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JP7389587B2 - 多糖誘導体の製造方法 - Google Patents

多糖誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多糖誘導体の製造方法に関する。
多糖誘導体は、洗浄剤組成物等の配合成分に用いられ、その用途は多岐にわたる。
例えば、特許文献1には、洗濯用仕上げ剤として有用な剤として、多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、次の基(A)、(B)及び(C)で置換されている多糖誘導体が記載されている。
(A)ヒドロキシ基が置換していてもよく、またオキシカルボニル基(-COO-又は-OCO-)又はエーテル結合が挿入されていてもよい炭素数10~43の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアシル基
(B)カルボキシメチル基又はその塩
(C)特定のカチオン基
特許文献2には、傷んだ毛髪であっても、洗浄時、及びすすぎ時の毛髪のすべり性に優れ、乾燥後の毛髪にしっとり感を与えることができる水性毛髪洗浄剤を提供することを課題として、次の成分(A)、(B)及び(C)並びに水を含有し、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2以上6以下である、水性毛髪洗浄剤が記載されている。
(A)アニオン界面活性剤
(B)アンヒドログルコース由来の主鎖を有し、該アンヒドログルコース単位あたりのカチオン化オキシアルキレン基の置換度が0.01以上1.0以下であり、グリセロール基の置換度が0.5以上5.0以下であり、また、炭素数3以上18以下の炭化水素基を含有する基の置換度が0以上0.2以下であるカチオン性基含有セルロースエーテル
(C)炭素数4以上12以下のアルキル基又はアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテル又はモノアルケニルグリセリルエーテル
特開2000-178303号公報 特開2015-168666号公報
多糖誘導体は、洗浄剤組成物等の配合成分に用いられているが、配合した際の製品外観を向上させるために、透明性に優れた多糖誘導体を効率よく製造する方法が求められている。
本発明は、ヒドロカルビル基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1種の変性基と、カチオン性基とを有し、透明性に優れた多糖誘導体を効率よく製造することができる、多糖誘導体の製造方法に関する。
本発明者らは、工程の順序及びアルカリ触媒とカチオン化剤とのモル当量の比を特定の範囲とすることで、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕に関する。
〔1〕 下記工程1及び工程2をこの順で有し、工程1の後、洗浄工程を経ずに工程2を行い、工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が2以下である、多糖誘導体の製造方法。
工程1:アルカリ触媒の存在下、ヒドロキシアルキル化多糖と、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる1種以上の変性化剤とを反応させて、変性多糖を得る工程
工程2:工程1で得られた変性多糖と、カチオン化剤とを反応させる工程
本発明によれば、ヒドロカルビル基及びアニオン性基から選ばれる少なくとも1種の変性基と、カチオン性基とを有し、透明性に優れた多糖誘導体を効率よく製造することができる、多糖誘導体の製造方法が提供される。
[多糖誘導体の製造方法]
本発明の多糖誘導体の製造方法は、下記工程1及び工程2をこの順で有し、工程1の後、洗浄工程を経ずに工程2を行い、工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が2以下であることを特徴とする。
工程1:アルカリ触媒の存在下、ヒドロキシアルキル化多糖と、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる1種以上の変性化剤とを反応させて、変性多糖を得る工程
工程2:工程1で得られた変性多糖と、カチオン化剤とを反応させる工程
本発明者等は、ヒドロキシアルキル化多糖に、ヒドロカルビル基及びアニオン性基から選ばれる1種以上の変性基(以下、単に「変性基」ともいう)と、カチオン性基と導入した多糖誘導体を製造するにあたり、製造条件によっては、ゲル化物が発生し、透明性が著しく劣化することを見出した。
本発明者等は、変性基と、カチオン性基との導入の順序、及びカチオン化剤と反応させる際のカチオン性基に対するアルカリ触媒のモル当量の比を一定の範囲とすることにより、変性基の導入と、カチオン性基の導入との間の洗浄により、過剰なアルカリ触媒を除去することを考慮せずに、上記のゲル化が抑制され、透明性に優れた多糖誘導体を製造できることを見出した。これにより、効率的に多糖誘導体が製造可能となる。
その詳細な機構は不明であるが、以下のように推察される。すなわち、カチオン性基が導入されたヒドロキシアルキル化多糖を、アルカリ触媒存在下、高温環境下に置くと、その理由は不明であるものの、架橋反応が生じることで、ゲル化が発生し易くなると考えられる。
本発明では、先に特定量以下のアルカリ触媒存在下、変性基を導入した後、カチオン性基を導入することで、カチオン性基が導入されたヒドロキシアルキル化多糖の熱履歴が抑制されるため、変性基の導入工程の温度条件や洗浄工程の有無に関わらず、ゲル化の発生が抑制されたものと考えられる。
以下、本発明の製造方法で用いられる各成分、及び各工程等について順次説明する。
<ヒドロキシアルキル化多糖>
本発明の多糖誘導体は、ヒドロキシアルキル化多糖に、カチオン性基と、ヒドロカルビル基及びアニオン性基から選ばれる1種以上の変性基とが結合している。
また、ヒドロキシアルキル化多糖は、ヒドロキシエチル化多糖又はヒドロキシプロピル化多糖であることが好ましい。
本発明に用いられるヒドロキシアルキル化多糖としては、セルロース、グアーガム、スターチ等の多糖、又はこれらにメチル基等の置換基が導入された多糖が、更に、ヒドロキシアルキル化したものが挙げられる。
ヒドロキシアルキル化多糖の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
多糖は、好ましくはセルロース又はグアーガム、より好ましくはセルロースである。
ヒドロキシアルキル化多糖は、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
(ヒドロキシアルキル基)
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖にヒドロキシアルキル基が導入されている。該ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選択される少なくとも1つであることが好ましく、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有することがより好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することが更に好ましい。すなわち、ヒドロキシアルキル化多糖は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有していてもよく、いずれか一方のみを有することが好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することがより好ましい。
ヒドロキシアルキル基の置換度は、ヒドロキシアルキル化多糖及び得られる多糖誘導体の水への溶解性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上である。そして、洗浄性能の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下である。
ヒドロキシアルキル基の置換度は、ヒドロキシアルキル化多糖及び得られる多糖誘導体の水への溶解性の観点から、好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.5以上8以下、更に好ましくは1以上5以下、より更に好ましくは1.5以上3以下である。
