらに好ましくは0.005~0.030%である。
Mn:1.00%以下
マンガン(Mn)は不可避に含有される不純物である。つまり、Mn含有量は0%超である。Mnは粗大なセメンタイトの個数密度を過剰に増加する。そのため、鋼板が硬質化する。その結果、鋼板の絞り加工性が低下する。したがって、Mn含有量は1.00%以下である。
Mn含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Mn含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産性を考慮すれば、Mn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Mn含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%である。
Mn含有量の好ましい範囲は例えば0.01~0.90%であり、さらに好ましくは0.02~0.80%であり、さらに好ましくは0.05~0.70%である。
P:0.070%以下
りん(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは鋼板の絞り加工性を低下する。したがって、P含有量は0.070%以下である。
P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産性を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。
P含有量の好ましい上限は0.060%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.040%である。
P含有量の好ましい範囲は例えば0.001~0.060%であり、さらに好ましくは0.002~0.050%であり、さらに好ましくは0.005~0.040%である。
S:0.025%以下
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは鋼板の熱間加工性を低下して、熱間加工時に鋼板に割れを発生させる。したがって、S含有量は0.025%以下である。
S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産性を考慮すれば、S含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。
S含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.012%である。
S含有量の好ましい範囲は例えば0.001~0.020%であり、さらに好ましくは0.002~0.015%であり、さらに好ましくは0.005~0.012%である。
sol.Al:0.005~0.100%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。sol.Al含有量が0.005%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えれば、粗大な窒化物及び/又は酸化物が生成して、鋼板の絞り加工性が低下する。したがって、sol.Al含有量は0.005~0.100%である。
sol.Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。
sol.Al含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
sol.Al含有量の好ましい範囲は例えば0.010~0.090%であり、さらに好ましくは0.015~0.080%であり、さらに好ましくは0.020~0.070%である。
なお、sol.Alとは、「酸可溶Al」を意味する。
N:0.0060%以下
窒素(N)は不可避に含有される不純物である。つまり、N含有量は0%超である。Nは鋼板を時効硬化して、絞り成形性を低下させる。Nはさらに、ストレッチャーストレインを発生させる。したがって、N含有量は0.0060%以下である。
N含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、N含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産性を考慮すれば、N含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
N含有量の好ましい上限は0.0055%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0045%である。
N含有量の好ましい範囲は例えば0.0001~0.0055%であり、さらに好ましくは0.0005~0.0050%であり、さらに好ましくは0.0010~0.0045%である。
B:N含有量の0.50~2.50倍
