図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、電子制御ユニット70の入出力信号の一例を示す説明図である。実施例のエンジン装置10は、一般的な自動車や各種のハイブリッド自動車に搭載され、図1や図2に示すように、エンジン12と、過給機40と、制御装置としての電子制御ユニット70とを備える。
エンジン12は、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料を用いて吸気、圧縮、膨張、排気の4行程により動力を出力する複数気筒(例えば、4気筒や6気筒など)の内燃機関として構成されている。このエンジン12は、エアクリーナ22により清浄された空気を吸気管23に吸入してインタークーラ25、スロットルバルブ26、サージタンク27の順に通過させる。そして、吸気ポート29を介して燃焼室30に吸入した空気に燃焼室30に取り付けられた筒内噴射弁28から燃料を噴射して空気と燃料とを混合し、点火プラグ31による電気火花によって爆発燃焼させる。吸気ポート29は、吸気バルブ29aにより開閉される。エンジン12は、こうした爆発燃焼によるエネルギにより押し下げられるピストン32の往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換する。燃焼室30からの排気は、排気ポート34に接続された排気管35に排出され、排気管35に取り付けられた浄化装置37,38を介して外気に排出される。排気ポート34は、排気バルブ34aにより開閉される。浄化装置37,38は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)37a,38aを有する。以下、排気管35の浄化装置37よりも上流側の部分、浄化装置37,38の間の部分、浄化装置38よりも下流側の部分を、それぞれ、「第1排気管部35a」、「第2排気管部35b」、「第3排気管部35c」という。
過給機40は、ターボチャージャとして構成されており、タービン41と、コンプレッサ42と、ウェイストゲートバルブ44と、ブローオフバルブ45とを備える。タービン41は、排気管35の浄化装置37よりも上流側(第1排気管部35a)に配置されている。コンプレッサ42は、吸気管23のインタークーラ25よりも上流側に配置されていると共にタービン41に連結シャフト43を介して連結されている。したがって、コンプレッサ42は、タービン41により駆動される。ウェイストゲートバルブ44は、排気管35のタービン41よりも上流側と下流側とを連絡するバイパス管36に設けられており、電子制御ユニット70により制御される。ブローオフバルブ45は、吸気管23のコンプレッサ42よりも上流側と下流側とを連絡するバイパス管24に設けられており、電子制御ユニット70により制御される。
この過給機40では、ウェイストゲートバルブ44の開度の調節により、バイパス管36を流通する排気量とタービン41を流通する排気量との分配比が調節され、タービン41の回転駆動力が調節され、コンプレッサ42による圧縮空気量が調節され、エンジン12の過給圧(吸気圧)が調節される。ここで、分配比は、詳細には、ウェイストゲートバルブ44の開度が小さいほど、バイパス管36を流通する排気量が少なくなると共にタービン41を流通する排気量が多くなるように調節される。なお、ウェイストゲートバルブ44が全開のときには、エンジン12は、過給機40を備えない自然吸気タイプのエンジンと同様に動作する。
また、過給機40では、吸気管23のコンプレッサ42よりも下流側の圧力が上流側の圧力よりもある程度大きいときに、ブローオフバルブ45を開弁させることにより、コンプレッサ42よりも下流側の余剰圧力を解放することができる。なお、ブローオフバルブ45は、電子制御ユニット70により制御されるバルブに代えて、吸気管23のコンプレッサ42よりも下流側の圧力が上流側の圧力よりもある程度高くなると開弁する逆止弁として構成されるものとしてもよい。
電子制御ユニット70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUに加えて、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、不揮発性のフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。図2に示すように、電子制御ユニット70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。
電子制御ユニット70に入力される信号としては、例えば、エンジン12のクランクシャフト14の回転位置を検出するクランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrや、エンジン12の冷却水の温度を検出する図示しない水温センサからの冷却水温Tw、スロットルバルブ26の開度を検出するスロットルポジションセンサ26aからのスロットル開度THを挙げることができる。吸気バルブ29aを開閉するインテークカムシャフトや排気バルブ34aを開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出する図示しないカムポジションセンサからのカムポジションθcaも挙げることができる。