FLT3キナーゼ阻害剤は、活性化FLT3変異による急性骨髄芽球性白血病(AML)に対する有意な臨床活性を提示する。しかし、薬物耐性は、急速に発症することが多い。モデル系において、薬物処置は、臨床薬物耐性に寄与しうるFLT3タンパク質の代償性増加をもたらす。脱ユビキチン化(DUB)酵素のUSP10が、FLT3調節因子(例えば、AMLを駆動するFLT3活性化変異体の安定化因子)であること、また、FLT3キナーゼ阻害に焦点が置かれていることとは対照的に、USP10のモジュレートによるFLT3分解に焦点を置くことによりAMLを処置しうることが、本明細書において決定された。例えば、本明細書において、FLT3と直接的に相互作用するUSP10の遺伝的ノックダウン(KD)または薬理学的阻害が、FLT3分解を引き起こし、FLT3変異体陽性AML細胞生存を低下させることが裏付けられる。USP10の阻害または遮断によるなど、その分解を促進することによるAMLを駆動する活性化変異体FLT3の活性の阻害または遮断は、FLT3キナーゼ活性の単なる阻害または遮断よりも効果的であると考えられるが、その理由として、このような分解が、単独で、またはFLT3キナーゼ活性阻害もしくは遮断と組み合わせて、FLT3の酵素機能および足場機能の両方を同時に阻害または遮断することができ、FLT3タンパク質の代償性増加または一部のキナーゼ阻害剤に関連する耐性点変異を抑えることができるからである。
I.定義
本明細書では、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」を使用して、冠詞の文法的目的語のうちの1つまたは1つを超える(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例を目的として述べると、「要素」とは、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
「投与すること」という用語は、薬剤が、その意図される機能を実行することを可能にする投与経路を含むことが意図される。使用されうる身体の処置のための投与経路の例は、注射(皮下、静脈内、非経口的、腹腔内、髄腔内(intrathecal)など)、経口、吸入および経皮経路を含む。注射は、ボーラス注射でありうる、または持続注入でありうる。投与経路に応じて、上記薬剤は、選択される材料でコーティングして、またはその中に配置して、その意図される機能を実行するその能力を有害に影響しうる天然条件からこれを保護することができる。上記薬剤は、単独で、または薬学的に許容される担体と併せて投与することができる。上記薬剤は、in vivoでその活性型に変換されるプロドラッグとして投与することもできる。
「変更された量」または「変更されたレベル」という用語は、バイオマーカー核酸の増加または減少されたコピー数(例えば、生殖細胞系列および/または体細胞の)、例えば、対照試料中のバイオマーカー核酸の発現レベルまたはコピー数と比較したがん試料中の増加または減少された発現レベルを指す。バイオマーカーの「変更された量」という用語はまた、正常な対照試料中の対応するタンパク質レベルと比較した、試料、例えば、がん試料中の、バイオマーカータンパク質の増加または減少されたタンパク質レベルも含む。さらに、バイオマーカータンパク質の変更された量は、バイオマーカータンパク質の発現または活性に影響を及ぼしうる、マーカーのメチル化状態など、翻訳後修飾を検出することにより決定することができる。
バイオマーカーの量が、それぞれ、正常または対照のレベルより、量を評価するのに採用されるアッセイの標準誤差を超える量だけ大きいかまたは小さく、好ましくはその正常量より、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、350%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%大きいかまたは小さい場合に、対象におけるバイオマーカーの量は、バイオマーカーの正常および/または量より「有意に」高量または低量である。代替的に、対象におけるバイオマーカーの量は、量が、バイオマーカーの正常および/または対照量よりも少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、2倍、3倍、4倍、5倍もしくはそれよりも多い、または5%~100%などのその間の任意の範囲だけ、それぞれ高いまたは低い場合、正常および/または対照量よりも「有意に」高量または低量と考えることができる。このような有意なモジュレーション値は、例えば、発現の変更されたレベル、変更された活性、がん細胞過剰増殖性成長の変化、がん細胞死の変化、バイオマーカー阻害の変化、被験薬剤結合の変化など、本明細書に記載されている任意の測定基準に適用することができる。
バイオマーカーの「発現の変更されたレベル」という用語は、被験試料、例えば、がんを患う患者に由来する試料中のバイオマーカーの発現レベルまたはコピー数であって、発現またはコピー数を評価するのに採用されるアッセイの標準誤差より大きいかまたは小さく、対照試料(例えば、関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルまたはコピー数の、好ましくは少なくとも2倍または2分の1であり、より好ましくは3、4、5、もしくは10倍、または最大で約3、4、5、もしくは10分の1である、発現レベルまたはコピー数を指す。発現の変更されたレベルは、発現またはコピー数を評価するのに採用されるアッセイの標準誤差より大きいかまたは小さく、対照試料(例えば、関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルまたはコピー数の、好ましくは少なくとも2倍または2分の1であり、より好ましくは3、4、5、もしくは10倍、または最大で約3、4、5、もしくは10分の1である。
バイオマーカーの「変更された活性」という用語は、正常な対照試料中のバイオマーカーの活性と比較して、疾患状態、例えば、がん試料中において増加または低下するバイオマーカーの活性を指す。バイオマーカーの変更された活性は、例えば、バイオマーカーの変更された発現、バイオマーカーの変更されたタンパク質レベル、バイオマーカーの変更された構造、あるいは、例えば、バイオマーカーと同じもしくは異なる経路に関与する他のタンパク質との変更された相互作用、または転写の活性化因子もしくは阻害剤との変更された相互作用の結果でありうる。
バイオマーカーの「変更された構造」という用語は、バイオマーカー核酸またはタンパク質内の変異または対立遺伝子改変体、例えば、バイオマーカー核酸またはタンパク質の発現または活性に、正常または野生型遺伝子またはタンパク質と比較して影響を及ぼす変異の存在を指す。例えば、変異は、置換、欠失、または付加変異を含むがこれらに限定されない。変異は、バイオマーカー核酸のコードまたは非コード領域内に存在しうる。
本明細書でそうでないことが明記されない限りにおいて、「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語は、抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)の天然に存在する形態、ならびに単鎖抗体、キメラ、およびヒト化抗体などの組換え抗体、ならびに多特異性抗体のほか、前出の全ての断片および誘導体であって、少なくとも抗原結合性部位を有する断片および誘導体を広く包含する。抗体の誘導体は、抗体とコンジュゲートさせたタンパク質または化学的部分を含みうる。
加えて、イントラボディ(intrabody)は、抗体の特徴を有するが、目的の細胞内標的に結合および/またはこれを阻害するために細胞内で発現されうる、周知の抗原結合性分子である(Chenら(1994年)Human Gene Ther.5巻:595~601頁)。例えば、単鎖抗体(scFv)の使用、超安定性のための免疫グロブリンVLドメインの修飾、還元性細胞内環境に抵抗するための抗体の修飾、細胞内安定性を増加させるおよび/または細胞内局在化をモジュレートする融合タンパク質の生成など、細胞内部分を標的と(例えば、阻害)するように抗体を適応させるための方法は、当技術分野で周知である。細胞内抗体は、例えば、予防および/または治療目的で(例えば、遺伝子治療として)、多細胞生物の1個または複数の細胞、組織または臓器において導入および発現させることもできる(少なくともPCT公開WO08/020079、WO94/02610、WO95/22618およびWO03/014960;米国特許第7,004,940号;CattaneoおよびBiocca(1997年)Intracellular Antibodies: Development and Applications(Landes and Springer-Verlag publs.);Kontermann(2004年)Methods 34巻:163~170頁;Cohenら(1998年)Oncogene 17巻:2445~2456頁;Auf der Maurら(2001年)FEBS Lett.508巻:407~412頁;Shaki-Loewensteinら(2005年)J. Immunol. Meth.303巻:19~39頁を参照されたい)。
本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、抗体の「抗原結合性部分」(または単に、「抗体の部分」)も含む。本明細書で使用される「抗原結合性部分」という用語は、抗原(例えば、バイオマーカーポリペプチドまたはその断片)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1または複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により果たされうることが示されている。抗体の「抗原結合性部分」という用語の中に包含される結合性断片の例は、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなる、Fd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなる、Fv断片;(v)VHドメインからなる、dAb断片(Wardら、(1989年)、Nature、341巻:544~546頁);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、別個の遺伝子によりコードされているが、組換え法を使用して、それらが単一のタンパク質鎖となることを可能とする合成リンカーにより結合することができ、この場合、VL領域とVH領域とは、対合して、一価ポリペプチドを形成する(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Birdら(1988年)、Science、242巻:423~426頁;およびHustonら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、85巻:5879~5883頁;およびOsbournら、1998年、Nature Biotechnology、16巻:778頁を参照されたい)。抗体の「抗原結合性部分」という用語の中にはまた、このような単鎖抗体も包含することを意図する。完全なIgGポリペプチドまたは他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成するために、特異的なscFvの任意のVHおよびVL配列を、ヒト免疫グロブリン定常領域のcDNAまたはゲノム配列に連結することができる。VHおよびVLはまた、タンパク質化学反応または組換えDNA技術を使用する、免疫グロブリンのFab、Fv、または他の断片の生成においても使用することができる。また、ダイアボディ(diabody)など、単鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディとは、VHおよびVLドメインを、単一のポリペプチド鎖上で、但し同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短過ぎるリンカーを使用して発現させ、これにより、ドメインに、別の鎖の相補的なドメインと対合させ、2つの抗原結合性部位を創出する、二価の二特異性抗体である(例えば、Holligerら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、U.S.A.、90巻:6444~6448頁;Poljakら(1994年)、Structure、2巻:1121~1123頁を参照されたい)。
なおさらに、抗体またはその抗原結合性部分は、抗体または抗体の部分の、1または複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合により形成される、より大型の免疫接着ポリペプチドの一部でありうる。このような免疫接着ポリペプチドの例は、四量体のscFvポリペプチドを作る、ストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら(1995年)、Human Antibodies and Hybridomas、6巻:93~101頁)、ならびに二価のビオチン化scFvポリペプチドを作る、システイン残基、バイオマーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら(1994年)、Mol. Immunol.、31巻:1047~1058頁)を含む。FabおよびF(ab’)2断片など、抗体の部分は、それぞれ、抗体全体のパパインまたはペプシン消化など、従来の技法を使用して、抗体全体から調製することができる。さらに、抗体、抗体の部分、および免疫接着ポリペプチドは、本明細書で記載される、標準的な組換えDNA法を使用して得ることができる。
抗体は、ポリクローナルの場合もあり、モノクローナルの場合もあり、異種の場合もあり、同種の場合もあり、同系の場合もあり、これらの修飾形態(例えば、ヒト化、キメラなど)の場合もある。抗体はまた、完全にヒトのものである場合もある。好ましくは、本発明の抗体は、バイオマーカーポリペプチドまたはその断片に、特異的または実質的に特異的に結合する。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成物」という用語は、抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な、抗原結合性部位の1つの分子種だけを含有する、抗体ポリペプチドの集団を指すのに対し、「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル抗体組成物」という用語は、特定の抗原と相互作用することが可能な、抗原結合性部位の複数の分子種を含有する、抗体ポリペプチドの集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、それが免疫反応する特定の抗原に対する、単一の結合アフィニティーを提示することが典型的である。
抗体はまた、「ヒト化」されてもよく、これはヒト細胞により作られる抗体により酷似するように変更された可変および定常領域を有する、非ヒト細胞により作られる抗体を含むように意図される。例えば、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列中に見出されるアミノ酸を組み込むように、非ヒト抗体アミノ酸配列を変更することを介する。本発明のヒト化抗体は、例えば、CDR内に、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはin vivoにおける体細胞変異により導入される変異)を含みうる。本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語はまた、マウスなど、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列を、ヒトフレームワーク配列へとグラフトした抗体も含む。
「割り当てられたスコア」という用語は、患者試料中で測定された後で、バイオマーカーの各々について指定される数値を指す。割り当てられたスコアは、試料中のバイオマーカーの非存在、存在、または推定量と相関する。割り当てられたスコアは、手作業で(例えば、目視により)、または画像の取得および解析のための装置の補助により生成することができる。ある特定の実施形態では、割り当てられたスコアを、定性的評価、例えば、グレード付けされたスケール上の蛍光リードアウトの検出、または定量的評価により決定する。一実施形態では、複数の測定されたバイオマーカーに由来する、割り当てられたスコアの組合せを指す、「集合スコア(aggregate score)」を決定する。一実施形態では、集合スコアとは、割り当てられたスコアの合計である。別の実施形態では、割り当てられたスコアの組合せは、割り当てられたスコアに対する数学的演算を実行してから、それらを集合スコアへと組み合わせることを伴う。ある特定の実施形態では、本明細書ではまた、集合スコアを、予測スコア」とも称する。
「バイオマーカー」という用語は、抗AML療法(例えば、USP10阻害剤療法)の効果を予測することが決定されている、本発明の測定可能な実体を指す。バイオマーカーは、限定なしに述べると、核酸(例えば、ゲノム核酸および/または転写された核酸)、およびタンパク質、特に、表1に示される、関与するものを含みうる。表1に列挙されている多くのバイオマーカーは、治療標的としても有用である。一実施形態では、このような標的は、表1に示すUSP10メンバーおよび/または表2に示すFlt3メンバーである。
「遮断」抗体または抗体「アンタゴニスト」とは、それが結合する抗原の少なくとも1つの生物学的活性を、阻害または低減する抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書で記載される遮断抗体もしくはアンタゴニスト抗体またはそれらの断片は、抗原の所与の生物学的活性を、実質的または完全に阻害する。
「体液」という用語は、体内から排出または分泌される流体のほか、通常体内から排出または分泌されない流体(例えば、羊水、房水、胆汁、血液および血漿、脳脊髄液、耳垢(cerumenおよびearwax)、カウパー腺液または尿道球腺液(pre-ejaculatory fluid)、乳び、びじゅく、糞便、スキーン腺液(female ejaculate)、間質液、細胞内液、リンパ、経血、母乳、粘液、胸膜液、膿、唾液、皮脂、精液、血清、汗、滑膜液、涙、尿、膣液(vaginal lubrication)、硝子体液、および吐瀉物)も指す。
「がん」または「腫瘍」または「過剰増殖性」という用語は、制御されない増殖、不死性、転移能、急速な成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態学的特色など、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を保有する細胞の存在を指す。一部の実施形態では、このような細胞は、FLT3キナーゼ活性を活性化する変異を有するFLT3などの癌遺伝子の発現および活性に部分的にまたは完全に起因する、このような特徴を呈する。がん細胞は、多くの場合、腫瘍の形態であるが、このような細胞は、動物内に単独で存在しうる、または白血病細胞などの非腫瘍形成性がん細胞でありうる。本明細書で使用される通り、「がん」という用語は、前悪性および悪性がんを含む。がんは、B細胞がん、例えば、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病およびミュー鎖病などの重鎖病、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、ならびに免疫細胞アミロイドーシス、メラノーマ、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、脳または中枢神経系がん、末梢神経系がん、食道がん、子宮頸部がん、子宮または子宮内膜がん、口腔または咽頭のがん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆管がん、小腸または虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液学的組織のがんなどを含むがこれらに限定されない。本発明によって包含される方法に適用可能ながんの種類の他の非限定的な例は、ヒトの肉腫および癌、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、肝臓がん、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸部がん、骨がん、脳腫瘍、精巣がん、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーマ、アストロサイトーマ、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、ニューロブラストーマ、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ球性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病);ならびに真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および重鎖病を含む。一部の実施形態では、がんは、上皮性(epithlelial)の性質であり、膀胱がん、乳がん、子宮頸部がん、結腸がん、婦人科がん、腎がん、喉頭がん、肺がん、口腔がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がんまたは皮膚がんを含むがこれらに限定されない。他の実施形態では、がんは、乳がん、前立腺がん、肺がんまたは結腸がんである。また他の実施形態では、上皮がんは、非小細胞肺がん、非乳頭状腎細胞癌、子宮頸部癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)または乳癌である。上皮がんは、漿液性、類内膜、粘液性、明細胞、ブレンナーまたは未分化型を含むがこれらに限定されない、様々な他の方式で特徴付けることができる。
ある特定の実施形態では、がんは、急性骨髄芽球性白血病(AML)である。AMLは、成人AML、小児AMLまたはその両方でありうる。急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性骨髄芽球性白血病、急性顆粒球性白血病または急性非リンパ球性白血病としても公知の急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)(AML)は、疲労、息切れ、胆管癌および出血になり易いことならびに感染の危険性の増大によって特徴付けられる血液および骨髄の急成長型のがんである。AMLは、最も一般的な種類の急性白血病である。骨髄が、未だ完全には成熟していない細胞である芽球を作り始めると、AMLが起こる。このような芽球は正常では、白血球に発生する。しかし、AMLにおいて、このような細胞は、発生せず、感染を回避することができない。AMLにおいて、骨髄は、異常赤血球および血小板を作ることもできる。このような異常細胞の数は、急速に増加し、異常(白血病)細胞は、身体が必要とする正常白血球、赤血球および血小板を締め出し始める。AMLは、他の白血病よりも多くの芽球(骨髄芽球、単芽球および巨核芽球)を含む、より高い百分率の脱分化および未分化細胞が関与する。AML亜型は、白血病が発症する細胞型に基づき分類される。8種の共通AML亜型は、特殊解析における骨髄芽球性(M0)、成熟なしの骨髄芽球性(M1)、成熟ありの骨髄芽球性(M2)、前骨髄球性(promyeloctic)(M3)、骨髄単球性(M4)、単球性(M5)、赤白血病(M6)および巨核球性を含む。一般に、AMLを処置する標準治療は、寛解誘導を目標とする化学療法による初期処置であるが、さらなる化学療法または造血幹細胞移植が後に続いてもよい。
AMLの早期徴候は、多くの場合、はっきりとせずかつ非特異的であり、インフルエンザまたは他の一般的疾病の初期徴候と同様のものでありうる。一部の全身性症状は、発熱、疲労、体重減少または食欲不振、息切れ、貧血、胆管癌または出血になり易いこと、点状出血(出血に起因する皮膚下の扁平な帽針頭大の斑点)、骨および関節痛、ならびに持続性または高頻度感染を含む。脾臓の拡張は、AMLにおいて起こることがあるが、典型的には軽度かつ無症候性である。リンパ節腫脹は、急性リンパ芽球性白血病とは対照的にAMLでは稀である。皮膚は、約10%の割合で、皮膚白血病の形態で関与する。稀に、皮膚の腫瘍随伴炎症であるスイート症候群が、AMLに伴い起こることがある。一部のAML患者は、歯肉組織への白血病性細胞の浸潤により、歯肉の腫脹を経験しうる。稀に、白血病の最初の徴候は、緑色腫と呼ばれる骨髄外部の固形白血病性腫瘤または腫瘍の発症でありうる。AML診断の最初の手がかりは、典型的に、全血球計算に関する異常結果である。過剰な異常白血球(白血球増加症)が共通所見であり、白血病性芽球が観察されることがあるが、AMLは、血小板、赤血球の孤立した減少、またはさらには低い白血球計数(白血球減少症)を提示する場合もある。循環白血病性芽球が存在する場合、末梢血スメアの検査によってAMLの推定診断を為すことができるが、確定診断は通常、適切な骨髄穿刺および生検を要求する。骨髄または血液は、光学顕微鏡検査やフローサイトメトリー下で検査されて、白血病の存在を診断し、他の種類の白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病 - ALL)からAMLを鑑別し、疾患の亜型を分類する。骨髄または血液の試料は典型的に、慣用的な細胞遺伝学または蛍光in situハイブリダイゼーションによって染色体異常についても調べられる。遺伝的研究を行って、疾患のアウトカムに影響しうるFLT3、ヌクレオフォスミンおよびKITなど、遺伝子における特異的変異を探すこともできる。血液および骨髄スメアにおける細胞化学的染色は、ALLからのAMLの区別およびAMLの細分類に役立つ。ミエロペルオキシダーゼまたはスダンブラック染色および非特異的エステラーゼ染色の組合せは、大抵の場合、所望の情報を提供する。ミエロペルオキシダーゼまたはスダンブラック反応は、AMLの同定の確立およびAMLのALLからの識別において最も有用である。非特異的エステラーゼ染色は、AMLにおける単球性成分の同定および低分化単芽球性白血病のALLからの識別に使用される。
2種の最も一般的に使用されているAMLの分類スキーマは、古い方のフレンチアメリカンブリティッシュ(French-American-British)(FAB)方式および新しい方の世界保健機関(World Health Organization)(WHO)方式である。広く使用されているWHO基準に従うと、遺伝的異常の存在が芽球パーセントに無関係に診断的である、反復性遺伝的異常(t(8;21)、inv(16)およびt(15;17))を有するAMLの3種の最良の予後形態の場合を除いて、AMLの診断は、白血病性骨髄芽球による血液および/または骨髄の20%超の関与を裏付けることにより確立される。フレンチアメリカンブリティッシュ(FAB)分類は、AMLの診断のための骨髄(BM)または末梢血(PB)における少なくとも30%の芽球百分率が関与する。AMLは、異なって処置される、骨髄異形成症候群または骨髄増殖性症候群などの「前白血病」状態から慎重に鑑別される必要がある。血液または骨髄において行われる蛍光in situハイブリダイゼーションは、AMLとは異なるAPLを特徴付ける染色体転座[t(15;17)(q22;q12);](PML/RARA融合タンパク質癌遺伝子)を同定することができるため、多くの場合、診断のために使用される。
「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含む、ヌクレオチド配列の領域を指すのに対し、「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されない、ヌクレオチド配列の領域(例えば、5’および3’側非翻訳領域)を指す。
「相補的な」という用語は、2つの核酸鎖の領域の間または同じ核酸鎖の2つの領域の間の配列相補性についての広範な概念を指す。残基が、チミンまたはウラシルである場合、第1の核酸領域のアデニン残基は、第1の領域とアンチパラレルな、第2の核酸領域の残基と、特異的な水素結合(「塩基対合」)を形成することが可能であることが公知である。同様に、残基が、グアニンである場合、第1の核酸鎖のシトシン残基は、第1の鎖とアンチパラレルな、第2の核酸鎖の残基との塩基対合が可能であることが公知である。2つの領域が、アンチパラレルに配置される場合に、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が、第2の領域の残基との塩基対合が可能であれば、核酸の第1の領域は、同じまたは異なる核酸の第2の領域と相補的である。第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含むことが好ましく、これにより、第1および第2の部分が、アンチパラレルに配置されている場合、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、第2の部分内のヌクレオチド残基との塩基対合が可能である。より好ましくは、第1の部分の全てのヌクレオチド残基は、第2の部分内のヌクレオチド残基との塩基対合が可能である。
「対照」という用語は、被験試料中の発現産物との比較をもたらすのに適する、任意の基準物質を指す。一実施形態では、対照は、それに由来する発現産物のレベルを検出し、被験試料に由来する発現産物のレベルと比較する、「対照試料」を得ることを含む。このような対照試料は、アウトカムが既知である、対照がん患者に由来する試料(保存された試料による測定値の場合もあり、かつての試料測定値の場合もある);正常患者もしくはがん患者などの対象から単離された正常組織もしくは細胞、正常対象もしくはがん患者などの対象から単離された培養初代細胞/組織、がん患者の同じ臓器もしくは身体の場所から得られた、隣接正常細胞/組織、正常対象から単離された組織もしくは細胞試料、または受託機関から得られた初代細胞/組織を含むがこれらに限定されない、任意の適切な試料を含みうる。別の好ましい実施形態では、対照は、ハウスキーピング遺伝子、正常組織(または他の既に解析された対照試料)からの発現産物レベルの範囲、ある特定のアウトカム(例えば、1、2、3、4年間にわたる生存など)を伴うか、またはある特定の処置(例えば、がん療法の標準治療)を施される、患者群または患者のセットに由来する被験試料中の、既に決定された発現産物レベルの範囲を含むがこれらに限定されない、任意の適切な供給源に由来する、基準物質の発現産物レベルを含みうる。当業者は、このような対照試料および基準物質の発現産物レベルを、本発明の方法において、対照として組み合わせて使用しうることを理解するであろう。一実施形態では、対照は、正常または非がん性の細胞/組織試料を含みうる。別の好ましい実施形態では、対照は、がん患者のセットなど、患者のセット、またはある特定の処置を施されるがん患者のセット、または別のアウトカムと対比した1つのアウトカムを伴う患者のセットについての発現レベルを含みうる。前者の場合、各患者の特異的な発現産物レベルを、百分位数による発現レベルへと割り当てることもでき、基準物質による発現レベルの平均値または平均より高いまたは低いレベルとして表すこともできる。別の好ましい実施形態では、対照は、正常細胞、組合せ化学療法により処置した患者に由来する細胞、および良性がんを有する患者に由来する細胞を含みうる。別の実施形態では、対照はまた、測定値、例えば、同じ集団内のハウスキーピング遺伝子の発現レベルと比較した、集団内の特定の遺伝子の平均発現レベルも含みうる。このような集団は、正常対象、いかなる処置も受けていないがん患者(すなわち、処置ナイーブ)、標準治療ケアを受けているがん患者、または良性がんを有する患者を含みうる。別の好ましい実施形態では、対照は、被験試料中の2つの遺伝子の発現産物レベルの比を決定し、これを、基準物質中の、同じ2つの遺伝子の任意の適切な比と比較すること;被験試料中の2つまたはそれ超の遺伝子の発現産物レベルを決定し、任意の適切な対照中の発現産物レベルの差異を決定すること;ならびに被験試料中の2つまたはそれ超の遺伝子の発現産物レベルを決定し、それらの発現を、被験試料中のハウスキーピング遺伝子の発現に照らして正規化し、任意の適切な対照と比較することを含むがこれらに限定されない、発現産物レベルの比への変換を含む。特に好ましい実施形態では、対照は、被験試料と同じ系統および/または種類の対照試料を含む。別の実施形態では、対照は、がんを有する全ての患者など、患者試料のセット中の百分位数または患者試料のセットに基づく百分位数として群分けされた発現産物レベルを含みうる。一実施形態では、対照の発現産物レベルを確立し、この場合、例えば、特定の百分位数と比べて高いまたは低い発現産物レベルを、アウトカムを予測するためのベースとして使用する。別の好ましい実施形態では、既知のアウトカムを伴うがん対照患者からの発現産物レベルを使用して、対照の発現産物レベルを確立し、被験試料に由来する発現産物のレベルを、アウトカムを予測するためのベースとして、対照の発現産物レベルと比較する。下記のデータにより裏付けられる通り、本発明の方法は、被験試料中の発現産物レベルを、対照と比較するときの特異的な切断点(cut-point)の使用に限定されない。
バイオマーカー核酸の「コピー数」とは、特定の遺伝子産物をコードする、細胞(例えば、生殖細胞系列および/または体細胞)中のDNA配列の数を指す。一般に、所与の遺伝子について、哺乳動物は、各遺伝子の2つずつのコピーを有する。しかし、コピー数は、遺伝子増幅または重複により増加する場合もあり、欠失により低減される場合もある。例えば、生殖細胞系列のコピー数変化は、1または複数のゲノム遺伝子座における変化であって、前記1または複数のゲノム遺伝子座が、対照中の生殖細胞系列のコピーのうちの、正常相補体中のコピー数(例えば、特異的な生殖細胞系列のDNAおよび対応するコピー数を決定した種と同じ種についての、生殖細胞系列のDNA内の正常コピー数)により説明されない変化を含む。体細胞のコピー数変化は、1または複数のゲノム遺伝子座における変化であって、前記1または複数のゲノム遺伝子座が、対照の生殖細胞系列のDNA中のコピー数(例えば、体細胞のDNAおよび対応するコピー数を決定した対象と同じ対象についての、生殖細胞系列のDNA中のコピー数)により説明されない変化を含む。
バイオマーカー核酸の「正常」コピー数(例えば、生殖細胞系列および/または体細胞)またはバイオマーカー核酸もしくはタンパク質の「正常」発現レベルとは、生体試料、例えば、がんに罹患していない対象、例えば、ヒト、またはがんを有する同じ対象における、対応する非がん性組織に由来する組織、全血、血清、血漿、口腔内切屑、唾液、脳脊髄液、尿、糞便、および骨髄を含有する試料中の発現の活性/レベルまたはコピー数である。
「対象に適する処置レジメンを決定すること」という用語は、本発明に従う解析の結果に基づくか、または本質的に基づくか、または少なくとも部分的に基づき、開始、改変、および/または終了させる対象のための処置レジメン(すなわち、対象におけるがんを予防および/または処置するために使用される、単一の療法または異なる療法の組合せ)の決定を意味するように理解する。一例は、がんに対する標的化療法を提供して、抗がん療法(例えば、USP10阻害剤療法)を提供するかどうかの決定である。別の例は、その目的が再発の危険性を減少させることである、外科手術後のアジュバント療法の開始であり、その他は、特定の化学療法の投与量を修飾することである。決定は、本発明に従う解析の結果に加えて、処置される対象の個人的な特徴にも基づきうる。大半の場合、対象に適する処置レジメンの実際の決定は、主治医(attending physicianまたはattending doctor)により実施する。
「発現シグネチャ」または「シグネチャ」という用語は、2つまたはそれ超の協同的に発現するバイオマーカーの群を指す。例えば、このシグネチャを構成する遺伝子、タンパク質などは、特異的な細胞系統、分化段階、または特定の生物学的応答中において発現されうる。バイオマーカーは、がんの起源の細胞、生検における非悪性細胞の性質、およびがんの原因である発癌性機構など、それが発現される腫瘍の生物学的態様を反映することができる。発現データおよび遺伝子の発現レベルは、コンピュータ可読媒体、例えば、マイクロアレイまたはチップ読取りデバイスと共に使用されるコンピュータ可読媒体上に保存することができる。このような発現データを操作して、発現シグネチャを生成することができる。
分子は、分子の実質的な画分が基材(substrate)から解離することなく流体(例えば、標準クエン酸食塩水(standard saline citrate)、pH7.4)で基材をすすぎうるように、分子が基材と共有結合的または非共有結合的に会合している場合、基材に「固定」されているか、または「付着」している。
「FLT3」という用語は、受容体チロシンキナーゼクラスIIIに属するサイトカイン受容体としてのFms関連チロシンキナーゼ3を指し、代替的に、「Fms関連チロシンキナーゼ3」、「幹細胞チロシンキナーゼ1」、「Fms様チロシンキナーゼ3」、「FLサイトカイン受容体」、「CD135」、「CD135抗原」、「EC 2.7.10.1」、「EC 2.7.10」、「FLK-2」、「STK1」、「増殖因子受容体チロシンキナーゼIII型」、「胎児肝臓キナーゼ2」および「受容体型チロシン-タンパク質キナーゼFLT3」として公知である。FLT3の構成的活性化をもたらす体細胞変異は、AML患者において高頻度で存在する。このような変異は、2クラスに分けられ、最も一般的なのは、キナーゼ活性の正常調節を破壊する、膜近傍領域における可変長のインフレーム遺伝子内縦列重複である。同様に、キナーゼドメインの活性化ループにおける点変異は、構成的に活性化されたキナーゼをもたらすことができる。
FLT3核酸およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、U.S. National Center for Biotechnology Informationにより維持されているGenBankデータベースにおいて公的に利用可能である。例えば、ヒトFLT3核酸配列は、周知であり、例えば、NM_004119.2(改変体1、短い方の転写物を表し、そのタンパク質をコードする)およびNR_130706.1(改変体2、これは、改変体1と比較して、代替内部エクソン(alternate internal exon)を含有する)を含む。改変体1において使用される通りに、最も5’にある予想される翻訳開始コドンを使用することは、転写物をナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)の候補にするため、改変体2は、非コードである。さらなるFlt3ヒト配列は、XM_017020486.1、XM_017020489.1、XM_017020487.1、XM_017020488.1、XM_011535015.2、XM_011535017.2およびXM_011535018.2を限定することなく含む。ヒトFLT3アミノ酸配列は、周知であり、例えば、NP_004110.2(改変体1、上記の通り)、XP_016875975.1、XP_016875978.1、XP_016875976.1、XP_016875977.1、XP_011533317.1、XP_011533319.1およびXP_011533320.1を含む。
他の種におけるFLT3オーソログの核酸配列およびアミノ酸配列もまた、周知であり、例えば、チンパンジー(Pan troglodytes)FLT3(XM_509601.5およびXP_509601.2)、アカゲザル(Macaca mulatta)FLT3(XM_015120801.1およびXP_014976287.1、XM_015120802.1およびXP_014976288.1、XM_001117913.2およびXP_001117913.1、XM_015120803.1およびXP_014976289.1)、イヌ(Canis lupus familiaris)FLT3(NM_001020811.1およびNP_001018647.1、XM_005635382.2およびXP_005635439.1、XM_014107333.1およびXP_013962808.1、XM_014107331.1およびXP_013962806.1、XM_014107332.1およびXP_013962807.1)、ウシ(Bos taurus)FLT3(XM_010810805.2およびXP_010809107.2、XM_015465697.1およびXP_015321183.1)、イエハツカネズミ(Mus musculus)FLT3(NM_010229.2およびNP_034359.2、XM_006504805.3およびXP_006504868.1、XM_006504804.3およびXP_006504867.1)、ノルウェーラット(Rattus norvegicus)FLT3(NM_001100822.2およびNP_001094292.1)、ニワトリ(Gallus gallus)FLT3(XM_015278776.1およびXP_015134262.1、XM_003640612.3およびXP_003640660.2)、熱帯ツメガエル(Xenopus tropicalis)FLT3(XM_012957932.2およびXP_012813386.1)およびゼブラフィッシュ(Danio rerio)FLT3(XM_001921725.4およびXP_001921760.2)を含む。加えて、FLT3阻害剤は、当技術分野で周知であり、スニチニブ、ソラフェニブ、ミドスタウリン(PKC412)、レスタウルチニブ(CEP-701)、タンダウチニブ(MLN518)、キザルチニブ(AC220)およびKW-2449を限定することなく含む(Wiernikら(2010年)Clin. Adv. Hematol. Oncol.8巻:429~437頁)。同様に、抗FLT3検出剤は、当技術分野で周知であり、抗体OAAF00442(Aviva Systems Biology)、8F2(Cell Signaling Technology)、ab66035(Abcam)、PE A2F10(eBioscience)を限定することなく含む(Juら(2011年)Hybridoma 30巻:61~67頁;Pilotoら(2005年)Cancer Res.65巻:1514~1522頁))。
「相同」という用語は、同じ核酸鎖の2つの領域の間または2つの異なる核酸鎖の領域の間のヌクレオチド配列の類似性を指す。両方の領域内のヌクレオチド残基の位置が、同じヌクレオチド残基で占有されている場合、領域は、その位置において相同である。各領域の、少なくとも1つのヌクレオチド残基の位置が、同じ残基で占有されている場合、第1の領域は、第2の領域と相同である。2つの領域の間の相同性は、同じヌクレオチド残基で占有された、2つの領域のヌクレオチド残基の位置の比率との関係で表される。例を目的として述べると、ヌクレオチド配列である5’-ATTGCC-3’を有する領域と、ヌクレオチド配列である5’-TATGGC-3’を有する領域とは、50%の相同性を共有する。第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含むことが好ましく、これにより、部分の各々のヌクレオチド残基の位置の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、同じヌクレオチド残基で占有されている。より好ましくは、部分の各々の全てのヌクレオチド残基の位置は、同じヌクレオチド残基で占有されている。
「免疫細胞」という用語は、免疫応答における役割を果たす細胞を指す。免疫細胞は、造血起源のものであり、B細胞およびT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球および顆粒球などの骨髄性細胞を含む。
「免疫チェックポイント」という用語は、抗腫瘍免疫応答を下方モジュレートまたは阻害することにより免疫応答を微調整する、CD4+および/またはCD8+T細胞の細胞表面における分子の群を指す。免疫チェックポイントタンパク質は、当技術分野で周知であり、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、2B4、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGITおよびA2aRを限定することなく含む(例えば、WO2012/177624を参照されたい)。この用語は、生物学的活性タンパク質断片、ならびに全長免疫チェックポイントタンパク質およびその生物学的活性タンパク質断片をコードする核酸をさらに包含する。一部の実施形態では、この用語は、本明細書に提供されている相同性の記載に従った任意の断片をさらに包含する。
免疫チェックポイントおよびその配列は、当技術分野で周知であり、代表的実施形態を以下に記載する。例えば、「PD-1」という用語は、公知リガンドとしてPD-L1およびPD-L2を有する共阻害受容体として機能する、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーを指す。PD-1は、TCR誘導性活性化T細胞死において上方調節される遺伝子を選択するためのサブトラクションクローニングに基づく手法を使用して、以前に同定された。PD-1は、PD-L1に結合するその能力に基づく分子のCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーである。CTLA-4と同様に、PD-1は、抗CD3に応答してT細胞の表面において急速に誘導される(Agataら、25(1996年)Int. Immunol.8巻:765頁)。しかし、CTLA-4とは対照的に、PD-1は、B細胞の表面においても誘導される(抗IgMに応答して)。PD-1は、胸腺および骨髄性細胞のサブセットにおいても発現される(Agataら(1996年)前出;Nishimuraら(1996年)Int. Immunol.8巻:773頁)。
「抗免疫チェックポイント」療法は、免疫チェックポイント核酸および/またはタンパク質を阻害する薬剤の使用を指す。免疫チェックポイントは、免疫応答を抑制する阻害シグナルを提供する共通機能を共有し、1種または複数種の免疫チェックポイントの阻害は、阻害シグナル伝達を遮断するまたはさもなければ中和して、これにより、がんをより効果的に処置するために免疫応答を上方調節することができる。免疫チェックポイントの阻害に有用な例示的な薬剤は、免疫チェックポイントタンパク質またはその断片に結合することができる、および/またはこれを不活性化もしくは阻害することができる、抗体、小分子、ペプチド、ペプチド模倣剤、天然リガンドおよび天然リガンドの誘導体;ならびに免疫チェックポイント核酸またはその断片の発現および/または活性を下方調節することができる、RNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマーなどを含む。免疫応答を上方調節するための例示的な薬剤は、1種または複数種の免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する、該タンパク質に対する抗体;非活性化型の1種または複数種の免疫チェックポイントタンパク質(例えば、ドミナントネガティブポリペプチド);1種または複数種の免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する小分子またはペプチド;その天然受容体(複数可)に結合する融合タンパク質(例えば、抗体または免疫グロブリンのFc部分に融合させた免疫チェックポイント阻害タンパク質の細胞外部分);免疫チェックポイント核酸転写または翻訳を遮断する核酸分子などを含む。このような薬剤は、上記1種または複数種の免疫チェックポイントとその天然受容体(複数可)(例えば、抗体)との間の相互作用を直接的に遮断して、阻害シグナル伝達を防止し、免疫応答を上方調節することができる。あるいは、薬剤は、1種または複数種の免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を間接的に遮断して、阻害シグナル伝達を防止し、免疫応答を上方調節することができる。例えば、安定化された細胞外ドメインなど、可溶性バージョンの免疫チェックポイントタンパク質リガンドは、その受容体に結合して、適切なリガンドに結合するための受容体の有効濃度を間接的に低下させることができる。一実施形態では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗PD-L2抗体は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、免疫チェックポイントの阻害に使用される。これらの実施形態は、PD-1経路(例えば、抗PD-1経路療法、これはさもなければ、PD-1経路阻害剤療法として公知である)など、特定の免疫チェックポイントに対する特異的療法にも適用可能である。例えば、Keytruda(登録商標)(ペムブロリズマブ;抗PD-1抗体)、Opdivo(登録商標)(ニボルマブ;抗PD-1抗体)、Tecentriq(登録商標)(アテゾリズマブ;抗PD-L1抗体)、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)などを含む、多数の免疫チェックポイント阻害剤が公知であり公に入手可能である。
「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答は、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞の細胞傷害性を含む。加えて、免疫応答という用語は、T細胞活性化によって間接的に影響される免疫応答、例えば、抗体産生(液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化を含む。
「免疫療法剤」という用語は、宿主免疫系を刺激して、対象における腫瘍またはがんに対する免疫応答を生成することができる、任意の分子、ペプチド、抗体または他の薬剤を含むことができる。様々な免疫療法剤は、本明細書に記載されている組成物および方法において有用である。