ヒドロキシアルキル基の置換度とは、例えば、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみを有する場合には、いずれかの基の置換度である。一方、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有する場合には、ヒドロキシエチル基の置換度と、ヒドロキシプロピル基の置換度の合計である。
本発明において、X基の置換度とは、X基のモル平均置換度(MS)であり、多糖誘導体又は多糖の主鎖を構成する構成単糖単位1モルあたりのX基の平均置換モル数を意味する。例えば、ヒドロキシアルキル化多糖がヒドロキシエチルセルロースの場合には、「ヒドロキシエチル基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された(結合している)ヒドロキシエチル基の平均モル数を意味する。
(重量平均分子量)
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、水への溶解性及び高い透明性を得る観点から、好ましくは250万以下、より好ましくは100万以下、更に好ましくは74万以下、より更に好ましくは72万以下、より更に好ましくは60万以下、より更に好ましくは50万以下、より更に好ましくは40万以下、より更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは20万以下であり、対象物への付着性の観点から、1万以上が好ましい。
ヒドロキシアルキル化多糖の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
(ヒドロキシアルキル化多糖の製造方法)
ヒドロキシアルキル化多糖は、多糖と、ヒドロキシアルキル化剤とを、塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。
以下、多糖がセルロースである場合を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。セルロースは一般に高い結晶性を有し、反応性に乏しいため、反応前にその結晶性を低下させ、反応性を改善させる処理を行うことが好ましい。
ヒドロキシアルキル化セルロースの製造方法としては、例えば、以下の方法(i)~(iii)を挙げることができる。
方法(i):一般にアルセル化又はマーセル化と呼ばれる活性化方法、すなわち、原料セルロースと大量の水、及び大過剰のアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリセルロースを得たのち、ヒドロキシアルキル化剤と反応させる方法。
方法(ii):セルロースを、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドを含むジメチルスルホキシド、パラホルムアルデヒドを含むジメチルスルホキシド、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド等の溶剤、「セルロースの事典、編者:セルロース学会、発行所:株式会社朝倉書店」、Macromol.Chem.Phys.201,627-631(2000)等に記載されるセルロースの溶解が可能な溶剤を用い、原料セルロースを溶解させ、その後原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させる方法。
方法(iii):前記(i)や(ii)の方法のように、過剰のアルカリやセルロースを溶解可能な特殊な溶剤を用いず、粉末状、又は綿状の原料セルロースとヒドロキシアルキル化剤とをアルカリ共存下に反応させる方法。
ヒドロキシアルキル化多糖の製造に使用されるヒドロキシアルキル化剤の具体例としては、エポキシアルカン、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない観点から、エポキシアルカン及びアルキルグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エポキシアルカンがより好ましい。
ヒドロキシアルキル化剤としてはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上が好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
ヒドロキシアルキル化多糖は、市販されており、市場から入手したヒドロキシアルキル化多糖を使用してもよい。
具体的には、ヒドロキシエチルセルロースとしては、Natrosolシリーズ(Ashland社)が例示される。また、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースは、信越化学工業株式会社、ダウ・ケミカル社、日本曹達株式会社、住友精化株式会社、三晶株式会社、ダイセルファインケム株式会社、東京化成工業株式会社等からも入手可能である。
<変性化剤>
本発明の多糖誘導体の製造方法において、工程1において、ヒドロキシアルキル化多糖と、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる1種以上の変性化剤とを反応させて、変性多糖を得る。
すなわち、変性化剤として、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる1種以上を使用する。
ヒドロカルビル化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖を疎水的に変性させ、疎水物質への吸着性を高める等の効果があり、アニオン化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖の水中での溶解性や分散性を高める等の効果がある。
本発明において、変性化剤として、ヒドロカルビル化剤及びアニオン化剤の少なくとも1種を使用すればよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、2種以上のヒドロカルビル化剤を使用したり、ヒドロカルビル化剤とアニオン化剤とを併用してもよい。また、2種以上の変性化剤を使用する場合には、同時に使用してもよく、1種の変性化剤とヒドロキシアルキル化多糖とを反応させたのちに、他の変性化剤を添加して反応させてもよく、特に限定されない。
これらの中でも、本発明において、変性化剤が少なくともヒドロカルビル化剤を含有することが好ましく、変性化剤がヒドロカルビル化剤のみであることがより好ましく、アルキル化剤のみであることが更に好ましい。
(ヒドロカルビル化剤)
本発明の多糖誘導体の製造に用いられるヒドロカルビル化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖にヒドロカルビル基を導入可能であり、かつ、カチオン性基を有しない。ここで、ヒドロカルビル基とは、炭素及び水素のみで形成された、いわゆる炭化水素基を意味する。ヒドロカルビル基は、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカジエニル基等)、更に好ましくは直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、より更に好ましくは直鎖状又は分岐状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
ヒドロカルビル化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖に、以下の式(I)で表される基を導入可能な変性化剤であることが好ましい。

(式(I)中、Zは単結合又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を表し、Rは炭素数2以上のヒドロカルビル基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