吸気管23のコンプレッサ42よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ23aからの吸入空気量Qaや、吸気管23のコンプレッサ42よりも上流側に取り付けられた吸気圧センサ23bからの吸気圧Pin、吸気管23のコンプレッサ42とインタークーラ25との間に取り付けられた過給圧センサ23cからの過給圧Pcも挙げることができる。サージタンク27に取り付けられたサージ圧センサ27aからのサージ圧Psや、サージタンク27に取り付けられた温度センサ27bからのサージ温度Tsも挙げることができる。排気管35の浄化装置37の上流側(第1排気管部35a)に取り付けられた空燃比センサ39aからの空燃比AFや、排気管35の浄化装置37,38の間(第2排気管部35b)に取り付けられた酸素センサ39bからの酸素信号O2も挙げることができる。大気圧センサ71からの大気圧Poutや、外気温センサ72からの外気温Toutも挙げることができる。
電子制御ユニット70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット70から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ26への制御信号や、筒内噴射弁28への制御信号、点火プラグ31への制御信号を挙げることができる。ウェイストゲートバルブ44への制御信号、ブローオフバルブ45への制御信号も挙げることができる。
電子制御ユニット70は、クランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrに基づいてエンジン12の回転数Neを演算している。また、電子制御ユニット70は、エアフローメータ23aからの吸入空気量Qaとエンジン12の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン12の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の割合)KLを演算している。
こうして構成された実施例のエンジン装置10では、電子制御ユニット70は、基本的には、エンジン12の制御として通常制御を実行する。通常制御では、エンジン12の要求負荷率KL*に基づいて、スロットルバルブ26の開度を制御する吸入空気量制御や、筒内噴射弁28からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御、点火プラグ31の点火時期を制御する点火制御、ウェイストゲートバルブ44の開度を制御する過給制御などを行なう。なお、上述したように、ウェイストゲートバルブ44が全開のときには、エンジン12は、過給機40を備えない自然吸気タイプのエンジンと同様に動作する。
また、実施例のエンジン装置10では、電子制御ユニット70は、燃料カット条件が成立したときに浄化装置37の触媒37aの暖機が要求されているときには、エンジン12の制御として無点火制御を実行する。無点火制御では、点火制御や過給制御を行なわずに(点火プラグ31による点火を行なわないと共にウェイストゲートバルブ44を開弁して)、筒内噴射弁28から微少量の燃料噴射を行なう。なお、燃料カット条件としては、例えば、エンジン装置10が搭載される車両においてアクセルオフされた条件などが用いられる。触媒37aの暖機は、例えば、エンジン12の水温Twが閾値Twref未満であることにより触媒37aが活性化していないと想定されるときに行なわれる。無点火制御を実行しているときには、筒内噴射弁28から噴射された燃料の少なくとも一部が遅れをもって霧化し、霧化した燃料の一部が圧縮行程の上死点付近で燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼(反応)すると共に、霧化した燃料の残りの少なくとも一部が触媒37aで燃焼(反応)する。発明者らは、このことを実験や解析により確認した。なお、実施例では、簡単のために、霧化した燃料のうち一部が燃焼室30内で燃焼し、残余が触媒37aで燃焼するとした。
次に、こうして構成されたエンジン装置10の動作について説明する。特に、エンジン12の制御として無点火制御を実行しているときの排気ポート34を流れる流体(排気)の温度Tepや浄化装置37の触媒37aの温度Tcatなどを推定する処理について説明する。実施例では、各気筒の排気ポート34から合流する合流部の温度を、排気ポート34を流れる流体の温度Tepとして推定するものとした。図3は、電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、筒内噴射弁28から燃料噴射を行なっているときに(エンジン12の制御として通常制御や無点火制御を実行しているときに)、繰り返し実行される。
図3の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、エンジン12の制御として無点火制御を実行しているか否かを判定する(ステップS100)。エンジン12の制御として無点火制御を実行していると判定したときには、エンジン12の回転数Neや負荷率KL、排気ポート34を流れる流体(排気)の流速Vep、無点火制御を実行しているときの1サイクル(エンジン12の2回転)の燃料噴射量である無点火総噴射量Qfcycなどのデータを入力する(ステップS110)。
