以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るポータブル電源装置1及び各機器100、110を示す図である。ポータブル電源装置1は、例えば各種建設作業現場、土木工事現場、工場、各種作業場等のように電動の機器100が使用される現場で好適に用いられる。ポータブル電源装置1は、作業者が1人で持って運ぶことができるように小型かつ軽量化されていて、可搬性が良好な電源とされている。
ポータブル電源装置1には、機器100が接続可能である。機器100は電力の供給によって動作する機器であり、特に限定されるものではないが、例えば電動ドリル、切断機、バキュームクリーナ、照明装置等を挙げることができる。機器100には、整流子モータが搭載されていても構わない。
図1では機器100を1つだけ示しているが、複数の機器100をポータブル電源装置1に接続することもできる。ポータブル電源装置1には蓄電池40(図2に示す)が設けられており、商用電源200や発電機から電力の供給を受けて蓄電池40に電力を蓄えることができる。ポータブル電源装置1は、接続された機器100に対しては、商用電源200や発電機からの電力と、蓄電池の電力との両方を利用し、商用電源200や発電機の許容可能な消費電流よりも大きな交流電流を流すことができるように構成されている。
商用電源200は、交流電流を供給する交流電源である。この商用電源200には、複数のコンセント201が設けられている。交流電源としては、商用電源200の他に、例えば発電機を用いることもでき、この発電機も複数のコンセントを有している。以下の説明では、交流電源が商用電源200である場合について述べるが、商用電源200を発電機に置き換えることが可能なのはもちろんである。
以下、ポータブル電源装置1の構成について具体的に説明する。図1に示すように、ポータブル電源装置1は、筐体2と、筐体2から延びる電源コード3に設けられたプラグ4とを備えている。プラグ4は、商用電源200(図2に示す)に設けられたコンセント201に差込可能に構成されており、コンセント201に差し込まれた状態で商用電源200に接続される。電源コード3及びプラグ4により、電源接続部5が構成されている。
商用電源200が有する複数のコンセント201のうち、1つのコンセント201にポータブル電源装置1のプラグ4を差し込むことができ、他のコンセント201に、上記機器100とは別の機器110が有するプラグ114を差し込むことができる。別の機器110も電動の機器であり、上記機器100と同じ構造の機器であってもよいし、別の構造の機器であってもよい。別の機器110には、内部回路115(図2に示す)が設けられている。図示しないが、商用電源200のコンセント201の数は3以上であってもよく、この場合、複数の別の機器110をそれぞれコンセント201に接続することもできる。コンセント201へは、例えば延長コードを介して別の機器110を接続することもできる。
図2に示すように、商用電源200とコンセント201との間には過電流遮断器202が設けられている。過電流遮断器202は、コンセント201を介して流れる電流値が予め設定された電流値になると電流を遮断する器具であり、一般的に用いられている器具である。上記電流値は、通常、15Aまたは20Aに設定されていることが多い。例えば15Aに設定されている場合、コンセント201の仕様を125V 15Aとすることができ、商用電源200の許容可能な消費電流は15Aになる。
図1に示すように、筐体2のフロントパネル2aには、電源スイッチ20(図2には示さず)、突入電流抑制スイッチ21、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22、電流最大値設定ボリューム23及び出力電圧調整ボリューム24が設けられている。また、フロントパネル2aには、入力電源異常ランプ25及び充放電異常ランプ26が設けられるとともに、機器100が接続されるコンセント27も設けられている。図1、図2ではコンセント27を1つだけ示しているが、コンセント27は複数設けられていてもよい。
