本願は、先行する日本国出願である特願2017-191666(出願日:2017年9月29日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
以下、本発明の実施形態に係る積層体、タッチパネル、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る保護フィルム付き積層体の概略構成図であり、図2は図1に示される保護フィルム付き積層体の一部の拡大図である。図3および図4は、実施形態に係る他の保護フィルム付き積層体の概略構成図であり、図5は図4の保護フィルム付き積層体の模式的な平面図である。図6および図7は、実施形態に係る他の保護フィルム付き積層体の概略構成図である。図8(A)~図8(C)および図9(A)~図9(C)は本実施形態に係る保護フィルム付き積層体の製造工程を模式的に示した図である。
<<<<保護フィルム付き積層体>>>>
図1に示される保護フィルム付き積層体10は、第1の基材21および第1の基材21の一方の面である第1の面21A側に設けられた第1の樹脂層22を備える積層体20と、積層体20の第1の樹脂層22に剥離可能に密着した保護フィルム30とを備えている。積層体20は、第1の基材21および第1の樹脂層22の他、第1の基材21における第1の面21Aとは反対側の面である第2の面21B側に設けられた第1の機能層23をさらに備えている。本明細書における「機能層」とは、積層体において、何らかの機能を発揮することを意図された層である。具体的には、例えば、積層体における第1の機能層としては、導電層、易接着層、屈折率調整層、弾性・伸びなど物理特性調整層、透過吸収光波長調整層、顔料・染料着色層、紫外線防止層などが挙げられる。機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。機能層が2層以上積層されたものである場合、それぞれの層が有する機能は同じであってもよいが、異なっていてもよい。本実施形態においては、第1の機能層23が、導電層である場合について説明する。
保護フィルム付き積層体10の厚みは、25μm以上500μm以下であることが好ましい。保護フィルム付き積層体10の厚みが、25μm以上であれば、保護フィルム付き積層体10の搬送時や加工時のハンドリング性が良好となり、また500μm以下であれば、薄型化の観点から良好であり、また容易に巻き取ることができる。保護フィルム付き積層体10の厚みの下限は、50μm以上であることがより好ましく、上限は300μm以下、200μm以下、160μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。保護フィルム付き積層体10の厚みは、厚み測定装置(製品名「デジマチックインジケーターIDF-130」、株式会社ミツトヨ製)を用いて任意の10箇所の厚みを測定し、その算術平均値を算出することにより求めることができる。
保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱する前後において、加熱前の積層体20と保護フィルム30との剥離強度に対する加熱後の積層体20と保護フィルム30の剥離強度の上昇率は、100%以下であることが好ましい。後述するように、保護フィルム付き積層体を加熱すると、加熱前に比べて積層体と保護フィルムとの剥離強度が上昇してしまう傾向があるが、上記上昇率が、100%以下であれば、保護フィルム付き積層体10を加熱した場合であっても、保護フィルム30を容易に剥離することができる。上記上昇率は、80%以下、60%以下、50%以下、40%以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。なお、上昇率は負であってもよい。加熱前の積層体20と保護フィルム30との剥離強度および加熱後の積層体20と保護フィルム30との剥離強度は、それぞれ、引張り試験機(製品名「テンシロン万能材料試験機RTF-1150-H」、株式会社A&D製)を用い、以下の測定方法により測定される値である。剥離強度の測定の際には、まず、縦12.5cm×横5cm×厚さ1.1mmのガラス板に両面テープ(株式会社寺岡製作所 No.751B)を貼り付ける。一方で、保護フィルム付き積層体を縦15cm×横2.5cmの大きさに切り出し、第1の基材側をガラス板上の両面テープに貼り付け、引張り試験機の一対の治具に保持させる。そして、ガラス板に貼り付けられた保護フィルム付き積層体を引張り試験機の一対の治具に保持させる。治具に保護フィルム付き積層体を保持させる際には、人手で予め積層体から保護フィルムを若干剥離させて、きっかけを作り、片方の治具に保護フィルムを保持させ、他方の治具にガラス板および積層体を保持させる。そして、この状態で、剥離速度300mm/分、剥離距離50mm、剥離角度180°の条件で、保護フィルムを剥離し、そのときの積層体と保護フィルムとの剥離強度を測定する。なお、剥離強度は、3回測定した値の算術平均値とする。加熱前の保護フィルムの剥離強度に対する加熱した後の保護フィルムの剥離強度の上昇率は、前記上昇率をA(%)とし、加熱前の保護フィルムの剥離強度をB(mN/25mm)とし、加熱後の剥離強度をC(mN/25mm)としたとき、以下の式から算出される。なお、上記サンプルの大きさを切り出せない場合には、例えば、縦の長さを8cm程度にすることが可能である。
A=(C-B)/B×100
保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱する前の積層体20と保護フィルム30との剥離強度は、200mN/25mm以下であることが好ましい。この剥離強度が、200mN/25mm以下であれば、加熱前において、保護フィルム30を容易に剥離することができる。また、保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間した加熱後の積層体20と保護フィルム30との剥離強度は、200mN/25mm以下であることが好ましい。この剥離強度が、200mN/25mm以下であれば、加熱後であっても、保護フィルム30を容易に剥離することができる。加熱前の上記剥離強度および加熱後の上記剥離強度の下限は、保護フィルム30を積層体20に密着させ、有効に第1の樹脂層22を保護する観点から、10mN/25mm以上であることが好ましい。加熱前の上記剥離強度および加熱後の上記剥離強度の上限は、150mN/25mm以下、120mN/25mm以下、110mN/25mm以下、105mN/25mm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱したとき、加熱後の保護フィルム付き積層体10のMD方向およびTD方向の加熱収縮率は、それぞれ、0.8%以下であることが好ましい。ここで、MD方向とは、長方形型ディスプレイである場合は、短軸と平行な方向を、TD方向とは、長軸と平行な方向をいう。正方形である場合には、4辺のうち任意の1辺を選択し、その辺と平行な方向をMD、その辺と垂直な方向をTDという。更に、不定形である場合には、適宜正方形に切り出し(例えば50cm角、40cm角、30cm角、20cm角10cm角、5cm角など可能な大きさの正方形で)前記したような方向をいう。なお、製造工程に用いるロール形態のフィルムにおいては、MDはMachine Direction:機械軸方向(フィルムが流れる進行方向)であり、TDはTransverse Direction:横幅方向である。保護フィルム付き積層体10のMD方向およびTD方向の加熱収縮率が、それぞれ0.8%以下であれば、保護フィルム付き積層体10を加熱した場合に、第1の機能層23がパターニングされていたとしても、第1の機能層23の寸法変化を小さくすることができる。上記MD方向およびTD方向の加熱収縮率は、それぞれ、0.6%以下、0.5%以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。加熱収縮率は、以下のようにして測定するものとする。まず、保護フィルム付き積層体を、MD方向が縦方向となり、TD方向が横方向となるように縦8cm×横8cmの大きさに切り出す。切り出した保護フィルム付き積層体を画像寸法測定器(IM-6120:株式会社キーエンス製)にて加熱前の縦方向および横方向の長さを測定する。そして、この切り出した保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体の縦方向および横方向の長さを前記画像寸法測定器にて測定し、以下の式に基づいてMD方向およびTD方向の加熱収縮率を算出する。以下の式においては、DMDはMD方向の加熱収縮率(%)であり、DTDはTD方向の加熱収縮率(%)であり、EMDは加熱前の保護フィルム付き積層体のMD方向の長さ(cm)であり、EMDは加熱前の保護フィルム付き積層体のTD方向の長さ(cm)であり、FMDは加熱後の保護フィルム付き積層体のMD方向の長さ(cm)であり、FMDは加熱後の保護フィルム付き積層体のTD方向の長さ(cm)である。なお、保護フィルム付き積層体を上記大きさに切り出せない場合には、取り扱える可能な大きさである縦2cm×横2cm以上の大きさに保護フィルム付き積層体を適宜切り出してもよい。
DMD=(FMD-EMD)/EMD×100
DTD=(FTD-ETD)/ETD×100
保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱したとき、加熱後の保護フィルム付き積層体10のカール量は、±10mm以下であることが好ましい。カール量が±10mm以下であれば、保護フィルム付き積層体10を容易に取り扱うことができる。カール量は、以下のようにして測定するものとする。まず、保護フィルム付き積層体を縦34cm×横34cmの大きさに切り出す。そして、この切り出した保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体を平らな台の上に置く。そして、保護フィルム付き積層体の4隅と台との距離をそれぞれ測定し、それを平均した値をカール量とする。なお、台に保護フィルムを下側となるように置いた場合、保護フィルム付き積層体の上面が凹状にカールする場合を正(+)とし、保護フィルム付き積層体の上面が凸状にカールする場合を負(-)とする。カール量は、±9mm以下、±8mm以下、±7mm以下、±5mm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。なお、保護フィルム付き積層体を上記大きさに切り出せない場合には、カール測定が十分可能な大きさである縦5cm×横5cm以上の大きさに保護フィルム付き積層体を適宜切り出してもよい。
保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱する前後において、保護フィルム付き積層体10のヘイズ値(全ヘイズ値)を測定したとき、加熱後の保護フィルム付き積層体10のヘイズ値から加熱前に保護フィルム付き積層体10のヘイズ値を引いた値であるヘイズ変化量は、5%以内であることが好ましい。ヘイズ変化量が、5%以内であれば、加熱後であっても、良好な透明性を有する保護フィルム付き積層体10を得ることができる。このようなヘイズ変化量は、後述する第2の基材31における第2の樹脂層32側の第1の面31Aとは反対側の第2の面31Bにオリゴマー析出抑制層を設けることによって達成することができる。保護フィルム付き積層体10のヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、縦10cm×横10cmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で積層体が非光源側となるように設置し、保護フィルム付き積層体1枚に対して3回測定を行い、3回測定して得られた値の算術平均値とする。保護フィルム付き積層体10は、目視した表面は平坦であり、かつ第1の機能層23等の積層する層も平坦であり、また厚みのばらつきも厚みの平均値の±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内に収まる。したがって、切り出した保護フィルム付き積層体の異なる3箇所のヘイズ値を測定することで、おおよその保護フィルム付き積層体の面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。なお、保護フィルム付き積層体を上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに保護フィルム付き積層体を適宜切り出してもよい。保護フィルム付き積層体の大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。保護フィルム付き積層体10においては、得られるヘイズ変化量のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、ヘイズ値の平均値の±30%以内である。上記ヘイズ変化量は、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.7%以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
保護フィルム付き積層体10の表面10Aの表面抵抗値は、保護フィルム付き積層体10の裏面の表面抵抗値よりも低くなっていてもよい。表面10Aの表面抵抗値は、後述する第1の機能層23の表面抵抗値と同様にして測定することができる。また、裏面10Bの表面抵抗値は、表面抵抗値測定器(製品名「Hiresta IP MCP-HT260」、三菱化学株式会社製)を用いて測定することができる。
保護フィルム付き積層体から保護フィルムを剥離する際に、剥離帯電するおそれがある。剥離帯電すると、積層体における第1の機能層中の導電性繊維が切れてしまうおそれがある。特に導電性繊維は、細線化の傾向があるので、導電性繊維はより切れやすくなっている。このため、裏面10Bにおける表面抵抗値は、保護フィルム30を剥離したときの剥離帯電および導電性繊維の切れを抑制する観点から、1×1013Ω/□以下であることが好ましい。裏面10Bにおけるこのような表面抵抗値は、後述する第2の機能層33に帯電防止剤を含ませることによって、または帯電防止層を形成することによって達成することができる。裏面10Bにおける表面抵抗値は、1×1012Ω/□以下、1×1011Ω/□以下、1×1010Ω/□以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
保護フィルム付き積層体は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。保護フィルム付き積層体が所望の大きさにカットされている場合、保護フィルム付き積層体の大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、保護フィルム付き積層体の大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、保護フィルム付き積層体が四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、保護フィルム付き積層体が四角形状である場合、上記インチを求める際の保護フィルム付き積層体の縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、保護フィルム付き積層体10の大きさが大きい場合には、任意の位置(端よりは中央部付近で)からA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。
<<<積層体>>>
積層体20の厚みは、25μm以上500μm以下であることが好ましい。積層体20の厚みが、25μm以上であれば、ハンドリング性が良好となり、また100μm以下であれば、薄型化の観点から良好である。保護フィルム付き積層体10の厚みの下限は、40μm以上であることがより好ましく、上限は250μm以下、100μm以下、70μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。積層体20の厚みは、厚み測定装置(製品名「デジマチックインジケーターIDF-130」、株式会社ミツトヨ製)を用いて任意の10箇所の厚みを測定し、その算術平均値を算出することにより求めることができる。
積層体20は、保護フィルム30を剥離した状態において、ヘイズ値(全ヘイズ値)が5%以下となっていることが好ましい。積層体20のヘイズ値が5%以下であれば、充分な光学的性能を得ることができる。積層体20のヘイズ値は、保護フィルム付き積層体10のヘイズ値と同様の方法によって測定するものとする。積層体20のヘイズ値は、1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることが最も好ましい。ただし、極端に低抵抗の場合、具体的には10Ω/□以下の場合は、ヘイズ値は2%以下が好ましく、1.5%以下であることが最も好ましい。なお、パターニング後やセンサーになった後であってもヘイズ変化量は測定可能で、22mm角以上に切り出し、測定した結果そのものが5%以下であれば、ヘイズ変化量も5%以内といえる。
積層体20は、保護フィルム30を剥離した状態において、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。積層体20の全光線透過率が80%以上であれば、充分な光学的性能を得ることができる。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、縦5cm×横10cmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で第1の樹脂層が非光源側となるように設置し、積層体1枚に対して3回測定を行い、3回測定して得られた値の算術平均値とする。積層体20は、目視した表面は平坦であり、かつ第1の機能層23等の積層する層も平坦であり、また厚みのばらつきも厚みの平均値の±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内に収まる。したがって、切り出した積層体の異なる3箇所の全光線透過率を測定することで、おおよその積層体の面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。なお、積層体を上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに積層体を適宜切り出してもよい。積層体の大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。積層体20においては、得られる全光線透過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、全光線透過率の平均値の±10%以内である。積層体20の全光線透過率は、88%以上であることがより好ましく、89%以上であることが最も好ましい。なお、パターニング後やセンサーになった後の場合は22mm角以上に切り出し、測定した全光線透過率が83%以上であれば、積層体20の状態であっても、全光線透過率は80%以上と推測可能である。
