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JP7506818B1 - 無機粉末充填樹脂組成物、溶着用成形品、および樹脂成形品 - Google Patents

無機粉末充填樹脂組成物、溶着用成形品、および樹脂成形品 Download PDF

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JP7506818B1 JP2023209481A JP2023209481A JP7506818B1 JP 7506818 B1 JP7506818 B1 JP 7506818B1 JP 2023209481 A JP2023209481 A JP 2023209481A JP 2023209481 A JP2023209481 A JP 2023209481A JP 7506818 B1 JP7506818 B1 JP 7506818B1
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Abstract

【課題】成形品の溶着が可能な無機粉末充填樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】上記課題を解決する無機粉末充填樹脂組成物は、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸亜鉛と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸と、パラフィンオイルと、を含む。前記熱可塑性樹脂および前記無機粉末の含有質量比は50:50~10:90であり、前記脂肪酸亜鉛の含有量は、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、前記脂肪酸の含有量は、0.2質量%以上1.8質量%以下である。前記脂肪酸亜鉛の含有量と前記脂肪酸の含有量との質量比が10:30~10:15であり、かつ前記パラフィンオイルの量が0.5質量%以上3.5質量%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機粉末充填樹脂組成物、溶着用成形品、および樹脂成形品に関する。
従来、炭酸カルシウム粉末を熱可塑性樹脂に高充填した無機粉末充填樹脂組成物を用いた各種製品が知られている(例えば特許文献1)。このような無機粉末充填樹脂組成物は、熱収縮量が小さく、かつ耐衝撃性に優れる、という利点がある。
近年、当該無機粉末充填樹脂組成物を、さらに広い用途に適用することが望まれており、当該無機粉末樹脂組成物から得られる成形品を、従来の樹脂成形品と置き換えることが検討されている。そのため、当該無機粉末充填樹脂組成物から得られる成形品と他の部品とを組み合わせて一体化したり、当該成形品と他の部品とを溶着によって接合したりすることが求められている。
特開2023-77472号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような、無機粉末充填樹脂組成物では、熱可塑性樹脂の量に対する無機粉末の量が非常に多い。そのため、当該無機粉末充填樹脂組成物から得られる成形品を他の部品と溶着によって接合することが難しく、接合できたとしても、その強度を十分に高めることが難しかった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものである。具体的には、成形品を他の部品に溶着可能な無機粉末充填樹脂組成物や、これから得られる溶着用成形品、およびこれを用いた樹脂成形品の提供を目的とする。
本発明者らは、熱可塑性樹脂および無機粉末を所定の比率で含む無機粉末充填樹脂組成物に、脂肪酸亜鉛、脂肪酸、およびパラフィンオイルを所定の量ずつ添加し、かつ脂肪酸亜鉛および脂肪酸の含有質量比を特定の範囲とすることで、成形品を他の部品と溶着することが可能であり、かつその接合強度が十分に高いことを見出し、本発明を完成させた。
本発明の一態様は、下記の無機粉末充填樹脂組成物を提供する。
[1]プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸亜鉛と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸と、パラフィンオイルと、を含み、前記熱可塑性樹脂および前記無機粉末の含有質量比が50:50~10:90であり、前記脂肪酸亜鉛の含有量が、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、前記脂肪酸の含有量が、0.2質量%以上1.8質量%以下であり、前記脂肪酸亜鉛および前記脂肪酸の含有質量比が10:30~10:15であり、かつ前記パラフィンオイルの含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下である、無機粉末充填樹脂組成物。
[2]ポリエチレン系ワックスを0.1質量%以上0.9質量%以下さらに含む、[1]に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
[3]前記脂肪酸亜鉛がステアリン酸亜鉛であり、前記脂肪酸がステアリン酸である、[1]または[2]に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
[4]前記無機粉末が、炭酸カルシウム粉末である、[1]~[3]のいずれかに記載の無機粉末充填樹脂組成物。
[5]前記炭酸カルシウム粉末が、重質炭酸カルシウム粉末である、[4]に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
[6]前記重質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である[5]に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
本発明の一態様は、下記の溶着用成形品および樹脂成形品を提供する。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の無機粉末充填樹脂組成物の成形品であり、溶着法により他の部品と溶着するための溶着用領域を有する、溶着用成形品。