ボロン(B)は、Nと結合してBNを形成して、鋼板中の固溶Nを低減させる。これにより、固溶Nによる時効硬化が抑制される。Bはさらに、鋼板の集合組織をランダム化して、組成ひずみ比であるr値(ランクフォード値)を1に近づけ、イヤリング特性を高める。そのため、絞り加工性が高まる。さらに、トリミング加工時のバリの発生が抑制される。B含有量がN含有量の0.50倍未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、B含有量がN含有量の2.50倍を超えれば、鋼板中の固溶Bが過剰に多くなる。この場合、鋼板が硬質化したり、イヤリング特性が低下したりする。Bはさらに、セメンタイトの粗大化を抑制する。そのため、トリミング加工時のバリの発生を十分に抑制できない。したがって、B含有量はN含有量の0.50~2.50倍である。
B含有量の好ましい下限はN含有量の0.55倍であり、さらに好ましくはN含有量の0.60倍であり、さらに好ましくはN含有量の0.65倍である。
B含有量の好ましい上限はN含有量の2.45倍であり、さらに好ましくはN含有量の2.40倍であり、さらに好ましくはN含有量の2.35倍である。
B含有量の好ましい範囲は例えばN含有量の0.55~2.45倍であり、さらに好ましくはN含有量の0.60~2.40倍であり、さらに好ましくはN含有量の0.65~2.35倍である。
本実施形態の鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は、製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の鋼板に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[不純物について]
本実施形態の鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nb:0~0.003%、Ti:0~0.003%、Cu:0~0.50%、Ni:0~0.50%、Cr:0~0.30%、及び、Sn:0~0.05%、からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも0%であってもよい。これらの元素はいずれも、原料であるスクラップに含有され得る、いわゆるトランプエレメントであり、いずれも不純物である。
[鋼板の化学組成の測定方法]
本実施形態の鋼板の化学組成は、JIS G0321:2017に準拠した周知の成分分析法で測定できる。具体的には、ドリル等の切削工具を用いて、鋼板から切粉を採取する。採取された切粉を酸に溶解させて溶液を得る。溶液に対して、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)を実施して、化学組成の元素分析を実施する。C含有量及びS含有量については、周知の高周波燃焼法(燃焼-赤外線吸収法)により求める。N含有量については、周知の不活性ガス溶融-熱伝導度法を用いて求める。
なお、各元素含有量は、本実施形態で規定された有効数字に基づいて、測定された数値の端数を四捨五入して、本実施形態で規定された各元素含有量の最小桁までの数値とする。例えば、本実施形態の鋼材のC含有量は小数第三位までの数値で規定される。したがって、C含有量は、測定された数値の小数第四位を四捨五入して得られた小数第三位までの数値とする。
本実施形態の鋼板のC含有量以外の他の元素含有量も同様に、測定された値に対して、本実施形態で規定された最小桁までの数値の端数を四捨五入して得られた値を、当該元素含有量とする。
なお、四捨五入とは、端数が5未満であれば切り捨て、端数が5以上であれば切り上げることを意味する。
[粗大セメンタイトの個数密度ND]
本実施形態の鋼板ではさらに、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満である。以降の説明では、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトを「粗大セメンタイト」ともいう。なお、粗大セメンタイトの面積の上限値は特に限定されない。結晶成長の観点から、粗大セメンタイトの面積は例えば4.00μm以下としてもよい。
粗大セメンタイトは、トリミング加工時に、切り屑の剥離性を高める。そのため、トリミング加工時のバリの発生を抑制する。バリの発生を十分に抑制するためには、粗大セメンタイトの個数密度を高めることが有効である。特徴1を満たす鋼板では、粗大セメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上であれば、トリミング加工時のバリの発生を十分に抑制できる。
一方、粗大セメンタイトの個数密度NDが高すぎれば、絞り加工性が低下する。したがって、粗大セメンタイトの個数密度NDは1150個/mm以上7000個/mm未満である。
粗大セメンタイトの個数密度NDの好ましい下限は1400個/mmであり、さらに好ましくは1500個/mmであり、さらに好ましくは1600個/mmである。
粗大セメンタイトの個数密度NDの好ましい上限は6100個/mmであり、さらに好ましくは5500個/mmである。
粗大セメンタイトの個数密度NDの好ましい範囲は例えば1400~6100個/mmであり、さらに好ましくは1500~5500個/mmであり、さらに好ましくは1600~5500個/mmである。
[粗大セメンタイトの個数密度NDの測定方法]