Zは、単結合又は酸素原子を有する二価の炭化水素基を表す。ここで、前記炭化水素基は、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合、カルボニル炭素(-C(=O)-)で置換されていてもよく、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。酸素原子を有する二価の炭化水素基は、好ましくはエステル基及び/又はエーテル基を含み、より好ましくはエーテル基を含む。ここで、Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基である場合、Zは炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成されており、例えば、窒素原子を含むものではない。
Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、エポキシ基由来の基又はオキシグリシジル基由来の基を有することが好ましく、洗浄性能の観点から、オキシグリシジル基由来の基を有することがより好ましい。Zが酸素原子を有する二価の炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上6以下であり、より好ましくは1以上3以下である。
Rは、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基である。Rの炭素数は、ヒドロカルビル基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(I)中のRと結合するZ中の原子は、例えば酸素原子、カーボネート炭素、水酸基が置換している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が置換している炭素原子である。
式(I)中、Rは、炭素数2以上のヒドロカルビル基を示し、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
式(I)中、Rの炭素数は、ヒドロカルビル基の導入によって変性させる観点から、2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上である。そして、溶解性の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは14以下である。
式(I)中、Rは、好ましくは炭素数2以上22以下のアルキル基、より好ましくは炭素数4以上18以下のアルキル基、更に好ましくは炭素数6以上16以下のアルキル基、より更に好ましくは炭素数8以上15以下のアルキル基、より更に好ましくは炭素数10以上14以下のアルキル基である。
式(I)で表される基は、下記式(I-1-1)~(I-4)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
(式(I-1-1)~式(I-4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上のヒドロカルビル基を示し、*はヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R11O-の平均付加モル数を示し、n2は-R12-O-の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。)
式(I-1-1)~式(I-4)中、Rは式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同じである。式(I)中のZは、式(I-1-1)~式(I-4)からRを除いた基である。
式(I-1-1)~式(I-4)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数2又は3、すなわち、エチレン基又はプロピレン基である。R11及びR12が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は0以上30以下であり、好ましくは0以上20以下、より好ましくは0以上10以下、更に好ましくは0以上5以下であり、0であってもよい。
式(I-1-1)及び式(I-1-2)は、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテルに由来する基であり、式(1)中のZがオキシグリシジル基又は(ポリ)アルキレンオキシグリシジル基に由来する基である。式(I-1-1)又は式(I-1-2)で表される基は、ヒドロカルビル化剤として、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル、より好ましくはグリシジルアルキルエーテルを使用することによって得られる。
式(I-2-1)及び式(I-2-2)は、式(I)中のZがエポキシ基に由来する基である。式(I-2-1)及び式(I-2-2)で表される基は、ヒドロカルビル化剤として、末端エポキシ化炭化水素、好ましくは末端エポキシ化アルカンを使用することで得られる。
更に、式(I-3)は、ヒドロカルビル基(R)が直接にヒドロキシアルキル化多糖の水酸基から水素原子を除いた基と結合している場合である。式(I-3)で表される基は、ヒドロカルビル化剤として、ハロゲン化炭化水素、好ましくはハロゲン化アルカンを使用することで得られる。
式(I-4)は、Zがカルボキシ基等に由来する基を含有する。式(I-4)で表される基は、ヒドロカルビル化剤として、R-(O-R12n2-C(=O)-OH、R-(O-R12n2-C(=O)-A(Aはハロゲン原子を示す。)、R-(O-R12n2-C(=O)-O-C(=O)-(R12-O)n2-R等を使用することで得られる。
これらの中でも、多糖誘導体の合成時に塩の副生がなく、透明性に優れる多糖誘導体を得るの観点から、式(I-1-1)、式(I-1-2)、式(I-2-1)又は式(I-2-2)で表される基であることが好ましく、より好ましくは式(I-1-1)又は式(I-1-2)で表される基である。
ヒドロカルビル化剤としては、ヒドロカルビル基を導入可能なものであれば特に限定されないが、下記式(1-1)~式(1-8)から選ばれるヒドロカルビル化剤であることが好ましい。

式(1-1)~(1-8)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、Rは炭素数2以上のヒドロカルビル基を示し、Aはハロゲン原子を示し、n1は-R11-O-の平均付加モル数を示し、n2は-R12-O-の平均付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下である。
式(1-1)及び(1-2)中、R及びその好ましい態様は、前記式(I)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子が好ましい。R11及びその好ましい態様は、前記式(I-1-1)及び(I-1-2)のR11及びその好ましい態様と同様である。また、n1及びその好ましい態様は、前記式(I-1-1)及び(I-1-2)のn1及びその好ましい態様と同様である。
前記式(1-1)で表される化合物の具体例としては、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル等のアルキル基を有するグリシジルエーテル;ブテニルグリシジルエーテル、ペンテニルグリシジルエーテル、ヘキセニルグリシジルエーテル、ヘプテニルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、ノネニルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ウンデセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル、トリデセニルグリシジルエーテル、テトラデセニルグリシジルエーテル、ペンタデセニルグリシジルエーテル、ヘキサデセニルグリシジルエーテル、ヘプタデセニルグリシジルエーテル、オクタデセニルグリシジルエーテル等のアルケニル基を有するグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル等の、アルキル基を有する炭素数5以上25以下の直鎖アルキルグリシジルエーテルが好ましい。