[8]前記溶着用領域が、超音波溶着法、振動溶着法、スピン溶着法、射出溶着法、マイクロ波溶着法、熱板溶着法、および熱風溶着法からなる群から選ばれるいずれかの溶着法により他の部品と溶着するための領域である、[7]に記載の溶着用成形品。
[9]前記[7]または[8]に記載の溶着用成形品と、前記溶着用成形品の前記溶着用領域に接合された他の部品と、を含む、樹脂成形品。
本発明によれば、成形品を他の部品に溶着可能な無機粉末充填樹脂組成物や、これから得られる溶着用成形品、およびこれを用いた樹脂成形品が提供される。
図1Aおよび図1Bは、実施例で作製した測定サンプルの形状を説明するための図である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は当該実施形態に限定されない。また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
1.無機粉末充填樹脂組成物
本実施形態の無機粉末充填樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する)は、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を含む熱可塑性樹脂と、無機粉末と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸亜鉛と、炭素数が15以上20以下の脂肪酸と、パラフィンオイルと、を含む。また、当該樹脂組成物では、熱可塑性樹脂および前記無機粉末の含有質量比が50:50~10:90であり、脂肪酸亜鉛の含有量が、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、脂肪酸の含有量が、0.2質量%以上1.8質量%以下である。また、脂肪酸亜鉛および脂肪酸の含有質量比が10:30~10:15であり、パラフィンオイルの含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下である。
上述のように、熱可塑性樹脂の含有量に対する、無機粉末の含有量が非常に多い樹脂組成物では、樹脂組成物内の熱可塑性樹脂量が少なく、その成形品を溶着によって、他の部品と接合することが難しかった。本明細書において、「溶着」とは、2つの部品を接合する方法であって、少なくとも一方の部品の溶着用領域を溶融させ、他方の部品と接合することをいう。本実施形態の樹脂組成物では、上記のように、脂肪酸亜鉛、脂肪酸、およびパラフィンオイルを所定の量含む。このように樹脂組成物がパラフィンオイルを含むと、その成形品において比較的低温で熱可塑性樹脂を可塑化させやすくなる。つまり、比較的低い温度でも熱可塑性樹脂の流動性を高めることができ、成形品の溶着性が良好になる。また、樹脂組成物が脂肪酸亜鉛および脂肪酸を、所定の比率で含むと、樹脂組成物の成形品の溶着性が格段に高まる。そのメカニズムは定かではないものの、脂肪酸亜鉛および脂肪酸が、熱可塑性樹脂と無機粉末との間で相互作用することで、成形品の溶着性が高まると考えられる。
なお、本発明の樹脂組成物は、上記以外の成分をさらに含んでいてもよい。以下、本発明の樹脂組成物が含む各成分やその含有量、さらには製造方法等について詳しく説明する。
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の熱可塑性樹脂は、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を主成分として含んでいればよく、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲で、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体以外の樹脂を一部に含んでいてもよい。なお、本明細書において、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を「主成分」として含むとは、熱可塑性樹脂中のプロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の量が、熱可塑性樹脂の総量に対して80質量%以上であることをいう。熱可塑性樹脂中のプロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
また、本明細書において、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体とは、多数のプロピレン由来の構成単位で構成されるポリマー鎖中に、ランダムにα-オレフィンの構成単位が分布した重合体をいう。当該プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体は、プロピレンと、1種のα-オレフィンとの二元ランダム共重合体であってもよく、プロピレンと2種以上のα-オレフィンとの三元以上のランダム共重合体であってもよい。また、プロピレンと、1種以上のα-オレフィンと、これら以外のモノマーとの三元以上のランダム共重合体であってもよい。当該プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体では、全構成単位の総量に対して、プロピレン由来の構成単位の量が50質量%超であればよい。ただし、プロピレン由来の構成単位の量は、全構成単位の総量に対して、80質量%以上が好ましく、82質量%以上がより好ましい。またプロピレン由来の構成単位は、全構成単位の総量に対して98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましい。プロピレン構成単位の量が十分に多いと、強度が高く、形状安定性に優れた成形品が得られやすくなる。
ここで、ポリプロピレン鎖(プロピレン由来の構造単位を連続で含む領域)の立体構造は特に制限されず、例えばトライアドタクチシティとして、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、アタクチック構造のいずれを含んでいてもよい。ただし、ポリプロピレン鎖の少なくとも一部にアイソタクチック構造を含むことが好ましい。これにより、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体が結晶領域を形成し得るため、さらに強靭さと形状安定性とを発現しやすくなる。当該トライアドタクチシティは13C-NMR等によって特定可能である。