積層体20は、後述するように導電性繊維25を含む導電層としての第1の機能層23を有している。導電性繊維として、特に金属ナノワイヤを用いると、金属ナノワイヤに起因する光の散乱が生じ、導電部が白っぽく浮き上がって見える現象(ミルキネス)が生じやすい。また、金属ナノワイヤはLEDからの光で特に反射しやすいので、光源として、LEDを用いると、ミルキネスの問題が顕著となってしまう傾向があり、更なるミルキネスの解決が求められている。なお、上記ミルキネスの問題に対して、金属ナノワイヤの繊維径を細くすることも検討されているが、金属ナノワイヤの繊維径を細くすると、ヘイズ値は低下するものの、ミルキネスの問題は依然として残る。ヘイズ値とミルキネスは異なる事象であり、ヘイズ値を低下させたとしても、ミルキネスが解決される訳ではない。このようなミルキネスの問題を抑制する観点から、積層体20においては、第1の機能層23が存在する領域における拡散光反射率(Specular Component Exclude:SCE)が、0.5%以下となっていることが好ましい。「拡散光反射率」とは、正反射光を除く光の反射率である。なお、正反射光を除くとしたのは、正反射光は空気界面との屈折率差の影響を大きく受けるため、正反射率とミルキネスとは相関関係がないからである。上記拡散光反射率は、0.4%以下、0.35%以下、0.3%以下となっていることが好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
上記拡散光反射率の測定の際には、まず10cm×10cmの大きさに切り出した導電性フィルムをカールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で、積層体、粘着フィルム、および黒色板の順序で貼り合せる。積層体は、黒色板よりも上側となり、かつ第1の機能層が上側となるように配置される。そして、第1の機能層側から分光測色計(製品名「CM-600d」、コニカミノルタ株式会社、測定口φ11mm)を用いて、以下の測定条件で拡散光反射率を測定する。なお、CM-600dを用いて拡散光反射率を測定する際には、積層体の中央部にCM-600dを載せた状態で測定ボタンを押して測定する。拡散光反射率は、積層体1枚に対し3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、第1の機能層23はべた膜状になっているので、上記大きさに切り出した積層体20においては全て第1の機能層が存在する領域となるが、第1の機能層がパターニングされている場合のように第1の機能層が存在しない領域もある場合には、第1の機能層が存在する領域で拡散光反射率を測定するものとする。本明細書における「べた膜状」とは、導電性繊維を含む均質な導電膜で、パターニングが施されていない状態を意味するものとする。なお上記大きさが切り出せない場合は、3cm角以上であればよい。
(測定条件)
・主光源:D65
・光源2:無し
・視野:2度
・表色系:Yxy
・色差式:ΔE*ab
積層体20の第1の機能層23が存在する領域における拡散光反射率を0.5%以下とする手段としては、特に限定されないが、例えば、第1の機能層23に光透過性樹脂24および導電性繊維25の他に、後述する少なくとも一部の表面が導電性繊維25よりも暗色を呈する表面暗色系繊維を含ませることが挙げられる。
積層体20は、イエローインデックス(YI)が15以下であることが好ましい。積層体20のYIが15以下であれば、積層体20の黄色味を抑制でき、透明性が求められる用途に適用できる。イエローインデックス(YI)は、分光光度計(製品名「UV-3100PC」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に50mm×100mmの大きさに切り出した積層体の第1の機能層側が光源側となるように配置した状態で測定した積層体の波長300nm~780nmの透過率からJIS Z8722:2009に記載された演算式に従って色度三刺激値X、Y、Zを計算し、三刺激値X、Y、ZからASTM D1925:1962に記載された演算式に従って算出された値である。積層体20のイエローインデックス(YI)の上限は、10以下、7以下、3以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。上記イエローインデックス(YI)は、積層体1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。なお、UV-3100PCにおいては、イエローインデックスは、UV-3100PCに接続されたモニター上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」の項目にチェックを入れることによって算出される。波長300nm~780nmの透過率の測定は、以下の条件で、波長300nm~780nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって求めるものとする。また、分光透過率のスペクトルにうねりが出るようであれば、デルタ5.0nmでスムージング処理を行ってもよい。なお、上記大きさが切り出せない場合は、3cm角以上であればよい。
(測定条件)
・波長域:300nm~780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
積層体20の用途は、特に限定されず、例えば、光学フィルムや透明導電層を備える導電性フィルムが用いられる様々な用途(例えば、センサー用途)で用いてもよい。また、積層体20は、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)用途や車載(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)用途に適している。積層体20を車載用途のセンサーとして用いる場合、例えば、ハンドルやシートなど人が触れる部分に配置されるセンサーが挙げられる。また、積層体20は、フォールダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。さらに、住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、積層体20は、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、積層体は、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。積層体20の具体的な用途としては、例えば、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。積層体20の使用時の形状は、用途に応じて適宜設計されるので、特に限定されないが、例えば、曲面状になっていてもよい。
積層体20は、上記したように、第1の基材21および第1の基材21の第1の面21A側に設けられた第1の樹脂層22を備えている。
<<第1の基材>>
第1の基材21としては、特に限定されないが、例えば、樹脂からなる基材が挙げられる。このような樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。なお、第1の基材は、ガラス基材であってもよい。
積層体20として、折り畳み可能な積層体を得る場合には、第1の基材21を構成する樹脂としては、折り畳み性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れた折り畳み性を有するだけでなく、優れた硬度及び透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度及び透明性を付与することもできることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン基材等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン骨格を有するものが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種が挙げられる。
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースが挙げられる。トリアセチルセルロースは、可視光域380~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリアセチルセルロースの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
なお、トリアセチルセルロースとしては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。また、これらトリアセチルセルロース系樹脂には、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
ポリイミド系樹脂は、脂肪族のポリイミド系樹脂であってもよいが、芳香族環を含む芳香族系ポリイミド樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一方に芳香族環を含むものである。
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。
第1の基材21の厚みは、特に限定されないが、3μm以上500μm以下とすることが可能であり、第1の基材21の厚みの下限はハンドリング性等の観点から10μm以上、20μm以上の順に好ましい(数値が大きいほど好ましい)。第1の基材21の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下の順に好ましい(数値が小さいほど好ましい)。第1の基材21の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された第1の基材21の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された厚みの平均値として求めるものとする。
第1の基材21の表面には、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。また、第1の基材21は、少なくとも一方の面側に、他の層との接着性を向上させるため、巻き取り時の貼り付きを防止するため、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制するための下地層を有するものであってもよい。ただし、本明細書においては、第1の基材の少なくとも一方の面側に存在し、かつ第1の基材に接する下地層は、第1の基材の一部をなすものとし、第1の樹脂層には含まれないものとする。
下地層は、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂等を用いることが可能である。
下地層は、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
<<第1の樹脂層>>
第1の樹脂層22は、第1の基材21の第1の面21A側に配置されている。本明細書における「第1の樹脂層」とは、主に樹脂から構成される層を意味するが、樹脂以外に粒子や添加剤を含んでいてもよい。また、本明細書における「第1の樹脂層」は、単層であるものとする。本実施形態における第1の樹脂層22は、ハードコート層である。本明細書における「ハードコート層」とは、次に説明するインデンテーション硬さが、100MPa以上の層を意味するものとする。
第1の樹脂層22の膜厚方向Dの断面におけるインデンテーション硬さは、100MPa以上となっている。第1の樹脂層22のインデンテーション硬さの下限は200MPa以上であることが好ましく、上限は折り曲げた際にクラックが発生し難く、また容易に取り扱うことができることから1000MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましい。本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。上記インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、測定サンプルについてHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、保護フィルム付き積層体を縦1cm×横1cmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体をシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、保護フィルム付き積層体全体を樹脂にて包埋する。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させる。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ株式会社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。超薄切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとする。次いで、測定サンプルを、市販のスライドガラス(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン株式会社製)に、測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるように、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成株式会社製)を介して固定する。具体的には、上記スライドガラスの中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また接着樹脂が測定サンプルからはみ出さないように滴下は1滴とする。測定サンプルを測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるようにスライドガラスに接触させ、スライドガラスと測定サンプルの間で接着樹脂を押し広げ、仮接着する。そして、その状態で、12時間室温で放置し、測定サンプルをスライドガラスに接着により固定する。なお、固定方法は任意であり、測定用サンプルが動かなければよい。次いで、測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐、BRUKER社製のTI-0039)を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながら第1の樹脂層22に垂直に押し込む。ここで、バーコビッチ圧子は、第1の基材や第2の樹脂層の影響を避けるためおよび第1の樹脂層の側縁の影響を避けるために、第1の基材や第2の樹脂層と樹脂層の界面から樹脂層の中央側にそれぞれ500nm離れ、第1の樹脂層の両側端からそれぞれ第1の樹脂層の中央側に500nm離れた第1の樹脂層の部分内に押し込むものとする。その後変位100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷する。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さ(HIT)を、下記数式(1)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と第1の樹脂層22が接している接触投影面積Ap(mm2)で除した値により求める。インデンテーション硬さ(HIT)は、10箇所測定して得られた値の算術平均値とする。Apは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
HIT=Fmax/Ap …(1)
第1の樹脂層22は、上記したようにハードコート層として機能するので、保護フィルム30を剥離した状態で、第1の樹脂層22の表面は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましい。第1の樹脂層22の表面の鉛筆硬度がHであることにより、積層体20が硬くなり、耐久性を向上させることができる。なお、積層体20のカール防止の観点から、第1の樹脂層22の表面の鉛筆硬度の上限は4H程度程とすることが好ましい。鉛筆硬度試験においては、保護フィルム付き積層体10を縦5cm×横10cmの大きさに切り出し、保護フィルム30を剥離し、保護フィルム30が剥離された積層体を、第1の樹脂層22が上側になるようにガラス板上に折れやシワがないようニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)で固定し、鉛筆に750gの荷重を加えるとともに、ひっかき速度を1mm/秒とした状態で行った。第1の樹脂層22の表面の鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において第1の樹脂層22の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とした。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上第1の樹脂層22の表面に傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては第1の樹脂層22の表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った積層体20の表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。
保護フィルム付き積層体10を加熱しない状態で、保護フィルム30を剥離したときの第1の樹脂層22の表面における水の接触角(以下、この接触角を、「初期接触角」と称することもある。)は、70°以上95°以下であることが好ましい。初期接触角が70°以上95°以下であれば、保護フィルム30を容易に剥離することができる。また、保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後に保護フィルム30を剥離したときの第1の樹脂層22の表面における水に対する接触角(以下、この接触角を「加熱後接触角」と称することもある。)は、70°以上95°以下であることが好ましい。加熱後接触角が70°以上95°以下であれば、保護フィルム付き積層体10を加熱した場合であっても、保護フィルム30を容易に剥離することができる。第1の樹脂層22の表面における水に対する初期接触角および加熱後接触角は、JIS R3257:1999に記載の静滴法に従って、顕微鏡式接触角計(製品名「DropMaster300」、協和界面科学株式会社製)を用いて、測定する。具体的には、保護フィルム付き積層体10を縦5cm×横10cmの大きさに切り出し、切り出した保護フィルム付き積層体10において保護フィルム30を剥離した状態で、1μLの水を第1の樹脂層22の表面に滴下して、滴下直後における接触角を10点測定する。そして、それらの算術平均値を第1の樹脂層22の表面の接触角とする。
第1の樹脂層22の膜厚は0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。第1の樹脂層22の膜厚が0.5μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また第1の樹脂層22の膜厚が15μm以下であれば、薄型化を図ることができる。第1の樹脂層22の膜厚の下限は、第1の樹脂層22の割れを抑制する観点から、12μm以下であることがより好ましい。また、第1の樹脂層22の上限は、第1の樹脂層22の薄膜化を図る一方で、カールの発生を抑制する観点から、10μm以下であることがより好ましい。
