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JP7525078B1 - ポリエステル樹脂の水性分散体、塗料、缶蓋の製造方法および缶胴の製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂の水性分散体、塗料、缶蓋の製造方法および缶胴の製造方法 Download PDF

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JP7525078B1 JP2023578005A JP2023578005A JP7525078B1 JP 7525078 B1 JP7525078 B1 JP 7525078B1 JP 2023578005 A JP2023578005 A JP 2023578005A JP 2023578005 A JP2023578005 A JP 2023578005A JP 7525078 B1 JP7525078 B1 JP 7525078B1
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Abstract

ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位を有さず、且つスルホ基又はその塩を有しないポリエステル樹脂を用いて、缶胴や缶蓋等の塗膜として好適な、加工性、レトルト耐性、開口性に優れた塗膜を形成し得る、安定性に優れる水性分散体を提供する。酸価が3.5mgKOH/g未満で、特定の分子量および特定構造を有するポリエステル樹脂(A)、酸価4.5~16mgKOH/gであり、特定構造を有するポリエステル樹脂(B)、中和剤、有機溶剤および水を含み、樹脂(A)と樹脂(B)との平均酸価が8mgKOH/g以下であり、樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対し有機溶剤を30~120質量部含む、ポリエステル樹脂の水性分散体によって解決される。

Description

本開示は、ポリエステル樹脂の水性分散体、前記ポリエステル樹脂の水性分散体を用いてなる塗料、前記塗料を用いてなる缶蓋および缶胴に関する。
飲料缶等の金属容器(以下、缶胴ということがある)や金属蓋(以下、缶蓋、蓋ということがある)に用いられる塗料組成物としては、エポキシ樹脂・フェノール樹脂系塗料、エポキシ樹脂・アミノ樹脂系塗料、エポキシ樹脂・アクリル樹脂系塗料等のエポキシ樹脂系塗料が広く使用されている。しかし、エポキシ樹脂系塗料はビスフェノールA等を原料として製造されるものが多いため、ビスフェノールAを含有しない塗料が望まれている。そこで、缶蓋や缶胴を被覆するための塗料として、ビスフェノールA等を原料として使用しないポリエステル系水性塗料が提案されている。
特許文献1には、酸価が150eq/10g以上のポリエステル樹脂の利用が開示されている。特許文献2には、酸価が2~50mgKOH/gであるポリエステル樹脂(A)と、酸価0~50mgKOH/gであるポリエステル樹脂(B)との利用が開示されている。特許文献3には、酸価が15未満の第1のポリエステル樹脂と、酸価が15以上のポリエステル樹脂との利用が開示されている。特許文献4には、酸価の差が5mgKOH/g以上の、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との利用が開示されている。特許文献5には、酸価が5mgKOH/g以上のポリエステル樹脂(A)と、酸価が5mgKOH/g未満のポリエステル樹脂(B)との利用が開示されている。
特開2004-292665号公報 特開2013-249376号公報 特表2014-514370号公報 特開2019-163454号公報 特開2020-079394号公報
缶胴や缶蓋は、過酷な加工(例えばネックイン加工、ビード加工、スコア加工、リベット加工等)を経て製造されるので、金属基体を被覆する塗膜にも高度な耐加工性が要求される。
内容物の種類によって、缶に内容物を充填した後、内容物の殺菌を目的として、高温でのレトルト処理が施される場合がある。そのため金属基体を被覆する塗膜にはレトルト耐性に優れることが要求される。
内容物を充填した後は、内容物等による金属基体の腐食を防止し得るように耐食性(耐酸性、耐アルカリ性)を有していること、塗料成分の溶出がなく衛生性に優れること等の様々な特性が金属基体を被覆する塗膜には要求される。さらに缶蓋の場合は、開口性に優れることが求められる。
しかし、従来の塗料は、レトルト耐性に優れる場合には水性塗料としての安定性に難があったり、スルホ基やその塩を有する樹脂により水性塗料として優れた安定性を得ている場合には塗膜のレトルト耐性が不十分であったり、塗膜の加工性が不十分であったりして、改良が望まれている。特に、缶蓋は極めて高度な加工性が要求されるので塗膜には「可撓性」・「コシ」が求められるが、開口性の点からは「可撓性」・「コシ」に相反する「硬さ」・「キレ」が求められている。市場では、これらの特性を両立できる塗料が求められている。
本開示の課題は、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有さず、且つスルホ基又はその塩のいずれも有しないポリエステル樹脂を用いて、缶胴や缶蓋などの塗膜として好適な、加工性、レトルト耐性および開口性に優れる塗膜を形成し得る、安定性に優れる水性分散体、塗料、並びに前記塗料を用いた缶蓋および缶胴を提供することである。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本開示の課題を解決し得ることを見出し、本開示を完成するに至った。
[1]: ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、中和剤、有機溶剤、および水を含むポリエステル樹脂の水性分散体であって、
ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3.5mgKOH/g未満、数平均分子量が10,000以上、且つビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有しないポリエステル樹脂であり、
ポリエステル樹脂(B)は、酸価が4.5~16mgKOH/gであり、且つビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有さず、更にスルホ基又はその塩のいずれも有しないポリエステル樹脂であり、
ポリエステル樹脂(B)は、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,2-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を有し、且つ前記ポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2-メチル-1,3-プロパンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,2-プロパンジオールからなる群から選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位の合計が20~100モル%であり、
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の平均酸価が8mgKOH/g以下であり、
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して前記有機溶剤を30~120質量部含む、ポリエステル樹脂の水性分散体。
[2]: ポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位、並びにエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を有し、
ポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を含み、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%に対し、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を20~100モル%、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を0~80モル%有する、[1]記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[3]: ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位を5~99モル%有し、且つイソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を合計で1~95モル%含む、[2]記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[4]: ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位を5~100モル%有し、且つイソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を合計で0~95モル%有し、