一方、上記α-オレフィンの例には、エチレン、および炭素数4~10のα-オレフィンが含まれ、より具体的には、エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、および1-オクテン等が含まれる。プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体におけるα-オレフィン由来の構成単位の総量は、全構成単位の総量に対して、50質量%未満であればよいが、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。また、全構成単位の総量に対して、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。α-オレフィン由来の構成単位の総量が2質量%以上であると、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の融点や結晶性を調整しやすくなり、成形品の溶着性がさらに高まりやすい。一方で、α-オレフィン由来の構成単位の量が20質量%以下であると、強度が高く、形状安定性に優れた成形品がさらに得られやすくなる。
また、プロピレンやα-オレフィンと共重合してもよい、他のモノマーは、本実施形態の目的および効果を損なわないものであれば特に制限されない。他のモノマーの例には、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、ノルボルナジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等のジエン系モノマー;無水マレイン酸変性オレフィン等の酸(または酸無水物)変性オレフィン;(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリレート;等が含まれる。プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体が他のモノマー由来の構成単位を含む場合、その量は、α-オレフィン由来の構成単位の量より少ないことが好ましい。具体的には、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の全構成単位の総量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上8質量%以下がより好ましい。プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体が他のモノマー由来の構成単位を含むと、樹脂組成物や成形品の物性や加工性を調整しやすくなる。
上記プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の好ましい具体例には、プロピレン・エチレン共重合体や、プロピレン・ブチレン・エチレン共重合体等が含まれる。ただし、本実施形態で使用可能なプロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体は、これらに限定されない。また、熱可塑性樹脂は、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
ここで、上記プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の重量平均分子量は特に制限されないが、通常20,000~5,000,000が好ましく、50,000~1,000,000がより好ましく、70,000~1,000,000がさらに好ましい。当該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値であり、ポリエチレン換算値である。さらに、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の密度は、0.84~0.92g/cmが好ましく、0.85~0.91g/cmがより好ましい。さらに、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の結晶化度は0.5~40%が好ましく、20~30%がより好ましい。
プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体のASTM D1238に準拠して測定されるメルトフローレート(2.16kg荷重、230℃)は0.1~90g/10分が好ましく、0.5~30g/10分がより好ましい。さらに、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体の融点は40~180℃が好ましく、80~160℃がより好ましく、100~140℃がさらに好ましい。プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体がこのような物性を有すると、得られる成形品の溶着性がさらに良好になりやすい。
熱可塑性樹脂は、上述のように、プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体以外の樹脂をさらに含んでもよい。プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体以外の樹脂の例には、ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の熱可塑性樹脂;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・エチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、フッ素系エラストマー等のエラストマー;が含まれる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、上述のように、熱可塑性樹脂と無機粉末との含有質量比が50:50~10:90となる範囲であればよい。熱可塑性樹脂の総量は、熱可塑性樹脂および無機粉末の総量100質量部に対して15質量部以上40質量部以下がより好ましく、18質量部以上30質量部以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の量が当該範囲であると、得られる成形品の溶着性が良好になりやすい。