第1の樹脂層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、第1の樹脂層の断面を撮影し、その断面の画像において第1の樹脂層の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値とする。具体的には、まず、保護フィルム付き積層体から断面観察用のサンプルを作製する。詳細には、2mm×5mmに切り出した保護フィルム付き積層体をシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、保護フィルム付き積層体全体を樹脂にて包埋する。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させる。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ株式会社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150メッシュ)にて採取し、STEM用サンプルとする。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーを「ビームモニタ絞り3」、対物レンズ絞りを「3」にし、またW.D.を「8mm」にしてもよい。第1の樹脂層の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、第1の樹脂層と他の層(第1の基材や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、さらにその平均値を第1の樹脂層の膜厚の値とする。
第1の樹脂層22は、少なくとも樹脂から構成することが可能である。なお、第1の樹脂層22は、樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤等の添加剤の少なくともいずれかを含んでいてもよい。第1の樹脂層22は、樹脂の他に、添加剤としてシリコーン系化合物やフッ素系化合物を含んでいることが好ましい。
<樹脂>
第1の樹脂層22における樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線重合性プレポリマーは、例えば、1万の重量平均分子量を有していてもよい。電離放射線重合性プレポリマーの重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる第1の樹脂層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、第1の樹脂層22を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
<無機粒子>
無機粒子は、第1の樹脂層22の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、主として無機物からなる粒子である。無機粒子は、有機成分を含んでいてもよいが、無機物のみから構成されていることが好ましい。無機粒子は、有機成分により表面処理されたものであってもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、第1の樹脂層22の表面硬度をより優れたものとすることができる。第1の樹脂層22に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、第1の樹脂層22の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、第1の樹脂層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均一次粒子径がこの範囲であっても、平均一次粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、第1の機能層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した第1の樹脂層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して粒子径を求め、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率1万倍~10万倍で撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。
第1の樹脂層22中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%以上であれば、十分な硬度を担保することができ、また無機粒子の含有量が70質量%以下であれば、充填率が上がりすぎることがないので、無機粒子と樹脂成分との密着性が良好であり、第1の樹脂層の硬度低下を抑制できる。
無機粒子としては、表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
<有機粒子>
有機粒子も、第1の樹脂層22の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、主として有機物からなる粒子である。有機粒子は、無機成分を含んでいてもよいが、有機物のみから構成されていることが好ましい。有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
<シリコーン系化合物>
シリコーン系化合物は、第2の樹脂層32に対し第1の樹脂層22を剥がれやすくするための成分である。第1の樹脂層22が、シリコーン系化合物を含むことにより、第1の樹脂層22における第2の樹脂層32との界面付近にシリコーン系化合物が偏在するので、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32の間の界面で保護フィルム30を容易に剥離することができる。
シリコーン系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。シリコーン系化合物として重合性官能基を有するシリコーン系化合物を用いた場合には、シリコーン系化合物は第2の樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
シリコーン系化合物としては、特に限定されないが、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のストレートシリコーンや変性シリコーンが挙げられる。
変性シリコーンとしては、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン等のエチレン性不飽和基変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
シリコーン系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。シリコーン系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面で保護フィルム30を容易に剥離することができ、またシリコーン系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面において所望の密着性を確保することができる。
シリコーン系化合物の市販品としては、例えば、セイカビーム10-28(大日精化工業株式会社製)やBYK-313、BYK-322、BYK-331、BYK-333、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-UV3510(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
<フッ素系化合物>
フッ素系化合物は、第2の樹脂層32に対し第1の樹脂層22を剥がれやすくするための成分である。第1の樹脂層22が、フッ素系化合物を含むことにより、第1の樹脂層22における第2の樹脂層32との界面付近にフッ素系化合物が偏在するので、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32の間の界面で保護フィルム30を容易に剥離することができる。
フッ素系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。フッ素系化合物として重合性官能基を有するフッ素化合物を用いた場合には、フッ素系化合物は第2の樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
フッ素系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。フッ素系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面で保護フィルム30を容易に剥離することができ、またフッ素系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面において所望の密着性を確保することができる。
フッ素系化合物の市販品としては、例えば、F-568、F-556、F-554、F-553(いずれもDIC株式会社製)等が挙げられる。
<<第1の機能層>>
第1の機能層23は、第1の基材21の第2の面21B側に設けられており、第1の機能層23の表面23Aは、保護フィルム付き積層体10の表面10Aとなっている。第1の機能層23は、導電層として機能するものである。第1の機能層23は、パターニングされていない状態の膜、いわゆるべた膜から構成されている。第1の機能層は、パターニングされており、複数の導電部と、導電部間に位置する非導電部とから構成されていてもよい。
第1の機能層23は、図2に示されるように、光透過性樹脂24と、光透過性樹脂24中に配置された導電性繊維25とを含んでいる。また、第1の機能層23は、ミルキネスを抑制する観点から、異種繊維(図示せず)をさらに含んでいてもよい。第1の機能層23は導電性繊維25を含む層であり、第1の機能層23の界面が確認しにくい場合には、第1の機能層23の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtまたはAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、保護フィルム付き積層体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。また、本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。また、本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。
第1の機能層23は、第1の機能層23の表面23Aから電気的に導通可能となっている。第1の機能層23が、第1の機能層23の表面23Aから電気的に導通可能であるか否かは、第1の機能層23の表面抵抗値を測定することによって判断することが可能である。第1の機能層の表面抵抗値の測定方法は、後述するので、ここでは説明を省略するものとする。第1の機能層の表面抵抗値の算術平均値が1MΩ/□未満であれば、第1の機能層の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。
第1の機能層23の表面抵抗値は、200Ω/□以下となっている。第1の機能層23の表面抵抗値が200Ω/□を超えると、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合が発生するおそれがある。第1の機能層23の表面抵抗値は、第1の機能層23の表面23Aにおける表面抵抗値である。表面抵抗値は、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4深針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、株式会社三菱化学アナリテック製、端子形状:ASP)および非破壊式(渦電流法)の抵抗率計(製品名「EC-80P」、ナプソン株式会社製、https://www.napson.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/Napson_EC80P_リーフレット_160614.pdf)のいずれを用いて測定できるが、第1の機能層の膜厚に因らずに正確に測定できる点から、非破壊式の抵抗率計を用いて測定することが好ましい。非破壊式の抵抗率計のプローブは、サンプルに簡易接触させるだけで測定できるものであり、サンプルにダメージを与えず、任意の場所の測定が可能である。その意味で、非接触式と呼ぶ場合もある。非破壊式の抵抗率計による第1の機能層の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体を平らなガラス板上に第1の機能層側が上面となるように配置して、プローブを第1の機能層に接触させて行うものとする。EC-80Pを用いて表面抵抗値を測定する場合には、SW2を選択し、モードM-Hのシート抵抗測定Ω/□を選択する。また、測定レンジによってプローブタイプを容易に付け替えることができ、本実施形態においては測定レンジが10~1000Ω/□レンジのプローブ、0.5~10Ω/□レンジのプローブを用いる。なお、EC-80Pの代わりにEC-80P-PN(ナプソン株式会社製)でも同様に測定できるが、この機種の場合には、P/NはPを選択するとよい。また、接触式の抵抗率計による第1の機能層の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体を平らなガラス板上に第1の機能層側が上面となるように配置して、ASP端子を第1の機能層の中心に配置し、全ての電極ピンを第1の機能層に均一に押し当てることによって行うものとする。接触式の抵抗率計で表面抵抗値を測定する際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択する。その後は、スタートボタンを押し、ホールドすると、測定結果が表示される。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、23℃および相対湿度55%の環境下で行うものとする。また、表面抵抗値を測定する際には、抵抗率計の種類に関わらず、水平な机の上に保護フィルム付き積層体を配置し、均一な平面状態で測定を行うが、保護フィルム付き積層体がカールする等平面状態を維持できない場合には、保護フィルム付き積層体をテープ等でガラス板に貼り付けた状態で行うものとする。測定箇所は、第1の機能層の中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とする。ここで、JIS K7194:1994に全て従うと、測定点は1点、5点、または9点であるが、実際に80mm×50mmの大きさに保護フィルム付き積層体を切り出し、JIS K7194:1994の図5の通り測定すると、測定値が不安定になる場合がある。このため、測定点については、JIS K7194:1994とは異なり、第1の機能層の中央部3箇所で測定するものとする。例えば、JIS K7194:1994の図5の1番の位置、1番および7番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)、および1番と9番に間の位置(好ましくは1番に近い位置)で測定する。表面抵抗値をサンプルの中心付近で測定することが望ましいことは、井坂 大智、他1名、“四深針法による導電性薄膜の抵抗率測定” 平成20年度電子情報通信学会東京支部学生研究発表会(https://www.ieice.org/tokyo/gakusei/kenkyuu/14/pdf/120.pdf)でも報告されている。第1の機能層23の表面抵抗値の下限は、1Ω/□以上、5Ω/□以上、10Ω/□以上の順に好ましく(数値が大きいほど好ましい)、また第1の機能層23の表面抵抗値の上限は、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、50Ω/□以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
第1の機能層23の膜厚は、300nm未満となっていることが好ましい。なお、第1の機能層23の膜厚が300nm以上であると、その分、光透過性樹脂24の膜厚が厚すぎることになるので、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が第1の機能層の表面に露出しなくなってしまい、第1の機能層の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。第1の機能層の膜厚が大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、1Ω/□以上10Ω/□以下の低表面抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎると低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、膜厚は300nm以下が好ましい。なお、低表面抵抗値が維持できる限り第1の機能層は薄膜である方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。第1の機能層23の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、第1の機能層23の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。第1の機能層の膜厚が10nm未満であると、その分、光透過性樹脂24の膜厚が薄すぎることになるので、第1の機能層からの導電性繊維の脱離、第1の機能層の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。また、導電性繊維が切れやすいなど不安定性がないようにするためには、導電性繊維の繊維径がある程度大きいことが好ましい。導電性繊維が安定して形態を維持できる繊維径としては、10nm以上または15nm以上であると考えられる。一方で、安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、第1の機能層23の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。
第1の機能層23の膜厚は、第1の樹脂層22の膜厚と同様の方法によって測定することができる。第1の機能層の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、第1の機能層と他の層(第1の樹脂層や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、第1の機能層の表面にスパッタ法によりPtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を第1の機能層の膜厚の値とする。
<光透過性樹脂>