前記式(1-2)で表される化合物の具体例としては、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-ドデシルエーテル等の、ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基を有する炭素数5以上25以下の3-ハロ-2-ヒドロキシ-プロピルヒドロカルビルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、ヒドロカルビル化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、ヒドロカルビル化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(1-1)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記式(1-3)又は(1-4)で表されるヒドロカルビル化剤は、前記式(I-2-1)及び式(I-2-2)で表される基を導入しうるヒドロカルビル化剤である。
式(1-3)及び(1-4)中、R及びその好ましい態様は、前記式(I)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
前記式(1-3)で表される化合物の具体例としては、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシオクタデカン等の、ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基を有する炭素数4以上24以下の1,2-エポキシアルカンが挙げられる。前記式(1-4)で表される化合物の具体例としては、1-クロロ-2-ヒドロキシテトラデカン等の、アルキル基を有する炭素数4以上24以下の1-ハロ-2-ヒドロキシアルカン等が挙げられる。
これらの中では、ヒドロカルビル化剤とヒドロキシアルキル化多糖との反応時に塩の副生がない点、ヒドロカルビル化剤の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、前記式(1-3)で表される化合物が好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(1-5)で表されるヒドロカルビル化剤は、前記式(I-3)で表される基を導入しうるヒドロカルビル化剤である。
式(1-5)中、R及びその好ましい態様は、前記式(I)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
前記式(1-5)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有するハロゲン化炭化水素、好ましくは所望の炭素数を有するハロゲン化アルカンが挙げられる。
前記式(1-6)~(1-8)で表されるヒドロカルビル化剤は、前記式(I-4)で表される基を導入しうるヒドロカルビル化剤である。
式(1-6)~式(1-8)中、R及びその好ましい態様は、前記式(I)のRと同様である。Aはハロゲン原子を示し、塩素原子であることが好ましい。
式(1-6)~式(1-8)中、R12、n2及びその好ましい態様は、式(I-4)のR12及びn2と同様である。
前記式(1-6)~式(1-8)で表される化合物の具体例としては、前記所望の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸ハライド、脂肪酸無水物が挙げられる。
使用するヒドロカルビル化剤の量は、所望するヒドロカルビル基の置換度(MS)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、ヒドロキシアルキル化多糖を疎水的に変性させる観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.003モル以上、更に好ましくは0.01モル以上であり、多糖誘導体の透明性の観点及び多糖誘導体製造コストの観点から、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下、更に好ましくは1モル以下、より更に好ましくは0.5モル以下、より更に好ましくは0.3モル以下である。
ヒドロカルビル化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
(アニオン化剤)
本発明において、工程1で使用する変性化剤として、アニオン化剤を使用してもよい。アニオン化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖にカルボキシ基、硫酸基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基等のアニオン性基を導入可能であれば特に限定されない。これらの中でも、カルボキシ基、硫酸基、リン酸基を導入しうるアニオン化剤であることが好ましく、カルボキシ基を導入し得るアニオン化剤であることがより好ましい。
なお、ヒドロキシアルキル化多糖に導入されたアニオン性基は、塩を形成していてもよい。これらの塩としては、無機塩基との塩、有機塩基との塩が例示される。無機塩基との塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩としては、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸との塩が例示される。また、アンモニウム塩との塩も例示される。
セルロースに硫酸基を導入しうるアニオン化剤としては、無水硫酸又はN,N-ジメチルホルムアミドと無水硫酸との錯体が好ましく例示される。また、クロロスルホン酸、ピペリジン-N-硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体、硫酸-トリメチルアミン錯体等を使用してもよい。ここでN,N-ジメチルホルムアミドと無水硫酸との錯体とは、N,N-ジメチルホルムアミドと無水硫酸とを混合することにより形成される化合物である。N,N-ジメチルホルムアミドと無水硫酸との混合比は、N,N-ジメチルホルムアミドが無水硫酸に対して過剰になる範囲であることが好ましく、混合物中の無水硫酸の濃度は10~30質量%であることがより好ましい。無水硫酸の濃度がこの範囲であると、セルロースの硫酸エステル化反応を十分に進行させることができ、しかも硫黄濃度の制御が容易である。硫酸化剤の使用量は、所望の硫酸化率(又は硫黄濃度)及び反応条件によって任意に選択することができる。
また、リン酸基を導入し得るアニオン化剤としては、例えば、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩、脱水縮合リン酸、無水リン酸、リン酸等が挙げられる。中でも、リン酸化剤は、脱水縮合リン酸、無水リン酸及びリン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、例えば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することが可能である。正リン酸は、例えば、五酸化二リンとリン酸を反応させることにより得ることができる。具体的には、氷浴中で、五酸化二リンに対し、85%リン酸をゆっくり滴下することで得ることができる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により無機高分子となったものであり、例えばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。無水リン酸としては、五酸化二リン等を挙げることができる。
カルボキシ基を導入し得るアニオン化剤としては、モノハロゲン化酢酸及び/又はその塩が挙げられる。なお、この時導入されるアニオン性基は、カルボキシメチル基(-CH-COOH又はその塩)である。モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸の金属塩としては、具体的には、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは2種以上を組み合せても使用することができる。
使用するアニオン化剤の量は、所望するアニオン性基の置換度(MS)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、得られる多糖誘導体の水溶性、及び分散性の観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.05モル以上であり、上記の観点及び多糖誘導体の製造コストの観点から、好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、更に好ましくは3モル以下、より更に好ましくは2モル以下、より更に好ましくは1モル以下である。
