本発明において、「バイオマスポリエステル」および「バイオマスポリエステルを含む延伸プラスチックフィルム」とは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いたものであって、原料の全てがバイオマス由来のものであることを意味するものではない。
<包装材料>
本実施の形態による紙容器用包装材料10について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による紙容器用包装材料10の模式断面図の例を図1に示す。
図1に示した紙容器用包装材料10は、外側から内側へ順に、少なくとも、外側熱可塑性樹脂層11、紙基材層12、接着樹脂層13、蒸着フィルム14、接着剤層15、及び、内側熱可塑性樹脂層16、を備える。図1に示す紙容器用包装材料10を備える液体紙容器においては、内側熱可塑性樹脂層16が、液体紙容器の内側の面(以下、内面とも称する)10xを構成する。また、外側熱可塑性樹脂層11が、液体紙容器の外側の面(以下、外面とも称する)10yを構成する。「内側」とは、紙容器用包装材料10が液体紙容器を構成する場合に、液体紙容器の内部寄りに位置する側であり、「外側」とは、液体紙容器の外部寄りに位置する側である。
紙容器用包装材料10は、上記の層以外に、印刷層等をさらに備えていてもよい。例えば、外側熱可塑性樹脂層11に印刷層が設けられていてもよい。
以下、紙容器用包装材料10を構成するフィルム及び層について説明する。
[熱可塑性樹脂層]
外側熱可塑性樹脂層11及び内側熱可塑性樹脂層16は、熱によって溶融し相互に融着し得る熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を挙げることができる。好ましくは、低密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体が用いられる。
外側熱可塑性樹脂層11及び内側熱可塑性樹脂層16の熱可塑性樹脂は、バイオマス由来の材料を含んでいてもよいし、化石燃料由来の材料を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂層がバイオマス由来の材料を含む場合、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含んでいてもよい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。原料モノマー中のバイオマス由来のエチレンの含有量は、100質量%である必要は無く、例えば、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上である。原料モノマーには、化石燃料由来のエチレンが含まれていてもよく、ブチレン、ヘキセン、およびオクテン等のα-オレフィンのモノマーが含まれていてもよい。このような場合であっても、得られた重合体をバイオマスポリエチレンと呼ぶ。α-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンは、低圧重合法(チーグラー・ナッタ触媒を用いた気相重合法またはメタロセン触媒を用いた液相重合法)によりエチレンおよび少量のα―オレフィンを重合して得られるものでる。また、低密度ポリエチレンは、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるものでる。直鎖状低密度ポリエチレンは、分子鎖に短分子鎖を多く有し、シール性能に優れるものである。
直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンは、0.89g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.90g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。なお、直鎖状低密度ポリエチレンのMFRは、低密度ポリエチレンのMFRよりも低くなることがある。直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの密度が0.89g/cm3未満だと、熱可塑性樹脂層11,16の滑り性が低下する。また、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの密度が0.93g/cm3を超えると、熱可塑性樹脂層11,16のシール性が悪化する。
直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンは、0.1g/10分以上10g/10分以下、好ましくは0.2g/10分以上9g/10分以下、より好ましくは1g/10分以上8.5g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有するものである。なお、直鎖状低密度ポリエチレンのMFRは、低密度ポリエチレンのMFRよりも低くなることがある。メルトフローレートとは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのMFRが0.1g/10分未満の場合、成形加工時の押出負荷がかかる。また、直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのMFRが10g/10分を超える場合、樹脂が流れ過ぎるため、密封性の問題が生じ、好ましくない。
バイオマスポリエチレンとしては、ブラスケム社製のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL118、密度:0.916g/cm3、MFR:1.0g/10分、バイオマス度87%)、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、等が挙げられる。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンには、例えば、原料としてサトウキビを用いたものが生産されている。このようなサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレンの分散度は、4以上7以下とすることができる。一方、化石由来の直鎖状低密度ポリエチレンの分散度は、通常、1.5以上3.5以下である。
外側熱可塑性樹脂層11は、好ましくは、化石燃料由来又はバイオマス由来の上述の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレンの1種ないし2種以上を含む単層又は多層の層である。外側熱可塑性樹脂層11は、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを押出機等を用いて溶融押出して、紙基材層12上に溶融押出積層することにより形成され得る。例えば、外側熱可塑性樹脂層11は、低密度ポリエチレンを含む単層の熱可塑性樹脂層である。外側熱可塑性樹脂層11の厚みは、例えば15μm以上35μm以下である。
内側熱可塑性樹脂層16は、好ましくは、化石燃料由来又はバイオマス由来の上述の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレンの1種ないし2種以上を含む単層又は多層の層である。内側熱可塑性樹脂層16は、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、予め、これから樹脂のフィルムないしシートを製造し、その樹脂のフィルムないしシートを、接着剤層15を介して、蒸着フィルム14にドライラミネート積層することにより形成され得る。内側熱可塑性樹脂層16の厚みは、例えば30μm以上80μm以下であり、好ましくは40μm以上60μm以下である。
[紙基材層]
紙基材層12は、液体紙容器100を保持する基材層としての機能を果たすものであり、積層体に包装製品としての強度を付与できるものが好ましい。紙基材層として用いる紙は、100g/m2以上700g/m2以下、好ましくは150g/m2以上600g/m2以下、より好ましくは200g/m2以上500g/m2以下の坪量を有するものである。紙基材層としては、白板紙全般を対象とするが、特に安全性の観点から天然パルプを用いたアイボリー紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙等の使用が好ましい。
また、本発明で使用する板紙は、サイズ剤として、中性ロジンやアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸を使用してもよく、定着剤としてカチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン等を使用してもよい。また、硫酸バンドを使用してpH6以上pH9以下の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記のサイズ剤のほか、定着剤の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
[印刷層]
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、外側熱可塑性樹脂層11に設けることができる。印刷層は、外側熱可塑性樹脂層11の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
[蒸着フィルム]
図2は、蒸着フィルム14の一例を示す断面図である。蒸着フィルム14は、延伸プラスチックフィルム141と、延伸プラスチックフィルム141の内側の面の上に設けられた透明蒸着層142と、透明蒸着層142の上に設けられたガスバリア性塗布膜143と、を有する。延伸プラスチックフィルム141は接着樹脂層13と接しており、ガスバリア性塗布膜143は接着剤層15と接している。以下、各層について説明する。
(延伸プラスチックフィルム)
延伸プラスチックフィルム141は、所定の方向において延伸されているポリエステルフィルムである。延伸プラスチックフィルム141は、所定の一方向において延伸された一軸延伸フィルムであってもよく、所定の二方向において延伸された二軸延伸フィルムであってもよい。延伸プラスチックフィルム141の延伸方向は特には限定されない。例えば、延伸プラスチックフィルム141は、紙容器用包装材料10によって構成される液体紙容器の高さ方向において延伸されていてもよく、液体紙容器の幅方向において延伸されていてもよい。
延伸プラスチックフィルム141は、バイオマス由来のポリエステル(以下、バイオマスポリエステルとも称する)を含む樹脂組成物である。バイオマスポリエステルは、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルである。延伸プラスチックフィルム141におけるポリエチレンテレフタレートの含有率は、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。延伸プラスチックフィルム141は、延伸プラスチックフィルム141の樹脂組成物全体に対して、例えば5質量%以上のバイオマスポリエステルを含む。