光透過性樹脂24は、第1の機能層23からの導電性繊維25の脱離を防ぎ、かつ第1の機能層23の耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維25を覆うものであるが、第1の機能層23の表面23Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維25を覆うものである。具体的には、上記したように一部の導電性繊維が、第1の機能層の表面に露出していないと、第1の機能層の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂24は、一部の導電性繊維25が第1の機能層23の表面23Aから露出するように導電性繊維25を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維25が第1の機能層23の表面23Aに露出するように導電性繊維25を光透過性樹脂24で覆うためには、例えば、光透過性樹脂24の膜厚を調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が第1の機能層の表面に露出しなくなってしまい、第1の機能層の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の膜厚が薄すぎると、第1の機能層からの導電性繊維の脱離、第1の機能層の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。このため、光透過性樹脂の膜厚を適度な厚みに調節する必要がある。
上記の観点から、光透過性樹脂24の膜厚は、300nm未満とすることが好ましい。光透過性樹脂24の膜厚は、第1の機能層23の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。光透過性樹脂24の膜厚の上限は、145nm以下、140nm以下、120nmnm、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、光透過性樹脂24の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。
光透過性樹脂24は、光透過性を有する樹脂であれば、特に限定されないが、光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体や熱可塑性樹脂等が挙げられる。重合性化合物としては、第1の樹脂層22の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
<導電性繊維>
導電性繊維25は第1の機能層23中に複数本存在していることが好ましい。導電性繊維25は、第1の機能層23の表面23Aから電気的に導通可能となっているので、第1の機能層23の厚み方向において導電性繊維25同士が接触している。
一部の導電性繊維25は第1の機能層23の表面23Aに露出していることが好ましい。なお、導電性繊維25が第1の機能層23に固定される程度に導電性繊維25の一部が露出していればよく、導電性繊維25が第1の機能層23の表面23Aから突出している場合も導電性繊維25が第1の機能層23の表面23Aに露出している場合に含まれる。一部の導電性繊維が、第1の機能層の表面に露出していないと、第1の機能層の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、上記の測定方法によって、第1の機能層23の表面23Aから電気的な導通が得られれば、一部の導電性繊維25が、第1の機能層23の表面23Aに露出していると判断できる。本明細書における「露出している」とは、導電性繊維が何らかの樹脂でコーティングされている状態も含む。導電性繊維自身が表に出ていなくともよい。導電性繊維が何らかの樹脂でコーティングされていることで、塗膜物性が向上するのでよい。そのコーティング材料とは、導電性繊維含有の分散液を製造する場合のポリマー分散剤、その分散液を更に別のバインダー内に分散させることによってできるバインダー樹脂などが考えられる。このような樹脂コーティングとは、上記したような導通が得られるレベルに極めて薄いものである。
導電性繊維25の平均繊維径は200nm以下であることが好ましい。導電性繊維25の平均繊維径が200nm以上であれば、積層体のヘイズ値が高すぎず、また光透過性能が充分である。導電性繊維25の平均繊維径の下限は、第1の機能層23の導電性や断線防止の観点から5nm以上、7nm以上、10nm以上、15nm以上の順にさらに好ましく(断線防止の観点から数値が大きいほど好ましい)、導電性繊維25の平均繊維径の上限は180nm以下、30nm以下、28nm以下、25nm以下、20nm以下、15μm以下がより好ましい(ミルキネス防止の観点から数値が小さいほど好ましい)。ミルキネス防止と導電性、断線防止を考えると、例えば7nm以上15nm以下の平均繊維径を有する導電性繊維が好ましく用いられる。大量生産性の面からは、15nmより大きく25nm以下が好ましい。
導電性繊維25の平均繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H-7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の繊維径を求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
導電性繊維25の平均繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維分散液の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維分散液を、組成物の分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維分散液をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維分散液の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維分散液の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。上記した方法以外に、30~70Ω/□の抵抗値となる実際の導電層を上記したTEM、STEM観察によって実測することも可能である。その場合、金属繊維が絡まっている部分ではなく、比較的疎の部分より10本実測した平均値で求めることができる。
導電性繊維25の平均繊維長は1μm以上であることが好ましい。導電性繊維25の平均繊維長が1μm以上であれば、充分な導電性能を有する第1の機能層を形成でき、ヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を抑制できる。導電性繊維25の平均繊維長の上限は500μm以下、300μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下としてもよく、また導電性繊維25の平均繊維長の下限は3μm以上、5μm以上、7μm以上、または10μm以上としてもよい。例えば、導電性繊維25としては、10μm以上30μm以下の平均繊維長を有する導電性繊維が好ましく用いることができる。
導電性繊維25の平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
導電性繊維25の平均繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維分散液をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。
導電性繊維25としては、導電性炭素繊維、金属ナノワイヤ等の金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記金属繊維の金属元素の具体例としては、ステンレススチール、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti等を挙げることができる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。金属繊維は、繊維径が200nm以下および繊維長が1μm以上の金属ナノワイヤであることが好ましい。
上記金属繊維は、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により得ることができる。
また金属繊維として、銀ナノワイヤーを用いる場合、銀ナノワイヤーは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤーの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて得ることが可能である。
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833~837;Chem.Mater.,2002,14,4736~4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006-233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002-266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004-149871号公報等を参考にすることができる。
上記金属被覆有機繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等またはこれらの金属を複数用いた合金をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
<異種繊維>
異種繊維は、導電性繊維25とは異なる種類の繊維である。第1の機能層23に異種繊維が存在するか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、異種繊維を倍率5万倍で観察することによって、繊維状であるかを確認し、かつエネルギー分散型X線分析装置(EDX:上記SEM付属のEDAX社製Genesis2000)によって導電性繊維を構成する元素とは異なる元素が検出されるか否かによって判断することができる。EDXによる測定条件は、加速電圧を「15kV」、エミッション電流を「20μA」、W.D.を「15mm」にする。表面暗色系繊維16は、異種繊維の一種であるので、表面暗色系繊維の繊維径や繊維長等は、異種繊維にも適用される。
(表面暗色系繊維)
表面暗色系繊維は、表面の少なくとも一部が導電性繊維25よりも暗色を呈する繊維である。暗色系繊維の表面の少なくとも一部が導電性繊維25よりも暗色を呈するか否かは、例えば、第1の機能層を形成するための表面暗色系繊維を含む分散液の状態でこの分散液の色味と導電性繊維を含む分散液の色味を観察することによって、または表面暗色系繊維を含む分散液から表面暗色系繊維を取り出して、表面暗色系繊維の色味と導電性繊維の色味を比較することによって判断することができる。また、表面暗色系繊維が金属から構成されている場合、以下の方法によって、暗色系繊維の表面の少なくとも一部が導電性繊維25よりも暗色を呈するか否か判断してもよい。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、暗色系繊維を倍率5万倍で観察することによって、繊維状であるかを確認する。次いで、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)によって導電部から導電性繊維とは異なる金属が検出されるか否か確認する。導電性繊維とは異なる金属が検出された場合には、その金属の繊維状態での色味を既知の情報から得る。そして、既知の情報から得た色味と導電性繊維の色味を比較することによって暗色系繊維が導電性繊維よりも暗色を呈するか否かを判断する。本明細書における「暗色」とは、導電部の拡散光反射率を低下させることが可能な、黒色、灰色、褐色等の低明度の色を意味するものとする。
表面暗色系繊維は、表面全体が暗色を呈することが好ましいが、必ずしも表面全体が暗色を呈する必要はない。すなわち、表面暗色系繊維は、所々暗色を呈さない部分があってもよい。ただし、上記拡散光反射率(SCE)を0.5%以下にする観点からは、表面暗色系繊維16はある程度以上暗色を呈する部分(以下、この部分を「暗色部」と称する。)が存在することが好ましい。例えば、表面暗色系繊維の暗色部が表面暗色系繊維の他の部分よりも太くなっている場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、表面暗色系繊維を倍率5万倍で観察したときに、他の部分よりも太くなっている部分の長さ(暗色部の長さ)が1.5μm以上存在していれば、確実に拡散光反射率を0.5%以下できる。なお、表面暗色系繊維は、上記走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5万倍で観察したときに、暗色部の長さが1.5μm未満であっても、導電性繊維25と表面暗色系繊維の配合比率によっては拡散光反射率を0.5%以下にできる場合があるが、暗色部が塗膜から構成されている場合にはコーティング時に繊維から暗色部が脱落することがあり、欠点となりやすい。
表面暗色系繊維25の平均繊維径は30nm以下であることが好ましい。表面暗色系繊維の平均繊維径が30nm以下であれば、積層体20のヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が充分となる。表面暗色系繊維の平均繊維径の下限は、静電気対策の観点から5nm以上、7nm以上、10nmであることが好ましい(断線防止の観点から数値が大きいほど好ましい)。また、表面暗色系繊維の平均繊維径の上限は、28nm以下、25nm以下、20nm以下であることが好ましい(ミルキネスの観点から数値が小さいほど好ましい)。表面暗色系繊維の平均繊維径は、導電性繊維25の平均繊維径と同様の方法によって測定するものとする。
表面暗色系繊維の平均繊維長は10μm以上20μm以下であることが好ましい。表面暗色系繊維の平均繊維長が10μm以上であれば、凝集によるヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれもない。また、表面暗色系繊維の平均繊維長が20μm以下であれば、フィルターに詰まらず塗工できる。なお、表面暗色系繊維の平均繊維長の下限は5μm以上、7μm以上、または10μm以上としてもよく、表面暗色系繊維の平均繊維長の上限は40μm以下、35μm以下、または30μm以下としてもよい。
第1の機能層23における導電性は、導電性繊維25によって得られるので、表面暗色系繊維自体は必ずしも導電性を有さなくてもよいが、第1の機能層23の導電性の低下を抑制するために、表面暗色系繊維は導電性繊維であることが好ましい。
第1の機能層23中の表面暗色系繊維の含有量は、上記拡散光反射率(SCE)が0.5%以下となる量であれば、特に限定されないが、導電性繊維25と表面暗色系繊維の重量比率が97:3~30:70となることが好ましい。上記比率が、この範囲であれば、導電部において導電性を得ることができるとともに、ミルキネスをより抑制することができる。
表面暗色系繊維としては、繊維材の表面に黒化処理等の暗色化処理によって形成した暗色系皮膜を有する暗色部形成繊維や繊維材自体が暗色を呈する暗色系繊維が挙げられる。暗色化処理としては、例えば、塗装、めっき、表面処理等が挙げられる。表面処理としては、例えば、化成処理や陽極酸化等が挙げられる。
めっきで繊維材の表面を暗色化する場合には、電解めっきおよび無電解めっきのいずれで暗色系皮膜を形成してもよい。
化成処理は、薬品又はその溶液によって、金属表面の組成を変える処理であり、例えば、酸化処理、リン酸塩化処理、硫化処理などがある。繊維材が金属から構成されている場合、繊維材の材質に応じて金属物が黒色を呈するような化成処理を選択使用する。例えば、繊維材の材質が銅の場合には、亜塩素酸ナトリウムおよび水酸化カリウムを含む水溶液や、多硫化アンチモンを含む水溶液、亜塩素酸ナトリウム及びリン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを含む水溶液、過硫酸カリウムおよび水酸化ナトリウムを含む水溶液などに繊維材を浸漬するとよい。なお、黒色を呈する暗色部の形成深度は、化成処理の溶液の組成、温度、浸漬時間などの条件を調節することにより、調整することができる。
(暗色部形成繊維)
暗色部形成繊維は、繊維材の表面に黒化処理等の暗色化処理によって形成された暗色系皮膜を有する繊維である。繊維材としては、上記した理由から、導電性繊維でなくてもよいが、導電性繊維であることが好ましい。繊維材が導電性繊維である場合、繊維材は、導電性繊維25と同様の導電性材料から構成されていなくともよいが、導電性繊維25と同様の材料から構成されていてもよい。
暗色系皮膜は、無機皮膜であることが好ましい。暗色系皮膜が無機皮膜である場合、暗色皮膜を構成する無機材料としては、例えば、金属、金属酸化物や金属硫化物の金属化合物等が挙げられる。金属としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム、またはこれらの合金等が挙げられ、これらの中でも、銅、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金等が好ましい。また金属化合物としては、これらの金属の化合物や塩化テルル等が挙げられる。コバルト、ニッケル、および塩化テルルは、皮膜で黒色を呈する。
暗色系皮膜の膜厚は、10nm以上140nm以下であることが好ましい。暗色系皮膜の膜厚が10nm以上であれば、確実に繊維を暗色にすることができ、また140nm以下であれば、優れた光学特性も担保できる。暗色系皮膜の膜厚の下限は、30nm以上であることがより好ましく、暗色系皮膜の膜厚の上限は、100nm以下であることがより好ましい。
(暗色系繊維)
暗色系繊維は、繊維材からなるものである。暗色系繊維は、繊維材自体が暗色を呈していれば、特に限定されず、例えば、導電性繊維が挙げられる。導電性繊維としては、金属繊維、金属酸化物繊維、カーボンナノチューブ繊維等が挙げられる。金属繊維を構成する金属としては、銅、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金(例えば、銅ニッケル)等が挙げられる。なお、コバルト自体は銀色であるが、コバルト繊維は黒色を示し、またニッケル繊維は黒色を呈する。カーボンナノチューブ繊維としては、多層、単層、またはヘリンボーン型のカーボンナノチューブが挙げられる。
第1の機能層23中に表面暗色系繊維に含ませるのではなく、第1の機能層23上に表面暗色系繊維を含む別の第1の機能層を設けてもよい。導電性繊維を含む第1の機能層に表面暗色系繊維を含有させると、表面暗色系繊維が導電性繊維同士の接触を妨げてしまい、抵抗値が上昇するおそれがあるが、導電性繊維25を含む第1の機能層23とは別の第1の機能層に表面暗色系繊維を含ませることにより、表面暗色系繊維による導電性繊維25同士の接触の妨げを抑制でき、これにより、ミルキネスを抑制しながら低抵抗値を実現することができる。
<<<保護フィルム>>>
保護フィルム30は、一旦積層体20から剥離すると、再度積層体20に貼り付けることができないものである。この意味で、粘着フィルムとは異なる。
保護フィルム30は、第2の基材31と、第2の基材31より第1の樹脂層22側に位置し、かつ第1の樹脂層22に密着した第2の樹脂層32とを備えている。保護フィルム30は、第2の基材31における第2の樹脂層32側の第1の面31Aとは反対側の第2の面31Bに、第2の機能層33をさらに備えている。保護フィルム30は、第2の基材31および第2の樹脂層32を備えていれば、第2の機能層33を備えていなくともよい。保護フィルム付き積層体においては、保護フィルム付き積層体を加熱すると、第2の基材からオリゴマー成分が析出し、ヘイズ値が上昇し、透明性が失われることがある。一方、保護フィルム付き積層体において、保護フィルムを剥離すると、積層体の第1の機能層が帯電してしまい、第1の機能層に含まれる導電性繊維が断線しやすくなる。このため、第2の機能層33としては、第2の基材31におけるオリゴマーの析出を抑制するオリゴマー析出抑制機能および剥離帯電等を抑制する帯電防止機能の少なくともいずれかを有する層であることが好ましい。本実施形態においては、第2の機能層33が、オリゴマー析出抑制層である場合について説明する。
