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JP7409950B2 - 制震装置 - Google Patents

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JP7409950B2 JP2020077312A JP2020077312A JP7409950B2 JP 7409950 B2 JP7409950 B2 JP 7409950B2 JP 2020077312 A JP2020077312 A JP 2020077312A JP 2020077312 A JP2020077312 A JP 2020077312A JP 7409950 B2 JP7409950 B2 JP 7409950B2
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Description

本発明は、超高層建築物から低層建築物に構築される制震装置に関する。
近年、震度7を記録する大地震が日本各地で発生している。これらの大地震が都市部で発生した場合には、これまで以上に深刻な建築構造の被害が予想される。一方で、現在の大地震への対策は、住宅から例えば100mを超えるような高層建築物に至るまで、建物の揺れを熱エネルギーに変換して吸収する制震ダンパー等の制震装置を層間に設置した制震構造とすることが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。これにより、設計者が想定する地震に対しては耐震性を確保することができる。
特許第5238701号公報
しかしながら、従来の場合には、上述したように近年は想定を上回るような大規模な地震が日本各地で発生しており、設計で想定した入力を超える地震動が作用した場合には、構造躯体が深刻なダメージを受ける可能性がある。
また、特定の層を柔層化してダンパーのエネルギー吸収効率の向上を図った設計(例えば、集中制震構造やソフトファーストストーリー制震構造等)では、想定する地震に対しては非常に効果が高い。ところが、想定を超える地震に対しては、その柔層化した層が過大に変形をしてしまうことで、柔層を起点として脆弱な破壊形式である層崩壊を引き起こすおそれがあった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、最大層間変形角を低減することで特定層に変形を集中させずに分散、均一化することができ、層崩壊を抑制することができる制震装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る制震装置は、建物の層間に配置される制震装置であって、前記建物の躯体に接続された制震ダンパーと、前記制震ダンパーと並列に設けられたPC鋼材又はタイロッドからなる引張材と、を備え、前記PC鋼材の定着部には、前記制震ダンパーの引張方向の変位を許容するギャップを有し、前記引張材は、引張力を作用させた状態で弾塑性ダンパーとして機能することを特徴としている。
本発明では、大地震時において建物に地震動が作用する際に、制震ダンパーの引張方向の変位が作用し、設定した層間変形角以上でPC鋼材又はタイロッドからなる引張材に設けられるギャップが無くなる。そして、ギャップが無くなったときに、引張材が弾塑性ダンパーとして作用し、弾塑性ダンパーのバネ剛性が層剛性として付加され、建物の層間において引張材の耐力を建物の躯体に付加することができる。つまり、建物の層間において、ギャップ量に応じて最大層間変形角を低減することができ、層間変形に応じた可変剛性を実現できる。このように、建物の各層に本発明の制震装置を設置することで、特定層に変形を集中させることを抑制することで他の層に変形を分散することができ、各層の変形を均一化できる。
また、本発明では、前記弾塑性ダンパーに設定した降伏荷重値により引張材の塑性化を許容することで、建物の躯体の柱梁等に生じる力を制限することができ、柱梁等が過大な反力が生じることによって損傷することを防止できる。
さらに、本発明では、制震ダンパーに並列に引張材を設ける構成であり、設置スペースが小さく、接続部の簡易な補強のみで例えば既存のシアリンク型の耐震ブレース等に追加して設置することが可能となるので、既存建物の耐震改修としても好適であり、低コストで簡単な工事により実現することができる。
また、本発明に係る制震装置は、前記建物の層は、柱と梁によって囲まれる架構に耐震ブレースを配置させた制震層を有し、前記制震ダンパーは、前記耐震ブレースと前記架構との間に接続されていることを特徴としてもよい。
この場合には、引張材の塑性化を許容することで、耐震ブレースが負担する軸力の上限値を制限することができることから、柱と梁が先行して大きく損傷することを防ぐことができる。つまり、引張材のギャップが消失した後は、引張材の耐力分だけ架構に耐力を付加することができ、耐震ブレース分の剛性が付加できる。すなわち、本発明では、耐震ブレースと前記弾塑性ダンパー(引張材)の直列バネ剛性を層剛性に付加することができる。
また、本発明に係る制震装置は、前記建物の層は、免震装置を配置させた免震層を有し、前記制震ダンパーは、前記免震層を構成する躯体同士の間に接続されていることを特徴としてもよい。
この場合には、大地震時など過大な変形が免震層に生じた場合、PC鋼材又はタイロッドからなる引張材の剛性が付加され、ストッパーとして作用する。つまり、引張材のギャップが消失した後は、引張材の耐力分だけ建物の躯体に耐力を付加することができる。
また、本発明に係る制震装置は、前記引張材は、引張力のみが作用されることを特徴としてもよい。
この場合には、引張材に引張力のみを確実に作用させることができ、引張材に圧縮力を作用させることがない簡単な構造により制震装置を実現することができる。
また、本発明に係る制震装置は、前記定着部は、前記制震ダンパーの少なくとも一方の端部に固定される接合プレートと、該接合プレートに形成される貫通孔に前記引張材が挿通された状態で定着される定着板と、前記接合プレートと前記定着板との間に設けられる弾性部材と、を備え、前記接合プレートと前記定着板との離間距離は、前記制震ダンパーにおける引張方向の変位可能で、かつ前記弾性部材を圧縮可能な寸法に設定されていることを特徴としてもよい。