更に、ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、エチレングリコールに由来する構造単位を1~85モル%有し、且つ1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を合計で15~99モル%有する、[1]~[3]のいずれか記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[5]: 前記水と前記有機溶剤の合計100質量%中、前記水を40~90質量%含む、[1]~[4]のいずれか記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[6]: 前記有機溶剤100質量%中、ケトン系およびグリコールエーテル系からなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤を合計で60~100質量%含む、[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[7]: 前記ケトン系の有機溶剤が、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群より選択される1種以上であり、前記グリコールエーテル系の有機溶剤が、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される1種以上である、[6]記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[8]: 前記有機溶剤100質量%中、前記ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含む、[7]記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[9]: 前記ケトン系の有機溶剤が、シクロヘキサノンである、[8]記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[10]: ポリエステル樹脂(B)は、2-メチル-1,3-プロパンジオールに由来する構造単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位とを有し、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールから選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位の合計が90~100モル%である、[1]~[9]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[11]: ポリエステル樹脂(B)は、トリメチロールプロパンに由来する構造単位を有し、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、トリメチロールプロパンに由来する構造単位を0.1~3モル%有する、[1]~[10]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[12]: ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される1種以上の多価カルボン酸に由来する構造単位の合計が90~100モル%である、[1]~[11]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
[13]: [1]~[12]いずれか記載のポリエステル樹脂の水性分散体と、硬化剤とを含む塗料。
[14]: ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記有機溶剤を30~120質量部含み、
前記有機溶剤が、グリコールエーテル系の有機溶剤とケトン系の有機溶剤とを含む、[13]記載の塗料。
[15]: 前記有機溶剤100質量%中、前記ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含む、[14]記載の塗料。
[16]: 前記水と前記有機溶剤との合計100質量%中、前記水を40~90質量%含む、[14]又は[15]記載の塗料。
[17]: [13]~[16]のいずれかに記載の塗料を用いて、金属基体を被覆してなる缶蓋。
[18]: [13]~[16]のいずれかに記載の塗料を用いて、金属基体を被覆してなる缶胴。
本開示によれば、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有さず、且つスルホ基又はその塩のいずれも有しないポリエステル樹脂を用いて、缶胴や缶蓋などの塗膜として好適な、加工性、レトルト耐性および開口性に優れる塗膜を形成し得る、安定性に優れる水性分散体、塗料、並びに前記塗料を用いた缶蓋および缶胴を提供できるという優れた効果を有する。
以下、本開示を詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれる。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む。本明細書中の各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本明細書に記載する数値は、後述する[実施例]等に記載の方法にて得られる値をいう。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、多価アルコールとの重合生成物であり、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位のいずれも有さないことが好ましい。ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸のカルボキシ基と多価アルコールの水酸基とを脱水縮合することで得られる。あるいは多価カルボン酸とメタノールやエタノール等の低級アルコールとのエステル化物を多価アルコールと脱アルコール反応することによって得ることもできる。本開示のポリエステル樹脂の水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)、(B)の2種類を用いることが重要である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、前記以外のポリエステル樹脂を用いてもよい。各ポリエステル樹脂について説明する。
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3.5mgKOH/g未満であることが重要である。このようなポリエステル樹脂(A)を用いることで、大きくレトルト耐性、開口性、耐食性を向上できる。
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量(以下、Mnともいう)は10,000以上とする。前記Mnの上限は限定されないが100,000以下が好ましく、より好適範囲は10,000~80,000である。この範囲にあれば、加工性および耐アルカリ性がより向上し、ポリエステル樹脂(A)の溶剤への溶解性をより向上できる。また、ポリエステル樹脂(A)は、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有しない。
ポリエステル樹脂(A)を形成するためのモノマーとして使用される多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。また、前記多価カルボン酸として、芳香族二塩基酸、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、α、β-不飽和ジカルボン酸、およびこれらの酸無水物、並びにこれらのアルキルエステルを使用できる。
芳香族二塩基酸は、例えばオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびビフェニルジカルボン酸が挙げられる。脂肪族二塩基酸は、例えばコハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸が挙げられる。脂環式二塩基酸は、例えば1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,2-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。α、β-不飽和ジカルボン酸は、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸が挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)は分岐構造を有してもよい。分岐構造を導入するために、二塩基酸に加えて3官能以上の酸を使用してもよい。具体例として、(無水)トリメリット酸〔トリメリット酸と無水トリメリット酸とをあわせて「(無水)トリメリット酸」と表記する。以下同様。〕、(無水)ピロメリット酸、およびエチレングリコールビストリメリテート二無水物等が挙げられる。
前記多価カルボン酸は、中でもテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および(無水)トリメリット酸が好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価カルボン酸に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位を5~100モル%含み、イソフタル酸、セバシン酸、および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸に由来する構造単位を合計で0~95モル%含むことが好ましい。さらに、イソフタル酸に由来する構造単位は0~90モル%、セバシン酸に由来する構造単位は0~45モル%、(無水)トリメリット酸に由来する構造単位は0~1モル%であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)は、上述した多価カルボン酸以外の多価カルボン酸や単官能のカルボン酸を用いてもよい。ポリエステル樹脂(A)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、上述した多価カルボン酸以外のポリエステル樹脂(A)の多価カルボン酸に由来する構造単位は合計で、2モル%以下が好ましい。ポリエステル樹脂(A)の「可塑性」・「コシ」をより効果的に高める観点からは、ポリエステル樹脂(A)のカルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、単官能のカルボン酸に由来する構造単位は2モル%以下が好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を形成するためのモノマーとして使用される多価アルコールは、例えば、炭素数2~10の脂肪族ジオール、炭素数6~12の脂環式ジオール、およびエーテル結合を含有するジオールを使用できる。
炭素数2~10の脂肪族ジオールは、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールが挙げられる。
炭素数6~12の脂環式ジオールは、例えば1,6-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