「阻害する」または「欠損している」という用語は、例えば、特定の作用、機能または相互作用の低下、制限、または遮断を含む。一部の実施形態では、がんの少なくとも1つの症状が、緩和されるか、終結するか、緩徐化するか、または防止される場合、そのがんは、「阻害される」。本明細書で使用される通り、がんの再発または転移が、低減されるか、緩徐化するか、遅延するか、または防止される場合もまた、そのがんは、「阻害される」。同様に、タンパク質の機能など、生物学的機能が野生型状況のような対照などの参照状況と比較して低下する場合、それは阻害される。例えば、USP10阻害剤と接触していないUSP10タンパク質と比較して、FLT3キナーゼの安定性が、USP10阻害剤との接触により低下する場合、USP10阻害剤と接触しているUSP10タンパク質のUSP10活性は、阻害されるまたは欠損している。同様に、変異体FLT3キナーゼのキナーゼ活性は、野生型FLT3キナーゼおよび/または上記阻害剤と接触していない変異体FLT3キナーゼと比較して、上記キナーゼ活性が、上記変異および/または上記阻害剤との接触により低下する場合、それは阻害されるまたは欠損している。このような阻害または欠損は、特定の時間および/または場所における薬剤の適用によるなど、誘導することができる、または遺伝性変異によるなど、構成的でありうる。このような阻害または欠損は、部分的または完全でありうる(例えば、野生型状況のような対照など、参照状況と比較して、測定可能な活性が本質的にない)。本質的に完全な阻害または欠損は、遮断されたと称される。
2つの分子の間の相互作用に言及する場合の「相互作用」という用語は、分子の、互いとの物理的接触(例えば、結合)を指す。一般に、このような相互作用は、前記分子の一方または両方の活性(生物学的効果を生み出す)を結果としてもたらす。
「単離されたタンパク質」とは、細胞から単離されるかもしくは組換えDNA法により作製される場合の、他のタンパク質、細胞物質、分離媒体、および培養培地、または化学合成される場合の、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないタンパク質を指す。「単離された」または「精製された」タンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分は、抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質が由来する細胞もしくは組織供給源に由来する、細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成される場合の、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、バイオマーカーポリペプチドまたはその断片の調製物であって、タンパク質を、それが単離されるか、または組換えにより作製される細胞の細胞成分から分離した調製物を含む。一実施形態では、「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、バイオマーカータンパク質またはその断片の調製物であって、約30%(乾燥重量で)未満の非バイオマーカータンパク質(本明細書ではまた、「夾雑タンパク質」とも称する)、より好ましくは約20%未満の非バイオマーカータンパク質、さらにより好ましくは約10%未満の非バイオマーカータンパク質、最も好ましくは約5%未満の非バイオマーカータンパク質を有する調製物を含む。抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質、またはそれらの断片、例えば、それらの生物学的に活性な断片を組換えにより作製する場合、それはまた、培養培地も実質的に含まないことが好ましい、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である。
「キット」とは、発明のマーカーの発現を特異的に検出し、かつ/またはこの発現に影響を及ぼすための、少なくとも1つの試薬、例えば、プローブまたは小分子を含む、任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、本発明の方法を実行するためのユニットとして宣伝、流通、または販売することができる。キットは、本発明の方法において有用な組成物を発現するのに必要な、1または複数の試薬を含みうる。ある特定の実施形態では、キットは、基準物質、例えば、細胞の増殖、分裂、遊走、生存、またはアポトーシスを制御するシグナル伝達経路に影響を及ぼさず、これを調節しないタンパク質をコードする核酸をさらに含みうる。当業者は、一般的な分子タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質およびベータ-ガラクトシダーゼ)、遺伝子オントロジー基準により、細胞の増殖、分裂、遊走、生存、またはアポトーシスを包含する経路のうちのいずれにも分類されないタンパク質、または普遍的なハウスキーピングタンパク質を含むがこれらに限定されない、多くのこのような対照タンパク質を想定しうる。キット中の試薬は、個別の容器により供給することもでき、単一の容器内の、2つまたはそれ超の試薬の混合物として供給することもできる。加えて、キット内の組成物の使用について記載する指示材料も含まれ得る。
「ネオアジュバント療法」という用語は、一次処置の前に与えられる処置を指す。ネオアジュバント療法の例は、化学療法、放射線療法およびホルモン療法を含みうる。
バイオマーカーの「正常」発現レベルは、がんに罹患していない対象、例えば、ヒト患者の細胞内のバイオマーカーの発現レベルである。バイオマーカーの「過剰発現」または「有意に高い発現レベル」とは、発現を評価するのに採用されるアッセイの標準誤差よりも大きい、対照試料(例えば、バイオマーカー関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)中のバイオマーカーの発現活性またはレベル、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルより少なくとも10%高く、より好ましくは、この1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれ超である被験試料中の発現レベルを指す。バイオマーカーの「有意に低い発現レベル」とは、対照試料(例えば、バイオマーカー関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)中のバイオマーカーの発現レベル、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルより少なくとも10%低く、より好ましくは、この1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20分の1またはそれ未満の被験試料中の発現レベルを指す。バイオマーカーの「過剰発現」または「有意に高い発現レベル」は、発現を評価するのに採用されるアッセイの標準誤差よりも大きい、対照試料(例えば、バイオマーカー関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)中のバイオマーカーの発現活性またはレベル、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルより好ましくは少なくとも10%高く、より好ましくは、これより1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍またはそれよりも多い被験試料中の発現レベルを指す。バイオマーカーの「有意に低い発現レベル」とは、対照試料(例えば、バイオマーカー関連疾患を有さない健常対象に由来する試料)中のバイオマーカーの発現レベル、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルより少なくとも10%低く、より好ましくは、この1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20分の1またはそれよりも低い、被験試料中の発現レベルを指す。
このような「有意性」レベルはまた、発現、阻害、細胞傷害作用、細胞増殖などについて本明細書で記載される、他の任意の測定されるパラメータにも適用することができる。
「P53」という用語は、周知腫瘍抑制因子、p53を指す(例えば、Meek (2015年) Biochem J. 469巻:325-346; Ballingerら(2015年) Curr. Opin. Oncol. 27:332~337頁; AmelioおよびMelino (2015年) Trends Biochem. Sci. 40巻:425~434頁; Sahaら(2014年) Prog. Biophys. Mol. Biol. 117巻:250~263頁; Tchelebitら(2014年) Subcell. Biochem. 85巻:133~159頁; Yeudall (2014年) Subcell. Biochem. 85巻:105~117頁; Santoroら(2014年) Subcell. Biochem. 85巻:91~103頁; Girardiniら(2014年) Subcell. Biochem. 85巻:41~70頁; Soussiら(2014年) Hum. Mutat. 35巻:766~778頁; Leroyら(2014年) Hum. Mutat. 35巻:756~765頁; Leoryら(2014年)Hum. Mutat. 35巻:672~688頁; Nguyenら(2014年) Hum. Mutat. 35巻:738~755頁; Bertheauら(2013年) Breast 22巻:S27~S29頁; Brachovaら(2013年) Int. J. Mol. Sci. 14巻:19257~19275頁; CarvajalおよびManfredi (2013年) EMBO Rep. 14巻:414~421頁; Torneselloら(2013) Gynecol. Oncol. 128巻:442~448頁; LehmannおよびPietenpol (2012年) J. Clin. Oncol. 30巻:3648~3650頁; Belliniら(2012年) J. Biomed. Biotechnol. 2012巻:891961頁; Liら(2012年) Biochim. Biophys. Acta. 1819巻:684~687頁;ならびにNaccaratiら(2012年) Mutagenesis 27巻:211-218頁を参照されたい)。p53タンパク質をコードする遺伝子は、脊椎動物の間で高度に保存されており、ヒトがんの50%超において、p53タンパク質機能の欠損を引き起こすように変異される(Surgetら(2013年)OncoTargets Therapy 7巻:57~68頁)。ヒトにおいて、17p13.1に位置するp53遺伝子は、少なくとも15種のタンパク質アイソフォームをコードする。p53タンパク質のタンパク質構造は、周知であり、ある特定のドメインによって特徴付けられる。例えば、一実施形態では、野生型の機能的なヒトp53は、次のものを含む:
1)活性化ドメイン1(AD1)としても公知の酸性N末端転写活性化ドメイン(TAD)、これは、転写因子を活性化する(例えば、残基1~42)。N末端は、2個の相補的転写活性化ドメインを含有し、大きいドメインは、残基1~42にあり、小さいドメインは、残基55~75にあり、いくつかのアポトーシス促進性遺伝子の調節に特異的に関与する(Venotら(1998年)EMBO J.17巻:4668~4679頁);
2)活性化ドメイン2(AD2)、これは、アポトーシス活性に重要である(例えば、残基43~63);
3)プロリンリッチドメイン、これは、MAPKを介した核外排出によるp53のアポトーシス活性に重要である(例えば、残基64~92);
4)中央DNA結合コアドメイン(DBD)、これは、1個の亜鉛原子およびいくつかのアルギニンアミノ酸を含有する(例えば、残基102~292)。この領域は、p53コリプレッサーLMO3の結合に関与する(Larsenら(2010年)Biochem. Biophys. Res. Commun.392巻:252~257頁);
5)核局在化シグナル伝達ドメイン(例えば、残基316~325);
6)ホモオリゴマー化ドメイン(OD)(例えば、残基307~355)。四量体化は、in vivoでのp53の活性に必須である;ならびに
7)C末端ドメイン、これは、中央ドメインのDNA結合の下方調節に関与する(例えば、残基356~393)(Harmsら(2005年)Mol. Cell. Biol.25巻:2014~2030頁)。
がんにおいてp53欠損にする変異は通常、DBDにおいて起こる。このような変異の多くは、その標的DNA配列に結合する上記タンパク質の能力を破壊し、これにより、このような遺伝子の転写活性化を妨げる。それ自体として、DBDにおける変異は、劣性機能喪失型変異である。ODに変異を有するp53の分子は、野生型p53と二量体化し、これらが転写を活性化することを妨げる。したがって、OD変異は、p53の機能にドミナントネガティブ効果を有する。機能的p53タンパク質をコードしないかまたは機能が低下したp53タンパク質をコードするかのいずれかであるp53核酸における変異(まとめてp53欠損)は、上記の通り当技術分野で周知であり、例えば、ミスセンス変異(コードされるアミノ酸を変更する塩基変化)、ナンセンス変異(コードされるアミノ酸を中途終止コドンに変更する塩基変化)、フレームシフト変異(3の倍数ではない様式での塩基付加または喪失)、挿入変異(コードされるタンパク質の機能を変更する、数が多いまたは少ない任意の塩基付加)、欠失変異(コードされるタンパク質の機能を変更する、数が多いまたは少ない任意の塩基欠失)または再配列変異(塩基の出発量を保持しつつ、コードされるタンパク質の機能を変更する、大規模または小規模の任意の変更)を含む、任意の数の周知の種類の変異によって生成することができる。一部の実施形態では、再配列が付加および/または欠失を有する、または複数のミスセンス変異が組み合わされる場合など、変異を組み合わせることができる。一部の実施形態では、変異は、生殖細胞系列に、体細胞にまたはその両方に生じる遺伝的ヌル(コードされるタンパク質の機能を完全に除去する任意の変異)である。変異の種類に関するこの記載は、本明細書に記載されている任意のマーカーに適用される。
p53活性またはその低下を決定するためのアッセイは、周知であり、市販されている(例えば、Qiagen Cignal(登録商標)p53レポーターキット、Active Motif(登録商標)TransAM(登録商標)p53レポーターキット;Cayman Chemical p53転写因子アッセイキット品目番号600020、Genecopoeia(商標)TF-Detect(商標)ヒトp53活性アッセイキット;Hirakiら(2015年)Cell Chem. Biol.22巻:1206~1216頁;Flamanら(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:3963~3967頁(1995年);およびKovvaliら(2001年)Nucl. Acids Res.29巻:e28頁を参照されたい)。
p53核酸およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、U.S. National Center for Biotechnology Informationにより維持されているGenBankデータベースにおいて公的に利用可能である。例えば、ヒトp53核酸配列およびアミノ酸配列は、周知であり、例えば、NM_000546.5(改変体1)およびNP_000537.3(アイソフォームa);NM_001126112.2(改変体2)およびNP_001119584.1(アイソフォームa);NM_001126114.2(改変体3)およびNP_001119586.1(アイソフォームb);NM_001126113.2(改変体4)およびNP_001119585.1(アイソフォームc);NM_001126115.1(改変体5)およびNP_001119587.1(アイソフォームd);NM_001126116.1(改変体6)およびNP_001119588.1(アイソフォームe);NM_001126117.1(改変体7)およびNP_001119589.1(アイソフォームf);NM_001126118.1(改変体8)およびNP_001119590.1(アイソフォームg);NM_001276695.1(改変体9)およびNP_001263624.1(アイソフォームh);NM_001276696.1(改変体10)およびNP_001263625.1(アイソフォームi);NM_001276697.1(改変体10)およびNP_001263626.1(アイソフォームj);NM_001276698.1(改変体11)およびNP_001263627.1(アイソフォームk);NM_001276699.1(改変体12)およびNP_001263628.1(アイソフォームl);NM_001276760.1(改変体13)およびNP_001263689.1(アイソフォームg);ならびにNM_001276761.1(改変体14)およびNP_001263690.1(アイソフォームg)を含む。他の種におけるp53オーソログの核酸配列およびアミノ酸配列も、周知であり、例えば、マウスp53(NM_001127233.1、NP_001120705.1、NM_011640.3およびNP_035770.2)、チンパンジーp53(XM_001172077.4およびXP_001172077.2)、サルp53(NM_001047151.2およびNP_001040616.1)、イヌp53(NM_001003210.1およびNP_001003210.1)、ウシp53(NM_174201.2およびNP_776626.1)、カエルp53(NM_001001903.1およびNP_001001903.1)およびゼブラフィッシュp53(NM_001271820.1、NP_001258749.1、NM_131327.3およびNP_571402.1)を含む。この用語が、p53に関する本明細書に記載されている特色の任意の組合せを指すためにさらに使用することができることに留意されたい。例えば、クラス、配列組成、同一性百分率、配列長さ、ドメイン構造、機能活性などの任意の組合せは、本発明に従って使用されている通りのp53を記載するために使用することができる。
「所定の」バイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)という用語は、例だけを目的として述べると、特定の処置のために選択されうる対象を評価する、1種もしくは複数種のUSP10阻害剤単独、もしくは1種もしくは複数種のFLT3阻害剤と組み合わせるなどの、処置に対する応答を評価する、および/または上記疾患状況を評価するのに使用される、バイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)でありうる。所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、がんを有するかまたは有さない患者の集団内で決定することができる。上記所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、あらゆる患者に同等に適用可能な、単一の数である場合があり、または所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、患者の特定の部分集団に従い変動しうる。対象の年齢、体重、身長および他の因子は、個体の所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)に影響を及ぼしうる。さらに、上記所定のバイオマーカーの量および/または活性は、各対象について個別に決定することができる。一実施形態では、本明細書で記載される方法により決定および/または比較される量は、絶対測定値に基づく。別の実施形態では、本明細書に記載される方法により決定および/または比較される量は、比(例えば、ハウスキーピングまたはその他の一般に一定のバイオマーカーの発現に対して正規化された血清バイオマーカー)などの相対測定値に基づく。所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、任意の適切な標準物質でありうる。例えば、所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、患者の選択を評価するための、同じまたは異なるヒトから得ることができる。一実施形態では、所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、同じ患者についてのかつての評価から得ることができる。このようにして、患者の選択の進行を、ある時間にわたりモニタリングすることができる。加えて、対照は、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、対象が、ヒトである場合に、選択されたヒトの群についての評価から得ることができる。このようにして、選択を評価するための、ヒトの選択の範囲を、適切な他のヒト、例えば、同様もしくは同じ状態を患うヒトおよび/または同じ民族(ethnic)群のヒトなど、目的のヒトと同様の状況にある他のヒトと比較することができる。
「予測」という用語は、治療の前、その最中またはその後のバイオマーカー核酸および/またはタンパク質状態、例えば、腫瘍の過剰なまたは低い、活性、出現、発現、成長、寛解、再発または耐性を使用して、USP10阻害剤療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤)など、抗がん療法に対するがんの応答の確度を決定することを含む。バイオマーカーの、このような予測的使用により、例えば、(1)コピー数の増加もしくは減少(例えば、FISH、FISHおよびSKY、例えば、当技術分野では、少なくとも、J. Biotechnol.、86巻:289~301頁において記載されている、単一分子シークエンシング、またはqPCRによる)、バイオマーカー核酸の過剰発現もしくは過少発現(例えば、ISH、ノーザンブロット、またはqPCRによる)、バイオマーカータンパク質(例えば、IHCによる)および/またはバイオマーカー標的の増加または減少、または、例えば、アッセイされるヒトがん型またはがん試料の約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%超またはそれよりも多くの、活性の増加もしくは減少;(2)生体試料、例えば、がんに罹患した対象、例えば、ヒトに由来する、組織、全血、血清、血漿、口腔内切屑(buccal scrape)、唾液、脳脊髄液、尿、糞便または骨髄を含有する試料中の、その絶対的なまたは相対的にモジュレートされた存在または非存在;(3)がんを有する患者(例えば、特定の抗がん療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤)に応答する患者、またはこれに対する耐性を発生させる患者)の臨床サブセットにおける、その絶対的なまたは相対的にモジュレートされた存在または非存在により確認することができる。
「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的処置」などの用語は、疾患、障害、または状態を有さないが、これらを発症する危険性があるか、またはこれらに感受性の対象における、疾患、障害、または状態を発症する確率を低減することを指す。
「プローブ」という用語は、具体的に意図される標的分子、例えば、バイオマーカー核酸によりコードされるかまたはこれに対応する、ヌクレオチド転写物またはタンパク質に選択的に結合することが可能な任意の分子を指す。プローブは、当業者により合成される場合もあり、適切な生物学的調製物に由来する場合もある。標的分子の検出を目的として、プローブは、本明細書で記載される通りに標識されるように、特異的にデザインすることができる。プローブとして活用されうる分子の例は、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子を含むがこれらに限定されない。
「予後」という用語は、がんの可能性のある経過およびアウトカムまたは疾患からの回復の確度についての予測を含む。一部の実施形態では、統計学的アルゴリズムの使用により、個体におけるがんの予後をもたらす。例えば、予後は、手術、がんの臨床亜型(例えば、肺がん、メラノーマおよび腎細胞癌などの固形腫瘍)の発症、1もしくは複数の臨床因子の発症、腸がんの発症、または上記疾患からの回復でありうる。
「抗がん療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤)に対する応答」という用語は、抗がん療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤)に対する過剰増殖性障害(例えば、がん)の任意の応答に関し、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法の開始後のがん細胞数、腫瘍量および/または体積の変化に関する。過剰増殖性障害応答は、例えば、有効性に関してまたはネオアジュバントもしくはアジュバント状況において評価することができ、全身性介入後の腫瘍のサイズは、CT、PET、マンモグラム、超音波または触診によって測定された初期サイズおよび寸法と比較することができる。応答は、生検または外科的切除後の腫瘍のノギス測定または病理学的検査によって評価することもできる。応答は、腫瘍体積の百分率の変化のように、定量的に記録することもでき、「病理学的完全奏効」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、または他の定性的基準のように、定性的に記録することもできる。過剰増殖性障害応答の評価は、ネオアジュバントまたはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間後、数日後、数週間後、または、好ましくは数カ月後に行うことができる。応答評価のための典型的エンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終結後、または残存する腫瘍細胞および/または腫瘍床の外科的除去後である。これは典型的に、ネオアジュバント療法の開始3カ月後である。一部の実施形態では、本明細書で記載される治療的処置の臨床有効性は、臨床的有用率(clinical benefit rate)(CBR)を測定することにより決定することができる。臨床的有用率は、治療の終了から少なくとも6カ月後の時点において完全寛解(CR)している患者の百分率と、部分寛解(PR)している患者の数と、安定病態(SD)である患者の数との合計を決定することにより測定する。この式の略記は、6カ月間にわたるCBR=CR+PR+SDである。一部の実施形態では、特定のがん治療レジメンについてのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれよりも多い。がん療法に対する応答を評価するためのさらなる基準は、以下:全生存期間としてもまた公知の死亡までの生存期間(ここで、前記死亡は、原因を問わない場合もあり、腫瘍に関連する場合もある);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、限局的および遠隔的再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、疾患という用語は、がんおよびこれと関連する疾患を含むものとする)の全てを含む「生存期間」に関する。前記生存期間の長さは、規定された開始点(例えば、診断のときまたは処置の開始)および終了点(例えば、死、再発または転移)を参照することにより計算することができる。加えて、処置の有効性についての基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内の転移の確率、および腫瘍再発の確率を含むように拡張することができる。例えば、適切な閾値を決定するために、特定のがん治療レジメンを、対象の集団に施行することができ、アウトカムを、任意のがん療法を施行する前に決定されたバイオマーカー測定値と相関させることができる。アウトカム測定値は、ネオアジュバント状況において施される治療に対する病理的応答でありうる。代替的に、全生存期間および無病生存期間などのアウトカム尺度を、バイオマーカー測定値が既知であるがん治療後の対象について、ある期間にわたりモニタリングすることができる。ある特定の実施形態では、投与される用量は、がん治療剤のための当技術分野で公知の標準用量である。対象をモニタリングする期間は、変動しうる。例えば、対象を、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55または60カ月間にわたりモニタリングすることができる。がん療法のアウトカムと相関する、バイオマーカーの測定閾値は、実施例節で記載される方法など、当技術分野で周知の方法を使用して決定することができる。
「耐性」という用語は、5%またはそれよりも多く、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれよりも多く、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれよりも多く、治療的処置に対して応答が低下することなど、がん療法に対するがん試料または哺乳動物の後天的または天然の耐性(すなわち、治療的処置に対して非応答性であることまたはこれに対して応答が低下したかもしくは応答が限定されること)を指す。応答の低下は、耐性が獲得される前の同じがん試料もしくは哺乳動物と比較することにより、または治療的処置に対する耐性がないことが既知の異なるがん試料もしくは哺乳動物と比較することにより測定することができる。化学療法に対する典型的な後天的耐性は、「多剤耐性」と呼ばれる。多剤耐性は、P-糖タンパク質によって媒介されうる、または他の機構によって媒介されうる、または哺乳動物が多剤耐性微生物もしくは微生物の組合せに感染すると起こりうる。治療的処置に対する耐性の決定は、当技術分野で日常的であり、通常の技能を有する臨床医の技能の範囲内にあり、例えば、「感作」として本明細書に記載されている細胞増殖アッセイおよび細胞死アッセイによって測定することができる。一部の実施形態では、「耐性を逆転させる」という用語は、一次がん療法(例えば、化学療法薬または放射線療法)単独が、無処置腫瘍の腫瘍体積と比較して腫瘍体積の統計的に有意な減少を生じることができない環境における無処置腫瘍の腫瘍体積と比較して、該一次がん療法(例えば、化学療法薬または放射線療法)と組み合わせた第2の薬剤の使用が、統計的有意性のレベル(例えば、p<0.05)で腫瘍体積の有意な減少を生じることができることを意味する。これは一般に、無処置腫瘍が対数的に(log rhythmically)成長する時点に為される腫瘍体積測定に適用される。
「応答」または「応答性」という用語は、例えば、腫瘍サイズ低下または腫瘍成長阻害の意味での、抗がん応答を指す。これらの用語は、例えば、最初の再発までの期間であり、再発のエビデンスを伴わない最初の事象もしくは死としての第2の原発性がんについては打ち切る、再発までの時間の延長、または処置から、任意の原因による死までの期間である、全生存期間の延長により反映される、予後の改善も指す場合がある。応答するまたは応答を有するとは、刺激に曝露された場合に達せられる有益なエンドポイントがあることを意味する。代替的に、刺激に曝露されると、負の(negative)または有害な症状は、最小化されるか、軽減されるか、または緩和される。腫瘍または対象が、好適な応答を呈する可能性を評価することは、腫瘍または対象が、好適な応答を呈さない(すなわち、応答の欠如を呈するか、または非応答性である)可能性を評価することと同等であることが理解されるであろう。
本明細書で使用される「RNA干渉剤」は、RNA干渉(RNAi)により、標的バイオマーカー遺伝子の発現に干渉するか、またはこれを阻害する任意の薬剤として定義される。このようなRNA干渉剤は、本発明の標的バイオマーカー遺伝子またはその断片と相同なRNA分子を含む核酸分子、短鎖干渉RNA(siRNA)、およびRNA干渉(RNAi)により、標的バイオマーカー核酸の発現に干渉するか、またはこれを阻害する小分子を含むがこれらに限定されない。
「RNA干渉(RNAi)」とは、進化において保存された過程であって、標的バイオマーカー核酸と同一であるか、または高度に類似する配列のRNAを、発現させるか、または導入する結果として、その標的化遺伝子から転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の、配列特異的分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)をもたらし(Coburn, G.およびCullen, B.(2002年)、J. of Virology、76巻(18号):9225頁を参照されたい)、これにより、標的バイオマーカー核酸の発現を阻害する過程である。一実施形態では、RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)である。この過程は、植物、無脊椎動物、および哺乳動物細胞において記載されている。天然では、RNAiは、長鎖dsRNAの、siRNAと称する二本鎖断片への加工的切断を促進する、dsRNA特異的エンドヌクレアーゼであるDicerにより誘発される。siRNAは、標的mRNAを認識および切断するタンパク質複合体に組み込まれる。RNAiはまた、核酸分子、例えば、合成siRNA、shRNA、または他のRNA干渉剤を導入して、標的バイオマーカー核酸の発現を阻害またはサイレンシングすることによっても誘発することができる。本明細書で使用される場合、「標的バイオマーカー核酸の発現の阻害」または「マーカー遺伝子の発現の阻害」は、標的バイオマーカー核酸または標的バイオマーカー核酸によりコードされるタンパク質の発現またはタンパク質活性またはレベルの任意の低下を含む。低下は、RNA干渉剤により標的化されていない、標的バイオマーカー核酸の発現または標的バイオマーカー核酸によりコードされるタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%またはそれ超の低下でありうる。
RNAiに加えて、ゲノム編集を使用して、目的のUSP10バイオマーカーの構成的もしくは誘導性ノックアウトまたは変異など、目的のバイオマーカーのコピー数または遺伝子配列をモジュレートすることができる。例えば、CRISPR-Cas系を、ゲノム核酸の正確な編集(例えば、非機能的またはヌル変異の創出)に使用することができる。このような実施形態では、CRISPRガイドRNAおよび/またはCas酵素を発現させることができる。例えば、上記ガイドRNAのみを含有するベクターを、Cas9酵素に対してトランスジェニックな動物または細胞に投与することができる。同様の戦略を使用することができる(例えば、デザイナージンクフィンガー、転写活性化因子様エフェクター(TALE)またはホーミングメガヌクレアーゼ)。このような系は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,697,359号;SanderおよびJoung(2014年)Nat. Biotech.32巻:347~355頁;Haleら(2009年)Cell 139巻:945~956頁;KarginovおよびHannon(2010年)Mol. Cell 37巻:7頁;米国特許出願公開第2014/0087426号および同第2012/0178169号;Bochら(2011年)Nat. Biotech.29巻:135~136頁;Bochら(2009年)Science 326巻:1509~1512頁;MoscouおよびBogdanove(2009年)Science 326巻:1501頁;Weberら(2011年)PLoS One 6巻:e19722頁;Liら(2011年)Nucl. Acids Res.39巻:6315~6325頁;Zhangら(2011年)Nat. Biotech.29巻:149~153頁;Millerら(2011年)Nat. Biotech.29巻:143~148頁;Linら(2014年)Nucl. Acids Res.42巻:e47頁を参照されたい)。このような遺伝的戦略は、当技術分野の周知方法に従って構成的発現系または誘導性発現系を使用することができる。
少なくとも1つのバイオマーカーの存在またはレベルを検出または決定するために使用される「試料」という用語は、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(例えば、排泄物)、涙、および他の任意の体液(例えば、上記の「体液」の定義下で記載した)、または小腸、結腸試料、または手術による切除組織などの組織試料(例えば、生検材料)であることが典型的である。ある特定の場合には、本発明の方法は、試料中の少なくとも1つのマーカーの存在またはレベルを検出または決定する前に、試料を個体から得るステップをさらに含む。
生物学的に活性な薬剤に適用される「選択的阻害」または「選択的に阻害する」という用語は、標的との直接的または間接的(interact)相互作用による、オフターゲットシグナル伝達活性と比較して、標的シグナル伝達活性を選択的に低下させる該薬剤の能力を指す。例えば、USP7などの別の脱ユビキチン化(DUB)酵素よりもUSP10を選択的に阻害する薬剤は、比較タンパク質に対する化合物の活性よりも少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%または2×(倍)大きい(例えば、少なくとも約3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、105倍、110倍、120倍、125倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍、5000倍、5500倍、6000倍、6500倍、7000倍、7500倍、8000倍、8500倍、9000倍、9500倍、10000倍もしくはそれを超える、またはその間の任意の範囲を全て含んで)、USP10に対する活性を有する。このような測定基準は典型的に、活性を半分に低下させるのに要求される薬剤の相対量に関して表現される。特に、USP7/HAUSP(ヘルペスウイルス関連USP)は、DUB酵素のUSPファミリーにおける135kDaタンパク質として、当技術分野で周知である(Reverdyら(2012年)Chem. Biol.19巻:567~477頁)。DUBドメインに加えて、USP7は、N末端TRAF様MATHドメイン(Zapataら(2001年)J. Biol. Chem.276巻:24242~24252頁)、および少なくとも5個のユビキチン様ドメインを含有するC末端ドメイン(Faesenら(2011年)Mol. Cell 44巻:147~159頁)も含有する。このタンパク質は、遍在性に産生され、真核生物において高度に保存されている(例えば、当技術分野で周知であり、受託番号NM_001286457.1およびNP_001273386.1;NM_001286458.1およびNP_001273387.1;NM_001321858.1およびNP_001308787.1;ならびにNM_003470.2およびNP_003461.2の下で公的に入手可能であるヒトUSP7核酸配列およびタンパク質配列を参照されたい)。USP7は主に、核タンパク質であり、PML体のサブセットに局在化する(Everettら(1999年)J. Virol.73巻:417~426頁;Murataniら(2002年)Nat. Cell Biol.4巻:106~110頁)。分子レベルでは、その脱ユビキチン化活性のおかげで、USP7は、いくつかのポリユビキチン化基質の定常状態レベルを調節することが示された。例えば、USP7は、それぞれMdm2安定化およびBmi1/Mel18安定化により、p53およびp16INK4a腫瘍抑制因子のレベルを変更する(Cumminsら(2004年)Nature 428巻;Liら(2004年)Mol. Cell 13巻:8790~896頁;Maertensら(2010年)EMBO J.29巻:2553~2565頁)。p53へのUSP7結合は近年、USP7の同じ領域への結合に関するそのp53との競合により乳房の腫瘍形成に潜在的に関与するタンパク質である、TSPYL5によって調節されることが示された(Eppingら(2011年)Nat. Cell Biol.13巻:102~108頁)。DNMT1 DNAメチラーゼおよびクラスピンアダプターなど、ゲノム完全性および調節に関与するさらなるタンパク質も、USP7によって安定化される(Duら(2010年)Sci. Signal.3巻:ra80頁;Faustrupら(2009年)J. Cell Biol.184巻:13~19頁)。USP7は、脱ユビキチン化によっていくつかのモノユビキチン化基質の細胞区画化を調節することも示された。この点において、PTENおよびFOXO4腫瘍抑制因子は、USP7誘導性核外搬出によって不活性化される(Songら(2008年)Nature 455巻:813~817頁;van der Horstら(2006年)Nat. Cell Biol.8巻:1064~1073頁)。USP7過剰発現は、ヒト前立腺がんにおいても報告されており、腫瘍攻撃性に直接的に関連付けられた(Songら(2008年)Nature 455巻:813~817頁)。以前のin vivoデータも、がん細胞増殖におけるUSP7の関与を強調した(Beckerら(2008年)Cell Cycle 7巻:7~10頁)。USP10選択的およびUSP7選択的薬剤は、公知である(例えば、表8に列挙されている例示的な薬剤、D’Arcyら(2015年)Pharmacol. Ther.147巻:32~54頁および本明細書に記載されているその他を参照されたい)。
「感作する」という用語は、がん療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤;化学療法薬;および/または放射線療法と組み合わせたUSP10阻害剤)による関連がんのより有効な処置を可能にする方式で、がん細胞または腫瘍細胞を変更することを意味する。一部の実施形態では、正常細胞は、抗がん療法(例えば、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤)によって正常細胞が過度に傷害される程度まで影響を受けない。治療的処置に対する感受性の増加または感受性の低下は、細胞増殖アッセイ(Tanigawa N、Kern D H、Kikasa Y、Morton D L、Cancer Res 1982年;42巻:2159~2164頁)、細胞死アッセイ(Weisenthal L M、Shoemaker R H、Marsden J A、Dill P L、Baker J A、Moran E M、Cancer Res 1984年;94巻:161~173頁;Weisenthal L M、Lippman M E、Cancer Treat Rep 1985年;69巻:615~632頁;Weisenthal L M、In: Kaspers G J L, Pieters R, Twentyman P R, Weisenthal L M, Veerman A J P編、Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.、Langhorne, P A: Harwood Academic Publishers、1993年:415~432頁;Weisenthal L M、Contrib Gynecol Obstet 1994年;19巻:82~90頁)を含むがこれらに限定されない、特定の処置のための当技術分野の公知方法および本明細書に以下に記載されている方法に従って測定される。上記感受性または耐性は、ある期間、例えば、ヒトでは6カ月間、マウスでは4~6週間にわたって腫瘍サイズ低下を測定することにより、動物において測定することもできる。処置感受性の増加または耐性の低下が、組成物または方法の非存在下での処置感受性または耐性と比較して、5%またはそれよりも多い、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれよりも多い、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍までまたはそれよりも多い場合、このような組成物または方法は、治療的処置に対する応答を感作する。治療的処置に対する感受性または耐性の決定は、当技術分野で日常的であり、通常の技能を有する臨床医の技能の範囲内にある。がん療法の有効性を増強するための本明細書に記載されている任意の方法を、過剰増殖性または他の面でがん性の細胞(例えば、耐性細胞)を該がん療法に対して感受性にするための方法に等しく適用することができることを理解されたい。
「相乗効果」という用語は、例えば、2つまたはそれよりも多いUSP10阻害剤、USP10阻害剤およびFLT3阻害剤、USP10阻害剤単独、またはFLT3阻害剤と組み合わせたUSP10阻害剤など、2種またはそれよりも多い治療剤の組合せ効果が、抗がん剤単独の個別の効果の合計より大きくなりうることを指す。
本明細書において「低分子干渉RNA」とも称される「短鎖干渉RNA」(siRNA)は、例えばRNAiにより、標的バイオマーカー核酸の発現を阻害するように機能する作用物質(agent)として定義される。siRNAは、化学合成されてもよい、in vitro転写によって産生されてもよい、または宿主細胞内に産生されてもよい。一実施形態では、siRNAは、約15~約40ヌクレオチドの長さ、好ましくは約15~約28ヌクレオチド、より好ましくは約19~約25ヌクレオチドの長さ、より好ましくは約19、20、21または22ヌクレオチドの長さの二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、約0、1、2、3、4または5ヌクレオチドの長さを有する3’および/または5’突出を各鎖に含有することができる。突出の長さは、2本の鎖の間で独立的である、すなわち、一方の鎖における突出の長さは、第2の鎖における突出の長さに依存しない。好ましくは、上記siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)によりRNA干渉を促進することができる。
別の実施形態では、siRNAは、低分子ヘアピン型(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)である。一実施形態では、このようなshRNAは、短い(例えば、19~25ヌクレオチド)アンチセンス鎖と、それに続く5~9ヌクレオチドループおよび類似のセンス鎖で構成される。あるいは、上記センス鎖は、ヌクレオチドループ構造に先行することができ、上記アンチセンス鎖がそれに続くことができる。このようなshRNAは、プラスミド、レトロウイルスおよびレンチウイルス中に含有されて、例えば、pol III U6プロモーターまたは別のプロモーターから発現されてよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれるStewartら(2003年)RNA Apr;9巻(4号):493~501頁を参照されたい)。
RNA干渉剤、例えば、siRNA分子は、がんを有するまたはそれを有する危険性がある患者に投与して、がんにおいて過剰発現されるバイオマーカー遺伝子の発現を阻害し、それにより、該対象におけるがんを処置、予防または阻害することができる。
「対象」という用語は、任意の健常な動物、哺乳動物、もしくはヒト、またはがん、例えば、肺癌、卵巣癌、膵癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌および結腸癌ならびにメラノーマおよび多発性骨髄腫に罹患した、任意の動物、哺乳動物、もしくはヒトを指す。「対象」という用語は、「患者」と互換的である。
「生存期間」という用語は、以下:全生存期間としてもまた公知の死亡までの生存期間(ここで、前記死亡は、原因を問わない場合もあり、腫瘍に関連する場合もある);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、限局的および遠隔的再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、疾患という用語は、がんおよびこれと関連する疾患を含むものとする)の全てを含む。前記生存期間の長さは、規定された開始点(例えば、診断のときまたは処置の開始)および終了点(例えば、死、再発または転移)を参照することにより計算することができる。加えて、処置の有効性についての基準は、化学治療への応答、生存の確率、所与の期間内の転移の確率および腫瘍再発の確率などを含むように拡張することができる。
「治療効果」という用語は、薬理学的活性物質により引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より特定すると、ヒトにおける局所または全身効果を指す。したがって、用語は、疾患の診断、治癒、軽減、処置、もしくは予防、または動物もしくはヒトにおける、所望の身体もしくは精神の発達および状態の増強における使用のために意図される任意の物質を意味する。「治療有効量」という語句は、いくらかの所望の局所または全身効果を、任意の処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比で生み出す、このような物質の量を意味する。ある特定の実施形態では、化合物の治療有効量は、その治療指数、溶解度などに依存するであろう。例えば、本発明の方法により発見されるある特定の化合物は、このような処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比をもたらすのに十分な量で投与することができる。
本明細書で使用される「治療有効量」および「有効量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比で、動物における細胞の少なくとも部分集団においてある所望の治療効果を生み出すのに有効な、本発明の化合物を含む化合物、材料または組成物の量を意味する。主題の化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50およびED50を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって決定することができる。大きい治療指数を呈する組成物が好まれる。一部の実施形態では、上記LD50(致死的投与量)は、測定することができ、例えば、薬剤投与なしと比べて、薬剤に関して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれよりも多く低減し得る。同様に、上記ED50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する濃度)は、測定することができ、例えば、薬剤投与なしと比べて、薬剤に関して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれよりも多く増加し得る。また、同様に、上記IC50(すなわち、がん細胞に対する最大半量細胞傷害性または細胞増殖抑制効果を達成する濃度)は、測定することができ、例えば、薬剤投与なしと比べて、薬剤に関して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれよりも多く増加し得る。一部の実施形態では、アッセイにおけるがん細胞成長は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%阻害されうる。がん細胞死は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%促進されうる。別の実施形態では、がん細胞数および/または固形悪性疾患の少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%減少が達成されうる。