粗大セメンタイトの個数密度NDは、次の方法で求めることができる。
鋼板の任意の場所からサンプルを採取する。サンプルの表面のうち、鋼板の圧延方向に垂直な断面を観察面と定義する。サンプルの観察面を研磨した後、6%ピクラール腐食液(エタノール94mLに対してピクリン酸6gを配合した腐食液)を用いて観察面を20秒エッチングする。走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて、エッチングされた観察面の任意の5箇所の観察領域(61μm×43μm)を、2000倍の観察倍率で観察し、観察領域内の粒子(析出物及び介在物)を撮影して、二次電子像である写真画像を生成する。
上述の写真画像のコントラストに基づいて、5箇所の観察領域中のセメンタイトを特定する。特定された各セメンタイトの面積を求める。コントラストに基づくセメンタイトの特定、及び、各セメンタイトの面積は、周知の画像処理により求めることができる。画像処理ソフトウェアは例えば、株式会社ニレコ製の商品名:LUZEX AP MQ3104.0である。
5箇所の観察視野で特定された0.30μm以上の面積を有する粗大セメンタイトの総個数、及び、5箇所の観察視野の総面積に基づいて、粗大セメンタイトの個数密度ND(個/mm)を求める。
[本実施形態の鋼板の効果]
本実施形態の鋼板は特徴1及び特徴2を満たす。そのため、本実施形態の鋼板では、優れた絞り加工性が得られ、かつ、トリミング加工時のバリの発生を十分に抑制できる。
[本実施形態の冷延鋼板の好ましい板厚について]
本実施形態の冷延鋼板の板厚は、特に限定されない。本実施形態の冷延鋼板の板厚は例えば、0.15~1.00mmである。
[本実施形態の鋼板のミクロ組織]
本実施形態の鋼板のミクロ組織は主として、フェライトと、セメンタイトとからなる。具体的には、本実施形態の鋼板のミクロ組織では、フェライト及びセメンタイトの総面積率が95.0%以上である。ミクロ組織のうち、フェライト及びセメンタイト以外の組織は、パーライト、硬質組織(マルテンサイト及びベイナイト)、残留オーステナイト、セメンタイト以外の析出物及び介在物からなる群から選択される1種以上からなる。ミクロ組織のうち、フェライト及びセメンタイト以外の組織の総面積率は5.0%以下である。
[鋼板のミクロ組織の観察方法]
本実施形態の鋼板のフェライト及びセメンタイトの総面積率は次の方法で求める。
鋼板の板幅中央位置からサンプルを採取する。サンプルの表面のうち、鋼板の圧延方向に垂直な断面を観察面と定義する。サンプルの観察面を鏡面研磨する。鏡面研磨された観察面に対して、3%硝酸アルコール(ナイタール腐食液)を用いてエッチングを行う。エッチングされた観察面のうち、任意の5箇所の観察視野(61μm×43μm)を、2000倍のSEMで観察する。
観察視野において、フェライト及びセメンタイトは、コントラストにより他の組織と容易に区別できる。フェライトは白色の領域として観察される。セメンタイトはフェライトよりも明度の低い粒として観察される。5箇所の観察視野でのフェライト及びセメンタイトの総面積と、5箇所の観察視野の総面積とに基づいて、フェライト及びセメンタイトの面積率(%)を求める。
[Ni系めっき層について]
本実施形態の鋼板は、鋼板の表面上に、Ni系めっき層が形成されていてもよい。Ni系めっき層は例えば、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Ni合金めっき層、及び、Ni合金拡散めっき層からなる群から選択される1種である。Niめっき層はNiからなるめっき層である。Ni拡散めっき層は、Niめっき層の一部又は全部に、鋼板からめっき層中に移動したFeが拡散している。つまり、Ni拡散めっき層は、Ni及びFeを含有するめっき層である。Ni合金めっき層は、Niめっき層の一部又は全部が、Niと、Fe以外の周知の金属元素との合金層で置換されている。Ni合金拡散めっき層は、Ni合金めっき層、又は、Niめっき層の一部がFe以外の周知の金属元素からなる層に置換された層、のいずれかであって、一部又は全部に、鋼板からFeが拡散している。
なお、本実施形態の鋼板は、鋼板の表面上にNi系めっき層が形成されていなくてもよい。
[本実施形態の鋼板の製造方法]
本実施形態の鋼板の製造方法の一例を説明する。特徴1及び特徴2を満たす鋼板は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態による鋼板の製造方法の好ましい一例である。
本実施形態の鋼板の製造方法の一例は、次の工程を含む。
(工程1)素材準備工程
(工程2)熱間圧延工程
(工程3)冷間圧延工程
(工程4)連続焼鈍工程
(工程5)BAF焼鈍工程
以下、工程1~工程5について説明する。
[(工程1)素材準備工程]
素材準備工程では、特徴1を満たす溶鋼を製造する。製造した溶鋼を用いて、鋳造法により素材(スラブ)を製造する。例えば、上記溶鋼を用いて周知の連続鋳造法によりスラブを製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。以上の製造工程により、鋼板の素材であるスラブ又はインゴットを準備する。
[(工程2)熱間圧延工程]