保護フィルム30の厚みは、特に限定されないが、25μm以上500μm以下であることが好ましい。保護フィルム30の厚みが、25μm以上であれば、容易に取り扱うことができ、また500μm以下であれば、薄型化できる。保護フィルム30の厚みの下限は、加熱後のカール抑制の観点から、30μm以上、38μm以上、50μm以上であることがより好ましい(数値が大きいほど好ましい)。保護フィルム30の厚みの上限は、250μm以下、188μm以下、125μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。保護フィルム30の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された保護フィルム30の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された厚みの平均値として求めるものとする。
<<第2の基材>>
第2の基材31としては、特に限定されず、例えば、第1の基材21と同様のものであってもよい。
<<第2の樹脂層>>
第1の樹脂層22は、第1の基材21の第1の面21A側に配置されている。本明細書における「第2の樹脂層」とは、主に樹脂から構成される層を意味するが、樹脂以外に粒子や添加剤を含んでいてもよい。また、本明細書における「第2の樹脂層」は、単層であるものとする。本実施形態における第2の樹脂層32は、ハードコート層である。
第2の樹脂層32の膜厚方向Dの断面におけるインデンテーション硬さは100MPa以上となっている。第2の樹脂層32におけるインデンテーション硬さの下限は200MPa以上、250MPa以上、300MPa以上であることが好ましく(数値が大きいほど好ましい。)、上限は折り曲げた際にクラックが発生し難く、また容易に取り扱うことができることから1000MPa以下、800MPa以下、700MPa以下であることがより好ましい。第2の樹脂層32のインデンテーション硬さは、第1の樹脂層22のインデンテーション硬さと同様の方法によって測定することができる。
第2の樹脂層32のインデンテーション硬さは、第1の樹脂層22のインデンテーション硬さよりも小さくなっていることが好ましい。第2の樹脂層32のインデンテーション硬さが、第1の樹脂層22のインデンテーション硬さよりも小さくなっていることにより、第2の樹脂層32が第1の樹脂層22に容易に追従することができ、積層体20に保護フィルム30が付いた状態であっても曲げやすい。第2の樹脂層32のインデンテーション硬さと第1の樹脂層22のインデンテーション硬さの差(第2の樹脂層32のインデンテーション硬さ-第1の樹脂層22のインデンテーション硬さ)は、100MPa以上800MPa以下であることが好ましい。この差が、100MPa以上であれば、保護フィルム30の浮きや割れを抑制することができ、またこの差が、800MPa以下であれば、保護フィルム30を剥がした際の割れを抑制することができ、フレキシブル性に優れる。この差の下限は、200MPa以上であることがより好ましく(数値が大きいほど好ましい)、上限は、600MPa以下、500MPa以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。貼り合わせ工程で、第2の樹脂層が剛直であった場合には、追従性が不足するため割れを生じたりする。その時、この第2の樹脂層に隣接する第1の樹脂層にも割れが伝達してしまう場合もある。しかしながら、本発明のように上記のように第2の樹脂層32のフレキシブル性を良好にすることにより良好な後工程が実施できるようになる。
第2の樹脂層32は、上記したようにハードコート層として機能するので、保護フィルム30を剥離した状態で、第2の樹脂層32の表面は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましい。第2の樹脂層32の表面の鉛筆硬度がHであることにより、保護フィルム30が硬くなり、耐久性やハンドリング性を向上させることができる。なお、保護フィルム付き積層体10のカール防止の観点から、第2の樹脂層32の表面の鉛筆硬度の上限は4H程度程とすることが好ましい。第2の樹脂層32の表面の鉛筆硬度は、第1の樹脂層22の表面の鉛筆硬度と同様の方法によって測定するものとする。
保護フィルム付き積層体10を加熱しない状態で、保護フィルム30を剥離したときの第2の樹脂層32の表面における水の接触角(以下、この接触角を、「初期接触角」と称することもある。)は、70°以上95°以下であることが好ましい。初期接触角が70°以上95°以下であれば、保護フィルム30を容易に剥離することができる。また、保護フィルム付き積層体10を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後に保護フィルム30を剥離したときの第2の樹脂層32の表面における水に対する接触角(以下、この接触角を「加熱後接触角」と称することもある。)は、75°以上90°以下であることが好ましい。加熱後接触角が75°以上90°以下であれば、保護フィルム付き積層体10を加熱した場合であっても、保護フィルム30を容易に剥離することができる。第2の樹脂層32の表面における水に対する初期接触角および加熱後接触角は、第1の樹脂層22の表面における水に対する初期接触角および加熱後接触角と同様の方法によって測定するものとする。
第2の樹脂層32の膜厚は、第1の樹脂層22の膜厚よりも厚いことが好ましい。第2の樹脂層32の膜厚が、第1の樹脂層22の膜厚よりも厚いことにより、第1の樹脂層22の良好な曲げ性と第2の樹脂層32の欠点(貼り合わせ工程生じやすい泡や異物など)個数の低減を両立することができる。第2の樹脂層32の膜厚と第1の樹脂層22の膜厚の差(第2の樹脂層32の膜厚-第1の樹脂層22の膜厚)は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。この差が、1μm以上であれば、第2の樹脂層32の欠点を減らすことができ、また10μm以下であれば、第1の樹脂層22を折り曲げた際にクラックが発生しにくくなる。この差の下限は、3μm以上、5μm以上であることがより好ましく(数値が大きいほど好ましい)、上限は、8μm以下、6μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
第2の樹脂層32の膜厚は1μm以上10μm以下であることが好ましい。第2の樹脂層32の膜厚が1μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また、第2の樹脂層32の膜厚が10μm以下であれば、折り曲げた際にクラックが発生し難く、また容易に取り扱うことができる。第2の樹脂層32の膜厚は、第1の樹脂層22の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。第2の樹脂層32の膜厚の下限は、第2の樹脂層32の割れを抑制する観点から、3μm以上、4μm以上、5μm以上であることがより好ましい(数値が大きいほど好ましい)。また、第2の樹脂層32の上限は、第2の樹脂層32の薄膜化を図る一方で、カールの発生を抑制する観点から、9μm以下、8μm以下、7μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
第2の樹脂層32は、少なくとも樹脂から構成することが可能である。なお、第2の樹脂層32は、樹脂の他に、添加剤としてシリコーン系化合物、フッ素系化合物、帯電防止剤を含んでいることが好ましい。なお、第2の機能層33が帯電防止層の場合には、第2の樹脂層32は、帯電防止剤を含んでいなくともよい。
<樹脂>
第2の樹脂層32における樹脂としては、電離放射線重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物として、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物と、アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物とを含むことが好ましい。アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物は、第1の樹脂層22との密着性を低下させる性質を有しているので、アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物を用いることで、第1の樹脂層22に対し所望の密着性を確保できるとともに、第2の樹脂層32における第1の樹脂層22への密着性を調整することができる。
(アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物)
アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイドで変性されていない化合物である。本明細書における「アルキレンオキサイド非変性」とは、電離放射線重合性化合物中に、エチレンオキサイド(-CH2-CH2-O-)、プロピレンオキサイド(-CH2-CH2-CH2-O-)などのアルキレンオキサイドを有しない構造を意味する。アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物としては、特に限定されないが、第1の樹脂層22の樹脂の欄で挙げられた電離放射線重合性化合物が挙げられる。
(アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物)
アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイドで変性された化合物である。本明細書における「アルキレンオキサイド変性」とは、電離放射線重合性化合物中に、エチレンオキサイド(-CH2-CH2-O-)、プロピレンオキサイド(-CH2-CH2-CH2-O-)などのアルキレンオキサイドを有する構造を意味するものとする。アルキレンオキサイドとしては、保護フィルム30の剥離力の観点から、炭素数2~4個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)であることが好ましく、特に炭素数2~3個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)であることが好ましく、さらには炭素数2個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド)であることが好ましい。
アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量は、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物100質量部に対し30質量部以上90質量部以下であることが好ましい。アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量が、30質量部以上であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32の間の界面で容易に剥離することができ、またアルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量が、90質量部以下であれば、所望の密着性を確保することができる。
アルキレンオキサイド変性電離放射線化合物としては、特に限定されないが、第1の樹脂層22の樹脂の欄で挙げられた電離放射線重合性化合物をアルキレンオキサイドで変性させた化合物が挙げられる。これらの中でも、保護フィルム30の剥離力の観点から、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
<シリコーン系化合物>
シリコーン系化合物は、第1の樹脂層22に対し第2の樹脂層32を剥がれやすくするための成分である。第2の樹脂層32が、シリコーン系化合物を含むことにより、第1の樹脂層22における第2の樹脂層32との界面付近にシリコーン系化合物が偏在するので、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32の間の界面で保護フィルム30を容易に剥離することができる。
シリコーン系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。シリコーン系化合物として重合性官能基を有するシリコーン系化合物を用いた場合には、シリコーン系化合物は第2の樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
シリコーン系化合物としては、特に限定されないが、第1の樹脂層22の欄で説明したシリコーン系化合物と同様のものを用いることができる。
シリコーン系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。シリコーン系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面で保護フィルム30を容易に剥離することができ、またシリコーン系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面において所望の密着性を確保することができる。
<フッ素系化合物>
フッ素系化合物は、第1の樹脂層22に対し第2の樹脂層32を剥がれやすくするための成分である。第2の樹脂層32が、フッ素系化合物を含むことにより、第1の樹脂層22における第2の樹脂層32との界面付近にフッ素系化合物が偏在するので、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32の間の界面で保護フィルム30を容易に剥離することができる。
フッ素系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。フッ素系化合物として重合性官能基を有するフッ素系化合物を用いた場合には、フッ素系化合物は第2の樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
フッ素系化合物としては、特に限定されないが、第1の樹脂層22の欄で説明したフッ素系化合物と同様のものを用いることができる。
フッ素系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。フッ素系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面で保護フィルム30を容易に剥離することができ、またフッ素系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、第1の樹脂層22と第2の樹脂層32との界面において所望の密着性を確保することができる。
<帯電防止剤>
帯電防止剤としては、特に限定されず、例えば、第4級アンモニウム塩等のイオン伝導型帯電防止剤や導電性ポリマー等の電子伝導型帯電防止剤を用いることができる。
<<第2の機能層>>
第2の機能層33の表面33Aは、保護フィルム付き積層体10の裏面10Bとなっている。第2の機能層33は、上述したようにオリゴマー析出抑制機能を有するオリゴマー析出抑制層である。オリゴマー析出抑制層である第2の機能層33を設けることにより、第2の基材31からのオリゴマー成分の析出を抑制できるので、保護フィルム付き積層体10のヘイズ値の上昇を抑制することができ、透明性を確保することができる。
第2の機能層33は、特に限定されないが、樹脂から構成することが可能である。第2の機能層33を構成する樹脂としては、例えば、第1の樹脂層22を構成する樹脂と同様の樹脂を用いることができる。また、第2の機能層33が、帯電防止層である場合、第2の機能層33は、樹脂と、帯電防止剤とを含んでいる。帯電防止剤としては、第2の樹脂層32の欄で説明した帯電防止剤と同様の帯電防止剤を用いることができる。
第2の機能層33の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。第2の機能層33の膜厚が、0.5μm以上であれば、第2の基材31からのオリゴマーの析出をより抑制でき、また10μm以下であれば、カールの発生を抑制できる。第2の機能層33の膜厚は、第1の機能層23の膜厚と同様の方法によって測定することができる。
<<<他の保護フィルム付き積層体>>>
保護フィルム付き積層体10は、第1の基材21における第1の面21Aとは反対側の面である第2の面21Bに第1の機能層23を備えているが、図3に示されるように、第1の基材21における第2の面21Bに第1の機能層を備えていない保護フィルム付き積層体40であってもよい。保護フィルム付き積層体40は、第1の基材21の第2の面21Bに第1の機能層を備えていない積層体50を備えること以外は、保護フィルム付き積層体10と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
保護フィルム付き積層体10は、パターニングされていないべた膜の第1の機能層23を備えているが、図4および図5に示されるように、第1の機能層71がパターニングされた積層体70を備える保護フィルム付き積層体60であってもよい。第1の機能層71は、第1の基材21における第1の面21Aとは反対側の面である第2の面21B側に設けられている。第1の機能層71は、パターニングにより所定の形状を有する導電部72および非導電部73を有している。第1の機能層71および導電部72の膜厚は、第1の機能層23の膜厚と同様になっている。
<<導電部>>
導電部72は、導電性を示す部分であり、第1の機能層23と同様に、光透過性樹脂24と導電性繊維25から構成されている。導電部72は、例えば、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるX方向の電極として機能するものであり、図5に示されるようにX方向に延びた複数のセンサ部72Aと、各センサ部72Aに連結した端子部(図示せず)とを備えている。各センサ部72Aは、タッチ位置を検出され得る領域である矩形状のアクティブエリア内に設けられており、端子部は、アクティブエリアに隣接し、アクティブエリアを四方から周状に取り囲む領域である非アクティブエリア内に設けられている。
各センサ部72Aは、直線状に延びるライン部72Bと、ライン部72Bから膨出した膨出部72Cとを有している。図5においては、ライン部72Bは、センサ部72Aの配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部72Cはライン部72Bから膨らみ出ている部分である。したがって、各センサ部72Aの幅は、膨出部72Cが設けられている部分において太くなっている。本実施形態においては、膨出部72Cは平面視略正方形状の外輪郭を有している。なお、膨出部72Cは平面視略正方形状に限らず、菱形状、またはストライプ状であってもよい。
<<非導電部>>
非導電部73は、導電部72間に位置し、かつ導電性を示さない部分である。非導電部73は、実質的に導電性繊維25を含んでいない。本明細書における「実質的に」とは、導電部からの金属イオンのマイグレーションによって金属イオンが非導電部側に析出した場合であっても、導電部間の電気的な短絡が生じない程度であれば導電性繊維を若干含んでいてもよいことを意味する。非導電部73は、導電性繊維25を全く含んでいないことが好ましい。なお、レーザー光(例えば、赤外線レーザー)で導電性繊維25を昇華させることによって、またはフォトリソグラフィ法によるウエットエッチングによって非導電部73から導電性繊維25を除去する際に、導電性繊維25を構成する導電性材料が残存するおそれがあるが、この導電性材料は繊維状ではないので、導電性繊維とはみなさない。