図2に示すように、ポータブル電源装置1は、電源接続部5から入力される単相交流電流を直流電流に変換する全波整流回路32を備えている。また、ポータブル電源装置1は、マイコン制御回路30を備えている。マイコン制御回路30は、中央演算処理装置(CPU)及び記憶装置(RAM、ROM等)を備えており、所定のプログラムに従って各種入力信号を処理した後、各種制御信号を出力するとともに、各部を制御する。具体的には、マイコン制御回路30は、制御部30aの他に、後述する推定部30b、充放電状況検出部30cを構成するものである。制御部30a、推定部30b、充放電状況検出部30cは、例えば電気回路等のハードウェアで構成することや、プログラムを実行することによる信号処理で実現することができる。
このマイコン制御回路30に、電源スイッチ20(図2には示さず)、突入電流抑制スイッチ21、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22、電流最大値設定ボリューム23、出力電圧調整ボリューム24、入力電源異常ランプ25及び充放電異常ランプ26が接続されている。マイコン制御回路30は、電源スイッチ20、突入電流抑制スイッチ21、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22の操作状態を検出するとともに、電流最大値設定ボリューム23及び出力電圧調整ボリューム24の設定状態を検出する。また、マイコン制御回路30は、入力電源異常ランプ25及び充放電異常ランプ26の点灯制御も行う。これらについて後述する。
ポータブル電源装置1は、電源接続部5に入力される電圧を検出する電圧検出回路31を備えている。電圧検出回路31の回路構成は従来から周知の回路構成とすることができる。電圧検出回路31は、少なくとも全波整流回路32から出力される電流の遮断時において電源接続部5に入力される電圧を検出することができるものである。尚、電圧検出回路31は、全波整流回路32から電流が出力される間に電源接続部5に入力される電圧を検出してもよい。
電圧検出回路31により検出された電圧は、マイコン制御回路30に設けられている推定部30bに入力される。推定部30bは、コンセント201に接続された他の機器110の使用状況を、電圧検出回路31により検出された電圧に基づいて推定する部分である。他の機器110の使用状況とは、別の機器110に電流が流れているか否か、及び別の機器110に電流が流れている場合にその消費電流がどの程度であるかである。
他の機器110の使用状況を推定する際に使用する電圧の検出値は、全波整流回路32から出力される電流の遮断時に電圧検出回路31が検出した値である。すなわち、商用電源200に、ポータブル電源装置1とは別の電力を消費する機器110が接続されている場合、別の機器110が動作していて電流が当該別の機器110にも流れていることがある。別の機器110に電流が流れている場合は、流れていないときに比べて電源接続部5に入力される電圧が低下し、その電圧は、別の機器110に流れている電流が大きければ大きいほど低くなる。つまり、電源接続部5に入力される電圧を検出することで、別の機器110に電流が流れているか否かを推定できるとともに、別の機器110の消費電流を推定できる。
ここで、全波整流回路32から電流が出力されていると、全波整流回路32から出力される電流の大きさによって電圧検出回路31で検出される電圧が変化する。例えば全波整流回路32から出力される電流が大きければ大きいほど電圧検出回路31で検出される電圧が低くなる。従って、全波整流回路32から電流が出力されている時に検出された電圧は、別の機器110の消費電流に対応した電圧になっていないことが考えられる。
そこで、本実施形態の推定部30bは、上述したように、全波整流回路32から出力される電流の遮断時に電圧検出回路31が検出した電圧に基づいて、他の機器110の使用状況を推定する。これにより、ポータブル電源装置1で消費している分が電圧検出回路31の検出電圧に影響しなくなるので、他の機器110の使用状況を精度良く推定できる。
ポータブル電源装置1は、定電流定電圧回路33を備えている。定電流定電圧回路33は、蓄電池40及びインバータ回路50に接続されており、全波整流回路32から出力される電流を蓄電池40に供給する充電回路であるとともに、全波整流回路32から出力される電流を後述するインバータ回路50に供給する回路でもある。定電流定電圧回路33は、マイコン制御回路30の制御部30aによって制御される。蓄電池40の充電方式は、特に限定されるものではないが、一般的な定電流定電圧充電方式を用いることができる。また、蓄電池40の種類は特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン電池等を挙げることができる。