バイオマス由来のエチレングリコールは、従来の化石燃料由来のエチレングリコールと化学構造が同じであるため、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエステルフィルムは、従来の化石燃料由来のポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がない。したがって、延伸プラスチックフィルム141およびそれを備える紙容器用包装材料10は、カーボンニュートラルな材料からなる層を有するため、従来の化石燃料から得られる原料から製造された延伸プラスチックフィルムおよびそれを備える紙容器用包装材料に比べて、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、サトウキビ、トウモロコシ等のバイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
延伸プラスチックフィルム141を形成する樹脂組成物は、化石燃料由来のポリエステル、化石燃料由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステル、バイオマス由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステルなどを5質量%以上45質量%以下の割合で1種または2種以上含んでいてもよい。
大気中の二酸化炭素には、14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれる14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
バイオマス由来の原料の比率を表す指標として、バイオマス度を用いることができる。本実施の形態において、「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示すものである。ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエチレンテレフタレート中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%であるため、バイオマス度は31.25%となる(バイオマス由来のエチレングリコール由来の分子量/ポリエステルの重合1単位の分子量=60÷192)。
化石燃料由来のポリエステルにおいては、バイオマス由来成分の重量比率が0%であるので、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。本実施の形態において、延伸プラスチックフィルム141中のバイオマス度は、カーボンオフセット材料としての効果を発現する上では、5.0%以上であることが好ましく、10.0%以上であることがより好ましい。また、延伸プラスチックフィルム141中のバイオマス度は、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、30.0%以下であってもよい。
延伸プラスチックフィルム141は、上記の樹脂組成物を用いて、例えば、Tダイ法によってフィルム化することにより形成することができる。具体的には、上記した樹脂組成物を乾燥させた後、樹脂組成物の融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
上記のようにして得られたフィルムは2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、フィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して2軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、PETのTg+70~Tm-10℃である。また、熱固定時間は1秒以上60秒以下が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
上記のようにして得られる延伸プラスチックフィルム141の厚さは、その用途に応じて任意である。延伸プラスチックフィルム141の厚さは、例えば5μm以上であり、8μm以上であってもよい。また、延伸プラスチックフィルム141の厚さは、例えば100μm以下であり、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。延伸プラスチックフィルム141の厚さの範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。また、フィルムの破断強度は、MD方向で5kgf/mm2以上40kgf/mm2以下、TD方向で5kgf/mm2以上35kgf/mm2以下であり、また、破断伸度は、MD方向で50%以上350%以下、TD方向で50%以上300%以下である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1%以上5%以下である。
(透明蒸着層)
透明蒸着層142は、主成分として酸化アルミニウムを含む無機酸化物の薄膜である。透明蒸着層142は、酸化アルミニウムあるいはアルミニウムの窒化物、炭化物、水酸化物の単独又はその混合物などのアルミニウム化合物を含んでいてもよい。さらに、透明蒸着層142は、アルミニウム化合物を主成分として含み、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸化窒化物、ケイ素炭化物、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、またはこれらの金属窒化物、炭化物及びその混合物などを更に含んでいてもよい。
(ガスバリア性塗布膜)
ガスバリア性塗布膜143は、透明蒸着層142を機械的・化学的に保護するとともに、蒸着フィルム14のバリア性を向上させるためのものであり、透明蒸着層142に接するように積層される。ガスバリア性塗布膜143は、金属アルコキシドと水酸基含有水溶性樹脂、及び必要に応じて添加されるシランカップリング剤とを含む樹脂組成物からなるガスバリア性塗布膜用コート剤によって形成される硬化膜である。
前記樹脂組成物中の水酸基含有水溶性樹脂/金属アルコキシドの質量比は、5/95以上、20/80以下が好ましく、8/92以上、15/85以下がより好ましい。上記範囲よりも小さいと、バリア性被覆層のバリア効果が不十分になり易い傾向になり、上記範囲よりも大きいと、バリア性被覆層の剛性と脆性とが大きくなり易くなる。
ガスバリア性塗布膜143の厚みは、100nm以上、800nm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと、ガスバリア性塗布膜143のバリア効果が不十分になり易くなり、上記範囲よりも厚いと、剛性と脆性とが大きくなり易くなる。
金属アルコキシドは、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、水素原子または炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。1分子中の複数のR1、R2のそれぞれは、同一であっても、異なっていてもよい。)・・・(I)で表される。
金属アルコキシドのMで表される具体的な金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、スズ、鉛、ボラン、その他等を例示することができ、例えば、MがSi(ケイ素)であるアルコキシシランを使用することが好ましい。
上記一般式(I)において、OR2の具体例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基、3-メタクリロキシ基。3-アクリロキシ基、フェノキシ基、等のアルコキシ基またはフェノキシ基等が挙げられる。
上記において、R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、p-スチリル基、3-クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、γ-グリシドキシプロピル基、メタクリル基、γ-アミノプロピル基等が挙げられる。
アルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、フェニルフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等の各種アルコキシシランやフェノキシシラン等が挙げられる。本実施の形態において、これらのアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン等を使用することができる。
シランカップリング剤は、金属アルコキシドと水酸基含有水溶性樹脂による硬化膜の架橋密度を調整して、バリア性及び耐熱水処理性のある膜とするために用いるものである。
シランカップリング剤は、一般式:R3nSi(OR4)4-n ・・・(II)
(ただし、式中、R3およびR4はそれぞれ独立して有機官能基を表し、nは1から3である。)
で表される。
上記一般式(II)中、R3としては、例えば、アルキル基やアルキレン基等の炭化水素基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、ウレイド基、ビニル基、アミノ基、イソシアヌレート基またはイソシアネート基を有する官能基が挙げられる。具体的には、2つまたは3つ存在するR3の少なくとも一つは、エポキシ基を有する官能基であることが好ましく、3-グリシドキシプロピル基および2-(3,4エポキシシクロヘキシル)基であることがより好ましい。なお、R3は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
上記一般式(II)中、R4としては、例えば、炭素数1~8の有機官能基であり、好ましくは分岐を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基または炭素数3~7のアルコキシアルキル基である。例えば、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。また、炭素数3~7のアルコキシアルキル基としては、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、メチルsec-ブチルエーテル、エチルsec-ブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル等の直鎖又は分岐鎖状エーテルから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。なお、(OR4)は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