アニオン化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
<アルカリ触媒>
本発明において、ヒドロキシアルキル化多糖と、変性化剤との反応は、アルカリ触媒の存在下で行われる。また、本発明の多糖誘導体の製造方法において、工程1の後、洗浄工程を経ずに工程2を行うため、工程2においてもアルカリ触媒が存在する。
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン化合物類等が挙げられる。これらの中では変性基(ヒドロカルビル基、アニオン性基)の導入反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらのアルカリ化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ化合物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。また、アルカリ化合物は固体状態で添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。
<カチオン化剤>
本発明の多糖誘導体の製造に用いられるカチオン化剤は、変性多糖にカチオン性基を導入可能である。カチオン化剤は、ヒドロキシアルキル化多糖の電荷による吸着性を高める等の効果がある。
ここでカチオン性基とは、好ましくは4級アンモニウム塩、又はプロトンを付加することで4級アンモニウム塩に転換が可能な3級アミン及びその4級アンモニウム塩(第4級アンモニウムカチオン)を意味する。
カチオン化剤は、変性多糖に、以下の式(II-1)又は(II-2)で表される基を導入可能であることが好ましい。

(式(II-1)及び式(II-2)中、R21~R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、Xはアニオンを示しtは0以上3以下の整数を示し、*は変性多糖の水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
21~R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上、溶解性の観点から炭素数24以下の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐の炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基が例示される。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、R21~R23の全てがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、R21~R23の全てがメチル基であることが更に好ましい。
式(II-1)及び式(II-2)中、tは0以上3以下の整数を示し、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
はアニオンを示し、第4級アンモニウムカチオンの対イオンである。具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、Xは、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられるが、得られる多糖誘導体の水溶性及び化学的安定性の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される1種以上、より好ましくは塩化物イオンである。
は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
上記式(II-1)又は(II-2)で表されるカチオン性基を導入可能なカチオン化剤としては、下記式(2-1)又は式(2-2)で表される化合物等が挙げられる。
式(2-1)及び(2-2)中、R21~R23及びその好ましい態様は、前記式(II-1)及び(II-2)のR21~R23と同様である。t及びその好ましい態様は、前記式(II-1)及び(II-2)のtと同様である。X及びその好ましい態様は、前記式(II-1)及び(II-2)のXと同様である。Aはハロゲン原子を示す。R21~R23は互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記式(2-1)又は(2-2)で表されるカチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウム、グリシジルトリエチルアンモニウム、グリシジルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ塩化物、臭化物又はヨウ化物や、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ塩化物、3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれ臭化物や、3-ヨード-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3-ヨード-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3-ヨード-2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのそれぞれヨウ化物が挙げられる。
これらの中では、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの塩化物;3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの臭化物から選ばれる1種以上が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上がより好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドが更に好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
使用するカチオン化剤の量は、所望するカチオン性基の置換度(MS)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、多糖誘導体の水溶性、及び本発明の効果を得る観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.03モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、より更に好ましくは0.1モル以上であり、上記の観点及び多糖誘導体の製造コストの観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは10モル以下、更に好ましくは5モル以下、より更に好ましくは3モル以下である。
カチオン化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよい。
<カチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比>
本発明において、工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比は、2以下である。前記アルカリ触媒のモル当量の比が2を超えると、得られる多糖誘導体の白濁等により、透明性が損なわれる傾向にある。
なお、工程1において、ハロゲン化アルカン等のハロゲン原子を有するヒドロカルビル化剤を使用した場合には、アルカリ触媒がヒドロカルビル化剤と等モル当量で消費される。従って、工程1の変性化剤によって、アルカリ触媒が消費されるような場合には、工程2反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が上記範囲内となるように工程1におけるアルカリ触媒添加量を調整すればよい。また、工程1でアルカリ触媒が消費される場合には、工程1の終了後に、工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が上記の範囲内となるように、工程2の反応前にアルカリ触媒を追添加してもよい。