ここで、回転数Neについては、クランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrに基づいて演算した値を入力する。負荷率KLについては、エアフローメータ23aからの吸入空気量Qaと回転数Neとに基づいて演算した値を入力する。排気ポート34を流れる流体の流速Vepについては、エンジン12の回転数Neおよび負荷率KLに基づいて演算した値を入力する。無点火総噴射量Qfcycについては、無点火噴射制御を実行しているときの各気筒の燃料噴射量Qf(i)の総和として演算した値を入力する。
続いて、前回に推定した、浄化装置37の触媒37aに入力される(流入する)触媒入流体の温度(前回Tgci)に基づいて、無点火制御を実行しているときにおける筒内噴射弁28から噴射された燃料が霧化するまでの遅れを模擬するための時定数τを推定する(ステップS120)。そして、1サイクルの無点火総噴射量Qfcycを時定数τを用いたなまし処理を施して、無点火総噴射量Qfcycのうち全ての燃焼室30内で霧化した総霧化量Qatm(各気筒の燃焼室30内で霧化した霧化量の総和)を推定する(ステップS130)。実施例では、式(1)に示すように、1サイクルの無点火総噴射量Qfcycを時定数τで除して総霧化量Qatmを推定するものとした。式(1)および以下の各式において、角括弧内は単位を示す。
Qatm=Qfcyc/τ (1)
ここで、時定数τは、実施例では、前回の触媒入流体の温度(前回Tgci)を時定数設定用マップに適用して設定される。時定数設定用マップは、前回の触媒入流体の温度(前回Tgci)と時定数τとの関係として実験や解析により予め定められ、図示しないROMやフラッシュメモリに記憶されている。図4は、時定数設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、時定数τは、値1よりも大きい範囲内で、前回の触媒入流体の温度(前回Tgci)が高いほど小さくなるように設定される。これは、前回の触媒入流体の温度(前回Tgci)が高いほど、燃焼室30内の温度も高く、筒内噴射弁28から噴射された燃料が短時間で霧化しやすいためである。
こうして燃焼室30内で霧化した総霧化量Qatmを推定すると、式(2)に示すように、総霧化量Qatmと反応割合Rcylとの積として、総燃焼量Qcylcmbを推定する(ステップS160)。ここで、反応割合Rcylおよび総燃焼量Qcylcmbは、それぞれ、霧化した燃料(総霧化量Qatm)のうち全ての燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼した反応割合および総燃焼量(各気筒の燃焼室30内で燃焼した燃焼量の総和)である。反応割合Rcylは、実施例では、実験や解析により予め定められた値が用いられる。
Qcylcmb=Qatm・Rcyl (2)
続いて、式(3)に示すように、推定した総燃焼量Qcylcmbに燃焼発熱量ΔQcylcalを乗じて排気ポート34を流れる流体の比熱κgで除して、温度上昇量ΔTcylcalを推定する(ステップS170)。ここで、燃焼発熱量ΔQcylcalおよび温度上昇量ΔTcylcalは、それぞれ、霧化した燃料の一部が圧縮行程の上死点付近で燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼(反応)したときの単位質量当たりの発熱量および総発熱量(各気筒の燃焼室30内での燃焼の発熱量の総和)である。燃焼発熱量ΔQcylcalは、実験や解析により予め定められた定数が用いられるものとしてもよいし、点火プラグ31による点火時期などに基づいて定められるものとしてもよい。排気ポート34を流れる流体の比熱κgは、実験や解析により予め定められた定数が用いられるものとしてもよいし、図示しないアルコール濃度センサにより検出された燃料のアルコール濃度などに基づいて定められるものとしてもよい。
ΔTcylcal=Qcylcmb・ΔQcylcal/κg (3)
次に、エンジン12の回転数Neおよび負荷率KLに基づいて、燃焼室30内での低温酸化反応による燃焼を考慮しないときの排気ポート34を流れる流体の温度(以下、「基本温度」という)Tepbsを推定する(ステップS180)。続いて、排気ポート34を流れる流体の流速Vepに基づいて、ステップS170で推定した温度上昇量ΔTcylcalに対する排気ポート34を流れる流体の受熱割合Rhrを設定する(ステップS190)。
ここで、受熱割合Rhrは、実施例では、排気ポート34を流れる流体の流速Vepを受熱割合設定用マップに適用して設定される。受熱割合設定用マップは、排気ポート34を流れる流体の流速Vepと受熱割合Rhrとの関係として実験や解析により予め定められ、図示しないROMやフラッシュメモリに記憶されている。図5は、受熱割合設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、受熱割合Rhrは、値0よりも大きく且つ値1よりも小さい範囲内で、排気ポート34を流れる流体の流速Vepが大きいほど小さくなるように設定される。これは、排気ポート34を流れる流体の流速Vepが大きいほど、燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼して生じた熱が、排気ポート34を流れる流体に伝達されにくいためである。