エーテル結合を有するジオールは、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
前記多価アルコールのうちジオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールが好ましく、その中でもエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)に分岐構造を導入するために、上記ジオールに加えて、3官能以上の水酸基を有するモノマーを使用してもよい。具体例として、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびα-メチルグルコシドが挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、エチレングリコールに由来する構造単位を1~85モル%含み、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択される多価アルコール成分に由来する構造単位を合計で15~99モル%含むことが好ましい。さらに、エチレングリコールに由来する構造単位は2~85モル%、1,2-プロパンジオールに由来する構造単位は0~98%、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位は0~50モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位は0~80モル%、トリメチロールプロパンに由来する構造単位は0~3モル%であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を形成する際、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択される多価アルコール以外の「他」の多価アルコールを使用してもよい。但し、「他」の多価アルコールに由来する構造単位は合計で、ポリエステル樹脂(A)における多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2モル%以下が好ましい。
さらに、必要に応じて、単官能のアルコールを少量用いてもよい。例えば、単官能のアルコールに由来する構造単位は、アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2モル%以下が好ましい。
ポリエステル樹脂(A)は市販品を用いてもよい。好適例として、東洋紡社製のバイロンGK-880(酸価:1mgKOH/g、Mn:18,000)、バイロンGK-640(酸価:3mgKOH/g、Mn:18,000)、バイロンGK-330(酸価:1mgKOH/g、Mn:17,000)、エボニック社製のDYNAPOL L490(酸価:3mgKOH/g、Mn:15,000)、ユニチカ社製のUE-9800(酸価:3mgKOH/g、Mn:13,000)、EASTMAN社製 EASTER GN001(酸価:検出限界以下、Mn:40,000)が挙げられる。
<ポリエステル樹脂(B)>
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、4.5~16mgKOH/gとすることが重要である。ポリエステル樹脂(B)は、水性化に際してポリエステル樹脂(A)に対し、一種の分散安定剤として機能するので、一定以上の酸価が必要である。一方、ポリエステル樹脂(B)が高酸価過ぎるとポリエステル樹脂(A)との相溶性が悪くなり、ポリエステル樹脂(B)が分散剤として機能しづらくなる。さらに、ポリエステル樹脂(B)の酸価が上がるほど、親水性が上がるため、塗膜の耐水性が劣る。ポリエステル樹脂(B)は、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有さず、更にスルホ基又はその塩のいずれも有しないポリエステル樹脂である。
ポリエステル樹脂(B)は、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,2-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を有する。2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオールの利用により側鎖にアルキル基を導入でき、1,4-シクロヘキサンジメタノールの利用により主鎖に脂環構造を導入できる。ポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2-メチル-1,3-プロパンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,2-プロパンジオールからなる群から選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位の合計を20~100モル%とする。
ポリエステル樹脂(B)の側鎖にアルキル基を有するか、又はポリエステル樹脂(B)の主鎖に脂環構造を有することにより、後述する有機溶剤に対する溶解性が向上する。溶解性が向上することで、水を加えた際、ポリエステル樹脂(B)が膨潤し、ポリエステル樹脂(B)の側鎖のアルキル基又は主鎖の脂環構造が、立体障害になり、効果的に水性化できるようになると考えられる。また、ポリエステル樹脂(B)の側鎖にアルキル基を有するか、又はポリエステル樹脂(B)の主鎖に脂環構造を有することで、ポリエステル樹脂(A)との相溶性改善の効果もあると考えられる。
ポリエステル樹脂(B)のMnは8,000~50,000が好ましく、8,000~20,000がより好ましい。Mnを8,000~50,000とすることにより、ポリエステル樹脂(A)の分散性を担保しながら、加工性および耐アルカリ性がより向上し、ポリエステル樹脂(B)の溶剤への溶解性をより向上できる。
ポリエステル樹脂(B)のモノマーとして使用される多価カルボン酸、多価アルコールとしては、ポリエステル樹脂(A)で使用される多価カルボン酸、多価アルコールと同様のモノマーを例示できる。また、ポリエステル樹脂(B)は分岐構造を持つことが望ましい。分岐構造を有することにより、末端の官能基が増え、分散性が向上する。
前記多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択することが好ましい。これらの中でもテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択することが好ましい。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の利用により主鎖に脂環構造を導入できる。(無水)トリメリット酸を末端変性剤として利用することにより末端にカルボキシ基を導入できる。
ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位は5~99モル%、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群から選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位は合計を1~95モル%とすることが好ましく、さらに、イソフタル酸に由来する構造単位は0~95モル%、セバシン酸に由来する構造単位は0~45モル%、(無水)トリメリット酸に由来する構造単位は0~5モル%であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(B)は、上述した多価カルボン酸以外の多価カルボン酸や単官能のカルボン酸を用いてもよい。ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、上述した多価カルボン酸以外のポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸に由来する構造単位は合計で、2モル%以下が好ましい。ポリエステル樹脂(B)の「可塑性」・「コシ」をより効果的に高める観点からは、ポリエステル樹脂(B)のカルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、単官能のカルボン酸に由来する構造単位は2モル%以下が好ましい。
ポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分は、上述した、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,2-プロパンジオール以外の単量体を用いて合成してもよい。そのような多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、およびトリメチロールプロパンが例示できる。1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、および2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選択される多価アルコール成分と、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択される多価アルコール成分とを併用して使用することが好ましい。
ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、および2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選択される多価アルコール成分に由来する構造単位の合計は20~99.9モル%であることが好ましい。さらに2-メチル-1,3-プロパンジオールに由来する構造単位と1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位との合計が90~100モル%であることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂(B)は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位の合計が0~80モル%であることが好ましく、0.3~80モル%であることがより好ましい。さらに、エチレングリコールに由来する構造単位が0~70モル%、1,2-プロパンジオールに由来する構造単位が0~60%、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位が0~80モル%、トリメチロールプロパンに由来する構造単位が0.1~3モル%であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(B)を形成する際、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択される多価アルコール以外の「他」の多価アルコールを使用してもよい。但し、「他」の多価アルコールに由来する構造単位は合計で、ポリエステル樹脂(B)における多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2モル%以下が好ましい。