なお、樹脂組成物の総量に対する、熱可塑性樹脂および無機粉末の総量は、80質量%以上99.2質量%以下が好ましく、90質量%以上99質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂および無機粉末の総量が当該範囲であると、強度の高い成形品が得られやすくなる。
(無機粉末)
無機粉末は、無機物質からなる粉末であればよく、樹脂組成物の用途に応じてその種類は選択される。当該無機物質の例には、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、もしくはこれらの水和物が含まれる。無機物質の具体例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー(例えばタルクやカオリン等)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が含まれる。これらは合成のものであっても天然鉱物由来のものであってもよい。無機粉末は、これらを一種のみ、または二種以上含んでいてもよい。
また、無機粉末の形状は特に制限されず、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等のいずれであってもよい。また、粒子状の場合、一般的に合成法により得られるような球形のものであってもよく、採集した天然鉱物を粉砕にかけることで得られるような不定形状のものであってもよい。
無機粉末の好ましい例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムの粉末が含まれ、特に炭酸カルシウム粉末が好ましい。炭酸カルシウムは、合成法により調製されたもの、いわゆる軽質炭酸カルシウムであってもよい。一方で、石灰石等のCaCOを主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られる、いわゆる重質炭酸カルシウムであってもよい。さらに、軽質炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムを組み合わせたものであってもよい。本実施形態では、無機粉末が重質炭酸カルシウム粉末を含むことが特に好ましい。なお、重質炭酸カルシウムは、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウムとは明確に区別される。粉砕方法には乾式法と湿式法とがあるが、乾式法によるものが好ましい。
重質炭酸カルシウム粉末は、合成法等によって得られる軽質炭酸カルシウム粉末とは異なり、粉末形成が粉砕処理によって行われる。そのため、粉末表面の不定形性が大きく、比表面積が軽質炭酸カルシウム粉末より大きい。そのため、樹脂組成物が、重質炭酸カルシウム粉末を上記熱可塑性樹脂とともに含むと、これらの接触界面が大きくなり、重質炭酸カルシウムが、樹脂組成物内に均一に分散されやすい。当該重質炭酸カルシウム粉末の比表面積は、その平均粒子径等によっても左右されるが、3,000cm/g以上35,000cm/g以下であることが好ましい。比表面積が当該範囲であると、重質炭酸カルシウム粉末の分散性が良好になりやすい。その結果、樹脂組成物から得られる成形品の溶着性がさらに良好になりやすい。なお、上記比表面積は、空気透過法により測定される。
また、重質炭酸カルシウム粉末は不定形性が高いことが好ましい。不定形性が高いことは、例えば真円度が低いことでも表すことができる。成形品の強度や成形加工性という観点から、重質炭酸カルシウム粉末の真円度は0.50以上0.95以下が好ましく、0.55以上0.93以下がより好ましく、0.60以上0.90以下がさらに好ましい。上記真円度は、(粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積)から求められる。真円度の測定方法は特に限定されず、例えば顕微鏡写真から粒子の投影面積と粒子の投影周囲長とを測定してもよく、汎用の画像解析ソフトにより算出してもよい。
ここで、上記無機粉末は表面改質されたものであってもよく、表面改質されていないものであってもよいが、その分散性の観点では、表面改質されたものであることが好ましい。無機粉末の表面改質法の例には、プラズマ処理等による物理的な改質方法や、カップリング剤や界面活性剤等による化学的な改質方法が含まれる。化学的な改質方法に使用可能なカップリング剤の例には、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が含まれる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性の何れのものも用いることができ、その例には高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が含まれる。
また、無機粉末の平均粒子径は、特に制限されず、成形品の形状や厚さ等により適宜選択されるが、例えば0.5μm以上9.0μm以下が好ましく、0.7μm以上6.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上4.0μm以下がより好ましい。なお、本明細書における無機粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値をいう。測定機器の一例として、島津製作所製の比表面積測定装置SS-100型が挙げられる。無機粉末の平均粒子径が9.0μm以下であると、成形品から無機粉末が脱落し難くなる。なお、無機粉末はその粒径分布において、粒子径が45μm以上である粒子を含有しないことが好ましい。他方で、上記平均粒子径が0.5μm以上であると、熱可塑性樹脂と混練する際の粘度が所望の範囲に収まりやすい。
本実施形態の樹脂組成物中の無機粉末の量は、上述のように、熱可塑性樹脂および無機粉末の含有質量比が50:50~10:90となる範囲であればよい。無機粉末の量は、熱可塑性樹脂および無機粉末の総量100質量部に対して60質量部以上85質量部以下がより好ましく、70質量部以上82質量部以下がより好ましい。無機粉末の量が当該範囲であると、得られる成形品の強度がさらに高まりやすい。
(脂肪酸亜鉛)
樹脂組成物が含む脂肪酸亜鉛は、炭素数が15以上20以下の脂肪酸と亜鉛とからなる塩である。当該脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸は、一価の脂肪酸であってもよく、多価脂肪酸であってもよいが、一価の脂肪酸であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、熱可塑性樹脂や無機粉末と相互作用しやすいとの観点で飽和脂肪酸が好ましい。