この場合には、制震ダンパーに引張力が作用して接合プレートが引張材の定着板に近接する方向に変位すると、ギャップの範囲でばね部材が圧縮され、弾性部材より定着板を介して引張材に引張力を作用させることができる。
そして、弾性部材が完全に圧縮した状態でギャップが無くなり、引張材が弾塑性ダンパーとして作用する。つまり、弾塑性ダンパーのバネ剛性が層剛性として付加され、建物の層間において引張材の耐力を建物の躯体に付加することができる。
また、本発明に係る制震装置は、前記引張材を挿通するガイド筒が設けられていることを特徴としてもよい。
この場合には、引張材に圧縮力が作用した場合に、引張材がガイド筒によって拘束されるため、座屈を防止することができる。
本発明の制震装置によれば、最大層間変形角を低減することで特定層に変形を集中させずに分散、均一化することができ、層崩壊を抑制することができる。
本発明の第1実施形態による制震装置を備えた高層建築物を示す側面図である。 図1に示す高層建築物の架構に設けられるシアリンクブレースと制震装置の構成を示す側面図である。 図2に示すA-A線断面図であって、制震装置を上方から見た図である。 制震装置の動作を説明するための要部側面図であって、(a)はオイルダンパーにおける平常時の図、(b)はオイルダンパーにおける引張時の図、(c)はオイルダンパーにおける圧縮時の図である。 シアリンクブレースと制震装置の要素モデルを示す図である。 層間変形と層せん断力との関係であって通常の層における復元力特性を示す図である。 層間変形と層せん断力との関係であって本実施形態の制震装置の復元力特性を示す図である。 大地震に対する高層建築物の層と応答層間変形角との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態による制震装置の構成を示す上面図である。 本発明の第3実施形態による制震装置が構築された高層建築物の架構の一部を示す側面図である。 本発明の第4実施形態による制震装置を免震層に設置した構成を示す側面図である。 本発明の第5実施形態による制震装置の要部を示す側断面図である。 図12に示す制震装置の動作を説明するための要部側面図であって、(a)はオイルダンパーにおける平常時の図、(b)はオイルダンパーにおける引張時の図、(c)はオイルダンパーにおける圧縮時の図である。 本発明の第6実施形態による高層建築物に設けられた制震装置を示す側面図である。 図14に示す制震装置の定着部の要部拡大図である。 (a)~(c)は、図14に示す制震装置のタイロッドの動作を説明するための側面図である。 第1変形例による制震装置の定着部の要部拡大図である。 (a)~(c)は、図17に示す制震装置のタイロッドの動作を説明するための側面図である。 第2変形例による制震装置の定着部の要部拡大図である。 (a)~(c)は、図19に示す制震装置のタイロッドの動作を説明するための側面図である。 実施例による漸増繰り返し試験における漸増繰返し加力に用いた載荷振幅を示した図である。 実施例による加力試験の結果を示した図であって、(a)は軸径φ25mmの単体試験体の図、(b)は軸径φ42mmの単体試験体の図である。
以下、本発明の実施形態による制震装置について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の制震装置1は、例えば100mを超えるような高層建築物10(建物)における下層部分(以下、柔層部10Aという)の複数層(図1では2層)において、それぞれの層間に設けられている。制震装置1は、図2に示すように、層間を結ぶオイルダンパー3(制震ダンパー)に並列してPC鋼棒4(PC鋼材、引張材)を設けたギャップ付きの弾塑性ダンパーである。
ここで、高層建築物10において、柔層部10Aよりも上側の連続する複数の階全体を上層部分10Bとする。上層部分10Bの各層間の中央部(コア部)には耐震ブレースのみが配置されている。
高層建築物10の柔層部10Aは、上層部分10Bよりも水平剛性が小さくなるように柔層化されている。
制震装置1は、柔層部10Aの変形量が所定値以上となる場合に変形を抑制するオイルダンパー3を有することで、柔層部10Aで変形が集中して、想定を超えるような外力に対しては、脆性的な損傷ことを抑制できる構造となっている。
制震装置1は、図2に示すように、柱11と梁12によって囲まれる架構13に配置される。本実施形態の架構13には、V字型の耐震ブレース(シアリンクブレース2)が設けられている。ここで、架構13にシアリンクブレース2を配置させた層を制震層という。
また、架構13において、架構13によって囲われる平面に直交する方向から見て梁12の長さ方向を左右方向X1という。
シアリンクブレース2は、側面視でV字を形成する一対のブレース材21、21と、下側の梁12の幅方向の中央に固定されブレース材21、21の下端21b、21b同士が接合される接合部21cを支持する支持架台22と、を備えている。
各ブレース材21は、H形鋼により形成され、側面視で柱11と梁12に対して略45°の角度で傾斜している。各ブレース材21は、上端21aが架構13の上角部10aに設けられる接続プレート23にボルト締結により接合され、下端21bが架構13の下側の梁12の長さ方向(左右方向X1)の中央部に支持架台22を介して接合されている。
支持架台22は、図2及び図3に示すように、H形鋼により形成され、一対のブレース材21、21の下端21bが接合されるブレース接合部221と、梁12の上プレート12aの左右方向X1の中央部分においてブレース接合部221を梁12に対して左右方向X1にスライド可能に支持するスライド支持部222と、ブレース接合部231の左右両端のそれぞれから左右方向X1に延ばされた突出部223と、を備えている。
スライド支持部222は、ブレース接合部221の下面に設けられ、左右方向X1に沿って延びるガイド部224と、梁12に固定されてガイド部224に沿って移動可能に支持された案内部225と、を備えている。すなわち、支持架台22は、地震時にブレース接合部221がシアリンクブレース2とともにスライド支持部222を介して左右方向X1に往復移動可能となっている。