熱間圧延工程では、スラブ又はインゴットを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。熱間圧延工程は、スラブ又はインゴットを粗圧延して粗バー(中間鋼板)を製造する粗圧延工程と、粗バーを仕上げ圧延して鋼板を製造する仕上げ圧延工程とを含む。
粗圧延工程では、素材(スラブ又はインゴット)を加熱する。加熱された素材を、粗圧延機を用いて圧延し、粗バーを製造する。粗圧延工程での素材の加熱温度は、例えば、1000~1300℃である。
仕上げ圧延工程では、仕上げ圧延機を用いて、粗圧延工程で製造された粗バーをさらに圧延(仕上げ圧延)し、熱延鋼板を製造する。仕上げ圧延工程では、仕上げ圧延温度を例えば800~1000℃とし、巻取温度を例えば500~720℃とする。
[(工程3)冷間圧延工程]
冷間圧延工程では、熱延鋼板を冷間圧延して、冷延鋼板を製造する。冷間圧延工程では例えば、累積圧下率を80%以上とする。累積圧下率の上限は特に限定されない。しかしながら、工業生産性を考慮した場合、累積圧下率の好ましい上限は90%である。
[(工程4)連続焼鈍工程]
連続焼鈍工程では、冷間圧延工程後の冷延鋼板、又は、後述するめっき工程後のNi系めっき層が形成された冷延鋼板に対して、連続焼鈍ライン(Continuous Annealing Line)を用いた連続焼鈍を実施する。連続焼鈍では、次の条件で連続焼鈍を実施する。
(条件1)焼鈍温度T0:710~830℃
(条件2)焼鈍温度T0での保持時間t0:6.5~32.0秒
焼鈍温度T0が710~830℃であり、かつ、保持時間t0が6.5~32.0秒であれば、冷延鋼板において再結晶が促進されて、かつ、セメンタイトが生成する。その結果、製造された鋼板のミクロ組織において、フェライト及びセメンタイトの総面積率が95.0%以上となる。さらに、連続焼鈍工程においてある程度の量のセメンタイトを生成しておくことで、次工程のBAF焼鈍工程を実施することにより、製造された鋼板において、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満になる。
仮に、連続焼鈍工程を実施せずに、後述のBAF焼鈍工程を実施した場合、BAF焼鈍工程前の冷延鋼板中のセメンタイトの生成量が不足している。そのため、BAF焼鈍工程を実施しても、粗大セメンタイトの個数密度NDが不足する。したがって、本実施形態の製造方法では、BAF焼鈍工程の実施前に、連続焼鈍工程を実施する。なお、連続焼鈍工程では、連続焼鈍後の冷延鋼板を巻取り、100℃以下まで冷却する。
[(工程5)BAF焼鈍工程]
連続焼鈍工程後の100℃以下の冷延鋼板に対して、BAF(Box Annealing Furnace)焼鈍を実施する。BAF焼鈍は箱焼鈍(又はバッチ焼鈍)とも呼ばれる焼鈍である。BAF焼鈍では、次の条件で焼鈍を実施する。
(条件3)昇温速度HR1:0.90~4.80℃/分
(条件4)焼鈍温度T1:440~460℃
(条件5)保持時間t1:460~490分
(条件6)冷却速度CR1:0.30℃/分以下
以下、条件3~条件6について説明する。
[(条件3)昇温速度HR1について]
BAF焼鈍工程での昇温過程では、セメンタイトの生成サイトを確保する。昇温速度HR1が速すぎれば、鋼板中のフェライト組織が粗大化して、セメンタイトの生成サイトが減少する。昇温速度HRが4.80℃/分以下であれば、昇温過程において再結晶が進行して、十分な数のセメンタイトの生成サイトを確保できる。そのため、製造された鋼板において、0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満になる。なお、昇温速度HR1の下限は特に限定されない。しかしながら、昇温速度HR1が遅すぎれば、生産性が低下する。したがって、昇温速度HR1の好ましい下限は0.90℃/分である。
[(条件4及び条件5)焼鈍温度T1及び保持時間t1について]
焼鈍温度T1を440~460℃とし、保持時間t1を460~490分とすることにより、十分な個数密度のセメンタイトを生成する。焼鈍温度T1が440℃未満であったり、保持時間t1が460分未満であったりすれば、固溶Cが鋼板内に残留する。この場合、製造された鋼板において、粗大セメンタイトの個数密度NDが十分に得られない。一方、焼鈍温度T1が460℃を超えたり、保持時間t1が490分を超えたりすれば、フェライト組織が粗大化する。この場合、セメンタイトの生成サイトが減少する。その結果、粗大セメンタイトの個数密度NDが十分に得られない。
[(条件6)冷却速度CR1について]
BAF焼鈍工程での冷却過程では、生成したセメンタイトを粗大に成長させる。冷却速度CR1が0.30℃/分を超えれば、冷却速度が速すぎる。この場合、セメンタイトが十分に成長しない。そのため、製造された鋼板において、粗大セメンタイトの個数密度NDが十分に得られない。したがって、冷却速度CR1を0.30℃/分以下とする。冷却速度CR1の下限は特に限定されない。しかしながら、冷却速度CR1が遅すぎれば、生産性が低下する。したがって、冷却速度CR1の好ましい下限は0.10℃/分である。
BAF焼鈍後の冷延鋼板を100℃以下まで冷却する。以上の製造工程により、特徴1及び特徴2を満たす本実施形態の鋼板が製造される。
