A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、末端セパレータ210と、上端プレート220と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、末端セパレータ210、下端プレート189、一対のターミナルプレート410,420、および、絶縁部200)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。上側エンドプレート104のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。なお、以下、連通孔108のうち、下側エンドプレート106に形成された孔を、特にエンド貫通孔107という。
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガス供給マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162は、各発電単位102の空気極114(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、各発電単位102の燃料極116(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。また、以下では、空気室166と燃料室176とを、まとめて「ガス室」という。
図1から図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28とフランジ部29とを有している。本体部28には、上下方向に貫通するガス貫通孔26が形成されている。本体部28の一端(上端)は、下側エンドプレート106に形成されたエンド貫通孔107に接続されている。具体的には、本体部28の上端は、エンド貫通孔107内に挿入され、例えば溶接により接合されている。なお、本体部28の上端の外径および内径は、本体部28の他端(下端)の外径および内径より小さくなっている。フランジ部29は、本体部28の下端側から上下方向(Z軸方向)に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に張り出すように設けられている。なお、フランジ部29の上下方向視での形状は、略矩形状であり、4つの角部のそれぞれにはボルト孔29A(図1参照)が形成されている。各ボルト孔29Aには、燃料電池スタック100を外部装置に接続するためのボルト(図示しない)が挿入される。
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。なお、エンドプレート104,106は、それぞれ、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)して形成されたものである。
図2から図4に示すように、上側エンドプレート104は、平面部310と、凸部320と、を含んでいる。平面部310は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部310のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部310におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部320は、平面部310から上側に突出したリブである。凸部320は、外側凸部322と、内側凸部324と、を有している。外側凸部322は、平面部310の外周部から上側に突出している。外側凸部322は、平面部310の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部324は、平面部310の内周部から上側に突出している。内側凸部324は、平面部310の内周部の全周にわたって形成されている。
また、下側エンドプレート106は、平面部510と、凸部520と、を含んでいる。平面部510は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部510のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部510におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部520は、平面部510から下側に突出したリブである。凸部520は、外側凸部522と、内側凸部524と、を有している。外側凸部522は、平面部510の外周部から下側に突出している。外側凸部522は、平面部510の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部524は、平面部510の内周部から下側に突出している。内側凸部524は、平面部510の内周部の全周にわたって形成されている。
図2および図3に示すように、下側エンドプレート106には、補強部材600が固定されている。補強部材600は、平板部分610と、筒部分620と、を有する。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510に平行な平板状の部分である。平板部分610の上下方向視での形状は、略矩形である。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510から下方に離間した位置に配置されている。平板部分610の長手方向の一方側の辺は、外側凸部522の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されており、平板部分610の長手方向の他方側の辺は、内側凸部524の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610には、ガス通路部材27の本体部28を挿入可能な貫通孔612が形成されている。筒部分620は、平板部分610の貫通孔612に連通する貫通孔622を有する円筒状の部分である。筒部分620は、平板部分610における貫通孔612の周囲部分から下側に突出するように形成されている。平板部分610の貫通孔612および筒部分620の貫通孔622を構成する内壁面がガス通路部材27の本体部28の外周面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610と筒部分620とは、一体に形成されている。補強部材600は、耐熱性材料や、下側エンドプレート106やガス通路部材27等と同一材料または熱膨張率が同じ材料により形成されていることが好ましく、例えば金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。