定電流定電圧回路33と蓄電池40との間には、蓄電池電流センサ41と、充電ON/OFFスイッチ42とが設けられている。蓄電池電流センサ41は、定電流定電圧回路33から蓄電池40に供給される電流値を検出するセンサである。蓄電池電流センサ41はマイコン制御回路30に接続されており、蓄電池電流センサ41が検出した電流値は、マイコン制御回路30の充放電状況検出部30cに入力される。充放電状況検出部30cは、蓄電池電流センサ41から入力された電流値と蓄電池40の電圧値に基づいて蓄電池40が充電完了状態であるか否かを判定することができる。例えば、電圧値が一定の状態が所定時間以上継続した場合に蓄電池40が充電完了状態であると判定できる。また、マイコン制御回路30に蓄電池40が接続されており、蓄電池40の電圧をマイコン制御回路30が検出できる。マイコン制御回路30は、蓄電池40の電圧に基づいて当該蓄電池40の残量を推定することができる。
充電ON/OFFスイッチ42は、蓄電池電流センサ41と蓄電池40との間に設けられており、マイコン制御回路30によって制御される。マイコン制御回路30は、蓄電池40が充電完了状態でない場合には、充電ON/OFFスイッチ42を充電可能状態に切り替える。これにより、定電流定電圧回路33から蓄電池40に電流が供給される。後述するが、蓄電池40からの放電が必要な場合には、マイコン制御回路30が出力(・放電)ON/OFFスイッチ52を放電可能状態に切り替える。これにより、蓄電池40の放電が可能になる。尚、蓄電池40の蓄電量は少ないときには、出力(・放電)ON/OFFスイッチ52を放電可能状態に切り替えることなく、充電可能状態にしておくことができる。
ポータブル電源装置1は、インバータ回路50を備えている。本実施形態のインバータ回路50は、図示しないが4つのスイッチング素子及びダイオード有する単相インバータ回路であり、蓄電池40及び全波整流回路32の両方から出力される電流が同時に入力可能に構成されている。すなわち、定電流定電圧回路33の出力側はインバータ回路50の入力側に対して接続線51により接続されており、この接続線51には、蓄電池40も接続されている。接続線51における蓄電池40の接続部分とインバータ回路50の入力側との間には、出力(・放電)ON/OFFスイッチ52が設けられている。この出力(・放電)ON/OFFスイッチ52はマイコン制御回路30によって制御される。出力(・放電)ON/OFFスイッチ52が閉じると、インバータ回路50の入力側へ電流を供給可能な状態になる。出力(・放電)ON/OFFスイッチ52が開くと、蓄電池40及び全波整流回路32の両方からインバータ回路50の入力側へ流れる電流を遮断する。
インバータ回路50は、マイコン制御回路30の制御部30aに接続されている。制御部30aから出力される駆動信号がインバータ回路50に入力される。インバータ回路50は、駆動信号に応じて動作する。制御部30aは、蓄電池40及び全波整流回路32の両方からインバータ回路50に入力された電流を、商用電源200の許容可能な消費電流よりも大きな交流電流に変換してインバータ回路50から出力するように、インバータ回路50に対して駆動信号を出力する。例えば、商用電源200の許容可能な消費電流が15Aであったとき、インバータ回路50から30A~40Aの電流が出力されるように、制御部30aがインバータ回路50を制御する。30A~40Aは一例であり、定格出力電流を上記範囲にすることができ、最大出力電流はその2倍程度に設定することができる。
また、インバータ回路50から出力される電圧は、出力電圧調整ボリューム24によって変更できる。出力電圧調整ボリューム24をユーザが操作して電圧を設定すると、制御部30aは出力電圧調整ボリューム24で設定された電圧となるように駆動信号を生成してインバータ回路50に出力する。出力電圧調整ボリューム24によって変更可能な電圧範囲は、例えば100~125Vの範囲とすることができるが、これに限られるものではない。
インバータ回路50の出力側にコンセント27が接続されている。コンセント27は、例えば15Aのものと、30Aのものとを設けることができる。インバータ回路50とコンセント27との間にはインバータ電流センサ(インバータ電流検出部)53が設けられている。インバータ電流センサ53は、インバータ回路50の出力側の電流を検出するセンサであり、マイコン制御回路30に接続されている。