非導電部73の膜厚は、導電部72と一体的に設けられているので、第1の基材上に下地層が設けられている場合であっても、設けられていない場合であっても、300nm未満となっていることが好ましい。本明細書における「非導電部の膜厚」とは、断面観察によって導電性繊維を含む導電部と判断された層が積層された基盤部分(第1の基材、下地層など)に直接積層されている部分を意味する。非導電部73の膜厚は、第1の機能層23の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。非導電部73の膜厚の上限は、145nm以下、140nm以下、120nmnm、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、非導電部73の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。非導電部73の膜厚は、第1の機能層23の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。
非導電部73は、光透過性樹脂24から構成されている。なお、非導電部73は、導電性繊維25を昇華させることによって形成され、かつ導電性繊維が存在しない空洞部を有していてもよい。この場合、非導電部73を形成する際には導電性繊維25が昇華によって非導電部73とすべき領域を突き破って外に放出されるので、非導電部73の表面は粗面化される。非導電部73の光透過性樹脂24は、第1の機能層23の光透過性樹脂24と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
保護フィルム付き積層体10は、第2の基材31における第2の面31Bに第2の機能層33を備えているが、図6に示されるように、第2の機能層33を備えていない保護フィルム付き積層体80であってもよい。保護フィルム付き積層体80は、第2の機能層を備えていない保護フィルム90を備えること以外は、保護フィルム付き積層体10と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
保護フィルム付き積層体10は、第2の基材31における第2の面31Bに第2の機能層33を備えているが、図7に示されるように、第2の基材31と第2の樹脂層32の間に第2の機能層111を備える保護フィルム付き積層体100であってもよい。保護フィルム付き積層体100は、第2の基材31と第2の樹脂層32の間に第2の機能層111を備える保護フィルム110を備えること以外は、保護フィルム付き積層体10と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<保護フィルム付き積層体の製造方法>>
保護フィルム付き積層体10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図8(A)に示されるように、第1の基材21と、第1の基材21の第1の面21A側に設けられ、かつ膜厚方向の断面におけるインデンテーション硬さが100MPa以上の第1の樹脂層22と、第1の基材21の第2の面21B側に設けられた第1の機能層23とを備える積層体20を用意する。
積層体20は、例えば、以下のようにして得ることができる。具体的には、まず、第1の基材21の第1の面21Aに第1の樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、第1の樹脂層用組成物の塗膜を形成する。
第1の樹脂層用組成物は、重合性化合物を含むが、その他、必要に応じて、上記粒子、上記シリコーン系化合物、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、第1の樹脂層用組成物には、第1の樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。第1の樹脂層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
第1の樹脂層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能が充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
第1の樹脂層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
次いで、塗膜に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜を硬化させて、第1の樹脂層22を形成する。
第1の樹脂層用組成物を硬化させる際の電離放射線として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
第1の基材21の第1の面21A上に第1の樹脂層22を形成した後、第1の基材21の第2の面21Bに、導電性繊維25および有機系分散媒を含む導電性繊維分散液を塗布し、乾燥させて、第2の面21Bに複数の導電性繊維25を配置させる。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。なお、導電性繊維分散液は、導電性繊維25および有機系分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。ただし、導電性繊維分散液中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、第1の機能層の導通が悪化してしまうので、樹脂分の含有量を調節する必要がある。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐための等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。また、導電性繊維分散液中の樹脂分は、第1の機能層23を形成した後においては、光透過性樹脂24の一部を構成するものである。
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維分散液の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。
導電性繊維分散液に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
導電性繊維分散液に含まれていてもよい重合性化合物としては、第1の樹脂層22の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
第1の基材21上に複数の導電性繊維25を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、光透過性樹脂用組成物の塗膜を形成する。光透過性樹脂用組成物は、重合性化合物および溶剤を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。
次いで、塗膜に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜を硬化させて、光透過性樹脂24を形成して、第1の機能層23を形成する。これにより、積層体20が形成される。
一方で、図8(B)に示されるように、第2の基材31の第2の面31Bに第1の機能層用組成物を塗布し、乾燥させて、第2の機能層用組成物の塗膜34を形成する。次いで、図8(C)に示されるように、塗膜34に紫外線等の電離放射線を照射して、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜34を硬化させて、第2の機能層33を形成する。
次いで、図9(A)に示されるように、第2の基材31の面31Aに第2の樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、第2の樹脂層用組成物の塗膜35を形成する。塗膜35の乾燥は、例えば、40℃以上150℃以下の温度で行うことが可能である。なお、塗膜35の乾燥の際には、加熱しなくともよい。
第2の樹脂層用組成物は、電離放射線重合性化合物を含むが、シリコーン系化合物をさらに含むことが好ましい。電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物とアルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物との混合物であることが好ましい。第2の樹脂層用組成物は、その他、必要に応じて、溶剤、重合開始剤を含んでいてもよい。
塗膜35を形成した後、図9(B)に示されるように、第1の樹脂層22が塗膜35に接するように塗膜35に積層体20を接触させる。次いで、図9(C)に示されるように、塗膜35に積層体20を接触させた状態で、塗膜35に電離放射線を照射することにより塗膜35を硬化させる。これにより、第2の樹脂層32が形成されるとともに、積層体20に密着した剥離可能な保護フィルム30を有する保護フィルム付き積層体10が得られる。
保護フィルム付き積層体60を得る場合には、保護フィルムを積層体に貼り付けた状態で、第1の機能層をパターニングすれば、第1の機能層に導電部および非導電部を形成することができる。パターニングは、例えば、レーザー光で一部の導電性繊維を昇華させることによって、またはフォトリソグラフィ法によるウエットエッチングによって一部の導電性繊維を除去することによって行なうことができる。
なお、上記においては、第1の機能層23を有する積層体20を用意し、積層体20に保護フィルム30を密着させているが、用意する積層体は第1の基材および第1の樹脂層を備えていればよく、積層体に保護フィルムを密着させた後に、積層体に第1の機能層を形成してもよい。
<<<保護フィルム付き積層体の使用方法>>>
保護フィルム付き積層体10、40、60、80、100は、例えば、以下のようにして用いることが可能である。例えば、まず、保護フィルム付き積層体10、40、60、80、100において、搬送工程および加工工程の少なくともいずれかの工程を行い、その後、保護フィルム30、90、110を剥離する剥離工程を行ってもよい。
加工工程としては、特に限定されないが、パターニング工程および/または金属配線形成工程が挙げられる。パターニング工程は、第1の機能層を所定の形状にパターニングする工程であり、金属配線形成工程は、パターニングした第1の機能層に金属配線を形成する工程である。例えば、保護フィルム付き積層体10を用いる場合には、保護フィルム付き積層体50と同様の方法によって、第1の機能層23を所定の形状にパターニングして、導電部および非導電部を形成する。その後、パターニングした第1の機能層に金属配線を形成する。また、保護フィルム付き積層体40を用いる場合には、第1の機能層はパターニングされているので、第1の機能層に金属配線を形成する。
金属配線工程においては、例えば、金属ペーストのような導電性ペーストを、導電部に接触するようにスクリーン印刷し、次いでスクリーン印刷によって形成された所定の形状の導電性ペースト層を150℃程度に加熱して金属配線を得てもよい。また、感光性を有する導電性ペーストを、導電部に接触するように塗布して導電性ペースト層を得て、フォトリソグラフィ技術によって導電性ペースト層を所定の形状にパターニングし、所定の形状にパターニングされた導電性ペースト層を150℃程度に加熱して金属配線を得てもよい。
導電性ペーストは、金、銀、銅、パラジウム、白金、アルミニウム、ニッケルの群から選択される少なくとも1種を含むペーストであることが好ましく、これらの中でも、低抵抗値を得る観点から、銀ペーストが好ましい。
本実施形態によれば、インデンテーション硬さが100MPa以上の第1の樹脂層22に、インデンテーション硬さが100MPa以上の第2の樹脂層32を有する保護フィルム30を剥離可能に密着させているので、粘着層を有する保護フィルムとは異なり、所定の断面硬度や表面硬度が得られ、かつ加工プロセス前後での積層体20、50、70の物性変化を小さくすることができる。なお、粘着層のような柔らかすぎる層において、インデンテーション硬さを測定しようとしても、測定不能となる。
また、第2の樹脂層32が第1の樹脂層22より上記インデンテーション硬さが小さいことによって、保護フィルム30側がフレキシブル性に富むことになる。結果、多様な形態の対象物への貼りあわせ工程で、保護フィルム30側の物性起因で第1の樹脂層22を備える積層体10にクラックが入る等の欠陥を良好に防止することができる。
さらに、第2の樹脂層が第1の樹脂層より上記インデンテーション硬さが小さい場合、加熱工程前後で片側にカールしやすくなったり、剥離強度が変化してしまう場合がある。本実施形態においては、あえて第2の樹脂層32と第1の樹脂層22の膜厚に差を設けることで加熱工程前後のカール、剥離強度も良好に維持することができる。
金属配線形成工程のような後工程で、保護フィルム付き積層体を加熱することがあると、加熱前に比べて保護フィルムの剥離強度が上昇してしまう傾向がある。特に、保護フィルムとして、粘着層を有する保護フィルムを用いた場合には、加熱後の保護フィルムの剥離強度は、加熱前の剥離強度に比べて数倍上昇してしまう。これに対し、本実施形態においては、インデンテーション硬さが100MPa以上の第2の樹脂層32を有する保護フィルムを用いているので、粘着層を有する保護フィルムに比べて、加熱前の保護フィルム30の剥離強度に対する加熱後の保護フィルム30の剥離強度の上昇を抑制することができる。
本発明者らは、ミルキネスの問題に関して、鋭意研究を重ねたところ、導電層の拡散光反射率を0.5%まで低下させれば、ミルキネスが抑制できることを見出した。本実施形態によれば、積層体20の第1の機能層23が存在する領域における拡散光反射率(SCE)が、0.5%以下となっているので、ミルキネスを抑制することができる。
導電性繊維はLEDからの光で特に反射しやすいので、光源としてLED素子を用いたLED画像表示装置に導電性繊維を含む導電性フィルムを用いると、ミルキネスが生じやすいが、積層体20においては、ミルキネスを抑制することができるので、積層体20は、LED画像表示装置に好適に用いることができる。
本実施形態に係る保護フィルム付き積層体の用途は特に限定されないが、本実施形態の保護フィルム付き積層体10、40、60、80、100は、例えば、保護フィルム30、90、110を剥離した積層体20、50、70の状態で、画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図10は本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図であり、図11は本実施形態に係るタッチパネルの模式的な平面図である。なお、以下の画像表示装置においては、積層体70を用いた例を示す。また、図10および図11において、図1と同じ符号が付されている部材は、図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
<<<画像表示装置>>>
図10に示されるように、画像表示装置120は、主に、画像を表示するための表示パネル130と、表示パネル130の背面側に配置されたバックライト装置140と、表示パネル130よりも観察者側に配置されたタッチパネル150と、表示パネル130とタッチパネル150との間に介在した光透過性接着層160とを備えている。本実施形態においては、表示パネル130が液晶表示パネルであるので、画像表示装置120がバックライト装置140を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置140を備えていなくともよい。
<<表示パネル>>
表示パネル130は、図10に示されるように、バックライト装置140側から観察者側に向けて、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等の保護フィルム131、偏光子132、保護フィルム133、光透過性粘着層134、表示素子135、光透過性粘着層136、保護フィルム137、偏光子138、保護フィルム139の順に積層された構造を有している。表示パネル130は、表示素子135を備えていればよく、保護フィルム131等は備えていなくともよい。
表示素子135は液晶表示素子である。ただし、表示素子135は液晶表示素子に限られず、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機発光ダイオード、および/または量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子であってもよい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
<<バックライト装置>>
バックライト装置140は、表示パネル130の背面側から表示パネル130を照明するものである。バックライト装置140としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置140はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。
<<タッチパネル>>
タッチパネル150は、導電性フィルム170と、導電性フィルム170より観察者側に配置された積層体70と、積層体70より観察者側に配置されたカバーガラス等の光透過性カバー部材151と、積層体70と導電性フィルム170との間に介在した光透過性粘着層152と、積層体70と光透過性カバー部材151との間に介在した光透過性粘着層153とを備えている。
<導電性フィルム>
導電性フィルム170は、積層体70と同様の構造となっている。すなわち、導電性フィルム170は、図10に示されるように、第1の基材171と、第1の基材171の一方の面側に設けられた第1の樹脂層172と、第1の基材171における一方の面とは反対側の面である他方の面側に設けられた導電層173とを備えている。第1の基材171は第1の基材21と同様のものであり、第1の樹脂層172は第1の樹脂層22と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
導電層173は、第1の機能層71と同様の構造となっており、複数の光透過性の導電部174と、導電部134間に位置する光透過性の非導電部175とを備えている。
(導電部および非導電部)
導電部174は、導電部72と同様の構造になっている。すなわち、導電部174は光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された導電性繊維とから構成されている。非導電部175は光透過性樹脂から構成されており、実質的に導電性繊維を含んでいない。
導電部174は、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるY方向の電極として機能するものであり、図11に示されるように、複数のセンサ部174Aと、各センサ部174Aに連結した端子部(図示せず)とを備えている。センサ部174Aは、センサ部72Aと同様の構造になっているが、Y方向に延びている。
<光透過性粘着層>
光透過性粘着層134、136は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)のような粘着シートが挙げられる。光透過性粘着層134、136の代わりに、光透過性接着層を用いてもよい。