上記一般式(II)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、n=1の場合、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。n=2の場合、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、n=3の場合、3-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジメチルメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
特に、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを用いたバリア性被覆層の硬化膜の架橋密度は、トリアルコキシシランを用いた系での架橋密度より低くなる。そのため、ガスバリア性及び耐熱水処理性のある膜として優れながら、柔軟性のある硬化膜となり、耐屈曲性にも優れるため、当該バリアフィルムを用いた包装材料はゲルボフレックス試験後でもガスバリア性が劣化し難い。
シランカップリング剤は、n=1、2、3、のものを混合して用いることもでき、その量比及びシランカップリング剤の使用量は、バリア性被覆層の硬化膜の設計により決められる。
水酸基含有水溶性樹脂は、金属アルコキシドと脱水共縮合し得るものであり、ケン化度は、90%以上、100%以下が好ましく、95%以上、100%以下がより好ましく、99%以上、100%以下が更に好ましい。ケン化度が上記範囲よりも小さいと。バリア性被覆層の硬度が低下し易くなる。
水酸基含有水溶性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコ一ル共重合体、2官能フェノール化合物と2官能エポキシ化合物との重合体、等が挙げられ、各々を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、共重合させて用いてもよい。これらの中で、特に、柔軟性と親和性に優れることから、ポリビニルアルコールが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂が好適である。
具体的には、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル系樹脂や、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することができる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のPVA-124(ケン化度=99%、重合度=2,400)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM-14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を挙げることができる。
(蒸着フィルムの好ましい構成)
次に、厚み方向における蒸着フィルム14の好ましい構成について、図3を参照して説明する。図3は、蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143側の表面に対し、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、透明蒸着層142に由来するイオンと、延伸プラスチックフィルム141に由来するイオンを測定した結果を示す図である。蒸着フィルム14の透明蒸着層142は、図3に示すグラフ解析図によって特定される遷移領域を含んでいる。
遷移領域とは、蒸着フィルム14をガスバリア性塗布膜143側からTOF-SIMSを用いてエッチングを行うことで検出される、水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al2O4Hのピークの位置T2と、透明蒸着層142と延伸プラスチックフィルム141との界面T1との間の領域である。透明蒸着層142と延伸プラスチックフィルム141との界面T1は、元素C6のグラフの強度が、延伸プラスチックフィルム141における元素C6の強度の半分になる位置として特定される。図3において、符号W1は、遷移領域の厚みを表す。
透明蒸着層142の厚みに対する遷移領域の厚みW1の比率(以下、遷移領域の変成率とも称する)は、5%以上60%以下であることが望ましい。変成率が60%を超えると、蒸着フィルム14に熱が加えられた場合に、延伸プラスチックフィルム141に対する透明蒸着層142の密着性が低下し得る。また、水蒸気に対する蒸着フィルム14のバリア性が低下し得る。変成率は、30%以下であってもよく、25%以下であってもよく、20%以下であってもよい。また、変成率は、10%以上であってもよく、15%以上であってもよい。変成率の範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。
延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の界面は、熱によって機械的及び化学的なストレスを受ける。従って、密着性やバリア性の低下を抑制するためには、延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の界面において強固に透明蒸着層142で延伸プラスチックフィルム141を被覆することが重要である。
水酸化アルミニウムは、その化学構造によりプラスチック基材との密着性がよく、またそれ自体がネットワークを作り緻密なため、高い水蒸気バリア性を有する。しかし、熱ストレスに対して、水酸化アルミと基材との水素結合に基づく結合構造は微視的に崩れやすい。また、水酸化アルミニウムのネットワークに対しても、水分子と水酸化アルミニウムの粒界面の親和性から膜中に浸透しやすい。
本実施の形態では、酸化アルミニウム蒸着膜における水酸化アルミニウムが形成するプラスチック基材との界面における遷移領域を極力狭くするために、元素結合Al2O4Hに注目し、その存在量を制御することで、熱ストレスによって元素結合Al2O4Hから発生する水酸化アルミニウムを抑え、相対的に水酸化アルミニウムが少ない酸化アルミニウム膜比率を上げることにより、熱ストレスによる水分子による微視的な蒸着膜破壊、プラスチック基材との界面破壊を抑制することを意図している。それにより従来にない密着性、バリア性を有する蒸着フィルム14を提供することができる。
酸化アルミニウム蒸着膜は、酸素プラズマ前処理されたプラスチック基材表面に蒸着膜を成膜することで形成することができる。蒸着膜を成膜する蒸着法としては、物理蒸着法、化学蒸着の中から種々の蒸着法が適用できる。物理蒸着法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、クラスターイオンビーム法からなる群から選ぶことができ、化学蒸着法としては、プラズマCVD法、プラズマ重合法、熱CVD法、触媒反応型CVD法からなる群から選ぶことができる。本実施の形態においては、物理蒸着法の蒸着法が好適である。
図3のグラフを得るための方法の一具体例について説明する。まず、Csを用いて、ガスバリア性塗布膜143の最表面からエッチングを行い、ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142と延伸プラスチックフィルム141等のフィルムとの界面の元素結合及び蒸着膜の元素結合の分析を実施する。これにより、図3に示すグラフを得ることができる。
次に、図3のグラフの解析方法の一具体例について説明する。ここでは、ガスバリア性塗布膜143が酸化ケイ素を含む場合について説明する。
まず、グラフにおいて、ガスバリア性塗布膜143の構成元素であるSiO2(質量数59.96)の強度が、ガスバリア性塗布膜143における強度の半分になる位置を、ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142の界面として特定する。次に、延伸プラスチックフィルム141の構成材料であるC6(質量数72.00)の強度が、延伸プラスチックフィルム141における強度の半分になる位置を、延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の界面として特定する。また、2つの界面の間の、厚み方向における距離を、透明蒸着層142の厚みとして採用する。
次に、測定された元素結合Al2O4H(質量数118.93)を表すピークを求め、そのピークから界面までを遷移領域とする。ただし、ガスバリア性塗布膜143の成分がAl2O4H(質量数118.93)と同じ質量数の材料で構成される場合、118.93の波形を分離する必要がある。
ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142の界面に、反応物AlSiO4と、水酸化物Al2O4Hとが生じる場合、それらと、延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の間の界面に存在するAl2O4Hを分離することができる。このように、波形の分離については、ガスバリア性塗布膜143の材料に応じて適宜対応することができる。
波形分離においては、例えば、TOF-SIMSで得られた、質量数118.93のプロファイルを、Gaussian関数を用いて非線形のカーブフィッティングを行い最小二乗法Levenberg Marquardt アルゴリズムを使用して重複ピークの分離を行うことができる。
[接着樹脂層]
接着樹脂層13は、接着樹脂を含み、紙基材層12を含む基材と蒸着フィルム14を含むフィルムとを接着する層である。接着樹脂層13は、例えばサンドラミネート法により形成される。