各突出部233の突出端には、それぞれ柱11の内側面11aを向く平面を有する第1接合プレート24が備えられている(図4(a)参照)。
第1接合プレート24の外面24aの中央部には、オイルダンパー3の一端の第1固定端3aが固定されている。図4(a)に示すように、第1接合プレート24におけるオイルダンパー3が配置される部分より外周側の位置には、PC鋼棒4の一方の第1端部4aを挿通させて定着するための貫通孔24bが形成されている。
制震装置1は、図2に示すように、シアリンクブレース2及び柱11の間に接続されるオイルダンパー3と、オイルダンパー3と並列に設けられた複数のPC鋼棒4と、を備えている。
制震装置1は、PC鋼棒4が引張力F1(図4(b)参照)を作用させた状態で弾塑性ダンパーとして機能する構成となっている。
オイルダンパー3は、図2及び図3に示すように、伸縮方向(軸方向)を左右方向X1に向けた状態で配置されている。オイルダンパー3は、第1固定端3aがシアリンクブレース2の支持架台22の第1接合プレート24に固定され、オイルダンパー3の他方の第2固定端3bが柱11の内側面11aに対して固定部材31を介して固定されている。固定部材31のオイルダンパー3側の端部には、第2接合プレート32が設けられている。
第2接合プレート32の中央部には、オイルダンパー3の第2固定端3bが固定されている。第2接合プレート32におけるオイルダンパー3が配置される部分より外周側の位置には、PC鋼棒4の他方の第2端部4bを挿通させて定着するための貫通孔(図示省略)が形成されている。
PC鋼棒4は、その鋼棒の長さ方向をオイルダンパー3の伸縮方向(左右方向X1)と並行にして設けられ、引張力のみが作用されるように設けられている。つまり、PC鋼棒4は、加力時にシアリンクブレース2とオイルダンパー3を含む構面外に捻れることがないように、オイルダンパー3の周囲に複数本(ここでは4本)がバランスよく配置されている。ここでは、図2に示す側面図及び図3に示す上面図において、それぞれオイルダンパー3を挟んで左右対称に設けられ、合計4本のPC鋼棒4が設けられている。
PC鋼棒4は、シアリンクブレース2の支持架台22(第1接合プレート24)に固定される第1定着部41と、柱11に固定されている固定部材32の第2接合プレート32に定着される第2定着部42と、を有している。PC鋼棒4は、例えば棒径が40mm程度のものが使用できる。
第1定着部41は、図4(a)に示すように、オイルダンパー3の引張方向の変位を許容するギャップGを有している。
第1定着部41は、オイルダンパー3の一方の第1固定端3aに固定される第1接合プレート24と、第1接合プレート24に形成される貫通孔24bにPC鋼棒4が挿通された状態でナット45を螺合させることにより定着される第1定着板43と、第1接合プレート24と第1定着板43との間に設けられるばね部材44(弾性部材)と、を備えている。
図4(a)に示すように、第1接合プレート24と第1定着板43との離間距離(ギャップG)は、オイルダンパー3における引張方向に変位可能で、かつばね部材44を圧縮可能な寸法に設定されている。ギャップGとしては、例えば階高(層間の高さ寸法)で1/120~1/80程度に設定できる。
ばね部材44としては、コイルばねや皿バネ等が採用されている。ばね部材44は、図4(a)に示すように、PC鋼棒4が平常時に撓みが生じない程度に第1接合プレート24と第1定着板43との間に緊張力を生じさせた初期設定状態として設けられている。
また、PC鋼棒4には、PC鋼棒4の長さ方向の一部を覆う座屈防止用のガイド筒46がPC鋼棒4に挿通された状態で設けられている。このようにガイド筒46を設けることで、PC鋼棒4に圧縮力が作用した場合(図4(c)参照)に、PC鋼棒4がガイド筒46によって拘束されるため、座屈を防止することができる。つまり、ガイド筒46を設けることで、オイルダンパー3の伸縮時に、第1接合プレート24に対してPC鋼棒4の伸縮がスムーズにできるようになる。
第2定着部42は、図2及び図3に示すように、オイルダンパー3の第2固定端3bに固定される上述した第2接合プレート32と、第2接合プレート32に形成される貫通孔にPC鋼棒4が挿通された状態でナット45を螺合させることにより定着される第2定着板47と、を備えている。
図5は、上述した本実施形態におけるシアリンクブレース2と制震装置1の解析モデルを示している。
図5において、符号kbはシアリンクブレース2の剛性であり、kgはPC鋼棒4の剛性(非線形)であり、gapはばね部材44が完全圧縮(密着)するまでのギャップGの変位であり、cdはオイルダンパー3の粘性減衰係数である。シアリンクブレース2(kb)と制震装置1とは直列に配置され、制震装置1において、kgとgapが直列に配置され、kg及びgapとcdとが並列になっている。
また、変形に依存する通常の弾塑性ダンパーと同様にエネルギー吸収も同時に行う。すなわち、これは、一種の可変剛性架構システムを形成することとなり、過大な変形に対しては変形を抑制するような働きをする。そのため、制震装置1により、想定を超えるような外力に対しても、図1に示す高層建築物10の柔層部10Aにおける変形集中を抑制し、想定外に対してもロバスト性のあるレジリエンスの高い架構が形成可能となる。
次に、制震装置1の動作について、図4(a)~(c)を用いて具体的に説明する。
図4(a)に示すように、地震力を受けないオイルダンパー3が平常時においては、ばね部材44が初期設定された状態の緊張力分だけPC鋼棒4に軸力(左右方向X1の力)が作用する。つまり、第1接合プレート24と第1定着板43との間に設けられるばね部材44が双方24、43間を離反する方向に付勢した状態で配置されている。
図4(b)に示すように、地震時においてオイルダンパー3が例えば50mmだけ伸張した場合には、制震装置1においてPC鋼棒4に軸力(引張力F1)が作用し、第1接合プレート24と第1定着板43との間の離間(ギャップG)が図4(a)の平常時に比べて小さくなる。そのため、ばね部材44が付勢に抗して縮まって密着した状態となる。このとき、1本のPC鋼棒4で例えば略1500kNの軸力が作用する。