(ターミナルプレート410,420の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側(X軸正方向側)の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。本実施形態では、上側ターミナルプレート410の張り出し部分は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側ターミナルプレート420の張り出し部分は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190(後述)に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部218における下側(発電ブロック103側)の部分は凸部となっており、連結部218における上側(上側エンドプレート104側)の部分は凹部となっている。このため、連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性とが確保されている。
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性とが確保されている。
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図8は、図5のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図9は、図5のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図5から図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。空気極114および燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極の一例である。
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(図2から図4参照)。
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
図8に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
図9に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
図5から図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。燃料極側集電部材144は、例えば、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に複数の矩形の切り込みを入れ、該材料の上に複数の孔が形成されたシート状の燃料極側集電部材144を配置した状態で、複数の矩形部分を曲げ起こしてスペーサー149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴が開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端プレート189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば600℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
なお、本実施形態の燃料電池スタック100は、各発電単位102において、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
A-3.ガス流路の詳細構成:
次に、本実施形態の燃料電池スタック100におけるガス流路の詳細構成について説明する。ここで言うガス流路は、各マニホールドと各連通流路とから構成されるガス流路である。なお、マニホールドには、ガス通路部材27内に形成された流路が含まれる。例えば、空気極側の供給側のマニホールドは、酸化剤ガス供給マニホールド161と、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27内に形成された流路と、から構成される。空気極側の排出側のマニホールド、燃料極側の供給側のマニホールドおよび燃料極側の排出側のマニホールドについても同様に、それぞれ、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と、それぞれの位置に配置されたガス通路部材27内に形成された流路と、から構成される。また、連通流路は、マニホールドと電極とを連通する流路であり、マニホールドとガス室とを連通する連通孔と、ガス室の一部分(連通孔と電極との間に位置する部分)と、から構成される。例えば、空気極側の供給側連通流路は、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気極114とを連通する流路であり、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166における酸化剤ガス供給連通孔132と空気極114との間に位置する一部分と、から構成される。同様に、空気極側の排出側連通流路は、酸化剤ガス排出マニホールド162と空気室166とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133と、空気室166における酸化剤ガス排出連通孔133と空気極114との間に位置する一部分と、から構成される。また、燃料極側の供給側連通流路は、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176における燃料ガス供給連通孔142と燃料極116との間に位置する一部分と、から構成され、燃料極側の排出側連通流路は、燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176とを連通する燃料ガス排出連通孔143と、燃料室176における燃料ガス排出連通孔143と燃料極116との間に位置する一部分と、から構成される。
本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路を画定する部材の表面(該ガス流路に面する表面)に、以下の条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAが存在する。
(1)特定の方向に略平行に延伸する複数の溝11が形成されており、かつ、
(2)上記特定の方向に交差する方向に沿った最大高さRzが、0.01μm以上、50μm以下である。
本明細書において、2つの方向が略平行であるとは、2つの方向のなす角が10度以下であることを意味する。そのため、上記条件(1)は、複数の溝11が互いに平行である形態に限られず、複数の溝11の延伸方向が互いに平行な状態からわずかにずれており、複数の溝11が互いに交差している形態も含む。
また、上記条件(2)における最大高さRzは、JIS B0601に規定された表面粗さの指標値である。最大高さRzは、非接触式または接触式の表面粗さ計により測定することができる。上記条件(2)における最大高さRzは、特定の方向(複数の溝11の延伸方向に略平行な方向)に交差する方向に沿った最大高さRzであることから、複数の溝11の存在に起因する表面の凹凸の大きさの程度を表す指標値であると言える。なお、上記条件(2)における「特定の方向に交差する方向」は、例えば、特定の方向に直交する方向である。