接着樹脂層13の接着樹脂は、好ましくは、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物、カルボン酸基含有化合物、及び酸無水物含有化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を含む樹脂組成物である。例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を用いることができる。これにより、接着樹脂層13を介してサンドラミネート法により紙基材層12と蒸着フィルム14の延伸プラスチックフィルム141とを接着する工程において蒸着フィルム14が受ける熱ストレスを低減することができる。これにより、蒸着フィルム14のガスバリア性が低下することを抑制することができる。また、接着樹脂層13と蒸着フィルム14の延伸プラスチックフィルム141との間の密着性が高いので、接着樹脂層13と延伸プラスチックフィルム141との間のアンカーコート層を不要にすることができる。すなわち、延伸プラスチックフィルム141の外側の面が直接的に接着樹脂層13に接するように接着樹脂層13を設けることができる。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂として、ポリエチレン系樹脂を用いる場合には、耐熱性に優れることから、密度が920~970kg/m3の範囲が好ましく、920~965kg/m3の範囲がより好ましい。接着樹脂層13を構成する接着樹脂の密度を前記の範囲とすることにより、紙容器用包装材料10に熱が加えられた場合に、ピンホールの発生や透明蒸着層142の剥離やシワを効果的に抑制することができる。また、液体紙容器を作製する際の熱に起因する熱ピンホールの発生も抑制することができる。接着樹脂層13を構成する接着樹脂の融点は、内側熱可塑性樹脂層16の融点より高いことが望ましい。例えば、融点が90℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましい。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂としては、紙基材層12や蒸着フィルム14との接着性を考慮すると、ポリエチレン系の樹脂が好ましい。このようなポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、もしくはエチレン・α-オレフィン共重合体、およびこれらの組成物であり、その分子鎖の形態は直鎖状でもよく、炭素数6以上の長鎖分岐を有していてもよい。
前記エチレン単独重合体としては、中・低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレンなどを例示することができる。中・低圧法エチレン単独重合体は、従来公知の中・低圧イオン重合法により得ることができる。また高圧法低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体に用いるα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。エチレン・α-オレフィン共重合体を得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、シングルサイト系触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂中に含有されるエポキシ基含有化合物としては、エポキシ化植物油(天然植物油の不飽和二重結合のエポキシ化)、グリシジルエーテルタイプ、グリシジルアミンタイプ、グリシジルエステルタイプなどが挙げられる。中でも食品包装材料に用いた場合の安全性の観点からエポキシ化植物油がより好ましい。例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などが用いられる。このようなエポキシ基含有化合物の含有量は、例えば、接着樹脂層13を構成する接着樹脂100重量部に対して0.01~10重量部であり、0.01~5.0重量部が好ましい。0.01重量部未満では蒸着フィルム14との接着強度が不十分となり、10重量部を超えるとブロッキングや、特に食品包装用に使用する場合は、臭いを伴うため、好ましくない。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂中に含有されるシラン基含有化合物としては、シランオリゴマーが好適に用いられる。より具体的には、接着性を上げるために、分子内にエポキシ基、メルカプト基、アルコキシ基の何れか、もしくは、これらの数種を含有するシランオリゴマーが望ましい。シランオリゴマーは、接着樹脂層13を構成する接着樹脂100重量部に対し、0.01~10重量部、好ましくは0.01~5重量部配合される。シランオリゴマーの配合量が0.01重量部未満では蒸着フィルム14との接着強度が不十分となり、また、10重量部を超えると成形加工が劣るため、好ましくない。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂中に含有されるカルボン酸基含有化合物としては、エチレン-不飽和カルボン酸、またはそのエステル化物との共重合体を用いることができる。より具体的には、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体が挙げられる。また、エチレン-不飽和カルボン酸の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂を使用することもできる。
接着樹脂層13を構成する接着樹脂中に含有される酸無水物含有化合物としては、マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂やマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂などのマレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂や無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂などの無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。なお、マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂にマレイン酸がグラフト重合されてなる。
また、接着樹脂層13の接着樹脂層の厚さについても特に限定されないが、15μm以上40μm以下であることが好ましい。接着樹脂層13の厚さを前記の範囲とすることにより、液体紙容器を成型する際における熱ピンホールの発生を効果的に抑制することができる。なお、厚さが15μm未満になると、紙基材層12と蒸着フィルム14の間の接着性が不十分になるおそれがある。また、厚さが40μmを超えると、溶融状態の接着樹脂を用いて紙基材層12と蒸着フィルム14とを積層する工程の際に、熱ストレスによって蒸着フィルム14の透明蒸着層142の特性が劣化するおそれがある。
なお、接着樹脂層13を構成する樹脂には、上記各種化合物の他、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本願発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
[接着剤層]
接着剤層15は、蒸着フィルム14を含むフィルムと内側熱可塑性樹脂層16を含むフィルムとをドライラミネート法により接着するための層である。接着剤層15は、蒸着フィルム14を含むフィルムと内側熱可塑性樹脂層16を含むフィルムのうち積層される側のフィルムの表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成される。接着剤層15を構成する接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。上記の接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
接着剤層15は、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。例えば、接着剤層15がポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含む場合、ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
蒸着フィルム14を含むフィルムと内側熱可塑性樹脂層16を含むフィルムとをドライラミネート法により接着することにより、サンドラミネート法を用いる場合に比べて、熱に起因するダメージが蒸着フィルム14に生じることを抑制することができる。例えば、透明蒸着層142が延伸プラスチックフィルム141から剥離したり、蒸着フィルム14のガスバリア性が低下したりすることを抑制することができる。
<包装材料の製造方法>
次に、紙容器用包装材料10の製造方法の一例について説明する。まず、蒸着フィルム14を製造する方法の一例について説明する。
(蒸着フィルムの製造工程)
まず、延伸プラスチックフィルム141を準備する。続いて、延伸プラスチックフィルム141の内側の面に、酸化アルミニウムを含む透明蒸着層142を成膜する。図4は、成膜装置60の一例を示す図である。以下、成膜装置60及び成膜装置60を用いた成膜方法について説明する。
図4に示すように、成膜装置60においては、減圧チャンバ62内に隔壁85a~85cが形成されている。該隔壁85a~85cにより、基材搬送室62A、プラズマ前処理室62B、成膜室62Cが形成され、特に、隔壁と隔壁85a~85cで囲まれた空間としてプラズマ前処理室62B及び成膜室62Cが形成され、各室は、必要に応じて、さらに内部に排気室が形成される。
プラズマ前処理室62B及びプラズマ前処理室62Bにおけるプラズマ前処理工程について説明する。プラズマ前処理室62B内には、前処理が行われる延伸プラスチックフィルム141を搬送し、かつプラズマ処理を可能にするプラズマ前処理ローラー70の一部が基材搬送室62Aに露出するように設けられている。延伸プラスチックフィルム141は、巻き取られながらプラズマ前処理室62Bに移動する。
プラズマ前処理室62B及び成膜室62Cは、基材搬送室62Aと接して設けられており、延伸プラスチックフィルム141を大気に触れさせないままに移動可能である。また、前処理室62Bと基材搬送室62Aの間は、矩形の穴により接続されており、その矩形の穴を通じてプラズマ前処理ローラー70の一部が基材搬送室62A側に飛び出しており、該搬送室の壁と該前処理ローラー70の間に隙間が開いており、その隙間を通じて延伸プラスチックフィルム141が基材搬送室62Aから成膜室62Cへ移動可能である。基材搬送室62Aと成膜室62Cとの間も同様の構造となっており、延伸プラスチックフィルム141を大気に触れさせずに移動可能である。
基材搬送室62Aは、成膜ローラー75により再度基材搬送室62Aに移動させられた、片面に蒸着膜が成膜された延伸プラスチックフィルム141をロール状に巻き取るため、巻取り手段としての巻き取りローラーが設けられ、蒸着膜を成膜された延伸プラスチックフィルム141を巻き取り可能とするようになっている。
酸化アルミニウム蒸着膜を有する蒸着フィルム14を製造する際、前記プラズマ前処理室62Bは、プラズマが生成する空間を他の領域と区分し、対向空間を効率よく真空排気できるように構成されることで、プラズマガス濃度の制御が容易となり、生産性が向上する。その減圧して形成する前処理圧力は、0.1Pa以上100Pa以下程度に設定、維持することができ、特に、酸化アルミニウム蒸着膜の好ましい遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理の処理圧力としては、1Pa以上20Pa以下が好ましく、10Pa以下であってもよく、5Pa以下であってもよい。前処理圧力の範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。