[任意の製造工程について]
本実施形態の鋼板の製造方法はさらに、調質圧延工程、及び/又は、めっき工程を実施してもよい。以下、調質圧延工程、めっき工程について説明する。
[調質圧延工程]
調質圧延工程は任意の工程であり、実施しなくてもよい。実施する場合、調質圧延工程では、BAF焼鈍工程後の焼鈍鋼板に対して調質圧延(スキンパス圧延)を実施して、鋼板を製造する。調質圧延での累積圧下率は例えば、0.5~5.0%とする。調質圧延工程では、鋼板の表面粗度を調整したり、鋼板の硬さを調整したりする。
[めっき工程]
めっき工程は任意の工程であり、実施しなくてもよい。実施する場合、めっき工程は、BAF焼鈍工程後、又は、調質圧延工程後に実施してもよい。めっき工程は、冷間圧延工程後であって連続焼鈍工程前に実施してもよい。
めっき工程では、鋼板の表面にNi系めっき層を形成する。めっき層の形成方法は、周知の方法を採用する。例えば、冷延鋼板を、Ni系めっき層を形成するためのめっき浴に浸漬して、電解めっき又は無電解めっきを実施する。以上の工程により、冷延鋼板上にNi系めっき層であるNiめっき層又はNi合金めっき層を形成する。
BAF焼鈍工程後、又は、調質圧延工程後にめっき工程を実施した場合、製造された鋼板は、Niめっき層又はNi合金めっき層を有する。
一方、冷間圧延工程後であって連続焼鈍工程前にめっき工程を実施した場合、冷延鋼板に形成されたNiめっき層又はNi合金めっき層には、連続焼鈍工程において鋼板のFeが拡散する。したがってこの場合、製造された鋼板は、Ni拡散めっき層又はNi合金拡散めっき層を有する。
以下、実施例により本実施形態の鋼板の一態様の効果をさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する冷延鋼板を製造した。
Figure 0007530030000001
具体的には、溶鋼を連続鋳造してスラブを製造した。スラブに対して熱間圧延工程(粗圧延工程及び仕上げ圧延工程)を実施した。スラブを1100~1250℃で加熱した。加熱後のスラブを粗圧延機で圧延して粗バーを製造した。さらに、仕上げ圧延機を用いて粗バーを圧延して、熱延鋼板を製造した。仕上げ圧延温度は850~940℃であり、巻取温度は500~720℃であった。
熱延鋼板に対して、冷間圧延工程を実施して、冷延鋼板を製造した。累積圧下率は80~90%であった。冷延鋼板に対して、連続焼鈍工程を実施した。連続焼鈍工程での焼鈍温度T0(℃)、保持時間t0(秒)は表2に示すとおりであった。連続焼鈍後の冷延鋼板を巻取り、常温(25℃)まで冷却した。
Figure 0007530030000002
冷却後の鋼板に対して、BAF焼鈍工程を実施した。BAF焼鈍での昇温速度HR1(℃/分)、焼鈍温度T1(℃)、焼鈍温度T1での保持時間t1(分)、及び、冷却速度CR1(℃/分)は、表2に示すとおりであった。BAF焼鈍後の鋼板を常温まで冷却した。
冷却後の鋼板に対して、調質圧延工程を実施した。調質圧延での累積圧下率を0.5~5.0%とした。以上の製造工程により、各試験番号の鋼板を製造した。鋼板の板厚は0.30mmであった。
[評価試験]
各試験番号の鋼板に対して、次の評価試験を実施した。
(試験1)粗大セメンタイトの個数密度ND測定試験
(試験2)ミクロ組織観察試験
(試験3)絞り加工性評価試験
(試験4)トリミング加工試験
以下、試験1~試験4について説明する。
[(試験1)粗大セメンタイトの個数密度ND測定試験]
上述の[粗大セメンタイトの個数密度NDの測定方法]に記載の方法に準拠して、各試験番号の鋼板の粗大セメンタイトの個数密度ND(個/mm)を求めた。求めた個数密度ND(個/mm)を表3に示す。
Figure 0007530030000003
[(試験2)ミクロ組織観察試験]
上述の[鋼板のミクロ組織の観察方法]に記載の方法に準拠して、各試験番号の鋼板のフェライト及びセメンタイトの総面積率(%)を求めた。得られた総面積率(%)を表3に示す。いずれの試験番号においても、フェライト及びセメンタイトの総面積率は95.0%以上であった。
[(試験3)絞り加工性評価試験]
各試験番号の鋼板から、円板状試験片を採取した。円板状試験片の板厚は0.30mmであり、円板状試験片の直径は36.00mmであった。直径が21.55mmのポンチを用いて、円板状試験片に対して、円筒深絞りを実施して、図1Aに示す円筒缶1を製造した。図1Bは、図1Aに示す円筒缶1の側面図である。図1Bを参照して、得られた円筒缶1において、円筒缶1の缶側壁の山高さ(イヤリングの山高さ)の最大値Hmaxと、円筒缶1の缶側壁(谷高さ)の最小値Hminとを求めた。さらに、円筒缶1の缶側壁高さを、0.8°ピッチで360°測定し、その平均値Haveを求めた。得られたHmax、Hmin及びHaveを用いて、以下の式によりイヤリング率を求めた。
イヤリング率=(Hmax-Hmin)/Have
得られたイヤリング率が3.0%以下の場合、優れた絞り加工性が得られたと判断した(表3中の「絞り加工性」欄で「EX(Excellent)」で表示)。一方、得られたイヤリング率が3.0%を超えた場合、十分な絞り加工性が得られなかったと判断した(表3中の「絞り加工性」欄で「B(Bad)」で表示)。