突入電流抑制スイッチ21は、コンセント27に接続されている機器100に突入電流が流れるのを抑制したいときにONにし、それ以外のときにはOFFにするスイッチであり、機器100に応じてユーザが操作する。制御部30aは、突入電流抑制スイッチ21がONにされているときには、インバータ電流センサ53により検出された電流値が所定の電流値を超えた場合に、インバータ回路50の出力が所定の電流値以下となるように当該インバータ回路50の出力電圧を低下させる制御を行うが、制御方法はこれに限らず、インバータ回路50の出力電流が流れていない時(無負荷時)は予め設定した低い電圧を出力し、電流が流れると除々に電圧を上げる方法もあり、この方法によっても突入電流を抑制できる。
例えば、コンセント27に接続される機器100が整流子モータを搭載している場合には、モータ起動時に突入電流が流れる。この突入電流は、一般的に商用電源200の許容可能な消費電流を大幅に超える電流である。突入電流が流れる時、商用電源200の許容可能な消費電流は例えば15Aに制限されているため、不足分は蓄電池40から出力される電力で補われることになる。
本実施形態では、モータ起動時の突入電流のような極めて大きな電流値が検出されると、所定の電流値以下となるようにインバータ回路50の出力電圧を自動的に低下させることができる。これにより、蓄電池40の無駄な消費を抑えて使用可能時間を延長できる。上記所定の電流値は、整流子モータが搭載された一般的な機器100の当該モータ起動時の突入電流未満としておけばよく、例えば上記定格出力電流の数倍に設定することができる。突入電流は通常流れる電流に比べて極めて急峻に上昇するので、突入電流であるか否かは、電流値だけでなく、その電流値の変化度合いも考慮して判定することができる。尚、突入電流抑制スイッチ21がOFFにされていれば、突入電流のように急峻に立ち上がる大きな電流が流れてもインバータ回路50の出力電圧を自動的に低下させる制御が行わない。
また、例えば、ポータブル電源装置1に接続されている機器100の動作によっては、蓄電池40の充放電が所定の短い期間に頻繁に行われることが考えられる。蓄電池40の充放電が頻繁に行われると、蓄電池40が発熱して充放電に適さない温度状態になるおそれがある。本実施形態では、蓄電池40が充放電に適さない温度状態にあるか否かを蓄電池40の充放電状況に基づいて判断することができる。
すなわち、充放電状況検出部30cは、蓄電池40の所定期間における充放電状況を検出する部分である。例えば、現時点から10分~30分程度遡った時間(所定期間)における蓄電池40の充放電頻度を取得し、その充放電頻度を充放電状況とすることができる。充放電頻度は、蓄電池電流センサ41の電流方向切り替わり頻度を取得することで算出できる。また、充放電状況を検出する際、充放電電流の大きさ、充電時間や放電時間を考慮することもできる。また、充放電状況検出部30cは、蓄電池電流センサ41の電流方向切り替わり頻度に基づいて、蓄電池40の所定期間における充放電サイクル数を算出することもできる。尚、蓄電池40の温度状態を判断する時、雰囲気温度を考慮することもできる。
蓄電池40の温度と充放電の頻度とは関連しているので、充放電状況検出部30cは、例えば蓄電池40の温度状態を検出するセンサで構成されていてもよい。蓄電池40の温度状態を検出することで、蓄電池40が充放電に適さない温度状態にあるか否かを直接的に判断できる。
充放電異常ランプ26は、蓄電池40が充放電に適さない温度状態にあると判断できる場合にマイコン制御回路30によって点灯させ、蓄電池40が充放電に適した温度状態であると判断できる場合にマイコン制御回路30によって消灯させる。
本実施形態では、全波整流回路32の入力側消費電流の最大値を変更可能に構成されている。全波整流回路32の入力側消費電流の最大値は、ポータブル電源装置1が自動で変更する場合と、ユーザが手動で変更する場合とがあり、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22によって一方を選択できる。電流最大値の自動/手動切替スイッチ22を「自動」にすると、ポータブル電源装置1が自動で入力側消費電流の最大値を変更する自動変更モードになり、一方、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22を「手動」にすると、ユーザが手動で入力側消費電流の最大値を変更する手動変更モードになる。