延伸プラスチックフィルム141の搬送速度は、特に限定されないが、生産効率の観点から、少なくとも200~1000m/minにすることができ、特に、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理の搬送速度としては、300~800m/minが好ましい。
プラズマ前処理装置を構成するプラズマ前処理ローラー70は、プラズマ前処理手段によるプラズマ処理時の熱による延伸プラスチックフィルム141の収縮や破損を防ぐこと、酸素プラズマPを延伸プラスチックフィルム141に対して均一にかつ広範囲に適用することを目的とするものである。前処理ローラー70は、前処理ローラー内を循環させる温度調節媒体の温度を調整することにより、-20℃から100℃の間で、一定温度に調節することが可能であることが好ましい。
プラズマ前処理手段は、プラズマ供給手段及び磁気形成手段を含む。プラズマ前処理手段はプラズマ前処理ローラー70と協働し、延伸プラスチックフィルム141表面近傍に酸素プラズマPを閉じ込める。
プラズマ前処理手段は、前処理ローラー70の一部を覆うように設けられている。具体的には、前処理ローラー70の外周近傍の表面に沿ってプラズマ前処理手段を構成するプラズマ供給手段72と磁気形成手段73を配置する。プラズマ供給手段72は、プラズマ原料ガスを供給するプラズマ供給ノズルを含む。磁気形成手段73は、プラズマPの発生を促進するためマグネット等を有する。また、プラズマ前処理手段は、前処理ローラー70との間で電圧が加えられる電極71を有する。なお、図4においては、電極71とプラズマ供給手段72とが別個の部材である例が示されているが、これに限られることはない。図示はしないが、電極71とプラズマ供給手段72とが一体的な部材によって構成されていてもよい。
前処理ローラー70と磁気形成手段73との間に挟まれた空間にプラズマPを発生させ、前処理ローラー70と延伸プラスチックフィルム141の表面近傍にプラズマ密度の高い領域を形成することで、延伸プラスチックフィルム141の内側の面に酸素プラズマ前処理を施してプラズマ処理面を形成することができる。
プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段72は、減圧チャンバ62の外部に設けたプラズマ供給ノズルに接続された原料揮発供給装置68と、該装置から原料ガス供給を供給する原料ガス供給ラインを含む。供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単独又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスが、ガス貯留部から流量制御器を介することでガスの流量を計測しつつ供給される。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素なる群から選ばれる、1種または2種以上の混合ガスが挙げられる。
これら供給されるガスは、必要に応じて所定の比率で混合されて、プラズマ原料ガス単独又はプラズマ形成用混合ガスに形成され、プラズマ供給手段に供給される。その単独又は混合ガスは、プラズマ供給手段のプラズマ供給ノズルに供給され、プラズマ供給ノズルの供給口が開口する前処理ローラー70の外周近傍に供給される。そのノズル開口は前処理ローラー70上の延伸プラスチックフィルム141に向けられ、延伸プラスチックフィルム141の表面全体に均一に酸素プラズマPを拡散、供給させることが可能となるように配置、構成される。これにより、延伸プラスチックフィルム141の大面積の部分に均一なプラズマ前処理を施すことができる。
酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率を上述のように5%以上60%以下とするため、酸素プラズマ前処理としては、酸素ガスと不活性ガスとの混合比率(酸素ガス/不活性ガス)は、1/1以上が好ましく、3/2.5以上であってもよく、3/2以上であってもよい。また、酸素ガスと前記不活性ガスとの混合比率(酸素ガス/不活性ガス)は、6/1以下が好ましく、3/1以下であってもよく、5/2以下であってもよい。混合比率を1/1以上6/1以下とすることで、プラスチックフィルム上での蒸着アルミニウムの膜形成エネルギーが増加し、更に3/2以上5/2以下とすることで、水酸化アルミニウムの形成がプラスチックフィルムの界面近傍で形成される、すなわち該遷移領域の変成率が低下する。酸素ガスと前記不活性ガスとの混合比率(酸素ガス/不活性ガス)の範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。
電極71は、前処理ローラー70の対向電極として機能する。前処理ローラー70との間に供給される高周波電圧、低周波電圧等による電位差によって供給されたプラズマ原料ガスが励起状態になり、プラズマPが発生し、供給される。
具体的には、電極71は、プラズマ電源としてプラズマ前処理ローラーを設置し、対向電極との間に周波数が10Hzから2.5GHzの交流電圧を印加し、投入電力制御または、インピーダンス制御等を行い、プラズマ前処理ローラー70との間に任意の電圧を印加した状態にすることができるものである。成膜装置60は、延伸プラスチックフィルム141の表面物性を物理的ないしは化学的に改質する処理ができる酸素プラズマPを正電位にするバイアス電圧を印加できる電源82を備えている。
単位面積あたりのプラズマ強度は、好ましくは50W・sec/m2以上8000W・sec/m2以下である。50W・sec/m2以下では、プラズマ前処理の効果がみられず、また、8000W・sec/m2以上では、延伸プラスチックフィルム141の消耗、破損着色、焼成などプラズマによる延伸プラスチックフィルム141の劣化が起きる傾向にある。特に、単位面積あたりのプラズマ強度は、100W・sec/m2以上が好ましい。また、単位面積あたりのプラズマ強度は、1000W・sec/m2以下が好ましく、500W・sec/m2以下であることがより好ましく、300W・sec/m2以下であってもよい。延伸プラスチックフィルム141に垂直にバイアス電圧を持ち上記プラズマ強度を与えることにより、安定的に酸化アルミニウム蒸着膜との密着性等を向上させることができる。単位面積あたりのプラズマ強度の範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。
磁気形成手段73としては、マグネットケース内に絶縁性スペーサ、ベースプレートが設けられ、このベースプレートにマグネットが設けられたものを用いることができる。マグネットケースに絶縁性シールド板が設けられ、この絶縁性シールド板に電極が取り付けられ得る。マグネットケースと電極は電気的に絶縁されており、マグネットケースを減圧チャンバ62内に設置、固定しても電極は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。マグネットを設けることにより、延伸プラスチックフィルム141表面近傍での反応性が高くなり、良好なプラズマ前処理面を高速で形成することが可能となる。
好ましくは、マグネットは、延伸プラスチックフィルム141の表面位置での磁束密度が10ガウスから10000ガウスになるよう構成されている。延伸プラスチックフィルム141表面での磁束密度が10ガウス以上であれば、延伸プラスチックフィルム141表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良好な前処理面を高速で形成することができる。
次に、成膜室62C及び成膜室62Cにおける成膜工程について説明する。成膜装置60は、減圧された成膜室62C内に配置された成膜ローラー75と、成膜ローラー75に対向して配置された蒸着膜成膜手段74のターゲットと、を有する。成膜ローラー75は、プラズマ前処理装置で前処理された延伸プラスチックフィルム141の処理面を外側にして延伸プラスチックフィルム141を巻きかけて搬送する。成膜工程においては、蒸着膜成膜手段74のターゲットを蒸発させて延伸プラスチックフィルム141の表面に酸化アルミニウム膜を成膜する。
蒸着膜成膜手段74は、例えば抵抗加熱方式であり、アルミニウムを蒸発源としてアルミニウムの金属線材を用い、酸素を供給ししてアルミニウム蒸気を酸化しつつ、延伸プラスチックフィルム141の表面に酸化アルミニウム蒸着膜を成膜させる。
上記のように成膜される酸化アルミニウムの蒸着膜を含む透明蒸着層142の厚さは、3nm以上が好ましく、8nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。また、透明蒸着層142の厚さは、50nm以下が好ましく、30nm以下であってもよく、20nm以下であってもよく、15nm以下であってもよく、14nm以下であってもよい。透明蒸着層142の厚さの範囲は、上述の下限の候補値と上限の候補値との任意の組み合わせによって定められ得る。この範囲であれば、バリア性を保持することができる。但し、酸化アルミニウムの蒸着膜が非常に薄い場合は、TOF-SIMS測定による遷移領域の変成率の算出が困難になる。
次に、透明蒸着層142の上にガスバリア性塗布膜143を形成する方法について説明する。まず、上記金属アルコキシド、シランカップリング剤、水酸基含有水溶性樹脂、反応促進剤(ゾルゲル法触媒、酸等)、及び溶媒としての水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール等の有機溶媒を混合して、樹脂組成物からなるガスバリア性塗布膜用コート剤を調製する。
次いで、透明蒸着層142の上に、常法により、上記のガスバリア性塗布膜用コート剤を塗布し、乾燥する。この乾燥工程によって、縮合または共縮合反応が更に進行し、塗膜が形成される。第一の塗膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗膜を形成してもよい。
さらに、20~200℃、好ましくは50~180℃の範囲の温度、かつ基材層を構成する樹脂の軟化点以下の温度で、3秒~10分間加熱処理する。これによって、透明蒸着層142の上に、上記ガスバリア性塗布膜用コート剤からなるガスバリア性塗布膜143を形成することができる。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を作製することができる。
(内側熱可塑性樹脂層の準備工程)
次に、内側熱可塑性樹脂層16を構成するフィルムを準備する。内側熱可塑性樹脂層16が複数の層を含む場合、内側熱可塑性樹脂層16を構成するフィルムは、例えば、共押し出しによって作製された共押しフィルムである。
(蒸着フィルムと内側熱可塑性樹脂層の積層工程)