上記条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAは、例えば、対象部材に対する研磨加工、レーザ加工、エッチング加工等によって複数の溝11を形成することにより実現することができる。また、このような溝11の形成加工は、対象部材の形成材料に対して行ってもよいし、該形成材料を加工して対象部材を作製した後に行ってもよい。
図5に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての酸化剤ガス排出マニホールド162を画定する部材の表面に、特定領域SAが存在する。なお、酸化剤ガス排出マニホールド162を画定する部材の表面は、具体的には、単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180、下側ターミナルプレート420、下端プレート189および下側エンドプレート106における連通孔108の内周面である。この点は、後述する酸化剤ガス供給マニホールド161、燃料ガス排出マニホールド172および燃料ガス供給マニホールド171のそれぞれを画定する部材の表面についても、同様である。本実施形態では、酸化剤ガス排出マニホールド162を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。酸化剤ガス排出マニホールド162を画定する部材の表面の特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(酸化剤オフガスOOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではZ軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、酸化剤オフガスOOGの主たる流れ方向(Z軸方向)に略平行に延伸している複数の溝11が形成されている。
また、図示しないが、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての酸化剤ガス供給マニホールド161を画定する部材の表面にも、同様に、特定領域SAが存在する。本実施形態では、酸化剤ガス供給マニホールド161を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。酸化剤ガス供給マニホールド161を画定する部材の表面の特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(酸化剤ガスOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではZ軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(Z軸方向)に略平行に延伸している複数の溝11が形成されている。
図6に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての燃料ガス排出マニホールド172を画定する部材の表面にも、同様に、特定領域SAが存在する。本実施形態では、燃料ガス排出マニホールド172を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。燃料ガス排出マニホールド172を画定する部材の表面の特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(燃料オフガスFOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではZ軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、燃料オフガスFOGの主たる流れ方向(Z軸方向)に略平行に延伸している複数の溝11が形成されている。
また、図示しないが、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての燃料ガス供給マニホールド171を画定する部材の表面にも、同様に、特定領域SAが存在する。本実施形態では、燃料ガス供給マニホールド171を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。燃料ガス供給マニホールド171を画定する部材の表面の特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(燃料ガスFG)の主たる流れ方向(本実施形態ではZ軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、燃料ガスFGの主たる流れ方向(Z軸方向)に略平行に延伸している複数の溝11が形成されている。
なお、酸化剤ガス供給マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172のそれぞれについて、各マニホールド161,162,171,172を画定する部材の表面に加えて、もしくは該表面に代えて、各マニホールド161,162,171,172の位置に配置されたガス通路部材27内に形成された流路を画定する部材の表面に、特定領域SAが存在するとしてもよい。
また、図5および図8に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての空気極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材の表面にも、同様に、特定領域SAが存在する。上述したように、空気極側の供給側連通流路は、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166における酸化剤ガス供給連通孔132と空気極114との間に位置する一部分と、から構成される。また、空気極側の排出側連通流路は、酸化剤ガス排出マニホールド162と空気室166とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133と、空気室166における酸化剤ガス排出連通孔133と空気極114との間に位置する一部分と、から構成される。そのため、特定領域SAは、空気極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材である、空気極側フレーム130と単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とインターコネクタ190との少なくとも1つの表面に存在する。本実施形態では、空気極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。