さらに、必要に応じて、単官能のアルコールを少量用いてもよい。例えば、単官能のアルコールに由来する構造単位は、アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2モル%以下が好ましい。
ポリエステル樹脂(B)は市販品を用いてもよい。好適な市販品は、例えば、東洋紡社製のバイロンGK-360(酸価:5mgKOH/g、Mn:16,000)などが挙げられる。
<平均酸価>
形成される塗膜のレトルト耐性の点から、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の平均酸価が8mgKOH/g以下であることが重要である。前記平均酸価は、2~8mgKOH/gが好ましく、3~8mgKOH/gがさらに好ましい。
なお、本開示における平均酸価とは、質量に基づくポリエステル樹脂(A)、(B)の含有率にそれぞれの酸価を乗じた和である。即ち、酸価:a(mgKOH/g)のポリエステル樹脂(A):X質量%、酸価:b(mgKOH/g)のポリエステル樹脂(B):Y質量%を用いる場合、平均酸価は(a×X+b×Y)×0.01となる。
<ポリエステル樹脂の水性分散体>
本開示のポリエステル樹脂の水性分散体(以下、本水性分散体ともいう)について説明する。本水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、中和剤、有機溶剤、および水を含む。本水性分散体は、例えば以下のようにして得られる。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを一緒に有機溶剤に溶解し、中和剤を加えた後、水を加えて、水と有機溶剤との混合液を液状の分散媒として、その液状の分散媒にポリエステル樹脂を粒子状に分散することにより得ることができる。
あるいは、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)をそれぞれ有機溶剤に溶解し、溶液同士を混合し、中和剤を加えた後、水を加えて、水と有機溶剤との混合液を液状の分散媒として、その液状の分散媒にポリエステル樹脂を粒子状に分散することにより得ることができる。
あるいは、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを溶融した後、有機溶剤を加え、溶解してから、中和剤、水を加えて水性化してもよい。
水性分散体における分散粒子である樹脂粒子は、相対的に低酸価のポリエステル樹脂(A)の周囲を、相対的に高酸価のポリエステル樹脂(B)が取り巻くような状態にあると考えられる。
中でも、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)をそれぞれ有機溶剤に溶解し、溶液同士を混合し、中和剤を加えた後、水を加えて、水と有機溶剤との混合液を液状の分散媒として、その液状の分散媒にポリエステル樹脂を粒子状に分散することが好ましい。これは、溶剤を含む状態から徐々に水性化することで、平均酸価が低いポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)でも樹脂粒子径を小さくできるためである。
水性分散体における樹脂粒子は、平均粒子径D50で0.1~5μmが好ましく、0.15~1μmがより好ましく、0.15~0.4μmがさらに好ましい。樹脂粒子径が小さくなると、水性分散体や塗料の安定性が向上する。樹脂粒子径が大きくなると、塗膜を形成する際、粒子同士の親和性が低下し、本塗料を用いて形成された塗膜の、例えば、缶蓋の金属を被覆した塗膜の開口性が向上する。
<有機溶剤>
本水性分散体は、有機溶剤を含む。有機溶剤とは、物質を溶解および/又は分散させるために用いられる有機化合物であり、25℃・1気圧下において液体であるものをいい、後述する「中和剤」のうち液状の成分は有機溶剤に含まない(固形等の中和剤を溶解および/又は分散させる目的で用いる前記に該当する液体は有機溶剤である)。本水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、有機溶剤を30~120質量部含むことが重要であり、40~100質量部であることが好ましい。有機溶剤が少なすぎると、ポリエステル樹脂が膨潤せず、安定した分散体を得ることができない。有機溶剤が多すぎると、水を入れてもポリエステル樹脂が有機溶剤に溶解し、樹脂粒子を形成できない。
前記有機溶剤は特に限定されないが、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール溶剤、アセテート系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール、イソホロンが挙げられ、
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテルが挙げられ、
アルコール系溶剤の具体例としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-アミルアルコール、アミルアルコール、メチルアミルアルコール、オクタノール、2-エチルヘキサノールが挙げられ、
グリコール系溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールが挙げられ、
アセテート系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートが挙げられる。
その他の有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、二塩基酸エステル、トルエン、キシレン、芳香族系炭化水素化合物、脂肪族炭化水素、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ソルベントナフサ等を適宜用いてもよい。また、必要に応じて、有機溶剤を塗料化の際に使ってもよい。
前記有機溶剤は、中でもケトン系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤100質量%中、ケトン系およびグリコールエーテル系からなる群より選ばれる有機溶剤を合計で60~100質量%含むことがより好ましい。ケトン系およびグリコールエーテル系の有機溶剤を両方含むことがさらに好ましい。有機溶剤100質量%中、ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含むことが好ましい。
ケトン系の有機溶剤としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンが好ましく、シクロヘキサノンがより好ましい。
グリコールエーテル系の有機溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
<中和剤>
中和剤は、中和するために使用される化合物をいい、ポリエステル樹脂(A)、(B)のカルボキシ基を中和するために用いられる。中和剤は、としては、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、アンモニア、アミノエタノール、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、アンモニア、アミノエタノールが好ましい。
中和剤は、ポリエステル樹脂中のカルボキシ基に対し、0.3~5モル当量が好ましく、0.5~3モル当量がより好ましい。
<塗料>
本水性分散体は、塗料に用いることが好適である。本開示の塗料(以下、本塗料ともいう)は、塗料化に際して硬化剤の配合が好ましい。本塗料は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、有機溶剤を30~120質量部含み、前記有機溶剤がグリコールエーテル系の有機溶剤とケトン系の有機溶剤とを含むことが好ましく、有機溶剤100質量%中、ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含むことが好ましい。更に、本塗料は、水と有機溶剤との合計100質量%中、水を40~90質量%含むことが好ましい。本塗料は、飲料缶等の被覆に用いられることが好ましい。
<硬化剤>
本塗料における硬化剤は、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)と架橋反応して硬化させるために配合されるものである。
前記硬化剤は、フェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート基を有する成分もしくはその誘導体、酸無水物基を有する成分、金属アルコキシド系化合物、金属キレート化合物、およびトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン等が挙げられる。これらの中でもフェノール樹脂、アミノ樹脂が好ましい。フェノール樹脂やアミノ樹脂は、自己架橋反応する他、ポリエステル樹脂の水酸基と反応し得る。硬化剤は1種単独で用いても、同じ種類のものを2種以上併用したり、異なる種類のものを2種以上併用してもよい。
前記フェノール樹脂としては、フェノール化合物と、ホルムアルデヒド等のアルデヒドとの付加縮合反応により合成した樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は公知の方法で合成できる。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、カテコール、レゾルシノール、およびハイドロキノンが挙げられる。これらの中でも、フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、p-tert-ブチルフェノールが好ましい。フェノール化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール樹脂は市販品を用いてもよい。好適例として、Allnex社製のPhenodur PR285、PR516、PR517、PR519、PR520、PR521、PR827、PR566、PR612、VPR1785;住友ベークライト社製のスミライトレジン PR-55317、PR-55819、PR-53893A;アイカSDKフェノール社製のショウノール BKS-368、CKS-3898、BKM-2620、CKM-908、CKS-308A、CKS-394,CKM-1634が挙げられる。