次に、ドライラミネート法により、蒸着フィルム14と内側熱可塑性樹脂層16とを、接着剤層15を介して積層する。ドライラミネート法においては、まず、積層される2つのフィルムのうちの一方に接着剤組成物を塗布する。具体的には、蒸着フィルム14の内面14xを構成するガスバリア性塗布膜143、又は、内側熱可塑性樹脂層16のいずれか一方に、接着剤組成物を塗布する。好ましくは、ガスバリア性塗布膜143に接着剤組成物を塗布する。続いて、塗布された接着剤組成物を乾燥させて溶剤を揮発させる。その後、乾燥後の接着剤組成物を介して2つのフィルムを積層する。続いて、積層された2つのフィルムを巻き取った状態で、例えば30℃以上の環境下で72時間以上にわたってエージングする。これによって、図5に示すように、外側から内側へ順に、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142、ガスバリア性塗布膜143、接着剤層15、内側熱可塑性樹脂層16を有する第1積層体20を得ることができる。第1積層体20の内面20xは内側熱可塑性樹脂層16によって構成され、外面20yは延伸プラスチックフィルム141によって構成されている。
(第1積層体と紙基材層の積層工程)
次に、サンドラミネート法により、第1積層体20と紙基材層12とを、接着樹脂層13を介して積層する。図6は、第1積層体20と紙基材層12とを積層する積層装置90を示す図である。
積層装置90を用いた積層工程においては、まず、図6に示すように、第1供給ロール91から紙基材層12を巻き出す。また、第2供給ロール92から第1積層体20を巻き出す。続いて、接着樹脂層13を構成するための溶融状態の接着樹脂13Aを、紙基材層12の内側の面と第1積層体20の延伸プラスチックフィルム141との間に押し出す。これによって、紙基材層12と第1積層体20とが接着樹脂層13を介して積層された第2積層体25を得ることができる。なお、溶融状態の接着樹脂13Aを押し出すよりも前に、紙基材層12の内側の面にアンカーコート層を設けておいてもよい。これにより、紙基材層12と接着樹脂層13の密着性を高めることができる。アンカーコート層としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン等からなる層を用いることができる。
ところで、溶融状態の接着樹脂13Aの温度が高いほど、サンドラミネート法によって積層される蒸着フィルム14の透明蒸着層142の温度も高くなる。透明蒸着層142の温度が高くなり過ぎると、酸化アルミニウムを含む透明蒸着層142の特性が劣化してしまうことがある。例えば、透明蒸着層142が延伸プラスチックフィルム141から剥離したり、蒸着フィルム14のガスバリア性が低下したりすることが考えられる。従って、透明蒸着層142の特性の劣化を抑制する上では、溶融状態の接着樹脂13Aの温度が低いことが好ましい。例えば、溶融状態の接着樹脂13Aの温度は、330℃以下であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましい。
好ましくは、接着樹脂13A及び接着樹脂層13は、上述のように、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物、カルボン酸基含有化合物、及び酸無水物含有化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を含む樹脂組成物である。これにより、接着樹脂13Aの融点を低くすることができるので、溶融状態の接着樹脂13Aの温度を低くすることができる。このため、サンドラミネートの際に酸化アルミニウムを含む透明蒸着層142の特性が劣化することを抑制することができる。また、紙基材層12中の水分が蒸発して接着樹脂層13、蒸着フィルム14、接着剤層15及び内側熱可塑性樹脂層16などにピンホールが発生することを抑制することができる。また、エポキシ基含有化合物、シラン基含有化合物、カルボン酸基含有化合物、及び酸無水物含有化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を含む樹脂組成物は、延伸プラスチックフィルム141を構成するポリエチレンに対する密着性を有する。このため、延伸プラスチックフィルム141にアンカーコート層が設けられていない場合であっても、接着樹脂層13が延伸プラスチックフィルム141から剥離することを抑制することができる。
その後、積層装置90と同一ラインにおいて、第2積層体25の外側の面に外側熱可塑性樹脂層11を形成してもよい。例えば、図6に示すように、外側熱可塑性樹脂層11を構成するための溶融状態の熱可塑性樹脂11Aを、第2積層体25の紙基材層12の外面上に押し出す。これによって、外側熱可塑性樹脂層11、紙基材層12、接着樹脂層13、蒸着フィルム14、接着剤層15及び内側熱可塑性樹脂層16を備える紙容器用包装材料10を得ることができる。
以下、本実施の形態における紙容器用包装材料10によってもたらされる利点について説明する。
本実施の形態においては、上述のように、蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143が内側を向く状態で、蒸着フィルム14と内側熱可塑性樹脂層16とをドライラミネート法により接着している。このため、蒸着フィルム14を含む第1積層体20と紙基材層12とをサンドラミネート法により接着する際、接着樹脂層13を構成する溶融状態の接着樹脂13Aの熱が蒸着フィルム14の透明蒸着層142に到達することを抑制することができる。これにより、熱に起因して透明蒸着層142が延伸プラスチックフィルム141から剥離したり、蒸着フィルム14のガスバリア性が低下したりすることを抑制することができる。このため、透明蒸着層142として、酸化ケイ素に比べて熱に弱い酸化アルミニウムを用いる場合であっても、蒸着フィルム14のバリア性が低下してしまうことを抑制することができる。また、酸化アルミニウムの透明蒸着層142を用いることにより、透明蒸着層142の成膜方法として物理蒸着法を採用することができる。これにより、化学蒸着法を採用する場合に比べて、蒸着フィルム14の生産性を高めることができる。
<液体紙容器>
紙容器用包装材料10は、液体紙容器を形成するための材料として用いられる。液体紙容器は、バリア性に優れることから、日本酒、焼酎、ワインなどのアルコール類、牛乳などの乳飲料、オレンジジュースやお茶などの清涼飲料などの食品、カーワックス、シャンプーや洗剤などの化学製品など液体全般の包装紙容器として好適に用いることができる。図7は、紙容器用包装材料10から形成される液体紙容器100の一例を示す斜視図である。
図7に示す液体紙容器100は、側面を含む四角筒状の胴部101と、四角板状の底部102と、上部103とを有しており、所謂ゲーベルトップ型容器となっている。上部103は、対向する一対の傾斜板104と、一対の傾斜板104間に位置するとともに傾斜板104間に折込まれる一対の折込部105とを有している。また、一対の傾斜板104は各々の上端に設けられたのりしろ106により互いに接着している。なお、一対の傾斜板104のうちの一方の傾斜板に注出口を取付け、注出口をキャップで密封するようにしてもよい。また、フラットトップ型容器を形成してもよい。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例A1]
まず、蒸着フィルム14の延伸プラスチックフィルム141として、厚さ12μmのバイオマス由来のPETフィルムを準備した。バイオマス由来のPETフィルムは、以下の方法により得られたものである。
化石燃料由来のテレフタル酸83質量部とバイオマス由来のエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とを、常法の直重方法でエステル化反応を行った後、減圧下において縮重合反応を行い、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを得た。得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス度は31.25%であった。
上記のバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを60質量部と、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート30質量部と、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートを含むマスターバッチ10質量部とを押出機に供給し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、縦方向に延伸した後、横方向に延伸して、厚みが12μmである二軸延伸PETフィルムを得た。得られた二軸延伸PETフィルムのバイオマス度を測定したところ、18.8%であった。
続いて、図4に示す上述の成膜装置60を用いて、上述の二軸延伸PETフィルムからなる延伸プラスチックフィルム141の面に酸素プラズマ処理を施した後、酸素プラズマ処理面上に、酸化アルミニウムを含む厚さ12nmの透明蒸着層142を形成した。
(酸素プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:150W・sec/m2
・酸素ガスと不活性ガスとの混合比率:酸素/アルゴン=2/1
・前処理ドラム-プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
・前処理圧力:3.8Pa
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10-2Pa
・搬送速度:400m/min
・酸素ガス供給量:20000sccm
続いて、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。具体的には、まず、水385g、イソプロピルアルコール67g及び0.5N塩酸9.1gを混合し、pH2.2に調整した溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン175gと、シランカップリング剤としてグリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gを10℃となるよう冷却しながら混合させて溶液Aを調製した。
水溶性高分子として、ケン価度99%以上の重合度2400のポリビニルアルコール14.7g、水324g、イソプロピルアルコール17gを混合した溶液Bを調製した。A液とB液を重量比6.5:3.5となるよう混合して得られた溶液をガスバリア性塗布膜用コート剤とした。
上記の透明蒸着層142上に、上記で調製したガスバリア性塗布膜用コート剤をスピンコート法によりコーティングした。