<<光透過性接着層>>
光透過性接着層160は、表示パネル130とタッチパネル150との間に介在し、かつ表示パネル130とタッチパネル150の両方に接着されている。これにより、表示パネル130とタッチパネル150とが固定されている。光透過性接着層160は、例えば、OCR(Optically Clear Resin)のような重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物の硬化物から構成されている。
光透過性接着層160の膜厚は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。光透過性接着層160の膜厚が10μm以上であれば、薄すぎないので、異物の噛み込みや段差追従が不足するなどの不具合が発生しにくく、また光透過性接着層160の膜厚が150μm以下であれば、製造コストの低減を図ることができる。光透過性接着層160の膜厚は、第1の基材21の厚みと同様の方法によって測定することができる。光透過性接着層160の代わりに、光透過性粘着層を用いてもよい。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<ハードコート層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):25質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
(ハードコート層用組成物2)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):25質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
(ハードコート層用組成物3)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):10質量部
・ウレタンアクリレートプレポリマー(製品名「UN-350」、根上工業株式会社製、重量平均分子量12500、2官能):15質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物剤(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):50質量部
(ハードコート層用組成物4)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):50質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
(ハードコート層用組成物5)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):35質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):15質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
(ハードコート層用組成物6)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):25質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・フッ素系化合物(製品名「F-477」、DIC株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):50質量部
(ハードコート層用組成物7)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):10質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):25質量部
・帯電防止ハードコート剤(製品名「ユピマー H-6500」、三菱ケミカル株式会社製):15質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
(ハードコート層用組成物8)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):50質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業株式会社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):50質量部
(ハードコート層用組成物9)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬株式会社製、2官能):25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):25質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
<オリゴマー析出抑制層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、オリゴマー析出抑制層用組成物を得た。
(オリゴマー析出抑制層用組成物1)
・トルエンジイソシアネート(製品名「コロネートT-80」、東ソー株式会社製):100質量部
・アクリルポリオール(製品名「6KW-700」、大成ファインケミカル株式会社製):20質量部
<帯電防止層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、帯電防止層用組成物を得た。
(帯電防止層用組成物1)
・トルエンジイソシアネート(製品名「コロネートT-80」、東ソー株式会社製):100質量部
・アクリルポリオール(製品名「6KW-700」、大成ファインケミカル株式会社製):20質量部
・ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS、帯電防止剤、荒川化学工業株式会社製):0.2質量部
<銀ナノワイヤ分散液の調製>
(銀ナノワイヤ分散液1)
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、有機保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量130万、シグマアルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ分散液1を調製した。
1.核形成工程
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
2.粒子成長工程
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10-1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。
3.脱塩水洗工程
粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮した。最後に、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈し、銀ナノワイヤ分散液1を得た。
銀ナノワイヤ分散液1中における銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの平均繊維径は30nmであり、平均繊維長は15μmであった。銀ナノワイヤの平均繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、500~2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1を、組成物の分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ分散液1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタして、導通を得た。銀ナノワイヤの濃度は、銀ナノワイヤ分散液1の全質量に対する銀ナノワイヤの質量の割合で求めた。
(銀ナノワイヤ分散液2)
まず、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)122gと、数平均分子量が40000のポリビニルピロリジノン12.5gとを少量の純水に溶解し、この水溶液にさらに純水を加え、全容量を500mLとした。次いで、この水溶液に2-ジエチルアミノエタノール72gを添加し、水溶液Aを調整した。一方、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)95gを少量の純水に溶解し、この水溶液にさらに純水を加えて全容量を500mLとし、水溶液Bを調整した。
次いで、水溶液Aを攪拌しながら60℃に加熱し、この60℃の水溶液Aに水溶液Bをゆっくり添加し、さらに60℃にて2時間、攪拌しながら保持し、黒色のコロイド分散液を得た。このコロイド分散液を、限外ろ過膜にてろ液の電気伝導度が133μS/cmになるまで洗浄し、固形分の分散液を得た。
得られた固形分の結晶構造をX線回折(XRD)により測定したところ、固形分は面心立方(face-centered cubic structure)の結晶構造を有するニッケルナノワイヤであることが確認された。
得られたニッケルナノワイヤ分散液中における銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、ニッケルナノワイヤの平均繊維径は80nmであり、平均繊維長は2.4μmであった。また、ニッケルナノワイヤ分散液は黒色を呈し、またニッケルナノワイヤ分散液からニッケルナノワイヤを取り出して観察したところニッケルナノワイヤは黒色を呈していた。
そして、得られたニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液1に加えて、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤが分散した銀ナノワイヤ分散液2を得た。
(銀ナノワイヤ分散液3)
まず、銀ナノワイヤ分散液1を得るとともに、別途銀ナノワイヤ分散液1の製造過程で形成される濃縮物を得た。そして、この濃縮物を、金属黒化処理液として、二酸化テルル0.25重量%(テルル濃度として0.2重量%)、塩酸0.45重量%、硫酸20重量%の水溶液に、処理温度25℃条件下、30秒間浸漬し、濃縮物の表面に塩化テルル(TeCl2)を含む皮膜を形成した。
得られた皮膜を有する濃縮物を取り出した後、500gの純水を添加し、10分撹拌を行い、この濃縮物を分散させた後、さらにアセトンを10倍量添加し、さらに撹拌後に24時間静置を行った。静置後、新たに濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去を行った。過剰な有機保護剤は良好な導電性を得るためには不要なものであるため、この洗浄操作を必要に応じて1~20回程度行い、固形分である皮膜を有する銀ナノワイヤを十分に洗浄した。
上記洗浄後の皮膜を有する銀ナノワイヤに、イソプロピルアルコールを添加して皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を得た。皮膜形成銀ナノワイヤ分散液中における皮膜形成銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの平均繊維径は25nmであり、平均繊維長は15μmであった。また、皮膜形成銀ナノワイヤ分散液は黒色を呈し、また皮膜形成銀ナノワイヤ分散液から皮膜形成銀ナノワイヤを取り出して観察したところ、皮膜形成銀ナノワイヤの表面は黒色を呈していた。
皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を得た後、皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤと皮膜形成銀ナノワイヤの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液1に加えて、銀ナノワイヤ分散液3を得た。
<光透過性樹脂用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。
(光透過性樹脂用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):5質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK):70質量部
・シクロヘキサノン:24.75質量部
<実施例1>
まず、第1の基材としての片面に下地層を有する厚さ50μmの第1のポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、第1のPET基材の片面に、ハードコート層組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、第1の樹脂層としての膜厚1μmの第1のハードコート層を形成した。
第1のハードコート層を形成した後、第1のPET基材におけるハードコート層が形成された面と反対側の未処理面上に、銀ナノワイヤ分散液1を10mg/m2になるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ分散液1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ分散液1中の分散媒を蒸発させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる導電層を得た。これにより、第1のハードコート層、第1のPET基材、および導電層をこの順で備える積層体を得た。
一方で、第2の基材としての厚さ100μmの第2のポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「コスモシャインA4300」、東洋紡株式会社製)の一方の面である第2の面にオリゴマー析出抑制層用組成物1を塗布した。そして、形成した塗膜を180℃に加熱して、塗膜を硬化させることにより、膜厚500nmのオリゴマー析出抑制層を形成した。その後、第2のPET基材におけるオリゴマー析出抑制層の面とは反対側の面である第1の面にハードコート層用組成物2を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させ乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。
そして、乾燥させた塗膜に第1のハードコート層が接するように上記積層体を接触させ、この状態で、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させた。これにより、第2のPET基材および第1のハードコート層と密着した第2の樹脂層としての膜厚6μmの第2のハードコート層からなる保護フィルムを得るとともに、保護フィルム付き積層体を得た。
上記第1のハードコート層等の膜厚は、それぞれ、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影は、以下の方法によって行われた。まず、保護フィルム付き積層体から断面観察用のサンプルを作製した。詳細には、2mm×5mmに切り出した保護フィルム付き積層体をシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、保護フィルム付き積層体全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ株式会社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、STEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器を「TE」、加速電圧を30kV、エミッションを「10μA」にした。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節した。好ましい倍率は、1万倍~5万倍、更に好ましくは2.5万倍~4万倍である。倍率を上げすぎると層界面の画素が粗くなりわかりにくくなるため、膜厚測定においては倍率を上げすぎない方がよい。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーを「ビームモニタ絞り3」、対物レンズ絞りを「3」にし、またW.D.を「8mm」にした。実施例1のみならず、以降の実施例および比較例も全て、第1のハードコート層等の膜厚はこの方法によって測定された。
<実施例2>
実施例2においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物3を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例3>
実施例3においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物4を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例4>
実施例4においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物5を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例5>
実施例5においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物6を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例6>
実施例6においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物7を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例7>
実施例7においては、第2のPET基材における第2のハードコート層側の面とは反対側の面にオリゴマー析出抑制層を設けないこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例8>
実施例8においては、第2のPET基材における第1の面とは反対側の第2の面にオリゴマー析出抑制層の代わりに帯電防止層をさらに備えること以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。帯電防止層の形成においては、まず、第2のPET基材における第2の面に帯電防止層用組成物1を塗布した。そして、形成した塗膜を180℃に加熱して、塗膜を硬化させることにより、膜厚200nmの帯電防止層を形成した。
<実施例9>
実施例9においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに、銀ナノワイヤ分散液2を用いて、導電層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<実施例10>
実施例10においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに、銀ナノワイヤ分散液3を用いて、導電層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<比較例1>