前記硬化剤は、塗膜の製缶加工性、耐熱性等の観点からは、特にレゾール型フェノール樹脂が好ましい。中でもm-クレゾールとアルデヒドを反応させたフェノール樹脂がより好ましい。このフェノール樹脂は、ポリエステル樹脂との反応性が高く、硬化性が優れているためレトルト耐性および耐アルカリ性が優れ、加工性が低下し難い塗膜が得られる。
メタクレゾール系フェノール樹脂の市販品としては、例えば、アイカ工業社製のショウノールCKS-3898が挙げられる。
前記アミノ樹脂としては、尿素やメラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物にホルムアルデヒドを付加反応させたもの等を挙げることができる。アミノ化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ樹脂は市販品を用いてもよい。好適例として、Allnex社製のCymel301、303LF、304、323、325、328、370、659、1123;また、BASF社製のLuwipal014、015、018、066、070、052、B017;また、日立化成社製のメラン11E、358D、310XK-IB、322BK、3270がある。
上記フェノール樹脂やアミノ樹脂は、ホルムアルデヒドの付加により生成したメチロール基の一部ないし全部を、炭素数が1~12なるアルコール類によってエーテル化したものも好適に用いられる。
本塗料によれば、ポリエステル樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)を併用し、且つ硬化剤を併用することで、粒子内で優先的に架橋せしめ、粒子間では粒子同士の融着が優先すると考えられる。そのため、通常では困難である「可撓性」「コシ」を持ちながら、相反する「硬さ」「キレ」を両立する塗膜を可能にしていると考えられる。
本塗料は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、硬化剤は、5~100質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。両者の質量比を前記範囲にすることにより、加工性、レトルト耐性等がより向上する。
<酸触媒>
本塗料には、ポリエステル樹脂と硬化剤との架橋反応を促進する目的で従来公知の硬化触媒を配合することが好ましい。硬化触媒としては、塗料組成物に使用される公知の硬化触媒を用いることができる。好適例として、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、樟脳スルホン酸、リン酸、アルキルリン酸等の酸触媒、およびこれら酸触媒のアミン中和物が挙げられる。硬化触媒は1種又は2種以上を併用できる。硬化触媒としては、上記酸触媒の中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸およびこの中和物が好ましい。
硬化触媒の含有量は、ポリエステル樹脂(A)+ポリエステル樹脂(B)の固形分100質量部に対して、固形分として0.01~5.0質量部、好ましくは0.02~1.0質量部、より好ましくは0.03~0.5質量部、更に好ましくは0.03~0.3質量部、特に好ましくは0.03~0.2質量部の範囲である。また、硬化触媒として上記酸触媒のアミン中和物(例えばドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物)を用いた場合には、アミンを除いた酸触媒の含有量が上記範囲内であればよい。上記範囲よりも硬化触媒の配合量が少ない場合には、硬化触媒を配合することにより得られる硬化反応促進効果を充分に得ることができない。一方、上記範囲よりも硬化触媒の配合量が多い場合には、それ以上の効果が望めず、また塗膜の耐水性が劣化するおそれがある。
<添加剤>
本開示の塗料は、飲料缶等の被覆に用いられることが好ましく、製缶工程における塗膜の傷付きを防止する目的で、必要に応じて、ワックス等の滑剤並びにレベリング剤等の添加剤を配合できる。
ワックスは、カルナバワックス、ラノリンワックス、パーム油、キャンデリラワックス、ライスワックス等の動植物系ワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;
ポリオレフィンワックス、テフロン(登録商標)ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。
<本塗料の適用分野>
本塗料は、飲料や食品等を収納する缶等の収納容器を被覆するために用いられることが好ましく、その内面および外面を問わずに使用できる。本塗料は、前記用途の使用において高度な加工性および耐蝕性を発揮できるので、特に缶の内面を被覆する用途に好適であり、特に飲料缶や食缶(食品を入れるための缶の意)の内面への使用に好適である。
<缶用部材および缶>
飲料や食品等を収納するための缶には様々な形態があるが、少なくとも2つの缶用部材を組み合わせて形成される。大きくは、缶胴部と底部とが一体となっている有底円筒状の部材と蓋用部材とで構成される2ピース缶(広義)、円筒状の缶胴部と前記缶胴部の上下に位置する蓋用部材と底用部材とで構成される3ピース缶に分類される。2ピース缶(広義)には、リキャップ可能な蓋用部材とボトル用部材とを備える、いわゆるボトル缶も含まれる。ボトル缶のボトル用部材の飲み口部には前記蓋用部材によって開閉可能なスクリューが設けられている。
本開示の塗料は、缶胴(特に2ピース缶(ボトル缶も含む)の缶胴)の被覆、および缶蓋(但し、ボトル缶の蓋を除く)の被覆に好適である。
2ピース缶の缶胴は、例えば、金属基体を一缶分ごとに平板の円形に打ち抜き、前記部材を成型加工して所定の有底カップ状に成型した後、その内面に塗料組成物をスプレー塗装し、硬化し、内面の塗膜を形成する。内面の塗膜を形成後、開口端にはネックイン加工、ビード加工、スコア加工等の加工が加える工程等を経て得られる。
2ピース缶用の有底カップ状の部材の場合、塗料の硬化条件は、150~300℃の温度で、10秒~10分間焼き付けることが好ましく、30秒~5分間がより好ましい。また、缶用の有底カップ状の部材における塗膜の乾燥後の厚み(塗布量)は、通常5~150mg/dm程度が好ましく、10~100mg/dmがより好ましい。
缶蓋(但しボトル缶の缶蓋を除く)は、例えば、金属基体に塗料を塗装し、硬化し、塗膜を設けた後、一缶分ごとの平板の円形に打ち抜かれた後、成型加工を施し、開口予定部を形成することにより得られる。缶蓋は凹凸の多い複雑で高度な形状を有するので、その塗膜には、他の部材用塗膜よりも高度な加工性が要求される。一方、缶蓋の開口の際には、缶蓋の開口部周辺の塗膜が缶蓋の金属基体に追随して開栓する開口性(切れの良さ)が要求される。前記開口性不良の場合、開口部周辺に塗膜の剥がれ残渣などが認められる。
缶蓋の場合、塗料の硬化条件は、150~350℃の温度で、10秒~30分間焼き付けることが好ましく、10秒~15分間がより好ましい。缶蓋の場合、塗膜の乾燥後の厚み(塗布量)は、通常10~200mg/dm程度が好ましく、20~180mg/dmがより好ましい。ロール状に巻かれた長尺の缶用基材を用いる場合には、塗料の硬化条件は、200~350℃の温度で、10秒~3分間焼き付けることが好ましく、10秒~1分間がより好ましい。塗膜の乾燥後の厚み(塗布量)は、通常10~200mg/dm程度が好ましく、20~180mg/dmがより好ましい。
缶用の金属基体としては、アルミニウム、錫メッキ鋼板、クロム処理鋼板、ニッケル処理鋼板等が挙げられ、さらにジルコニウム処理や燐酸処理等の表面処理を施すことができる。
本開示の缶蓋や缶胴を構成部材とする缶は、内容物として飲料水、清涼飲料水、コーヒー、お茶、ビール、チュウハイ(焼酎に炭酸水を加えたもの)、日本酒、ウイスキー、および水割り等の飲料、並びに魚肉、畜肉、野菜、果実、油、およびソース等の食品等を収納する用途が好ましい。
本開示の飲料缶の1つの態様は、本塗料によって被覆された缶蓋と缶胴部材とを備える。また、本開示の飲料缶の別の態様は、本開示の塗料によって缶胴部材が被覆されている。
以下に実施例によって、本開示をより具体的に説明する。なお例中、特に断りのない限り「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、「Mn」は数平均分子量を、「Mw」は重量平均分子量をそれぞれ表す。
(数平均分子量)
東ソー社製 高速GPC装置 8020シリーズ(テトラヒドロフラン溶媒、カラム温度40℃、ポリスチレン標準)を用いてMnを測定した。具体的には、カラムとして東ソー製G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL、G4000HXLの4本を直列に連結し、流量1.0mL/minにて測定した。
(酸価)
ポリエステル樹脂0.2gを20mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)を求めた。
(ポリエステル樹脂の構成)
H-NMR分析(BRUKER社製ULTRA SHIELDTM 400 PLUS)より求めた。また、H-NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
<ポリエステル樹脂の製造例>
[製造例A-1]
反応容器に、テレフタル酸479.1部、エチレングリコール44.7部、1,2-プロパンジオール274.2部、トリメチロールプロパン1.91部、チタンブトキサイド0.05部を重合反応器に仕込み、窒素雰囲気下で250℃まで徐々に昇温し、6時間かけてエステル化反応を行った。次に、窒素気流下で230℃まで冷却した後、30分かけて圧力を5mmHg以下まで下げ、その状態で2時間重合反応を行った。反応容器から取り出し、ポリエステル樹脂A-1を得た。得られたポリエステル樹脂A-1の分析結果を表1に示す。
[製造例A-2]、[製造例A-4]、[製造例A-7]~[製造例A-9]、[製造例A-14]~[製造例A-17]、[製造例X-1]