図8に示すように、空気極側の排出側連通流路を構成する酸化剤ガス排出連通孔133を画定する部材としての空気極側フレーム130の表面(酸化剤ガス排出連通孔133の内周面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(酸化剤オフガスOOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略直交する方向である。すなわち、この特定領域SAには、酸化剤オフガスOOGの主たる流れ方向(X軸方向)に略直交する方向に延伸している複数の溝11が形成されている。本明細書において、2つの方向が略直交するとは、2つの方向のなす角が90度±10度の範囲内にあることを意味する。図示しないが、空気極側の供給側連通流路を構成する酸化剤ガス供給連通孔132を画定する部材としての空気極側フレーム130の表面(酸化剤ガス供給連通孔132の内周面)に存在する特定領域SAについても同様である。
また、図8に示すように、空気極側の供給側連通流路を構成する空気室166の一部を画定する部材としての空気極側フレーム130の表面(孔131の内周面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(酸化剤ガスOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略直交する方向である。すなわち、この特定領域SAには、酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸方向)に略直交する方向に延伸している複数の溝11が形成されている。図示しないが、空気極側の排出側連通流路を構成する空気室166の一部を画定する部材としての空気極側フレーム130の表面(孔131の内周面)に存在する特定領域SAについても同様である。
また、図5に示すように、空気極側の供給側連通流路を構成する酸化剤ガス供給連通孔132および空気室166の一部を画定する部材としての単セル用セパレータ120の表面(上面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(酸化剤ガスOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸方向)に略平行な方向に延伸している複数の溝11が形成されている。図示しないが、空気極側の排出側連通流路を構成する酸化剤ガス排出連通孔133および空気室166の一部を画定する部材としての単セル用セパレータ120の表面(上面)に存在する特定領域SAについても同様である。また、図示しないが、空気極側の供給側連通流路を構成する酸化剤ガス供給連通孔132および空気室166の一部を画定する部材としてのIC用セパレータ180およびインターコネクタ190の表面(下面)に存在する特定領域SA、および、空気極側の排出側連通流路を構成する酸化剤ガス排出連通孔133および空気室166の一部を画定する部材としてのIC用セパレータ180およびインターコネクタ190の表面(下面)に存在する特定領域SAについても同様である。
また、図6および図9に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したガス流路の一部としての燃料極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材の表面にも、同様に、特定領域SAが存在する。上述したように、燃料極側の供給側連通流路は、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176における燃料ガス供給連通孔142と燃料極116との間に位置する一部分と、から構成される。また、燃料極側の排出側連通流路は、燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176とを連通する燃料ガス排出連通孔143と、燃料室176における燃料ガス排出連通孔143と燃料極116との間に位置する一部分と、から構成される。そのため、特定領域SAは、燃料極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材である、燃料極側フレーム140とIC用セパレータ180とインターコネクタ190と単セル用セパレータ120との少なくとも1つの表面に存在する。本実施形態では、燃料極側の供給側および排出側連通流路を画定する部材の表面の略全体が特定領域SAとなっている。
図9に示すように、燃料極側の排出側連通流路を構成する燃料ガス排出連通孔143を画定する部材としての燃料極側フレーム140の表面(燃料ガス排出連通孔143の内周面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(燃料オフガスFOG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略直交する方向である。すなわち、この特定領域SAには、燃料オフガスFOGの主たる流れ方向(X軸方向)に略直交する方向に延伸している複数の溝11が形成されている。図示しないが、燃料極側の供給側連通流路を構成する燃料ガス供給連通孔142を画定する部材としての燃料極側フレーム140の表面(燃料ガス供給連通孔142の内周面)に存在する特定領域SAについても同様である。
また、図9に示すように、燃料極側の供給側連通流路を構成する燃料室176の一部を画定する部材としての燃料極側フレーム140の表面(孔141の内周面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(燃料ガスFG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略直交する方向である。すなわち、この特定領域SAには、燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸方向)に略直交する方向に延伸している複数の溝11が形成されている。図示しないが、燃料極側の排出側連通流路を構成する燃料室176の一部を画定する部材としての燃料極側フレーム140の表面(孔141の内周面)に存在する特定領域SAについても同様である。
また、図6に示すように、燃料極側の供給側連通流路を構成する燃料ガス供給連通孔142および燃料室176の一部を画定する部材としてのIC用セパレータ180およびインターコネクタ190の表面(上面)に存在する特定領域SAに関する上記条件(1)における「特定の方向」は、該特定領域SAの位置でのガス(燃料ガスFG)の主たる流れ方向(本実施形態ではX軸方向)に略平行な方向である。すなわち、この特定領域SAには、燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸方向)に略平行な方向に延伸している複数の溝11が形成されている。図示しないが、燃料極側の排出側連通流路を構成する燃料ガス排出連通孔143および燃料室176の一部を画定する部材としてのIC用セパレータ180およびインターコネクタ190の表面(上面)に存在する特定領域SAについても同様である。また、図示しないが、燃料極側の供給側連通流路を構成する燃料ガス供給連通孔142および燃料室176の一部を画定する部材としての単セル用セパレータ120の表面(下面)に存在する特定領域SA、および、燃料極側の排出側連通流路を構成する燃料ガス排出連通孔143および燃料室176の一部を画定する部材としての単セル用セパレータ120の表面(下面)に存在する特定領域SAについても同様である。