図4(c)に示すように、地震時においてオイルダンパー3が例えば50mmだけ圧縮した場合には、制震装置1においてPC鋼棒4に軸力(圧縮力F2)は作用せずに、第1接合プレート24と第1定着板43との間の離間(ギャップG)が図4(a)の平常時に比べて大きくなる。
次に、本実施形態による制震装置1の具体的な作用・効果について実施例に基づいて説明する。
図6は、鉄骨造における通常の層の復元力特性イメージを示している。図7は、ギャップG(層間変形x)を50mmに設定した本実施形態を設置した層の復元力特性のイメージを示している。図6及び図7は、横軸の層間変形x(mm)と縦軸の層せん断力y(kN)との関係を示す図である。図6は、本実施形態の制震装置1を備えないシアリンクブレース2のみのケースであって、点線は平常時、実線は地震時の復元力特性を示している。図7は、本実施形態の制震装置1とシアリンクブレース2を備えたケースであって、点線は平常時、実線は地震時の復元力特性を示し、細い点線は図6に示す復元特性を示している。
本実施形態として4本のPC鋼棒4をオイルダンパー3に並列に設置した場合の付加耐力および付加剛性は以下となる。なお、ここでは、シアリンクブレース2の剛性は剛として考慮しないものとする。
PC鋼棒4の耐力を1本あたり1500kNとしその履歴特性を完全バイリニアと仮定すると、付加耐力は6000kN(=1500kN×4本)となる。このとき、ある過大変形が生じた際の層間変形xにおける層の等価剛性ke(図6、図7参照)は、(1)式で表わせる。そして、本実施形態の制震装置1を設置した場合の等価剛性ke’は(2)式となり、(2)式よりke’/keの比は(3)式が求められる。これにより、(3)式の比だけ等価剛性が増加したとみなすことができる。
したがって、本実施形態を用いることにより、層の剛性が変位に応じて大きく変化する可変剛性システムが構成できる。
Figure 0007409950000001
Figure 0007409950000002
Figure 0007409950000003
次に、図8は、高さ約100mの鉄骨造からなる高層建築物に対して本実施形態を適用した場合の効果を時刻歴応答解析によりシミュレーションした結果を示している。図8に示す横軸は層間変形角を示し、縦軸が層を示している。シミュレーションでは、本実施形態のケースをギャップ付きダンパーありとし、比較例としてギャップ付きダンパーなしとしている。
解析モデルは、等価曲げせん断型の質点系とした。シミュレーションでは、震度7相当の大地震を想定した揺れを付与した。
シミュレーションの結果、ギャップ付きダンパーを設置しない場合では、低層部に変形が集中して最大1/59の層間変形角が生じている。これに対して、ギャップ付きダンパーを設置した場合には、層間変形角を1/79に低減することができ、特定層の変形抑制と各層の変形均一化の効果をそれぞれ確認できた。
次に、制震装置1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の制震装置1では、図4(a)、(b)に示すように、大地震時において図1に示す高層建築物10に地震動が作用する際に、オイルダンパー3の引張方向の変位が作用し、設定した層間変形角以上でPC鋼棒4に設けられるギャップGが無くなる。具体的には、図4(b)に示すように、ばね部材44が完全に密着してばね部材の圧縮ができない状態となる。つまり、本実施形態では、オイルダンパー3に引張力が作用して第1接合プレート24がPC鋼棒4の第1定着板43に近接する方向に変位すると、ギャップGの範囲でばね部材44が圧縮され、ばね部材44より第1定着板43を介してPC鋼棒4に引張力を作用させることができる。
そして、ギャップGが無くなったときに、PC鋼棒4が弾塑性ダンパーとして作用し、弾塑性ダンパーのバネ剛性が層剛性として付加され、建物の層間においてPC鋼棒4の耐力を建物の躯体に付加することができる。つまり、建物の層間において、例えば建築基準法告示で規定されるLv2地震動を超えるような地震動が建物に作用した場合であっても、設定するギャップ量に応じて最大層間変形角を低減することができ、層間変形に応じた可変剛性を実現できる。
このように、建物の各層に本実施形態の制震装置1を設置することで、特定層に変形を集中させることを抑制することで他の層に変形を分散することができ、各層の変形を均一化できる。
また、本実施形態では、前記弾塑性ダンパーに設定した降伏荷重値によりPC鋼棒4の塑性化を許容することで、建物の躯体の柱梁等に生じる力を制限することができ、柱梁等が過大な反力が生じることによって損傷することを防止できる。
さらに、本実施形態では、制震ダンパーに並列にPC鋼棒4を設ける構成であり、設置スペースが小さく、接続部の簡易な補強のみで例えば本実施形態のようなシアリンクブレース2に追加して設置することが可能となるので、既存建物の耐震改修としても好適であり、低コストで簡単な工事により実現することができる。
また、本実施形態の制震装置1では、PC鋼棒4の塑性化を許容することで、シアリンクブレース2が負担する軸力の上限値を制限することができることから、柱11や梁12が先行して大きく損傷することを防ぐことができる。つまり、PC鋼棒4のギャップGが消失した後は、PC鋼棒4の耐力分だけ架構13に耐力を付加することができ、シアリンクブレース2分の剛性が付加できる。すなわち、本実施形態では、シアリンクブレース2と前記弾塑性ダンパー(オイルダンパー3とPC鋼棒4)の直列バネ剛性を層剛性に付加することができる。
また、本実施形態では、PC鋼棒4に引張力のみを確実に作用させることができ、PC鋼棒4に圧縮力を作用させることがない簡単な構造により制震装置1を実現することができる。
上述のように本実施形態による制震装置1では、最大層間変形角を低減することで特定層に変形を集中させずに分散、均一化することができ、層崩壊を抑制することができる。
次に、他の実施形態による制震装置について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による制震装置1Aについて、図9に基づいて詳しく説明する。