工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比は、工程2で使用するカチオン化剤のモル当量数に対する、アルカリ触媒のモル当量数である。なお、本発明の製造方法は、工程2において、アルカリ触媒を追添することを排除するものではなく、工程2においてアルカリ触媒を追添する場合には、上記「アルカリ触媒のモル当量数」は、工程2で添加したアルカリ触媒を含む、全アルカリ触媒のモル当量数である。なお、アルカリ触媒のモル当量は、アルカリ触媒が水酸化ナトリウム等の一価の塩基化合物の場合には、モル数と同じであり、アルカリ触媒が水酸化カルシウム等の二価の塩基化合物の場合には、モル数に価数を乗じた値である。
カチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比(アルカリ触媒/カチオン化剤)は、透明性を向上させる観点から、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.75以下であり、そして、変性化剤及びカチオン化剤との反応性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上である。
なお、アルカリ触媒の使用量は、十分な反応性を得るとともに、反応選択性を得る観点から、ヒドロキシアルキル化多糖の構成単糖単位1モル(原料多糖がセルロースである場合、アンヒドログルコース単位(AGU)1モル)に対して、好ましくは0.01モル当量以上、より好ましくは0.05モル当量以上、更に好ましくは0.1モル当量以上であり、同様の観点から、好ましくは10モル当量以下、より好ましくは5モル当量以下、更に好ましくは3モル当量以下、より更に好ましくは2モル当量以下である。
<工程1>
本発明の製造方法において、工程1は、アルカリ触媒の存在下、ヒドロキシアルキル化多糖と、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる少なくとも1種以上の変性化剤とを反応させて、変性多糖を得る工程である。
工程1において、変性化剤が液体状態である場合には、そのまま用いてもよいし、水や非水溶剤等の、変性化剤の良溶剤で希釈してもよい。
また、ヒドロキシアルキル化多糖と、変性化剤との反応は、溶剤中で行うことが好ましい。使用する溶剤としては、水及び非水溶剤が挙げられ、水と非水溶剤との混合溶剤であることが好ましい。
反応及び変性化剤の希釈に用いる非水溶剤としては、一般的に使用されるイソプロパノール、tert-ブタノール等の2級又は3級の炭素数3以上4以下の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上6以下のケトン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
工程1における溶剤量は、ヒドロキシアルキル化多糖100質量部に対して、適度な反応性及び反応の均一性を得る観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは200質量部以上、更に好ましくは300質量部以上であり、そして、得られる変性多糖の収率を向上させる観点から、好ましくは5,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下である。
工程1における反応温度は、反応速度の観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上、より更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは75℃以上であり、そして、副反応を抑制する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、より更に好ましくは85℃以下である。
本発明において、工程1と工程2との間に、洗浄工程を有していてもよいが、生産効率の観点から、洗浄工程を有さないことが好ましい。カチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比(アルカリ触媒/カチオン化剤)を、前述の範囲内にすることで、変性化反応の後、洗浄工程により、過剰のアルカリ化合物を除去する必要がなく、カチオン化反応させることができる。なお、洗浄工程とは、変性基を導入した変性多糖を、熱水、イソプロピルアルコール、アセトン等の溶剤で洗浄することで、未反応のヒドロカルビル化剤や、中和等によりアルカリ化合物を塩として除去する工程である。洗浄工程後、ろ過や乾燥の後、アルカリ化合物を再添加して、カチオン化反応させるものである。
本発明において、工程1及び後述する工程2に用いる装置としては、フラスコ、SUS反応槽等の反応容器、及び撹拌が可能なレディゲミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
<工程2>
工程2は、工程1で得られた変性多糖と、カチオン化剤とを反応させる工程である。
上述したように、工程1の後、洗浄工程を経ずに工程2を行うことが好ましい。本発明によれば、洗浄工程を行うことなく、透明性に優れる多糖誘導体を得ることが可能であり、製造方法がより容易となる。カチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比を一定の範囲とすることにより、過剰のアルカリ触媒を除去する必要性がない。
また、工程1の後、カチオン化剤を添加する前に、系内の温度を65℃未満とすることが好ましい。また、系内の温度を、工程2における反応温度又はそれ以下に降温してから、カチオン化剤を添加することが好ましい。これにより、より透明性に優れた多糖誘導体を得ることができる。なお、上記の冷却は、反応槽に設けられた冷却器により行ってもよく、放熱させることで冷却させてもよく、特に限定されない。
工程2における反応温度は、透明性に優れた多糖誘導体を得る観点から、好ましくは65℃未満、より好ましくは55℃未満、更に好ましくは53℃以下、より更に好ましくは51℃以下であり、そして、反応速度の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上、より更に好ましくは45℃以上である。
カチオン化剤が液体状態である場合には、そのまま用いてもよいし、水や非水溶剤等の良溶剤に希釈して添加してもよい。希釈に用いる非水溶剤としては、上述した溶剤が同様に例示される。
工程1及び工程2は、着色、及び単糖単位由来の主鎖の分子量低下を抑制する観点から、それぞれ必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
工程2における反応終了後は、酸を用いてアルカリ化合物を中和することができる。中和は、全ての反応の終了後に行うことが好ましい。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸を用いることができる。
多糖誘導体製造時の全ての反応終了後に、得られた多糖誘導体を、必要に応じて、濾過等により分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶剤等で洗浄して未反応のヒドロキシアルキル化剤、ヒドロカルビル化剤、アニオン化剤、カチオン化剤、並びにこれらの反応剤由来の副生物、中和等により副生した塩類を除去してから使用することもできる。その他、精製方法としては、再沈殿精製、遠心分離、透析等一般的な精製方法を用いることができる。
<多糖誘導体>
(置換度)
本発明において、得られる多糖誘導体におけるヒドロカルビル基、アニオン性基、及びカチオン性基の置換度は特に限定されず、多糖誘導体の所望の性質により、適宜選択してもよい。
本発明において、工程1でヒドロキシアルキル化多糖と、ヒドロカルビル化剤とを反応させる場合、得られた多糖誘導体におけるヒドロカルビル基(好ましくはアルキル基)の置換度(MS)は、ヒドロカルビル基の導入によって疎水的に変性する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上、更に好ましくは0.005以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.015以上である。また、多糖誘導体にけるヒドロカルビル基の置換度(MS)は、水への溶解性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.04以下である。