なお、上述したガス流路を画定する部材が、金属の母材と、母材の表面に形成された酸化被膜と、を含む金属部材である場合には、特定領域SAは、該金属部材の表面(すなわち、酸化被膜の表面)に存在する。このような金属部材としては、例えば、金属の母材としての平板部150および空気極側集電部134と、母材の表面に形成された酸化被膜としての被覆層194と、を含むインターコネクタ190が挙げられる。また、上記酸化被膜は、金属の母材の表面に自然に形成された酸化被膜(例えば、クロミア被膜やアルミナ被膜)を含む。
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、単セル110をそれぞれ有する複数の発電単位102を備える。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含む。燃料電池スタック100には、各発電単位102の電極(空気極114または燃料極116)との間でガスのやり取りを行うマニホールド(酸化剤ガス供給マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172)が形成されている。各発電単位102には、マニホールドと電極とを連通する連通流路(酸化剤ガス供給連通孔132、酸化剤ガス排出連通孔133、酸化剤ガス供給連通孔132または酸化剤ガス排出連通孔133と空気極114との間に位置する空気室166の一部分、燃料ガス供給連通孔142、燃料ガス排出連通孔143、燃料ガス供給連通孔142または燃料ガス排出連通孔143と燃料極116との間に位置する燃料室176の一部分)が形成されている。燃料電池スタック100におけるマニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面に、
(1)特定の方向に略平行に延伸する複数の溝11が形成されており、かつ、
(2)該特定の方向に交差する方向に沿った最大高さRzが、0.01μm以上、50μm以下である、
という条件を満たす領域である特定領域SAが存在する。
このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面に、特定の方向に略平行な複数の溝11が形成された特定領域SAが存在する。特定領域SAにおける特定の方向(複数の溝11の延伸方向に略平行な方向)に交差する方向に沿った最大高さRzは、0.01μm以上、50μm以下であることから、特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさは、過度に小さくも大きくもない。ここで、ガス流路を流れるガスに混入する異物のサイズは50μm以下であることが多く、また、異物の形状はきれいな球体であることは少なく、いびつな形状をしていることが多い。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス流路を流れるガスに異物が混入しても、ガス流路を画定する部材の表面における特定領域SAに存在する過度に小さくも大きくもない凹凸によって、いびつな形状の異物を引っ掛けてトラップすることができる。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガスに混入した異物の除去のために、発電に寄与しない非発電セルを設けることを要さないため、部品点数の増大や燃料電池スタック100のサイズの増大を抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、部品点数の増大や燃料電池スタック100のサイズの増大を抑制しつつ、ガス流路を流れるガスに混入した異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各発電単位102は、金属の母材(例えば、平板部150および空気極側集電部134)と、該母材の表面に形成された酸化被膜(例えば、被覆層194や、金属の母材の表面に自然に形成された酸化被膜(例えば、クロミア被膜やアルミナ被膜))と、を含む金属部材(例えば、インターコネクタ190)を有し、該金属部材の表面に特定領域SAが存在する。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因する凹凸を比較的シャープな形状とすることができ、該凹凸によってガス流路を流れるガスに混入した異物を効果的に引っ掛けてトラップすることができ、その結果、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、少なくとも一部の特定領域SAについて、特定領域SAに関する上記条件(1)における特定の方向は、特定領域SAの位置でのガスの主たる流れ方向に略平行な方向である。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因してガス流路における円滑なガス流れが阻害されることを抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、少なくとも一部の特定領域SAについて、特定領域SAに関する上記条件(1)における特定の方向は、特定領域SAの位置でのガスの主たる流れ方向に略直交する方向である。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因する凹凸により、ガス流路を流れるガスに混入した異物を効果的に引っ掛けてトラップすることができ、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100には複数の特定領域SAが存在し、一の特定領域SAについては、特定領域SAに関する上記条件(1)における特定の方向は、特定領域SAの位置でのガスの主たる流れ方向に略直交する方向であり、他の特定領域SAについては、特定領域SAに関する上記条件(1)における特定の方向は、特定領域SAの位置でのガスの主たる流れ方向に略平行な方向である。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、一の特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因してガス流路における円滑なガス流れが阻害されることを抑制することができると共に、他の特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因する凹凸により、ガス流路を流れるガスに混入した異物を効果的に引っ掛けてトラップすることができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、マニホールドとして、ガスを供給する供給側マニホールド(酸化剤ガス供給マニホールド161および燃料ガス供給マニホールド171)と、ガスを排出する排出側マニホールド(酸化剤ガス排出マニホールド162および燃料ガス排出マニホールド172)と、が形成されている。