第2実施形態による制震装置1Aは、オイルダンパー3の圧縮時において、PC鋼棒4に圧縮力F2を作用させる構造である。すなわち、制震装置1Aは、第1接合プレート24の両側面24a、24cに第1ばね部材44A、第2ばね部材44Bを設け、ギャップGを設けることにより、引張力F1と圧縮力F2の両方を作用させることができる。
第1接合プレート24の第2接合プレート32側には、第2ばね部材44Bを介して第3定着板49がPC鋼棒4の長さ方向の所定位置に固定されている。第1ばね部材44Aは、PC鋼棒4が平常時に撓みが生じない程度に第1接合プレート24と第1定着板43との間に緊張力を生じさせた初期設定状態として設けられている。第2ばね部材44Bは、PC鋼棒4が平常時に撓みが生じない程度に第1接合プレート24と第3定着板49との間に緊張力を生じさせた初期設定状態として設けられている。
制震装置1Aは、PC鋼棒4を丸パイプや角パイプからなるガイド筒46Aに通過させ、そのガイド筒46A内にモルタルが充填されている。ガイド筒46Aは、第3定着板49と第2接合プレート32との間のPC鋼棒4のほぼ全長にわたって覆う長さに設定されている。
第2実施形態では、PC鋼棒4に圧縮力が作用した場合に、PC鋼棒4がガイド筒46Aによって拘束されるため、座屈を防止することができる。
(第3実施形態)
次に、図10に示す第3実施形態による制震装置1Bは、層間に設置されるブレース型のダンパーにPC鋼棒4を設けた構成である。
本実施形態のオイルダンパー3は、架構13の柱11と上側の梁12に直接接続されている。オイルダンパー3の第1固定端3aは、PC鋼棒4の第1定着部41を備えたガセットプレート33が設けられ、第1固定部材34を介して上側の梁12の下面12bに固定されている。また、オイルダンパー3の第2固定端3bは、第2固定部材35を介して柱11と梁12の内角部13aに固定されている。
ガセットプレート33は、オイルダンパー3の第1固定端3a側において軸方向から見て周方向に45°で間隔をあけた位置から外側に張り出している。ガセットプレート33の第2固定端3bを向く先端には、オイルダンパー3を貫通させた第1接合プレート24Aが設けられている。第1接合プレート24Aには、複数(ここでは4箇所)の貫通孔が形成され、この貫通孔にPC鋼棒4が挿通された状態で第1接合プレート24Aの上面24c側でばね部材44を介して第1定着板43が設けられている。第1定着板43は、第1定着板43の上側でPC鋼棒4にナット45を螺合させることにより定着される。そして、第1接合プレート24Aと第1定着板43との間には、平常時において緊張力が与えられたばね部材44が配置されている。
第2固定部材35には、第2接合プレート32Aが設けられている。第2定着部42は、オイルダンパー3の第2固定端3bに固定される上述した第2接合プレート32Aと、第2接合プレート32Aに形成される貫通孔にPC鋼棒4が挿通された状態でナット45を螺合させることにより定着される第2定着板47と、を備えている。
(第4実施形態)
次に、図10に示す第4実施形態による制震装置1Cは、図示しない免震装置を配置させた免震層14を有する建物に設けた一例である。つまり、オイルダンパー3は、免震層14を構成する躯体(底盤15、天井壁16)同士の間に接続されている。天井壁16には、下方に向けて延びる第1柱部17が設けられている。底盤15には、上方に向けて延びる第2柱部18が設けられている。オイルダンパー3は、第1柱部17と第2柱部18とを接続するように伸縮方向(軸方向)を水平方向に向けて配置されている。
本第4実施形態の制震装置1Cにおいても、オイルダンパー3と並列に複数(ここでは4本)のPC鋼棒4(PC鋼材、引張材)が設けられている。PC鋼棒4の第1端部4aには、第1定着板43が固定され、その第1定着板43が後述するハウジング48内に収容されている。PC鋼棒4の第2端部4bは第2柱部18に固定されている。
本実施形態の制震装置1Cでは、PC鋼棒4の一端が摺動可能に収容するハウジング48が設けられている。ハウジング48は、オイルダンパー3の第1固定端3aに固定されるとともに、第1柱部17に固定されている。ハウジング48は、オイルダンパー3の軸方向に沿って延在し、先端面48aにPC鋼棒4の第1端部4a側が挿入されている。PC鋼棒4の第1定着板43は、その外周縁43aがハウジング48の内周面48bに接触した状態で設けられ、内周面48bに案内されて軸方向に沿って摺動可能に設けられている。オイルダンパー3に引張力が作用したときには、PC鋼棒4の第1定着板43がハウジング48の端板48c(第1接合プレート24に相当)に近接し、さらに当接する。地震動を受けない平常時において、例えば前記免震装置の最大水平変位量である免震クリアランスCを700mmと想定したときに、端板48cと第1定着板43との距離(ギャップG)を600mmに設定できる。
このような構成とした制震装置1Cでは、上記実施形態のようなばね部材は設けられず、ハウジング48とPC鋼棒4の第1定着板43との接触によりオイルダンパー3の荷重をPC鋼棒4に伝達し、極大地震時における過大な免震層変位を防止することができる。
この場合には、大地震時など過大な変形が免震層に生じた場合、PC鋼棒4の剛性が付加され、ストッパーとして作用する。つまり、PC鋼棒4のギャップGが消失した後は、PC鋼棒4の耐力分だけ建物の躯体に耐力を付加することができる。
(第5実施形態)
次に、図12に示す第5実施形態による制震装置は、上述した第1実施形態においてPC鋼棒4に設けられるばね部材44(図4(a)~(c)参照)に代えて緩衝部材50(弾性部材)を設けた構成としたものである。
緩衝部材50は、ゴム製で貫通孔51aを有する円筒状のゴム筒体51と、ゴム筒体51の内側に当該ゴム筒体51の貫通孔51aと同軸に埋設された鋼製の筒状スペーサ52と、を有している。ゴム筒体51の貫通孔51aと筒状スペーサ52の内周面52aの内径は、PC鋼棒4が挿通可能な寸法に設定されている。
筒状スペーサ52としては、図12に示すようなナットを採用することができるが、円形の鋼管を用いることも可能である。筒状スペーサ52の内周面52aは、雌ねじが形成され、PC鋼棒4の定着部の雄ねじ4cに螺合可能に設けられている。そして、定着板43をナット45と筒状スペーサ52とにより挟み込むことで、緩衝部材50が位置決めされている。