多価カルボン酸成分、および多価アルコール成分の種類と量を変更した以外は製造例A-1と同様に、無水トリメリット酸を使用しないポリエステル樹脂を得、同様に分析した。
[製造例B-1]
反応容器に、テレフタル酸93.1部、イソフタル酸372.5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール189.3部、1,4-シクロヘキサンジメタノール141.9部、トリメチロールプロパン3.76部、チタンブトキサイド0.05部を重合反応器に仕込み、窒素雰囲気下で250℃まで徐々に昇温し、6時間かけてエステル化反応を行った。次に、窒素気流下で230℃まで冷却した後、30分かけて圧力を5mmHg以下まで下げ、その状態で2時間重合反応を行った。
次いで、樹脂を窒素気流下で200℃まで冷却し、これに無水トリメリット酸5.35部を添加し、2時間反応を行った。反応容器から取り出し、ポリエステル樹脂B-1を得た。得られたポリエステル樹脂B-1の分析結果を表2に示す。
[製造例A-3]、[製造例A-5]~[製造例A-6]、[製造例A-10]~[製造例A-13]、[製造例X-1]、[製造例B-2]~[製造例B-8]、[製造例B-10]~[製造例B-18]、[製造例Y-1]、[製造例Y-2]
多価カルボン酸成分、および多価アルコール成分の種類と量を変更した以外は製造例B-1と同様に、無水トリメリット酸を使用したポリエステル樹脂を得、同様に分析した。
[製造例B-9]
反応容器に、テレフタル酸143.8部、イソフタル酸319.4部、トリメリット酸2.69部、2-メチル-1,3-プロパンジオール175.7部、1,4-シクロヘキサンジメタノール160.7部、チタンブトキサイド0.05部を重合反応器に仕込み、窒素雰囲気下で250℃まで徐々に昇温し、6時間かけてエステル化反応を行った。次に、窒素気流下で230℃まで冷却した後、30分かけて圧力を5mmHg以下まで下げ、その状態で2時間重合反応を行った。次いで、樹脂を窒素気流下で200℃まで冷却し、これに無水トリメリット酸16部を添加し、2時間反応を行った。反応容器から取り出し、ポリエステル樹脂B-9を得た。得られたポリエステル樹脂B-9の分析結果を表2に示す。
Figure 0007525078000001
Figure 0007525078000002
なお、表1、2中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SEA:セバシン酸
TMA:トリメリット酸
EG:エチレングリコール
PG:1,2-プロパンジオール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール
1,4-BD:1,4-ブタンジオール
TMP:トリメチロールプロパン
<ポリエステル樹脂の水性分散体>
[実施例1]
ポリエステル樹脂A-1を200部、ポリエステル樹脂B-1を200部、シクロヘキサノンを110部入れ、加熱した。120℃に達した後、攪拌を行った。3時間経過後、樹脂が溶解したことを確認し、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを110部入れ、攪拌しながら95℃まで冷却した。その後、ジメチルアミノエタノールを2.4部(中和率120%)入れた後、温度を90~95℃の範囲に保ちながらイオン交換水377.6部を1時間かけて滴下し、水性分散体1を得、水性分散体の安定性を評価し、平均粒子径を測定した。また、水性分散体1から塗膜を形成し、その耐水性を評価した。
なお、表3-7中の略号は以下の通りである。
S1:シクロヘキサノン
S2:メチルエチルケトン
S3:ジエチレングリコールブモノブチルエーテル
S4:ブチルセロソルブ
S5:n-ブタノール
<分散体の安定性>
蓋つき容器に入れた水性分散体1を30℃の恒温槽に入れ、1週間ごとに水性分散体の状態を確認した。下記基準で評価した。
5:6か月以上でも分離しない(非常に良好)
4:3か月以上~6か月未満で分離(良好)
3:1か月以上~3か月未満で分離(実用可)
2:1週間以上~1か月未満で分離(条件次第で実用可)
1:1週間未満で分離(実用不可)
なお、1週間未満で分離してしまった場合、後述する塗料としての評価はしなかった。
<平均粒子径>
ここでいう平均粒子径とは、体積換算で頻度累積が50%となる粒子径(D50)を指す。平均粒子径は動的光散乱分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックMT3300EXII」)にて測定したD50の値である。上記装置に水を入れ、TRが0.95~0.8になるようにポリエステル水性分散体1をいれ、測定を行った。測定条件は粒子条件が透過性:透過、屈折率1.52、形状:非球形、溶媒条件が屈折率:1.333である。測定時間は20秒、積算回数は2回とした。なお、分散体作製直後に沈降が発生したものに関しては、「測定不能」と表記した。
<耐水性>
水性分散体1を、厚さ0.26mmのアルミニウム板上に乾燥質量が110mg/dmとなるようにバーコーターで塗装し、次いで第1ゾーンの温度が286℃ 、第2ゾーンの温度が326℃である2連型のコンベアーオーブンを24秒で通過させて乾燥することで塗膜を備えたテストパネルを作製した。得られたテストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で65℃-10分間加熱処理を行い、塗膜の外観について目視で下記基準にて評価した。
5:全く変化なし(非常に良好)
4:若干の変化はあるものの、ほとんど白化していない(良好)
3:ごく薄く白化(可)
2:薄く白化(条件次第で可)
1:著しく白化(不可)
[実施例2~17]
表3に示すように、ポリエステル樹脂A-1:200部の代わりに、ポリエステル樹脂A-2~A-17をそれぞれ200部用い、実施例1と同様にして水性分散体2~17を得、同様に評価した。
[実施例18]
ポリエステル樹脂A-1:200部の代わりに、ポリエステル樹脂A-1:100部、ESTER GN001((イーストマン社製、酸価:検出限界以下)、数平均分子量:40,000):100部用い、実施例1と同様にして水性分散体18を得、同様に評価した。なお、表3では「EASTER GN001」の酸価は便宜上「0」とした。
[実施例19~36]
表4に示す処方に従い、ポリエステル樹脂A-2とポリエステル樹脂B-2~B-18とを用い、実施例1と同様にして水性分散体19~36を得、同様に評価した。
[実施例37~48]
有機溶剤を表5に示すように変更し、実施例1と同様にして水性分散体37~48を得、同様に評価した。なお、表5では実施例2を便宜上実施例38として記載した。
[実施例49~55]
ポリエステル樹脂A-4とポリエステル樹脂B-1を用い、中和剤を表6に示すように変更し、実施例1と同様にして水性分散体49~55を得、同様に評価した。
[実施例56~60]
表6に示すように、ポリエステル樹脂の組合せと量、有機溶剤の量を変更し、実施例1と同様にして水性分散体56~60を得、同様に評価した。なお、表6では実施例2を便宜上実施例56として記載した。
[比較例1001、1002]
表7に示すように、ポリエステル樹脂B-3又はポリエステル樹脂Y-1をそれぞれ単独で400部用い、水性分散体1001、1002を得、同様に評価した。
[比較例1003]
表7に示すように、ポリエステル樹脂A-2:150部、ポリエステル樹脂B-3:250部を用い、平均酸価を9.9(mgKOH/g)とし、水性分散体1003を得、同様に評価した。
[比較例1004、1005]
表7に示すように、ポリエステル樹脂A-2とポリエステル樹脂Y-2の量を変え、水性分散体1004、1005を得、同様に評価した。
[比較例1006]
表7に示すように、ポリエステル樹脂A-2:200部、スルホン酸に由来する構造を有するポリエステル樹脂であるイーストマン社製の「Eastman AQ55S」(酸価:1.5mgKOH/g):200部を用い、水性分散体1006を得、同様に評価した。
[比較例1007]
表7に示すように、Mnが6000のポリエステル樹脂X-1:240部、ポリエステル樹脂B-3:160部を用い、平均酸価を7.8(mgKOH/g)とし、水性分散体1007を得、同様に評価した。
[比較例1008]
表7に示すように、酸価が4(mgKOH/g)のポリエステル樹脂X-2:280部、ポリエステル樹脂B-3:120部を用い、平均酸価を7.3(mgKOH/g)とし、水性分散体1008を得、同様に評価した。
[比較例1009]
表7に示すように、ポリエステル樹脂A-1:400部を用い、ポリエステル樹脂Bを用いず、実施例1と同様にして水性分散体1009を得、同様に評価した。
[比較例1010、1011]
表7に示すように、ポリエステル樹脂A-2:200部、ポリエステル樹脂B-1:200部を用い、有機溶剤および水の量を代え、実施例2と同様にして水性分散体1010、1011を得、同様に評価した。
Figure 0007525078000003
Figure 0007525078000004
Figure 0007525078000005
Figure 0007525078000006
Figure 0007525078000007
なお、表3~7における略号は以下の通りである。
DMAE:ジメチルアミノエタノール
TEA:トリエタノールアミン
ESTER GN001(イーストマン社製、酸価:検出限界以下、数平均分子量:40,000)
Eastman AQ55S(イーストマン社製、酸価:1.5mgKOH/g)
酸価が3.5mgKOH/g未満、Mnが10,000以上の特定構造のポリエステル樹脂(A)と、酸価が4.5~16mgKOH/gの特定構造を特定量有するポリエステル樹脂(B)を併用し、更に、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の平均酸価が8mgKOH/g以下であり、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との合計100質量部に対して、有機溶剤を30~120質量部含む実施例1~60の水性分散体は優れた安定性を示すことが確認された。
一方、酸価が4.5~16mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)を使用しない場合、比較例1009に示すように、水性分散体の安定性が悪いことが確認された。また、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、有機溶剤が120質量部を超える場合、比較例1010に示すように、水性分散体の安定性が悪いことが確認された。また、前記有機溶剤の量が30質量部未満の場合、比較例1011に示すように、水性分散体の安定性が悪いことが確認された。