当該脂肪酸亜鉛の具体例には、パルミチン酸亜鉛やステアリン酸亜鉛が含まれる。樹脂組成物は、脂肪酸亜鉛を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
樹脂組成物の総量に対する脂肪酸亜鉛の含有量は、0.1質量%以上0.9質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。脂肪酸亜鉛の含有量が0.1質量%以上であると、脂肪酸亜鉛の添加効果、すなわち溶着性の向上効果が得られる。一方で、脂肪酸亜鉛の含有量が0.9質量%以下であると、樹脂組成物や成形品から脂肪酸亜鉛がブリードアウトし難くなる。
(脂肪酸)
樹脂組成物が含む脂肪酸は、炭素数が15以上20以下の脂肪酸である。当該脂肪酸は、一価の脂肪酸であってもよく、多価脂肪酸であってもよいが、一価の脂肪酸であることが好ましい。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、熱可塑性樹脂や無機粉末と相互作用しやすいとの観点で飽和脂肪酸が好ましい。また、当該脂肪酸の炭素数は、上記脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸の炭素数との差が小さいこと好ましく、その差は2以下が好ましく、より好ましくは0である。
当該脂肪酸の具体例には、パルミチン酸やステアリン酸、およびこれらの混合物が含まれる。樹脂組成物は、脂肪酸を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
ここで、樹脂組成物中の脂肪酸の量は、上記脂肪酸亜鉛および脂肪酸の含有質量比が10:30~10:15となる範囲であればよい。当該質量比は10:29~10:16が好ましく、10:28~10:17がより好ましい。脂肪酸亜鉛および脂肪酸の含有質量比が当該範囲であると、上述のように成形品の溶着性が格段に高まる。
なお、樹脂組成物の総量に対する脂肪酸の含有量は、0.2質量%以上1.8質量%以下であればよく、0.4質量%以上1.6質量%以下が好ましい。脂肪酸の含有量が0.2質量%以上であると、脂肪酸の添加効果、すなわち成形品の溶着性の向上効果が得られる。一方で、脂肪酸の含有量が1.8質量%以下であると、樹脂組成物や成形品から脂肪酸がブリードアウトし難くなる。
(パラフィンオイル)
パラフィンオイルは、23℃で液体状のパラフィンオイルであれば特に制限されず、公知のパラフィンオイルを用いることができる。パラフィンオイルは、例えば直鎖状または分岐鎖状の炭素数が14以上30以下の炭化水素であるが、一部に環状炭化水素(ナフテン)や芳香族炭化水素を含んでいてもよい。
樹脂組成物の総量に対するパラフィンオイルの量は、0.5質量%以上3.5質量%以下であればよく、0.7質量%以上3.3質量%以下が好ましい。パラフィンオイルの量が0.5質量%以上であると、パラフィンオイルによって、熱可塑性樹脂を十分に可塑化させやすくなり、成形品の溶着性を高めることができる。一方、パラフィンオイルの量が3.5質量%以下であると、樹脂組成物や成形品からパラフィンオイルがブリードアウトし難くなる。
(ポリエチレン系ワックス)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエチレン系ワックスをさらに含んでいてもよい。ポリエチレン系ワックスは、ポリエチレンを主成分とするワックスであればよく、ポリエチレンを50質量%超含むワックスであればよいが、ポリエチレンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。
当該ポリエチレン系ワックスの融点は特に制限されないが、その融点は70℃以上150℃以下であることが好ましく、80℃以上130℃以下であることがより好ましい。ポリエチレン系ワックスの融点が当該範囲であると樹脂組成物の成形加工性が高まったり、成形品の溶着性が高まったりする。上記融点は、JIS K7121に準拠して測定される値である。
また、当該ポリエチレン系ワックスの重量平均分子量は特に制限されず、例えば1,000以上10,000以下が好ましく、1,500以上9,000以下がより好ましい。ポリエチレン系ワックスの重量平均分子量が当該範囲であると、樹脂組成物や成形品からポリエチレン系ワックスがブリードアウトし難くなる。
当該ポリエチレン系ワックスは、市販品であってもよく、その例には、NuCera Solutions社製のPOLYWAXシリーズや、三井化学社製のHiwaxシリーズ、三井化学社製のエクセレックスシリーズ、三洋科学社製のサンワックスシリーズ等が含まれる。
樹脂組成物の総量に対するポリエチレン系ワックスの量は、0.1質量%以上0.9質量%以下であればよく、0.2質量%以上0.8質量%以下が好ましい。ポリエチレン系ワックスの量が0.1質量%以上であると、ポリエチレン系ワックスによって、樹脂組成物の成形加工性が高まりすい。一方、ポリエチレン系ワックスの量が0.9質量%以下であると、樹脂組成物や成形品からのポリエチレン系ワックスがブリードアウトし難くなる。
(その他の成分)
樹脂組成物は、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲で、上記以外の成分をさらに含んでいてもよい。上記以外の成分の例には、可塑剤、色材、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、流動調整剤等が含まれる。
可塑剤の例には、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
色材は、公知の有機顔料又は無機顔料あるいは染料の何れであってもよい。色材の具体例には、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料などの有機顔料や群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラックなどの無機顔料が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