こうして受熱割合Rhrを設定すると、式(4)に示すように、排気ポート34を流れる流体の基本温度Tepbsと、ステップS170で推定した温度上昇量ΔTcylcalに受熱割合Qhrを乗じた値(受熱量)との和として、排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定する(ステップS200)。
Tep=Tepbs+ΔTcylcal・Rhr (4)
実施例では、無点火制御を実行しているときにおいて、筒内噴射弁28から噴射された燃料の少なくとも一部が遅れをもって霧化すると共に霧化した燃料の一部が燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼することを考慮して、具体的には、ステップS170で推定した温度上昇量ΔTcylcalを考慮して、排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定する。これにより、温度上昇量ΔTcylcalを考慮することなく排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定するものに比して、排気ポート34を流れる流体の温度Tepをより適切に推定することができる。
ステップS200で排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定すると、推定した排気ポート34を流れる流体の温度Tepに基づいて触媒入流体の温度Tgciを推定する(ステップS210)。実施例では、排気ポート34を流れる流体の温度Tepに加えて、第1排気管部35aを流れる流体(排気)と第1排気管部35aとの熱伝達量Hgeを考慮して、触媒入流体の温度Tgciを推定するものとした。なお、この熱伝達量Hgeは、排気ポート34を流れる流体の温度Tep(第1排気管部35aを流れる流体の温度)と第1排気管部35aの温度Texとの温度差が大きいほど大きくなる。
こうして触媒入流体の温度Tgciを推定すると、式(5)に示すように、ステップS130で推定した総霧化量Qatmと値1から上述の反応割合Rcylを減じた値(1-Rcyl)との積として、総燃焼量(燃料量)Qcatcmbを推定する(ステップS220)。ここで、総燃焼量Qcatcmbは、霧化した燃料(総霧化量Qatm)のうち触媒37aで燃焼した総燃焼量である。
Qcatcmb=Qatm・(1-Rcyl) (5)
続いて、式(6)に示すように、推定した総燃焼量Qcatcmbと燃焼発熱量ΔQcatcalとの積として、総発熱量Qcatcalを推定する(ステップS230)。ここで、燃焼発熱量ΔQcatcalおよび総発熱量Qcalcalは、それぞれ、霧化した燃料の一部が触媒37aで燃焼(反応)したときの単位質量当たりの発熱量および総発熱量である。燃焼発熱量ΔQcatcalは、実験や解析により予め定められた定数が用いられるものとしてもよいし、点火プラグ31による点火時期などに基づいて定められるものとしてもよい。
Qcatcal=Qcatcmb・ΔQcatcal (6)
続いて、式(7)に示すように、ステップS210で推定した触媒入流体の温度Tgciに触媒入流体の熱容量Cgを乗じた値と、ステップS230で推定した総発熱量Qcatcalとの和として、触媒37aに入力された(流入した)触媒入流体の熱量Qgcatを推定し(ステップS240)、前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)と触媒入流体の熱量Qgcatとに基づいて触媒37aの温度Tcatを推定して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。ここで、触媒入流体の熱容量Cgは、例えば、実験や解析により予め設定される。
Qgcat=Tgci・Cg+Qgcatcal (7)
触媒37aの温度Tcatは、例えば、前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)に換算係数を乗じて得られる熱量Qcatや、触媒入流体の熱量Qgcat、触媒37aと触媒入流体との間の熱交換量Hgci、触媒37aと触媒37aから出力される触媒出流体との間の熱交換量Hgco、流体および触媒37aの総熱容量Cgcを考慮して推定することができる。ここで、熱交換量Hgci,Hgcoは、前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)(熱量Qcat)と、触媒入流体の熱量Qgcatとに基づく。
実施例では、上述したように、排気ポート34を流れる流体の温度Tepをより適切に推定することができるから、この排気ポート34を流れる流体の温度Tepに基づいて、触媒入流体の温度Tgciや触媒37aの温度Tcatもより適切に推定することができる。こうして触媒37aの温度Tcatを推定すると、触媒入流体の温度Tgciや触媒37aの温度Tcatに基づく触媒37aから出力される(触媒37aを通過した)触媒出流体の温度Tgcoに加えて、第2排気管部35bを流れる流体(排気)と第2排気管部35bとの熱伝達量Hge2を考慮して、触媒38aに入力される(流入する)第2触媒入流体の温度Tgci2を推定し、第2触媒入流体の温度Tgci2に基づいて触媒38aの温度Tcat2を推定する。なお、この熱伝達量Hge2は、触媒出流体の温度Tgco(第2排気管部35bを流れる流体の温度)と第2排気管部35bの温度Tex2との温度差が大きいほど大きくなる。