<蓋用塗料>
[実施例101]
表8に示すように、実施例1で得た水性分散体1(ポリエステル樹脂400質量部を含む):1000質量部を容器に入れ、攪拌しながら、硬化剤としてフェノール樹脂であるCKS-3898(メタクレゾール系フェノール樹脂、不揮発分濃度50%のブチルセロソルブ溶液、アイカ工業社製)を138質量部、添加剤としてサーフィノール420(アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤、日信化学工業社製)を1.34質量部、BYK333(シリコン系レベリング剤、BYK社製)を0.94質量部、触媒としてNacure5925(ドデシルベンゼンスルホン酸系酸触媒、有効成分25%、イソプロパノール溶液)を2.82質量部、水を201.02部加え、塗料101を得た。後述する方法にて種々の評価をした。
[実施例102~160]
表8~11に示す処方に従って、実施例101と同様にして塗料102~160を得、同様に評価した。なお、便宜上実施例102を、表10では実施例138、表11では実施例156と記載した。
[実施例161~167]
表12に示すように、硬化剤の種類と量を変え、実施例101と同様にして塗料161~167を得、同様に評価した。なお、表12では、実施例101を便宜上実施例161と記載した。
[比較例2001~2008]
表13に示すように、水性分散体1の代わりに水性分散体1001~1008を用い、実施例101と同様にして塗料2001~2008を得、同様に評価した。
[比較例2009]
ポリエステル樹脂A-1を96.7部、ポリエステル樹脂B-1を96.7部、有機溶剤としてFlexisolv DBE esters(インビスタ社製)を145部、キシレンを145部入れ加熱し、120℃に達したら、攪拌を行った。2時間経過後、樹脂が溶解したことを確認し、室温まで冷却した。その後、攪拌しながらフェノール樹脂としてCKS-3898を68.2部、Flexisolv DBE esters(インビスタ社製)153.4部、キシレン191.1部、n-ブタノール52部、シクロヘキサノン76.8部を混合し、触媒としてNacure5925を1.6部添加し、水を含まない塗料2009を得た。
<塗料の物性評価>
得られた塗料を使用して、下記物性評価を行った。
[塗料の安定性]
水性分散体の安定性評価と同様に、得られた各塗料を30℃の恒温槽に入れ、1週間ごとに状態を確認。下記基準で評価した。
5:6か月以上でも分離しない(非常に良好)
4:3か月以上~6か月未満で分離(良好)
3:1か月以上~3か月未満で分離(実用可)
2:1週間以上~1か月未満で分離(条件次第で実用可)
1:1週間未満で分離(実用不可)
<平均粒子径>
水性分散体の平均粒子径の測定と同様に測定した。
[蓋用テストパネルの作製]
各塗料を、厚さ0.26mmのアルミニウム板上に乾燥質量が110mg/dm2となるようにバーコーターで塗装し、次いで第1ゾーンの温度が286℃、第2ゾーンの温度が326℃である2連型のコンベアーオーブンを24秒で通過させて乾燥・硬化することで塗膜を備えた蓋用テストパネルを作製した。得られた蓋用テストパネルを下記の通り評価した。
<接着力評価>
テストパネルを長さ100mm、幅5mmに切り、接着力測定用試験板とした。接着力測定用試験板の長片先端から25mmの部分を除き、塗装面が内側に向き合う形で2枚の試験板を重ねナイロンテープを挟み、ナイロンテープをホットメルトの接着剤として200℃-30秒の熱融着を行った。未接着部分を広げた後、引っ張り試験機(テンシロン)を用い、硬化塗膜とアルミニウム板との間のTピール強度を測定し、以下の基準で判定した。
5:Tピール強度が3kgf以上(非常に良好)
4:Tピール強度が3kgf未満、2kgf以上(良好)
3:Tピール強度が2kgf未満、1kgf以上(実用可)
2:Tピール強度が1kgf未満、0.4kgf以上(条件次第で実用可)
1:0.4kgf未満(実用不可)
<折り曲げ加工性試験>
<<初期>>
テストパネルを幅30mm縦50mmの大きさに切り、折り曲げ加工性評価用試験板とした。次いで、室温(25℃)にて試験板の塗膜を外側にして、縦長さ30mmの位置に直径3mmの丸棒を添えた。次に、丸棒に沿って試験板を2つ折りにして試験片を作製した。この2つ折りにした試験片の間に厚さ0.26mmのアルミ板を2枚挟み幅15cm×高さ5cm×奥行き5cmの直方体状の1kgのおもりを高さ40cmから試験片の折り曲げ部に落下させて完全に折り曲げた。
次いで、アルミニウム板を取り除いた上で、試験片の折り曲げ部を濃度1%の食塩水中に浸漬させた。次いで、試験片の、食塩水中に浸漬されていない平面部の金属部分と、食塩水との間を6.0V×6秒間通電させて、その電流値を測定した。
塗膜の加工性が乏しい場合、折り曲げ加工部の塗膜がひび割れて、下地の金属板が露出して導電性が高まるため、電流値が高くなる。下記評価基準にて評価した。
5:5mA未満(非常に良好)
4:5mA以上10mA未満(良好)
3:10mA以上20mA未満(実用可)
2:20mA以上50mA未満(条件次第で実用可)
1:50mA以上(実用不可)
<<経時後>>
新たな折り曲げ加工性評価用試験板を用意し、37℃の恒温槽中に60日間静置した後、室温(25℃)に戻し、室温にて上記折り曲げ加工性の試験と同様にして折り曲げ加工し、電流値を測定した。次いで、37℃の恒温槽中に60日間静置した後の電流値から初期の電流値を差し引いた値を求めて、下記評価基準にて評価した。
5:1mA未満(良好)
4:1mA以上5mA未満(使用可)
3:5mA以上10mA未満(使用不可)
2:10mA以上15mA未満(条件次第で実用可)
1:15mA以上(実用不可)
<開口性試験>
<<レトルト処理前>>
テストパネルを縦50mm×横50mmの大きさに切り、プレス機を使用してテストパネルの塗装面に飲料缶で一般的なステイオンタブ開口部の形状の凹凸を形成し評価用試料とした。次いで、同試料の無塗装面の側から、開口部の形状に沿ってアルミニウム板を引き剥がし、その開口部を顕微鏡で拡大し目視判定した。開口性が不良であると、塗膜が開口部の周辺部に残存しやすくなり、開口部内にはみ出す幅が大きくなる。開口性が良好であるとは、塗膜が開口部内にまったくはみ出さないか、あるいは、はみ出したとしても、そのはみ出し幅がごくわずかである状態をいう。具体的な判定方法としては、はみ出ている塗膜の幅を測定し、下記評価基準にて評価した。
5:はみ出ている塗膜の最大幅が100μm未満(非常に良好)
4:はみ出ている塗膜の最大幅が100μm以上、200μm未満(良好)
3:はみ出ている塗膜の最大幅が200μm以上、500μm未満(実用可)
2:はみ出ている塗膜の最大幅が500μm以上、800μm未満(条件次第で実用可)
1:はみ出ている塗膜の最大幅が800μm以上(実用不可)
<<レトルト処理後>>
新たに用意した評価用試料を水に浸漬したまま、レトルト釜で125℃-30分間レトルト処理後、上記開口性試験と同様に試験し、同様に評価した。
<レトルト耐性試験>
テストパネルを水、クエン酸を2質量%含むpH2程度の水溶液、水酸化ナトリウムを使用してpH12に調整した水溶液にそれぞれ浸漬したまま、レトルト釜で125℃-30分間レトルト処理を行い、塗膜の外観について目視で下記評価基準にて評価した。
5:全く変化なし(非常に良好)
4:若干の変化はあるものの、ほとんど白化していない(良好)
3:ごく薄く白化(実用可)
2:薄く白化(条件次第で実用可)
1:著しく白化(実用不可)
<酢酸耐性>
テストパネルを60×40mmの大きさに準備した。4%酢酸溶液に浸漬し、密閉した。50℃で10日経時後、塗膜の状態を観察した。下記評価基準にて評価した。
5:全く変化なし(非常に良好)
4:若干のブリスターあり(良好)
3:小さなブリスターが全面にみられる(実用可)
2:大きなブリスターあり(条件次第で実用可)
1:塗膜全面にはがれ(実用不可)
<総合評価>
各評価結果から四捨五入した平均値を求め、5(最良)、4(優良)、3(良)、2(可)、1(不可)の5段階評価とした。但し、各評価において1(実用不可)の評価が1つでもある場合は、1(不可)とした。
Figure 0007525078000008
Figure 0007525078000009
Figure 0007525078000010
Figure 0007525078000011
Figure 0007525078000012
Figure 0007525078000013
なお、表8~13における略号は以下の通り。
CKS-3898:メタクレゾール系フェノール樹脂、不揮発分50%のブチルセロソルブ溶液、アイカ工業社製
Luwipal B017:ベンゾグアナミン系アミノ樹脂、不揮発分80%のn-ブタノール溶液
サーフィノール420:アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤、日信化学工業社製)
BYK333:シリコン系レベリング剤、BYK社製
Nacure5925:ドデシルベンゼンスルホン酸系酸触媒、有効成分25%、イソププロパノール溶液
表8~13に示すように、2種類のポリエステル樹脂(A)、(B)を、平均酸価が8mgKOH/g以下になるように併用した水性分散体を使用した実施例101~142は良好な性能を示した。特に開口性において比較例に比して顕著な効果を奏する。ポリエステル樹脂は、塗料中で均一に溶解しているのではなく、粒子として分散状態にある。ポリエステル樹脂の粒子同士は、塗膜を形成する際の乾燥を通じて融着しつつ、硬化剤との反応により硬化塗膜を形成するので、硬化塗膜には元々のポリエステル樹脂の粒子の界面の名残によって、開口性に優れる硬化塗膜が形成できたものと推測できる。
極性の低い樹脂の利用は水の関与する性能にとっては有利ではあると考えられる。しかし、極性の低い樹脂は、基材である金属等への接着力が乏しく、塗膜に折り曲げなどの負荷が加わると、基材との間にかすかな隙間が生じたりしやすい。水性分散体を構成するポリエステル樹脂として、相対的に酸価の異なる2種類のポリエステル樹脂(A)、(B)を用いることによって、高酸価のポリエステル樹脂(B)がポリエステル樹脂(A)の周囲を取り囲み、ポリエステル樹脂(B)由来のカルボキシ基が粒子の外側に向くと考えられる。その結果、耐水性等の面で有利な低酸価のポリエステル樹脂(A)の良さを活かしつつ、基材への接着力や曲げ加工性を向上できたものと考えられる。