ヒドロカルビル基の置換度(MS)は、疎水的に変性させる観点及び水への溶解性の観点から、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.001以上0.5以下、更に好ましくは0.001以上0.3以下、より更に好ましくは0.001以上0.1以下、より更に好ましくは0.001以上0.05以下、より更に好ましくは0.003以上0.05以下、より更に好ましくは0.003以上0.04以下、より更に好ましくは0.005以上0.04以下、より更に好ましくは0.008以上0.04以下、より更に好ましくは0.01以上0.04以下、より更に好ましくは0.015以上0.04以下である。
ヒドロカルビル基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、工程1でヒドロキシアルキル化多糖と、アニオン化剤とを反応させる場合、得られた多糖誘導体におけるアニオン性基の置換度(MS)は、アニオン性基の導入によって変性させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上、更に好ましくは0.004以上、より更に好ましくは0.006以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上である。また、多糖誘導体におけるアニオン化剤の置換度(MS)は、カチオン性基との相互作用を低減し、水への溶解性及び高い透明性を有する多糖誘導体を得る観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.6以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.05以下である。
アニオン性基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、多糖誘導体におけるカチオン性基の置換度(以下、「MS」ともいう)は、カチオン性基の導入によって電荷による吸着性を付与する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.07以上であり、そして、過度の電荷吸着を抑制し、水への溶解性及び高い透明性を有する多糖誘導体を得る観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.35以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.25以下、より更に好ましくは0.2以下である。
カチオン性基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
(透明性)
本発明により得られる多糖誘導体は、高い透明性を有することが好ましい。
具体的には、多糖誘導体を2質量%水溶液とした場合に、外観が透明性に優れるものであることが好ましい。
(用途)
本発明により得られる多糖誘導体の用途としては特に限定されず、リンス、シャンプー剤等の毛髪化粧料に配合したり、布帛処理剤、洗濯用洗剤、洗濯用仕上げ剤、洗濯用洗浄向上剤、柔軟剤等に配合する等、特に限定されない。
実施例及び比較例で使用した測定方法は以下の通りである。
[置換度(モル平均置換度(MS))の測定]
・前処理
粉末状の多糖誘導体2gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラ/ポア7(分画分子量1,000)、フナコシ株式会社製)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を一晩、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU1100)を用いて凍結乾燥することで精製多糖誘導体を得た。
<ケルダール法によるカチオン性基質量の算出>
精製した多糖誘導体の200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(Merck社製)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製、K-432)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社製、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン性基の質量を算出した。
<Zeisel法によるヒドロカルビル基(アルキル基)質量の算出>
以下に、実施例1(炭化水素基の導入剤として、ラウリルグリシジルエーテルを使用)の場合を例に、炭化水素基(R)であるアルキル基質量の算出方法を説明する。なお、他の導入剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカンや炭化水素基の導入剤など)を適宜選択することによって測定可能である。
精製した多糖誘導体200mg、アジピン酸(東京化成工業株式会社製)220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3、株式会社マルエム製)に精秤し、内標溶液(テトラデカン(富士フイルム和光純薬株式会社製)/o-キシレン(東京化成工業株式会社製)=1/25(v/v)) 3mL及びヨウ化水素酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)3mLを加えて密栓した。また、多糖誘導体の代わりに1-ヨードドデカン(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)を2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社製、Reacti-ThermIII Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所、GC-2010 plus)にて、1-ヨードドデカン量を分析した。
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のヒドロカルビル基の質量を求めた。
<カチオン性基及びアルキル基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のカチオン性基とヒドロカルビル基(R)であるアルキル基の質量を計算し、それぞれ物質量(mol数)に変換することで、カチオン性基の置換度(MS)、及びアルキル基の置換度(MS)を算出した。
<電導度滴定によるアニオン性基質量の算出>
得られた精製多糖誘導体0.3gを100mLビーカーに採取し、イオン交換水80gを加えて室温で混合した。溶解したことを確認した後、0.02M塩化ナトリウム水溶液を5mL加え、0.1M塩酸を用いて、pH2に調整した。自動スタット滴定装置「AUT-211」(東亜電波工業株式会社製)を用いて、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL/分で定速注入しながら電導度(Conductivity)を測定し、注入量-電導度変化をグラフ化した。アニオン性基の中和段階である電導度が一定で変化しない領域を測定し、その領域において中和に消費した水酸化ナトリウムのモル数を換算し、アニオン性基の質量を算出した。
<アニオン性基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のアニオン性基の質量及び全サンプル質量からHEC骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、アニオン性基の置換度(MS)を算出した。
[重量平均分子量の測定]
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、ポリエチレングリコール換算及びヒドロキシエチルセルロース(Natrosol250HR(分子量100万)、Natrosol 250MR(分子量72万)、Ashland社製)を基準として、以下の条件で測定を行った。