ステップS100でエンジン12の制御として無点火制御を実行していないと判定したとき、即ち、エンジン12の制御として通常制御を実行していると判定したときには、エンジン12の回転数Neや負荷率KL、排気ポート34を流れる流体(排気)の流速Vepなどのデータを入力する(ステップS140)。続いて、無点火制御に基づく総霧化量Qatmに値0を設定し(ステップS150)、ステップS160以降の処理を実行する。この場合、総霧化量Qatmが値0であるために、ステップS160で総燃焼量Qcylcmbが値0となり、ステップS170で温度上昇量ΔTcylcalが値0となる。そして、ステップS200で、式(4)の右辺第2項が値0となり、排気ポート34を流れる流体の基本温度Tepbsを温度Tepとして推定する。
以上説明した実施例のエンジン装置10では、無点火制御を実行しているときにおいて、筒内噴射弁28から噴射された燃料の少なくとも一部が遅れをもって霧化すると共に霧化した燃料の一部が燃焼室30内で低温酸化反応により燃焼することを考慮して、具体的には、ステップS170で推定した温度上昇量ΔTcylcalを考慮して、排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定する。これにより、温度上昇量ΔTcylcalを考慮することなく排気ポート34を流れる流体の温度Tepを推定するものに比して、排気ポート34を流れる流体の温度Tepをより適切に推定することができる。
実施例のエンジン装置10では、エンジン12の制御として無点火制御を実行しているときの排気ポート34を流れる流体(排気)の温度Tepや浄化装置37の触媒37aの温度Tcatなどを推定する処理について説明した。これに対して、エンジン12が停止しているときには、電子制御ユニット70は、図6の処理ルーチンにより、触媒37aの温度Tcatを推定する。このルーチンは、エンジン12が停止しているときに、繰り返し実行される。
図6の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、第1排気管部35aの温度Texを入力する(ステップS300)。ここで、第1排気管部35aの温度Texについては、エンジン12を停止する直前(エンジン12の制御として通常制御や無点火制御を実行していたとき)の排気ポート34を流れる流体の温度Tep(第1排気管部35aを流れる流体の温度)や、外気温Toutに基づいて推定した値を入力する。
続いて、式(8)に示すように、第1排気管部35aの温度Texと前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)と対流温度差係数kdtとを用いて、触媒入流体の温度Tgciを推定して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。ここで、対流温度差係数kdtは、エンジン12の停止中に第1排気管部35a内で流体の対流が生じることを考慮して、実験や解析などにより予め定められた値が用いられる。
Tgci=Tex+(前回Tcat-Tex)・kdt (8)
こうして触媒入流体の温度Tgciを推定すると、前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)に換算係数を乗じて得られる熱量Qcatや、触媒37aと触媒入流体との間の熱交換量Hgci、触媒37aと触媒出流体との間の熱交換量Hgco、触媒37aの総熱容量Cgを考慮して、触媒37aの温度Tcatを推定する。ここで、熱交換量Hgci,Hgcoは、前回に推定した触媒37aの温度(前回Tcat)と、触媒入流体の温度Tgciとに基づく。
発明者らは、実験や解析などにより、エンジン12の停止中には、触媒入流体の温度Tgciが熱容量の大きい第1排気管部35aの温度Texに徐々に近づくことや、第1排気管部35aの温度Texよりも触媒37aの温度が高いときに第1排気管部35a内で流体の自然対流が生じることなどを見出した。したがって、式(9)~式(11)によって触媒37aの温度Tcatを推定することにより、触媒37aの温度Tcatをより適切に推定することができる。なお、浄化装置38の温度Tcat2についても、第2排気管部35bの温度Tex2や、第2排気管部35bの温度よりも触媒38aの温度が高いときの第2排気管部35b内での流体の自然対流などを考慮して、同様に推定することができる。
実施例のエンジン装置10では、過給機40は、排気管35に配置されたタービン41と吸気管23に配置されたコンプレッサ42とが連結シャフト43を介して連結されたターボチャージャとして構成されるものとした。しかし、エンジン12やモータにより駆動されるコンプレッサが吸気管23に配置されたスーパーチャージャとして構成されるものとしてもよい。また、過給機40を備えないものとしてもよい。
実施例では、エンジン装置10は、一般的な自動車や各種のハイブリッド自動車に搭載されるものとした。しかし、自動車以外の車両に搭載されるものとしてもよいし、建設設備などの移動しない設備に搭載されるものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「エンジン」に相当し、触媒37aが「触媒」に相当し、電子制御ユニット70が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。