その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのガスバリア性塗布膜143を透明蒸着層142上に形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[実施例A2]
透明蒸着層142の厚さを10nmにしたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[実施例A3]
透明蒸着層142の厚さを14nmにしたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[参考例A1]
透明蒸着層142の厚さを7nmにしたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[参考例A2]
酸素プラズマ前処理を行わなかったこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[参考例A3]
酸素プラズマ処理における酸素ガスと不活性ガスとの混合比率を酸素/アルゴン=4/1としたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[参考例A4]
酸素プラズマ処理における前処理圧力を50Paとしたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
[参考例A5]
酸素プラズマ処理におけるプラズマ強度を1200W・sec/m2としたこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、延伸プラスチックフィルム141上に透明蒸着層142を形成し、透明蒸着層142上にガスバリア性塗布膜143を形成した。このようにして、延伸プラスチックフィルム141、透明蒸着層142及びガスバリア性塗布膜143を有する蒸着フィルム14を得た。
上述の実施例A1~A3及び参考例A1~A4の蒸着フィルム14に対して、変成率の測定を行った。また、上述の実施例A1及び参考例A5の蒸着フィルム14に対して、色味の測定を行った。また、上述の実施例A1~A3及び参考例A1~A2の蒸着フィルム14を備えるフィルム積層体に対して、酸素透過度の測定及び水蒸気透過度の測定を行った。
(変成率)
蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143の表面にCs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、ガスバリア性塗布膜143に由来するイオンと、透明蒸着層142に由来するイオンと、延伸プラスチックフィルム141に由来するイオンを測定した。これにより、上述の図3のような、縦軸の単位(intensity)が測定されたイオンの強度であり、横軸の単位(cycle)がエッチングの回数であるグラフを得た。
TOF-SIMSに用いられる飛行時間型二次イオン質量分析計としてはION TOF社製、TOF.SIMS5を用い、下記測定条件で測定を行なった。
(TOFSIMS測定条件)
・一次イオン種類:Bi3++(0.2pA,100μs)、測定面積:150×150μm2
・Et銃種類:Cs(1keV、60nA),Et面積:600×600μm2、Etレート:3sec/Cycle
なお、解析においては、複数ある酸化アルミニウム由来のイオンの中から他の成分由来のイオンと切り分けること、十分な強度を有するものを選択すること及び、特に元素結合Al2O4Hの濃度分布に近似換算できる深さ分布を得ることが重要になる。これらを考慮し、測定対象となる酸化アルミニウム由来のイオンを測定するためのイオン銃としては、Csイオンを選択した。
Csを用いて、ガスバリア性塗布膜143の最表面からエッチングを行い、ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142と延伸プラスチックフィルム141との界面の元素結合及び蒸着膜の元素結合の分析を実施し、測定された元素および元素結合のグラフを得た。グラフにおいて、ガスバリア性塗布膜143の構成元素であるSiO2(質量数59.96)の強度が、ガスバリア性塗布膜143における強度の半分になる位置を、ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142の界面として特定した。また、延伸プラスチックフィルム141の構成材料であるC6(質量数72.00)の強度が、延伸プラスチックフィルム141における強度の半分になる位置を、延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の界面として特定した。また、2つの界面の間の、厚み方向における距離を、透明蒸着層142の厚みとして採用した。
次に、測定された元素結合Al2O4H(質量数118.93)を表すピークを求め、そのピークから界面までを遷移領域とした。ただし、ガスバリア性塗布膜143の成分がAl2O4H(質量数118.93)と同じ質量数の材料で構成される場合、118.93の波形を分離する必要がある。
ガスバリア性塗布膜143と透明蒸着層142の界面に、反応物AlSiO4と、水酸化物Al2O4Hとが生じる場合、それらと、延伸プラスチックフィルム141と透明蒸着層142の間の界面に存在するAl2O4Hを分離することができる。このように、波形の分離については、ガスバリア性塗布膜143の材料に応じて適宜対応することができる。
波形分離においては、例えば、TOF-SIMSで得られた、質量数118.93のプロファイルを、Gaussian関数を用いて非線形のカーブフィッティングを行い最小二乗法Levenberg Marquardt アルゴリズムを使用して重複ピークの分離を行うことができる。
実施例A1~A3及び参考例A1~A4の蒸着フィルム14の透明蒸着層142の変成率を、(遷移領域の厚みW1/透明蒸着層142の厚み)×100(%)として算出した。結果を図8A及び図8Bに示す。
(色味)
分光側色計(コニカミノルタ株式会社製[機種名:CM-700d)を用いて、蒸着フィルム14から作製した測定用のサンプル1枚(延伸プラスチックフィルム141/透明蒸着層142/ガスバリア性塗布膜143)のL*a*b*表色系におけるL*値、a*値およびb*値を測定した。結果を図8A及び図8Bに示す。
(酸素透過度及び水蒸気透過度)
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)と厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムとを、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせて、積層体を作製した。また、実施例A1~A3及び参考例A1~A2の蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143側に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を塗工し、乾燥処理することにより、ガスバリア性塗布膜143上に接着剤層を形成した。続いて、CPPフィルム及び延伸ナイロンフィルムを含む積層体と、蒸着フィルム14とを、蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143上の接着剤層を介してドライラミネート法により貼り合わせて、評価用のフィルム積層体を作製した。フィルム積層体の層構成は、外側から内側へ順に、以下のように表現される。
PETフィルム/透明蒸着層/ガスバリア性塗布膜/接着剤層/延伸ナイロンフィルム/接着剤層/CPPフィルム
評価用のフィルム積層体を用いて、酸素透過度を測定するためのサンプルを作製した。具体的には、まず、評価用のフィルム積層体に36℃で48時間のエージング処理を施し、続いて、評価用のフィルム積層体を切り出してサンプルを作製した。
続いて、実施例A1~A3及び参考例A1~A2の5種類の測定サンプルのそれぞれを、PETフィルムからなる延伸プラスチックフィルム141が酸素供給側となるようにセットして、23℃、90%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K 7126 B法に準拠して酸素透過度を測定した。測定器としては、酸素透過度測定装置(モダンコントロール(MOCON)社製〔機種名:オクストラン(OX-TRAN)2/21〕)を用いた。結果を図8A及び図8Bに示す。
(水蒸気透過度)
酸素透過度の測定の場合と同一のサンプルを用いて、水蒸気透過度の測定を行った。具体的には、各測定サンプルを、延伸プラスチックフィルム141がセンサー側となるようにセットして、40℃、100%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K 7126 B法に準拠して水蒸気透過度を測定した。測定器としては、水蒸気透過度測定装置(モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN)3/33〕)を用いた。結果を図8A及び図8Bに示す。
図8Aに示すように、実施例A1~A3の蒸着フィルム14においては、透明蒸着層142の遷移領域の変成率が上述の5%以上60%以下の範囲内であり、具体的には10%以上25%以下の範囲内であった。透明蒸着層142の厚さが増加するにつれて変成率が減少する傾向が見られた。一方、参考例A1~A2の蒸着フィルム14においては、元素結合Al2O4Hピークが小さすぎて分離できなかった為に、遷移領域の変成率が計算できなかった。また、参考例A3~A4の蒸着フィルム14においては、プラズマ放電が安定せず、プラズマ前処理ができなかったため、遷移領域の変成率が計算できなかった。これらのことから、透明蒸着層142の遷移領域の変成率が5%以上60%以下の範囲内になるように蒸着フィルム14を作製するためには、以下の製造条件I~IVを全て満たすことが好ましい。
製造条件I
透明蒸着層の厚さが8nm以上である。
製造条件II
酸素プラズマ処理における酸素ガスと不活性ガスとの混合比率が3/2.5以上3/1以下である。
製造条件III
酸素プラズマ処理における前処理圧力が1Pa以上20Pa以下である。
製造条件IV
酸素プラズマ処理におけるプラズマ強度が100W・sec/m2以上500W・sec/m2以下である。
図8A及び図8Bに示すように、参考例A5の蒸着フィルム14のb*値は、実施例A1の蒸着フィルム14のb*値よりも大きかった。また、参考例A5の蒸着フィルム14においては、延伸プラスチックフィルム141が着色している様子が目視で確認された。上述の製造条件I~IVは、着色を抑制する上でも有用であると考えられる。