酸化防止剤の例には、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤が含まれる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系酸化防止安定剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルの例には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が含まれる。
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
フェノール系の酸化防止剤の例には、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、及びテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が含まれる。
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤や、あるいはリン系難燃剤や金属水和物などの非リン系ハロゲン系難燃剤を用いることができる。樹脂組成物は、これらを一種単独で、または二種以上含んでいてもよい。
ハロゲン系難燃剤の例には、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルフォンなどのハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールSなどのビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物等が含まれる。リン系難燃剤の例には、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が含まれる。金属水和物の例には、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが含まれる。
また、上記難燃剤と難燃助剤とを組み合わせてもよい。難燃助剤の例には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が含まれる。
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている樹脂組成物に混合、または圧入することで、気泡を発生させることが可能な化合物であれば特に制限されない。発泡剤の例には、固体から気体に相変化して気泡を発生させるもの、液体から気体に相変化して気泡を発生させるもの、または気体そのもの等が含まれる。
発泡剤の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などが含まれる。
発泡剤は、キャリアレジンと共に発泡剤の有効成分を含むものであってもよい。キャリアレジンとしては、結晶性プロピレン等の結晶性オレフィン樹脂等が挙げられる。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリプロピレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
流動性調整剤としても、公知のものを使用することができる。流動性調整剤の例には、ジアルキルパーオキサイド等の過酸化物、例えば1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン等が含まれる。使用する熱可塑性樹脂の種類によっては、これら過酸化物は架橋剤としても作用させることができる。特に上記プロピレン-α-オレフィン共重合体がジエン由来の構成単位を有する場合には、当該過酸化物によって、上記ジエンを架橋させてもよい。
帯電防止剤の例には、ラウリルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド;アルコールアミン系化合物を始めとする水酸基含有化合物等が含まれる。特に、アルコールアミン類、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が好ましい。2種以上の帯電防止剤を併用することもできる。これら帯電防止剤は、ケイ酸カルシウムや炭酸カルシウム等に担持されていてもよい。なお、脂肪酸ジエタノールアミドのアシル基の炭素数の範囲としては8以上22以下が、十分な帯電防止効果を発揮するという観点で好ましい。
(樹脂組成物の形状)
本発明の樹脂組成物の形状は特に制限されず、粒子状やペレット状、塊状等、任意の形状とすることができる。樹脂組成物がペレット状である場合、ペレットの形状は特に限定されず、円柱状、球形、楕円球状等のいずれの形状であってもよい。また、そのサイズも特に制限されず、形状に応じて適宜選択される。例えば、球形のペレットの場合、直径1~10mmとしてもよい。楕円球状のペレットの場合、長径を1~10mm程度とし、アスペクト比を0.1~1.0程度とすることができる。円柱状のペレットの場合は、直径を1~10mm程度とし、高さを1~10mm程度とすることができる。
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物の製造方法は特に制限されない。上述の熱可塑性樹脂、無機粉末、脂肪酸亜鉛、脂肪酸、パラフィンオイル、および必要に応じてポリエチレン系ワックスやその他の成分を十分に混合可能であればよく、例えば溶融混錬によって調製可能である。このとき、全ての成分を混合してから溶融混錬してもよく、一部の成分のみを先に溶融混錬し、残りの成分を後から混錬してもよい。溶融混錬を行うための装置は特に制限されず、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いることができる、特に均一な組成の樹脂組成物を得るという観点では、二軸混練機で混練することが好ましい。
2.溶着用成形品および樹脂成形品
本実施形態は、上述の樹脂組成物の成形品であって、溶着法により他の部品と溶着するための溶着用領域を有する溶着用成形品を提供する。
溶着用成形品は、上述の樹脂組成物を公知の方法により成形して得られる。樹脂組成物を成形する方法は特に制限されず、その例には、射出成形法、押出し成形法、ブロー成形法等が含まれる。また、溶着用領域の形状は特に制限されず、所望の溶着法に応じて適宜選択される。溶着用領域の形状は平面状や曲面状であってもよく、任意の凹凸を有していてもよい。