[(試験4)トリミング加工試験]
各試験番号の鋼板に対して、次の方法によりトリミング加工試験を実施して、トリミング加工後のバリの発生の有無について評価した。具体的には、各試験番号の鋼板から、円板状の試験片を採取した。円板状試験片の直径は36.00mmであり、板厚は0.30mmであった。円板状試験片に対して、フランジ付き円筒絞りを実施して、フランジ幅が5.00mmのフランジ付き円筒を作製した。絞り比は2.0であった。得られたフランジ付き円筒に対してトリミング加工を実施して、フランジ部全体をトリミングした。トリミングには工具刃を用いた。トリミング代は5.00mmとした。また、トリミング加工時に、最大せん断荷重の5%の板押さえ力を負荷した。
フランジをトリミングした円筒を、軸方向に平行に切断した。断面のうち、トリミング加工で形成された切り口面の端部を、200倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、端部でのバリの有無を確認した。図2に示すように、端部断面でバリ10が確認された場合、トリミング加工時にバリが十分に抑制されなかったと判断した(表3中の「バリ発生有無」欄で「有り」と表記)。一方、図3に示すように、端部断面でバリが確認されなかった場合、トリミング加工時にバリが十分に抑制されたと判断した(表3中の「バリ発生有無」欄で「無し」と表記)。
[評価結果]
表1~表3を参照して、試験番号1~15の鋼板は、特徴1及び特徴2を満たした。そのため、トリミング加工試験においてバリの発生が確認されず、トリミング加工時にバリの発生を十分抑制できた。
一方、試験番号16では、B含有量が低すぎた。そのため、十分な絞り加工性が得られなかった。また、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号17では、B含有量が高すぎた。そのため、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号18では、連続焼鈍工程での焼鈍温度T0が低すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号19では、連続焼鈍工程での焼鈍温度T0が高すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号20では、連続焼鈍工程での保持時間t0が短すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号21では、連続焼鈍工程での保持時間t0が長すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号22では、BAF焼鈍工程での昇温速度HR1が速すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号23では、BAF焼鈍工程での焼鈍温度T1が低すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号24では、BAF焼鈍工程での焼鈍温度T1が高すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号25では、BAF焼鈍工程での保持時間t1が短すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号26では、BAF焼鈍工程での保持時間t1が長すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号27では、BAF焼鈍工程での冷却速度CR1が速すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが少なすぎた。その結果、トリミング加工試験においてバリが確認された。
試験番号28では、Mn含有量が高すぎた。そのため、粗大セメンタイトの個数密度NDが多すぎた。その結果、絞り加工性評価試験でのイヤリング率が高すぎ、十分な絞り加工性が得られなかった。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.010~0.100%、
    Si:0.350%以下、
    Mn:1.00%以下、
    P:0.070%以下、
    S:0.025%以下、
    sol.Al:0.005~0.100%、
    N:0.0060%以下、及び、
    B:N含有量の0.50~2.50倍、を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    0.30μm以上の面積を有するセメンタイトの個数密度NDが1150個/mm以上7000個/mm未満である、
    鋼板。
  2. 請求項1に記載の鋼板であってさらに、
    前記鋼板の表面上に、Niめっき層、Ni拡散めっき層、Ni合金めっき層、及び、Ni合金拡散めっき層からなる群から選択される1種が形成されている、
    鋼板。
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