測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α-M(東ソー株式会社製)
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CHCOOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
実施例1
多糖誘導体の合成
ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」ともいう、Ashland社製、Natrosol 250 JR、重量平均分子量:15万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5)90gを1Lセパラブルフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水73.7g、イソプロピルアルコール(以下IPAという)406.0gを加え、200r.p.m.で5分間撹拌した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液10.6gを加え、40℃で30分間撹拌した。次に、ラウリルグリシジルエーテル(以下、「LA-EP」ともいう、四日市合成株式会社製、LA-EP)3.8gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った(工程1)。更にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、「GMAC」ともいう、阪本薬品工業株式会社製、SY-GTA80)16.3gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った(工程2)。その後、90質量%酢酸水溶液10.6gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、CR21G III)を用いて遠心分離を行った(1500G×40秒)。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85質量%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(株式会社東洋製作所製、VR-420)を用いて80℃で一晩減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社製、MX-1200XTM)により解砕することで、粉末状のセルロース誘導体を得た。
実施例2~8、及び比較例1
実施例1と同様の方法を用いて、表1に示す多糖誘導体を合成した。
比較例2
多糖誘導体の合成
HEC90gを1Lセパラブルフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水73.2g、IPA404.8gを加え、200r.p.m.で5分間撹拌した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液10.6gを加え、40℃で30分間撹拌した。次に、GMAC16.2gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。更に、LA-EP3.8gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った。その後、90質量%酢酸水溶液10.6gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機を用いて遠心分離を行った(1500G×40秒)。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85質量%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機を用いて80℃で一晩減圧乾燥し、エクストリームミルにより解砕することで、粉末状のセルロース誘導体を得た。
外観評価
サンプル瓶に得られた粉末状のセルロース誘導体1gと水を49g加え、マグネチックスターラーで撹拌し、2質量%のセルロース誘導体水溶液を調製した。得られた水溶液の外観を目視で評価した。透明であるものは、セルロース誘導体が十分に水に溶解していることを示し、白濁が認められるものは、セルロース誘導体の少なくとも一部が水に溶解していないことを示す。
表1で使用した多糖原料(ヒドロキシアルキル化多糖)、アルキル化剤、アニオン化剤、カチオン化剤は、以下の通りである。
・ヒドロキシエチルセルロース(HEC):Ashland社製、Natrosol 250JR(商品名)、重量平均分子量=15万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・ヒドロキシエチルセルロース(HEC):The Dow Chemical Company社製、CELLOSIZE QP100MH(商品名)、重量平均分子量=210万、ヒドロキシエチル基の置換度=2.5
・ラウリルグリシジルエーテル(LA-EP):四日市合成株式会社製、LA-EP(商品名)
・モノクロロ酢酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬株式会社製、クロロ酢酸ナトリウム
・グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(GMAC):阪本薬品工業株式会社製、SY-GTA80(商品名)
・3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルドデシルジメチルアンモニウムクロリド(CDDA):四日市合成株式会社製
表1から明らかなように、本発明の多糖誘導体の製造方法により、透明性に優れる多糖誘導体が簡便な方法により得られることが明らかとなった。
一方、カチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が2を超える比較例1では、得られた多糖誘導体を水に溶解したところ、白濁が生じた。
また、工程1と工程2の順序を逆として、カチオン化剤と反応させてから、アルキル化剤と反応させた比較例2でも、同様に白濁が生じた。
本発明の多糖誘導体の製造方法により、簡便な方法により、透明性に優れた多糖誘導体が得られることが示された。
本発明の多糖誘導体の製造方法は、種々の用途への応用が期待される多糖誘導体の製造方法として、好適に使用可能である。

Claims (7)

  1. 下記工程1及び工程2をこの順で有し、
    工程1の後、洗浄工程を経ずに工程2を行い、
    工程2の反応時のカチオン化剤に対するアルカリ触媒のモル当量の比が2以下である、 多糖誘導体の製造方法。
    工程1:アルカリ触媒の存在下、ヒドロキシエチルセルロースと、ヒドロカルビル化剤(ただし、カチオン性基を有するものを除く)及びアニオン化剤から選ばれる1種以上の変性化剤とを反応させて、変性多糖を得る工程
    工程2:工程1で得られた変性多糖と、カチオン化剤とを反応させる工程
  2. 工程1の反応温度が55℃以上100℃以下である、請求項1に記載の多糖誘導体の製造方法。
  3. 工程2の反応温度が65℃未満である、請求項1又は2に記載の多糖誘導体の製造方法。
  4. カチオン化剤が、下記式(2-1)で表される化合物、及び式(2-2)で表される化合物から選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれかに記載の多糖誘導体の製造方法。

    式(2-1)及び(2-2)中、R21~R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、Aはハロゲン原子を示し、Xはアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示す。
  5. 多糖誘導体のカチオン性基の置換度(MS)が0.001以上1以下である、請求項1~4のいずれかに記載の多糖誘導体の製造方法。
  6. 変性化剤がアルキル化剤である、請求項1~5のいずれかに記載の多糖誘導体の製造方法。
  7. アルキル化剤のアルキル基の炭素数が2以上22以下である、請求項6に記載の多糖誘導体の製造方法。
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