まず、自動変更モードについて説明する。自動変更モードでは、制御部30aが、推定部30bで推定された他の機器110の使用状況に応じて、全波整流回路32の入力側消費電流の大きさを変更する。具体的には、電圧検出回路31で検出された電圧が高ければ高いほど、定電流定電圧回路33からの出力電流の大きさを大きくする一方、電圧検出回路31で検出された電圧が低ければ低いほど、定電流定電圧回路33からの出力電流の大きさを低くする。一例を挙げると、商用電源200の電圧が100Vの時、電圧検出回路31で検出された電圧が100Vであれば、他の機器110の消費電流が殆ど無い状況であると推定できるので、全波整流回路32の入力側に流れる電流を15Aとするよう定電流定電圧回路33を制御する。電圧検出回路31で検出された電圧が98Vであれば、他の機器110で消費電流が流れていると推定できるので、全波整流回路32の入力側に流れる電流を12Aとするよう定電流定電圧回路33を制御する。このように、電圧検出回路31で検出された電圧を複数段階に分け、各段階で、全波整流回路32の入力側に流れる電流値を予め設定しておく。この情報はマイコン制御回路30の記憶装置(図示せず)に予め記憶させておくことができる。
全波整流回路32の入力側に流れる電流の最大値が例えば12A程度であったとしても、インバータ回路50では蓄電池40から入力される電流を加えて出力できるので、例えばインバータ回路50の出力が30A以上の電流値を確保することができる。
次に、手動変更モードについて説明する。手動変更モードでは、電流最大値設定ボリューム23を使用する。電流最大値設定ボリューム23をユーザが操作することで、定電流定電圧回路33からの出力電流の大きさを変更できる。ユーザは、他の機器110が接続されているか否か、及び他の機器110が接続されている場合、他の機器110の消費電流を把握することができる。商用電源200の仕様が15Aであったと仮定した時、他の機器110が接続されていなければ、全波整流回路32の入力側に流れる電流値を15Aにすればよく、また、他の機器110の消費電流が5Aであった場合、全波整流回路32の入力側に流れる電流値を10Aにすればよい。
入力電源異常ランプ25は、電圧検出回路31で検出された電圧が所定電圧以下の場合にマイコン制御回路30によって点灯させ、それ以外の場合に消灯させる。所定電圧とは、インバータ回路50からの出力を安定させることができない程度の電圧とすることができ、例えば商用電源200の電圧が100Vとしたとき、90V程度に設定することができる。
(マイコン制御回路のフローチャート)
次に、図3に示すマイコン制御回路30のフローチャートに基づいて制御の流れを説明する。このフローチャートは、電源スイッチ20がONにされて電源が投入されるとスタートする。電源スイッチ20がONであるかOFFであるかはマイコン制御回路30によって判定する。電源スイッチ20がONにされるとステップS1に進み、マイコン制御回路30が立ち上げ処理に相当する初期設定を実行し、起動動作に係る各種パラメータの設定等を行う。
初期設定が終わるとステップS2に進み、マイコン制御回路30が充電ON/OFFスイッチ42及び出力(・放電)ON/OFFスイッチ52をONにする。充電ON/OFFスイッチ42及び出力(・放電)ON/OFFスイッチ52をONにした後、ステップS3に進み、制御部30aがインバータ回路50に対して駆動信号を出力し、インバータ回路50の所定の出力電圧制御を実行する。このとき、制御部30aは出力電圧調整ボリューム24の設定値を反映した出力電圧となるように、インバータ回路50を制御する。
その後、ステップS4に進み、電源接続部5に入力される電圧(入力電圧)が60V以上であるか否かをマイコン制御回路30が判定する。ステップS4の判定は、電圧検出回路31で検出された電圧に基づいて行うことができる。閾値の「60V」は例であり、例えば商用電源200の電圧が100Vの場合には、その50%~70%の範囲で設定できる。ステップS4の判定閾値を第1の閾値と呼ぶことができ、マイコン制御回路30に予め記憶させておくことができる。
ステップS4でNOと判定されて入力電圧が60V未満である場合にはステップS5に進む。ステップS5では、マイコン制御回路30が定電流定電圧回路33の制御動作を停止させる。その後、ステップS14に進む。ステップS14は後述する。