比較例1においては、保護フィルムの代わりに、PET基材とPET基材の片面に設けられた粘着層とからなる保護フィルム(製品名「CP170u」、日東電工株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。なお、保護フィルムは、粘着層が第1のハードコート層に密着するように配置された。
<比較例2>
比較例2においては、保護フィルムの代わりに、PET基材とPET基材の片面に設けられた粘着層とからなる保護フィルム(製品名「SAT TM40125TG」、株式会社サンエー化研製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。なお、保護フィルムは、粘着層が第1のハードコート層に密着するように配置された。
<比較例3>
比較例3においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物8を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<比較例4>
比較例4においては、ハードコート層用組成物2の代わりに、ハードコート層用組成物9を用いて、第2のハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き積層体を得た。
<インデンテーション硬さ測定>
実施例1~6および比較例3、4に係る保護フィルム付き積層体において、断面硬度として、第1のハードコート層および第2のハードコート層のそれぞれの膜厚方向の断面におけるインデンテーション硬さを測定し、また比較例1、2に係る保護フィルム付き積層体において、第1のハードコート層および粘着層のそれぞれの膜厚方向の断面におけるインデンテーション硬さを測定した。具体的には、まず、縦1cm×横1cmmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体をシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、保護フィルム付き積層体全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ株式会社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。そして、超薄切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとした。次いで、測定サンプルを、市販のスライドガラス(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン株式会社製)に、測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるように、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成株式会社製)を介して固定した。具体的には、上記スライドガラスの中央部に上記接着樹脂を滴下した。この際、接着樹脂を塗り広げず、また接着樹脂が測定サンプルからはみ出さないように滴下は1滴とした。測定サンプルを測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるようにスライドガラスに接触させ、スライドガラスと測定サンプルの間で接着樹脂を押し広げ、仮接着した。そして、その状態で、12時間室温で放置し、測定サンプルをスライドガラスに接着により固定した。次いで、測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ型圧子を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながら各層に押し込み、その後100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷した。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成した。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さHITを、上記数式(1)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と各層が接している接触投影面積Ap(mm2)で除した値により求めた。インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値の算術平均値とした。なお、Apは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積とした。
<剥離強度測定>
実施例および比較例に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱する前後で、加熱前の積層体と保護フィルムとの剥離強度および加熱後の積層体と保護フィルムの剥離強度を測定し、加熱前の剥離強度に対する加熱後の剥離強度の上昇率を求めた。加熱前の積層体と保護フィルムとの剥離強度および加熱後の積層体と保護フィルムとの剥離強度は、それぞれ、引張り試験機(製品名「テンシロン万能材料試験機RTF-1150-H」、A&D株式会社製)を用い、以下の測定方法により測定された。まず、縦12.5cm×横5cm×厚さ1.1mmのガラス板に両面テープ(株式会社寺岡製作所 No.751B)を貼り付けた。一方で、加熱前の保護フィルム付き積層体を縦15cm×横2.5cmの大きさに切り出し、第1のPET側をガラス板上の両面テープに貼り付け、引張り試験機の一対の治具に保持させた。治具に保護フィルム付き積層体を保持させる際には、人手で予め積層体から保護フィルムを若干剥離させて、きっかけを作り、片方の治具に保護フィルムを保持させるとともに他方の治具にガラス板および積層体を保持させた。そして、この状態で、剥離速度300mm/分、剥離距離50mm、剥離角度180°の条件で、保護フィルムを剥離したときの剥離強度を測定した。一方で、別途、加熱前の保護フィルム付き積層体を縦15cm×横2.5cmの大きさに切り出し、この切り出した保護フィルム付き積層体に対し、150℃で1時間加熱した。そして、加熱後の保護フィルム付き積層体において、上記と同様の条件で保護フィルムを剥離し、そのときの剥離強度を測定した。加熱前の剥離強度に対する加熱後の剥離強度の上昇率は、前記上昇率をA(%)とし、加熱前の剥離強度をB(mN/25mm)とし、加熱後の剥離強度をC(mN/25mm)とすると、以下の式によって算出された。
A=(C-B)/B×100
<接触角測定>
実施例1~10に係る保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱する前後において、それぞれ、保護フィルムを剥離したときの第1のハードコート層の表面および第2の樹脂層の表面における水に対する接触角を測定した。また、比較例1、2に係る保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱する前後において、それぞれ、保護フィルムを剥離したときの第1のハードコート層の表面における水に対する接触角を測定した。なお、比較例3、4に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルムを剥離したときの第1のハードコート層の表面および第2の樹脂層の表面における水に対する接触角を測定しなかったのは、比較例3、4に係る保護フィルム付き積層体から保護フィルムを剥離できなかったためである。水に対する接触角は、JIS R3257:1999に記載の静滴法に従って、顕微鏡式接触角計(製品名「DropMaster300」、協和界面科学株式会社製)を用いて、測定した。第1のハードコート層の表面の水に対する接触角は、保護フィルム付き積層体を縦5cm×横10cmの大きさに切り出し、保護フィルムを剥離した状態で、1μLの水を第1のハードコート層の表面に滴下して、滴下直後における接触角を10点測定し、それらの算術平均値を第1のハードコート層の表面の接触角とした。また、第2のハードコート層の表面の水に対する接触角も、第1のハードコート層の表面の水に対する接触角と同様にして求めた。
<鉛筆硬度測定>
実施例1~10および比較例1、2に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルムを剥離し、表面硬度として、第1のハードコート層の表面における鉛筆硬度を測定した。また、実施例1~6においては、剥離した保護フィルムの第2のハードコート層の表面における鉛筆硬度を測定し、比較例1、2においては、剥離した保護フィルムの粘着層の表面における鉛筆硬度を測定した。第1のハードコート層の表面の鉛筆硬度を測定する鉛筆硬度試験においては、加熱されていない保護フィルム付き積層体を縦5cm×横5cmの大きさに切り出し、保護フィルムを剥離し、保護フィルムが剥離された積層体を、第1のハードコート層が上側になるようにガラス板上に折れやシワがないようニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)で固定し、鉛筆に750gの荷重を加えるとともに、ひっかき速度を1mm/秒とした状態で行った。第1のハードコート層の表面の鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において第1のハードコート層の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とした。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上第1のハードコート層の表面に傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては第1のハードコート層の表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った積層体の表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。また、第2のハードコート層および粘着層の表面の鉛筆硬度も第1のハードコート層の鉛筆硬度と同様にして測定した。
<ヘイズ変化量測定>
実施例および比較例に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルム付き積層体を150℃で1時間加熱する前後で、ヘイズ値(全ヘイズ値)をそれぞれ測定して、加熱後のヘイズ値から加熱前のヘイズ値を引いた値であるヘイズ変化量(%)を求めた。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、測定された。ヘイズ値は、縦5cm×横10cmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し、保護フィルム付き積層体1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
<加熱収縮率測定>
実施例および比較例に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルム付き積層体を150℃で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体のMD方向およびTD方向の加熱収縮率を測定した。具体的には、まず、保護フィルム付き積層体を、MD方向が縦方向となり、TD方向が横方向となるように縦8cm×横8cmの大きさに切り出した。切り出した保護フィルム付き積層体を画像寸法測定器(IM-6120:株式会社キーエンス製)にて加熱前の縦方向および横方向の長さを測定した。そして、この切り出した保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体の縦方向および横方向の長さを前記画像寸法測定器にて測定し、以下の式に基づいてMD方向およびTD方向の加熱収縮率を算出した。以下の式においては、DMDはMD方向の加熱収縮率(%)であり、DTDはTD方向の加熱収縮率(%)であり、EMDは加熱前の保護フィルム付き積層体のMD方向の長さ(cm)であり、EMDは加熱前の保護フィルム付き積層体のTD方向の長さ(cm)であり、FMDは加熱後の保護フィルム付き積層体のMD方向の長さ(cm)であり、FMDは加熱後の保護フィルム付き積層体のTD方向の長さ(cm)である。
DMD=(FMD-EMD)/EMD×100
DTD=(FTD-ETD)/ETD×100
<加熱カール量測定>
実施例および比較例に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルム付き積層体を150℃で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体のカール量を測定した。具体的には、まず、保護フィルム付き積層体を縦34cm×横34cmの大きさに切り出した。そして、この切り出した保護フィルム付き積層体を150℃の環境下で1時間加熱し、加熱後の保護フィルム付き積層体を平らな台の上に置いた。そして、保護フィルム付き積層体の4隅と台との距離をそれぞれ測定し、それを平均した値をカール量とした。なお、台に保護フィルムを下側となるように置いた場合、保護フィルム付き積層体の上面が凹状にカールする場合を正(+)とし、保護フィルム付き積層体の上面が凸状にカールする場合を負(-)とした。
<表面抵抗値測定>
実施例および比較例に係る保護フィルム付き積層体において、表面および裏面の表面抵抗値を測定した。保護フィルム付き積層体の表面における表面抵抗値の測定は、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、株式会社三菱化学アナリテック製、端子形状:ASPプローブ)を用いて行った。具体的には、80mm×50mmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体を平らなガラス板上に導電層側が上面となり、かつ保護フィルム付き積層体が均一な平面状態となるように配置して、ASPプローブを導電層の中心に配置し、全ての電極ピンを導電層に均一に押し当てることによって行った。接触式の抵抗率計による測定の際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択した。その後は、スタートボタンを押し、ホールドして、測定結果を得た。保護フィルム付き積層体の裏面における表面抵抗値の測定は、表面抵抗値測定器(製品名「Hiresta IP MCP-HT260」、三菱化学株式会社製)を用いて印加電圧500Vで行った。表面抵抗値の測定箇所は、保護フィルム付き積層体の表面または裏面の中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とした。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、23℃および相対湿度55%の環境下で行った。
<剥離帯電圧評価>
実施例に係る保護フィルム付き積層体において、保護フィルムを剥離したときの剥離帯電圧を測定し、評価した。具体的には、まず、縦15cmmm×横2.5cmの大きさに切り出した保護フィルム付き積層体を引張り試験機(製品名「テンシロン万能材料試験機RTF-1150-H」、A&D株式会社製)の一対の治具に保持させた。治具に保護フィルム付き積層体を保持させる際には、人手で予め積層体から保護フィルムを若干剥離させて、きっかけを作り、片方の治具に保護フィルムを保持させるとともに他方の治具に積層体を保持させた。この状態で、剥離速度300mm/分、剥離距離50mm、剥離角度180°の条件で、保護フィルムを剥離した。そして、積層体の表面の剥離帯電圧を、積層体の表面の中央から高さ100mmの位置に配置された電位測定機(型番「KSD-0103」、春日電機社製)を用いて測定した。測定は、23℃、相対湿度55%の環境下で行った。
○:帯電圧が10kv以下であった。
△:帯電圧が10kvを超え、50kv以下であった。
×:帯電圧が50kvを超えていた。
<拡散光反射率(SCE)測定>
実施例に係る積層体において、導電層が存在する領域における拡散光反射率を測定した。具体的には、まず、保護フィルム導電性フィルムを10cm×10cmの大きさに切り出し、保護フィルムを剥離した。一方で、大きさ10cm×10cmの粘着フィルム(商品名「パナクリーン」、パナック株式会社製、屈折率1.49)および大きさ10cm×10cmの黒色アクリル板(商品名「コモグラス」、株式会社クラレ、DFA2CG 502K(黒)系、厚み2mm、全光線透過率0%、屈折率1.49)を用意した。そして、黒色アクリル板、粘着フィルム、および上記大きさに切り出し、保護フィルムを剥離した積層体をこの順に積層した。なお、積層体は黒色アクリル板よりも上側となり、また導電層がポリエチレンテレフタレートフィルムよりも上側となるように配置された。そして、積層体の導電層側から分光測色計(製品名「CM-600d」、コニカミノルタ株式会社、測定口φ11mm)を用いて、以下の測定条件で拡散光反射率を測定した。拡散光反射率は、積層体1枚に対し3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。拡散光反射率の測定の際には、積層体の中央部にCM-600dを載せた状態で測定ボタンを押して測定した。
(測定条件)
・主光源:D65
・光源2:無し
・視野:2度
・表色系:Yxy
・色差式:ΔE*ab
<ミルキネス評価>
実施例に係る積層体において、外観を観察して、導電層の表面にミルキネスが生じているか否かを確認した。評価基準は、以下の通りとした。
◎:ミルキネスが確認されなかった。
○:ミルキネスが若干確認されたが、実使用上問題のないレベルであった。
△:ミルキネスがある程度確認された。
×:ミルキネスが明確に確認された。
比較例1、2に係る保護フィルム付き積層体においては、粘着層のインデンテーション硬さが100MPa未満であったので、所定の鉛筆硬度が得られず、また加熱前後で剥離強度や接触角が上昇してしまった。また、比較例3、4に係る保護フィルム付き積層体においては、第1のハードコート層と第2のハードコート層が強固に結合していたので、保護フィルムが剥離できなかった。これに対し、実施例1~10に係る保護フィルム付き積層体においては、保護フィルムを剥離でき、かつ第1のハードコート層および第2のハードコート層のインデンテーション硬さがそれぞれ100MPa以上であったので、所定の鉛筆硬度が得られ、また加熱前後での剥離強度や接触角の上昇を比較例1、2より抑制できた。なお、鉛筆硬度試験とは、鉛筆の芯の径が大きく、その径全体でサンプル面に加重をかける試験であるため、かなりの深さまで硬度に影響する。樹脂層の膜厚や下地の素材によっても硬度結果が変わることがあり、純粋な樹脂層自身の硬度を判断できない場合がある。そのため、本発明においては、可能な限り厚みの影響をなくするため、かつ局所硬度を測定することが可能なインデンテーション硬さの測定を好ましく用い、かつ、表面ではなく断面の硬度測定することで樹脂層自身の硬度で課題を解決している。
実施例6、8に係る保護フィルム付き積層体においては、帯電防止剤を含む第2のハードコート層または帯電防止層を備えているので、保護フィルムを剥離する際の帯電圧が、実施例1~5、7、9、10に係る保護フィルム付き積層体よりも小さかった。また、実施例9、10に係る積層体においては、導電層がニッケルナノワイヤまたは皮膜形成銀ナノワイヤを含んでいたので、実施例1~8に係る積層体よりも拡散光反射率が低かった。また、表3に示されるように、拡散光反射率とミルキネスとは相関関係があり、具体的には拡散光反射率が0.5%以下であれば、ミルキネスが抑制されることが確認された。