「転写されたポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド転写物」とは、バイオマーカー核酸の転写、ならびに、存在する場合、RNA転写物の正常な転写後プロセシング(例えば、スプライシング)およびRNA転写物の逆転写により作られる成熟mRNAの全部または一部に相補的であるか、またはそれと相同なポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、またはこのようなRNAもしくはcDNAのアナログ)である。
「USP10」という用語は、システインプロテアーゼのユビキチン特異的プロテアーゼファミリーのメンバーとしてのユビキチン特異的ペプチダーゼ10を指し、代替的に、「ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ10」、「ユビキチン特異的プロテアーゼ10」、「脱ユビキチン化酵素10」、「ユビキチンチオエステラーゼ10」、「ユビキチンチオールエステラーゼ10」、「ユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼ10」、「EC 3.4.19.12」、「KIAA0190」、「UBPO」および「UBPO 3」として公知である。一般に、USP10は、アタキシン-2 C末端ドメインおよび脱ユビキチン化酵素(DUB)ドメインを含有する。USP10は、ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)ファミリーと称されるDUB酵素の最大ファミリーに属する。このファミリーは、プロテオソーム分解のために基質をマークする翻訳後ユビキチンタグを除去し、これにより、該基質の安定化をもたらすその能力について最も周知である、56種のシステインプロテアーゼメンバーで構成される。USP10の報告される基質は、ベクリン1(Liuら(2011年)Cell 147巻:223~234頁)、CFTR(Bombergerら(2009年)J. Biol. Chem.284巻:18778~18789頁)およびp53(Yuanら(2010年)Cell 140巻:384~396頁)を含む。USP10は、遍在性に発現されており、多くのDUBに当てはまるように、細胞の状況に依存して多様な機能を有することができる。例えば、USP10は、DNA結合アンドロゲン受容体複合体の補助因子として機能し、Ras-GTPase経路においてRas-GAP SH3ドメイン結合タンパク質(G3BP)によって阻害される(Fausら(2005年)Mol. Cell Endocrinol.245巻:138~146頁;Sonciniら(2001年)Oncogene 20巻:3869~3879頁)。
USP10核酸およびタンパク質についての核酸およびアミノ酸配列は、当技術分野で周知であり、U.S. National Center for Biotechnology Informationにより維持されているGenBankデータベースにおいて公的に利用可能である。例えば、ヒトUSP10核酸配列は、周知であり、例えば、NM_001272075.1(改変体1、これは、最長転写物を表し、最長アイソフォーム1をコードする)およびNM_005153.2(改変体2、これは、改変体1と比較して、5’末端における代替エクソン(alternate exon)を欠く)を含む。改変体2によってコードされるアイソフォーム2は、アイソフォーム1と比較して、より短い別個のN末端を有する)。加えて(in adition)、NR_073577(転写物改変体3)は、改変体1と比較して、3個の代替内部エクソンを欠く。この改変体は、最長ORFの翻訳に干渉することが予測される上流ORFの存在のため、非コードである。上流ORFの翻訳は、転写物を、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)の候補にする。NR_073578.1(転写物改変体4)は、改変体1と比較して、4個の代替内部エクソンを欠く。この改変体は、最長ORFの翻訳に干渉することが予測される2個の上流ORFの存在により、非コードとして表される;上流ORFのどちらかの翻訳は、転写物を、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)の候補にし、予測される配列は、XM_017023869.1、XM_017023864.1、XM_011523441.1、XM_011523440.1、XM_017023868.1、XM_011523443.1、XM_017023863.1、XM_006721332.1、XM_017023867.1、XM_017023865.1およびXM_017023866.1である。ヒトFLT3アミノ酸配列は、周知であり、例えば、NP_001259004.1(アイソフォーム1)、NP_005144.2(アイソフォーム2)ならびに予測される配列XP_016879358.1、XP_016879353.1、XP_011521743.1、XP_011521742.1、XP_016879357.1、XP_011521745.1、XP_016879352.1、XP_006721395.1、XP_016879356.1、XP_016879354.1およびXP_016879355.1を含む。
他の種におけるUSP10オーソログの核酸およびアミノ酸配列も、周知であり、例えば、チンパンジー(Pan troglodytes)USP10(XM_016930295.1およびXP_016785784.1、XM_009431337.2およびXP_009429612.2);アカゲザル(Macaca mulatta)USP10(1XM_015126723.1およびXP_014982209.1、XM_015126724.1およびXP_014982210.1);イヌ(Canis lupus familiaris)USP10(XM_005620883.1およびXP_005620940.1);ウシ(Bos taurus)USP10(BC142223.1およびAAI42224.1);マウス(Mus musculus)USP10(NM_001310630.1およびNP_001297559.1、NM_009462.2およびNP_033488.1、XM_006530845.3およびXP_006530908.1、XM_006530846.3およびXP_006530909.1);ラット(Rattus norvegicus)USP10(NM_001034146.1およびNP_001029318.1、XM_008772609.2およびXP_008770831.1、XM_008772610.2およびXP_008770832.1、BC105892.1およびAAI05893.1);ニワトリ(Gallus gallus)USP10(NM_001006130.1およびNP_001006130.1、AJ720400.1およびCAG32059.1);熱帯ツメガエル(Xenopus tropicalis)USP10(NM_001006760.1およびNP_001006761.1、XM_012960855.2およびXP_012816309.2、XM_018092993.1およびXP_017948482.1、BC075544.1およびAAH75544.1、CR855702.2およびCAJ83514.1);およびゼブラフィッシュ(Danio rerio)USP10(XM_005169052.3およびXP_005169109.1、XM_005169051.3およびXP_005169108.1、XM_680529.8およびXP_685621.5)を含む。
USP10の阻害剤も、当技術分野で周知であり、USP10に結合し、デユビキチナーゼ活性を阻害するMBCQの誘導体である、スパウチン-1(特異的かつ強力なオートファジー阻害剤-1)を含む。様々な抗USP10抗体が市販されており、USP10のN末端、C末端または内部領域を認識する。
USP10改変体および変異も、周知であり、例えば、配列番号4の337位におけるSからAへの置換と組み合わせると、毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)によるそのリン酸化を消失させる、配列番号4の42位におけるTからAへの置換(Yuanら、2010年);配列番号4の337位におけるSからDへの置換と組み合わせると、遺伝毒性ストレスの非存在下で核に移動するホスホ模倣変異体(Phospho-mimetic mutant)をもたらす、配列番号4の42位におけるTからEへの置換(Yuanら、2010年);その脱ユビキチン化活性を消失させる、配列番号4の424位におけるCからAへの置換(Sonciniら、2001年)を含む。同様に、配列番号4の2位におけるアセチル化、ならびに配列番号4の24、42、100、211、226、321、337、365、370、547、563および576位におけるリン酸化(Bianら、J. Proteomics 96巻:253~262頁(2014年)Olsenら(2010年)Sci. Signal.3巻:RA3~RA3頁;Yuanら、2010年)が起こることが公知である。翻訳後に、USP10は、DNA損傷後にATMによってリン酸化され、安定化(stablization)をもたらし、これは核に移動する(Yuanら、2010年)。USP10は、USP13によって脱ユビキチン化されうる(Liuら、2011年)。
遺伝暗号(下記に示される)により規定される通り、特定のタンパク質のアミノ酸配列と、タンパク質をコードしうるヌクレオチド配列との間には、公知で明確な対応が見られる。同様に、遺伝暗号により規定される通り、特定の核酸のヌクレオチド配列とこの核酸によりコードされるアミノ酸配列との間に、公知で明確な対応が見られる。
遺伝暗号の重要で周知の特色は、タンパク質を作るのに使用されるアミノ酸の大半について、1つを超えるコードヌクレオチドトリプレット(上記で例示された)を利用しうる、その冗長性である。したがって、いくつかの異なるヌクレオチド配列が、所与のアミノ酸配列をコードしうる。このようなヌクレオチド配列は、全ての生物において、同じアミノ酸配列の産生を結果としてもたらすので(ある特定の生物は、一部の配列を、他の配列より効率的に翻訳しうるが)、機能的に同等であると考えられる。さらに、時折、所与のヌクレオチド配列内では、プリンまたはピリミジンのメチル化改変体を見出すことができる。このようなメチル化は、トリヌクレオチドコドンと、対応するアミノ酸とのコード関係には影響を及ぼさない。
前出の点では、DNAまたはRNAを、アミノ酸配列に翻訳する遺伝暗号を使用して、ポリペプチドのアミノ酸配列を導出するのに、バイオマーカータンパク質(またはその任意の部分)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列を使用することができる。同様に、ポリペプチドのアミノ酸配列については、ポリペプチドをコードしうる、対応するヌクレオチド配列を、遺伝暗号から推定することができる(その冗長性のために、任意の所与のアミノ酸配列について、複数の核酸配列をもたらすであろう)。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列についての、本明細書における記載および/または開示は、ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列についての記載および/または開示も含むと考えるものとする。同様に、本明細書における、ポリペプチドのアミノ酸配列についての記載および/または開示は、アミノ酸配列をコードしうる、全ての可能なヌクレオチド配列についての記載および/または開示も含むと考えるものとする。
最後に、本発明の遺伝子座およびバイオマーカーならびに関連バイオマーカー(例えば、表1に列挙されているバイオマーカー)についての核酸およびアミノ酸配列情報は、当技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)などの公開データベース上で直ぐに入手できる。例えば、公開配列データベースに由来する例示的な核酸配列およびアミノ酸配列を下に提供する。
上記のバイオマーカーの代表的配列を下表1および2に示す。上記の用語を、上記バイオマーカーに関する本明細書に記載されている特色の任意の組合せを指すためにさらに使用することができることに留意されたい。例えば、配列組成、同一性百分率、配列長さ、ドメイン構造、機能活性などの任意の組合せを、本発明のバイオマーカーを記載するために使用することができる。
*表1には、RNA核酸分子(例えば、チミンをウリジン(uredine)で置きかえた)、コードされるタンパク質のオーソログをコードする核酸分子のほか、それらの全長にわたり、表1に列挙された任意の配列番号の核酸配列、またはその部分と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ超の同一性を有する核酸配列を含むDNAまたはRNA核酸配列が含まれる。本明細書でさらに記載される通り、このような核酸分子は、全長核酸の機能を有しうる。
*表1には、タンパク質のオーソログのほか、それらの全長にわたり、表1に列挙された任意の配列番号のアミノ酸配列、またはその部分と、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ超の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子が含まれる。本明細書でさらに記載される通り、このようなポリペプチドは、全長ポリペプチドの機能を有しうる。
*表2には、RNA核酸分子(例えば、ウリジン(uredine)で置きかえたチミン)、コードされたタンパク質のオーソログをコードする核酸分子、およびその全長にわたり、表2に列挙されている任意の配列番号の核酸配列またはその部分と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれよりも多い同一性を有する核酸配列を含むDNAまたはRNA核酸配列が含まれている。このような核酸分子は、本明細書にさらに記載されている全長核酸の機能を有しうる。
*表2には、タンパク質のオーソログ、およびその全長にわたり、表2に列挙されている任意の配列番号のアミノ酸配列またはその部分と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれよりも多い同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子が含まれている。このようなポリペプチドは、本明細書にさらに記載されている全長ポリペプチドの機能を有しうる。
*表2には、以下に記載するおよび/または実施例に記載されているFLT3変異体、特に、周知である、FLT3キナーゼ活性を増強してがんを駆動する活性化変異が含まれている。このような変異体は、例えば、リガンド結合に応答してリン酸化を低下させ、STAT5Aの活性化を消失させるが、構成的に活性化された変異体キナーゼ改変体のリン酸化には効果がない、配列番号8の589位におけるYからFへの置換(Kiyoiら(1998年)Leukemia 12巻:1333~1337頁;Rocnikら(2006年)Blood 108巻:1339~1345頁;Heissら(2006年)Blood 108巻:1542~1550頁);STAT5Aの活性化を消失させるが、チロシンリン酸化には有意な効果がない、配列番号8の591位におけるYからFへの置換(Kiyoiら、1998年;Rocnikら、2006年);そのPTPN11/SHP2との相互作用およびPTPN11/SHP2のリン酸化を消失させる、配列番号8の599位におけるYからFへの置換(Heissら、2006年);ならびにそのキナーゼ活性を消失させる、配列番号8の644位におけるKからAへの置換を含む。
FLT3の潜在的アミノ酸修飾も、周知であり、例えば、配列番号8の35/65、103/114、199/206、232/241、272/330、368/407および381/392位におけるジスルフィド結合、配列番号8の43、100、151、306、323、351、354、473、502および541の位置におけるグリコシル化、ならびに配列番号8の572、574、589、591、599、726、759、768、793、842、955、969および993位におけるリン酸化を含む(Verstraeteら(2011年)Blood 118巻:60~68頁;Heissら、2006年;Aroraら(2011年)J. Biol. Chem.286巻:10918~10929頁;Razumovskayaら(2009年)Exp. Hematol.37巻:979~989頁;Schmidt-Arrasら(2005年)Mol. Cell Biol.25巻:3690~3703頁;Rocnikら、2006年;Oppermannら(2009年)Mol. Cell Proteomics 8巻:1751~1764頁)。
FLT3についての翻訳後修飾は、例えば、シアル酸との複合N-グリカンによるN-グリコシル化(Schmidt-Arrasら、2005年;Aroraら、2011年;Verstraeteら、2011年)、FLT3LG結合に応答したいくつかのチロシン残基における自己リン酸化(これはまた、構成的に活性化されている変異体キナーゼのリン酸化を増加させる)、PTPRJ/DEP-1、PTPN1、PTPN6/SHP-1による、また、より低い程度であるが、PTPN12による脱リン酸化(脱リン酸化は、小胞体からのFLT3搬出および細胞膜における位置付けに重要である)、ならびにそのプロテアソーム分解をもたらす、自己リン酸化後のUBE2L6およびE3ユビキチンタンパク質リガーゼSIAH1による急速ユビキチン化(Buchwaldら(2010年)Leukemia 24巻:1412~1421頁;Aroraら、2011年)を含む。
ヒトFLT3アミノ酸配列の天然改変体は、例えば、配列番号8の7位におけるDからGへの改変体、158位におけるVからAへの改変体、194位におけるVからMへの改変体、227位におけるTからMへの改変体、324位におけるDからNへの改変体、358位におけるDからVへの改変体、417位におけるIからLへの改変体、557位におけるVからIへの改変体、835位におけるDからE、DからH、DからN、DからVまたはDからYへの改変体、および836位におけるIからMへの改変体を含む。これらのうち、835位における改変体は、急性リンパ芽球性白血病患者および急性骨髄性白血病患者に見出され、体細胞変異は、構成的に活性化されたFLT3をもたらす(Yamamotoら(2001年)Blood 97巻:2434~2439頁;Taketaniら(2004年)Blood 103巻:1085~1088頁;Abu-Duhierら(2001年)Br. J. Haematol 113巻:983~988頁)。836位における改変体も、急性リンパ芽球性白血病患者に見出された(Taketaniら、2004年)。
FLT3における変異は、急性骨髄性白血病(AML)患者に見出された。AML患者の約30%が、いくらかの形態のFLT3変異を有するが、いずれか所与の患者におけるこれらの遺伝的病変のうちの臨床的有意性のあるもの(clinical significance one)は、変異の性質およびそれが起こる状況に応じて変動する。一般に、FLT3変異は、2つのカテゴリーに分けることができる:(1)受容体の膜近傍ドメイン内のまたはその付近の遺伝子内縦列重複(FLT3/ITD変異)、および(2)チロシンキナーゼドメインの活性化ループ内で起こる単一アミノ酸置換をもたらす点変異(FLT3/TKD変異、例えば、配列番号8の835および/または836位における)。エクソン14~15のインフレーム遺伝子内縦列重複(ITD)変異が、AMLの症例の15~30%で認められた。これは、flt-3の膜近傍セグメントを伸長させ、その二量体化および構成的活性化をもたらす(Yokotaら(1997年)Leukemia 11巻:1605~1609頁)。このようなITD変異は、FAB型にわたって起こり、特にM3においてよくある。このような変異は、「中等度リスク」患者で主に起こり、子供よりも成人で高頻度である(GillilandおよびGriffine(2002年)Blood 100巻:1532~1542頁)。FLT3のITD変異は、いくつかの研究において独立予後不良因子であることが示され(Schnittgerら(2002年)Blood 100巻:59~66頁;Thiedeら(2002年)Blood 99巻:4326~4335頁)、変異状態は、以前は均一であった「中等度リスク」群から「不良リスク」群を描写することができる。二対立遺伝子変異が約10%で認められ、さらにより不良なアウトカムに関連付けられる。
その上、FLT3のコドン835の点変異が、de novo AMLの症例の7~8%において報告された(Yamamotoら、2001年)。この変異は、キナーゼドメインの機能の上方調節をもたらし、その予後有意性には議論の余地がある。このような変異も、MLLの細胞遺伝学的高二倍性または異常に関連するALL(Stubbsら(2008年)Leukemia 22巻:66~77頁)および骨髄性肉腫(Ansari-Lariら(2004年)Br. J. Haematol.126巻:785~791頁)に見出された。他のコドンにおいてチロシンキナーゼドメイン変異の数が増加していることが報告されている(Smithら(2005年)Br. J. Haematol.128巻:318~323頁)。例えば、急性骨髄性白血病(例えば、異常骨髄好酸球inv(16)(p13q22)またはt(16;16)(p13;q22)を伴う、t(8;21)(q22;q22)転座を伴う、および成熟を伴うまたは伴わない)、急性二表現型白血病、最小分化型急性骨髄芽球性白血病、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病および前駆T細胞急性リンパ芽球性白血病とFLT3変異との関連に関する総説は、Orphanetのウェブサイトに見出すことができる(参照コードORPHA98829、102724、98837、98834、98833、98832、99860、99861などによる)。
II.対象
一実施形態では、がん処置が施行されるか、または抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)の有効性の確度が予測される対象が、決定され、この対象は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、霊長動物、非ヒト哺乳動物、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの飼育動物)であり、好ましくは、ヒトである。
本発明の方法の別の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的化療法および/または抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)などの処置を受けていない。さらに別の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的化療法および/または抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)などの処置を受けている。
ある特定の実施形態では、上記対象は、血液区画精製(blood compartment purification)によるなど、がん性または前がん性組織を除去するための手術を行ったことがある。他の実施形態では、上記がん性組織は、除去されていない、例えば、上記がん性組織は、生命に必須の組織、または外科的手順が患者にとって害となる相当な危険性を生じ得る領域など、身体の手術不能領域に位置する場合がある。
本発明の方法を使用して、上記のものなど、対象における多くの異なるがんの抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対する応答性を決定することができる。一実施形態では、上記がんは、白血病など、血液学的がんである。別の実施形態では、上記がんは、肺がん、メラノーマおよび/または腎細胞癌など、固形腫瘍である。別の実施形態では、上記がんは、脳がん(例えば、神経膠芽腫)、膀胱がん、乳がん、子宮頸部がん、結腸がん、婦人科系がん、腎がん、喉頭がん、肺がん、口腔がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がんまたは皮膚がんなどであるがこれらに限定されない、上皮がんである。
III.試料の回収、調製、および分離
一部の実施形態では、対象に由来する試料中の、バイオマーカーの存在、非存在、量、および/または活性の測定値(複数可)を、所定の対照(標準)試料と比較する。対象に由来する試料は、がん細胞または組織などの罹患組織に由来することが典型的である。対照試料は、同じ対象に由来する場合もあり、異なる対象に由来する場合もある。対照試料は、正常な非罹患試料であることが典型的である。しかし、疾患の病期分類のため、または処置の有効性を評価するためなど、一部の実施形態では、対照試料は、罹患組織に由来する場合がある。対照試料は、何例かの異なる対象に由来する試料の組合せでありうる。一部の実施形態では、対象に由来するバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)を、所定のレベルと比較する。この所定のレベルは、被験試料が得られた種と同じ種のメンバーの細胞もしくは組織型、または被験試料が得られた対象に由来する非罹患細胞もしくは組織における、バイオマーカーの正常なコピー数、量、または活性など、正常試料から得られることが典型的である。本明細書に記載されている通り、「所定の」バイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、例だけを目的として述べると、処置のために選択されうる対象を評価する、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対する応答を評価する、かつ/または併用抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤、プラス、抗免疫阻害療法)に対する応答を評価するのに使用されるバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)でありうる。所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、がんを有するかまたは有さない患者の集団内で決定することができる。所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、あらゆる患者に同等に適用可能な、単一の数である場合があり、または所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、患者の特定の部分集団に従い変動しうる。対象の年齢、体重、身長、および他の因子は、個体の所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)に影響を及ぼしうる。さらに、所定のバイオマーカーの量および/または活性は、各対象について個別に決定することができる。一実施形態では、本明細書で記載される方法により決定および/または比較される量は、絶対測定値に基づく。別の実施形態では、本明細書で記載される方法により決定および/または比較される量は、比(例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現、または多様な時点における遺伝子発現に照らして正規化されたバイオマーカーの発現)などの相対測定値に基づく。
所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、任意の適切な標準物質でありうる。例えば、所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、患者の選択を評価するための、同じまたは異なるヒトから得ることができる。一実施形態では、所定のバイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)は、同じ患者についてのかつての評価から得ることができる。このようにして、患者の選択の進行を、ある時間にわたりモニタリングすることができる。加えて、対照は、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、対象が、ヒトである場合に、選択されたヒトの群についての評価から得ることができる。このようにして、選択を評価するための、ヒトの選択の範囲を、適切な他のヒト、例えば、同様もしくは同じ状態を患うヒトおよび/または同じ民族(ethnic)群のヒトなど、目的のヒトと同様の状況にある他のヒトと比較することができる。
本発明の一部の実施形態では、バイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)の、所定のレベルからの変化は、約0.5倍、約1.0倍、約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.0倍、約4.5倍、または約5.0倍、またはそれ超である。一部の実施形態では、倍数変化は、約1倍未満、約5倍未満、約10倍未満、約20倍未満、約30倍未満、約40倍未満、または約50倍未満である。他の実施形態では、バイオマーカーの量および/または活性の測定値(複数可)の、所定のレベルと比較した倍数変化は、約1倍を超える、約5倍を超える、約10倍を超える、約20倍を超える、約30倍を超える、約40倍を超える、または約50倍を超える。
生体試料は、核酸および/またはタンパク質を含む、体液試料、細胞試料、または組織試料を含む、患者に由来する様々な供給源から回収することができる。「体液」とは、身体から排出または分泌される流体のほか、通常身体から排出または分泌されない流体(例えば、羊水、房水、胆汁、血液および血漿、脳脊髄液、耳垢(cerumenおよびearwax)、カウパー腺液または尿道球腺液、乳び、びじゅく、糞便、スキーン腺液、間質液、細胞内液、リンパ、経血、母乳、粘液、胸膜液、膿、唾液、皮脂、精液、血清、汗、滑膜液、涙、尿、膣液、硝子体液、吐瀉物)も指す。好ましい実施形態では、対象および/または対照試料は、細胞、細胞系、組織学スライド、パラフィン包埋組織、生検材料、全血、乳首吸引物、血清、血漿、口腔内切屑、唾液、脳脊髄液、尿、糞便、および骨髄からなる群より選択される。一実施形態では、試料は、血清、血漿、または尿である。別の実施形態では、試料は、血清である。
試料は、個体から、長期にわたり繰り返し(例えば、日、週、月、毎年、隔年などのオーダーで1回または複数回)回収することができる。多数の試料を、個体から、ある期間にわたり得ることを使用して、早期の検出からの結果を検証し、かつ/または、例えば、疾患の進行、薬物処置などの結果としての、生物学的パターンの変更を同定することができる。例えば、対象試料を、本発明に従い、毎月、隔月、または1、2、もしくは3カ月間隔の組合せで採取およびモニタリングしうる。加えて、ある時間にわたり得られる、対象のバイオマーカーの量および/または活性の測定値は、モニタリング期間中に、互いと比較するほか、正常対照と比較し、これにより、長期モニタリングのための内部または個人対照としての対象自身の値をもたらしうると好都合である。
試料の調製および分離は、回収される試料の種類および/またはバイオマーカー測定値の解析に応じる手順のうちのいずれかを伴いうる。このような手順は、例だけを目的として述べると、濃縮、希釈、pHの調整、存在度の大きなポリペプチド(例えば、アルブミン、ガンマグロブリン、およびトランスフェリンなど)の除去、保存剤および較正物質の添加、プロテアーゼ阻害剤の添加、変性剤の添加、試料の脱塩、試料タンパク質の濃縮、脂質の抽出および精製を含む。
また、試料の調製により、非共有結合的複合体中で、他のタンパク質(例えば、担体タンパク質)と結合した分子を単離することもできる。この工程により、特異的な担体タンパク質(例えば、アルブミン)に結合した分子を単離することもでき、例えば、酸を使用するタンパク質変性と、それに続く、担体タンパク質の除去を介する、全ての担体タンパク質からの、結合した分子の放出など、より一般的な工程を使用することもできる。
所望されないタンパク質(例えば、存在度が大きいか、情報を与えないか、または検出不能なタンパク質)の、試料からの除去は、高アフィニティー試薬、高分子量フィルター、超遠心分離、および/または電気透析を使用して達成することができる。高アフィニティー試薬は、存在度の大きなタンパク質に選択的に結合する、抗体または他の試薬(例えば、アプタマー)を含む。試料の調製はまた、イオン交換クロマトグラフィー、金属イオンアフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィー、等電点電気泳動(chromatofocusing)、吸着クロマトグラフィー、等電点電気泳動(isoelectric focusing)、および類縁の技法も含みうる。分子量フィルターは、サイズおよび分子量に基づき、分子を分離する膜を含む。このようなフィルターは、逆浸透、ナノ濾過、限外濾過、および微細濾過をさらに利用しうる。
超遠心分離とは、所望されないポリペプチドを、試料から除去するための方法である。超遠心分離とは、光学システムで、粒子の沈降(またはその欠如)をモニタリングしながらの、約15,000~60,000rpmにおける、試料の遠心分離である。電気透析とは、電位勾配の影響下で、半透膜を介して、イオンを、1つの溶液から別の溶液へと輸送する工程において、電気膜(electromembrane)または半透膜を使用する手順である。電気透析において使用される膜は、正もしくは負の電荷を有するイオンを選択的に輸送し、反対の電荷を有するイオンを棄却する能力、または分子種が、サイズおよび電荷に基づき、半透膜を介して移動することを可能とする能力を有しうるので、電気透析を、電解質の濃縮、除去、または分離に有用とする。
本発明における分離および精製は、当技術分野で公知の任意の手順、例えば、キャピラリー電気泳動(例えば、キャピラリー内またはチップ上)またはクロマトグラフィー(例えば、キャピラリー内、カラム内、またはチップ上)などを含みうる。電気泳動とは、電界の影響下で、イオン性分子を分離するのに使用しうる方法である。電気泳動は、ゲル内、キャピラリー内、またはチップ上のマイクロチャネル内で行うことができる。電気泳動のために使用されるゲルの例は、デンプン、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、またはこれらの組合せを含む。ゲルは、その架橋、洗浄剤または変性剤の添加、酵素または抗体(アフィニティー電気泳動)または基質(ザイモグラフィー)の固定化、およびpH勾配の組込みにより修飾することができる。電気泳動のために使用されるキャピラリーの例は、エレクトロスプレーと接続するキャピラリーを含む。
キャピラリー電気泳動(CE)は、複合体である親水性分子と、高度に荷電した溶質とを分離するのに好ましい。CE技術はまた、マイクロ流体チップ上でも実装することができる。使用されるキャピラリーおよび緩衝液の種類に応じて、CEは、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速回転電気泳動(cITP)、およびキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)などの分離法へと、さらに分けることができる。CE法を、エレクトロスプレーによるイオン化とカップリングさせる実施形態は、揮発性溶液、例えば、揮発性の酸および/または塩基と、アルコールまたはアセトニトリルなどの有機物とを含有する水性混合物の使用を伴う。
キャピラリー等速回転電気泳動(cITP)は、解析物が、キャピラリーを介して、一定の速度で移動するが、それらのそれぞれの移動度により分離される技法である。自由溶液CE(FSCE)としてもまた公知のキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)は、分子上の電荷と、移動中に分子にかかる摩擦抵抗であって、分子のサイズに正比例することが多い摩擦抵抗とにより決定される、分子種の電気泳動移動度の差異に基づく。キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)は、弱くイオン化可能な両親媒性分子を、pH勾配下の電気泳動により分離することを可能とする。CECとは、従来の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とCEとのハイブリッド法である。
本発明で使用される分離法および精製法は、当技術分野で公知の、任意のクロマトグラフィー手順を含む。クロマトグラフィーは、ある特定の解析物の差次的な吸着および溶出または移動相と固定相との間における、解析物の分配に基づきうる。クロマトグラフィーの異なる例は、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを含むがこれらに限定されない。
IV.バイオマーカー核酸およびポリペプチド
本発明の一態様は、バイオマーカーポリペプチドまたはこのようなポリペプチドの部分をコードするバイオマーカー核酸に対応する、単離された核酸分子の使用に関する。本明細書で使用される通り、「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNAまたはRNAのアナログを含むことが意図される。上記核酸分子は、一本鎖または二本鎖でありうるが、好ましくは、二本鎖DNAである。
「単離された」核酸分子は、該核酸分子の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、「単離された」核酸分子は、該核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて該核酸に天然で隣接する配列(好ましくは、タンパク質コード配列)(すなわち、該核酸の5’および3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、上記単離された核酸分子は、該核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいて該核酸分子に天然で隣接する約5kB、4kB、3kB、2kB、1kB、0.5kBまたは0.1kB未満のヌクレオチド配列を含有することができる。さらに、cDNA分子など、「単離された」核酸分子は、組換え技法によって産生される場合は他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まなくてよい、または化学合成される場合は化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まなくてよい。
本発明のバイオマーカー核酸分子は、標準分子生物学技法および本明細書に記載されているデータベース記録における配列情報を使用して単離することができる。このような核酸配列の全体または部分を使用して、本発明の核酸分子は、標準ハイブリダイゼーションおよびクローニング技法を使用して単離することができる(例えば、Sambrookら編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY、1989年に記載されている通り)。
本発明の核酸分子は、標準PCR増幅技法に従って、鋳型としてのcDNA、mRNAまたはゲノムDNAおよび適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。このようにして増幅された核酸分子は、適切なベクターにクローニングし、DNA配列解析によって特徴付けることができる。さらに、本発明の核酸分子の全体または部分に対応するオリゴヌクレオチドは、例えば、自動化DNA合成機を使用した、標準合成技法によって調製することができる。
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列の部分のみを含むことができ、この場合、全長核酸配列は、本発明のマーカーを含む、または本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする。このような核酸分子は、例えば、プローブまたはプライマーとして使用することができる。上記プローブ/プライマーは典型的に、1種または複数種の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。上記オリゴヌクレオチドは典型的に、バイオマーカー核酸配列の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350もしくは400またはそれよりも多い連続したヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。バイオマーカー核酸分子の配列に基づくプローブを使用して、本発明の1種または複数種のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。上記プローブは、それに結合させた標識基、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補助因子を含む。
遺伝暗号の縮重に起因して、バイオマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸分子のヌクレオチド配列と異なり、したがって、同じタンパク質をコードする、該バイオマーカー核酸分子も想定される。
加えて、当業者は、集団(例えば、ヒト集団)内には、アミノ酸配列の変化をもたらす、DNA配列の多型が存在しうることを理解するであろう。このような遺伝子多型は、自然の対立遺伝子変異に起因して、集団内の個体間に存在しうる。対立遺伝子とは、所与の遺伝子座において代替的に生じる遺伝子群のうちの1つである。加えて、RNAの発現レベルに影響を及ぼすDNA多型はまた、その遺伝子の全発現レベルにも影響を及ぼしうる(例えば、調節または分解に影響を及ぼすことにより)ことが理解されるであろう。
本明細書では「対立遺伝子改変体」と互換的に使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子またはその部分の代替的形態を指す。対立遺伝子は、相同な染色体上の、同じ遺伝子座または位置を占有する。対象が、遺伝子の2つの同一な対立遺伝子を有する場合、対象は、遺伝子または対立遺伝子についてホモ接合性であるという。対象が、遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を有する場合、対象は、遺伝子または対立遺伝子についてヘテロ接合性であるという。例えば、バイオマーカーの対立遺伝子は、単一のヌクレオチドにおいて互いに異なる場合もあり、いくつかのヌクレオチドにおいて互いに異なる場合もあり、ヌクレオチドの置換、欠失、および挿入を含みうる。遺伝子の対立遺伝子はまた、1または複数の変異を含有する遺伝子の形態でもありうる。
本明細書で互換的に使用される「遺伝子の多型領域の対立遺伝子改変体」または「対立遺伝子改変体」という用語は、集団内の遺伝子のこの領域内で見出される、いくつかの可能なヌクレオチド配列のうちの1つを有する、遺伝子の代替的形態を指す。本明細書で使用される場合、対立遺伝子改変体は、機能的な対立遺伝子改変体、非機能的な対立遺伝子改変体、SNP、変異、および多型を包含することを意図する。
「一塩基多型」(SNP)という用語は、対立遺伝子の配列間の変異部位である、単一のヌクレオチドにより占有された多型部位を指す。部位は通例、対立遺伝子の高度に保存された配列(例えば、集団のメンバー100例中1例または1000例中1例未満において変動する配列)を先行させ、これを後続させる。SNPは通例、多型部位における、1つのヌクレオチドによる、別のヌクレオチドの置換に起因して起こる。SNPはまた、基準対立遺伝子と比べた、ヌクレオチドの欠失またはヌクレオチドの挿入からも起こりうる。多型部位は、基準塩基以外の塩基により占有されていることが典型的である。例えば、基準対立遺伝子が、多型部位において、塩基「T」(チミジン)を含有する場合、変更された対立遺伝子は、多型部位において、「C」(シチジン)、「G」(グアニン)、または「A」(アデニン)を含有しうる。SNPは、タンパク質をコードする核酸配列内で生じる可能性があり、この場合、SNPは、欠損性の改変体タンパク質もしくは他の形の改変体タンパク質、または遺伝子疾患をもたらしうる。このようなSNPは、遺伝子のコード配列を変更し、したがって、別のアミノ酸を指定する(「ミスセンス」SNP)場合があり、またはSNPは、終止コドンを導入する(「ナンセンス」SNP)場合がある。SNPが、タンパク質のアミノ酸配列を変更しない場合、SNPは、「サイレント」と呼ばれる。SNPはまた、ヌクレオチド配列の非コード領域内でも生じうる。これは、例えば、選択的スプライシングの結果としての欠損性のタンパク質発現を結果としてもたらす場合もあり、タンパク質の機能に対して影響を及ぼさない場合もある。
本明細書で使用される場合、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。このような自然の対立遺伝子変異は、所与の遺伝子のヌクレオチド配列内で、1~5%の分散を結果としてもたらしうることが典型的である。代替的な対立遺伝子は、いくつかの異なる個体において、目的の遺伝子をシークエンシングすることにより同定することができる。これは、様々な個体における同じ遺伝子座を同定するハイブリダイゼーションプローブを使用することにより、たやすく実行することができる。自然の対立遺伝子変異の結果であり、機能的活性を変更しない、あらゆるかつ全てのこのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異は、本発明の範囲内にあることが意図される。
別の実施形態では、バイオマーカー核酸分子は、少なくとも7、15、20、25、30、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、またはそれ超のヌクレオチドの長さであり、ストリンジェントな条件下で、本発明のマーカーに対応する核酸分子または本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸分子とハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件であって、その下では、互いと少なくとも60%(65%、70%、75%、80%、好ましくは85%)同一なヌクレオチド配列が、互いとハイブリダイズしたままであることが典型的である条件について記載することを意図する。このようなストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y(1989年)の、6.3.1~6.3.6節において見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の、好ましい、非限定的な例は、約45℃で、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーションとそれに続く、50~65℃で、0.2×SSC、0.1%のSDS中の、1回または複数回の洗浄である。
集団内に存在しうる、本発明の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子改変体に加えて、当業者は、配列の変化を、変異により導入し、これにより、核酸分子によりコードされるタンパク質の生物学的活性を変更せずに、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらしうることをさらに理解するであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらす、ヌクレオチド置換を施すことができる。「非必須」アミノ酸残基が、生物学的活性を変更せずに、野生型配列から変更されうる残基であるのに対し、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要である。例えば、多様な種のホモログの間で保存されないか、または半保存的であるに過ぎないアミノ酸残基は、活性に必須ではない可能性があるので、変更のための標的となる可能性があるであろう。代替的に、多様な種(例えば、マウスおよびヒト)のホモログの間で保存されるアミノ酸残基は、活性に必須でありうるので、変更のための標的とならない可能性があるであろう。
したがって、発明の別の態様は、活性に必須でないアミノ酸残基の変化を含有する、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。このようなポリペプチドは、アミノ酸配列が、本発明のマーカーに対応する、天然に存在するタンパク質とは異なるが、生物学的活性を保持する。一実施形態では、バイオマーカータンパク質は、本明細書で記載されるバイオマーカータンパク質のアミノ酸配列と、少なくとも約40%同一であり、50%、60%、70%、75%、80%、83%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超同一なアミノ酸配列を有する。
改変体タンパク質をコードする単離された核酸分子は、1または複数のアミノ酸残基の置換、付加、または欠失を、コードされるタンパク質に導入するように、1または複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失を、本発明の核酸のヌクレオチド配列に導入することにより創出することができる。変異は、部位指向変異誘発およびPCR媒介型変異誘発など、標準的な技法により導入することができる。保存的アミノ酸置換は、1または複数の、予測される非必須アミノ酸残基において施すことが好ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を、類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置きかえた置換である。当技術分野では、類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分枝型側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。代替的に、変異は、飽和変異誘発などにより、コード配列の全部または一部に沿って、ランダムに導入することができ、結果として得られる変異体を、生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する変異体を同定することができる。変異誘発に続き、コードされるタンパク質を、組換えにより発現させ、タンパク質の活性を決定することができる。