一方、ステップS4でYESと判定されてステップS6に進むと、マイコン制御回路30は、電流最大値の自動/手動切替スイッチ22が自動側になっているか否か判定する。ステップS6でNOと判定されて電流最大値の自動/手動切替スイッチ22が自動側になっていない、即ちインバータ回路50の入力側消費電流の最大値をユーザが変更する手動モードである場合にはステップS8に進み、手動モード処理を実行する。手動モード処理では、マイコン制御回路30が電流最大値設定ボリューム23の設定値を読み込み、その設定値に応じて、全波整流回路32の入力側に流れる電流の大きさを変更するよう定電流定電圧回路33を制御する。これにより、商用電源200に、ポータブル電源装置1とは別の機器110が接続されている場合に、当該別の機器110への電流を確保できる。ステップS8を経た後、後述するステップS14に進む。
ステップS6でYESと判定されて電流最大値の自動/手動切替スイッチ22が自動側になっている、即ち全波整流回路32の入力側消費電流の最大値を自動変更する自動モードである場合にはステップS7に進む。ステップS7では、マイコン制御回路30が、所定の時間毎に定電流定電圧回路33の出力を遮断し、電源接続部5に入力される電圧を確認する。所定の時間は、例えば数秒から数十秒程度の間で設定することができる。定電流定電圧回路33の出力が遮断されると、全波整流回路32から出力される電流が遮断される。この遮断状態にある時に電圧検出回路31が検出した入力電圧をマイコン制御回路30が一時的に記憶するので、ポータブル電源装置1で消費している分が電圧検出回路31の検出電圧に影響しなくなる。定電流定電圧回路33の出力を遮断している時間は極めて短く設定されているので、機器100に対して殆ど影響を与えることがない。尚、定電流定電圧回路33の出力を遮断している間、インバータ回路50への電流は、蓄電池40からの電流によって補うことができる。
ステップS7の処理を経た後、ステップS9に進む。ステップS9では、ステップS7で一時的に記憶している入力電圧が90V以上であるか否かをマイコン制御回路30が判定する。ステップS9の判定閾値の「90V」は例であり、例えば商用電源200の電圧が100Vの場合には、その85%~90%の範囲で設定できる。ステップS9の判定閾値を第2の閾値と呼ぶことができ、この第2の閾値は、上記ステップS4の第1の閾値よりも大きな値であるが、商用電源200の電圧よりも低い。第2の閾値もマイコン制御回路30に予め記憶させておくことができる。
ステップS9でNOと判定されて入力電圧が90V未満である場合には、商用電源200の電圧が異常に低いので、ステップS10に進み、マイコン制御回路30が入力電源異常ランプ25を点灯させる。ステップS10の後、ステップS11に進み、マイコン制御回路30が充電ON/OFFスイッチ42及び出力(・放電)ON/OFFスイッチ52をOFFにする。その後、ステップS12に進み、制御部30aがインバータ回路50及び定電流定電圧回路33の制御動作を停止させて、本フローがストップする。電源スイッチ20をOFFにした後、再度ONにすると、スタートから繰り返される。
ステップS9でYESと判定されて入力電圧が90V以上である場合には、商用電源200の電圧に異常が無いので、ステップS13に進む。ステップS13では、自動モード処理を実行する。自動モード処理では、まず、ステップS7で確認した入力電圧に応じた消費電流の最大値を自動で設定する。そして、設定した最大値以下となるように、制御部30aが定電流定電圧回路33の出力を制御する。これにより、商用電源200に、ポータブル電源装置1とは別の機器110が接続されている場合に、当該別の機器110への電流を確保できる。この自動モード処理は、上述した推定部30bが推定した他の機器110の使用状況に基づいて実行できる。
ステップS14では、マイコン制御回路30が蓄電池電流センサ41により充放電時の電流値を確認する。その後、ステップS15に進み、蓄電池40の所定期間における充放電状況として、所定の充放電電流値以上で充放電サイクルが所定回数以下であるか否かを判定する。ステップS14で充放電電流値も判定条件に加えているのは、蓄電池40の温度状態が充放電電流値に大きく依存するからである。例えば充放電電流値が低ければ、充放電サイクルが所定回数を超えていても蓄電池40の温度状態が高温になっているとは考えにくく、そのような場合には、充放電サイクルが所定回数を超えていたとしても、蓄電池40が充放電可能な状態にあると推定できる。一方、充放電電流値が所定以上であれば、充放電サイクルが1サイクルであっても蓄電池40の温度はある程度大きく上昇し、そのような充放電サイクルが所定期間内に所定回数を超えると、蓄電池40の温度状態が充放電に適さない温度状態になっていると推定できる。