なお、ゴム筒体51の第1定着板43側を向く端面51bが第1定着板43に接着されていてもよい。とくに、上述したように筒状スペーサ52が鋼管であって、PC鋼棒4に対して螺合により接続されていない場合には、ゴム筒体51の端面51bを第1定着板43に接着することにより緩衝部材50が位置決めされる。
また、筒状スペーサ52は、第1定着板43に一体的に設けられ、内周面に雌ねじが形成されていてもよい。この場合には、筒状スペーサ52をPC鋼棒4の定着部の雄ねじ4cに螺合させることで、筒状スペーサ52の締め付け位置に応じて第1定着板43をPC鋼棒4における軸方向の所定位置に位置決めすることができる。
次に、上述した第5実施形態の制震装置の動作について、図13(a)~(c)を用いて具体的に説明する。
図13(a)に示すように、地震力を受けないオイルダンパー3が平常時においては、緩衝部材50が初期設定された状態の緊張力分だけPC鋼棒4に軸力(左右方向X1の力)が作用する。つまり、第1接合プレート24と第1定着板43との間に設けられる緩衝部材50が双方24、43間を離反する方向に付勢した状態で配置されている。
なお、平常時において、緩衝部材50が初期設定された状態で、初めから第1接合プレート24と緩衝部材50とが離間している状態で配置されてもよい。
図13(b)に示すように、地震時においてオイルダンパー3が例えば50mmだけ伸張した場合には、制震装置1においてPC鋼棒4に軸力(引張力F1)が作用し、第1接合プレート24と第1定着板43との間の離間(ギャップG)が図13(a)の平常時に比べて小さくなる。そのため、緩衝部材50が付勢に抗して縮まって密着した状態となる。このとき、1本のPC鋼棒4で例えば略1500kNの軸力が作用する。
図13(c)に示すように、地震時においてオイルダンパー3が例えば50mmだけ圧縮した場合には、制震装置1においてPC鋼棒4に軸力(圧縮力F2)は作用せずに、第1接合プレート24と第1定着板43との間の離間(ギャップG)が図13(a)の平常時に比べて大きくなる。
第5実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、ギャップGが無くなったときに、PC鋼棒4が弾塑性ダンパーとして作用し、弾塑性ダンパーのバネ剛性が層剛性として付加され、建物の層間においてPC鋼棒4の耐力を建物の躯体に付加することができる。つまり、建物の層間において、例えば建築基準法告示で規定されるLv2地震動を超えるような地震動が建物に作用した場合であっても、設定するギャップ量に応じて最大層間変形角を低減することができ、層間変形に応じた可変剛性を実現できる。このように、建物の各層に制震装置を設置することで、特定層に変形を集中させることを抑制することで他の層に変形を分散することができ、各層の変形を均一化できる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態による制震装置1Dについて、図面に基づいて詳しく説明する。
第6実施形態による制震装置1Dは、図14及び図15に示すように、オイルダンパー3の伸長時において、タイロッド6に引張力F1を作用させる構造である。
制震装置1Dは、第1接合プレート24と第2接合プレート32との間で連結するタイロッド6と、タイロッド6の軸方向X2の第1接合プレート24側の一端に螺合される一対のナット61(61A、61B)と、タイロッド6の軸方向X2の第2接合プレート32側の多端に螺合される一対のナット62(62A、62B)と、第1接合プレート24側における一対のナット61A、61Bのうち軸方向X2の外側に位置する外側ナット61Aと第1接合プレート24とに挟持されて介挿されるゴム製のゴムリング63(弾性部材)と、ゴムリング63に一体的に設けられる金属製のリングワッシャー64と、を備えている。
そして、ゴムリング63と第1接合プレート24との間にはギャップGが形成され、タイロッド6に引張力F1を作用させることが可能な構成となっている。
タイロッド6は、そのロッド長さ方向をオイルダンパー3の伸縮方向と平行にして設けられ、引張力F1のみが作用されるように設けられている。つまり、タイロッド6は、圧縮時にシアリンクブレース2とオイルダンパー3を含む構面外に捻れることがないように、オイルダンパー3の周囲に複数本(上述した実施形態と同様に4本)がバランスよく配置されている。
タイロッド6は、上述した実施形態のPC鋼棒4(図3参照)に代えて設けられたものであり、軸部6aの両端部がアプセット加工され軸部6aよりも大径に形成され、その大径部には雄ねじ6bが形成されている。タイロッド6は、軸部6aと、軸部6aの軸方向X2の両端部に位置する雄ねじ6bと、軸部6aと雄ねじ6bとの間に位置するアプセット加工されたテーパー部6cと、を有している。
テーパー部6cは、軸部6aから雄ねじ6bに向かうに従い漸次、大径となる傾斜面を形成している。テーパー部6cは、1/5程度の傾斜角度に設定されている。このようにタイロッド6は、軸部6aの軸径が雄ねじ6bの谷径より大きくなるように設定するアプセット加工が施されているので、軸部6aでの破断を抑制し、タイロッド6全体として十分な靭性(伸び)を発揮することができる。
図14に示すように、タイロッド6の第1接合プレート24側が定着部であるのに対して、第2接合プレート32側はタイロッド6の固定部となる。タイロッド6の固定部は、第2接合プレート32の両側に外側ナット62Aと内側ナット62Bによって固定されている。それぞれのナット62A、62Bには皿ばねが設けられている。ただし、外側ナット62Aは皿ばねに替えて通常のワッシャーを使用してもよい。
なお、皿ばねは必ずしも第2接合プレート32と内側ナット62Bとを密着させる必要はなく、タイロッド6に引張力が生じて雄ねじ6bが塑性化して伸びた場合でも皿ばねの反発力により、ナット62A、62Bは緩まず外側ナット62Aの位置は保持される。また、第2接合プレート32に形成される貫通孔はタイロッド6を設ける際の施工性を考慮して長孔としてもよい。
タイロッド6の第1接合プレート24側の端部(雄ねじ6b)は、第1接合プレート24を貫通して定着部が固定されている。第1接合プレート24側の定着部は、軸方向X2で中心から雄ねじ6b側に向けて内側ナット61B、ゴムリング63を備えたリングワッシャー64、外側ナット61Aの順で配列されている。