図8Aに示すように、実施例A1~A3の蒸着フィルム14を備えるフィルム積層体においては、酸素透過度が0.5cc/m2/24hr/atm以下であり、水蒸気透過度が0.4g/m2/24hr以下であった。一方、図8Bに示すように、参考例A2の蒸着フィルム14を備えるフィルム積層体のサンプルにおいては、酸素透過度が0.8cc/m2/24hr/atmであり、水蒸気透過度が1.1g/m2/24hr以上であった。これらのことから、酸素プラズマ前処理を実施することは、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性を維持する上で有効であると言える。
[実施例B1]
蒸着フィルム14として、実施例A1のようにして作製した蒸着フィルム14を準備した。
また、内側熱可塑性樹脂層16として、厚さ60μmのポリエチレンフィルムを準備した。続いて、ドライラミネート法により、蒸着フィルム14のガスバリア性塗布膜143側の面とポリエチレンフィルムとを、接着剤層15を介して積層した。これにより、図5に示す第1積層体20を得た。
また、紙基材層12として、液体用原紙(坪量385g/m2)を準備した。続いて、液体用原紙の内側の面にアンカーコート層を形成した後、図6に示す上述の積層装置90を用いて、サンドラミネート法により、液体用原紙と第1積層体20とを、接着樹脂層13を介して積層した。具体的には、接着樹脂層13を構成する溶融状態の接着樹脂を、温度320℃、厚さ20μmで液体用原紙と第1積層体20の延伸プラスチックフィルム141との間に押し出した。接着樹脂としては、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 AN4228C)を用いた。
続いて、液体用原紙の外側の面上にアンカーコート層を形成した後、溶融状態のポリエチレン樹脂を押し出して、外側熱可塑性樹脂層11を形成した。このようにして、図1に示す紙容器用包装材料10を得た。
本実施例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/EMAA20/PET12/蒸着/バリア/DL/PEF60
「PE」は、押し出しで形成されたポリエチレン層を意味する。「AC」は、アンカーコート層を意味する。「紙」は、紙基材層を意味する。「EMAA」は、エチレン-アクリル酸共重合体からなる接着樹脂層を意味する。「PET」は、PETフィルムを意味する。「蒸着」は、酸化アルミニウム膜を意味する。「バリア」は、ガスバリア性塗布膜を意味する。「DL」は、接着剤層を意味する。「PEF」は、ポリエチレンフィルムを意味する。数字は、層の厚さ(単位はμm)を意味する。
[実施例B2]
エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 AN4228C)を温度320℃、厚さ35μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本実施例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/EMAA35/PET12/蒸着/バリア/DL/PEF60
[実施例B3]
密度0.919g/cm3、MFR8.0g/10分のポリエチレンにシラン基を含有させた接着性樹脂を温度320℃、厚み20μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本実施例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/シランPE20/PET12/蒸着/バリア/DL/PEF60
「シランPE」は、押し出しで形成された、シラン基を含有するポリエチレン層を意味する。
[実施例B4]
密度0.919g/cm3、MFR8.0g/10分のポリエチレンにシラン基を含有させた接着性樹脂を温度320℃、厚さ35μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、実施例B3の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本実施例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/シランPE35/PET12/蒸着/バリア/DL/PEF60
[比較例B1]
内側熱可塑性樹脂層16のポリエチレンフィルムの厚さを40μmとし、蒸着フィルム14と内側熱可塑性樹脂層16のポリエチレンフィルムとを、厚さ20μmで押し出されたポリエチレンを用いてサンドラミネート法により接着したこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、第1積層体20を作製した。また、エチレン-アクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 AN4228C)を温度320℃、厚さ10μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、紙基材層12と蒸着フィルム14とを積層した。また、実施例B1の場合と同様にして、紙基材層12の外側の面に外側熱可塑性樹脂層11を形成して、紙容器用包装材料10を得た。
本比較例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/EMAA10/PET12/蒸着/バリア/AC/PE20/PEF40
[比較例B2]
エチレン-アクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 AN4228C)を温度320℃、厚さ20μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、比較例B1の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本比較例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/EMAA20/PET12/蒸着/バリア/AC/PE20/PEF40
[比較例B3]
日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン LC520を温度320℃、厚さ20μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、比較例B1の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本比較例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/PE20/PET12/蒸着/バリア/AC/PE20/PEF40
[比較例B4]
エチレン-アクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製 AN4228C)を温度320℃、厚み60μmで押し出して接着樹脂層13を構成したこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、紙容器用包装材料10を作製した。
本比較例の紙容器用包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PE25/AC/紙/AC/EMAA60/PET12/蒸着/バリア/DL/PEF60
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10の層構成を、図9にまとめて示す。
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10に対して、剥離強度の測定、水蒸気透過度の測定、酸素透過度の測定、及び、充填機シール性の評価を行った。
(剥離強度)
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10のそれぞれについて、接着樹脂層13と蒸着フィルム14との間の層間剥離強度(N/15mm)を測定した。具体的には、引張試験機(テンシロン万能試験機RTC1310A、オリエンテック社製)を用いて、剥離速度50mm/minで、90°剥離試験を行った。結果を図10に示す。
(水蒸気透過度)
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10のそれぞれについて、温度40℃、湿度100%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、PERMATRAN〕にて、JIS K 7129に準拠して、水蒸気透過度を測定した(サンプル数N=10)。結果を図10に示す。
(酸素透過度)
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10のそれぞれについて、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、OXTRAN〕にて、JIS K 7126に準拠して、酸素透過度を測定した(サンプル数N=10)。結果を図10に示す。
(充填機シール性)
実施例B1~B4及び比較例B1~B4の紙容器用包装材料10のそれぞれを成形してヒートシールすることにより、液体紙容器を作製した。ヒートシールの温度は、260℃、280℃、300℃、320℃又は340℃とした。また、得られた液体紙容器に水を充填し、水の漏れが生じるか否かを評価した。また、ヒートシール箇所にピンホールが発生しているか否かを目視で確認した。結果を図11に示す。図11において、「good」は、水の漏れが生じず、且つ、ヒートシール箇所にピンホールが発生していなかったことを意味する。また、「not good」は、水の漏れは生じていなかったが、ヒートシール箇所にピンホールが発生していたことを意味する。また、「bad」は、紙容器用包装材料10を成形してヒートシールする際に、紙容器用包装材料10に層間剥離が生じていたことを意味する。
実施例B1~B4と比較例B3の比較から分かるように、接着樹脂層13としてエチレン-アクリル酸共重合体又はシラン基含有化合物を用いることにより、剥離強度を確保することができた。具体的には、剥離強度を2.8N/15mm以上にすることができた。
実施例B1~B4と比較例B1~B3の比較から分かるように、蒸着フィルム14と内側熱可塑性樹脂層16とをサンドラミネーション法ではなくドライラミネーション法により接着することにより、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を確保することができた。具体的には、水蒸気透過度及び酸素透過度を1cc/m2・day以下にすることができた。また、実施例B1~B4と比較例B4の比較から分かるように、接着樹脂層13の厚みを35μm以下にすることにより、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を確保することができた。
実施例B1、B2と比較例B1の比較から分かるように、エチレン-アクリル酸共重合体からなる接着樹脂層13の厚みを20μm以上にすることにより、ヒートシール箇所にピンホールが生じることを抑制することができた。