ステップS15でNOと判定されて蓄電池40の充放電電流値が所定以上、かつ充放電サイクルが所定回数を超える場合には蓄電池40の温度状態が充放電に適さない温度状態にある可能性が高い。尚、図2のステップS15では、判定条件として充放電サイクルのみ記載しているが、これは図面のスペースの関係でそうしているのであり、実際には、上述したように、充放電サイクルだけでなく、充放電電流値も判定条件に加えている。
ステップS15でNOと判定された場合、ステップS16に進んでマイコン制御回路30が充放電異常ランプ26を点灯させる。その後、上述したステップS11、S12に進み、マイコン制御回路30がインバータ回路50及び定電流定電圧回路33の制御動作を停止させる。つまり、制御部30aは、充放電状況検出部30cで検出された蓄電池40の充放電状況が所定の充放電電流値以上、かつ所定の充放電頻度を超えていると判定される場合には、定電流定電圧回路33による充電を禁止できるとともに、インバータ回路50からの電流の出力を禁止して蓄電池40の放電を禁止することができる。
ステップS15でYESと判定されて蓄電池40の充放電電流値が所定未満、または充放電サイクルが所定回数以下である場合には蓄電池40の温度状態が充放電に適した温度状態にある可能性が高い。この場合、ステップS17に進んで突入電流抑制スイッチ21がONになっているか否かを判定する。ステップS17でNOと判定されて突入電流抑制スイッチ21がOFFになっている場合には、ステップS4に戻る。ステップS17でYESと判定されて突入電流抑制スイッチ21がONになっている場合にはステップS18に進む。ステップS18では、マイコン制御回路30がインバータ電流センサ53の出力値を継続して確認する。インバータ電流センサ53の出力値を継続して確認することで、負荷電流の立ち上がり状況を確認できる。
その後、ステップS19に進み、インバータ電流センサ53の出力値の立ち上がりが急峻でかつその値が通常流れる電流に比べて大幅に高い場合には、マイコン制御回路30は突入電流が流れたと判断して、インバータ回路50の出力側が所定の電流値以下となるように当該インバータ回路50の出力電圧を低下させる。突入電流が流れたと判断されない場合には、マイコン制御回路30は所定の出力電圧制御とする。その後、ステップS4に戻る。電源スイッチ20がOFFにされると、このフローが中断される。
尚、ポータブル電源装置1は、商用電源200に接続することなく、一般的な充放電可能な電源装置として使用できる。この場合、蓄電池40で放電される電流だけがインバータ回路50から出力されることになる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、商用電源200から入力された電流が全波整流回路32によって直流に変換された後、定電流定電圧回路33を経て蓄電池40に供給されるので、蓄電池40を充電できる。インバータ回路50には、全波整流回路32によって直流に変換された直流電流と、蓄電池40から放電された直流電流とが同時に入力されるので、インバータ回路50は入力された直流電流を商用電源200の許容可能な消費電流よりも大きな交流電流に変換して出力することができる。これにより、電源配線及び高容量の過電流遮断器設置の追加工事を行うことなく、消費電流が例えば15Aを超える機器や、合計で15Aを超える複数の機器の同時使用が可能になる。
また、商用電源200にポータブル電源装置1とは別の機器110が接続されている場合に、ポータブル電源装置1で消費する電流の最大値を、別の機器110の消費電流を考慮した値に設定することができるので、別の機器110の動作に影響を与えずに済む。この最大値は、別の機器110の消費電流等を把握したユーザによって設定することができる他、ポータブル電源装置1が自動的に判断して設定することができる。
また、蓄電池40の充放電電流値及び充放電頻度に基づいて蓄電池40の温度状態を推定し、その推定結果を蓄電池40の充放電制御に反映させることができるので、蓄電池40の異常過熱を防止できるとともに、蓄電池40の寿命を延ばすことができる。
さらに、機器100への突入電流をポータブル電源装置1によって抑制できるので、蓄電池40が無駄に消費されないようにすることができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。