一部の実施形態では、本発明は、抗バイオマーカーアンチセンス核酸分子、すなわち、本発明のセンス核酸に相補的な、例えば、本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、または本発明のマーカーに対応するmRNA配列に相補的な分子の使用をさらに想定する。したがって、本発明のアンチセンス核酸分子は、本発明のセンス核酸に水素結合する(すなわち、これとアニールする)ことができる。上記アンチセンス核酸は、コード鎖全体に、またはその部分のみ、例えば、タンパク質コード領域(またはオープンリーディングフレーム)の全体もしくは一部に相補的でありうる。アンチセンス核酸分子はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全体または一部に対するアンチセンスでありうる。上記非コード領域(「5’および3’非翻訳領域」)は、上記コード領域に隣接する5’および3’配列であり、アミノ酸に翻訳されない。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50個またはそれよりも多いヌクレオチドの長さでありうる。アンチセンス核酸は、当技術分野で公知の手順を使用した、化学合成および酵素ライゲーション反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または上記分子の生物学的安定性を増加させるように、もしくは上記アンチセンス核酸およびセンス核酸の間で形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるようにデザインされた様々に修飾されたヌクレオチドを使用して化学合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。上記アンチセンス核酸の生成に使用することができる修飾されたヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含む。あるいは、上記アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向性でサブクローニングされた(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAは、次のサブ節においてさらに記載される、目的の標的核酸に対してアンチセンス配向性のものとなる)発現ベクターを使用して生物学的に産生することができる。
本発明のアンチセンス核酸分子は典型的に、本発明の選択されたマーカーに対応するポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするまたはこれに結合して、これにより、例えば、転写および/または翻訳を阻害することにより、上記マーカーの発現を阻害するように、対象に投与される、またはin situで生成される。上記ハイブリダイゼーションは、安定した二重鎖を形成するための従来のヌクレオチド相補性によるものでありうる、または例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主溝における特異的相互作用を介したものでありうる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位における直接的注射、または血液もしくは骨髄関連体液への該アンチセンス核酸の注入を含む。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするように修飾し、次いで、全身性投与することができる。例えば、全身性投与のため、アンチセンス分子は、例えば、細胞表面受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体に上記アンチセンス核酸分子を連結することにより、選択された細胞表面に発現された受容体または抗原に特異的に結合するように、修飾することができる。上記アンチセンス核酸分子は、本明細書に記載されているベクターを使用して、細胞に送達することもできる。上記アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、該アンチセンス核酸分子が強いpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれたベクター構築物が、好まれる。
本発明のアンチセンス核酸分子は、α-アノマー核酸分子でありうる。α-アノマー核酸分子は、通常のα-単位に反して、鎖が互いに平行に延びている(run parallel to each other)、相補的RNAとの特異的二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultierら、1987年、Nucleic Acids Res.15巻:6625~6641頁)。上記アンチセンス核酸分子は、2’-o-メチルリボヌクレオチド(Inoueら、1987年、Nucleic Acids Res.15巻:6131~6148頁)またはキメラRNA-DNAアナログ(Inoueら、1987年、FEBS Lett.215巻:327~330頁)を含むこともできる。
本発明は、リボザイムも包含する。リボザイムは、相補的領域を有するmRNAなどの一本鎖核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。よって、リボザイム(例えば、HaselhoffおよびGerlach、1988年、Nature 334巻:585~591頁に記載されているハンマーヘッド型リボザイム)を使用して、mRNA転写物を触媒的に切断して、これにより、上記mRNAによってコードされるタンパク質の翻訳を阻害することができる。本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸分子に対する特異性を有するリボザイムは、該マーカーに対応するcDNAのヌクレオチド配列に基づきデザインすることができる。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、切断されるべきヌクレオチド配列に相補的である、Tetrahymena L-19 IVS RNAの誘導体を構築することができる(Cechら、米国特許第4,987,071号;およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい)。あるいは、本発明のポリペプチドをコードするmRNAを使用して、RNA分子のプールから、特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択することができる(例えば、BartelおよびSzostak、1993年、Science 261巻:1411~1418頁を参照されたい)。
本発明は、三重らせん構造を形成する核酸分子も包含する。例えば、バイオマーカータンパク質の発現は、ポリペプチドをコードする遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的化して、標的細胞における遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成することにより阻害されうる。全般的に、Helene(1991年)Anticancer Drug Des.6巻(6号):569~84頁;Helene(1992年)Ann. N.Y. Acad. Sci.660巻:27~36頁;およびMaher(1992年)Bioassays 14巻(12号):807~15頁を参照されたい。
様々な実施形態では、本発明の核酸分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において修飾して、例えば、該分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度を改善することができる。例えば、上記核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格を修飾して、ペプチド核酸分子を生成することができる(Hyrupら、1996年、Bioorganic & Medicinal Chemistry 4巻(1号):5~23頁を参照されたい)。本明細書で使用される通り、「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、上記デオキシリボースリン酸骨格がシュードペプチド骨格によって置きかえられ、4種の天然核酸塩基のみが保持された、核酸模倣物、例えば、DNA模倣物を指す。PNAの中性骨格は、低イオン強度の条件下でのDNAおよびRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示された。PNAオリゴマーの合成は、Hyrupら(1996年)前出;Perry-O’Keefeら(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:14670~675頁に記載されている標準固相ペプチド合成プロトコールを使用して行うことができる。
PNAは、治療および診断適用において使用することができる。例えば、PNAは、例えば、転写もしくは翻訳抑止を誘導するまたは複製を阻害することによる、遺伝子発現の配列特異的モジュレーションのためのアンチセンス剤またはアンチジーン剤として使用することができる。PNAは、例えば、例えばPNA指向性PCRクランピングによる遺伝子における単一塩基対変異の解析において;他の酵素、例えば、S1ヌクレアーゼと組み合わせて使用される場合、人工制限酵素として(Hyrup(1996年)前出);またはDNAシーケンスおよびハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして(Hyrup、1996年、前出;Perry-O’Keefeら、1996年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:14670~675頁)、使用することもできる。
別の実施形態では、PNAは、例えば、親油性基もしくは他のヘルパー基をPNAに結合させることにより、PNA-DNAキメラの形成により、またはリポソームもしくは当技術分野で公知の他の薬物送達技法の使用により、その安定性または細胞取込みを増強するように修飾することができる。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を組み合わせることができる、PNA-DNAキメラを生成することができる。このようなキメラは、PNA部分が、高い結合アフィニティーおよび特異性をもたらしつつ、DNA認識酵素、例えば、RNASE HおよびDNAポリメラーゼが、DNA部分と相互作用することを可能にする。PNA-DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基の間の結合の数、および配向性に関して選択された適切な長さのリンカーを使用して連結することができる(Hyrup、1996年、前出)。PNA-DNAキメラの合成は、Hyrup(1996年)、前出およびFinnら(1996年)Nucleic Acids Res.24巻(17号):3357~63頁に記載されている通りに行うことができる。例えば、DNA鎖は、標準ホスホラミダイトカップリング化学および修飾されたヌクレオシドアナログを使用して、固体支持体において合成することができる。5’-(4-メトキシトリチル)アミノ-5’-デオキシ-チミジンホスホラミダイトなどの化合物は、PNAとDNAの5’末端との間の連結として使用することができる(Magら、1989年、Nucleic Acids Res.17巻:5973~88頁)。続いて、PNA単量体を、段階的様式でカップリングして、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメントを有するキメラ分子を産生する(Finnら、1996年、Nucleic Acids Res.24巻(17号):3357~63頁)。あるいは、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントを有するキメラ分子を合成することができる(Peterserら、1975年、Bioorganic Med. Chem. Lett.5巻:1119~11124頁)。
他の実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、in vivoで宿主細胞受容体を標的化するための)、または細胞膜(例えば、Letsingerら、1989年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:6553~6556頁;Lemaitreら、1987年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:648~652頁;PCT公開第WO88/09810を参照されたい)もしくは血液脳関門(例えば、PCT公開第WO89/10134を参照されたい)を越えた輸送を容易とする剤など、他の付属基を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤(例えば、Krolら、1988年、Bio/Techniques 6巻:958~976頁を参照されたい)またはインターカレート剤(例えば、Zon、1988年、Pharm. Res.5巻:539~549頁を参照されたい)により修飾することができる。この目的のために、上記オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤などにコンジュゲートすることができる。
本発明の別の態様は、バイオマーカータンパク質およびその生物学的に活性な部分の使用に関する。一実施形態では、マーカーに対応する天然ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製法を使用する、適切な精製スキームにより、細胞または組織供給源から単離することができる。別の実施形態では、本発明のマーカーに対応するポリペプチドを、組換えDNA法により作製する。組換え発現に対する代替法として、本発明のマーカーに対応するポリペプチドは、標準的なペプチド合成法を使用して、化学的に合成することができる。
「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、該タンパク質が由来する細胞もしくは組織供給源に由来する、細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成される場合の、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、タンパク質を、それが細胞から単離されるか、または組換えにより作製される該細胞の細胞成分から分離した、該タンパク質の調製物を含む。よって、細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%または5%(乾燥重量で)未満の異種タンパク質(本明細書ではまた、「夾雑タンパク質」とも称する)を有するタンパク質の調製物を含む。上記タンパク質またはその生物学的に活性な部分を組換えにより作製する場合、それはまた、培養培地も実質的に含まないことが好ましい、すなわち、培養培地は、上記タンパク質調製物の体積の約20%、10%または5%未満である。上記タンパク質を、化学合成によって産生する場合、これは、好ましくは、化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、該タンパク質の合成に関与する化学的前駆物質または他の化学物質から分離される。したがって、このような上記タンパク質の調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量で)未満の、目的のポリペプチド以外の化学的前駆物質または化合物を有する。
バイオマーカーポリペプチドの生物学的に活性な部分は、本明細書で記載される、バイオマーカータンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であるか、またはこれに由来するが、全長タンパク質よりも少ない数のアミノ酸を含み、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を呈するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。生物学的に活性な部分は、対応するタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含むことが典型的である。本発明のタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100個またはそれよりも多いアミノ酸の長さのポリペプチドでありうる。さらに、タンパク質の他の領域を欠失させた、他の生物学的に活性な部分は、組換え法により調製し、本発明のポリペプチドの天然形態の機能的活性のうちの1または複数について評価することができる。
好ましいポリペプチドは、本明細書で記載される核酸分子によりコードされるバイオマーカータンパク質のアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、これらの配列のうちの1つと実質的に同一(例えば、少なくとも約40%、好ましくは、50%、60%、70%、75%、80%、83%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)であり、対応する天然に存在するタンパク質のタンパク質の機能的活性を保持するが、自然の対立遺伝子変異または変異誘発に起因して、アミノ酸配列が異なる。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するには、最適の比較を目的として、配列をアラインする(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適のアラインメントのために、第1のアミノ酸または核酸配列の配列内に、ギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占有される場合、分子は、その位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントとは、配列により共有される同一な位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一な位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。一実施形態では、2つの配列は、同じ長さである。
2つの配列の間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較のために活用される数学的アルゴリズムの、好ましい、非限定的な例は、KarlinおよびAltschul(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、87巻:2264~2268頁のアルゴリズムであって、KarlinおよびAltschul(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、90巻:5873~5877頁における通りに改変されたアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.、215巻:403~410頁のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTによるヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るように、スコア=100、ワード長=12とするNBLASTプログラムにより実施することができる。BLASTによるタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るように、スコア=50、ワード長=3とするXBLASTプログラムにより実施することができる。比較を目的として、ギャップを施されたアラインメントを得るために、Altschulら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3389~3402頁において記載されている通り、Gapped BLASTを活用することができる。代替的に、PSI-Blastを使用して、分子間の遠隔的関係を検出する反復的検索を実施することができる。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを活用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の、デフォルトのパラメータを使用することができる。ncbi.nlm.nih.govにおけるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを参照されたい。配列の比較のために活用される数学的アルゴリズムの、別の好ましい、非限定的な例は、MyersおよびMiller(1988年)、Comput Appl Biosci、4巻:11~7頁のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部である、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するために、ALIGNプログラムを活用する場合、PAM120重みづけ残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用することができる。局所的配列類似性の領域およびアラインメントを同定するための、さらに別の有用なアルゴリズムは、PearsonおよびLipman(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、85巻:2444~2448頁において記載されている、FASTAアルゴリズムである。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を比較するために、FASTAアルゴリズムを使用する場合、PAM120重みづけ残基表は、例えば、k-タプル値を2として使用することができる。
2つの配列の間の同一性パーセントは、ギャップの許容を伴うかまたは伴わずに、上記で記載した技法と同様の技法を使用して決定することができる。同一性パーセントの計算では、正確なマッチだけをカウントする。
本発明はまた、バイオマーカータンパク質に対応する、キメラまたは融合タンパク質も提供する。本明細書で使用される場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、マーカーに対応するポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結した、本発明のマーカーに対応するポリペプチドの全部または一部(好ましくは、生物学的に活性な部分)を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明のポリペプチドと、異種ポリペプチドとを、互いとインフレームで融合させていることを示すように意図する。異種ポリペプチドは、本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端と融合させることができる。
1つの有用な融合タンパク質は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドを、GST配列のカルボキシル末端と融合させた、GST融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易としうる。
別の実施形態では、融合タンパク質は、異種シグナル配列、免疫グロブリン融合タンパク質、毒素、または他の有用なタンパク質配列を含有する。本発明のキメラおよび融合タンパク質は、標準的な組換えDNA法により作製することができる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技法により合成することができる。代替的に、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続的な遺伝子断片の間の相補的な突出をもたらすアンカープライマーを使用して実行することができ、その後、これを、アニールさせ、再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubelら、前出を参照されたい)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をあらかじめコードする、多くの発現ベクターが、市販されている。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、融合部分を、本発明のポリペプチドに、インフレームで連結するように、このような発現ベクターへとクローニングすることができる。
シグナル配列を使用して、分泌されるタンパク質または目的の他のタンパク質の分泌および単離を容易とすることができる。シグナル配列は、1または複数の切断事象において、分泌中に成熟タンパク質から一般に切断される疎水性アミノ酸のコアを特徴とすることが典型的である。このようなシグナルペプチドは、それらが、分泌経路を通過するときに、シグナル配列の、成熟タンパク質からの切断を可能とするプロセシング部位を含有する。したがって、本発明は、シグナル配列を有する、記載されるポリペプチドのほか、シグナル配列が、タンパク質分解により切断されたポリペプチド(すなわち、切断産物)に関する。一実施形態では、シグナル配列をコードする核酸配列を、発現ベクター内で、通常分泌されないか、またはその他の点で、単離することが困難なタンパク質など、目的のタンパク質に作動可能に連結することができる。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換される真核生物宿主などからのタンパク質の分泌を導き、シグナル配列は、その後、または共時的に、切断される。次いで、タンパク質は、細胞外培地から、当技術分野で認知された方法により、たやすく精製することができる。代替的に、GSTドメインを有するなど、精製を容易とする配列を使用して、シグナル配列を、目的のタンパク質に連結することができる。
本発明はまた、本明細書で記載されるバイオマーカーポリペプチドの改変体にも関する。このような改変体は、アゴニスト(模倣物(mimetic))またはアンタゴニストとして機能しうる、変更されたアミノ酸配列を有する。改変体は、変異誘発、例えば、個別の点変異または切断により生成することができる。アゴニストは、タンパク質の天然に存在する形態と実質的に同じ生物学的活性、またはタンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを保持しうる。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、目的のタンパク質を含む、細胞内シグナル伝達カスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することにより、タンパク質の天然に存在する形態の活性のうちの1または複数を阻害しうる。したがって、限定された機能の改変体による処置により、特異的な生物学的効果を誘発することができる。タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する改変体による対象の処置は、タンパク質の天然に存在する形態による処置と比べて、対象における少ない副作用を有しうる。
アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能するバイオマーカータンパク質の改変体は、アゴニストまたはアンタゴニスト活性に関して、本発明のタンパク質の変異体、例えば、トランケーション変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより同定することができる。一実施形態では、改変体の多様化したライブラリーが、核酸レベルにおけるコンビナトリアル変異誘発によって生成され、これは、多様化された遺伝子ライブラリーによってコードされる。改変体の多様化されたライブラリーは、例えば、潜在的タンパク質配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または、あるいは、より大きい融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイのための)発現できるように、遺伝子配列へと合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素によりライゲーションすることにより産生することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドの潜在的改変体のライブラリーを産生するために使用することができる、様々な方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Narang、1983年、Tetrahedron 39巻:3頁;Itakuraら、1984年、Annu. Rev. Biochem.53巻:323頁;Itakuraら、1984年、Science 198巻:1056頁;Ikeら、1983年、Nucleic Acid Res.11巻:477頁を参照されたい)。
加えて、本発明のマーカーに対応するポリペプチドのコード配列の断片のライブラリーを使用して、改変体のスクリーニングおよびその後の選択のための、ポリペプチドの多様化された集団を生成することができる。例えば、コード配列断片のライブラリーは、ニッキングが1分子当たり約1回のみ起こる条件下で、目的のコード配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処置し、二本鎖DNAを変性し、DNAを復元して、異なるニッキング産物から、センス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成させ、S1ヌクレアーゼ処置により再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去し、その結果得られる断片ライブラリーを発現ベクター中にライゲーションすることにより生成することができる。この方法により、目的のタンパク質のアミノ末端および様々なサイズの内部断片をコードする発現ライブラリーを得ることができる。
点変異またはトランケーションによって作られたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、また、選択された特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技法が、当技術分野で公知である。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための、ハイスループット解析に受け入れられる最も広く使用されている技法は典型的に、複製可能な発現ベクターに上記遺伝子ライブラリーをクローニングするステップと、その結果得られるベクターのライブラリーにより適切な細胞を形質転換するステップと、所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易とする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させるステップとを含む。上記ライブラリーにおける機能的変異体の頻度を増強する技法である再帰的アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)を、スクリーニングアッセイと組み合わせて使用して、本発明のタンパク質の改変体を同定することができる(ArkinおよびYourvan、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:7811~7815頁;Delgraveら、1993年、Protein Engineering 6巻(3号):327~331頁)。
本明細書に記載されているバイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチド分子の産生および使用は、標準組換え技法を使用することにより容易とすることができる。一部の実施形態では、このような技法は、バイオマーカーポリペプチドまたはこのようなポリペプチドの部分をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは、発現ベクターを使用する。本明細書で使用される通り、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一つのタイプは、その中にさらなるDNAセグメントをライゲーションすることができる、環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別の型は、ウイルスベクターであり、この場合、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中にライゲーションすることができる。ある特定のベクターは、それが導入された宿主細胞における自律的複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入後に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、これにより、該宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクター、すなわち発現ベクターは、それに作動可能に連結された遺伝子の発現を方向付けることができる。一般に、組換えDNA技法において有用性がある発現ベクターは、多くの場合、プラスミド(ベクター)の形態である。しかし、本発明は、均等な機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)など、発現ベクターのこのような他の形態を含むことが意図される。
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含む。これは、上記組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結された、発現に使用されるべき宿主細胞に基づいて選択される1種または複数種の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内で、「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で、調節配列(複数可)に連結されている(例えば、in vitro転写/翻訳系において、または上記ベクターが宿主細胞に導入される場合は該宿主細胞において)ことを意味することが意図される。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel、Methods in Enzymology: Gene Expression Technology 185巻、Academic Press、San Diego, CA(1991年)に記載されている。調節配列は、多くの型の宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を方向付ける調節配列、およびある特定の宿主細胞のみにおけるヌクレオチド配列の発現を方向付ける調節配列(例えば、組織特異的調節配列)を含む。当業者であれば、上記発現ベクターのデザインが、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存しうることが理解される。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して、これにより、本明細書に記載されている核酸によってコードされる融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを産生することができる。
本発明における使用のための組換え発現ベクターは、原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、昆虫細胞{バキュロウイルス発現ベクターを使用}、酵母細胞または哺乳動物細胞)における本発明のマーカーに対応するポリペプチドの発現のためにデザインすることができる。適切な宿主細胞は、Goeddel、前出においてさらに考察されている。あるいは、上記組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、in vitroで転写および翻訳されてよい。
原核生物におけるタンパク質の発現は、ほとんどの場合、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を方向付ける構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いてE.coliにおいて実行される。融合ベクターは、その中にコードされるタンパク質に、通常、上記組換えタンパク質のアミノ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは典型的に、3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増加させること;2)該組換えタンパク質の溶解度を増加させること;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、該組換えタンパク質の精製に役立つこと。多くの場合、融合発現ベクターにおいて、タンパク分解性切断部位が、該融合部分および該組換えタンパク質の結合部に導入されて、融合タンパク質の精製の後での、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。このような酵素およびその同族認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターは、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;SmithおよびJohnson、1988年、Gene 67巻:31~40頁)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、MA)およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)を含む。
適切な誘導性非融合E.coli発現ベクターの例は、pTrc(Amannら、1988年、Gene 69巻:301~315頁)およびpET 11d(Studierら、60~89頁、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185巻、Academic Press、San Diego, CA、1991年)を含む。上記pTrcベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依拠する。上記pET 11dベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、共発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依拠する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下で、T7 gn1遺伝子を有する常在性プロファージから、宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって供給される。
E.coliにおける組換えタンパク質発現を最大化するための一戦略は、組換えタンパク質をタンパク分解性切断する能力が損なわれた宿主細菌において該タンパク質を発現させることである(Gottesman、119~128頁、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185巻、Academic Press、San Diego, CA、1990年)。別の戦略は、アミノ酸毎の個々のコドンが、E.coliにおいて優先的に活用されるコドンになるように、発現ベクターに挿入されるべき核酸の核酸配列を変更することである(Wadaら、1992年、Nucleic Acids Res.20巻:2111~2118頁)。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準DNA合成技法によって実行することができる。
別の実施形態では、上記発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例は、pYepSec1(Baldariら、1987年、EMBO J.6巻:229~234頁)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz、1982年、Cell 30巻:933~943頁)、pJRY88(Schultzら、1987年、Gene 54巻:113~123頁)、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)およびpPicZ(Invitrogen Corp、San Diego、CA)を含む。
あるいは、上記発現ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞(例えば、Sf 9細胞)におけるタンパク質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smithら、1983年、Mol. Cell Biol.3巻:2156~2165頁)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers、1989年、Virology 170巻:31~39頁)を含む。
さらに別の実施形態では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed、1987年、Nature 329巻:840頁)およびpMT2PC(Kaufmanら、1987年、EMBO J.6巻:187~195頁)を含む。哺乳動物細胞において使用される場合、上記発現ベクターの制御機能は多くの場合、ウイルス調節エレメントによって提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両方のための他の適切な発現系については、Sambrookら、前出の第16章および第17章を参照されたい。
別の実施形態では、上記組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を方向付けることができる(例えば、組織特異的調節エレメントが、該核酸の発現に使用される)。組織特異的調節エレメントは、当技術分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら、1987年、Genes Dev.1巻:268~277頁)、リンパ系特異的プロモーター(CalameおよびEaton、1988年、Adv. Immunol.43巻:235~275頁)、特に、T細胞受容体(WinotoおよびBaltimore、1989年、EMBO J.8巻:729~733頁)および免疫グロブリン(Banerjiら、1983年、Cell 33巻:729~740頁;QueenおよびBaltimore、1983年、Cell 33巻:741~748頁)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle、1989年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:5473~5477頁)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら、1985年、Science 230巻:912~916頁)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)を含む。発生的に調節されたプロモーターも包含され、例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss、1990年、Science 249巻:374~379頁)およびα-フェトプロテインプロモーター(CamperおよびTilghman、1989年、Genes Dev.3巻:537~546頁)である。
本発明は、さらに、アンチセンス配向性で組換え発現ベクター中にクローニングされたDNA分子を含む該発現ベクターを提供する。すなわち、上記DNA分子は、本発明のポリペプチドをコードするmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(該DNA分子の転写による)を可能にする様式で、調節配列に作動可能に連結されている。様々な細胞型におけるアンチセンスRNA分子の持続的発現を方向付ける、上記アンチセンス配向性でクローニングされた核酸に作動可能に連結された調節配列、例えばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択することができ、またはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的もしくは細胞型特異的発現を方向付ける調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態であってもよく、この場合、高効率調節領域の制御下でアンチセンス核酸が産生され、その活性は、該ベクターが導入された細胞型によって決定することができる。アンチセンス遺伝子を使用した遺伝子発現の調節の考察については、(Weintraubら、1986年、Trends in Genetics、1巻(1号))を参照されたい。
本発明の別の態様は、本発明の組換え発現ベクターを導入した宿主細胞に関する。本明細書では、「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語を、互換的に使用する。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。続く世代には、変異または環境的影響に起因して、ある特定の修飾が生じうるため、このような子孫は、実のところ、親細胞と同一でない場合もあるが、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞)でありうる。
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション法を介して、原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書で使用される場合、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、外来核酸を、宿主細胞に導入するための、当技術分野で認知された様々な技法であって、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔を含む技法を指すことを意図する。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするのに適する方法は、Sambrookら(前出)、および他の実験室マニュアルにおいて見出すことができる。
哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション法に応じて、ほんのわずかな割合の細胞だけが、外来DNAを、それらのゲノムに組み込みうることが公知である。これらの組込み体を同定および選択するために、選択可能マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性についての)をコードする遺伝子を、一般に、目的の遺伝子と共に、宿主細胞に導入する。好ましい選択可能マーカーは、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する選択可能マーカーを含む。導入される核酸を、安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物による選択(例えば、選択可能マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は存続する一方、他の細胞は死滅する)により同定することができる。
V.バイオマーカー核酸およびポリペプチドの解析
バイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチドは、本明細書に記載されている方法および当業者に公知の技法に従って解析して、1)バイオマーカー転写物またはポリペプチドのレベルの変更、2)バイオマーカー遺伝子からの1個または複数のヌクレオチドの欠失または付加、4)バイオマーカー遺伝子の1個または複数のヌクレオチドの置換、5)発現調節領域など、バイオマーカー遺伝子の異常修飾などを含むがこれらに限定されない、本発明に有用なこのような遺伝的変更または発現変更を同定することができる。
a.コピー数および/またはゲノム核酸変異の検出のための方法
当業者には、バイオマーカー核酸のコピー数および/またはゲノム核酸の状態(例えば、変異)を評価する方法が周知である。染色体の増加または減少の存在または非存在は、本明細書で同定される領域またはマーカーのコピー数の決定により、簡単に評価することができる。
一実施形態では、生体試料を、ゲノムマーカーを含有するゲノム遺伝子座のコピー数の変化の存在について調べる。一部の実施形態では、表1に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーのコピー数減少(dereased)は、USP10阻害剤療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)のより良好なアウトカムを予測する。表1に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーの少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10個のコピー数は、USP10阻害剤療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対する応答性の可能性があることを予測する。