また、各発電単位102には、連通流路として、供給側マニホールドと電極とを連通する供給側連通流路(酸化剤ガス供給連通孔132、燃料ガス供給連通孔142、空気室166の一部分、燃料室176の一部分)と、排出側マニホールドと電極とを連通する排出側連通流路(酸化剤ガス排出連通孔133、燃料ガス排出連通孔143、空気室166の一部分、燃料室176の一部分)と、が形成されている。また、供給側マニホールドと供給側連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面と、排出側マニホールドと排出側連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面と、の両方に、特定領域SAが存在する。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス供給側とガス排出側との両方について、ガス流路を流れるガスに混入した異物を、特定領域SAにおける複数の溝11の存在に起因する凹凸によってトラップすることができ、異物の発生箇所にかかわらず、異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を効果的に抑制することができる。
なお、燃料電池スタック100において、マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面の全面積に対する特定領域SAの面積の割合は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。該割合が5%以上であると、特定領域SAに存在する凹凸によって異物を効果的にトラップすることができ、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を効果的に抑制することができる。また、該割合が10%以上であると、特定領域SAに存在する凹凸によって異物を極めて効果的にトラップすることができ、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を極めて効果的に抑制することができる。
A-5.性能評価:
燃料電池スタック100におけるガス流路の構成に関し、性能評価を行った。図10は、性能評価結果を示す説明図である。性能評価には、ガス流路を画定する部材の表面の構成が互いに異なる6つの燃料電池スタック100のサンプル(サンプルS1~S6)を用いた。具体的には、空気極側および燃料極側の供給側および排出側連通流路を構成する空気室166の一部および燃料室176の一部を画定する部材である単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190の表面に、ガスの主たる流れ方向に略平行に延伸する複数の溝11(サンプル毎に凹凸の大きさが異なる)を形成した(図5および図6参照)。複数の溝11が形成された表面におけるガスの主たる流れ方向に直交する方向に沿った最大高さRzを非接触式の表面粗さ計で測定したところ、3回の測定値の平均値は図10に示す通りの値であった。
各サンプルについて、700℃で1000時間の発電運転を行った後、「凹凸への異物の付着」、「セルへの異物の付着」、「セルのクラック・割れ」、「ガス流配の低下」という4つの項目について評価を行った。「凹凸への異物の付着」については、上述したガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11を形成して凹凸形状とした箇所に異物が付着しているか否かを、顕微鏡およびSEMを用いて確認した。「セルへの異物の付着」については、単セル110を構成する各層の表面に異物が付着しているか否かを、顕微鏡およびSEMを用いて確認した。「セルのクラック・割れ」については、単セル110を構成する各層におけるクラックや割れの有無を、顕微鏡およびSEMを用いて確認した。「ガス流配の低下」については、上述したガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11を形成して凹凸形状とした箇所におけるガス流配の低下の有無を、流体シミュレーションにより解析して確認した。4つの項目の評価結果を踏まえ、A(極めて良好)、B(良好)、C(良好ではない)の3段階で総合評価を行った。
サンプルS1~S4では、「凹凸への異物の付着」が「あり」であり、「セルへの異物の付着」が「なし」であり(ただし、サンプルS1については「わずかにあり」)、「セルのクラック・割れ」が「なし」であった(ただし、サンプルS1については「わずかにあり」)。これらのサンプルでは、最大高さRzが0.01μm以上、50μm以下であることから、ガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさが過度に小さくも大きくもなく適度であるため、該凹凸によって異物をトラップすることができ、その結果、単セル110への異物の付着を抑制することができたものと考えられる。ただし、サンプルS1では、最大高さRzが0.1μm未満であることから、ガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさがやや小さく、該凹凸によって異物をトラップする効果がサンプルS2~S4ほどには得られなかったものと考えられる。また、サンプルS4では、最大高さRzが20μm超であることから、ガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさがやや大きく、「ガス流配の低下」がわずかにみられた。これらの結果から、サンプルS2,S3については、総合評価:A(極めて良好)と判定し、サンプルS1,S4については、総合評価:B(良好)と判定した。
一方、サンプルS5,S6では、「凹凸への異物の付着」が「なし」であり、「セルへの異物の付着」が「あり」であり、「セルのクラック・割れ」が「あり」であった。サンプルS5では、最大高さRzが0.01μm未満であることから、ガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさが過度に小さく、該凹凸によって異物をトラップすることができず、単セル110への異物の付着を抑制することができなかったものと考えられる。また、サンプルS6では、最大高さRzが50μm超であることから、ガス流路を画定する部材の表面における複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさが過度に大きく、異物が該凹凸をすり抜けてしまい、単セル110への異物の付着を抑制することができなかったものと考えられる。なお、サンプルS6では、複数の溝11の存在に起因する凹凸の大きさが過度に大きいことから、「ガス流配の低下」もみられた。これらの結果から、サンプルS5,S6については、総合評価:C(良好ではない)と判定した。