ここで、溶着用成形品の溶着用領域を他の部品と溶着する方法の例には、超音波溶着法、振動溶着法、射出溶着法、マイクロ波溶着(高周波誘導加熱溶着)法、スピン溶着法、熱板溶着法、熱風溶着法等が含まれる。これらの中でも、超音波溶着法、振動溶着法、射出溶着法(ダイスライド成形、ダイ回転成形も含む)、およびマイクロ波溶着法が好ましく、簡便で接合強度が高い樹脂成形品が得られるという観点で、超音波溶着法が特に好ましい。
超音波溶着法では、上記溶着用成形品の溶着用領域と、他の樹脂部品の溶着用領域とを圧接し、これらの界面(圧接面)に、当該界面に垂直方向の超音波振動を与える。これにより、圧接面で摩擦熱が生じる。そして、溶着用成形品(溶着用領域)中の熱可塑性樹脂、および樹脂部品中の樹脂が溶融し、溶着用成形品および樹脂部品が一体に接合される。当該超音波溶着法で溶着する樹脂部品は特に制限されず、上述の樹脂組成物の成形品であってもよく、異なる熱可塑性樹脂組成物の成形品であってもよい。ただし、一体性の高い樹脂成形品を得るという観点で、当該樹脂部品が、上述の樹脂組成物の成形品であることが好ましい。
振動溶着法では、上記溶着用成形品の溶着用領域と、他の樹脂部品の溶着用領域とを圧接し、これらの界面(圧接面)に、当該界面に平行方向の振動を与える。これにより、圧接面で摩擦熱が生じる。そして、溶着用成形品中の熱可塑性樹脂および樹脂部品中の樹脂が溶融し、溶着用成形品および樹脂部品が一体に接合される。当該振動溶着法で溶着する樹脂部品は特に制限されず、上述の樹脂組成物の成形品であってもよく、異なる熱可塑性樹脂組成物の成形品であってもよい。ただし、一体性の高い樹脂成形品を得るという観点で、当該樹脂部品が、上述の樹脂組成物の成形品であることが好ましい。
射出溶着法では、溶着用成形品を金型内に配置する。そして、溶着用成形品の溶着用領域に連続するように、部品を射出成形により形成する。当該方法では、溶着用成形品(溶着用領域)中の熱可塑性樹脂が溶融し、後から形成される部品と一体化する。なお、当該射出溶着法の射出成形に用いる材料は、上述の樹脂組成物と同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、一体性の高い樹脂成形品を得るという観点では、上述の樹脂組成物を射出成形に用いることが好ましい。
マイクロ波溶着法では、上記溶着用成形品の溶着用領域と、他の樹脂部品の溶着用領域とを圧接し、これらの界面(圧接面)に、高周波電界による分子相互間の摩擦による損失(誘電損失)を生じさせる。これにより、上記界面で発熱が生じ、溶着用成形品中の熱可塑性樹脂および樹脂部品中の樹脂が溶融し、溶着用成形品および樹脂部品が一体に接合される。当該マイクロ波溶着法で溶着する樹脂部品は特に制限されず、上述の樹脂組成物の成形品であってもよく、異なる熱可塑性樹脂組成物の成形品であってもよい。ただし、一体性の高い樹脂成形品を得るという観点で、樹脂部品は、上述の樹脂組成物の成形品であることが好ましい。
ここで、上記溶着用成形品と、当該溶着用成形品の溶着用領域に他の部品を接合した樹脂成形品の用途は特に制限されない。樹脂成形品の用途の例には、自動車用部品;テレビ・掃除機等の電気電子機器の各種部品;住宅設備機器部品;工業分野の各種部品;建材部品;玩具等、従来ポリプロピレン系の樹脂組成物が使用されてきた用途にいずれも適用可能である。
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[材料]
各実施例および比較例には、以下の成分を使用した。
・プロピレン系共重合体(プロピレン系ターポリマー、ロッテケミカル社製、SFC-851、プロピレン含量85~95質量%、ブチレンおよびエチレン含量5~15質量%)
・重炭酸カルシウム粉末(竹原化学社製、サンライトSL-1500、平均粒子径2.0μm)
・ステアリン酸亜鉛(日油社製、ジンクステアレートG)
・ステアリン酸(花王社製、ルナックS-70V)
・パラフィンオイル(H&R社製、PIONIER1535)
・ポリエチレン系ワックス(三井化学社製、HIWAX210P)
・フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製、アデカスタブAO-60)
・リン系酸化防止剤(ADEKA社製、アデカスタブ2112)
・ステアリン酸マグネシウム
[実施例1]
プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体、重炭酸カルシウム粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、パラフィンオイル、ポリエチレン系ワックス、およびフェノール酸系酸化防止剤、およびリン酸系酸化防止剤を後述の表1に示す組成比で、それぞれ二軸混練押出機(東洋精機製作所社製、Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25))に投入し、200℃で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、押出成形法によって板状のサンプル(幅20mm、長さ100mm、厚さ2mm)を作製した。
[実施例2~7、比較例1~4、および参考例]
表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様に板状のサンプルを作製した。
[評価]
2枚のサンプルを超音波溶着したときの接合強度、および各サンプルの破断伸びを以下の方法により測定した。
・接合強度の測定
各実施例、比較例、または参考例で作製した板状のサンプルを2枚ずつ準備し、これらを十字に重ねあわせて配置した。重なり部分の10mm×10mmの領域に、超音波溶着装置(株式会社カイジョー社製PLUS-20S)にて、下記の条件にて圧力をかけながら超音波を1m秒照射し、2枚のサンプルの溶着を行った。同様に、溶着時間を200m秒、または600m秒に変更して、2枚のサンプルの溶着を行った。
(溶着条件)
周波数:20kHz
圧力:150N
溶着時間:1~600m秒
保持時間:500m秒
溶着後の2枚のサンプルを引張試験機により、互いに引き離す方向に力を加えた。このとき、2枚のサンプルの引き離しに要した荷重(接合強度)を測定した。結果を表1に示す。
・破断伸びの測定
各サンプルの破断伸びを、ISO 527に準拠して測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007506818000001
[考察]