バイオマーカー遺伝子座のコピー数を評価する方法は、ハイブリダイゼーションベースのアッセイを含むがこれに限定されない。ハイブリダイゼーションベースのアッセイは、サザンブロット、in situハイブリダイゼーション(例えば、FISHおよびSKYを加えたFISH)法など、従来の「直接プローブ」法、および比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、例えば、cDNAベースまたはオリゴヌクレオチドベースのCGHなど、「比較プローブ」法を含むがこれらに限定されない。方法は、基材(例えば、膜またはガラス)結合法またはアレイベースの手法を含むがこれらに限定されない、多種多様なフォーマットで使用することができる。
一実施形態では、試料中のバイオマーカー遺伝子のコピー数の評価は、サザンブロットを伴う。サザンブロットでは、ゲノムDNA(断片化され、電気泳動ゲル上で分離されることが典型的である)を、標的領域に特異的なプローブとハイブリダイズさせる。標的領域についてのプローブに由来するハイブリダイゼーションシグナルの強度の、正常ゲノムDNA(例えば、同じまたは類縁の細胞、組織、臓器などのうちの、増幅されない部分)の解析に由来する対照プローブシグナルとの比較は、標的核酸の相対的なコピー数についての推定値をもたらす。代替的に、ノーザンブロットを、試料中のコード核酸のコピー数を評価するために活用することができる。ノーザンブロットでは、mRNAを、標的領域に特異的なプローブとハイブリダイズさせる。標的領域についてのプローブに由来するハイブリダイゼーションシグナルの強度の、正常RNA(例えば、同じまたは類縁の細胞、組織、臓器などのうちの、増幅されない部分)の解析に由来する対照プローブシグナルとの比較は、標的核酸の相対的なコピー数についての推定値をもたらす。代替的に、適切な対照と比べて高いまたは低い発現(例えば、同じまたは類縁の細胞、組織、臓器などのうちの、増幅されない部分)により、標的核酸の相対的なコピー数についての推定値がもたらされるように、当技術分野で周知の、RNAを検出する他の方法を使用することができる。
ゲノムコピー数を決定するための代替的手段は、in situハイブリダイゼーション(例えば、Angerer(1987年)、Meth. Enzymol、152巻:649頁)である。一般に、in situハイブリダイゼーションは、以下のステップ:(1)解析される組織または生物学的構造の固定;(2)標的DNAのアクセス可能性を増大させ、非特異的結合を低減する、生物学的構造のプレハイブリダイゼーション処理;(3)核酸混合物の、生物学的構造または組織内の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するハイブリダイゼーション後の洗浄;および(5)ハイブリダイズさせた核酸断片の検出を含む。これらのステップの各々において使用される試薬と、使用のための条件は、特定の適用に応じて変動する。典型的なin situハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞を、固体支持体、典型的には、スライドガラスに固定する。核酸をプロービングする場合、細胞は、熱またはアルカリにより変性させることが典型的である。次いで、細胞を、ハイブリダイゼーション溶液と、タンパク質をコードする核酸配列に特異的な標識プローブのアニーリングを許容する、中程度の温度で接触させる。次いで、適切なシグナル対ノイズ比が得られるまで、標的(例えば、細胞)を、所定のストリンジェンシーで、またはストリンジェンシーを増大させて洗浄することが典型的である。プローブは、例えば、放射性同位元素または蛍光レポーターで標識することが典型的である。一実施形態では、プローブは、ストリンジェントな条件下で標的核酸と特異的にハイブリダイズするように、十分に長い。プローブは一般に、約200塩基~約1000塩基の長さの範囲である。一部の適用では、反復配列のハイブリダイゼーション能を遮断することが必要である。したがって、一部の実施形態では、tRNA、ヒトゲノムDNA、またはCot-I DNAを使用して、非特異的なハイブリダイゼーションを遮断する。
ゲノムコピー数を決定するための代替的手段は、比較ゲノムハイブリダイゼーションである。一般に、ゲノムDNAを、正常基準細胞のほか、被験細胞(例えば、腫瘍細胞)からも単離し、必要な場合は、増幅する。2つの核酸を、差次的に標識し、次いで、in situにおいて、基準細胞の中期染色体とハイブリダイズさせる。基準DNAおよび被験DNAの両方における反復配列を除去するか、またはそれらのハイブリダイゼーション能を、いくつかの手段により、例えば、適切な遮断核酸によるプレハイブリダイゼーションおよび/または前記ハイブリダイゼーション中における前記反復配列に対するこのような遮断核酸配列を含むことにより低減する。次いで、必要な場合、結合させ、標識されたDNA配列を、視覚化可能な形態とする。コピー数が増加または減少している、被験細胞内の染色体領域は、2つのDNAに由来するシグナルの比が変更された領域を検出することにより同定することができる。例えば、被験細胞内のコピー数を減少させた領域は、ゲノムの他の領域と比較して、基準より比較的低い、被験DNAに由来するシグナルを示すであろう。被験細胞内のコピー数を増加させた領域は、被験DNAに由来する、比較的高いシグナルを示すであろう。染色体の欠失または増倍が存在する場合は、2つの標識に由
来するシグナルの比の差異が検出され、比は、コピー数の尺度をもたらすであろう。CGHの別の実施形態である、アレイCGH(aCGH)では、固定化された染色体エレメントを、アレイ上の固体支持体に結合させた標的核酸のコレクションで置きかえ、ゲノムの大部分または全体を、固体支持体に結合させた標的のコレクションにより表すことを可能とする。標的核酸は、cDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド(例えば、一塩基多型を検出する)などを含みうる。アレイベースのCGHはまた、単色の標識化(対照試料と、可能な腫瘍試料とを、2つの異なる色素で標識化し、それらをハイブリダイゼーションの前に混合し、ハイブリダイゼーションにより、アレイ上のプローブの競合的ハイブリダイゼーションに起因する比をもたらすことと対照的に)により実施することもできる。単色CGHでは、対照を、標識し、1つのアレイとハイブリダイズさせ、絶対シグナルを読み取り、可能な腫瘍試料を、標識し、第2のアレイ(同一な内容物を伴う)とハイブリダイズさせ、絶対シグナルを読み取る。コピー数の差異は、2つのアレイに由来する絶対シグナルに基づき計算する。当技術分野では、固定化された染色体またはアレイを調製し、比較ゲノムハイブリダイゼーションを実行する方法が周知である(例えば、米国特許第6,335,167号;同第6,197,501号;同第5,830,645号;および同第5,665,549号;ならびにAlbertson(1984年)、EMBO J.、3巻:1227~1234頁;Pinkel(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、85巻:9138~9142頁;欧州特許公開第430,402号;Methods in Molecular Biology、33巻、In situ Hybridization Protocols、Choo編、Humana Press、Totowa、N.J.(1994年)などを参照されたい)。別の実施形態では、Pinkelら(1998年)、Nature Genetics、20巻:207~211頁、またはKallioniemi(1992年)、Proc. Natl Acad Sci USA、89巻:5321~5325頁(1992年)のハイブリダイゼーションプロトコールを使用する。
さらに別の実施形態では、増幅ベースのアッセイを使用して、コピー数を測定することができる。このような増幅ベースのアッセイでは、核酸配列は、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))内の鋳型として作用する。定量的増幅では、増幅産物の量は、元の試料中の鋳型の量と比例するであろう。適切な対照、例えば、健常な組織との比較は、コピー数の尺度をもたらす。
当業者には、「定量的」増幅法が周知である。例えば、定量的PCRは、同じプライマーを使用して、既知の量の対照配列を、同時に共増幅することを伴う。これは、PCR反応を較正するのに使用しうる、内部標準をもたらす。定量的PCRのための詳細なプロトコールは、Innisら(1990年)、PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、Academic Press, Inc.、N.Y.)において提示されている。定量的PCR解析を使用する、マイクロサテライト遺伝子座におけるDNAコピー数の測定は、Ginzongerら(2000年)、Cancer Research、60巻:5405~5409頁において記載されている。遺伝子についての既知の核酸配列は、当業者が、遺伝子の任意の部分を増幅するプライマーを日常的に選択することを可能とするのに十分である。本発明の方法ではまた、蛍光発生定量的PCRも使用することができる。蛍光発生定量的PCRでは、定量は、蛍光シグナル、例えば、TaqManおよびSYBR greenの量に基づく。
他の適切な増幅法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace(1989年)、Genomics、4巻:560頁、Landegrenら(1988年)、Science、241巻:1077頁;ならびにBarringerら(1990年)、Gene、89巻:117頁を参照されたい)、転写増幅(Kwohら(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、86巻:1173頁)、自己持続配列複製(Guatelliら(1990年)、Proc. Nat. Acad. Sci.、USA、87巻:1874頁)、ドットPCR、およびリンカーアダプターPCRなどを含むがこれらに限定されない。
ヘテロ接合性の喪失(LOH)およびMCP(major copy proportion)によるマッピング(Wang, Z.C.ら(2004年)、Cancer Res、64巻(1号):64~71頁;Seymour, A. B.ら(1994年)、Cancer Res、54巻、2761~4頁;Hahn, S. A.ら(1995年)、Cancer Res、55巻、4670~5頁;Kimura, M.ら(1996年)、Genes Chromosomes Cancer、17巻、88~93頁;Liら、(2008年)、MBC Bioinform.、9巻、204~219頁)もまた、増幅または欠失の領域を同定するのに使用することができる。
b.バイオマーカー核酸の発現を検出するための方法
バイオマーカーの発現は、転写された分子またはタンパク質の発現を検出するための、多種多様な周知の方法のうちのいずれかにより評価することができる。このような方法の非限定的な例は、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質を検出するための免疫学的方法、タンパク質の精製法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、および核酸増幅法を含む。
好ましい実施形態では、特定の遺伝子の活性は、遺伝子転写物(例えば、mRNA)の尺度、翻訳されるタンパク質の量の尺度、または遺伝子産物の活性の尺度により特徴付けられる。バイオマーカーの発現は、それらのいずれもが標準的な技法を使用して測定されうる、mRNAレベル、タンパク質レベル、またはタンパク質活性を検出することを含む、様々な方式でモニタリングすることができる。検出は、遺伝子発現(例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、タンパク質、または酵素活性)のレベルの定量を伴う場合もあり、代替的に、特に対照レベルと比較した遺伝子発現のレベルについての定性的評価である場合もある。検出されるレベルの種類は、文脈から明らかであろう。
別の実施形態では、バイオマーカーおよび機能的に類似するそのホモログであって、その断片または遺伝子の変更(例えば、その調節性またはプロモーター領域内の)を含むホモログの発現レベルの検出または決定は、目的のマーカーについてのRNAレベルの検出または決定を含む。一実施形態では、被験対象に由来する1または複数の細胞を得、RNAを、細胞から単離する。好ましい実施形態では、乳腺組織(breast tissue)細胞の試料を、対象から得る。
一実施形態では、RNAを、単一の細胞から得る。例えば、細胞は、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)により、組織試料から単離することができる。この技法を使用して、細胞を、染色された組織切片を含む組織切片から単離し、これにより、所望の細胞が単離されたことを確認することができる(例えば、Bonnerら(1997年)、Science、278巻:1481頁;Emmert-Buckら(1996年)、Science、274巻:998頁;Fendら(1999年)、Am. J. Path.、154巻:61頁;およびMurakamiら(2000年)、Kidney Int.、58巻:1346頁を参照されたい)。例えば、Murakamiら、前出は、細胞の、以前に免疫染色された組織切片からの単離について記載している。
また、RNAを抽出しうるより大きな細胞集団を得るように、細胞を対象から得、細胞をin vitroにおいて培養することも可能である。当技術分野では、非形質転換細胞の培養物、すなわち、初代細胞培養物を確立するための方法が公知である。
RNAを、個体に由来する組織試料または細胞から単離する場合、組織または細胞を、対象から取り出した後における、遺伝子発現の、任意のさらなる変化を防止することが重要でありうる。発現レベルの変化は、摂動後、例えば、熱ショック後、またはリポ多糖(LPS)もしくは他の試薬による活性化後において、急速に変化することが公知である。加えて、組織および細胞内のRNAは、迅速に分解されうる。したがって、好ましい実施形態では、対象から得られる組織または細胞を、可能な限り速やかに、瞬時凍結させる。
RNAは、様々な方法、例えば、チオシアン酸グアニジウム溶解と、それに続く、CsCl遠心分離により、組織試料から抽出することができる(Chirgwinら、1979年、Biochemistry、18巻:5294~5299頁)。単一細胞に由来するRNAは、Dulac, C. (1998年)、Curr. Top. Dev. Biol.、36巻、245頁;およびJenaら(1996年)、J. Immunol. Methods、190巻:199頁において記載されている方法など、単一の細胞に由来するcDNAライブラリーを調製するための方法において記載されている通りに得ることができる。例えば、RNAsinの包含により、RNAの分解を回避するように、注意を払わなければならない。
次いで、RNA試料を、特定の分子種において濃縮することができる。一実施形態では、ポリ(A)+ RNAを、RNA試料から単離する。一般に、このような精製は、mRNA上のポリAテールを利用する。特に、かつ、上記で言及した通り、ポリTオリゴヌクレオチドを、固体支持体上に固定化して、mRNAに対するアフィニティーリガンドとして用いることができる。これを目的とするキット、例えば、MessageMakerキット(Life Technologies、Grand Island、NY)が市販されている。
好ましい実施形態では、マーカー配列内のRNA集団を、濃縮する。濃縮は、例えば、プライマー特異的cDNA合成、またはcDNA合成に基づく、複数ラウンドの線形増幅、および鋳型指向的in vitro転写(例えば、Wangら(1989年)、PNAS、86巻、9717頁;Dulacら、前出;およびJenaら、前出を参照されたい)により着手することができる。
RNAの集団は、特定の分子種または配列が濃縮されている場合であれ、そうでない場合であれ、さらに増幅することができる。本明細書で規定される場合、「増幅工程」は、RNA中の分子を強化するか、増加させるか、または増進するようにデザインされる。例えば、RNAが、mRNAである場合、シグナルが検出可能であるか、または検出が増強されるように、RT-PCRなどの増幅工程を活用して、mRNAを増幅することができる。このような増幅工程は、特に、生体、組織、または腫瘍試料のサイズまたは体積が小さい場合に有益である。
多様な増幅法および検出法を使用することができる。例えば、mRNAを、cDNAへと逆転写するのに続いて、ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を施すこと;または、米国特許第5,322,770号において記載されている通り、両方のステップのために単一の酵素を使用すること;または、R. L. Marshallら、PCR Methods and Applications、4巻:80~84頁(1994年)により記載されている通り、mRNAを、cDNAへと逆転写するのに続いて、シンメトリックギャップリガーゼ連鎖反応(RT-AGLCR)を施すことは、本発明の範囲内にある。また、リアルタイムPCRも、使用することができる。
本明細書で活用されうる、他の公知の増幅法は、PNAS USA、87巻:1874~1878頁(1990年)において記載されており、また、Nature、350巻(6313号):91~92頁(1991年)においても記載されている、いわゆる「NASBA」または「3SR」法;欧州特許出願(EPA)公開第4544610号において記載されているQベータ増幅;鎖置換増幅(G. T. Walkerら、Clin. Chem.、42巻:9~13頁(1996年);および欧州特許出願第684315号において記載されている);PCT公開WO9322461号により記載されている標的媒介型増幅;PCR;リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、WuおよびWallace、Genomics、4巻、560頁(1989年)、Landegrenら、Science、241巻、1077頁(1988年)を参照されたい);自己持続配列複製(SSR)(例えば、Guatelliら、Proc. Nat. Acad. Sci.、USA、87巻、1874頁(1990年)を参照されたい);および転写増幅(例えば、Kwohら、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、86巻、1173頁(1989年)を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。
現況技術では、遺伝子発現の絶対および相対レベルを決定するための多くの技法が公知であり、本発明における使用に適する一般に使用される技法は、ノーザン解析、RNアーゼ保護アッセイ(RPA)、マイクロアレイ、ならびに定量的PCRおよびディファレンシャルディスプレイPCRなど、PCRベースの技法を含む。例えば、ノーザンブロット法は、RNAの調製物を、変性アガロースゲル上で泳動させ、これを、活性化セルロース、ニトロセルロース、またはガラス、またはナイロン膜など、適切な支持体に転写するステップを伴う。次いで、放射性標識されたcDNAまたはRNAを、調製物とハイブリダイズさせ、洗浄し、オートラジオグラフィーにより解析する。
放射性標識されたアンチセンスRNAプローブを、生検試料の薄い切片とハイブリダイズさせ、洗浄し、RNアーゼにより切断し、オートラジオグラフィーのために、感光性エマルジョンに曝露する、in situハイブリダイゼーションによる可視化もまた利用することができる。試料を、ヘマトキシリンで染色して、試料の組織学的組成を裏付けることができ、適切な光フィルターによる暗視野イメージングは、現像されたエマルジョンを示す。ジゴキシゲニンなどの非放射性標識もまた、使用することができる。
代替的に、mRNAの発現は、DNAアレイ、チップ、またはマイクロアレイ上で検出することができる。対象から得られた被験試料の、標識された核酸を、バイオマーカーDNAを含む固体表面とハイブリダイズさせることができる。バイオマーカー転写物を含有する試料については、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが得られる。当技術分野では、DNAアレイを調製する方法およびそれらの使用が周知である(例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,618,6796号;同第6,379,897号;同第6,664,377号;同第6,451,536号;同第548,257号;U.S.20030157485;ならびにSchenaら(1995年)、Science、20巻、467~470頁;Gerholdら(1999年)、Trends In Biochem. Sci.、24巻、168~173頁;およびLennonら(2000年)、Drug Discovery Today、5巻、59~65頁を参照されたい)。SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)もまた、実施することができる(例えば、米国特許出願第20030215858号を参照されたい)。
mRNAレベルをモニタリングするために、例えば、mRNAを、被験生体試料から抽出し、逆転写させ、蛍光標識されたcDNAプローブを生成する。次いで、マーカーcDNAとハイブリダイズすることが可能なマイクロアレイを、標識されたcDNAプローブでプロービングし、スライドを走査し、蛍光強度を測定する。この強度は、ハイブリダイゼーション強度および発現レベルと相関する。
本明細書で記載される方法において使用されうるプローブの種類は、cDNA、リボプローブ、合成オリゴヌクレオチド、およびゲノムプローブを含む。使用されるプローブの種類は一般に、例えば、in situハイブリダイゼーションのためのリボプローブ、およびノーザンブロット法のためのcDNAなど、特定の状況により指示されるであろう。一実施形態では、プローブを、RNAに固有なヌクレオチド領域へと方向付ける。プローブは、マーカーmRNA転写物を差次的に認識するのに必要となる程度に短くすることが可能であり、例えば、15塩基程度に短くすることも可能であるが、少なくとも17、18、19または20またはそれ超の塩基のプローブを使用することができる。一実施形態では、プライマーおよびプローブは、ストリンジェントな条件下で、マーカーに対応するヌクレオチド配列を有するDNA断片と特異的にハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、ヌクレオチド配列内に少なくとも95%の同一性が見られる場合に限り、ハイブリダイゼーションが生じることを意味する。別の実施形態では、「ストリンジェントな条件」下におけるハイブリダイゼーションは、配列間で、少なくとも97%の同一性が見られる場合に生じる。
プローブを標識化する形態は、放射性同位元素、例えば、32Pおよび35Sの使用など、適切な任意の形態でありうる。放射性同位元素による標識化は、プローブが化学合成されるのであれ、生体により合成されるのであれ、適切に標識された塩基の使用により達成することができる。
一実施形態では、生体試料は、被験対象に由来するポリペプチド分子を含有する。代替的に、生体試料は、被験対象に由来するmRNA分子または被験対象に由来するゲノムDNA分子を含有しうる。
別の実施形態では、方法は、対照生体試料を、対照対象から得るステップと、マーカーのポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在が、生体試料中に検出されるように、対照試料を、マーカーのポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片を検出することが可能な化合物または薬剤と接触させるステップと、対照試料中の、マーカーのポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在を、被験試料中の、マーカーのポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在と比較するステップとをさらに伴う。
c.バイオマーカータンパク質の発現を検出するための方法
バイオマーカータンパク質の活性またはレベルは、発現したポリペプチドを検出または定量することにより、検出および/または定量することができる。ポリペプチドは、当業者に周知の多数の手段のうちのいずれかにより、検出および定量することができる。バイオマーカー核酸および機能的に類似するそのホモログであって、その断片または遺伝子の変更(例えば、その調節性またはプロモーター領域内の)を含むホモログによりコードされるポリペプチドのポリペプチド発現の異常なレベルは、がんの、抗がん療法(例えば、USP10阻害剤療法)に対する応答の可能性と関連する。ポリペプチドを検出するための、当技術分野で公知の任意の方法を使用することができる。このような方法は、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロット法、結合剤-リガンドアッセイ、免疫組織化学法、凝集反応、補体アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ハイパーディフュージョンクロマトグラフィー(hyperdiffusion chromatography)など(例えば、参照により組み込まれる、Basic and Clinical Immunology、SitesおよびTerr編、Appleton and Lange、Norwalk、Conn.、217~262頁、1991年)を含むがこれらに限定されない。抗体を、1または複数のエピトープと反応させるステップと、標識されたポリペプチドまたはその誘導体を、競合的に置換するステップとを含む、結合剤-リガンド免疫アッセイ法が好ましい。
例えば、ELISAおよびRIA手順は、所望のバイオマーカータンパク質の標準物質を標識し(125Iもしくは35Sなどの放射性同位元素、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどのアッセイ可能な酵素により)、非標識の試料と併せて、対応する抗体と接触させ、このとき、第1の抗体に結合するように、第2の抗体を使用し、放射能または固定化された酵素をアッセイするように行う(競合アッセイ)。代替的に、試料中のバイオマーカータンパク質を、対応する固定化された抗体と反応させ、放射性同位元素または酵素で標識された、抗バイオマーカータンパク質抗体を、系と反応させ、放射能または酵素をアッセイする(ELISAサンドイッチアッセイ)。適切な場合、他の従来の方法もまた、利用することができる。
上記の技法は本質的に、「1ステップ」または「2ステップ」アッセイとして行うことができる。「1ステップ」アッセイは、抗原を、固定化された抗体と接触させ、洗浄を伴わずに、混合物を、標識された抗体と接触させるステップを伴う。「2ステップ」アッセイは、混合物を、標識された抗体と接触させる前に、洗浄を伴う。適切な場合、他の従来の方法もまた、利用することができる。
一実施形態では、バイオマーカーのタンパク質レベルを測定するための方法は、生物学的検体を、バイオマーカータンパク質に選択的に結合する、抗体またはその改変体(例えば、断片)と接触させるステップと、前記抗体またはその改変体が、前記試料に結合するかどうかを検出するステップと、これにより、バイオマーカータンパク質のレベルを測定するステップとを含む。
バイオマーカータンパク質および/または抗体の酵素標識および放射性標識は、従来の手段により行うことができる。このような手段は一般に、とりわけ、酵素の活性に有害な影響を及ぼさないように、酵素の、問題の抗原または抗体への、グルタルアルデヒドなどによる共有結合的連結を含むであろうが、これは、全ての酵素が活性であることは必要でないが、アッセイを行うことを可能とするのに十分な活性が残存するという条件で、酵素が、なおも、その基質と相互作用することが可能であることを意図する。実際、酵素を結合させるための一部の技法は、非特異的(ホルムアルデヒドを使用するなど)であり、ある比率の活性酵素をもたらすに過ぎない。
通例、アッセイ系の1つの構成要素を、支持体上に固定化し、これにより、系の他の構成要素を、この構成要素と接触させ、煩瑣で時間のかかる作業を伴わずに、たやすく除去することを可能とすることが所望される。第1の相と離れて、第2の相を固定化することも可能であるが、通例は、1つの相で十分である。
酵素自体を支持体上に固定化することが可能であるが、固相の酵素が必要である場合、これは一般に、抗体に結合させ、抗体を支持体に取り付けることにより、最も良く達成され、そのモデルおよび系は、当技術分野で周知である。単純なポリエチレンは、適切な支持体を提供することができる。
標識化のために利用可能な酵素は、特に限定されないが、例えば、オキシダーゼ群のメンバーから選択することができる。これらは、それらの基質との反応により、過酸化水素の生成を触媒するが、その良好な安定性、入手の容易さ、および安価であることのほか、その基質(グルコース)の入手のたやすさのためにも、グルコースオキシダーゼを使用することが多い。オキシダーゼの活性は、当技術分野で周知の制御条件下における、酵素標識された抗体の、基質との反応の後において形成される、過酸化水素の濃度を測定することによりアッセイすることができる。
本開示に基づき、バイオマーカータンパク質を検出するのに、実施者の好みに従い、他の技法を使用することができる。1つのこのような技法は、適切に処置した試料を、SDS-PAGEゲル上で泳動させてから、ニトロセルロースフィルターなどの固体支持体に転写する、ウェスタンブロット法(Towbinら、Proc. Nat. Acad. Sci.、76巻:4350頁(1979年))である。次いで、抗バイオマーカータンパク質抗体(非標識)を、支持体と接触させ、標識されたプロテインAまたは抗免疫グロブリン(125I、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼを含む、適切な標識)などの二次的免疫試薬によりアッセイする。クロマトグラフィーによる検出もまた使用することができる。
免疫組織化学を使用して、例えば、生検試料中のバイオマーカータンパク質の発現を検出することができる。適切な抗体を、例えば、細胞の薄層と接触させ、洗浄し、次いで、第2の標識された抗体と接触させる。標識化は、蛍光のマーカー、ペルオキシダーゼなどの酵素、アビジン、または放射性標識による標識化でありうる。アッセイは、顕微鏡を使用して、目視によりスコア付ける。
イントラボディ(intrabody)などの抗バイオマーカータンパク質抗体もまた、例えば、対象の細胞および組織内のバイオマーカータンパク質の存在を検出する、イメージング目的で使用することができる。適切な標識は、放射性同位元素である、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネシウム(99mTc)、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光標識、ならびにビオチンを含む。
in vivoイメージングの目的のために、抗体は、それ自体として、体外から検出可能ではないので、検出を可能とするように、標識するか、または他の方式で修飾しなければならない。この目的のマーカーは、抗体の結合に実質的に干渉しないが、外部からの検出を可能とする、任意のマーカーでありうる。適切なマーカーは、X線撮影、NMR、またはMRIにより検出されうるマーカーを含みうる。X線撮影法では、適切なマーカーは、例えば、バリウムまたはセシウムなど、検出可能な放射線を放射するが、対象に明らかに有害ではない、任意の放射性同位元素を含む。NMRおよびMRIに適切なマーカーは一般に、例えば、関与するハイブリドーマのための栄養素の適切な標識化により、抗体に組み込みうる重水素など、検出可能な特徴的スピンを伴うマーカーを含む。
対象のサイズおよび使用されるイメージングシステムが、診断画像をもたらすのに必要とされるイメージング部分の量を決定するであろう。放射性同位元素部分の場合、ヒト対象については、注射される放射能の量は通常、約5~20ミリキュリーのテクネチウム99の範囲であろう。次いで、標識された抗体または抗体断片は、バイオマーカータンパク質を含有する細胞の場所に優先的に蓄積されるであろう。次いで、公知の技法を使用して、標識された抗体または抗体断片を検出することができる。
バイオマーカータンパク質を検出するのに使用しうる抗体は、自然であれ、合成であれ、全長であれ、その断片であれ、モノクローナルであれ、ポリクローナルであれ、検出されるバイオマーカータンパク質に、十分に強力かつ特異的に結合する、任意の抗体を含む。抗体は、最大で、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12MのKdを有しうる。「特異的に結合する」という語句は、例えば、抗体の、エピトープまたは抗原または抗原性決定基への結合であって、同
一または同様のエピトープ、抗原、または抗原決定基の第2の調製物により置換される場合もあり、これと競合する場合もある結合を指す。抗体は、類縁のタンパク質など、他のタンパク質と比べて、バイオマーカータンパク質に優先的に結合しうる。
抗体は、市販されているか、または当技術分野で公知の方法に従い調製することができる。
使用されうる抗体およびその誘導体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、キメラ、ヒト、ヒト化、霊長動物化(CDRグラフト抗体)、ベニヤ化(veneered)、または単鎖抗体のほか、抗体の機能的な断片、すなわち、バイオマーカータンパク質結合性断片を包含する。例えば、バイオマーカータンパク質またはその部分に結合することが可能な抗体断片であって、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片を含むがこれらに限定されない抗体断片を使用することができる。このような断片は、酵素的切断または組換え法により作製することができる。例えば、パパインまたはペプシン切断により、それぞれ、FabまたはF(ab’)2断片を生成することができる。また、必須の基質特異性を有する他のプロテアーゼも、FabまたはF(ab’)2断片を生成するのに使用することができる。抗体はまた、1または複数の終止コドンを、自然の終結部位の上流に導入した、抗体遺伝子を使用して、様々な切断形態でも作製することができる。例えば、F(ab’)2の重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCHドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むようにデザインすることができる。
合成および操作抗体については、例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許第0,125,023B1号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Bossら、欧州特許第0,120,694B1号;Neuberger,M.S.ら、WO86/01533;Neuberger,M.S.ら、欧州特許第0,194,276B1号;Winter、米国特許第5,225,539号;Winter、欧州特許第0,239,400B1号;Queenら、欧州特許第0451216B1号;およびPadlan,E.A.ら、EP0519596A1において記載されている。霊長動物化抗体に関しては、Newman, R.ら、BioTechnology、10巻:1455~1460頁(1992年)、単鎖抗体に関しては、Ladnerら、米国特許第4,946,778号およびBird, R. E.ら、Science、242巻:423~426頁(1988年)もまた参照されたい。ライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーから作製される抗体もまた使用することができる。
一部の実施形態では、バイオマーカータンパク質に特異的に結合する薬剤であって、ペプチドなど、抗体以外の薬剤を使用する。バイオマーカータンパク質に特異的に結合するペプチドは、当技術分野で公知の任意の手段により同定することができる。例えば、ペプチドのファージディスプレイライブラリーを使用して、バイオマーカータンパク質の特異的なペプチド結合剤についてスクリーニングすることができる。
d.バイオマーカーの構造的変更を検出するための方法
以下の例示的な方法を使用して、例えば、鉄硫黄クラスター生合成関連遺伝子の翻訳に影響を及ぼす配列または薬剤を同定するために、バイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチド分子における構造的変更の存在を同定することができる。
ある特定の実施形態では、変更の検出は、アンカーPCRもしくはRACE PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号を参照されたい)、または、代替的に、ライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegranら(1988年)、Science、241巻:1077~1080頁;およびNakazawaら(1994年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、91巻:360~364頁を参照されたい)におけるプローブ/プライマーの使用を伴うが、これらのうちの後者は、バイオマーカー遺伝子など、バイオマーカー核酸内の点変異を検出するのに、特に有用でありうる(Abravayaら(1995年)、Nucleic Acids Res.、23巻:675~682頁を参照されたい)。この方法は、細胞の試料を対象から回収するステップと、核酸(例えば、ゲノム核酸、mRNA、またはこれらの両方)を、試料の細胞から単離するステップと、核酸試料を、バイオマーカー遺伝子(存在する場合)のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で、バイオマーカー遺伝子と特異的にハイブリダイズする、1または複数のプライマーと接触させるステップと、増幅産物の存在もしくは非存在を検出するか、または増幅産物のサイズを検出するステップと、長さを対照試料と比較するステップとを含みうる。PCRおよび/またはLCRは、本明細書で記載される、変異を検出するために使用される技法のうちのいずれかと共に、予備的な増幅ステップとして使用するのに所望されうることが予期される。
代替的な増幅法は、自己持続配列複製(Guatelli, J. C.ら(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、87巻:1874~1878頁)、転写増幅系(Kwoh, D. Y.ら(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、86巻:1173~1177頁)、Qベータ複製(Lizardi, P. M.ら(1988年)、Bio-Technology、6巻:1197頁)、または他の任意の核酸増幅法に続き、当業者に周知の技法を使用する、増幅された分子の検出を含む。これらの検出スキームは、とりわけ、このような分子が、非常に少数で存在する場合、核酸分子の検出に有用である。
代替的な実施形態では、試料細胞に由来するバイオマーカー核酸内の変異は、制限酵素の切断パターンの変更により同定することができる。例えば、試料および対照DNAを、単離し、増幅し(必要に応じて)、1または複数の制限エンドヌクレアーゼで消化し、ゲル電気泳動により断片長サイズを決定し、比較する。試料DNAと対照DNAとの間の断片長サイズの差異は、試料DNA内の変異を示す。さらに、配列特異的なリボザイム(例えば、米国特許第5,498,531号を参照されたい)を使用して、リボザイム切断部位の発生または喪失により、特異的な変異の存在についてスコア付けすることができる。
他の実施形態では、バイオマーカー核酸内の遺伝子変異は、試料核酸および対照核酸、例えば、DNAまたはRNAを、数百または数千のオリゴヌクレオチドプローブを含有する高密度アレイとハイブリダイズさせること(Cronin, M. T.ら(1996年)、Hum. Mutat.、7巻:244~255頁;Kozal, M. J.ら(1996年)、Nat. Med.、2巻:753~759頁)により同定することができる。例えば、バイオマーカー遺伝子の変異は、Croninら(1996年)、前出において記載されている通り、発光型DNAプローブを含有する二次元アレイにより同定することができる。略述すると、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを、一連の重複するプローブの直線状のアレイを作ることにより、試料および対照内のDNAの長い連なりを通して走査して、配列間の塩基変化を同定するのに使用することができる。このステップは、点変異の同定を可能とする。このステップに続いて、検出される全ての改変体または変異に相補的な、小型で特化したプローブアレイを使用することにより、特異的な変異の特徴付けを可能とする、第2のハイブリダイゼーションアレイを施す。各変異アレイは、一方は、野生型遺伝子に相補的であり、他方は、変異体遺伝子に相補的である、パラレルなプローブセットから構成される。このようなバイオマーカー遺伝子の変異は、例えば、生殖細胞系列および体細胞変異を含む、様々な状況で同定することができる。
さらに別の実施形態では、当技術分野で公知の様々なシークエンシング反応のうちのいずれかを使用して、バイオマーカー遺伝子を直接シークエンシングし、試料バイオマーカーの配列を、対応する野生型(対照)配列と比較することにより、変異を検出することができる。シークエンシング反応の例は、MaxamおよびGilbert(1977年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、74巻:560頁またはSanger(1977年)、Proc. Natl. Acad Sci. USA、74巻:5463頁により開発された技法に基づく反応を含む。また、診断アッセイを実行する場合に、質量分析によるシークエンシング(例えば、PCT国際公開第WO94/16101号;Cohenら(1996年)、Adv. Chromatogr.、36巻:127~162頁;およびGriffinら(1993年)、Appl. Biochem. Biotechnol.、38巻:147~159頁を参照されたい)を含む、様々な自動化シークエンシング手順(Naeve(1995年)、Biotechniques、19巻:448~53頁)のうちのいずれかを活用しうることも想定される。
バイオマーカー遺伝子内の変異を検出するための他の方法は、切断剤からの保護を使用して、RNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖内のミスマッチ塩基を検出する方法(Myersら(1985年)、Science、230巻:1242頁)を含む。一般に、当技術分野における「ミスマッチ切断」法は、野生型バイオマーカー配列を含有する(標識された)RNAまたはDNAを、組織試料から得られる、潜在的に変異体である、RNAまたはDNAとハイブリダイズさせることにより形成されるヘテロ二重鎖を提供することによって開始される。二本鎖状の二重鎖を、対照鎖と試料鎖との間の塩基対のミスマッチに起因して存在するものなど、二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二重鎖を、RNアーゼで処理することができ、DNA/DNAハイブリッドを、SIヌクレアーゼで処理して、ミスマッチ領域を酵素的に消化する。他の実施形態では、ミスマッチした領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNA二重鎖を、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジンで処理することができる。ミスマッチ領域の消化の後、次いで、結果として得られる材料を、変性ポリアクリルアミドゲル上で、サイズにより分離して、変異部位を決定する。例えば、Cottonら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、85巻:4397頁およびSaleebaら(1992年)、Methods Enzymol.、217巻:286~295頁を参照されたい。好ましい実施形態では、対照DNAまたはRNAを、検出のために標識することができる。
さらに別の実施形態では、ミスマッチ切断反応では、細胞の試料から得られたバイオマーカーcDNA内の点変異を検出およびマッピングするための、規定された系において、二本鎖DNA内のミスマッチ塩基対を認識する、1または複数のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を利用する。例えば、E.coliのmutY酵素は、G/AミスマッチにおけるAを切断し、HeLa細胞に由来するチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチにおけるTを切断する(Hsuら(1994年)、Carcinogenesis、15巻:1657~1662頁)。例示的な実施形態に従い、バイオマーカー配列、例えば、DNAミスマッチ修復酵素で処理された野生型バイオマーカーと、存在する場合、切断産物とに基づくプローブを、電気泳動プロトコールなど(例えば、米国特許第5,459,039号)により検出することができる。
他の実施形態では、電気泳動移動度の変更を使用して、バイオマーカー遺伝子内の変異を同定することができる。例えば、一本鎖コンフォメーション多型(SSCP)を使用して、変異体核酸と、野生型核酸との間の電気泳動移動度の差異を検出することができる(Oritaら(1989年)、Proc Natl. Acad. Sci USA、86巻:2766頁;Cotton(1993年)、Mutat. Res.、285巻:125~144頁およびHayashi(1992年)、Genet. Anal. Tech. Appl.、9巻:73~79頁もまた参照されたい)。試料および対照バイオマーカー核酸の一本鎖DNA断片を、変性させ、復元する。一本鎖核酸の二次構造は、配列に従い変動し、結果として得られる電気泳動移動度の変更は、単一の塩基変化さえも検出可能とする。DNA断片は、標識されたプローブにより標識または検出することができる。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化に対してより感受性であるRNA(DNAではなく)を使用することにより増強することができる。好ましい実施形態では、対象の方法により、ヘテロ二重鎖解析を活用して、電気泳動移動度の変化に基づいて、二本鎖ヘテロ二重鎖分子を分離する(Keenら(1991年)、Trends Genet.、7巻:5頁)。
さらに別の実施形態では、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用して、変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲル中の変異体または野生型断片の移動についてアッセイする(Myersら(1985年)、Nature、313巻:495頁)。DGGEを、解析法として使用する場合、例えば、PCRにより、約40bpの高融点のGCリッチDNAのGCクランプを添加することにより、DNAを修飾して、それが完全に変性しないことを確認する。さらなる実施形態では、温度勾配を、変性勾配の代わりに使用して、対照DNAと、試料DNAとの、移動度の差異を同定する(RosenbaumおよびReissner(1987年)、Biophys. Chem.、265巻:12753頁)。
点変異を検出するための他の技法の例は、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長を含むがこれらに限定されない。例えば、既知の変異を中央部に配したオリゴヌクレオチドプライマーを調製し、次いで、完全なマッチが見出される場合に限り、ハイブリダイゼーションを許容する条件下で、標的DNAとハイブリダイズさせることができる(Saikiら(1986年)、Nature、324巻:163頁;Saikiら(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、86巻:6230頁)。オリゴヌクレオチドを、ハイブリダイズする膜に結合させ、標識された標的DNAとハイブリダイズさせる場合は、このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、PCR増幅された標的DNAまたはいくつかの異なる変異とハイブリダイズさせる。
代替的に、選択的PCR増幅に依存する、対立遺伝子特異的増幅技術を、本発明と共に使用することができる。特異的増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、分子の中央部(増幅が、差次的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbsら(1989年)、Nucleic Acids Res.、17巻:2437~2448頁)または、適切な条件下で、ミスマッチが、ポリメラーゼによる伸長を防止または低減しうる、一方のプライマーの3’端の最末端(Prossner(1993年)、Tibtech、11巻:238頁)において、目的の変異を保有しうる。加えて、新規の制限部位を、変異領域内に導入して、切断ベースの検出を創出することは、所望でありうる(Gaspariniら(1992年)、Mol. Cell Probe、6巻:1頁)。ある特定の実施形態では、増幅はまた、増幅のために、Taqリガーゼを使用して実施することもできることが予期される(Barany(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci USA、88巻:189頁)。このような場合、ライゲーションは、5’側配列の3’末端において完全なマッチがなされる場合に限り生じることから、増幅の存在または非存在を調査することにより、特異的な部位における、既知の変異の存在を検出することが可能となる。
3.抗がん療法
抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)の有効性は、本明細書に記載されている方法に従って、対象におけるがん(例えば、がん)に関連するバイオマーカーの存在、非存在、量および/または活性に従って予測される。一実施形態では、このような抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)または療法の組合せ(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤と、抗免疫阻害療法)は、所望の対象に投与することもでき、対象が、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対するレスポンダーの可能性があると示された場合に投与することもできる。別の実施形態では、このような抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)は、対象が、上記抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対するレスポンダーである可能性がないと示される場合は回避することができ、標的化および/または非標的化抗がん療法などの代替的処置レジメンを施行することができる。併用療法も想定され、これは、例えば、1種もしくは複数種の化学療法剤と放射線照射、1種もしくは複数種の化学療法剤と免疫療法、または1種もしくは複数種の化学療法剤と放射線照射と化学療法を含むことができ、これらの各組合せは、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)ありまたはなしでありうる。
USP10およびUSP10の阻害に有用な例示的な薬剤、または本明細書に記載されている他のバイオマーカーが上記されている。
「標的化療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用して、これにより、がんを処置する薬剤の投与を指す。例えば、免疫チェックポイント阻害剤の阻害に関する標的化療法(therepy)は、本発明の方法と組み合わせて有用である。「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、CD4+および/またはCD8+T細胞の細胞表面上の分子群であって、抗腫瘍免疫応答を下方モジュレートまたは阻害することにより、免疫応答を微調整する分子群を意味する。免疫チェックポイントタンパク質は、当技術分野で周知であり、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、2B4、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリーの受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGITおよびA2aR(例えば、WO2012/177624を参照されたい)を限定することなく含む。1種または複数種の免疫チェックポイント阻害剤の阻害は、阻害シグナル伝達を遮断さもなければ中和して、これにより、がんをより効果的に処置するために免疫応答を上方調節することができる。
免疫療法は、例えば、がんワクチンおよび/または感作された抗原提示細胞の使用を含み得る、標的化療法の一形態である。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞を無傷に保ちつつ、がん細胞に感染しこれを溶解することができるウイルスであり、がん療法において潜在的に有用なものとされる。腫瘍溶解性ウイルスの複製は、腫瘍細胞破壊を容易とすると共に、腫瘍部位における用量増幅も産生する。これは、抗がん遺伝子のためのベクターとして作用することもでき、これを腫瘍部位に特異的に送達させることができる。上記免疫療法は、がん抗原または疾患抗原に対して指向された、あらかじめ形成された抗体の投与(例えば、化学療法剤または毒素に必要に応じて連結された、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の投与)によって達成される、宿主の短期保護のための受動免疫を伴うことができる。例えば、抗VEGFおよびmTOR阻害剤は、腎細胞癌の処置において有効であることが公知である。免疫療法は、がん細胞系の細胞傷害性リンパ球認識エピトープの使用に焦点を置くこともできる。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍またはがんの開始、進行および/または病変に関連付けられた生体分子を選択的にモジュレートすることができる。
「非標的化療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用しないが、がんを処置する薬剤の投与を指す(referes)。非標的化療法の代表例は、化学療法、遺伝子治療および放射線療法を限定することなく含む。
一実施形態では、化学療法が使用される。化学療法は、化学療法剤の投与を含む。このような化学療法剤は、次の化合物群の中から選択される化学療法剤でありうるが、これらに限定されない:白金化合物、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗薬(antimetabolities)、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、ヌクレオシドアナログ、植物アルカロイドおよび毒素;ならびにこれらの合成誘導体。例示的な化合物は、アルキル化剤:シスプラチン、トレオスルファンおよびトロホスファミド;植物アルカロイド:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキソール(docetaxol);DNAトポイソメラーゼ阻害剤:テニポシド、クリスナトール(crisnatol)およびマイトマイシン;葉酸代謝拮抗薬:メトトレキサート、ミコフェノール酸およびヒドロキシウレア;ピリミジンアナログ:5-フルオロウラシル、ドキシフルリジンおよびシトシンアラビノシド;プリンアナログ:メルカプトプリンおよびチオグアニン;DNA代謝拮抗薬:2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、アフィディコリングリシン酸塩およびピラゾロイミダゾール;ならびに有糸分裂阻害剤:ハリコンドリン、コルヒチンおよびリゾキシンを含むがこれらに限定されない。1種または複数種の化学療法剤を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)を使用することもできる。FLAGは、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)およびG-CSFを含む。CHOPは、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびプレドニゾンを含む。別の実施形態では、PARP(例えば、PARP-1および/またはPARP-2)阻害剤が使用され、このような阻害剤は、当技術分野で周知である(例えば、オラパリブ、ABT-888、BSI-201、BGP-15(N-Gene Research Laboratories,Inc.);INO-1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.);PJ34(Sorianoら、2001年;Pacherら、2002b年);3-アミノベンズアミド(Trevigen);4-アミノ-1,8-ナフタルイミド;(Trevigen);6(5H)-フェナントリジノン(phenanthridinone)(Trevigen);ベンズアミド(米国特許再発行(U.S. Pat. Re.)36,397);およびNU1025(Bowmanら))。作用機構は一般に、PARPに結合し、その活性を減少させるPARP阻害剤の能力に関する。PARPは、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からニコチンアミドおよびポリ-ADP-リボース(PAR)への変換を触媒する。ポリ(ADP-リボース)およびPARPの両方が、転写調節、細胞増殖、ゲノム安定性および発癌に関連付けられた(Bouchard V. J.ら、Experimental Hematology、31巻、6号、2003年6月、446~454頁(9);Herceg Z.;Wang Z.-Q.Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis、477巻、1号、2001年6月2日、97~110頁(14))。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)は、DNA一本鎖切断(SSB)の修復において重要な分子である(de Murcia J.ら、1997年、Proc Natl Acad Sci USA 94巻:7303~7307頁;Schreiber V、Dantzer F、Ame J C、de Murcia G(2006年)Nat Rev Mol. Cell Biol 7巻:517~528頁;Wang Z Qら(1997年)Genes Dev 11巻:2347~2358頁)。PARP1機能の阻害によるSSB修復のノックアウトは、欠損相同性指向性DSB修復(defective homology-directed DSB repair)によるがん細胞における合成致死性を誘発し得るDNA二本鎖切断(DSB)を誘導する(Bryant H Eら(2005年)Nature 434巻:913~917頁;Farmer Hら(2005年)Nature 434巻:917~921頁)。化学療法剤の上記の例は例示的であり、限定を意図するものではない。
別の実施形態では、放射線療法が使用される。放射線療法において使用される放射線は、電離放射線でありうる。放射線療法はまた、ガンマ線、X線または陽子線でありうる。放射線療法の例は、外照射放射線療法、放射性同位元素(I-125、パラジウム、イリジウム)の間質移植、ストロンチウム-89などの放射性同位元素、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、および/または全腹部および骨盤放射線療法を含むがこれらに限定されない。放射線療法の概要については、Hellman、第16章:Principles of Cancer Management: Radiation Therapy、第6版、2001年、DeVitaら編、J. B. Lippencott Company、Philadelphiaを参照されたい。上記放射線療法は、外照射放射線または遠隔療法として施行することができ、この場合、上記放射線は、遠隔供給源から方向付けられる。放射線処置は、内部療法または密封小線源治療として施行することもでき、この場合、放射性供給源は、身体の内側にがん細胞または腫瘍塊の近くに置かれる。ヘマトポルフィリンおよびその誘導体、ベルテポルフィン(Vertoporfin)(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤(photosensitizer)Pc4、デメトキシ-ヒポクレリンA;ならびに2BA-2-DMHAなど、光増感剤の投与を含む光線力学的療法の使用も包含されている。
別の実施形態では、ホルモン療法が使用される。ホルモン治療処置は、例えば、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、リュープロリド酢酸塩(リュープロン)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成およびプロセシングの阻害剤、ならびにステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド(deltoid)、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オールトランスレチノイン酸(ATRA));ビタミンD3アナログ;抗ゲスターゲン(antigestagen)(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン))または抗アンドロゲン薬(例えば、酢酸シプロテロン)を含むことができる。
別の実施形態では、身体組織が高温(最大106°F.)に曝露される手順である、温熱療法が使用される。熱は、細胞を損傷することにより、または細胞が生きるのに必要な物質を細胞から奪うことにより、腫瘍の縮小を助けることができる。温熱療法の治療は、外部および内部加熱デバイスを使用した、局所、領域性および全身温熱療法でありうる。温熱療法は、ほとんどの場合、他の形態の療法(例えば、放射線療法、化学療法および生物学的療法)と共に使用されて、それらの有効性の増加を試みる。局所温熱療法は、腫瘍など、非常に小さい領域に加えられる熱を指す。上記領域は、身体外のデバイスから腫瘍を目標とする高周波波動により、外部で加熱することができる。内部加熱を達成するために、細い加熱されたワイヤーまたは温水で満たされた中空管;植え込まれたマイクロ波アンテナ;および無線周波数電極を含む、いくつかの型の滅菌プローブのうち1種を使用することができる。領域性温熱療法において、臓器または四肢が加熱される。高エネルギーを産生する磁石およびデバイスが、加熱されるべき領域の上に置かれる。灌流と呼ばれる別の手法において、患者の血液の一部が除去され、加熱され、次いで内部で加熱されるべき領域へとポンピングされる(灌流される)。全身加熱が使用されて、体中に拡散した転移性がんを処置する。これは、温水毛布、ホットワックス、誘導コイル(電気毛布中のものなど)または熱チャンバー(大型インキュベーターと同様の)を使用して達成することができる。温熱療法は、放射線副作用または合併症のいかなる著しい増加も引き起こさない。しかし、皮膚に直接的に加えられた熱は、処置した患者の約半数で不快感またはさらには有意な局所疼痛を引き起こし得る。これは、一般に急速に治癒する疱疹を引き起こすこともある。
また別の実施形態では、光線力学的療法(PDT、光線照射療法、光線療法または光化学療法とも呼ばれる)は、一部の型のがんの処置に使用される。これは、単一細胞の生物が特定の型の光に曝露されると、光感作剤(photosensitizing agent)として公知のある特定の化学物質が、単細胞の生物を死滅させることができるという発見に基づく。PDTは、光感作剤と組み合わせた固定周波数レーザー光の使用によりがん細胞を破壊する。PDTにおいて、上記光感作剤は、血流中に注射され、身体の至るところにある細胞によって吸収される。上記薬剤は、正常細胞中よりも長い時間がん細胞中に残る。処置したがん細胞が、レーザー光に曝露されると、上記光感作剤は、光を吸収し、処置したがん細胞を破壊する活性型の酸素を産生する。露光は、上記光感作剤の大部分が健常な細胞から去ったが、依然として上記がん細胞中に存在するときに起こるように、慎重に時間調整される必要がある。PDTで使用されるレーザー光は、光ファイバー(極細ガラスストランド)を通して方向付けることができる。上記光ファイバーは、上記がんの近くに置かれて、適切な量の光を送達する。上記光ファイバーは、肺がんの処置のために肺へと気管支鏡を通って、または食道がんの処置のために食道へと内視鏡を通って方向付けることができる。PDTの利点は、健常な組織に最小の損傷を引き起こすことである。しかし、現在使用されているレーザー光は、約3センチメートルを超える組織(1と8分の1インチ強)を通過することができないため、PDTは、皮膚の上もしくはその真下または内臓内壁(lining of internal organ)における腫瘍の処置に主に使用される。光線力学的療法は、処置後6週間またはそれよりも多い期間、皮膚および眼を、光に対して感受性にする。患者は、直射日光および明るい室内光を少なくとも6週間回避するように勧められる。患者が屋外に出なければならない場合は、サングラスを含む防護衣類を着用する必要がある。PDTの他の一時的副作用は、特異的領域の処置に関係し、咳嗽、嚥下困難、腹痛および有痛性呼吸または息切れを含みうる。1995年12月に、米国食品医薬局(FDA)は、閉塞を引き起こす食道がんの症状を和らげるための、また、レーザー単独では満足に処置することができない食道がんのための、ポルフィマーナトリウムまたはPhotofrin(登録商標)と呼ばれる光感作剤を承認した。1998年1月に、FDAは、肺がんのための通常の処置が適切でない患者における早期非小細胞肺がんの処置のためにポルフィマーナトリウムを承認した。国立癌研究所(National Cancer Institute)および他の施設は、膀胱、脳、喉頭および口腔のがんを含むいくつかの型のがんのための光線力学的療法の使用を評価するための治験(研究試験)を支持している。
さらに別の実施形態では、レーザー療法が使用されて、がん細胞の破壊に高強度光を利用する。この技法は、多くの場合、特に、がんが、他の処置によって治癒できない場合、出血または閉塞など、該がんの症状を和らげるために使用される。これは、腫瘍の縮小または破壊による、がんの処置に使用することもできる。「レーザー」という用語は、励起誘導放射による光増幅を表わす。電球からの光など、通常の光は、多くの波長を有し、全方向に拡散する。他方では、レーザー光は、特異的波長を有し、狭ビームに集束される。この型の高強度光は、大量のエネルギーを含有する。レーザーは、非常に強力であり、鋼の切断またはダイヤモンドの成形に使用することができる。レーザーは、眼内の損傷した網膜の修復または組織の切断(メスの代わり)など、非常に正確な外科的作業に使用することもできる。いくつかの異なる種類のレーザーが存在するが、3種類のみが、医学において広く使用されている:二酸化炭素(CO2)レーザー -- この型のレーザーは、より深い層を浸透することなく、皮膚の表面から薄層を除去することができる。この技法は、皮膚深くに拡散していない腫瘍およびある特定の前がん性状態の処置において特に有用である。伝統的なメスによる手術の代替として、このCO2レーザーは、皮膚をカットすることもできる。上記レーザーがこのようにして使用されて、皮膚がんを除去する。ネオジム(neodymium):イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Nd:YAG)レーザー -- このレーザー由来の光は、他の型のレーザー由来の光よりも深く組織へと浸透することができ、これは、血液を迅速に凝固させることができる。これは、光ファイバーを通して、身体の到達可能性が低い部分へと運ぶことができる。この型のレーザーは、咽喉がんの処置に使用される場合もある。アルゴンレーザー -- このレーザーは、組織の表在層のみを通過することができ、したがって、皮膚科学および眼の手術において有用である。これはまた、感光色素と共に使用されて、光線力学的療法(PDT)として公知の手順において腫瘍を処置する。レーザーは、次のことを含む、標準外科的ツールを上回るいくつかの利点を有する:レーザーは、メスよりも正確である。周囲の皮膚または他の組織との接触がほとんどないため、切開付近の組織は保護される。レーザーによって産生される熱は、手術部位を滅菌し、これにより、感染の危険性を低下させる。上記レーザーの精度は、より小さい切開を可能にするため、少ない手術時間が必要とされ得る。治癒時間は、多くの場合、短縮される;レーザー熱は、血管を密封するため、出血、腫脹または瘢痕が少ない。レーザー手術は、複雑さを少なくすることができる。例えば、光ファイバーを用いて、レーザー光は、大きい切開を入れずに、身体の部分へと方向付けることができる。より多くの手順を外来で行うことができる。レーザーを2通りの方式で使用して、がんを処置することができる:熱で腫瘍を縮小もしくは破壊することによる、またはがん細胞を破壊する化学物質(光感作剤として公知)を活性化することによる。PDTにおいて、光感作剤は、がん細胞に保持され、光によって刺激されて、がん細胞を死滅させる反応を引き起こし得る。CO2およびNd:YAGレーザーは、腫瘍の縮小または破壊に使用される。これらは、医師が、膀胱など、身体のある特定の領域を調べることができるチューブである内視鏡と共に使用することができる。一部のレーザー由来の光は、光ファイバーを備えた軟性内視鏡を通して伝導することができる。これは、医師が、手術を除く他の仕方では達することができない身体の部分を調べ、該部分において作業することを可能にし、したがって、上記レーザービームの非常に正確な照準(aiming)を可能にする。レーザーは、処置されている部位の明瞭な視野を医者にもたらす、低倍率顕微鏡と共に使用することもできる。他の機器と共に使用されると、レーザーシステムは、直径200ミクロン(極細糸の幅未満)もの小ささのカット面積を生成することができる。レーザーは、多くの型のがんの処置に使用される。レーザー手術は、ある特定の段階の喉頭蓋(声帯)がん、子宮頸部がん、皮膚がん、肺がん、腟がん、外陰部がんおよび陰茎がんのための標準処置である。上記がんを破壊するためのその使用に加えて、レーザー手術は、がんに起因する症状を和らげるのを助けるためにも使用される(緩和ケア)。例えば、レーザーを使用して、患者の気管(trachea/windpipe)を遮断している腫瘍を縮小または破壊して、呼吸をより容易とすることができる。これは、結腸直腸および肛門がんにおける緩和に使用される場合もある。レーザー誘導性間質性熱療法(LITT)は、レーザー療法における最新の発展の1種である。LITTは、温熱療法と呼ばれるがん処置と同じ考えを使用する;熱は、細胞を損傷することにより、または細胞が生きるのに必要な物質を細胞から奪うことにより、腫瘍縮小を助けることができる。この処置において、レーザーは、身体の間質性領域(臓器間の領域)に方向付けられる。続いて上記レーザー光は、上記腫瘍の温度を高め、これにより、がん細胞が損傷または破壊される。
抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)による処置の持続期間および/または用量は、特定のUSP10阻害薬剤またはその組合せに応じて変動しうる。特定のがん治療剤に適切な処置時間は、当業者に理解される。本発明は、がん治療剤毎の最適な処置スケジュールの継続的評価を想定し、本発明の方法によって決定される対象のがんの表現型は、最適処置用量およびスケジュールの決定における因子である。
哺乳動物、ヒトもしくは非ヒトまたはそれらの細胞へとポリヌクレオチドを導入するための任意の手段は、本発明の多様な構築物を、意図されるレシピエントに送達するための本発明の実施に適合させることができる。本発明の一実施形態では、DNA構築物を、細胞に、トランスフェクションにより、すなわち、「ネイキッド」DNAの送達により、またはコロイド分散系との複合体により送達する。コロイド系は、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系を含む。本発明の好ましいコロイド系は、脂質複合体化DNAまたはリポソーム-製剤化DNAである。前者の手法では、DNAを、例えば、脂質により製剤化する前に、まず、所望のDNA構築物を持つ導入遺伝子を含有するプラスミドを、発現について、実験的に最適化することができる(例えば、5’側非翻訳領域内のイントロンの含有および不要な配列の排除(Felgnerら、Ann NY Acad Sci、126~139頁、1995年))。次いで、公知の方法および材料を使用して、例えば、種々の脂質またはリポソーム材料によるDNAの製剤化を行い、レシピエントの哺乳動物に送達することができる。例えば、Canonicoら、Am J Respir Cell、Mol Biol、10巻:24~29頁、1994年;Tsanら、Am J Physiol、268巻;Altonら、Nat Genet.、5巻:135~142頁、1993年;およびCarsonらによる米国特許第5,679,647号を参照されたい。
リポソームの標的化は、切開学的および機構的因子に基づき、分類することができる。切開学的分類は、選択性のレベル、例えば、臓器特異的、細胞特異的、および細胞小器官特異的選択性に基づく。機構的標的化は、それが、受動的であるか、能動的であるかに基づき、識別することができる。受動的標的化は、洞様毛細血管を含有する、臓器内の細網内皮系(RES)の細胞へと分布する、リポソームの自然の傾向を活用する。他方、能動的標的化は、リポソームを、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、もしくはタンパク質など、特異的なリガンドとカップリングさせることによる、または天然に存在する局在化部位以外の臓器および細胞型への標的化を達成するために、リポソームの組成またはサイズを変化させることによる、リポソームの変更を伴う。
標的化される送達系の表面は、様々な方式で修飾することができる。リポソームによる標的化送達系の場合、標的化リガンドの、リポソーム二重層との安定的な会合を維持するために、脂質基を、リポソームの脂質二重層に組み込むことができる。脂質鎖を、標的化リガンドに結合させるために、多様な連結基を使用することができる。ネイキッドDNAまたは送達ビヒクル、例えば、リポソームと会合させたDNAを、対象におけるいくつかの部位に投与することができる(下記を参照されたい)。
核酸は、任意の所望のベクターにおいて送達することができる。これらは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびプラスミドベクターを含む、ウイルスまたは非ウイルスベクターを含む。例示的なウイルスの種類は、HSV(単純ヘルペスウイルス)、AAV(アデノ随伴ウイルス)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、BIV(ウシ免疫不全ウイルス)、およびMLV(マウス白血病ウイルス)を含む。核酸は、十分に効率的な送達レベルをもたらす、任意の所望のフォーマットであって、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ粒子、およびポリマーへの複合体化を含むフォーマットで投与することができる。
目的のタンパク質をコードする核酸または目的の核酸は、プラスミドもしくはウイルスベクターまたは当技術分野で公知の他のベクターにありうる。このようなベクターは、周知であり、任意のベクターを、特定の適用のために選択することができる。本発明の一実施形態では、遺伝子送達ビヒクルは、プロモーターおよびデメチラーゼコード配列を含む。好ましいプロモーターは、組織特異的プロモーター、ならびにチミジンキナーゼおよびチミジル酸シンターゼプロモーターなど、細胞増殖により活性化するプロモーターである。他の好ましいプロモーターは、α-およびβ-インターフェロンプロモーターなど、ウイルスの感染により活性化可能なプロモーター、ならびにエストロゲンなどのホルモンにより活性化可能なプロモーターを含む。使用されうる他のプロモーターは、モロニーウイルスLTR、CMVプロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターを含む。プロモーターは、構成的または誘導性でありうる。
別の実施形態では、WO90/11092および米国特許第5,580,859号において記載されている通り、ネイキッドポリヌクレオチド分子を、遺伝子送達ビヒクルとして使用する。このような遺伝子送達ビヒクルは、増殖因子DNAまたはRNAである場合があり、ある特定の実施形態では、死滅させたアデノウイルスに連結される(Curielら、Hum. Gene. Ther.、3巻:147~154頁、1992年)。必要に応じて使用されうる他のビヒクルは、DNA-リガンドの組合せ(Wuら、J. Biol. Chem.、264巻:16985~16987頁、1989年)、脂質-DNAの組合せ(Felgnerら、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、84巻:7413~7417頁、1989年)、リポソーム(Wangら、Proc. Natl. Acad. Sci.、84巻:7851~7855頁、1987年)、および微粒子銃(Williamsら、Proc. Natl. Acad. Sci.、88巻:2726~2730頁、1991年)を含む。
遺伝子送達ビヒクルは、必要に応じて、ウイルス複製起点またはパッケージングシグナルなどのウイルス配列を含みうる。これらのウイルス配列は、アストロウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、トガウイルスまたはアデノウイルスなどのウイルスから選択することができる。好ましい実施形態では、増殖因子の遺伝子送達ビヒクルは、組換えレトロウイルスベクターである。組換えレトロウイルスおよびそれらの多様な使用については、例えば、Mannら、Cell、33巻:153頁、1983年;CaneおよびMulligan、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA、81巻:6349頁、1984年;Millerら、Human Gene Therapy、1巻:5~14頁、1990年;米国特許第4,405,712号、同第4,861,719号、および同第4,980,289号;ならびにPCT出願第WO89/02,468号、同第WO89/05,349号、および同第WO90/02,806号を含む、多数の参考文献において記載されている。本発明では、例えば、EP0,415,731;WO90/07936;WO94/03622;WO93/25698;WO93/25234;米国特許第5,219,740号;WO9311230;WO9310218;VileおよびHart、Cancer Res.、53巻:3860~3864頁、1993年;VileおよびHart、Cancer Res.、53巻:962~967頁、1993年;Ramら、Cancer Res.、53巻:83~88頁、1993年;Takamiyaら、J. Neurosci. Res.、33巻:493~503頁、1992年;Babaら、J. Neurosurg.、79巻:729~735頁、1993年(米国特許第4,777,127号、GB2,200,651、EP0,345,242、およびWO91/02805)において記載されているレトロウイルスによる遺伝子送達ビヒクルを含む、多数のレトロウイルスによる遺伝子送達ビヒクルを活用することができる。
本発明のポリヌクレオチドを送達するのに使用しうる、他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス(1997年5月20日に交付された、Wooらによる、米国特許第5,631,236号、およびNeurovexによるWO00/08191)、ワクシニアウイルス(Ridgeway(1988年)、「Mammalian expression vectors」、Rodriguez R L、Denhardt D T編、Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses、Stoneham、Butterworth;BaichwalおよびSugden(1986年)、「Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses: Transient and stable expression of transferred genes」、Kucherlapati R編、Gene transfer、New York、Plenum Press;Couparら(1988年)、Gene、68巻:1~10頁)、およびいくつかのRNAウイルスから導出されている。好ましいウイルスは、アルファウイルス、ポックスウイルス(poxivirus)、アレナウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルスなどを含む。これらは、多様な哺乳動物細胞のために、いくつかの魅力的な特色を提供する(Friedmann(1989年)、Science、244巻:1275~1281頁;Ridgeway、1988年、前出;BaichwalおよびSugden、1986年、前出;Couparら、1988年;Horwichら(1990年)、J.Virol.、64巻:642~650頁)。
他の実施形態では、当技術分野で周知の方法を使用して、ゲノム内の標的DNAを操作することができる。例えば、ゲノム内の標的DNAは、欠失、挿入、および/または変異、例えばレトロウイルスの挿入、人工染色体法、遺伝子挿入、組織特異的なプロモーターによるランダムな挿入、遺伝子標的化、転移因子、および/または外来DNAを導入するかもしくは修飾DNA/修飾核DNAを作製するための他の任意の方法により操作することができる。他の修飾法は、ゲノムからDNA配列を欠失させるステップおよび/または核DNA配列を変更するステップを含む。核DNA配列は、例えば、部位指向変異誘発により変更することができる。
他の実施形態では、組換えバイオマーカーポリペプチドおよびその断片を、対象に投与することができる。一部の実施形態では、生物学的特性を増強した融合タンパク質を構築し、投与することができる。加えて、バイオマーカーポリペプチドおよびその断片は、バイオアベイラビリティーの増加およびタンパク質分解の低下など、所望の生物学的活性をさらに増強するために、当技術分野で周知の薬理学的方法(例えば、PEG化、グリコシル化、オリゴマー化など)に従い、修飾することができる。
4.臨床有効性(clincal efficacy)
臨床有効性は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。例えば、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対する応答は、該療法に対する、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法の開始後の腫瘍量および/または体積の変化に対する上記がん、例えば、腫瘍の任意の応答に関する。腫瘍応答は、ネオアジュバントまたはアジュバント状況において評価することができ、全身性介入後の腫瘍のサイズは、CT、PET、マンモグラム、超音波または触診によって測定される、初期サイズおよび寸法と比較することができ、腫瘍の細胞充実性は、組織学的に推定し、処置開始前に採取された腫瘍生検の細胞充実性と比較することができる。応答は、生検または外科的切除後の腫瘍のノギス測定または病理学的検査によって評価することもできる。応答は、腫瘍体積もしくは細胞充実性の百分率の変化など、定量的に記録することができ、または残存するがん負荷(Symmansら、J. Clin. Oncol.(2007年)25巻:4414~4422頁)もしくはMiller-Payneスコア(Ogstonら(2003年)Breast (Edinburgh、Scotland) 12巻:320~327頁)などの半定量的スコアリング方式を使用して、「病理学的完全奏効」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)または他の定性的基準など、定性的に記録することもできる。腫瘍応答の評価は、ネオアジュバントまたはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間後、数日間後、数週間後または好ましくは数カ月間後において実施することができる。応答評価のための典型的エンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終結後、または残存する腫瘍細胞および/または腫瘍床の外科的除去後である。
一部の実施形態では、本明細書で記載される治療的処置の臨床有効性は、臨床的有用率(CBR)を測定することにより決定することができる。臨床的有用率は、治療の終了時から少なくとも6カ月後の時点において、完全寛解(CR)している患者の百分率と、部分寛解(PR)している患者の数と、安定病態(SD)である患者の数との合計を決定することにより測定する。この式の略記は、6カ月間にわたるCBR=CR+PR+SDである。一部の実施形態では、特定のUSP10阻害剤治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれよりも多い。
抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に対する応答を評価するためのさらなる基準は、以下:全生存期間としてもまた公知の死亡までの生存期間(ここで、前記死亡は、原因を問わない場合もあり、腫瘍に関連する場合もある);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、限局的および遠隔的再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、疾患という用語は、がんおよびこれと関連する疾患を含むものとする)の全てを含む「生存期間」と関連する。前記生存期間の長さは、規定された開始点(例えば、診断のときまたは処置の開始)および終了点(例えば、死、再発または転移)を参照することにより計算することができる。加えて、処置の有効性についての基準は、化学療法への応答、生存の確率、所与の期間内の転移の確率、および腫瘍再発の確率を含むように拡張することができる。
例えば、適切な閾値を決定するために、特定のUSP10阻害剤治療レジメンを対象の集団に施行することができ、そのアウトカムを、任意の抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)を施行する前に決定されたバイオマーカー測定値と相関させることができる。上記アウトカム測定値は、上記ネオアジュバント状況において施される療法に対する病理的応答でありうる。代替的に、全生存期間および無病生存期間などのアウトカム尺度を、対象のバイオマーカー測定値が既知である、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)後の対象について、ある期間にわたりモニタリングすることができる。ある特定の実施形態では、USP10阻害薬剤の同じ用量が、各対象に投与される。関連する実施形態では、投与される用量は、USP10阻害薬剤のための当技術分野で公知の標準用量である。対象をモニタリングする期間は、変動し得る。例えば、対象を、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55または60カ月間にわたりモニタリングすることができる。抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)のアウトカムと相関する、バイオマーカーの測定閾値は、実施例節で記載される方法などの、方法を使用して決定することができる。
5.本発明のさらなる使用および方法
本明細書に記載されている組成物は、表1および2に列挙されているものなど、本明細書に記載されているバイオマーカーに関する様々な診断適用、予後診断適用および治療適用において使用することができる。診断方法、予後診断方法(prognostic method)、治療方法またはこれらの組合せなど、本明細書に記載されている任意の方法において、該方法の全ステップは、単独の作業者によって、あるいは2名以上の作業者によって行うことができる。例えば、診断は、治療的処置を提供する作業者によって直接的に行うことができる。あるいは、治療剤を提供する人物は、診断アッセイが行われることを要請することができる。診断医および/または治療介入者は、診断アッセイ結果を解釈して、治療戦略を決定することができる。同様に、このような代替プロセスは、予後診断アッセイなど、他のアッセイに適用することができる。
a.スクリーニング方法
本発明の一態様は、細胞に基づかないアッセイを含むスクリーニングアッセイに関する。一実施形態では、上記アッセイは、がんが、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に応答する可能性があるかどうか、および/または薬剤が、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に応答する可能性がないがん細胞の成長を阻害するまたはこれを死滅させることができるかどうかを同定するための方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、表1および/または表2に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーに結合するまたはその生物学的活性をモジュレートする被験薬剤をスクリーニングするためのアッセイに関する。一実施形態では、このような薬剤を同定するための方法は、表1および/または表2に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーをモジュレート、例えば、阻害する薬剤の能力を決定するステップを伴う。
一実施形態では、アッセイは、表1および/または表2に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーを被験薬剤と接触させるステップと、基質の直接的結合を測定することによる、または以下に記載する間接的パラメータを測定することによるなど、該バイオマーカーの酵素活性をモジュレート(例えば、阻害)する該被験薬剤の能力を決定するステップとを含む、無細胞または細胞に基づくアッセイである。
別の実施形態では、アッセイは、表1および/または表2に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーを被験薬剤と接触させるステップと、基質の直接的結合を測定することによる、または以下に記載する間接的パラメータを測定することによるなど、USP10および/またはFLT3を調節する該バイオマーカーの能力をモジュレートする該被験薬剤の能力を決定するステップとを含む、無細胞または細胞に基づくアッセイである。
例えば、直接的結合アッセイにおいて、結合が、複合体における標識タンパク質または分子の検出によって決定されうるように、バイオマーカータンパク質(またはそれぞれの標的ポリペプチドまたは分子)は、放射性同位元素または酵素標識とカップリングすることができる。例えば、上記標的は、直接的または間接的のいずれかで、125I、35S、14Cまたは3Hで標識することができ、該放射性同位元素は、放射線放出の直接的計数によるかまたはシンチレーション計数によって検出される。あるいは、上記標的は、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素標識することができ、該酵素標識は、適切な基質から産物への変換の決定によって検出することができる。バイオマーカーと基質との間の相互作用の決定は、標準結合アッセイまたは酵素解析アッセイを使用して達成することもできる。上記のアッセイ方法の1種または複数種の実施形態では、ポリペプチドまたは分子を固定化して、上記タンパク質または分子の一方または両方の非複合体形成形態から複合体形成形態の分離を容易とすると共に、該アッセイの自動化を適応させることが望ましい場合がある。
標的への被験薬剤の結合は、反応物の収容に適した任意の容器内で達成することができる。このような容器の非限定的な例は、マイクロタイタープレート、試験管および微量遠心分離管を含む。固定化形態の本発明の抗体は、膜、セルロース、ニトロセルロースもしくはガラス繊維;アガロースもしくはポリアクリルアミドもしくはラテックス製などのビーズ;またはポリスチレン製のものなどのディッシュ、プレートもしくはウェルの表面など、多孔性、微孔性(約1ミクロン未満の平均ポア直径を有する)またはマクロ多孔性(約10ミクロン超の平均ポア直径を有する)材料のような固相に結合された抗体を含むこともできる。
代替実施形態では、上記バイオマーカーとその天然結合パートナーとの間の相互作用をモジュレートする薬剤の能力の決定は、USP10内のその位置の下流または上流で機能するポリペプチドまたは他の産物の活性をモジュレートする被験薬剤の能力を決定することにより達成することができる。
本発明は、さらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤に関する。したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載されている通りに同定される薬剤をさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載されている通りに同定される薬剤は、動物モデルにおいて使用して、このような薬剤による処置の有効性、毒性または副作用を決定することができる。あるいは、本明細書に記載されている通りに同定される抗体は、動物モデルにおいて使用して、このような薬剤の作用機構を決定することができる。
b.予測医学
本発明はまた、診断アッセイ、予後診断アッセイ、および臨床試験のモニタリングを、予後診断(予測)の目的で使用して、これにより、個体を予防的に処置する予測医学の分野にも関する。したがって、本発明の一態様は、表1で列挙されるバイオマーカーなど、本明細書で記載されるバイオマーカーの存在、非存在、量、および/または活性レベルを、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、または組織)の状況で決定して、これにより、元のがんにおいてであれ、再発性のがんにおいてであれ、がんに罹患した個体が、抗がん療法(例えば、単独の、または少なくとも1つのFLT3阻害剤と組み合わせたかのいずれかの、少なくとも1つのUSP10阻害剤)に応答する可能性があるかどうかを決定するための診断アッセイに関する。このようなアッセイを、予後診断または予測の目的で使用して、これにより、バイオマーカーポリペプチド、核酸の発現または活性を特徴とするか、またはこれらと関連する障害の発症の前、または再発の後で、個体を予防的に処置することができる。当業者は、任意の方法により、表1および/または表2で列挙されるバイオマーカーなど、本明細書で記載されるバイオマーカーのうちの1または複数(例えば、組合せ)を使用しうることを理解するであろう。
本発明の別の態様は、薬剤(例えば、薬物、化合物、および核酸ベースの小分子)の、表1および/または表2で列挙されるバイオマーカーの発現または活性に対する影響のモニタリングに関する。上記および他の薬剤は、次の節にさらに詳細に記載されている。
当業者はまた、ある特定の実施形態では、本発明の方法は、コンピュータプログラムおよびコンピュータシステムを実装することも理解するであろう。例えば、コンピュータプログラムを使用して、本明細書で記載されるアルゴリズムを実施することができる。コンピュータシステムはまた、本発明の方法により生成されるデータであって、本発明の方法の実装において、コンピュータシステムが使用しうる、複数のバイオマーカーシグナルの変化/プロファイルを含むデータを保存し、操作することも可能である。ある特定の実施形態では、コンピュータシステムは、バイオマーカーの発現データを受容し;(ii)データを保存し;(iii)本明細書で記載されるいくつかの方式(例えば、適切な対照と比べた解析)で、データを比較して、がん性組織または前がん性組織に由来する、情報を与えるバイオマーカーの状態を決定する。他の実施形態では、コンピュータシステムは、(i)決定されたバイオマーカーの発現レベルを、閾値と比較し;(ii)前記バイオマーカーレベルが、閾値に対して(例えば、閾値を上回るかまたは下回るように)有意にモジュレートされているかどうかについての表示、または前記表示に基づく表現型を出力する。
ある特定の実施形態では、このようなコンピュータシステムはまた、本発明の一部と考えることもできる。多数の種類のコンピュータシステムを使用して、バイオインフォマティクスおよび/またはコンピュータの技術分野における当業者が所有する知識に従い、本発明の解析法を実装することができる。このようなコンピュータシステムの作動中に、いくつかのソフトウェアコンポーネントを、メモリにロードすることができる。ソフトウェアコンポーネントは、当技術分野で標準的なソフトウェアコンポーネント、および本発明に特有のコンポーネント(例えば、Linら(2004年)、Bioinformatics、20巻、1233~1240頁において記載されている、dCHIPソフトウェア;当技術分野で公知の、放射基底型機械学習アルゴリズム(radial basis machine learning algorithm)(RBM))の両方を含みうる。
本発明の方法はまた、式の記号入力と、使用される特殊なアルゴリズムを含む、高レベルの処理仕様とを可能とする、数学ソフトウェアパッケージへとプログラム化またはモデル化し、これにより、使用者を、個々の式およびアルゴリズムを手順通りにプログラミングする必要から解放することもできる。このようなパッケージは、例えば、Mathworks(Natick、Mass.)製のMatlab、Wolfram Research(Champaign、Ill.)製のMathematica、またはMathSoft(Seattle、Wash.)製のS-Plusを含む。
ある特定の実施形態では、コンピュータは、バイオマーカーデータを保存するためのデータベースを含む。このような保存されたプロファイルは、後の時点において、目的の比較を実施するのに、アクセスおよび使用することができる。例えば、対象の非がん性組織に由来する試料についての、バイオマーカー発現プロファイルおよび/または同じ種の関与する集団内の、情報を与える、目的の遺伝子座の、集団ベースの分布から生成されるプロファイルを保存し、後に、対象のがん性組織に由来する試料またはがん性であることが疑われる対象の組織のプロファイルと比較することができる。
本明細書で記載される例示的なプログラム構造およびコンピュータシステムに加えて、当業者には、他の代替的なプログラム構造およびコンピュータシステムが、たやすく明らかであろう。したがって、上記で記載されたコンピュータシステムおよびプログラム構造から、精神または範囲において逸脱しない、このような代替的システムは、付属の特許請求の範囲内に包含されることを意図する。
c.診断アッセイ
本発明は、部分的に、生体試料が、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に応答する可能性があるがんと関連するかどうかを正確に分類するための方法、系、およびコードを提供する。一部の実施形態では、本発明は、統計学的アルゴリズムおよび/または経験的データ(例えば、表1および/または表2に列挙されている少なくとも1種のバイオマーカーの量または活性)を使用して、試料(例えば、対象に由来する)を抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に応答することまたは応答しないことと関連するかまたはこの危険性があるものとして分類するのに有用である。
表1および/または表2に列挙されているバイオマーカーの量または活性を検出するための例示的な方法であり、したがって、試料が、抗がん療法(例えば、単独か、または少なくとも1つのFLT3阻害剤と組み合わせたかのいずれかの、少なくとも1つのUSP10阻害剤)に応答する可能性があるか、その可能性が低いかを分類するのに有用な方法は、被験対象から生体試料を得るステップと、生体試料を、生体試料中のバイオマーカーの量または活性を検出することが可能な薬剤であって、抗体もしくはその抗原結合性断片のようなタンパク質結合性薬剤、またはオリゴヌクレオチドのような核酸結合性薬剤などの薬剤と接触させるステップとを伴う。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合性断片を使用し、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ超のこのような抗体または抗体断片を、組み合わせて(例えば、サンドイッチELISAにおいて)または逐次的に使用することができる。ある特定の場合には、統計学的アルゴリズムは、単一の学習統計分類子システム(learning statistical classifier system)である。例えば、単一の学習統計分類子システムを使用して、バイオマーカーの予測または確率値および存在またはレベルに基づき、試料を分類することができる。単一の学習統計分類子システムの使用は、試料を、例えば、抗がん療法(例えば、単独か、または少なくとも1つのFLT3阻害剤と組み合わせたかのいずれかの、少なくとも1つのUSP10阻害剤)の、レスポンダーまたはプログレッサー試料である可能性が高いと、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の感度、特異度、陽性予測値、陰性予測値、および/または全体精度で分類することが典型的である。