リングワッシャー64は、円盤状に形成され、中央にタイロッド6の雄ねじ6bを挿通可能な円孔を有している。リングワッシャー64の第1接合プレート24を向く面64bにはゴムリング63が接着により固着されて一体的に設けられている。
ゴムリング63は、少なくとも内側ナット61Bの厚みよりも大きな厚みの円盤状に形成され、中央に内側ナット61Bが収容可能かつタイロッド6の雄ねじ6bを挿通可能な円孔を有している。ゴムリング63は、少なくとも軸方向X2に弾性変形可能なゴム製の部材から形成されている。ゴムリング63と第1接合プレート24との間には、通常の状態(オイルダンパー3に変位が生じていない初期設定状態)で軸方向X2に任意の距離(ギャップG)をもって離間している。
ギャップGは、オイルダンパー3における引張方向に変位可能で、かつゴムリング63を圧縮可能な寸法に設定されている。
第6実施形態による制震装置1Dでは、ゴム部材63は、タイロッド6に引張力F1が生じたときに第1接合プレート24とリングワッシャー64とが近接し、第1接合プレート24に当接してさらに押圧されて圧縮変形する。
また、外側ナット61Aは、リングワッシャー64との間で皿ばね65を介して雄ねじ6bに締め込まれている。皿ばね65を設けることで、微振動等で生じる供回りによる外側ナット61Aの緩みを防止し、地震時においてタイロッド6に引張力F1が生じて雄ねじ6bが伸びた際に締め付けた外側ナット61Aが緩むのを防止することができる。
第6本実施形態の制震装置1Dでは、図16(a)~(c)に示すように、大地震時において高層建築物に地震動が作用する際に、オイルダンパー3の引張方向の変位が作用し、設定した層間変形角以上でタイロッド6に設けられるギャップGが無くなる。
具体的には、図16(b)に示すように、オイルダンパー3に引張力F1が作用すると、ゴムリング63が第1接合プレート24のゴムリング63側を向く外面24fに近接する方向に変位する。さらに、図16(c)に示すように、ギャップGの範囲でゴムリング63が圧縮され、ギャップGが消失した後にはゴムリング63よりリングワッシャー64を介し、さらに内側ナット61Bを介してタイロッド6に引張力F1を伝達させることができる。
そして、第6実施形態では、アプセット加工されたタイロッド6を使用することで、雄ねじ6bを有するねじ部ではなく軸部6aにおける塑性化や破断を抑制することができ、鋼材の機械的性質に応じた靭性を確保できる。
また、タイロッド6にテーパー部6cが形成されて段差が形成されていないので、タイロッド6に引張力F1が作用したときに、図16(b)、(c)に示すように第1接合プレート24の貫通孔24bに引っ掛かることなく円滑に摺動させることができる。つまり、従来のようなアプセット部に段差を有するタイロッドの場合に比べて貫通孔24bにおける摺動性の向上を図ることができる。
そして、ギャップGが無くなったときに、タイロッド6が弾塑性ダンパーとして作用し、弾塑性ダンパーのバネ剛性が層剛性として付加され、建物の層間においてタイロッド6の耐力を建物の躯体に付加することができる。
このように、建物の各層に本実施形態の制震装置1Dを設置することで、特定層に変形を集中させることを抑制することで他の層に変形を分散することができ、各層の変形を均一化できる。
また、本第6実施形態では、タイロッド6に引張力F1のみを確実に作用させることができ、タイロッド6に圧縮力を作用させることがない簡単な構造により制震装置1Dを実現することができる。
このように第6実施形態による制震装置1Dでは、最大層間変形角を低減することで特定層に変形を集中させずに分散、均一化することができ、層崩壊を抑制することができる。
次に、図17及び図18(a)~(c)に示す第1変形例は、タイロッド6におけるテーパー部6dの傾斜角度を上述したテーパー部6cよりも急角度(ここでは1/2程度)としたものである。また、第1接合プレート24の貫通孔24bにおけるリングワッシャー64を向く面(外面24f)との周縁部にr=5mm程度の面取り部24dを形成した構成となっている。第1変形例の場合には、上述した傾斜角度が1/5程度の緩いテーパー部6c(図15参照)の場合に比べて急な傾斜角度となっているが、面取り部24dが設けられていることから、引張力が加わったタイロッド6における第1接合プレート24の貫通孔24bでの円滑な摺動を確保できる。
次に、図19及び図20(a)~(c)に示す第2変形例は、タイロッド6におけるテーパー部の傾斜角度を上述した第1変形例によるテーパー部6dよりもさらに急角度(ここでは1/1程度)となる段差部6eとしたものである。そして、第1接合プレート24の貫通孔24bにおけるリングワッシャー64を向く面(外面24f)との周縁部に上述した第1変形例の面取り部24d(図17参照))よりも大きく、すり鉢形状に形成した孔テーパー部24eを設けている。第2変形例では、段差部6eが孔テーパー部24eに沿って滑らかに摺動できるので、タイロッド6側に引張力が加わったタイロッド6における第1接合プレート24の貫通孔24bでの円滑な摺動を確保できる。
(実施例)
次に、上述した第6実施形態による制震装置1Dによる効果を裏付けるための実施例について説明する。
実施例では、上述した第6実施形態の制震装置1Dと同様の試験装置(試験体)を製作し、ダンパーとしての復元力特性の確認とともに、タイロッドの材料特性や摺動性等についても確認した。
試験体としては、オイルダンパーを1本設け、タイロッドを単体単調試験用として5体、オイルダンパーとギャップダンパー試験用に6体を設けている。
試験方法は、フレームを門型に枠組みした加力装置を使用し、オイルダンパーとタイロッド及び緩衝ゴムを設置し、2000kNの疲労試験機による加力を実施する。疲労試験機とダンパー接合部の下部にリニアスライダを設置し、面内方向にスムーズに変形できるようにしている。リニアスライダにおいては、ロッキングや面外方向への変形が生じないように別途球座を用いて変形を抑制した。試験の計測内容としては、疲労試験機の力と変位、ダンパー変位、ひずみである。