上記表1に示すように、ステアリン酸亜鉛の含有量が、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、ステアリン酸の含有量が、0.2質量%以上1.8質量%以下であり、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸の含有質量比が10:30~10:15であり、かつパラフィンオイルの量が0.5質量%以上3.5質量%以下である場合(実施例1~7)には、いずれも超音波溶着後の接合強度が高かった。また特に、これらの実施例では、単にポリプロピレンどうしを溶着させる場合(参考例)より、短い時間でサンプルどうしの接合強度を高めることができた。さらに、当該樹脂組成物から得られるサンプル(成形品)は、破断伸びが優れることから、上述の樹脂組成物によれば、強度が高い成形品が得られるといえる。
一方、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸を含んでいたとしても、上記ステアリン酸亜鉛とステアリン酸との含有質量比が、上記範囲から外れる場合には、格段に接合強度が低下した(比較例1および2)。さらに、パラフィンオイルの量が過度に少ない場合には、破断伸びの結果が悪くなり、さらには接合強度も低下した(比較例3)。また、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸の代わりに、ステアリン酸マグネシウムを用いた場合には、接合強度が低かった(比較例4)。
[実施例8~10、および比較例5]
実施例1~3、および比較例4と同様に、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、押出成形法によって図1Aに示す平面視形状(厚さ10mm)の第1サンプル11を作製した。
[評価]
以下の方法により、上記第1サンプルに射出溶着によって第2サンプル(樹脂部品)12を接合したときの接合強度を測定した。
・接合強度の測定
上記第1サンプル11を、疲労試験片作製用金型内に配置した。そして、第1サンプル11の作製に用いたペレットとそれぞれ同一のペレットを用い、第1サンプル11と同様の形状の第2サンプル12を射出成型により形成した。これにより、図1Bに示すように、第1サンプル11および第2サンプル12が、溶着用領域13で接合した測定用サンプルが得られた。
当該測定用サンプルを、引張り速度5mm/秒、スパン間隔50mmで第1サンプル11および第2サンプル12を引き離す方向に引っ張り、溶着用領域13で測定用サンプルが破断する強度(接合強度)を求めた。結果を表2に示す。
Figure 0007506818000002
[考察]
上記表2に示すように、ステアリン酸亜鉛の含有量が、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、ステアリン酸の含有量が、0.2質量%以上1.8質量%以下であり、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸の含有質量比が10:30~10:15であり、かつパラフィンオイルの量が0.5質量%以上3.5質量%以下である場合(実施例8~10)には、射出溶着後の接合強度が高かった。一方、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸の代わりに、ステアリン酸マグネシウムを用いた場合には、接合強度が低かった(比較例5)。
本発明の無機粉末充填樹脂組成物によれば、溶着によって容易に他の部品と接合可能な溶着用成形品や、溶着用成形品を他の部品と接合した樹脂成形品が得られる。したがって、自動車用部品等をはじめとする各種工業分野の部品や製品、玩具等の製造において非常に有用である。
11 第1サンプル
12 第2サンプル
13 溶着用領域

Claims (8)

  1. プロピレン・α-オレフィン系ランダム共重合体を含む熱可塑性樹脂と、
    無機粉末と、
    炭素数が15以上20以下の脂肪酸亜鉛と、
    炭素数が15以上20以下の脂肪酸と、
    パラフィンオイルと、
    を含み、
    前記熱可塑性樹脂および前記無機粉末の含有質量比が50:50~10:90であり、
    前記脂肪酸亜鉛の含有量が、0.1質量%以上0.9質量%以下であり、
    前記脂肪酸の含有量が、0.2質量%以上1.8質量%以下であり、
    前記脂肪酸亜鉛および前記脂肪酸の含有質量比が10:30~10:15であり、かつ
    前記パラフィンオイルの含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下であ
    前記無機粉末が、表面改質されていない炭酸カルシウム粉末である、
    無機粉末充填樹脂組成物。
  2. ポリエチレン系ワックスを0.1質量%以上0.9質量%以下さらに含む、
    請求項1に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
  3. 前記脂肪酸亜鉛がステアリン酸亜鉛であり、
    前記脂肪酸がステアリン酸である、
    請求項1に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
  4. 前記炭酸カルシウム粉末が、重質炭酸カルシウム粉末である、
    請求項に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
  5. 前記重質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、
    請求項に記載の無機粉末充填樹脂組成物。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の無機粉末充填樹脂組成物の成形品であり、
    溶着法により他の部品と溶着するための溶着用領域を有する、
    溶着用成形品。
  7. 前記溶着用領域が、超音波溶着法、振動溶着法、スピン溶着法、射出溶着法、マイクロ波溶着法、熱板溶着法、および熱風溶着法からなる群から選ばれるいずれかの溶着法により他の部品と溶着するための領域である、
    請求項に記載の溶着用成形品。
  8. 請求項に記載の溶着用成形品と、
    前記溶着用成形品の前記溶着用領域に接合された他の部品と、
    を含む、樹脂成形品。
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