以上の性能評価結果によれば、ガス流路を画定する部材の表面に複数の溝11が形成され、該溝11の延伸方向に交差する方向に沿った最大高さRzが0.01μm以上、50μm以下であれば、複数の溝11の存在に起因する凹凸によってガス流路を流れるガスに混入した異物を引っ掛けてトラップすることができ、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を抑制することができると言える。また、該最大高さRzが0.1μm以上であれば、複数の溝11の存在に起因する凹凸によってガス流路を流れるガスに混入した異物を効果的に引っ掛けてトラップすることができ、該異物に起因する燃料電池スタック100の性能低下や燃料電池スタック100を含むシステムの不具合の発生を効果的に抑制することができるため、より好ましいと言える。また、該最大高さRzが20μm以下であれば、複数の溝11の存在に起因する凹凸によってガス流路における円滑なガス流れが阻害されることを抑制することができるため、より好ましいと言える。
B.変形例:
本明細書に開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における燃料電池スタック100や発電単位102の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
上記実施形態では、ガス流路を画定する部材の表面の略全体が、上記条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAとなっているが、ガス流路を画定する部材の表面の少なくとも一部が特定領域SAとなっていればよい。例えば、燃料極側と空気極側との一方のみにおいて、ガス流路を画定する部材の表面が特定領域SAとなっていてもよい。また、供給側と排出側との一方のみにおいて、ガス流路を画定する部材の表面が特定領域SAとなっていてもよい。また、マニホールドと連通流路との一方のみにおいて、ガス流路を画定する部材の表面が特定領域SAとなっていてもよい。また、燃料電池スタック100に含まれる一部の発電単位102のみにおいて、連通流路を画定する部材の表面が特定領域SAとなっていてもよい。
上記実施形態では、特定領域SAにおける複数の溝11の延伸方向が、特定領域SAの位置でのガスの主たる流れ方向に略平行な方向、または、該ガスの主たる流れ方向に略直交する方向であるが、複数の溝11の延伸方向がそれ以外の方向であってもよい。
上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100が一対のターミナルプレート410,420を備えているが、他の部材(例えば、一対のエンドプレート104,106)をターミナルプレートとしても機能させ、専用部材としてのターミナルプレート410,420を省略してもよい。
上記実施形態では、単セル用セパレータ120が、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状の連結部128を有しているが、連結部128の形状は他の形状であってもよい。また、単セル用セパレータ120が連結部128を有さなくてもよい。IC用セパレータ180における連結部188についても同様である。
上記実施形態では、単セル用セパレータ120における孔121付近にガラスシール部125が配置されているが、ガラスシール部125は省略されてもよい。
上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。
上記実施形態では、単セル110は燃料極支持形の単セルであるが、電解質支持形や金属支持形等の他のタイプの単セルであってもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100がカウンターフロータイプの燃料電池であるが、燃料電池スタック100がコフロータイプといった他のタイプの燃料電池であってもよい。
上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。また、本明細書に開示される技術は、第1の燃料電池スタックから排出されたオフガスを第2の燃料電池スタックに供給する形態における少なくとも一方の燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セル単位および電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における発電単位102および燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用すると、ガス流路を流れるガスに混入した異物に起因する電解セルスタックの性能低下や電解セルスタックを含むシステムの不具合の発生を抑制することができる。
上記実施形態では、いわゆる平板型の燃料電池スタックを例に用いて説明したが、本明細書に開示される技術は、以下に説明するように、平板型に限らず、他のタイプ(いわゆる円筒平板型や円筒形)の燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
図11は、変形例としての燃料電池スタック2002の外観構成を示す説明図である。図11に示す変形例の燃料電池スタック2002は、複数の単セル2003を備える。単セル2003は、上下方向に伸びる柱状の支持体を有する。支持体は、断面が扁平状であり、一対の対向する平坦面を有する。支持体の内部には、上下方向に伸びるガス流路が形成されている。支持体の一方の平坦面上には、燃料極と、固体電解質層と、空気極とが順次積層されており、他方の平坦面のうち空気極が形成されていない部位には、インターコネクタが積層されている。隣接する単セル2003間に導電部材2004を配置することにより、単セル2003同士が電気的に直列に接続されている。単セル2003は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルまたは電気化学反応単位の一例である。
各単セル2003の下端は、ガラス等のシール材2016により、マニホールド2007に固定されている。各単セル2003の支持体に形成されたガス流路は、マニホールド2007の内部空間に連通している。マニホールド2007の側面には、燃料ガスをマニホールド2007内に供給するための燃料ガス供給管2008が接続されている。燃料ガス供給管2008を介してマニホールド2007に供給された燃料ガスは、マニホールド2007から各単セル2003の支持体に形成されたガス流路を介して、燃料極に供給される。