試験は、単調引張試験と漸増繰り返し試験を行った。単調引張試験では、靭性能の確認を実施し、本試験装置(試験体)の基本性能を確認した。漸増繰り返し試験では、漸増変位振幅繰り返し載荷とし、各振幅を2回繰り返すものとした。図21は、漸増繰返し加力に用いた載荷振幅を示し、時間(sec)と振幅(mm)の関係を示している。
本実施例の試験の結果、図22(a)、(b)に示す荷重(kN)と変形(mm)の関係が得られた。
図22(a)に示すように、ゴムリングを設けた軸径φ25mm(SS400)のタイロッドの単体試験体では、最大約80mmの変形に対して、想定した荷重(約150kN)と十分な伸び性能(約4.2%)を発揮することが確認された。また、単体試験体における破断試験を実施した結果、アプセット加工による効果で端部の雄ねじ部よりも先行して中央の母材(軸部)で破断することが確認された。
また、軸径φ42mm(NHT740)のタイロッドの単体漸増繰り返し試験体では、タイロッドの端部に急なテーパー部を形成するとともに、プレート(上述した実施形態の第1接合プレート24に相当)の貫通孔に面取り部を形成した構成のものを使用した。この漸増繰り返し試験を実施した結果、図22(b)に示すように、アプセット加工による段差部をスムーズに摺動させることにより、この摺動を繰り返して安定した履歴ループが得られることが確認された。また、想定した1本あたりの降伏荷重が870kN以上となることを確認できた。
なお、本実施例では、試験後にタイロッド端部のナット及びゴムリングを備えたリングワッシャーの緩みを目視で確認し、皿ばねを付加した場合においてとくに緩みが生じないことが確認された。
このように、本実施例による試験を行った結果、次の効果が確認された。先ず、タイロッドのアプセット加工による靭性を確保することができた。また、タイロッドにテーパー部を設けることにより、タイロッドの摺動性を確保することができた。さらに、タイロッドにおけるギャップが形成される定着部側の端部に設けた皿ばねによってゴムリングを備えたリングワッシャーの緩みを防止できた。また、皿ばねによるタイロッドの固定端における雄ねじ部の塑性化に伴う伸びによる緩みを防止できることを確認できた。さらに、ダンパーとしての想定した復元力特性、伸び性能を確認できた。
以上、本発明による制震装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第1実施形態では、架構13にシアリンクブレース2(耐震ブレース)を設けた構成としているが、第3実施形態のように耐震ブレースを架構13に設けない構成であってもよい。
また、本実施形態では、引張材としてPC鋼棒4(PC鋼材)を採用しているが、PC鋼材に代えてタイロッドを採用することも可能である。
また、本実施形態では、PC鋼棒4を挿通するガイド筒46が設けられているが、このガイド筒46を省略することも可能である。
さらに、本実施形態のギャップGは、PC鋼棒4の第1定着部41のみに設けられているが、第1定着部41及び第2定着部42のうち少なくとも一方に設けられていればよい。
本実施形態では、PC鋼棒4を採用しているが、PC鋼線等のPC鋼材であってもかまわない。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1、1A、1B、1C、1D 制震装置
2 シアリンクブレース(制震ブレース)
3 オイルダンパー(制震ダンパー)
3a 第1固定端
3b 第2固定端
4 PC鋼棒(PC鋼材、引張材)
4a 第1端部
4b 第2端部
6 タイロッド
6a 軸部
6b 雄ねじ
6c、6d テーパー部
6e 段差部
10 高層建築物(建物)
11 柱
12 梁
13 架構
21 ブレース材
24、24A 第1接合プレート
32、32A 第2接合プレート
41 第1定着部
42 第2定着部
43 第1定着板
44、44A、44B ばね部材(弾性部材)
46、46A ガイド筒
47 第2定着板
48 ハウジング
49 第3定着板
50 緩衝部材(弾性部材)
51 ゴム筒体
52 筒状スペーサ
61、62 ナット
63 ゴムリング(弾性部材)
64 リングワッシャー
X1 左右方向

Claims (6)

  1. 建物の層間に配置される制震装置であって、
    前記建物の躯体に接続された制震ダンパーと、
    前記制震ダンパーと並列に設けられたPC鋼材又はタイロッドからなる引張材と、
    を備え、
    前記引張材の定着部には、前記制震ダンパーの引張方向の変位を許容するギャップを有し、
    前記引張材は、引張力を作用させた状態で弾塑性ダンパーとして機能することを特徴とする制震装置。
  2. 前記建物の層は、柱と梁によって囲まれる架構に耐震ブレースを配置させた制震層を有し、
    前記制震ダンパーは、前記耐震ブレースと前記架構との間に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の制震装置。
  3. 前記建物の層は、免震装置を配置させた免震層を有し、
    前記制震ダンパーは、前記免震層を構成する躯体同士の間に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制震装置。
  4. 前記引張材は、引張力のみが作用されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制震装置。
  5. 前記定着部は、
    前記制震ダンパーの少なくとも一方の端部に固定される接合プレートと、
    該接合プレートに形成される貫通孔に前記引張材が挿通された状態で定着される定着板と、
    前記接合プレートと前記定着板との間に設けられる弾性部材と、
    を備え、
    前記接合プレートと前記定着板との離間距離は、前記制震ダンパーにおける引張方向の変位可能で、かつ前記弾性部材を圧縮可能な寸法に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制震装置。
  6. 前記引張材を挿通するガイド筒が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制震装置。
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