<缶胴内面塗料の評価>
[実施例201]
実施例1で得た水性分散体1(ポリエステル樹脂400質量部を含む):1000質量部を容器に入れ、攪拌しながら、メタクレゾール系フェノール樹脂であるCKS-3898を96質量部、サーフィノール420を1.34質量部、BYK333を0.94質量部、Nacure5925を0.94質量部および水を201.02質量部加え、塗料201を得、後述する方法にて種々の評価をした。
<塗料の物性評価>
[塗料の安定性]
蓋用塗料の場合と同様の試験をし、同じ基準で評価した。
[缶胴内面用テストパネルの作製]
得られた塗料201を、厚さ0.26mmのアルミニウム板上に塗膜の乾燥質量が45mg/dmになるようにバーコーターで塗装し、ガスオーブンを用い、雰囲気温度200℃で2分間焼き付け、缶胴内面用テストパネルを作製した。
得られた缶胴内面用テストパネルについて、蓋用テストパネルの場合と同様に、接着力、折り曲げ加工性試験(初期、37℃ 60日間静置後)、レトルト耐性(水、クエン酸酸性(pH2)、NaOHアルカリ性(pH12))を評価し、さらに下記のデント加工前後の酢酸耐性を評価した。結果を表14に示す。
<酢酸耐性>
<<デント加工前(未処理)>>
蓋用テストパネルの場合と同様に、缶胴内面用テストパネルを4%酢酸溶液に浸漬し、密閉した。50℃で10日経時後、塗膜の状態を観察した。下記評価基準にて評価した。
<<デント加工後>>
缶胴内面用テストパネルを5cm×5cmにカットし、DuPont試験機にて1/4インチ、荷重300g、高さ25cmの条件にて塗装面が凸になるよう加工後、4%酢酸溶液に浸漬し、密閉した。37℃で10日経時後、加工部の塗膜の状態を観察した。下記評価基準にて評価した。
5:全く変化なし(非常に良好)
4:若干のブリスターあり(良好)
3:小さなブリスターが全面にみられる(実用可)
2:大きなブリスターあり(条件次第で実用可)
1:塗膜全面にはがれ(実用不可)
[実施例202~208][比較例3001、3002]
表14に示すように、ポリエステル水性分散体の種類を変え、実施例201と同様にして塗料202~208、3001、3002を得、同様に評価した。
[比較例3003]
表14に示すように、塗料201の代わりに水を含まない塗料2009を使用した以外は、実施例201同様に評価した。
Figure 0007525078000014
表14が示すように、酸価が3.5mgKOH/g未満のポリエステル樹脂(A)と、酸価が4.5~16mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)とを併用した水性分散体を使用した実施例201~208は良好な性能を示した。
この出願は、2023年2月27日に出願された日本出願特願2023-028066を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本塗料は、飲料や食品等を収納する缶等の収納容器の被覆に好適に用いられる。特に、缶胴の内面や缶蓋の被覆に好適である。外面の被覆にも好適である。さらに、エンジンオイル等の食品用途以外の収納容器にも好適に用いることができる。また、金属以外にプラスチックス等の部材の被覆にも用いることができる。

Claims (15)

  1. ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、中和剤、有機溶剤、および水を含むポリエステル樹脂の水性分散体であって、
    ポリエステル樹脂(A)は、酸価が3.5mgKOH/g未満、数平均分子量が10,000以上、且つビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有しないポリエステル樹脂であり、
    ポリエステル樹脂(B)は、酸価が4.5~16mgKOH/gであり、且つビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSに由来する構造単位をいずれも有さず、更にスルホ基又はその塩のいずれも有しないポリエステル樹脂であり、
    ポリエステル樹脂(B)は、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,2-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を有し
    リエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の平均酸価が8mgKOH/g以下であり、
    ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して前記有機溶剤を30~120質量部含
    ポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位、並びにエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を有し、
    ポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を有し、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%に対し、1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を20~100モル%、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を0~80モル%有し
    前記水と前記有機溶剤の合計100質量%中、前記水を40~90質量%含み、
    前記有機溶剤100質量%中、ケトン系およびグリコールエーテル系からなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤を合計で60~100質量%含む、ポリエステル樹脂の水性分散体。
  2. ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位を5~99モル%有し、且つイソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を合計で1~95モル%含む、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸に由来する構造単位を5~100モル%有し、且つイソフタル酸、セバシン酸および(無水)トリメリット酸からなる群より選択される1種以上の多価カルボン酸成分に由来する構造単位を合計で0~95モル%有し、
    更に、ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、エチレングリコールに由来する構造単位を1~85モル%有し、且つ1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位を合計で15~99モル%有する、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  4. 前記ケトン系の有機溶剤が、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群より選択される1種以上であり、前記グリコールエーテル系の有機溶剤が、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される1種以上である、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  5. 前記有機溶剤100質量%中、前記ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含む、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  6. 前記ケトン系の有機溶剤が、シクロヘキサノンである、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  7. ポリエステル樹脂(B)は、2-メチル-1,3-プロパンジオールに由来する構造単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位とを有し、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールから選択される1種以上の多価アルコール成分に由来する構造単位の合計が90~100モル%である、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  8. ポリエステル樹脂(B)は、トリメチロールプロパンに由来する構造単位を有し、且つポリエステル樹脂(B)の多価アルコール成分に由来する構造単位100モル%中、トリメチロールプロパンに由来する構造単位を0.1~3モル%有する、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  9. ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)の多価カルボン酸成分に由来する構造単位100モル%中、テレフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される1種以上の多価カルボン酸に由来する構造単位の合計が90~100モル%である、請求項記載のポリエステル樹脂の水性分散体。
  10. 請求項1~いずれか記載のポリエステル樹脂の水性分散体と、硬化剤とを含む塗料。
  11. ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記有機溶剤を30~120質量部含み、
    前記有機溶剤が、グリコールエーテル系の有機溶剤とケトン系の有機溶剤とを含む、請求項10記載の塗料。
  12. 前記有機溶剤100質量%中、前記ケトン系の有機溶剤を10~60質量%含む、請求項11記載の塗料。
  13. 前記水と前記有機溶剤との合計100質量%中、前記水を40~90質量%含む請求項12記載の塗料。
  14. 請求項10に記載の塗料を用いて、金属基体を被覆する缶蓋の製造方法
  15. 請求項10に記載の塗料を用いて、金属基体を被覆する缶胴の製造方法
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