当業者には、他の適切な統計学的アルゴリズムが周知である。例えば、学習統計分類子システムは、複雑なデータセット(例えば、目的のマーカーのパネル)に適応し、このようなデータセットに基づき、決定を下すことが可能な、機械学習アルゴリズム技術を含む。一部の実施形態では、分類木(例えば、ランダムフォレスト)など、単一の学習統計分類子システムを使用する。他の実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ超の学習統計分類子システムの組合せを、好ましくはタンデムで使用する。学習統計分類子システムの例は、帰納学習(例えば、ランダムフォレスト、分類および回帰木(C&RT)、ブースティングツリー(boosted tree)などの決定/分類木)、PAC(Probably Approximately Correct)学習、コネクショニスト学習(例えば、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、パーセプトロン、例えば、多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワーク、ニューラルネットワークの応用、信念ネットワークにおけるベイジアン学習など)、強化学習(例えば、ナイーブ学習、適応動的学習、および時間差学習など、既知の環境における受動学習、未知の環境における受動学習、未知の環境における能動学習、学習行動値関数、強化学習の応用など)、ならびに遺伝的アルゴリズムおよび進化的プログラミングを使用する、学習統計分類子システムを含むがこれらに限定されない。他の学習統計分類子システムは、サポートベクターマシン(例えば、カーネル法)、MARS(multivariate adaptive regression splines)、レーベンバーグ-マーカートアルゴリズム、ガウス-ニュートンアルゴリズム、ガウス混合、勾配降下アルゴリズム、および学習ベクトル量子化法(LVQ)を含む。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、試料の分類結果を、臨床医、例えば、腫瘍学者に送るステップをさらに含む。
別の実施形態では、対象の診断に続いて、診断に基づき、個体に、治療有効量の、規定された処置を施行する。
一実施形態では、本方法は、対照生体試料(例えば、がんがない対象、もしくは対象のがんが抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に感受性である対象由来の生体試料)、寛解中の対象由来の生体試料、または抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)にもかかわらず進行するがん発症に対する処置中の対象由来の生体試料を得るステップをさらに伴う。
d.予後診断アッセイ
本明細書で記載される診断方法はさらに、抗がん療法(例えば、少なくとも1種のUSP10阻害剤単独、または少なくとも1種のFLT3阻害剤と組み合わせた、少なくとも1種のUSP10阻害剤)に応答性である可能性があるか、またはその可能性がないがんを有するか、またはこれを発症する危険性がある対象を同定するのに活用することができる。前出の診断アッセイまたは以下のアッセイなど、本明細書で記載されるアッセイを活用して、がんなどにおける、例えば、表1および/または表2に記載されている少なくとも1種のバイオマーカーの量または活性の誤調節と関連する障害を有するか、またはこれを発症する危険性がある対象を同定することができる。代替的に、上記予後診断アッセイを活用して、がんなどにおける、表1および/または表2に記載されている少なくとも1種のバイオマーカーの誤調節と関連する障害を有するか、またはこれを発症する危険性がある対象を同定することができる。さらに、本明細書で記載される予後診断アッセイを使用して、対象に、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、または他の薬物候補)を投与して、異常なバイオマーカーの発現または活性と関連する疾患または障害を処置しうるかどうかを決定することができる。
e.処置法
本発明の別の態様は、本明細書で記載される1または複数のバイオマーカー(例えば、表1、表2および実施例で列挙されるバイオマーカーまたはそれらの断片)の発現または活性を、治療目的でモジュレートする方法に関する。本発明のバイオマーカーは、がんと相関することが裏付けられている。したがって、バイオマーカーの活性および/または発現のほか、1または複数のバイオマーカーまたはそれらの断片と、その自然の結合パートナーまたはそれらの断片との間の相互作用も、がんを処置するためにモジュレートすることができる。
本発明のモジュレート法は、細胞を、表1、表2および実施例で列挙される1もしくは複数のバイオマーカーを含めた、本発明の1もしくは複数のバイオマーカーまたはそれらの断片を含む、本発明の1または複数のバイオマーカー、あるいは細胞と関連するバイオマーカー活性のうちの1または複数をモジュレートする薬剤と接触させるステップを伴う。バイオマーカー活性をモジュレートする薬剤は、核酸もしくはポリペプチド、バイオマーカーの天然に存在する結合パートナー、バイオマーカーに対する抗体、バイオマーカーに対する抗体と他の免疫関連標的に対する抗体との組合せ、1もしくは複数のバイオマーカーアゴニストもしくはアンタゴニスト、1もしくは複数のバイオマーカーアゴニストもしくはアンタゴニストのペプチド模倣剤、1もしくは複数のバイオマーカーのペプチド模倣剤、他の小分子、または1もしくは複数のバイオマーカー核酸の遺伝子発現産物を指向する低分子RNAもしくはこれらの模倣剤など、本明細書で記載される薬剤でありうる。
表1、表2および実施例で列挙される1もしくは複数のバイオマーカーまたはそれらの断片を含む、本発明の1または複数のバイオマーカーの発現をモジュレートする薬剤は、例えば、アンチセンス核酸分子、RNAi分子、shRNA、成熟miRNA、pre-miRNA、pri-miRNA、miRNA*、抗miRNA、もしくはmiRNA結合性部位、もしくはそれらの改変体、または他の低分子RNA分子、三重鎖オリゴヌクレオチド、リボザイム、あるいは1または複数のバイオマーカーポリペプチドを発現させるための組換えベクターである。例えば、1または複数のバイオマーカーポリペプチドの翻訳開始部位の周囲の領域に相補的なオリゴヌクレオチドを合成することができる。1または複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、細胞培地に、典型的には、200μg/mlで添加することもでき、1または複数のバイオマーカーポリペプチドの合成を防止するように、患者に投与することもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞により取り込まれ、1または複数のバイオマーカーmRNAとハイブリダイズして、翻訳を防止する。代替的に、三重鎖構築物を形成して、DNAの巻き戻しおよび転写を防止するように、二本鎖DNAに結合するオリゴヌクレオチドを使用することができる。いずれの結果としても、バイオマーカーポリペプチドの合成が遮断される。バイオマーカーの発現をモジュレートする場合、このようなモジュレーションは、バイオマーカー遺伝子をノックアウトすることによる以外の手段により生じることが好ましい。
発現をモジュレートする薬剤は、それらが、細胞内のバイオマーカーの量を制御するという事実のために、また、細胞内のバイオマーカー活性の総量もモジュレートする。
一実施形態では、薬剤は、表1および実施例で列挙される1もしくは複数のバイオマーカーまたはそれらの断片を含む本発明の1または複数のバイオマーカーの1または複数の活性を刺激する。このような刺激性薬剤の例は、活性なバイオマーカーポリペプチドまたはその断片、および細胞に導入された、バイオマーカーまたはその断片をコードする核酸分子(例えば、cDNA、mRNA、shRNA、siRNA、低分子RNA、成熟miRNA、pre-miRNA、pri-miRNA、miRNA*、抗miRNA、もしくはmiRNA結合性部位、もしくはそれらの改変体、または当業者に公知の、他の機能的に同等の分子)を含む。別の実施形態では、薬剤は、1または複数のバイオマーカー活性を阻害する。一実施形態では、薬剤は、バイオマーカーの、その自然の結合パートナーとの相互作用を阻害または増強する。このような阻害性薬剤の例は、アンチセンス核酸分子、抗バイオマーカー抗体、バイオマーカー阻害剤、および本明細書で記載されるスクリーニングアッセイで同定される化合物を含む。
これらのモジュレート法は、in vitroにおいて(例えば、細胞を薬剤と接触させることにより)実施することもでき、代替的に、薬剤を、in vivoにおいて、細胞と接触させることにより(例えば、薬剤を対象に投与することにより)実施することもできる。そのようなものとして、本発明は、表1もしくは2および実施例に列挙されている本発明の1種または複数種のバイオマーカーまたはその断片の上方または下方モジュレーションから利益を得るはずである状態または障害、例えば、該バイオマーカーまたはその断片の望ましくない、不十分なまたは異常な発現または活性によって特徴付けられる障害に罹患した個体を処置する方法を提供する。一実施形態では、方法は、薬剤(例えば、本明細書で記載されるスクリーニングアッセイにより同定される薬剤)、またはバイオマーカーの発現もしくは活性をモジュレートする(例えば、上方調節または下方調節する)薬剤の組合せを投与するステップを伴う。別の実施形態では、方法は、低減した、異常な、または望ましくないバイオマーカーの発現または活性を補完する治療としての、1または複数のバイオマーカーポリペプチドまたは核酸分子を投与するステップを伴う。
バイオマーカーが異常に下方調節されている状況、および/またはバイオマーカー活性の増加が、有益な効果を及ぼす可能性がある状況では、バイオマーカー活性の刺激が所望される。同様に、バイオマーカーが異常に上方調節されている状況、および/またはバイオマーカー活性の低下が、有益な効果を及ぼす可能性がある状況では、バイオマーカー活性の阻害が所望される。
加えて、これらのモジュレート剤はまた、例えば、化学療法剤、ホルモン、抗血管新生剤(antiangiogen)、放射性標識化合物との組合せ治療において投与することもでき、手術、寒冷療法、および/または放射線治療との組合せ治療において投与することもできる。前出の処置法は、従来の治療の他の形態(例えば、当業者に周知のがんのための標準治療処置)と共に施行することができ、従来の治療と連続的に、その前に、またはその後に施行することができる。例えば、このようなモジュレート剤は、治療有効用量の化学療法剤と共に投与することができる。別の実施形態では、このようなモジュレート剤は、化学療法と併せて投与されて、上記化学療法剤の活性および有効性を増強する。米医薬品便覧(Physicians’ Desk Reference)(PDR)は、様々ながんの処置において使用されてきた化学療法剤の投与量を開示する。治療に有効であるこのような上記の化学療法薬の投与レジメンおよび投与量は、処置されている特定のメラノーマ、疾患の程度、および当業者である医師であれば熟知しており、該医師が決定することができる他の因子に依存する。
6.医薬組成物
別の態様では、本発明は、1種または複数種の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と併せて製剤化された、バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、低減)する治療有効量の薬剤を含む、薬学的に許容される組成物を提供する。詳細に以下に記載する通り、本発明の医薬組成物は、以下:(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、ボーラス剤、粉剤・散剤(powder)、顆粒剤、ペースト剤;(2)例えば、滅菌液剤もしくは懸濁剤としての、例えば、皮下、筋内もしくは静脈内注射による、非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏もしくはスプレーとしての、局所適用;(4)例えば、ペッサリー剤、クリーム剤もしくはフォーム剤として、腟内投与もしくは直腸内投与または(5)例えば、水性エアゾール剤としてのエアゾール剤、リポソーム調製物、もしくは上記化合物を含有する固体粒子に適合させたものを含む、固体形態または液体形態での投与のために、特別に製剤化することができる。
本明細書で使用される「治療有効量」という語句は、いくらかの所望の治療効果、例えば、がん処置を生じるのに有効な、バイオマーカー発現および/または活性を妥当なベネフィット/リスク比でモジュレート(例えば、阻害)する薬剤の量を意味する。
本明細書では、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医療判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適し、妥当なベネフィット/リスク比に適う、薬剤、材料、組成物、および/または剤形を指すように用いられる。
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、対象の化学物質を、1つの臓器または身体の部分から、別の臓器または身体の部分へと運ぶかまたは輸送することに関与する、液体または固体の、充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料など、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、対象に対して傷害性でないという意味で、「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として用いられうる材料の一部の例は、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなど、その誘導体;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑石;(8)カカオ脂および坐剤用の蝋などの賦形剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張性食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝化溶液;ならびに(21)医薬製剤中で利用される、他の非毒性の適合性物質を含む。
「薬学的に許容される塩」という用語は、バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤の相対的に非毒性の無機酸付加塩および有機酸付加塩を指す。このような塩は、呼吸脱共役剤(respiration uncoupling agent)の最終単離および精製の間にin situで、またはその遊離塩基形態の精製された呼吸脱共役剤を適切な有機酸もしくは無機酸と別々に反応させ、このようにして形成された塩を単離することにより、調製することができる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩およびラウリルスルホン酸塩などを含む(例えば、Bergeら(1977年)「Pharmaceutical Salts」J. Pharm. Sci.66巻:1~19頁を参照されたい)。
他の場合では、本発明の方法において有用な薬剤は、1種または複数種の酸性官能基を含有することができ、よって、薬学的に許容される塩基との薬学的に許容される塩を形成することができる。このような例における「薬学的に許容される塩」という用語は、バイオマーカー発現をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤の相対的に非毒性の無機塩基付加塩および有機塩基付加塩を指す。このような塩は同様に、呼吸脱共役剤の最終単離および精製の間にin situで、またはその遊離酸形態の精製された呼吸脱共役剤を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩などの適切な塩基と、アンモニアと、もしくは薬学的に許容される有機一級、二級もしくは三級アミンと別々に反応させることにより、調製することができる。代表的アルカリ塩またはアルカリ土類塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩などを含む。塩基付加塩の形成に有用な代表的有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを含む(例えば、Bergeら、前出を参照されたい)。
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど、湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、保存剤および抗酸化剤が、上記組成物中に存在することもできる。
薬学的に許容される抗酸化剤の例は:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など、金属キレート剤を含む。
本発明の方法において有用な製剤は、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣、エアゾール、および/または非経口投与に適する製剤を含む。製剤は、単位剤形で好都合に提示することができ、製薬技術分野で周知の任意の方法により調製することができる。単一の剤形を作製するのに、担体材料と組み合わされうる有効成分の量は、処置される宿主、特定の投与方式に応じて変動するであろう。単一の剤形を作製するのに、担体材料と組み合わされうる有効成分の量は一般に、治療効果をもたらす化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1パーセント~約99パーセントの有効成分の範囲であり、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲であろう。
このような製剤または組成物を調製する方法は、バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤を、担体および必要に応じて1種または複数種のアクセサリー成分と会合させるステップを含む。一般に、上記製剤は、呼吸脱共役剤を液体担体もしくは微粉化固体担体またはその両方と均一にかつ密接に会合させ、次いで必要であれば、産物を成形することにより調製される。
経口投与に適した製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(風味付けされた基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガントを使用)、粉剤・散剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体での液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなど、不活性基剤を使用)として、および/または洗口液などとしての形態であってよく、これらはそれぞれ、活性成分として所定量の呼吸脱共役剤を含有する。化合物は、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤・散剤、顆粒剤など)において、上記活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなど、1種または複数種の薬学的に許容される担体、および/または次のうちのいずれかと混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸など、充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど、結合剤;(3)グリセロールなど、保水剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなど、崩壊剤;(5)パラフィンなど、溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物など、吸収加速剤;(7)例えば、アセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土など、吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物など、滑沢剤;ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、上記医薬組成物は、緩衝剤を含むこともできる。同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルにおいて充填剤として用いることもできる。
錠剤は、圧縮または成形によって、必要に応じて1種または複数種のアクセサリー成分と共に作ることができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散化剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化ペプチドまたはペプチド模倣剤の混合物を成形することにより作ることができる。
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの他の固体剤形は、必要に応じて切れ目を入れる(score)ことができる、または腸溶コーティングおよび医薬品製剤化技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルにより調製することができる。これらは、例えば、所望の放出プロファイルをもたらすように様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して、その中にある上記活性成分の緩徐または制御放出をもたらすように製剤化することもできる。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水または他のいくつかの滅菌注射用媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み入れることにより、滅菌することができる。このような組成物は、乳白剤を必要に応じて含有することもでき、必要に応じて遅延様式にて、胃腸管のある特定の部分において活性成分(複数可)のみをまたはそれを優先的に放出する組成物のものであってよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。上記活性成分は、適切であれば、上記の賦形剤の1種または複数種と共に、マイクロカプセル化形態であってもよい。
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。上記活性成分に加えて、上記液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有することができる。
不活性希釈剤に加えて、上記経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色料、香料および保存剤など、アジュバントを含むこともできる。
懸濁剤は、活性薬剤に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにこれらの混合物など、懸濁化剤を含有することができる。
直腸または腟投与のための製剤は、坐剤として提示することができ、これは、1種または複数種の呼吸脱共役剤を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスまたはサリチル酸塩を含む1種または複数種の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製することができ、これは、室温で固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または腟腔内で融解し、上記活性薬剤を放出する。
腟投与に適した製剤は、適切であることが当技術分野で公知のこのような担体を含有する、ペッサリー製剤、タンポン製剤、クリーム製剤、ゲル製剤、ペースト製剤、フォーム製剤またはスプレー製剤も含む。
バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤の局所または経皮投与のための剤形は、粉剤・散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および吸入薬を含む。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、また、要求され得る任意の保存剤、緩衝剤または噴霧剤と混合することができる。
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、呼吸脱共役剤に加えて、動物および植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
粉剤・散剤およびスプレー剤は、バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤は、その上、クロロフルオロ炭化水素ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの通例の噴霧剤を含有することができる。
バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤は、あるいは、エアゾールによって投与することができる。これは、上記化合物を含有する水性エアゾール、リポソーム調製物または固体粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴霧剤)懸濁液を使用することができる。音波ネブライザーが好まれる。なぜなら、音波ネブライザーは、上記化合物の分解を生じうる剪断への上記薬剤の曝露を最小化するからである。
通常、水性エアゾールは、従来の薬学的に許容される担体および安定剤と共に、上記薬剤の水性溶液または懸濁液を製剤化することにより作られる。上記担体および安定剤は、特定の化合物の要件により様々であるが、典型的に、非イオン性界面活性物質(Tween、Pluronicまたはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害のタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、バッファ、塩、糖または糖アルコールを含む。エアゾールは一般に、等張性溶液から調製される。
経皮パッチは、身体への呼吸脱共役剤の制御された送達をもたらす追加的な利点を有する。このような剤形は、適切な媒体に上記薬剤を溶解または分散させることにより作ることができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横切るペプチド模倣剤のフラックスを増加させることもできる。このようなフラックスの速度は、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲルにペプチド模倣剤を分散させることのいずれかにより制御することができる。
眼科製剤、眼軟膏剤、粉剤・散剤、液剤なども、本発明の範囲内であると想定される。
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁化剤または増粘剤を含有することができる、1種または複数種の薬学的に許容される滅菌等張性水性もしくは非水性液剤、分散剤、懸濁剤もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌注射用溶液もしくは分散液へと再構成され得る滅菌粉末と組み合わせた、1種または複数種の呼吸脱共役剤を含む。
本発明の医薬組成物において用いることができる適切な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合は要求される粒径の維持により、また、界面活性物質の使用により維持することができる。
このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤など、アジュバントを含有することもできる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含により確実にすることができる。上記組成物中に、例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが所望される場合もある。加えて、注射用医薬品形態の吸収の延長は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる剤の包含によってもたらすことができる。
一部の場合では、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの該薬物の吸収を緩徐化することが所望される。これは、不十分な水溶性を有する結晶性またはアモルファス材料の液体懸濁液の使用によって達成することができる。そこで、薬物の吸収の速度は、その溶解速度に依存し、これは続いて、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、油ビヒクルに該薬物を溶解または懸濁することにより達成される。
注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにおいて、バイオマーカー発現および/または活性をモジュレート(例えば、阻害)する薬剤のマイクロカプセル(microencapsule)マトリックスを形成することにより作られる。薬物のポリマーに対する比、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)を含む。デポー注射用製剤は、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に上記薬物を捕捉することによっても調製される。
本発明の呼吸脱共役剤は、医薬品としてヒトおよび動物に投与される場合、それ自体で、または例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせた0.1~99.5%(より好ましくは、0.5~90%)の活性成分を含有する医薬組成物として与えることができる。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象に対する毒性を伴わない、該対象、組成物および投与方式にとって所望の治療応答の達成に有効な活性成分の量を得るために、本発明の方法によって決定することができる。
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入することができ、遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。遺伝子治療用ベクターは、対象に、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照されたい)、または定位注射(例えば、Chenら(1994年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、91巻:3054~3057頁を参照されたい)により送達することができる。遺伝子治療用ベクターによる医薬調製物は、許容可能な希釈剤中に遺伝子治療用ベクターを含む場合もあり、遺伝子送達ビヒクルを包埋した緩徐放出マトリックスを含む場合もある。代替的に、完全な遺伝子送達ベクター、例えば、レトロウイルスベクターを、組換え細胞から、無傷で作製しうる場合、医薬調製物は、遺伝子送達系をもたらす、1または複数の細胞を含みうる。
本発明はまた、本明細書で記載されるバイオマーカーを検出および/またはモジュレートするためのキットも包含する。本発明のキットはまた、本明細書で提示される、開示される発明の方法における、開示される発明のキットまたは抗体の使用を開示または記載する指示材料も含みうる。キットはまた、キットがデザインされる特定の適用を容易とする、さらなる構成要素も含みうる。例えば、キットは加えて、標識を検出する手段(例えば、酵素標識のための酵素基質、蛍光の標識、ヒツジ抗マウス-HRPなどの適切な二次標識を検出するフィルターセットなど)、および対照(例えば、対照生体試料または標準物質)のために必要な試薬を含有しうる。キットは加えて、開示される発明の方法における使用のための、認知された緩衝液および他の試薬を含みうる。非限定的な例は、担体タンパク質または洗浄剤など、非特異的結合を低減する薬剤を含む。
以下の実施例では、本発明の他の実施形態について記載する。本発明を、以下の実施例によりさらに例示するが、これらは、さらに限定的を加えるものとみなされるべきでない。
(実施例1)
実施例2~8の材料と方法
a.細胞系および細胞培養
以前に記載された通りに、FLT3-ITD含有MSCVレトロウイルスまたはFLT3-D835Y含有MSCVレトロウイルスを、IL-3依存性マウス造血細胞系Ba/F3にトランスフェクトした(Kellyら、2002年)。Nomo-1、P31-FUJおよびNB4は、Gary Gilliland博士から得た。MV4,11細胞は、Anthony Letai博士から得た。Hel細胞、K562細胞、THP細胞、U937細胞、TF-1細胞およびK052細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)(Manassas、VA、USA)から購入した。ヒトAML由来のFLT3-ITD発現系統、MOLM14(Matsuoら、1997年)は、Scott Armstrong博士、Dana Farber Cancer Institute(DFCI)、Boston、MAによって本発明者らに提供された。ヒトAML由来のFLT3-ITD発現細胞系、MOLM-13(DSMZ(German Resource Centre for Biological Material))は、以前に記載された通りに、VSVG-シュードタイプ化レトロウイルスによる形質導入によって、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼに融合させたルシフェラーゼ(pMMP-LucNeo)を発現するように操作された(Armstrongら、2003年)。本研究において使用された全細胞系は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有し、2% L-グルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI(Mediatech,Inc.、Herndon、VA)中2×105~5×105の濃度で、5% CO2、37℃にて培養した。例外として、TF-1細胞およびOCI-AML5細胞が挙げられ、これらは、10%FBSを含有し、2% L-グルタミンおよび1%pen/strepおよびヒトGM-CSF(2ng/mL)を補充したRPMI培地において培養した。親Ba/F3細胞は、10% FBSを含有し、2% L-グルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(streptomcyin)と共に15%WEHI(IL-3の供給源として)を補充したRPMIにおいて培養した。細胞系は、細胞系認証のために提出し、細胞系の短いタンデム反復(STR)プロファイリング(DDC Medical、Fairfield、OHおよびMolecular Diagnostics Laboratory, Dana Farber Cancer Institute)により原稿準備の6カ月以内に認証された。調べた全細胞系は、ATCCまたはDSMZ Cell Line Bank STRに列挙されている系統と≧80%マッチした。全細胞系は、ウイルスおよびマイコプラズマフリーであると確認された。PBMCは、ありがたいことに、Steven Treon博士およびGuang Yang博士によって提供された。
b.化学的化合物および生物学的試薬
DUB阻害剤のHBX19818、P22077および1247825-37-1は、Medchem Expressから購入し、DMSOに溶解して、10mMストック溶液を得た。HBX19818アナログは、ChemDivから購入し、DMSOに溶解して、10mMストック溶液を得た。次に、段階希釈物を作製して、細胞アッセイのための最終希釈物を得たが、DMSOの最終濃度は0.1%を超えない。
c.HA-ユビキチン-ビニルメチルスルホン(HA-Ub-VS)による標識
MOLM14細胞は、P22077で3時間処置し、Ba/F3-FLT3-ITD細胞は、HBX-19818で7時間処置した。細胞を採取し、PBSで洗浄し、1%NP-40、10%グリセロール、2%オルトバナジン酸ナトリウムおよびHALTプロテアーゼ阻害剤カクテル(ThermoFisher)に溶解した。1%DTTを含有する30uL溶解緩衝液中50ugとなるようにライセートを希釈し、氷上で15分間インキュベートした。0.25ug HA-Ub-VSを添加し、試料を室温で30分間穏やかに揺らし、次いで、LDS試料緩衝液により変性させた。12ugライセートをSDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に転写し、ミルク中でブロッキングし、USP10抗体(D7A5)(ウサギ、#8501)(Cell Signaling、Danvers、MA)で処置した。洗浄後に、上記膜を780-nm IRdyeヤギ抗ウサギIgG(Licor)で処置し、Odysseyスキャナ(Licor)を使用してイメージングした。
d.定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
Ba/F3細胞を表示化合物で23時間処置し、次いで採取し、PBSで洗浄した。RNEasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen)を使用してmRNAを抽出し、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素(ThermoFisher)およびSimpliAmp(商標)サーマルサイクラー(ThermoFisher)を使用してcDNAに変換した。TaqMan(登録商標)プローブおよびApplied Biosystems(登録商標)7500 FASTリアルタイムPCRシステム(ThermoFisher)を使用して、96ウェルプレートにおいてリアルタイムPCRを実行した。相対的遺伝子発現は、GAPDH参照プローブとの比較により計算した。
e.クロロキンレスキュー
細胞を24ウェルプレートに入れ、25uMクロロキンを添加した。60分後に、表示濃度のHBX-19818またはP22077を添加した。それぞれP22077またはHBX-19818について3または7時間後に、細胞を採取し、1×PBSで洗浄し、溶解した。30ugライセートをSDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に転写し、ミルク中でブロッキングし、FLT3抗体(Santa Cruz)で処置した。洗浄後に、上記膜を、西洋わさびペルオキシダーゼをコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgGで処置し、Peirce ECLウエスタンブロッティング基質(ThermoFisher)と共にインキュベートし、暗室内でイメージングした。
f.ユビキチンAMCアッセイ
タンパク質発現および精製。pET28aベクターにおける残基376~798を網羅するヒトUSP10の構築物を、50mg/mlのカナマイシンの存在下、TB培地中のE.coli BL21(DE3)において過剰発現させた。OD0.8まで細胞を37℃で成長させ、17℃に冷却し、500μMイソプロピル-1-チオ-D-ガラクトピラノシドで誘導し、17℃で一晩インキュベートし、遠心分離によって回収し、-80℃で保存した。緩衝液A(50mM HEPES(pH7.5)、300mM NaCl、10%グリセロール、10mMイミダゾールおよび3mM BME)において細胞ペレットを超音波処理し、その結果得られるライセートを30,000×gで30分間遠心分離した。Ni-NTAビーズ(Qiagen)をライセート上清と30分間混合し、緩衝液Aで洗浄した。ビーズをFPLC適合性カラムに移し、結合したタンパク質を15%緩衝液B(50mM HEPES(pH7.5)、300mM NaCl、10%グリセロール、300mMイミダゾールおよび3mM BME)で洗浄し、100%緩衝液Bで溶出した。溶出したタンパク質にトロンビンを添加し、4℃で一晩インキュベートした。次に、その試料を、イミダゾールなしの緩衝液Aであらかじめ平衡化したHiPrep 26/10脱塩カラム(GE Healthcare)に通し、溶出したタンパク質を2回目のNi-NTAステップに供して、His-タグおよびトロンビンを除去した。溶離液を濃縮し、20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaClおよび1mM DTTを含有する緩衝液中のSuperdex(登録商標)200 10/300GLカラム(GE Healthcare)に通した。画分をプールし、20mg/mlまで濃縮し、-80℃で凍結した。
in vitro USP10活性アッセイ。組換えUSP10、残基376~798を、阻害剤の存在または非存在下、ユビキチン-AMCアッセイにおいてその活性に関して調べた。このアッセイのため、10nM USP10を、50mM HEPES pH7.6、0.5mM EDTA、11uMオボアルブミンおよび5mM DTT中、異なる濃度の阻害剤または対照としてのDMSOと共にプレインキュベートした。反応物を6時間室温でインキュベートし、その後、2uMユビキチン-AMC(Boston Biochem)基質を添加した。それぞれ345および445nmの励起および発光波長でCLARIOstar(登録商標)蛍光プレートリーダーを使用して、30分間の期間にわたって1分間間隔で蛍光データを回収することにより、上記反応物の初期速度を測定した。計算された初期速度値を阻害剤濃度に対してプロットしてIC50値を決定した。
g.抗体、イムノブロッティングおよび免疫沈降
次の抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)から購入した:総AKT(ウサギ、#9272)および総p44/42 MAPK(Erk1/2)(3A7)(マウス、#9107)は、1:1000希釈で使用した。抗GAPDH(D16H-11)XP(R)(ウサギmAb、#5174)は、1:1000希釈で使用した。ベクリン-1(ウサギ、#3738)は、1:1000で使用した。USP10(D7A5)(ウサギ、#8501)は、1:1000希釈で使用した。P53(ウサギ、#9282)は、1:1000希釈で使用した。β-チューブリン(ウサギ、#2146s)は、1:1000で使用した。
FLT3/Flk-2(C-20)(sc-479)およびUb(P4D1)(マウス、sc-8017)は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Dallas、TX)から購入し、イムノブロッティングのために1:1000希釈で使用した。抗pTyr(マウス、クローン4G10)は、Upstate Biotechnology(Lake Placid、NY)から購入し、1:1000希釈で使用した。抗HAUSP/USP7抗体(ウサギ、ab4080)および抗ユビキチン抗体(ウサギ、ab7780)は、Abcam(Cambridge、MA)から購入し、1:1000希釈で使用した。
タンパク質ライセート調製、イムノブロッティングおよび免疫沈降は、Weisbergら(2002年)Cancer Cell 1巻:433~443頁において以前に記載された通りに実行した。
h.293T細胞のPEIトランスフェクション
10%FBSを含有するDMEMにおいて、37℃で、5%CO2インキュベーター内でHEK 293T細胞を培養し、製造元の指示に従ってポリエチレンイミン(polyethylenimine)(PEI)(Polysciences)を使用してトランスフェクトした。10%FBSを含有するRPMI 1640培地において、37℃で、5%CO2インキュベーター内でBa/F3-FLT3-ITD細胞およびMOLM14細胞を維持した。内在性ユビキチン化アッセイのため、Ba/F3-FLT3-ITD細胞またはMOLM14細胞を、0、5、10もしくは20μMのHBX19818もしくはP22077、またはDMSO対照で、4または24時間処置した。次に、細胞を回収し、溶解した。抗FLT3抗体を使用して免疫沈降を実行した。抗ユビキチン抗体または抗FLT3抗体を使用してイムノブロットを解析した。
i.薬物組合せ研究
薬物組合せ研究のため、トリパンブルー排除アッセイを使用して細胞生存率をまず決定して、細胞播種のために細胞を定量し、次いで増殖研究のためにCellTiter-Glo Luminescent細胞生存率アッセイ(Promega、Madison、WI)を実行した。固定比率で同時に単剤を細胞に添加した。細胞生存率は、対照細胞と対比した、成長に影響を与えた(FA)薬物処置の関数として表現した;データは、相乗作用測定に活用され、アイソボログラム生成およびChou-Talalayの方法(1984年)(REF)に基づく、Calcusynソフトウェア(Biosoft、Ferguson、MOおよびCambridge、UK)によって解析した。この方法は、半有効(median effect)原理を活用して、薬物組合せの効果を定量して、薬物組合せが、個々の効果の単純な合計から予測されるものよりも優れた効果を一緒になって与えるかどうかを決定する。各薬物のED50またはIC50を決定した後に、組合せを研究したところ、濃度は、ED/IC50の倍数または分数であった。本明細書に記載されている相乗作用研究のため、各薬物のIC50値(これは、薬物組合せに適切な比を選択するために一般的に使用されている)に基づき、薬物毎の濃度を単独でおよび一緒に使用した。特に、DUB阻害剤およびキナーゼ阻害剤の濃度を次の通り単独でおよび組み合わせて調べた:0.25×IC50、0.5×IC50、IC50、2×IC50および4×IC50。Calcusynプログラム生成された組合せ指数(CI)値は、相乗性の定量的測定を可能にし、ここで、相乗性は、CI<1によって定義され、相加効果は、CI=1によって定義され、アンタゴニズムは、CI>1によって定義される。統計解析は、自動的に算出の一部である。
j.shRNAによる遺伝子のノックダウン(KD)
USP10およびUSP7に対するpLKO.1puroレンチウイルスshRNAベクター粒子は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。細胞を、8μg/mlポリブレン(登録商標)の存在下で上記ウイルス粒子と共に24時間インキュベートし、該細胞を1~2μg/mlピューロマイシンにより72時間選択した。選択後に、細胞を記載されている研究のために使用した。
MOLM14細胞における反復USP10ノックダウン研究:LENTI-X濃縮器(Clontech)を使用して濃縮された、psPAX2(addgene#12260)およびpMD2.G(addgene#12259)と一緒にpLKO.1含有shRNAまたはスクランブル(Sigma-Aldrichから購入)をコトランスフェクトしてウイルス粒子を産生した。続いて、5ug/mlポリブレンの存在下、MOLM14細胞に感染させ、1ug/mlピューロマイシンを使用して、感染48時間後に選択を開始した。
k.動的BH3プロファイリング(DBP)
ミトコンドリアプライミングの薬物誘導性変化を決定するために、Monteroら(2015年)Cell 160巻:977~989頁およびPanら(2014年)Cancer Discov.4巻:362~375頁に以前に記載された通りに、動的BH3プロファイリングを行った。略述すると、0.4×106細胞/ウェルを薬物処置に14時間曝露した。インキュベーション時間の終わりに、細胞をPBSで洗浄し、500×gで5分間ペレットとし、MEB緩衝液に再懸濁した。20μg/mLジギトニンおよびその最終濃度の2倍のBH3ペプチドを含有する15μlのMEB緩衝液を含有する384ウェルプレートの各ウェルに、15μlの細胞懸濁液を添加し、この混合物を60分間26℃でインキュベートして、ミトコンドリア脱分極させた。次に、10μlのPBS中4%ホルムアルデヒドを15分間添加し、続いてN2緩衝液(1.7M Tris、1.25Mグリシン、pH9.1)により10分間中和することにより、ペプチド曝露を終結した。チトクロムCレベルを決定するために、Alexa Fluor(登録商標)647にコンジュゲートされた抗チトクロムCクローン6H2.B4(BD Bioscience)を10×染色緩衝液(PBS中の10%BSA、2%Tween-20および0.02%アジ化ナトリウム)に1:50希釈し、1:400の最終希釈のため、この抗体含有緩衝液のうち10μlを各ウェルに添加した。細胞を暗所にて一晩4℃で染色し、BD LSRFortessa(商標)分析計(BD Biosciences)においてデータを取得した。プライミング変化(Δ)は、処置細胞におけるチトクロムC存在量を、DMSO処置対照細胞のそれと比較することにより計算した。
l.プリマグラフト研究