図11に示す変形例の燃料電池スタック2002において、マニホールド2007および燃料ガス供給管2008等のガス流路は、各単セル2003の燃料極との間でガスのやり取りをマニホールドであり、各単セル2003の支持体に形成されたガス流路のうち支持体のマニホールド2007側の端部から燃料極に到達するまでの部分は、マニホールドと燃料極とを連通する連通流路である。図11に示す変形例の燃料電池スタック2002においても、マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面には、上述した条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAが存在する。そのため、ガス流路を流れるガスに混入した異物に起因する燃料電池スタック2002の性能低下や燃料電池スタック2002を含むシステムの不具合の発生を抑制することができる。
図12は、他の変形例としての燃料電池スタック1100の外観構成を示す説明図である。この変形例における燃料電池スタック1100は、マニホールド1002と、複数の単セル1010とを備える。なお、図12では、一部の単セル1010の図示を省略している。
マニホールド1002は、各単セル1010に燃料ガスFGを供給すると共に、各単セル1010から排出されたガスを回収するための部材であり、内部に空間が形成された中空体である。マニホールド1002の内部空間は、仕切板1024によってガス供給室1021とガス回収室1022とに区画されている。マニホールド1002には、ガス供給室1021に連通するガス供給管1201が接続されており、ガス供給管1201を介してガス供給室1021に燃料ガスFGが供給される。また、マニホールド1002には、ガス回収室1022に連通するガス回収管1202が接続されており、ガス回収管1202を介してガス回収室1022内のガスが外部に排出される。マニホールド1002の上面を構成する上板部1231には、マニホールド1002の外側(外部空間)とガス供給室1021およびガス回収室1022とを連通する複数の貫通孔が、Z軸方向に沿って並ぶように形成されている。
各単セル1010は、YZ断面形状がY軸方向を長軸とする略楕円形であり、X軸方向に延伸する筒形の部材である。各単セル1010の基端部は、マニホールド1002の貫通孔に挿入された状態で、シール部によってマニホールド1002に接合されている。これにより、複数の単セル1010は、Z軸方向に沿って並ぶように配置される。Z軸方向に沿って隣り合う2つの単セル1010の間の空間は、酸化剤ガスの流路として機能する。単セル1010は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルまたは電気化学反応単位の一例である。
各単セル1010は、内部にX軸方向に延びる第1ガス流路および第2ガス流路が形成された支持基板と、燃料極と、電解質層と、空気極とを有する。第1ガス流路の基端部はマニホールド1002のガス供給室1021と連通しており、第2ガス流路の基端部はマニホールド1002のガス回収室1022と連通している。また、第1ガス流路と第2ガス流路とは、先端側において、連通部材1003に形成された連通流路を介して互いに連通している。各単セル1010は、集電部材を介して互いに電気的に直列に接続されている。
図12に示す変形例の燃料電池スタック1100において、マニホールド1002、ガス供給管1201およびガス回収管1202等のガス流路は、各単セル1010の燃料極との間でガスのやり取りをマニホールドであり、各単セル1010の支持基板に形成された第1ガス流路および第2ガス流路、および、連通部材1003に形成された連通流路は、マニホールドと燃料極とを連通する連通流路である。マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面には、上述した条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAが存在する。そのため、ガス流路を流れるガスに混入した異物に起因する燃料電池スタック1100の性能低下や燃料電池スタック1100を含むシステムの不具合の発生を抑制することができる。
図13は、他の変形例としての燃料電池スタック3100の外観構成を示す説明図である。図13に示す変形例の燃料電池スタック3100は、複数の単セル3001を備える。各単セル3001は、複数のセル群3010を構成している。燃料電池スタック3100の幅方向(短辺方向)に、セル群3010a、セル群3010b、セル群3010aの順に区画して配列されており、図13において右側のセル群3010aと左側のセル群3010aとは紙面奥手においてつながっている。このため、セル群3010aを構成する複数の単セル3001が接続固定されるマニホールド3002bは、上面視において「コ」字状の形状である。
単セル3001は円筒形状であり、燃料極と、電解質層と、空気極3008とを有する。単セル3001は、さらに、燃料極の両端に電気的に接続された金属キャップ3004を有する。金属キャップ3004は、単セル3001とガラス材料3005によってシールされている。単セル3001は、絶縁性支持部材3006(ブッシュともいう)を介してマニホールド3002bに立設され、ガラスリング3007により気密固定されている。また単セル3001の一部は、上面視において「コ」字状のマニホールド3002aの下方に、絶縁性支持部材3006を介して他端側が配置され、ガラスリング3007によって気密接合されている。複数の単セル3001は、金属キャップ3004と空気極3008の端部とが集電体3009を介して接続されることにより、電気的に直列に接続されている。単セル3001は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルまたは電気化学反応単位の一例である。
改質器3011で改質された燃料ガスは、マニホールド3002aの燃料ガス供給管から供給され、マニホールド3002aの内部で分散し、マニホールド3002aと連通するように接続された上流側のセル群3010aのガス流路を他端側から一端側へ流れる。セル群3010aから排出された発電に未使用の燃料ガスは、マニホールド3002bにおいて集約され、他端側が開放された下流側のセル群3010bのガス流路を一端側から他端側へ向かって流れ、セル群3010bの上端から排出される。
図13に示す変形例の燃料電池スタック3100において、マニホールド3002等のガス流路は、各単セル3001の燃料極との間でガスのやり取りをマニホールドであり、金属キャップ3004および絶縁性支持部材3006は、マニホールドと燃料極とを連通する連通流路である。図13に示す変形例の燃料電池スタック3100においても、マニホールドと連通流路とから構成されるガス流路を画定する部材の表面には、上述した条件(1)および条件(2)を満たす特定領域SAが存在する。そのため、ガス流路を流れるガスに混入した異物に起因する燃料電池スタック3100の性能低下や燃料電池スタック3100を含むシステムの不具合の発生を抑制することができる。
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。