全動物研究は、Dana-Farber Cancer Instituteの施設内実験動物委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)に承認されたプロトコールに従って行った。白血病負荷が、末梢血におけるパーセント二重陽性CD45+CD33+細胞によって決定される次のレベルに達したら、雌NSGマウス(6週齢、Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)に、総計21日間、ビヒクル(10%DMSO、+90%D5W IP QD)(n=3)またはP22077、15mg/kg IP QD(10%DMSOに溶解、+90%D5W)(n=3)のいずれかを投与した:2E#0(ビヒクル)(3.07%)、2E#1(ビヒクル)(0.34%)、2E#30(ビヒクル)(1.63%)、2D#0(P22077、15mg/kg)(4.68%)、2D#1(P22077、15mg/kg)(1.5%)、2E#10(P22077、15mg/kg)(0.29%)。処置21日目にマウスを屠殺した。骨髄をマウス大腿骨から流し出し、脾臓および肝臓を切開し、まずホルマリンに保存し、続いて24時間後、70%エタノールに保存した。21日処置期間、15mg/kgのP22077は全般に良好に忍容し、体重にはほとんど変化がなかった(ビヒクル処置およびP22077処置の両方で平均約2~3gの減少;マウスのうち、15%より多く体重減少したマウスはいなかった)。本明細書に記載されている研究で使用した全AMLプリマグラフト試料は、Public Repository of Xenografts(proxe.org)により得た。
m.非侵襲性in vivoバイオルミネセンス研究
全動物研究は、Dana-Farber Cancer Instituteの施設内実験動物委員会によって承認されたプロトコールに従って行った。Ba/F3-FLT3-ITD細胞に、PMSCV puro(Clontech、Mountain View、CA)中にクローニングされたホタルルシフェラーゼコード領域(pGL3ベーシック由来;Promega、Madison、WI)で構成されたVSVG-シュードタイプ化レトロウイルスを形質導入した。Ba/F3-FLT3-ITD(luc+)細胞系を産生するように、細胞をネオマイシン選択した。Weisbergら(2005年)Cancer Cell 7巻:129~141頁に以前に記載された通りに、バイオルミネセンスイメージングを実行した。略述すると、雌NCR-ヌードマウス(6~8週齢;Taconic、NY)への投与のため、ウイルスおよびマイコプラズマフリーBa/F3-FLT3-ITD-luc+細胞を洗浄し、1×PBSに再懸濁し、IV尾静脈注射により投与した(0.5×106細胞/250uL)。処置群当たり8匹以上のマウスの試料サイズを選択して、統計的有意性を確実にした。細胞注射2日後に処置を開始し、IV注射2日後に麻酔した(anesthesized)マウスをイメージングして、マッチした腫瘍負荷を有する処置コホートの確立に使用されるベースラインを生成し(マウスを無作為化し、研究者を群割り当てに関して盲検化した)、Armstrongら(2003年)Cancer Cell 3巻:173~183頁に以前に記載された通りに、全身ルミネセンスを測定した。マウスをビヒクル(10%DMSO、+90%D5W IP QD)(n=5)、P22077(15mg/kg IP QD)(n=6)またはP22077(50mg/kg IP QD)(n=6)で表示時間処置した。マウスをビヒクル(90%[20%]HPBCD-10%DMSO、IP BID)(n=8)、P22077(50mg/kg、90%[20%]HPBCD-10%DMSO、IP BID)(n=8)、P22077(50mg/kg、90%PEG300-10%NMP)で表示時間処置した。注:全時点にわたってビヒクル処置群における他の7匹のビヒクルマウスよりも≧10倍低い白血病負荷を示した1匹のビヒクルマウスは、最終統計解析から外れ値として除去した。1匹のP22077(PO、QD)処置マウスは、処置とは無関係の技術的合併症により早くに死に、結果的に、この処置群の他の7匹のマウスと一緒にイメージングしなかった。
ビヒクル処置およびP22077処置マウスにおけるFLT3タンパク質レベルのin vivo評価のため、8匹の雌NCR-ヌードマウス(6~8週齢;Taconic、NY)に、上記の通り、尾静脈注射によりBa/F3-FLT3-ITD-luc+細胞を投与した。マウスをイメージングし、2日後に無作為化して、マッチした腫瘍負荷を有する処置コホートの確立に使用されるベースラインを生成した。この時点で、マウスをビヒクル(90%[20%]HPBCD-10%DMSO、IP BID)(n=4)またはP22077(50mg/kg、90%[20%]HPBCD-10%DMSO、IP BID)(n=4)で総計4日間処置した。次に、CD135-PEコンジュゲート抗体(Cat.#IM2234U、Beckman Coulter、Marseille、France)を使用したフローサイトメトリーによって、FLT3レベルに関して骨髄細胞懸濁液を解析した。標準プロトコール(Weisbergら、2011年)に従って、以前に記載された通りにフローサイトメトリーを実行した。略述すると、FACSDiva(商標)解析ソフトウェアを備えるFACS Fortessa(商標)フローサイトメトリー機械を、FLT3陽性細胞の百分率の解析に使用した。
両側スチューデントt検定を使用することにより、2群間のバイオルミネセンスにおける統計的有意性を決定した。P<0.05が、統計的に有意であるとみなした。データは、同様の分散を有し、検定の仮定を満たした。
n.フローサイトメトリー
標準プロトコールに従って、Weisbergら(2011年)PLoS One 6巻:e25351頁に以前に記載された通りに、フローサイトメトリーを実行した。略述すると、BD FACSDiva(商標)解析ソフトウェアを備えるBD FACSCanto(商標)フローサイトメトリー機械を、FLT3陽性細胞の百分率を解析するために使用した。
o.増殖研究
トリパンブルー排除アッセイは、Weisbergら(2002年)Cancer Cell 1巻:433~443頁に以前に記載されており、CellTiter-Glo(登録商標)アッセイのための播種に先立つ細胞の定量に使用した。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイ(Promega、Madison、WI)を増殖研究に使用し、製造元の指示に従って実行した。細胞生存率は、対照(無処置)細胞に対する百分率として報告し、エラーバーは、データ点毎の平均の標準誤差を表す。
p.AML患者細胞
変異体FLT3を有すると同定されたAML患者由来の試料から単核細胞を単離した。異なる濃度の単一および組み合わせた薬剤の存在下の液体培養(20%FBSを補充したDMEM)における細胞を調べた。AML患者由来の全血液試料および骨髄試料は、Dana Farber Cancer Institute施設内審査委員会(Institutional Review Board)の承認の下に得た。
r.MALDI TOF DUBアッセイ
31種のヒトDUBを、異なる濃度で反応緩衝液(40mM Tris-HCl、pH7.6、5mM DTT、0.005%BSA)において新鮮に希釈した(表10を参照されたい)。ユビキチントポイソマー(K63、K48、K11およびM1)を、0.2μl/μgとなるようダイマー緩衝液(40mM Tris-HCl、pH7.6、0.005%BSA)において希釈し、固定濃度(1.5μM)で基質として使用した。酵素を10μM最終濃度の化合物と共に30分間室温でプレインキュベートした。0.48μlのジユビキチントポイソマーを反応混合物に添加して、反応を開始した。反応物を密封し、30分間室温でインキュベートし、最終濃度2%(v/v)までTFAを添加することにより停止した。新鮮プレートにおいて1.050μlの各反応物をコピーし、内部標準として0.15μlの16μM 15N-ユビキチンをスパイクし、新鮮に調製された2.5 DHAPマトリックスと1:1混合した(375mlエタノールおよび125mlの水性12mg/mlクエン酸水素二アンモニウム中の7.6mgの2,5 DHAP)。反応物およびマトリックスを混合し、200nlの混合物を、MTP AnchorChip 1,536 TF(600mmアンカー、Bruker Daltonics)上に二連でスポットした。
Compass 1.3制御および処理ソフトウェアを備えるUltrafleXtreme MALDI-TOF質量分析計(Bruker Daltonics)において、質量分析データを取得した。各解析前に試料キャリアにレーザーシューティングを最適化し集中させるようにした。15N-Ubピーク[M+H]+平均=8,569.3)を使用して、各解析前に内部較正を行った。自動モードで試料を解析した(AutoXecute、Bruker Daltonics)。固定初期レーザー出力60%(レーザー減衰器オフセット68%、範囲30%)による2-kHz smartbeam-IIソリッドステートレーザーによってイオン化を達成し、検出器ゲイン×10でFlashDetectorによって検出した。反射器-1(26.45kV)および反射器-2(13.40kV)、イオン源(IonSource-1:25.0kV、IonSource-2:22.87kV)およびパルスイオン抽出(320ns)のために最適化された電圧により反射器モードを使用した。「ランダムウォーク」において、また、「大(large)」smartbeamレーザー焦点により、3,500ショットの量を合計した。スペクトルを15N-Ub m/zにおいて自動的に較正し、非分解同位体分布(non-resolved isotope distribution)における再現性があるピークアノテーションのためのスムージング(Savitzky-Golayアルゴリズム)およびベースライン減算(「TopHat」)を使用して処理した:1サイクル、幅について0.2m/z。面積計算のため、完全同位体分布を考慮に入れた。社内(in-house)で作られたスクリプトを使用して、-15Nおよびモノユビキチン面積を報告した;グラフのプロット、標準偏差および変動係数(%)の計算は、Microsoft Excelで処理した。
s.MOLM14細胞におけるUSP10野生型および変異体の過剰発現
FLAG-HA-USP10は、Wade Harper研究室から寄贈された[Addgene(#22543)](Sowaら、2009年)。この構築物を使用して、製造元の指示に従った部位特異的変異誘発を使用して、対応するUSP10触媒的に無効の(dead)構築物(USP10 C424S)を作製した。293T細胞においてGAG/POLおよびVSV-G含有ベクターと共にUSP10 WT、C424Sまたは対照ベクターをコトランスフェクトしてウイルス粒子を産生し、LENTI-X濃縮器(Clontech)を使用して濃縮した。次に、5ug/mlポリブレンの存在下、MOLM14細胞を感染させ、1ug/mlピューロマイシンを使用して、感染48時間後に選択を開始した。外因性USP10の発現をHAブロットによって確認した。
(実施例2)
変異体FLT3依存性AMLの成長を選択的に阻害し、変異体FLT3分解を誘導するDUB阻害剤のスクリーニングは、HBX19818を同定する
発癌性FLT3のタンパク質恒常性を調節する新規標的および化合物を同定するために、DUBの幅広いパネルにわたる阻害活性をアノテートした、報告されるDUB阻害剤の大部分を表す、29種の報告される小分子DUB阻害剤(表10)のホールセル表現型スクリーニング(Ritortoら(2014年)Nat. Commun.5巻:4763頁)を、癌遺伝子依存性および対照細胞系を使用して行い、続いて、ヒット検証および標的デコンボリューションおよびトランスレーショナル研究を行った(図1A)。IL-3依存性親Ba/F3細胞よりも、FLT3-ITDを発現する増殖因子非依存性Ba/F3細胞およびFLT3-D835Yを発現するBa/F3細胞を選択的に死滅させる能力に関して化合物を評価した。報告されたUSP7阻害剤である、スクリーニング由来の上位ヒットであるHBX19818(Reverdyら(2012年)Chem. Biol.19巻:467~477頁)(図1B;示されているエチル基が、表8に示されている通りメチル基となるべきであることに留意されたい)は、約72時間の処置後に、1桁のマイクロモル濃度範囲内のEC50(図1C~図1D)、および親Ba/F3細胞と比較して約2倍の治療ウィンドウで、FLT3-ITDおよびFLT3-D835Y陽性Ba/F3細胞の増殖を阻害した。Ba/F3-D835Y細胞の成長に対する阻害効果は、Ba/F3-FLT3-ITD細胞よりも控えめであることが観察され、これは、約22時間の細胞の処置後により明らかである(図1E)。HBX19818の抗増殖活性は、同じ濃度におけるBa/F3-FLT3-ITD細胞におけるFLT3タンパク質の喪失(図1F)およびBa/F3-D835Y細胞におけるFLT3タンパク質のより少ない喪失(図1G)と相関した。これらの結果と符合して、フローサイトメトリーは、HBX19818で処置したBa/F3-FLT3-ITD細胞におけるFLT3の細胞表面発現の喪失を明らかにした(図2A)。対照的に、FLT3タンパク質レベルは、阻害剤処置野生型FLT3-Ba/F3細胞において変化しなかった(図1Hおよび図2B)。FLT3-D835Y陽性細胞系の欠如のために、その後の研究は、FLT3-ITD変異に焦点を置いた。
FLT3変異体発現細胞に対するHBX19818の効果は、Ba/F3システムに固有でないことが確認された。例えば、HBX19818は、同じ範囲内の濃度による用量依存性様式で、FLT3-ITD陽性AML細胞系のMOLM13-luc+、MOLM14およびMV4,11の成長も抑制した(図1Iおよび表3)。変異体FLT3に向けたHBX19818の選択性は、24時間の処置後に、野生型(wt)FLT3またはヌルFLT3発現ヒト白血病系統のパネルと比較して、HBX19818に対する3種の変異体FLT3発現(expessing)ヒトAML系統の実質的により高い感受性によって裏付けられた(図1Iおよび表3)。例えば、HBX19818に関して、それぞれTF-1細胞、U937細胞、HEL細胞、K052細胞およびK562細胞に対する12.8、20.7、25.7、16.6および18.5のIC50と比較して、4.4、9.6および8.1μMのIC50が、それぞれMOLM13-luc+、MOLM14およびMV4,11に対して観察された(表3)。薬物応答性における差は、最大で72時間の処置まで持続した。HBX19818処置は、アポトーシスのための変異体FLT3発現細胞のプライミング増加をもたらした(図1J)。このプライミングは、アポトーシスの誘導と有意に相関し、MOLM13、MOLM14およびMV4,11細胞に対して、wt FLT3発現THP細胞またはヌルFLT3発現TF-1細胞に対するよりも強かった(図3A~3D)。調べた変異体FLT3発現マウス細胞系および変異体FLT3発現ヒト細胞系は、ミドスタウリン、AC220(キザルチニブ)およびクレノラニブを含む臨床検査されたFLT3阻害剤に対し、これらの化合物について報告されるものと同様の効力で、薬理学的に応答することが示されたことに留意されたい。
タンパク質レベルの低下が、ユビキチン依存性分解の帰結であるかどうかを明確にするために、変異体FLT3ユビキチン化に対する阻害剤媒介性変化および分解機構の同時発生的阻害によるタンパク質喪失のレスキューを調べた。ユビキチン依存性である分解と符合して、FLT3ユビキチン化の増加は、HBX19818による処置4~8時間後にFLT3-ITDに観察され、化合物処置22時間後にD835Y変異体に観察された(図4A~4C)。これらの結果は、Ba/F3システムに固有ではない。FLT3ユビキチン化の増加に関する同様の所見は、FLT3-ITD陽性AMLがん細胞系MOLM14において観察された(図4D)。
ユビキチン媒介性分解機構によりFLT3-ITDの喪失を促進するHBX19818と符合したデータにより、次に、この機構が、関連するDUBの同定および検証に費やす前に、薬物耐性の無効化に関してキナーゼ阻害と比較して有利になり得ることを確認しようとした。実際に、FLT3キナーゼ阻害剤クレノラニブによる、チロシンキナーゼドメイン点変異F691Lを共発現するBa/F3-FLT3-ITD細胞の処置は、Ba/F3-FLT3-ITDと比較して、用量応答曲線における右方向へのシフトをもたらし(図5A)、これにより、クレノラニブに対するF691点変異体の耐性を検証した(Smithら(2014年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.111巻:5319~5324頁)。対照的に、HBX19818処置は、部分的にIL-3レスキュー可能な濃度において(図5C)、Ba/F3-FLT3-ITD-F691L細胞およびBa/F3-FLT3-ITD細胞の両方に対して等効力であった(図5B)。
ユビキチンタグは、プロテアソームまたはリソソーム分解のいずれかをコードすることができる。FLT3は、両方の経路によって分解を受けることが報告された。HBX19818と共にP22077(別のUSP10標的化阻害剤であり、さらに詳細に以下に記載する)誘導性FLT3-ITD分解が、リソソームの阻害によって部分的にレスキューされることが決定され(図6A)、qPCR解析は、FLT3レベルの低下がタンパク質レベルのみで起こったことを確認した(図6B)。
(実施例3)
HBX19818のUSP10阻害活性は、FLT3-ITDの分解を駆動する
HBX19818と共に実施例4におけるP222077は、MDM2の安定化におけるその役割で最も良く公知の脱ユビキチン化酵素である、ユビキチン特異的プロテアーゼ7(USP7)の2種の不可逆的阻害剤であると報告された(Reverdyら(2012年)Chem. Biol.19巻:467~477頁;Chauhanら(2012年)Cancer Cell 22巻:345~358頁)。しかし、基質としてジユビキチンを使用した、33種の組換えDUB酵素のパネルに対する、10μMの濃度のin vitroでの化合物のプロファイリングは、最も強力に阻害されるDUBとしてUSP10を同定した(USP10 IC50=14μM)(Ritortoら(2014年)Nat. Commun.5巻:4763頁)(図6C)。プロファイリングデータは、HBX19818が、10μMの濃度で20%を超える程度までUSP10以外のDUBを阻害しない、優れたDUBオーム(DUBome)選択性を呈することをさらに示す(図6C)。USP7は、同じアッセイを使用して、57μMのIC50で阻害された。HBX19818の潜在的標的としてUSP10をさらに調査するために、USP10の確立された基質であるベクリン-1(Liuら(2011年)Cell 147巻:223~234頁)のレベルを、HBX19818処置した、変異体FLT3発現細胞において解析した。ベクリン-1およびFLT3のタンパク質レベルは、20μM HBX19818処置したBa/F3-FLT3-ITD細胞およびMOLM14細胞において強く減少し、この結果は、USP10が、HBX19818の活性を媒介しうることを示唆し、この化合物のDUBオームプロファイリング結果と符合する(図6D~6E)。加えて、活性確立に基づくプローブプロファイリング方法(establishing activity-based probe profiling method)を使用して、HBX19818が、細胞においてUSP10に結合することが確認された(Altunら(2011年)Chem. Biol.18巻:1401~1412頁)。HBX19818で処置した生細胞由来のライセートにおけるUSP10は、低マイクロモル濃度範囲内の阻害剤濃度で、DUBの活性部位システインを共有結合により標識するように修飾されたHAタグ付きユビキチンプローブ(HA-Ub-VS)による標識から遮断された(図6F)。
USP10が、FLT3を脱ユビキチン化するDUBであるかどうかを調査するために、USP10およびFLT3が、FLT3変異体細胞において複合体で存在するかどうかをまず検査した。FLT3-ITD Ba/F3細胞におけるFLT3とUSP10の頑強な共免疫沈降が観察され、逆共免疫沈降研究は、USP10とFLT3の会合を確認した(図7A)。逆向き実験において、USP10の発現増加は、安定にトランスフェクトされたMOLM14および一過性にトランスフェクトされたHEK 293T細胞において、FLT3-ITDタンパク質の、wt FLT3タンパク質よりも高い安定化と相関することが観察された(図7E、7Nおよび7O)。発癌性FLT3駆動AML細胞と同様に、HBX19818およびP22077の両方が、HEK 293T細胞においてFLT3の分解を誘導することができたが、変異体FLT3駆動細胞において両方の化合物により観察される効果を再現するために、約2倍高い濃度が必要とされたことに留意することが重要である(図7F)。触媒システインがセリンで置きかえられたUSP10、USP10C424SのMOLM14細胞への導入は、wtと比較して、変異体FLT3の安定化低下をもたらし、FLT3-ITDタンパク質レベルの調節におけるUSP10触媒活性の重要性が確認された(図7N)。まとめると、SAR、KDおよび過剰発現研究は、USP10が、FLT3-ITD安定性の極めて重要な調節因子であることを強く裏付けるが、影響が、直接的であるか間接的であるかについて取り組むものではない。続いて、USP10およびFLT3が、FLT3変異体細胞において複合体で存在するかどうかを検査した。Ba/F3-FLT3-ITD細胞におけるFLT3とUSP10の頑強な共免疫沈降(共I.P.)が観察された一方、逆共I.P.研究は、USP10とFLT3の会合を確認した(図7A)。USP10およびFLT3(wtおよび変異体の両方)の間の同様の相互作用が、これらのタンパク質を外因性に発現するように操作された293T細胞において実証された(図8A)。重要なことに、2、4および6時間のHBX19818ならびに4および6時間のケモカイン、P22077は、USP10とFLT3-ITDとの間の相互作用を遮断することが観察された(図8B)。
変異体FLT3の安定化におけるUSP10の潜在的役割を明確にするために、3種の別々のヘアピンを使用してUSP10ノックダウン(KD)を行った。USP10依存性であるHBX19818の抗増殖および分解効果と符合して、各ヘアピンによるUSP10 KDは、スクランブル対照ヘアピンと比較して、FLT3-ITDの頑強な分解と共に、FLT3-ITD陽性細胞(MOLM13-luc+、MOLM14)における実質的成長阻害をもたらした(図7B~7D、図10A)。HBX19818およびP22077に観察される通り、USP10 KDは、FLT3下流の、AKTおよびERK1/2を含むシグナル伝達分子に影響がほとんどないか全くなかった(図7J)。同じヘアピンによる有効なUSP10 KDは、発癌性FLT3によって駆動されない、形質転換されたヒト造血系統細胞系の成長を抑制せず(K052、K562、KU812F、U937)(図7Bおよび図10B~10E)、USP10標的化小分子阻害と同様に、wt FLT3タンパク質レベルをモジュレートしなかった(図4K~M、図10B~D)。
USP10薬理学的阻害およびKDならびに酵素過剰発現によるFLT3 wtおよび変異体タンパク質に対する観察される差次的影響は、活性化されたFLT3が、ユビキチン媒介性分解の傾向がよりあるという報告と符合する(OSHIKAWA G.ら(2011年)J Biol Chem、286巻、30263~73頁)。USP10の過剰発現ありまたはなしでの、ならびにHBX19818の非存在および存在下での、wt FLT3およびFLT3-ITDの半減期を解析して、タンパク質安定性の差が、DUB阻害剤処置に対するその2種のタンパク質の差次的応答性における役割を果たしうるかをみた。Ba/F3細胞において、HBX19818は、3~4時間から2時間前後へとFLT3-ITDの半減期を短縮し、wt FLT3よりも大きい程度までFLT3-ITDの半減期を短縮することが観察された(図7G~7I)。データは、wt FLT3とFLT3-ITDとの間のHBX19818に対するこの差次的応答性が、これらのタンパク質の固有の全体的安定性/半減期のわずかな差によるものである可能性を示唆する。同様に、HBX19818は、20μMで、これら2種の細胞系におけるFLT3分解を強く誘導した(図7C~7D)。対照的に、同じヘアピンによる有効なUSP10 KDは、FLT3 wtがん細胞の成長を抑制しなかった(例えば、K052、K562、KU812FおよびU937;図7Bおよび図9A~9Dを参照されたい)。wt FLT3発現細胞増殖およびFLT3タンパク質発現に対するHBX19818の最小効果と符合して、両者共に低レベルのwt FLT3を発現すると特徴付けられた、wt FLT3発現AML細胞系U937およびK562におけるUSP10 KDは、FLT3タンパク質レベルを変化させなかった(図9E~9F)。加えて、USP10のレベルは、全般に、MOLM14およびMV4,11を含む、より高レベルのFLT3を発現する細胞系においてより高いことが観察され、FLT3タンパク質調節におけるUSP10の安定化役割と符合した(図10)。
USP7も、変異体FLT3分解およびAML細胞の成長阻害に寄与しうるかどうかを解明するために、本発明者らは、3種の別々のヘアピンを使用して、USP7をノックダウンした。USP10 KDとは対照的に、FLT3-ITD発現MOLM14細胞において、FLT3レベルまたはベクリン-1レベルに変化がほとんどないか全くないことが観察され、USP7ヘアピンによる形質導入は、スクランブルヘアピン対照と比較して、細胞生存率に効果がほとんどないか全くなかった(図11A~11C)。重要なことに、USP10のレベルは、予測通りであるが、USP10 KD細胞において減少したが、USP7 KD細胞において変化しないままであったため、USP7 KDは、選択的であることが実証された(図11D)。さらに、選択的USP7阻害剤の化合物2(Kessler(2014年)Exp. Opin. Ther. Pat.24巻:597~602頁)を使用したUSP7の薬理学的阻害(図11G)は、細胞生存率にほとんど影響がなく、最大で20μMの濃度でBa/F3-FLT3 ITD細胞におけるFLT3レベル低下をもたらさなかった(図11E~11G)。
次に、7種のHBX19818アナログ(化学構造を図12Aに示し、それらの抗増殖IC50を表9に示す)を得、生化学的アッセイにおいてそれらのUSP10阻害活性を調べ、FLT3タンパク質レベルにおける影響、およびBa/F3-FLT3-ITD細胞に対する抗増殖効果を調べた。これらのパラメータの間の優れた相関が観察され、HBX19818の関連する標的としてのUSP10を裏付けた(図12B~12Eおよび13A~13E)。例えば、HBX19818と比較できるほどにUSP10を阻害するC598-0563(図13B)は、同様の濃度で細胞成長を抑制し、FLT3の喪失を誘導することが観察された一方(図13Aおよび13C)、HBX19818と比較できるほどにUSP10を阻害する(図13B)が、USP7は阻害しない(IC50>>100μM、表9)C673-0105は、C598-0563と同様の機能を有した(図12Cおよび13A)。より強力なUSP10阻害剤のC598-0466(図13B)は、より低い抗増殖EC50を有し、より低い濃度でFLT3分解を誘導する(図13A~13Bおよび13D)。対照的に、C598-0468は、精製酵素アッセイにおいてUSP10の阻害をほとんど呈さず(IC50=>>100μM)(図13B)、有意に右にシフトした抗増殖曲線を示し、HBX19818がFLT3を分解した同じ濃度でFLT3レベルに効果がなかった(図13Aおよび13E)。より強力なHBX19818アナログのC598-0466は、FLT3ヌル細胞系TF-1およびFLT3によって駆動されない他の白血病系統と比べて、FLT3変異体MOLM13、MOLM14およびMV4,11細胞系に対する特異性を維持し(図13Fおよび表9)、細胞表面FLT3発現において喪失をもたらした(図2)。また、HBX19818と同様に、2種のアナログの5および7は、wtまたはヌルFLT3発現細胞よりも強く、変異体FLT3発現細胞をプライミングした(図3E~3Fおよび13G~13H)。まとめると、共免疫沈降、ヘアピンKDおよびSAR研究は、USP10が、FLT3-ITDを直接的に脱ユビキチン化することを強く裏付ける。
(実施例4)
別個のUSP10阻害剤化学変種は、HBX19818表現型を模倣する
HBX19818処置により観察されるFLT3分解および抗増殖効果が、USP10阻害の結果であることをさらに検証するために、別個のUSP10阻害剤化学変種を同定し、その作用物質が、HBX19818プロファイルを模倣するかどうかを調査しようと試みた。実施例1に記載されているスクリーニングにおいて、メンバーP22077および1247825-37-1(図14Aにおける構造)を含む、チオフェンに基づくDUB阻害剤シリーズ(Chauhanら(2012年)Cancer Cell 22巻:345~358頁;Weinstockら(2012年)ACS Med. Chem. Lett.3巻:789~792頁)が、USP10を阻害し(Ritortoら(2014年)Nat. Commun.5巻:4763頁)、FLT3変異体がん細胞系に対する、HBX19818と同じ活性パターンを呈することも発見された。基質としてジユビキチンを使用した、33種の組換えDUBのパネルに対する10μMの濃度でのin vitroにおける化合物のプロファイリングは、両方の化合物についての強力なUSP10阻害を明らかにした(図15A;それぞれ6μMおよび10μMのIC50でP22077がUSP10およびUSP7を阻害することを示す)。基質としてユビキチン-AMCを使用した、P22077および1247825-37-1についての生化学的IC50は、それぞれ15μMおよび36μMであった(図13B)。しかし、1247825-37-1が、P22077よりも特徴的にマルチターゲットの性質であるため、この化合物が、オフターゲット効果の研究対象となりうることを、生化学的アッセイが明らかにしたことに留意されたい(図15A)。P22077および1247825-37-1によるFLT3-ITD陽性Ba/F3細胞、MOLM13-luc+細胞およびMOLM14細胞の処置は、HBX19818と同様のFLT3およびベクリン-1分解をもたらし、22~24時間の処置後に細胞生存率を低下させた(図14B~14Gおよび15B~15D)。ベクリン-1は、FLT3と同様に、10μM P22077処置MOLM14細胞において強く減少し(図14F)、Ba/F3-FLT3-ITD細胞において部分的に分解された(図12F)。USP10阻害剤およびUSP7阻害剤としてのみ検証されたが、HBX19818およびP22077の両方が、USP10が化合物によって十分に阻害されるものを下回る濃度で観察される抗増殖効果に寄与する可能性がある、さらなるDUBおよび潜在的に非DUB標的に対して少なくともある程度の阻害活性を呈することに留意されたい。HBX19818およびP22077の両方が、wtまたはヌルFLT3発現細胞と対比して変異体FLT3発現細胞に向けての選択性によって、用量依存性様式で、FLT3-ITD陽性AML細胞系、MOLM13-luc+、MOLM14およびMV4,11の成長を抑制した(図1I、図14C、表3)。しかし、発癌性FLT3によって駆動されないいくつかのヒト造血細胞系が、P22077に対する相対的感受性を提示したが、これは、この作用物質のマルチターゲット性質に起因する可能性があり得ることに留意されたい。HBX19818と同様に、P22077は、約22時間の処置後に、1桁のマイクロモル濃度範囲内のEC50で、FLT3-ITDおよびFLT3-D835Y陽性Ba/F3細胞の増殖を阻害した(図14J)。加えて、HBX19818と同様に、活性確立に基づくプローブプロファイリング方法を使用して、P22077が、細胞においてUSP10に結合することが確認された(Altunら(2011年)Chem. Biol.18巻:1401~1412頁)。特に、P22077または1247825-37-1で処置した生細胞由来のライセートにおけるUSP10は、低マイクロモル濃度範囲内で、修飾されたHAタグ付きユビキチンプローブによる標識から遮断された(図14Hおよび15E)。特に、1247825-37-1は、USP10を同様に阻害し(図13Bおよび図15A)、ヌルFLT3発現TF-1細胞を上回る変異体FLT3発現細胞の増殖の選択的阻害、FLT3分解に随伴する標的化誘導と、FLT3シグナル伝達の下流エフェクターの分解なし、およびUSP10ターゲットエンゲージメントに関してHBX19818およびP22077を表現型模写する(図14B、14D、14J、15Cおよび15E)、P22077に由来する第二世代USP7阻害剤として見出された。
重要なことに、P22077、1247825-37-1およびHBX19818による変異体FLT3の分解は、AKTおよびERK1/ERK2を含むFLT3下流のシグナル伝達分子の発現が、薬物処置MOLM14細胞において変化しなかったという点において選択的であると観察された(図14I)。薬物処置MOLM13-luc+細胞およびMV4,11細胞において同様の結果が観察された。Ba/F3システムにおけるデータと符合して、HBX19818およびP22077は、wt FLT3発現白血病細胞系におけるFLT3タンパク質に影響がほとんどないか全くなかった(図16A~B)。総細胞チロシンリン酸化の阻害は、HBX19818処置変異体FLT3陽性細胞において実証され、これは、変異体FLT3の薬物誘導性分解と符合することに留意されたい(図16C)。
HBX19818と同様に、クロロキンは、P22077処置細胞におけるFLT3分解をレスキューし、qPCR解析は、P22077が、FLT3タンパク質分解をもたらす濃度でFLT3転写物レベルの低下をもたらさなかったことを確認した(図6A~6B)。最後に、HBX19818およびそのアナログと同様に、P22077は、TF-1(10.2μM)、HEL(6.9μM)、K052(5.7μM)およびK562(10.6μM)を含む、FLT3によって駆動されないいくつかの他の白血病細胞系と比べて、FLT3変異体MOLM13、MOLM14およびMV4,11細胞系(0.4、0.8、2.9μM)に対するより高い効力を呈した(表3)。P22077処置は、wt FLT3またはヌルFLT3発現細胞と比較して、アポトーシスのための変異体FLT3発現細胞のプライミング増加ももたらした(図3G)。HBX19818の効果を表現型模写する第2シリーズの化合物(P22077および1247825-37-1で表す)の同定は、USP10が、上記システムにおけるDUB安定化FLT3-ITDであるという概念をさらに裏付ける。
(実施例5)
USP10リード阻害剤は、p53を分解しない
USP10は、腫瘍抑制因子p53局在化および安定性の調節因子として報告された。wt p53を分解する薬物は、望ましくない場合があるため、薬理学的USP10阻害が、転写因子を発現するAML細胞系においてp53レベルに影響するかどうかを解明しようとした。HBX19818またはP22077によるMOLM13細胞およびMOLM14細胞の処置は、p53レベルの減少をもたらさず、実際にはそれどころか、p53レベルの中程度の増加が観察された(図7C~7Dおよび14G)。しかし、以前の報告と符合して、USP10のヘアピンKDは、FLT3-ITD陽性AML細胞系の両方におけるp53レベルの低下をもたらす(図7C~7D)。HBX19818およびP22077は両者共に、USP7阻害剤として本来報告された。USP7は、MDM2を安定化し、p53のユビキチン化および分解増加をもたらす。予測される通り、薬理学的USP7阻害は、MDM2レベルを減少させ、p53レベルを増加させた。上記阻害剤のUSP7阻害活性は、USP10によるp53分解に対するいかなる潜在的効果も相殺することができる。選択的USP10阻害剤のさらなる開発は、p53レベルに対するUSP7およびUSP10脱ユビキチン化活性の阻害の潜在的に反対の効果を明確にすることを助けるはずである。まとめると、上記の小分子および遺伝的KD結果は、FLT3-ITD変異体AMLについての新規標的としてのUSP10の強い検証を提供する。
(実施例6)
変異体FLT3の分解の促進は、キナーゼ阻害に対する耐性を克服する
さらなる研究を行って、ユビキチン媒介性分解が、薬物耐性無効化に関してFLT3キナーゼ阻害と比較して有利であることを確認した。FLT3キナーゼ阻害剤による、TKD点変異を発現するBa/F3-FLT3-ITD細胞の処置は、用量応答曲線における右方向へのシフトをもたらし(図17A~17C)、これらの阻害剤に対する以前に報告された差次的耐性が検証された(Smithら、2014年)。対照的に、HBX19818およびP22077処置は、TKD点変異を発現するBa/F3-FLT3-ITD細胞と対比した、Ba/F3-FLT3-ITD細胞に対して等効力であったが、wt FLT3を過剰発現するように操作されたBa/F3細胞に対する効力は低かった(図17D~17E)。重要なことに、HBX19818およびP22077は、Ba/F3-wt FLT3細胞におけるFLT3分解促進において無効であった濃度で、FLT3キナーゼ阻害剤耐性細胞におけるFLT3の分解を誘導した(図17F~17H、図2B、図1Hおよび図18A~18C)。全TKD点変異体は、構成的に活性化されたFLT3を発現することが確認された(図18D~18E)。加えて、HBX19818およびP22077は、親MOLM13細胞、およびミドスタウリンの存在下での長期の培養後に該薬物に対して耐性にされたMOLM13細胞に対する同様の効力を示した(Weisbergら、2011年)(図17I~17K)。ミドスタウリン耐性MOLM13細胞は、その耐性に寄与すると考えられる、FLT3タンパク質を高度に過剰発現すると特徴付けられた(Weisbergら、2011年)。
(実施例7)
HBX19818は、FLT3キナーゼ阻害剤と協同する
USP10阻害の治療ポテンシャルのさらなる評価として、相乗的に相互作用するDUB阻害剤およびFLT3キナーゼ阻害剤の能力を調査した。特に、Calcusynソフトウェア(Biosoft、Cambridge、UK)を使用して成長阻害曲線から組合せ指数(CI)が計算される、薬物効果中央値分析(median-drug effect analysis)を使用した。固定比率段階希釈の、HBX19818およびFLT3キナーゼ阻害剤、ミドスタウリンまたはクレノラニブによるBa/F3-FLT3-ITD、MOM13-luc+およびMOLM14細胞の二重処置は、単剤処置と比較して細胞成長減少をもたらした(図18F、19Bおよび19E)。組合せ指数(CI)解析は、キナーゼ阻害剤のいずれかによる処置および併用のHBX19818処置後に、MOLM13-luc+細胞およびBa/F3-FLT3-ITD細胞に関しては25%、50%、75%および90%成長阻害、MOLM14細胞に関しては50%、75%および90%成長阻害の相乗的抗増殖効果(1未満の値は相乗効果を示す)を示した(図18G、19Cおよび19F)。
(実施例8)
USP10の薬理学的阻害は、FLT3変異体PDXおよび原発性腫瘍試料の成長を阻害し、in vivoで抗白血病活性をもたらす
原発性患者腫瘍試料およびPDXに対する成長阻害効果を調べることにより、リードUSP10阻害剤シリーズの治療ポテンシャルをさらに調査しようとも試みた。HBX19818、選択されたHBX19818アナログ、P22077、1247825-37-1および化合物2を、2名のFLT3-ITD陽性AML患者および2種のFLT3変異体プリマグラフトから単離された原発性腫瘍細胞の成長を遮断する能力に関して評価した。調べた全USP10阻害剤は、患者試料およびプリマグラフトの両方に対して生存率の用量依存性低下を引き起こした(図20A~20Cおよび21)。HBX19818は、健常ドナー由来の2種のドナー末梢血単核細胞(PBMC)試料に対して効力が低かったが、P22077は、調べた2種のPBMC試料のうち1種に対して効力が低かった(図20C、表4~7、図21D)。選択的USP7阻害剤、化合物2は、これらの試料の生存率に効果がほとんどないか全くなかった(図20A~20C、21Aおよび21C)。健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を上回るFLT3-ITD陽性腫瘍細胞のためのUSP10阻害剤の治療ウィンドウを評価するために、HBX19818、P22077、1247825-37-1、およびHBX19818アナログのうちいくつかを、PBMCに対する活性に関して評価した。変異体FLT3発現AMLプリマグラフト細胞は、24~72時間の処置後に、上記阻害剤の全てに対して、2種のドナーPBMC試料よりも感受性であった(図20Cおよび21Dおよび表4~7)。イムノブロッティングによりFLT3レベルの解析を可能にするために、1種のプリマグラフトから十分な細胞を得た。20μMの濃度のHBX19818またはP22077のいずれかによる21時間の処置後にFLT3の痕跡はなく、FLT3レベルの強い低下が示された(図22A)。
これらの結果は、ex vivoでP22077誘導性FLT3分解を示すことが観察された、同じFLT3-ITD+、D835Y+AMLプリマグラフトを使用した、in vivoでのP22077の試験の着想をもたらした。Fanら(2013年)Cell Death Dis.4巻:e867頁に概要を述べるP22077のin vivo投与のための方法に従って、ビヒクルとしてDMSOをプリマグラフトマウス(n=3)に、P22077をプリマグラフトマウス(n=3)にIP 1×毎日、21日間投与した。確立された疾患がフローサイトメトリーによって観察されたら、処置を開始した。処置21日目にマウスを屠殺し、固定された脾臓および肝臓試料を疾患の存在に関して解析した。マウス脾臓および肝臓に明らかな疾患はほとんどから全く観察されなかったが、それぞれ各処置群由来のプールしたマウス骨髄細胞からのタンパク質ライセートのイムノブロット解析は、ビヒクル対照処置マウスにおいて強いFLT3シグナルを示し、これは、P22077処置マウスにおいて検出不能であり(図22B)、このことから、in vivoでの薬物誘導性FLT3分解が示唆された。21日の処置期間、15mg/kgのP22077が全般に良好に忍容され、体重に変化がほとんどなかった(ビヒクル処置およびP22077処置の両方で平均約2~3gの減少;マウスのうち、15%より多く体重減少したマウスはいなかった)ことに留意することが重要である。
加えて、非侵襲性in vivoバイオルミネセンスモデルを使用して、変異体FLT3陽性細胞の成長を抑制するP22077の能力を調べた。HBX19818およびP22077はまず、in vitroでBa/F3-FLT3-ITD-luc+細胞においてFLT3分解を誘導するその能力に関して検証した。Ba/F3-FLT3-ITD-luc+細胞が、成長抑制およびFLT3分解(図23A~23B)ならびにFLT3表面発現のDUB阻害剤誘導性喪失(図23E)に関して、非ルシフェラーゼ発現細胞と同様に、ミドスタウリンおよびP22077に応答することが見出された。小規模パイロット研究において、50mg/kg P22077 IP BIDで4日間処置した、Ba/F3-FLT3-ITD-luc+を有する雌NCRヌードマウス(n=4)は、ビヒクル対照マウス(n=4)から抽出した骨髄と比較して、CD35-PEコンジュゲート抗体を使用したフローサイトメトリーによって測定される通り、抽出した骨髄におけるFLT3発現のより低い百分率(約2倍)を有した(図24A)。骨髄試料のアリコートは、ビヒクルと比較して、P22077処置マウス骨髄試料においてルシフェラーゼ陽性シグナルの同様の約2倍低下を示した(図24A)。まとめると、これらの結果は、オンターゲット効果による腫瘍負荷の低下を示唆する。続いて、より大規模な3アーム(アーム当たりn=8)研究を、Ba/F3-FLT3-ITD-luc+を有する雌NCRヌードマウスへの50mg/kg P22077 IP BID、P22077 PO QDまたはビヒクルの投与により実行した。P22077処置は、in vivoバイオルミネセンス測定によって測定される通り、4~6日間の処置後に認められる、ビヒクル対照マウスと比較して白血病負荷の統計的に有意な減少により、in vivoで変異体FLT3-ITD発現細胞の殺滅をもたらすことが観察された(図24B~24C)。加えて、Ba/F3-FLT3-ITD-luc+細胞は、Ba/F3-FLT3-ITD細胞と同様に、ミドスタウリンおよびP22077に対する感受性についての対照として調べた。これらの対照は、両方の化合物に対して成長阻害に関して同様に応答することが観察された(図23C~23D)。毎日1回IPで投与された15mg/kg P22077および50mg/kg P22077は、9日間の処置後に、ビヒクル対照と比較して、マウスにおけるBa/F3-FLT3-ITD-luc+細胞の成長を目に見えて抑制した(図20Dおよび25)。重要なことに、最大で11日間処置したビヒクル処置マウスと薬物処置マウスとの間で観察される体重に有意差はなかった(図23F~23G)。全般に、マウス研究における重要臓器の毒性の証拠もなかった。
AML患者の5年生存率は、わずか20%である(De KouchkovskyおよびAbdul-Hay(2016年)Blood Cancer J、6巻、e441頁)。予後は、侵襲性および致死性の疾患に関連するためにFLT3-ITD変異を有するAML患者にとって特に不良である(Martelliら(2013年)Blood Rev、27巻、13~22頁)。FLT3キナーゼ阻害剤による処置は残念ながら、薬物耐性の出現により、短い持続期間のみの応答をもたらす(Weisbergら(2010年)Mol Cancer Ther、9巻、2468~77頁)。その上、FLT3キナーゼ阻害剤で処置した患者は、wt FLT3の阻害の結果として骨髄抑制などの副作用を経験する(Warkentinら(2014年)Elife、3巻)。これらの制約により、新規の標的化薬剤の開発は正当な理由がある。そのキナーゼ活性の阻害とは違って、その分解を促進することによる変異体FLT3の治療標的化は、現在のFLT3キナーゼ阻害剤に対する耐性の克服に潜在的に有益な新規手法であり、さらに、FLT3の酵素機能および足場機能の両方を同時に遮断することにより、キナーゼ阻害剤よりも効果的であると立証することができる。
DUB USP10は、FLT3-ITD変異体陽性AMLにおける腫瘍成長および生存の極めて重要なエフェクター酵素として本明細書に示されている。FLT3分解を促進し、in vitroおよびin vivoで抗増殖効果を付与するUSP10阻害剤の2種のケミカルクラス。目的の基質の安定化の原因であるDUBの同定を目標とする大部分の研究は、遺伝学に基づくスクリーニング、典型的には、個々のDUBのノックダウンまたは過剰発現、タンパク質レベルの測定から開始する。しかし、キナーゼ分野において高頻度で活用されるが、DUB分野において未だ報告されていない新規手法が、wt FLT3発現細胞よりも変異体FLT3発現細胞の成長を選択的に抑制する能力に関する小分子DUB阻害剤のスクリーニングによって本明細書で示されている。この新規戦略は、DUB阻害剤ライブラリーのアセンブリおよびDUBの大規模パネルにわたる阻害活性に関するライブラリーのアノテーションによって可能になった。例示的なスクリーニング由来の上位ヒットであるHBX19818は、上記化合物の以前に報告されていない標的として、USP10の阻害に起因する、変異体FLT3陽性細胞に対する際立ったかつ選択的な抗増殖効果をもたらした。本明細書で考察される小分子に集中した手法は、FLT3-ITDの調節に関する新規機構の同定のみならず、前臨床モデルにおける変異体FLT3駆動AMLにおけるUSP10の薬理学的阻害のトランスレーショナルポテンシャルの迅速な調査も助けた。複数のモデルにわたって生成されたデータは、USP10阻害が、臨床的に、変異体FLT3 AMLの標的化のための新規戦略を提供することができ、キナーゼ阻害剤耐性機構を克服するポテンシャルを有するという概念を強く支持する。
変異体FLT3の観察される選択的分解は、正常造血細胞にwt FLT3を温存することによりwt酵素および変異体酵素の両方を阻害する、FLT3キナーゼ阻害剤を上回る有意な臨床利点を提供することができる。FLT3受容体のリン酸化は、E3ユビキチンリガーゼCBLによるFLT3ユビキチン化および分解に必要であることが示された(Lavagna-Se’venierら(1998年)Leukemia、12巻、301~10頁;Sarginら(2007年)Blood 110巻、1004~12頁)。以前の報告(Griffithら、2004年)と符合して、FLT3リガンドの非存在下で、変異体FLT3の、wt FLT3よりも有意なリン酸化が観察され、最高レベルの自己リン酸化が、FLT3-ITD変異およびTKD変異の両方を発現する細胞において観察された。特に、HBX19818処置後のFLT3-ITDの半減期は、wt FLT3よりも短い。データは、自己リン酸化されたFLT3-ITDが、wt FLT3と比較して、プロテアソーム媒介性経路およびリソソーム媒介性経路によりより急速な分解を受けることを示す他の報告と符合しており、分解は、E3ユビキチンリガーゼc-Cblおよびc-Cbl-bによって容易となった(OSHIKAWA G.ら(2011年)J Biol Chem、286巻、30263~73頁)。全体的に見て、データは、変異体FLT3が、wt FLT3よりもユビキチン化の傾向がある状況で存在することを示し、これは、USP10阻害による、wt FLT3と比較した変異体FLT3の観察される選択的分解を説明すると考えられる。
まとめると、図26に要約されている結果など、本明細書に記載されている結果は、USP10が、AML変異体ドライバータンパク質のその脱ユビキチン化および安定化に起因する、FLT3-ITD変異体陽性AMLにおける腫瘍成長および生存の極めて重要なエフェクター酵素であることを実証する。さらに、AML細胞系における変異体FLT3の分解を促進し、FLT3変異体陽性AML細胞系および原発性患者試料における抗増殖効果を付与する、USP10阻害剤の2種のケミカルクラスが同定された。結果は、USP10の治療標的化が、キナーゼ阻害剤耐性FLT3変異体を含む、FLT3-ITD陽性AMLに強力な抑制効果を有し、この疾患のための代替処置戦略としてのさらなる調査を保証することをさらに実証する。
参照による組込み
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが、具体的かつ個別に示された場合と同様に、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。利益相反の場合は、本明細書における任意の定義を含む本出願により処理する。
また、ワールドワイドウェブ上のThe Institute for Genomic Research(TIGR)および/またはワールドワイドウェブ上のthe National Center for Biotechnology Information(NCBI)により維持されているデータベースなど、公表されているデータベースへの登録と対応する受託番号を参照する、任意のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も、参照によりそれらの全体において組み込まれる。
同等物
当業者は、慣用的な実験だけを使用して、本明細書で記載される、本発明の具体的な実施形態に対する多くの同等物を認識するか、またはこれらを確認することが可能であろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることを意図する。